説明

精製免疫グロブリン融合タンパク質およびその精製方法

本発明は、免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質の製造中に不純物を分離するための方法および組成物を提供する。本発明の方法に従って除去され得る不純物の例としては、不活性形態のIg融合タンパク質および/または凝集体が挙げられる。本発明はまた、抗体ベースの生物製剤、すなわち、免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質の精製中に、複数の生成物関連の不純物を除去することが可能な高分解能の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
生物製剤が、認可された治療法としてますます受け入れられていることを考慮すれば、これらの種類の薬剤の詳細な特性評価は重要である。不測の生成物分解または不純物の存在によって、治療的有効性および患者の安全性が脅かされ得る。生物製剤の製造中に見られる不純物の例としては、生成物の凝集体が挙げられ得る。凝集体は免疫原性となる場合があり、インビボ使用の安全性に対する懸念があり得るため、製剤組成物においては望ましくない。凝集体は、患者体内で産生される抗体を中和するため、生成物のインビボでの安定性を低下させる場合もある。
【0002】
さらに、不活性タンパク質もまた、製造中に生成される場合がある。不活性タンパク質は、製造工程中の誤ったフォールディングに起因し得る。例えば、特許文献1(Browningら)には、哺乳動物細胞中で発現した場合のリンホトキシンβ受容体免疫グロブリン(LTβR−Ig)融合タンパク質の、活性型および不活性型という2つの型が記載されている。また特許文献1は、Ig融合タンパク質産生中の細胞培養温度を低下させることにより、調製物中の不活性分子の割合が減少し得ることを教示している。この公開公報には、リガンドと結合する能力のない不活性型のLTβR−Igが1種のみ記載されている。
【0003】
生物製剤の製造において、このような生成物関連の不純物により、精製の困難さが生じ得る。これらの不純物は、目的とする活性型の治療用タンパク質に匹敵する特性をしばしば有するため、多くの場合同定が困難であり得、したがってしばしば検出が困難である。さらに、このような不純物が同定された場合でも、医薬品から不純物を分離することは困難であり得る。したがって、生物製剤の生産および精製工程中に存在し得る生成物関連の不純物同定のためのみならず、不純物が一旦同定されたら、それを除去するための方法も依然必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0039580号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生じる組成物が、大量のタンパク質の製造可能性および純度の両方に関して薬学的使用に適するように、哺乳動物細胞培養、例えばCHO細胞における生物製剤の発現中に生じる不純物から、抗体ベースの生物製剤、例えばLT−β−R−Ig融合タンパク質を精製する際の問題に取り組む。
【0006】
本明細書に記載のように、哺乳動物細胞中でのLT−β−R−Ig融合タンパク質発現では、2種類の不活性型のLT−β−R−IgおよびLT−β−R−Ig凝集体が生じる。患者に使用するために十分な純度を提供するためには、このような不純物を、生物学的に活性なモノマー型のLT−β−R−Igから分離しなければならない。不活性型のLT−β−R−Igは、精製工程において固有の難題を生じさせる。例えば、本明細書に記載されている2種類の不活性型のLT−β−R−Igは、例えば、大きさおよび電荷に関して、活性のあるモノマー型の融合タンパク質によく似ている。さらに、(治療剤の製造に求められるように)LT−β−R−Igの生産規模が拡大されて生産量が増加すると、高濃度の凝集したLT−β−R−Igが生じる。したがって、活性のあるモノマー型のLT−β−R−Ig融合タンパク質を、十分な濃度および臨床使用に要求される純度で製造するために、凝集を最小限に抑え、不活性型のタンパク質の存在を最小化し、LT−β−R−Ig融合タンパク質の損失を最小限に抑える工程が必要とされていた。本発明は、この複雑な問題に対する解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
より具体的には、本発明は、抗体ベースの生物製剤、すなわち、免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質の精製中に、複数の生成物関連の不純物を除去することが可能な高分解能の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程を提供する。本発明は、リンホトキシンβ受容体免疫グロブリン(LTβR−Ig)のような活性型のIg融合タンパク質を、不活性型のタンパク質から精製するための手段を提供する。本発明のさらなる態様は、(例えば、哺乳動物細胞中でのタンパク質発現に起因する場合が多い、他のタンパク質、不適切にフォールディングされて完全な生物製剤活性をもたない変異体およびタンパク質凝集体の夾雑が最少量である)精製されたIg融合タンパク質組成物を含む。本発明はさらに、不活性型のタンパク質および/またはタンパク質凝集体のような不純物を30%を超えて含むタンパク質混合物、例えば哺乳動物細胞培養液由来の出発供給材料(例えば、バイオリアクター中の培養液由来の大量の供給材料)を精製するための手段を提供する。一実施形態において、本発明は、50%を超える不純物、例えば、約35%の凝集タンパク質と約19%の不活性タンパク質とを有する出発タンパク質混合物を精製するための手段を提供する。
【0008】
本発明は、生物学的に活性なリンホトキシンβ受容体免疫グロブリン(LT−β−R−Ig)融合タンパク質を、生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離するための方法を含み、この方法は、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質と生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質とを含む混合物を、ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に充填するステップならびに樹脂を塩勾配、例えば1.6M〜0.0MのNaClを含む溶液と接触させて、生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第1の溶出物および生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第2の溶出物を得るステップを含む。一実施形態において、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第2の溶出物は、HIC樹脂を1.5MのNaCl洗浄液で洗浄することにより得られる。一実施形態において、塩勾配は段階的勾配または連続勾配である。一実施形態において、塩勾配は0.6M〜0.0MのNaSOを含む。一実施形態において、塩勾配は0.4〜0.5のNaSOの逆勾配であり、段階的勾配およびカラムストリップがこれに続く。一実施形態において、NaSOの段階的勾配を順次用いて、最初に不活性型−1を(洗浄画分中)、次いで活性のあるモノマー型LT−β−R−Igを(溶出画分)、次いで不活性型−2を(ストリップ画分)を除去する。一実施形態において、ブチルHIC樹脂は600〜750Aの細孔径を有する。一実施形態において、HIC樹脂は約8g(タンパク質)/1L(樹脂)の充填容量を有する。一実施形態において、HIC樹脂は、NaSOの存在下で約20g(タンパク質)/1L(樹脂)の充填容量を有する。一実施形態において、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第2の溶出物は、2%未満の生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第2の溶出物は、1%未満の生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。
【0009】
本発明は、凝集していない生物学的に活性なリンホトキシン−β受容体免疫グロブリン(LT−β−R−Ig)融合タンパク質を、凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離するための方法を提供し、この方法は、生物学的に凝集していない、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第1の溶出物および凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第2の溶出物を得るために、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質と凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質とを含む混合物をフェニル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に充填するステップであって、当該樹脂が約10〜20g(タンパク質)/1L(樹脂)の充填容量および約29〜31cmの層高を有するステップと、樹脂を流速約50〜150cm/hr(センチメートル/時間)で溶液と接触させるステップとを包含する。一実施形態において、樹脂を流速約100cm/hrで溶液と接触させる。一実施形態において、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第1の溶出物は、2%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第1の溶出物は、1%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。
【0010】
本発明はまた、生物学的に活性なリンホトキシン−β受容体免疫グロブリン(LT−β−R−Ig)融合タンパク質を、生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離するための方法も提供し、前述の方法は、以下のステップ:生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質と生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質とを含む混合物を、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質がブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合できるような条件下で、ブチル樹脂に充填するステップ;ブチルHIC樹脂を塩勾配、例えば連続塩勾配または段階塩勾配を含む溶液と接触させ、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が豊富に存在する第1の溶出物を得るステップ;ステップii)の第1の溶出物を、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が第2のHIC樹脂に結合できるような条件下で、第2のHIC樹脂に充填するステップ;および第2のHIC樹脂を溶液に接触させて、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質がさらに豊富に存在する第2の溶出物を得るステップを含み、これにより生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離する。一実施形態において、ブチルHIC樹脂は、ヒドロキシル化メタクリレートポリマーの主鎖を含む。
