説明

精製メチルイソブチルケトンの製造方法および装置

本発明は、MIBKおよび不純物を含有する供給流れを、アセトンを回収する第1の蒸留操作の対象とする工程を含む精製メチルイソブチルケトン(MIBK)の製造方法に関する。第1の蒸留操作の底部生成物は、液−液分離器に供給され、該液−液分離器からの有機相は、塔頂生成物を製造するために第2の蒸留塔の塔頂領域に供給される。塔頂生成物は、凝縮され、該液−液分離器に供給される。MIBKを含有する底部生成物が第2の蒸留塔から抜き出される。この底部生成物は第3の蒸留塔に供給され、高沸点不純物が底部生成物として抜き出され、精製MIBKも抜き出される。本発明はまた、本方法に用いる装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製メチルイソブチルケトン(MIBK)の製造方法に関する。本発明はまた、本方法において用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和カルボニル含有化合物を形成するための1種以上のカルボニル含有反応物質の縮合および前記不飽和化合物の飽和カルボニル含有生成物への水素化を含むプロセスが良く知られている。
【0003】
かかるプロセスの一つは、アセトンからのメチルイソブチルケトン(MIBK)の製造である。このプロセスにおいては、2個のアセトン分子が縮合によりジアセトンアルコール(DAA)を生じ、このジアセトンアルコール(DAA)が脱水されてメシチルオキシド(MSO)を生じ、このMSOが水素化されてMIBKになる。この縮合および脱水反応は酸触媒の存在下で起こり、水素化は貴金属など水素化触媒の存在下で起こる。
【0004】
MIBKの製造は、上述のような2つの処理工程または単一の縮合および水素化触媒の存在下での単一の処理工程で行うことができる。この単一工程処理は、例えば、米国特許第3574763号、欧州特許第1321450号および南アフリカ完了特許出願番号第2004/8988号に開示されている。
【0005】
アセトンの縮合および水素化により製造されたMIBKは、1種以上の不純物、例えばプロパン、イソブタン、メチルペンタン、アセトン、2−プロパノール、水、ジアセトンアルコール(DAA)、メチルオキシド(MSO)ならびにジイソブチルケトン、C9パラフィンおよびケトンなどの高沸点化合物等を含んでいる。
【0006】
MIBKを精製する方法もまた本技術分野では知られている。論文「Why not do it in one step」、Chemtech、1977年1月は、MIBK反応生成物が、MIBK反応器へリサイクルするために、未反応水素を除去するためのガス分離装置にかけられるプロセスを開示している。ガス分離装置からの液体は第1の蒸留塔に供給され、そこでアセトンが塔頂生成物として回収され、MIBK反応器にリサイクルされる。次いで、第1の塔の底部生成物は液−液分離器(デカンター)に供給され、そこで水相はこのプロセスから除去され、有機相は底部生成物の取出装置と還流の進入位置との間のある場所にある第2の蒸留塔に供給される。塔頂低沸点生成物は第2の塔で留出物として除去される。次いで、第2の塔の底部生成物は第3の蒸留塔に供給され、そこで高沸点化合物は底部生成物として除去され、MIBKは留出物として除去される。
【0007】
「Methyl Isobutyl Ketone by Direct Condensation of Acetone」、SRI Reports、1972年5月は、上述と類似のプロセスを開示している。主な違いは、上述の第1の蒸留塔が、2本の塔によって置き換わっている点である。すなわち、第1の蒸留塔では、低沸点生成物(特にアセトンとの共沸混合物としてのメチルペンタン)が留出物として除去される。次いで、底部生成物は第2の塔に供給され、そこで未反応のアセトンが、留出物として除去され、MIBK反応器へリサイクルされる。別の違いは、第3の塔(上述の第2の塔と類似の機能)が塔頂デカンターに取り付けられていることである。
【特許文献1】米国特許第3574763号
【特許文献2】欧州特許第1321450号
【特許文献3】南アフリカ特許出願番号第2004/8988号
