説明

粘着剤組成物、両面粘着テープおよび接着方法

【課題】接着性および耐衝撃性に優れる両面粘着テープを得るために使用することができる粘着剤組成物、当該粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する両面粘着テープ、および当該両面粘着テープを用いる接着方法を提供すること。
【解決手段】a)主成分モノマーとして、アルキル基の炭素数4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、b)全モノマー100重量%に対して5〜50重量%の、分子内にカルボキシル基を有しかつそのホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以下であるモノマーと、からなるポリマーを含有する粘着剤組成物、基材の少なくとも片面に、当該粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成されている両面粘着テープ、および、両面粘着テープとして当該両面粘着テープを用い、当該粘着剤組成物からなる粘着剤層の側に塗装面を接着し、もう一方の粘着剤層の側に部品を接着する、塗装面と部品とを両面粘着テープを用いて接着する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する両面粘着テープおよび該両面粘着テープを用いる接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
両面粘着テープは物品への貼付け前に任意の形状に打ち抜き加工が可能であり、作業性が良好なため、各種産業分野において物品の固定に利用されている。特に、PDAや携帯電話などの携帯用電子機器などの表示部や銘板は固定される部品が小型で複雑な形状をしているため、これらの小型部品の固定には両面粘着テープが用いられることが多い。
【0003】
携帯電子機器はその利用形態から机上から落下する場合がある。このような場合にも、携帯電子機器には破損が生じない耐久性が求められる。しかし、従来より、携帯電子機器等の小型物品の固定に用いられる両面粘着テープでは、落下時に小型物品が脱落する恐れがあり耐久性を満足できない。かかる耐久性を改善するために、両面粘着テープの接着面積を大きくすることが考えられる。しかし、携帯用電子機器のデザインや機能上の制約のため、大きな接着面積を確保することはできないという問題があった。
【0004】
更に近年では、意匠性や防汚性のために携帯用電子機器に撥水性、撥油性の塗料がコーティングされる傾向にある。このような塗料がコーティングされた塗装面には、従来の両面粘着テープは接着し難いため、当該塗装面にも接着が可能な両面粘着テープが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、両面粘着テープにより小型部品等を固定した物体(この物体が撥水性、撥油性の塗装面である場合でも)に、落下等により衝撃が加わった場合にも、小型部品の脱落を生じない接着性および耐衝撃性に優れる両面粘着テープに使用することができる粘着剤組成物、このような粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する両面粘着テープ、およびこのような両面粘着テープを用いる接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、粘着剤組成物が、特定の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと特定のカルボキシル基含有モノマーとからなるポリマーを含有することによって、接着性および耐衝撃性に優れる両面粘着テープを得るために好適に使用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)a)主成分モノマーとして、アルキル基の炭素数4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
b)全モノマー100重量%に対して5〜50重量%の、分子内にカルボキシル基を有しかつそのホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以下であるモノマーと、
からなるポリマーを含有することを特徴とする、粘着剤組成物。
(2)粘弾性測定において、−61℃〜−40℃の温度範囲における1±0.2℃刻みの各温度20点の損失正接の値の合計が10〜40であることを特徴とする、上記(1)記載の粘着剤組成物。
(3)基材の少なくとも片面に上記(1)または(2)記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成されていることを特徴とする、両面粘着テープ。
(4)塗装面と部品とを両面粘着テープを用いて接着する方法であって、両面粘着テープとして上記(3)記載の両面粘着テープを用い、上記(1)または(2)記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層の側に塗装面を接着し、もう一方の粘着剤層の側に部品を接着することを特徴とする、接着方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着剤組成物は、接着性(とりわけ、撥水性、撥油性の塗料などがコーティングされた、粘着テープが接着し難い塗装面に対して)および耐衝撃性に優れる両面粘着テープを得るために好適に使用することができる。従って、このような粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する本発明の両面粘着テープ、ならびにこのような両面粘着テープを用いる本発明の接着方法は、両面テープが使用される各種分野に適用することができる。例えば、PDAや携帯電話などの携帯用電子機器などの表示部や銘板等の小型で複雑な形状の部品の固定に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
