説明

粘膜下医療処置を実行するための方法及びシステム

内視鏡を用いて消化管の所望領域内で粘膜下医療処置を実行するための器具、システム及び方法が提供される。器具には、セーフアクセス・ニードルの注射器、粘膜下トンネリング器具、粘膜下解剖器具、粘膜切除装置がある。システムは、そのような器具の1つ以上と注入剤との組み合わせ、或いは注入剤無しの器具からなる。その処置を実行するための様々な方法の実施形態も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を使用して消化管の所望領域に粘膜下医療処置を実行するための、セーフアクセス・ニードルの注射器、粘膜下トンネリング器具、粘膜下解剖器具、粘膜切除装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胃腸内視鏡検査の分野では、何年にもわたって、消化管内に位置する組織を観察したり、修正したり、取り除くための診断・治療技術に重点的に取り組んできた。組織を視覚化したり、拡張したり、切断したり、操作するなどの一般的内視鏡的処置技術は、この分野ではよく知られている内視鏡やバルーンやスネアや電気外科的ツールなどのフレキシブル装置を使用することで達成されている。
【0003】
これらの装置とテクニックの多くが、粘膜下移植組織の配置のため粘膜層の幾つかの腫瘍性病変部を特定して取り除くだけでなく消化管の中の概略位置へのアクセスに有効であったが、切除又はアクセスにするにあたって極端に困難な消化管の幾つかの病巣と領域がある。例えば、大きく平坦な粘膜病変部の集団除去の場合、現在ある内視鏡ツールと技術にとっては数多くの問題点がある。更に、幾つかの疾患(胃の運動性、過敏性腸症候群、慢性の腸の疑似障害など)に対し有効な診断をするためには、筋肉壁や筋層間神経叢の生検が必要となる場合がある。現在、この種の被検査物へのアクセスにあたっては、非常に熟練した閉鎖の技術を必要とする内視鏡的アプローチにおいて特に困難である全層生検を必要としている。
【0004】
一般には“内視鏡的粘膜切除術(EMR)”と呼ばれている、平坦な病変部を切除する内視鏡的技術にはこれまで幾つかの進歩があった。これらEMR技術の1つである“リフトアンドカット”には、病変部を引き起こすことで従来のスネア装置を使った切除に適するように病変部形状を変える試みにおいて、病変部の下方に生理食塩水、或いは他の生体適合溶液を注入することを含んでいる。
【0005】
この技術の変更例が特許文献1に開示されており、そこでは病変部が識別され、生理食塩水の注入に注射カテーテルが用いられ、病変部を隆起させている。ここでは、ライゲータが内視鏡の遠位端に取り付けられ、ライゲータ内に組織をもたらすほど病変部を吸引している。そして、その際にはライゲータ・バンドが組織に当てられ、電気外科的スネアを使った除去に適するバンド付きのマッシュルーム型ポリープを形成している。
【0006】
或いは又、特許文献2は、病巣部を生理食塩水で隆起させるべく標的となる病巣部近傍の組織にニードル(針)によって穴を開けるようにした同軸型ニードル・切断スネアアセンブリを開示している。ひとたび病巣部が隆起したならば、ニードルは組織から引き込められ、次いでスネアがニードルルーメンから病巣部を取り囲むように延ばされる。次いで、病巣部は内視鏡の遠位端に隣接する吸引シリンダ内へと吸引され、病巣部を囲む組織を切断するべくスネアが締め上げられる。
【0007】
EMR技術は幾分平坦な腫瘍性病変部を処置するのには効果的であるとされているが、これらの技術に関係する限界と複雑性が存在する。この技術に関連する大きな限界点としては、切除できる病変部の大きさの問題がある。一般に、これらのEMR技術では直径2cm未満の粘膜病変部の切除にしか適さない。これより大きいか、或いは不規則な形状の病変部に対しては段階的な方法で切除できるかもしれないが、この方法だと小さな病変部分が残留してしまう恐れがあるため好ましいものではない。これらの技術の別の限界点としては切除される領域の不確実さがある。ひとたび組織がいったん結紮キャップや吸引シリンダ内に吸引されてしまうと、組織は、視野が曖昧な内視鏡の可視化手段に直接隣接することとなる。これらのEMR技術に関する1つの複雑さは、ニードル注射システムの使用と関連している。注入カテーテルを操作し、粘膜層を介して粘膜下層内にニードルを位置決めすることは、結局のところ消化管の筋肉壁に穴を開けることであり、感染症や腹膜炎を併発させる可能性がある。EMR技術に関連するもう1つの複雑さには、下に横たわる筋肉層への損傷という問題がある。病変部を隆起させるために使用される生理食塩水や他の非粘性流体は、粘膜下層内への注射の後に比較的急速に消散するため、下方に横たわる筋肉層の一部分が吸引された組織の中に含まれる可能性があり、切除にあたって電気外科的ツールを使用した場合、うっかり損傷してしまう可能性がある。
【0008】
EMR技術に関連するこれら大きさ、不規則形状、可視化制限事項の幾つかを解消するべく、“内視鏡的粘膜下解離法(ESD)”と呼ばれる新処置法が開発されている。この処置法では、病変部を含み、標的となる切除領域の周辺がマーキングされる。ここでは注入カテーテルが粘膜下層内に粘性流体を送達するために使用され、同流体は標的となる切除領域にわたって容易には消散することがない。ひとたび標的切除領域が隆起したならば、電気外科的ニードルナイフを使って、切除領域のエッジにおいて粘膜層を通る切開部が作られることになる。医師はニードルナイフを使って、標的切除領域の周辺に沿って粘膜層を切開する。切除領域の境界が切断されたならば、次に医師は、ニードルナイフを用い手作業で、筋肉壁に粘膜層を繋げる粘膜下結合組織を切断する。医師による粘膜下解剖が終了した時点で、粘膜層はワンピースの形で自由に取り除くことができる。この処置法によって医師は、一括して大きく不規則な形状の病変部を摘出することができるが、同処置法は医師のある部分に高度なスキルを要求し、依然としてニードルの穿孔と筋肉層の損傷に関連する複雑性を抱えている。
【0009】
腫瘍性病変部を摘出するESD方法を実行するにあたっては、粘膜下医療処置の実行時と同様に、粘膜下空間の結合組織を解離することは、功を奏する成果を得るうえで重要なステップであることは明白な事実である。これまでも多くの研究調査者が、粘膜下結合組織を解離する方法を提供しようと試みている。
【0010】
特許文献3では、粘膜下食道膨化装置を移植する方法が開示されている。同特許は更に、粘膜下ポケットを作るために鋭利ではない解離部材の使用も開示している。更に同特許は、粘膜下ポケットを形成するべく拡張された時に粘膜下組織を解離するように、粘膜下層内に挿入されるバルーンの使用を開示している。
【0011】
特許文献4では、粘膜下胃インプラントの移植方法が開示されている。同出願は更に、胃インプラントを配置することになる粘膜下ポケットを形成するため、粘膜下層の結合組織を解離する機械的、かつ電気外科的な解剖器具の様々な形態を開示している。機械的解剖器具の記述には、バルーン型解剖器具の様々な形態が含まれている。
【0012】
特許文献5では、粘膜下解剖器具、システム、及び方法が開示されている。同出願は更に、粘膜下解剖バルーンと組み合わせて使用する電気外科的高周波ナイフを開示している。方法として含まれるのは、高周波ナイフを連続して作動させて穴を形成し、この穴の中にバルーンアセンブリを進行させ、バルーンを膨張させて粘膜下層の結合組織を解離する各ステップである。この方法のこれらのステップは病変部下方の結合組織の全てが完全に解離するまで繰り返されることになる。
【0013】
以上説明した粘膜下解剖開示技術の殆どにおいて、医師は、結合組織がほぼ損なわれない状態のまま、最初に粘膜下層の中に解剖器具の重要部分を進めなければならない。これらの技術は、膜下結合組織を解離するため押圧力が器具の先端部に伝達されることを必要とする。この押圧力を付与する過程で、器具の先端によって筋肉壁や粘膜層が損傷されたり、穿孔するリスクがある。
【0014】
電気外科的高周波ナイフを使用する開示方法を実行するにあたり、粘膜層を通る最初の穴を内視鏡的に可視化される場合もある。ひとたびバルーンアセンブリを粘膜下切開穴に進行させ拡張して空洞を作成したならば、次に2番目の穴を形成するべく、高周波ナイフの更なる進行を視覚化されない状態で行わなければならない。この2番目の穴と、それに続く穴の形成過程において、高周波ナイフの方向性の視覚的確認なくしては筋肉壁や粘膜層を穿孔してしまうリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,651,788号
【特許文献2】米国特許第5,961,526号
【特許文献3】米国特許第6,098,629号
【特許文献4】PCT特許出願WO02/089655号
【特許文献5】米国特許出願第2005/0149099号
【発明の概要】
【0016】
本発明の1つの特徴によれば、哺乳動物における使用のためにセーフアクセス・ニードルの注射器が提供される。そのセーフアクセス・ニードルの注射器は、近位及び遠位端と、それを通って延びるルーメンとを備えた細長いフレキシブルな管状部材を具備する。組織保持部材は管状部材の遠位端に隣接して配置される。近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを備えたニードル部材は管状部材のルーメンの中にスライド可能に配置される。
【0017】
組織保持部材は、管状部材と一体形成され、消化管の中で粘膜組織と係合するように形成された窓部材の形態をとる。シール栓は窓部材から遠い管状部材のルーメン内部に含まれる。管状部材の近位端に接続された真空源が作動されると、真空によって粘膜の組織が組織保持部材の窓部材の中に吸引されることになる。
【0018】
ニードル部材は管状部材のルーメンの中で同軸状に配置される。ニードル部材の遠位端は、管状部材に対し軸方向にニードル部材を進行させることによって、窓部材に近い第1位置から窓部材の中の第2位置まで操作することができる。同様に、ニードルの遠位端は、管状部材に対して軸方向にニードル部材を引っ込めることによって、窓部材の中の第2位置から窓部材に近い第1位置まで操作することができる。真空が管状部材に印加されると、粘膜の組織は組織保持部材の窓部材の中に吸引される。第1位置から第2位置まで操作されるニードル部材の遠位端は、結果として組織の粘膜層を貫き、粘膜下層に入ることになる。
【0019】
本発明のもう一つの特徴によれば、哺乳動物に使用するためのセーフアクセス・ニードルの注射器が提供される。そのセーフアクセス・ニードル注射器は近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを備えた細長いフレキシブルな管状鞘部材を備えている。組織保持部材は管状鞘部材の遠位端に隣接して置かれる。近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有するニードル部材は管状鞘部材のルーメンの中でスライド可能に配置される。
【0020】
組織保持部材は、伸長軸部材の遠位端に接続された1組の動作可能顎の形態をとる。その顎は、消化管の中で粘膜の組織と係合するようになっている。その伸長軸部材は管状鞘部材のルーメンの中でスライド可能に配置される。顎は、抑制されていない状態で外側に付勢されるような開放状態から、部分的又は完全に抑制された状態で顎同士が互いに接近するような閉じ状態へと動作可能になっている。組織保持部材が管状鞘部材の遠位端に隣接して配置されかつ顎が自由な状態にある時、管状鞘の遠位端に対する伸長軸部材の接近移動によって顎が部分的に抑制され、前記開放状態から閉じ状態へと移動することになる。
【0021】
ニードル部材は管状部材のルーメン内で同軸状に配置される。ニードル部材の遠位端は、伸長軸部材に対しニードル部材を軸方向に進行させることで、組織保持部材の顎に近い第1位置から顎間の第2位置に至るまで操作可能である。同様に、伸長軸部材に対し軸方向にニードル部材を引っ込めることによって、ニードルの遠位端は、組織保持部材の顎間の第2位置から組織保持部材の顎に近い第1位置まで操作可能である。組織保持部材の顎を粘膜組織に隣接させ、開放状態から閉じ状態へと操作することで、粘膜組織は顎間に握られて保持されることになる。そして、ニードル部材の遠位端を第1位置から第2位置へと操作することで組織の粘膜層を貫通し、粘膜下層に入ることになる。
【0022】
本発明の別の特徴によれば、ニードル部材は更に停止部材を備え、該停止部材はニードル部材の遠位端に隣接して配置される。ニードル部材の遠位端が粘膜層を貫通する際に、停止部材は粘膜組織と係合することでニードルの粘膜層貫通深さを制限する。ひとたび停止部材が粘膜組織と係合したならば、ニードルルーメンを介して粘膜組織に注入された流体がニードルの穿刺部位から出ないように、停止部材によってニードルの周囲を封止することも可能である。
【0023】
本発明の更なる特徴によれば、哺乳動物の消化管内の粘膜層の下方に安全ブレブを形成するセーフアクセス・ニードルの注射器の作動方法が提供される。その方法は、セーフアクセス・ニードルの注射器を提供するステップを含んでいる。セーフアクセス・ニードルの注射器は、管状部材、組織保持部材及び管状部材のルーメン内にスライド可能に配置されるニードル部材を有する。方法は又、自然孔を通ってセーフアクセス・ニードルの注射器を哺乳動物の消化管内に挿入するステップを含んでいる。方法は更に、粘膜組織を組織保持部材に係合させるべくセーフアクセス・ニードルの注射器を操作するステップを含んでいる。方法は又、ニードル部材を以て粘膜層を貫通するステップも含んでいる。方法は更に、ニードル部材を介して流体を粘膜下層に注入するステップを含んでいる。
【0024】
本発明の別の特徴によれば、哺乳動物の内部で使用するためのセーフアクセス解剖システムが提供される。そのセーフアクセス解剖システムは、セーフアクセス・ニードルの注射器と注入解離材を備えている。注入解離材は粘膜下結合組織を溶かすことができる溶液の形態をとることができる。この種の溶解溶液の例としては、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(MESNA)がある。粘膜下結合組織を溶解することができる追加の物質としては、酸や、ペプターゼ酵素溶液、プロテアーゼ/コラゲナーゼ、パパイン、キモトリプシン及びアセチルシステインなどの酵素がある。注入解離材は、薬理作用のない物質の形態をなし、粘膜下組織を純粋に機械的に壊すものでも良い。機械的な注入解離材としては、粘膜下空間に入ると固まる注入溶液、注入半個体ゼラチン、及び注入ゲル化ミクロスフィアがある。粘膜下空間への注入後固まる溶液としては、例えばプルロニック127のような感熱性高分子溶液又は熱可逆性ポリマーゲルでも良い。更なる注入凝固溶液としては、組織や添加された化学薬品との接触で重合したり交差結合する、ハイドロゲルやシアノアクリレートのようなモノマー及びポリマー溶液がある。半個体ゼラチンとゲル化ミクロスフィアは、例えばコラーゲン及びアルギン酸塩、又はポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニル・ピロリドン(PVP)、アクリレートポリマーのような合成物質のような自然材料から形成しても良い。
【0025】
本発明の更なる特徴によれば、哺乳動物の消化管内の粘膜層の下方に解離した安全ブレブを形成するセーフアクセス解剖システムの作動方法が提供される。その方法は、セーフアクセス・ニードルの注射器と解離材を提供するステップを含んでいる。セーフアクセス・ニードルの注射器は、管状部材、組織保持部材及び管状部材のルーメン内にスライド可能に配置されるニードル部材を有する。方法は又、自然孔を通ってセーフアクセス・ニードルの注射器を哺乳動物の消化管内に挿入するステップを含んでいる。方法は更に、粘膜組織を組織保持部材に係合させるべくセーフアクセス・ニードルの注射器を操作するステップを含んでいる。方法は又、ニードル部材を以て粘膜層を貫通するステップも含んでいる。方法は更に、ニードル部材を介して解離材を粘膜下結合組織が解離した粘膜下層に注入し、以て粘膜層を筋肉層から分離するステップを含んでいる。方法は更に、哺乳動物から解離材を除去するステップを含んでも良い。
