説明

粘着性材料、粘着剤および粘着シート

【課題】偏光板等の光学部材に適用したときに、耐光漏れ性により優れるとともに、リワーク性にも優れた粘着性材料、粘着剤および粘着シートを提供する。
【解決手段】二官能アクリレート基を有する9,9−ビスアリールフルオレン誘導体いに代表されるアクリレート基を有する特殊フルオレン化合物と、(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含有する粘着性材料。また、当該粘着性材料または当該粘着性材料に活性エネルギー線を照射してなる粘着剤からなる粘着層11と、粘着層11の一方の面に積層された剥離シート12と、粘着層11の他方の面に積層された基材13(光学部材)とから構成される粘着シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な粘着性材料、粘着剤(粘着性材料を硬化させた材料)および粘着シートに関するものであり、特に、偏光板等の光学部材用として好適な粘着性材料、粘着剤および粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置として、液晶表示装置(LCD)が広く利用されているが、その液晶表示装置を構成する光学部品として、液晶セルが用いられている。液晶セルは、一般に配向層を形成した2枚の透明電極基板の配向層を内側にして、スペーサにより所定の間隔になるように配置し、その周辺をシールして、2枚の透明電極基板の間に液晶材料を挟持したものである。通常、液晶セルにおける2枚の透明電極基板の外側には、それぞれ粘着剤を介して偏光板が接着される。
【0003】
偏光板は、一般的にポリビニルアルコール系偏光子の両面に、光学的等方性フィルム、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどを貼り合わせた3層講造を有する偏光フィルムからなり、さらにその片面には、上記透明電極基板等に貼着することを目的に粘着剤層が設けられている。
【0004】
上記粘着剤層を構成する偏光板用粘着剤には、一般的に、耐久性、耐光漏れ性およびリワーク性が求められる。熱架橋タイプの粘着剤においては、耐久性および耐光漏れ性はトレードオフの関係にあるため、それらの性能を両立することは困難である。
【0005】
そこで、熱架橋と紫外線による架橋の両方を利用する粘着剤が提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−235568号公報
【特許文献2】特開2006−309114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記粘着剤は、紫外線照射による架橋のために多官能(メタ)アクリレート化合物を使用するものであり、架橋後の粘着剤の強度を高めて、偏光板自体の収縮を抑制することで光漏れを抑制しようとするものである。しかし、ディスプレイの大画面化、細額縁化の流れのなかで、その耐光漏れ性の更なる向上が求められている。また、ディスプレイの大画面化に伴い、貼付経時粘着力の上昇の更なる抑制を図り、これまでよりも貼り直し・再利用が容易な、いわゆるリワーク性の優れたものが求められている。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、偏光板等の光学部材に適用したときに、耐光漏れ性により優れるとともに、リワーク性にも優れた粘着性材料、粘着剤および粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、下記構造式(a)で示されるフルオレン化合物(A)
【化1】


(式(a)中、Q及びQは芳香族環、脂肪族環、若しくは複素環であって、互いに同一又は相違しており、R及びRは重合性官能基であって、互いに同一又は相違している。)
を含有することを特徴とする粘着性材料を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)においては、重合によって得られる粘着剤中の三次元網目構造による剛直性に加えて、上記フルオレン化合物(A)が、その構造から剛直性を示すものであるため、当該粘着性材料から得られる粘着剤を偏光板等の光学部材に適用したときに、その光学部材の変形が抑制されると共に、光学部材の変形に伴う粘着剤そのものの配向をも防止することにより、これまでより優れた耐光漏れ性が得られるとともに、貼付経時における粘着力の上昇が低く抑えられ、優れたリワーク性が得られる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記構造式(a)中において、Q及びQが芳香族環であり、R及びRが(メタ)アクリレート基を有する官能基であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、さらに(メタ)アクリル系共重合体(B)を含有することが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明3)においては、前記フルオレン化合物(A)と前記(メタ)アクリル系共重合体(B)との含有割合が、質量比において1:100〜100:100であることが好ましい(発明4)。
【0014】
第2に本発明は、前記粘着性材料(発明1〜4)に、活性エネルギー線を照射してなる粘着剤を提供する(発明5)。
【0015】
第3に本発明は、基材と、粘着層とを備えた粘着シートであって、前記粘着層は、前記粘着性材料(発明1〜4)または前記粘着剤(発明5)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明6)。
【0016】
上記発明(発明6)において、前記基材は、光学部材であってもよい(発明7)。
【0017】
第4に本発明は、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着層とを備えた粘着シートであって、前記粘着層は、前記粘着性材料(発明1〜4)または前記粘着剤(発明5)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明8)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る粘着性材料、粘着剤および粘着シートにおいては、構造的に剛直な化合物を使用することで、偏光板等の光学部材に適用したときに、従来の単なる多官能(メタ)アクリレート化合物を使用したものよりも、さらに優れた耐光漏れ性を示すとともに、貼付経時での粘着力上昇を低く抑えることができるため、リワーク性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【図3】粘着剤層付き偏光板における光漏れ性試験の測定領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着性材料〕
