説明

粘着剤層、粘着部材、その製造方法および画像表示装置

【課題】環境負荷の低い水分散型粘着剤から形成された粘着剤層であって、微細な気泡欠陥において問題のない高品位な塗布外観を呈する粘着剤層を提供すること。
【解決手段】少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液からなる水分散型粘着剤を塗布した後、乾燥することにより形成された粘着剤層であって、当該粘着剤層は、最大長さが350μmを超える気泡を含んでおらず、かつ、粘着剤層の面において、最大長さが50〜350μmの気泡の個数が、1個/m以下であることを特徴とする粘着剤層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型粘着剤から得られる粘着剤層に関する。また本発明は、当該粘着剤層を支持基材上に有する粘着部材およびその製造方法に関する。前記粘着剤層は、各種の用途で適用することができ、例えば、前記のように支持基材の片面または両面に設けて粘着部材として用いることができる他、基材レスの両面接着剤層や支持基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープ等として用いることができる。粘着部材における支持基材としては、例えば、光学フィルム、表面保護フィルム基材、セパレータ等を用いることができる。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、タッチパネルに用いられる透明導電性フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどがあげられる。特に、支持基材として光学フィルムを用いて前記粘着剤層を形成した粘着部材は、粘着型光学フィルムとして有用であり、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に用いられる。また、表面保護フィルムとしては、前記光学フィルム等に適用される各種のプラスチックフィルムなどがあげられる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の画像表示装置の形成に際しては、当該装置を形成する偏光板や位相差板等の各種の光学フィルムが粘着剤層を介して液晶セル等の被着体に貼り合わせられる。前記光学フィルムを液晶セル等の表示パネルに瞬時に固定できること、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、光学フィルムの片面に予め粘着剤層として設けられている場合が多い。また、光学フィルム等を保護するために用いられる表面保護フィルムにおいても粘着剤層が設けられている。
【0003】
上記用途においては、粘着剤層を通して画像表示をしたり、光学フィルムの検査を行なったりしているため、粘着剤層においても高品位な塗布外観が要求される。例えば、粘着剤層に気泡が異物などの欠陥が存在すると画像表示の欠陥となり、画像表示装置としての商品価値が低くなったり、光学フィルムの適切な検査が行なえなくなったりする不具合が生じる。
【0004】
従来から、上記用途に係る粘着剤層の形成に用いる粘着剤としては、高品位な塗布外観を実現しやすいことから、溶媒として有機溶剤を使用する有機溶剤型粘着剤が用いられている(特許文献1乃至3)。
【0005】
一方で、近年、環境負荷の観点から有機溶剤の使用を低減することが望まれており、有機溶剤型粘着剤から、分散媒として水を用いて、水中に粘着剤成分を分散させた水分散型粘着剤への転換が望まれている。しかしながら、水分散型粘着剤は、粘着剤成分の他に当該粘着剤成分を水中に分散させるための界面活性剤を含有しているため、泡立ち易い性質があり、水分散型粘着剤により得られる粘着剤層では微細気泡が混入している。従って、水分散型粘着剤では高品位な外観の粘着剤層を形成することが困難なため、水分散型粘着剤は、高品位な外観の要求が比較的少ない、粘着ラベル、紙基材テープ、発泡体用などの用途に用いられてきた(特許文献4乃至7)。
【0006】
最近では、透明テープ、工業用表面保護テープ、半導体ウエハ加工用テープなどの塗布外観の求められる用途への水分散型粘着剤の適用も進んではいるが(特許文献8乃至11)、光学用途に用いられる塗布外観を実現できる水分散型粘着剤は得られていない。特に、近年では、画像表示装置の大型化に伴い、大型サイズの光学フィルムに適用される粘着剤層においても、生産効率等の観点から高い歩留まりで、塗布外観の良好な粘着剤層を形成すること要求される。そのため、光学用途への水分散型粘着剤の適用は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3533589号
【特許文献2】特許第4017156号
【特許文献3】特許第3916638号
【特許文献4】特公平1−51512号公報
【特許文献5】特許第2800494号
【特許文献6】特許第4225388号
【特許文献7】特許第4087599号
【特許文献8】特開2005−179412号公報
【特許文献9】特許第3810490号
【特許文献10】特許第2968879号
【特許文献11】特許第3908929号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、環境負荷の低い水分散型粘着剤から形成された粘着剤層であって、微細な気泡欠陥において問題のない高品位な塗布外観を呈する粘着剤層を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、前記粘着剤層を有する粘着部材およびその製造方法を提供すること、さらには、当該粘着部材として粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着型層等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液からなる水分散型粘着剤を塗布した後、乾燥することにより形成された粘着剤層であって、
当該粘着剤層は、最大長さが350μmを超える気泡を含んでおらず、かつ、
粘着剤層の面において、最大長さが50〜350μm気泡の個数が、1個/m以下であることを特徴とする粘着剤層、に関する。
【0012】
本発明の粘着剤層は、水分散型粘着剤により形成されているにも拘らず、光学用途において外観欠陥とされる最大長さが350μmを超える気泡を含んでおらず、光学用途レベルにおいても外観を満足することができる。粘着剤層に含まれない気泡の最大長さの下限は小さいほど外観欠陥として認識されないため、気泡の最大長さの下限は150μmを超えないことが好ましく、さらには100μmを超えないことが好ましい。
【0013】
粘着剤層に含まれない気泡の最大長さの下限は、粘着剤層が適用される用途に応じて小さい値に設定される。例えば、粘着剤層が光学フィルムに適用される場合には、光学フィルムのサイズに応じて決定することができる。光学フィルムのサイズが小さくなるに従って、前記気泡の最大長さの下限も小さくなるように設定するのが好ましい。例えば、大型サイズ(20−42インチサイズ)の光学フィルムの場合には、最大長さが350μmを超える気泡を含んでいないことが好ましく、中型サイズ(10−20インチサイズ)の光学フィルムの場合には、最大長さが150μmを超える気泡を含んでいないことが好ましく、小型サイズ(モバイル)の光学フィルムの場合には、最大長さが100μmを超える気泡を含んでいないことが好ましい。
【0014】
また、前記粘着剤層は、粘着剤層の面において、最大長さが50〜350μmの気泡の個数が、1個/m以下である。
【0015】
最大長さが50μm未満の気泡であれば、光学用途レベルにおいても目視による外観欠陥として認識されない。一方、最大長さが50〜350μmの気泡を含む場合であっても、当該個数が多くなると、外観上好ましくない。そのため、最大長さが50〜350μmの気泡の個数は、粘着剤層の面において、1個/m以下であるのが好ましく、さらには0.5個/m以下であるのが好ましく、さらには0.1個/m以下であるのが好ましい。なお、前記気泡の個数に係る、粘着剤層中に含まれる気泡の最大長さは、前記の通り、粘着剤層が適用される用途に応じて小さく設定することができ、気泡の最大長さが50〜150μm、さらには50〜100μmの範囲で、前記気泡の個数を満足することが好ましい。
【0016】
前記粘着剤層において、水分散型粘着剤におけるベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーが好適である。また、ベースポリマーである、(メタ)アクリル系ポリマーは、乳化重合により得られたものが好ましい。水分散型粘着剤に用いられるベースポリマーとしては、乳化重合により得られた(メタ)アクリル系ポリマーが好適に用いられる。
【0017】
