説明

粘着剤組成物、粘着フィルム、粘着剤組成物の製造方法及び粘着フィルムの製造方法

【課題】粘着剤層が被着体の段差に追従し貼合の際に空気の入り込みを防止でき、かつ、高温高湿度での耐久試験を行った時およびオーブンから取り出した後でも粘着剤層の白濁がない粘着剤組成物及び粘着フィルムを提供する。
【解決手段】エステル基を有するアクリル系モノマー85〜99重量部及びカルボキシル基を有するアクリル系モノマー1〜15重量部を含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマー:4〜20重量部と、光重合開始剤:0.01〜0.1重量部を含有する粘着剤用原料組成物(さらに、2官能性架橋剤:0.2〜0.8重量部かつポリマーの架橋点に対して0.1当量以下を添加可能)から、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて得られ、23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着フィルム、粘着剤組成物の製造方法及び粘着フィルムの製造方法に関し、さらに詳細には、表示ディスプレイの前面ガラス板などの被着体に貼付したときに、該被着体表面に配設されたスクリーン印刷などにより形成された遮光層の黒枠等による段差に追従できる、透明な粘着剤組成物、粘着フィルム、粘着剤組成物の製造方法及び粘着フィルムの製造方法に関するものである。
また、本発明の粘着剤組成物及び粘着フィルムは、ディスプレイの前面に各種の光学フィルム及び保護板を貼り合せる場合や、ガラス同士を貼り合せて合わせガラスを作製する場合に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話などの表示ディスプレイとして用いられる液晶パネルでは、液晶パネルの前面に衝撃吸収用の保護板が、液晶パネルの割れ防止のために空気層を介して取り付けられている。しかし、最近では、軽量化と薄型化、及び視認性の向上を図るため、携帯電話の液晶パネルの前面に空気層を設けないで、粘着剤層を用いて直接に薄い保護板を貼り合わせることが行なわれている。
また、ディスプレイ表示装置の出荷前に行なわれるディスプレイの性能試験では、オーブンを使用して行われる高温・高湿度での環境条件下における耐久試験に合格する必要がある。
【0003】
一般的な表示ディスプレイの前面ガラス板の表面には、スクリーン印刷などにより形成された遮光層の黒枠が配設されていて、該前面ガラス板と遮光層の黒枠との間には厚さ10μm〜50μm程度の段差が生じている。また、携帯電話等の保護板には、意匠性向上のため厚さ10μm〜数十μm程度の印刷が施されている場合が多い。このように、粘着剤層を使用して各種の光学フィルムや保護板をディスプレイに貼り合せる時に、被着体表面に印刷層などによる段差があると、粘着剤層がその段差に追従できず、生じた浮きによって気泡を巻き込んでしまい粘着剤層と被着体との間に空気が入り込んでしまうという問題があった。入り込んだ空気は加熱加圧処理をすることにより分散され、目に見えなくなるが、オーブン試験をした場合に粘着剤層が動くことで入り込んだ空気が再び凝集し、目に見える気泡となったり、粘着剤が被着体から剥がれる原因となる。
また、オーブンから取り出した後、粘着剤層が白濁してしまうことがある。片側にフィルムを貼合している場合はその白濁は数時間でなくなり透明になるが、ガラス同士やガラス/アクリル板など硬いもの同士を貼合すると白濁は数日以上残る場合があり、ディスプレイの商品価値を損なうという問題があった。
【0004】
このように、粘着テープを使用して光学フィルムや保護板をディスプレイに貼り合せた時に被着体表面の段差に起因して粘着剤層に微小気泡が生じるという問題や、また、ディスプレイをオーブンを使用して高温・高湿度の環境条件下で耐久性試験を行った時、およびオーブンから取り出した後に、粘着剤層に白濁が生じるという問題を解決するために、従来から様々な取り組みが行なわれている。
【0005】
例えば、特許文献1には、液晶パネルと保護パネルとをポリオルガノシロキサン層を介して密接着させた積層体であり、上記ポリオルガノシロキサン層は、JIS K6249による可塑度が100〜800(温度25℃)、剪断弾性率G’が0.01〜5MPa(温度30℃、周波数0.1Hz)、全光線透過率が85%以上である液晶表示装置が開示されている。所定のポリオルガノシロキサン組成物は、適度な柔らかさを有するので、液晶パネルと保護パネルとの間隙に隙間なく埋めることができ、かつ、入射する光の反射や吸収を防止すると共に、光の屈折によって生じる光の散乱を防止することができるとしている。
【0006】
また、特許文献2には、ポリオキシアルキレン系重合体と、アルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を、ヒドロシリル基を有する化合物及びヒドロシリル化触媒を用いて架橋してなる、表示モジュールに保護透明板を密着一体化させるための、フラットパネルディスプレイ用透明粘着シートが開示されている。−30℃でのせん断貯蔵弾性率G’が6.0×10Pa以下であり、低温で剛直化しないため、氷点下の温度下でも高い粘着力を維持するので、低温での接着安定性が優れているとしている。
【0007】
また、特許文献3には、所定の形状アスペクトを有する導電性フィラーをアクリル系粘着剤の全固形分100重量部に対して14〜45重量部含有し、粘着剤中の全フィラー中に占める該導電性フィラーの割合が90重量%以上である粘着剤から構成される厚み10〜30μmの粘着剤層を有する粘着テープであって、フィラーの粒径と粘着剤層厚みとがd85>粘着剤層厚み>d50の関係にあり、架橋構造化した後の粘着剤の、動的粘弾性試験による0〜40℃の範囲における貯蔵弾性率G’が1×10Pa以上1×10Pa未満、かつ損失正接tanδのピーク温度が0℃以下である導電性粘着テープが開示されている。薄膜でありながら、粘着性と導電性を両立し、しかも、段差のある部分に貼付した場合でも被着体から「浮き」を生じることがないため、電気・電子機器などの生産性、品質が向上するとしている。
【0008】
また、特許文献4には、屈折率がアクリル系粘着剤の屈折率に近い値であり、表面に水酸基を有する超微粒子を含有することを特徴とするアクリル系透明粘着フィルム又はシートが開示されている。高温・多湿環境や温水浸漬あるいは煮沸等の条件下に長時間保持されてもアクリル系粘着フィルム又はシートの白化を抑制できるとしている。
【0009】
また、特許文献5には、画像表示装置等の保護に必要な衝撃吸収のための、アクリル酸系誘導体、アクリル酸系誘導体ポリマー、及び高分子量架橋剤を含有した樹脂組成物が開示されている。画像表示用パネルの割れ防止あるいは応力及び衝撃の緩和に有用で透明性に優れているとしている。
吸湿試験として、樹脂シートを60℃、90%RHの高温高湿試験槽に50時間入れることで行い、目視観察で評価を行なう方法で確認した結果、この樹脂組成物であれば発泡が少なく透明性に優れているとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−212521号公報
【特許文献2】特開2008−266473号公報
【特許文献3】特開2009−079127号公報
【特許文献4】特開2002−348546号公報
【特許文献5】特開2008−248221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、ディスプレイの用途が拡大していることに伴い、低コスト化がますます要求されるようになり、また、従来の環境試験条件に比較して、更に厳しい環境条件下での耐久性能が求められている。例えば、車載用のディスプレイに使用される光学フィルムを貼り合せる粘着テープでは、85℃、95%RHの環境条件下においても粘着剤層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープが必要とされている。
【0012】
以上に示した特許文献1〜3に記載の粘着剤組成物及び粘着剤層では、段差追従性のため粘着剤の貯蔵弾性率を所定の範囲とするものである。
しかしながら、特許文献1に記載のポリオルガノシロキサン組成物や特許文献2に記載のポリオキシアルキレン系重合体硬化物は高価であり、安価なアクリル系粘着剤による課題の解決が望まれる。
【0013】
また、特許文献3に記載の粘着テープは多量の導電性フィラーを含んだ不透明なもので、透明な粘着フィルムとして使用できないため、透明性や白濁に関する記載もない。アクリル系粘着剤の記載はあるが、多量の導電性フィラーを含んでも粘着性をもたせる必要があるので、粘着剤に重合ロジン等の粘着付与樹脂を含ませている。しかしながら、重合ロジンは黄色〜褐色を帯びているので、透明性を要する用途には不適である。
【0014】
また、特許文献4に記載の粘着フィルムは、高温・多湿環境や温水浸漬あるいは煮沸等の条件下に長時間保持されてもアクリル系粘着フィルム又はシートの白化を抑制できるとされているが、親水性シリカ超微粒子といった特殊な粒子を添加したものであって低コスト化は困難である。また、段差に追従するための構成は示されていない。
【0015】
