説明

粘着テープ

【課題】電線結束用の粘着テープに伝送波形の歪みを改善するフィルタ機能をもたせる。
【解決手段】通信回路を構成する電線に巻き付けられる粘着テープ10であって、前記テープ基材11あるいは/および該テープ基材11の片面に設けた粘着層12にフェライト13が含有されており、該粘着テープ10を通信回路の幹線から支線が分岐する分岐部近傍の前記支線に巻き付け、粘着テープ10のフェライト13により支線に生じる伝送波形の歪みを改善している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関し、詳しくは、車載LAN等の通信ネットワークの幹線から支線を分岐する分岐部に生じる伝送波形の歪みを緩和する機能を備えたものである。
【背景技術】
【0002】
車載ネットワーク等の通信ネットワークにおいて、1つの通信機器から別の通信機器へ信号を伝送する際に、電気的または磁気的ノイズによって伝送波形に歪みが発生して通信が正常に行われないという問題がある。この波形歪みは主としてインピーダンスの不整合に起因する信号の反射によっても発生し、通信線の分岐点や通信機器内に収容した基板との接続点においてはインピーダンス不整合が発生することは避けられなかった。そのため、従来より分岐点や通信機器との接続点での波形歪みを改善するための種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、特開平6−76886号公報(特許文献1)では、図7に示すように、コネクタハウジング1内に収容した端子2を円筒状のフェライトコア3に通すことにより伝送波形の歪みを改善している。
しかしながら、特許文献1で提供されている構造では、各端子2を円筒状のフェライトコア3に通さなければならず、かつ、これらフェライトコア3を保持するための構造が必要となり、部品点数およびコネクタの製造工程が増加すると共に、コネクタハウジング1の構造が複雑になる問題がある。
また、前記フェライトコア3は各端子毎に形状を変えるのは困難であり、波形歪みの改善の効果を適度に調節するのが困難である問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平6−76886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、分岐コネクタではなく、電線に巻き付ける粘着テープに伝送波形の歪みを改善するフィルタ機能をもたせることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、通信回路を構成する電線に巻き付けられる粘着テープであって、
テープ基材あるいは/および該テープ基材の片面に設けた粘着層にフェライトが含有されていることを特徴とする粘着テープを提供している。
【0007】
前記構成の粘着テープを通信回路の電線に巻き付けると、粘着テープのテープ基材あるいは/および粘着層に含有させた磁性体であるフェライトが通信回路の電線に発生する磁界を吸収して熱に変え、分岐部のインピーダンス不整合から増大した高周波成分を低減することができ、伝送波形の歪みを改善することができる。
また、本発明の粘着テープに伝送波形の歪みを改善するフィルタ機能をもたせているため、通信回路の分岐部を形成する分岐コネクタにフィルタ機能をもたせる必要がなくなり、分岐コネクタを回路を分岐させるだけの簡単な構造とすることができる。
さらに、前記粘着テープの巻き付け量を調節するだけで、簡単に波形歪みの改善の効果を適度に調節することができる。
【0008】
前記粘着テープは、通信回路の幹線から支線が分岐する分岐部近傍の前記支線に巻き付けられることが好ましい。
前記構成によれば、前記支線の分岐部近傍に巻き付けた粘着テープにより分岐部で生じやすい伝送波形の歪みを改善することができる。
なお、粘着テープの巻付位置は分岐部近傍に限らず、伝送波形の歪みが生じる任意の位置に巻き付けて、伝送波形の歪みを改善することができる。
【0009】
前記通信回路を構成する電線が1本の通信線あるいはツイストペア電線である。
また、前記粘着テープは、前記通信回路を構成する電線と共に、所要の機器に電力を供給する電源線に巻き付けられ、これら電線と電源線を結束する構成としてもよい。
前記構成によれば、前記粘着テープにより前記通信回路を構成する電線の伝送波形の歪みを改善することができると共に、複数本の電線と電源線を結束することができる。
【発明の効果】
【0010】
前述したように、本発明によれば、粘着テープのテープ基材あるいは/および粘着層に磁性体であるフェライトを含有させているため、該フェライトが通信回路の電線に発生する磁界を吸収して熱に変え、分岐部のインピーダンス不整合から増大した高周波成分を低減することができ、伝送波形の歪みを理想的に改善することができる。
また、前記粘着テープの巻き付け量を調節するだけで、簡単に波形歪みの改善の効果を適度に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3は、本発明の第1実施形態を示し、粘着テープ10は、CAN通信(差動伝送方式)を行う車載LANにおいて、幹線から支線が分岐する分岐部近傍の支線に巻き付けるものである。
【0012】
前記粘着テープ10は、図1に示すように、ポリ塩化ビニル(PVC)からなる帯状のテープ基材11と、該テープ基材11の片面全面に設けた粘着剤からなる粘着層12とからなり、これらテープ基材11と粘着層12に粉状のフェライト13を含有させている。
【0013】
