説明

粘着シート類

【課題】高い接着性を有し、且つフォギング現象の発生が低減化された粘着シート類を提供する。
【解決手段】粘着シート類は、アクリル系重合体を主成分として含むアクリル系重合体組成物と、粘着付与樹脂を主成分として含む粘着付与剤と、架橋剤とを含有するアクリル系粘着剤による粘着剤層を、少なくとも有している、粘着シート類であって、前記粘着付与樹脂において、分子量が300以下の成分の割合が、粘着付与樹脂の固形分全量に対して4.2重量%以下であり、前記粘着付与樹脂の割合が、前記アクリル系重合体:100重量部に対して、10〜100重量部であり、前記粘着剤層の溶剤不溶分が15〜70重量%であり、ドイツ工業規格DIN75201に従ったフォギング試験における反射率および付着量が、それぞれ、70%以上、2.0mg以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート類に関し、さらに詳しくは、高い接着性を有し、且つフォギング現象の発生が低減化された粘着シート類(粘着テープ、粘着シート、粘着フィルムなど)に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系粘着剤は、耐候性等の特性に優れており、各種粘着シート類における粘着剤層を形成する粘着剤として広く利用されている。アクリル系粘着剤の中でも、水分散型のアクリル系重合体を用いた水分散型アクリル系粘着剤は、溶剤型アクリル系粘着剤のように、溶媒として有機溶剤が用いられていないため、環境衛生上望ましく、耐溶剤性の観点でも優れている利点を有している。一般に、アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体単独により構成されている場合、高い接着性等の十分な粘着特性が得られにくく、そのような性能を付与するために、粘着付与樹脂が添加されている。しかしながら、粘着付与樹脂を添加して作製された粘着テープでは、自動車の内装材等の自動車材料を固定する際に長期間使用した場合、粘着テープ中の揮発成分がフロントガラス等に付着し、曇りを生じさせる、いわゆる「フォギング現象」が見られ問題となっていた。
【0003】
一方、粘着剤または粘着テープとは異なるものの、自動車の内装材の接着に使用される「接着剤」において、フォギング現象の発生を低減化させる方法が提案されている(特許文献1参照)。具体的には、スチレン系ブロック共重合体を主剤とする接着剤において、接着剤を構成する全配合物中の分子量400以下の成分の比率を、7重量%未満とすることにより、フォギング現象の発生を低減させる方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−327938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなフォギング現象の発生を低減化させる方法は、ホットメルト接着剤に関するものであり、そのため、接着作業時に加熱等により接着剤を溶融させる必要があり、加熱等の接着剤の溶融工程が必要となっている。近年、自動車の組立工程においては、作業時間の短縮化がますます要求されており、そのため、加熱等の手段を要することなく、接着作業を行うことのできる粘着テープの採用が拡大している。しかしながら、前述のように、従来の粘着テープを自動車内装材の接着に使用した場合には、フォギング現象の発生が問題視されており、特に、自動車1台当たりの粘着テープの使用量が増加するに伴い、フォギング現象の発生が低減化された粘着テープが望まれていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、高い接着性を有し、且つフォギング現象の発生が低減化された粘着シート類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、アクリル系重合体と粘着付与樹脂とを含むアクリル系粘着剤による粘着剤層を有する粘着テープとして、ドイツ工業規格DIN75201に従ったフォギング試験における反射率および付着量が、それぞれ、所定の値となっている粘着テープを用いると、良好な接着性を保持しつつ、フォギング現象の発生を低減させることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、アクリル系重合体を主成分として含むアクリル系重合体組成物と、粘着付与樹脂を主成分として含む粘着付与剤と、架橋剤とを含有するアクリル系粘着剤による粘着剤層を、少なくとも有している、粘着テープ、粘着シート、粘着フィルム及び粘着ラベルからなる群より選ばれたいずれか一つである粘着シート類であって、前記粘着付与樹脂において、分子量が300以下の成分の割合が、粘着付与樹脂の固形分全量に対して4.2重量%以下であり、前記粘着付与樹脂の割合が、前記アクリル系重合体:100重量部に対して、10〜100重量部であり、前記粘着剤層の溶剤不溶分が15〜70重量%であり、ドイツ工業規格DIN75201に従ったフォギング試験における反射率および付着量が、それぞれ、70%以上、2.0mg以下であることを特徴とする粘着シート類である。
【0009】
前記粘着シート類では、粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤において、分子量が300以下の成分の割合が、アクリル系粘着剤中の固形分全量に対して4.2重量%以下であることが好ましい。
【0010】
このような粘着シート類において、アクリル系重合体組成物が、アクリル系重合体が水に分散された形態で含まれている水分散型アクリル系重合体組成物であり、且つ粘着付与剤が、粘着付与樹脂が水に分散された形態で含まれている水分散型粘着付与剤であることが好適である。前記水分散型粘着付与剤において、分子量が300以下の成分の割合が、水分散型粘着付与剤中の粘着付与樹脂および乳化剤の総量としての固形分全量に対して4.2重量%以下であることが好ましい。
【0011】
さらに本発明では、粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂を好適に用いることができる。
【0012】
本発明の粘着シート類は、自動車用材料又は住宅用材料の固定の際に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着シート類によれば、高い接着性を有し、且つフォギング現象の発生が低減化されている。従って、自動車用材料又は住宅用材料の固定の際に用いられる粘着シート類として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)〜(f)は、それぞれ、本発明の粘着シート類の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部材や部位などには同一の符号を付している場合がある。
【0016】
本発明の粘着シート類は、図1で示されるように、支持体の少なくとも一方の面に、アクリル系重合体を主成分として含むアクリル系重合体組成物と、粘着付与樹脂を主成分として含む粘着付与剤とを含有するアクリル系粘着剤による粘着剤層が形成された構成を有しており、且つドイツ工業規格DIN75201に従ったフォギング試験における反射率および付着量が、それぞれ、70%以上、2.0mg以下である特性を有している。このように、粘着シート類は、ドイツ工業規格DIN75201に従ったフォギング試験による反射率(「フォギング試験反射率」と称する場合がある)が70%以上であり、且つドイツ工業規格DIN75201に従ったフォギング試験による付着量(「フォギング試験付着量」と称する場合がある)が2.0mg以下である特性を有しているので、フォギング現象の発生を低減化させることができる。もちろん、粘着付与樹脂が用いられているので、高い接着性を確保することができる。従って、本発明の粘着シート類では、高い接着性を確保しつつ、フォギング現象の発生を効果的に低減化させることができる。
【0017】
本発明の粘着シート類において、フォギング試験反射率としては、70%以上であれば特に制限されず、高ければ高いほどよい。フォギング試験反射率としては、80%以上(特に、90%以上)が好適である。
