説明

粘着テープ又はシートの製造方法

【課題】 製造直後からの経時的粘着力の変化を少なくした粘着テープ又はシートの製造方法を提供する。
【解決手段】 一分子内に結合している加水分解性シリル基の数の異なる加水分解性シリル基含有ポリマー(a)と加水分解性シリル基含有ポリマー(b)を準備する。ポリマー(a):ポリマー(b)=90:10〜45:55(質量比)の割合で配合させて硬化性樹脂組成物を得る。硬化性樹脂組成物100質量部に対して、粘着付与樹脂10〜150質量部と、三フッ化ホウ素及び/又はその錯体等のフッ素系化合物0.001〜10質量部とを均一に混合して粘着剤前駆体を得る。この粘着剤前駆体をテープ基材又はシート基材等の担持体表面に塗布した後、ポリマー(a)及び(b)を硬化させて粘着テープ又はシートを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ又はシートの製造方法に関し、特に、電子機器や電気機器等を組み立てる際に使用するのに適した粘着テープ又はシートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器や電気機器等を組み立てる際に、各種部品を固定するために粘着テープ又はシートが用いられている。この粘着テープ又はシートは、組み立てた後の電子機器等の内部に残存しているため、耐熱性が要求されることになる。ここで、粘着テープ又はシートの耐熱性とは、以下のような意味を持つものである。すなわち、電子機器等は使用中に高温となるため、粘着テープ又はシートは何度も高温下に暴露されることになるが、この暴露によって粘着テープ又はシートの粘着剤層が劣化しにくく、粘着力が低下しにくいことを意味する。したがって、耐熱性の良好な粘着テープ又はシートとは、電子機器等を長期間使用しても、粘着力が低下しにくく、その結果、固定した部品が外れにくいものを意味している。
【0003】
耐熱性の良好な粘着テープ又はシートを得るためには、粘着剤層として、高温下に何度暴露されても、劣化しにくいものを採用する必要がある。すなわち、耐熱性の良好な粘着剤層を採用する必要がある。このような粘着剤層としては、従来より、アクリル系樹脂よりなる粘着剤層が用いられている。
【0004】
しかるに、近年、粘着剤層として加水分解性シリル基含有ポリマーを使用したものが提案されている(特許文献1及び2)。加水分解性シリル基含有ポリマーとは、分子内に加水分解性シリル基が結合されてなるポリマーであり、硬化させることにより、三次元網目構造となるものである。この硬化物が粘着付与樹脂と共働して優れた粘着力を発揮するため、近年、粘着剤層としての使用が提案されている。
【0005】
しかしながら、加水分解性シリル基含有ポリマーを硬化させてなる粘着剤層は、耐熱性に劣るという欠点があった。本件発明者等は、この欠点を解決するために、加水分解性シリル基含有ポリマーとして特定構造のものを採用し、さらにシリル基含有ポリマーの硬化触媒として従来使用されているスズ化合物やチタン化合物と異なり特定のフッ素系化合物を混入させたものが耐熱性に優れていることを見出し、先に出願を行っている(特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】再公表特許WO2005/73333公報
【特許文献2】特開昭59−71377号公報
【特許文献3】PCT/JP2009/66884の明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特許文献3に係る発明の改良発明であって、加水分解性シリル基含有ポリマーとして特定の二種のポリマーを混合して使用することにより、粘着テープ又はシートの製造直後からの経時的粘着力の変化を少なくすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される加水分解性シリル基含有ポリマー(a)と下記一般式(2)で表される加水分解性シリル基含有ポリマー(b)とが、該ポリマー(a):該ポリマー(b)=90:10〜45:55(質量比)の割合で含有されてなる硬化性樹脂組成物100質量部に対して、粘着付与樹脂10〜150質量部と、三フッ化ホウ素及び/又はその錯体、フッ素化剤及びフッ素系無機酸のアルカリ金属塩よりなる群から選ばれたフッ素系化合物0.001〜10質量部とを均一に混合した粘着剤前駆体を、担持体表面に塗布した後、該シリル基含有ポリマー(a)及び(b)を硬化させることにより、該粘着剤前駆体を粘着剤層とすることを特徴とする粘着テープ又はシートの製造方法に関するものである。
【化1】

(式中、Aはポリマー残基を表し、Bはウレタン結合及び/又は尿素結合を持つ基を表し、Xはヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは0,1又は2である。aは平均2以上である。)
【化2】

(式中、A,B,X,R及びnは一般式(1)の場合と同様の意味である。bは平均1である。)
【0009】
まず、本発明で用いる加水分解性シリル基含有ポリマー(a)及び(b)について説明する。加水分解性シリル基含有ポリマー(a)と(b)との相違は、ポリマー残基であるA−に結合している、ウレタン結合及び/又は尿素結合を持つ基−B−と加水分解性シリル基
【化3】

の数である。すなわち、シリル基含有ポリマー(a)は、ウレタン結合及び/又は尿素結合を持つ基と加水分解性シリル基の数が平均して2以上であるのに対して、シリル基含有ポリマー(b)は、この数が平均して1となっている。なお、この数は小数点以下を丸めたものである。そして、この二種のシリル基含有ポリマー(a)及び(b)を混合使用することによって、粘着力の経時的変化を少なくしうるのである。
【0010】
シリル基含有ポリマー(a)及び(b)のその余の構成は、同様になっている。ポリマー残基A−としては、従来公知の有機重合体の主鎖骨格を用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等の一般的に用いられているポリマー残基が採用されるが、ポリオキシプロピレンやポリオキシエチレンの如きポリオキシアルキレンを主体とする残基であるのが好ましい。ポリマー残基がポリオキシアルキレンを主体とするものであると、得られる粘着剤層に適度な柔らかさを発現しやすくなるからである。
