説明

精紡機を制御するための方法

【課題】紡出終了過程の間でも高い運転確実性および生産性によりすぐれているような、高い自動化度を有する方法を提供する。
【解決手段】機械制御部21またはオペレータによって入力ユニットを介して多数のコップ交換プロセスプログラムから、紡糸された原料および/または紡出された糸タイプもしくは糸種類および/または紡出された糸番手および/または糸撚りおよび/または機械構成に関連して、妥当なコップ交換プロセスプログラム26が選び出され、該コップ交換プロセスプログラムが、紡出プログラム23により形成された糸に比べてコップ交換プロセス時の糸特性の意図的な変化を実施し、これにより、紡出終了プロセス、ボビン交換過程および/または後続の紡出開始プロセスのために最適に適合された糸特性を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精紡機、特にリング精紡機であって、ドラフト装置と、糸ボビンを収容するためのスピンドルと、リングフレーム(リングレール)および/またはスピンドルレールとが設けられていて、ドラフト装置とスピンドルとリングフレームおよび/またはスピンドルレールとが、所属の駆動装置を介して機械制御部により互いに調整されて(koordiniert.)運転状態に保持されるようになっており、さらに糸のための固持装置が設けられている形式の精紡機を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような形式の精紡機は、欧州特許出願公開第0462467号明細書に基づき公知である。固持装置は、コップの下方でスピンドルに取り付けられたクランプ装置であり、このクランプ装置は、アンダワインディングのために比較的短い糸長さで十分となることを可能にしている。
【0003】
アンダワインディング装置であれ、クランプ装置であれ、糸のための固持装置を備えたリング精紡機では、精紡機の個々の運転パラメータが互いに正確に調和されなければならない。支障のないスムーズな運転を保証するためには、紡出終了(Abspinnen)時の糸特性、コップ交換プロセスと関連した糸特性および/または紡出開始(Anspinnen)時の糸特性に意図的に影響を与えることが必要となり得る。一方では、紡出終了時、コップ交換過程時および紡出開始時における糸切れが回避されることが望まれる。他方では、糸はコップ交換過程のために、場合によっては切断装置、固持装置に設けられたティアエッジ等のような相応する補助手段の使用下に、裂断可能もしくは切断可能であることが望まれる。このことは、特に高い強度または高い伸びを有する糸に云える。この場合、たとえば裂断強度または延びは、糸撚りおよび糸番手を変えることによって意図的に変えられなければならない。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10037513号明細書に基づき、紡出終了過程の際にスピンドルもしくはドラフト装置の回転数を個別に制御し、これにより糸の番手および糸撚りを変えて、アンダワインディングもしくはクランプに課せられた要件に適合させることが知られている。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006003941号明細書には、紡出プログラムに影響を与えることが記載されている。この場合、紡出プログラムは、目下の生産条件を考慮して、一時的にスライバまたは糸の撚りおよび/またはドラフトが、高い運転確実性、特に中断のない生産を達成するための標準の紡出プログラムによる設定から偏倚して変えられて調節されるように変更される。
【0006】
しかし、現在、それ自体極めて重要となる紡出終了プロセスは、相変わらず紡績工場オペレータに委ねられている。この場合、紡績工場オペレータは最適な紡出終了過程のための相応する調節を自ら行わなければならない。このためには、オペレータが広範囲にわたる知識と豊富な経験とを必要とするが、しかし種々の紡出プログラムのためには紡出終了プロセスのための種々異なる調節が行われなければならない。すなわち、たとえば純然たる木綿が加工されるのか、または木綿と化学繊維とから成る混合物が加工されるのかによって、大きな相違が生じる。さらに、紡出プログラムが細糸を規定しているのか、粗糸を規定しているのか、標準の糸を規定しているのか、またはそれどころか意匠糸(エフェクトヤーン)を規定しているのかも重要となる。さらに、オペレータは目下の機械調節に関する知識をも有していなければならず、このことは特に、精紡機の配置構成が考慮されている運転領域の限界範囲にある紡出プログラムを用いてオペレータが作業している場合に云える。このことは、紡出終了プロセスに合わせて紡出パラメータが、精紡機の構成が最初は考慮していなかった、もはや許容し得ない範囲に位置するように変えられることを阻止するために必要となる。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0462467号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10037513号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006003941号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた形式の精紡機を制御するための方法を改良して、上で説明した不都合を取り除き、かつ紡出終了過程の間でも高い運転確実性および生産性、すなわちできるだけ少ない糸切れによりすぐれているような、高い自動化度を有する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために本発明の方法では、機械制御部に多数のコップ交換プロセスプログラムがファイルされていて、機械制御部またはオペレータによって入力ユニットを介して多数のコップ交換プロセスプログラムから:
−紡糸された原料および/または