【0011】
一実施形態において、ブチルHIC樹脂は600〜750Aの細孔径を有する。一実施形態において、第1の溶出物は、2%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)を含む。一実施形態において、第1の溶出物は、1%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)を含む。一実施形態において、第2の溶出物は、2%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)を含む。一実施形態において、第2の溶出物は、1%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)を含む。
【0012】
本発明はまた、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を、混合モード樹脂を用いて生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離する方法も提供する。一実施形態において、この方法は、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質と生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質との混合物を混合モード樹脂に、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が混合モード樹脂に結合できるような条件下で充填するステップを包含する。この方法はさらに、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を、溶液を用いて混合モード樹脂から溶出し、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が豊富に存在する第1の溶出物を得て、次いで第1の溶出物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質がHIC樹脂に結合できるような条件下で充填するステップ;および溶液を用いて生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を溶出し、最終的に、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質がさらに豊富に存在する第2の溶出物を得るステップを含む。一実施形態において、不活性型−1形態のLT−β−R−Igを除去し、凝集型のLT−β−R−Igを一部除去するために使用する予備溶出の洗浄工程に、混合モード樹脂を接触させる。このような方法により、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が、生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離される。
【0013】
本発明はさらに、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を、凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離する方法を提供し、この方法は、一実施形態において混合モード樹脂を使用する。一実施形態において、この方法は、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質と凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質とを含む混合物であって、混合物中の約30%を超えるまたは約30%のLT−β−R−Ig融合タンパク質が凝集している混合物を、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が混合モード樹脂に結合できるような条件下で、混合モード樹脂に充填するステップ;生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を、溶液を用いてステップi)の混合モード樹脂から溶出し、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が豊富に存在する第1の溶出物を得るステップ;ステップii)の第1の溶出物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に、生物学的に活性なIg融合タンパク質がHIC樹脂に結合できるような条件下で充填するステップ;およびステップiii)の生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を溶液を用いて溶出して、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質がさらに豊富に存在する第2の溶出物を得るステップを含む。一実施形態において、不活性型−1LT−β−R−Igを除去し、凝集形態のLT−β−R−Igを一部除去するために使用する予備溶出の洗浄工程に、混合モード樹脂を接触させる。このような方法を用いて、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が、凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離され得る。
【0014】
一実施形態において、混合モード樹脂は、イオン相互作用能および疎水性相互作用能の両方を有するものと特徴付けられる。別の実施形態において、混合物をpH約5.0で混合モード樹脂に充填する。さらに別の実施形態において、ステップ(i)の前に(最初の溶出工程の前に)、充填された混合モード樹脂を、pHが約7.0〜7.2の緩衝液、例えばビス−トリスまたはクエン酸ナトリウムで洗浄する。
【0015】
一実施形態において、HIC樹脂は、特に限定されないが、フェニルセファロースなどのフェニル樹脂である。一実施形態において、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を、硫酸アンモニウムを用いてフェニル樹脂から溶出する。一実施形態において、硫酸アンモニウムの濃度は、0.31M、0.32M、0.33M、0.34M、0.35M、0.36M、0.37M、0.38M、0.39M、0.4M、0.41M、0.42M、0.43M、0.44M、0.45M、0.46M、0.47M、0.48Mおよび0.49Mを含めて、0.3〜0.5Mの範囲にある。一実施形態において、流速は50〜150cm/時である。一実施形態において、流速は100cm/時である。別の実施形態において、流速は130〜170cm/時である。
【0016】
本発明は、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質と凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質とを含む混合物から、存在する凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質の少なくとも97%を除去するための方法を含む。一実施形態において、この方法は、混合物を混合モード樹脂に、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が混合モード樹脂に結合できるような条件下で充填するステップ;凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を、溶液を用いてステップi)の混合モード樹脂から溶出して、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が豊富に存在する第1の溶出物を得るステップ;ステップii)の第1の溶出物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質がHIC樹脂に結合できるような条件下で充填するステップ;および凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を溶液を用いて溶出して、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質がさらに豊富に存在する第2の溶出物を得るステップを包含する。このような方法を用いて、凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質と凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質とを含む混合物から、少なくとも97%の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を除去し得る。一実施形態において、第1の溶出物は、25%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。別の実施形態において、第1の溶出物は、20%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。さらに別の実施形態において、第1の溶出物は、15%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。さらに別の実施形態において、第1の溶出物は、約10%の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、第2の溶出物は、2%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。別の実施形態において、第2の溶出物は、1%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。
【0017】
本明細書に記載の精製方法は、細胞ベースの製造に起因する不要な型のLT−β−R−Igまたはその他の不純物を最小化する方法で生産されてきた組成物あるいは精製を促進する薬剤を含む組成物に対して用いてもよい。例えば、本発明の一実施形態において、本発明の方法は、最初に混合物を組換えプロテインA(rProteinA)に接触させるステップを含む。一実施形態において、組換えプロテインAと接触させる混合物は、哺乳動物細胞培養上清である。一実施形態において、哺乳動物細胞培養上清は、28℃で培養された哺乳動物細胞から採取する。一実施形態において、細胞培養上清は、特に限定されないが、TritonX−100などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0018】
本発明の一実施形態において、本発明の方法は、混合物を、混合モード樹脂に充填する前に陰イオン交換膜吸着装置と接触させるステップを含む。一実施形態において、ウイルス不活性化のステップ(例えば、低pHウイルス不活性化)の後に、混合物を陰イオン交換膜吸着装置と接触させる。一実施形態において、混合物を組換えプロテインA(rProteinA)と接触させた後に、混合物を陰イオン交換膜吸着装置と接触させる。
【0019】
