説明

粘着剤、それを用いて得られる粘着フィルム及び積層体

【課題】高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、被着体の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を備えた粘着剤を提供する。
【解決手段】アクリル重合体(A)、10個以上の水酸基を有するポリオール(B)、架橋剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有してなることを特徴とする粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な被着体の貼り合わせに使用可能なアクリル系粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル重合体は、それを構成するアクリル単量体の組み合わせ等によって、様々な特性を発現できることから、粘着剤をはじめとする様々な分野で使用されている。
【0003】
例えば、アクリル重合体を含む粘着剤は、両面テープや付箋等の身の回りにあるものから、自動車部品や家電部品等の固定等の様々な用途で使用されている。
【0004】
とりわけ、前記自動車部品や家電部品等は、製品の高機能化に伴って、形状がより複雑化している傾向にあり、例えば曲面部やR部や逆R部等の複雑形状部位を有する部品が使用されることが増えている。
【0005】
このような部品の曲面部等に、例えば粘着フィルム等を貼り合わせ、固着しようとした場合、粘着フィルムには元の形状に戻ろうとする力がはたらくため、前記粘着フィルムの前記曲面部からの経時的な剥離を引き起こし、その結果、工業製品の歩留まりを低下させる場合があった。
【0006】
また、粘着剤は、例えば薄型テレビ等の液晶ディスプレイを構成する偏光板の固定等にも使用されている。
【0007】
しかし、偏光板等の光学フィルムは、バックライトからの熱の影響によって僅かに収縮や膨張する場合があり、かかる場合には、粘着層が基材の収縮等に追従できず、偏光板等の剥がれを引き起こす場合があった。
【0008】
また、液晶ディスプレイの用途が益々拡大するなかで、液晶ディスプレイが、例えば自動車内等の非常に高温になりうる環境下に設置、使用される場合が増えている。このような高温環境下で使用した場合であっても、偏光板の剥離等を引き起こすことなく長期間にわたり鮮明な映像を表示できることが近年の液晶ディスプレイに求められているものの、従来の粘着剤では、やはり熱の影響によって経時的に剥がれを引き起こす場合があった。
【0009】
前記優れた曲面接着力と、前記経時的な剥がれを引き起こさないレベルの凝集力とを備えた粘着剤としては、例えば、カルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含んでなり、かつ、両末端に水酸基を有さないアクリル系樹脂粘着剤中に、イソシアネート系化合物と、1分子中に2個以上の水酸基を含有した特定のアミン系化合物を含有してなる粘着剤組成物が、高温下や高温高湿下でも凝集力及び接着力の経時変化が小さく、かつ、曲面接着力に優れることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
しかし、粘着剤により一層高いレベルの特性が産業界から要求されるなかで、前記粘着剤組成物の有する凝集力や曲面接着力は、かかるレベルにはあと一歩及ぶものではなかった。また、凝集力を非常に高めようとすると、曲面接着力が著しく低下する場合があり、優れた凝集力と曲面接着力とを両立することは困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−126731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、基材の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を備えた粘着剤を見いだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討するなかで、従来のアクリル系粘着剤に、更に10個以上の水酸基を有するポリオールを組み合わせ使用した場合に、優れた凝集力と曲面接着力とを両立できることを見出した。
【0014】
なかでも、前記10個以上の水酸基を有するポリオールとして、多分岐形状からなるポリエーテルポリオール、更には、ヒドロキシアルキルオキセタンと1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールを使用した場合に、より一層優れた凝集力と曲面接着力とを発現できることを見出した。
【0015】
即ち、本発明は、アクリル重合体(A)、10個以上の水酸基を有するポリオール(B)、架橋剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有してなることを特徴とする粘着剤に関する。
【0016】
また、本発明は、基材の片面または両面に、前記粘着剤を用いて形成された粘着層を有する粘着フィルムに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粘着剤は、高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、基材の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を備え、更には、熱等の影響による被着体の僅かな伸縮にも追従できることから、例えば偏光板等の光学部材の固定等に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の粘着剤は、アクリル重合体(A)、10個以上の水酸基を有するポリオール(B)、架橋剤(C)、有機溶剤(D)及び必要に応じてその他の添加剤を含有してなる。前記粘着剤は、前記有機溶剤(D)中に前記アクリル重合体(A)や前記ポリオール(B)や架橋剤(C)等が溶解または分散したものであることが好ましい。
【0019】
本発明の粘着剤は、前記ポリオール(B)の有する水酸基と架橋剤(C)とが反応し架橋構造を形成する一方で、前記アクリル重合体(A)が前記架橋構造体と物理的に絡み合った粘着剤層を形成しうる。
【0020】
また、前記アクリル重合体(A)として水酸基等の架橋性官能基を有するアクリル重合体を使用した場合には、前記アクリル重合体(A)と前記ポリオール(B)とが、架橋剤(C)を介して化学的に結合し三次元的な架橋構造からなる粘着剤層を形成しうる。
【0021】
上記したいずれの粘着剤層も、高温下に長期間おかれた場合に経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、基材の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を備える。
【0022】
はじめに、本発明で使用するアクリル重合体(A)について説明する。
本発明で使用するアクリル重合体(A)は、本発明の粘着剤を構成する主成分となりうるものである。
【0023】
前記アクリル重合体(A)は、高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、基材の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を維持する観点から、20万〜200万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0024】
また、前記アクリル重合体(A)は、−25℃以下のガラス転移温度を有することが、良好な粘着性を付与する観点から好ましく、−50℃〜−25℃の範囲であることがより好ましい。
【0025】
前記アクリル重合体(A)は、各種アクリル単量体の有する重合性不飽和二重結合に起因したラジカル重合によって製造することができる。
【0026】
