説明

精密に制御された元素組成物を有する蛍光体を提供する方法、同方法で提供された蛍光体、蛍光体、及び該蛍光体を含む発光デバイス

【課題】高輝度を有する蛍光体の製造を可能とする方法を提供する。
【解決手段】精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法であって:(A)本体と閉鎖部材を含む焼結ホルダを提供し、ここで、本体は焼結スペースを有し、そして閉鎖部材は焼結スペースを閉鎖するために使用され;(B)蛍光体の原料を本体の焼結スペース内に置き;(C)接着剤を本体と閉鎖部材の少なくとも1つにコートし;及び(D)原料を含む焼結ホルダを、非酸化性ガス雰囲気下で加熱して蛍光体を得る;工程を含む方法。例えば下記蛍光体に適用される。CaaSrbAlcSidef:Eug、ここで、0≦a<1、0≦b<1、c=1、0.8≦d≦1.2、0≦e≦0.5、2.5≦f≦3.1、0.002≦g≦0.020、a及びbは、同時に共に0ではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密に制御された元素組成を備えた蛍光体を提供する方法、同法で提供される蛍光体、及び励起後赤色光を発光することができ、そして、ディスプレ又は発光ダイオードなどのデバイスに使用することができる赤色蛍光体に関する。本発明は、また、該赤色蛍光体を含む発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
環境に優しく、省エネ型の光源に対する要求が高まるにつれて、高効率、省エネ型、及び環境に優しい属性を備えた光源を開発するために、多くの努力が払われている。発光ダイオード (LEDs)は、そのコンパクト性、低熱出力、低エネルギ消費、長寿命、並びに低脆弱性、廃棄されるに際しての低汚染(例えば、Hg汚染)、及び低エネルギ消費の故に、伝統的な光源に取って代わって使用されると大いに理解されている。一般に、白色光LEDsは、黄色蛍光体を有する青色発光源から成る。しかしながら、そのようなLEDsより発生した白色光は、赤色光の波長を欠き、そして低演色性(color rendering property)及び低彩度をもたらすことになる。同様に、黄色蛍光体の固有の低発光効率が、白色光に対して低輝度をもたらす可能性がある。上記の問題を解決するために、従って、赤色蛍光体を混合した黄色蛍光体から成る複合蛍光体が、白色光に対する演色性及び彩度 の両方を増加させるため提案された。何故ならば、赤色蛍光体を加えることは、黄色蛍光体の採用のみでは不足する輝度効率を増加させるために貢献し得るからである。
【0003】
赤色蛍光体としては、例えば、Sr2Si58:Eu、CaAlSiN3:Eu、又はサイアロン蛍光体(即ち:MzSi12-(m+n)Alm+nn16-n)を使用することができる。しかし、Sr2Si58:Euは、寿命が短いので、Sr2Si58:Euの使用は、演色性及び彩度を減少させる可能性がある。サイアロン蛍光体には低寿命の欠陥がないけれど、サイアロン蛍光体を用いると低輝度を招来するかもしれず、従って、市場で広く使用されていない。CaAlSiN3:Euは、長寿命であり、そして、サイアロン蛍光体より高い輝度を有するが、発光デバイス用の高い輝度及び高い発光効率を求める市場の要求を未だ満たすことができない。
【0004】
CamAlaSibn:Euz(ここで、(m+z):a:b:n=1:1:1:3)、又はCabSicAldx:Eua(ここで、a+b=1、0.5≦c≦4、0.5≦d≦8)などのCaAlSiN3:Euシリーズの赤色蛍光体が、以下に示す段階で提供することができる。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム又は窒化カルシウム、及び 酸化ユウロピウムを所定の比率で、焼結ホルダ内で混合し、そして次いで、1700℃の温度で、窒素雰囲気中、10気圧(atm)より大きい圧力で焼結する。そのような方法の欠点は、高圧(即ち、10気圧より大きい圧力)が、製造中に危険な爆発を発生させるかも知れず、製造コストが装置の高コストのため増加し、演色性及び彩度が、赤色蛍光体の狭い波長範囲の故に大きく増やすことができない。加えて、必要な輝度が上記の方法では得ることができない。
【0005】
従って、同じシリーズの従来の蛍光体と比較してより高い輝度、及びより高い発光効率を有する赤色蛍光体を製造するための改良された方法を提供することは望ましいことであり、それは、従って、高演色性及び高彩度を有する白色光LEDsの製造に更に、適用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高輝度を有する蛍光体の製造を可能とする、精密に制御された元素組成物を有する蛍光体を提供する方法を提供することである。
【0007】
本目的を達成するために、本発明の精密に制御された元素組成物を有する蛍光体を提供する方法は、以下の工程:
(A)本体と閉鎖部材を含む焼結用ホルダを提供し、ここで、本体は焼結スペースを有し、閉鎖部材は焼結スペースを閉鎖するために使用され;
(B)蛍光体の原料を本体の焼結スペースに置き;
(C)本体と閉鎖部材の少なくとも1つに接着剤をコートし; そして
(D)原料を含む焼結ホルダを、非酸化性ガス雰囲気下で加熱して蛍光体を得る;
ことを含む。
【0008】
本発明の別の目的は上記方法により作られた蛍光体を提供することである。
【0009】