【0026】
本発明の特徴により粘膜下トンネリング器具が提供される。その粘膜下トンネリング器具は、近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材と、該管状部材の遠位端に位置する伸長拡張可能部材とを有する。拡張可能部材は近位及び遠位端を有し、拡張可能部材の前記近位端は前記管状部材の前記遠位端に接続される。拡張可能部材は裏返されることで、拡張可能部材の前記遠位端は管状部材の前記ルーメン内に配置される。
【0027】
本発明の特徴により粘膜下トンネリング器具が提供される。その粘膜下トンネリング器具は、近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材と、該管状部材の遠位端に位置する伸長拡張可能部材とを有する。拡張可能部材は近位及び遠位端を有し、拡張可能部材の前記近位端は前記管状部材の前記遠位端に接続される。拡張可能部材には、その遠位端が巻かれた螺旋形の中心に位置するような第1渦巻形態と、その近位及び遠位端がほぼ直線状の形となる第2拡張形態とがある。その拡張可能部材は、第1渦巻形態から第2拡張形態までの範囲で動作可能となっている。拡張可能部材は、送達及び粘膜下トンネリング器具の位置決めの間、拡張可能部材自体の形状を前記第1渦巻形態に保持する保持部材を具備しても良い。保持部材は、バルーンに付けられた螺旋状コイル部材の形態をとるようにしても良い。螺旋状コイル部材は、弾力性又は非弾力性の金属やポリマーから形成することができる。
【0028】
本発明の更なる別の特徴によれば、粘膜下トンネリング器具の拡張可能部材はバルーンの形態をとる。バルーンは当該技術では一般的に知られたコンプライアントタイプでも良く、或いはノンコンプライアントタイプでも良い。バルーンは、例えばオレフィン、エラストマー、熱可塑性エラストマー、ビニール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素重合体、共重合体、及びこれら材料の組み合わせなどのような、生体適合性ポリマタイプの材料から形成しても良い。
【0029】
本発明の更に別の特徴によれば、拡張可能部材は管状骨格の形態をとる。管状骨格は、例えばレーザーカットチューブ、網組メッシュチューブ、網組されないメッシュチューブのように異なる様式によって構成しても良い。管状骨格は、例えばオレフィン、エラストマー、熱可塑性エラストマー、ビニール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素重合体、共重合体、及びこれら材料の組み合わせに代表されるようなポリマー、或いはステンレス鋼、ニチノール、他の生体適合性合金に代表されるような金属から形成しても良い。
【0030】
本発明の別の特徴によれば、拡張可能部材の遠位端は係留部材の遠位端に接続される。係留部材は、管状部材のルーメン内でスライド可能に配置され、その近位端はハンドル部材に接続される。係留部材はスルールーメンを含んでも良いフレキシブルフィラメントの形態をとる。ハンドル部材を係留部材の長さ調整に使用することで管状部材のルーメンを出ることができる拡張可能部材の長さを制御するようにしても良い。
【0031】
本発明の更なる特徴によれば、哺乳動物の消化管内の粘膜層の下方に粘膜下トンネルを形成する粘膜下トンネリング器具の作動方法が提供される。その方法は粘膜層の下方で安全ブレブを形成するステップを含んでいる。又、その方法は粘膜下トンネリング器具を提供するステップを含んでいる。粘膜下トンネリング器具は、伸長管状部材と、該管状部材の遠位ルーメンの中に位置する、裏返された拡張可能部材とを備える。又、方法は自然孔を通って粘膜下トンネリング器具を哺乳動物の消化管内に挿入するステップを含んでいる。方法は更に、安全ブレブの粘膜層の中に開口部を形成するステップを含んでいる。方法は又、粘膜層に形成された前記開口部を介して粘膜下トンネリング器具の遠位端を位置決めするステップを含んでいる。方法は更に、粘膜下トンネリング器具を作動し、管状部材から拡張可能部材を広げて拡張させ、以て粘膜下トンネルを形成するステップを含んでいる。方法はその後、哺乳動物から粘膜下トンネリング器具を取り外すステップを含んでいる。
【0032】
本発明の別の特徴によれば、セーフアクセス・ニードルの注射器と粘膜下トンネリング器具を備える粘膜下トンネリングシステムが提供される。その粘膜下トンネリングシステムは、キットの形態で提供しても良い。
【0033】
本発明の更に別の特徴によれば粘膜下解剖器具が提供される。その粘膜下解剖器具は、近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状軸部材、及び管状軸部材の遠位端に位置する拡張可能部材を備える。粘膜下解剖器具は更に、粘膜下トンネルに挿入された管状部材の遠位端の長さを視覚的に決定するために、管状部材の軸上で既知距離をもって隔てられた1つ指標又は複数指標を含んでも良い。指標は更に、蛍光透視法によって目に見えるようにX線不透過材料から作られるようにしても良い。
【0034】
本発明のまた更に別の特徴によれば、粘膜下解剖器具の拡張可能部材はバルーンの形態をとる。バルーンは当該技術では一般的に知られたコンプライアントタイプでも、又ノンコンプライアントタイプでも良い。バルーンは、オレフィン、エラストマー、熱可塑性エラストマー、ビニール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素重合体、共重合体、及びこれら材料の組み合わせなどのような、生体適合性ポリマタイプの材料から形成しても良い。
【0035】
本発明の更なる特徴によれば、哺乳動物の消化管に大きな粘膜層解離域を形成する粘膜下解剖器具の作動方法が提供される。その方法は、粘膜層の下方に細長い粘膜下トンネルを形成するステップを含んでいる。方法は更に、粘膜下解剖器具を提供するステップを含む。その粘膜下解剖器具は、伸長管状部材、及び該管状部材の遠位端に位置する拡張可能部材を有する。又、その方法は自然孔を通って粘膜下解剖器具を哺乳動物の消化管内に挿入するステップを含んでいる。方法は更に、粘膜層に形成された開口部を介して粘膜下解剖器具の遠位端を細長い粘膜下トンネル内に位置決めするステップを含んでいる。方法は更に、粘膜下解剖器具を作動させて管状部材の遠位端において拡張可能部材を拡張し、以て大きな粘膜層解離域を形成するステップを含んでいる。方法はその後、哺乳動物から粘膜下解剖器具を取り外すステップを含んでいる。
【0036】
本発明の更なる特徴によれば粘膜下トンネリング解剖器具が提供される。その粘膜下トンネリング解剖器具は、近位及び遠位端とそれを通るルーメンとを有する細長い第1管状部材と、該第1管状部材の遠位端に位置する細長い第1拡張可能部材とを備えている。この第1拡張可能部材は近位及び遠位端を有するが、この近位端は前記第1管状部材の遠位端に接続される。第1拡張可能部材は、その遠位端が第1管状部材のルーメン内に位置決めされるように裏返される。粘膜下トンネリング解剖器具は更に、近位及び遠位端とそれを通るルーメンとを有する細長い第2管状部材と、該第2管状部材の遠位端に位置する細長い第2拡張可能部材とを備える。この細長い第1管状部材は、その遠位端が第2管状部材が遠位ルーメンから延びるように、細長い第2管状部材のルーメン内でスライド可能に配置される。
【0037】
本発明の別の特徴によれば、セーフアクセス・ニードルの注射器、粘膜下トンネリング器具及び粘膜下解剖器具を備える粘膜下解剖システムが提供される。その粘膜下解剖システムは、キットの形態で提供しても良い。粘膜下解剖システムにおいて、粘膜下トンネリング器具と粘膜下解剖器具を一体形成しても良い。
【0038】
本発明の特徴によれば、哺乳動物の消化管内の粘膜層の下方ある生体組織を獲得するのに適した粘膜下生検器具が提供される。その粘膜下生検器具は、近位及び遠位端と、第1ルーメンとを有する伸長管状部材を備える。窓部材が伸長管状部材の遠位端に配置されると共に伸長管状部材の第1ルーメンに接続される。真空源を管状部材の第1ルーメンの近位端に接続し、窓部材を組織に隣接させた時、該組織は窓部材内に吸引される。組織カッターが窓部材に隣接するようにして管状部材の遠位端に配置される。組織カッターは窓部材から遠い第1位置から窓部材に近い第2位置までの範囲で動作可能である。組織が窓部材の中に吸引された際には、組織カッターをその第1位置から第2位置へ移動するように作動でき、これにより窓部材内部の組織をその周囲組織から切断することが可能になる。
【0039】
本発明の更なる特徴によれば、粘膜下生検器具の管状部材は第2ルーメンを備える。その第2ルーメンの遠位端は、第1収縮状態と第2拡張状態態を持つ拡張可能なベローズ部材に接続される。ベローズ部材は、管状部材の遠位端において第1ルーメン内に配置され、組織カッターの遠位端に接続される。圧力源が第2ルーメンの近位端に結合されると、ベローズ部材内部の圧力によりベローズ部材自体が前記第1収縮状態から第2拡張状態へと移行し、これにより組織カッターが窓部材から遠い第1位置から窓部材に近い第2位置へと移動されることになる。
【0040】
本発明のまた更なる特徴によれば、粘膜下生検器具の管状部材は第2ルーメンを備える。その第2ルーメンの遠位端は、窓部材の近位端の近くに配置される。近位及び遠位端を有する伸長部材が、その遠位端を組織カッターに接続した状態で、第2ルーメン内でスライド可能に配置される。組織カッターは、管状部材の遠位端を包囲するように形成される。管状部材の近位端に対し、伸長部材の近位端の近位方向への移動によって、組織カッターは窓部材に遠い第1位置から窓部材に近い第2位置へと移動することとなる。組織カッターは、高周波エネルギが組織カッターに供給されてカッター自体が第1位置から第2位置へと移動する時、窓部材に吸引された組織を切断できるような、電気外科的カッターの形態をとるものでも良い。
【0041】
本発明の別の特徴によれば、 哺乳動物の消化管内で粘膜下生検器具を用いて粘膜下筋肉生検を実行する方法が提供される。その方法は、粘膜下生検器具を提供するステップを含んでいる。方法は又、粘膜層を通って筋肉壁に隣接するように粘膜下生検器具の遠位端を位置決めするステップを含んでいる。方法は更に、粘膜下生検器具を操作して周囲組織からの生検標本を切断するステップを含んでいる。方法はまた更に、哺乳動物から標本を取り除くステップを含んでいる。方法はその後、患者から粘膜下生検器具を除去するステップを含んでいる。
【0042】
本発明の別の特徴では、哺乳動物における無弛緩症の治療のための粘膜下医療処置の実行方法が提供される。その方法は、下部食道括約筋を取り囲む食道粘膜層の下方に粘膜下トンネルを形成するステップを含んでいる。方法は、粘膜孔を通って内視鏡を粘膜層の下方領域内に挿入するステップを含んでいる。方法は又、下部食道括約筋の環状筋を視覚化するステップを含んでいる。方法は更に、粘膜層を通して切開装置を、その遠位端が環状筋に隣接するように位置決めするステップを含んでいる。切開装置は内視鏡型であるが、設計上は機械的なものでも、また電気外科的なものでも良い。方法は更に、切開装置を操作して環状筋に切開部を設けるステップを含んでいる。電気外科型切開装置は、その遠位端が環状筋の下方で食道を切断したり穴を開けたりしないように、遠位端に電気絶縁体を備えても良い。方法は更に、哺乳動物から切開装置を取り外すステップを含んでいる。方法は、その後粘膜孔を閉じることも含んでいる。
【0043】
本発明の更に別の特徴によれば、無弛緩症の治療のための粘膜下医療処置の実行方法であって、粘膜層の下方に内視鏡を挿入するに先立ち、下部食道括約筋を取り囲むようにして大きな粘膜解離域を形成するステップを更に含む方法が提供される。
【0044】
本発明の更に別の特徴によれば、哺乳動物の消化管内の粘膜組織の標的領域を取り除くため粘膜層切除装置が提供される。その粘膜層切除装置は、近位及び遠位端とそれを通るルーメンとを有する管状鞘を備える。粘膜層切除装置は又、近位及び遠位部分を有し、前記鞘のルーメン内部でスライド可能なように配置される伸長部材を備える。伸長部材は、遠位部分の形態が略直線状になる第1状態と、遠位部分が略湾曲状になる第2状態とを有する。伸長部材は前記第1状態と第2状態との間で動作可能となっている。粘膜層切除装置は又、伸長部材の遠位部分にスライド可能に接続された切除部材を備え、伸長部材が第1状態又は第2状態にある時、切除部材は伸長部材の遠位部分によって形成される経路に沿ってスライドできるようになっている。切除部材は、組織を切開する際の内視鏡使用に適した光学的切開装置や機械的切開装置、或いは電気外科的切開装置の形態をとるようにしても良い。
【0045】
本発明の別の特徴によれば、粘膜層切除装置の伸長部材は、近位部分から遠位部分へと延びるスルールーメンを有して管状である。スロットが伸長部材の遠位部分の壁を通って形成される。切除部材は、伸長部材の遠位部分のルーメン内でスライド可能に配置される。切除部材の遠位端は傾斜すると共に、伸長部材の壁内スロットを通ってルーメンから延びるように形成される。切除部材の近位端を伸長部材に対して近位方向に引くと、切除部材の遠位端は、伸長部材の遠位部分内のスロットによって定義された経路に沿って近位方向に移動されることになる。切除部材の遠位端は、周囲組織への損傷を回避するためのガードを更に備えても良い。仮に切除部材が電気外科的切開装置の形態をとるならば、この場合上記ガードは電気絶縁体から形成しても良い。
【0046】
本発明の更に別の特徴によれば、粘膜組織の標的地域が粘膜層切除装置を用いて切除されるような粘膜下医療処置を実行するための方法が提供される。その方法は、哺乳動物の消化管内に大きな粘膜層解離域を形成し、切除されるべき標的領域を定義にするステップを含んでいる。方法は又、粘膜層切除装置を提供するステップを含んでいる。方法は更に、粘膜層の開口部を介して粘膜層切除装置の伸長部材の遠位端を、摘出されるべき標的領域の下方の粘膜下空間内に挿入するステップを含んでいる。方法は更に又、標的地域の粘膜下境界に沿う経路を定義するために、粘膜層切除装置の伸長部材の遠位端を位置決めするステップを含んでいる。又、方法は、切除部材の遠位端を粘膜層の開口部を介して延びるように位置決めするステップを含んでいる。方法は更に、粘膜層切除装置を操作して切除部材の遠位端を近位方向に移動し、これによって切除部材の遠位端を伸長部材によって定められた経路に沿って近位方向に移動させ、以て粘膜組織の標的領域を周辺の粘膜組織から切除するステップを含んでいる。方法は更に、哺乳動物から粘膜層切除装置を取り外すステップを含んでいる。方法はその後、哺乳動物から摘出粘膜組織を取り除くステップを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの内視鏡の側面図である。
【図2】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態によるセーフアクセス・ニードル注射器の側面図である。
【図3】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態によるセーフアクセス・ニードル注射器の部分的断面図である。
【図4】図3の線4−4に沿う断面図である。
【図5A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態によるセーフアクセス・ニードル注射器の針の第1位置を示す部分的断面図である。
【図5B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態によるセーフアクセス・ニードル注射器の針の第2位置を示す部分的断面図である。