まず、粘着剤組成物について説明する。
本発明の粘着剤組成物は、a)主成分モノマーとして、アルキル基の炭素数4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、b)全モノマー100重量%に対して5〜50重量%の、分子内にカルボキシル基を有しかつそのホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるモノマー(以下、カルボキシル基含有モノマーと略す)と、からなるポリマーを含有する。
【0010】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、アルキル基の炭素数4〜9の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルである。
【0011】
用語「主成分モノマー」とは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、全モノマー100重量%に対して50〜95重量%の割合で用いられることを意味する。好ましくは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは55〜95重量%、より好ましくは60〜90重量%の割合で用いられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが50重量%よりも少ないと、得られる粘着剤組成物を粘着剤層として粘着テープに適用した場合、粘着テープとして必要な粘着力および凝集力を得ることができず、95重量%よりも多いと、併用するカルボキシル基含有モノマーの量が5重量%よりも少なくなり、カルボキシル基による架橋および接着性が不足する。
【0012】
上記カルボキシル基含有モノマーは、そのホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。このガラス転移温度が70℃よりも高いと、得られるポリマーの凝集力が高くなりすぎ、それゆえ得られる粘着剤組成物を粘着剤層として適用した粘着テープは耐衝撃性に劣る。
【0013】
上記カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシぺンチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシ2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシウンデシル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシドデシル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシぺンチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシ2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシウンデシル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシドデシル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシ2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシウンデシル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、アクリル酸ダイマー、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチルアクリレートである。
【0014】
上記カルボキシル基含有モノマーの量は、全モノマー100重量%に対して5〜50重量%、好ましくは5〜45重量%、より好ましくは10〜40重量%である。上記カルボキシル基含有モノマーの量が5重量%よりも少ないと、得られるポリマー中においてカルボキシル基含有モノマーが架橋点としての機能を十分に果たすことができず(後述する任意成分の架橋剤との反応点が不足する、またはカルボキシル基同士の水素結合による擬似架橋が不足する)、それゆえ、得られる粘着剤組成物を粘着剤層として粘着テープに適用した場合、粘着テープとして必要な凝集力を得ることができず、50重量%よりも多いと、得られるポリマーの粘度が上昇し、それゆえ、得られる粘着剤組成物を粘着剤層とすることが実質的に困難になる。
【0015】
本発明の粘着剤組成物に含有されるポリマーを構成するモノマーとして、必要に応じて、上記a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびb)カルボキシル基含有モノマー以外の共重合可能なモノマーを併用してもよい。このような共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー100重量%に対して45重量%未満の範囲で、各モノマーの種類等に応じて適宜選択すればよいが、良好な感圧接着性を発現させるために、得られるポリマーのガラス転移温度が通常−30℃以下となるように使用量を決定するのが望ましい。
【0016】