前記アクリル単量体としては、例えばアルキル基含有アクリル単量体、水酸基含有アクリル単量体、カルボキシル基含有アクリル単量体等の、従来から知られている各種アクリル単量体を単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
前記アルキル基含有アクリル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート等を使用することができる。なかでもn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを使用することが、良好な粘着性を付与できることから好ましい。
【0028】
前記アルキル基含有アクリル単量体は、アクリル重合体(A)の製造に使用するアクリル単量体の全量に対して50〜99質量%使用することが好ましい。かかる範囲内のアルキル基含有アクリル単量体を使用することによって、良好な粘着性を備えた粘着剤を得ることができる。
【0029】
また、前記水酸基含有アクリル単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリル、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等を使用することができる。なかでも2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することが良好な架橋反応性を付与できることから好ましい。
【0030】
前記アクリル重合体(A)が水酸基を有する場合には、前記アクリル重合体(A)と前記ポリオール(B)とが、架橋剤(C)を介して化学的に結合し三次元的な架橋構造からなる粘着剤層を形成しうる。かかる粘着剤層を形成可能な粘着剤であれば、とりわけ曲面接着力を向上できるとともに、粘着剤層の架橋の程度を調製しやすいため、用途に応じた粘着力や再剥離性等を粘着剤に付与することが可能である。
【0031】
前記アクリル重合体(A)が水酸基を有する場合には、前記水酸基含有アクリル単量体は、前記アクリル重合体(A)の製造に使用するアクリル単量体の全量に対して0.01〜10質量%使用することが好ましく、0.03〜5質量%使用することがより好ましく、0.05〜3質量%使用することが特に好ましい。前記範囲の水酸基含有アクリル単量体を使用することによって、後述する架橋剤とアクリル重合体(A)との架橋を好適に進行させ、その結果、優れた曲面接着性を有する粘着剤を得ることができる。
【0032】
また、前記カルボキシル基含有アクリル単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、(無水)イタコン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等を使用することができる。なかでも、アクリル酸やメタクリル酸を使用することが、優れた接着力や凝集力を備えた粘着剤を得るうえで好ましい。
【0033】
前記カルボキシル基含有アクリル単量体は、アクリル重合体(A)の製造に使用するアクリル単量体の全量に対して0.1〜15質量%使用することが好ましく、1〜10質量%使用することがより好ましく、2〜6質量%使用することが特に好ましい。かかる範囲であると、優れた凝集力と曲面接着性を両立できる。
【0034】
また、前記アクリル重合体(A)の製造には、前記したものの他にアミド基含有アクリル単量体、アミノ基含有アクリル単量体、イミド基含有アクリル単量体等の窒素原子含有アクリル単量体を使用することができる。
【0035】
前記アミド基含有アクリル単量体としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等を使用することができる。
【0036】
前記アミノ基含有アクリル単量体としては、例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0037】
前記イミド基含有アクリル単量体としては、例えばシクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド等を使用することができる。
【0038】
また、その他のアクリル単量体としては、前記した以外にも、例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有アクリル単量体や、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート基含有リン酸基含有アクリル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有アクリル単量体等を使用することができる。また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、その他の置換スチレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニル単量体を併用しても良い。
【0039】
前記した各種アクリル単量体を用いてアクリル重合体(A)を製造する方法としては、例えば前記アクリル単量体の有する重合性二重結合に起因したラジカル重合法が挙げられる。具体的には、前記した各種アクリル単量体と重合開始剤と、有機溶剤(D)とを、好ましくは40〜90℃の温度下で混合、攪拌し、ラジカル重合を進行させる方法が挙げられる。
【0040】
前記重合開始剤としては、例えば過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物や、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキサイドなどに代表される有機過酸化物、2,2'−アゾビス−(2−アミノジプロパン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス−(N,N'−ジメチレンイソブチルアミジン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル吉草酸ニトリル)などに代表されるアゾ化合物を使用すれば良く、特に制限は無い。前記重合開始剤の使用量は、前記アクリル単量体の全量100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。かかる範囲であると良好な反応性を付与できる。
【0041】
前記方法で得られたアクリル重合体(A)は、本発明の粘着剤全体に対して、20〜60質量%の範囲で使用することが好ましい。かかる範囲であると、優れた粘着性と凝集力、及び曲面接着力とを付与できる。
【0042】
20〜60質量%
【0043】
次に、本発明で使用するポリオール(B)について説明する。
ポリオール(B)としては、10個以上の水酸基を有するものを使用することが、高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、基材の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を備えた粘着剤を得るうえで必須である。
【0044】
ここで、前記ポリオール(B)の代わりに、例えばトリメチロールプロパンやポリオキシテトラメチレングリコール等の2〜3個程度の水酸基を有する化合物を使用しても、優れた凝集力と曲面接着力とを両立した粘着剤を得ることは困難な場合がある。
【0045】
前記ポリオール(B)が有する水酸基の個数の上限は、特に限定されないが、30個以下であることが好ましく、20個以下であることがより好ましい。
【0046】
また、前記ポリオール(B)としては、300〜8000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、特に1000〜4000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。かかる範囲であると、優れた凝集力と曲面接着力とを両立できる。
【0047】