また本発明は、前記水分散粘着剤により形成されていることを特徴とする粘着剤層、に関する。前記粘着部材としては、支持基材として光学フィルムを用いた粘着型光学フィルムが好適である。
【0018】
また本発明は、前記粘着部材の製造方法であって、
少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液からなる、水分散型粘着剤の脱泡処理を行なう工程(1)、
支持基材の片面または両面に、脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤を塗布する工程(2)、および、
塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)を有し、
かつ、前記脱泡処理工程(1)を行なう脱泡装置のタンクと、前記塗布工程(2)に水分散型粘着剤を供給するためのポンプセットタンクが、連結管を介して連結されており、
前記脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤は、脱泡装置のタンク内の圧力よりも、ポンプセットタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力を設定して、脱泡装置のタンクからポンプセットタンクへ搬送されること特徴とする粘着部材の製造方法、に関する。
【0019】
また本発明は、前記粘着部材の製造方法であって、
少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液からなる、水分散型粘着剤の脱泡処理を行なう工程(1)
支持基材の片面または両面に、脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤を塗布する工程(2)、および、
塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)を有し、
かつ、前記脱泡処理工程(1)を行なう脱泡装置のタンクと、前記塗布工程(2)に水分散型粘着剤を供給するためのポンプセットタンクが、バッファタンクを介して、かつ連結管を介して連結されており、
前記脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤は、脱泡装置のタンク内の圧力よりも、バッファタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力を設定して、脱泡装置のタンクからバッファタンクへ搬送され、
バッファタンク内の水分散型粘着剤は、バッファタンクの圧力よりも、ポンプセットタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力を設定して、バッファタンクからポンプセットタンクへ搬送されること特徴とする粘着部材の製造方法、に関する。
【0020】
上記製造方法では、上記水分散型粘着剤に、脱泡処理工程(1)が施された後に、塗布工程(2)、次いで粘着剤層の形成工程(3)が施される。かかる脱泡処理工程(1)により、水分散型粘着剤は、予め気泡が除去されており、かつ、脱泡処理された水分散型粘着剤は、脱泡装置からポンプセットタンクへ、減圧下で減圧手段を介して圧力差を利用して搬送される。このように、脱泡装置、連結管及びポンプセットタンクは減圧状態にあり、水分散型粘着剤を脱泡装置から連結管を介してポンプセットタンクに搬送する際、系内に空気が残存する場合においても空気が水分散型粘着剤に気泡として混入したり溶解することを確実に防止することができる。また、水分散型粘着剤に気泡が再混入した場合においても容易に気液界面まで誘導して破泡させることができる。また、圧力差を利用して水分散型粘着剤の搬送が行われることから、水分散型粘着剤の搬送量を容易に調整することができる。更に、送液用のポンプが不要となり、これよりポンプのせん断や熱の影響により水分散型粘着剤の特性が変質してしまうことを防止することができる。前記各タンクの圧力差は、1kPa〜50kPaの範囲にあることが望ましく、更には5kPa〜20kPaの範囲にあることが望ましい。なお、最初の状態(搬送される水分散型粘着剤のない状態)では、前記タンクの圧力差は前記範囲を超えていてもよい。
【0021】
前記粘着部材の製造方法において、前記脱泡処理工程(1)の後における水分散型粘着剤の溶存酸素濃度は、脱泡処理工程(1)の前における水分散型粘着剤の溶存酸素濃度の10%以下であることが好ましい。
【0022】
前記脱泡処理工程(1)により、水分散型粘着剤の溶存酸素濃度を、処理前の15%以下に制御することで、粘着剤層において生じる気泡を大幅に低減することができる。溶存酸素濃度を、処理前の10%以下、さらには8%以下、さらには5%以下にするのが好ましい。
【0023】
前記粘着部材の製造方法において、塗布工程(2)において塗布される水分散型粘着剤の溶存酸素濃度が、3mg/L以下であることが好ましい。
【0024】
塗布工程(2)に用いられる水分散型粘着剤の溶存酸素濃度を低減することで、粘着剤層において生じる気泡を大幅に低減することができる。塗布される水分散型粘着剤の溶存酸素濃度は、好ましくは2mg/L以下、さらに好ましくは1.5mg/L以下である。
【0025】
また本発明は、前記粘着剤層または前記粘着部材を少なくとも1つ用いていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の粘着剤層は、高粘度の水分散型粘着剤から粘着剤層を形成した場合にも、当該粘着剤層は、微細な気泡欠陥において問題のない高品位な塗布外観を呈する。
【0027】
当該粘着剤層の形成は、上記のように、水分散型粘着剤に脱泡処理工程(1)を施した後に、当該脱泡処理された水分散型粘着剤を、脱泡装置からポンプセットタンクへ、減圧下で減圧手段を介して圧力差を利用して搬送した後、塗布工程(2)、次いで粘着剤層の形成工程(3)を施すことにより得られる。
【0028】
従来より、水分散型粘着剤を脱気・脱泡しながら、水分散型粘着剤を搬送する各種の方法・装置が提案されている。例えば、特開2004−249215号公報には、脱気装置へ送水される脱気前の塗布液又は脱気装置から排水された脱気後の塗布液の少なくとも一方の溶存酸素濃度を溶存酸素濃度検出手段により検出し、溶存酸素濃度検出手段による検出結果に基づき制御手段が脱気調整手段を制御して脱気装置の脱気度を調整するように構成された脱気システムが記載されている。また、特開2000−262956号公報には、塗布ヘッドへ塗布液の送液を開始する際に、塗布液を塗布ヘッドへ供給する送液系内を減圧してから液封液で満たし、その後塗布液で液封液を押出置換するように構成された送液方法が記載されている。
【0029】
前記特許文献に記載された脱気システムや送液方法では、塗布液が脱気装置を介してインラインで連続的に脱気されている。しかしながら、かかる方法は、塗布液の粘度が一般に100mPa・s未満である低粘度である場合に限られ、100mPa・s以上の粘度、特に、1000mPa・s以上の粘度を有する高粘度の塗布液の場合には、脱気装置を介してインラインで連続的に脱気することは困難であり、一般的にバッチ方式で脱気・脱泡処理が行われている。
【0030】
前記のように、高粘度の塗布液をバッチ方式で脱気・脱泡処理する場合、多量の高粘度の塗布液を一度に脱気・脱泡処理することが可能であるが、このように脱気・脱泡された塗布液は一度に使用されるものではない。かかる場合、前記のように脱気・脱泡された塗布液は、一旦バッファタンク等の貯留タンクで貯留され、このように貯留された塗布液はその塗布が行われる直前でポンプを介してポンプセットタンク等に搬送された後、塗布ヘッドに供給されるように構成されている。前記したように、高粘度の塗布液がバッチ方式で脱気・脱泡される場合には、塗布ヘッドに供給するまでに複数段のタンクに渡って搬送されていくこととなり、また、塗布液の搬送にポンプが使用されることから、気泡が塗布液に溶解される虞が多分に存するものである。
【0031】
塗布液に気泡が溶解されると、塗布ヘッドにより塗布されて形成される粘着剤層中に気泡が残存して外観が悪くなったり、また、粘着剤層の厚さにバラツキが発生してしまう。また、粘着剤層の乾燥後に気泡が残存してしまう。これを解消するためには、塗布液に溶解している空気を再度脱気・脱泡するとともに、脱気・脱泡後の塗布液の管理を厳重に行う必要があり、かかる場合には、余分な脱気・脱泡処理を行うこととなり、工程上大きなロスが発生してしまう。
【0032】
本発明では、バッチ方式で脱気・脱泡処理を行う場合においても、水分散型粘着剤を搬送するに際して、水分散型粘着剤へ気泡が混入溶解されることを確実に防止することが可能であり、上記粘着剤層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の粘着部材の製造において、水分散型粘着剤の搬送に減圧搬送装置が適用される場合の粘着剤塗布システムを示す概略説明図の一例である。