上記共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどのアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどのアルキル基の炭素数が13〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などの官能性モノマー、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性モノマー、酢酸ビニル、スチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、n−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル、n−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、シクロヘキシルマレイミド、アクリルアミドである。
【0017】
上記モノマーの重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、溶液重合法、乳化重合法、UV重合法などが挙げられるが、得られるポリマーを含有する粘着剤組成物を粘着剤層とした場合の耐水性、コストなどの点で溶液重合法を用いるのが好ましい。
【0018】
上記重合方法に用いる開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロドデカンなどの過酸化物系などの油溶性開始剤が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの開始剤の使用量は、上記重合方法において通常使用されている量であればよく、例えば、モノマー100重量部に対して0.01〜1重量部である。
【0019】
また、得られるポリマーが適切な分子量を有するように、上記重合の際に、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、慣用の連鎖移動剤、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の使用量は、上記重合方法において通常使用されている量であればよく、例えば、モノマー100重量部に対して0.01〜15重量部程度である。
【0020】
上記重合方法に用いる溶剤としては、一般的に重合反応に使用される溶剤であればよく、例えば、酢酸エチル、トルエン、酢酸n−ブチル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。溶剤の使用量は、上記重合方法において通常使用されている量であればよく、例えば、モノマー100重量部に対して5
0〜600重量部程度である。
【0021】
また、当該粘着剤組成物には、この粘着剤組成物からなる粘着剤層の凝集力を向上させるために、添加剤として架橋剤を配合することができる。架橋剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、メチル化メチロールメラミン、ブチル化へキサメチロールメラミンなどの多官能性メラミン化合物、ジグリシジルアニリン、グリセリンジグリシジルエーテルなどの多官能性エポキシ化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなどの多官能性イソシアネート化合物などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は、ポリマー100重量部に対して通常0.001〜20重量部、好ましくは0.001〜10重量部である。架橋剤の使用量が0.001重量部よりも少ないと、目的とする粘着剤層の凝集力向上効果が得られず、20重量部よりも多いと、十分な凝集力は得られるが、粘着力が低下する。
【0022】
さらに、当該粘着剤組成物には、架橋剤の他に、一般的な添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料など)、老化防止剤、界面活性剤などを配合してもよい。
【0023】
当該粘着剤組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、上記a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル、b)カルボキシル基含有モノマーおよび必要に応じて他の共重合可能なモノマーを上記重合方法によって重合し、重合反応後の混合物をそのまま粘着剤組成物とし、必要に応じて上記の種々の添加剤を添加してもよく、また、重合反応後の混合物から生成したポリマーを単離・精製し、この単離・精製したポリマーを溶媒に溶解または懸濁させて粘着剤組成物とし、必要に応じて上記の種々の添加剤を添加してもよく、あるいは、単離・精製したポリマーそのものを必要に応じて上記の種々の添加剤と混合して粘着剤組成物としてもよい。
なお、生成したポリマーを単離・精製する場合、その単離・精製方法は特に限定されるものではなく、ポリマー合成の分野で通常行われている単離・精製方法を用いることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様では、当該粘着剤組成物は、粘弾性測定において、−61℃〜−40℃の温度範囲における1±0.2℃刻みの各温度20点の損失正接(tanδ)の値の合計が10〜40、より好ましくは11〜35、さらに好ましくは12〜30である。この合計が10よりも小さいと、粘着剤組成物を両面粘着テープの粘着剤層として付与した場合に耐衝撃性に劣り、40よりも大きいと、粘着剤組成物が柔らかすぎて粘着剤層とした場合に凝集力に劣る。
粘着剤組成物の−61℃〜−40℃の温度範囲における1±0.2℃刻みの各温度20点の損失正接の値の合計は、例えば、a)主成分モノマーおよびb)カルボキシル基含有モノマーの種類および含有量をそれぞれ適切に選択することによって、上記範囲に規定することができる。
【0025】