−紡出された糸タイプもしくは糸種類および/または
−紡出された糸番手(Ne,N,tex)および/または
−糸撚り(α)および/または
−機械コンフィギュレーションもしくは機械構成(Maschinenkonfiguration)
に関連して、妥当なコップ交換プロセスプログラムが選び出され、この場合、該コップ交換プロセスプログラムが、紡出プログラムにより形成された糸に比べてコップ交換プロセス時の糸特性の意図的な変化を実施し、これにより、紡出終了プロセス、ボビン交換過程および/または後続の紡出開始プロセスのために最適に適合された糸特性、特に糸強度を達成するようにした。
【発明の効果】
【0009】
コップ交換プロセスプログラムは有利にはコップ交換と関連して形成された紡出終了プログラムおよび/または紡出開始プログラムを有している。コップ交換プロセスプログラムは上記両プログラムのうちの一方のプログラムだけを有しているか、または両プログラムを一緒に有しているか、もしくは両プログラムから成っていてよい。コップ交換プロセスは紡出終了プロセス、ボビン交換過程および/または後続の紡出開始プロセスを有している。
【0010】
コップ交換プロセスプログラムは、ドイツ連邦共和国特許出願公告第19516091号明細書に記載されているような、いわゆる先行プログラム(Vorlauf-Programm)を有していてもよい。このような先行プログラムはコップ完成後に紡出開始までの時間でリング精紡機を制御する。この先行プログラムによって、糸はアンダワインディングの形でスピンドルに巻き付けられるか、またはクランプされて、糸ガイド装置によってスピンドルの周面で紡出リングに設けられたトラベラによって保持される。この方法は、新たに装着された巻き管に新しい巻き体を製造するためにスピンドルを迅速に始動させる前に、スピンドルを低速運転でスピンドルの標準の回転方向に回転させることを特徴としている。この場合、スピンドルの回転運動の速度およびこの過程の時間は、紡出リング上のトラベラがスピンドルの回転方向でスピンドルの周面における糸の乗上げ点の背後に位置決めされるように設定される。この場合、トラベラは遅くとも低速運転の終了と共に、新しい巻き管への巻成体形成のための後続の始動のために必要となる斜め位置へもたらされる。この方法に関する別の技術的な詳細については、上記ドイツ連邦共和国特許出願公告明細書に記載されている。
【0011】
先行プログラムには、同じく糸パラメータ、たとえば糸番手、繊維の原料または糸種を取り込むことができる。先行プログラムは紡出終了プログラムおよび/または紡出開始プログラムと組み合わされているか、または別個のプログラムとして形成されていてよい。
【0012】
コップ交換プロセスプログラムの選び出しは、機械制御部が、メモリされたプログラムモジュールから1つのコップ交換プロセスプログラムを自動的にまとめ上げることをも意味する。このことは、たとえばセレクトモジュールもしくは選択モジュールによって行なわれ得る。
【0013】
紡出終了プロセスは、糸ボビン、特にコップの巻成終了時に、特にリングレールが糸ボビンにおけるその最も上側の巻成個所から糸ボビン下方のアンダワインディング位置にまで降下させられる時点に、オーバワインディングおよび/またはバックワインディングの形成によって導入される。
【0014】
最適の糸強度は、紡出終了プロセス時のバックワインディング過程およびアンダワインディング過程ならびに糸裂断過程または糸切断過程およびボビン交換時のドッフィングならびに後続の紡出開始プロセスのために特に重要となる。
【0015】
本発明の有利な実施態様では、機械制御部が、該機械制御部にメモリされた多数のコップ交換プロセスプログラムから:
−紡糸された原料および/または
−紡出された糸タイプもしくは糸種類および/または
−紡出された糸番手(Ne,N,tex)および/または
−糸撚り(α)および/または
−機械構成
に関連して、セレクトルーチンもしくは選択ルーチンを介して、妥当なコップ交換プロセスプログラムを自動的に選び出して、所定の時点で該コップ交換プロセスプログラムを自動的に導入する。
【0016】
紡出プログラムは機械制御部に既にファイルされていると有利である。しかし、1つまたは複数の紡出プログラムを紡出プロセスの直前に機械制御部内へ読み込むこともできる。使用者は入力ユニットを介して所望の紡出プログラムを決定する。機械制御部はその後に、機械制御部にメモリされた多数のコップ交換プロセスプログラムから、選び出された紡出プログラムおよび機械構成ならびに場合によっては別の判断基準に関連して、同じく有利には機械制御部にファイルされている選び出しルーチンもしくはセレクションルーチンを介して妥当なコップ交換プロセスプログラムを選び出し、該コップ交換プロセスプログラムを所定の時点で自動的に実行する。
【0017】
また、オペレータはこの選び出しをマニュアル式に行うこともできる。機械制御部はオペレータにさらに、最適なコップ交換プロセスプログラムのうちの1つまたはその選び出しを提案することもできる。オペレータはこの提案を確認することができるか、もしくは選び出しを受け容れるか、または拒否することができる。
【0018】
オペレータは、たとえば別のコップ交換プロセスプログラムを選択することもできるし、あるいはまたオペレータは提案されたプログラムの基礎となる特定のパラメータ、たとえば糸番手または糸撚りを個々に変えることができる。すなわち、オペレータは、特定の理由に基づいて設定からの偏倚が望まれる場合に、たとえば紡出終了時に所望される糸番手および/または糸撚りを自身で入力することができる。
【0019】
機械制御部はその場合、所定の時点に、選び出されたコップ交換プロセスプログラムを自動的に導入する。さらに、機械制御部は、たとえば精紡機による要求に応えることにより、オペレータがコップ交換プロセスをマニュアル式に導入しなければならないか、もしくはコップ交換プロセスプログラムをマニュアル式に呼び出さなければならないように構成されていてもよい。
【0020】