【0011】
ウレタン結合及び/又は尿素結合を持つ基−B−としては、たとえば、以下のようなものが用いられる。なお、下記構造式中、R1は各々炭素数1〜20のアルキル基を表している。また、下記構造式のウレタン結合及び/又は尿素結合における活性水素は、有機基で置換されていてもよい。したがって、アロファネート結合もウレタン結合の範疇に属するし、ビュレット結合も尿素結合の範疇に属する。
【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
【化7】

【0016】
【化8】

【0017】
【化9】

【0018】
Xは加水分解性基であってヒドロキシ基又はアルコキシ基である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられるが、硬化速度の速いメトキシ基を用いるのが好ましい。Rは炭素数1〜20のアルキル基であるが、一般的にはメチル基,エチル基又はプロピル基であるのが好ましい。nは0,1又は2であるが、一般的には0又は1であるのが好ましく、特に1であるのが最も好ましい。すなわち、二つの加水分解性基を持っていることが特に好ましい。nが2のものは珪素基上に一つの加水分解性基しか持っていないため、硬化速度が遅い上に硬化後における三次元網目構造が不十分となり、粘着剤層が軟らかくなり過ぎる傾向がある。nが0のものは珪素基上に三つの加水分解性基を持っているため、硬化速度は速いが、nが1のものに比べて、硬化後における三次元網目構造が緻密になって粘着剤層が硬くなり、タックが弱くなる傾向がある。また、このことから分かるように、粘着剤層に所望の硬さや柔らかさを実現するには、nが0、1又は2のものを所定割合で混合して調整すればよい。
【0019】
シリル基含有ポリマー(a)及び(b)は、従来公知の方法で合成すればよい。たとえば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物(あるいはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物)を反応させる方法や、水酸基末端有機重合体にイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が挙げられる。かかる方法は、特許第3317353号公報、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特表2004−518801号公報、特表2004−536957号公報及び特表2005−501146号公報等に記載されている。
【0020】
シリル基含有ポリマー(a)と(b)の配合割合は質量比で、90:10〜45:55の範囲内であり、好ましくは85:15〜45:55、特に好ましくは80:20〜50:50の範囲内である。この配合割合で、シリル基含有ポリマー(a)と(b)とを混合して硬化性樹脂組成物を得る。シリル基含有ポリマー(b)の配合量が10質量部未満であると、経時的に三次元網目構造の発達の変化が大きくなり過ぎ、粘着力の経時的変化が大きくなるので、好ましくない。シリル基含有ポリマー(b)の配合量が55質量部を超えると、三次元網目構造が不十分となり、粘着剤層が柔らかくなり過ぎ、粘着後にずれが生じやすくなる(保持力が悪くなる)ので、好ましくない。硬化性樹脂組成物中には、シリル基含有ポリマー(a)及び(b)の他に、一般式(1)及び(2)以外の加水分解性シリル基含有ポリマーが混合されていてもよい。たとえば、特許文献1及び2に記載されているウレタン結合及び/又は尿素結合が導入されていない加水分解性シリル基含有ポリマーが含有されていてもよい。
【0021】
本発明で用いる粘着付与樹脂としては、粘着剤を得る際に用いられる公知の粘着付与樹脂が用いられる。たとえば、ロジン、重合ロジン、水添ロジン、ロジンエステル等のロジン系樹脂;テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、ロジンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;脂肪族石油樹脂;芳香族系石油樹脂;芳香族系水添石油樹脂、ジシクロペンタジエン系水添石油樹脂、脂肪族系水添石油樹脂等の各種水添石油樹脂;クマロンインデン樹脂;スチレン系樹脂;マレイン酸系樹脂;アルキルフェノール樹脂;キシレン樹脂等を用いることができる。特に、本発明においては、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂を用いるのが好ましい。
【0022】
本発明で用いるフッ素系化合物としては、三フッ化ホウ素及び/又はその錯体、フッ素化剤又はフッ素系無機酸のアルカリ金属塩を単独で又は混合して用いることができる。これらのフッ素系化合物を粘着剤前駆体中に、シリル基含有ポリマー(a)及び(b)と共存させておくと、触媒的作用によって三次元網目構造を持つ粘着剤層を速やかに形成させることができると共に、粘着剤層の耐熱性を向上させることができる。なお、これらのフッ素系化合物は、粘着剤層中に当初の構造の状態で又は当初の構造が変性された状態で、残存する。
【0023】
