説明

粘着剤及びそれを用いた粘着フィルム

【課題】粘着特性を発現し、殊に再剥離性に優れ、加熱処理及び高湿処理により浮きや剥がれの生じない、液晶ディスプレイ装置等のカラー表示装置に好適に用いられる粘着剤の提供。
【解決手段】アクリル系重合体(A)100重量部に対して、イソシアネート化合物(B)を5〜40重量部含有する粘着剤であって、アクリル系重合体(A)が、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a1)0.3〜15重量%を含むモノマーを共重合してなる重量平均分子量50万〜200万の共重合体であり、イソシアネート化合物(B)が、3官能イソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基100モルに対して、炭素数16〜25のアルキル基を有する単官能脂肪族アルコール(b2)及び分子内に1個以上炭素数16〜25のアルキル基を有する脂肪族第2級アミン(b3)のうち少なくともいずれか一方を3〜40モル反応してなる化合物である粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等のカラー表示装置を構成する部材、特に偏光板の粘着に好適に用いられる粘着剤に関する。更に詳しくは、架橋処理後に優れた粘着特性を発現し、殊に再剥離性に優れ、加熱処理及び高湿処理により浮きや剥がれの生じない粘着層を形成できる粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスやセラミックス、金属などの無機面に、粘着フィルム等を貼合した場合、経時変化により、フィルム端部分に剥がれが生じたり、貼合せ部に浮きが生じたりするなどの現象がしばしば見られる。
【0003】
このような現象を解決するために、一般的には、粘着フィルムに用いる重合体の分子量を上げたり、粘着層の架橋密度を高めたりするなどして、粘着特性を高めた粘着フィルムが用いられてきた。しかし、このような粘着フィルムを使用した場合、粘着力や凝集力は向上するものの、高温高湿下では、基材フィルムの収縮、膨潤によって発生する形状変化に粘着層が追従できず、浮きや剥がれ等の問題が解消できなかった。
【0004】
ところで、液晶ディスプレイ装置に用いられる光学部材の中には、その表面に偏光板を貼合せて使用するものがあり、代表的な例として液晶セルが挙げられる。液晶表示装置の部材である偏光板と液晶セルとの貼合せに用いる粘着剤に対しては、様々な環境下にあっても偏光板に剥がれや浮きが生じることのない耐久性と、液晶セルにおける光漏れを防止し得る性能が求められている。この光漏れは、特に高温高湿環境下において、偏光板の収縮・膨張といった寸法変化に伴う応力を粘着層で吸収することができない場合に、偏光板における残留応力が不均一になる結果生じる。
【0005】
このような光漏れの問題を解決するために、例えば粘着剤に可塑剤などを添加することで、粘着層を適度に軟らかくして応力緩和性を付与する技術が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、可塑剤の添加は、偏光板を剥離した際に被着体を汚染するブリスターの原因となる上、凝集力を低下させるため、経時による浮きや剥がれが発生しやすくなる。
【0006】
一方、アクリル系重合体とイソシアヌレート骨格を有する活性エネルギー線硬化型化合物とを配合してなる粘着剤が開示されている(特許文献2参照)。この公報においては、偏光板用として実施例が記載されているが、いずれの実施例においても塗膜外観に関する記載がなされていない。本願発明者が、該公報の実施例に記載された粘着剤を用いて塗膜外観を評価したところ、塗膜は白化しており良好な結果は得られなかった。
【0007】
又、アクリル系重合体とイソシアネート化合物5〜30重量部とを配合してなる粘着剤が開示されている(特許文献3参照)。しかし、この公報においては、偏光板用として実施例が記載されているが、いずれの実施例においても塗膜外観に関する記載がなされていない。本願発明者が、該公報の実施例に記載された粘着剤を用いて塗膜外観を評価したところ、塗膜は白化しており良好な結果は得られなかった。
【0008】
このように、アクリル系重合体に様々な化合物を添加し粘着剤を調製することで、アクリル系重合体単独では不十分な各種性能を向上させることは可能であると考えられる。しかし、それら化合物はアクリル系重合体との相溶性が悪い場合が多く、少量の添加ではさほど粘着層の透明性を損なうことはないが、性能向上の効果を発現させるために必要な添加量では粘着層の透明性が損なわれたり、分離したりする。偏光フィルム等を液晶セル用のガラスに貼着するための粘着剤には、極めて高度な透明性が要求される。そして、上記のような、相溶性の悪い化合物を混合した粘着剤を用いて偏光フィルム等を液晶セル用のガラスに貼着しようとしても、粘着層に白化、相分離や揺らぎが発生してしまうという問題点があった。
【0009】
又、液晶ディスプレイ等の製造工程において、偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼合せするに際し、貼合せ位置にずれが生じた場合など、貼合せからある時間が経過した後に偏光板を剥離し、高価な液晶セルを再利用することが必要となる場合がある。従って、偏光板に塗布されている粘着剤を介して貼合した後、ある時間経過後であっても液晶セルから比較的容易に剥離することができる、再剥離性能を保有した粘着剤が求められていた。これは、耐久性を付与するための強粘着力化とは相反する性質であって、これらを両立することが課題であった。更に、貼合せからある時間経過後であっても被着体から比較的容易に剥離することができると共に、高温高湿環境下のような過酷な条件下において強粘着力化する粘着剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−87593号公報
【特許文献2】特開2008−31214号公報
【特許文献3】特開2010−90354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、粘着フィルムに用いたときに優れた粘着特性を発現し、殊に再剥離性に優れ、加熱処理及び高湿処理により浮きや剥がれの生じない粘着層を形成でき、液晶ディスプレイ装置等のカラー表示装置に好適に用いられる粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に達した。即ち、第1の発明は、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、イソシアネート化合物(B)を5〜40重量部含有する粘着剤であって、
前記アクリル系重合体(A)が、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a1)0.3〜15重量%を含むモノマーを共重合してなる重量平均分子量50万〜200万の共重合体であり、
前記イソシアネート化合物(B)が、3官能イソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基100モルに対して、炭素数16〜25のアルキル基を有する単官能脂肪族アルコール(b2)及び分子内に1個以上炭素数16〜25のアルキル基を有する脂肪族第2級アミン(b3)のうち少なくともいずれか一方を3〜40モル反応してなる化合物であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0013】
