説明

粘着シートとその製造方法、及び、製品の加工方法

【課題】 ウエハ等の製品を加工する際に使用される粘着シートであり、切断くずの発生が少なく、かつ、ウエハ表面の凹凸の高低差が大きくても、その凹凸に追従できる粘着シートを提供すること。
【解決手段】 粘着シートは、基材の片面に中間層と粘着剤層とをこの順に有する粘着シートであって、中間層は初期弾性率が0.5N/mm以下であり、20℃〜70℃における損失正接(tanδ)の値が0.4以上であり、かつ、ゲル分が30%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関し、特に、半導体ウエハ等の半導体製品や光学系製品等を精密加工する工程において、製品を保持したり、保護するために使用される粘着シートに関する。また、その粘着シートを製造する粘着シートの製造方法、及び、この粘着シートを用いて製品を加工する製品の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学産業や半導体産業等において、レンズ等の光学部品や半導体ウエハ等の半導体製品を精密加工する際にウエハ等の表面保護や破損防止のために粘着シートが使用される。
例えば半導体チップの製造工程においては、高純度シリコン単結晶等をスライスしてウエハとした後、ウエハ表面にIC等の所定の回路パターンをエッチング形成して集積回路を組み込み、次いでウエハ裏面を研削研磨するバックグラインド工程を経て、最後にダイシングしてチップ化することにより、あるいは、先ダイシング工程によりダイシングした後、ウエハ裏面を研削研磨することにより製造されている。半導体ウエハ自体が肉薄で脆く、また回路パターンには凹凸があるので、バックグラインド工程やダイシング工程への搬送時に外力が加わると破損しやすい。また、バックグラインド工程においては、生じた研磨屑を除去したり、研磨時に発生した熱を除去するために精製水によりウエハ裏面を洗浄しながら研磨処理を行っており、この研削水等によって汚染されることを防ぐ必要がある。そのために、回路パターン面等を保護し、半導体ウエハの破損を防止するために、回路パターン面に粘着シートを貼着して作業することが行われている。また、ダイシング時には、ウエハ裏面側に粘着シート類を貼り付けて、ウエハを接着固定した状態でダイシングし、形成されるチップをフィルム基材側よりニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。ここで用いられる粘着シートとして、例えば、特開昭61−10242号公報には、ショアーD型硬度が40以下である基材シートの表面に粘着層を設けたシリコンウエハ加工用フィルムが開示されている。また、特開昭61−260629号公報には、ショアーD型硬度が40以下である基材フィルムの一方の表面に、ショアーD型硬度が40よりも大きい補助フィルムが積層されており、基材フィルムの他方の表面に粘着剤層が設けられているシリコンウエハ加工用フィルムが開示されている。
【0003】
しかし、近年、半導体ウエハのパターン面の凹凸の高低差が大きくなってきており、例えば、ポリイミド膜付きのウエハでは凹凸の高低差が1〜20μm程度である。また、不良半導体チップを認識するための不良マーク(バッドマーク)は高低差が10〜70μm程度の凹凸を有し、また、パターン状の電極に形成されるバンプの高さは20〜250μm程度である。そのため、従来公知の粘着シートを用いる場合には、これらの凹凸に対して粘着シートが追従できず、粘着剤層とウエハ表面との間の接着が不十分となり、その結果、ウエハ加工時に粘着シートの剥離が生じたり、パターン面へ研削水や異物が入り込んだり、加工ミス、ディンプルの発生等が生じたり、切断されたチップが飛び散るというチップ飛びが生じたり、更にはウエハが破損する場合もあった。
【0004】
例えば、特開2001−203255号公報には、特定の弾性率及び特定のゲル分を有する中間層を備えた半導体ウエハ保持保護用の粘着シートが開示されているが、高低差の大きい凹凸を有する半導体ウエハの場合には、その高低差の大きな凹凸を吸収するためには中間層の厚さを厚くしなければならなかった。
【0005】
しかしながら、中間層の厚みが厚い粘着シートには問題があった。すなわち、バックグラインド工程は、ウエハのパターン面に粘着シートを貼着した後、切断刃でウエハの外周に沿って粘着シートを切断する工程を含むが、切断を容易にするために切断刃に熱を加えて切断刃の温度を上げておくことが行われる。通常、切断刃の先端部分の温度は20℃〜70℃になるように加熱されている。したがって、粘着シートをウエハに貼り合わせた後、ウエハの外周に沿って粘着シートを切断する際に、中間層の厚みが厚い粘着シートでは、その側面から中間層がはみ出して塊(切断くず)を形成した。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−10242号公報
【特許文献2】特開昭61−260629号公報