【0018】
本発明において、フォギング試験反射率の測定は、ドイツ工業規格DIN75201−Rに従って実施する。具体的には、粘着シート類を、直径80mmの円形状に切断し、剥離ライナーの剥離等により、粘着剤層表面(粘着面)を露出させた状態で(両面が粘着面となっている両面粘着シート類では、一方の粘着面のみを露出させた状態で)、100℃のオイルバスにより加熱されているビーカー(外径:90mm、内径83.6mm、高さ:190mm;高さが130mmの所まで、100℃のオイルバスに浸っている)の内部の底に、露出した粘着面が上側となる形態で静置し、さらに、ビーカーの上面に、常に21℃に冷却されているガラス板を設置する(フォギング測定器:装置名「N8−FOG」HAAKE社製;オイルバスによりビーカーやフラスコ等を100℃に加熱し、上面を21℃に冷却することが可能な装置)。その状態で、3時間放置した後、ガラス板を取り出し、ガラス板のビーカー内部側の表面について、入射角60°で入射光を入射させた際の反射率(「試験後のガラス板の60°入射反射率」と称する場合がある)(%)を、商品名「REFO 60 REFLEKTOMETER」(PRLANGE社製)を用いて求める[試験後のガラス板の60°入射反射率(%)=試験後のガラス板への入射光の強度/試験後のガラス板に入射光を入射させた際の反射光の強度×100]。なお、予め、試験を行う前のガラス板の表面についても、入射角60°で入射光を入射させた際の反射率(「試験前のガラス板の60°入射反射率」と称する場合がある)(%)を、前記と同様の装置を用いて求めておく[試験前のガラス板の60°入射反射率(%)=試験前のガラス板への入射光の強度/試験前のガラス板に入射光を入射させた際の反射光の強度×100]。そして、下記式(1)を用いて、フォギング試験反射率(%)を算出する。
フォギング試験反射率(%)=[試験後のガラス板の60°入射反射率(%)/試験前のガラス板の60°入射反射率(%)]×100 (1)
【0019】
また、本発明の粘着シート類において、フォギング試験付着量としては、2.0mg以下であれば特に制限されず、低ければ低いほどよい。フォギング試験付着量としては、1.5mg以下(特に、1.0mg以下)が好適である。
【0020】
本発明において、フォギング試験付着量の測定は、ドイツ工業規格DIN75201−Wに従って実施する。具体的には、粘着シート類を、直径80mmの円形状に切断し、剥離ライナーの剥離等により、粘着剤層表面(粘着面)を露出させた状態で(両面が粘着面となっている両面粘着シート類では、一方の粘着面のみを露出させた状態で)、100℃のオイルバスにより加熱されているビーカー(外径:90mm、内径83.6mm、高さ:190mm;高さが130mmの所まで、100℃のオイルバスに浸っている)の内部の底に、露出した粘着面が上側となる形態で静置し、さらに、ビーカーの上面に、常に21℃に冷却されているアルミニウム製シート(いわゆる「アルミホイル」)を設置する(フォギング測定器:装置名「N8−FOG」HAAKE社製)。その状態で、16時間放置した後、アルミニウム製シートを取り出し、その重量(試験後のアルミニウム製シートの重量)を測定する。なお、予め、試験を行う前のアルミニウム製シートの重量(試験前のアルミニウム製シートの重量)も測定しておく。そして、下記式(2)を用いて、フォギング試験付着量(mg)を算出する。
フォギング試験付着量(mg)=(試験後のアルミニウム製シートの重量)−(試験前のアルミニウム製シートの重量) (2)
【0021】
なお、図1(a)〜(f)は、それぞれ、本発明の粘着シート類の例を示す概略断面図である。図1において、11〜16は、それぞれ、粘着シート類、2は基材、3は粘着剤層、4は剥離ライナーである。なお、粘着剤層3は、アクリル系重合体を主成分として含むアクリル系重合体組成物と、粘着付与樹脂を主成分として含む粘着付与剤とを含有するアクリル系粘着剤による粘着剤層である。図1(a)で示される粘着シート類11は、支持体としての基材2の両面に、粘着剤層3が形成された構成を有しており、且つ両面の粘着剤層3は、それぞれ、片面のみが剥離面となっている剥離ライナー4により保護された構成を有している。また、図1(b)で示される粘着シート類12は、支持体としての基材2の両面に、粘着剤層3が形成された構成を有しており、且つ何れか一方の側の粘着剤層3が、両面が剥離面となっている剥離ライナー4により保護された構成を有しており、さらに、他方の側の粘着剤層3は、粘着シート類12をロール状に巻回することにより、前記剥離ライナー4の他方の剥離面により保護された構成とすることができる。
【0022】
また、図1(c)で示される粘着シート類13は、支持体としての基材2の片面に、粘着剤層3が形成された構成を有しており、且つ粘着剤層3は、片面のみが剥離面となっている剥離ライナー4により保護された構成を有している。図1(d)で示される粘着シート類14は、支持体としての基材2の片面に、粘着剤層3が形成された構成を有しており、且つ支持体としての基材2の背面は剥離面となっており、粘着剤層3は、粘着シート類14をロール状に巻回することにより、支持体としての基材2の背面に形成された剥離面により保護された構成とすることができる。
【0023】
さらにまた、図1(e)で示される粘着シート類15は、支持体としての剥離ライナー4の片面(片面のみが剥離面となっている剥離ライナーにおける剥離面側の片面)に、粘着剤層3が形成された構成を有しており、且つ粘着剤層3は、片面のみが剥離面となっている剥離ライナー4により保護された構成を有している。図1(f)で示される粘着シート類16は、支持体としての剥離ライナー4(両面が剥離面となっている剥離ライナー)の片面に、粘着剤層3が形成された構成を有しており、且つ粘着剤層3は、粘着シート類16をロール状に巻回することにより、支持体としての剥離ライナー4の他方の剥離面により保護された構成とすることができる。
【0024】
このように、本発明の粘着シート類は、アクリル系重合体を主成分として含むアクリル系重合体組成物と、粘着付与樹脂を主成分として含む粘着付与剤とを含有するアクリル系粘着剤による粘着剤層を少なくとも有していればよく、例えば、基材を有している粘着シート類(基材付き粘着シート類)、基材を有していない粘着シート類(基材レス粘着シート類)のいずれであってもよい。また、粘着シート類は、両面が粘着面となっている両面粘着シート類、片面のみが粘着面となっている粘着シート類のいずれであってもよい。なお、粘着シート類が基材レス粘着シート類である場合、支持体としては、粘着剤層に対して剥離性を発揮することが可能な支持体(例えば、剥離ライナーなど)を用いることができる。
【0025】
また、本発明の粘着シート類では、フォギング試験反射率と、フォギング試験付着量とが所定の値となるように調整されており、そのため、粘着シート類を構成する材料として、揮発成分または低分子成分の含有量が少ないものを用いることが重要である。特に、粘着シート類は、少なくとも粘着剤層を有しているので、粘着剤層を構成する材料として、揮発成分または低分子成分の含有量が少ないものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤として、分子量が300以下の成分の割合(比率)が、アクリル系粘着剤中の固形分全量に対して4.2重量%以下(特に4.1重量%以下)であるアクリル系粘着剤を用いることにより、フォギング試験反射率と、フォギング試験付着量とを、それぞれ、70%以上、2.0mg以下とすることができる。なお、分子量が300以下の成分の割合が、アクリル系粘着剤中の固形分全量に対して4.2重量%以下となっているアクリル系粘着剤は、該アクリル系粘着剤を構成する各種成分(例えば、アクリル系重合体、粘着付与樹脂など)を適宜選択することにより調製することができる。
【0026】
[粘着剤層]
粘着剤層は、前述のように、アクリル系重合体を主成分として含むアクリル系重合体組成物と、粘着付与樹脂を主成分として含む粘着付与剤とを含有するアクリル系粘着剤により形成されているので、主として、フォギング現象の発生に関係する揮発成分または低分子成分は、粘着付与剤中に含有されている場合がある。
【0027】
(粘着付与剤)