【非特許文献1】「Why not do it in one step」、Chemtech、1977年1月
【非特許文献2】「Methyl Isobutyl Ketone by Direct Condensation of Acetone」、SRI Reports、1972年5月
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
方法
本発明の第1の観点によれば、精製メチルイソブチルケトン(MIBK)の製造方法であって、
MIBKと、アセトンの縮合および水素化反応からの少なくとも水および有機化合物(未反応アセトンを含む)の形態の不純物とを含有する供給流れを、少なくともアセトンを回収する第1の蒸留操作にかけ、MIBKと不純物とを含有する底部生成物を抜き出すこと;
該第1の蒸留操作の底部生成物を、第2の蒸留塔に連結された、有機相と水相とを分離する液−液分離器に供給し;該液−液分離器からの有機相を第2の蒸留塔の塔頂領域に供給して塔頂生成物を生成し;該塔頂生成物を凝縮し;得られた凝縮塔頂生成物を、該第1の蒸留操作の底部生成物が供給されるのと同じ液−液分離器に供給し、さらに該第2の塔の底部からMIBKおよび高沸点不純物を含有する底部生成物を抜き出すこと;および
該第2の蒸留塔の底部生成物を第3の蒸留塔に供給し;底部生成物として高沸点不純物を取り出し;さらに該第3の蒸留塔から精製MIBKを抜き出すこと
を含む方法が提供される。
【0009】
この方法はまた、MIBKと、少なくとも水および有機化合物(未反応アセトンを含む)の形態の不純物とを含有する供給流れを提供するために、好ましくはアセトンの縮合および水素化によってMIBKを製造する工程を含む。
【0010】
MIBK製造
MIBKは、任意の既知のプロセスによって製造することができるが、単一の縮合および水素化触媒(例えば、パラジウム系樹脂触媒)の存在下で、好ましくは単一処理工程で製造することが好ましい。MIBKは、南アフリカ完全特許出願番号第2004/8988号に記載されるようにして製造することができる。このMIBKは、管型反応器など適切な反応器、好ましくは管型トリクルベッド反応器にアセトンおよび水素を供給することによって製造することができる。
【0011】
水素除去
本発明方法はまた、MIBKと、アセトンの凝合および水素化反応からの不純物とを含有する供給流れから水素を除去する工程を含むことができる。この水素は、通常、MIBKを製造するためのアセトンの縮合および水素化における未反応の水素である。この水素は任意の適切な段階で除去することができ、好ましくは第1の蒸留操作の前である。この水素は水素分離装置、好ましくは水素分離ドラムを用いて除去することができ、除去された水素はMIBK製造ステップにリサイクルすることができる。
【0012】
第1の蒸留操作
第1の蒸留操作は1つ以上の蒸留塔において実行することができ、好ましくは低沸点不純物が、回収したアセトンから別々に取り出される。好ましくは、第1の蒸留操作は、第1の蒸留塔にMIBKおよび不純物を含有する供給流れを供給することによって単一の第1の蒸留塔において実行され、そこで低沸点不純物が塔頂生成物として取り出され、アセトンがサイドドローとして取り出され、MIBKおよび不純物が底部生成物として取り出される。
【0013】
この塔の塔頂生成物は、通常、プロパン、イソブタン、メチルペンタン、およびいくらかのアセトンなどの化合物を含有している。この塔頂生成物は還流させることができる。本発明の一実施形態では、塔頂生成物は、凝縮させることができ、還流ドラムに供給することができ、この還流ドラムから一部の塔頂生成物が還流され、一部が排出される。
【0014】
(好ましくはサイドドローとして)回収したアセトンは、MIBK製造工程にリサイクルすることができる。
【0015】
抜き出された底部生成物は、通常、MIBKおよび高沸点不純物を含有している。これら不純物としては、アセトン、2−プロパノール、水および高沸点化合物を挙げることができる。この段階でのMIBK含量は80重量%の領域であり得る。
【0016】
液−液分離および第2の蒸留塔
第1の蒸留操作の底部生成物は液−液分離器に供給する前に冷却することができる。
【0017】