本実施形態に係る粘着性材料は、下記構造式(a)で示されるフルオレン化合物(A)を含有する。
【化2】


(式(a)中、Q及びQは芳香族環、脂肪族環、若しくは複素環であって、互いに同一又は相違しており、R及びRは重合性官能基であって、互いに同一又は相違している。)
【0021】
及びQは芳香族環、脂肪族環、若しくは複素環であって、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、アダマンタン環、ピリジン環、ナフトキノン環、イミダゾール環などが挙げられる。Q及びQとしては、フルオレン化合物(A)の構造的な剛性を発揮でき、着色等の問題が比較的少ない観点から、ベンゼン環であることが特に好ましい。
【0022】
一方、R及びRは重合性官能基であって、例えば、ビニル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、オキセタン基、イソシアナート基等を含む官能基が挙げられる。R及びRとしては、反応時間が早く、基材への悪影響が少ないという観点から、活性エネルギー線重合性の重合性官能基であることが好ましい。活性エネルギー線重合性の重合性官能基としては、ビニル基や(メタ)アクリレート基等の不飽和二重結合を有する官能基が好ましく、特に、(メタ)アクリレート基を有する官能基が好ましい。
【0023】
以上より、フルオレン化合物(A)としては、2つのベンゼン環それぞれに、少なくとも1つずつ不飽和二重結合を有するビスアリールフルオレンが最も好ましい。ただし、1つのベンゼン環だけに不飽和二重結合を有するビスアリールフルオレンと併用することもできる。
【0024】
従来、剛直な粘着剤を得るには、活性エネルギー線硬化型化合物の添加量を増やし、得られる粘着剤中の三次元網目構造の割合を増加させていた。一方、本実施形態に係る粘着性材料では、重合によって得られる粘着剤中の三次元網目構造による剛直性に加えて、上記フルオレン化合物(A)が、その構造から剛直性を示すため、得られる粘着剤の剛直性は顕著なものとなる。すなわち、フルオレン化合物(A)のフルオレン環の9位の炭素(スピロ炭素)に結合する基(Q1,Q2)を介してフルオレン化合物(A)同士が結合する場合、スピロ炭素に結合する基(Q1,Q2)は立体障害により動きが制限されたものとなり、得られるポリマー自体に剛直性を付与することができる。特に、スピロ炭素に結合する基(Q1,Q2)が芳香族環または複素環であるときに、その傾向は顕著なものとなる。したがって、かかるフルオレン化合物(A)を含有する粘着性材料を使用した粘着剤層を有する積層体は、平面方向に変形し難いうえに、変形による粘着剤層自体の配向をも有効に抑制することができる。例えば、当該粘着性材料を偏光板用の粘着剤層に使用した場合には、硬い粘着剤層によって、偏光板の変形が抑制されるとともに、変形による粘着剤層の配向も防止されるため、従来よりもさらに優れた耐光漏れ性が得られる。また、貼付経時における粘着力の上昇が低く抑えられるため、リワーク性にも優れる。
【0025】
上記フルオレン化合物(A)の中でも特に好ましいものを、下記構造式(b)に示す。
【化3】


(式(b)中、R及びRは、不飽和二重結合を有する官能基であり、互いに同一又は相違している。)
及びRとしては、(メタ)アクリレート基を有する官能基が特に好ましい。
【0026】
本実施形態に係る粘着性材料は、好ましくは、さらに(メタ)アクリル系共重合体(B)を含有する。
【0027】
上記フルオレン化合物(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)を含有する粘着性材料は、粘着成分としての(メタ)アクリル系共重合体(B)により、所望の粘着力が得られるとともに、被着体との密着性、接着耐久性および耐候性に優れたものとなり、また、高い透明性を有するものとなる。
【0028】
上記(メタ)アクリル系共重合体(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、各種架橋方法によって架橋が可能な架橋点を有するものが用いられる。このような架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては特に制限はなく、従来粘着剤の樹脂成分として慣用されている(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0030】
このような架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体と、所望により用いられる他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
一方、分子内に架橋性官能基を有する単量体は、官能基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基の少なくとも1種を含むことが好ましく、具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル; (メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記以外の単量体として、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの非架橋性のアクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等を用いてもよい。
【0032】
上記粘着性材料において、(B)成分として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量としては、重量平均分子量で100万以上であるものが好ましく用いられる。この重量平均分子量が100万以上であると、被着体との密着性や、高熱・湿熱条件下での接着耐久性が十分となり、浮きや剥がれなどが生じない。密着性及び接着耐久性などを考慮すると、この重量平均分子量は、120万以上のものが好ましく、特に120万〜200万のものが好ましい。
【0033】
