説明

粘着ベルトによる経緯積層不織布の製造方法と製造装置

【課題】 経材と緯材が繊維軸を直交するように積層された経緯積層不織布の製造手段に関し、経緯積層不織布に異物の混入がないことにより製品の品質が良く、また工程を大幅に簡素化でき、生産性が良い経緯積層不織布の製造手段に関する。
【解決手段】 循環して走行するコンベア上に緯材が供給され、コンベアの進行方向と直角方向に循環している循環ベルトの表面が感圧性接着剤からなる粘着面で構成され、緯材が経材と重なる位置に来る毎に循環ベルトがコンベア上の緯ウェブに接近することで、循環ベルトの粘着面を緯材と接触させて緯材を循環ベルトに付着させた後、循環ベルトを遠ざけることによりコンベアから緯材が離され、経材と緯材とが積層接合される経緯積層不織布の製造手段。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経材と緯材が繊維軸を直交するように積層された経緯積層不織布の製造手段に関し、特に、コンベアによって運ばれてくる一定長さ毎の緯材に、感圧性接着剤からなる粘着面を有する循環ベルトの粘着面を接触させて、緯材を循環ベルトに移行させる経緯積層手段により、経緯積層不織布に異物の混入がないことにより製品の品質が良く、また工程を大幅に簡素化でき、生産性が良い経緯積層不織布の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、循環ベルトを使用した経緯積層不織布の製造方法として、循環ベルトにホットメルト接着剤等を塗布して、ホットメルト接着剤の溶融状態での粘着力を利用することを提案した(特開昭52−124976号)。しかし、ホットメルト接着剤を用いると、ホットメルト接着剤が製品である経緯積層不織布に混入するので、製品の品質を低下させていた。また、ホットメルト接着剤の溶融状態での粘着力を利用する方式は、循環ベルトが高速で循環しており、循環ベルトの粘着面の温度を一定に保つことが困難で、粘着力が一定せず、作業性の面でも問題があった。
【0003】
また、循環ベルトを使用した経緯積層不織布の他の製造方法として、循環ベルトに水や増粘剤を塗布して、水や増粘剤の粘着力を利用することも提案されている(特開昭52−121576号、特開平2−210054号)。しかし、水は粘着力が小さく、生産速度の高速化が実現できなかった。また、水に増粘剤を加えることで、粘着力は増すが、増粘剤が製品である経緯積層不織布に混入するので、製品に異物として存在し、製品の品質を低下させていた。また増粘剤は水洗等である程度除去できるが、水洗により経材緯材に多量の水分を含み、これを加熱除去するために大型の熱シリンダが必要で設備費が高くなり、多量の水分を乾燥させるための熱エネルギのロスが多かった。また、粘着力が低いことを補うために、粘着面を大きく取るために、経材を循環ベルトと一緒に走行させることも提案されている。しかし、縦材の表面はフラットではないので、粘着力への寄与は少なく、また、縦材にも水分や増粘剤が付与されるので、上記の問題点がさらに大きくなっていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭52−124976号公報(第1頁、第1、2図)。
【特許文献2】特開昭52−121576号公報(第1頁、第1図)。
【特許文献3】特開平2−210054号公報(第1−2頁、第1−3図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、経緯積層不織布における製品に異物を混入させない生産方式を提示することにある。また他の目的は、従来の経緯積層不織布の生産方式より水分の乾燥設備を大幅に簡素化でき、簡便で省エネルギー効率の良い経緯積層不織布の生産方式を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は背景技術で述べた従来技術の問題点を克服するために行われたもので、本発明の製造方法としての特徴を下記に示す。