前記粘着テープ10を巻き付ける通信回路は、図2に示すように、差動伝送線路を構成する複数本のツイストペア電線20の一端を分岐コネクタ21にそれぞれ接続して分岐接続しており、幹線となるツイストペア電線20Aの他端には終端抵抗(図示せず)を設ける一方、支線となるツイストペア電線20Bの他端には所要の電子機器30をそれぞれ接続している。
【0014】
前記支線を構成するツイストペア電線20Bの所要箇所に粘着テープ10を粘着層12が内周側となるようにハーフラップ巻きしており、図3に示すように、粘着テープ10の巻付位置では、ツイストペア電線20Bの外周全周を粘着テープ10で囲っている。
なお、粘着テープ10をツイストペア電線20Bにハーフラップ巻きしているため、粘着テープ10が二重に巻き付けられているが、図3では、粘着テープ10の重なりの図示を省略している。
【0015】
前記構成によれば、粘着テープ10のテープ基材11および粘着層12に磁性体であるフェライト13を含有させているため、該フェライト13が通信回路の電線に発生する磁界を吸収して熱に変え、分岐部のインピーダンス不整合から増大した高周波成分を低減することができ、伝送波形の歪みを改善することができる。
また、支線に巻き付けた粘着テープ10に伝送波形の歪みを改善するフィルタ機能をもたせているため、分岐コネクタ21にフィルタ機能をもたせる必要がなくなり、分岐コネクタ21を回路を分岐させるだけの簡単な構造とすることができる。
さらに、粘着テープ10の巻き付け量を調節するだけで、簡単に波形歪みの改善の効果を適度に調節することができる。
【0016】
図4は、第1実施形態の変形例を示す。
本変形例では、粘着テープ10のフェライト13を含有させる対象を第1実施形態と相違させており、図4(A)に示すように、粘着テープ10のテープ基材11のみにフェライト13を含有させてもよいし、図4(B)に示すように、粘着テープ10の粘着層12のみにフェライト13を含有させてもよい。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0017】
図5は、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、粘着テープ10を巻き付ける対象を第1実施形態と相違させており、ツイストペア電線ではなく素線22aに絶縁被覆22bを設けた1本の電線からなる通信線22に第1実施形態と同様の粘着テープ10を巻き付けている。
なお、第1実施形態の変形例の粘着テープを通信線22に巻き付けてもよい。
また、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0018】
図6は、本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態では、第1実施形態のツイストペア電線20と共に所要の機器に電力を供給する複数本の他の電源線23を集束し、粘着テープ10を巻き付けて、これらツイストペア電線20と電源線23を結束している。
なお、第1実施形態の変形例の粘着テープをツイストペア電線20と電源線23に巻き付けてもよいし、第2実施形態の通信線22と他の電源線23を粘着テープ10により結束してもよい。
また、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の粘着テープは、車載LAN・OA(Office Automation)・FA(Factory Automation)等の通信回路の電線に巻き付けるものとして好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の粘着テープを示し、(A)は斜視図、(B)はA−A線断面図である。
【図2】通信回路に粘着テープを巻き付けた状態を示す概略図である。
【図3】ツイストペア電線に粘着テープを巻き付けた状態を示すB−B線断面図である。
【図4】(A)(B)は第1実施形態の変形例である。
【図5】第2実施形態を示し、(A)は1本の通信線に粘着テープを巻き付けた状態を示す図面、(B)はC−C線断面図である。
【図6】第3実施形態を示す図面である。
【図7】従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0021】
10 粘着テープ
11 テープ基材
12 粘着層
13 フェライト
20A、20B ツイストペア電線
21 分岐コネクタ
22 通信線
23 電源線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回路を構成する電線に巻き付けられる粘着テープであって、
テープ基材あるいは/および該テープ基材の片面に設けた粘着層にフェライトが含有されていることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
通信回路の幹線から支線が分岐する分岐部近傍の前記支線に巻き付けられる請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記通信回路を構成する電線が1本の通信線あるいはツイストペア電線である請求項1または請求項2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記通信回路を構成する電線と共に、所要の機器に電力を供給する電源線に巻き付けられ、これら電線と電源線を結束する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−150427(P2008−150427A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337135(P2006−337135)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】