粘着付与剤は、粘着付与樹脂を主成分として含んでいる。このような粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂などが挙げられる。粘着付与樹脂は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
具体的には、ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。前記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物や、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。また、ロジン誘導体としては、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども用いることができる。
【0029】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペン−フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0030】
炭化水素系粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂[炭素数4〜5のオレフィンやジエン(ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1等のオレフィン;ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等のジエンなど)などの脂肪族炭化水素の重合体など]、芳香族系炭化水素樹脂[炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)の重合体など]、脂肪族系環状炭化水素樹脂[いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテンなど)の重合体又はその水素添加物、下記の芳香族系炭化水素樹脂や脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂など]、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体など)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などの各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0031】
本発明では、粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂が好ましく、特に、ロジン樹脂(未変性ロジン);重合、不均化、水添等の変性が施されたロジン系樹脂(変性ロジン);ロジンのエステル化合物や、変性ロジンのエステル化合物等のロジンエステル類を好適に用いることができる。
【0032】
なお、粘着付与樹脂としては、粘着シート類に高い接着性を発揮させるために、JIS K 5902に規定される環球法によって測定された軟化点(軟化温度)が120℃以上(好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上)である粘着付与樹脂が好適である。なお、粘着付与樹脂の軟化点の上限としては、特に制限されず、例えば、170℃以下(好ましくは160℃以下、さらに好ましくは155℃以下)とすることができる。
【0033】
特に、本発明では、粘着付与剤中の粘着付与樹脂としては、フォギング試験反射率およびフォギング試験付着量を、それぞれ、70%以上、2.0mg以下とする観点から、分子量が300以下の成分の割合(比率)が、粘着付与樹脂の固形分全量に対して4.2重量%以下(特に4.1重量%以下)である粘着付与樹脂(特に、ロジン系粘着付与樹脂)を好適に用いることができる。
【0034】
なお、分子量が300以下の成分の割合が、粘着付与樹脂の固形分全量に対して4.2重量%以下である粘着付与樹脂は、(1)分子量が300以下の成分の割合が、粘着付与樹脂の固形分全量に対して4.2重量%以下となるようにして調製された粘着付与樹脂、(2)各種方法により調製された粘着付与樹脂(従って、この粘着付与樹脂は、分子量が300以下の成分の割合が、粘着付与樹脂の固形分全量に対して4.2重量%を超えていてもよい)に対して、低分子成分(特に、分子量が300以下の成分)の除去処理を十分に施して調製した粘着付与樹脂などが挙げられる。前記低分子成分の除去処理は、公知の除去処理方法(例えば、水蒸気蒸留など)を利用することができる。
【0035】
粘着付与剤としては、粘着付与樹脂単独により構成された形態を有していてもよく、粘着付与樹脂が媒体中に溶解又は分散された形態を有していてもよい。本発明では、粘着付与剤は、粘着付与樹脂が水に分散された形態で含まれている水分散型粘着付与剤(粘着付与樹脂含有エマルジョン)が好適である。
【0036】
水分散型粘着付与剤は、粘着付与樹脂を、必要に応じて溶解又は溶融させから、水に分散させて調製することができる。粘着付与樹脂を水に分散させる際には、乳化剤を用いることができる。このような乳化剤としては、例えば、何れの形態の乳化剤であってもよいが、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤を好適に用いることができる。アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩型アニオン系乳化剤;スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等のスルホコハク酸型アニオン系乳化剤などが挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。
【0037】
乳化剤の使用量としては、粘着付与樹脂をエマルジョンの形態に調製することが可能な使用量であれば特に制限されず、例えば、粘着付与樹脂全量(固形分)に対して0.2〜10重量%(好ましくは0.5〜5重量%)程度の範囲から選択することができる。
【0038】
なお、水分散型粘着付与剤を調製する際の乳化剤は、下記に示される水分散型アクリル系重合体を調製する際の乳化剤と同一の乳化剤または異なる乳化剤のいずれであってもよいが、例えば、一方がアニオン系乳化剤であれば、他方もアニオン系乳化剤を用いることが好ましく、また、一方がノニオン系乳化剤であれば、他方もノニオン系乳化剤を用いることが好ましい。
【0039】
本発明では、水分散型粘着付与剤としては、フォギング試験反射率およびフォギング試験付着量を、それぞれ、70%以上、2.0mg以下とする観点から、分子量が300以下の成分の割合が、水分散型粘着付与剤中の粘着付与樹脂および乳化剤の総量としての固形分全量に対して4.2重量%以下(特に4.1重量%以下)である水分散型粘着付与剤を好適に用いることができる。
【0040】
なお、分子量が300以下の成分の割合が、水分散型粘着付与剤中の粘着付与樹脂および乳化剤の総量としての固形分全量に対して4.2重量%以下である水分散型粘着付与剤は、(1)粘着付与樹脂および乳化剤として、それぞれ、分子量が300以下の成分の割合が粘着付与樹脂の固形分全量に対して4.2重量%以下となるようにして調製された粘着付与樹脂、分子量が300以下の成分の割合が乳化剤の固形分全量に対して4.2重量%以下となるようにして調製された乳化剤を用いて調製された水分散型粘着付与剤、(2)各種方法により調製された粘着付与樹脂(従って、この粘着付与樹脂は、分子量が300以下の成分の割合が、粘着付与樹脂の固形分全量に対して4.2重量%を超えていてもよい)を、各種方法により調製された乳化剤(従って、この乳化剤は、分子量が300以下の成分の割合が乳化剤の固形分全量に対して4.2重量%を超えていてもよい)を用いて乳化させて調製した水分散型粘着付与剤に対して、低分子成分(特に、分子量が300以下の成分)の除去処理を十分に施して調製した水分散型粘着付与剤などが挙げられる。前記低分子の除去処理は、公知の除去処理方法(例えば、水蒸気蒸留による除去処理方法など)を利用することができる。