本発明はさらに、生物学的に活性な単量体型LT−β−R−Ig融合タンパク質が実質的に豊富な精製組成物を調製するための方法を提供する。一実施形態において、精製組成物は50%未満の凝集体を含む。一実施形態において、精製組成物は減少した量のLT−β−R−Ig凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は40%未満の凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は30%未満の凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は20%未満の凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は10%未満の凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は7.5%未満の凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は5%未満の凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は3%未満の凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は2%未満の凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は1%未満の凝集体を含む。別の実施形態において、精製組成物は検出不可能な量の凝集体を含む。
【0020】
別の実施形態において、精製組成物は減少した量の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は20%未満の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は10%未満の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は7.5%未満の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は5%未満の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は4%未満の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は3%未満の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は2%未満の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は1%未満の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。別の実施形態において、精製組成物は検出不可能な量の不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。
【0021】
さらに別の実施形態において、精製組成物は6%未満の不活性型−1形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は5%未満の不活性型−1形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。別の実施形態において、精製組成物は4%未満の不活性型−1形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。別の実施形態において、精製組成物は3%未満の不活性型−1形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は2%未満の不活性型−1形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は1%未満の不活性型−1形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。別の実施形態において、精製組成物は検出不可能な量の不活性型−1形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。
【0022】
別の実施形態において、本発明の精製組成物は、出発組成物中に存在する濃度から減少した濃度の、凝集形態、不活性型−1および/または不活性型−2のうちの1つ以上を含む。例えば、一実施形態において、精製組成物は、7.5%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、7.5%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および7.5%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。例えば、一実施形態において、精製組成物は、5%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、5%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および5%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。例えば、一実施形態において、精製組成物は、3%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、3%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および3%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。例えば、一実施形態において、精製組成物は、2%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、2%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および2%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。例えば、一実施形態において、精製組成物は、1%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、1%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および1%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。
【0023】
これらの生成物の夾雑濃度は等しくなくてもよく、上記の例は単なる例示に過ぎないことを、当業者は理解する。例えば、一実施形態において、精製組成物は、5%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、10%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および20%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は、2%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、5%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および5%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は、2%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、5%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および10%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は、2%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、5%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および10%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。一実施形態において、精製組成物は、5%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、5%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および1%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む。
【0024】
一実施形態において、本発明の方法は、LT−β−R−Ig融合タンパク質をコードするDNAで形質転換された哺乳動物宿主細胞を含む哺乳動物細胞培養系から、細胞培養上清を得るステップ;細胞培養上清を組換えプロテインA(rProteinA)と接触させて、LT−β−R−Ig融合タンパク質混合物を得るステップ;ii)のLT−β−R−Ig融合タンパク質混合物を、LT−β−R−Ig融合タンパク質が混合モード樹脂に結合するような条件下で、約5.0のpHで混合モード樹脂に充填するステップ;混合モード樹脂を、pHが約7.0〜7.2の緩衝液で洗浄するステップ;混合モード樹脂を溶液と接触させて、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が豊富に存在する第1の溶出物を得るステップ;第1の溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に、LT−β−R−Ig融合タンパク質がHIC樹脂に結合できるような条件下で、充填するステップ;およびステップvi)のHIC樹脂を溶液と接触させて、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質がさらに豊富に存在する第2の溶出物を得るステップを包含する。一実施形態において、このような方法により、第2の溶出物が、1%未満の第1の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、1%未満の第2の不活性型LT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および1%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む、組成物を得る。
【0025】
一実施形態において、混合物中のLT−β−R−Ig融合タンパク質の濃度は、少なくとも300mg/Lである。一実施形態において、混合物中のLT−β−R−Ig融合タンパク質の濃度は、少なくとも800mg/Lである。一実施形態において、混合物中のLT−β−R−Ig融合タンパク質の濃度は、少なくとも1350mg/Lである。
【0026】
一実施形態において、混合物の体積は少なくとも5000Lである。一実施形態において、混合物の体積は少なくとも10000Lである。一実施形態において、混合物の体積は少なくとも15000Lである。
【0027】
本発明は、実質的に凝集体を含まない、生物学的に活性なリンホトキシン−β−受容体免疫グロブリン(LT−β−R−Ig)融合タンパク質を含む組成物を含む。一実施形態において、6%未満のLT−β−R−Ig融合タンパク質が生物学的に不活性であり、2%未満のLT−β−R−Ig融合タンパク質が凝集している。例えば、一実施形態において、5%未満のLT−β−R−Ig融合タンパク質が生物学的に不活性である。一実施形態において、3%未満のLT−β−R−Ig融合タンパク質が生物学的に不活性である。一実施形態において、1%未満のLT−β−R−Ig融合タンパク質が生物学的に不活性である。一実施形態において、0.5%未満のLT−β−R−Ig融合タンパク質が生物学的に不活性である。一実施形態において、本発明は、2%未満の凝集したLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む組成物に関する。一実施形態において、1%未満のLT−β−R−Ig融合タンパク質が凝集している。一実施形態において、1%未満のLT−β−R−Ig融合タンパク質が生物学的に不活性であり、1%未満のLT−β−R−Ig融合タンパク質が凝集している。