本発明の発明者は、特に、白色光発光デバイスの演色性及び彩度を向上させ、並びに、蛍光体の高輝度に対する市場の要求を満足させることができる新規な蛍光体の開発に集中した。従って、本発明の第三の目的は、高輝度を有する蛍光体を提供することである。
【0010】
蛍光体は以下の[式1]で表される。
[式1]:CaaSrbAlcSidef:Eug
ここで、0≦a<1、0≦b<1、c=1、0.8≦d≦1.2、0≦e≦0.5、2.5≦f≦3.1、0.002≦g≦0.020、a及びbは、同時に共に0ではない;及び、
455nmの波長光により励起された蛍光体から放出された光のCIE1931色度座標(x、y)は、以下の式を満足する:
x=[(−0.1059b3+0.068b2−0.06b)+(2152.8g3−309.2g2+8.2943g)+0.6324]±0.01;
y=[(0.1295b3−0.0968b2+0.0702b)+(−3299.2g3+311.08g2−7.9266g)+0.3621]±0.01。
【0011】
本発明の第四の目的は、優れた演色性、高彩度、及び高輝度効率を備え、発光素子を有する発光ユニット、及び上記蛍光体含む発光デバイスを提供することである。
【0012】
本発明によると、接着剤を用いることにより、所定の最適化比に近い元素組成比を有する蛍光体を得ることができ、即ち、原料と得られた蛍光体の間の化学的組成に関する差異を最小化することができる。その理由のため、製造コストを低減化することができ、そして高輝度を有する蛍光体が実現することができる。また、本発明の蛍光体により発光する光は、同じシリーズの従来技術のそれより明らかに高い色度及び輝度を有する。
【0013】
本発明のその他の目的、利点、及び新規な特性は、添付図面と一緒にするとき、次の詳細な記述からより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】輝度計の概略図である。
【図2】本発明の好ましい実施例の発光デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
精密に制御された元素組成物を有する蛍光体を提供する方法は:
(A):本体と閉鎖部材を含む焼結ホルダを提供し、ここで、本体は焼結スペースを有し、閉鎖部材は焼結スペースを閉鎖するために使用される;
(B):本体の焼結スペース内に蛍光体の原料を置く;
(C):本体と閉鎖部材の少なくとも1つに接着剤をコートし、かつ閉鎖部材を本体に取り付けて焼結スペースを閉鎖する、;及び
(D):原料を有する焼結ホルダを非酸化性ガス雰囲気下で加熱して蛍光体を得る;
工程を含む。
【0016】
本発明の方法によると、工程(D)において、接着剤はコンパクトな構造を形成するために、好ましくは、加熱中に硬化される。
【0017】
本発明の方法によると、工程(D)において、接着剤は、焼結スペースを気密にするため、好ましくは、本体及び閉鎖部材をシールするために使用される。
【0018】
本発明の方法によると、焼結ホルダは、好ましくは、サイアロン;AlNなどのアルミニウムの窒化物;BNなどのホウ素の窒化物;又はそれらの組合せ、より好ましくは、窒化ホウ素から作られる。
【0019】
本発明の方法によると、蛍光体の原料は、少なくとも1つの元素源を含み、「元素源」は、蛍光体を構成する元素の窒化物、酸化物、又は金属を示す。該酸化物は、酸素のみと反応して提供される化合物に限定されず;酸化物は、また、上記元素(蛍光体を構成する)と酸素に分解することができる炭酸塩又はシュウ酸塩を含み、即ち、炭酸塩及びシュウ酸塩も、また、酸化物の領域に属する。同じ状況は、本明細書においては、窒化物にも適用され、従って、詳細には記載しない。好ましくは、蛍光体の原料は、アルミニウム源、ケイ素源、ユウロピウム源、並びにカルシウム源及びストロンチウム源から選択された少なくとも1つ を含む。好ましくは、アルミニウム 源、ケイ素源、ユウロピウム源、カルシウム源、及びストロンチウム源は、それぞれ、アルミニウムの窒化物、ケイ素の窒化物、ユウロピウムの酸化物、カルシウムの窒化物、及びストロンチウムの窒化物である。例示的な実施態様によると、アルミニウムの窒化物はAlNであり、ケイ素の窒化物はSi34であり、ユウロピウムの酸化物はEu23であり、カルシウムの窒化物はCa32であり、そしてストロンチウムの窒化物は、Sr32である。
【0020】
好ましくは、カルシウム源、ストロンチウム源、アルミニウム 源、ケイ素源、及びユウロピウム源、それぞれにおける、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、及びユウロピウム間のモル比は、[カルシウム:ストロンチウム:アルミニウム:ケイ素:ユウロピウム]=[(0.01〜0.999):(0〜0.99):(0.95〜1):1:(0.002〜0.02)]である。より好ましくは、このモル比は、[カルシウム:ストロンチウム:アルミニウム:ケイ素:ユウロピウム]=[(0.018〜0.993):(0〜0.972):(0.95〜1):1:(0.002〜0.016)]である。即ち、ケイ素源から提供されるケイ素1モルに基づいて(即ち、基準として1モルのケイ素を取り)、カルシウムのモル比は、0.018〜0.993(ここで、カルシウムは、カルシウム源から得られる)であり、ストロンチウムのモル比は、0〜0.972(ここで、ストロンチウムは、ストロンチウム源から得られる)であり、アルミニウムのモル比は、0.95〜1(ここで、アルミニウムは、アルミニウム源から得られる)であり、そして、ユウロピウムのモル比は、0.002〜0.016(ここで、ユウロピウムは、ユウロピウム源から得られる)である。
【0021】