【0041】
分子量が300以下の成分の割合が、水分散型粘着付与剤中の粘着付与樹脂および乳化剤の総量としての固形分全量に対して4.2重量%以下である水分散型粘着付与剤としては、例えば、商品名「スーパーエステルE−720」、商品名「04−039」、商品名「04−021」(以上、荒川化学工業株式会社製)等の市販品を用いることができる。
【0042】
(アクリル系重合体組成物)
アクリル系重合体組成物は、アクリル系重合体を主成分として含んでいる。前記アクリル系重合体は、アクリル系粘着剤のベースポリマー(粘着剤の基本成分)として用いられている。このようなアクリル系重合体としては、特に制限されないが、主構成単量体成分(モノマー主成分)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル)が用いられていることが好ましい。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記式(1)で表されるアクリル系化合物を好適に用いることができる。
【化1】

(式(1)において、R1は水素原子又はメチル基、R2はアルキル基を示す。)
【0043】
前記式(1)において、R1は水素原子又はメチル基である。また、R2はアルキル基である。具体的には、R2のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)等の炭素数が1〜18のアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基)などが挙げられる。R2のアルキル基としては、炭素数が2〜14のアルキル基が好ましく、さらには炭素数が2〜10のアルキル基が好適である。
【0044】
具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
アクリル系重合体を構成するモノマー成分としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分としていれば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合が可能な他のモノマー成分(「共重合性モノマー成分」と称する場合がある)が用いられていてもよい。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル系重合体を構成するモノマー成分全量に対して50重量%以上の割合で用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が、アクリル系重合体を構成するモノマー成分全量に対して50重量%未満であると、アクリル系重合体としての特性が発現しにくくなる場合がある。
【0046】
共重合性モノマー成分としては、アクリル系重合体に架橋点を導入させるためや、アクリル系重合体の凝集力を高めるために用いることができる。共重合性モノマー成分は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0047】
具体的には、共重合性モノマー成分としては、アクリル系重合体に架橋点を導入させるために、官能基含有モノマー成分(特に、アクリル系重合体に熱架橋する架橋点を導入させるための熱架橋性官能基含有モノマー成分)を用いることができる。官能基含有モノマー成分を用いることにより、被着体に対する接着力を向上させることができる。このような官能基含有モノマー成分としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合が可能であり、且つ架橋点となる官能基を有しているモノマー成分であれば特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその酸無水物(無水マレイン酸、無水イコタン酸など);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルの他、ビニルアルコール、アリルアルコールなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどの窒素原子含有環を有するモノマーなどが挙げられる。官能基含有モノマー成分としては、アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその酸無水物を好適に用いることができる。
【0048】
また、共重合性モノマー成分としては、アクリル系重合体の凝集力を高めるために、他の共重合性モノマー成分を用いることができる。他の共重合性モノマー成分としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、シクロペンチルジ(メタ)アクリレートなど]や、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキルエステル[(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなど]や、(メタ)アクリル酸アリールアルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルエステル]などの芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマーの他、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー等が挙げられる。
【0049】
アクリル系重合体を構成するモノマー成分[(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、共重合性モノマー成分など]としては、フォギング現象の発生を抑制又は防止させる観点から、乾燥時に揮発しにくい高沸点を有するモノマー成分の使用は、できるだけ避けた方が好ましい。この観点より、アクリル系重合体を構成するモノマー成分としては、沸点が300℃以下(好ましくは250℃以下)のモノマー成分を用いることが望ましい。
【0050】
アクリル系重合体の重合方法としては、公知乃至慣用の重合方法(例えば、乳化重合方法、溶液重合方法、懸濁重合方法など)を採用することができる。なお、重合の際には、一般的な一括仕込み方法(一括重合方法)、モノマー滴下方法(連続滴下方法、分割滴下方法など)などの各種重合方法を採用することができる。重合温度は、モノマーの種類や、重合開始剤の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、20〜100℃の範囲から選択できる。
【0051】
重合時に用いられる重合開始剤としては、重合方法の種類に応じて、公知乃至慣用の重合開始剤(アゾ系重合開始剤、過硫酸塩系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤など)から適宜選択することができる。重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート、2,2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、過酸化水素等の過酸化物系重合開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系重合開始剤;芳香族カルボニル化合物;過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤[例えば、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ等によるレドックス系重合開始剤など]が挙げられる。重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0052】
重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分:100重量部に対して0.01〜1重量部(好ましくは0.02〜0.5重量部)程度の範囲から選択することができる。
【0053】