また、第2の発明は、基材(C)と、上記発明の粘着剤から形成されてなる粘着層とを有することを特徴とする粘着フィルムに関する。
【0014】
また、第3の発明は、基材(C)が、光学部材であることを特徴とする上記いずれかの発明の粘着フィルムに関する。
【0015】
また、第4の発明は、光学部材が、偏光板である上記発明の粘着フィルムに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、優れた粘着特性を発現し、殊に再剥離性に優れ、加熱処理及び高湿処理により浮きや剥がれの生じない粘着層を形成でき、液晶ディスプレイ装置等のカラー表示装置に好適に用いられる粘着剤を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】定荷重剥離試験を側面から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の粘着剤について詳細に説明する。本発明の粘着剤は、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、イソシアネート化合物(B)を5〜40重量部含有する粘着剤であって、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a1)0.3〜15重量%を含むモノマーを共重合してなる重量平均分子量50万〜200万の共重合体であり、イソシアネート化合物(B)が、3官能イソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基100モルに対して、炭素数16〜25のアルキル基を有する単官能脂肪族アルコール(b2)及び分子内に1個以上炭素数16〜25のアルキル基を有する脂肪族第2級アミン(b3)のうち少なくともいずれか一方を3〜40モル反応してなる化合物であることを特徴とする。
【0019】
本発明においてイソシアネート化合物(B)は、粘着フィルムを製造する際に、粘着層中の水分を媒体としてイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基同士が反応することでポリマーを生成する。そして、アクリル系重合体(A)とイソシアネート化合物(B)から生成したポリマーは、共有結合のような架橋構造をとらないことが好ましい。イソシアネート化合物(B)から生成したポリマーが、アクリル系重合体(A)と別個に存在することで、アクリル系重合体(A)の優れた密着性と、イソシアネート化合物(B)から生成したポリマーの凝集力という両者の特徴を効果的に発揮できる。一方、水素結合や分子間力といった弱い結合は、両ポリマーの特徴を損なわずポリマー間相互作用が生じる余地があることから好ましい。そして、両ポリマーの相溶性が良好になることで、被着体との密着性や粘着層の凝集力を高レベルで達成できる。
ここで、イソシアネート化合物(B)に、3官能イソシアネート化合物(b1)を用いると、(b1)が水分を媒体として高度に3次元構造が生成することでそのポリマーは非常に高い凝集力を有することになる。そのためアクリル系重合体(A)と3官能イソシアネート化合物(b1)から生成したポリマーの絡み合いが減少し、粘着層中に両ポリマーが非相溶で存在し易い。そして、両ポリマーが非相溶で存在することにより粘着層が白化し透明性が低下する恐れがある。また粘着層の柔軟性を損ないやすいウレア結合が、高度に3次元構造が生成した3官能イソシアネート化合物(b1)から生成したポリマー中に過剰に存在するため、粘着層と被着体との密着性を損なう恐れがある。また、非相溶の3官能イソシアネート化合物(b1)から形成したポリマーは、非相溶ゆえに粘着層の表面へ移行しやすい。そのため、高温高湿環境下で粘着フィルムが、被着体から浮きやハガレが生じる恐れがある。
そこで、本発明では3官能イソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部を、単官能脂肪族アルコール(b2)や脂肪族第2級アミン(b3)を用いて封止することで、イソシアネート化合物(B)から生成したポリマーの3次元構造を適切にコントロールすることで凝集力が過剰にならず、アクリル系重合体(A)との適切な相溶性を実現できる。そして粘着フィルム等と被着体との密着性や粘着層の凝集力を高レベルで実現できる。なお被着体は、例えば、ガラス、アクリル板、ステンレス板、ポリカーボネート板等を挙げることができる。
【0020】
本発明においてアクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むエチレン性不飽和モノマーの重合体である。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーの両方を意味する。
【0021】
アクリル系重合体(A)の重合に用いるモノマーとしては、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a1)を全モノマー中0.3〜15重量%を用いることが重要である。カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a1)は水分を媒体としたイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基同士の反応における触媒として作用するが、使用量が0.3重量%未満であると触媒効果が小さすぎて、イソシアネート化合物(B)と水分との反応が起こりにくくイソシアネート基が多量に残存する問題がある。さらに、使用量が0.3重量%未満であると、イソシアネート化合物(B)から生成したポリマーと十分な相溶性が得られない問題がある。15重量%を超えるとアクリルポリマー(A)自体の凝集力が強すぎて、十分な密着性が得られないという問題がある。
【0022】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a1)としては、例えば(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、p−カルボキシベンジルアクリレート、エチレンオキサイド変性(付加モル数:2〜18)フタル酸アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピルアクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びフマル酸などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、(メタ)アクリル酸が、重量平均分子量50万〜200万のアクリル系共重合体を容易に製造できる点から特に好ましい。
【0023】
本発明ではカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a1)以外にも、アクリル系重合体(A)と、イソシアネート化合物(B)から生成したポリマーとの相溶性や密着性を損なわない範囲であれば、他の官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを用いることができる。例えば、アミド結合含有エチレン性不飽和モノマー、水酸基含有エチレン性不飽和モノマー、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー、アミノ基含有エチレン性不飽和モノマーをあげることができる。