また、オペレータが紡出プログラムのパラメータを入力ユニットを介して前もってマニュアル式に入力して、機械制御部にファイルすることも可能である。紡出プログラムを、入力装置を介して前もって電子的に(モバイル式の)データ担体によって読み込んで、機械制御部内にファイルすることもできる。
【0021】
紡出プログラムは多数のパラメータを有することができる。すなわち、たとえば糸番手(Ne,N,tex)、糸タイプ、たとえば平滑な糸、エフェクトヤーンもしくは意匠糸、たとえばフレームヤーンもしくはフレークヤーン(Flammgarn)、ノップヤーン(Noppengarn)、クレープヤーン(Kreppgarn)等、糸撚り(α)を有することができる。別のパラメータは使用される原料、たとえば木綿のような天然繊維、化学繊維、無機繊維、混合繊維等によって規定されていてよい。さらに、使用される巻き管長さおよび巻き管直径、所望のコップサイズもしくはその直径、リングタイプおよび/またはリング直径も紡出パラメータとして規定されていてよい。
【0022】
機械構成の内容は、たとえばリング直径、トラベラ重量、ドラフト装置ジオメトリ(幾何学的形状)またはローラ回転数の上限値および下限値を規定するドラフト装置変速比を包含している。コップ交換プロセスプログラムを選び出す際に機械編成もしくは機械構成を考慮することにより、たとえばドラフト装置ローラが、使用されたドラフト装置変速比により規定された回転数領域でのみ運転され、そしてドラフト装置ローラの回転数が、コップ交換プロセス、特に紡出終了プロセスにおけるデリバリまたは全ドラフトもしくはトータルドラフトの変更によって、許容され得ない回転数領域へシフトされないようになることが確保される。
【0023】
機械編成もしくは機械構成の内容は、さらに満管コップを引き渡すための装置の種類をも包含していてよい。すなわち、たとえばバックワインディングの形成時には、スピンドルから引き抜かれた満管コップがコップ捕集装置を介して捕集容器に引き渡されるのか、またはコップが、リンク装置を介していわゆるペグトレイ(Pegtrays)上で直接に巻取り機に供給されるのかが重要となり得る。精紡機がコップ捕集装置を有している場合、多数のバックワインディングを、より小さな巻付け角度で形成し、これによって捕集装置内に保管されたコップのバックワインディング同士が相互摩擦によって剥離されなくなるようにすることが推奨される。それに対してリンク装置の場合には、コップが搬送トレイを介して個々に巻取りステーションにまで案内される。この場合、より急峻な巻付け角度を有する少数のバックワインディングで十分となる。なぜならば、コップの表面が、著しい機械的負荷にさらされないからである。
【0024】
選択された紡出プログラムから出発して、機械制御部によって演算ユニットを用いて、1つまたは複数のドラフト装置駆動装置、1つまたは複数のスピンドル駆動装置およびリングフレーム駆動装置のための作動プログラムが算出され、場合によっては、たとえば機械制御部内のメモリにファイルされるか、または駆動装置もしくは変換器に設けられたメモリにファイルされる。
【0025】
同様のことは、機械制御部による糸体巻成の終了時におけるコップ交換過程もしくは紡出終了過程のための1つまたは複数のドラフト装置駆動装置、1つまたは複数のスピンドル駆動装置およびリングフレーム駆動装置の作動プログラムの算出のためのベースを置くコップ交換プロセスプログラムにも云える。これらの作動プログラムはとりわけコップ交換プロセス、特に紡出終了段階における、製造された糸番手、糸タイプおよび糸撚りを決定する。
【0026】
製造したい糸に応じて、コップ交換プロセスにおける作動プログラムの算出のために種々異なるデータが生ぜしめられる。コップ交換プロセスプログラムは作動プログラムのデータを計算し、この場合、繊維テクノロジ的な限界値の維持に基づいて、糸体形成の最後の段階において、もしくはコップ交換プロセスの間、特に紡出終了の間、ドッフィングもしくはボビン交換の間および新しい糸ボビンの新たな紡出開始時において、できるだけ少ない糸切れしか生じなくなるようにデータを計算する。さらに、コップ交換プロセスプログラムもしくは紡出終了プログラムの働きにより、糸特性は、糸が最適にクランプされるか、もしくはアンダワインディングされ、かつボビン交換時に分離されるか、もしくは切断され得るように変更される。
【0027】
リング精紡機では、たとえばNe10〜100の範囲の糸番手を使用することができる。この糸番手範囲は、たとえばNe10〜20、Ne21〜50、Ne51〜70およびNe71〜100の部分範囲に分割され得る。これらの糸番手範囲のそれぞれに対して、1つまたは複数のコップ交換プロセスプログラムがファイルされていてよく、このコップ交換プロセスプログラムは前記糸番手範囲に合わせて調整されている。すなわち、たとえば特定の番手範囲、たとえばNe21〜50のコップ交換プロセスプログラムのためには、平均糸番手、たとえばNe35を基礎とすることができる。すなわち、コップ交換プロセスプログラムは前記平均番手、たとえばNe35の糸に合わせて設定されている。上で挙げた番手範囲からの糸番手は前記平均番手からそれほど大きく偏倚していないので、平均番手に合わせて調整されたコップ交換プロセスプログラムは前記番手範囲からの別の糸にも問題なく使用され得る。こうして、各糸番手のためにそれぞれ別個の専用のコップ交換プロセスプログラムを製作しなくて済むようになる。この手法は糸撚りについても適用され得る。
【0028】
さらに原料、糸撚り、糸タイプならびに機械変更のような紡出パラメータが考慮されると、最終的には唯一つの適当なコップ交換プロセスプログラムが残る。このコップ交換プロセスプログラムは機械制御部によって前記選び出し判断基準に基づいてセレクションルーチンにより求められる。このセレクションルーチンはソフトウェアプログラムであってよく、このソフトウェアプログラムには、前に挙げたパラメータを基礎として最良に適したコップ交換プロセスプログラムをセレクションするための相応するアルゴリズムが組み込まれている。
【0029】