【図2】粘着剤塗布システムにて行われる処理操作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の粘着剤層は、水分散型粘着剤を塗布した後、乾燥することにより形成される。当該水分散型粘着剤は、ベースポリマーが水中に分散含有されている分散液である。
【0035】
水分散型粘着剤は、上記の通り水分散液であり、その粘度は、100mPa・s〜10000mPa・sの範囲の高粘度である場合にも好適に適用できる。水分散型粘着剤の固形分濃度は、通常、1〜70重量%程度である。かかる高粘度を有する水分散型粘着剤が、粘着剤層を形成すうるうえで好適である。水分散型粘着剤の粘度は、好ましくは1000mPa・s〜5000mPa・sの範囲である。水分散型粘着剤の粘度の値は、HAAKE社製粘度計(RheoStress1)を使用し、温度30℃で剪断速度=1(1/s)の条件で測定された値である。
【0036】
水分散型粘着剤は、少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液である。当該分散液としては、通常は、界面活性剤の存在下にベースポリマーが分散しているものが用いられるが、ベースポリマーが水中に分散含有されているものであれば、自己分散性ベースポリマーの自己分散によって、分散液になっているものを用いることができる。
【0037】
また、分散液中のベースポリマーは、モノマーを界面活性剤の存在下において乳化重合したり、または分散重合したりして重合することにより得られたものがあげられる。
【0038】
また、分散液は、別途製造したベースポリマーを、乳化剤の存在下に水中で乳化分散することにより製造することができる。乳化方法としては、ポリマーと乳化剤を予め加熱溶融し、または加熱溶融することなく、それらと水とを、例えば加圧ニーダー、コロイドミル、高速攪拌シャフト等の混合機を用いて、高剪断をかけて均一に乳化分散させた後、分散粒子が融着凝集しないように冷却して所望の水分散体を得る方法(高圧乳化法)や、ポリマーを予めベンゼン、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤に溶解した後、前記乳化剤及び水を添加し、例えば高速乳化機を用いて、高剪断をかけて均一に乳化分散させた後、減圧−加熱処理等により有機溶剤を除去して所望の水分散体とする方法(溶剤溶解法)等が挙げられる。
【0039】
水分散型粘着剤としては、各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーや分散手段が選択される。
【0040】
前記粘着剤のなかでも、本発明では、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から水分散型のアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0041】
水分散型アクリル系粘着剤のベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー成分を、乳化剤の存在下に乳化重合することにより得られる共重合体エマルションとして得られる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0042】
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜18のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
【0043】
また、フェノキシエチル(メタ)アクリレートのような芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、これを重合したポリマーを前記例示の(メタ)アクリル系ポリマーに混合して用いることができるが、透明性の観点から、芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合して用いるのが好ましい。
【0044】
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレート燐酸エステルなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
【0045】
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、なども改質目的のモノマー例としてあげられる。
【0046】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。さらには、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等があげられる。
【0047】
また、共重合モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーや、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0048】
(メタ)アクリル系ポリマーは、全構成モノマーの重量比率において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、(メタ)アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、前記共重合モノマーの割合は、全構成モノマーの重量比率において、0〜20%程度、0.1〜15%程度、さらには0.1〜10%程度であるのが好ましい。
【0049】
これら共重合モノマーの中でも、接着性、耐久性の点から、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。これら共重合モノマーは、水分散粘着剤が架橋剤を含有する場合に、架橋剤との反応点になる。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーなどは分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられる。
【0050】
共重合モノマーとして、ヒドロキシル基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、これら共重合モノマーは、前記共重合モノマーの割合で用いられるが、カルボキシル基含有モノマー0.1〜10重量%およびヒドロキシル基含有モノマー0.01〜2重量%を含有することが好ましい。カルボキシル基含有モノマーは、0.2〜8重量%がより好ましく、さらには0.6〜6重量%が好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーは、0.03〜1.5重量%がより好ましく、さらには0.05〜1重量%が好ましい。
【0051】
乳化剤としては、乳化重合において用いられるアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤を特に制限なく使用できる。たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。また、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤のいずれの場合にも、乳化剤中にプロペニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などの反応性官能基を導入したラジカル重合性乳化剤を用いるのが好ましい。ラジカル重合性乳化剤は、たとえば、特開平4−50204号公報、特開平4−53802号公報に記載されている。
【0052】
前記乳化剤の使用量は、特に制限されないが、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー成分100重量部に対して、0.3〜5重量部程度とするのが好ましい。乳化剤の使用量は、より好ましくは0.7〜4重量部である。
【0053】
前記モノマー成分の乳化重合は、前記乳化剤の存在下、適宜の重合開始剤を用いて、常法により行い、アクリル系重合体の水分散液を調製する。乳化重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合などにより行う。重合温度は30〜90℃程度で行うことができる。
【0054】