また、重合の際には、分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、公知乃至慣用の連鎖移動剤を用いることができ、例えば、ドデカンチオール(ラウリルメルカプタン)、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール等のメルカプタン類の他、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。連鎖移動剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して5重量部以下(例えば、0〜5重量部、好ましくは0〜1重量部)程度の範囲から選択することができる。
【0054】
アクリル系重合体組成物は、アクリル系重合体単独により構成された形態を有していてもよく、アクリル系重合体が媒体中に溶解又は分散された形態を有していてもよい。本発明では、アクリル系重合体組成物は、アクリル系重合体が水に分散された形態で含まれている水分散型アクリル系重合体組成物が好適である。
【0055】
水分散型アクリル系重合体組成物は、エマルジョンの形態を有しているので、乳化重合方法を利用して調製されたエマルジョン形態の重合物をそのまま用いて、水分散型アクリル系重合体組成物を調製してもよく、または、乳化重合方法以外の重合方法を利用して調製されたアクリル系重合体を水に分散させて、水分散型アクリル系重合体組成物を調製してもよい。なお、乳化重合の際や、アクリル系重合体を水に分散させる際には、乳化剤を用いることができる。
【0056】
具体的には、乳化剤としては、例えば、何れの形態の乳化剤であってもよいが、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤を好適に用いることができる。アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩型アニオン系乳化剤;スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等のスルホコハク酸型アニオン系乳化剤などが挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。乳化剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
乳化剤の使用量としては、アクリル系重合体をエマルジョンの形態に調製することが可能な使用量であれば特に制限されず、例えば、アクリル系重合体又はモノマー成分100重量部に対して0.3〜10重量部(好ましくは0.5〜5重量部)程度の範囲から選択することができる。乳化剤の使用量が、アクリル系重合体又はモノマー成分100重量部に対して0.3重量部より少ないと、重合安定性が保持できずに、凝集物を生成する場合があり、一方、10重量部を超えると、水分散型アクリル系重合体(アクリル系ポリマーエマルジョン)としての特性が発現しにくくなる場合がある。
【0058】
乳化剤としては、フォギング現象の発生を抑制又は防止させる観点から、低分子の乳化剤の使用は、できるだけ避けた方が好ましい。この観点より、乳化剤としては、分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)が200以上(好ましくは300以上)の乳化剤を用いることが望ましい。
【0059】
なお、アクリル系重合体組成物が、水分散型アクリル系重合体組成物である場合、水性媒体としては、水が用いられているが、必要に応じて、アルコール類等の水溶性溶媒が少量水に添加された水性媒体も用いることができる。水性媒体の量としては、乳化重合により水分散型アクリル系重合体組成物を調製する際には、滴下等により系内に導入する乳化液との割合などに応じて適宜決定すればよい。水分散型アクリル系重合体組成物の固形分濃度としては、20〜80重量%(好ましくは30〜70重量%)が望ましい。
【0060】
(他の成分)
粘着剤層を形成するためのアクリル系粘着剤には、必要に応じて、架橋剤が用いられていてもよい。架橋剤としては、特に制限されず、公知乃至慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤など)の中から適宜選択して用いることができる。また、粘着剤層を形成するためのアクリル系粘着剤には、必要に応じて、その他の添加剤(例えば、pH緩衝剤、中和剤、発泡防止剤、安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、界面活性剤、帯電防止剤など)が含まれていてもよい。
【0061】
本発明では、前述のように、アクリル系重合体組成物と、粘着付与剤とを含有アクリル系粘着剤が用いられている。アクリル系重合体組成物と、粘着付与剤との割合としては、特に制限されず、目的とする粘着性の付与の程度などに応じて適宜選択することができる。粘着付与剤としては、粘着付与剤中の粘着付与樹脂が、アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100重量部に対して10〜100重量部(好ましくは15〜80重量部、さらに好ましくは20〜60重量部)となる割合で用いることが望ましい。粘着付与剤が、粘着付与剤中の粘着付与樹脂が、アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100重量部に対して10重量部未満となる配合量で配合されている場合、粘着付与剤の添加効果が充分でなく、目的とする粘着力が得られなくなる場合があり、一方、100重量部を超えた配合量で配合されている場合、アクリル系重合体との相溶性が劣ることにより、粘着力が低下する場合がある。
【0062】
アクリル系粘着剤としては、水分散型アクリル系重合体組成物と、水分散型粘着付与剤とを含有する水分散型アクリル系粘着剤が好適である。
【0063】
粘着剤層は、アクリル系粘着剤を、所定の面上に塗布して乾燥又は硬化させることにより、形成することができる。アクリル系粘着剤の塗布に際しては、慣用のコーター(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0064】
粘着剤層の厚みは、例えば、2〜150μm(好ましくは5〜100μm)の範囲から選択することができる。
【0065】
なお、粘着剤層はアクリル系粘着剤中に架橋剤が用いられている場合、加熱による熱架橋等により架橋させて粘着剤層を形成することができる。熱架橋は、慣用の方法、例えば、架橋剤の種類に応じて、架橋反応が進行する温度にまで加熱する方法等により行うことができる。架橋後の粘着剤層の溶剤不溶分(アクリル系重合体の架橋体)としては、特に制限されないが、例えば、15〜70重量%程度であることが好ましい。また、この場合、架橋後の粘着剤層の溶剤可溶分の分子量(重量平均分子量、標準ポリスチレン換算)は、例えば、10万〜60万(好ましくは20万〜45万)程度である。溶剤可溶分の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。具体的には、分析装置として商品名「HLC−8120GPC」(TOSOH株式会社製)、カラムとして商品名「TSKgel GMH−H(S)×2(7.8mmI.D.×300mm、40℃)を用い、流量:0.5mL/分、検出器:RIの条件で測定する。
【0066】
架橋後の粘着剤層の溶剤不溶分の割合や、溶剤可溶分の分子量(重量平均分子量)は、例えば、アクリル系重合体を構成するモノマー成分全量に対する官能基含有モノマー成分の割合、連鎖移動剤の種類又はその割合、架橋剤の種類又はその割合などを適宜調整することにより、任意に設定することができる。
【0067】
[支持体]
本発明の粘着シート類では、支持体としては、基材や、剥離ライナーを好適に用いることができる。前述のように、支持体が基材である場合、粘着シート類は、基材付き粘着シート類であり、支持体が基材ではなく、剥離ライナーである場合、粘着シート類は、基材レス粘着シート類である。従って、基材付き粘着シート類における剥離ライナー[例えば、図1(a)〜(c)における剥離ライナー4など]は、支持体には含まれないが、基材レス粘着シート類における剥離ライナー[例えば、図1(e)や(f)における剥離ライナー4など]は、支持体に含まれる。このように、支持体としての剥離ライナーは、粘着剤層を支持しているとともに、粘着剤層の表面を保護することができる。