番手範囲Ne10〜20のために規定されているコップ交換プロセスプログラム、つまりむしろ粗い糸のために規定されているコップ交換プロセスプログラムは、とりわけトータルドラフトの増大による糸番手の増大および/または糸撚りの適合によりすぐれており、これにより強力な糸の裂断が可能となる。番手範囲Ne71〜100のために規定されているコップ交換プロセスプログラム、つまりむしろ細い糸のために規定されているコップ交換プロセスプログラムは、紡出終了段階において、コップ交換段階におけるトータルドラフトの減少によって糸番手の低減を有しており、これにより細い糸の過度に迅速な裂断が阻止される。
【0030】
すなわち、コップ交換プロセスプログラムはコップ交換段階における糸特性の変更、特に紡出終了段階における糸特性の変更を規定している。この変更は有利には糸番手の変更および/または糸撚りの変更によって目標とされる。糸番手の変更は、たとえばトータルドラフトの変更によって達成される。糸番手の変更は糸デリバリの変更により達成され得る。糸デリバリはドラフトと同様にドラフト装置ローラの回転数により制御される。
【0031】
すなわち、糸の撚りもしくは撚り係数(α)は特定の時点からコップ交換プロセスプログラムもしくは紡出プログラムにより、糸ボビンの引抜き時における糸の挿入、クランプまたは裂断もしくは切断のためのクランプ装置の範囲およびアンダワインディングクラウンの範囲においてできるだけ好都合な条件が得られるように変更され得る。糸はこの場合、該糸が最適に裂断可能もしくは切断可能となるようにするために過度に強力な撚りを有しないことが望まれる。他方において、紡出終了時およびボビン交換後の新たな紡出開始時に糸が裂断するという望ましくない事態が生じないようにするためには、糸が、過度に弱く形成された撚りを有しないことも望まれる。
【0032】
すなわち、紡出終了段階において糸の強度が、上で挙げた手段によって減じられ、コップ交換後の紡出開始段階において糸強度が、ドラフトおよび/または撚りに関する相応する手段により再び高められるようになっている。
【0033】
コップ交換プロセスプログラムによる相応する制御値は、有利には実際のコップ交換プロセスの前にドラフト装置、スピンドルおよびリングレール等の駆動装置もしくは所属の変換器へ伝送されるので、遅くともバックワインディングの時点には、またはバックワインディング時には、所望のコップ交換特性、特に所望の紡出終了特性を有する糸が製造される。このことは、上で挙げた駆動装置の変換器の相応するパラメータ化により行われる。この場合、駆動装置には、コップ交換プロセスのために必要となる制御値がインプットされる。これらの制御値は、たとえばドラフト装置の場合には、相応してドラフト装置ローラの回転数に作用し、ひいてはデリバリおよびトータルドラフトに作用する。
【0034】
すなわち、コップ交換プロセスプログラムは有利には糸ボビンの巻成の終了時におけるバックワインディングの形成の開始前または開始時に機械制御部によってスタートされる。しかし、バックワインディング形成の開始後にコップ交換プロセスプログラムを呼び出すこともできる。すなわち、スピンドル、ドラフト装置およびリングフレームもしくはスピンドルレールを備えた紡出システムもしくは所属の駆動装置は、有利にはバックワインディングの形成開始と共に、またはその直前に、もしくはリングフレームが位置「糸ボビン満管」(バックワインディングの形成前)に到達したときに、コップ交換パラメータ化によって作動することを開始する。
【0035】
固持装置はアンダワインディング装置および/またはクランプ装置を有していてよい。アンダワインディング装置の場合、糸は特に粗い表面に巻き付けられて、クランプなしに保持される。クランプ装置の場合には、糸が締付け固定され、この場合、糸はクランプ装置においてもアンダワインディング、特に部分巻付けとして存在することができる。
【0036】
糸のための固持装置は有利には、すなわち特にリング精紡機においては、糸ボビンよりも下方の位置でスピンドルに配置されている。紡出終了プロセスの間、リングレールはその最上位の巻成点からバックワインディングを形成しながら下方へ向かって固持装置の高さにまで移動させられる。リングフレームの下方運動時に、ドラフト装置におけるデリバリ速度と、スピンドルの回転数とは、所望の糸撚りおよび糸番手がさしあたり維持されかつ糸ボビンに巻き付けられた糸の軌道ができるだけ急峻となるように互いに調整されて減じられる。しかし、コップ交換プロセスプログラムはバックワインディング形成時のドラフト装置のデリバリもしくはドラフトを、変えられた糸番手を有する糸が生じるように変更することができる。これにより、アンダワインディング過程の前、アンダワインディング過程時およびアンダワインディング過程の後で、特に糸ボビンの引抜き時、ひいては糸の裂断時ならびにドッフィング後の紡出プロセスの再開始時に僅かな妨害因子しか生ぜしめられなくなる。
【0037】
リングフレームはスピンドルの1回〜複数回の回転の間、固持装置における最下位の位置に留まる。クランプ装置の場合、リングフレームは有利には、糸が巻取り範囲における周長の1/2〜3/4の長さにわたり、もしくは周長よりも小さな長さにわたり巻き付けられてクランプされるまで留まる。引き続き、リングフレームは再び固持装置の上方の位置にまで持ち上げられ、その後にまずドラフト装置もしくはドラフト装置駆動装置が、次いでスピンドル駆動装置がそれぞれ停止状態となるか、または両駆動装置が同時に停止状態となる。所定の糸長さを後供給するために、ドラフト装置はアンダワインディングの形成後になお短い時間、運転状態に保持され得る。
【0038】
本発明の特別な実施態様では、コップ交換プロセスプログラムが、オーバワインディングとアンダワインディングとの間での糸ボビンの完成後のリングフレームの降下速度を、スピンドルの回転数および/またはドラフト装置における供給速度もしくはドラフト速度に対して、糸ボビンに0.5〜5周のバックワインディング、つまり糸の0.5〜5周の巻掛けが位置するように変える。コップ交換プロセスプログラムもしくは紡出プログラムはさらに、ドラフト装置駆動装置の停止後にスピンドルをなお短い時間引き続き回転させるか、またはドラフト装置と同時に停止させることができる。