重合開始剤としては、たとえば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ヒドレイトなどのアゾ系、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパ−オキサイドなどの過酸化物系や、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドツクス系開始剤などがあげられる。また、乳化重合にあたっては、得られるポリマーの分子量の調整のために、必要に応じて、メルカプタン類、メルカプトプロピオン酸エステル類などに代表される適宜の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0055】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量が100万〜300万の範囲のものが用いられる。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は100万〜250万であるものを用いるのが好ましい。さらに、170万〜250万であることがより好ましく、180万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が150万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると貼り合せ性、接着力が低下する点でも好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0056】
前記水分散型粘着剤は、放射線硬化型の粘着剤として用いることができる。放射線硬化型として用いる場合には、前記粘着剤のベースポリマーとして、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の放射線硬化性の官能基を有する放射線硬化性ベースポリマーを用いたり、ベースポリマー(前記放射線硬化性ベースポリマーの場合を含む)に、さらに反応性希釈剤を配合したりして用いられる。また放射線硬化型の態様としては、例えば、ベースポリマーを形成するモノマーまたはその部分重合物を含有してなり、電子線や紫外線等の放射線を照射することでベースポリマーを含有する粘着剤層を形成できるものを含む(この場合は、ベースポリマーを形成するモノマーまたはその部分重合物がベースポリマーとされる)。放射線硬化型の粘着剤は、重合開始剤を含有できる。
【0057】
放射線硬化性ベースポリマーは、官能基aを有するベースポリマーと、当該官能基aと反応性を有する官能基bおよび(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させて得られる。官能基aおよび官能基bとしては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジン基などがあげられ、これらの中から互いに反応可能な組み合わせを適宜選択して使用できる。放射線硬化型の場合にも、粘着剤のベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましい。
【0058】
反応性希釈剤は、前記放射線硬化性の官能基を少なくとも一つ有するラジカル重合性等のモノマーおよび/またはオリゴマー成分が用いられる。
【0059】
本発明の水分散型粘着剤は、上記のベースポリマー(放射線硬化型の場合は、ベースポリマーの他、ベースポリマーを形成するモノマーまたはその部分重合物、反応性希釈剤)に加えて、架橋剤を含有することができる。水分散型粘着剤が水分散型アクリル系粘着剤の場合に用いられる架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤などの一般に用いられているものを使用できる。これら架橋剤は、官能基含有単量体を用いることにより重合体中に導入した官能基と反応して架橋する効果を有する。
【0060】
ベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)10重量部程度以下の割合で配合される。前記架橋剤の配合割合は、0.001〜10重量部が好ましく、さらには0.01〜5重量部程度が好ましい。
【0061】
さらには、本発明の水分散型粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。これら添加剤もエマルションとして配合することができる。
【0062】
本発明の粘着剤層は、上記水分散型粘着剤により形成されるが、塗布される水分散型粘着剤には、まず、脱泡処理を行なう工程(1)が施される。次いで、支持基材の片面または両面に、脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤を塗布する工程(2)、および、塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)が順次に施される。かつ、前記工程(1)乃至工程(3)は一連の工程で行なうことができるが、前記脱泡処理工程(1)を行なう脱泡装置のタンクと、前記塗布工程(2)に水分散型粘着剤を供給するためのポンプセットタンクは、連結管を介して連結しており、前記脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤は、各タンク内の圧力差を利用して、脱泡装置からポンプセットタンクへ搬送される。また、脱泡装置のタンクとポンプセットタンクは、バッファタンクを介して、かつ連結管を介することができ、その場合にも、水分散型粘着剤は、脱泡装置からポンプセットタンクへ各タンク内の圧力差を利用して、脱泡装置からポンプセットタンクへ搬送される。
【0063】
以下、本発明の粘着剤層の形成にあたり、水分散型粘着剤に施される、脱泡処理工程(1)および、脱泡処理工程(1)から塗布工程(2)への減圧搬送方法工程について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る水分散型粘着剤の粘着剤塗布システムを示す概略説明図であり、脱泡装置のタンクとポンプセットタンクは、バッファタンクを介して、かつ連結管を介している場合である。なお、図1では、バッファタンクが1つ設けられている場合が示されているが、バッファタンクは複数設けることができる。バッファタンクが複数も設けられる場合には、バッファタンクの間は連結管を介して連結されており、水分散型粘着剤を搬送するバッファタンクの圧力よりも、搬送されるバッファタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力が設定されて、前記同様に各バッファタンク内の圧力差を利用して、水分散型粘着剤が搬送される。
【0064】
図1において、粘着剤塗布システムSは、基本的に、バッチ方式で密閉タンク11内に投入された粘着剤を含有する水分散型粘着剤2の脱泡処理を行う脱泡装置1、密閉タンク11内で脱泡された水分散型粘着剤2を一時的に貯留する密閉タンク31を有するバッファタンク3、バッファタンク3の密閉タンク31から搬送される水分散型粘着剤2を塗布用に貯留する密閉タンク51を有するポンプセットタンク5、ポンプセットタンク5の密閉タンク51から水分散型粘着剤2をフィルタ93を介して塗布装置94まで送液する送液ポンプ92、及び、脱泡装置1の密閉タンク11、バッファタンク3の密閉タンク31、ポンプセットタンク5の密閉タンク51等を減圧する真空ポンプ7から構成されている。
【0065】
ここに、脱泡装置1の密閉タンク11とバッファタンク3の密閉タンク31とは、連結管4を介して連結されており、かかる連結管4にて、密閉タンク11側にはドレンバルブ14、バッファタンク3の密閉タンク31側には開閉バルブ41が介装されている。また、バッファタンク3の密閉タンク31とポンプセットタンク5の密閉タンク51とは、連結管6を介して連結されており、かかる連結管6にて、バッファタンク3の密閉タンク31側にはドレンバルブ33、ポンプセットタンク5の密閉タンク51側には開閉バルブ61が介装されている。更に、ポンプセットタンク5の下流側にはドレンバルブ53が介装され、ポンプ92に連結されている。
【0066】
また、脱泡装置1の密閉タンク11は、真空バルブ16を介して吸引管8により真空ポンプ7に連結されており、また、バッファタンク3の密閉タンク31は、真空バルブ35を介して吸引管8により真空ポンプ7に連結されている。更に、ポンプセットタンク5の密閉タンク51は、真空バルブ55を介して吸引管8により真空ポンプ7に連結されている。
【0067】
脱泡装置1は密閉タンク11を有しており、かかる密閉タンク11内には、水分散型粘着剤2を撹拌するための撹拌羽根12が配設されている。密閉タンク11の上部には、圧力計13、リークバルブ15及び吸引管8に介装された真空バルブ16が設けられている。脱泡装置1における密閉タンク11内の圧力は、リークバルブ15及び真空バルブ16の開度を操作・調整することにより調整される。また、脱泡装置1の密閉タンク11には、水分散型粘着剤2を密閉タンク11に供給するチャージタンク91が連結管96を介して連結されており、チャージタンク91から密閉タンク11に供給される水分散型粘着剤2の量は、開閉バルブ95の開閉を制御することにより調整される。