また、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率を表す分子量分布(Mw/Mn)は20以下が好ましい。分子量分布が20以下であると低分子量体成分の割合が少なく、高温下などの使用環境においても十分な接着耐久性が得られる。一方、分子量分布の下限値については、性能上の制限は特にないが、製造コストを考慮すると2以上が好ましい。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0034】
さらに、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体においては、分子内に架橋性官能基を有する単量体単位の含有量は、0.01〜10質量%の範囲が好ましい。この含有量が0.01質量%以上であると、後述する架橋剤との反応により、架橋が十分となり、耐久性が良好となる。一方、10質量%以下であると、架橋性が高くなりすぎることによる、被着体、例えば液晶ガラスセル等への貼合適性の低下がなく好ましい。耐久性と被着体への貼合適性などを考慮すると、この架橋性官能基を有する単量体単位のより好ましい含有量は0.05〜7.0質量%であり、特に0.2〜6.0質量%の範囲が好ましい。本実施形態において、この(B)成分としての(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記(A)成分は、その構造からして剛直であるとともに、(B)成分との相溶性に優れ、また、硬化収縮が小さい、透明性が高い、耐熱性に優れる、吸湿性が低い、といった優れた特徴を有している。
【0036】
(A)成分と(B)成分との含有割合は、質量比において1:100〜100:100であることが好ましく、特に5:100〜40:100であることが好ましい。
【0037】
上記粘着性材料には、所望により光重合開始剤を含有させることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、通常0.2〜20質量部の範囲で選ばれる。
【0038】
上記粘着性材料には、所望により、(C)成分として架橋剤を含有させることができる。この架橋剤としては、特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、本実施形態においては、イソシアネート系架橋剤であるポリイソシアネート化合物を少なくとも含む架橋剤が好ましい。
【0039】
ここで、ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
【0040】
上記架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋剤の種類にもよるが、当該粘着性材料における(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部である。
【0041】
上記粘着性材料には、所望により、(D)成分としてシランカップリング剤を含有させることができる。このシランカップリング剤を含有させることにより、例えば偏光板を液晶ガラスセルなどに貼合する場合に、粘着剤と液晶ガラスセルとの間の密着性がより良好となる。
【0042】
このシランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。このようなシランカップリング剤の添加量は、粘着性材料の固形分100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲が好ましく、特に0.005〜5質量部の範囲が好ましい。
【0043】
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記粘着性材料には、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤などを添加することができる。
【0045】
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、上記(A)成分および(B)成分を含有する粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなるものである。
【0046】
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプなどで得られ、一方、電子線は電子線加速器などによって得られる。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、粘着剤を形成することができる。
【0047】
上記粘着性材料に対する活性エネルギー線の照射量としては、所望の粘着力および貯蔵弾性率を有する粘着剤が得られるように適宜選定されるが、紫外線の場合は照度50〜1000mW/cm、光量50〜1000mJ/cm、電子線の場合は10〜1000kradの範囲が好ましい。
【0048】
このようにして、上記粘着性材料に活性エネルギー線を照射して得られる粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3〜10MPaであることが好ましい。この貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上であれば十分な耐光漏れ性が得られ、また10MPa以下であれば、接着耐久性が良好な粘着剤となる。以上の観点から好ましい23℃の貯蔵弾性率は(G’)は0.5〜5MPaである。また、80℃の貯蔵弾性率(G’)は、0.1〜5MPaであることが好ましい。なお、上記貯蔵弾性率(G’)は、JIS K7244−6に準拠して測定した値である。
【0049】
以上説明した粘着剤は、光学部材用として好ましく用いることができ、例えば、偏光板と位相差板との接着、あるいは偏光板(偏光フィルム)や位相差板(位相差フィルム)とガラス基板との接着に好適である。上記粘着剤によって得られる粘着剤層は、剛直なカルド構造を有する化合物を使用することで、従来の多官能(メタ)アクリレート化合物からなる活性エネルギー線硬化型化合物を使用したものよりも、さらに優れた耐光漏れ性を示すとともに、貼付経時での粘着力上昇を低く抑えることができ、リワーク性にも優れている。
【0050】
〔粘着シート〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着層11と、粘着層11に積層された基材13とから構成される。
【0051】
また、図2に示すように、第2の実施形態に係る粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0052】