本発明によると、蛍光体の酸素は、カルシウム源、ストロンチウム源、アルミニウム源、ケイ素源、及びユウロピウム源から得ることができる。好ましくは、原料は、蛍光体に酸素原子を供給するための酸素源を、更に、含んでもよい。本発明の具体的実施例において、酸素源は、酸化アルミニウム(Al23)又は 酸化ユウロピウムであってもよい。好ましくは、ケイ素源から供給される1モルのケイ素に基づいて、酸素(酸素源から得られる)の量は、0〜0.3モルであり、そしてより好ましくは、0〜0.075モルである。
【0022】
蛍光体の各々の原料の純度は、高い方がよく、そして、各々の原料の純度は、好ましくは、2Nであり;より好ましくは、3N(99.9%)である。蛍光体の輝度を増加させるため、原料中の不純物の含量は、出来るだけ低く、特に、鉄、コバルト、ニッケル、フッ素、ホウ素、塩素、又は炭素などの原子の含量は、蛍光体の発光効率を維持するために、十分に制御されるべきである。例えば、高純度の原料は、選択的に使用され、ここで、鉄、コバルト、ニッケル、フッ素、ホウ素、塩素又は炭素原子の含量は、それぞれ、1000ppmより少なくするべきである。
【0023】
本発明によると、蛍光体の粒径及び形状は、原料の粒径及び形状に依存して、異なってもよい。原料の粒径は、原料の粒径が蛍光体の期待された粒径と一致する限り、特に限定されない。好ましくは、反応を促進させる観点から、原料の成分の各々の粒径は、主として、微粒子サイズである。
【0024】
蛍光体の原料は大気中の湿気の故に、容易に湿潤するので、Ca32、又はSr32など原料の秤量操作は、不活性ガス、好ましくは、無水の不活性ガスで充填されたグローブボックス中で実施すべきである。原料を混合する方法としては、乾燥法(例えば、乾燥ボールミル粉砕法)、湿潤法(例えば、湿潤ボールミル粉砕法)、又はその組み合わせ法が使用できるが、それらに限定されない。混合装置としては、ボールミル又乳鉢を使用し得る。
【0025】
本体及び閉鎖部材上への接着剤のコーティング位置は特に限定されず、そして、接着剤のコーティング位置は、本体と閉鎖部材間の対応するサイズに依存する。接着剤が加熱されると、接着剤が硬化され、コンパクトな形状を形成し、その結果、本体を閉鎖部材と堅く取り付ける。詳しくは、本体と閉鎖部材のサイズが非常に接近しているか、又は同じであるとき、接着剤は、本体の上端部、及び/又は、本体と閉鎖部材の上端の接触部分に塗布することができる。閉鎖部材が本体より大きいサイズを有するとき、接着剤は、本体の側壁、及び/又は、本体と閉鎖部材の側壁間の接触部分に塗布することができる。
【0026】
本発明の方法によると、本体と閉鎖部材を堅くシールし、焼結スペースを気密にするために、接着剤を硬化してコンパクトな構造を形成することができる限り、接着剤は特に限定されない。接着剤の使用を通して、焼結ホルダ全体の気密性を改良することができ、そして焼結ホルダ内の焼結スペースは、焼結スペースにおける原料を蒸発から防ぎ、原料を汚染するいかなる不純物(例えば、酸素)も避けるように、焼結ホルダの外部スペースから完全に分離することができ、従って、元素間の所定の含量比を有する蛍光体を得ることができる。好ましくは、接着剤は窒化ホウ素、そして少なくとも1つのアルカリ土類金属窒化物及び酸化ホウ素を含み、ここで、アルカリ土類金属窒化物は、窒化ベリリウム、窒化カルシウム、窒化ストロンチウム、窒化マグネシウム、窒化バリウムであってもよい。好ましくは、窒化ホウ素の含量は、接着剤1モル毎に、0.5モル又はそれ以上の窒化ホウ素を含み、即ち、接着剤は50モル%又はそれ以上の窒化ホウ素を含む。好ましくは、接着剤は、酸化ホウ素、窒化ストロンチウム、及び50モル%又はそれ以上の窒化ホウ素を含む。本発明において使用される接着剤の量は、焼結ホルダのサイズに依存する。使用される接着剤の量で本体及び閉鎖部材を完全にシールすることができる。
【0027】
焼結プロセスは、原料が非酸化性ガスの雰囲気下で加熱され、かつ焼結されて蛍光体を製造することができる限り、特に限定されない。好ましくは、焼結プロセスは、大気圧焼結方法、又はガスで加圧される空気圧焼結方法を使用し得る。加熱方法は特に限定されず、好ましくは、金属抵抗加熱器、黒鉛抵抗加熱器、又はその組合せを用い得る。焼結プロセスは、窒素、水素、アンモニアガス、アルゴン、又はその組み合せで充填された雰囲気などの非酸化性ガス雰囲気下で実施すべきである。蛍光体の粒径は、焼結温度で調節し得て、例えば、小粒径は低焼結温度で得られ、大粒径は高焼結温度で得ることができる。本発明において、焼結温度は、好ましくは、1200℃〜2200℃の範囲であり、より好ましくは、1400℃〜2000℃の範囲である。焼結速度は、好ましくは、3℃/分〜15℃/分の範囲である。焼結時間は、原料の組成に依存し、好ましくは、焼結時間は、1時間〜2時間の範囲である。焼結圧は、好ましくは、0.5MPa以下であり、より好ましくは、0.1MPa以下である。焼結工程の後、本発明の蛍光体が製造することができ、それは、更に、ボールミラー、又は工業用粉砕機で粉砕でき、そして、更に、洗浄し、濾過し、乾燥し、又は選別することができる。
【0028】
本発明の方法によると、接着剤は、加熱工程中、コンパクトな構造を形成するために硬化され、そして、焼結ホルダを気密にするため、本体及び閉鎖部材をシールするために用いられる。
【0029】
本発明は、[式1]で表すことができる蛍光体を提供する。:
[式1]CaaSrbAlcSidef:Eug
ここで、0≦a<1、0≦b<1、c=1、0.8≦d≦1.2、0≦e≦0.5、2.5≦f≦3.1、0.002≦g≦0.020、並びに、a及びbは、同時に共に0ではない;