【0068】
バッファタンク3は、密閉タンク31を有しており、かかる密閉タンク31の上部には、圧力計32、リークバルブ34及び吸引管8に介装された真空バルブ35が設けられている。密閉タンク31内の圧力は、リークバルブ34及び真空バルブ35の開度を操作・調整することにより調整される。
【0069】
ポンプセットタンク5は、密閉タンク51を有しており、かかる密閉タンク51の上部には、圧力計52、リークバルブ54及び吸引管8に介装された真空バルブ55が設けられている。密閉タンク51内の圧力は、リークバルブ54及び真空バルブ55の開度を操作・調整することにより調整される。
【0070】
続いて、前記のように構成された粘着剤塗布システムSにて行われる処理操作について、図2に基づき説明する。図2は粘着剤塗布システムにて行われる処理操作を示すフローチャートである。
【0071】
先ず、開閉バルブ95を開放することによりチャージタンク91から水分散型粘着剤2が脱泡操作1の密閉タンク11内に投入される(S1)。続いて、脱泡装置1にて水分散型粘着剤2の脱泡処理工程(1)が行われる(S2)。かかる脱泡時には、真空バルブ16は開状態にされ、他のリークバルブ15、開閉バルブ95、ドレンバルブ14は閉状態にされる。そして、真空ポンプ7により密閉タンク11内が減圧されるとともに、撹拌羽根12の回転が行われる。これにより、水分散型粘着剤2の脱泡処理が行われる。脱泡処理工程(1)は、脱泡操作1の密閉タンク11内を、10kPa程度以下、好ましくは5kPa以下、さらに好ましくは2kPa以下に減圧することにより行なわれる。
【0072】
前記脱泡処理が終了した後、撹拌羽根12の回転が停止され、リークバルブ15の開度を調整して密閉タンク11内の圧力が所定の設定圧力に調整される(S3)。この後、全てのバルブを閉状態にして脱泡装置1内が密閉系に保持される。
【0073】
次に、バッファタンク3を構成する密閉タンク31に設けられた真空バルブ35及び開閉バルブ41が開状態にされ、真空ポンプ7を介して密閉タンク31及び連結管4が減圧される。このとき、減圧の程度は、送液系内の残存空気量を決定して水分散型粘着剤2内に気泡の混入を防止するための重要な因子であり、本実施形態の減圧搬送装置では、絶対圧で50kPa以下、好ましくは20kPa以下、更に好ましくは7kPa以下である。送液経路に空気が存在すると、そこで気液界面が発生し、水分散型粘着剤2の移動によって水分散型粘着剤2内部に気泡を取り込んでしまう可能性が高くなることから、前記のように送液系内を減圧する必要がある。また、水分散型粘着剤2の性質によって飽和蒸気圧が異なることから、送液時の温度に依存して水分散型粘着剤2が沸騰をしないように送液系内の圧力を設定する必要がある。
【0074】
また、リークバルブ34の開度を操作・調整することにより密閉タンク31及び連結管4内が所定設定圧力に調整される(S4)。この調整状態で、密閉タンク11の下流側にて連結管4に介装されているドレンバルブ14が開状態にされる。このとき、脱泡装置1の密閉タンク11とバッファタンク3の密閉タンク31及び連結管4との間で圧力差が発生し、かかる圧力差に基づいて密閉タンク11から密閉タンク31への水分散型粘着剤2の搬送が開始される(S5)。このとき、前記のように圧力差によって水分散型粘着剤2の搬送を行う場合に、送液流量を制御するためには、送液の上流部と下流部との圧力差が重要な因子となり、例えば、本実施形態では、1kPa〜50kPaの範囲にあることが望ましく、更には5kPa〜20kPaの範囲にあることが望ましい。ここに、圧力差が大きすぎると液流量は大きくなり、その結果、気液界面の変動が早くなって気泡を取り込みやすくなる。本実施形態の場合、圧力差が50kPa以上になると、水分散型粘着剤2内に気泡が混入される場合が多くなり、また、圧力差が1kPa以下になると、送液流量は極めて小さくなり、生産には適さなくなる。
【0075】
前記水分散型粘着剤2の搬送中、脱泡装置1側のリークバルブ15及びバッファタンク3側のリークバルブ34の開度を調整することにより、脱泡装置1の密閉タンク11とバッファタンク3の密閉タンク31内がそれぞれ所定の設定圧力に調整される(S6)。このとき、水分散型粘着剤2が密閉タンク11から完全に抜けきる前にドレンバルブ14及び開閉バルブ41が閉状態にされる。これにより、水分散型粘着剤2が完全に抜けきる際に発生する空気の流れに起因して気泡が混入することを防止することができる。
【0076】
ここに、バッファタンク3の密閉タンク31内に搬送された水分散型粘着剤2を密閉タンク31内で保存する場合、密閉タンク31内は開放系にしても密閉系にしてもよい。また、密閉系にした場合であっても、バッファタンク3の密閉タンク31内は、常圧であっても減圧であってもよい。尚、密閉タンク31内が減圧状態であれば、静置脱泡を促進することができる。
【0077】
続いて、ポンプセットタンク5を構成する密閉タンク51の真空バルブ55及び開閉バルブ61が開状態にされ、真空ポンプ7を介して密閉タンク51及び連結管6が減圧される。また、リークバルブ54の開度を操作・調整することにより密閉タンク51及び連結管6内が所定設定圧力に調整される(S7)。この調整状態で、密閉タンク31の下流側にて連結管6に介装されているドレンバルブ33が開状態にされる。このとき、密閉タンク31と密閉タンク51及び連結管6との間で圧力差が発生し、かかる圧力差に基づいて密閉タンク31から密閉タンク51への水分散型粘着剤2の搬送が開始される(S8)。この場合には、前記同様に、送液の上流部と下流部との圧力差が、1kPa〜50kPaの範囲にあることが望ましく、更には5kPa〜20kPaの範囲にあることが望ましい。
【0078】
前記水分散型粘着剤2の搬送中、バッファタンク3側のリークバルブ34及びポンプセットタンク5側のリークバルブ54の開度を調整することにより、バッファタンク3の密閉タンク31とポンプセットタンク5の密閉タンク51内がそれぞれ所定の設定圧力に調整される。このとき、水分散型粘着剤2が密閉タンク31から完全に抜けきる前にドレンバルブ33及び開閉バルブ61が閉状態にされる。これにより、水分散型粘着剤2が完全に抜けきる際に発生する空気の流れに起因して気泡が混入することを防止することができる。
【0079】
前記のように、水分散型粘着剤2をポンプセットタンク5の密閉タンク51に搬送した後、ドレンバルブ53が開状態にされるとともに送液ポンプ92が駆動される。これにより、水分散型粘着剤2は、送液ポンプ92からフィルタ93を経て塗布装置94に搬送される。塗布装置94では、支持基材の片面または両面に、水分散型粘着剤を塗布する工程(2)、次いで、塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)が施される(S9)。なお、水分散型粘着剤2の塗布装置94への搬送は、フィルタ93に、まず、水を流してフィルタ93の気泡を除去し、さらに水分散型粘着剤2を1〜3時間程度、密閉タンク51に循環させて、フィルタ93内の水を水分散型粘着剤2で置換した後に行なうことが好ましい。なお、図1では記載されていないが、水分散型粘着剤2の循環は、フィルタ93と塗布装置94を連結する送液管にバルブを設け、かつ当該送液管から分かれて密閉タンク51に連結する循環管を設けて、前記バルブの開閉により循環を行なったり、取り外し可能な送液管を密閉タンク51に直接連結させたりすることにより行なうことができる。
【0080】
尚、前記システムにおける真空ポンプ7や各種バルブの操作は、各圧力計13、32、52の指針を確認して手動で行われてもよいし、また、各圧力計13、32、52の指針に基づく制御により遠隔指示により自動的に行われてもよい。また、真空ポンプ7は1つでもよいし、複数であってもよい。
【0081】
続いて、前記したように、水分散型粘着剤2の脱泡前から塗布時に至る水分散型粘着剤2における溶存酸素濃度の測定について説明する。ここに、水分散型粘着剤2における溶存酸素濃度に着目する理由は、水分散型粘着剤2に空気が溶解している場合には水分散型粘着剤2の乾燥時に空気が気泡として発生し、その気泡に起因して種々の問題が発生するからであり、脱泡から塗布に至る間で水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度を厳格に管理する必要がある。尚、水分散型粘着剤2中に溶解した空気量の定量を行うにつき、一般に溶存酸素濃度を使用して水分散型粘着剤2中に溶解している空気量が表される。
【0082】
水分散型粘着剤2における溶存酸素濃度は、脱泡装置1にて脱泡処理工程(1)が行われる前(脱泡前)、脱泡処理が行われた後(脱泡後)、バッファタンク3の密閉タンク31に搬送された後(搬送後)に測定される。また、塗布される水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度が、塗布工程(2)の前に測定される。本発明における水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度の測定は、具体的には実施例の記載による。