また、特許文献5に記載の粘着剤組成物は、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルアクリレート(A)及びヒドロキシル基含有アクリレート(B)の混合物を重合して得られるコポリマーと、前記(A)及び(B)のモノマー混合物と、高分子量架橋剤とを加えた後、架橋反応させて得られる粘着剤組成物である。特許文献5の場合、85℃、95%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであることは明言されておらず、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを過剰に導入しているため、実施例のように型枠に樹脂を流し込んで、ガラスで紫外線を弱めて長時間照射する必要があるなどの設備の工夫が必要である。また、60℃、90%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであると明言されているが、弱い紫外線を長時間照射する必要があるため生産性が悪い。
【0016】
このように、従来技術においては、粘着剤層が被着体である表示ディスプレイの前面ガラス板と遮光層の黒枠との間に生じた段差などに追従し貼合の際に空気の入り込みを防止でき、また、著しく過酷な高温高湿の環境条件である、例えば、車載用のディスプレイに適用される、85℃、95%RHの環境条件下においても粘着剤層の白濁が生じず、かつ生産性よく安価に提供される技術ではなかった。
【0017】
すなわち本発明の目的は、粘着剤層が被着体である表示ディスプレイの前面ガラス板と遮光層の黒枠との間に生じた段差などに追従し貼合の際に空気の入り込みを防止でき、かつ、オーブンを使用して(60℃、90%RH)や(85℃、95%RH)などの高温・高湿度での環境条件下における耐久試験を行った時およびオーブンから取り出した後でも粘着剤層の白濁がなく、生産性よく安価に実施可能な粘着剤組成物、粘着フィルム、粘着剤組成物の製造方法及び粘着フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
被着体である表示ディスプレイの前面ガラス板と遮光層の黒枠との間に生じた段差などに追従でき、かつ急激的な外的環境の変化による粘着剤層の白濁を防止するという課題を解決するため、本発明では、ヒドロキシル基を有するアクリル系ポリマーの製造に際し、原料となるアクリル系モノマーの組成を特定の範囲にすることで、段差に追従可能な弾性率を有し、かつ水分子の凝集を防ぐことを技術思想としている。
また、ヒドロキシル基を有しないモノマーをできる限り単体でポリマー化することにより水分子が目に見えない程度に分散した状態で存在する粘着剤組成物を得る。
【0019】
本発明では、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類を重合反応させて得られるヒドロキシル基を有するポリマーを粘着剤層に導入して、水分子の凝集防止に関与させる。これに合わせて、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの含有量は、所望の貯蔵弾性率(G’)を得られるようにする。
さらに、本発明では、主剤となるアクリル系ポリマーをあらかじめ重合させておき、これをヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類を溶解させたシロップ、もしくは有機溶媒液に溶解して得られた溶剤系アクリル樹脂に、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる量の2官能性の架橋剤と、光重合開始剤を加えて粘着剤塗布液(粘着剤層の前駆体となる粘着剤用原料組成物)を調製し、この塗布液を基材に塗布・乾燥・光照射・養生して、水分子の凝集防止に関与するヒドロキシル基を含有し、かつ被着体の変形に追従できる程度に架橋された粘着剤組成物を得る。これにより、ヒドロキシル基を有するアクリル系ポリマーを効率良く作製し、かつ均一に混ざりにくいポリマー同士を問題なく混合することができ、光学特性に優れた粘着剤組成物を得る。さらに、あらかじめ重合させておいた主剤となるアクリル系ポリマーに対するモノマーの添加量を従来技術と比較して少なくできるため、生産性の高い粘着フィルムを提供できる。
【0020】
前記課題を解決するため、本発明は、表面に段差を有する被着体に貼合される粘着フィルム用の粘着剤組成物であって、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:4〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.1重量部と、
を含有する粘着剤用原料組成物を用い、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて得られ、23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満であることを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
本発明の粘着剤組成物においては、前記粘着剤用原料組成物が、さらに、(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる0.2〜0.8重量部を含有することが好ましい。
【0021】
また、本発明は、表面に段差を有する被着体に貼合される粘着フィルムであって、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:4〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.1重量部と、
を含有する粘着剤用原料組成物を基材またはセパレーター上に塗布した後、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて得られる粘着剤層を備え、該粘着剤層を構成する粘着剤の23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
本発明の粘着フィルムにおいては、前記粘着剤用原料組成物が、さらに、(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる0.2〜0.8重量部を含有することが好ましい。
本発明は、例えばディスプレイに部材を貼り合わせる用途の粘着テープに好適である。
【0022】
また、本発明は、表面に段差を有する被着体に貼合される粘着フィルム用の粘着剤組成物の製造方法であって、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:4〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.1重量部と、
を含有する粘着剤用原料組成物を調製する工程と、
光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて、23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満である粘着剤組成物を得る工程と、
を有することを特徴とする粘着剤組成物の製造方法を提供する。
本発明の粘着剤組成物の製造方法においては、前記粘着剤用原料組成物が、さらに、(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる0.2〜0.8重量部を含有することが好ましい。
【0023】
また、本発明は、表面に段差を有する被着体に貼合される粘着フィルムの製造方法であって、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:4〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.1重量部と、
を含有する粘着剤用原料組成物を調製する工程と、
前記粘着剤用原料組成物を、粘着フィルムの基材またはセパレーター上に塗布及び乾燥して粘着剤塗布膜を形成する工程と、
前記粘着剤塗布膜への光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて、23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満であることを特徴とする粘着剤層を得る工程と、
を有することを特徴とする粘着フィルムの製造方法を提供する。
本発明の粘着フィルムの製造方法においては、前記粘着剤用原料組成物が、さらに、(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる0.2〜0.8重量部を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
上記の本発明によれば、原料となるアクリル系モノマーの組成を特定の範囲にすることで、段差の上下にまたがる位置に粘着フィルムを貼り合わせるときでも、段差に追従可能な弾性率を有し、かつ水分子の凝集を防ぐことが可能な粘着剤を得ることができる。
また、アクリル系ポリマーの架橋反応を最小限度に抑えることで、ポリマーに導入したヒドロキシル基の数量が消費されて減少するのを抑えると共に、水分子を吸着させるヒドロキシル基が可能な限り分散した状態で必要な数量で存在する粘着剤組成物を提供することにより、高温高湿度環境条件下における水分をヒドロキシル基含有ポリマーに吸着できて、緩衝性を高めるために粘着剤層を厚くしても、吸収した水分子の凝集に起因する白濁の発生を防ぐことができる。
また、粘着剤塗布液の流動性を適切に調整することによって基材への塗布厚みを厚くすることが可能であり、厚みのある粘着剤テープを形成して緩衝性を高めることができる。
【0025】