【0068】
支持体において、基材としては、例えば、ポリオレフィン製シート又はフィルム(ポリエチレン製シート又はフィルム、ポリプロピレン製シート又はフィルム、エチレン−プロピレン共重合体製シート又はフィルムなど)、ポリエステル製シート又はフィルム(ポリエチレンテレフタレート製シート又はフィルムなど)、塩化ビニル系樹脂製シート又はフィルム、酢酸ビニル系樹脂製シート又はフィルム、ポリイミド系樹脂製シート又はフィルム、ポリアミド系樹脂製シート又はフィルム、フッ素系樹脂製シート又はフィルム、セロハン類などのプラスチックシート又はフィルム類;和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙などの紙類;綿繊維、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維などの天然繊維、半合成繊維又は合成繊維の繊維状物質などからなる単独又は混紡などの織布や不織布等の布類;天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート類;ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム等からなる発泡体による発泡体シート類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体などが挙げられる。前記プラスチックシート又はフィルム類は、無延伸タイプ、延伸タイプ(1軸延伸タイプまたは2軸延伸タイプ)の何れであってもよい。基材は、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0069】
なお、基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤など)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。
【0070】
基材の表面(特に、ポリマー層側の表面)には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理、背面処理等の化学的処理などの適宜な公知乃至慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0071】
基材の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、一般には、10〜200μm(好ましくは20〜100μm)程度である。
【0072】
(剥離ライナー)
支持体において、剥離ライナーとしては、特に制限されず、公知の剥離ライナーから適宜選択して用いることができる。剥離ライナーとしては、剥離処理剤による剥離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材を好適に用いることができ、また、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材なども用いることができる。
【0073】
剥離ライナーの基材としては、プラスチックシート又はフィルム類が好適に用いられるが、支持体としての基材として例示の紙類、布類、ゴムシート類、発泡体シート類、金属箔なども用いることができる。前記剥離ライナーの基材のプラスチックシート又はフィルムとしては、特に制限されず、例えば、支持体としての基材として例示のプラスチックシート又はフィルム類から適宜選択することができる。
【0074】
また、剥離処理層を形成する剥離処理剤としては、公知乃至慣用の剥離処理剤(シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤など)を用いることができる。
【0075】
剥離ライナーにおける基材や剥離処理層の厚みなどは、特に制限されず、目的などに応じて適宜選択することができる。剥離ライナーの総厚みとしては、例えば、15μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは25〜500μmである。
【0076】
なお、基材レス粘着シート類における剥離ライナーは、支持体としての剥離ライナーとして例示の剥離ライナーから適宜選択することができる。粘着剤層の表面を保護する剥離ライナーと、支持体としての剥離ライナーとは、同一の構成を有する剥離ライナーであってもよく、異なる構成を有する剥離ライナーであってもよい。
【0077】
[粘着シート類]
本発明において、粘着シート類は、粘着剤層を有するシート状物の形態を有している又は有することができるシート状粘着性物を意味している。具体的には、粘着シート類には、粘着テープ、粘着シート、粘着フィルム、粘着ラベルなどが含まれる。
【0078】
なお、前記粘着シート類としては、粘着剤層を有していれば、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0079】
このような粘着シート類は、粘着シート類の種類に応じて、通常の粘着テープや粘着シート製造方法に従って製造することができる。具体的には、粘着シート類が基材付きタイプである場合、基材付きタイプの粘着シート類は、例えば、(1)基材の少なくとも一方の面(片面又は両面)に、アクリル系重合体組成物と、粘着付与剤とを含有するアクリル系粘着剤を、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗布し乾燥させて粘着剤層を形成することにより作製する方法、(2)セパレータ上に、アクリル系重合体組成物と、粘着付与剤とを含有するアクリル系粘着剤を、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗布し乾燥させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を、基材の少なくとも一方の面(片面又は両面)に、転写させることにより作製する方法などにより、作製することができる。
【0080】
一方、粘着シート類が基材レスタイプである場合、基材レスタイプの粘着シート類は、例えば、(1)剥離ライナーの少なくとも一方の剥離面(剥離処理層表面や、低接着性基材の表面など)上に、アクリル系重合体組成物と、粘着付与剤とを含有するアクリル系粘着剤を、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗布し乾燥させて粘着剤層を形成することにより作製する方法などにより、作製することができる。
【0081】
なお、図1(b)、(d)や(f)で示される粘着シート類では、粘着シート類の一方の側の粘着面(粘着剤層の表面)と、他方の側の剥離面(基材の背面処理層表面や、剥離ライナーの剥離処理層表面など)とを重ね合わせてロール状に巻回することにより、ロール状に巻回した形態の粘着シート類(粘着テープなど)を作製することができる。
【0082】
また、粘着剤層を形成する際に架橋を行う場合、架橋剤の種類(例えば、加熱により架橋する熱架橋タイプの架橋剤、紫外線照射により架橋する光架橋タイプの架橋剤など)に応じて、所定の製造過程で公知乃至慣用の架橋方法により架橋を行うことができる。例えば、用いられている架橋剤が熱架橋タイプの架橋剤である場合、アクリル系粘着剤を塗布した後、乾燥させる際に、この乾燥と並行して又は同時に、熱架橋反応を進行させて架橋を行うことができる。具体的には、熱架橋タイプの架橋剤の種類に応じて、架橋反応が進行する温度以上の温度に加熱することにより、乾燥とともに架橋を行うことができる。
【0083】
本発明の粘着シート類は、高い接着性を有し、且つフォギング現象の発生が低減化されているので、自動車内装材等の自動車用材料や、住宅建材等の住宅用材料などのような密閉系空間における用途で利用されても、人体への影響を低減させることができる。そのため、本発明の粘着シート類は、自動車用材料又は住宅用材料の固定の際に好適に用いることができる。なお、粘着シート類を自動車用材料の固定の際に用いる場合、例えば、自動車の天井材や、各種パネルなどを固定する際に好適に用いることができる。