本発明は、広巾経材の巾に対応した長さ毎に切断された広巾緯材を、走行する該経材上に繊維軸が直交するように重ねられた後、この経材と緯材が接着固定される経緯積層不織布の製造方法において、循環して走行するコンベア上に緯材が供給される工程と、コンベアの進行方向と直角方向に循環している循環ベルトの表面が感圧性接着剤からなる粘着面で構成されており、緯材が経材と重なる位置に来る毎に循環ベルトを該コンベア上の緯ウェブに接近させ、循環ベルトの粘着面が緯材と接触させることで緯材を循環ベルトに付着させた後、循環ベルトを遠ざけることによりコンベアから緯材が離される工程と、緯材が循環ベルトから離され、経材と緯材とが積層接合される工程と、を含む経緯積層不織布の製造方法に関する。また本発明は、前記循環ベルトの粘着面が、粘着面の粘着力より大きい粘着力を有する感圧性接着剤からなる除塵用粘着体の粘着面に接することにより、循環ベルトの粘着面が除塵されつつ循環されている、前記経緯積層不織布の製造方法に関する。また本発明は、前記循環ベルトの粘着面が水洗により除塵されつつ循環されている、前記経緯積層不織布の製造方法に関する。また本発明は、前記循環ベルトより前記緯材が離される工程において、循環ベルトが複数本で構成されており、循環ベルト群間に剥がしロールが存在し、前記経材とこの緯材が積層された状態で剥がしロールによって熱シリンダ上に押しつけられることによって緯材が循環ベルトから離される、前記経緯積層不織布の製造方法に関する。さらに本発明は、前記循環ベルトより前記緯材が離される工程において、循環ベルトが複数本で構成されており、循環ベルト群間を循環ベルト群とは他の経路で循環する糸群によって緯材が循環ベルトから離される、前記経緯積層不織布の製造方法に関する。
【0007】
本発明の製造装置としての特徴を下記に示す。本発明は、広巾経材の巾に対応した長さ毎に切断された広巾緯材が経材上に繊維軸が直交するように重ねられ、経材と緯材が接着固定されている経緯積層不織布の製造装置において、緯材を載せて運ぶ循環して走行しているコンベアと、コンベアの進行方向と直角方向に循環しており、片方の表面が感圧性接着剤からなる粘着性を有する面で構成されている循環ベルトと、緯材が該経材と重なる位置に来る毎に循環ベルトをコンベア上の緯ウェブに接近させ、循環ベルトの粘着面を該緯材と接触させることにより該緯材を該循環ベルトに付着させた後、循環ベルトをコンベアから遠ざけるように、循環ベルトをコンベア表面に接近させたり遠ざけたりする循環ベルト上下機構と、循環ベルトの粘着面を、粘着面の粘着力より大きい粘着力で除塵する感圧性接着剤からなる粘着面を有する除塵用粘着体と、経材と緯材とが積層接合される加熱積層接着装置と、を有する経緯積層不織布の製造装置に関する。さらに本発明は、前記循環ベルトが複数本で構成されており、循環ベルト群間に設けられ、前記経材と前記緯材が積層された状態で熱シリンダ上に押しつけられることによって緯材が循環ベルトから離され加熱積層接着装置へ移す剥がしロールを有する前記経緯積層不織布の製造装置に関する。
【0008】
本発明は、経緯積層不織布の製造手段に関する。本発明における経緯積層不織布は、通常、広巾経材の幅に対応した長さに切断した広巾緯材を走行する経材上に切れ目無く重ねていき、経緯間を接着固定することにより製造される。これらの具体的製造手段は、上述の特許文献1、2などに詳しく説明されている。経緯積層不織布は、織物や編み物のように糸が互いに潜り合うことで交絡しているものとは異なり、経材と緯材が積層され、経緯間は接着接合された構造体である。経緯積層不織布は、粗目の構造体の製造が容易であること、糸が直線的で屈曲していないので、強度、ヤング率が高いことなどの特性を有する。また、織物や編み物に比較して、生産速度が桁違いに大きいという生産性の良さも特徴の一つである。
【0009】
本発明の経緯積層不織布の縦材または緯材は、多数の糸状物が並列配置された構造物とすることができる。糸状物は、広義の糸を云い、マルチフィラメントからなる糸、モノフィラメント、フラットヤーン(テープヤーンまたは延伸テープ)、短繊維糸(紡績糸)等の形態のものが含まれる。また、芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維や、意匠糸も含まれる。また、異なる繊維種が組み合わされて糸を形成している複合糸も使用される。さらに、ロービング、スプリットヤーンが使用でき、トウと呼ばれる繊維束も適宜開繊して使用することができる。また、その素材は、天然繊維、化学繊維、合成繊維であってもよく、また有機繊維ばかりでなく、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、またアモルファス金属繊維や銅線等の金属繊維も含まれる。