液−液分離器の有機相は、還流として第2の塔の塔頂領域に供給することができる。液−液分離器からの水相は抜き出すことができ、排出することができ、水回収ユニットに供給することができる。
【0018】
液−液分離器はデカンターを有することができる。
【0019】
第2の塔の塔頂生成物は凝縮され、液−液分離器に供給する前に好ましくは凝縮器で凝縮される。
【0020】
アセトン、2−プロパノール、水およびいくらかのMIBKは、通常は、異成分からなる共沸混合物として第2の塔の塔頂生成物に集まることが理解されよう。次いで、液−液分離器の有機相はMIBKを回収するために第2の塔に還流される。アセトンおよび2−プロパノールは液−液分離器の水相に集まる。
【0021】
ここで第2の塔の底部生成物はMIBKに富んでいる。
【0022】
第3の蒸留塔
好ましくは、精製MIBKは、第3の塔において(好ましくは、その精留区画において)サイドドローとして抜き出され、低沸点不純物は塔頂生成物として抜き出される。MIBKは99.5重量%の高純度を有することができる。
【0023】
第3の塔の塔頂生成物はMIBKおよび低沸点分解生成物を含むことができる。
【0024】
第3の塔の塔頂生成物は、凝縮させることができ、還流ドラムに供給することができる。その凝縮塔頂生成物は、第2の塔の塔頂生成物に結合された液−液分離器にリサイクルすることができ、代替的または付加的に、第1の分離操作への供給と組み合わせることができる。代替的または付加的には、凝縮塔頂生成物の少なくとも一部は還流させることができる。
【0025】
第3の塔の底部生成物は、高沸点不純物を含有し、廃棄生成物として処理することができる。
【0026】
装置
本発明の第2の観点によれば、精製メチルイソブチルケトン(MIBK)の製造に適する装置であって、
第1の蒸留装置であって、該第1の蒸留装置に、MIBKと、アセトンの縮合および水素化反応からの少なくとも水および有機化合物(未反応アセトンを含む)の形態の不純物とを含有する供給流れを供給するための供給ラインを有し、さらにアセトンを抜き出すためのアセトン取出装置、ならびにMIBKおよび不純物の形態の底部生成物を該第1の蒸留装置の底部から抜き出すための底部生成物取出装置を有する第1の蒸留装置;
第2の蒸留塔に連結された液−液分離器であって、その使用により有機相および水相を分離することを可能にし、該第1の蒸留装置の底部生成物を該液−液分離器に供給するための供給ラインを有する液−液分離器;
第2の蒸留塔であって、該液−液分離器からの該有機相を該第2の蒸留塔の塔頂領域に供給するための供給ラインを有し、さらに塔頂生成物を低沸点化合物の形態で抜き出すための塔頂取出装置、該塔頂生成物を凝縮するための凝縮器、および該凝縮塔頂生成物を該液−液分離器に供給するための供給ラインを有し、さらに該第2の蒸留塔の底部からMIBKおよび高沸点不純物の形態の底部生成物を抜き出すための底部生成物取出装置を有する第2の蒸留塔;および
第3の蒸留塔であって、該第2の蒸留塔の該底部生成物を該第3の蒸留塔に供給するための供給ライン、高沸点不純物を底部生成物として抜き出すための底部生成物取出装置、および該第3の蒸留塔から精製MIBKを抜き出すためのMIBK取出装置を有する第3の蒸留塔
を有する装置が提供される。
【0027】
本装置はまた、好ましくはMIBKと少なくとも水および有機化合物(アセトンを含む)の形態の不純物とを含有する供給流れを生成するために、アセトンの縮合および水素化によってMIBKを製造するための反応器を有することができる。
【0028】
MIBK反応器
MIBK反応器は、任意の適当なMIBK反応器、好ましくは単一の縮合および水素化触媒(例えば、パラジウム系樹脂触媒)の存在下で、好ましくは単一の処理工程でMIBKを製造する反応器を有することができる。このMIBK反応器は、管型反応器、好ましくは反応器にアセトンおよび水素を供給するための1つ以上の供給ラインを備えた管型トリクルベッド反応器を有することができる。
【0029】
水素分離装置
本発明装置はまた、MIBKと、アセトンの縮合および水素化反応からの不純物とを含有する供給流れから水素を除去するための手段を有することができる。水素を除去するための手段としては、水素分離装置、好ましくは水素分離ドラムを有することができ、第1の蒸留装置の前に配置することができる。