前記ポリオール(B)として使用可能なもののうち、代表的なものとしては、10個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールや、10個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールを使用することができる。
【0048】
はじめに、10個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールについて説明する。
【0049】
前記10個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールとしては、例えばヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と1官能性エポキシ化合物(b2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(B1)、グリセリンやペンタエリスリトール等を脱水縮合して得られる多分岐ポリエーテルポリオール等を使用することができる。なかでも、前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)を使用することが、高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、基材の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を有する粘着剤を得るうえで好ましい。
【0050】
はじめに、前記ポリエーテルポリオールに使用可能な、ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と1官能性エポキシ化合物(b2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(B1)について説明する。なお、ここでいう「多分岐」は、分子鎖が2以上に分岐した先で更に2以上に分岐した分子構造を意味する。
【0051】
前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)としては、1分子中に10個〜30個の水酸基を有することが好ましく、10〜20の水酸基を有することがより好ましい。かかる範囲であると、優れた凝集力と曲面接着力とを両立できる。
【0052】
また、前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)は、その分子構造中に1級水酸基及び/または2級水酸基を有するものであることが好ましい。
【0053】
また、前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)は、1000〜4000の範囲の数平均分子量を有することが好ましく、1300〜3500の範囲を有することがより好ましい。かかる範囲であると、優れた凝集力と曲面接着力とを両立できる。
【0054】
また、前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)は、150〜350の範囲の水酸基価を有することが好ましく、170〜330の範囲を有することがより好ましい。かかる範囲であると、優れた凝集力と曲面接着力とを両立できる。
【0055】
前記範囲の数平均分子量及び水酸基価を有する多分岐ポリエーテルポリオールは、常温で液状である為、有機溶剤(D)中で前記アクリル重合体(A)と混合、溶解しやすい。また、前記範囲の数平均分子量及び水酸基価を有する多分岐ポリエーテルポリオールを含む本発明の粘着剤は、塗布し易く、また、基材への濡れ性に優れる。なお、前記「液状」とは、常温で流動性を有することを意味し、具体的には、BH型回転粘度計による粘度が、100Pa・s(25℃)以下である状態をいう。
【0056】
前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)は、ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と、エポキシ化合物(b2)とを開環重合反応させて得られる種々の構造を有している。
【0057】
具体的には、ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)として下記一般式(1)で表される化合物と、エポキシ化合物(b2)として下記一般式(2)で表される化合物とを開環反応させる場合には、下記OR1〜OR3、OE1、OE2、ER1、EE1、またはEE2等で表される様々な構造単位が形成される。即ち、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、下記OR1〜OR3、OE1、OE2、ER1、EE1、またはEE2等で示される繰り返し単位や末端構造単位の中から適宜選択される構造単位によって構成される。
【0058】
【化1】

【0059】
(一般式(1)中のRは、メチレン基、エチレン基またはプロピレン基を表し、Rは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、または炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基を表す。)
【0060】
【化2】

【0061】
(一般式(2)中、Rは有機残基を表す。)
【0062】
【化3】

【0063】
【化4】

【0064】
ここで、前記OR1〜OR3、OE1、OE2、ER1、EE1、及びEE2の各構造単位の実線部分は、当該構造単位内の単結合を示し、破線部分は、その構造単位とその他の構造単位との間でエーテル結合を形成する単結合を示す。
【0065】
また、前記OR1〜OR3、OE1、及びOE2は、ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)に起因する構造単位であって、そのうちOR1〜OR3は繰り返し単位を表し、OE1及びOE2は多分岐ポリエーテルポリオール(B1)の末端構造単位を表す。
【0066】
また、ER1、EE1、及びEE2は、前記エポキシ化合物(b2)に起因する構造単位であって、そのうちER1は繰り返し単位を表し、EE1及びEE2は多分岐ポリエーテルポリオール(B1)の末端構造単位を表す。
【0067】
即ち、多分岐ポリエーテルポリオール(B1)は、前記OR1〜OR3及びER1から選択される繰り返し単位によって、連続する多分岐構造を有する。そして、その多分岐構造の末端に前記OE1、OE2、EE1、及びEE2から選択される末端構造単位を有することができる。尚、これらの繰り返し単位及び末端構造単位は、特に問題の無い限りどのような構成で存在しても良く、また、どのような割合や量で存在していても良い。例えば、繰り返し単位及び末端構造単位はランダムに存在していても良いし、OR1〜OR3が分子構造の中心部分を構成し、末端に前記末端構造単位を有するものであって良い。
【0068】
また、前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)の製造に使用できる前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造からなるものを、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0069】
【化5】

【0070】
(一般式(1)中のRは、メチレン基、エチレン基またはプロピレン基を表し、Rは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、または炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基を表す。)
【0071】
前記一般式(1)中のRを構成し得る炭素原子数1〜8のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0072】
また、前記一般式(1)中のRを構成し得る炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基の例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基等が挙げられる。