【0024】
本発明においてアミド結合含有エチレン性不飽和モノマーでのアミド結合とは、アミド結合中の窒素原子に結合する水素の数が0〜2のいずれかであっても良い。具体的には、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド系の化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、などの複素環を含有した化合物、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミドなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、(メタ)アクリルアミドが特に好ましく、使用量は5重量%以下が好ましい。
【0025】
水酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが、重量平均分子量50万〜200万のアクリル系共重合体を容易に製造できる点から好ましい。また使用量はイソシアネート化合物(B)と反応した場合にアクリル系重合体(A)の柔軟性を損なわない程度である必要があり0.3重量%以下が好ましい。
【0026】
エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0027】
アミノ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルなどが挙げられる。
【0028】
官能基を有しないエチレン性不飽和モノマーとしては特に制限はなく、例えば、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを挙げることができる。ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、これらの化合物のうち、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが、良好な粘着性能を得やすいという点と、重量平均分子量50万〜150万のアクリル系共重合体を容易に製造できる点から好ましい。
【0029】
その他のエチレン性不飽和モノマーとして例えば酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0030】
アクリル系重合体(A)は、エチレン性不飽和モノマーを、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合することで得ることができる。ラジカル重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等公知の重合方法でできるが分子量制御の観点から溶液重合が好ましい。また溶液重合は例えばアセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどの溶剤の存在下で重合させるのが好ましい。ラジカル重合温度は60〜120℃の範囲が好ましく、重合時間は5〜12時間が好ましい。
【0031】
本発明におけるアクリル系重合体(A)は、重量平均分子量が50万〜200万が好ましく、50万〜150万がより好ましい。重量平均分子量が50万未満であると、被着体との密着性や高温高湿環境下での耐久性が不十分となり、被着体からの浮きや剥がれなどが生じる恐れがある。一方、重量平均分子量が200万を超えると、アクリル系共重合体(A)を含有する粘着剤の流動性が低下し、粘着フィルムを作製することが困難となる恐れがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。本発明の粘着剤においてアクリル系共重合体(A)は1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
次に、イソシアネート化合物(B)について説明する。イソシアネート化合物(B)は、3官能イソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基100モルに対して、単官能アルコール(b2)及び/又は第2級アミン(b3)を3〜40モル反応することにより、ウレタン結合、及び/又はウレア結合が導入された化合物であることが特徴である。単官能アルコール(b2)によってウレタン結合が、また第2級アミン(b3)によってウレア結合がそれぞれ導入される。また、粘着層中の水分を媒体としてイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基同士が反応することでポリマーを生成する。
【0033】
本発明において3官能イソシアネート化合物(b1)は、2個のイソシアネート基を有する、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等の各種イソシアネートモノマーのビュレット体、ヌレート体、及びアダクト体などが挙げられる。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0037】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0038】
また、ビュレット体とは、上記イソシアネートモノマーが自己縮合してなる、ビュレット結合を有する自己縮合物をいい、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体(スミジュールN−75、住化バイエルウレタン社製;デュラネート24A−90CX、旭化成製)などが挙げられる。
【0039】
ヌレート体とは、上記イソシアネートモノマーの3量体をいい、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(スミジュールN−3300、住化バイエルウレタン社製;コロネートHX、日本ポリウレタン工業株式会社製;アクアネート100、日本ポリウレタン社製;アクアネート110、日本ポリウレタン工業株式会社製;デュラネートTPA100、旭化成製)、イソホロンジイソシアネートの3量体(VESTANAT T−1890、エボニックデグサジャパン株式会社製;デスモジュールZ−4470、住化バイエルウレタン社製)、トリレンジイソシアネートの3量体(コロネート2030、日本ポリウレタン株式会社製)などが挙げられる。
【0040】