【0030】
水素分離装置から回収した水素をMIBK反応器への水素供給ラインに供給するために、水素リサイクル供給ラインを設けることができる。
【0031】
第1の蒸留装置
第1の蒸留装置は1つ以上の蒸留塔を有することができ、好ましくは、アセトン取出装置から別々に低沸点不純物を抜き出すための塔頂生成物取出装置を有する。第1の蒸留装置は、好ましくは、MIBKおよび不純物を含有する供給流れのための供給ラインと、低沸点不純物を抜き出すための塔頂生成物取出装置と、サイドドローとしてアセトンを抜き出すためのアセトン取出装置と、MIBKおよび不純物の形態の底部生成物を抜き出すための底部生成物取出装置とを有する単一の第1の蒸留塔を有する。
【0032】
第1の蒸留装置はまた、塔頂生成物を凝縮するための凝縮器を有することができる。第1の蒸留装置はまた、その凝縮塔頂生成物を受け入れるための還流ドラムと、還流ドラムから還流として第1の蒸留装置に凝縮塔頂生成物の少なくとも一部を供給するための供給ラインとを有することができる。還流ドラムはまた、還流ドラムからの凝縮塔頂生成物の少なくとも一部を排出するための排出ラインを有することができる。
【0033】
第1の蒸留装置は、第1の蒸留塔から抜き出したアセトンをMIBK反応器にリサイクルするためのリサイクルラインを有することができる。
【0034】
第2の蒸留塔における液−液分離器
第1の蒸留装置の底部生成物を供給するための供給ラインは、好ましくは、液−液分離器に供給される前に第1の蒸留装置の底部生成物を冷却するための冷却器を有する。
【0035】
第2の蒸留塔に連結された液−液分離器はデカンターを有することができる。
【0036】
液−液分離器から第2の塔に有機相を供給するための供給ラインは、好ましくは第2の塔の塔頂領域に還流として液−液分離器の前記有機相を供給する。液−液分離器はまた、水相を除去するための取出装置ラインを有することができる。
【0037】
第3の蒸留塔
好ましくは、第3の蒸留塔からのMIBK取出装置は、サイドドローとして精製MIBKを抜き出し、好ましくは、第3の蒸留塔は、低沸点不純物を抜き出すための塔頂生成物取出装置を有する。
【0038】
第3の蒸留塔の塔頂取出装置は凝縮器に連結することができ、この凝縮器は還流ドラムに連結することができる。還流ドラムは、1つ以上の(i)第3の蒸留塔の塔頂、(ii)液−液分離器および(iii)第1の塔の供給ラインへの供給ラインを有することができる。
【実施例】
【0039】
ここで、本発明を以下の実施例を用いてさらに説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
精製MIBKを製造するための装置10は、アセトンの縮合および水素化によってMIBKを製造する反応器20と、水素分離装置30と、第1の蒸留装置40と、液−液分離器50と、第2の蒸留塔60と、第3の蒸留塔70とを備える。
【0041】
MIBKを製造するための反応器20は、単一の縮合および水素化触媒(例えば、パラジウム系樹脂触媒)の存在下、単一工程で、アセトンおよび水素からMIBKを製造するための2つの管型トリクルベッド反応器20.1および20.2を有する。反応器20.1および20.2は、アセトン供給ライン20.3および水素供給ライン20.4を有する。
【0042】
反応器20.1および20.2からの気体生成物は、供給ライン30.1を経て水素分離装置30に供給され、一方反応器20.1および20.2からの液体生成物は供給ライン30.2を経て水素分離装置30に供給される。水素分離装置30は水素分離ドラムである。水素リサイクル供給ライン30.3が、回収した水素を水素供給ライン20.4に供給する。
【0043】
MIBK反応器20および水素分離装置30は、本技術分野で良く知られており、したがって本明細書ではその詳細な説明は省略する。MIBK反応器20.1および20.2は120℃および30バールg(3000kPa)で運転することができる。
【0044】
第1の蒸留装置40は、単一の第1の蒸留塔40.0を有し、水素分離装置30から第1の塔40.0に生成物を供給するための供給ライン40.1を有する。使用中の供給ライン40.1中の生成物は、MIBKと、少なくとも水および有機化合物の形態の不純物とを含有する。これら有機化合物はアセトンの縮合および水素化反応からの有機化合物(アセトンを含む)を含む。