【0010】
本発明における縦材または緯材は、糸状物が多数本走行しているだけの糸群からなるものの他、広巾タテ延伸フィルムの網状スリットウェブやスプリットウェブ、不織布、紙、拡幅トウなど広巾シート状物であってもよく、それらによって構成されているものも本発明の経緯積層不織布の経材や緯材として使用される。
【0011】
本発明の緯材は、多数本の糸状物が並列配置されているだけでもよいが、広巾ウェブ状になっていることが望ましい。緯材が多数の糸状物で構成されている場合、特許出願公開2006−274509で示す斜交糸により緯糸群を配列固定する方式により広巾緯材とする方式は、本発明の緯材の製造方法として望ましい。また、糸群を接着剤フィラメント(特開昭51−9067)等で連結して広巾ウェブの緯材として使用することもできる。
【0012】
本発明における経材および緯材は、接着性を有する糸状物(以下、接着糸と略す場合もある)であることが望ましい。接着糸は、熱によって溶融して接着性が発現する融着糸や、芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維からなる糸が特に適合する。また、芯が通常の強度、耐熱性を有する構造体で、両表面層に接着性ポリマーを配した3層テープは、コストも安く、接着表面積が大きいので、本発明の接着性糸に特に好適である。また接着方式として、高周波や誘導加熱によって接着性を発現する場合もあり、熱接着に含められる。また接着糸は、熱によって接着性が発現するものばかりでなく、水分や溶剤、可塑剤等の化学的作用によって接着性を発現させることもできる。
【0013】
本発明の糸による経緯積層不織布においては、織物と異なり、経緯の糸は交絡していないので、経緯の糸間(または経材を形成する繊維と緯材間)は、接着剤接合される必要がある。その接合における接着剤は、経緯の糸が複合繊維などの接着成分を有する場合は、それによって接合することもでき、また経緯積層後、エマルジョン接着や、ファイバー状や粉末状などの接着剤を付加して接合させることもできる。
【0014】
本発明に使用される経材、緯材を形成する糸は、それぞれ経材群を供給する装置、緯材供給装置から供給される。ボビンやリール、ビームなどに収納されているそれぞれの糸は、コーム等の糸ガイドにより、一定ピッチに配列されて、ニップロールやフリクションロール等により一定速度で引き出されるようになっている。経材や緯材が不織布等の広巾シートの場合は、ロール巻された状態からニップロール等により一定速度で引き出されるようになっている。
【0015】
本発明においては、走行するコンベア上に、経材の巾に対応した長さ毎に切断された緯材が供給されることを特徴とする。本発明におけるコンベアは、循環して走行しており、運ばれてくる緯材が循環ベルトの粘着面と接触してコンベアから離れていくが、離れ易いように緯材とコンベア面の接触面積が小さいことが望ましい。接触面を小さくするためのコンベアとして、L字型やコの字型のラチスを使用し、ラチスのエッジ部のみで緯材と接触している態様をとることが望ましい。コンベアの他の態様としては、表面に凹凸を有するゴムベルト等の循環ベルトとすることもできる。
【0016】
本発明においては、走行しているコンベアの走行方向と直角方向に循環している循環ベルトを有する。この循環ベルトの表面が粘着性を有し、緯材が経材と重なる位置に来る毎に循環ベルトをコンベア上の緯ウェブに接近させ、循環ベルトの粘着面を緯材と接触させて緯材を循環ベルトに付着させた後、循環ベルトを遠ざけることによりコンベアから緯材が離される。ベルトは帯状の物体で、通常、糸状物で補強されたゴム製品であるが、スチールベルトやプラスチックベルトも使用される。
【0017】