アダクト体とは、上記イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物とを反応させてなる、2官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物(コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製;スミジュールHT、住化バイエルウレタン社製;タケネートD−160N、三井化学ポリウレタン社製)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物(コロネートL、日本ポリウレタン株式会社製;スミジュールL−75、住化バイエルウレタン社製;タケネートD−102、三井化学ポリウレタン社製)、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物(タケネートD−110N、三井化学ポリウレタン社製)、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物(タケネートD−140N、三井化学ポリウレタン社製;マイテックNY215A、三菱化学株式会社製)、1,6−ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物(デュラネートD−201、旭化成製)、などが挙げられる。
【0041】
なお、2官能以上の低分子活性水素含有化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族あるいは脂環族ジオール類;
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させてなるビスフェノール類等の芳香族ジオール類;
1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールブタン、1,1,1−トリメチロールペンタン、1,1,1−トリメチロールヘキサン、1,1,1−トリメチロールヘプタン、1,1,1−トリメチロールオクタン、1,1,1−トリメチロールノナン、1,1,1−トリメチロールデカン、1,1,1−トリメチロールウンデカン、1,1,1−トリメチロールドデカン、1,1,1−トリメチロールトリデカン、1,1,1−トリメチロールテトラデカン、1,1,1−トリメチロールペンタデカン、1,1,1−トリメチロールヘキサデカン、1,1,1−トリメチロールヘプタデカン、1,1,1−トリメチロールオクタデカン、1,1,1−トリメチロールナノデカン、1,1,1−トリメチロール−sec−ブタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ペンタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ノナン、1,1,1−トリメチロール−tert−トリデカン、1,1,1−トリメチロール−tert−ヘプタデカン、1,1,1−トリメチロール−2−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−2−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロールイソヘプタデカンなどのトリメチロール分岐アルカン類、トリメチロールブテン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,2,6−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセリン等の3官能ポリオール類;
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール等の4官能以上のポリオール類;
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ヘプチレンジアミン、オクチレンジアミン、ノニレンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン等の脂肪族ポリアミン類;
フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ポリアミン類;
エチレンジチオール、プロピレンジチオール、ブチレンジチオール、ペンチレンジチオール、ヘキシレンジチオール、ヘプチレンジチオール、オクチレンジチオール、ノニレンジチオール、ジメルカプトジシクロヘキシルメタン、3−メルカプトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオール、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)等のポリチオール類を挙げることができる。
【0042】
これら2官能以上の低分子活性水素含有化合物は、それぞれを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
3官能イソシアネート化合物(b1)の中でも、密着性及び粘着耐久性などを考慮すると、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、が好ましい。これらの3官能イソシアネート化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
イソシアネート化合物(B)は、3官能イソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基100モルに対して、単官能アルコール(b2)及び/又は第2級アミン(b3)により、3〜40モル反応してなる、ウレタン結合またはウレア結合を有する化合物であることを特徴とする。単官能アルコール(b2)及び/又は第2級アミン(b3)が3モル未満であるとアクリル系重合体(A)との相溶性が悪く白化を起こす場合があり、単官能アルコール(b2)及び/又は第2級アミン(b3)が40モルを超えると、耐久性が低下する。特に耐久性、及びアクリル系重合体(A)との相溶性を考えると単官能アルコール(b2)及び/又は第2級アミン(b3)が5〜35モルがより好ましい。
【0045】
特にアクリル系重合体(A)との相溶性を考慮すると、炭素数16〜25のアルキル基を有する単官能脂肪族アルコールが好ましい、またアルコールの分子構造は直鎖構造、または、分岐構造のどちらでも良い。炭素数が16〜25の範囲内であれば高温・高湿下での浮きや剥がれへの耐性をより向上できる。
【0046】
本発明に用いられる単官能アルコール(b2)としては、例えば、ヘキサデシルアルコール(炭素数16)、ヘプタデシルアルコール(炭素数17)、オクタデシルアルコール(炭素数18)、エイコサンアルコール(炭素数20)、ペンタコサンアルコール(炭素数25)などが挙げられる。これらの中でも特にヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコールが好ましい。これら単官能アルコール(b2)は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
第2級アミン(b3)は、アクリル系重合体(A)との相溶性を考えると、16〜25のアルキル基を有する脂肪族第2級アミンが好ましい。またアミンの2つのアルキル基の構造は同一でも良いし、異なっていても良い。炭素数が16〜25の範囲内であれば高温・高湿下での浮きや剥がれへの耐性をより向上できる。
【0048】
本発明に用いられる第2級アミン(b3)としては、例えば、ジヘキサデシルアミン,ジヘプタデシルアミン,ジオクタデシルアミン,ジノナデシルアミン,ジエイコシルアミン、ジペンタコシルアミン、N−メチルヘキサデシルアミン、N−ブチルヘキサデシルアミン等が挙げられる。
【0049】