【0045】
第1の蒸留塔40.0はまた、サイドドローとしてアセトンを抜き出すためのアセトン取出装置40.2を有する。アセトン取出装置40.2はまた、回収したアセトンをアセトン供給ライン20.3にリサイクルするためのリサイクルラインとしての役割を果たす。
【0046】
第1の蒸留塔40.0は、アセトン取出装置40.2から低沸点不純物を別々に抜き出すための塔頂生成物取出装置40.3をさらに有する。塔頂気体生成物取出装置40.3は凝縮器40.4に塔頂生成物を供給し、次いで、凝縮塔頂生成物は還流ドラム40.5に供給され、この還流ドラム40.5から凝縮塔頂生成物の一部が供給ライン40.6を経て塔40.0の塔頂領域に還流され、一部の塔頂生成物がライン40.7を経て排出される。塔頂生成物は、通常、プロパン、イソブタン、メチルペンタンおよびいくらかのアセトンなどの化合物を含む。
【0047】
第1の蒸留塔40.0はまた、第1の蒸留塔40.0の底部からMIBKおよび不純物の形態の底部生成物を抜き出すための底部生成物取出装置40.8を有する。不純物としては、アセトン、2−プロパノール、水および高沸点化合物を挙げることができる。この段階でのMIBK含量は80重量%の領域であり得る。塔40.0はまたリボイラー40.9を備える。
【0048】
取出装置40.8中の底部生成物は、それが液−液分離器50に供給される前に冷却器40.10に供給される。
【0049】
液−液分離器50は、第2の蒸留塔60に連結され、デカンター50を有し、そこで有機相および水相が分離する。デカンター50からの水相はライン50.2を通って排出され、一方有機相はライン50.3を経て第2の蒸留塔60に供給流および還流として供給される。
【0050】
第2の蒸留塔60は塔頂生成物を抜き出すための塔頂取出装置60.1を有する。取出装置60.1は凝縮器60.2に塔頂生成物を供給し、この凝縮器60.2は塔頂生成物を凝縮し、これにより、次いで、凝縮塔頂生成物はデカンター50に供給される。
【0051】
アセトン、2−プロパノール、水およびいくらかのMIBKが、通常は、異性共沸混合物として塔60の塔頂生成物に集まることが理解されよう。MIBKはデカンター50の有機相に主として集まり、この有機相は塔60に還流され、一方アセトンおよび2−プロパノールはデカンター50の水相に主として集まり、この水相は排出される。
【0052】
第2の蒸留塔は、第2の塔60の底部から、MIBKおよび高沸点不純物の形態の底部生成物を抜き出すための底部生成物取出装置60.3をさらに有する。塔60にはまた、リボイラー60.4が取り付けられている。
【0053】
底部生成物取出装置60.3は、第3の蒸留塔70に第2の塔60の底部生成物を供給するための供給ラインとしての役割を果たす。第3の蒸留塔70は、底部生成物として高沸点不純物を抜き出し、排出するための底部生成物取出装置70.1を有し、塔70にはリボイラー70.2が取り付けられている。
【0054】
第3の塔70はまた、塔70の精留区画の中でサイドドローとして精製MIBKを抜き出すためにMIBK取出装置70.3を有する。MIBKは少なくとも99.5重量%のMIBKの純度を有することができる。塔頂生成物取出装置70.4が塔頂生成物として低沸点不純物を抜き出す。塔頂気体生成物取出装置70.4は凝縮器70.5に塔頂生成物を供給し、この凝縮器70.5の中で塔頂生成物は凝縮される。次いで、凝縮塔頂生成物は還流ドラム70.6に供給され、この還流ドラム70.6から凝縮塔頂生成物の一部がライン70.7を経て塔70の塔頂区画に還流され、一部がライン70.8を経てデカンター50、またはライン70.9を経て第1の塔40.0のいずれかにリサイクルされる。
【0055】
塔40.0、60および70の運転条件は当業者に知られており、したがって本明細書ではその説明は省略する。
【0056】