【0039】
スピンドルに沿って摺動可能なクランプ装置の上方には、アンダワインディングクラウン(Unterwindekrone)もしくは切断リングがスピンドルに位置固定に固定されている。この場合、この配置は、糸のためのクランプ位置でクランプ装置がアンダワインディングクラウンに接触するように形成されている。クランプ装置はスピンドルの下側部分からばねによって上方へ押圧されて、別個の操作装置または直接にリングフレームによって該リングフレームの運動時に最も低い位置に向かって下方へ、つまり開放位置へ移動され得る。
【0040】
比較的粗い糸の製造時では、コップ交換プロセスプログラムがドラフト装置に、特にトータルドラフトの増大によって影響を与えるようになっており、この場合、紡出終了段階において、より細い糸が製造される。供給された繊維材料の、より高いドラフトは、たとえばドラフト装置の進出ローラの回転数の増大および/またはドラフト装置の進入ローラの回転数の低減によって達成される。
【0041】
相応して、比較的細い糸の製造時では、有利には紡出終了段階における、供給された繊維材料の、より小さなトータルドラフトが、ドラフト装置の進出ローラの回転数の低減および/またはドラフト装置の進入ローラの回転数の増大によって達成される。
【0042】
撚り係数αを有する規定の糸番手を有する糸を製造する場合、コップ交換プロセスプログラムは撚りを、糸の裂断負荷が最も好都合な値に達する別の撚り係数αにまで高めるか、もしくは低下させることができる。
【0043】
コップ交換プロセスプログラムは、たとえばバックワインディングの形成またはアンダワインディングの形成の間、トリコットヤーン(Trikotgarn)の製造時ではスライバに付加撚りを付与することができ、そしてクレープヤーンの製造時では糸撚りを低下させることができる。
【0044】
本発明の特別な実施態様では、コップ交換プロセスプログラムが、バックワインディングの形成、アンダワインディングの形成の間および/または始動の間、
【数1】

の条件を維持する。ただしT=撚り数、m=長さ単位、α=撚り係数、N=糸番手、N=スピンドル回転数(r.p.m.)、L=供給量もしくはデリバリ(メートル/分)であり、デリバリLの経過が時間またはスピンドル回転数Nとの関係で規定されており、スピンドル回転数Nが、バックワインディング過程もしくはアンダワインディング過程の際にこれに関連して算出されるか、もしくはデリバリLがこれに関連して算出される。
【0045】
請求項1から請求項15までのいずれか1項記載の方法では、糸ボビンの巻成終了時におけるバックワインディングの形成時に、時間との関係で理論的に算出されたスピンドル回転数Nから偏倚して、減じられたか、または高められた回転数N(t)で運転されるようにコップ交換プロセスプログラムが機械制御部を運転するようになっている。
【0046】
請求項1から請求項15までのいずれか1項記載の方法または上で挙げた実施態様では、コップ交換プロセスプログラムが、特にトリコットヤーンの製造時では、バックワインディングおよび/またはアンダワインディングの形成前または形成時にスライバに付加撚りを付与するようになっている。
【0047】
請求項1から請求項15までのいずれか1項記載の方法または上で挙げた実施態様では、コップ交換プロセスプログラムが、特にクレープヤーンまたはコアヤーンの製造時では、バックワインディングおよび/またはアンダワインディングの形成前または形成時に糸撚りを減少させるようになっている。
【0048】
請求項1から請求項15までのいずれか1項記載の方法または上で挙げた実施態様では、意匠糸または精紡撚り糸(Siro;サイロ)の製造時に、コップ交換プロセスプログラムはバックワインディングおよび/またはアンダワインディングの形成前または形成時に、紡出終了段階および/または紡出開始段階においてエフェクト(飾り)なしの平滑な糸が生じるようにドラフト装置の回転数もしくはデリバリLを一定に保持することができる。
【0049】
請求項1から請求項15までのいずれか1項記載の方法または上で挙げた実施態様では、コップ交換プロセスプログラムは、オーバワインディングとアンダワインディングとの間での糸ボビンの完成後のリングフレームの降下速度を、スピンドルの回転数および/またはドラフト装置における供給速度もしくはデリバリ速度に対して相関して、糸ボビンに糸の1周よりも少ない巻き、特に0.5〜0.75周のバックワインディングが位置するように変えることができる。
【0050】
請求項1から請求項15までのいずれか1項記載の方法または上で挙げた実施態様では、コップ交換プロセスプログラムはドラフト装置駆動装置の停止後になお短い時間、スピンドルをさらに回転させることができるか、またはドラフト装置と同時に停止させることができる。
【0051】
さらに、糸ボビンの巻成終了時におけるバックワインディングの形成時に、コップ交換プロセスプログラムは、時間との関係で理論的に算出されたスピンドル回転数Nから偏倚して、減じられたか、もしくは高められたスピンドル回転数N(t)で作動が行われるように機械制御部を運転することができる。
【0052】
意匠糸、たとえばフレークヤーンまたはノップヤーン(Noppengarn)の製造時では、コップ交換プロセスプログラムは遅くともバックワインディングの形成時点からドラフト装置の回転数もしくはデリバリLを一定に保持することが望ましい。これにより、コップ交換段階、特に紡出終了段階、アンダワインディング段階およびクランプ段階において、飾りなしの平滑な糸が生じる。
【0053】