本発明のベルトは、感圧性接着剤により、ベルトの片面が粘着性を有するように構成されていることを特徴とする。感圧性接着剤とは、水、溶剤、熱などを使用せず、常温で圧力を加えるだけで接合する性質を有する接着剤をいう。広義の接着剤の1種であるが、通常の接着剤、例えば溶液型接着剤、熱硬化型接着剤、ホットメルト接着剤等とは異なり、通常の接着剤は、剥離時に接着される固体界面に接着剤が残る、いわゆる凝集破壊であるのに対して、感圧性接着剤は、剥離時に凝集破壊を起こさず、被着体に接着剤が残らない接着剤である。つまり、従来使用していたホットメルト接着剤や粘着剤は、緯材側にもそれらが移行する液体として作用するのに対して、本発明の感圧性接着剤は固体として作用し、緯材側には移行しない。
【0018】
感圧性接着剤は、具体的にはポリイソブチレンなどのゴム系、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル系などのアクリル系などが使用されるが、架橋剤により一体化されていることが好ましく、上述のような固体として作用するようにされている。
【0019】
本発明の粘着面を有する循環ベルトは、緯材が経材と重なる位置に来る毎に循環ベルトをコンベア上の緯ウェブに接近させて、循環ベルトの粘着面を緯材と接触させて緯材を循環ベルトに付着させた後、循環ベルトをコンベアから遠ざけて、循環ベルトをコンベア表面に接近させたり遠ざけたりする循環ベルト上下機構を有する。切断されてコンベア上を運ばれてくる緯ウェブの前後端が、上方を走行する循環ベルトの粘着面によって、経ウェブの左右両端部に重なる位置に来る毎に、繰り返し吊り上げられていく。この吊り上げ作業は、できるだけ瞬間的に行われることが好ましく、不等速回転する押さえ具が急降下して循環ベルトをコンベアに押しつけ、その後速やかにコンベアから離される。これらの不等速を生む機構として、偏芯ギア、カム、リンク機構などが用いられる。押さえ具のベルトの接触位置には、ロールが取り付けられており、ベルトとの接触時にロールが回転し、抵抗を少なくするようにされていることが好ましい。
【0020】
本発明における前記循環ベルトの粘着面は、この粘着面の粘着力より大きい粘着力を有する表面が循環ベルトとほぼ等速で移動している除塵用粘着体の粘着面に接することにより、循環ベルトの粘着面が除塵されつつ循環されていることが望ましい。除塵用粘着体は、ロール、循環ベルトなど表面が移動しながら循環して物体で、ロールや循環ベルトの表面に粘着性を持たせたものであり、やはり感圧性接着剤が使用される。除塵用粘着体の粘着面は循環ベルトの粘着面とが接する部分を有し、その接触時に循環ベルトに付着したゴミを粘着回転体側に移行させる。除塵用粘着体の具体的な構造の例は図面で述べる。
【0021】
除塵用粘着体の粘着力は、循環ベルトの粘着力より大きくすることが望ましい。粘着力の測定方法は、それぞれの感圧性接着剤と同一組成からなるシートを作成し、JISZ−0237の粘着力試験法によって決められる。なお、除塵用粘着体の粘着面は、MEK、エチルアルコール、トルエン等で定期的にさらに除塵されることが望ましい。
【0022】
本発明における前記循環ベルトの粘着面は、水洗により除塵されつつ循環されていることが望ましい。循環ベルトに付着したゴミは、水で簡単に除去できるものが多く、まず、水で除塵しておくことで、除塵用粘着体の寿命を延ばすことができる。水洗の方法は、ベルトにシャワーをかける方式や、ベルトを水槽に漬ける方式などが使用される。なお、上述のベルトの粘着力は、水に濡れた状態で使用される際は、水に濡れた状態での粘着力で示す。
【0023】
本発明においては、循環ベルトより緯材を離す工程を有する。この場合、循環ベルトが複数本で構成されており、これらの循環ベルト群間に剥がしロールが存在し、経材と緯材が積層された状態でこの剥がしロールによって熱シリンダ上に押しつけられることによって、この緯材が循環ベルトから離される工程を有することが望ましい。このように経材と緯材が積層された状態で熱ロール上に移行されることで、経材や緯材を構成する繊維の配列状体を乱れなく移行させることができ、製品姿が良く、製品の物性も良くすることができる。