ある特定の実施例において、図1に示すような装置を、流れ70.9が使用できないようにした状態で用いた。主要な運転条件を表1に示し、主要な各流れの組成を表2に示した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による精製MIBK製造装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製メチルイソブチルケトン(MIBK)の製造方法であって、
MIBKと、アセトンの縮合および水素化反応からの少なくとも水および有機化合物(未反応アセトンを含む)の形態の不純物とを含有する供給流れを、少なくともアセトンを回収する第1の蒸留操作にかけ、MIBKと不純物とを含有する底部生成物を抜き出すこと;
該第1の蒸留操作の底部生成物を、第2の蒸留塔に連結された、有機相と水相とを分離する液−液分離器に供給し;該液−液分離器からの有機相を第2の蒸留塔の塔頂領域に供給して塔頂生成物を生成し;該塔頂生成物を凝縮し;得られた凝縮塔頂生成物を、該第1の蒸留操作の底部生成物が供給されるのと同じ液−液分離器に供給し、さらに該第2の塔の底部からMIBKおよび高沸点不純物を含有する底部生成物を抜き出すこと;および
該第2の蒸留塔の底部生成物を第3の蒸留塔に供給し;底部生成物として高沸点不純物を取り出し;さらに該第3の蒸留塔から精製MIBKを抜き出すこと
を含む方法。
【請求項2】
アセトンの縮合および水素化によってMIBKを製造することで、MIBKと、少なくとも水および有機化合物(未反応アセトンを含む)の形態の不純物とを含有する前記供給流れを形成する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MIBKを、単一の処理工程において、単一の縮合および水素化触媒の存在下で製造する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
MIBKと、前記のアセトンの縮合および水素化反応からの不純物とを含有する前記供給流れから水素を除去する工程を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水素を前記第1の蒸留操作の前に除去する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の蒸留操作を1つ以上の蒸留塔において行い、前記回収アセトンから低沸点不純物を別々に抜き出す請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の蒸留操作を、前記第1の蒸留塔に、MIBKおよび不純物を含有する前記供給流れを供給することによって単一の第1の蒸留塔において行い、低沸点不純物を塔頂生成物として抜き出し、アセトンをサイドドローとして抜き出し、さらにMIBKおよび不純物を底部生成物として抜き出す請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記塔頂生成物を還流する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記回収アセトンを前記MIBK製造工程にリサイクルする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記精製MIBKを前記第3の塔においてサイドドローとして抜き出し、低沸点不純物を塔頂生成物として抜き出す請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の塔の塔頂生成物を凝縮し、還流ドラムに供給する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
精製メチルイソブチルケトン(MIBK)の製造に適する装置であって、
第1の蒸留装置であって、該第1の蒸留装置に、MIBKと、アセトンの縮合および水素化反応からの少なくとも水および有機化合物(未反応アセトンを含む)の形態の不純物とを含有する供給流れを供給するための供給ラインを有し、さらにアセトンを抜き出すためのアセトン取出装置、ならびにMIBKおよび不純物の形態の底部生成物を該第1の蒸留装置の底部から抜き出すための底部生成物取出装置を有する第1の蒸留装置;
第2の蒸留塔に連結された液−液分離器であって、その使用により有機相および水相を分離することを可能にし、該第1の蒸留装置の底部生成物を該液−液分離器に供給するための供給ラインを有する液−液分離器;