フッ素系化合物を用いた場合、粘着剤層の耐熱性が向上するのは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、加水分解性シリル基含有ポリマーの硬化触媒として用いられている従来のスズ系又はチタン系化合物は、硬化触媒として働くのみならず、硬化後の粘着剤層の劣化触媒としても働くためである。すなわち、スズ系又はチタン系化合物を、シリル基含有ポリマー(a)及び(b)の硬化触媒として用いると、粘着剤中に残存しているスズ系又はチタン系化合物がシリル基含有ポリマー(a)及び(b)のウレタン結合及び/又は尿素結合を加水分解する。これに対して、フッ素系化合物はウレタン結合及び/又は尿素結合を加水分解しにくいため、粘着剤層の耐熱性が向上すると考えられる。なお、分子内にウレタン結合及び/又は尿素結合を持たない加水分解性シリル基含有ポリマーにおいても、従来のスズ系又はチタン系化合物を触媒として用いると、耐熱性が劣る傾向が見られ、加水分解性シリル基含有ポリマー系で耐熱性に優れた粘着剤層を形成し得なかった。なお、従来公知のアミン系化合物よりなる硬化触媒は、ウレタン結合及び/又は尿素結合を加水分解しにくいが、硬化触媒としての機能が不十分で、粘着剤層の形成に長時間を要する。
【0024】
三フッ化ホウ素(BF3)は常温で気体であり、取り扱いに注意を要するが、本発明で使用することができる。三フッ化ホウ素の錯体は、取り扱いが容易であるため、本発明で用いるのにより適している。三フッ化ホウ素の錯体としては、アミン錯体、アルコール錯体、エーテル錯体、チオール錯体、スルフィド錯体、カルボン酸錯体、水錯体等が用いられる。三フッ化ホウ素の錯体の中では、安定性に優れ且つ触媒的作用に優れたアミン錯体を用いるのが、特に好ましい。
【0025】
三フッ化ホウ素のアミン錯体に用いられるアミン化合物としては、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グアニジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、N−メチル−3,3′−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、CTUグアナミン、ドデカン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、トリジンベース、m−トルイレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、メラミン、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、サンテクノケミカル社製ジェファーミン等の複数の第一級アミノ基を有する化合物、ピペラジン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、シス−2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、N,N′−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、4−アミノプロピルアニリン、ホモピペラジン、N,N′−ジフェニルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素、N−メチル−1,3−プロパンジアミン等の複数の第二級アミノ基を有する化合物、更に、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、3−アミノピロリジン、1−o−トリルビグアニド、2−アミノメチルピペラジン、N−アミノプロピルアニリン、エチルアミンエチルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、式 H2N(C24NH)nH(n≒5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー社製)、N−アルキルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、N−アルキルピペリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の複環状第三級アミン化合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−3−[アミノ(ジプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物が用いられる。また、三フッ化ホウ素のアミン錯体は市販されており、本発明ではそれらを用いることもできる。市販品としては、エアプロダクツジャパン株式会社製のアンカー1040、アンカー1115、アンカー1170、アンカー1222、BAK1171等が用いられる。
【0026】
フッ素化剤としては、フッ素アニオンを活性種とする求核的フッ素化剤と、電子欠乏性のフッ素原子を活性種とする求電子的フッ素化剤の二種が存在するが、本発明においては、いずれのフッ素化剤も用いることができる。求核的フッ素化剤としては、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパン等の1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジアルキルアミノプロパン系化合物、トリエチルアミントリスヒドロフルオライド等のトリアルキルアミントリスヒドロフルオライド系化合物、ジエチルアミノサルファートリフルオライド等のジアルキルアミノサルファートリフルオライド系化合物等が用いられる。求電子的フッ素化剤としては、ビス(テトラフルオロホウ酸)N,N’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウム塩化合物、トリフルオロメタンスルホン酸N−フルオロピリジニウム塩化合物等のN−フルオロピリジニウム塩系化合物;ビス(テトラフルオロホウ酸)4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩等の4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン系化合物;N−フルオロビス(フェニルスルホニル)アミン等のN−フルオロビス(スルホニル)アミン系化合物等が用いられる。上記したフッ素化剤の中でも、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−ジエチルアミノプロパン系化合物が液状化合物である上、入手が容易なため特に好ましい。