【0028】
一実施形態において、LT−β−R−Ig融合タンパク質は、IgG1アイソタイプのIg定常領域を含む。一実施形態において、LT−β−R−Ig融合タンパク質は、配列番号1で記述されるLT−β−Rの細胞外ドメインを含む。一実施形態において、本発明の生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質は、単量体である。本発明の生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質は、LTβに結合する能力があり、LTβRのLTβへの結合により誘導される細胞中の生物学的活性を阻止し得る。このことは、一実施形態において、標準的インビトロIL−8阻害アッセイにおいて、LT−β−R−IgがIL−8の産生を阻害する能力および/またはIL−8の放出を阻止する能力により測定することができる。例えば、一実施形態において、LTβR発現細胞をLTα1β2およびLT−β−R−Igに接触させ、LT−β−R−Igがこの細胞によるIL−8放出を阻害する能力を(適当な対照、例えば、結合分子が存在しないものと比較して)測定する。
【0029】
本発明はまた、本発明の組成物と薬学的に許容される担体とを含む製剤組成物を含む。
【0030】
本発明はさらに、少なくとも97%の生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む(すなわち、不活性型−1、不活性型−2またはその両方を欠く)組成物を含む。本発明はさらに、単量体LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む(すなわち、実質的に凝集体を欠く)組成物を含む。このような組成物は、本明細書に記載の本発明の方法を用いて生成し得る。
【0031】
本発明はさらに、自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、クローン病または多発性硬化症の治療法であって、それを必要とする被験者に製剤組成物を投与することを含む治療法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】サイクル1−1の工程の概略を示す図である。
【図2】サイクル1−1のHIC−1ブチル樹脂工程の結果ならびに不活性型−1および不活性型−2のLTβR−Ig融合タンパク質が溶出する条件を示す図である。
【図3】工程中間体のHPLCを用いた概略を表す図である。
【図4】ブチル−650MでのLTβR−Ig精製(サイクル1−1)の溶出画分中の活性型および不活性型−2の割合をグラフで示した図である。充填および洗浄濃度が1.65MのNaClでのLTβR−Ig精製。カラムには8mg/mL樹脂に二重反復充填した。0.7MのNaClで溶出し、溶出画分を順次収集して(棒グラフは画分ごとのデータを示し、累積データではない)、LTβR−Igの各型を測定した。
【図5】サイクル1−2の工程の概略を示す図である。
【図6】サイクル1−2の段階的/勾配洗浄法を表す図である。
【図7】サイクル−1の3つの分離法、すなわちプロテインA、HIC−1(ブチル)およびHIC−2(フェニル)後の不純物分離度の向上をまとめた表である。
【図8】充填、層高および流速の影響を含む、HIC−2(フェニル)ステップによる凝集体クリアランスを表す図である。図8Aは、フェニル工程後の凝集LTβR−Ig融合タンパク質および活性LTβR−Ig融合タンパク質の割合に及ぼす充填の影響を表す。図8Bは、サイクル2のHIC(フェニル)工程の展開による活性なLTβR−Ig(活性な単量体)の収率に及ぼす、層高および速度の影響を表す。
【図9】サイクル2の工程の概略を示す図である。
【図10】LTβR−Ig融合タンパク質の模式図である。
【図11】混合モード樹脂カラムの操作条件を表す図である。
【図12】サイクル2の第3カラムのクロマトグラフィー条件をグラフで表した図である。
【図13】15000製造における修正されたダウンストリーム工程の主要な性能上の特徴を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書中に記載される本発明が十分に理解され得るために、以下の詳細な説明を記述する。
I.定義
【0034】
本明細書中で互換的に用いられる「活性な」または「生物学的に活性な」という用語は、その同族結合パートナーと(例えば、受容体に対するリガンドと)結合し、LTとの細胞関連LTβRの結合の生物学的作用を遮断し得るタンパク質の形態を指す。生物学的に活性なという定義に含まれないのは、タンパク質に対する生物学的または免疫学的応答である。生物学的活性は、特性化されているタンパク質の型によって決定され得る。例えば、受容体(またはその可溶性形態)であるタンパク質は、それがそのそれぞれのリガンドと結合し得る場合、生物学的に活性であることが示され得る。代替的には、タンパク質は、活性形態のタンパク質に特異的な抗体により結合され得る。別の実施形態では、タンパク質の生物学的作用は、細胞ベースのアッセイを用いて測定され得る。このようなアッセイは、当該技術分野でよく知られている(例えば、LTβR活性は、標準IL−8抑制アッセイを用いて確定され得る)。
【0035】
「不活性な」または「生物学的に不活性な」という用語は、その同族結合パートナーと結合できない、したがって、系における生物学的応答を修飾できないか、または生物学的応答を生じるには不十分な親和性で結合するタンパク質を指す。例えば、一実施形態では、受容体またはその可溶性形態の場合、不活性形態の受容体はリガンドと結合できず、それにより活性形態の生物学的活性を媒介できない。別の実施形態では、不活性形態の受容体は、例えば低減された親和性でリガンドと結合し得るが、適切な生物学的応答を生じないか、あるいは(可溶性形態での場合)細胞ベースの形態の受容体とそのリガンドとの結合時に伝達される生物学的シグナルを完全には遮断しない。
【0036】
本明細書中で用いる場合、「活性単量体」という語句は、凝集しておらず、かつジスルフィド結合により連結されるLT−β−R−Igの2つの鎖を含む生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を指す。活性単量体の一例は、図11に提示されている。したがって、単量体は、凝集していない二鎖Fc融合タンパク質である。
【0037】
「凝集体」という用語は、誤って折り畳まれた剛性タンパク質群または高分子量材料(タンパク質の多量体を含む)を指す。一実施形態では、凝集体は、Fc融合タンパク質の2つより多い鎖を含む、LT−β−R−Ig単量体の多量体形態を指し、例えば二量体またはそれより高次の多量体形態(四量体、八量体形態)を指す。凝集体は、生物学的に活性であるかまたは不活性であり得る。
【0038】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書中で互換的に用いられ、中性(無電荷)形態でまたは塩として存在し、そしてグリコシル化、側鎖酸化またはリン酸化により修飾されないかまたは修飾される、種々の長さのアミノ酸配列を指す。ある実施形態では、アミノ酸配列は、全長ネイティブタンパク質である。他の実施形態では、アミノ酸配列は、全長タンパク質より小さい断片である。他の実施形態では、アミノ酸配列は、免疫グロブリン分子の少なくとも一部ならびに第二の非免疫グロブリン分子の第二の少なくとも一部を含むキメラタンパク質をコードする。一実施形態では、非免疫グロブリン分子は、分子の生物学的に活性な部分、例えばリガンドの受容体結合部分または受容体のリガンド結合部分、例えばTNF受容体またはその断片を含む。
【0039】
「融合タンパク質」という用語は、個々のペプチド主鎖を介した共有結合により連結される、最も好ましくは、それらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現により生成される2個もしくはそれより多くのタンパク質またはその断片を含む分子を指す。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、免疫グロブリンドメインを包含する。
【0040】
「リンホトキシン−β受容体」または「LTβR」という用語は、リンホトキシンαおよびβ鎖の三量体複合体からなる表面リンホトキシン(LT)(Crowe et al, 1994)ならびにリガンドLIGHT(リンホトキシンと相同であり、誘導性発現を示し、そしてTリンパ球により発現される受容体であるHVEMに関して単純ヘルペスウイルス糖タンパク質Dと競合する)と結合する受容体のTNFファミリーの一成員を指す。LT−β−Rは、末梢免疫系の発達に、ならびに成熟免疫系におけるリンパ節および脾臓における事象の調節に関与する(Ware et al, 1995;Mackay et al, 1997;Rennert et al, 1996;Rennert et al, 1997;Chaplin and Fu, 1998)。
【0041】
一実施形態では、LTβR−免疫グロブリン(LTβR−Ig)融合タンパク質は、LTβRの細胞外ドメインのリガンド結合部分およびIgG定常領域、例えばIgのFc部分を含む。LTβR−Ig融合タンパク質は、濾胞性樹状細胞の機能的状態に関する結果を伴って、表面LTリガンドとLTβRとの間のシグナル伝達を遮断し得る(Mackay and Browning, 1998)。この遮断は、さらに、齧歯類モデルにおける自己免疫疾患減少をもたらし得る(Mackay et al, 1998,米国特許出願第08/505,606号(1995年7月21日出願)および米国特許出願第60/029,060号(1996年10月26日出願))。LTβRの配列は、配列番号1で提示される:
ヒトLTβR配列(PUBMED AAH26262およびP36941)
【化1】

一実施形態では、LT−B−R−Ig融合タンパク質は、ヒトLT−β−R−Igの細胞外ドメインの全部またはその断片を包含し得る(例えば、それは、ヒトLT−β−Rの残基40〜200、35〜200、40〜210、35〜220、32〜225または28〜225を包含し得る)。いくつかの実施形態では、LT−β−R融合タンパク質は、配列番号1の残基32〜225により表されるようなLT−β−R分子の細胞外ドメインを包含する。
【0042】
本発明の方法および組成物に包含され得るLTβR−Ig融合タンパク質の一例は,以下に記述される(配列番号2):
【化2】

(イタリック体のアミノ酸は、シグナル配列を示す。下線を付したアミノ酸は、LT−β−Rの細胞外領域由来の配列を示す。そして太字のアミノ酸は、IgG Fc配列を示す。LT−β−R配列をIgG−Fc配列と連結するバリンは人工であり、LT−β−RまたはIgG−Fc配列に由来しない。下線を付した配列は、LT−β−Rの細胞外ドメインの実質的部分であり、配列番号1のアミノ酸32〜225に対応する)。一実施形態では、本発明の方法および組成物に用いられるLT−β−R融合タンパク質は、配列番号2で記述されるアミノ酸配列を包含し、シグナル配列を有さない。
【0043】
「表面LTリガンド」は、LTβRと特異的に結合し得る表面LT複合体またはその誘導体を指す。
【0044】
