説明

粘着シート

【課題】粘着シートをスクリーン印刷版に貼り付けて剥がす際に、粘着剤層がスクリーン印刷版に付着することを無くすことができる。
【解決手段】低密度ポリエチレンなど熱可塑性樹脂の基材2上に粘着剤層3が積層され、粘着剤層3がフィルム状の基材2上への押出ラミネートにより形成されるか、若しくは粘着剤層3が基材2との共押出成形により形成されている粘着シート1であり、粘着剤層3を、例えばケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、若しくはケン化エチレン酢酸ビニル共重合体とエチレン酢酸ビニル共重合体との組成物で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスクリーン印刷版の開口に目詰まりしたり裏回りして付着する印刷ペーストを除去する粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン印刷版の開口に目詰まりする印刷ペーストや裏回りして付着する印刷ペーストを除去する粘着シートが知られており、斯様な粘着シートの公知技術文献として特許文献1〜4がある。
【0003】
特許文献1には、基材と、基材の片面に塗布して形成されたアクリル系粘着剤などの粘着剤層とで構成され、使用前の粘着力を1〜400gf/25mm、スクリーン印刷インキ用溶剤に1秒間浸漬した時の粘着剤層の該溶剤吸収量を5g/m以上、該溶剤を5g/m吸収した後の粘着力を1gf/25mm以上とする粘着シートが開示されている。
【0004】
特許文献2には、基材と、基材の片面に塗布して形成された粘着剤層とで構成され、粘着剤層が平均粒径0.01〜10μmの微粒子を含有し、粘着力を4N/25mm以下とする粘着シートが開示されている。
【0005】
特許文献3には、基材と、基材の一方の片面に塗布して形成された粘着剤層とで構成され、基材の他方の片面が背面処理剤で背面処理された剥離面になっており、剥離面に対する粘着剤層の粘着力における最大平均値と最小平均値との差が1.0N/50mm以下である粘着シートが開示されている。
【0006】
特許文献4には、基材と、基材の一方の片面に塗布して形成された粘着剤層とで構成され、基材の他方の片面が背面処理剤で背面処理された剥離面になっており、剥離面に粘着剤層が重ね合わせられてプラスチック製の巻芯にロール状に巻回されている粘着シートが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−177110号公報
【特許文献2】特開2001−199053号公報
【特許文献3】特開2003−311219号公報
【特許文献4】特開2003−311934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1〜4の粘着シートの粘着剤層は基材に塗工して形成されたものであるが、基材に塗工された粘着剤層は基材と粘着剤層との固着力に弱さやバラツキが生ずるため、粘着シートをスクリーン印刷版に貼り付けて剥がす際に、粘着剤層が部分的にスクリーン印刷版に付着して残ってしまうという問題がある。斯様な粘着剤層の残存は却ってスクリーン印刷版の汚れを増大してしまう。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、基材と粘着剤層との固着力がバラツキ無く強く安定しており、粘着シートを貼り付けて剥がす際に粘着剤層が付着することが無い粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の粘着シートは、熱可塑性樹脂の基材上に粘着剤層が積層され、該粘着剤層がフィルム状の基材上への押出ラミネート成形により形成、若しくは該粘着剤層が基材との共押出成形により形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の粘着シートは、熱可塑性樹脂の基材上にアンカー層と粘着剤層が順に積層され、該粘着剤層がフィルム状の基材に形成されたアンカー層上に押出ラミネート成形により形成され、若しくは該粘着剤層が基材とアンカー層との共押出成形により形成されていることを特徴とする。
【0012】
そして、本発明の粘着シートに於いて、その粘着剤層には、スクリーン印刷版に付着した印刷ペースト等の汚れを除去できるなど適度な粘着力を有する適宜の素材を用いることが可能であり、例えばケン化エチレン酢酸ビニル共重合体などエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、若しくはケン化エチレン酢酸ビニル共重合体などエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)とエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)との組成物、若しくはケン化アルキル(メタ)アクリレート、若しくはケン化アルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートとの組成物とすると好適である。更に、基材上に直接粘着剤層を積層する場合には、基材の素材と接着力が良好な素材を用いる。
【0013】
また、基材の熱可塑性樹脂は、適宜の熱可塑性樹脂とすることが可能であり、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、エチレンアクリル酸エステル共重合体(EEA)、若しくはエチレンビニルアセテート(EVA)等を用いることができる。好適には押出成形温度が170℃〜240℃程度、より好適には180℃〜230℃程度の熱可塑性樹脂とするとよく、また、剛性は、JISK7215による曲げ弾性率が110〜600MPaの柔軟性熱可塑性樹脂とすると操作性に好適である。