いずれの粘着シート1A,1Bにおいても、粘着層11は、前述した粘着性材料、または当該粘着性材料に活性エネルギー線を照射してなる粘着剤からなる。
【0053】
粘着層11の厚さは、粘着シート1A,1Bの使用目的に応じて適宜決定されるが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲であり、例えば、光学部材、特に偏光板用の粘着層として使用する場合には、10〜50μm、特に10〜30μmであることが好ましい。
【0054】
基材13としては、特に制限は無く、通常の粘着シートの基材シートとして用いられているものは全て使用できる。例えば、所望の光学部材の他、レーヨン、アクリル、ポリエステル等の繊維を用いた織布または不織布;上質紙、グラシン紙、含浸紙、コート紙等の紙類;アルミ、銅等の金属箔;ウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等の発泡体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
【0055】
光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム等が挙げられる。中でも偏光板(偏光フィルム)は、収縮し易く、寸法変化が大きいため、耐光漏れ性の観点から、上記粘着層11を形成する対象として好適である。
【0056】
基材13の厚さは、その種類によっても異なるが、例えば光学部材の場合には、通常10μm〜500μmであり、好ましくは50μm〜300μmである。
【0057】
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0058】
上記剥離シートの剥離面(特に粘着層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0059】
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0060】
上記粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、上記粘着性材料を含む溶液を塗布して粘着層11を形成した後、その粘着層11に基材13を積層し、所望により、基材13の積層前又は積層後に、上記粘着層11に対して活性エネルギー線を照射する(この段階で粘着層11は粘着剤層となる)。なお、活性エネルギー線の照射は、被着体への貼付後であってもよい。活性エネルギー線の照射条件については、前述したとおりである。
【0061】
また、上記粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性材料を含む塗布溶液を塗布して粘着層11を形成した後、その粘着層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせ、所望により、他方の剥離シート12b(または12a)の積層前又は積層後に、上記粘着層11に対して活性エネルギー線を照射する(この段階で粘着層11は粘着剤層となる)。この場合も、活性エネルギー線の照射は、被着体への貼付後であってもよい。
【0062】
粘着性材料を希釈して塗布溶液とするための溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0063】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。なお、塗布溶液を得るに際して、溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性材料がコーティング可能な粘度等であれば、溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性材料がそのまま塗布溶液となる。
【0064】
粘着層11を形成する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、粘着性材料をコーティングして塗膜を形成させ、乾燥させる方法を用いることができる。乾燥条件は特に制限されないが、通常50〜150℃で10秒〜10分程度である。
【0065】
ここで、例えば、液晶セルと偏光板とから構成される液晶表示装置を製造するには、粘着シート1Aの基材13として偏光板を使用し、当該粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着層11と液晶セルとを貼合すればよい。
【0066】
また、例えば、液晶セルと偏光板との間に位相差板が配置される液晶表示装置を製造するには、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、露出した粘着層11と液晶セルとを貼合し、次いで他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、露出した粘着層11と位相差板とを貼合し、さらに、基材13として偏光板を使用した粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着層11と位相差板とを貼合すればよい。
【0067】
以上の粘着シート1A,1Bによれば、活性エネルギー線を照射した粘着層11(粘着剤層)が層全体及び微視的にも硬い性質を有するため、例えば偏光板の接着に適用した場合でも、偏光板の変形に追従することが防止されると共に、偏光板の変形により粘着剤層に応力が掛かっても粘着剤層が配向することがない。したがって、従来の活性エネルギー線硬化型化合物を使用したものよりも、さらに優れた耐光漏れ性等を示すとともに、貼付経時での粘着力上昇を低く抑えることができ、リワーク性にも優れている。
【0068】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0069】
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0071】
〔実施例1〕
アクリル酸ブチルとアクリル酸2−ヒドロキシエチルとを質量比98.5:1.5の割合で用い、常法に従って重合してなる重量平均分子量約200万のアクリル酸エステル共重合体(アクリル系共重合体(B))を製造した。
【0072】