本発明において、イソシアネート化合物(B)を得る際、単官能アルコール(b2)と、第2級アミン(b3)とを併用して用いることが可能である。イソシアネート化合物(B)を合成する際、単官能アルコール(b2)と、第2級アミン(b3)とを併用することで、ウレタン結合とウレア結合の両者をイソシアネート化合物(B)骨格中に導入することができる。
【0050】
イソシアネート化合物(B)の製造方法としては、3官能イソシアネート化合物(b1)と、単官能アルコール(b2)及び/又は第2級アミン(b3)とを窒素封入下、加熱して得ることができる。反応温度は60〜100℃の範囲、反応時間は2〜5時間が好ましい。反応温度が60℃よりも低い、又は、反応時間が2時間よりも短いと、3官能イソシアネート化合物(b1)と単官能アルコール(b2)又は、第2級アミン(b3)との反応が完結しない場合がある。又、反応温度が100℃よりも高い、又は、反応時間が5時間より長いと、アロファネート反応やビュレット反応等の副反応を引き起こし、目的のイソシアネート化合物(B)が得られない場合がある。
【0051】
本発明の粘着剤は、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、イソシアネート化合物(B)を5〜40重量部含有することが重要であり、7〜35重量部含有することがより好ましい。イソシアネート化合物(B)の使用量が40重量部を越えると、粘着剤の柔軟性が損なわれ、得られる粘着層の被着体への密着性が低下傾向となり、耐久性に問題を生じる恐れがある。又、アクリル系重合体(A)との相溶性が悪くなり、粘着層が白化するおそれがある。5重量部未満では、十分な凝集力が得られないため、耐熱性、耐湿熱性に問題を生じる恐れがある。
【0052】
本発明の粘着剤は、本発明の特徴を損なわない程度であれば、架橋剤を使用することができる。分子内に官能基を2個以上有する、エポキシ化合物、アミン化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及び金属キレート化合物などが好ましく、中でもアジリジン化合物または金属キレート化合物が特に好ましい。
【0053】
架橋剤のうち、エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0054】
架橋剤のうち、アミン化合物としては、好ましくは1級アミノ基を2個以上有するポリアミンであり、硬化速度が優れる点から、芳香環に直接結合していない1級アミノ基を2個以上有するポリアミンである脂肪族系ポリアミン(その骨格に芳香環を含んでも良い)が好ましい
脂肪族系ポリアミンとしては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、分子両末端のプロピレン分岐炭素にアミノ基が結合したポリプロピレングリコール(プロピレン骨格のジアミン、プロピレン骨格のトリアミン)、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、H2N(CH2CH2O)2(CH22NH2(エチレングリコール骨格のジアミン)等のアミン窒素にメチレン基が結合したポリエーテル骨格のジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ポリアミドアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミンなどを挙げることができる。これらの中でも、特に硬化速度が高いことから、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン、メタキシリレンジアミン、H2N(CH2CH2O))2(CH22NH2(エチレングリコール骨格のジアミン)、プロピレン骨格のジアミン、プロピレン骨格のトリアミン、ポリアミドアミンが有用に使用される。
【0055】
また、これらのポリアミンとケトンとの反応物であるケチミンもアミノ系化合物に含まれ、安定性、反応性の調整および重ね塗り性の観点から、アセトフェノンまたはプロピオフェノンと1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンとから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンとノルボルナン骨格のジメチレンアミン(NBDA)とから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンとメタキシリレンジアミンとから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンと、エチレングリコール骨格またはプロピレン骨格のジアミンであるジェファーミンEDR148、ジェファーミンD230、ジェファーミンD400など、または、プロピレン骨格のトリアミンであるジェファーミンT403などとから得られるものなども使用することができる。
【0056】
架橋剤のうち、アジリジン化合物としては、例えば、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−(2−メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)−2−メチルプロピオネート]、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−4,4−ビス−N,N’−エチレンウレア、1,6−ヘキサメチレンビス−N,N’−エチレンウレア、2,4,6−(トリエチレンイミノ)−Syn−トリアジン、ビス[1−(2−エチル)アジリジニル]ベンゼン−1,3−カルボン酸アミドなどが挙げられる。
【0057】
架橋剤のうち、カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられ、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。また、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。
【0058】
高分子量ポリカルボジイミドとしては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させたものが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの内の一種、または、これらの混合物を使用することができる。
【0059】
カルボジイミド化触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体などのホスホレンオキシドを利用することができる。
【0060】
架橋剤のうち、オキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン基を2個以上有する化合物が好ましく用いられ、例えば、2’−メチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−プロピレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−フェニレンビス−2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)などを挙げることができる。または、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンや、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンなどのエテニル系単量体と、これらのエテニル系単量体と共重合し得る他の単量体との共重合体でもよい。