コップ交換プロセスプログラムはコップ交換段階の間、特に紡出終了段階および紡出開始段階の間、糸番手および回転数を変化させるためだけに個々の駆動装置の作動プログラムに影響を与えるのではなく、紡出終了プロセスおよび紡出開始プロセスの、一部は上で既に説明した別の観点を作動プログラムに取り入れることもできる。このような観点とは、紡出開始段階および/または紡出開始段階における糸バルーニングの維持もしくは規定の糸テンションの維持、紡出開始プロセスおよび/または紡出開始プロセスの間の糸番手または糸撚りの変更の時点(糸特性は紡出開始プロセスおよび/または紡出開始プロセスの種々の段階、たとえばオーバワインディング、バックワインディング、アンダワインディングにわたり、何度も変更され得る)またはバックワインディング範囲に施された糸巻きの急峻度であってよい。前記ドイツ連邦共和国特許出願公開第10037513号明細書に詳しく説明されている、コップ交換プロセス中の全ての過程を、コップ交換プロセスプログラムに取り込むことができる。したがって、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10037513号明細書の内容は、本願においてこれに関して組み込まれた要素を成している。
【0054】
本発明による方法は、有利にはリング精紡機において使用される。しかし、本発明による方法は、ファンネル精紡機(Trichterspinnmaschine)、キャップ精紡機(Glockenspinnmaschine)またはループ精紡機(Schlaufenspinnmaschine)においても使用され得る。糸の供給は運動させられるリングレールの代わりに、運動させられるスピンドルレールを用いて行われる。リングレールとスピンドルレールとの組み合わされた運動も考えられる。相応して付加的な適合を用いて、本発明による方法はポット精紡法(Topfspinnverfahren)のためにも適している。スピンドルもしくはドラフト装置ローラはそれぞれ個々にまたは1つの共通の駆動装置によって、場合によっては変速伝動装置によって駆動され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0056】
リングレールもしくはリングフレーム5と、スピンドル13と、ドラフト装置3に設けられたドラフト装置ローラとの互いに調整された運動のためには、当該駆動装置、たとえばドラフト装置駆動装置4、リングフレーム駆動装置7およびスピンドル駆動装置12が、図1に図示されているように機械制御部2に接続されている。ドラフト装置3は進入ローラ対15と、中間ローラ対16と、進出ローラ対17とを有している。
【0057】
コップ9の完成後に、設定に応じて、コップ9の上側部分にまず「オーバワインディング(Oberwindung)」が施与され、引き続きリングフレーム5の降下時に「バックワインディング(Hinterwinding)」が施与され、最後にコップ9の下方でスピンドル13に「アンダワインディング(Unterwindung)」が施与される。その後に、ドッフィング、つまり精紡機における1つもしくは多数のコップの引抜きが行われる。クラシカルなアンダワインディング、つまりスピンドルにおけるアンダワインディング範囲に1周〜数周の糸巻掛けが行われるアンダワインディングの代わりに、スピンドル周面の一部に糸区分を当て付けて、クランプ装置、特にクランプクラウン(Klemmkrone)にクランプすることもできる。アンダワインディングにより開始されるこの段階は、クリティカルであるとみなされ得る。なぜならば、最適の条件が提供されていないと、標準の紡出運転から精紡機の停止状態への移行時に、ドッフィングおよびこれに続く精紡機のスタートの前にたいていの糸切れが生じるか、もしくはリングトラベラ6からの糸14の抜けのような故障が発生する恐れがあるからである。コップ形成過程の最後の段階においてスピンドル回転数Nが急速に低下すると、ドラフト装置出口とリングトラベラ6との間でコップ9を巡るように形成される糸バルーニング8が、テンションの損失下に崩壊する傾向を有する。なぜならば、糸に加えられる遠心力が減少するからである。このことは、ドラフト装置3からのデリバリLを減少させると同時にリングフレーム5を下方へ向かって適当に運動させることによって受け止められなければならない。
【0058】
図2には、機械制御部21における本発明によるプログラムシーケンスが示されている。オペレータは入力モジュール22、たとえばディスプレイを備えたキーボードを介して、機械制御部21にファイルされた多数の紡出プログラムから所望の紡出プログラム23を選び出す。この方法に対して択一的にオペレータは紡出プログラム23の紡出パラメータをマニュアル式に入力するか、または電子的に読み取って機械制御部21にファイルすることもできる。
【0059】
機械制御部21は紡出プロセスの開始時に、選択された紡出プログラム23もしくは入力された紡出パラメータおよび機械構成データ24につき、各駆動装置の作動プログラムを算出する。本発明にとって重要となるのは、機械制御部に多数のコップ交換プロセスプログラムがファイルされていることである。どの紡出プログラムが実行されかつ機械構成がどのような内容を有しているのかに応じて、選び出しモジュールもしくはセレクションモジュール25によって機械制御部21により適当なコップ交換プロセスプログラム26が選び出される。
【0060】
コップ充填プロセスの終了時またはその(直)前に紡出終了プロセスを導入するためには、機械制御部21が、選び出されたコップ交換プロセスプログラムをスタートさせ、このコップ交換プロセスプログラムを処理するか、もしくはコップ交換プロセスプログラムから算出された、駆動装置のための作動プログラムを走らせる。すなわち、機械制御部はこの運転段階ではもはや紡出プログラムにより作動するのではなく、選び出されたコップ交換プロセスプログラムにより作動する。すなわち、前記コップ交換プロセスプログラムはこの段階では本来の紡出プログラムに代わりに使用される。
【0061】
オペレータが、多数のコップ交換プロセスプログラムからコップ交換プロセスプログラム26をマニュアル式に選び出すようになっていると有利になり得る。また、機械制御部がオペレータに、選び出しのための相応する推奨を与えるようになっていても有利になり得る。
【0062】