請求項1,2に係る発明によれば、被着体の段差に追従することができ、緩衝性を高めるために粘着剤層の厚みを厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する粘着剤層の白濁が生じない粘着剤組成物を提供できる。
請求項3,4,9に係る発明によれば、被着体の段差に追従することができ、緩衝性を高めるために粘着剤層の厚みを厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する粘着剤層の白濁が生じない粘着フィルムを提供できる。
【0026】
請求項5,6に係る発明によれば、被着体の段差に追従することができ、緩衝性を高めるために粘着剤層の厚みを厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する粘着剤層の白濁が生じない粘着剤組成物の製造方法を提供できる。
請求項7,8に係る発明によれば、被着体の段差に追従することができ、緩衝性を高めるために粘着剤層の厚みを厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する粘着剤層の白濁が生じない粘着フィルムの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する片面粘着テープの一例を模式的に示す断面図であり、(b)は本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有するトランスファーテープの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の粘着フィルムの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
本発明の粘着剤組成物を得るために用いられる粘着剤用原料組成物は、少なくとも1種類のヒドロキシル基含有モノマー(モノマーB)を、そのモノマーBを重合させるための重合開始剤、主剤ポリマー(ポリマーA)および主剤ポリマーを架橋するための架橋剤に混合したものである。この粘着剤用原料組成物は、エネルギー線により重合する光重合性化合物として、少なくとも1種類のヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートを含有する。(メタ)アクリレートのモノマーは、光重合開始剤とラジカル重合可能なビニル基である(メタ)アクリル基を有する重合性化合物であって、例えば、300nm〜400nmの範囲内の紫外線に対して硬化性を有する紫外線硬化性樹脂材料である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0029】
ポリマーAは、粘着剤の主剤となり、かつ、ヒドロキシル基を含有したアクリル系モノマー(モノマーB)が分散しやすいものであれば良い。
モノマーBが分散しやすいためにはアクリル系ポリマーであることが好ましく、さらには親水性モノマーを共重合していることが好ましい。これはモノマーBがアクリル系であることとヒドロキシル基を含有しているためである。また、本発明の粘着剤組成物は光学用途に使用されることから透明性を有することが必要であり、かつ粘着力の強弱を制御することが簡便であることからも、ポリマーAは、アクリル系ポリマーが好ましい。
【0030】
上記粘着剤用原料組成物の組成は、少なくとも下記の要件を満たすものである。
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:4〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.1重量部と、
を含有する。
上記粘着剤用原料組成物は、上記(A)〜(C)のほかに、さらに、(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる0.2〜0.8重量部を含有することが好ましい。
【0031】
上記粘着剤用原料組成物を用いて、基材(またはセパレーターでも良い。)に塗布・乾燥させた後、光照射して重合させると、本発明の粘着フィルムが得られる。
また、本発明の粘着剤用原料組成物は、ポリマーを架橋するための架橋剤を含有しても含有しなくても良いが、架橋剤を含有する場合には、架橋剤の含有量はポリマーの架橋点に対して1当量未満(好ましくは、例えば0.5当量以下)とされる。これにより、架橋剤がイソシアネート化合物のようにポリマーBのヒドロキシル基と架橋反応し得るものであっても、ポリマーBのヒドロキシル基の少なくとも一部が架橋されず、その未架橋のヒドロキシル基が分散して存在することによって水分の吸着能に優れた粘着剤層が得られる。
【0032】
なお、本明細書において、粘着フィルムとは、幅による区別を特に必要とするものではなく、JIS Z 0109に規定する粘着テープ及び粘着シートをいずれも包含する。その具体例としては、基材の片面に粘着剤層を有する片面粘着テープ(または片面粘着シート)、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープ(または両面粘着シート)、及び、基材を有しないで粘着剤層がフィルム状に形成されたトランスファーテープ(転写テープ)が挙げられる。粘着シートは、大面積化も可能で、その幅が広いまま使用しても良いし、テープ状に細く切断して粘着テープとして使用しても良い。特に、ロール状に巻いた粘着シートや粘着テープは、ディスプレイに部材を貼り合わせる用途に好適である。
【0033】
図1(a)に、本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層2を有する片面粘着テープ5の一例を模式的に示す。この片面粘着テープ5は、粘着剤層2の支持体となる基材1の片面に粘着剤層2が形成され、粘着剤層2の粘着面がセパレーター3で保護されている。使用時には、セパレーター3を剥離して粘着面を露出し、粘着剤層2の裏面に基材1が積層されたまま、被着体に貼り合わされる。
基材を有する両面粘着テープの構造については特に図示しないが、基材の両面に粘着剤層が形成され、それぞれの粘着剤層の粘着面がセパレーターで保護された構造を有する。
【0034】
図1(b)に、本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層2を有するトランスファーテープ6の一例を模式的に示す。このトランスファーテープ6は、粘着剤層2の両面にセパレーター3,3が設けられている。使用時には、一方のセパレーター3を剥離して片方の粘着面を露出して被着体に貼り合わされる。さらに他方のセパレーター3を剥離することで、フィルム状の粘着剤層2のみを被着体に転写(トランスファー)することができる。他方のセパレーター3を剥離した後には、新たな粘着面にも他の被着体を貼り合わせることができる。
本発明における、高温・高湿度での環境条件下における白濁の発生を防止できる改善効果については、トランスファーテープの形態で貼り合わせるガラス(無機ガラス)やアクリル樹脂(アクリルガラス)などの水分の透過性が悪いものの場合に、特に著しい効果が得られる。これは次の理由による。
水分子の透過性の良い樹脂フィルムを貼合する場合は、粘着テープ層に分散している水分子が樹脂フィルムの場合は簡単に透過して通り抜けることができるため、水分子の凝集する確率が減ることと、仮に水分子が凝集したとしてもすぐに樹脂フィルムを通して抜けていくため、白濁している時間が短いことになる。しかし、水分子の透過性の悪い材料を貼合する場合は、水分子が凝集し白濁してしまうと、粘着テープの周辺端に水分子が拡散した後に抜けるため、長時間に渡り白濁が続くことになるからである。
【0035】
本発明では、ポリマーAの原料となるモノマーとして、エステル基(−COO−)を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類と、カルボキシル基(−COOH)を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類とを含有することが好ましく、その他、種々の化合物を用いることができる。エステル基(−COO−)を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、一般式CH=CR−COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜14のアルキル基を示す。)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートや、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
一般式CH=CR−COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜14のアルキル基を示す。)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらを単独で又は二種以上を併用して使用することができる。このうち2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
アルキル(メタ)アクリレートは、粘着力の観点から、アルキル基Rの炭素数が1〜14とされる。アルキル基の炭素数が15以上であると、粘着力が低下する可能性があるので好ましくない。このアルキル基Rは、炭素数が1〜12であることが好ましく、炭素数が4〜12であることが好ましく、炭素数が4〜8であることがより好ましい。