【0084】
また、粘着シート類を自動車用材料の固定の際に用いる場合、粘着シート類(自動車内装材用途の粘着シート類)の粘着特性としては、23℃の環境下での接着力が10N/20mm以上であることが好ましく、さらに、70℃の環境下での接着力が5N/20mm以上であることが好適であり、さらにまた、40℃の環境下での保持力が2mm以下であることが好ましい。
【0085】
なお、粘着シート類の粘着力(23℃又は70℃)は、粘着シート類を、粒度280番の研磨紙で磨いたステンレス製板(SUS板)に、重さ2Kg重のゴムローラを1往復させる方法にて圧着し、23℃又は70℃の環境下で30分間放置後、引張試験機を用いて、23℃又は70℃の雰囲気中にて剥離に要する力(180°ピール、剥離速度300mm/分)を測定することにより求められる。
【0086】
粘着シート類の保持力(23℃)は、幅10mmに切断した粘着シート類を、フェノール樹脂製板に対し、10mm×20mmの接触面積で貼り付け、一晩放置後(12時間放置後)、さらに40℃の雰囲気下で30分間放置させた後、23℃の環境下で、フェノール樹脂製板を垂下し、粘着シート類の自由端に500gの均一荷重を負荷し、1時間放置後に、粘着シート類がずれた距離を測定することにより求められる。
【実施例】
【0087】
以下に、この発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」を、それぞれ意味する。
【0088】
(実施例1)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器(セパラブルフラスコ)を用い、重合開始剤として2,2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(商品名「VA−057」和光純薬工業株式会社製):0.1部と、イオン交換水:40部とを投入し、窒素ガスを導入しながら、1時間攪拌して、60℃に昇温させた。その後、アクリル酸ブチル:68部、アクリル酸2−エチルヘキシル:29部、アクリル酸:2.9部、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムを26重量%含有する水溶液(乳化剤):8部を、水24.3部に添加して乳化させたものを、前記反応容器に、60℃で攪拌させながら、4時間かけて滴下し、さらに3時間熟成を行った。重合後、10%のアンモニア水を添加して、pHを8に調整して、水分散型アクリル系重合体組成物を調製した。この水分散型アクリル系重合体組成物に、水分散型アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100部に対して、粘着付与剤として商品名「04−021」(荒川化学工業株式会社製;不均化ロジンエステル;分子量300以下の成分の割合:2.76重量%)を固形分換算で30部加えて攪拌して混合した後、さらに、増粘剤(商品名「アロン B−500」東亜合成株式会社製)を固形分換算で0.5部加えて攪拌して混合することにより、水分散型アクリル系粘着剤を得た。
【0089】
この水分散型アクリル系粘着剤を、シリコーン系剥離剤による剥離処理層を有する剥離ライナー(商品名「SLB−80WD(V2)」カイト化学工業株式会社製)の剥離処理層表面に塗工し、100℃で2分間乾燥して、厚さ60μmの粘着剤層を形成し、この粘着剤層を、坪量:14g/m2の不織布製基材(商品名「SP原紙−14」大福製紙株式会社製)の両面に貼り合わせて、粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0090】
(実施例2)
粘着付与剤として商品名「スーパーエステルE−720」(荒川化学工業株式会社製;安定化ロジンエステル;分子量300以下の成分の割合:3.92重量%)を水分散型アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100部に対して固形分換算で30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0091】
(実施例3)
粘着付与剤として商品名「04−039」(荒川化学工業株式会社製;重合ロジンエステル;分子量300以下の成分の割合:4.06重量%)を水分散型アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100部に対して固形分換算で30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0092】
(実施例4)
粘着付与剤として商品名「04−039」(荒川化学工業株式会社製;重合ロジンエステル;分子量300以下の成分の割合:4.06重量%)を水分散型アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100部に対して固形分換算で20部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0093】
(比較例1)
粘着付与剤として商品名「04−020」(荒川化学工業株式会社製;不均化ロジンエステル;分子量300以下の成分の割合:4.63重量%)を水分散型アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100部に対して固形分換算で30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0094】
(比較例2)
粘着付与剤として商品名「ナノレットR1050」(ヤスハラケミカル株式会社製;芳香族変性エステル;分子量300以下の成分の割合:7.00重量%)を水分散型アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100部に対して固形分換算で30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0095】
(比較例3)
粘着付与剤として商品名「スーパーエステルE−865」(荒川化学工業株式会社製;重合ロジンエステル;分子量300以下の成分の割合:7.12重量%)を水分散型アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100部に対して固形分換算で30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0096】
(比較例4)
粘着付与剤として商品名「ハリエスターSK−508H」(ハリマ化成株式会社製;重合ロジンエステル;分子量300以下の成分の割合:8.50重量%)を水分散型アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100部に対して固形分換算で30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0097】
(比較例5)
粘着付与剤として商品名「タマノルE−200」(荒川化学工業株式会社製;ロジンフェノール;分子量300以下の成分の割合:8.71重量%)を水分散型アクリル系重合体組成物中のアクリル系重合体:100部に対して固形分換算で30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0098】
(粘着付与剤について)
実施例及び比較例において用いられた粘着付与剤について、分子量300以下の成分の割合は、粘着付与剤中の粘着付与樹脂の分子量(重量平均分子量)を下記の方法により測定して求めた。
(分子量測定方法)
粘着付与剤をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて、粘着付与剤の1g/LのTHF溶液を調製し、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものを、GPC測定装置[TOSOH株式会社製の「HLC−8120GPC;カラム:TSKgel SuperHZ2000/HZ2000/HZ1000/HZ1000/HZ1000(60mmI.D.×150mm、40℃);流量:0.6mL/分;検出器:RI]にて測定し、ポリスチレン換算により分子量を算出する。