【特許文献3】特開2001−203255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、例えば半導体ウエハ表面の凹凸の高低差が大きくても、その凹凸に追従できる粘着シートであり、また、半導体ウエハ表面に粘着シートを貼りあわせて切断する際に、粘着シートの切断くずの発生が少ない粘着シートを提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、この粘着シートを製造する粘着シートの製造方法、及び、この粘着シートを用いて製品等を加工する製品の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粘着シートは、基材の片面に中間層と粘着剤層とをこの順に有する粘着シートであって、前記中間層は初期弾性率が0.5N/mm以下であり、20℃〜70℃における損失正接(tanδ)の値が0.4以上であり、かつ、ゲル分が30%以上であることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記中間層はアクリル系ポリマーを用いてなることが好ましい。
また、前記中間層は放射線を照射することにより形成されることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記粘着剤層は、分子内に炭素−炭素二重結合を有する放射線硬化型のアクリル系ポリマーを用いてなることが好ましい。
【0011】
また、前記中間層の厚さ(t1)と前記粘着剤層の厚さ(t2)との比(t1/t2)は0.01以上、0.5以下であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記粘着剤層の上に更に剥離用セパレータを有することができる。
【0013】
本発明の粘着シートは半導体ウエハ加工に使用することができる。この半導体ウエハ加工用粘着シートは、半導体ウエハを精密加工する工程において、製品を保持及び/又は保護するために使用されることを特徴とする。
【0014】
本発明の粘着シートの製造方法は、ラジカル重合性モノマーを含む混合物を基材の一方の面に塗布し、放射線を照射して硬化させることにより、初期弾性率が0.5N/mm以下、20℃〜70℃における損失正接(tanδ)の値が0.4以上、かつ、ゲル分が30%以上である中間層を形成し、該中間層の上に粘着剤層を形成することを特徴とする。
【0015】
ここで、前記ラジカル重合性モノマーはアクリル系モノマーであることが好ましい。
【0016】
本発明の粘着シートの使用方法は、上記いずれかの粘着シートを、精密加工される製品に貼着して保持及び/又は保護した状態で精密加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体製品や光学系製品等の製品を加工する際に、製品表面の凹凸の高低差が大きくても、その凹凸に追従できる粘着シートであり、また、本発明の粘着シートを例えば半導体ウエハに貼り合わせて半導体ウエハの外周に沿って粘着シートを切断した際に、粘着シートの側面から切断くずの発生が少ない粘着シートを提供することができる。また、本発明によれば、この粘着シートを製造する方法、及び、この粘着シートを用いて製品等を加工する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の粘着シートは、基材、中間層及び粘着剤層をこの順に有する粘着シートである。中間層は初期弾性率が0.5N/mm以下であり、20℃〜70℃における損失正接(tanδ)の値が0.4以上であり、かつ、ゲル分が30%以上である。
【0019】
中間層の初期弾性率が0.5N/mmを超える場合には、半導体ウエハ表面の凹凸に十分に追従することができなくなり、研削時に半導体ウエハが割れたり、ディンプルが発生し易くなる。
【0020】
本発明において初期弾性率は以下のようにして求める。すなわち、試験サンプル(中間層)の断面積が1mm、長さが10mmとなるように作製した試験サンプルについて、引張試験機((株)島津製作所製のオートグラフAGS−50D)を用い、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、応力−歪み曲線を作成する。その応力−歪み曲線の最初の直線部分から初期弾性率を下記式に基づいて求める。ここで、破断時の応力を破断強度、破断時の歪み(伸び)を破断伸度とした。破断伸度とは、フィルムを破壊するのに必要な伸び率をいう。

初期弾性率=(F/A)/(ΔL/L

式中、Fは引張応力、Aは試験サンプルの断面積、ΔLは歪み(伸び)の変化量、Lは試験サンプルの当初の長さ(試験前の長さ)である。
【0021】
本発明における粘着シートの中間層は20℃〜70℃における損失正接(tanδ)の値が0.4以上であることが必要であるが、中間層の損失正接(tanδ)の値が0.4未満であると、熱エネルギーへの変換効率が悪化するので、半導体ウエハの外周に沿って粘着シートを切断する際に、切断くずが多発する。
【0022】
損失正接(tanδ)と「切断くず」との関係は必ずしも明らかではないが、切断くずは、ウエハの外周に沿って粘着シートを切断する際に切断刃から伝えられた力(振動エネルギー)によって生じるものであり、損失正接(tanδ)の値が大きい中間層を有する粘着シートでは、振動エネルギーが分子間摩擦による熱エネルギーに効率的に変換されて吸収されることで切断くずが減少する、と想像される。
【0023】