「リガンド結合ドメイン」または「リガンド結合部分」という用語は、本明細書中で用いる場合、少なくとも定性的リガンド結合能力、好ましくは対応するネイティブ受容体の生物学的活性を保持するネイティブ受容体(例えば、細胞表面受容体)あるいはその領域または誘導体を指す。
【0045】
「免疫グロブリン融合タンパク質」という用語は、ポリペプチドの機能的部分(一般的に、細胞表面タンパク質の細胞外ドメインを含む)と、免疫グロブリン定常領域(例えばCH1、CH2またはCH3ドメインあるいはその組合せ)の1つ以上の部分との融合物を指す。一実施形態では、ポリペプチドは、受容体のTNFファミリーの一成員である。Ig分子の部分は、種々の免疫グロブリンアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgM、IgA等のいずれかに由来し得る。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明の方法および組成物に用いられるタンパク質は、免疫グロブリン融合タンパク質である。例えば、融合タンパク質は、受容体、またはそのリガンド結合部分、および二量体化ドメイン、例えばFcドメインを含み得る。
【0047】
遺伝用語「免疫グロブリン」は、生化学的に区別され得る5つの異なるクラスの抗体を含む。全5クラスの抗体は、明らかに、本発明の範囲内であり、以下の考察は一般的に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに向けられる。
【0048】
「TNFファミリーの受容体」という語句は、天然で膜に結合されるにせよ、分泌されるにせよ(オステオプロテゲリンの場合のように)、標準的TNFファミリーシステイン架橋パターンを有する受容体、あるいはTNFファミリーのリガンドの規定された成員(例えば、Banner et al 1993)と結合する任意の受容体を指す。他の実施形態において主張される本発明は、本明細書中で考察される方法により得られるTNFファミリー受容体−Ig融合物に、ならびにそれらを含む薬学的調製物に関する。
【0049】
「およそ」および「約」という用語は、数の言及に際して本明細書中で用いる場合、一般的には、別記しない限り、当該数のどちらかの方向で(当該数より大きいかまたはそれ未満)10%の範囲内にある数をふくむか、あるいはそうでなければ、文脈から明らかである(このような数が考え得る値の100%を超える場合を除く)。
II.異なる形態の不活性Ig融合タンパク質および/または凝集化Ig融合タンパク質の分離
【0050】
本発明は、活性形態のタンパク質を、不活性形態から分離することにより、および/または活性形態のタンパク質を凝集体から分離することにより、精製活性形態の免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質、例えばLTβR−Ig融合タンパク質を生成する能力に関する。
【0051】
哺乳類細胞におけるIg融合タンパク質の発現は多数の形態の不活性Ig融合タンパク質を生じ得ることが知られていたが、夾雑の程度および融合タンパク質を適切に精製する手段は不明であった。さらに具体的には、LTβR−Ig融合タンパク質がサルcos細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞において2つの形態で発現される、ということを当該技術分野は教示した。一形態は、高親和性でリガンドを結合することが教示され(「活性」形態)たが、他方(「不活性」形態)はリガンドを結合しないと教示された(US 20020039580号)。しかしながら、実際、2つの異なる不活性形態のLTβR−Ig融合タンパク質(不活性型−1および不活性型−2)が存在するという認識は従来知られておらず、したがって、調製物中のこれらの不活性形態(不活性型−1および不活性型−2)の両方の存在を最小限にするための分離方法は過去に開発されなかった。例えば、以下の実施例に記載されるように、LTβR−Ig融合タンパク質の哺乳類発現は、活性LTβR−Ig融合タンパク質の混合物を生じ、この混合物は、第一不活性形態のLTβR−Ig融合タンパク質(本明細書中で「不活性型−1」として言及され、これは図3のHIC−1充填HIC−HPLCパネル中の主ピーク前の第一肩として観察され得る)、および第二不活性形態のLTβR−Ig融合タンパク質(本明細書中で「不活性型−2」として言及され、これは図3のHIC−1充填HIC−HPLCパネル中の主ピーク後の肩として観察され得る)、ならびに凝集化形態のLTβR−Igを含む。
【0052】
本発明は、複数の形態の不活性タンパク質および/またはIg融合タンパク質、ならびにタンパク質凝集体からの、所望の活性単量体形態のLTβR−Ig分離に関する。本発明の方法は、異なる型のクロマトグラフィー、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の組合せに依って、混合物から不活性Ig融合タンパク質(両形態を含む)および/または凝集体Ig融合タンパク質のパーセンテージを効果的に低減する。
【0053】
本発明は、生物学的に活性な免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質、不活性なIg融合タンパク質および凝集体を含有する混合物を分離するための方法を提供する。一態様において、分離は、混合モード樹脂を含む第一ステップと、その後のフェニルHICステップにより達成される。本発明の工程における第一ステップは、生物学的に活性なIg融合タンパク質を混合モード樹脂に結合させる条件下で、混合物を混合モード樹脂と接触させることを包含する。活性Ig融合タンパク質を結合している混合モード樹脂に伝導性である条件は、不純物結合にも伝導性であり得る、ということに留意すべきである。このようなものとして、洗浄および溶出条件を用いて、生物学的に活性なIg融合タンパク質から不純物を分離し得る。例えば、活性LT−β−R−Igの精製のために、混合モード樹脂にタンパク質混合物を充填後、ある前溶出洗浄条件および溶出条件を用いて、活性LT−β−R−Igを不活性型1から分離し得る。このような洗浄/溶出条件の例は、以下の実施例で提供される。次に、溶出物が得られるよう、生物学的に活性なIg融合タンパク質が第一混合モード樹脂ステップから溶出される。
【0054】
精製工程における第二ステップは、生物学的に活性なIg融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、第一ステップの溶出物をHIC樹脂と接触させることを包含する。活性Ig融合タンパク質が次に溶出される。その結果生じる溶液は、両不活性形態のIg融合タンパク質およびタンパク質凝集体から分離された生物学的に活性なIg融合タンパク質を含有する。好ましい実施形態では、HIC樹脂は、フェニル樹脂、例えばフェニルセファロースである。以下の実施例でさらに詳細に記載されるように、フェニルステップを用いたLT−β−R−Ig融合タンパク質の精製に関しては、生成物(活性LT−β−R−Ig融合タンパク質)、凝集体および不活性型−2は、全て、充填時にフェニルカラムと結合するが、しかし適切な洗浄/溶出条件を用いて分離される。溶出条件は、カラム上に優先的に残留する凝集体および不活性型−2を生じ得るが、一方、LT−β−R−Ig生成物は純形態で溶出する。
【0055】
活性Ig融合タンパク質を不活性形態および/または凝集体から分離するための一方法は、生物学的に活性なIg融合タンパク質をブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、生物学的に活性なIg融合タンパク質および生物学的に不活性なIg融合タンパク質を含む混合物を、ブチル樹脂と接触させることを包含する。活性Ig融合タンパク質を結合しているブチル樹脂に伝導性である条件は、不純物結合にも伝導性であり得る、ということに留意すべきである。このようなものとして、洗浄および溶出条件を用いて、生物学的に活性なIg融合タンパク質から不純物を分離し得る。例えば、活性LT−β−R−Igの精製のために、ブチル樹脂にタンパク質混合物を充填後、ある前溶出洗浄条件および溶出条件を用いて、活性LT−β−R−Igを不活性型から分離し得る。不活性型−1は、NaCl濃度を下げることにより洗い落とされ得る。活性LT−β−R−Igおよび凝集体は、NaCl濃度をさらに下げることにより溶出され得るが、一方、不活性型−2は、水(NaCl含有せず)で取り除かれるまで、カラムに結合されたままである。このような洗浄/溶出条件の例は、以下の実施例で提供される。
【0056】
生物学的に活性なIg融合タンパク質の溶出後、生物学的に活性なIg融合タンパク質が第二HIC樹脂と結合するように、溶出物はその後、第二HIC樹脂と接触させられる。生物学的に活性なIg融合タンパク質の溶出後、その結果生じた溶液は、不活性形態および/または凝集体から分離された生物学的に活性なIg融合タンパク質を含有する。一実施形態では、ブチルHIC樹脂は、ヒドロキシル化メタクリレート主鎖を含む。
【0057】
代替的には、本発明の精製方法は、フェニルHICステップの組合せを用いて達成され得る。LT−β−R−Ig融合タンパク質に関しては、生物学的に活性なLT−β−R−Ig、不活性形態(すなわち、不活性型−1および不活性型−2)ならびに凝集体は各々、フェニル樹脂と結合する。このようなものとして、活性LT−β−R−Igは、洗浄および溶出緩衝液の適切な組合せを用いて精製され得る。
【0058】
本発明の重要な一態様は、2つの不活性型のタンパク質ならびにタンパク質凝集体からの生物学的に活性なLTβR−Ig融合タンパク質の精製である。このような不純物は、LT−β−R−Ig融合タンパク質の産生、特に哺乳類細胞株における産生に起因するが、本明細書中に記載される精製工程に従って低減され得る。
【0059】
本発明は、生物学的に活性なLTβR−Ig融合タンパク質、不活性LTβR−Ig融合タンパク質および凝集体を含有する混合物を分離するための方法を提供する。一態様では、分離は、混合モード樹脂を含む第一ステップとその後のフェニルHICステップにより達成される。当該工程における第一ステップは、生物学的に活性なLTβR−Ig融合タンパク質を混合モード樹脂に結合させる条件下で、混合物を混合モード樹脂と接触させることを包含する。活性Ig融合タンパク質を結合している混合モード樹脂に伝導性である条件は不純物結合にも伝導性であり得る、ということに留意すべきである。このようなものとして、洗浄および溶出条件を用いて、生物学的に活性なIg融合タンパク質から不純物を分離し得る。生物学的に活性なLTβR−Ig融合タンパク質は、次に、溶離物が得られるよう、第一混合モード樹脂ステップから溶出される。一実施形態では、混合モード樹脂からの溶出物は、有意に低減した量の不活性型−1形態のLTβR−Ig融合タンパク質を有し、すなわち、第一溶出物は、2%未満、1%未満、または0.5%未満の不活性型1形態のLTβR−Ig融合タンパク質を含有する。さらに、凝集体は、クロマトグラフィー条件によって、充填物中の28%から溶離物中の8%に低減され得る。精製工程における第二ステップは、生物学的に活性なLTβR−Ig融合タンパク質(不純物も含み得る)を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、第一ステップの溶出物をHIC樹脂と接触させることを包含する。次に、不活性型−2形態のLTβR−Ig融合タンパク質およびタンパク質凝集体がともに有意に低減されるように、活性LTβR−Ig融合タンパク質は溶出される。一実施形態では、HIC樹脂からの溶出物は、有意に低減された量の不活性型−2形態のLTβR−Ig融合タンパク質を有し、すなわち、第一溶出物は、2%未満、1%未満、または0.5%未満の不活性型2形態のLTβR−Ig融合タンパク質を含有する。その結果生じる溶液は、不活性型のLTβR−Ig融合タンパク質およびタンパク質凝集体の両方から分離された生物学的に活性なLTβR−Ig融合タンパク質を含有する。好ましい一実施形態では、HIC樹脂はフェニル樹脂、例えばフェニルセファロースである。