次に、上記アクリル系共重合体(B)に対して、フルオレン化合物(A)として二官能アクリレート基を有する9,9−ビスアリールフルオレン誘導体(大阪ガスケミカル社製,EA−0250A)15質量部と、イソシアネート系架橋剤(綜研化学社製,L−45)2.6質量部(固形分)と、シランカップリング剤として3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製,KBM−403)0.1部とを混合した粘着剤組成物を、メチルエチルケトンにて固形分濃度14質量%となるように希釈し、これを粘着性材料の塗布溶液とした。なお、当該粘着性材料の配合を表1に示す(以下同じ)。
【0073】
得られた粘着性材料を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間乾燥処理して粘着層を形成した。
【0074】
次いで、ディスコティック液晶層付偏光フィルムからなる、偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化した偏光板を、粘着層とディスコティック液晶層とが接するように貼合した。貼合してから30分後に剥離フィルム側から、紫外線(UV)を下記の条件で照射し、粘着剤層付き偏光板を作製した。
<UV照射条件>
・フュージョン社製無電極ランプ Hバルブ使用
・照度600mW/cm、光量150mJ/cm
なお、UV照度・光量計としては、アイグラフィックス社製「UVPF−36」を使用した。
【0075】
〔実施例2〕
二官能アクリレート基を有する9,9−ビスアリールフルオレン誘導体の添加量を20質量%に変更する以外、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0076】
〔実施例3〕
二官能アクリレート基を有する9,9−ビスアリールフルオレン誘導体の添加量を30質量%に変更する以外、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0077】
〔実施例4〕
架橋剤を添加しない以外、実施例2と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0078】
〔実施例5〕
アクリル系共重合体(B)として、ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体(質量比95:5)100質量部を使用する以外、実施例2と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0079】
〔実施例6〕
アクリル系共重合体(B)として、ブチルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体(質量比98.5:1.5)91質量部と、ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体(質量比95:5)9質量部との混合物を使用する以外、実施例4と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0080】
〔実施例7〕
二官能アクリレート基を有する9,9−ビスアリールフルオレン誘導体の添加量を30質量%に変更する以外、実施例6と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0081】
〔実施例8〕
アクリル系共重合体(B)として、ブチルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体(質量比98.5:1.5)91質量部と、ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体(質量比95:5)9質量部との混合物を使用する以外、実施例2と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0082】
〔実施例9〕
二官能アクリレート基を有する9,9−ビスアリールフルオレン誘導体に替えて、単官能アクリレート基および二官能アクリレート基を有する9,9−ビスアリールフルオレン誘導体(大阪ガスケミカル社製,EA−F5003)20質量%を使用する以外、実施例2と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0083】
〔比較例1〕
二官能アクリレート基を有する9,9−ビスアリールフルオレン誘導体に替えて、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成社製,アロニックスM−315)15質量%を使用する以外、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0084】
〔比較例2〕
アクリル系共重合体(B)として、ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体(質量比98.5:1.5)100質量部を使用する以外、比較例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0085】
〔比較例3〕
トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートからなる架橋剤(東亜合成社製,アロニックスM−315)の添加量を20質量%に変更し、架橋剤を添加しない以外、比較例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0086】
〔比較例4〕
アクリル系共重合体(B)として、ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体(質量比95:5)100質量部を使用する以外、比較例3と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0087】
〔比較例5〕
アクリル系共重合体(B)として、ブチルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体(質量比98.5:1.5)91質量部と、ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体(質量比95:5)9質量部との混合物を使用し、架橋剤を添加しない以外、比較例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0088】