本発明において損失正接(tanδ)とは、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合であり、材料の種類や温度により異なる値を示すものである。損失正接(tanδ)は例えば以下に示す測定方法によって求められる。すなわち、レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置ARESを用いて、厚さが約2.0mmの試験サンプルを、直径が7.9mmのパラレルプレートの治具にセットし、周波数1Hz、昇温速度5℃/minの条件下で損失正接の値を求める。
【0024】
上述したように、本発明の粘着シートは中間層のゲル分が30%以上である。中間層のゲル分が30%未満では、中間層の支持性が低下して側面から中間層がはみ出し、半導体ウエハの外周に沿って粘着シートを切断する際に切断くずが多発する。
【0025】
本発明においてゲル分とは、測定対象ポリマーを所定期間、溶剤に浸漬した後残存している残存ポリマー量の初期ポリマー量に対する割合(%表示)である。ゲル分は、試験サンプル(中間層)を酢酸エチル溶剤中に25℃で7日間浸漬した時に、酢酸エチルに溶解せずに残存している試験サンプルの量から求めることができる。
【0026】
本発明の粘着シートを構成する中間層は、ラジカル重合性モノマーを含有する混合物に放射線を照射して硬化させて形成されることが好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するものが使用され、ビニル系モノマー等が使用される。反応性が良好であること、及び、粘着剤層との接着性(投錨性)が良好であること、弾性率の調整が容易であること等を考慮すると、ビニル系モノマーはアクリル系モノマーであることが好ましい。なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。
【0027】
本発明に好ましく用いられるアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等を挙げることができる。
【0028】
また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。なお、これら共重合されるモノマーの種類や使用量は、中間層の特性等を考慮して適宜決定される。
【0029】
本発明においては、必要に応じて、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーを架橋剤として用いてもよい。
【0030】
これらのラジカル重合性モノマーは、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
【0031】
ビニル系モノマーを含有する混合物には光開始剤が更に含まれることが好ましい。光開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル、アニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の置換アセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等の置換アルファーケトール、2−ナフタレンスルフォニルクロライド等の芳香族スルフォニルクロライド、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等の光活性オキシム等が用いられる。
【0032】
中間層には、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0033】
本発明においては、上述したように、例えば、ビニル系モノマーを含有する混合物を基材上に、あるいは、剥離処理されたシート(いわゆる剥離シート又はセパレータ)上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射することにより、光硬化して中間層を形成することができる。
【0034】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、基材上に塗布したビニル系モノマーを含有する混合物の上に、剥離処理したシートをのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0035】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。
【0036】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、放射線の照射量は、100〜5,000mJ/cm、好ましくは1,000〜4,000mJ/cm、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cmである。放射線の照射量が100mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
【0037】
また、紫外線照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0038】
本発明において、中間層は1層で構成されていてもよいが、2層以上からなる多層構成でもよい。なお、多層構成の場合には、中間層を構成する各層は同一でも異なっていてもよい。
【0039】