本発明による方法が、ファンネル精紡機(Trichterspinnmaschine)、キャップ精紡機(Glockenspinnmaschine)またはループ精紡機(Schlaufenspinnmaschine)において使用される場合、運動させられるリングレールの代わりに、運動させられるスピンドルレールが使用される。付加的に、コップ交換プロセスプログラムには、さらにファンネルモータの制御も加えられる。リング精紡機の場合にも、運動させられるリングレールに対して付加的にまたは択一的に、スピンドルレールの運動を加えることができる。
【0063】
本発明による方法には、コップ交換プロセスプログラムが既に機械制御部にファイルされているという利点がある。オペレータは、もはや自身の経験に基づいてコップ交換パラメータを機械制御部に入力する必要はない。
【0064】
コップ交換プロセスはそれどころか自動化されていて、オペレータの支援なしに機械制御部によって自動的に行われ得る。これにより本発明による方法は、機械制御部が常に、オペレータによる制御への干渉なしに、最適化された紡出終了プロセスを実施することを確保する。
【0065】
後続の巻返しプロセスにおいては最初のほぼ2メートルの糸が基本的に常に切断除去されるので、各紡出プログラムに対して標準的に、糸特性が意図的に変えられるコップ交換プロセスプログラムを走らせることが有利である。したがって、コップ交換プロセスプログラムは第1に、紡出プロセスをコップ交換段階において、変更された運転パラメータにもかかわらず安定した状態に保持し、つまり糸切れやその他の運転妨害因子を回避し、かつコップ交換過程および後続の紡出開始プロセスのための糸端区分を最適に準備する方向に調整されている。
【0066】
この場合、上で挙げた理由から、コップ交換プロセス中に製造された糸長さが紡出プログラムの設定に相当しておらず、したがってこの糸長さが利用不可能となることは重要ではないが、しかしそれにもかかわらず、この糸長さはできるだけ小さく保持されることが望ましい。
【0067】
基本的に、既に述べたように、紡出開始プロセスも、本来の紡出プログラムの前に実行されるコップ交換プロセスの一部として同様に機械制御部によって展開され得る。このためには、多数の紡出開始プログラムがコンピュータにファイルされていてよい。機械制御部はセレクションプログラムによって自動的に、オペレータにより設定された紡出プログラムおよび機械構成に基づいて最適な紡出開始プログラムを選び出す。この場合にも、オペレータは択一的に、場合によっては機械制御部による相応する推奨によって、紡出開始プログラムをマニュアル式に選び出すこともできる。
【0068】
もちろん、コップ交換プロセスプログラムは、機械制御部よりも上位の制御部にファイルされてもよい。その場合、コップ交換プロセスプログラムをこの制御部から呼び出して、実行のために機械制御部に移し替えることができる。
【0069】
さらに、ドラフト装置駆動装置のためのコップ交換プロセスの運転パラメータをコップ交換プロセスの導入直前にはじめてドラフト装置駆動装置に伝送するのではなく、既にあらかじめドラフト装置駆動装置におけるメモリにファイルしておき、そしてコップ交換プロセスの導入時または導入前に機械制御部によって相応して呼び出すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】リング精紡機の紡出部を示す概略図である。
【図2】機械制御部におけるプログラムシーケンスを示す概略図である。
【符号の説明】
【0071】
2 機械制御部
3 ドラフト装置
4 ドラフト装置駆動装置
5 リングフレーム
6 リングトラベラ
7 リングフレーム駆動装置
8 糸バルーニング
9 コップ
12 スピンドル駆動装置
13 スピンドル
14 糸
15 進入ローラ対
16 中間ローラ対
17 進出ローラ対
21 機械制御部
22 入力モジュール
23 紡出プログラム
24 機械構成データ
25 セレクションモジュール
26 コップ交換プロセスプログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精紡機、特にリング精紡機であって、ドラフト装置(3)と、糸ボビン(9)を収容するためのスピンドル(13)と、リングフレーム(5)および/またはスピンドルレールとが設けられていて、ドラフト装置(3)とスピンドル(13)とリングフレーム(5)および/またはスピンドルレールとが、それぞれ所属の駆動装置(4,7,12)を介して機械制御部(2,21)により互いに調整されて運転状態に保持されるようになっており、さらに糸(14)のための固持装置(10)が設けられている形式の精紡機を制御するための方法において、
機械制御部(2,21)に多数のコップ交換プロセスプログラムがファイルされていて、機械制御部(2,21)またはオペレータによって入力ユニットを介して多数のコップ交換プロセスプログラムから:
−紡糸された原料および/または
−紡出された糸タイプもしくは糸種類および/または
−紡出された糸番手(Ne,N,tex)および/または
−糸撚り(α)および/または
−機械構成
に関連して、妥当なコップ交換プロセスプログラム(26)が選び出され、この場合、該コップ交換プロセスプログラムが、紡出プログラム(23)により形成された糸に比べてコップ交換プロセス時の糸特性の意図的な変化を実施し、これにより、紡出終了プロセス、ボビン交換過程および/または後続の紡出開始プロセスのために最適に適合された糸特性を達成することを特徴とする、精紡機を制御するための方法。
【請求項2】
機械制御部(2,21)が、該機械制御部(2,21)にメモリされた多数のコップ交換プロセスプログラムから:
−紡糸された原料および/または
−紡出された糸タイプもしくは糸種類および/または
−紡出された糸番手(Ne,N,tex)および/または
−糸撚り(α)および/または
−機械構成