【0073】
また、前記一般式(1)中のRを構成し得る炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
【0074】
前記ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)としては、得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)の低粘度化、液状化に効果的であるとの観点から、一般式(1)中のRがメチレン基であり、かつ、Rが炭素原子数1〜7のアルキル基である化合物を使用することが好ましく、なかでも3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、及び3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンを使用することがより好ましく、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンを使用することが、原料の調達が容易であることから特に好ましい。
【0075】
前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と開環重合反応する1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(b2)としては、例えば下記一般式(2)で示される構造からなる化合物を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0076】
【化6】

【0077】
(一般式(2)中、Rは有機残基を表す。)
【0078】
前記一般式(2)中のRを構成する有機残基は、前記一般式(1)中のRとして例示したものと同様に、水素原子や炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、または炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基であってもよい。また、前記有機残基が2価の有機残基であって、それがエポキシ基を形成する2個の炭素に結合して環を形成していても良い。
【0079】
前記エポキシ化合物(b2)としては、より具体的には、アルキレンオキサイド、脂肪族環式構造含有オキサイド、グリシジルエーテル、グリシジルエステル等を使用することができる。
【0080】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、1−ヘキセンオキサイド、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシドデカン、及びフロロアルキルエポキシド等を使用することができる。
【0081】
また、前記脂肪族環式構造含有オキサイドとしては、例えばシクロヘキセンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、シクロドデセンオキサイド等を使用することができる。
【0082】
前記グリシジルエーテルとしては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、i−プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、i−ブチルグリシジルエーテル、n−ペンチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、4−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−ノニルフェニルグリシジルエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、及び、フロロアルキルグリシジルエーテル等を使用することができる。
【0083】
前記グリシジルエステルとしては、例えばグリシジルアセテート、グリシジルプロピオネート、グリシジルブチレート、グリシジルメタクリレート、及びグリシジルベンゾエート等を使用することができる。
【0084】
前記エポキシ化合物(b2)としては、前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)の低粘度化、液状化に効果的であるとの観点から、アルキレンオキサイドを使用することが好ましく、なかでもプロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、または1−ヘキセンオキサイドを使用することがより好ましく、プロピレンオキサイドを使用することが原料の調達が容易であることから特に好ましい。
【0085】
前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)は、例えば前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と前記エポキシ化合物(b2)との開環重合反応により製造することができる。かかる製造方法としては、例えば以下の製造方法が挙げられる。
【0086】
(製造方法)
ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と、エポキシ化合物(b2)とを、モル基準で、[ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)/エポキシ化合物(b2)]=好ましくは1/1〜1/10、より好ましくは1/1〜1/6、特に好ましくは1/1〜1/3となる割合で混合する。得られた混合物と、有機溶剤とを、[{前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と前記エポキシ化合物(b2)との合計}/前記有機溶剤]の質量比が、好ましくは1/1〜1/5、より好ましくは1/1.5〜1/4、特に好ましくは1/1.5〜1/2.5となる割合で混合、溶解したものを原料溶液とする。
【0087】
前記有機溶剤としては、例えばジエチルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルまたはジオキソラン等を使用することができる。これらは、ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)とエポキシ化合物(b2)との反応を阻害しうる過酸化物を実質的に含んでいないことが好ましい。
【0088】
次に、重合開始剤またはその有機溶剤溶液を、0.1〜1時間、好ましくは0.3〜0.8時間、より好ましくは0.3〜0.5時間かけて、−10℃〜−15℃に冷却された前記原料溶液中に攪拌しながら滴下する。
【0089】
滴下終了後、重合開始剤を含む原料溶液が25℃になるまで攪拌する。次に、リフラックス可能な温度になるまで加熱し、0.5〜20時間かけて前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と、前記エポキシ化合物(b2)との大部分が多分岐ポリエーテルポリオール(B1)に転化するまで開環重合反応を行う。
【0090】
なお、前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)及び前記エポキシ化合物(b2)の、多分岐ポリエーテルポリオール(B1)への転化率は、ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴装置、赤外吸収分光分析器を用いることによって確認することができる。
【0091】
前記開環重合反応終了後、得られた反応溶液中に残存する重合開始剤は、同当量の水酸化アルカリ水溶液やナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシドを用いて失活させる。その後、前記反応溶液を濾過し、溶媒を用いて多分岐ポリエーテルポリオールを抽出した後、減圧下で有機溶剤を留去することによって、多分岐ポリエーテルポリオールを得ることができる。