ここで、
好ましくは、0.05≦a≦0.9;
好ましくは、0.10≦b≦0.95;
好ましくは、0.15≦a+b<1;
好ましくは、0.1≦a/b≦10;
好ましくは、0.9≦d≦1.1;
好ましくは、0≦e≦0.3;
好ましくは、2.7≦f≦3.0;
である。
【0030】
a、b、c、d、e、及びfの値が上記の範囲内であるとき、高輝度の蛍光体が得ることができる。gの値が0.020を下回ると発光輝度が不十分となる傾向がある、gの値が0.020より大きいとき、輝度は減少するかもしれない、何故ならばEu元素間の干渉が濃度クエンチング現象を発生させるかもしれないからである。好ましくは、gの値は、高輝度のためには、0.005≦g≦0.016の範囲内である。
【0031】
好ましくは、蛍光体は、また、鉄、コバルト、ニッケル、フッ素、ホウ素、塩素、及び炭素から成るグループから選択される少なくとも1つの元素を含んでもよく、ここで、それぞれは、1000ppm以下の量である。
【0032】
好ましくは、蛍光体は、また、蛍光体の輝度を増加させるために、マグネシウム、及び/又は、バリウムを含んでもよい。蛍光体中のマグネシウム含量は、20ppm〜1500ppmの範囲内でよく、又は蛍光体中のバリウム含量は、40ppm〜5000ppmの範囲内であり得る。
【0033】
図1を参照して、輝度及び色度の座標は輝度計により測定することができ、それは、黒室11、サンプルホルダ12、光源13、導光管14、鏡15、輝度計16(TOPCON社製、SR-3A)を含む輝度計により測定することができ、ここで、サンプルホルダ12は室11に配置され、そして、光源13は、サンプルホルダ12の上、約5cmの場所に配置される。導光管14の直径は、約2cmであり、そして光源13の角度は約45度である。鏡15は導光管14内に配置され、そして、サンプルホルダ12までの距離は約8cmである。輝度計16と鏡15間の距離は約40cmである。サンプルホルダ12が、蛍光体で充填され、そして光源13を経由して照射されるとき、光は蛍光体から照射され、導光管14を経由して通過し、そして鏡15により輝度計16へ反射される。本明細書において、フィールド1°モードは、蛍光体から照射された光の色度座標及び輝度を測定するために選択することができる。
【0034】
輝度の比較は、同じ値の色度の元で必要とされる。本明細書において、「色度の同じ値」は、x色度座標とy色度座標間の差異が、±0.002以下であることを示す。好ましくは、1ユニットとして、硫酸バリウム上に455nmの波長を有する光を照射することにより反射した光を基にして、そして、同じ値の色度を基にして、本発明の蛍光体の対応する輝度は55ユニット〜235ユニットの範囲内にあり、それは、約71ユニット〜99ユニットの輝度を有する従来の蛍光体(比較例)の輝度より高い。例えば、実施例3及び比較例2の蛍光体によると、そのCIE1931の色度座標(x、y)は、両方とも(0.654,0.344±0.002)であり、然るに、輝度は、それぞれ、114ユニット及び74ユニットである。従って、本発明の蛍光体は、高輝度を有し、そして、高輝度を確保するために発光デバイスに適用することができることが分かる。
【0035】
従来の蛍光体の場合、蛍光体が、波長450nm〜460nmを有する光で照射されるとき、蛍光体から放出される光は、0.617≦x≦0.6699及び0.3263≦y≦0.382のCIE1931の色度座標(x、y)を有し得る。本発明の蛍光体は、455nmの波長を有する光で照射されたとき、幅広い色度座標を有し、蛍光体から放出される光は、0.588≦x≦0.683、及び0.315≦y≦0.409のCIE1931の色度座標(x、y)を有し得る。好ましくは、本発明の蛍光体は、455nmの波長を有する光で照射されたとき、蛍光体から放出される光は、0.670≦x≦0.683、及び0.315≦y≦0.326のCIE1931の色度座標(x、y)を有し得て、それは、CIE1931の色度図において赤色領域に近く、従って、本発明の蛍光体は、より良好な彩度及び輝度特性を有する発光デバイスへ応用するための他の光発光素子及び/又は蛍光体と組み合わせ得る。例えば、本発明の実施例1及び14によると、蛍光体が波長455nmを有する光で照射されるとき、蛍光体から放出される光は、それぞれ(0.674,0.324)及び(0.680,0.317)のCIE1931色度座標(x、y)を有し得て、それは、CIE1931色度図において、実際に、従来技術のそれと比較して赤色領域により近い。ストロンチウムの量が増加するとき、輝度が増加し得るばかりでなく、CIE1931色度座標のy値も増加し得て、結果として、蛍光体により照射された光の色度座標は、色度座標における赤色領域から離れてしまうことになるかもしれない。ユウロピウムを加えると、色度座標のy値は減少し得る。結果として、蛍光体から照射される光の色度座標が、色度座標における赤色領域に接近し得て、そして輝度は減少し得る。しかしながら、従来の蛍光体と比較すると、本発明の蛍光体は、より高いy値とより高い輝度を有し、それは、本発明の蛍光体により放出された光が、赤色領域により近い色度座標を有し、そして、より長波長を有することを意味し、それは、長波長、高彩度、及び高輝度の蛍光体を求める市場要求を満足させることができる。
【0036】