また、アルキル基Rの炭素数が1〜14のアルキル(メタ)アクリレートのうち、アルキル基Rの炭素数が1〜3または13〜14のアルキル(メタ)アクリレートをモノマーの一部分として用いても良いが、アルキル基Rの炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートを必須として(例えば50〜100モル%)用いることが好ましい。
なお、これらのアルキル基Rは、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
【0037】
また、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、カルボキシル基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエチル琥珀酸などが挙げられる。
【0038】
エステル基を有するアクリル系モノマーとカルボキシル基を有するアクリル系モノマーとの混合比は、被着体の変形に追従できる程度に粘着剤を架橋して耐熱性を付与し、被着体からの浮き及び剥がれを防止するためには、エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部の混合比であることが好ましい。
ここで、ポリマーAがエステル基を有するアクリル系モノマーを2種類以上含有する場合には、その合計量が85〜99重量部であることが好ましい。また、ポリマーAがカルボキシル基を有するアクリル系モノマーを2種類以上含有する場合には、その合計量が1〜15重量部の混合比であることが好ましい。
【0039】
ポリマーAの原料モノマーには、他のモノマーを添加することもできる。例えば、カルボキシル基、アルコキシシリル基、アミノ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基などの親水基を持つモノマーを選定して使用することができる。
ポリマーAを構成するモノマーのうち、アルキル(メタ)アクリレートと親水基を有するモノマーとの配合比は、粘着剤に求められる特性やモノマーの種類、1分子中に親水基が占める重量比などによっても異なるが、例えば5〜50重量%が親水基を有するモノマーであり、95〜50重量%がアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0040】
また、アルコキシシリル基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、γ−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、γ−メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、γ−トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、アルコキシシリル基を含有する非アクリル系モノマーとしては、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
また、アミノ基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を含有する(メタ)アクリレートのほか、(メタ)アクリル酸アミド、イタコン酸アミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0041】
ポリマーAは、その大部分(例えば50重量%以上、より好ましくは80重量%以上)がアクリル系モノマー(アルキル(メタ)アクリレートおよび親水基を有するアクリル系モノマー)から構成されることが好ましいが、本発明の効果を損ねない程度に、アクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)を併用することもできる。
ポリマーAを構成するアクリル系モノマー及び任意に配合される非アクリル系モノマーを重合させるには、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法により行うことができるが、除熱の容易な溶液重合が好適に用いられる。溶液重合反応において使用される有機溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられるが、上記重合反応を阻害しなければ、特に限定されない。これらの溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は、適宜に決定すればよい。必要に応じて、適宜の触媒を用いることが好ましい。
一般的に、溶液重合反応においては、重合温度が高くなるに従い、生成されるポリマーの分子量は低下する。重合反応を溶媒の還流温度で行わせるに当たり、重合反応に適した沸点温度を有する溶媒を使用することにより、重合反応熱を除去しながらポリマーを得ることができる。
【0042】
ポリマーAの分子量分布は、数平均分子量(Mn)で7万以上、かつ重量平均分子量(Mw)で100万以上であることが好ましい。さらに、重量平均分子量(Mw)が1200万以上であることがより好ましい。このようにポリマーAの分子量が大きいと、耐熱性および耐候性がより優れたものとなる。
分子量が大きすぎると粘度が高すぎて加工適性が悪くなる。塗料の温度を上げるなど塗工方法を工夫することでこの上限はさらに広げられると考えられるが、室温で塗工をする場合、例えば、Mw500万未満の材料が好ましいと考えられる。
【0043】
また、本発明の粘着剤用原料組成物は、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマー(モノマーB)の少なくとも1種類を含有する。
本発明の粘着剤用原料組成物の一つの好ましい実施態様においては、ヒドロキシル基を含有しないアルキル(メタ)アクリレート及びアクリル酸のモノマーを重合させて得られたアクリル系ポリマーと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーとが、共重合しないで別々に分散した混合状態で存在する。また、別の好ましい実施態様においては、親水性モノマーを含むモノマーを重合させて得られたポリマーAと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーとが、粘着剤用原料組成物中に含まれる。
【0044】
モノマーBの含有量(モノマーBが2種類以上である場合にはその合計量)は、主剤ポリマー(ポリマーA)100重量部に対して、4〜20重量部であることが好ましく、85℃×95%RH環境下での試験を行うなど高耐久性を必要とする場合、4〜15重量部であることがより好ましい。
なお、公知のヒドロキシル基を含有するアクリル系ポリマーからなる粘着剤組成物において、未反応モノマーとしてヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートのモノマーを若干含有することがあるが、その含有率は、本発明の粘着剤用原料組成物におけるヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートの含有率に比べると、著しく低いものに過ぎない。
【0045】
本発明の粘着剤用原料組成物は、主剤ポリマーと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーと、光重合開始剤と、架橋剤とを含有したアクリルシロップの状態、もしくは塗布及びヒドロキシル基含有モノマーの均一な分散のため、上記アクリルシロップが有機溶媒に溶解している樹脂溶液として調製される。
【0046】
ヒドロキシル基含有モノマーを前記主剤ポリマーに溶解させてアクリルシロップを得る工程においては、ヒドロキシル基含有モノマーを主剤ポリマーに溶解させる前に、重合反応で用いた有機溶媒を除去して、得られた液状の主剤ポリマーを分離し、必要に応じて水や有機溶媒等で洗浄することが好ましい。これにより、主剤ポリマーの重合反応を完全に停止させ、また、主剤ポリマーから未反応のアクリル系モノマーを除去することができる。また、主剤ポリマーの重量をより正確に定量して、次工程で用いるヒドロキシル基含有モノマー、架橋剤及び光重合開始剤の含有量をより適切に調整されたアクリルシロップが作製できる。アクリルシロップを作製する場合、主剤ポリマーにヒドロキシル基含有モノマーを溶解させた後に上記の重合反応に用いた有機溶媒の除去作業を行ってもかまわない。
また、アクリルシロップに光重合開始剤を添加した後は、室内光や太陽光に含まれる紫外光がアクリルシロップに作用すると重合反応が進行するおそれがあり、管理が難しくなるため、光重合開始剤は、後工程である塗布工程のなるべく直前に添加することが好ましい。これは、アクリルシロップが有機溶媒に溶解している樹脂溶液でも同様の扱いで、注意すべきは光開始剤が何らかの外的要因で塗布・製膜前に反応を開始してしまうことを防ぐことである。
【0047】
本発明の粘着剤用原料組成物は、基材への塗布に適した流動性を付与するため、適量の有機溶媒を配合した粘着剤塗布液とすることが好ましい。粘着剤塗布液において使用される有機溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられるが、上記塗布及び分散の目的を達することができるものであれば、特に限定されない。
【0048】
粘着剤塗布液を調製する際、主剤ポリマー、ヒドロキシル基含有モノマー、光重合開始剤、架橋剤の4種が互いに適切な配合比で有機溶媒に溶解した有機溶媒液が得られれば良く、その溶解させる順序は特に限定されない。例えば、主剤ポリマーを重合して得られるアクリルシロップに直接、ヒドロキシル基含有モノマー、光重合開始剤、架橋剤を投入したり、ヒドロキシル基含有モノマー、光重合開始剤、架橋剤を適量の有機溶媒に溶解した液を投入したりしても良い。