中間層の厚さは、ウエハ表面の凹凸の高さ、ウエハの保持性、ウエハの保護性等を損なわない範囲内で適宜選択されることが好ましいが、例えば、20μm〜500μmであることが好ましく、更に好ましくは30μm〜200μm程度である。中間層の厚さが20μm未満では、ウエハのパターン面の凹凸へ十分に追従できないことがあり、ウエハの研削加工時に割れやディンプルが発生することがある。また、中間層の厚さが500μmを超えると、粘着シートの貼り付けに時間がかかって作業効率が低下することがあり、研削加工機器に入らないことがある。また、粘着シートをウエハから剥離する際に粘着シートの曲げ応力によって研削加工後の薄肉状態になったウエハが破損することがある。
【0040】
本発明の粘着シートを構成する基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂、金属箔、紙等が使用される。基材の材料は、用途や必要に応じて設けられる粘着剤層の種類等に応じて、適宜決定することが好ましく、例えば紫外線硬化型粘着剤を設ける場合には、紫外線透過率の高い基材が好ましい。
【0041】
基材を構成する材料には、必要に応じて、通常使用される添加剤等を本発明の効果を阻害しない範囲内で使用することができる。例えば添加剤として、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0042】
基材は単層構成でもよいが、2層以上からなる積層体でもよい。基材が2層以上の積層体からなる場合には、構成する各層は同一組成の材料からなる層でも異なる組成の材料からなる層でもよい。
【0043】
本発明の粘着シートは、中間層の上に粘着剤層を有する。この粘着剤層は、半導体ウエハ等の製品を加工する際には適度な粘着力を有して確実に保持することができ、加工後には製品等に負荷をかけずに容易に剥離することができるような粘着力であることが好ましい。
【0044】
かかる粘着剤層を構成する粘着剤組成としては特に限定されず、ウエハ等の接着固定に使用される公知の粘着剤等を使用することができ、例えば、天然ゴムやスチレン系共重合体等のゴム系ポリマーをベースポリマーとするゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中では、ウエハへの接着力の調製の容易さ、剥離後のウエハの超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の観点からは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0045】
粘着剤を構成するベースポリマーは架橋構造を有していてもよい。このようなポリマーは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基等の官能基を有するモノマー(例えばアクリル系モノマー)を含むモノマー混合物を、架橋剤の存在下で重合させることにより得られる。架橋構造を有するポリマーを含む粘着剤層を備えた粘着シートは、自己保持性が向上するので粘着シートの変形を防止することができ、粘着シートを平らな状態に維持することができる。したがって、この粘着シートを用いれば、ウエハに正確に、かつ、自動貼り付け装置等を用いて簡易に、貼付することができる。
【0046】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、放射線硬化型の粘着剤を用いることが好ましい。放射線硬化型の粘着剤は、例えば、粘着性物質に、放射線照射により硬化して低接着性物質を形成するオリゴマー成分を配合して得られる。粘着剤層が放射線硬化型粘着剤で構成されれば、オリゴマー成分によって粘着剤に塑性流動性が付与されるため、粘着シートを貼り付ける際に、貼り付けが容易になり、かつ、粘着シートを剥離する際には、放射線を照射することにより低接着性物質が生成するため、半導体ウエハから容易に剥離することができる。粘着剤層を硬化させるために使用される放射線としては、例えば、X線、電子線、紫外線等が挙げられ、取り扱いの容易さから紫外線を使用することが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0047】
放射線硬化型の粘着剤としては、分子設計の容易さを考慮すると、分子内に炭素−炭素2重結合を有するアクリル系ポリマーからなる粘着剤が好ましいものとして挙げられる。
【0048】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、ドデシル基の如き炭素数30以下、就中4〜18の直鎖又は分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分とし、これらを重合して得られたアクリル系ポリマー等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルをいい、本発明において(メタ)の如く表示した場合には、全て同様の意味である。
【0049】
アクリル系ポリマーは、官能基や極性基の導入による接着性の改良、または共重合体のガラス転移温度をコントロールして凝集力、耐熱性等の改質を目的として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含むことができる。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェ−ト等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0050】
これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上を使用することができる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、例えば主成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれと共重合可能な他のモノマーとの配合割合が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが70〜100重量%であることが好ましく、更に好ましくは85〜95重量%であり、これと共重合可能な他のモノマーが30〜0重量%であることが好ましく、更に好ましくは15〜5重量%である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを70質量%以上、共重合可能な他のモノマーを30質量%以下の範囲で配合することにより、接着性、凝集力等のバランスをうまくとることができる。
【0051】
さらに、アクリル系ポリマーには、架橋させるために、多官能性モノマー等を含むことができる。このような多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上を使用することができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下であることが好ましい。
【0052】
アクリル系ポリマーを形成するための重合方法としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方法でもよい。粘着剤層はウエハ等の製品の貼着面を汚さないように、低分子量物質の含有量が小さいものが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは20万〜300万程度、さらに好ましくは25万〜150万程度である。
【0053】
基本骨格としてのアクリル系ポリマーへ、炭素−炭素二重結合を導入する方法としては、特に制限されず様々な方法を採用することができる。本発明においては、分子設計が容易になるので、炭素−炭素二重結合をアクリル系ポリマーの側鎖に導入して炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーを形成することが好ましい。具体的には、例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基と炭素−炭素二重結合とを有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合または付加反応させて、アクリル系ポリマーの側鎖に、炭素−炭素二重結合を導入することができる。
【0054】
アクリル系ポリマーに共重合されるモノマーの官能基と、この官能基と反応しうる官能基との組合せ例を以下に示す。例えば、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せの中でもヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが、反応追跡の容易さから好適である。また、これら官能基の組合せにおいて、いずれの官能基が基本骨格のアクリル系ポリマーの側にあってもよいが、例えばヒドロキシル基とイソシアネート基の組合せでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、官能基と反応しうる官能基を含む化合物がイソシアネート基を有することが好ましい。この場合、イソシアネート基を有する前記化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、官能基(ここでは、ヒドロキシル基)を有するアクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルや(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等ヒドロキシル基含有モノマー、及び、その分子内にエステル結合を有するものや、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル系化合物、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル系化合物、ジエチレングリコールモノビニルエーテル系化合物等をアクリル系ポリマーに共重合したものが挙げられる。
【0055】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーを単独で使用することができるが、特性を悪化させない範囲内で、放射線硬化性のオリゴマー成分を配合してもよい。
【0056】
本発明に使用される放射線硬化性オリゴマーとしては、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等の種々のオリゴマーが挙げられ、本発明においては、これらを組み合わせて使用することもできる。
【0057】