【0061】
架橋剤のうち、メラミン化合物としては、トリアジン環を分子内に有する化合物であり、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、メチルグアナミン、ビニルグアナミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。また、これらの低縮合化物やアルキルエーテル化ホルムアルデヒド樹脂やアミノプラスト樹脂を使用しても良い。
【0062】
架橋剤のうち、金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属がアセチルアセトンやアセト酢酸エチルに配位した化合物が挙げられる。
【0063】
これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、あるいは複数を使用することもできる。
【0064】
本発明の粘着剤は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤を用いることで粘着層と被着体との密着性が良好となり、耐熱性、耐湿熱性を更に向上させることができる。又、水とイソシアネート化合物(B)との副反応を阻害し、水によるイソシアネート化合物(B)の失活を防止することができる。シランカップリング剤の使用量は、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲が好ましく、特に0.05〜0.5重量部の範囲が好ましい。
【0065】
本発明に用いられる、シランカップリング剤は特に制限がなく、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジン(X−41−1056、信越化学工業社製、X−41−1810、信越化学工業社製)などが挙げられる。
【0066】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、各種樹脂、カップリング剤、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、充填剤及び老化防止剤等を配合しても良い。
【0067】
本発明において粘着フィルムは、基材上に本発明の粘着剤から形成されてなる粘着層を有するものである。
粘着フィルムは、例えば、基材上に粘着剤を塗工、乾燥することにより製造できる。粘着層は基材の少なくとも一方の面に設けられていれば良い。
【0068】
粘着剤を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することもできるし、粘着剤を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等はアクリル系重合体(A)とイソシアネート化合物(B)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。
【0069】
基材としては、例えばセロハン、プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、木材等が挙げられ、板状であってもフィルム状であっても良い。その中でも液晶ディスプレイ装置に用いる場合、基材(C)はフィルムが好ましい。さらに基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に基材の表面を剥離処理したもの(以下、剥離シートと呼ぶ)を用いることもできる。
【0070】
プラスチックシートとしては、プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルムなどが挙げられる。
【0071】
本発明において粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては粘着剤の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
【0072】
本発明の粘着フィルムは、(ア)剥離処理されたシートの剥離処理面に粘着剤を塗工、乾燥し、シート状の光学部材を粘着層の表面に積層したり、(イ)シート状の光学部材に粘着剤を塗工、乾燥し、粘着層の表面に剥離処理されたシートの剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0073】
粘着層の厚さは、0.1〜200μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。0.1μm未満では十分な粘着力が得られないことがあり、200μmを超えても粘着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0074】
更に、本発明の粘着フィルムは、無アルカリガラスに貼合わせた後、23℃で1日後の粘着力が2〜15N/25mmであることが好ましい。該粘着力が2N/25mm未満であると、粘着剤として不十分な粘着強度であり、浮きや剥がれなどが生じるおそれがある。該粘着力が2N/25mm以上であると、粘着剤として十分な粘着強度であり、被着体に十分に固定することができる。又、該粘着力が15N/25mmよりも大きいと、粘着フィルムを被着体に貼合わせた後、再剥離した際に、被着体を破壊するおそれがある。
【0075】
本発明において粘着フィルムの粘着層のゲル分率は、50〜100重量%であることが好ましく、特に70〜100重量%が好ましい。ゲル分率が50重量%未満であると、十分な凝集力を得ることができない場合がある。なお、本発明でいうゲル分率は、下記式(2)で表される。
式(2) ゲル分率(重量%)=(M2/M1)×100
M1:酢酸エチル溶剤で抽出する前の粘着層の重量
M2:酢酸エチル溶剤で抽出・乾燥した後の粘着層の重量
【0076】
本発明の粘着剤は、光学部材の貼合わせに好適に用いることができる。すなわち、本発明の粘着フィルムにおいて、基材として光学部材を好ましく使用することができる。光学部材としては、具体的には、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等を挙げることができる。粘着層の他の面には、剥離シートを積層することができる。
【0077】
このようにして得た粘着フィルムから粘着層の表面を覆っていた剥離シートを剥がし、例えば、粘着層を液晶セル用ガラス部材に貼着することによって、「シート状の光学部材/粘着層/液晶セル用ガラス部材」という構成の液晶セル部材を得ることができる。本発明では、光学部材が偏光板である場合、特に有用であり、加熱処理及び高湿処理により浮きや剥がれの生じない粘着フィルムを得ることができる。
【0078】
この偏光板としては、前述したように、偏光フィルム単独からなるものであってもよいが、偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなるものが好ましい。又、この場合、粘着層の厚さは、通常5〜100μm程度、好ましくは10〜50μmである。
【0079】