【0049】
本発明でモノマーBとして使用されるヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーは、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシルペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシルヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシルヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシルオクチル(メタ)アクリレート、7−メチル−8−ヒドロキシルオクチル(メタ)アクリレート、2−メチル−8−ヒドロキシルオクチル(メタ)アクリレート、9−ヒドロキシルノニル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシルデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシルラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。特に、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレートが好適に使用される。
ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートとしては、二価アルコール(ジオール化合物)の有する2つのヒドロキシル基のうち一つのヒドロキシル基を、アクリル酸またはメタクリル酸でエステル化して得られ、1分子にヒドロキシル基及びビニル基を1つずつ有する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0050】
本発明で使用するモノマー(ポリマーAを構成するモノマー、およびモノマーB)の種類は、必要とされる粘着テープの粘着力、貯蔵弾性率によって変わるが、リワーク性を有する粘着テープにする場合、貯蔵弾性率が高くて固い粘着剤組成物でも良いため、モノマーのおおよその指針としてはTgが室温以上のものが好ましい。強粘着力を必要とする場合や貯蔵弾性率を低くしたい場合は、その逆でTgが室温より低く、好ましくはTgがマイナス温度となるモノマーが必要となる。
【0051】
光重合開始剤(重合触媒)としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系光重合開始剤としては、アセトフェノン、p−(tert−ブチル)1’,1’,1’−トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
ベンゾイン系光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシル2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシル2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシルベンゾフェノン、ヒドロキシルプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等が挙げられる。
【0052】
これらの光重合開始剤は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。光重合開始剤の含有量は、重合性化合物(本発明の場合は、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレート)の全量を100質量%とする重量百分率において、0.02〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることが特に好ましい。光重合開始剤の含有量が0.02質量%以上であれば、重合性化合物を短時間に重合でき、10質量%以下であれば、光重合開始剤の残渣が硬化物中に残存しにくい。
また、上述したように、主剤ポリマー100重量部に対して、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマー(2種類以上用いる場合は合計量)は4〜20重量部であることが好ましく、85℃95%RH環境下での試験を行うなど高耐久性を必要とする場合、4〜15重量部であることがより好ましいので、主剤ポリマー100重量部を基準とした光重合開始剤の含有量は、0.01〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
【0053】
本発明においては、光重合後の粘着剤組成物において、モノマーのうち、40〜80重量%、好ましくは50〜75重量%の範囲で重合させることが望ましい。つまり、60〜20重量%、好ましくは50〜25重量%の範囲で未反応モノマーを残すことが望ましい。重合率が40重量%に満たない場合には、得られた重合体に充分な粘着性が付与されず、また、80重量%を超える量の重合率では凝集力の低下が見られ、粘着剤層を剥離除去した時に糊残り現象を生じることがある。
【0054】
本発明は、任意成分として粘着剤原料組成物に2官能性の架橋剤を添加し、ポリマーを架橋しても良い。
2官能性の架橋剤としては、架橋反応する官能基を1分子中に2つ有する化合物であれば、特に限定されない。このような2官能性の架橋剤としては、例えば、2官能性エポキシ化合物、2官能性イソシアネート等が挙げられる。
2官能性エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族の2官能性エポキシ化合物や、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、レゾルシンジグリシジルエーテル等の芳香族の2官能性エポキシ化合物が挙げられる。2官能性エポキシ化合物のエポキシ基は、ポリマーのカルボキシル基と架橋反応することができる。
2官能性イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族の2官能性イソシアネートや、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族の2官能性イソシアネートが挙げられる。2官能性イソシアネートのNCO基は、ポリマーのカルボキシル基やヒドロキシル基と架橋反応することができる。
2官能性の架橋剤の含有量は、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる範囲で、例えば、主剤ポリマー100重量部に対して0.5〜3.0重量部が好ましく、1.0〜3.0重量部がより好ましく、0.2〜0.8重量部がさらに好ましい。
【0055】
ここで、粘着剤用原料組成物を塗布して粘着フィルムを形成するときに用いる基材の材質は、透明性、耐熱性を有していて、及び紫外線硬化性樹脂組成物の硬化を阻害する350nm〜400nm近傍の紫外線領域に散乱・吸収が小さいものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ナイロン、ポリイミド、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンやポリトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、セロファン、セルロース系フィルムなどを挙げることができる。これら材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
特に前記基材のうち、耐熱性、紫外線透過性、及び価格の面から、ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
なお、基材の厚みは16μm〜200μmを有することが好ましく、50μm〜188μmを有することが更に好ましい。基材の厚みが薄過ぎるとハンドリング性が悪く、また、基材の厚みが厚過ぎると、コスト面、ハンドリング性で不利である。
【0056】
粘着剤用原料組成物を基材に塗布する塗布装置は、基材上に粘着剤用原料組成物を均質に供給して塗布する手段を備えるものであればどういった装置でも良いが、連続的に粘着剤用原料組成物を基材上に供給して塗布できるよう、粘着剤用原料組成物を貯蔵するタンク、送液ポンプ、配管、異物除去フィルター、コーターヘッドからなる構成を持つ装置が好ましい(図示なし)。コーターヘッドは、例えばダイコーターなどが好適である。
塗布装置により、基材の片面に粘着剤用原料組成物の薄膜層(塗布膜)が形成される。塗布装置で塗布した直後の粘着剤用原料組成物は、未硬化でかつ液状であり、塗布に適した流動性を有する。
【0057】
本発明の粘着フィルムにおける粘着剤層の厚みは、50μm〜3mmの間にあることが好ましく、より好ましくは100μm〜300μmの間である。これは本発明で定義している白濁について、白濁防止効果が顕著に見られるのが50μm以上であり、またガラスやアクリル板などの硬い被着体同士を貼合する場合はテープはより厚い方が気泡なく貼合しやすいため好ましいが、コスト面を考慮すると300μm以下が適当であると判断されるためである。
粘着剤用原料組成物がシロップタイプの場合、塗布膜の厚みは、光重合によって得られる粘着剤層の厚さにほぼ等しい。