【0024】
本発明においては、前記循環ベルトより前記緯材が離される工程において、循環ベルトが複数本で構成されており、これら循環ベルト群間を循環ベルト群とは他の経路で循環している糸群によって緯材が循環ベルトから離されるようにすることもできる。剥がし糸はテグスなど強度が強く、伸びの少ない糸やコードが用いられる。剥がし糸と剥がしロールは併用することが好ましいが、いずれか片方のみでも使用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によって製造される経材と緯材とからなる経緯積層不織布において、異物混入が少ない製品とすることができる。そのことにより、本発明による経緯積層不織布の品質は、より高品質なものとなる。また本発明の製造方法では、従来のベルトに増粘剤を使用する方式と比較して、工程での水分の付着量が小さいため、水分乾燥工程が簡略になり、省エネルギー効率の高いプロセスとなる。また水分が少ないことは、従来必要であった乾燥シリンダの径を小さくでき、装置が簡便化でき、その結果、従来経緯積層装置のかなりの部分を占めていた乾燥工程が簡略化されたために、広巾積層機にしても装置コストが大幅に低減でき、コストの安い装置とすることを可能にした。また、粘着が室温で安定していること、水分乾燥が簡便になったことより、製造の安定および生産速度の高速化が可能になった。
【0026】
また本発明は、除塵用回転粘着体を使用することにより、循環ベルトの粘着性を長持ちさせ、長時間運転を可能にした。また、本発明では、剥がしロールを使用することにより、製品姿が良く、製品の物性も良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明における経緯積層装置1の例を断面図で示す。図は、多数のラチス2が取り付けられているラチスコンベア3の進行方向から見たものである。ほぼ経材4の幅に対応した長さに切断された緯材5aが、ラチスコンベア3のラチス2上を運ばれてくる。ラチスコンベア3の進行方向とは直角方向に走行している多条の循環ベルト6は、感圧性接着剤面を外側(ラチスコンベア側)にして、ローラ7a、7bに支持されて循環している。循環ベルト6の断面の例を、A部に抜き出して拡大して示した。循環ベルトは、強度メンバーであるベルト本体部分8と感圧性接着剤層9とが積層されて構成されている。ラチスコンベア3上に供給されてくる緯材5aは、循環ベルト6をラチスコンベア3方向に上下させる押し下げ具10a、10bによりラチスコンベア3上に瞬間的に押しつけられて、感圧性接着剤層9の粘着力により、多条の循環ベルト6上に緯材5bとして転載される。押し下げ具10a、10bは、循環ベルト上下機構により、瞬間的に循環ベルト6を上下させるようになっており、その上下する機構は、押し下げ具10a、10bを支持している軸(図示していない)の回転から、偏心ギア、カム、リンク機構等で不等速に瞬間的に上下する。この押し下げ具10a、10bにより多条循環ベルト6がラチス2上に押しつけられることによって、多条の循環ベルト6に転載された緯材5b群は、各循環ベルト6の間を通る剥がし糸11により循環ベルト6から剥がされ、この剥がし糸11とラチスコンベア3の下側より供給される経材4との間に挟まれて熱シリンダ12に移される。熱シリンダ12上の経材4と緯材5群は、熱シリンダ12上でゴムロール13の押圧で接着固定されて、経緯積層された経緯積層不織布14となる。剥がし糸11は、図では循環して使用する例で示したが、経材の半分を一本おきに剥がし糸11として使用し、後の半分の経材を経材4とすることで、剥がし糸11を製品の中に取り込み、緯材5b群を上下から一本おきの経材で挟んだ経緯積層不織布を製造することもできる。
【0028】
図1における循環ベルト6の感圧性接着剤層9は、その行路で除塵用粘着体である除塵用粘着回転ロール15に接している。除塵用粘着回転ロール15は、ロール表面が感圧性接着剤層からなり、この感圧性接着剤の粘着力は、循環ベルト6の感圧性接着剤層8の粘着力よりも大きいので、両者が接することにより循環ベルト6の感圧性接着剤層8のゴミが除かれる。また、この循環ベルト6の感圧性接着剤層9は、水洗されることで、水溶性ゴミや大きなゴミを予め取り除いておくことが望ましく、図1では、水のシャワー16が噴射されることで水洗される。シャワー16からの水は、受バス17によって飛散が防がれている。