【0083】
脱泡装置1の密閉タンク11の底部には、図1に示すように、溶存酸素測定器100が配置されており、かかる溶存酸素測定器100を介して、密閉タンク11内に水分散型粘着剤2が投入された脱泡前及び水分散型粘着剤2の脱泡後に、水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度を測定することができる。なお、水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度の測定は、脱泡前及び脱泡後に水分散型粘着剤2を系外にサンプルとして取り出し、測定器により測定してもよい。
【0084】
また、バッファタンク3の密閉タンク31の底部には、図1に示すように、溶存酸素測定器101が配置されており、かかる溶存酸素測定器101を介して、水分散型粘着剤2をバッファタンク3に搬送した後における水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度を測定することができる。上記同様に、水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度の測定は、水分散型粘着剤2を系外にサンプルとして取り出し、測定器により測定してもよい。
【0085】
更に、ポンプセットタンク5の密閉タンク51の底部には、図1に示すように、溶存酸素測定器102が配置されており、かかる溶存酸素測定器102を介して、塗布工程(2)の前において、水分散型粘着剤2のフィルタ循環前及び循環後の溶存酸素濃度を測定することができる。その他、塗布工程(2)の前に複数の水分散型粘着剤サンプルを抽出して各水分散型粘着剤サンプルの溶存酸素濃度、及び、塗布工程(2)の後に、最終溶存酸素濃度を測定することができる。
【0086】
次いで、上記塗布工程(2)および粘着剤層の形成工程(3)について説明する。これら工程により支持基材に粘着剤層を形成する。支持基材は各種の材料を用いることができ、例えば、光学フィルム、表面保護フィルム基材やセパレータがあげられる。
【0087】
支持基材がセパレータの場合、例えば、前記水分散粘着剤をセパレータなどに塗布し、乾燥して粘着剤層を形成することにより粘着部材が得られる。支持基材が光学フィルム等の場合には、前記セパレータに形成した粘着剤層を光学フィルム等に転写する方法、または光学フィルム等に前記水分散粘着剤を塗布し、乾燥して粘着剤層を光学フィルム等に、直接、形成する方法などにより作製される。
【0088】
塗布工程(2)には、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0089】
また、粘着剤層の形成工程(3)では、水分散粘着剤を用いた場合の通常の条件、即ち、乾燥温度(例えば40〜150℃)、乾燥時間(20秒〜30分間)を採用できる。
【0090】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、5〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。
【0091】
前記粘着剤層は、下記方法にて測定される、可使光波長領域における全光線透過率が10%以上であり、かつヘイズが75%以下であることが好ましい。
【0092】
下記方法にて測定される、粘着剤層の全光線透過率が10%以上やヘイズが75%以下の場合には、気泡による外観欠陥を認識しやすい状態である。また光学用途においては、全光線透過率が高いこと、ヘイズが小さいことが望ましい。全光線透過率は、好ましくは14%以上、さらに好ましくは18%以上である。ヘイズは好ましくは65%以下である。
【0093】
<可使光波長領域における全光線透過率およびヘイズ>
測定対象となる粘着剤層(厚み23μm)の一方の面に、厚さ100μmの偏光板(日東電工社製,TEG−DU)を貼り合せた積層物(偏光板/粘着剤層、の積層構造)について、ヘイズメーターHM−150型((株)村上色彩技術研究所製)を用いて、全光線透過率(%):JISK−7361およびヘイズ(%):JIS K−7136を測定した。
【0094】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0095】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0096】
前記セパレータの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0097】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまでセパレータで粘着剤層を保護してもよい。なお、上記の粘着部材の作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着型光学フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0098】
また、支持基材が表面保護フィルム基材や光学フィルムの場合には、光学フィルムの表面に、粘着剤層との間の密着性を向上させるために、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0099】
上記アンカー層の形成材としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類から選ばれるアンカー剤が用いられ、特に好ましくは、分子中にアミノ基を含んだポリマー類である。分子中にアミノ基を含むポリマー類は、分子中のアミノ基が粘着剤中のカルボキシル基等と反応またはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
【0100】
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などをあげることができる。
【0101】
表面保護フィルム基材に用いられるプラスチックフィルムとしては、セパレータと同様の材料を例示できる。当該プラスチックフィルムの表面は適宜に粗面化したり、離型処理層を設けたりすることができる。
【0102】
光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0103】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0104】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0105】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0106】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0107】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0108】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル等の表示パネルと粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0109】
液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0110】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
【0111】
実施例1
(プレエマルションの調製)
容器に、アクリル酸ブチル92部、メタクリル酸6部、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(プロピレンオキシドの平均重合度約5.0)2部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(KBM−503、信越化学(株)製)0.03部を加えて混合し、反応成分の混合物を調製した。次いで、調製した反応成分の混合物388gに、反応性乳化剤アクアロンHS−10(第一工業製薬(株))46.6g、イオン交換水346gを加え、ホモジナイザー(特殊機化(株)製)を用いて、5分間、5000(1/min)で、攪拌し強制乳化して、モノマープレエマルションを調製した。
【0112】