【0027】
フッ素系無機酸のアルカリ金属塩としては、ヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム、ヘキサフルオロアンチモン酸カリウム、ヘキサフルオロヒ酸ナトリウム、ヘキサフルオロヒ酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、ペンタフルオロヒドロキソアンチモン酸ナトリウム、ペンタフルオロヒドロキソアンチモン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ホウ酸ナトリウム、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸カリウム、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸カリウム等が用いられる。これらの中でも、フッ素性無機酸としては、テトラフルオロホウ酸又はヘキサフルオロリン酸を用いるのが好ましい。また、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムであるのが好ましい。
【0028】
シリル基含有ポリマー(a)及び(b)を含有する硬化性樹脂組成物と、粘着付与樹脂と、フッ素系化合物とを均一に混合して、粘着剤前駆体を得る。一般的に、粘着剤前駆体は、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂とを均一に混合して混合物を得た後に、フッ素系化合物を添加混合し、攪拌して全体を均一に混合して得るのが好ましい。すなわち、フッ素系化合物を最後に添加混合して粘着剤前駆体を得るのが好ましい。なお、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂とを均一に混合する場合、塗布に適した粘度を得る等の粘度調整のために、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。また、硬化性樹脂組成物組成物と粘着付与樹脂の相溶性が良好な場合には、有機溶剤を使用しなくてもよい。
【0029】
粘着付与樹脂は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、10〜150質量部配合される。粘着付与樹脂の配合量が10質量部未満になると、粘着剤層の粘着力が低下するので好ましくない。また、粘着付与樹脂の配合量が150質量部を超えると、粘着剤層が硬くなり粘着力が低下するので好ましくない。また、フッ素系化合物は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.001〜10質量部配合される。フッ素系化合物の配合量が0.001質量部未満であると、触媒的作用が不十分となり、三次元網目構造を持つ粘着剤層を形成しにくくなると共に、粘着剤層の耐熱性を向上させにくくなるので、好ましくない。また、フッ素系化合物の配合量が10質量部を超えると、触媒的作用が過剰となり、粘着剤前駆体を得る際に硬化する恐れがあるので、好ましくない。
【0030】
粘着剤前駆体には、その他に以下のような化合物乃至物質を添加混合しておいてもよい。たとえば、シランカップリング剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、無水シリカ、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、イソパラフィン等の希釈剤、水酸化アルミニウム、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等の難燃剤、シリコーンアルコキシオリゴマー,アクリルオリゴマー等の機能性オリゴマー、顔料、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケート等のシリケート化合物及びそのオリゴマー、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油等を添加混合しておいてもよい。
【0031】
任意の添加剤であるシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、(アミノメチル)トリメトキシシラン、(アミノメチル)メチルジメトキシシラン、(アミノメチル)トリエトキシシラン、(アミノメチル)メチルジエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルメチルジメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン等が用いられる。
【0032】
任意の添加剤である老化防止剤としては、ラジカル連鎖開始阻止剤(ヒドラジド系、アミド系等)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等)、クエンチャー(有機ニッケル系等)、ラジカル捕捉剤としてHALS(ヒンダードアミン系等)、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、セミヒンダードフェノール系等)、過酸化物分解剤としてリン系酸化防止剤(ホスファイト系、ホスホナイト系等)、イオウ系酸化防止剤(チオエーテル系等)等が用いられる。市販品の老化防止剤としては、旭電化工業社製のアデカスタブシリーズ;クラリアントジャパン社製のホスタノックスシリーズ、ホスタビンシリーズ、サンデュボアシリーズ、ホスタスタットシリーズ;三共ライフテック社製のサノールシリーズ;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のチヌビンシリーズ、イルガフォスシリーズ、イルガノックスシリーズ、キマソーブシリーズ等が用いられる。
【0033】