【0092】
前記方法1で使用可能な重合開始剤としては、例えば、硫酸、塩酸、HBF、HPF、HSbF、HAsF、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のブレンステッド酸、BF、AlCl、TiCl、SnCl等のルイス酸、トリアリールスルフォニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルフォニウム−アンチモネート、ジアリールヨードニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウム−アンチモネート、N−ベンジルピリジニウム−ヘキサフルオロホスフェート、N−ベンジルピリジニウム−アンチモネート等のオニウム塩化合物、トリフェニルカルボニウム−テトラフルオロボレート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロアンチモネート等のトリフェニルカルボニウム塩、p−トルエンスルホニルクロライド、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、メタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル等が挙げられる。
【0093】
前記重合開始剤としては、反応性を向上する観点から、HPF、HSbF、HAsF、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、BFを使用することが好ましく、なかでもHPF、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、及びBFを使用することがより好ましい。
【0094】
前記重合開始剤は、有機溶剤に溶解して使用することができる。かかる有機溶剤としては、有機溶剤、例えば、ジエチルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルまたはジオキソランを使用することができる。
【0095】
前記有機溶剤溶液中に含まれる重合開始剤の濃度は、前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と前記エポキシ化合物(b2)との反応性を向上する観点から、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは10〜75質量%、特に好ましくは25〜65質量%である。
【0096】
前記重合開始剤は、前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と、前記エポキシ化合物(b2)との全モル量に対して好ましくは0.01〜1.0モル%、より好ましくは0.03〜0.7モル%、特に好ましくは0.05〜0.5モル%となる割合で使用できる。
【0097】
また、前記10個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールとしては、前記したものの他に、10個以上の水酸基を有する、ウレタン変性ポリエーテルポリオールや、ポリエーテルエステルコポリマーポリオールや、各種ポリオール中でアクリロニトリル及びスチレンモノマー等のビニル基含有モノマーをグラフト重合して得られるポリエーテルポリオール(一般に、ポリマーポリオールといわれる。)や、各種ポリエーテル中にポリウレアが安定分散したポリオール(一般にPHDポリオールといわれる。なお、PHDは、polyharnsstoff dispersionの略である。)を使用することもできる。
【0098】
次に、前記ポリオール(B)として使用可能な10個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールについて説明する。
【0099】
前記10個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールとしては、ポリオールとポリカルボン酸とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0100】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、分子鎖が2以上に分岐した先で更に2以上に分岐した分子構造を有した、いわゆる「多分岐」のポリエステルポリオールを使用することもできる。
【0101】
前記ポリエステルポリオールとしては、直鎖状もしくは分岐した線状または環状の脂肪族構造を有するものであってもよいが、10個以上の水酸基をポリエステルポリオール中に導入する観点から、分岐構造を有するポリオールやポリカルボン酸を使用することが好ましい。
【0102】
前記ポリエステルポリオールもまた、前記水酸基の上限としては、概ね30個以下であることが好ましく、20個以下であることがより好ましい。かかる範囲であると、優れた凝集力と曲面接着力とを両立できる。
【0103】
前記ポリエステルポリオールの製造に使用可能なポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルクリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオールを使用することができる。なかでも、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等の3個以上の水酸基を有するポリオールを使用することが、10個以上の水酸基をポリエステルポリオール中へ導入する観点から好ましい。
【0104】
また、前記ポリオールとしては、ビスフェノールAやビスフェノールF等の芳香族環式構造を有するポリオール等を使用することもできる。
【0105】
また、前記ポリエステルポリオールの製造に使用可能なポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸、1,2,3−ペンタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,4,8−オクタントリカルボン酸、1,5,10−ノナントリカルボン酸、2−カルボキシメチル−1,3−プロパンジカルボン酸、3−カルボキシメチル−1,5−ペンタンジカルボン酸等の脂肪族トリカルボン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸などの脂環式ポリカルボン酸類、また、オルソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸類等を使用することができる。なかでも10個以上の水酸基をポリエステルポリオール中へ導入する観点から、3個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸を使用することが好ましい。
【0106】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、パーストープ(Perstorp)社製から登録商標ボルトン(BOLTORN)として市販されている、ポリアルコールとヒドロキシ酸との重合により形成される、下記に例示したようなポリエステル系のデンドリティックポリマーを使用することができる。
【0107】
Boltorn H2003(1分子内の平均水酸基数12)
Boltorn H20(1分子内の平均水酸基数16)
Boltorn H30(1分子内の平均水酸基数32)
Boltorn H40(1分子内の平均水酸基数64)
【0108】
前記10個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールは、前記ポリオールと前記ポリカルボン酸とを通常の方法により脱水縮合反応することによって製造することができる。例えば、80℃〜300℃の反応容器内で、前記ポリオールと前記ポリカルボン酸とを混合し、必要に応じてスズ系触媒の存在下等で反応することによって製造することができる。