(水分散型共重合体のエマルション溶液の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、上記で調製したモノマープレエマルションのうちの156g、イオン交換水219gを仕込み、次いで、反応容器を窒素置換し、過硫酸アンモニウム0.023g(仕込まれたモノマープレエマルションの固形分100部に対して、0.03部)を添加して、65℃で、2.5時間重合した。次いで、残りのモノマープレエマルションの625gに過硫酸アンモニウム0.217g(残りのモノマープレエマルションの固形分100部に対して、0.07部)を添加し、これを、反応容器に3時間かけて滴下して、その後、窒素置換しながら、70℃で3時間重合し、固形分40%の水分散型共重合体のエマルション溶液を得た。
【0113】
(水分散型粘着剤組成物の調製)
得られた水分散型共重合体のエマルション溶液を室温まで冷却し、10%アンモニア水を添加して、pHを8に調整し、さらに、カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトV−04,水溶性タイプ,日清紡(株)製)を、水分散型共重合体の固形分100部に対して、0.1部添加して、水分散型粘着剤組成物(粘度6000mPa・s)を調製した。
【0114】
(水分散型粘着剤の脱泡処理)
図1に従って、下記操作を行なった。先ず、上記水分散型粘着剤(80kg)2を脱泡装置1の密閉タンク11内に投入した。この状態で水分散型粘着剤2をサンプリングして溶存酸素濃度計を介して脱泡前の溶存酸素濃度を測定したところ、5.75mg/Lであった。
【0115】
密閉タンク11内に投入した水分散型粘着剤2について30分間脱泡処理を行った。ここに、脱泡時には、真空バルブ16を開状態とし、また、その他の脱泡装置1に繋がるバルブは全て閉状態とし、密閉タンク11の内部圧力を3kPaにして撹拌羽根12を回転させることにより減圧脱泡を行った。脱泡処理後、水分散型粘着剤2をサンプリングして溶存酸素濃度計を介して脱泡後の溶存酸素濃度を測定したところ、0.41mg/Lであった。ここに、脱泡後における溶存酸素濃度(0.41mg/L)は、脱泡前の溶存酸素濃度(5.75mg/L)の7.13%であり、脱泡前の10%以下に減少していることが分かる。脱泡前の水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度は、開閉バルブ95と密閉タンク11の間の連結管96からサンプリングして取り出して、脱泡後の水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度値は、脱泡後に、ドレンバルブ14を通過直後のものをサンプリングして取り出して、測定した値である。
【0116】
なお、溶存酸素濃度の測定は、サンプリングして取り出した水分散型粘着剤(約150ml)を200mlの広口ガラス瓶に入れ、その中に、溶存酸素濃度計(Dissolved Oxgen Meter/model,Thermo Electron Co.)を用い、その電極を投入して、ゆっくりと撹拌させながら計測した。測定温度は26℃で行なった。他の、溶存酸素濃度の測定も同様に行なった。
【0117】
(水分散型粘着剤の減圧搬送)
次に、脱泡装置1のリークバルブ15、真空バルブ16及びバッファタンク3のリークバルブ34、真空バルブ35の開度を操作・調整し、真空ポンプ7によって脱泡装置1の密閉タンク11の内部圧力を11kPaに、バッファタンク3の密閉タンク31の内部圧力を4kPaに減圧・調整した。
【0118】
続いて、ドレンバルブ14及び開閉バルブ41を開放し、密閉タンク11と密閉タンク31との圧力差に基づいて、脱泡装置1の密閉タンク11からバッファタンク3の密閉タンク31へ水分散型粘着剤2を搬送した。このとき、圧力計13の値からリークバルブ15の開度を操作・調整し、水分散型粘着剤2が連結管4を満たすまでは脱泡装置1の密閉タンク11の内部圧力を11kPaに、水分散型粘着剤2がバッファタンク3の密閉タンク31側に流入を開始した後には脱泡装置1の密閉タンク11の内部圧力を17kPaに調整した。即ち、リークバルブ15を操作・調整することによって、脱泡装置1の密閉タンク11の内部圧力とバッファタンク3の密閉タンク31の内部圧力との差が13kPa以内となるように調整した。
【0119】
バッファタンク3の密閉タンク31側に水分散型粘着剤2を搬送した後、バッファタンク3に繋がる全てのバルブを閉じた。このとき、水分散型粘着剤2をサンプリングして溶存酸素濃度計を介して搬送後の溶存酸素濃度を測定したところ、0.28mg/Lであった。ここに、密閉タンク31への水分散型粘着剤2の搬送後における溶存酸素濃度(0.28mg/L)は、脱泡前の溶存酸素濃度(5.75mg/L)の4.87%であり、溶存酸素濃度は脱泡後におけるよりも更に減少して脱泡前の5%以下に減少していることが分かる。当該水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度値は、ドレンバルブ33を通過直後のものをサンプリングして取り出して、測定した値である。
【0120】
続いて、バッファタンク3のリークバルブ34と真空バルブ35及びポンプセットタンク5のリークバルブ54と真空バルブ55の開度を操作・調整し、真空ポンプ7によってバッファタンク3の密閉タンク31の内部圧力を11kPaに、ポンプセットタンク5の密閉タンク51の内部圧力を4kPaに減圧・調整した。
【0121】
続いて、ドレンバルブ33及び開閉バルブ61を開放し、バッファタンク3の密閉タンク31とポンプセットタンク5の密閉タンク51との圧力差に基づいて、バッファタンク3の密閉タンク31からポンプセットタンク5の密閉タンク51へ水分散型粘着剤2を搬送した。このとき、圧力計32の値からリークバルブ34の開度を操作・調整し、水分散型粘着剤2が連結管6を満たすまではバッファタンク3の密閉タンク31の内部圧力を11kPaに、水分散型粘着剤2がポンプセットタンク5の密閉タンク51側に流入を開始した後にはバッファタンク3の密閉タンク31の内部圧力を23kPaに調整した。即ち、リークバルブ54を操作・調整することによって、バッファタンク3の密閉タンク31の内部圧力とポンプセットタンク5の密閉タンク51の内部圧力との差が19kPa以内となるように調整した。
【0122】
ポンプセットタンク5の密閉タンク51側に水分散型粘着剤2を搬送した後、ポンプセットタンク5に繋がる全てのバルブを閉じた。このとき、水分散型粘着剤2をサンプリングして溶存酸素計を介して搬送後の溶存酸素濃度を測定したところ、0.28mg/Lであった。ここに、密閉タンク51への水分散型粘着剤2の搬送後における溶存酸素濃度(0.28mg/L)は、脱泡前の溶存酸素濃度(5.75mg/L)の4.87%であり、溶存酸素濃度は密閉タンク31への搬送後の状態を維持しており、また、脱泡後におけるよりも更に減少して脱泡前の5%以下に減少していることが分かる。当該水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度値は、ドレンバルブ53を通過直後のものをサンプリングして取り出して、測定した値である。
【0123】
この後、ポンプセットタンク5の密閉タンク51内の水分散型粘着剤2を、送液ポンプ92により、フィルタ93を介して塗布装置94に搬送して、下記粘着剤層の形成を行なった。フィルタ93には、まず、水を流してフィルタ93の気泡を除去した。次いで、水分散型粘着剤2を流して、フィルタ93の水を水分散型粘着剤2で押出して排出した後、水分散型粘着剤2で、密閉タンク51内に1時間循環させて、フィルタ93内の水を水分散型粘着剤2に置換した。水を置換する前の溶存酸素濃度は0.83mg/L、置換後には0.66mg/Lであった。当該水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度値は、ドレンバルブ53を通過直後で、塗布装置94手前のものをサンプリングして取り出して、測定した値である。
【0124】
(粘着剤層の形成)
上記の搬送された水分散型粘着剤2を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)からなるセパレータの表面に、乾燥後の厚みが23μmになるようにダイコーターにより塗布した後、100℃で135秒間乾燥して、粘着剤層を形成した。なお、塗布される水分散型粘着剤2に溶存酸素濃度は、0.55mg/Lであった。当該塗布直前の水分散型粘着剤2の溶存酸素濃度は、塗布装置94の手前(コーターの寸前の箇所)で、水分散型粘着剤2をサンプリングして測定した。また、塗布終了時に、塗布装置94の手前に(コーターの寸前の箇所)残存していた、水分散型粘着剤2の最終溶存酸素濃度は1.04mg/Lであった。
【0125】
実施例2