任意の添加剤である充填剤としては、炭酸カルシウム系、各種処理炭酸カルシウム系、炭酸マグネシウム系、有機高分子系、クレー系、タルク系、シリカ系、フュームドシリカ系、ガラスバルーン系、プラスチックバルーン系、水酸化アルミニウム系、水酸化マグネシウム系等の充填剤が用いられる。
【0034】
任意の添加剤である可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン等の炭化水素系重合体;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールとこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基等に変換した誘導体等のポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類等が用いられる。これらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールとこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基等に変換した誘導体等のポリエーテル類等のポリオキシアルキレン系重合体を用いるのが好ましい。
【0035】
以上のようにして粘着剤前駆体を得た後、これを担持体表面に塗布する。担持体としては、粘着剤前駆体を塗布しうるものであれば、どのようなものでよい。たとえば、粘着テープ又はシートの支持体であるテープ基材又はシート基材を用いてもよいし、粘着テープ又はシートに積層する離型紙を用いてもよい。また、別途準備した離型シート等を担持体としてもよい。テープ基材又はシート基材としては、アルミニウム箔等の金属箔よりなるもの、ポリエステル等の合成樹脂製フィルムよりなるもの、各種の発泡体よりなるもの又は各種の不織布よりなるもの等が用いられる。特に、耐熱性に優れたアルミニウム箔又は耐熱性ポリエステルフィルムを用いるのが好ましい。粘着剤前駆体は、テープ基材又はシート基材の一方表面に塗布されてもよいし、両表面に塗布されてもよい。後者の場合は、両面粘着テープ又はシートとなる。また、離型紙や離型シートとしては、従来公知のものが用いられ、一般的には表面がシリコーン系樹脂加工されているものが用いられる。また、粘着剤前駆体の塗布方法は、従来公知の方法を採用でき、たとえばナイフコーター法やロールコーター法等を用いることができる。さらに、粘着剤前駆体の塗布厚も従来と同様であり、5〜200μm程度である。
【0036】
粘着剤前駆体を担持体表面に塗布した後、粘着剤前駆体に含まれているシリル基含有ポリマー(a)及び(b)を硬化させる。シリル基含有ポリマー(a)及び(b)は、水分の存在下で縮合して三次元網目構造となって硬化するから、塗布後の粘着剤前駆体を水蒸気等の水分の存在下に置けばよい。具体的には、大気中に置けば、水蒸気の存在下に置くことになる。また、粘着剤前駆体中には有機溶剤等が含まれている場合があるので、これらを蒸発させるために、80℃以上の温度に加熱するのが一般的である。したがって、一般的に、粘着剤前駆体を担持体表面に塗布した後、大気中で加熱することにより、粘着剤層を形成することができる。担持体として、テープ基材又はシート基材を用いた場合には、形成された粘着剤層表面に離型紙を積層すれば、粘着テープ又はシートが得られる。また、担持体として、粘着テープ又はシートに積層する離型紙を用いた場合には、離型紙上に形成された粘着剤層表面にテープ基材又はシート基材を積層貼合すれば、粘着テープ又はシートが得られる。また、粘着テープを巻物の形にする場合、裏面が離型処理されたテープ基材を担持体とすれば、テープ基材の表面に粘着剤層を形成しながら巻回してゆくことにより、粘着テープが得られる。さらに、担持体として、別途準備した離型シートを用いた場合には、離型シート上で粘着剤層を形成した後、離型シートから剥離した粘着剤層を、テープ基材、シート基材又は離型紙に積層貼合して、粘着テープ又は粘着シートが得られる。
【0037】
以上のような方法で得られた粘着テープ又は粘着シートは、従来使用されている各種用途に用いられるが、特に、耐熱性に優れているため、電子機器や電気機器等を組み立てる際の固定用粘着テープ又はシートとして用いられる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る方法で得られた粘着テープ又は粘着シートの粘着剤層は、特定の割合で配合された、一分子内に比較的多数の加水分解性シリル基を有するシリル基含有ポリマー(a)と、一分子内に比較的少数の加水分解性シリル基を有するシリル基含有ポリマー(b)が、硬化して三次元網目構造となったものである。そして、一分子内に比較的少数の加水分解性シリル基を有するシリル基含有ポリマー(b)が特定量配合されているので、経時的に硬化が進行しにくくなっており、粘着剤層の経時的変化を少なくしうるという効果を奏する。また、本発明に係る方法で得られた粘着テープ又は粘着シートの粘着剤層には、硬化して三次元網目構造となったマトリックス中に、粘着付与樹脂とフッ素系化合物又はこれの変性物が存在することになる。フッ素系化合物又はこれの変性物は、いずれにしても、フッ素含有化合物であるから、特許文献3に記載されているように、高温下に何度暴露されても、粘着力が低下しにくいという効果をも奏する。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、シリル基含有ポリマー(a)と(b)とを組み合わせて粘着剤層を得ると、粘着力の経時的変化が少なくなるとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0040】
合成例1
[シリル基含有ポリマー(a−1)の合成]
反応容器に、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランを206質量部、アクリル酸メチルを172質量部仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で10時間反応させることで、シリル化剤となるシラン化合物SE−1を得た。