従来、両面粘着テープの耐衝撃性を改善する方法として、例えば、特開2001−72951号公報、特開2002−188061号公報、特開2004−59853号公報などは、粘弾性測定における損失正接の極大値およびその極大値を示す温度を特定の範囲に規定した粘着剤を用いる方法を記載している。しかしながら、本発明者らは、両面粘着テープの耐衝撃性を改善するためには、損失正接の極大値およびその極大値を示す温度よりも、−61℃〜−40℃の温度範囲における損失正接の値のほうが重要なファクターであることを見出した。すなわち、粘着剤組成物の粘弾性測定における損失正接のいわゆる面
積に相当する尺度として、−61℃〜−40℃の温度範囲における1±0.2℃刻みの各温度20点の損失正接の値の合計を上記範囲に規定することによって、両面粘着テープの耐衝撃性が顕著に改善されることを見出した。
【0026】
なお、粘着剤組成物の粘弾性は、以下の実施例において詳細に記載するが、粘弾性試験機を用いて、試験サンプルに周波数1Hzのせん断歪を与えながら、5℃/分の昇温速度で−70℃から150℃まで温度を変化させて測定する。この測定の間、12秒毎(1℃毎)にデータ(損失正接の値)を取り込み、−61℃〜−40℃の温度範囲における1℃刻みの各温度(20点)の損失正接の値を合計する。
【0027】
本発明の粘着剤組成物は、各種分野における接着用途に有用であるが、特に、粘着テープ、とりわけ両面粘着テープの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物として有用である。
【0028】
次に、両面粘着テープについて説明する。
本発明の両面粘着テープは、基材の少なくとも片面に、上記粘着剤組成物(本発明の粘着剤組成物)からなる粘着剤層が形成されている。
【0029】
基材は、一般的に両面粘着テープに用いられる基材であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、発泡シート、金属箔、それらの複合物などが挙げられる。これらのなかでも、強度、加工性、寸法安定性などの点から、合成樹脂フィルム、不織布が好適に用いられる。基材の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、5〜500μm程度である。
【0030】
粘着剤層の形成方法としては、特に限定されるものではなく、粘着テープの製造において一般的に採用されている方法を用いることができる。例えば、粘着剤組成物をトルエン等の溶剤に溶解した溶液を剥離ライナー上に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成し、この粘着剤層を基材に転写する方法、上記粘着剤組成物の溶液を直接基材上に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する方法等が挙げられる。粘着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは3〜100μm程度、より好ましくは5〜90μm程度、さらに好ましくは10〜80μm程度である。粘着剤層の厚さが3μmよりも薄いと、十分な粘着力が得られず、100μmよりも厚いと、小型部品の固定用として打抜き加工する際、糊はみ出しや打抜き不良などが起こり易く、加工性に劣る。
【0031】
剥離ライナーとしては、上記基材で例示した材料等が挙げられる。剥離ライナーの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素系処理などの離型処理が施されていてもよい。
【0032】
当該両面粘着テープは、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層が基材の片面のみに形成されている場合、基材の他方の面に形成されている粘着剤層を構成する粘着剤として、被接着体に応じて各種の粘着剤を用いることができる。このような各種粘着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。コスト、耐久性、粘着特性などの点から、アクリル系粘着剤が特に好適に用いられる。このような各種粘着剤からなる粘着剤層の形成方法としては、上記本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層の形成方法で例示した方法等を採用することができる。各種粘着剤からなる粘着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、3〜100μm程度とするのが好ましい。
【0033】
本発明の両面粘着テープは、各種分野において部品等の固定用途等に有用であるが、特
に、塗装面(とりわけ、撥水性、撥油性の塗装面)への部品の固定に有用である。
【0034】
次に、塗装面と部品とを両面粘着テープを用いて接着する方法について説明する。
本発明の接着方法では、両面粘着テープとして上記両面粘着テープ(本発明の両面粘着テープ)を用い、上記粘着剤組成物(本発明の粘着剤組成物)からなる粘着剤層の側に塗装面を接着し、もう一方の粘着剤層の側に部品を接着する。
【0035】
塗装面とは、例えば、シリコーン系、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、エポキシ系等の各種樹脂等からなるコーティングが形成された各種の物体表面をいう。部品としては、例えば、一般的なプラスチック材料であるポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、あるいはガラス、金属などからなる物品が挙げられる。
【0036】
本発明の接着方法は、各種の塗装面と部品との接着に適用することができるが、とりわけ、シリコーン系樹脂からなるコーティングが形成された塗装面(従来の両面粘着テープでは接着し難い塗装面)と部品との接着に対して有用である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」とは、特に示さない限り「重量部」を表す。