粘着剤用原料組成物が溶液タイプの場合は、乾燥前の塗布膜の厚みはシロップタイプより厚くなり、上記の塗布膜の厚みを濃度で割った数字となる。乾燥後の塗布膜の厚みはシロップタイプと同様である。
塗布膜が薄すぎると、粘着剤層の厚さも薄くなるので、衝撃吸収性能が悪くなる。また、塗布膜が厚過ぎるとコストが上昇する点で不利である。
【0058】
図2に、本発明の粘着フィルムの製造方法の一例を模式的に示す。図2に示す装置において、粘着剤用原料組成物は、ダイコーター21から基材11上に供給され、塗布膜12を形成する。符号22は、ダイコーター21に対向して配置され、基材11を支持するバックアップロール22である。塗布膜12が形成された基材11は、その長手方向に沿って搬送され、乾燥室23で塗布膜12中の溶媒を除去するように乾燥される。乾燥後の塗布膜12の上には、セパレーター供給手段24からセパレーター13が塗布膜12上に供給され、ニップロール25によって貼合される。
【0059】
乾燥室23内の温度は、塗布膜12中の溶媒が十分に揮発する温度であれば良く、重合性化合物が熱重合しない温度に保たれることが望ましい。
セパレーター供給手段24は、セパレーター13が巻き取られたロール体と、そのロール体を保持する軸等から構成される。
ニップロール25は、塗布膜12が形成された基材11と、セパレーター13とを挟み込む1対のロールからなり、両者を貼合する装置である。貼合のための加圧手段を備えることが好ましく、また、フィルムに対して均一な圧力をかけ易いよう、少なくとも一方のロールがゴム製であることが好ましい。
【0060】
セパレーターとしては、例えば、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム、ノルボルネン系フィルム、フェノキシエーテル型重合体フィルム、有機耐透気性フィルムをはじめとする単層または複層プラスチックフィルムにシリコーン系剥離剤等による剥離処理を施して少なくとも片面が剥離性を有する剥離フィルム;紙にシリコーン系剥離剤等による剥離処理を施して少なくとも片面が剥離性を有する剥離紙;フッ素系樹脂フィルムやある種のポリオレフィン系フィルムなどフィルム自体が剥離性を有するフィルム;剥離剤を内添して製膜したフィルムなどが挙げられる。セパレーターの厚さに限定はないが、通常は5〜500μm、好ましくは10〜100μmとすることが多い。セパレーターは、使用する粘着剤や使用用途(剥離強度)に合わせて選ばれるものとする。
【0061】
紫外線照射装置26は、紫外線を発生させる光源部と、光源で発生する熱を除去する冷却装置を備える。光源部は、塗布膜12中の重合性化合物を十分に硬化させる紫外線照射量を得られるものであれば高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等のランプ光源や、紫外線領域の発光ピークを持つ発光ダイオードなど自由に選択できる。
塗布膜12は、塗布膜12中の重合性化合物が適度な光照射により重合することで、凝集力を高め、粘着性を発現する。
【0062】
また、本発明の粘着フィルムとしてトランスファーテープのように支持体のない両面粘着フィルムを製造する場合は、この場合、セパレーター13のみならず、搬送用の基材11としてもセパレーターが供給され、粘着剤層をセパレーター上に形成する。
また、本発明の粘着フィルムとして支持体の両面に粘着剤層を有する両面粘着フィルムを製造する場合は、それぞれの面で同時に、または逐次に、塗布液の塗布・乾燥と塗布膜の光重合を行なうことができる。
【0063】
光重合反応のための光照射後には、架橋反応のための養生を行う。養生の方法は特に限定されないが、例えばロールに巻き取った粘着フィルムを、所定の温度及び時間条件で放置する。養生の温度は、架橋剤の種類等にもよるが、必要に応じて加温(例えば40〜80℃)することが好ましい。
【0064】
また、本発明の粘着フィルムは、表面に段差を有する被着体に貼合されるので、被着体の段差に追従することができるためには、粘着剤層を構成する粘着剤の23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満であることが好ましく、85℃95%RH環境下での試験を行うなど高耐久性を必要とする場合、5×10Pa以上かつ3×10Pa未満であることがより好ましい。貯蔵弾性率が低いと粘着剤層が柔らかく変形しやすいため、被着体の段差に追従して貼合しやすく、段差付近に気泡が入ることを防ぐことができる。
【0065】
本発明の粘着フィルムは、粘着剤層が透明であるため、PDP(プラズマディスプレイ)、液晶パネル、有機ELパネルなどの各種ディスプレイに部材を貼り合わせる用途の粘着テープとして好適に用いることができる。
被着体表面の段差としては、インク等の印刷層によるもののほか、配線層、金属または導電体のメッシュパターン、粘着テープ等によるものが挙げられる。
段差の大きさは被着体の用途によって様々で、遮蔽性を必要としない場合は10μm未満でも十分であるが、遮蔽性が必要な場合には10μm以上の厚みが必要といわれている。また、印刷は一色あたり7〜10μmで、必要応じて色数は増えていくため、たとえば4色であれば厚みは40μmとなり、それら様々な段差を埋められる粘着テープが必要である。本発明においては段差の大きさは、段差の高低に応じて粘着剤層の厚みを増減できるので特に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
〈トランスファーテープの作製〉
下記の表1に示す配合の粘着剤原料組成物を用いて、下記の製造方法により実施例1〜10および比較例1〜4のトランスファーテープを作製した。
【0067】
【表1】

【0068】
なお、表1において、「2EHA」は2−エチルヘキシルアクリレートを表し、「AA」はアクリル酸を表し、「HEA」は2−ヒドロキシルエチルアクリレートを表し、「4HBA」は4−ヒドロキシルブチルアクリレートを表し、「Irg651」はIrgacure(登録商標)651を表す。また、架橋剤の種類は、それぞれ下記の製造方法中に挙げる製品名を用いて示した。
ここで、製品名:Irgacure(登録商標)651の光重合開始剤は、ベンジルジメチルケタールを有効成分とするものである。
製品名:EX−830の2官能性エポキシ架橋剤のエポキシ当量(g/エポキシ基1mol)は268である。
架橋剤の当量は、エポキシ化合物ではカルボキシル基を架橋点とし、イソシアネートではカルボキシル基及びヒドロキシル基を架橋点として計算した。
【0069】
(実施例1)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90重量部と、アクリル酸(AA)10重量部と触媒を、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、モノマーBとして、4−ヒドロキシルブチルアクリレート(大阪有機材料工業株式会社;4HBA)を15.0重量部と、2官能性のエポキシ系架橋剤として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社;製品名:EX−830)を2.0重量部、アルキルフェノン系の光重合開始剤(チバ・ジャパン株式会社製;製品名:Irgacure(登録商標)651)を0.10重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.05当量である。
その粘着剤原料組成物を、基材として用いたセパレーター(東洋紡績株式会社製;製品名:K1504、厚み75μm)の上面に、アプリケーターを用いて、乾燥後における粘着剤層の厚みが200μmとなるように塗布した後、乾燥させて粘着剤層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体の粘着剤層の上面に、セパレーター(三菱樹脂株式会社製;製品名;MRF、厚み38μm)を貼合し、粘着剤の積層フィルムを作製した。
その後、基材を搬送しながら高圧水銀ランプで照射する連続UV照射装置を用いて、照射量約200mJ/cm(波長300nm〜400nm)となるように、基材である粘着剤の積層フィルムの搬送スピード、UV照射の光量などを調整しながらUV照射を行い、光重合開始剤を用いて光重合反応を行わせ、40℃で7日間以上養生し、最終的に粘着剤層が形成されたトランスファーテープを作製した。
【0070】
(実施例2)
2EHAを95重量部と、AAを5重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、4HBAを4.0重量部と、EX−830を0.6重量部、Irgacure(登録商標)651を0.06重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.03当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0071】
(実施例3)
4HBAを2.0重量部と、EX−830を0.4重量部と、Irgacure(登録商標)651を0.01重量部とを加えて粘着剤原料組成物を調合した以外は、実施例2と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.02当量である。
【0072】
(実施例4)
Irgacure(登録商標)651を0.02重量部として粘着剤原料組成物を調合した以外は、実施例2と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.03当量である。
(実施例5)