第2の蒸留塔であって、該液−液分離器からの該有機相を該第2の蒸留塔の塔頂領域に供給するための供給ラインを有し、さらに塔頂生成物を低沸点化合物の形態で抜き出すための塔頂取出装置、該塔頂生成物を凝縮するための凝縮器、および該凝縮塔頂生成物を該液−液分離器に供給するための供給ラインを有し、さらに該第2の蒸留塔の底部からMIBKおよび高沸点不純物の形態の底部生成物を抜き出すための底部生成物取出装置を有する第2の蒸留塔;および
第3の蒸留塔であって、該第2の蒸留塔の該底部生成物を該第3の蒸留塔に供給するための供給ライン、高沸点不純物を底部生成物として抜き出すための底部生成物取出装置、および該第3の蒸留塔から精製MIBKを抜き出すためのMIBK取出装置を有する第3の蒸留塔
を有する装置。
【請求項13】
アセトンの縮合および水素化によってMIBKを製造することで、MIBKと、少なくとも水および有機化合物(アセトンを含む)の形態の不純物とを含有する前記供給流れを生成するための反応器を有する請求項12に記載の装置。
【請求項14】
MIBKを製造するための前記反応器が、単一処理工程において単一の縮合および水素化触媒の存在下でMIBKを製造するための反応器からなる請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記のMIBKおよびアセトンの縮合および水素化反応からの不純物を含有する前記供給流れから水素を除去するための手段を有する請求項12〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の蒸留装置が1つ以上の蒸留塔からなり、かつ前記アセトン取出装置から低沸点不純物を別々に抜き出すための塔頂生成物取出装置を有する請求項12〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の蒸留装置が、前記のMIBKおよび不純物を含有する供給流れのための前記供給ラインと、低沸点不純物を抜き出すための塔頂生成物取出装置と、アセトンをサイドドローとして抜き出すためのアセトン取出装置と、MIBKおよび不純物の形態の底部生成物を抜き出すための底部生成物取出装置とを有する単一の第1の蒸留塔を有する請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の蒸留装置が、前記塔頂生成物を凝縮するための凝縮器と、前記凝縮塔頂生成物を受け入れるための還流ドラムと、前記還流ドラムからの前記凝縮塔頂生成物の少なくとも一部を還流として前記第1の蒸留装置に供給する供給ラインとを有する請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記第1の蒸留装置が、前記第1の蒸留塔から抜き出したアセトンを前記MIBK製造用反応器にリサイクルするためのリサイクルラインを有している請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記の第3の蒸留塔からのMIBK取出装置がサイドドローとして精製MIBKを取り出し、かつ前記第3の蒸留塔が低沸点不純物を抜き出すための塔頂生成物取出装置を有している請求項12〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記第3の蒸留塔の前記塔頂取出装置が凝縮器に連結されており、前記凝縮器が還流ドラムに連結されている請求項20に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2009−519319(P2009−519319A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545154(P2008−545154)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054454
【国際公開番号】WO2007/069109
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(502001558)サソル テクノロジー (ピーティーワイ)リミテッド (5)
【Fターム(参考)】