【0014】
また、アンカー層は、基材及び粘着剤層との接着性が良好な適宜の素材を用いることが可能であり、基材の素材と粘着剤層の素材に合わせて適宜の素材を用いる。例えば基材をポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレートとし、粘着剤層をケン化エチレン酢酸ビニル共重合体とエチレン酢酸ビニル共重合体との組成物若しくはケン化エチレン酢酸ビニル共重合体とする場合に、アンカー層として例えばアドマー(三井化学製)、モディック(三菱化学製)などのエチレン無水マレイン酸の変性物等を用いることが可能である。
【0015】
また、粘着テープの離型機能に関し、基材を例えばポリエチレンなど基材自体を離型機能を有する樹脂で構成する他に、基材の粘着剤層を設ける側と反対側の片面に離型機能を有する樹脂で独立した離型層を押出ラミネート等により形成してもよい。離型層は例えばポリエチレンなど離型機能を有する適宜の素材で構成することが可能である。
【0016】
尚、本発明の粘着シートは、スクリーン印刷版に貼り付けて印刷ペーストを除去する場合に用いると好適であるが、その他の用途に利用することも可能であり、例えばアクリル板・ポリカーボネート板・LCD用偏光板などの被着板に貼り付け、切断・打抜き・工程内搬送・出荷輸送時などの表面保護に利用すると、安定した保護機能を発揮することができる。更に、表面保護に利用した後、スクリーン印刷版に貼り付けて印刷ペーストを除去することに再利用することもできる。また、本願の発明には、各発明の部分的な構成を他の構成に変更し、或いは各発明の構成に他の構成を付加し、或いは各発明の部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化したものも含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粘着シートは、基材と粘着剤層との固着力がバラツキ無く強く安定していることから、粘着シートを貼り付けて剥がす際に粘着剤層が付着することが無い。従って、例えば粘着シートをスクリーン印刷版に貼って剥がすことにより、スクリーン印刷版の汚れを確実に除去することができる。また、アクリル板・ポリカーボネート板・LCD用偏光板などの被着板に貼り付けて保護フィルムとして用いた場合に、安定した保護機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の粘着シートについて実施形態に基づき説明する。
【0019】
先ず、第1実施形態の粘着シート1は、図1に示すように、熱可塑性樹脂の基材2上に粘着剤層3を積層して形成されており、基材2を構成する熱可塑性樹脂は例えば低密度ポリエチレン、粘着剤層3を構成する素材は例えばケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、若しくはケン化エチレン酢酸ビニル共重合体とエチレン酢酸ビニル共重合体との組成物である。基材2に積層される粘着剤層3は、粘着剤層3がフィルム状の基材2上への押出ラミネートにより形成されるか、若しくは粘着剤層3を基材2と共に共押出成形することにより形成され、形成された積層フィルムは冷却ロールで冷却される。
【0020】
粘着剤層3を基材2上へ押出ラミネートで形成する場合の具体例としては、例えば膜厚25μm〜50μmの低密度ポリエチレンのフィルム(基材2)に、幅90cmのTダイのダイス温度を180℃として、ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、若しくはケン化エチレン酢酸ビニル共重合体とエチレン酢酸ビニル共重合体との組成物を押出し、膜厚20μm〜50μmの前記共重合体(粘着剤層3)を押出ラミネートする。
【0021】
前記基材2の低密度ポリエチレンには、例えばカーネルKF283(三菱化学製、密度:0.92、MI:2.0g/10min)等を用いる。前記ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体には、例えば酢酸ビニルの含有重量%が28重量%、エチレンの含有重量%が72重量%、ケン化率80%、MI:5.5g/10minのケン化エチレン酢酸ビニル共重合体や、或いは酢酸ビニルの含有重量%が35重量%、エチレンの含有重量%が65重量%、ケン化率80%、MI:10g/10minのケン化エチレン酢酸ビニル共重合体等を用いる。前記ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体とエチレン酢酸ビニル共重合体との組成物には、例えば酢酸ビニルの含有重量%が28重量%、エチレンの含有重量%が72重量%、ケン化率80%、MI:5.5g/10minのケン化エチレン酢酸ビニル共重合体を60重量部、酢酸ビニルの含有重量%が28重量%、エチレンの含有重量%が72重量%、MI:8.5g/10minのエチレン酢酸ビニル共重合体を40重量部とする組成物や、或いは酢酸ビニルの含有重量%が35重量%、エチレンの含有重量%が65重量%、ケン化率80%、MI:10g/10minのケン化エチレン酢酸ビニル共重合体を60重量部、酢酸ビニルの含有重量%が35重量%、エチレンの含有重量%が65重量%、MI:10g/10minのエチレン酢酸ビニル共重合体を40重量部とする組成物等が挙げられる。
【0022】
また、粘着剤層3と基材2と共に共押出成形で形成する場合の具体例としては、例えば幅90cmのTダイのダイス温度を190℃として、基材2を構成するカーネルKF283等の低密度ポリエチレン(PE)と、粘着剤層3を構成する上記物性のケン化エチレン酢酸ビニル共重合体(80重量部、EVOH)とエチレン酢酸ビニル共重合体(20重量部、EVA)との組成物とを共押出成形し、膜厚30μmの低密度ポリエチレン(基材2)と膜厚25μmの前記組成物(粘着剤層3)とを積層形成する。尚、前記共押出成形で形成した例の詳細な成形条件データを表1に示す。表1に於いて、シリンダ(1)〜(4)は温度制御区分であり、ホッパー側から順に(1)、(2)、(3)、(4)としている。