本発明によると、蛍光体が粉末形状で示されるとき、光が粉末の表面上でのみ発生するので、平均直径(D50)が30μm又はそれ以下に減少すると、単位重量当たりの表面積は増加することができるので、従って、好ましい値の輝度を維持することができる。一方、蛍光体を発光素子と組み合わせるとき、発光素子でコートされた蛍光体において、単位面積当たりの密度が増加し得て、そして輝度が、目標値内に維持することができる。しかし、平均直径が1μmより小さい場合、輝度はより悪化するかもしれない。本明細書において、平均直径(D50)は、好ましくは、1μm≦D50≦30μmの範囲内であり;より好ましくは、3μm≦D50≦25μmの範囲内である。
【0037】
組成物分析から得られる、本発明の蛍光体のa、b、d、e、及びf値は、原料のa、b、d、e、及びf値と若干異なるのみであり、然るにそのような差異は、分解し又は結晶格子内へ進入せず、従って水で除去される少量の組成に起因し、又は単に、分析誤差が生じたことによる。特に、e値の偏差は、原料の表面上に吸着された酸素、又は原料を秤量、混合、又はアニーリングするときの酸化による酸素、又はアニーリングの後、蛍光体の表面上に付着する湿気若しくは酸素に基づくかもしれない。また、アニーリング工程が、窒素、及び/又はアンモニアガスで充填された雰囲気中で実施されるとき、酸素原子の窒素原子による置換は、また、e値の若干の偏差を発生させるかもしれない。
【0038】
上記で述べた通り、接着剤を使用することにより、焼結ホルダ全体の気密性が向上することができ、そして、焼結ホルダ内の焼結スペースは、原料を蒸発から防ぎ、そして、焼結スペース内の不純物(例えば、酸素)を含くむ原料を避けるように、完全に、焼結スペースを外部スペースから単離することができ、従って、元素間の所定の含量比を備えた蛍光体を得ることができ、そして、蛍光体の輝度を向上できる。
【0039】
ストロンチウム及びカルシウムは容易に酸化され、そして、蛍光体中のストロンチウム及びカルシウムの含量は、蛍光体それ自身の輝度に影響を与えるかもしれない。本発明において、接着剤を使用することにより、焼結ホルダ全体の気密性は改善することができ、そして、本質的に容易に蒸発する傾向のあるストロンチウム及びカルシウムなどの元素は、焼結ホルダ内に堅く封鎖することができ、そして、他の元素と効率的に組み合わせて、最適化された蛍光体を供給することができる。従って、原料と得られた蛍光体間の化学的組成の差異は、同じシリーズの従来の蛍光体と比較して最小化することができ、そのため製造コストを減少することができ、そして高輝度を有する蛍光体を実現することができ、そして、本発明の目的を達成することができる。また、本発明の蛍光体から放出される光は、同じシリーズの従来技術のものに比べて明らかに高い色度及び輝度を有する。従来の赤色蛍光体は、本発明の蛍光体のそれと同等の色度値を有するかもしれないが、同じシリーズの従来の蛍光体は、まだ、本発明のそれと同じ組成及び輝度を有することはできない。具体的には、輝度及び演色特性の増加を誘導するものは、まだ明確に理解されていないが、本発明の発明者らは、輝度及び演色特性の増加は焼結ホルダの気密性の故であると信じており、それは、焼結ホルダ内への汚染物質の進入を防ぎ、そして原料の蒸発を防ぐからである。結果として、同じシリーズの従来の蛍光体と比較して、僅かの欠陥しかない優れた結晶構造が得られる。一方、本発明によると、蛍光体のエネルギ転換率を増加させることができ、それは、蛍光体に対して、高発光効率及び高輝度を強化し得る。
【0040】
それにより、本発明の蛍光体のユウロピウム(Eu)原子の結晶場は、同じシリーズの従来の蛍光体のそれとは異なる。更にその上、本発明の蛍光体のEu−N間の距離は、同じシリーズの従来の蛍光体のそれより長く、それは、励起状態におけるエネルギレベルの差異を生じさせる得ることになる。例えば、励起光源として青色光を用いる間は、同じシリーズの従来技術のそれと比較して、本発明の蛍光体のより高い輝度、並びにより広範囲の色度値を得るように、蛍光体の輝度を増加させることができる青色光において、効率的な吸収が発生し得る。
【0041】
本発明の蛍光体は、好ましくは、真空蛍光ディスプレ(VFD)、電界放出ディスプレ(FED)、プラズマディスプレパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)、発光ダイオード(LED)などに使用し得る。
【0042】
本発明の発光デバイスは、発光素子を含む発光ユニット;及び上記の該蛍光体を含み、ここで、蛍光体は、励起光以外の光を放出するために、発光素子から放出された光で励起することができる。
【0043】
発光素子は、好ましくは、硫化亜鉛又は窒化ガリウムなどの材料から作られ、より好ましくは、窒化ガリウムから作られた半導体であってもよい。窒化ガリウムは、有機金属化学気相成長法(MOCVD)、又は水素化物気相エピタキシー法(HVPE)により基板上に形成することができる。好ましくは、発光素子は、InαAlβGa1-α-βNで作られ、ここで、0≦α、0≦β、α+β<1である。
【0044】
発光デバイス中の発光素子は、好ましくは、300nm〜550nmの波長、より好ましくは、330nm〜500nmの波長を有する光を放出し得る。
【0045】
図2を参照して、発光ユニット21、蛍光体層22及びカプセル化層23を含む本発明の実施例の発光デバイスが示される。
【0046】