【図6A】本発明の実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図6B】本発明の実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図6C】本発明の実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図6D】本発明の実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図6E】本発明の実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図7A】本発明の粘膜下医療処置システムの別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器の部分的断面図である。
【図7B】本発明の粘膜下医療処置システムの別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器の部分的断面図である。
【図7C】本発明の粘膜下医療処置システムの別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器の部分的断面図である。
【図8A】本発明の別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図8B】本発明の別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図8C】本発明の別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図8D】本発明の別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図8E】本発明の別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器を使用した粘膜下ブレブ生成方法を示す断面図である。
【図9】本発明の別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器の部分的断面図である。
【図10】本発明の別実施形態によるセーフアクセス・ニードルの注射器の斜視図である。
【図11A】本発明の実施形態による粘膜下層解剖方法を示す断面図である。
【図11B】本発明の実施形態による粘膜下層解剖方法を示す断面図である。
【図12A】本発明の別実施形態による粘膜下層解剖方法を示す断面図である。
【図12B】本発明の別実施形態による粘膜下層解剖方法を示す断面図である。
【図13A】本発明の更なる別実施形態による粘膜下層解剖方法を示す断面図である。
【図13B】本発明の更なる別実施形態による粘膜下層解剖方法を示す断面図である。
【図14】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具を示す側面図である。
【図15A】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具を示す断面図である。
【図15B】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の粘膜下層に安全に接近するためのセーフアクセス・ニードルの注射器であって、
近位及び遠位端と、それを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材;
前記伸長管状部材の前記遠位端近傍に位置すると共に、粘膜層の所望領域と係合するように形成される組織保持部材;及び
ルーメンを持つニードル部材、を有し、
前記ニードル部材は、前記伸長管状部材の前記ルーメン内に長手方向可動なように配置されると共に、前記組織保持部材によって係合された粘膜層の所望領域を貫通して粘膜下層に進入し、以てニードル部材の前記ルーメンを通る流体の送達が前記粘膜下層に流入することで粘膜層の前記所望領域を隆起させることを特徴とするセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項2】
前記ニードル部材は、ニードル部材の遠位端近傍に位置する停止部材を有し、該停止部材は前記粘膜層の前記所望領域に係合するように形成されることを特徴とする請求項1に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項3】
更に、前記ニードル部材の前記近位端に接続されたハンドル部材を有し、該ハンドル部材の軸方向移動が結果として前記ニードル部材の軸方向移動に変わることを特徴とする請求項1に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項4】
更に、前記伸長管状部材と前記組織保持部材に接続された真空源を有し、前記組織保持部材は、前記伸長管状部材の側壁に窓部材と、該窓部材の末端に位置するシール栓部材とを有し、前記伸長管状部材への真空印加により前記組織保持部材は粘膜層の所望領域を前記窓部材内に吸引することを特徴とする請求項1に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項5】
前記組織保持部材は1組の顎を有することを特徴とする請求項1に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項6】
前記顎は、閉じ状態と開放状態との間で駆動可能であることを特徴とする請求項5に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項7】
前記顎は拘束されていない時、閉じ状態において外側に付勢されると共に、拘束時には閉じ状態に向けて可動であることを特徴とする請求項5に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項8】
前記ニードル部材は、前記顎の間にある軸に沿ってスライド可能に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項9】
前記顎は弾性材料を有することを特徴とする請求項5に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項10】
前記顎はニチノールを有することを特徴とする請求項5に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。
【請求項11】
粘膜下ブレブを形成する方法であって、
患者の自然孔を通って請求項1に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器を挿入し;
消化管の標的部位の近傍に前記セーフアクセス・ニードルの注射器を位置決めし;
前記セーフアクセス・ニードルの注射器を作動し、前記標的部位にある組織と係合し;
前記セーフアクセス・ニードルの注射器を使用してブレブを形成するために、前記標的部位において粘膜下層に流体を注入することで粘膜層を隆起させ;
前記セーフアクセス・ニードルの注射器を作動し、前記標的部位にある組織から引き離し;そして
前記患者から前記セーフアクセス・ニードルの注射器を取り除く、以上のステップを有することを特徴とする粘膜下ブレブ形成方法。
【請求項12】
前記セーフアクセス・ニードルの注射器を作動して組織と係合する前記方法ステップは、更に真空を印加することを含むことを特徴とする請求項11に記載の粘膜下ブレブ形成方法。
【請求項13】
前記セーフアクセス・ニードルの注射器を作動して組織と係合する前記方法ステップは、更に、前記セーフアクセス・ニードルの注射器の遠位端に取り付けられた1組の顎を使って組織を把持することを含むことを特徴とする請求項11に記載の粘膜下ブレブ形成方法。
【請求項14】
前記セーフアクセス・ニードルの注射器を作動して組織と係合する前記方法ステップは、更に、前記セーフアクセス・ニードルの注射器のニードル部材を使って組織に穴を開けることを含むことを特徴とする請求項11に記載の粘膜下ブレブ形成方法。
【請求項15】
セーフアクセス粘膜下解剖システムであって、
近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材、前記伸長管状部材の前記遠位端近傍に位置すると共に粘膜層の所望領域と係合するように形成される組織保持部材、及びルーメンを持つニードル部材、を有するセーフアクセス・ニードルの注射器であって、前記ニードル部材は、前記伸長管状部材の前記ルーメン内にスライド可能なように配置されると共に、前記組織保持部材によって係合された粘膜層の所望領域を貫通して粘膜下層に進入し、以てニードル部材の前記ルーメンを通る流体の送達が前記粘膜下層に流入することで粘膜層の前記所望領域を隆起させるように形成される、以上のセーフアクセス・ニードルの注射器;及び
前記ニードル部材の前記ルーメンを介して送達されるようになっている、注入可能な解離材、を有することを特徴とするセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項16】
前記ニードル部材は、ニードル部材の遠位端近傍に位置する停止部材を有し、該停止部材は前記粘膜層の前記所望領域に係合するように形成されることを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項17】
更に、前記ニードル部材の前記近位端に接続されたハンドル部材を有し、該ハンドル部材の軸方向移動が結果として前記ニードル部材の軸方向移動に変わることを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項18】
更に、前記伸長管状部材と前記組織保持部材に接続された真空源を有し、前記組織保持部材は、その側壁に窓と、該窓の末端に位置する閉じ端部とを有し、前記伸長管状部材への真空印加により前記組織保持部材は粘膜層の所望領域を前記窓内に吸引することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項19】
前記組織保持部材は1組の顎を有することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項20】
前記顎は、閉じ状態と開放状態との間で駆動可能であることを特徴とする請求項19に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項21】
前記顎は拘束されていない時、閉じ状態において外側に付勢されると共に、拘束時には閉じ状態に向けて可動であることを特徴とする請求項19に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項22】
前記注入可能な解離材は半固体ゼラチンを有することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項23】
前記注入可能な解離材は小径粒子を有することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項24】
前記注入可能な解離材はミクロスフェアを有することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項25】
前記注入可能な解離材は組織溶解物質を有することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項26】
前記注入可能な解離材は、前記ニードル部材の遠位ルーメンを出た際に液体から固体に変化する材料を有することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項27】
前記注入可能な解離材は、2−メルカプトエタノールスルファネートナトリウムを有することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項28】
前記注入可能な解離材は熱可逆性ゲルを有することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項29】
前記注入可能な解離材はプルロニックF−127を有することを特徴とする請求項15に記載のセーフアクセス粘膜下解剖システム。
【請求項30】
哺乳動物の粘膜下層内にトンネルを作成するための医療器具であって、
近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材;及び
近位及び遠位端を有する拡張可能部材であって、該拡張可能部材の前記近位端は前記管状部材の前記遠位端に取り付けられ、前記拡張可能部材の前記遠位端は裏返されて前記管状部材の前記ルーメン内に配置されるような、以上の拡張可能部材を有し、
前記伸長管状部材の前記遠位端は、粘膜層を介して開口部に入り、哺乳動物の粘膜下層内に進入するように形成されることを特徴とする医療器具。
【請求項31】
前記拡張可能部材はバルーンを有することを特徴とする請求項30に記載の医療器具。
【請求項32】
前記拡張可能部材は網組を有することを特徴とする請求項30に記載の医療器具。
【請求項33】
前記拡張可能部材は管状骨格を有することを特徴とする請求項30に記載の医療器具。
【請求項34】
近位及び遠位端を有して前記伸長管状部材の前記ルーメン内にスライド可能に配置される伸長係留部材を有し、該伸長係留部材の遠位端は前記拡張可能部材の前記遠位端に係合することを特徴とする請求項30に記載の医療器具。
【請求項35】
近位及び遠位端を有して前記伸長管状部材のルーメン内でスライド可能に配置される伸長係留部材を備えると共に、前記係留部材の前記遠位端は前記拡張可能部材の遠位端に接続されることを特徴とする請求項31に記載の医療器具。
【請求項36】
前記伸長係留部材はフレキシブルフィラメントを有することを特徴とする請求項34に記載の医療器具。
【請求項37】
前記伸長係留部材は補強部分を有することを特徴とする請求項34に記載の医療器具。
【請求項38】
前記伸長係留部材はフレキシブルチューブを有することを特徴とする請求項34に記載の医療器具。
【請求項39】
前記フレキシブルチューブは前記拡張可能部材の遠位端に接続される遠位端を有し、前記チューブの遠位端は前記拡張可能部材の壁を通って延びることを特徴とする請求項38に記載の医療器具。
【請求項40】
粘膜下トンネルを形成する方法であって、
ニードルアセンブリを使って、粘膜層の下にある粘膜下層に流体を注入することで標的部位において粘膜層を隆起させて隆起ブレブを形成し;
粘膜下トンネリング器具を自然孔を介して哺乳動物の消化管内に挿入し;
前記粘膜層下方の前記隆起ブレブ内に前記粘膜下トンネリング器具を挿入し;そして
前記粘膜下トンネリング器具を作動して、前記粘膜下層に細長いトンネルを形成する、以上のステップを有することを特徴とする粘膜下トンネル形成方法。
【請求項41】
前記粘膜下トンネリング器具は、近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材と、近位及び遠位端を有する拡張可能部材とを有し、前記拡張可能部材の前記近位端は前記管状部材の遠位端に接続され、前記拡張可能部材の前記遠位端は裏返しされて前記管状部材の前記ルーメン内に配置されることを特徴とする請求項40に記載の粘膜下トンネル形成方法。
【請求項42】
粘膜下解剖システムであって、
粘膜層の所望領域と係合するように形成される組織保持部材と、ルーメンを持つニードル部材とを有する注射器であって、前記ニードル部材は前記組織保持部材によって係合された粘膜層の所望領域を貫通して粘膜下層に進入し、以てニードル部材の前記ルーメンを通る流体の送達が前記粘膜下層に流入することで粘膜層の前記所望領域を隆起させるような、セーフアクセス・ニードルの注射器;
近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材と、近位及び遠位端を有する拡張可能部材とを有する粘膜下トンネリング器具であって、該拡張可能部材の前記近位端は前記管状部材の前記遠位端に取り付けられ、前記拡張可能部材の前記遠位端は裏返されて前記管状部材の前記ルーメン内に配置されるような、以上の粘膜下トンネリング器具;及び
近位及び遠位部分を有する伸長管状部材と、該管状部材の前記遠位部分に配置される拡張可能部材とを有する粘膜下解剖器具、を有することを特徴とする粘膜下解剖システム。
【請求項43】