4HBAを10.0重量部と、EX−830を0.2重量部と、Irgacure(登録商標)651を0.01重量部とを加えて粘着剤原料組成物を調合した以外は、実施例2と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.01当量である。
【0073】
(実施例6)
2EHAを93重量部と、AAを7重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、4HBAを2.0重量部と、EX−830を0.6重量部、Irgacure(登録商標)651を0.01重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.02当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0074】
(実施例7)
2EHAを92重量部と、AAを8重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、4HBAを6.0重量部と、EX−830を0.6重量部、Irgacure(登録商標)651を0.02重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.02当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0075】
(実施例8)
2EHAを87重量部と、AAを13重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、4HBAを6.0重量部と、EX−830を0.8重量部、Irgacure(登録商標)651を0.04重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.02当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0076】
(実施例9)
2EHAを95.5重量部と、AAを4重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.5重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、4HBAを4.0重量部と、架橋剤としてイソホロンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン株式会社;製品名:A−45N)を0.3重量部、Irgacure(登録商標)651を0.02重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基およびHEAと4HBAのヒドロキシル基)に対して0.03当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
なお、実施例9において、ポリマーAの架橋点(AAのカルボキシル基およびHEAのヒドロキシル基)とポリマーBの架橋点(4HBAのヒドロキシル基)とのモル比は1:0.46であり、前者が後者より多い比率になっている。
【0077】
(実施例10)
2EHAを94.75重量部と、AAを5重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.25重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
それ以外は、実施例9と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基およびHEAと4HBAのヒドロキシル基)に対して0.03当量である。
なお、実施例10において、ポリマーAの架橋点(AAのカルボキシル基およびHEAのヒドロキシル基)とポリマーBの架橋点(4HBAのヒドロキシル基)とのモル比は1:0.39であり、前者が後者より多い比率になっている。
【0078】
(比較例1)
2EHAを95重量部と、AAを5重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、EX−830を0.6重量部と、Irgacure(登録商標)651を0.01重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。この場合、モノマーBは添加されていない。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.03当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0079】
(比較例2)
2EHAを95重量部と、AAを5重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、4HBAを10.0重量部と、EX−830を0.2重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。この場合、光重合開始剤は添加されていない。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.01当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0080】
(比較例3)
2EHAを94.5重量部と、AAを5重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.5重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、4HBAを4.0重量部と、架橋剤としてA−45Nを0.3重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。この場合、光重合開始剤は添加されていない。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基およびHEAと4HBAのヒドロキシル基)に対して0.03当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0081】
(比較例4)
2EHAを94.5重量部と、AAを5重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.5重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、架橋剤としてA−45Nを0.3重量部と、Irgacure(登録商標)651を0.02重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。この場合、モノマーBは添加されていない。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基およびHEAのヒドロキシル基)に対して0.04当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0082】
〈粘着テープの試験方法〉
上記の実施例1〜10及び比較例1〜4の粘着テープ(トランスファーテープ)を用いて、貼合サンプルを作製して、貼合後の気泡確認試験、白濁確認試験、貯蔵弾性率測定を行なった。
【0083】
(印刷段差追従性確認試験・真空下貼合)
スクリーン印刷で厚さ10〜40μm程度の印刷段差を形成したアクリル板と、ガラス板を真空環境下で貼合した。貼合条件は真空度が1.0×10Paに到達した時点で、押圧力3.0MPa、時間20秒で押圧する条件とした。貼合後に加圧加熱処理を実施し、常温で24時間放置後、アクリル板の側から貼合後の外観を目視にて確認し、印刷段差の部分に気泡が確認できるものを(×)、確認できないものを(○)と評価した。
【0084】
(印刷段差追従性確認試験・大気圧貼合)
スクリーン印刷で厚さ10〜40μm程度の印刷段差を形成したアクリル板と、ガラス板を大気圧環境下で貼合した。貼合にはクライムプロダクツ(株)製の貼合装置(製品名 SE320)を使用した。貼合後に加圧加熱処理を実施し、常温で24時間放置後、アクリル板の側から貼合後の外観を目視にて確認し、印刷段差の部分に気泡が確認できるものを(×)、確認できないものを(○)と評価した。
【0085】
(白濁確認試験)
粘着テープを85℃×95%RHの環境下へ投入し、12時間後に取り出した。その後23℃×50%RH環境下に放置し外観変化を目視にて確認した。白濁したものを(×)、白濁が確認できないものを(○)と評価した。
【0086】
(貯蔵弾性率測定)
複数枚の粘着テープを重ねて貼合し、60℃×0.5MPa×30分間のオートクレーブを実施し、厚み1mmの動的粘弾性試験用サンプルを作製した。このサンプルをせん断型レオメーター(AntonPaar社;装置名 MCR301)にて線形領域内、周波数1Hzの条件で動的粘弾性試験を行なった。貯蔵弾性率の測定は、−40℃〜+150℃の温度範囲で、昇温速度3℃/minの条件により、室温23℃における値を読み取った。
【0087】
〈試験結果〉
上記試験の結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
(印刷段差追従性確認試験の結果)
(真空下貼合)
真空下における貼合では、印刷段差が10〜20μmの場合、すべての実施例1〜10及び比較例1〜4において印刷段差の部分に気泡が入ることなく貼合することができた。
印刷段差が30〜40μmの場合においては、実施例2〜6及び比較例1〜4において印刷段差の部分に気泡が入ることなく貼合することができた。
(大気圧貼合)
大気圧下での貼合においても、真空下と同様の結果が得られた。