に関連して、有利には機械制御部にファイルされたセレクションルーチンを介して、妥当なコップ交換プロセスプログラム(26)を自動的に選び出して、所定の時点で自動的に呼び出す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
機械制御部(2,21)が、該機械制御部(2,21)にメモリされた多数のコップ交換プロセスプログラムから、目下の紡出プログラム(23)と機械構成(24)とに関連して、セレクションルーチン(25)またはオペレータを介して入力装置(22)によって妥当なコップ交換プロセスプログラム(26)を選び出し、この場合、前記紡出プログラム(23)が、糸番手(Ne)、糸タイプおよび/または糸撚り(α)を規定し、機械制御部(2,21)が、所定の時点で、前記選び出されたコップ交換プロセスプログラム(26)を自動的に導入する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
コップ交換プロセスプログラム(26)が、トータルドラフトの変更により糸番手の変更を行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
コップ交換プロセスプログラム(26)が、糸デリバリの変更および/またはスピンドル回転数の変更により糸撚りの変更を行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
固持装置の範囲に供給された糸のためのできるだけ最適な糸特性が生ぜしめられるように糸の撚りもしくは撚り係数(α)および/または糸番手が、規定の時点からコップ交換プロセスプログラム(26)により変更される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
コップ交換プロセスプログラム(26)が、紡出終了プロセスの開始前に、駆動装置、特にドラフト装置駆動装置の変換器のパラメータ化によって呼び出される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
比較的粗くかつ裂断強度を持った糸を製造する場合に、紡出終了段階に、より細い糸もしくは裂断可能な糸が製造されるようにコップ交換プロセスプログラム(26)が、トータルドラフトの変更、特にトータルドラフトの増大および/または撚り低減によってドラフト装置(3)に影響を与える、請求項4記載の方法。
【請求項9】
比較的細い糸を製造する場合に、紡出終了段階に、より粗い糸が製造されるようにコップ交換プロセスプログラム(26)が、トータルドラフトの変更、特にトータルドラフトの減少および/または撚りの適合によってドラフト装置(3)に影響を与える、請求項4記載の方法。
【請求項10】
コップ交換プロセスプログラム(26)が、紡出終了段階におけるドラフトの変更の目的で、進入ロ―ラ対(15)および/または進出ローラ対(17)の回転数の変更を行う、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
コップ交換プロセスプログラム(26)が、紡出終了段階におけるデリバリの変更の目的で、進入ロ―ラ対(15)、中間ローラ対(16)および/または進出ローラ対(17)の回転数の変更を行う、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
糸のための固持装置が、糸ボビン(9)よりも下方の位置でスピンドル(13)に配置されており、紡出終了プロセスの間、リングレールが、その最も上側の巻成点からバックワインディングの形成下に下方へ向かって前記固持装置の高さにまで移動させられ、該固持装置のところでアンダワインディングが施与されかつ/または糸区分がクランプされ、引き続きリングフレーム(5)が再びクランプ装置(10)よりも上方の位置にまで持ち上げられ、その後にまずドラフト装置(3)もしくはドラフト装置駆動装置(4)が停止し、次いでスピンドル駆動装置(12)が停止するか、または両駆動装置が同時に停止される、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
撚り係数(α)を有する規定の糸番手を有する糸(14)を製造する場合に、コップ交換プロセスプログラム(26)が撚りを、糸(14)の糸切れ負荷が最も好都合な値を達成する別の撚り係数(α)にまで増大させるか、もしくは低下させる、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
コップ交換プロセスプログラム(26)が、バックワインディングの形成中にドラフト装置(3)のドラフトを、変えられた番手の糸が生じて、アンダワインディング過程の前、間および後に、クランプの前、間および後にかつ/またはスピンドルからの糸ボビン(9)の引抜きの間に、かつこれに伴う糸(14)の裂断の間に、ほとんど妨害因子が生ぜしめられなくなるように変更する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
コップ交換プロセスプログラム(26)が、バックワインディングおよび/またはアンダワインディングの形成の前または遅くともバックワインディングおよび/またはアンダワインディングの形成時に
【数1】

の条件を維持し、ただしT=撚り数、m=長さ単位、α=撚り係数、N=糸番手、N=スピンドル回転数(r.p.m.)、L=デリバリ(メートル/分)であり、デリバリLの経過が時間またはスピンドル回転数Nとの関係で規定されており、スピンドル回転数Nが、バックワインディング過程もしくはアンダワインディング過程の際にこれに関連して算出されるか、もしくはデリバリLがこれに関連して算出される、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−19324(P2009−19324A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184810(P2008−184810)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】