前記ニードル部材は、ニードル部材の遠位端近傍に位置する停止部材を有し、該停止部材は前記粘膜層の前記所望領域に係合するように形成されることを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項44】
更に、前記ニードル部材の前記近位端に接続されたハンドル部材を有し、該ハンドル部材の軸方向移動が結果として前記ニードル部材の軸方向移動に変わることを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項45】
更に、前記伸長管状部材と前記組織保持部材に接続された真空源を有し、前記組織保持部材は、前記伸長管状部材の側壁に窓部材と、該窓部材の末端に位置するシール栓部材とを有し、前記伸長管状部材への真空印加により前記組織保持部材は粘膜層の所望領域を前記窓部材内に吸引することを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項46】
前記組織保持部材は1組の顎を有することを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項47】
前記粘膜下トンネリング器具の前記拡張可能部材はバルーンを有することを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項48】
前記粘膜下トンネリング器具の前記拡張可能部材は網組を有することを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項49】
前記粘膜下トンネリング器具の前記拡張可能部材は管状骨格を有することを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項50】
前記粘膜下トンネリング器具は、近位及び遠位端を有して前記伸長管状部材の前記ルーメン内にスライド可能に配置される伸長係留部材を有し、該伸長係留部材の遠位端は前記拡張可能部材の前記遠位端に係合することを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項51】
前記粘膜下トンネリング器具は、近位及び遠位端を有して前記伸長管状部材のルーメン内でスライド可能に配置される伸長係留部材を備えると共に、前記係留部材の前記遠位端は前記拡張可能部材の遠位端に接続されることを特徴とする請求項47に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項52】
前記粘膜下解剖器具の前記拡張可能部材はバルーンを有することを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項53】
前記粘膜下トンネリング器具と前記粘膜下解剖器具とは一体的に形成されることを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項54】
前記粘膜下トンネリング器具と前記粘膜下解剖器具の前記拡張可能部材はバルーンを有することを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項55】
更にニードルナイフを有することを特徴とする請求項42に記載の粘膜下解剖システム。
【請求項56】
粘膜下層解剖方法であって、
ニードルアセンブリを使って、粘膜下層に流体を注入することで粘膜層を隆起させて隆起ブレブを形成し;
前記隆起ブレブ内に粘膜下トンネリング器具を挿入し;
前記粘膜下トンネリング器具を作動して、前記粘膜下層に細長いトンネルを形成し;
前記粘膜下トンネリング器具によって形成された前記細長いトンネル内に粘膜下解剖器具を位置決めし;そして
前記細長いトンネル内で前記粘膜下解剖器具を作動して前記細長いトンネルの径よりも大きな直径を有する領域を解剖する、以上のステップを有することを特徴とする粘膜下層解剖方法。
【請求項57】
前記粘膜下トンネリング器具は、近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材と、近位及び遠位端を有する拡張可能部材とを有し、該拡張可能部材の前記近位端は前記管状部材の前記遠位端に取り付けられ、前記拡張可能部材の前記遠位端は裏返されて前記管状部材の前記ルーメン内に配置されることを特徴とする請求項56に記載の粘膜下層解剖方法。
【請求項58】
前記粘膜下トンネリング器具の前記拡張可能部材はバルーンを有することを特徴とする請求項57に記載の粘膜下層解剖方法。
【請求項59】
前記粘膜下トンネリング器具と前記粘膜下解剖器具とは一体的に形成されることを特徴とする請求項57に記載の粘膜下層解剖方法。
【請求項60】
前記粘膜下トンネリング器具と前記粘膜下解剖器具とは一体的に形成されることを特徴とする請求項58に記載の粘膜下層解剖方法。
【請求項61】
前記粘膜下トンネリング器具は、ニードルナイフを有することを特徴とする請求項58に記載の粘膜下層解剖方法。
【請求項62】
粘膜下生検器具であって、
近位及び遠位端と、第1ルーメンとを有する伸長管状部材;
前記伸長管状部材の前記遠位端に配置され、前記伸長管状部材の前記ルーメンと流体連通状態にあり、組織と係合するように形成される窓部材;及び
前記窓部材に隣接するようにして前記伸長管状部材の前記遠位端に配置されかつ前記窓部材から遠い第1位置から窓部材に近い第2位置へと可動なる組織カッターであって、前記窓部材が組織に隣接して配置され、組織サンプルが前記窓部材の中に吸引された際に、その前記第1位置から前記第2位置への前記組織カッターの動作により前記組織サンプルを周囲の組織から分断するように構成された以上の組織カッター、を有することを特徴とする粘膜下生検器具。
【請求項63】
前記組織カッターは、前記伸長管状部材の前記ルーメン内に配置されることを特徴とする請求項62に記載の粘膜下生検器具。
【請求項64】
前記組織カッターは、前記伸長管状部材の外部の上に配置されることを特徴とする請求項62に記載の粘膜下生検器具。
【請求項65】
前記伸長管状部材は、収縮状態と拡張状態を有して前記組織カッターに接続される伸縮部材に対し流体連通状態にある第2ルーメンを備えることを特徴とする請求項63に記載の粘膜下生検器具。
【請求項66】
前記伸長管状部材は、第2ルーメンと、近位及び遠位端を有する伸長押圧部材とを備えることで、前記遠位端は前記組織カッターに接続されると共に、前記伸長押圧部材は前記第2ルーメン内にスライド可能に配置されることを特徴とする請求項64に記載の粘膜下生検器具。
【請求項67】
前記伸縮部材は、油圧を以て、前記収縮状態から前記拡張状態へと可動であることを特徴とする請求項65に記載の粘膜下生検器具。
【請求項68】
前記組織カッターは電気外科的工具であることを特徴とする請求項66に記載の粘膜下生検器具。
【請求項69】
前記伸縮部材がベローズを有することを特徴とする請求項67に記載の粘膜下生検器具。
【請求項70】
患者から粘膜下の生体組織を獲得する方法であって、
ニードルアセンブリを使って、粘膜下層に流体を注入することで粘膜層を隆起させて隆起ブレブを形成し;
前記隆起ブレブ内に粘膜下トンネリング器具を挿入し;
前記粘膜下トンネリング器具を作動して、前記粘膜下層に標的となる生検部位を決めるための細長いトンネルを形成し;
前記細長いトンネルの中に粘膜下生検器具を挿入し;
前記粘膜下生検器具を前記標的生検部位に位置決めし;
前記粘膜下生検器具を作動して組織サンプルを獲得し;そして
患者から前記組織サンプルを取り除く、以上の各ステップを有することを特徴とする患者からの粘膜下生体組織獲得方法。
【請求項71】
前記粘膜下トンネリング器具は、近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材と、近位及び遠位端を有する拡張可能部材とを有し、該拡張可能部材の前記近位端は前記管状部材の前記遠位端に取り付けられ、前記拡張可能部材の前記遠位端は裏返されて前記管状部材の前記ルーメン内に配置されることを特徴とする請求項70に記載の患者からの粘膜下生体組織獲得方法。
【請求項72】
前記粘膜下生検器具は、近位及び遠位端と第1ルーメンとを有する伸長管状部材と、前記伸長管状部材の前記遠位端に配置され前記伸長管状部材の前記ルーメンと流体連通状態にありかつ組織と係合するように形成される窓部材と、前記窓部材に隣接するようにして前記伸長管状部材の前記遠位端に配置されかつ前記窓部材から遠い第1位置から窓部材に近い第2位置へと可動なる組織カッターと、を有し、前記窓部材が組織に隣接して配置され、組織サンプルが前記窓部材の中に吸引された際に、前記組織カッターの前記第1位置から前記第2位置への動作により前記組織サンプルを周囲の組織から分断するように構成されることを特徴とする請求項70に記載の患者からの粘膜下生体組織獲得方法。
【請求項73】
前記粘膜下トンネリング器具の前記拡張可能部材はバルーンを有することを特徴とする請求項71に記載の患者からの粘膜下生体組織獲得方法。
【請求項74】
粘膜組織の標的領域を切除する装置であって、
ルーメンを有する鞘;
近位及び遠位部分を有し、前記鞘のルーメン内部でスライド可能なように配置される伸長部材であって、遠位部分の形態が略直線状になる第1状態と、遠位部分が略湾曲状になる第2状態とを有し、前記第1状態と第2状態との間で動作可能な前記伸長部材;及び
近位及び遠位端を有する切除部材であって、前記伸長部材が前記第1状態又は第2状態にある時、前記切除部材は前記遠位部分によって形成される経路を横断することにより前記経路に沿って粘膜組織を切除するように、前記遠位端が前記伸長部材の遠位部分に可動係合する前記切除部材、を有することを特徴とする粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項75】
前記遠位端は、前記伸長部材が前記第1状態又は第2状態にある時、前記切除部材が前記遠位部分によって形成される経路に沿ってスライドすることにより前記経路に沿って粘膜組織を切除するように、前記遠位部分にスライド可能に係合することを特徴とする請求項74に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項76】
前記切除部材は電気外科的カッターを有することを特徴とする請求項75に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項77】
前記切除部材は機械的カッターを有することを特徴とする請求項75に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項78】
前記電気外科的カッターは電気的に絶縁された先端部を有することを特徴とする請求項76に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項79】
前記伸長部材はルーメンを備え、前記切除部材は前記伸長部材の前記ルーメン内にスライド可能に配置されることを特徴とする請求項75に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項80】
前記伸長部材の前記遠位部分の壁を通るスロットを、前記伸長部材が備えることを特徴とする請求項79に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項81】
更に、前記切除部材に接続された切断先端を有し、該切断先端は、前記伸長部材の遠位部分の前記スロットを通って前記ルーメンから延びることを特徴とする請求項80に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項82】
前記切断先端は電気外科的カッターであることを特徴とする請求項81に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項83】
前記切断先端は機械的カッターであることを特徴とする請求項81に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項84】
前記切断先端は電気的に絶縁された先端部を備えることを特徴とする請求項82に記載の粘膜組織の標的領域切除装置。
【請求項85】
粘膜組織の標的領域を切除する方法であって、
切除のため、粘膜組織の標的領域を識別し;
前記標的領域に隣接する粘膜下層に流体を注入することで粘膜下層を隆起させ;
前記隆起した前記粘膜下層の中に粘膜下トンネリング器具を挿入し;
前記粘膜下トンネリング器具を作動して、前記粘膜下層内に細長いトンネルを形成し;
前記粘膜下トンネリング器具によって形成された前記細長いトンネルの中に粘膜下解剖器具を位置決めし;
前記細長いトンネルの中で前記粘膜下解剖器具を作動して、前記細長いトンエネルの径よりも大きな直径を有しかつ前記標的領域を囲む領域を切り裂き;
前記切り裂かれた粘膜下層と、切り裂かれていない粘膜下層との間の境界に隣接する前記切り裂かれた領域の内部に組織切除工具を位置決めし;そして
前記組織切除工具を作動して粘膜組織の前記標的領域を切除する、以上の各ステップを有することを特徴とする粘膜組織の標的領域切除方法。
【請求項86】
前記粘膜下トンネリング器具と前記粘膜下解剖器具とは一体的に形成されることを特徴とする請求項85に記載の粘膜組織の標的領域切除方法。
【請求項87】
前記粘膜下トンネリング器具は、近位及び遠位端とそれを通って延びるルーメンとを有する伸長管状部材と、近位及び遠位端を有する拡張可能部材とを有し、該拡張可能部材の前記近位端は前記管状部材の前記遠位端に取り付けられ、前記拡張可能部材の前記遠位端は裏返されて前記管状部材の前記ルーメン内に配置されることを特徴とする請求項85に記載の粘膜組織の標的領域切除方法。
【請求項88】
前記組織切除工具は、鞘と、近位及び遠位部分を有し前記鞘のルーメン内にスライド可能に配置される伸長部材であって遠位部分の形態が略直線状になる第1状態と遠位部分が略湾曲状になる第2状態とを有し前記第1状態と第2状態との間で動作可能な前記伸長部材と、近位及び遠位端を有する切除部材であって前記伸長部材が前記第1状態又は第2状態にある時前記切除部材は前記遠位部分によって形成される経路を横断することにより前記経路に沿って粘膜組織を切除するように前記遠位端が前記伸長部材の遠位部分に可動係合する前記切除部材と、を有することを特徴とする請求項85に記載の粘膜組織の標的領域切除方法。
【請求項89】
前記遠位端は、前記伸長部材が前記第1状態又は第2状態にある時、前記切除部材が前記遠位部分によって形成される経路に沿ってスライドすることにより前記経路に沿って粘膜組織を切除するように、前記遠位部分にスライド可能に係合することを特徴とする請求項88に記載の粘膜組織の標的領域切除方法。
【請求項90】
哺乳動物内で粘膜下医療処置を実行する方法であって、
食道の粘膜層であって下部食道括約筋を取り囲む粘膜層の下方に、粘膜下トンネル又は粘膜の切開部を形成することによって粘膜下空間を形成し;
前記下部食道括約筋の環状筋を識別し;
前記粘膜下空間内に内視鏡的切断工具を送達し;
前記内視鏡的切開器具を用いて、前記環状筋を完全に横切るように切開し;そして
患者から前記切開器具を取り除く、以上の各ステップを有することを特徴とする粘膜下医療処置実行方法。
【請求項91】
前記ニードルは、前記組織保持部材によって係合されていない組織に孔を開けるのが防止されることを特徴とする請求項1に記載のセーフアクセス・ニードルの注射器。

【図15B】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の遠位端を拡張する順序を示す部分的断面図である。
【図16A】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の遠位端を拡張する順序を示す部分的断面図である。
【図16B】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の遠位端を拡張する順序を示す部分的断面図である。
【図16C】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の遠位端を拡張する順序を示す部分的断面図である。
【図17】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の変形例を示す側面図である。