【0109】
また、10個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールには、必要に応じてε−カプロラクトン等のラクトン化合物が部分的に付加していてもよい。
【0110】
本発明の粘着剤中に含まれる前記ポリオール(B)の含有量は、特に限定される訳ではないが、アクリル重合体(A)100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、0.03〜8質量部の範囲で使用することが接着力と応力緩和性を両立できることからより好ましい。
【0111】
また、前記アクリル重合体(A)として水酸基を有するものを使用する場合、前記ポリオール(B)は、前記アクリル重合体(A)100質量部に対して0.03〜0.5質量部の範囲で使用することが、優れた凝集力と曲面接着力とを両立するうえで好ましい。しかし、前記ポリオール(B)の含有量が増加すると、接着力等が若干低下する傾向が見られる場合がある。
【0112】
一方、前記アクリル重合体(A)としては水酸基等の架橋性官能基を有さないアクリル重合体を使用する場合、前記ポリオール(B)は0.5〜8質量部の範囲で使用することが、優れた凝集力と曲面接着力とを両立するうえで好ましい。かかる場合であれば、後述する架橋剤(C)の使用量が比較的少量であっても凝集力や曲面接着力を向上できるため、接着力と凝集力と曲面接着力との両立が可能となるためより好ましい。
【0113】
次に、本発明で使用する架橋剤(C)について説明する。
架橋剤(C)は、もっぱら前記10個以上の水酸基を有するポリオール(B)が有する水酸基と反応し架橋構造を形成するものであって、高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、基材の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を有する粘着剤を得るうえで必須である。
【0114】
また、前記アクリル重合体(A)として水酸基を有するものを使用する場合には、前記架橋剤(C)は、前記アクリル重合体(A)が有する水酸基と前記ポリオール(B)の有する水酸基の双方と反応し架橋構造を形成する。これにより、良好な接着力と優れた凝集力と曲面接着力とを両立することができる。
【0115】
前記架橋剤(C)としては、例えばポリイソシアネート化合物やメラミン化合物、金属キレート等を使用することができる。なかでもポリイソシアネート化合物を使用することが、優れた凝集力と曲面接着力とを付与するうえで好ましい。
【0116】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどから誘導されるイソシアヌレート環含有ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパンなどのポリオール成分との反応により得られるポリイソシアネート化合物、およびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等を使用することができる。
【0117】
前記ポリイソシアネート化合物は、前記アクリル重合体(A)が有していてもよい水酸基及び前記ポリオール(B)の有する水酸基の合計と、前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基との当量割合[イソシアネート基/水酸基]が、0.5/1〜5/1であることが好ましく、1/1〜5/1の範囲で使用することがより好ましく、更には1.5/1〜3/1の範囲で使用することが、高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、被着体の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を有する粘着剤を得るうえで特に好ましい。
【0118】
また、前記架橋剤(C)に使用可能なメラミン化合物としては、例えばヘキサメチロールメラミンのような遊離アミノ基の大部分の水素をメチロール基で置換したもの、および炭素数が1〜6のアルコキシメチルメラミン、即ち上記へキサメチロールメラミンの大部分のメチロール基をアルコキシ化したもの、例えばヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキレルオキシメチルメラミンあるいはこれらの2種を組み合わせた混合エーテル化メラミンが挙げられる。アルコキシメチルメラミンは、例えばヘキサメトキシメチルメラミンの場合、メラミンとホルムアルデヒドを反応させて得られるヘキサメチロールメラミンをメタノールでエーテル化し、更にその大部分がメトキシメチル基になったもの等を使用することができる。
【0119】
また、前記架橋剤(C)に使用可能な金属キレート化合物としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトン配位化合物、アセト酢酸エステル配位化合物等を使用することができる。
【0120】
次に、本発明で使用する有機溶剤(D)について説明する。
本発明で使用する有機溶剤(D)は、前記アクリル重合体(A)や前記ポリオール(B)や架橋剤(C)を溶解または分散できるものであればいずれのものも使用することができる。具体的には、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン、3−ペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどを使用することができ、なかでもトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンを使用することが好ましい。
【0121】
前記有機溶剤(D)は、本発明の粘着剤の全量に対して40〜75質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0122】
また、本発明の粘着剤は、前記成分の他に必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0123】
また、前記添加剤としては、例えば架橋触媒、着色剤、顔料などの粉体、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、低分子量ポリマー、表面平滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0124】
なかでも、リチウム塩やイオン性液体などの帯電防止剤、粘着剤付与剤を、粘着剤の用途に応じて使用することが好ましい。
【0125】
前記粘着付与剤としては、例えば、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロン系樹脂、ロジン系樹脂(水素化、不均化、重合ロジンのエステル類)、石油樹脂、キシレン系樹脂、スチレン樹脂等を使用することができる。なかでも、ロジン系樹脂、特に重合ロジン樹脂のエステル類をアクリル系共重合体(A)100質量部に対して、5〜50重量部の範囲で使用することが、曲面接着性、及び非極性の被着体に対する接着性を向上するうえで好ましい。
【0126】
次に、本発明の粘着剤の製造方法について説明する。
本発明の粘着剤は、例えば、前記方法で製造したアクリル重合体(A)の有機溶剤(D)溶液、及び、前記ポリオール(B)等を予め混合したものと、前記架橋剤(C)等とを混合、攪拌することによって製造することができる。前記架橋剤(C)を混合すると、直ちに架橋反応が進行するため、混合後は速やかに塗工等を行うことが好ましい。
【0127】
前記方法で得られた粘着剤は、塗工作業性を損なうことなく、高温下に長期間おかれた場合であっても、熱等の影響による被着体の僅かな伸縮にも追従でき、反発力の大きい基材を曲面部材へ貼り付けた場合にも被着体の曲面部からの剥離を引き起こすことがなく、更には、優れた凝集力を維持することが可能であることから、もっぱら粘着剤に使用することができる。