一方、別の反応容器にPMLS4015(ポリオキシプロピレンジオール、分子量15000:旭硝子社製)1000質量部、イソホロンジイソシアネート24.6質量部(NCO/OH比=1.7)及びジブチルスズジラウレート0.05質量部を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、85℃で7時間反応させて、主鎖の主体がポリオキシプロピレンで、主鎖中にウレタン結合が導入されたウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマー1000質量部に、上記シラン化合物SE−1を42.1質量部添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら80℃で1時間反応させることで、シリル基含有ポリマー(a−1)を得た。IRでイソシアネート基の吸収(2265cm-1)の消失より反応の進行を確認した。
このシリル基含有ポリマー(a−1)は、一般式(1)において、A−がポリオキシプロピレンを主体とするポリマー残基であり、−B−が前記化4又は化5であり、Xがメトキシ基であり、Rはメチル基であり、nは1であり、aは平均2である。
【0041】
合成例2
[シリル基含有ポリマー(a−2)の合成]
反応容器にAcclaim Polyol18200N(ポリオキシプロピレンジオール、分子量18000:住化バイエルウレタン社製)1000質量部、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン22.3質量部(NCO/OH比=1)及びジブチルスズジラウレート0.05質量部を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、85℃で5時間反応させて、主鎖の主体がポリオキシプロピレンでウレタン結合が導入されたシリル基含有ポリマー(a−2)を得た。IRでイソシアネート基の吸収(2265cm-1)の消失より反応の進行を確認した。
このシリル基含有ポリマー(a−2)は、一般式(1)において、A−がポリオキシプロピレンを主体とするポリマー残基であり、−B−が前記化9であり、Xがメトキシ基であり、nは0であり、aは平均2である。
【0042】
合成例3
[シリル基含有ポリマー(b−1)の合成]
反応容器にPMLS1005(ポリオキシプロピレンモノオール、分子量5500:旭硝子社製)1000質量部、イソホロンジイソシアネート44.0質量部(NCO/OH比=2.0)及びジブチルスズジラウレート0.05質量部を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、85℃で7時間反応させて、主鎖の主体がポリオキシプロピレンで、主鎖中にウレタン結合が導入されたウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマー1000質量部に、上記シラン化合物SE−1を91.4質量部添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら80℃で1時間反応させることで、シリル基含有ポリマー(b−1)を得た。IRでイソシアネート基の吸収(2265cm-1)の消失より反応の進行を確認した。
このシリル基含有ポリマー(b−1)は、一般式(2)において、A−がポリオキシプロピレンを主体とするポリマー残基であり、−B−が前記化4又は化5であり、Xがメトキシ基であり、Rはメチル基であり、nは1であり、bは平均1である。
【0043】
合成例4
[シリル基含有ポリマー(b−2)の合成]
反応容器に、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを222質量部、アクリル酸メチルを172質量部仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で10時間反応させることで、シリル化剤となるシラン化合物SE−2を得た。
別の反応容器にPMLS1005(ポリオキシプロピレンモノオール、分子量5500:旭硝子社製)1000質量部、イソホロンジイソシアネート44.0質量部(NCO/OH比=2.0)及びジブチルスズジラウレート0.05質量部を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、85℃で7時間反応させて、主鎖の主体がポリオキシプロピレンで、主鎖中にウレタン結合が導入されたウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマー1000質量部に、上記シラン化合物SE−2を95.3質量部添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら80℃で1時間反応させることで、シリル基含有ポリマー(b−2)を得た。IRでイソシアネート基の吸収(2265cm-1)の消失より反応の進行を確認した。
このシリル基含有ポリマー(b−2)は、一般式(2)において、A−がポリオキシプロピレンを主体とするポリマー残基であり、−B−が前記化4又は化5であり、Xがメトキシ基であり、nは0であり、bは平均1である。
【0044】
実施例1
上記シリル基含有ポリマー(a−1)83.3質量部と上記シリル基含有ポリマー(b−1)16.7質量部とを混合した硬化性樹脂組成物に、溶媒として酢酸エチル100質量部と、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターT−130」)100質量部を添加混合し、均一に攪拌して、混合物を得た。
この混合物300質量部に、予め三フッ化硼素モノエチルアミン錯体(三フッ化硼素として59%含有)1重量部にKBM−903(信越化学工業社製 3−アミノプロピルトリメトキシシラン)9重量部に溶解した溶液を3.3重量部混合し、十分に攪拌し均一に混合して、粘着剤前駆体を得た。