【0060】
活性Ig融合タンパク質を不活性形態および/または凝集体から分離するための別の方法は、生物学的に活性なIg融合タンパク質をブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、生物学的に活性なIg融合タンパク質および生物学的に不活性なIg融合タンパク質を含む混合物を、ブチル樹脂と接触させることを包含する。次に、生物学的に活性なIg融合タンパク質は溶出され、第一溶出物中に収集される。その後、生物学的に活性なIg融合タンパク質が第二HIC樹脂と結合するように、溶出物は第二HIC樹脂と接触させられる。生物学的に活性なIg融合タンパク質の溶出後、生じた溶液は、不活性形態および/または凝集体から分離された生物学的に活性なIg融合タンパク質を含有する。一実施形態では、ブチルHIC樹脂はヒドロキシル化メタクリレート主鎖を含む。
【0061】
生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質およびタンパク質凝集体を含む混合物から少なくとも97%のタンパク質凝集体を除去するための方法も特徴となる。当該方法は、クロマトグラフィー工程の上記の組合せ、例えばHICフェニルまたは混合モード/HICフェニルを基礎にする。一実施形態では、当該方法は、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質をフェニルHICまたは混合モード樹脂に結合させる条件下で混合物をフェニルHIC樹脂または混合モード樹脂と接触させて、その後、フェニルHICまたは混合モード樹脂から生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を溶出して第一溶出物を得ることを包含する。第一溶出物は、低減された量のタンパク質凝集体、例えば25%未満のタンパク質凝集体、20%未満のタンパク質凝集体、15%未満のタンパク質凝集体、または約10%のタンパク質凝集体を有する。一実施形態では、第一HICステップ後、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質をHIC樹脂に結合させる条件下で、溶出物は第二樹脂、例えばフェニルHICと接触させられ得る。生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を溶出して、2%未満のタンパク質凝集体、または1%未満のタンパク質凝集体を含有する第二溶出物を得る。この方法は、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質およびタンパク質凝集体を含む最初の混合物から少なくとも97%のタンパク質凝集体を除去する。
【0062】
本明細書中に記載される方法の特別な利点は、出発物質の50%が望ましくない不活性種および凝集体種を含む場合、種々の工程を用いて、生成物、例えばLT−β−R−Igタンパク質を精製し得る、という点である。一実施形態では、混合モード樹脂(例えば、Capto MMC)ステップは、凝集体を28%から8%に低減し得るし、サイクル−2フェニルカラムは凝集体を24%から1.0%未満に低減し得る。
【0063】
本発明の別の態様は、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む組成物の製造方法である。本明細書中で上記されたように、一例示的実施形態では、組成物は、1%未満の第一不活性型のLT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1タンパク質)、1%未満の第二不活性型のLT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型2タンパク質)および1%未満のタンパク質凝集体を含む。当該方法は、不活性Ig融合タンパク質およびタンパク質凝集体の除去を提供するクロマトグラフィー工程のある組合せを基礎にする。当該方法は、LT−β−R−Ig融合タンパク質をコードするDNAで形質転換された哺乳類宿主細胞を含む哺乳類細胞培養系から細胞培養上清を得ることを包含する。発現後、細胞培養上清は組換えプロテインA(rプロテインA)と接触されて、LT−β−R−Ig融合タンパク質混合物を得る。LT−β−R−Ig融合混合物は、活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、樹脂と接触される。活性LT−β−R−Ig融合タンパク質の溶出後、活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を第二疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、溶出物はHIC樹脂と接触される。一実施形態では、活性LT−β−R−Ig融合タンパク質の溶出後、溶出物は、1%未満の第一不活性型のLT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1タンパク質)、1%未満の第二不活性型のLT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型2タンパク質)および1%未満のタンパク質凝集体を含む。一実施形態では、本発明は、1%未満の第一不活性型のLT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1タンパク質)、1%未満の第二不活性型のLT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型2タンパク質)および1%未満のタンパク質凝集体を含む組成物に関する。
【0064】
一実施形態では、細胞培養中で発現されるLT−β−R−Ig融合タンパク質のフェニルベースの精製は、カラムが1M硫酸アンモニウムで充填され、0.44Mで溶出される段階的溶出を包含する。凝集体および不活性型−2形態のLTBR−Igは、当該生成物より「後に」溶出する。
【0065】
一実施形態では、細胞培養中で発現されるLT−β−R−Ig融合タンパク質のブチルベースの精製は、NaCl濃度を段階的に下げることにより、カラム充填後、不活性型1LT−β−R−Ig融合タンパク質を洗浄することを包含する。次いで、ブチル溶出のために、NaCl濃度はさらに段階的に下げられ、生成物(および凝集物)は溶出するが、しかし不活性型−2は溶出しない。最後に、NaCl塩濃度をゼロに下げることにより、不活性型−2がブチルカラムから取り除かれる。
【0066】
活性型および不活性型のLT−β−R−Ig融合タンパク質は、当該技術分野で知られた任意数のパラメーター、例えばLTリガンドとの結合によって確定され得る。一実施形態では、結合相互作用の親和性が測定され得る。別の実施形態では、生物学的応答を引き起こすLT−β−R分子の能力を測定する当該技術分野で既知のインビトロアッセイ、例えばIL−8抑制アッセイを用いて、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を、生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質と区別し得る。
【0067】
例えば、一実施形態では、IL−8放出アッセイはIL−8の分泌に基づいており、これは、可溶性組換えヒトリンホトキシンα1β2がA375細胞(ヒト黒色腫細胞株)上の細胞表面リンホトキシンβ受容体と結合した後に観察される。IL−8放出アッセイは、可溶性リンホトキシンα1β2と結合して、それがリンホトキシンβ受容体と結合しないようにすることにより、このIL−8分泌を遮断する結合分子(例えば、LT−β−R−Ig)の能力を測定する。培地上清中に分泌されるIL−8は、その後、ELISAアッセイで測定される。結合分子は適切な濃度に希釈されて、可溶性組換えヒトリンホトキシンα1β2(170ng/ml)とともに、室温で1時間、96ウエル微小滴定プレート中でインキュベートされる。リンホトキシンα1β2の濃度は、最大量のIL−8放出を確定する滴定実験により最適化される。次いで、20000個のA375細胞が各ウエルに付加され、37℃で5%COで17時間、インキュベートされる。インキュベーション期間の終了時に、プレートは遠心分離されて、上清が採取される。上清は、標準サンドイッチELISAアッセイでIL−8濃度に関して試験される。IL−8濃度は、抗体濃度に対してプロットされ、データの4−パラメーター曲線適合からIC50が確定される。
【0068】
一般的に、抑制%が対照参照の75%〜135%である場合、LT−β−R−Ig融合タンパク質は、IL−8抑制アッセイにおいて活性であるとみなされる。代替的には、活性型および不活性型のLT−β−R−Ig融合タンパク質は、一方の型または他方の型に特異的な抗体を用いて確定され得る。LT−β−R−Ig融合タンパク質の活性または機能型に特異的な抗体(不活性型を結合できない抗体)の例としては、AGH1(ハイブリドーマAG.H1.5.1;ATCC寄託番号HB11796により産生される)およびBDA8(マウス抗ヒトLT−β−R mAb BDA8を産生するハイブリドーマ細胞株(BD.A8.AB9)は、ブダペスト条約の規定に従って、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)(Rockville, Md.)に1995年1月12日に寄託され、ATCC寄託番号HB11798を割り当てられた)が挙げられ、これらは各々、US 20020197254号、US 20020039580号および米国特許第7,001,598号(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)に記載されている。さらに、活性および不活性なタンパク質は、本明細書中に記載されるクロマトグラフィー工程に従って、それらの溶出特性により特徴づけされ得る。例えば、ブチルHICカラムを用いて、不活性型−1形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質は、1.55MのNaClの第一洗浄液中に溶出される。LT−β−R−Ig融合タンパク質およびタンパク質凝集体は、溶出緩衝液として0.7MのNaClを用いてカラムから溶出され、そして不活性型−2形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質は、純水の剥離洗浄を用いて溶出される。以下の実施例でさらに詳細に記載されるように、同様の精製は、塩化ナトリウムの代わりに硫酸ナトリウムの段階的勾配を用いて達成され得る。
【0069】
上記の方法は、大規模製法を用いて実施され得る、ということに留意すべきである。例えば、本明細書中に記載される方法を用いて、少なくとも5000L、少なくとも10000L、少なくとも15000L、15000Lまたは15000Lより多い体積を有する混合物から不純物を効果的に分離し得る。
【0070】
さらに、あるカラムパラメーターは、タンパク質回収を最大にするよう調整され得る。一実施形態では、当該方法の第二HICステップは、25〜35センチメートル、29〜30cm、または約30センチメートルの高さを有するカラムを包含する。
【0071】