〔試験例1〕(粘着力測定)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板から、25mm幅、100mm長のサンプルを切り出し、剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所社製オートクレイブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、JIS Z 0237に準拠して、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。
【0089】
さらに、23℃、50%RHの条件下で21日放置してから、上記と同様にして粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。なお、好ましい粘着力の範囲は、0.1〜20N/25mmである。
【0090】
〔試験例2〕(貯蔵弾性率測定)
実施例または比較例で得られた粘着剤層を積層し、8mmφ×3mm厚の円柱状の試験片を作製し、JIS K7244−6に準拠して、ねじり剪断法により下記の条件で貯蔵弾性率(G’)を測定した。結果を表2に示す。
・測定装置:レオメトリック社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDAII」
・周波数:1Hz
・温度:23℃
【0091】
〔試験例3〕(耐久性評価)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、裁断装置(荻野製作所社製スーパーカッター,PN1−600)を用いて233mm×309mmサイズに調整した。剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所製オートクレイブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。
【0092】
その後、下記の各耐久条件の環境下に投入し、500時間後に10倍ルーペを用いて観察を行った。外観変化は以下を基準とした。結果を表2に示す。
○:4辺において、外周端部から0.6mm以上の部位に欠点が無いもの
×:4辺の少なくとも1辺において、外周端部から0.6mm以上の部位に、浮き、剥がれ、発泡、スジなどの0.1mm以上の粘着剤の外観異常欠点があるもの
<耐久条件>
・80℃dry
・60℃,相対湿度90%
・−35℃⇔70℃の各30分のヒートショック試験,200サイクル
【0093】
〔試験例4〕(光漏れ性試験)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、裁断装置(荻野製作所社製スーパーカッター,PN1−600)を用いて233mm×309mmサイズに調整した。剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所製オートクレイブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。なお、上記貼合は、無アルカリガラスの表裏に、粘着剤層付き偏光板を偏光軸がクロスニコル状態になるように行った。この状態で、80℃dry環境下にて500時間放置後、以下に示す方法で光漏れ性を評価した。結果を表2に示す。
【0094】
<光漏れ性評価>
大塚電子社製のMCPD−2000を用い、図3に示す各領域の明度を測定し、明度差ΔL*を、式
ΔL*=[(b+c+d+e)/4]−a
(ただし、a、b、c、d及びeは、それぞれA領域、B領域、C領域、D領域及びE領域のあらかじめ定められた測定点(各領域の中央部1箇所)における明度である。)で求め、光漏れ性とした。ΔL*の値が小さいほど光漏れが少ないことを示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
表2から明らかなように、実施例で得られた粘着剤層付き偏光板は、耐久性に問題がなく、光漏れ性が少なく耐光漏れ性に優れ、さらには貼付経時における粘着力の上昇が低く抑えられている。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の粘着性材料および粘着剤は、光学部材、例えば偏光板や位相差板の接着に好適であり、また、本発明の粘着シートは、偏光板や位相差板等の光学部材用の粘着シートとして好適である。
【符号の説明】
【0099】
1A,1B…粘着シート
11…粘着層
12,12a,12b…剥離シート
13…基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(a)で示されるフルオレン化合物(A)
【化1】


(式(a)中、Q及びQは芳香族環、脂肪族環、若しくは複素環であって、互いに同一又は相違しており、R及びRは重合性官能基であって、互いに同一又は相違している。)
を含有することを特徴とする粘着性材料。
【請求項2】
前記構造式(a)中において、Q及びQが芳香族環であり、R及びRが(メタ)アクリレート基を有する官能基であることを特徴とする請求項1に記載の粘着性材料。
【請求項3】
さらに(メタ)アクリル系共重合体(B)を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着性材料。
【請求項4】
前記フルオレン化合物(A)と前記(メタ)アクリル系共重合体(B)との含有割合が、質量比において1:100〜100:100であることを特徴とする請求項3に記載の粘着性材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなる粘着剤。
【請求項6】
基材と、粘着層とを備えた粘着シートであって、
前記粘着層は、請求項1〜4のいずれかに記載の粘着性材料または請求項5に記載の粘着剤からなる
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項7】
前記基材は、光学部材であることを特徴とする請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着層と
を備えた粘着シートであって、
前記粘着層は、請求項1〜4のいずれかに記載の粘着性材料または請求項5に記載の粘着剤からなる
ことを特徴とする粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−116816(P2011−116816A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273288(P2009−273288)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】