この粘着剤前駆体を厚さ25μmのポリエステルフィルムの一方表面に、粘着剤の皮膜が60μm程度となるようにナイフコーター法で塗布した。その後、120℃で10分間、大気中で加熱することにより、シリル基含有ポリマー(a−1)及び(b−1)を硬化させると共に、酢酸エチルを蒸発させて、粘着剤層を得た。そして、粘着剤層にはく離ライナーを貼り合わせ、40℃の雰囲気下で3日間放置し養生した。これにより、ポリエステルフィルムの片面に粘着剤層が積層されてなる粘着シートが得られた。
【0045】
実施例2
シリル基含有ポリマー(b−1)に代えて、上記シリル基含有ポリマー(b−2)を用いる他は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0046】
実施例3
シリル基含有ポリマー(a−1)83.3質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)16.7質量部とを混合した硬化性樹脂組成物に代えて、シリル基含有ポリマー(a−1)71.4質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)28.6質量部とを混合した硬化性樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0047】
実施例4
シリル基含有ポリマー(b−1)に代えて、シリル基含有ポリマー(b−2)を用いる他は、実施例3と同様にして粘着シートを得た。
【0048】
実施例5
シリル基含有ポリマー(a−1)83.3質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)16.7質量部とを混合した硬化性樹脂組成物に代えて、シリル基含有ポリマー(a−1)62.5質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)37.5質量部とを混合した硬化性樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0049】
実施例6
シリル基含有ポリマー(b−1)に代えて、シリル基含有ポリマー(b−2)を用いる他は、実施例5と同様にして粘着シートを得た。
【0050】
実施例7
シリル基含有ポリマー(a−1)83.3質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)16.7質量部とを混合した硬化性樹脂組成物に代えて、シリル基含有ポリマー(a−1)55.6質量部とシリル基含有ポリマー(b−2)44.4質量部とを混合した硬化性樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0051】
実施例8
シリル基含有ポリマー(a−1)83.3質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)16.7質量部とを混合した硬化性樹脂組成物に代えて、シリル基含有ポリマー(a−1)50質量部とシリル基含有ポリマー(b−2)50質量部とを混合した硬化性樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0052】
実施例9
シリル基含有ポリマー(a−1)に代えて、シリル基含有ポリマー(a−2)を用いる他は、実施例4と同様にして粘着シートを得た。
【0053】
実施例10
シリル基含有ポリマー(a−1)に代えて、シリル基含有ポリマー(a−2)を用いる他は、実施例7と同様にして粘着シートを得た。
【0054】
比較例1
シリル基含有ポリマー(a−1)83.3質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)16.7質量部とを混合した硬化性樹脂組成物に代えて、シリル基含有ポリマー(a−1)100質量部よりなる硬化性樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0055】
比較例2
シリル基含有ポリマー(a−1)83.3質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)16.7質量部とを混合した硬化性樹脂組成物に代えて、シリル基含有ポリマー(a−2)100質量部よりなる硬化性樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0056】
比較例3
シリル基含有ポリマー(a−1)83.3質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)16.7質量部とを混合した硬化性樹脂組成物に代えて、シリル基含有ポリマー(a−1)43.5質量部とシリル基含有ポリマー(b−1)56.5質量部とを混合した硬化性樹脂組成物を用いる他は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0057】
実施例1〜10及び比較例1〜3に係る粘着シートを用いて、以下の方法で粘着力の経時的変化試験及び保持力試験を行った。この結果を表1に示した。
【0058】
[粘着力の経時的変化試験]
まず、被着体として、30mm幅で150mm長のアクリル板を準備した。得られた粘着シートから、25mm幅で150mm長の短冊状試験片を採取した。試験片を23℃で50%RHの条件で被着体に貼り合わせて、24時間後の粘着力を測定し、その粘着力を粘着力Aとした(単位はN/25mm幅である。測定時の条件は23℃で50%RHである。)
そして、粘着力の経時的変化を調べるため、更に、粘着シートを50℃の雰囲気下で15日放置し、その後25mm幅で150mm長の短冊状試験片を採取した。試験片を23℃で50%RHの条件で被着体に貼り合わせて、24時間後の粘着力を測定し、その粘着力を粘着力Bとした(単位はN/25mm幅である。測定時の条件は23℃で50%RHである。)。