放射線硬化型のオリゴマー成分を配合した粘着剤の場合には、粘着テープの保管中にオリゴマー成分の移動が発生することがあり、保管による変化が現れやすい。したがって、放射線硬化性のオリゴマー成分等の配合量は、通常、ベースポリマー100重量部に対して30重量部以下であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0058】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等によって硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0059】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば1〜10重量部、好ましくは3〜5重量部程度である。
【0060】
本発明の放射線硬化型粘着剤には,公知の架橋剤、例えば、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤等を使用することができる。
【0061】
粘着剤層には、加熱により発泡又は膨張する成分を含有させても良い。熱発泡性又は膨張性成分としては、例えば、イソブタン、プロパン等のように、加熱により容易にガス化する物質を弾性を有する殻内に内包させた熱膨張性微小球等が例示される。なお、このような熱膨張微小球としては、例えば、松本油脂製薬(株)製の商品名「マイクロスフィア」を市販品として入手することができる。粘着剤層に熱発泡性又は熱膨張性の成分を含有させることにより、ウエハの研削加工後、加熱処理によって粘着剤層が膨張して、粘着剤層とウエハとの粘着面積が著しく減少するため、ウエハから粘着シートを容易に剥離することができる。
【0062】
本発明において、粘着剤層の弾性率はウエハに対する粘着性や保持性を損なわない範囲内で適宜設定することができるが、好ましくは10〜1,000kPaである。粘着剤層の弾性率が10kPa未満では粘着剤層が柔らかくなるのでウエハの保持性や保護性が低下する恐れがあり、また、1,000kPaを超えると初期の接着力が得られない場合がある。
【0063】
粘着剤層の厚さは、ウエハの保持性や保護性を損なわない範囲で適宜設定することができるが、好ましくは1〜100μmであり、更に好ましくは2〜60μm程度である。粘着剤層の厚さが1μm未満では粘着剤層の破壊による中間層の析出の恐れがあり、一方、100μmを超えると、粘着シートをウエハに貼付する際に、ウエハ表面の凹凸に追従しにくくなる。
【0064】
本発明において粘着剤層は、上述の粘着剤を必要に応じて溶剤等を使用し、中間層上に直接塗布することにより形成してもよいし、粘着剤を剥離ライナー等に塗布して、予め粘着剤層を形成してから、この粘着剤層を中間層に貼り合わせて形成してもよい。
【0065】
本発明の粘着シートにおける中間層の厚さ(t1)と粘着剤層の厚さ(t2)の比は、目的等に応じて、適宜選択することができる。特に精密部品の加工用に用いる場合、粘着剤層の中間層に対する厚さ比(t2/t1)は、t2/t1=0.01〜0.5であることが好ましく、0.02から0.3程度であることが更に好ましい。粘着剤層と中間層との厚さ比(t2/t1)が0.01未満では、放射線照射後に接着力が十分に低下せず剥離が困難になることがあり、一方、厚さ比(t2/t1)が0.5を超えると、中間層の効果が発揮されずウエハパターン面の凹凸への追従性が発揮されにくくなり、ウエハの研削加工時に割れやディンプルが発生しやすくなる。
【0066】
次に、本発明の粘着シートの実施形態の1例を図面を用いて説明する。図1において、基材1の上に、中間層2及び粘着剤層3が設けられている。なお、この基材1は2層以上の積層体でもよいし、中間層2も2層以上の積層体でもよい。また、粘着剤層3の上には剥離用のセパレータが設けられていてもよく、基材1と中間層2との間、及び/又は中間層2と粘着剤層3との間に必要に応じて他の層が設けられていてもよい。
【0067】
本発明の粘着シートは、例えばウエハ等の製品を加工する際の常法に従って用いられる。ここでは、半導体ウエハの裏面を研削加工する際に使用する例を示す。まず、テーブル上にIC回路等のパターン面が上になるように半導体ウエハを載置し、そのパターン面の上に、本発明の粘着シートを、その粘着剤層が接するように重ね、圧着ロール等の押圧手段によって押圧しながら貼付する。あるいは、加圧可能な容器(例えばオートクレーブ)内に、上記のように半導体ウエハと粘着シートとを重ねたものを置いた後、容器内を加圧して半導体ウエハと粘着シートとを貼着してもよいし、これに押圧手段を併用してもよい。また、真空チャンバー内で半導体ウエハと粘着シートとを貼着してもよいし、粘着シートの基材の融点以下の温度で加熱することにより貼着してもよい。
【0068】
半導体ウエハの裏面研磨加工方法としては、通常の研削方法を採用することができる。例えば、上記のようにして粘着シートを貼着した半導体ウエハの裏面を、研磨するための加工機として研削機(バックグラインド)、CMP(Chemical Mechanical Polishing)用パッド等を用いて所望の厚さになるまで研削を行う。放射線硬化型の粘着剤を使用して粘着剤層を形成した粘着シートを用いた場合には、研削が終了した時点で放射線等を照射し、粘着剤層の粘着力を低下させてから剥離する。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部は重量部を意味する。