【0029】
図1では、経緯間の接着は、緯材と経材の少なくとも片方が熱接着性であり、経緯の接合が熱シリンダ12上で容易に熱接合出来る例を示した。しかし、経緯間の接合は、図1において、経材4と剥がし糸11で切断された緯材5b群が挟まれた状態で、エマルジョン接着剤浴槽に導き、エマルジョン接着剤をニップにより一定量にコントロールした後に熱シリンダで乾燥することで、経緯間をエマルジョン接着剤成分で接着固定することができる。またエマルジョン接着剤の代わりに、粉末接着剤や繊維状接着剤を使用することも出来る。
【0030】
図2に図1の装置を90度方向転換し、ラチスコンベア3の進行方向を横から見た断面図で示す。多数のコンベア2a、2b、2c、・・・を具備するラチスコンベア3上に、ロール巻きされた緯材21より繰り出された緯材が導かれ、カッター22により、タテウェブ4の幅に相当する長さ毎に切断される。切断された緯材5aは、ラチスコンベア3上を運ばれ、そのラチスコンベア3の上方に高さを違えて経方向に走行する多条の循環ベルト6が走行している。一定タイミング毎に瞬間的にベルト押さえ具10(図では省略)を作動させて循環ベルト6を押し下げて、循環ベルト6の感圧接着剤による粘着面の粘着力により、切断された緯材5aを付着して拾い上げる。一定タイミングとは、一定タイミング毎に切断された緯材5aを拾い上げることにより、走行している多条の循環ベルト6の表面に拾い上げた緯材が切れ目無く乗せられていくようにすることで、循環ベルト6とラチスコンベア3および切断された緯材5aのウェブの巾により定められる。
【0031】
図3は、除塵用粘着体の他の例を示す装置の断面図である。循環ベルト6を支持しているローラ7上で、表面が感圧性接着剤層31と、強度メンバーであるベルト本体部32が積層されている除塵用粘着ベルト33がローラ34、35に支持されて循環している。この場合、循環ベルト6の感圧性接着剤層9と除塵用粘着体の接着剤層31とが、接しながら等速で循環している。除塵用粘着体33をベルト状にすることで、循環ベルト6との接触距離を長くでき、除塵効果を高めることができる。
【0032】
図4は、循環ベルト6より緯材5bを離す工程において、剥がしロール41が使用される例を示す装置の断面図である。多条の循環ベルト6に転載された緯材5b群は、各循環ベルト6の間を通る剥がし糸11により循環ベルト6から剥がされる。この剥がし糸11とラチスコンベア3の下側より供給される経材4との間に挟まれて熱シリンダ12に移される。剥がしロール41は、溝(図5に示す)を有しており、剥がしロール41が熱シリンダ12上に押しつけられており、剥がし糸11が溝で案内されて剥がし糸11と一緒に、経材4と緯材5群は熱シリンダ12上に移される。剥がし糸11は熱シリンダ12から離されて循環する。経材4と緯材5bは、ゴムロール13でニップされ経緯間の接着を確実にした後、冷却シリンダ42で冷却し、経緯積層不織布14として引き取られていく。
【0033】
図5は、熱シリンダ12上の剥がしロール41を示す装置の断面図である。剥がしロール41a、41b、41cは、円周に溝51a、51b、51cを有し、軸52によって支持され、剥がし糸11がこれらの溝に案内されていく。循環ベルト6a、6b、6c、6dは、これらの剥がしロール41a、41b、41c、・・・の間を循環する。これらの循環ベルト6と剥がしロール41や剥がし糸11に案内されて、経材4、緯材5bが積層されて熱シリンダ12上に移されるので、縦材、緯材の積層状体が乱れることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明において、循環ベルトの感圧性接着剤層により緯材が吊り上げられる状態を示す装置の側面図。
【図2】本発明において、コンベア上に緯材が供給される状態を示す装置の断面図。
【図3】本発明の除塵用何着回転体の例を示す装置の断面図。
【図4】本発明の剥がしロールにより緯材が熱シリンダ上に移行される状態を示す装置の断面図。