発光ユニット21は、導電性ベース211、凹面212、凹面212に位置し、そして、ベース211と接続する発光素子213、発光素子213と接続する電線214、及び電線214に接続するリード線215を含む。ベース211及びリード線215は、外部電源から発光素子213へ電気を通し、発光素子213は電気を光に転換し、それを放出する。本発明の実施例は、InGaN発光素子213(455nmの波長を有し、CHI MEI LIGHTING TECHNOLOGY CORPから提供された)を、ベース211の凹面212に、導電性銀接着剤(BQ6886、UNINWELL社から提供された)を用いて接着し、次いで、電線214及びリード線215を発光素子213の上部から伸ばし、ここで電線214及びリード線215は電気的に発光素子213と接続する。
【0047】
蛍光層22は、発光素子213を覆う。蛍光層22中の蛍光体221が発光素子213から放出された光により励起されるとき、光は移動し、そして発光素子213から放出される元の光とは異なる、別の光が蛍光体221から放出される。本発明の実施例において、蛍光層22は、発光素子213上で蛍光体221と混合され、次いで、乾燥し、硬化されるポリシロキサン樹脂をコートして作られる。
【0048】
封止層23は、発光ユニット21の基盤211、電線214、リード線215、及び蛍光体層22の部分をカプセル化する。
【0049】
本発明によると、蛍光体は所望の色を備えた発光デバイスを供給するため、独立して使用することができ、又は他の蛍光体と一緒に使用することができる。
【0050】
例えば、本発明の蛍光体は、330nm〜420nmの波長を有する光を放射することができる紫外光(UV)発光素子;420nm〜500nmの波長を有する光を放射できる青色蛍光体(例えば、BaMgAl1017:Eu);及び500nm〜570nmの波長を有する光を放射できる緑色蛍光体(例えば、サイアロン蛍光体)と共に使用することができ、従って、発光デバイスを与える。UV発光素子から放出されたUV光が、これらの蛍光体に放出されるとき、このように、赤色、緑色、青色光が放出され、UV光と混合して、白色光が得られ、従って、発光デバイスは白色光の発光デバイスとなる(例えば、照明器具、発色ダイオードなど)。
【0051】
他の実施例に対して、本発明の蛍光体は、420nm〜500nmの波長を有する光を放射することができる青色発光素子;及び550nm〜600nmの波長を有する光を放射することができる黄色発光素子(例えば、Y3Al512:Ce)と共に使用でき、従って発光デバイスを与える。青色発光素子から放出された青色光が蛍光体に放出されるとき、このように、赤色、黄色光が放出され、そして青色光と混合して、白色光が得られ、従って、発光デバイスは白色光の発光デバイスとなる(例えば、照明器具、発色ダイオードなど)。
【0052】
今、本発明は次の実施例を参照してより詳細に説明されるであろう。これらの実施例は本発明を説明するためにのみ提供され、本発明の範囲、精神を制限するものと解釈すべきではない。
【0053】
[実施例1]
0.277モルのCa32、0.054モルのSr32、1モルのAlN(純度3N)、0.333モルのSi34(純度3N)、及び0.004モルのEu23(純度4N)を、窒素環境下でグローブボックス内の乳鉢で混合し、蛍光体原料を得た。
【0054】
蛍光体原料を、窒化ホウ素で作られた焼結ホルダ内に置いた。その後、窒化ホウ素、窒化ストロンチウム、及び酸化ホウ素を、[窒化ホウ素:窒化ストロンチウム:酸化ホウ素]=10:1:1の比率で混合することにより作られた接着剤を、本体及び閉鎖部材の接触部分の上端に塗布し、そして、この接触部分は本体の上端に対応している。次いで、窒化ホウ素で作られた500gのプレートを、閉鎖部材をプレスするために、閉鎖部材の上部に置いた。その後、焼結ホルダを、高純度の窒素で充填された高温炉に輸送し、窒素ガスの流速を80L/分にして、温度を1800℃に到達するまで、10℃/分の昇温速度で昇温し、そして、1800℃で12時間保持し、一方、炉の操作圧は、焼結ホルダ内の原料を焼結するため、0.1MPaに維持した。焼結後、温度を室温に到達するまで10℃/分の割合で冷却し、その後、本実施例の蛍光体を提供するように、粉砕、ボールミル加工、水で2回洗浄、乾燥、選別などの工程を続けた。
【0055】
蛍光体を、窒素/酸素分析計及び誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP−AES)で分析し、Ca:22.33wt%、Sr:8.96wt%、Al:18.77wt%、Si:19.49wt%、Eu:0.85wt%、N:27.92wt%、O:1.69wt% の組成を得た。従って蛍光体の式は、Ca0.801Sr0.147Al1Si0.9982.8660.152:Eu0.008:として表すことができ、ここで、蛍光体の平均直径(D50)は、7,5μmであった。
【0056】
[実施例2]
Ca32、Sr32、AlN、Si34、Al23、及びEu23の量を変えること以外は、実施例1で用いた同じ工程を蛍光体を提供するために本実施例2で用いた。対応する条件(即ち、量)は、表1に、リストアップした。蛍光体を窒素/酸素分析計及び誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP−AES)で分析し、結果より、蛍光体は、Ca0.625Sr0.2972Al1Si0.9972.8510.171:Eu0.008 として表わすことができた。
【0057】
[実施例3〜15]
Ca32、Sr32、AlN、Si34、Al23、及びEu23の量を変えること以外は、実施例1で用いた同じ工程を蛍光体を提供するために本実施例3〜15で用いた。対応する条件(即ち、量)は、表1に、リストアップした。実施例3〜15のこれらに蛍光体の分析項目は、表2にリストアップした。
【0058】
[比較例1〜7]