【図18】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの別の変形例としての粘膜下トンネリング器具別の遠位端を拡張する順序を示す断面図である。
【図19A】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の別の変形例を示す側面図である。
【図19B】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の別の変形例を示す側面図である。
【図19C】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の別の変形例を示す側面図である。
【図20A】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の遠位端の変形例を示す斜視図である。
【図20B】本発明の実施形態による粘膜下医療処置システムの粘膜下トンネリング器具の遠位端の変形例を示す斜視図である。
【図21A】本発明の実施形態による粘膜下生理食塩水ブレブを持つ消化管組織域の斜視図と断面図である。
【図21B】本発明の実施形態による粘膜下生理食塩水ブレブを持つ消化管組織域の斜視図と断面図である。
【図22A】本発明の実施形態による、粘膜層を通る開口部が作られる粘膜下生理食塩水ブレブを持つ消化管組織域の斜視図と断面図である。
【図22B】本発明の実施形態による、粘膜層を通る開口部が作られる粘膜下生理食塩水ブレブを持つ消化管組織域の斜視図と断面図である。
【図23A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネリング器具を使用した粘膜下トンネルを形成する方法を示す斜視図と断面図である。
【図23B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネリング器具を使用した粘膜下トンネルを形成する方法を示す斜視図と断面図である。
【図23C】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネリング器具を使用した粘膜下トンネルを形成する方法を示す斜視図と断面図である。
【図23D】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネリング器具を使用した粘膜下トンネルを形成する方法を示す斜視図と断面図である。
【図24A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネリング器具使用方法を示す斜視図と断面図である。
【図24B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネリング器具使用方法を示す斜視図と断面図である。
【図24C】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネリング器具使用方法を示す斜視図と断面図である。
【図24D】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネリング器具使用方法を示す斜視図と断面図である。
【図25A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネル内での粘膜下解剖器具使用方法を示す斜視図と断面図である。
【図25B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネル内での粘膜下解剖器具使用方法を示す斜視図と断面図である。
【図25C】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネル内での粘膜下解剖器具使用方法を示す斜視図と断面図である。
【図25D】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネル内での粘膜下解剖器具使用方法を示す斜視図と断面図である。
【図26】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による複合型粘膜下トンネリング及び解剖器具を示す側面図である。
【図27】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による複合型粘膜下トンネリング及び解剖器具の分解断面図である。
【図28】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具を示す側面図である。
【図29A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具を示している横断面図である。
【図29B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具を示している横断面図である。
【図30】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜下トンネルの中の粘膜下生検器具と内視鏡を示す部分的断面図である。
【図31A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具使用方法を示す断面図である。
【図31B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具使用方法を示す断面図である。
【図31C】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具使用方法を示す断面図である。
【図31D】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具使用方法を示す断面図である。
【図31E】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具使用方法を示す断面図である。
【図32A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具の変形例の作動を示す側面図及び断面図である。
【図32B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具の変形例の作動を示す側面図及び断面図である。
【図32C】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具の変形例の作動を示す側面図及び断面図である。
【図32D】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下生検器具の変形例の作動を示す側面図及び断面図である。
【図33A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下筋切離術を実行する方法を示す部分的断面斜視図である。
【図33B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下筋切離術を実行する方法を示す部分的断面斜視図である。
【図33C】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下筋切離術を実行する方法を示す部分的断面斜視図である。
【図33D】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜下筋切離術を実行する方法を示す部分的断面斜視図である。
【図34A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜切除装置を示す断面図である。
【図34B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜切除装置を示す断面図である。
【図35A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜切除装置の変形例を示す断面図である。
【図35B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜切除装置の変形例を示す断面図である。
【図35C】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による粘膜切除装置の変形例を示す断面図である。
【図36A】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜切除装置を使用して粘膜組織の所望領域を切除する方法を示す断面図である。
【図36B】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜切除装置を使用して粘膜組織の所望領域を切除する方法を示す断面図である。
【図35C】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜切除装置を使用して粘膜組織の所望領域を切除する方法を示す断面図である。
【図35D】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜切除装置を使用して粘膜組織の所望領域を切除する方法を示す断面図である。
【図36E】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜切除装置を使用して粘膜組織の所望領域を切除する方法を示す断面図である。
【図36F】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜切除装置を使用して粘膜組織の所望領域を切除する方法を示す断面図である。
【図36G】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜切除装置を使用して粘膜組織の所望領域を切除する方法を示す断面図である。
【図36H】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜切除装置を使用して粘膜組織の所望領域を切除する方法を示す断面図である。
【図36I】本発明の粘膜下医療処置システムの実施形態による、粘膜切除装置を使用して粘膜組織の所望領域を切除する方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、内視鏡を使用し、消化管の所望領域において粘膜下医療処置を実行するための方法及び装置を説明する。
【0049】
図1は、内視鏡的処置で使用されるタイプの、本発明の実施形態と共に使用するのに適する内視鏡2を示している。 内視鏡2は、内視鏡近位部分から内視鏡遠位端まで延びるワーキングチャンネル4を有する。内視鏡2はまた、口や直腸などの自然孔を通って患者の体内に入る挿入部6を有する。粘膜下医療処置を実行する際、一般に、挿入部6は消化管に伴う位置へとナビゲートされる。粘膜下医療処置を実行する際に使用される装置が内視鏡2のワーキングチャンネル4を介して送達されることが好ましいが、内視鏡の挿入部6の側部に沿って装置を送達するようにしても良い。
【0050】
図2は、粘膜下医療処置を実行するため粘膜下層へアクセスする際に医師を補助するセーフアクセス・ニードルの注射器10を示している。セーフアクセス・ニードルの注射器10は、遠位端13を有する管状軸12を備える。管状軸12の直径は大凡、1mm乃至10mmの範囲内にあり、好ましくは2.0mm乃至6.0mmの範囲にある。遠位端13の近傍では管状軸12の壁面の一部が取り除かれ、窓部材14を形成する。或いはこの代わりに、キャップ要素を管状軸12の遠位端に結合した形で窓部材14を形成することも可能である。管状軸12のルーメンの中でスライド可能に配置されるのはニードル部材16である。管状軸の近位部分は、注射器や真空ポンプ(図示せず)などの負圧源と結合可能な真空ポート18を備えている。バルブアセンブリ20によって管状軸12に解放可能なシールが提供される。ハンドルアセンブリ21はコネクタ管22を介して管状軸12に接続される。ハンドルアセンブリ21は、それを介して流体を投入するニードル流体ポート24と、ニードル部材16の近位部周りをシールするバルブアセンブリ26とを備える。また、ニードル部材16の近位部分はハンドル本体30上に位置決めされたニードルスライド部材28に連結される。ハンドル本体30上のニードルスライド部材28を近接動作するとニードル部材16は管状軸12の中で近接移動する。管状軸12内でのニードル部材16の動きを測るため、距離指標32がハンドル本体30上に配置される。
【0051】
図3及び図4に示すように、ニードル部材16は、管状軸12のルーメン34内に配置される。ニードル部材16の外部に位置するのが停止部材36である。管状軸12の遠位端13はシール栓38で閉じられる。更に図示されているのがニードル部材先端部40とニードルルーメン42である。 ニードルルーメン42は、ニードルポート24を介して噴射された流体がニードル先端部40においてルーメンを出るように、ニードル先端部40とニードル流体ポート24を連通させる。
【0052】
図5A及び図5Bはニードル部材16の作動を説明している。ここではニードル部材16は、ニードル先端部40に接続されたニードル本体44と共に詳細に示されている。ニードル本体44は、図示したように別の材料から構成しても、或いはニードル先端部40と一体で形成しても良い。ニードル本体44を、良好な軸方向押圧能力を有するフレキシブル・チューブから構成しても良い。図5Aに示すように、ここではニードル部材16は、ニードル先端部40が窓部材14近傍のルーメン34内部に配置されるような第1位置内に位置する。管状軸12が身体内の配置についた時、これはニードル部材16にとっては好ましい位置である。作動状態ではニードル部材16は、ニードル先端部40が窓部材14内に位置することになるような第2位置まで移動されることになる。
【0053】
図6A乃至図6Eはセーフアクセス・ニードルの注射器10の作動を示している。内視鏡2の挿入部6は、患者の自然孔を通り抜けて、粘膜下処置を実行するための消化管内位置に位置決めされる。セーフアクセス・ニードルの注射器10は内視鏡2の作業チャンネル4を通って配備される。図6Aに示すように、セーフアクセス・ニードルの注射器10の遠位部分は消化管の中において粘膜層46に隣接して位置決めされる。粘膜層の下にあるのが粘膜下層48と筋肉層50である。窓部材14は粘膜層46に対向するように方向付けられる。ニードル部材16は窓部材14に近い第1位置に配置される。真空源がルーメン34と連通する真空ポート18に接続され、印加された真空により消化管の組織が図6Bに示されるように、窓部材14内に吸引されることになる。第2位置に動かされるようなニードル部材16の作動を図6Cに示す。ニードル部材16を遠心移動させることで、ニードル先端部40は管状軸12から離れる方向に移動し、それにより粘膜層46を貫通し、吸引された組織の粘膜下層48に進入することになる。ニードル部材16が第2位置へと移動した際に停止部材36が粘膜層46と係合する。停止部材36は、ニードル部材16の更なる遠心移動を防ぐと共にニードル先端部40の周囲に対してシールを提供する。加圧流体源がニードル流体ポート24に接続され、ニードル部材16のルーメンを通った流体を粘膜下層48に送達する。流体がニードル先端部40から粘膜下層48に入る時、図6Dに示すように、粘膜層46は隆起して粘膜下ブレブを形成する。ブレブを形成するのに使用される流体としては、環境に適するものであれば如何なるタイプのものでも良く、例えば生理食塩水を含む溶液、塩類エピネフリンの高浸透圧溶液、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリ−N−アセチルグルコサミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キトサン、或いは他の生体適合性粘質多糖を含む溶液でも良い。粘膜層46は、粘膜下ブレブ形成するために隆起されるが、粘膜下結合組織52は伸ばされるだけであり、粘膜下層48内への流体の注入によっては破壊されない。一旦、ニードル部材16を第1位置に戻し、ルーメン34へ真空印加を中止したならば、図6Eに示すように、安全ブレブからセーフアクセス・ニードルの注射器10を取り外しても良い。