(実施例1)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル100部、アクリル酸10部と、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(登録商標「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.35部及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(登録商標「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.35部とを投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより増粘させて、プレポリマーを含むシロップを作製した。
【0070】
次いで、この部分重合したシロップに多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレートを0.2部加えて攪拌した後、これを剥離処理したPETフィルム(厚み38μm)上に、硬化後の厚みが300μmになるように塗布した。この上に、セパレータとして剥離処理したPETフィルム(厚み38μm)を重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面に、高圧水銀ランプを用いて紫外線(照度170mW/cm、光量2500mJ/cm)を照射して硬化させて、PETフィルム上に中間層を形成した後、このPETフィルムとセパレータとを除去して中間層を得た。得られた中間層について、既述の方法に基づいて、ゲル分を求め、動的粘弾性試験を行い損失正接(tanδ)を求め、引張試験を行い初期弾性率を求めた。その値を表1に示す。
【0071】
基材層として厚さ115μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルムを用い、この基材層上に、上記と同様にして中間層(300μm)を設けた。
【0072】
次に、アクリル酸エチル78部と、アクリル酸ブチル100部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル40部とからなる配合物をトルエン溶液中で共重合させて数平均分子量300,000のアクリル系共重合体ポリマーを得た。このアクリル系共重合体ポリマーに対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート43部を付加反応させてポリマー分子内側鎖に炭素−炭素二重結合を導入した。このポリマー100部に対して、更にポリイソシアネート系架橋剤1部、アセトフェノン系光重合開始剤3部を混合したUV硬化型粘着剤を、基材上に形成された中間層面上に塗布して厚さ30μmの粘着剤層を形成し、基材/中間層/粘着剤層の層構成を有する粘着シートを作製した。
【0073】
得られた粘着シートについて切断くずの評価及びウエハ割れの評価を行った。すなわち、得られた粘着シートを高さ240μmのバンプ付きウエハに貼付し、ウエハの外周に沿って粘着シートを切断し、切断くずの評価を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸ラウリル100部と、アクリル酸10部とを用いた以外は実施例1と同様にして中間層を形成し、また、基材と中間層と粘着剤層とをこの順に有する粘着シートを作製した。なお、この中間層のゲル分は71%であった。得られた中間層及び粘着シートについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
(比較例1)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸ブチル100部と、アクリル酸10部とを用いた以外は実施例1と同様にして中間層を形成し、また、基材と中間層と粘着剤層とをこの順に有する粘着シートを作製した。なお、この中間層のゲル分は66%であった。得られた中間層及び粘着シートについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0076】
(比較例2)
実施例1において、多官能モノマーを使用しなかった以外は実施例1と同様にして中間層を形成し、また、基材と中間層と粘着剤層とをこの順に有する粘着シートを作製した。なお、この中間層のゲル分は1%であった。得られた中間層及び粘着シートについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0077】
(比較例3)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸ブチル70部と、アクリル酸エチル30部と、アクリル酸10部とを用いた以外は実施例1と同様にして中間層を形成し、また、基材と中間層と粘着剤層とをこの順に有する粘着シートを作製した。なお、この中間層のゲル分は75%であった。得られた中間層及び粘着シートについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0078】
《評価試験》
(1)切断くずの評価