なお、粘着力は、JIS Z 0237(2000)記載の180°引きはがし粘着力の測定方法に準拠して行った。
そして、計算式([粘着力B]/[粘着力A])×100に基づいて、粘着力の経時的変化率(%)を算出した。
【0059】
[保持力試験]
まず、被着体として、30mm幅で100mm長の大きさで、表面を360番のサンドペーパーで研磨した30mm幅のステンレス板(SUS304)板を準備した。そして、製造後、50℃の雰囲気下で15日放置した粘着シートから、25mm幅で150mm長の短冊状試験片を採取した。試験片を23℃で50%RHの条件で接着面積が25mm×25mmになるように被着体に貼り合わせ、はり付いていない試験片の部位は、粘着面を内側にして折り重ねた。
この状態で、40分養生後、40℃の雰囲気下で試験板の一端を止め、試験板及び試験片が鉛直にたれ下がるようにし、折り重ねた部位の端に500gのおもりを取り付け、24時間保持した場合のずれた距離(mm)を測定した。なお、その他の測定条件は、JISZ0237(2000)記載の保持力の測定方法に準拠して行った。
【0060】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
粘着力A 粘着力B 経時的変化率 保持力
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 27.0 24.3 90 0.0
実施例2 21.1 19.6 93 0.0
実施例3 27.9 27.0 97 0.0
実施例4 21.6 21.1 98 0.0
実施例5 30.4 30.4 100 0.0
実施例6 24.0 22.5 94 0.0
実施例7 24.5 23.5 96 0.0
実施例8 25.0 24.0 96 0.0
実施例9 16.0 45.5 97 0.0
実施例10 20.4 19.4 95 0.0
比較例1 27.0 20.6 76 0.0
比較例2 14.7 12.2 83 0.0
比較例3 39.7 38.2 96 *
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
注)表1中の*は、おもりを取り付けた後、試験片が3時間後に落下したものである。
【0061】
表1の結果から明らかなように、所定量のシリル基含有ポリマー(a)及び(b)を用いて得られた実施例1〜10に係る粘着シートは、粘着力の経時的変化が少なく、保持力の高いものであった。これに対して、シリル基含有ポリマー(a)のみを用いて得られた比較例1及び比較例2に係る粘着シートは、実施例に係る粘着シートと比較すると、粘着力の経時的変化の大きいものであった。また、比較例3に係る粘着シートは、シリル基含有ポリマー(b)の使用量が多すぎて、保持力に欠けるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される加水分解性シリル基含有ポリマー(a)と下記一般式(2)で表される加水分解性シリル基含有ポリマー(b)とが、該ポリマー(a):該ポリマー(b)=90:10〜45:55(質量比)の割合で含有されてなる硬化性樹脂組成物100質量部に対して、粘着付与樹脂10〜150質量部と、三フッ化ホウ素及び/又はその錯体、フッ素化剤及びフッ素系無機酸のアルカリ金属塩よりなる群から選ばれたフッ素系化合物0.001〜10質量部とを均一に混合した粘着剤前駆体を、担持体表面に塗布した後、該シリル基含有ポリマー(a)及び(b)を硬化させることにより、該粘着剤前駆体を粘着剤層とすることを特徴とする粘着テープ又はシートの製造方法。
【化1】

(式中、Aはポリマー残基を表し、Bはウレタン結合及び/又は尿素結合を持つ基を表し、Xはヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは0,1又は2である。aは平均2以上である。)
【化2】

(式中、A,B,X,R及びnは一般式(1)の場合と同様の意味である。bは平均1である。)
【請求項2】
担持体がテープ基材又はシート基材である請求項1記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項3】
担持体が離型紙である請求項1記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項4】
硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂とを均一に混合した混合物に、フッ素系化合物を添加混合して粘着剤前駆体を得る請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項5】
一般式(1)及び/又は一般式(2)中のAが、ポリオキシアルキレンを主体とするポリマー残基である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項6】
一般式(1)及び/又は一般式(2)中のnが1である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項7】
粘着付与樹脂としてテルペン系樹脂を用いる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項8】
フッ素系化合物が三フッ化ホウ素メタノール錯体又は三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項9】
テープ基材又はシート基材の表面に請求項1乃至8のいずれか一項に記載の粘着剤層が積層されてなる粘着テープ又はシート。
【請求項10】
粘着剤層表面に離型紙が積層されてなる請求項9記載の粘着テープ又はシート。

【公開番号】特開2011−207922(P2011−207922A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74086(P2010−74086)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】