【0054】
図7A乃至図7Cは、粘膜下医療処置にあたって粘膜下空間へアクセスする際に医師を補助するための、本発明の別の好適実施形態であるセーフアクセス・ニードルの注射器60を示している。セーフアクセス・ニードルの注射器60は、近位及び遠位端64とそれを通って延びるルーメン66とを有する鞘部材62を備える。鞘部材62のルーメン66内でスライド可能に配置されるのが軸ルーメン69と遠位端70を持つ伸長軸部材68である。この伸長軸部材68の遠位端70に隣接して配置されるのは1組の顎部材72である。顎部材72は伸長軸部材68の壁から形成しても良い。好ましくは顎部材72は弾性材料より形成され、拘束されない時、開放状態において外側に付勢される。顎部材72は、ニチノール、ステンレス、プラスチックなどの生体適合弾性材料から形成しても良い。ニードル軸74はルーメン66内にスライド可能に配置され、望ましくはスライド可能に配置された軸ルーメン69となる。ニードル軸74はニードル先端部76とニードルーメン78を具備する。ニードルルーメン78は、ニードル軸74の近位端からニードル先端部76へと延びる。図7Aは第1状態にある顎部材72を示しており、ここでは顎部材72は閉じられ、鞘部材62の壁に抑制されルーメン66の中に納まっている。更に、ここではニードル軸74のニードル先端部78が第1状態にあり、ここではニードル先端部78が顎部材72の近くに位置決めされている。鞘部材62に対して離れる方向に伸長軸部材68を移動することで、顎部材72は鞘62の遠位端64においてルーメン66を出ることを余儀なくされる。図7Bは、顎部材72がルーメン66を出た後開いて非拘束状態となった第2状態を示している。図7Cは、ニードル先端部78が顎部材72間に位置するような第2状態に位置するニードル軸74のニードル先端部78を示している。
【0055】
図8A乃至図8Eはセーフアクセス・ニードルの注射器60の作動を示している。内視鏡2の挿入部6は、患者の自然孔を通り抜けて、粘膜下処置を実行するための消化管内位置に配置される。セーフアクセス・ニードルの注射器60は内視鏡2のワーキングチャンネル4を通って配備される。図8Aに示すように、セーフアクセス・ニードルの注射器60の遠位端は消化管近くの粘膜層46内に位置決めされる。粘膜層の下方にあるのが粘膜下層48と筋肉層50である。顎部材72は粘膜層46上に置かれる。ニードル先端部76は顎部材72に近い第1位置に配置される。伸長軸部材に対する鞘部材62の遠心移動によって顎部材72はルーメン66内に部分的に制約された状態となり、閉じ位置に移動することで図8Bに示すように、消化管の組織を握ることになる。図8Cは、組織が顎部材72に係合された状態を示す図8Bの切断線8C−8Cに沿った断面図である。粘膜層46と粘膜下層48は顎部材72の間で堅固に保持される。図8Dに示すように、ニードル先端部76は、顎部材72に近い第1位置から顎部材72の間の第2位置へと移動されることで粘膜層46を貫通し、粘膜下層48に進入する。図8Eは、ニードル軸74を介しニードル先端部76を出て粘膜下層48の中に入ることで粘膜層46を隆起させ、以て粘膜下ブレブを形成する流体の送達を示している。ブレブを作るのに使用される流体としては、環境に適するものであれば如何なるタイプのものでも良く、例えば生理食塩水を含む溶液、塩類エピネフリンの高浸透圧溶液、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリ−N−アセチルグルコサミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キトサン、或いは他の生体適合性粘質多糖を含む溶液でも良い。
【0056】
図9及ぶ図10は、顎部材72がカラー部材80によって伸長軸部材68の遠位端70に結合された、セーフアクセス・ニードルの注射器60の変形例を示している。カラー部材80は、例えば接着やはんだ付けや溶接など、当該分野で知られている適切手段により遠位端70に接合される。顎部材72は、伸長軸部材68の遠位端70に対し顎部材71が回転可能となるような方法で、カラー部材80に接続される。顎部材72の回転運動により、医師は顎部材72を消化管内の組織面の表面に対し迅速に向けることができる。顎部材72はカラー部材80に接続されているが、鞘部材62に対する伸長軸部材68の接近移動により顎部材72は鞘部材62のルーメン66の中の閉じ位置に動くことになる。カラー部材80は開口部を備え、この開口部を介してニードル軸74がスライド可能に延びることができる。更に、顎部材72は消化管の中で組織の係合を容易にする組織把持面82を備える。組織把持面82は図では鋸面の形態を以て示されているが、顎部材72の組織把持能力を高める意味で、ギザギザの面、又は複数の突起やディンプルを含む表面の形態をとるようにしても良い。組織把持面82は、顎部材72と一体成形しても、或いは顎部材72に接着するようにしても良い。組織把持面82は金属、ポリマー又は複合材料から形成しても良い。
【0057】
図11A及び図11Bは、セーフアクセス・ニードルの注射器10と注入解離材102を含む、本発明のセーフアクセス解剖システム100を示している。注入解離材102は粘膜下結合組織を溶かすことができる溶液の形態をとる。この種の溶解溶液の例としては、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(MESNA)がある。粘膜下結合組織を溶解することができる追加物質としては、酸や、ペプターゼ酵素溶液、プロテアーゼ/コラゲナーゼ、パパイン、キモトリプシン及びアセチルシステインなどの酵素がある。セーフアクセス・ニードルの注射器10は、哺乳動物の消化管の粘膜層46の下方に安全ブレブを形成するのに使用される。一旦、安全ブレブが形成されたなら、図11Aに示すように、ニードル先端部40を介して注入解離材102を粘膜下層48の中に送達しても良い。注入解離材102は、引き伸ばされた粘膜下結合組織52を破壊し始める。ブレブが膨張することで課せられる力のもと、粘膜下結合組織52は壊れ、これにより図11Bに示すように、粘膜層46がブレブ領域において筋肉層50から分離することになる。
【0058】
図12A及び図12Bは、セーフアクセス・ニードルの注射器10と注入解離材106を含む、本発明のセーフアクセス解剖システム104を示している。その注入解離材106は粘膜下結合組織52を機械的に破壊することができる半個体ゼラチンの形態をとる。半個体ゼラチンは、生体適合性のある商業的に入手可能なゼラチンを使用しても良い。一般的にこれらのゼラチンは粉末状であり、温水と混合される。冷却することでゼラチンは物理的交差結合を伴う半個形調度を形成する。このゼラチン材料は、材料吸引が困難であるため、加圧可能な注射器のシリンダの中で形成されることが好ましい。セーフアクセス・ニードルの注射器10は、哺乳動物の消化管の粘膜層46の下方に安全ブレブを形成するのに使用される。ひとたび安全ブレブが形成されたならば、図12Aに示すように、ニードル先端部40を介して注入解離材106を粘膜下層48内に送達することができる。粘膜下層48に浸透するだけの食塩液と異なり、塊と半固体としての注入解離材106の性質により、引き伸ばされた粘膜下結合組織52に対し力を付与することになる。注入解離材106を導入することで増加した容積分による力のもとで粘膜下結合組織52が壊れることで、図12Bに示すように、ブレブ領域において粘膜層46が筋肉層50から離脱することになる。これとは別に、注入解離材106は粘膜下空間に入ると固まる注入溶液の形態をとっても良い。粘膜下空間への注入後固まる溶液としては、例えばプルロニック127のような感熱性高分子溶液でも良い。更なる注入凝固溶液としては、組織や添加された化学薬品との接触で重合したり交差結合する、ハイドロゲルやシアノアクリレートのようなモノマー及びポリマー溶液がある。
【0059】
図13A及び図13Bは、セーフアクセス・ニードルの注射器10と注入解離材110を含む、本発明のセーフアクセス解剖システム108を示している。注入解離材110は機械的に粘膜下結合組織52を壊すことができる溶液内に分散したゲル化ミクロスフィアの形態をとる。ミクロスフィアは、例えばコラーゲン及びアルギン酸塩、又はポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニル・ピロリドン(PVP)、アクリレートポリマーのような合成物質のような生体適合性自然材料を用いて形成しても良い。セーフアクセス・ニードルの注射器10は、哺乳動物の消化管の粘膜層46の下方に安全ブレブを形成するために使用される。ひとたび安全ブレブが形成されたならば、図13Aに示すように、ニードル先端部40を介して注入解離材110を粘膜下層48内に送達することができる。粘膜下層48に浸透するだけの食塩液と異なり、塊と固体としての注入解離材110の性質により、引き伸ばされた粘膜下結合組織52に対し力を付与することになる。注入解離材110を導入することで増加した容積分による力のもとで粘膜下結合組織52が壊れることで、図13Bに示すように、ブレブ領域において粘膜層46が筋肉層50から離脱することになる。
【0060】
図14は、本発明の粘膜下医療処置を実行するための粘膜下トンネリング器具120を示している。粘膜下トンネリング器具120は、近位及び遠位端を有するカテーテル122と、好ましくは前記遠位端の近傍に配置されるバルーン部材124の形態をとる拡張可能部材とを有する。カテーテル122の近端は、膨張ポート128に接近するコネクタ管126に取り付けられる。バルブアセンブリ130は膨張ポート128に導入された流体のためのシールとなる。係留スライダ132がハンドル本体134上でスライド可能に配置される。ハンドル本体134は、係留スライダ132の移動を測るための距離指標136を備えている。
【0061】
粘膜下トンネリング器具120の遠位端断面を、更に詳細に図15Aに示す。カテーテル122は遠位端138とルーメン123を有する。ルーメン123内に位置するのがバルーン部材124である。バルーン部材124は当該技術では一般的に知られたノンコンプライアントタイプであることが好ましいが、コンプライアントタイプでもセミコンプライアントタイプのバルーン部材124でも良い。バルーン部材124は、オレフィン、エラストマー、熱可塑性エラストマー、ビニール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素重合体、共重合体、及びこれら材料の組み合わせなどのような、生体適合性ポリマタイプの材料から形成しても良い。バルーン部材124の近位端140はカテーテル122の遠位端138に取り付けられる。バルーン部材124の遠位端142は裏返された状態でルーメン123内に位置決めされる。係留部材144はバルーン部材124の遠位端142に接続される。図示したように、係留部材144はフレキシブルであり、好ましくはフィラメントの形態をとるが、チューブの形態をとってもよい。係留部材144の近位端は、バルブアセンブリ130を介して係留スライダ132に接続される。係留部材144は、カテーテル122のルーメン123内部に最初にバルーン部材124を位置決めする際に補助する。粘膜下トンネリング器具の前記実施形態が、好ましくは膨張可能なバルーンの形態をとる拡張可能部材を備えるが、本質的には同じ機能を達成する他の装置であっても良い。例えば、図15Bに示す代替実施形態にあるように、拡張可能部材124は、その近位端がカテーテルの遠位端に接続されかつその遠位端が裏返されてカテーテルのルーメン内部に位置するような、拡張可能な細長い網組やメッシュや管状骨格の形態をとるようにしても良い。カテーテル122のルーメン内に位置する補強係留部材144を、バルーンがカテーテルのルーメンから膨張するのと本質的に同じ方法で拡張可能な伸長部材をカテーテルのルーメンから押し出すようにしたプッシャとして使用することも可能である。拡張可能な伸長網組は、ポリマーや複合材と同様に、例えばニチノール、バネ鋼、ヴィトレロイなどの弾性材料から形成しても良い。拡張可能部材は、網組やメッシュ構造を形成するために個別のワイヤを有しても良い。或いは又、管状骨格を成すチューブからのレーザ切り出しによって拡張可能部材を形成しても良い。拡張した状態での直径はカテーテルの外径より大きいことが好ましい。
【0062】
図16A乃至図16Cは、カテーテル122のルーメン123からのバルーン部材124の展開の各段階を示している。バルーン部材124を展開するため流体が充満した注射器、又は他の供給源が膨張ポート128に接続される。加圧された流体がカテーテル122のルーメン123に入ると、バルーン部材124の近位端がルーメンを出て膨らむ。バルーン部材124約1mm乃至約30mmの拡張直径範囲であって、好ましくは2mm乃至20mmの直径範囲を有する。バルーン部材124の長さは所望の粘膜下医療処置を達成するのに必要なほどの長さを有する。この長さは5mm乃至50cmの範囲であって、好ましくは7mm乃至約10cmの範囲とすることができる。バルーン部材124が拡張するに従って、それは、バルーン部材124の遠位端142をカテーテル122の遠位端138に向かって移動させるような直線的な形で拡張することになる。加圧流体がカテーテルルーメン123に適用される限り、バルーン124はその全長に向けて延びることになる。或いは又、バルーン124の遠位端142が係留部材144に接続されるため、バルーン124がとる直線的延長量を係留スライダ132によって調整し、延長長さをバルーン全長よりも短く規定するようにしても良い。
【0063】
図17は、本発明の粘膜下医療処置を実行する粘膜下トンネリング器具150を示している。粘膜下トンネリング器具150は、近位及び遠位端を有するカテーテル152と、前記遠位端近傍に配置されるバルーン部材154とを備える。遠位端に隣接してカテーテル152の外部に配置されるのは一連のマーカー156である。これらのマーカーは、内視鏡による直接可視化のもとで見ることができるようにしても良く、更に蛍光透視法によって見ることができるようにしても良い。カテーテルの近位端に隣接するのが補助装置ポート158である。カテーテル152の近位端は、膨張ポート162に接近するべくコネクタ管160に取り付けられる。バルブアセンブリ164は膨張ポート162に導入された流体のシールとなる。係留スライダ166はハンドル本体168上でスライド可能に配置される。ハンドル本体168は、係留スライダ166の移動を測るために距離指標170を備えている。
【0064】
粘膜下トンネリング器具150の遠位端断面を、更に詳細に図18に示す。カテーテル152は遠位端172と第1ルーメン174を有する。第1ルーメン174内に位置するのがバルーン部材154である。バルーン部材154は当該技術では一般的に知られたノンコンプライアントタイプであることが好ましいが、コンプライアントタイプでもセミコンプライアントタイプのバルーン部材154でも良い。バルーン部材154は、オレフィン、エラストマー、熱可塑性エラストマー、ビニール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素重合体、共重合体、及びこれら材料の組み合わせなどのような、生体適合性ポリマタイプの材料から形成しても良い。バルーン部材154の近位端176はカテーテル152の遠位端172に取り付けられる。バルーン部材154の遠位端178は裏返された状態で第1ルーメン174内に位置決めされる。係留部材180はバルーン部材154の遠位端178に接続される。図示したように、係留部材180はフレキシブルであり、好ましくはフィラメントの形態をとるが、チューブの形態をとってもよい。係留部材180の近位端は、バルブアセンブリ164を介して係留スライダ166に接続される。係留部材180は、カテーテル152の第1ルーメン174内部に最初にバルーン部材154を位置決めする際に補助する。カテーテル152は補助装置ポート158から遠位端184へと延びる第2ルーメン182を有する。遠位端184はカテーテル152の遠位端172の近くに配置される。第2ルーメン182内でスライド可能に配置されるのがナイフ先端部188を有するニードルナイフ184である。ニードルナイフ184は内視鏡的電気外科型であることが好ましいが、例えば機械的カッター、ウォーター・ジェットまたはレーザなど、組織に切開部を形成するために動作可能な切開装置であるならば如何なる形態の装置でも良い。