【0099】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各粘着シートについて、フォギング試験反射率(ドイツ工業規格DIN75201に従ったフォギング試験による反射率)、フォギング試験付着量(ドイツ工業規格DIN75201に従ったフォギング試験による付着量)、接着力、保持力を、下記の方法により測定又は評価した。その結果を表1に示す。
【0100】
(フォギング試験反射率の測定方法)
フォギング試験反射率は、ドイツ工業規格DIN75201−Rに従って実施する。具体的には、各粘着シートを、直径80mmの円形状に切断し、一方の側の剥離ライナー(剥離紙)のみを剥離させた状態で、100℃のオイルバスにより加熱されているビーカー(外径:90mm、内径83.6mm、高さ:190mm;高さが130mmの所まで、100℃のオイルバスに浸っている)の内部の底に、剥離ライナーの剥離により露出した粘着面が上側となる形態で静置し、さらに、ビーカーの上面に、常に21℃に冷却されているガラス板を設置する(フォギング測定器:装置名「N8−FOG」HAAKE社製)。その状態で、3時間放置した後、ガラス板を取り出し、ガラス板のビーカー内部側の表面について、入射角60°で入射光を入射させた際の反射率(「試験後のガラス板の60°入射反射率」と称する場合がある)(%)を、商品名「REFO 60 REFLEKTOMETER」(PRLANGE社製)を用いて求める[試験後のガラス板の60°入射反射率(%)=試験後のガラス板への入射光の強度/試験後のガラス板に入射光を入射させた際の反射光の強度×100]。なお、予め、試験を行う前のガラス板の表面についても、入射角60°で入射光を入射させた際の反射率(「試験前のガラス板の60°入射反射率」と称する場合がある)(%)を、前記と同様の装置を用いて求めておく[試験前のガラス板の60°入射反射率(%)=試験前のガラス板への入射光の強度/試験前のガラス板に入射光を入射させた際の反射光の強度×100]。そして、下記式(1)を用いて、フォギング試験反射率(%)を算出する。
フォギング試験反射率(%)=[試験後のガラス板の60°入射反射率(%)/試験前のガラス板の60°入射反射率(%)]×100 (1)
【0101】
(フォギング試験付着量の測定方法)
フォギング試験付着量は、ドイツ工業規格DIN75201−Wに従って実施する。具体的には、各粘着シートを、直径80mmの円形状に切断し、一方の側の剥離ライナー(剥離紙)のみを剥離させた状態で、100℃のオイルバスにより加熱されているビーカー(外径:90mm、内径83.6mm、高さ:190mm;高さが130mmの所まで、100℃のオイルバスに浸っている)の内部の底に、剥離ライナーの剥離により露出した粘着面が上側となる形態で静置し、さらに、ビーカーの上面に、常に21℃に冷却されているアルミニウム製シート(いわゆる「アルミホイル」)を設置する(フォギング測定器:装置名「N8−FOG」HAAKE社製)。その状態で、16時間放置した後、アルミニウム製シートを取り出し、その重量(試験後のアルミニウム製シートの重量)を測定する。なお、予め、試験を行う前のアルミニウム製シートの重量(試験前のアルミニウム製シートの重量)も測定しておく。そして、下記式(2)を用いて、フォギング試験付着量(mg)を算出する。
フォギング試験付着量(mg)=(試験後のアルミニウム製シートの重量)−(試験前のアルミニウム製シートの重量) (2)
【0102】
(接着力の測定方法)
各粘着シートを、一方の側の剥離ライナーを剥がして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製基材に貼り付け、幅20mm、長さ100mmのサイズに切断し、その後、他方の側の剥離ライナーを剥がして、粒度280番の研磨紙で磨いたステンレス(SUS)製板に、重さ2Kg重のゴムローラーを1往復させる方法にて圧着し、23℃又は70℃の環境下で30分間放置後、引張試験機を用いて、23℃又は70℃の雰囲気中にて剥離に要する力(180°ピール、剥離速度300mm/分)を測定する。
【0103】
(保持力の測定方法)
各粘着シートを一方の側の剥離ライナーを剥がして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製基材に貼り付け、幅10mmのサイズに切断し、その後、他方の側の剥離ライナーを剥がして、フェノール樹脂製板に対し10mm×20mmの接触面積で貼り付け、一晩放置後(12時間放置後)、さらに40℃の雰囲気下で30分間放置させた後、23℃の環境下で、フェノール樹脂製板を垂下し、粘着シート類の自由端に500gの均一荷重を負荷し、1時間放置後に、粘着シート類がずれた距離を測定し、この距離を保持力とする。従って、保持力は、数値(ずれた距離)が小さいほど良好である。
【0104】
【表1】

【0105】
表1より、実施例1〜4に係る粘着シートは、粘着剤層が、アクリル系重合体および粘着付与樹脂を含有するアクリル系粘着剤により形成されているとともに、フォギング試験反射率が70%以上であり、且つフォギング試験付着量が2.0mg以下であるので、優れた粘着力および保持力を有しているとともに、フォギング現象の発生が低減化させているといえる。
【符号の説明】
【0106】
11〜16 それぞれ、粘着シート類
2 基材
3 粘着剤層
4 剥離ライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合体を主成分として含むアクリル系重合体組成物と、粘着付与樹脂を主成分として含む粘着付与剤と、架橋剤とを含有するアクリル系粘着剤による粘着剤層を、少なくとも有している、粘着テープ、粘着シート、粘着フィルム及び粘着ラベルからなる群より選ばれたいずれか一つである粘着シート類であって、
前記粘着付与樹脂において、分子量が300以下の成分の割合が、粘着付与樹脂の固形分全量に対して4.2重量%以下であり、
前記粘着付与樹脂の割合が、前記アクリル系重合体:100重量部に対して、10〜100重量部であり、
前記粘着剤層の溶剤不溶分が15〜70重量%であり、
ドイツ工業規格DIN75201に従ったフォギング試験における反射率および付着量が、それぞれ、70%以上、2.0mg以下であることを特徴とする粘着シート類。
【請求項2】
粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤において、分子量が300以下の成分の割合が、アクリル系粘着剤中の固形分全量に対して4.2重量%以下である請求項1記載の粘着シート類。
【請求項3】
アクリル系重合体組成物が、アクリル系重合体が水に分散された形態で含まれている水分散型アクリル系重合体組成物であり、且つ粘着付与剤が、粘着付与樹脂が水に分散された形態で含まれている水分散型粘着付与剤である請求項1又は2記載の粘着シート類。
【請求項4】
水分散型粘着付与剤において、分子量が300以下の成分の割合が、水分散型粘着付与剤中の粘着付与樹脂および乳化剤の総量としての固形分全量に対して4.2重量%以下である請求項3記載の粘着シート類。
【請求項5】
粘着付与樹脂が、ロジン系粘着付与樹脂である請求項1〜4の何れか1項に記載の粘着シート類。
【請求項6】
自動車用材料又は住宅用材料の固定の際に用いられる請求項1〜5の何れか1項に記載の粘着シート類。

【図1】
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【公開番号】特開2012−31420(P2012−31420A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210300(P2011−210300)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【分割の表示】特願2004−345286(P2004−345286)の分割
【原出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】