印刷段差が30〜40μm以上の場合、実施例1、7、8では貼合時に段差部分に気泡が入ってしまった。これは、実施例1、7、8はAAの割合が実施例2〜6よりも多く貯蔵弾性率が高いため、樹脂が硬くなり、被着体への追従性が悪くなっているためであると考えられる。
なお、この観点では、印刷段差が30μm以上の場合には貯蔵弾性率G’を例えば6×10Pa以下とすることが好ましい。
【0090】
(粘着テープの白濁確認試験の結果)
実施例1〜10については、白濁は確認できなかった。比較例1〜4においては白濁が確認された。
比較例2、3は光重合開始剤が導入されていないため、UV照射を行ってもモノマーBが重合しない。比較例2、3では白濁改善効果のある粘着剤になっていないことから、モノマーBを重合させることが白濁改善に効果があることが確認できた。
また、比較例1、4ではモノマーBが存在しないため、UV照射を行うことで光開始剤が反応はするものの、白濁改善効果のあるモノマーBの重合物が生成しない。比較例1、4では白濁してしまうことから、モノマーBの重合品の存在が重要であることが確認できた。
本評価は、セパレーター同士もしくはポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂フィルム同士で実施した場合に起こる変化であるが、ガス透過性の悪いガラス同士やアクリル板とガラスなどのサンプルでは白濁するタイミングは同じであるが、白濁が消滅する状況は数日かかることもある。
なお、耐熱耐湿環境試験において発生した、いずれの白濁も室温において数時間放置することにより、白濁は消滅して透明となった。
【0091】
(貯蔵弾性率測定の結果)
表2に示すように、印刷段差が10〜20μmであるとき、真空下および大気圧での貼合において、どの実施例および比較例においても印刷段差の部分に気泡が確認されなかったが、印刷段差が30μm以上の場合、実施例1、7、8と他の例との対比から分かるように、粘着テープの弾性率(単位Pa)は10前半〜後半オーダー、例えば1×10Pa以上かつ6×10Pa未満(あるいは実施例10の値を考慮すると5.9×10Pa以下)が好ましいことが分かる。
貯蔵弾性率(G’)は、主剤の組成、特にアクリル酸の配合比によるところが多いが架橋剤の添加量でも大きく変化する可能性はある。しかし、本発明による架橋剤の配合割合(0.1当量以下)であれば同じモノマー組成の場合、オーダーが変わるほどではないため、実測値の無い部分(表2に「(推定)」と表示した部分)は同組成品と同じオーダーの弾性率をとると推定できる。
例えば、アクリル酸の配合比が13重量部で架橋剤が0.1当量以下の場合は、実施例8を参照すれば1×10〜2×10程度であり、そうでないとしても、少なくとも1×10〜3×10の範囲には収まっている、と考えられる。
また、アクリル酸の配合比が7〜8重量部で架橋剤が0.1当量以下の場合は、実施例7を参照すれば6.5×10〜9×10程度であり、そうでないとしても、少なくとも1×10〜3×10の範囲には収まっている、と考えられる。
また、アクリル酸の配合比が1〜7重量部で架橋剤が0.1当量以下の場合は、実施例2、4を参照すれば1×10〜6×10程度であり、そうでないとしても、少なくとも1×10〜3×10の範囲には収まっている、と考えられる。
【0092】
以上の結果より、粘着剤層の主成分であるポリマーAのモノマー比、モノマーBの添加量、架橋剤の官能基の数および添加量、光重合開始剤の量を本発明の請求項に示す範囲にすることで、高温高湿度環境下に投入および取り出した際の白濁を防止できると共に、ガラス同士やガラス/アクリル板など硬いもの同士を貼合しやすく、かつ被着体に印刷などの段差があっても段差の部分に気泡が入ることなく貼合することができる粘着フィルムを作製することができる。
【符号の説明】
【0093】
1…基材、2…粘着剤層、3…セパレーター、5…片面粘着テープ、6…トランスファーテープ、11…搬送される基材またはセパレーター、12…塗布膜、13…セパレーター、21…ダイコーター、22…バックアップロール、23…乾燥室、24…セパレーター供給手段、25…ニップロール、26…紫外線照射装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に段差を有する被着体に貼合される粘着フィルム用の粘着剤組成物であって、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:4〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.1重量部と、
を含有する粘着剤用原料組成物を用い、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて得られ、23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満であることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着剤用原料組成物が、さらに
(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる0.2〜0.8重量部、
を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
表面に段差を有する被着体に貼合される粘着フィルムであって、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:4〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.1重量部と、
を含有する粘着剤用原料組成物を基材またはセパレーター上に塗布した後、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて得られる粘着剤層を備え、該粘着剤層を構成する粘着剤の23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着剤用原料組成物が、さらに
(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる0.2〜0.8重量部、
を含有することを特徴とする請求項3に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
表面に段差を有する被着体に貼合される粘着フィルム用の粘着剤組成物の製造方法であって、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:4〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.1重量部と、
を含有する粘着剤用原料組成物を調製する工程と、
光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて、23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満である粘着剤組成物を得る工程と、
を有することを特徴とする粘着剤組成物の製造方法。
【請求項6】
前記粘着剤用原料組成物が、さらに
(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる0.2〜0.8重量部、
を含有することを特徴とする請求項5に記載の粘着剤組成物の製造方法。
【請求項7】
表面に段差を有する被着体に貼合される粘着フィルムの製造方法であって、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜99重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が1〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:4〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.1重量部と、
を含有する粘着剤用原料組成物を調製する工程と、
前記粘着剤用原料組成物を、粘着フィルムの基材またはセパレーター上に塗布及び乾燥して粘着剤塗布膜を形成する工程と、
前記粘着剤塗布膜への光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて、23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上かつ3×10Pa未満であることを特徴とする粘着剤層を得る工程と、
を有することを特徴とする粘着フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記粘着剤用原料組成物が、さらに
(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる0.2〜0.8重量部、
を含有することを特徴とする請求項7に記載の粘着フィルムの製造方法。
【請求項9】
ディスプレイに部材を貼り合わせる用途の粘着テープである請求項3または4に記載の粘着フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−162659(P2011−162659A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26814(P2010−26814)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】