【0065】
図19A乃至図19Cは、本発明の別の実施形態による粘膜下トンネリング器具200を示している。カテーテル202は、バルーン部材206に接続される遠位端204を有する。バルーン206の近位端208はカテーテル202の遠位端204に接続される。バルーン部材206は、その遠位端210が渦巻きの中心にくるような渦巻状に丸められる。バルーン部材206に接続されるカテーテル202のルーメンが加圧された際に、バルーン部材206が膨らむ。バルーン部材206の膨張により、バルーンはそれまでの渦巻状から展開され直線的に延びるようになる。内視鏡のワーキングチャンネルを介した送達のため、バルーン部材206は熱処理されて渦巻状態を保持するようにしても良い。或いは又、図20A及び図20Bに示すように、バルーン部材206はその壁面に螺旋状部材212を組み込むものでも良い。螺旋状部材は、図20Aに広げられた状態を示すように、弾力があるフィラメントから形成しても良い。弾力フィラメントから形成されかつバルーンの壁面に組み入れられる螺旋状部材は、それ自体螺旋形となり、そうすることでバルーン部材を図20Bに示すような渦巻状に形作ることが好ましい。
【0066】
粘膜下医療処置を実行するために、粘膜下空間へ接近するべく消化管の標的領域を用意しなければならない。図21A及び図21Bは、哺乳動物の消化管の所望の領域220を示している。粘膜層46の下方に安全ブレブ222を形成するため、前述した実施形態のどのセーフアクセス・ニードルの注射器でも使用することが可能である。安全ブレブは、粘膜層46と筋肉層50の両方に付いた、ほぼ引き伸ばされた状態の粘膜下結合組織52を含んでいる。図22A及び図22Bに示すように、内視鏡切開ツール224が、安全ブレブ222に隣接して配置される。内視鏡切開ツール224の切開ツール先端部226によって安全ブレブの粘膜層46の中に小さな粘膜孔228が作られる。粘膜層46を隆起させることで、切開ツール先端部226がその下に横たわる筋肉層50を損傷させる可能性を低減する。図23A乃至図24Dは、粘膜下層48内部への粘膜下トンネリング器具の導入と作動を示している。粘膜下トンネリング器具120の遠位端138は粘膜孔228を通した状態で位置決めされる。一旦バルーン124の近位端140が粘膜孔228を通過しさえすれば、粘膜下トンネリング器具120を操作することができる。カテーテル122のルーメンを介して加圧流体を送達することで、バルーン124の近位端が図23Cに示すように拡張直径に向けて膨らむことになる。通常、バルーン124の近位端140の拡張直径は粘膜孔228の直径より大きい。この直径をより大きくすることで、バルーン124が粘膜孔228を介してカテーテル122の遠位端138を粘膜下層48から後方に押すのを回避する。図23Dに示すように、更なる膨張はバルーン124を粘膜下層48内で直線状に延ばすこととなり、これにより粘膜下結合組織52のバルーンに隣接した部分が壊れることになる。バルーン124は、粘膜層46と筋肉層50の間の周辺領域の容積を増加させることで拡張するにすぎない。バルーン124が膨張している間、力は粘膜下結合組織52に集中することで粘膜下結合組織52が壊れる一方、バルーン124によって粘膜層46や筋肉層50に付与された力は、バルーン124の、より大きい部分にわたり弱められる。バルーン124によって付与されるような粘膜下結合組織52破壊に必要な力は、バルーン124によって粘膜層46や筋肉層50に穴を開けるのに必要とされる力よりも小さいため、これにより周辺組織への外傷の可能性を最小にする。図24Aは、粘膜下トンネリング器具120によって形成された粘膜下トンネル230を有する、消化管内領域220の斜視図である。図24Bに示すように、バルーン124は充分に膨らみ、粘膜下トンネル230の空間の大部分をほぼ占有している。その後、バルーン124は、カテーテル122に負の圧力を加え、係留部材144を引っ込めることによって収縮する。そして、カテーテル122の遠位端138は粘膜孔228から取り外され、ほぼ萎んだ状態にある粘膜下トンネル230を去ることとなる。この時トンネル内では粘膜下結合組織52は破壊されている。幾つか粘膜下医療処置のために、粘膜下トンネル230が筋肉壁や移植装置の配置に対し適当なアクセスを提供するようにしても良い。しかしながら、その他の粘膜下医療処置を実行するためには、粘膜下トンネル230より大きな領域が所望されるかもしれない。
【0067】
図25A乃至図25Dは本発明の実施形態による、粘膜下医療処置を実行するため粘膜下トンネルより大きな領域を形成することを示している。消化管の領域220は、粘膜下トンネル230を形成することによって用意される。カテーテル242を有する粘膜下解剖器具240が粘膜孔228を介して粘膜下トンネル230内に位置決めされる。カテーテル242上に位置するのは、粘膜下トンネル230内へのカテーテル遠位端246の挿入深度を示すマーカー244である。図25Bに示すように、遠位端250と近位端252を持つバルーン部材248が粘膜下トンネル230の中に充分位置している時、粘膜下解剖器具240は作動適所にあることになる。加圧流体がバルーン部材248との流体連通状態にあるカテーテル242内ルーメンに供給されると、バルーン部材248が膨らむ。バルーン部材248の膨張過程において粘膜下結合組織52が拡張バルーン部材248の領域で壊され、粘膜層46が隆起する。隆起した粘膜層46は大きな粘膜解離域260を形成する。充分に膨らんだ後はバルーン部材248を縮ませ、粘膜下解剖器具240は大きな粘膜解離域260から取り外しても良い。粘膜層46の下の解離した領域は形状において高いアスペクト比のトンネルから幾つかの粘膜下医療処置を実行するのに適当な低アスペクト比のチャンバーへと変形している。
【0068】
粘膜下トンネリング器具と粘膜下解剖器具についての前述した記述は、粘膜下トンネル又は大きな粘膜解離域を作成するための別々の器具に関するものであったが、この2種の器具を合体させ、図26に示すような粘膜下トンネリング解剖器具270を構成しても良い。その粘膜下トンネリング解剖器具270は、遠位端274を有する解剖カテーテル272と、拡張した解剖バルーン274a形状を有する解剖バルーン276とを備えている。解剖バルーン276は当該技術では一般的に知られたノンコンプライアントタイプとすることができるが、コンプライアントタイプでもセミコンプライアントタイプの解剖バルーン276でも良い。解剖バルーン276は、オレフィン、エラストマー、熱可塑性エラストマー、ビニール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素重合体、共重合体、及びこれら材料の組み合わせなどのような、生体適合性ポリマタイプの材料から形成しても良い。解剖カテーテル272は、その軸に沿って挿入指標278を配置している。解剖カテーテル272の近位端は解剖バルーン276と流体連通状態にある膨張ポート280とバルブアセンブリ282の両方を備えている。トンネリングカテーテル284はバルブアセンブリ282を介してスライド可能に配置され、解剖カテーテル272のルーメン内に延びるようになっている。トンネリングカテーテルの遠位端286は解剖カテーテルの遠位端274を超えたところまで延びても良い。トンネリングカテーテル284は膨張ポート288とバルブアセンブリ290を備えている。係留スライド部材292は距離指標296を備えたハンドル本体294上でスライド可能に配置される。図27は、粘膜下トンネリング解剖器具270の遠位部分の詳細な断面図である。解剖バルーン276の遠位端298と近位端300は解剖カテーテル272の外側に接続される。膨張ルーメン302は、膨張穴304を介して膨張ポート280を解剖バルーン276の内部に接続する。トンネリングカテーテル284は解剖カテーテル272のルーメン306内でスライド可能に配置される。トンネリングカテーテル284のルーメン308内に配置されるのが、裏返された拡張可能トンネリングバルーン310である。トンネリングバルーン310は当該技術では一般的に知られたノンコンプライアントタイプであることが好ましいが、コンプライアントタイプでもセミコンプライアントタイプのトンネリングバルーン310でも良い。トンネリングバルーン310は、オレフィン、エラストマー、熱可塑性エラストマー、ビニール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素重合体、共重合体、及びこれら材料の組み合わせなどのような、生体適合性ポリマタイプの材料から形成しても良い。トンネリングバルーン310の遠位端は係留部材312に接続され、同部材の近位端は係留スライダ292に連結されている。
【0069】
粘膜下トンネルと大きな粘膜解離域を形成する粘膜下トンネリング解剖器具270の作動は個々の器具の作動と同様である。通常、トンネリングカテーテル284の遠位端286は安全ブレブに形成された粘膜孔を通って位置決めされる。トンネリングカテーテル284は流体加圧され、トンネリングバルーン310を直線的に拡張する。ひとたび粘膜下トンネルが形成されたならば、トンネリングバルーン310を収縮させたり、粘膜孔を通して解剖カテーテル272を粘膜下トンネル内に進行させても良い。解剖カテーテル272が粘膜下トンネル内に進行した深さを測定するのに指標278を用いても良い。一旦、解剖カテーテル272が粘膜下トンネルの中に適切に置かれたならば、同カテーテルを操作しても良い。膨張ポート280に加圧流体を印加することで解剖バルーン276は拡張解剖バルーン276aへと拡張される。膨張過程において、その後の粘膜下医療処置を実行するのに接近し易い大きな粘膜解離域が形成されることになる。
【0070】
上述した器具のいずれかを使用することで一部、又は完全に可能となるような本発明の実施形態による粘膜下医療処置は、消化管の筋肉壁から生検標本を採取することである。本発明の別実施形態では粘膜下生検器具350が図28に示されている。粘膜下生検器具350は遠位端354を有するカテーテル352を備える。カテーテル352の遠位端354に隣接して配置されるのが窓部材356である。窓部材356は、カテーテル352の壁の一部を取り除くことによって形成される。一般に窓部材356は、2mm乃至100mmの範囲にある長さを有し、好ましくは5mmと30mmの間の長さを有する。窓部材356の直径は、1mm乃至20mmの範囲であって、好ましくは2mm乃至10mmの範囲でカテーテル352の直径にほぼ等しいか、それ以下となる。 吸気ポート358がカテーテル352に接続されて、窓部材356と連通する。 真空コネクタ360は吸気ポート358と真空源362の連通を容易にする。カテーテル352の近位端に位置するのがバルブアセンブリ364である。コネクタ管368が水注入ポート370をカテーテル352のルーメンに接続させる。水注入ポート370はバルブアセンブリ372にも又接続される。圧力スライダ374が距離指標378を備えたハンドル本体376上でスライド可能に配置される。
【0071】
図29A及び図29Bは粘膜下生検器具350の遠位端の詳細断面を示している。カテーテルルーメン380は窓部材356を真空源362に接続する。カテーテルルーメン380の中に置かれかつ窓部材356より遠くスライド可能に配置されるのが組織カッター384である。組織カッター384は、ルーメン380直径よりわずかに小さい直径を有して、一般的に傾斜した管状に形成される。組織カッターはベローズ部材384に接続される。ベローズ部材384の近位端386と組織カッター384とは互いに流体密封係合関係にある。ベローズ部材384は遠位端388とルーメン390を備え、遠位端388はベローズ固着部材392によってしっかりとカテーテル352に接続される。ベローズ部材384のルーメン390はカテーテル352の水力ルーメン394との流体連通状態にある。水力ルーメン394が水注入ポート370との流体連通状態にある。水注入ポート370を介して流体を送り込み、ベローズルーメン390と水力ルーメン394を流体で充満することができる。ひとたびこれらのルーメンが流体で満たされたならば、水注入ポート370に栓をしたり封止しても良い。単純なピストン(図示せず)に接続された圧力スライダ374を作動することで水圧が生じ、この水圧はベローズ部材384に伝達される。この水圧によりベローズ部材384は第1収縮した状態から第2拡張した状態へと移動することになる。ベローズ部材384の近位端386は組織カッター382に接続されているため、圧力スライダ374によって発生した水圧により組織カッター382は、窓部材356から遠い第1位置から窓部材356に近い第2位置へと、ルーメン380内部を近位方向に移動することになる。
【0072】
本発明の実施形態による粘膜下医療処置を実行するため、内視鏡は自然孔を通って進行し、哺乳動物の消化管内に位置決めされる。図30に示すように、内視鏡2の挿入部6は、拡張された粘膜孔228を通って、粘膜下トンネル230の中か、或いは前述した技術のいずれかに従って形成された大きな粘膜解離域の中に位置決めされる。図31A乃至図31Eは、組織標本を得るために粘膜下医療処置を実行する粘膜下生検器具350の作動を示している。カテーテル352の遠位端354は、窓部材356が消化管の筋肉層50に隣接するように粘膜下トンネル230内に位置決めされる。組織カッター382とベローズ部材384は窓部材356からは遠い夫々の第1位置にある。真空がカテーテルルーメン380に導かれ、筋肉層50の一部が窓部材356の中に吸引される。その際、水圧がベローズ部材384内に生じ、これによりベローズ部材384と組織カッター382が窓部材356に近い第2位置に移動することになる。組織カッター382がその第1位置から第2位置へと移動する際に、同カッターは窓部材356の中に吸引された組織を切断することになる。 生検標本は、カテーテルルーメン380を介して真空源近傍の収集瓶へと吸引しても良い。ベローズ部材384と組織カッター382を夫々の第2位置から第1位置へと戻すため負の水圧が生成される。追加の生検標本を獲得するため、粘膜下生検器具350のこの作動を繰り返すことも可能である。
【0073】
図32A乃至図32Dは、本発明の別の実施形態によるは粘膜下生検器具320を示している。カテーテル322は遠位端324と窓部材326を有する。窓部材326は、カテーテル322の壁の一部を取り除くことによって形成される。組織カッター328は、カテーテル322の遠位端324を包囲するように構成される。絶縁体部材330は組織カッター328の少なくとも一部分の周りに配置される。組織カッター328が作動する際、絶縁体部材330は、周囲組織への損傷を回避する。絶縁体部材330は非伝導性のポリマーやセラミックから形成されることが好ましい。組織カッター328は伸長軸部材331の遠位端に接続される。カテーテル322は第1ルーメン332と第2ルーメン334を備えている。第1ルーメン332によってカテーテル322の近位端が窓部材326に接続される。伸長軸部材331は第2ルーメン334内でスライド可能に配置される。第2ルーメン334の遠位端は窓部材326の近位端近くに位置決めされる。伸長部材331の近位端の、管状部材の近位端に接近する方向の動きによって、組織カッター328が、窓部材326から遠い第1位置から窓部材326に近い第2位置へと移動することになる。組織カッター328は、高周波エネルギが組織カッター328に供給されて同カッター328が第1位置から第2位置に移動した際に、ルーメン332を真空とすることで窓部材326に吸引されていた組織を切断するような電気外科的カッターの形態をとることが好ましい。また、組織カッター328は、電気エネルギ印加の必要のない機械的な刃の形態をとるようにしても良い。