本明細書中に記載される方法を用いて得られる組成物も本発明に包含される、と理解されるべきである。例えば、一実施形態では、本発明は、生物学的に活性なIg融合タンパク質、例えばLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む組成物を提供し、この場合、Ig融合タンパク質の10%未満が生物学的に不活性である。別の実施形態では、5%未満のIg融合タンパク質が生物学的に不活性であり;1%未満のIg融合タンパク質が生物学的に不活性であり;あるいは0.5%未満のIg融合タンパク質が生物学的に不活性である。低減されたレベルの凝集体を含有する組成物、例えば生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質および2%未満のタンパク質凝集体を含む組成物も記載される。
III.クロマトグラフィー技術
【0072】
本発明の分離方法は、ポリペプチドの非精製集団(例えば、培養上清または原核生物封入体から単離されるIg融合タンパク質の調製物)で実施され得る。このような培養上清の獲得方法は、IV節において以下でさらに詳細に記載される。代替的には、本発明の分離方法は、1回または複数回の初期選択ステップまたは精製ステップ後に、例えば不活性型および活性型を含む調製物が親和性マトリックス(例えばプロテインA)から溶出された後に、得られるポリペプチド混合物に関して用いられ得る。
【0073】
好ましい一実施形態では、本明細書中に記載されるクロマトグラフィー工程は、他のタンパク質精製手法により部分的に精製された混合物に適用され得る。「部分的に精製される」という用語は、本明細書中で用いる場合、当該Ig融合タンパク質が少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも45重量%の濃度で存在するタンパク質調製物を包含する。初期またはその後の精製工程を用いて、例えば免疫グロブリン凝集体、誤って折り畳まれたタンパク質、宿主細胞タンパク質、前のクロマトグラフィー工程からの残留物質(例えば、用いられた場合はプロテインA)を除去し得る。したがって、本明細書中に記載される特定のクロマトグラフィー工程の適用は、全体的精製プロトコールの状況においても理解され得る。精製の前または後に用いられ得る精製工程の例としては、以下のものが挙げられる:アフィニティークロマトグラフィー(例えば、孔径が制御されたガラスに共有結合したプロテインAから構成されるPROSEP−A(登録商標)(BioProcessing Ltd, U.K.)、またはプロテインA SEPHAROSE(登録商標)Fast Flow(Pharmacia)またはTOYOPEARL 650MプロテインA(TosoHaas))。プロテインAは、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に関して選択され、プロテインGはマウスアイソタイプに関して選択される。当該分子がCH3ドメインを含む場合は、Bakerbond ABXtm樹脂が用いられ得る。
【0074】
本発明の方法に用いられ得るクロマトグラフィーの一例は、混合モードクロマトグラフィーである。好ましい混合モード樹脂は、30mS/cmで45mgのBSA/培地のmLより大きい動的結合能力を有するものであり、マルチモード弱陽イオン交換体である。用いられ得る混合モード樹脂の一例は、Capto MMC(GE Healthcare)である。
【0075】
用いられ得るクロマトグラフィーの一例は、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたはHICである。「HIC」という用語は、本明細書中で用いる場合、カラムとIg融合タンパク質との間に疎水性相互作用を用いて、不活性型のタンパク質およびその他の夾雑物、例えば凝集体を、再折畳み生成物、すなわち生物学的に活性なIg融合タンパク質から分離する疎水性相互作用クロマトグラフィーを指す。
【0076】
炭化水素スペーサーアームを含むがアフィニティーリガンドを欠くアフィニティーゲル上にタンパク質が保持され得るという観察後に、疎水性相互作用クロマトグラフィーは初めて展開された。HIC支持体からの溶出は、溶媒、pH、イオン強度の変更により、あるいはカオトロピック剤または有機修飾剤、例えばエチレンまたはプロピレングリコールの付加により実行され得る。疎水性相互作用クロマトグラフィーの一般原理についての記載は、例えば米国特許第3,917,527号に、ならびに米国特許第4,000,098号に見出され得る。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の状況におけるHICは、単一段階プロトコールにおいて、重鎖部分を欠く抗体断片(例えば、F(ab’))を無傷抗体分子から分離するために用いられてきた(Morimoto, K. et al., L Biochem. Biophys. Meth. 24: 107 (1992))。
【0077】
イオン交換クロマトグラフィーも、本発明の方法に用いられ得る。これに関しては、クロマトグラフィーのための陰イオン性または陽イオン性支持体を形成するために、種々の陰イオン性または陽イオン性置換基がマトリックスに結合され得る。陰イオン交換置換基としては、ジエチルアミノエチル(DEAE)、第四級アミノエチル(QAE)および第四級アミン(Q)基が挙げられる。陽イオン交換置換基としては、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、ホスフェート(P)およびスルホネート(S)が挙げられる。セルロースイオン交換樹脂、例えばDE23、DE32、DE52、CM−23、CM−32およびCM−52は、Whatman Ltd. Maidstone, Kent, U.K.から入手可能である。セファデックス(登録商標)ベースのイオン交換体および低架橋イオン交換体も既知である。例えば、DEAE−、QAE−、CM−およびSP−セファデックス(登録商標)、ならびにDEAE−、Q−、CM−およびS−セファロース(登録商標)、ならびにセファロース(登録商標)Fast Flowは、全て、Pharmacia ABから入手可能である。さらに、DEAEおよびCM誘導体化エチレングリコール−メタクリレートコポリマー、例えばTOYOPEARL、DEAE−650SまたはMおよびTOYOPEARL CM−650SまたはMはともに、Toso Haas Co., Philadelphia, Paから入手可能である。
【0078】
疎水性相互作用は高イオン強度で最強であり、したがって、この型の分離は、塩析またはイオン交換手法に従って都合よく実施される。HICカラムへのタンパク質の吸着は高い塩濃度により促進されるが、しかし実際の濃度は、タンパク質の性質ならびに選択される特定のHICリガンドによって広範囲に亘って変わり得る。種々のイオンは、それらが疎水性相互作用を促進する(塩析作用)か、または水の構造を崩壊(カオトロピック作用)して疎水性相互作用を弱めるか否かによっていわゆるソルボホビック(soluphobic)シリーズに配置され得る。陽イオンは、Ba++<;Ca++<;Mg++<;Li<;Cs<;Na<;K<;Rb<;NHのような塩析作用の漸増に関して等級付けされるが、一方、陰イオンは、PO−−−<;SO−−<;CHCOOO<;Cl<;Br<;NO<;ClO<;I<;SCNのようなカオトロピック作用の漸増に関して等級付けされ得る。HICクロマトグラフィーは、結合および溶出モードで用いられ得る。代替的には、HICはフロースルーモードで用いられ得る。
【0079】
概して、Na、KまたはNHの硫酸塩は、HICにおけるリガンド−タンパク質相互作用を効果的に促進する。以下の関係により示されるような、相互作用の強度に影響を及ぼす塩が処方され得る:(NHSO>;NaSO>;NaCl>;NHCl>;NaBr>;NaSCN。概して、約0.75〜約2Mの硫酸アンモニウムの塩濃度または約1〜約4MのNaClの塩濃度が有用である。一実施形態では、0.3〜0.6MのNaSOが、LTβR−Ig融合タンパク質をHICに結合するために用いられる。HICからのN.B溶出は、ここで記述されるものより低い塩濃度、例えば0.3M未満のNaSOでも達成され得る。一実施形態では、タンパク質生成物を溶出するために0.0〜0.5Mの硫酸アンモニウム、例えば0.3〜0.5Mの硫酸アンモニウム(これらに限定されない)が用いられる。
【0080】
付加的精製プロトコール、例えば以下の:さらなるイオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ウイルス不活性化、濃縮および凍結乾燥、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンセファロース(商標)上でのクロマトグラフィー、等電点電気泳動、PEG沈降、または硫酸アンモニウム沈降が付加され得るが、必ずしもこれらに限定されない。
【0081】
本発明の実施形態に見出される付加的精製工程としては、陰イオン交換膜濾過(例えば、Q膜吸着装置によるタンパク質調製物の精製)が挙げられる。いくつかの実施形態では、Q膜吸着装置によるタンパク質精製は、6.2より高いpHで、高導電性の溶液中で実施される。本明細書中で用いる場合、「高導電性」は、約50mS/cmまたはそれより高い導電性を指す。
【0082】
多数のクロマトグラフィー支持体はカラムの調製に用いられ得、最も広範に用いられるのは、アガロース樹脂、シリカ樹脂および有機ポリマー樹脂またはコポリマー樹脂である。疎水性相互薬剤は、一般的には、疎水性リガンド(例えば、アルキルまたはアリール基)が結合する塩基マトリックス(例えば、親水性炭水化物(例えば、架橋アガロース)または合成コポリマー材料)である。一実施形態では、HIC物質は、フェニル基で置換されたアガロース樹脂を含む。HIC物質の例としては、以下のものが挙げられる:フェニルセファロース(商標)、低または高置換を伴うFAST FLOW(GE Healthcare;Pharmacia LKB Biotechnology, AB, Sweden);フェニルセファロース(商標)高速カラム;フェニルまたはブチル−セファロース(登録商標) CL−4B、ブチル−セファロース(登録商標)FF、オクチル−セファロース(登録商標)FFおよびフェニル−セファロース(登録商標)FF(Pharmacia LKB Biotechnology, AB, Sweden);フラクトゲル(商標)EMDプロピルまたはフラクトゲル(商標)EMCフェニルカラム(E. Merck, Germany);マクロプレプ(商標)メチルまたはマクロプレプ(商標)t−ブチル支持体(Bio−Rad, California);WP HI−プロピル(C3)(商標)カラム(J.T. Baker, New Jersey)。
【0083】
代表的なHIC物質は、トヨパール エーテル650、フェニル650、ブチル650(EMD Merck)、ブチル600(EMD Merck)、エーテル−5PW−HRまたはフェニル−5PW−HRの製品名で東ソー株式会社(日本、東京)から;アルキル−アガロース(ここで、アルキル基は2〜10個の炭素原子を含有する)の製品名でMiles−Yeda, Rehovot, Israelから;ベイカーボンドWP−HI−プロピルの製品名でJ.T. Baker, Phillipsburg, N.J.からも入手可能である。慣用的化学を用いて、所望のHICカラムを調製することも可能である(例えば、Er−el. Z. et al, Biochem. Biophys. Res. Comm. 49: 383 (1972)またはUlbrich, V. et al Coll. Czech. Chem. Commum. 9: 1466 (1964)参照)。
【0084】