【0038】
[アクリル系ポリマー溶液Aの調製]
温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94部、アクリル酸ダイマー(そのホモポリマーとしてのTg:45℃)6部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部および重合溶媒として酢酸エチル100部を投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し、10時間反応させた。次いで、室温まで冷却した後、酢酸エチル135部を添加し、固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液Aを得た。
【0039】
[アクリル系ポリマー溶液Bの調製]
初期の仕込みを、アクリル酸2−エチルヘキシル70部、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート(そのホモポリマーとしてのTg:−40℃)30部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部および酢酸エチル235部とし、さらに室温まで冷却した後に酢酸エチルを添加しなかったこと以外は、[アクリル系ポリマー溶液Aの調製]と同様にして固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液Bを得た。
【0040】
[アクリル系ポリマー溶液Cの調製]
初期の仕込みを、アクリル酸2−エチルヘキシル64部、アクリル酸n−ブチル30部、アクリル酸ダイマー(そのホモポリマーとしてのTg:45℃)6部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部および酢酸エチル100部としたこと以外は、[アクリル系ポリマー溶液Aの調製]と同様にして固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液Cを得た。
【0041】
[アクリル系ポリマー溶液Dの調製]
初期の仕込みを、アクリル酸2−エチルヘキシル97部、アクリル酸(そのホモポリマーとしてのTg:106℃)3部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部および酢酸エチル100部としたこと以外は、[アクリル系ポリマー溶液Aの調製]と同様にして固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液Dを得た。
【0042】
(実施例1)
アクリル系ポリマー溶液A100部(固形分換算)に4官能性エポキシ系架橋剤0.02部を加え、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を、表面に離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナー:厚さ38μm)上に、乾燥後の厚さが35μmとなるように流延塗布し、100℃で3分間加熱乾燥して、粘着剤層を形成した。これを2枚作製し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材:厚さ12μm)に両側から貼り合わせ、さらに、50℃で48時間エージングを行って、両面粘着シートを作製した。
【0043】
(実施例2)
アクリル系ポリマー溶液B100部(固形分換算)に4官能性エポキシ系架橋剤0.01部を加えて粘着剤溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0044】
(実施例3)
アクリル系ポリマー溶液C100部(固形分換算)に4官能性エポキシ系架橋剤0.005部を加えて粘着剤溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0045】
(比較例1)
アクリル系ポリマー溶液D100部(固形分換算)に4官能性エポキシ系架橋剤0.02部を加えて粘着剤溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0046】
(比較例2)
アクリル系ポリマー溶液D100部(固形分換算)に4官能性エポキシ系架橋剤0.02部およびロジンエステル25部を加えて粘着剤溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0047】
上記のようにして作製した両面粘着シートについて、以下に示す方法に従って、耐衝撃性試験、粘着力試験および粘弾性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0048】
[耐衝撃性試験]
両面粘着シートを、外形40mm×30mm、幅2mmの額縁状に打ち抜いた。次に、片面にシリコーン系ハードコーティングが形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(外形45mm×35mm、厚さ2mm)のもう一方の面に、同じ大きさのポリカーボネート板を貼り付けて、被接着体1を作製した。さらに、ポリカーボネート板(外形80mm×60mm、厚さ2mm)の片面に、金属板(外形90mm×70mm、厚さ2mm、重量100g)を貼り付けて、被接着体2を作製した。次いで、被接着体1と被接着体2とを、被接着体1のシリコーン系ハードコーティングと被接着体2のポリカーボネート板とが向かい合うように、上記額縁状の両面粘着シートを用いて貼り合わせて、耐衝撃性試験用サンプルを作製した。
上記サンプルを23℃で24時間静置した後、23℃で1.5mの高さからコンクリート上に落下させ、被接着体1が脱落するまでの回数を測定した。落下の方法については、サンプルの金属板がコンクリートに対して面で衝撃を受けるよう、サンプルを水平状態で落下させた。これは、サンプルを垂直状態で(粘着剤層にかかる力がせん断方向となる)落下させた場合よりも厳しい条件(ポリカーボネート板が脱落するに至るまでの落下回数が少なくなる)となるためである。