(水分散型粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。ここにアクリル酸2−エチルへキシル95部、アクリル酸5部および乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬(株)の商品名「ハイテノールLA−16」)1.0部(固形分換算)を水70部で乳化したものを80℃で3時間かけて滴下し、さらに80℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルションを得た。この共重合体エマルションに、その固形分(水分散系共重合体)100部に対し、オキサゾリン基を含有する水溶性架橋剤として(株)日本触媒の商品名「エポクロスWS−700」(オキサゾリン基当量:220g・solid/eq.)0.1部(固形分換算)を混合して、水分散型粘着剤(ベースポリマーの固形分39%,粘度6000mPa・s)を調製した。
【0126】
(水分散型粘着剤の脱泡処理)
実施例1において、上記水分散型粘着剤を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を居行なった。水分散型粘着剤の脱泡前の溶存酸素濃度は、4.88mg/Lであった。脱泡後の溶存酸素濃度は、0.32mg/Lであり、脱泡前の溶存酸素濃度(4.88mg/L)の6.56%であった。
【0127】
(水分散型粘着剤の減圧搬送)
実施例1において、上記水分散型粘着剤を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を居行なった。バッファタンクに搬送後の溶存酸素濃度を測定したところ、0.15mg/Lであった。バッファタンクに搬送後の溶存酸素濃度(0.15mg/L)、脱泡前の溶存酸素濃度(4.88mg/L)の3.07%であった。
またポンプセットタンクに搬送後の溶存酸素濃度を測定したところ、0.15mg/Lであった。ポンプセットタンクに搬送後の溶存酸素濃度(0.15mg/L)、脱泡前の溶存酸素濃度(4.88mg/L)の3.07%であった。
【0128】
(粘着剤層の形成)
次いで、実施例1と同様にして、搬送された水分散型粘着剤を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)からなるセパレータの表面に、乾燥後の厚みが23μmになるようにダイコーターにより塗布した後、100℃で135秒間乾燥して、粘着剤層を形成した。なお、塗布される水分散型粘着剤に溶存酸素濃度は、0.80mg/Lであった。また、塗布終了時における、水分散型粘着剤の最終溶存酸素濃度は0.86mg/Lであった。
【0129】
比較例1
実施例1において、水分散型粘着剤に対して、脱泡処理を行なわなかったこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を作成した。
【0130】
比較例2
実施例1において、水分散型粘着剤に対して、脱泡処理した後に、減圧搬送を行なわなかったこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を作成した。
【0131】
上記実施例および比較例で得られた粘着剤層について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0132】
<粘着剤層中の気泡>
粘着剤層(面積10m)に含まれる気泡を目視および光学顕微鏡にて、その個数と大きさを確認した。気泡の最大長さ(μm)と、最大長さが50μm以上の気泡の個数の割合(個/m)を示す。
【0133】
<欠陥観察>
実施例および比較例において得られた粘着剤層(厚み23μm)の両面を、厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステル(株)製,MRF38)で挟み込んだものをサンプルとした。当該サンプルの上に、偏光板(日東電工社製,TEG−DU)を載せ、当該偏光板の側から、気泡欠陥が見えるか否かを目視で確認し、下記基準で評価した。
○:目視で気泡が見えない。
×:目視で気泡が見える。
【0134】
【表1】

【符号の説明】
【0135】
1 脱泡装置
2 水分散型粘着剤
3 バッファタンク
4 連結管
5 ポンプセットタンク
7 真空ポンプ
6 連結管
11 密閉タンク
13 真空バルブ
31 密閉タンク
51 密閉タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液からなる水分散型粘着剤を塗布した後、乾燥することにより形成された粘着剤層であって、
当該粘着剤層は、最大長さが350μmを超える気泡を含んでおらず、かつ、
粘着剤層の面において、最大長さが50〜350μmの気泡の個数が、1個/m以下であることを特徴とする粘着剤層。
【請求項2】
水分散型粘着剤におけるベースポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の粘着剤層。
【請求項3】
ベースポリマーである、(メタ)アクリル系ポリマーが、乳化重合により得られたものであることを特徴とする請求項2記載の粘着剤層。
【請求項4】
支持基材の片面または両面に、請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤層を有することを特徴とする粘着部材。
【請求項5】
支持基材が光学フィルムであることを特徴とする請求項4記載の粘着部材。
【請求項6】
請求項4または5記載の粘着部材の製造方法であって、
少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液からなる、水分散型粘着剤の脱泡処理を行なう工程(1)
支持基材の片面または両面に、脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤を塗布する工程(2)、および、
塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)を有し、
かつ、前記脱泡処理工程(1)を行なう脱泡装置のタンクと、前記塗布工程(2)に水分散型粘着剤を供給するためのポンプセットタンクが、連結管を介して連結されており、
前記脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤は、脱泡装置のタンク内の圧力よりも、ポンプセットタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力を設定して、脱泡装置のタンクからポンプセットタンクへ搬送されること特徴とする粘着部材の製造方法。
【請求項7】
請求項4または5記載の粘着部材の製造方法であって、
少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている分散液からなる、水分散型粘着剤の脱泡処理を行なう工程(1)
支持基材の片面または両面に、脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤を塗布する工程(2)、および、
塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(3)を有し、
かつ、前記脱泡処理工程(1)を行なう脱泡装置のタンクと、前記塗布工程(2)に水分散型粘着剤を供給するためのポンプセットタンクが、バッファタンクを介して、かつ連結管を介して連結されており、
前記脱泡処理工程(1)が行なわれた水分散型粘着剤は、脱泡装置のタンク内の圧力よりも、バッファタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力を設定して、脱泡装置のタンクからバッファタンクへ搬送され、
バッファタンク内の水分散型粘着剤は、バッファタンクの圧力よりも、ポンプセットタンク及び連結管内の圧力が、1kPa〜50kPa小さくなるように、各圧力を設定して、バッファタンクからポンプセットタンクへ搬送されること特徴とする粘着部材の製造方法。
【請求項8】
前記脱泡処理工程(1)の後における水分散型粘着剤の溶存酸素濃度は、脱泡処理工程(1)の前における水分散型粘着剤の溶存酸素濃度の15%以下であることを特徴とする請求項6または7記載の粘着部材の製造方法。
【請求項9】
塗布工程(2)において塗布される水分散型粘着剤の溶存酸素濃度が、3mg/L以下であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の粘着部材の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤層または請求項4もしくは5記載の粘着部材を少なくとも1つ用いていることを特徴とする画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−280856(P2010−280856A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136575(P2009−136575)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】