【0128】
次に、本発明の粘着フィルムについて説明する。
本発明の粘着フィルムは、前記粘着剤を用いて形成された粘着層を、各種基材表面に備えたものであって、各種被着体の平面部や曲面部等に貼付できるものである。なお、前記粘着層は、基材の片面または両面に存在していても良い。
【0129】
前記粘着フィルムは、例えば本発明の粘着剤を各種基材の片面または両面に塗工し、概ね15〜70%程度のゲル分率となるまで硬化を進行させることによって製造することができる。前記ゲル分率の調整は、例えば粘着剤を塗工した基材を、20〜50℃の環境下に一定期間放置する方法等が挙げられる。
【0130】
前記粘着層が形成される基材としては、樹脂フィルムを使用でき、当該樹脂フィルムを形成する樹脂としてはポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルカーボネート及びこれらのラミネート体などを使用できる。なかでもポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂フィルムを好ましく使用できる。これら樹脂フィルムは粘着剤層との密着性を向上させるために、コロナ処理等による易接着表面処理されていることが好ましい。また、繊維状の基材を芯材とする両面粘着テープ構造のものも用いることができ、両面粘着シートに厚さが要求される場合に好適である。繊維状の支持体としては、具体的には不織布等が挙げられ、例えば、綿、麻、レーヨン等の材質からなるものが挙げられる。
【0131】
また、前記基材としては、ポリウレタンフォームや、ポリエチレンフォームなどに代表される発泡体基材を使用することも可能である。前記発泡体基材の片面または両面に粘着剤層が設けられた粘着フィルムであっても、かかる粘着剤が本願発明のものであれば、高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、かつ、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、基材の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を付与することが出来る。
【0132】
また、前記基材表面に粘着剤を塗工する方法としては、例えばロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター等を用いる方法が挙げられる。
【0133】
前記基材表面に形成される粘着層の厚みは、特に制限はないが、1〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0134】
前記方法で得られた粘着フィルムは、高温下に長期間おかれた場合であっても経時的な剥離を引き起こさないレベルの優れた凝集力を有し、被着体の曲面部への貼り合わせに使用した場合であっても、基材の反発力に起因した剥離を引き起こさないレベルの曲面接着力を有し、熱等の影響による被着体の僅かな伸縮にも追従でき、反発力の大きい基材を曲面部材へ貼り付けた場合にも被着体の曲面部からの剥離を引きこすことがないから、例えば不織布等の繊維質基材表面への貼付、ウレタンフォーム等の発泡体表面への貼付のほか、液晶ディスプレイ内における偏光板等の光学部材固定用の粘着剤等の用途に使用することができる。
【0135】
具体的には、一般にポリビニルアルコールを用いて形成される偏光子の両面にトリアセチルセルロース等からなる保護フィルムが貼付された偏光板や、シクロオレフィンポリマ等からなる光学フィルムを固定するために、該偏光板、及び光学フィルムの表面に前記粘着剤を塗布し、次いで該粘着層表面を、各種被着体に貼付することができる。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。
【0137】
調製例1;アクリル重合体(A−1)の調製
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ブチルアクリレート959質量部、アクリル酸40質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1質量部、酢酸エチル2000質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解したアゾビスイソブチロニトリル溶液20質量部(固形分5質量%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分40.0質量%、粘度60000mPa・s、Mw=63万、ガラス転移温度(計算Tg)=−42℃のアクリル重合体(A−1)溶液を得た。
【0138】
調製例2;アクリル重合体(A−2)の調製
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ブチルアクリレート960質量部、アクリル酸40質量部、酢酸エチル2000質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解したアゾビスイソブチロニトリル溶液20質量部(固形分5質量%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分40.0質量%、粘度65000mPa・s、Mw=70万、ガラス転移温度(計算Tg)=−42℃のアクリル重合体(A−2)溶液を得た。
【0139】
調製例3;ポリオール(B)の調製
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した1リットルの3つ口フラスコ中で、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.24質量部(8.7mmol)を、乾燥かつ過酸化物フリーのメチル−t−ブチルエーテル273質量部で希釈した。
【0140】
別途容器にて、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン140質量部(1.21mol)とプロピレンオキサイド70.0質量部(1.21mol)を混合し、上記3つ口フラスコへ定量ポンプで5.5時間かけて滴下した。このとき、系内の温度を20℃に保つように随時アイスバスで冷却を行った。滴下終了後、更にプロピレンオキサイド63.0質量部(1.08mol)を、同様に系内の温度を20℃に保ちつつ、3時間かけて滴下し、更に4時間攪拌した。ここで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.620質量部(4.4mmol)を添加し、更に20℃で6時間攪拌した。
【0141】
反応混合物は、反応に使用した三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の10倍重量のハイドロサルタイトを加え、1時間還流させることにより吸着除去した。ハイドロサルタイトを炉別した後、メチル−t−ブチルエーテルを除去し、透明で高粘度の多分岐ポリエーテルポリオール267質量部を得た。
【0142】
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=2483、Mw=6191、水酸基価(OHV)=253mg・KOH/g、官能基数11.2であり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1.9であった。
【0143】
[実施例1]
前述の方法で得られたアクリル重合体(A−1)溶液と前記多分岐ポリエーテルポリオール(B−1)とを、前記アクリル重合体(A−1)の不揮発分100質量部に対して前記多分岐ポリエーテルポリオール(B−1)の不揮発分が1質量部となる割合で混合した。次いで、前記で得た混合物と、架橋剤(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト型ポリイソシアネート化合物「バーノックD−750」、DIC(株)製、イソシアネート基含有率13.0質量%、不揮発分75質量%)を、前記アクリル重合体(A−1)の不揮発分100質量部に対して、架橋剤の不揮発分が3.26質量部となるように添加し、均一になるように攪拌混合することによって、アクリル粘着剤(P−1)を得た。