【図5】本発明の剥がしロールを示す装置の断面図。
【符号の説明】
【0035】
1:経緯積層装置、 2:ラチス、 3:ラチスコンベア、
4:経材、 5:緯材、 6:循環ベルト、 7:ローラ、
8:ベルト本体部分、 9:感圧性接着剤層、 10:押し下げ具、
11:剥がし糸、 12:熱シリンダ、 13:ゴムロール、
14:経緯積層不織布、 15:除塵用回転ローラ、 16:シャワー、
17:受バス。
21:ロール巻きされた緯材、 22:カッター。
31:感圧性接着剤層、 32:ベルト本体、 33:除塵用粘着ベルト、
34、35:ローラ。
41:剥がしロール、 42:冷却シリンダ。
51:溝、 52:軸。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
広巾経材の巾に対応した長さ毎に切断された広巾緯材を、走行する該経材上に繊維軸が直交するように重ねられた後、該経材と該緯材が接着固定される経緯積層不織布の製造方法において、
循環して走行するコンベア上に該緯材が供給される工程と、
該コンベアの進行方向と直角方向に循環している循環ベルトの表面が感圧性接着剤からなる粘着面で構成されており、該緯材が該経材と重なる位置に来る毎に該循環ベルトを該コンベア上の緯ウェブに接近させ、該循環ベルトの粘着面が該緯材と接触させることで該緯材を該循環ベルトに付着させた後、該循環ベルトを遠ざけることにより該コンベアから該緯材が離される工程と、
該緯材が該循環ベルトから離され、該経材と該緯材とが積層接合される工程と、
を含む経緯積層不織布の製造方法。
【請求項2】
前記循環ベルトの粘着面が、該粘着面の粘着力より大きい粘着力を有する感圧性接着剤からなる除塵用粘着体の粘着面に接することにより、該循環ベルトの粘着面が除塵されつつ循環されている、請求項1の経緯積層不織布の製造方法。
【請求項3】
前記循環ベルトの粘着面が水洗により除塵されつつ循環されている、請求項1の経緯積層不織布の製造方法。
【請求項4】
前記循環ベルトより前記緯材が離される工程において、該循環ベルトが複数本で構成されており、該循環ベルト群間に剥がしロールが存在し、前記経材と該緯材が積層された状態で該剥がしロールによって熱シリンダ上に押しつけられることによって該緯材が該循環ベルトから離される、請求項1の経緯積層不織布の製造方法。
【請求項5】
前記循環ベルトより前記緯材が離される工程において、該循環ベルトが複数本で構成されており、該循環ベルト群間を該循環ベルト群とは他の経路で循環する糸群によって該緯材が該循環ベルトから離される、請求項1の経緯積層不織布の製造方法。
【請求項6】
広巾経材の巾に対応した長さ毎に切断された広巾緯材が該経材上に繊維軸が直交するように重ねられ、該経材と該緯材が接着固定されている経緯積層不織布の製造装置において、
該緯材を載せて運ぶ循環して走行しているコンベアと、
該コンベアの進行方向と直角方向に循環しており、片方の表面が感圧性接着剤からなる粘着性を有する面で構成されている循環ベルトと、
該緯材が該経材と重なる位置に来る毎に該循環ベルトを該コンベア上の緯ウェブに接近させ、該循環ベルトの粘着面を該緯材と接触させることにより該緯材を該循環ベルトに付着させた後、該循環ベルトを該コンベアから遠ざけるように、該循環ベルトを該コンベア表面に接近させたり遠ざけたりする循環ベルト上下機構と、
該循環ベルトの粘着面を、該粘着面の粘着力より大きい粘着力で除塵する感圧性接着剤からなる粘着面を有する除塵用粘着体と、
該経材と該緯材とが積層接合される加熱積層接着装置と、
を有する経緯積層不織布の製造装置。
【請求項7】
前記循環ベルトが複数本で構成されており、該循環ベルト群間に設けられ、前記経材と前記緯材が積層された状態で熱シリンダ上に押しつけられることによって該緯材が該循環ベルトから離され加熱積層接着装置へ移す剥がしロールを有する請求項6の経緯積層不織布の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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