Ca32、Sr32、AlN、Si34、及びEu23の量を変え、そして比較例1〜5における焼結工程が非気密条件で進行すること以外は、実施例1で用いた同じ工程を、蛍光体を提供するために、比較例1〜7で用いた。対応する条件(即ち、量)は表1にリストアップした。比較例1〜7のこれらの蛍光体の分析項目は表2にリストアップした。
【0059】
[分析項目]
1.輝度及び色度座標の分析:波長455nmのLED光源及び輝度計は、輝度及び色度座標を測定するために用いた。輝度測定偏差は、±0.3%又はそれ以下であり、色度座標測定偏差は、±0.0005%又はそれ以下であった。サンプルホルダは、測定のため、硫酸バリウム及び実施例1〜15及び比較例1〜7で充填され、無作為に分配された。
【0060】
2.蛍光体の元素組成の分析:
2−1.誘導結合プラズマ原子発光分析計(Jobin YVON; ULTIM-2):
0.1gの実施例1〜15及び比較例1〜7の蛍光体を、それぞれ白金るつぼ内に置き、1gの炭酸ナトリウム(Na2CO3)を加え、蛍光体と混合し、その後、混合物を高温炉に移し、1200℃で溶融した(温度を室温から、2時間で1200℃に到達するまで昇温し、1200℃で5時間保持した)。その後、温度を冷却し、25mlの36wt%塩酸を加え、次いで、300℃に加熱し、溶液が透明になるまで溶融した。溶液を、100mlの体積フラスコに移し、水を標線まで加え、後述の測定を進めた。
【0061】
2−2.窒素/酸素分析計による分析(Horiba; EMGA-620W):
実施例1及び2の蛍光体20mgをスズカプセルに移し、そして測定のためるつぼに置いた。
【0062】
3.平均直径D50の分析:
Beckman Coulter Multisizer-3 カウンタを、コールタ法で分析するために用いた。D50は、所定値より小さいサイズを有する粒子の累積体積が全体積の50%であることを表わす。


【0063】
表2で示す結果より、接着剤の使用により、焼結ホルダは気密性を保持することができ、従って、蛍光体の好ましい組成を得ることができることが理解できる。実施例5の蛍光体及び比較例3のそれと比較して、同じ組成の原料(Ca0.20Sr0.792Al1Si10.0122.995:Eu0.008)を使用したが、得られた蛍光体は異なった組成を有し、しかるに、実施例5の蛍光体は、原料中の含量に近いストロンチウム(Sr)含量を有する(差異は9.7%のみ)。比較例3に関しては、得られた蛍光体と原料間のストロンチウム(Sr)含量の差異は非常に大きかった(58.4%)。更に、実施例5の蛍光体の色度(0.634、0.364)及び輝度(158ユニット)の値は、比較例3の色度(0.640、0.355)及び輝度(79ユニット)とは異なった。同じ色度値に基づいて、本発明の蛍光体は、同じシリーズの従来技術のその輝度より高い輝度を有する。例えば、実施例3及び比較例2によると、それらは、同じ色度値(0.654,0.344±0.002)を有するが、輝度はそれぞれ114ユニット及び74ユニットであった。従って、本発明の蛍光体は、同じシリーズの従来技術のものに比べてより高い輝度を有し、そして高輝度を確保するための発光デバイスに応用することができることが分かった。
【0064】
従って、本発明及び事前の方法において、同じ組成の原料を用いても、本発明で作られた蛍光体から放出される光は、同じシリーズの従来技術からのものと比較して明らかに高い色度及び輝度を有する。従来の蛍光体は、本発明の蛍光体と同じ色度値を有していても、従来の蛍光体は、まだ、本発明のものと同じ実組成及び輝度を有することができない。本発明の実施例14の蛍光体は、高x値(0.680)、低y値(0.317)、及び高輝度を有する光を放出することができ、従って、蛍光体に対する高彩度及び高輝度の市場の要求を満足させることできる。実施例1及び14によると、それぞれ(0.674、0.324)及び(0.680、0.317)の色度座標を有する蛍光体によって放出される光は、同じシリーズの従来の蛍光体によっては得ることができない。同様に、比較例6及び7の評価結果から、Eu(ユウロピウム)などの元素は、高輝度を得るためには、本発明の適切な範囲内にうまく調整されるべきであることが判明した。
【0065】
上記で述べた通り、接着剤を使用することにより、全焼結ホルダの気密性を改善することができ、本質的に容易に蒸発する傾向にあるストロンチウム及びカルシウムなどの元素は、焼結ホルダ内にしっかりと封鎖することができ、かつ他の原子と効率的に組み合わせることができ、最適化蛍光体を提供することができる。従って、原料と得られた蛍光体間の化学的組成の差異は最小化することができ、それにより製造コストを低減化し、高輝度を有する蛍光体が実現できる。即ち、本発明の蛍光体により放出される光の色度座標及び高輝度は、同じシリーズの従来のいかなる蛍光体によっても容易に達成することはできない。本発明の蛍光体は、白色光の演色特性、彩度を増加させるために使用することができ、従って、様々な用途に適用することができ、そして、本発明の目的は達成することができる。
【0066】
本発明はその好ましい実施態様との関連で説明したが、多くの他の可能な改質及び変更は、以下に請求される通り、本発明の精神及び範囲から離れることなく、実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法であって:
(A)本体と閉鎖部材を含む焼結ホルダを提供し、ここで、本体は焼結スペースを有し、そして閉鎖部材は焼結スペースを閉鎖するために使用され;
(B)蛍光体の原料を本体の焼結スペース内に置き;