【0144】
[実施例2〜5及び比較例1〜5]
アクリル重合体(A)や、ポリオール(B)、架橋剤(C)の種類及び量を表1及び2記載の配合に変更すること以外は実施例1記載の方法と同様の方法で粘着剤(P−2)〜(P−5)及び比較用の粘着剤(P’−1)〜(P’−5)を得た。
【0145】
[粘着フィルムの加工方法]
表面に離型処理の施された厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(離型紙)の表面に、乾燥後における膜厚が25μmとなるように実施例及び比較例で得られた粘着剤を塗布し、100℃で2分間乾燥した。次いで、前記粘着剤によって形成された粘着層の表面に、離型処理の施されていない厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼りあわせ、23℃の環境下で7日間エージングすることによって粘着フィルムを得た。
【0146】
[保持力(凝集力)の測定方法]
前記粘着フィルムを25mm幅に切ったものを試験片とした。23℃×50%RHの雰囲気下で、前記試験片から離型フィルムを除去し、鏡面仕上げしたステンレス板の表面に接着面積が25mm×25mmとなるように貼り付け、前記試験片上から2kgロールを2往復することでそれらを圧着した。
【0147】
次いで、70℃の雰囲気下で、前記試験片の端に1kgの重りをつけることによって、前記ステンレス板に対して0°の方向(剪断方向)に1kgの荷重をかけ、試験片がステンレス板からずれ落ちるまでの時間を測定した。
【0148】
なお、24時間(1440分)以内に試験片が落下しなかったものについては、試験片の初期の貼り付け位置と、24時間経過後の試験片の貼り付け位置との差(ズレ幅;最大25mm)に基づいて評価した。
【0149】
[曲面接着力(定荷重剥離性)の測定方法]
前記粘着フィルムを25mm幅に切ったものを試験片とした。23℃×50%RHの雰囲気下で、前記試験片から離型フィルムを除去し、鏡面仕上げしたステンレス板の表面に接着面積が25mm×50mmとなるように貼り付け、前記試験片上から2kgロールを2往復することでそれらを圧着した。その後、40℃雰囲気下で1時間放置した後、更に23℃×50%RH雰囲気下で30分間放置した。
【0150】
次いで、前記試験片の横辺の端に500gの重りをつけ、ステンレス板に対して90°方向に500gの荷重をかけた状態で1時間放置した後の、試験片の剥離距離(最大50mm)を測定した。
【0151】
なお、1時間以内に試験片がステンレス板から落下した場合は、試験片が落下するまでの時間を測定した。
【0152】
[接着力の測定方法]
前記粘着フィルムを25mm幅に切ったものを試験片とした。また、被着体を鏡面仕上げしたステンレス板とし、JIS Z−0237に準じて23℃、50%RHの雰囲気下で180度剥離強度を測定した。
【0153】
【表1】

【0154】
【表2】

【0155】
表1及び2中の略称について説明する。
・「D−750」;「バーノックD−750」、DIC(株)製、イソシアネート基含有率13.0質量%、不揮発分75質量%)
・「TMP」;トリメチロールプロパン
・「PTMG」;ポリオキシテトラメチレングリコール(官能基当量重量970、水酸基価57.7)
・「EDP−300」;アデカポリエーテル EDP−300、(株)ADEKA製、官能基当量重量73、水酸基価767、官能基数4、不揮発分100%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル重合体(A)、10個以上の水酸基を有するポリオール(B)、架橋剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有してなることを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
前記アクリル重合体(A)が−25℃以下のガラス転移温度を有するものである、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
前記ポリオール(B)が300〜8000の数平均分子量を有し、かつ150〜350の水酸基価を有するものである、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項4】
前記ポリオール(B)がポリエーテルポリオールである、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項5】
前記ポリオール(B)がヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(b2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(B1)である、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項6】
前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)が3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンまたは3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンである、請求項5に記載の粘着剤。
【請求項7】
前記エポキシ化合物(b2)がプロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、及び1−ヘキセンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の粘着剤。
【請求項8】
前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)が、前記ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)と前記エポキシ化合物(b2)とを、モル基準で、[ヒドロキシアルキルオキセタン(b1)/エポキシ化合物(b2)]=1/1〜1/3の割合で開環反応させて得られるものである、請求項5に記載の粘着剤。
【請求項9】
前記多分岐ポリエーテルポリオール(B1)が1000〜4000の数平均分子量を有し、かつ、150〜350の水酸基価を有するものである、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項10】
前記アクリル重合体(A)100質量部に対して前記ポリオール(B)を0.01〜10質量部含有するものである、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項11】
前記架橋剤(C)がポリイソシアネート化合物である、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項12】
前記アクリル重合体(A)が有していてもよい水酸基と前記ポリオール(B)の有する水酸基との合計量、及び、前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の当量割合[イソシアネート基/水酸基]が0.5/1〜5/1である、請求項11に記載の粘着剤。
【請求項13】
基材の片面または両面に、請求項1〜12のいずれかに記載の粘着剤を用いて形成された粘着層を有する粘着フィルム。
【請求項14】
偏光板の表面に請求項1〜12のいずれかに記載の粘着剤を用いて形成された粘着層を有する積層体。

【公開番号】特開2011−37914(P2011−37914A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183340(P2009−183340)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】