【0049】
[粘着力試験]
幅20mm×長さ120mmの両面粘着シートの片面に、同じ大きさの厚さ25μmの
ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けて、試験片を作製した。この試験片を、JIS Z−0237に準じて、23℃の雰囲気下、重さ19.6Nのローラーを1往復させてSUS304BA板に貼り合わせた。30分後、テンシロン型剥離試験機を用いて、300mm/分の剥離速度で剥離粘着力を測定した。
【0050】
[粘弾性評価]
実施例1〜3および比較例1および2と同様にして、剥離ライナー上に厚さ35μmの粘着剤層を形成した。このようにして形成した複数の粘着剤層を、総厚さが約2mmになるように重ね合わせ、試験サンプルを作製した。次いで、この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、レオメトリックス社製粘弾性試験機ARESを用いて、周波数1Hzのせん断歪を与えながら、5℃/分の昇温速度で−70℃から150℃まで温度を変化させ、粘弾性を測定した。12秒毎(1℃毎)にデータ(損失正接の値)を取り込み、−61℃〜−40℃の温度範囲における1℃刻みの各温度(20点)の損失正接の値を合計した。
【0051】
【表1】

【0052】
*:60回の落下試験を行っても被接着体1が脱落しなかったことを表す。
なお、実施例1における各温度の損失正接の値は以下の通りである。
−60.2℃:0.30、−59.0℃:0.33、−57.8℃:0.33、−56.8℃:0.38、−55.7℃:0.45、−54.7℃:0.53、−53.7℃:0.61、−52.7℃:0.69、−51.7℃:0.76、−50.7℃:0.85、−49.7℃:0.92、−48.7℃:1.00、−47.7℃:1.07、−46.7℃:1.15、−45.7℃:1.23、−44.7℃:1.29、−43.7℃:1.35、−42.8℃:1.41、−41.7℃:1.46、−40.7℃:1.50
【0053】
表1から、そのホモポリマーとしてのTgが70℃以下であるカルボキシル基含有モノマーを用いた実施例1〜3の両面粘着シートは、耐衝撃性および粘着力に優れていることが分かる。
一方、そのホモポリマーとしてのTgが70℃を超えるカルボキシル基含有モノマーを用いた比較例1および2の両面粘着シートは、耐衝撃性に劣り、さらに、比較例1の両面粘着シートは粘着力にも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の粘着剤組成物は、各種分野における接着用途、特に、両面粘着テープの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物として有用である。また、当該粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する本発明の両面粘着テープは、接着性および耐衝撃性に優れ、各種分野にお
いて部品等の固定用途等、特に、塗装面(とりわけ、撥水性、撥油性の塗装面)への部品の固定に有用である。さらに、当該両面粘着テープを用いる本発明の接着方法は、各種の塗装面と部品との接着、とりわけ、シリコーン系樹脂からなるコーティングが形成された塗装面と部品との接着に対して有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用電子機器部品を固定するための両面粘着テープにおける粘着剤層に用いられる粘着剤組成物であって、
a)主成分モノマーとして、アルキル基の炭素数4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
b)全モノマー100重量%に対して5〜50重量%の、分子内にカルボキシル基を有しかつそのホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以下であるモノマーと、
からなるポリマーを含有し、かつ
粘弾性測定において、周波数1Hzのせん断歪を与えながら、5℃/分の昇温速度で−70℃から150℃まで温度を変化させ、この間、12秒毎(1℃毎)にデータ(損失正接の値)を取り込み、−61℃〜−40℃の温度範囲における1±0.2℃刻みの各温度20点の損失正接の値の合計が10〜40であることを特徴とする、粘着剤組成物。
【請求項2】
携帯用電子機器部品を固定するための、基材の両面に粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成された両面粘着テープであって、
塗装面を接着する粘着剤層が、請求項1記載の粘着剤組成物からなることを特徴とする、両面粘着テープ。
【請求項3】
両面粘着テープを用いて携帯用電子機器部品を固定する方法であって、両面粘着テープとして請求項2記載の両面粘着テープを用い、請求項1記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層の側に塗装面を接着し、もう一方の粘着剤層の側に部品を接着することを特徴とする、接着方法。

【公開番号】特開2012−67315(P2012−67315A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241276(P2011−241276)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【分割の表示】特願2005−44600(P2005−44600)の分割
【原出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】