(C)接着剤を本体と閉鎖部材の少なくとも1つにコートし;及び
(D)原料を含む焼結ホルダを、非酸化性ガス雰囲気下で加熱して蛍光体を得る;
工程を含む方法。
【請求項2】
工程(D)において、接着剤がコンパクトな構造を形成するために硬化される請求項1に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項3】
工程(D)において、接着剤が、焼結スペースを気密にするために本体及び閉鎖部材をシールするように使われる請求項1に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項4】
接着剤が、窒化ホウ素、並びにアルカリ土類金属窒化物及び酸化ホウ素から成るグループから選択される少なくとも1つを含む請求項1に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項5】
窒化ホウ素の含量が、接着剤1モル毎に、0.5モル又はそれ以上の窒化ホウ素を含有する請求項4に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項6】
工程(D)において、加熱が0.5MPa又はそれ以下の圧力下で実施される請求項1に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項7】
工程(D)において、加熱温度が1200℃〜2200℃の範囲である請求項1に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項8】
工程(D)において、昇温速度が3℃/分〜15℃/分の範囲内である請求項1に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項9】
工程(D)において、加熱の期間が1時間〜12時間の範囲内である請求項1に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項10】
原料がアルミニウム源、ケイ素源、ユウロピウム源、並びにカルシウム源及びストロンチウム源の内少なくとも1つを含む請求項1に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項11】
アルミニウム源、ケイ素源、ユウロピウム源、カルシウム源、及びストロンチウム源が、それぞれ、アルミニウムの窒化物、ケイ素の窒化物、ユウロピウムの酸化物、カルシウムの窒化物、及びストロンチウムの窒化物である請求項10に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項12】
カルシウム源、ストロンチウム源、アルミニウム源、ケイ素源、及びユウロピウム源中のカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、及びユウロピウム間のモル比が、[カルシウム:ストロンチウム:アルミニウム:ケイ素:ユウロピウム]=[(0.01〜0.999):(0〜0.99):(0.95〜1): 1 : (0.002〜0.02)]である請求項10に記載の精密に制御された元素組成を有する蛍光体を提供する方法。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の方法のいずれか1項により作られた蛍光体。
【請求項14】
[式1]で表され;
[式1]:CaaSrbAlcSidef:Eug
ここで、0≦a<1、0≦b<1、c=1、0.8≦d≦1.2、0≦e≦0.5、2.5≦f≦3.1、0.002≦g≦0.020、a及びbは、同時に共に0ではない;及び
455nmの波長光で励起される蛍光体から放出される光のCIE1931色度座標(x、y)が、以下の式:
x=[(−0.1059b3+0.068b2−0.06b)+(2152.8g3−309.2g2+8.2943g)+0.6324]±0.01;
y=[(0.1295b3−0.0968b2+0.0702b)+(−3299.2g3+311.08g2−7.9266g)+0.3621]±0.01;
を満足する;
蛍光体。
【請求項15】
1ユニットの硫酸バリウムに波長455nmの光を放射することにより反射される光を基準にして、蛍光体の対応する輝度が55ユニットから235ユニットの範囲内である請求項14に記載の蛍光体。
【請求項16】
蛍光体から放出される光のCIE1931色度座標(x、y)が、0.670≦x≦0.683、0.315≦y≦0.326を満足する請求項14に記載の蛍光体。
【請求項17】
0.1≦b≦0.95である請求項14に記載の蛍光体。
【請求項18】
0.005≦g≦0.016である請求項14に記載の蛍光体。
【請求項19】
発光素子を含む発光ユニット、及び請求項14に記載の蛍光体を含む発光デバイス。
【請求項20】
発光素子から放出される光の波長が、300nm〜500nmの範囲である請求項19に記載の発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−77300(P2012−77300A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210220(P2011−210220)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(511233544)チー メイ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】