【0023】
【表1】

【0024】
次に、第2実施形態の粘着シート1について説明する。第2実施形態の粘着シート1は、図2に示すように、熱可塑性樹脂の基材2上にアンカー層4と粘着剤層3を順に積層して形成されており、基材2を構成する熱可塑性樹脂は例えば延伸のポリプロピレンフィルム(東洋紡製パイレンフィルムーOT等)或いはポリエチレンテレフタレート(PET)等、アンカー層4を構成する素材は例えばアドマー(三井化学製)若しくはモディック(三菱化学製)などのエチレン無水マレイン酸の変性物、粘着剤層3を構成する素材は例えば第1実施形態と同様のケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、若しくはケン化エチレン酢酸ビニル共重合体とエチレン酢酸ビニル共重合体との組成物である。
【0025】
第2実施形態の粘着シート1は、予め成膜されたフィルム状の基材2にグラビア印刷によりアンカー層4を形成し、そのアンカー層4の上に押出ラミネートにより粘着剤層3を押し出して形成するか、或いは基材2、アンカー層4、粘着剤層3の3層を共押出成形することにより形成する。
【0026】
上記アンカー層4をグラビア印刷で形成して粘着剤層3を押出ラミネートで形成する場合の具体例としては、例えば膜厚16μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を基材2とし、その上にグラビア印刷でアンカー剤のアドマーQF500を膜厚2μmでミクロンコートしてアンカー層4を形成する。更に、例えば酢酸ビニルの含有重量%が35重量%、エチレンの含有重量%が65重量%、ケン化率80%、MI:10g/10minのケン化エチレン酢酸ビニル共重合体を90重量部、酢酸ビニルの含有重量%が35重量%、エチレンの含有重量%が65重量%、MI:10g/10minのエチレン酢酸ビニル共重合体を10重量部とを混合した組成物を押し出し、膜厚30μmの前記共重合体(粘着剤層3)を押出ラミネートする。尚、前記押出ラミネートで形成した例の詳細な成形条件データを表2に示す。シリンダ(1)〜(4)は上記と同様、シリンダの温度制御区分である。
【0027】
【表2】

【0028】
また、上記基材2、アンカー層4、粘着剤層3の3層を共押出成形して形成する場合の具体例としては、例えばTダイのダイス温度を200℃として、基材2を構成するポリプロピレン(三井化学製F−327)と、アンカー層4を構成するアンカー剤のアドマーQF500と、粘着剤層3を構成する酢酸ビニルの含有重量%が28重量%、エチレンの含有重量%が72重量%、ケン化率80%、MI:5.5g/10minのケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、又は、酢酸ビニルの含有重量%が35重量%、エチレンの含有重量%が65重量%、ケン化率80%、MI:10g/10minのケン化エチレン酢酸ビニル共重合体とを共押出成形し、膜厚10μmのポリプロピレン(基材2)と膜厚10μmのアンカー層4と膜厚25μmの前記共重合体(粘着剤層3)とを積層形成する。尚、前記共押出成形で形成した例の詳細な成形条件データを表3に示す。シリンダ(1)〜(4)は上記と同様、シリンダの温度制御区分である。
【0029】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の粘着シートは、例えばスクリーン印刷版に付着した印刷ペースト等を除去するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態の粘着シートの縦断面図。
【図2】第2実施形態の粘着シートの縦断面図。
【符号の説明】
【0032】
1 粘着シート
2 基材
3 粘着剤層
4 アンカー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の基材上に粘着剤層が積層され、該粘着剤層がフィルム状の基材上への押出ラミネート成形により形成、若しくは該粘着剤層が基材との共押出成形により形成されていることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
熱可塑性樹脂の基材上にアンカー層と粘着剤層が順に積層され、該粘着剤層がフィルム状の基材に形成されたアンカー層上に押出ラミネート成形により形成され、若しくは該粘着剤層が基材とアンカー層との共押出成形により形成されていることを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層が、エチレンビニルアルコール共重合体、若しくはエチレンビニルアルコール共重合体とエチレン酢酸ビニル共重合体との組成物、若しくはケン化アルキル(メタ)アクリレート、若しくは若しくはケン化アルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートとの組成物であることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−106812(P2007−106812A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297135(P2005−297135)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(502038989)ベスパック株式会社 (19)
【Fターム(参考)】