本発明の粘着剤は、光学部材用粘着剤として好適であるほか、一般ラベル・シール、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、粘着剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【実施例】
【0080】
以下に、この発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、この発明は、下記実施例に限定されない。又、下記実施例及び比較例中、「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0081】
[アクリル系重合体の合成]
(合成例1−1)
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、アクリル酸ブチル90部、アクリル酸10部、酢酸エチル90部を仕込んだ。この重合槽を80℃に加熱し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02部を添加し、2時間反応させた。更に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02部を添加し、5時間反応させた。反応終了後、重合槽を冷却し酢酸エチル110部を加え、アクリル系共重合体溶液を得た。
【0082】
(合成例1−2)
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、アクリル酸ブチル95部、アクリル酸5部、酢酸エチル40部、酢酸メチル60部を仕込んだ。この重合槽を70℃に加熱し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02部を添加し、2時間反応させた。更に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.02部を添加し、5時間反応させた。反応終了後、重合槽を冷却し酢酸エチル100部を加え、アクリル系共重合体溶液を得た。
【0083】
(合成例1−3〜1−9)
表1の重量比率に従って各種原料を仕込み、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を合成した。
【0084】
合成例1−1〜1−9により得られたアクリル系重合体溶液について、溶液の外観、重量平均分子量(Mw)を以下の方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
【0085】
<溶液外観>
各樹脂溶液の外観を目視にて評価した。
【0086】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
Mw、Mnの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)との決定はポリスチレン換算で行った。
【0087】
【表1】

【0088】
[イソシアネート化合物(B)の合成]
(合成例2−1)
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、コロネートL(TDI(トリレンジイソシアネート)のTMP(トリメチロールプロパン)アダクト体、NCO価=13.4、不揮発分=75%、日本ポリウレタン工業社製)50部、ヘキサデシルアルコール5.0部、トルエン50部を仕込んだ。この重合槽を80℃に加熱し、更に3時間反応させた。反応溶液のNCO価を測定し、NCO価を確認して反応を終了した。このイソシアネート化合物溶液は淡黄色透明な粘稠の液体であった。その結果を表2に示す。
【0089】
(合成例2−2〜2−17)
表2の重量比率に従って各種原料を仕込み、合成例2−1と同様の方法でイソシアネート化合物(B)を合成した。その結果を表2に示す。
【0090】
なお、合成例2−1〜2−17で得られたイソシアネート化合物(B)のNCO価は、以下に示す方法で求めた。
【0091】
[イソシアネート化合物(B)のNCO価、及び変性率]
共栓三角フラスコ中に試料を精密に量り採り、クロロベンゼン25ml、ジ−n−ブチルアミン/オルトジクロロベンゼン(重量比:ジ−n−ブチルアミン/オルトジクロロベンゼン=1/24.8)混合液10mlを加えて溶解する。これに、メタノール80g、ブロムフェノールブルー試薬を指示薬として加え、0.1Nアルコール性塩酸溶液で滴定した。溶液が黄緑色を呈し、30秒間保持するまで滴定を続けた。NCO価は次式により求めた。
【0092】
NCO価(%)=[0.42×(B−C)×F]/W
ただし、W:試料の採取量(g)
B:試料滴定に要した0.1Nアルコール性塩酸溶液の消費量(ml)
C:空試験の滴定に要した0.1Nアルコール性塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性塩酸溶液の力価
【0093】
【表2】

【0094】
(実施例1)
合成例1−1のアクリル系重合体100部(固形分換算)に合成例2−1のイソシアネート化合物15部(固形分換算)を配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を25%に調整して粘着剤を得た。
【0095】
前記粘着剤を、剥離処理がされた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離シートの剥離層上に、乾燥後の厚さが25μmになるように塗布したのち、100℃で2分間乾燥処理して粘着層を形成した。次いで、この粘着層に、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ多層構造の偏光フィルムの片面を貼り合せ、「剥離フィルム/粘着層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」という構成の粘着フィルムを得た。次いで、得られた粘着フィルムを温度35℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、粘着層が剥離フィルムで被覆された粘着フィルムを得た。
【0096】
(実施例2〜17、比較例1〜8)
表3および表4の重量比率に従って、実施例1と同様にして粘着剤を得た。更に実施例1と同様にして粘着層が剥離フィルムで被覆された粘着フィルムを得た。
【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
実施例1〜17及び比較例1〜8で得られた粘着フィルムを以下の方法で評価した。その結果を表5に示す。
【0100】
(1)粘着力
上記粘着フィルムを25mm幅、100mm長の大きさにカットし、剥離シートを剥がして(粘着層の厚さ25μm)、無アルカリガラス[コーニング社製「1737」]にラミネータを用いて貼着した。続いて、オートクレーブにて、50℃、5気圧の条件で20分保持させてガラス板に密着させ、その後、23℃、相対湿度50%の環境下で1日間放置したのち、同環境下で、引張試験機を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した。
【0101】
(2)塗膜外観
粘着層の外観を目視にて評価した。粘着層の外観に関しては、下記の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。