高さ240μmのバンプの形成された厚さ625μm(バンプ含まず)の6インチウエハ25枚に、粘着シートを日東精機(株)製のDR−8500IIを用いて貼り合わせた。その後、150℃に加温した切断刃(刃の先端温度60℃)によりウエハの外周に沿って粘着シートを切断した。25枚のウエハ中、任意の1枚について切断後の粘着シート側面を光学顕微鏡(100倍及び200倍)を用いて観察し、100μm以上の塊(切断くず)の数をカウントした。
【0079】
(2)ウエハ割れの評価
高さ240μmのバンプの形成された厚さ625μm(バンプ含まず)の6インチウエハ25枚に、粘着シートを日東精機(株)製のDR−8500IIを用いて貼り合わせた。この粘着シートを貼り合わせたウエハを、ディスコ(株)製のシリコンウエハ研削機により厚さ200μmまで研削し、ウエハに割れが発生した枚数をカウントした。
【0080】
【表1】

【0081】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜2の粘着シートは切断くずの数が少なく、かつ、この粘着シートを使用して厚み200μmまでウエハの研磨加工を行っても1枚も割れが生じなかった。
【0082】
一方、損失正接(tanδ)が0.4未満である中間層を有する比較例1の粘着シート、及び、ゲル分が30%未満である中間層を有する比較例2の粘着シートは、切断くずの数が多く、初期弾性率が0.5N/mmより大きい中間層を有する比較例3の粘着シートは、ウエハの割れが25枚中3枚もあった。
【0083】
すなわち、本発明によれば、半導体ウエハ表面の凹凸の高低差が大きくても、その凹凸に追従できる粘着シートであり、また、半導体上は表面に粘着シートを貼り合わせても切断する際に、粘着シートの切断くずの発生が少ない粘着シートを実現することができた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の粘着シートは、ウエハの裏面研削時やダイシング時に使用されるウエハ加工用粘着シートとして好適に用いることができる。また、使用時又は使用終了後に粘着シートの剥離を伴うような各種用途、例えば、各種工業部材、特に半導体、回路、各種プリント基板、各種マスク、リードフレーム等の微細加工部品の製造の際に表面保護や破損防止のために使用する粘着シートとして幅広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る粘着シートを模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 基材
2 中間層
3 粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面に中間層と粘着剤層とをこの順に有する粘着シートであって、前記中間層は初期弾性率が0.5N/mm以下であり、20℃〜70℃における損失正接(tanδ)の値が0.4以上であり、かつ、ゲル分が30%以上であることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記中間層がアクリル系ポリマーを用いてなることを特徴とする請求項1記載の粘着シート。
【請求項3】
前記中間層が放射線を照射することにより形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層が、分子内に炭素−炭素二重結合を有する放射線硬化型のアクリル系ポリマーを用いてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の粘着シート。
【請求項5】
前記中間層の厚さ(t1)と前記粘着剤層の厚さ(t2)との比(t1/t2)が0.01以上、0.5以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層の上に剥離用セパレータを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の粘着シート。
【請求項7】
半導体ウエハを精密加工する工程において、製品を保持及び/又は保護するために使用されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の半導体ウエハ加工用粘着シート。
【請求項8】
ラジカル重合性モノマーを含む混合物を基材の一方の面に塗布し、放射線を照射して硬化させることにより、初期弾性率が0.5N/mm以下、20℃〜70℃における損失正接(tanδ)の値が0.4以上、かつ、ゲル分が30%以上である中間層を形成し、該中間層の上に粘着剤層を形成することを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項9】
前記ラジカル重合性モノマーがアクリル系モノマーであることを特徴とする請求項8記載の粘着シートの製造方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項記載の粘着シートを、精密加工される製品に貼着して保持及び/又は保護した状態で精密加工することを特徴とする製品の加工方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−45965(P2007−45965A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233265(P2005−233265)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】