【0074】
図33A乃至図33Dは、哺乳動物における無弛緩症の治療のための、本発明の実施形態による粘膜下医療処置の実行方法を示している。粘膜下トンネル230か大きな粘膜解離域が、下部食道括約筋を取り囲む食道粘膜層46の下方に形成される。内視鏡の挿入部6の遠位端は、拡張された粘膜孔228を通って粘膜層46の下方領域内に位置決めされる。内視鏡は、粘膜下空間を視覚化することに加え、下部食道括約筋の環状筋400を識別するのに使用される。 粘膜孔228を介し、好ましくは内視鏡のワーキングチャンネルを介して内視鏡的切開器具402が送達される。切開器具402としては、例えばレーザ、外科用メス、鋏、或いはウォータジェットのような光学的又は機械的カッターの形態をとることも可能ではあるが、当該技術で公知の電気外科型であることが好ましい。電気外科型切開器具402は電極先端404と非伝導性遠位端406を備えている。切開器具402の電極先端404は環状筋400の遠位部に隣接して位置決めされる。切開器具402が近くに動かされるとき、電極先端404は作動して環状筋400で略垂直な切り口408を形成する。非導電性の遠位端406は筋肉層50に隣接して、切開器具402が食道壁を切断したり穴を開けることを防止する。非導電性の遠位端406は電気エネルギを導かないポリマーやセラミックス或いは複合材料から形成しても良い。非導電性の遠位端406の形状に関しては球面であることが好ましいが、例えば三角形、ピラミッド平行六面体、台形又は多くの複雑形状のような他の幾何学形態をとってもよい。ひとたび切り口408が環状筋400を完全に横断することになれば、筋切離術は完了である。次いで、内視鏡と切開器具402を粘膜下空間から除去しても良い。 例えば縫合、ステープル閉じ又はクリップなど、何らかの適当な手段を用いて粘膜孔228を閉じた後は、内視鏡は患者から取り外すことができる。
【0075】
図34A及び図34Bは、本発明の別の実施形態に従い、哺乳動物の消化管内の粘膜層部分を切除するべく粘膜下医療処置を実行するための粘膜切除装置を示している。粘膜切除装置450は、遠位端454、近位端、及びルーメン455を有するカテーテル452を備える。ルーメン455の中でスライド可能に配置されるのがトラック部材456である。トラック部材456は、好ましくは、2つの近位端458と遠位ループ460を備えたスルールーメンを有する細長い管から形成される。遠位ループ460には、そのループ直径が小さい第1送達形態と、ループ直径が大きく、拡張した遠位ループ460aを成すような第2展開形態とがある。遠位ループ460の直径はカテーテル452に対し近位端458の1つか両方を離反方向に動かすことによって調整可能である。遠位ループ460はカテーテル452の遠位端454に隣接して置かれ、トラック部材456の壁を通る細長いスロット462を備える。切断先端464は、トラック部材456のルーメンからスロット462を通って延びる遠位ループ460に隣接して位置決めされる。切断先端464は、その遠位端に絶縁体チップ466を備えてワイヤ部材468に接続され、同ワイヤ部材はトラック456のルーメン内でスライド可能に配置され、近位端458を通って延びる端部469を備える。トラック部材456に対しワイヤ部材468の一端部469を相対的に近位方向に動かすことによって、切断先端464はスロット462の経路に追従するトラック部材456の遠位ループ460に沿ってスライドする。もちろんもう一方の端部469を相対的に近位方向に動かすことによって、切断先端464を遠位ループ460に沿って逆方向に動かすようにしても良い。好ましくは、この切断先端464は電気外科型であるが、例えば刃、ウォーター・ジェット、レーザなどの機械的又は光学的手段によって組織を切断するように構成しても良い。
【0076】
図35A乃至図35Cは、本発明の別実施形態に従い、哺乳動物の消化管内の粘膜層部分を切除するべく粘膜下医療処置を実行するためのもう1つの粘膜切除装置を示している。粘膜切除装置470は、遠位部分474、近位部分、及びルーメン475を有するカテーテル472を備える。カテーテル472のルーメン475の中でスライド可能に配置されるのがトラック部材476である。トラック部材476は、好ましくは、近位部分478、遠位部分470及びルーメンを有する細長い管から形成される。カテーテル472のルーメン475内で同様にスライド可能なのが近位端484と遠位端486を備えるフレキシブル部材482である。フレキシブル部材482の遠位端486はトラック部材476の遠位部分480に接続されている。トラック部材476には、カテーテル472のルーメン475を介した送達のために遠位部分480が略直線状態となるような第1形態と、展開のため遠位部分480が凡その成形状態となるような第2形態とがある。トラック部材476は、ルーメン475から遠位部分480を延ばすことにより、その第1形態と第2形態との間で動作可能となる。トラック部材476の遠位部分480がルーメン475から延びた時、トラック部材はその第2成形形態をとり始める。トラック部材476を前進させたりフレキシブル部材を引き込ませることで、遠位部分480は所望の直径を持つループへと形成することが好ましい。トラック部材476の遠位部分480は又、トラック部材476の壁を通ってルーメンへと延びる細長いスロット488を備える。切断先端490は、トラック部材476のルーメンからスロット488を通って延びる遠位端480に隣接して位置決めされる。切断先端490は、その遠位端に絶縁体チップ492を備えてワイヤ部材494に接続され、同ワイヤ部材はトラック476のルーメン内でスライド可能に配置される。ワイヤ部材494の近位端はトラック部材476の近位端478を超えて延びる。トラック部材476に対しワイヤ部材494の近位端496を近位方向に動かすことによって、切断先端490はスロット488の経路に追従するトラック部材476の遠位部分480に沿ってスライドする。もちろん近位端496をトラック476に対し遠位方向に動かすことによって、切断先端464を遠位部分480に沿って逆方向に動かすようにしても良い。好ましくは、この切断先端464は電気外科型であるが、例えば刃、ウォーター・ジェット、レーザなどの機械的又は光学的手段によって組織を切断するように構成しても良い。
【0077】
図36A乃至図36Iは、哺乳動物の粘膜層の所望領域を取り除くため、本発明の実施形態に従って粘膜下医療処置を実行する粘膜切除装置を作動する方法を示している。好ましくは、前述した処置方法のいずれかに従って大きな粘膜解離域260が消化管内に作成される。粘膜切除装置470は、大きな粘膜解離域260の粘膜層46を介し、拡張された粘膜孔228を通って位置決めされる。図36Cに示すように、トラック部材476の遠位部分480にループを形成するため、トラック部材476が粘膜層46の下でカテーテル472のルーメンから前進する。カテーテル遠位端474は粘膜孔に隣接して位置決めされ、遠位部分480によって形成されたループは、図36Dに示すように、カテーテル472からトラック部材476を前進させることによって、大きな粘膜解離域の直径へと拡張されることになる。遠位部分480が拡張されたループ状態に形成された時、切断先端490と絶縁体チップ492が、好ましくは粘膜孔228を介し、粘膜層46を通って延ばされる。粘膜層46を介して切断先端490が延びるのに伴い、切断先端490を作動させ、ワイヤ部材496をトラック部材476に対し近位方向に移動させ、以て切断先端490をトラック部材476の遠位部分480に沿って移動するようにしても良い。切断先端490がスロット488のループ経路に追従して遠位部分480に沿って動くことで、切断先端490は図36E及び図36Fに示すように粘膜層46を切断することになる。切断先端490が一旦、カテーテル472の遠位端474に達しさえすれば、図36Gに示すように、周辺の粘膜層46から切断された粘膜層帯部分500を残して切断先端490を作動停止させても良い。トラック部材476をカテーテル472内へと回収し、患者から粘膜切除装置470を除去することができる。図36Iに示すように、好ましくは顎504を持つような組織除去装置502を消化管内に挿入し、粘膜層帯部分500を一括回収しても良い。
【0078】
以上、哺乳動物の消化管内で粘膜下医療処置を実行するための新規の器具、システム及び方法を開示してきた。ここでは本発明の好適実施形態を記述してきたが、以下の請求の範囲から逸脱することなく当業者によって、実質的に同じ結果をもたらすべく同じ方法で、実質的に同じ機能を果たす要素や部品の代替を含む様々な変更例が可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0079】
2 内視鏡
4 ワーキングチャンネル
6 挿入部
10、60 セーフアクセス・ニードルの注射器
12 管状軸
13、64、70、138、142、172、178、184、204、210、246、250、274、286、298、324、354、388、406、454、486 遠位端
14、326、356、386 窓部材
16 ニードル部材
18 真空ポート
20 バルブアセンブリ
21 ハンドルアセンブリ
22、126、160、368 コネクタ管
24 ニードル流体ポート
26、130、164、282、290、364、372 バルブアセンブリ
28 ニードルスライド部材
30、134、168、294、376 ハンドル本体
32、136、170、296、378 距離指標
34、66、306、308、390、455、475 ルーメン
36 停止部材
38 シール栓
40、76 ニードル先端部
42、78 ニードルルーメン
44 ニードル本体
46 粘膜層
48 粘膜下層
50 筋肉層
52 粘膜下結合組織
62 鞘部材
68 伸長軸部材
69 軸ルーメン
72 顎部材
74 ニードル軸
80 カラー部材
82 組織把持面
100、104,108 セーフアクセス解剖システム
102、106、110 注入解離材
120、150 粘膜下トンネリング器具
122、152、202、242、322、352、452、472 カテーテル
124、154、206、248 バルーン部材
128、162、280、288 膨張ポート
132、166 係留スライダ
140、176、208、252、300、458、484、496 近位端
144、180 係留部材
156、244 マーカー
158 補助装置ポート
174、332 第1ルーメン
182、334 第2ルーメン
186 ニードルナイフ
188 ナイフ先端部
200 粘膜下トンネリング器具
212 螺旋状部材
220 所望領域
222 安全ブレブ
224 内視鏡切開ツール
226 切開ツール先端部
228 粘膜孔
230 粘膜下トンネル
240 粘膜下解剖器具
260 粘膜解離域
270 粘膜下トンネリング解剖器具
272 解剖カテーテル
276 解剖バルーン
278 挿入指標
284 トンネリングカテーテル
292 係留スライド部材
302 膨張ルーメン
304 膨張穴
310 トンネリングバルーン
320 粘膜下生検器具
328、382 組織カッター
330 絶縁体部材
331 伸長軸部材
350 粘膜下生検器具
358 吸引ポート
360 真空コネクタ
362 真空源
370 水注入ポート
374 圧力スライダ
380 カテーテルルーメン
384 ベローズ部材
392 ベローズ固着部材
394 水力ルーメン
400 環状筋
402 内視鏡的切開器具
404 電極先端
408 切り口
450、470 粘膜切除装置
456、476 トラック部材
460 遠位ループ
462、488 スロット
464、490 切断先端
466、492 絶縁体チップ
468、494 ワイヤ部材
469 端部
474、480 遠位部分
478 近位部分
482 フレキシブル部材
500 粘膜層帯部分
502 組織除去装置
504 顎
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図23D】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図31C】
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【図31D】
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【図31E】
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【図32A】
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【図32B】
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【図32C】
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【図32D】
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【図33A】
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【図33B】
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【図33C】
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【図33D】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35A】
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【図35B】
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【図35C】
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【図36A】
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【図36B】
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【図36C】
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【図36D】
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【図36E】
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【図36F】
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【図36G】
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【図36H】
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【図36I】
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【公表番号】特表2010−533036(P2010−533036A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516118(P2010−516118)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/067635
【国際公開番号】WO2009/009274
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(510009511)アポロ エンドサージェリー,インコーポレイティド (3)
【出願人】(507053954)ザ・ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム (5)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】