○:「塗膜は透明で実用上問題がない」
△:「塗膜はわずかに白化しており、実用上問題がある」
×:「塗膜全面が白化しており、実用不可である」
【0102】
(3)耐熱性および耐湿熱性
粘着フィルムを160mm幅、120mm長の大きさにカットし、剥離シートを剥がして無アルカリガラスに、ラミネータを用いて貼着した。続いて、この粘着フィルムが貼り付けられたガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させてガラス板に密着させ、粘着フィルムとガラス板との積層物を得た。
【0103】
耐熱性の評価として、上記積層物を85℃で500時間放置した後の発泡、浮きハガレを目視で観察した。又、耐湿熱性の評価として、上記積層物を60℃、相対湿度95%で500時間放置した後の発泡、浮きハガレを目視で観察した。耐熱性、耐湿熱性について、下記の4段階の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「発泡、浮きハガレが全く認められず、実用上全く問題がない」
○:「わずかに発泡、浮きハガレが認められるが、実用上問題がない」
△:「顕著な発泡、浮きハガレが数箇所に認められ、実用上問題がある」
×:「全面的に発泡、浮きハガレがあり、実用不可である」
【0104】
(4)光漏れ性(白抜け)
粘着フィルムを160mm幅、120mm長の大きさにカットし、剥離シートを剥がして無アルカリガラスの両面に2枚の粘着フィルムの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネータを用いて貼着した。続いて、この粘着フィルムが貼り付けられたガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させてガラス板に密着させ、粘着フィルムとガラス板との積層物を得た。
この積層物を85℃で500時間放置した後、偏光板に光を透過させたときの光漏れ(白抜け)を目視で観察した。光漏れ性について、下記の4段階の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「白ぬけが全く認められず、実用上全く問題がない」
○:「わずかに白ぬけが認められるが、実用上問題がない」
△:「顕著な白ぬけが数箇所に認められ、実用上問題がある」
×:「全面的に白ぬけがあり、実用不可である」
【0105】
(5)再剥離性(リワーク性)
粘着フィルムを25mm幅、100mm長の大きさにカットし、剥離シートを剥がして無アルカリガラスにラミネータを用いて貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させてガラス板に密着させた。この試験片を85℃で3時間放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機を用いて、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験を実施し、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、下記の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。
○:「糊残り、曇りが認められず、実用上問題がない」
△:「若干糊残り、曇りが認められ、実用上問題がある」
×:「全面的に粘着剤の転着が認められ、実用不可である」
【0106】
(6)定荷重剥離性
粘着フィルムを25mm幅、100mm長の大きさにカットし、剥離シートを剥がして無アルカリガラスにラミネータを用いて、25mm幅、80mm長の大きさのみ貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させてガラス板に密着させた後、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置した。この試験片を80℃の環境下で30分放置した後、図1のようにガラス面に対して90°の方向に100gの加重を加え、さらに24時間放置した。試験後に試験片の剥離箇所の大きさを測定し、下記の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。なお定荷重剥離性試験により耐熱性試験よりも過酷な条件下での粘着フィルムの密着性を評価することができる。
○:「剥離箇所が25mm2以下であり、実用上問題がない」
△:「剥離箇所が25mm2から125mm2であり、実用上問題がある」
×:「剥離箇所が125mm2以上であり、実用不可である」
【0107】
【表5】

【0108】
表5の結果から実施例1〜17に示すように、本発明の粘着剤は、塗膜外観、耐熱性、耐湿熱性、再剥離性、光漏れ性、定荷重剥離性に優れていることが分かる。
これに対して、比較例1〜8では、いずれかの項目が不良となっているため、実用上問題があったり、実用不可であったりすることが分かる。
【0109】
本発明の粘着剤は、光学フィルムに要求される耐熱性、耐湿熱性、光学特性、再剥離性等に優れた特性を有している。特に、光学フィルムの用途では、光学特性である光漏れが重要視され、近年のディスプレイの大型化に伴い、その要求性能はますます厳しくなってきている。そこで、本発明の粘着剤は、上述のようにこれまでは困難であった粘着特性を発揮できるため、更に有用になると考えられる。
【符号の説明】
【0110】
A:無アルカリガラス
B:粘着層
C:「TAC/PVA/TAC」積層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合体(A)100重量部に対して、イソシアネート化合物(B)を5〜40重量部含有する粘着剤であって、
前記アクリル系重合体(A)が、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(a1)0.3〜15重量%を含むモノマーを共重合してなる重量平均分子量50万〜200万の共重合体であり、
前記イソシアネート化合物(B)が、3官能イソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基100モルに対して、炭素数16〜25のアルキル基を有する単官能脂肪族アルコール(b2)及び分子内に1個以上炭素数16〜25のアルキル基を有する脂肪族第2級アミン(b3)のうち少なくともいずれか一方を3〜40モル反応してなる化合物であることを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
基材(C)と、請求項1記載の粘着剤から形成されてなる粘着層とを有することを特徴とする粘着フィルム
【請求項3】
基材(C)が、光学部材であることを特徴とする請求項3記載の粘着フィルム。
【請求項4】
光学部材が、偏光板である請求項3記載の粘着フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−57116(P2012−57116A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204028(P2010−204028)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】