特定のゲルの選択は、当業者により確定され得る。概して、タンパク質とリガンドとの相互作用の強さは、アルキルリガンドの鎖長に伴って増大するが、しかし約4〜8個の炭素原子を有するリガンドはほとんどの分離に適している。フェニル基はペンチル基とほぼ同じ疎水性を有するが、しかし選択性は、タンパク質上の芳香族基とのパイ−パイ軌道相互作用の可能性のために異なり得る。選択性も、支持樹脂の化学的性質によっても影響を及ぼされ得る。
【0085】
リガンド密度は、それが相互作用の強度および特異性だけでなく、カラムの容量にも同様に影響を及ぼす点で、重要なパラメーターである。市販のフェニルまたはオクチルフェニルゲルのリガンド密度は、40pモル/ゲル床のmlのオーダーである。ゲル容量は、当該特定タンパク質、ならびにpH、温度および塩型の関数であるが、しかし一般的には、濃度は3〜20mg/ゲルのmlの範囲であると予期され得る。
【0086】
概して、温度が下がると、クロマトグラフィー物質との相互作用は低減する。しかしながら、温度を上げることにより生じる任意の利益はまた、上昇がタンパク質の安定性に及ぼし得るような悪作用に対しても影響力を有するはずである。
【0087】
一実施形態では、Ig融合タンパク質は、アイソクラチカルに溶出され得る。アイソクラチック溶出では、化合物は全て、開始時にカラムを通して移動し始める。しかしながら、各々が異なる速度で移動して、速い溶出速度や遅い溶出速度を生じる。
【0088】
別の実施形態では、本発明のタンパク質は、カラムと結合され得、例えば段階的溶出または勾配溶出を用いて溶出され得る。溶出は、段階的であれ、勾配形態であれ、以下のような種々の方法で成し遂げられ得る:(a)塩濃度を変えることによる、(b)溶媒の極性を変えることによる、あるいは(c)界面活性剤を付加することによる。塩濃度を低減することにより、吸着タンパク質は、疎水性が低いものから順に溶出される。極性の変化は、溶媒、例えばエチレングリコールもしくはプロピレングリコールまたは(イソ)プロパノールの付加によって、疎水性相互作用の強度を低減することにより、影響され得る。界面活性剤は、タンパク質の置換剤として機能し得、かつ膜タンパク質の精製と関連して主に用いられ得る。
【0089】
分離を実施するに際して、ポリペプチド混合物は、例えば、バッチ精製技法を用いて、またはカラムを用いて、クロマトグラフィー物質と接触させられ得る。精製前に、例えば、混合物を予備カラムに通すことにより、任意のカオトロピック剤または極疎水性の物質を除去することが望ましくあり得る。
【0090】
例えば、バッチ精製のために、クロマトグラフィー物質は、所望の出発緩衝液中で調製されるか、または平衡化される。物質のスラリーが得られる。ポリペプチド溶液はスラリーと接触させられて、クロマトグラフィー物質に、分離されるべきポリペプチドの少なくとも1つが吸着される。クロマトグラフィー物質と結合しないポリペプチドを含有する溶液は、例えば、スラリーを固めさせ、上清を除去することにより、スラリーから分離される。スラリーは、1回または複数回の洗浄ステップに付され得る。所望により、スラリーは、より低い導電性の溶液と接触させられて、HIC物質と結合しているポリペプチドを脱着し得る。結合ポリペプチドを溶出するために、塩濃度は低減させられ得る。
【0091】
一実施形態では、クロマトグラフィー物質は、カラム中に詰め込まれ得る。分離されるべきポリペプチドを含む混合物はカラムに適用され得、分離されるべきポリペプチドのうちの少なくとも1つはカラムに吸着させられ得る。カラムに吸着しないポリペプチドは、通過して、収集され得る。結合ポリペプチドを溶出するために、例えば、段階的に、または塩勾配(例えば連続的もしくは段階的塩勾配)を用いて、塩濃度が低減され得、そして示差脱着により結合物質の分離を達成し得る。
【0092】
不活性型のIg融合タンパク質および/またはタンパク質凝集体を分離するのに有効であると確認されている具体的なクロマトグラフィー組合せは、本明細書中でさらに説明される。
IV.Ig融合タンパク質の発現
【0093】
本発明の方法は、当該技術分野で知られた技法、例えば細胞培養技法を用いて最初に成されるIg融合タンパク質の混合物を精製するために用いられる。
【0094】
要するに、Ig融合タンパク質をコードする核酸は、典型的には、用いられ得る宿主細胞中への導入のために発現ベクター中に挿入されて、所望量のポリペプチドを生じ、これは順次、本明細書中に記載される方法に従う精製のためにIg融合タンパク質を提供する。
【0095】
「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、細胞中に所望の遺伝子を導入し、発現するためのビヒクルとして本発明に従って用いられるベクターを意味し、本明細書および特許請求の範囲の目的のために、本明細書中で用いられる。当業者に既知であるように、このようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルスおよびレトロウイルスからなる群から容易に選択され得る。概して、本発明と適合性のベクターは、選択マーカー、所望の遺伝子のクローニングを促す適切な制限部位、ならびに真核生物細胞中または原核生物細胞中に進入しおよび/またはその中で複製する能力を有する。
【0096】
本発明の目的のために、多数の発現ベクター系が用いられ得る。例えば、一クラスのベクターは、動物ウイルス、例えば牛パピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウイルスから得られるDNAエレメントを利用する。他のものは、内部リボソーム結合部位を有する多シストロン系の使用を包含する。付加的には、染色体中にDNAを組込んでいる細胞は、トランスフェクト化宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することにより選択され得る。マーカーは、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤耐性(例えば抗生物質)、または重金属、例えば銅に対する耐性を提供し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるべきDNA配列と直接的に連結され得るか、あるいは同時形質転換により同一細胞中に導入され得る。付加的エレメントも、mRNAの最適合成のために必要とされ得る。これらのエレメントとしては、シグナル配列、スプライス配列、ならびに転写プロモーター、エンハンサーおよび終結シグナルが挙げられ得る。特に好ましい実施形態では、クローン化可変領域遺伝子が、上記のように合成の(好ましくはヒト)重鎖および軽鎖定常領域遺伝子とともに、発現ベクター中に挿入される。好ましくは、これは、NEOSPLAと呼ばれるIDEC, Inc.の独占的な発現ベクター(米国特許第6,159,730号)を用いて実行される。このベクターは、サイトメガロウイルス・プロモーター/エンハンサー、マウスβグロビン主要プロモーター、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ・エキソン1およびエキソン2、ジヒドロフォレートレダクターゼ遺伝子およびリーダー配列を含有する。ベクター系は、米国特許第5,736,137号および第5,658,570号(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)においても教示されている。この系は、高発現レベル、例えば30pg超/細胞/日を提供する。他の代表的なベクター系は、例えば米国特許第6,413,777号に開示されている。
【0097】
他の好ましい実施形態では、Ig融合タンパク質は、同時係属中の米国特許仮出願第60/331,481号(2001年11月16日出願)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に開示されたものと同様の多シストロン構築物を用いて、発現され得る。これらの新規の発現系において、当該する複数の遺伝子産物、例えば抗体の重鎖および軽鎖が、単一多シストロン構築物から産生され得る。これらの系は、内部リボソーム進入部位(IRES)を用いて、真核生物宿主細胞中に相対的に高レベルの本発明のポリペプチドを提供することが有益である。匹敵するIRES配列は、米国特許第6,193,980号(この記載内容もまた参照により本明細書中で援用される)に開示されている。本出願中に開示される全範囲のポリペプチドを効果的に産生するためにこのような発現系が用いられ得る、と当業者は理解する。
【0098】
さらに一般的には、Ig融合タンパク質をコードするベクターまたはDNA配列が一旦調製されれば、発現ベクターは適切な宿主細胞中に導入され得る。すなわち、宿主細胞は形質転換され得る。宿主細胞中へのプラスミドの導入は、当業者によく知られた種々の技法により成し遂げられ得る。これらの例としては、トランスフェクション(例えば、電気泳動および電気穿孔)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープDNAによる細胞融合、マイクロインジェクション、ならびに無傷ウイルスによる感染が挙げられるが、これらに限定されない。Ridgway, A.A.G. “Mammalian Expression Vectors” Chapter 24.2, pp.470−472 Vectors, Rodriguez and Denhardt, Eds. (Butterworths, Boston, Mass. 1988)を参照されたい。最も好ましくは、宿主中へのプラスミド導入は、電気穿孔による。形質転換細胞は、軽鎖および重鎖の産生に適した条件下で増殖させられ、重鎖および/または軽鎖タンパク質合成に関してアッセイされる。アッセイ技法の例としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)または蛍光活性化細胞選別(FACS)、免疫組織化学等が挙げられる。
【0099】
本明細書中で用いる場合、「形質転換」という用語は、遺伝子型を変えて、その結果、レシピエント細胞に変化を生じる、レシピエント宿主細胞中へのDNAの任意の導入を指すために広義で用いられる。
【0100】
同様に、「宿主細胞」は、組換えDNA技術を用いて構築され、かつ少なくとも1つの非相同遺伝子をコードするベクターで形質転換された細胞を指す。組換え宿主からの抗体の単離のための工程の記載に際して、「細胞」および「細胞培養」という用語は、それが明らかに別記されない限り、抗体の供給源を意味するために互換的に用いられる。言い換えれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、遠心沈殿全細胞から、または培地および懸濁細胞の両方を含有する細胞培養からを意味し得る。
【0101】
タンパク質発現のために用いられる宿主細胞株は、最も好ましくは、哺乳類起源のものである;その中で発現されるべき所望の遺伝子産物に最も適している特定の宿主細胞株を選択的に確定する能力を、当業者は有している。宿主細胞株の例としては、DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40T抗原を有するCVIの誘導体)、R1610(チャイニーズハムスター繊維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス繊維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3.times.63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)および293(ヒト腎臓)が挙げられるが、これらに限定されない。CHO細胞が特に好ましい。宿主細胞株は、典型的には、業者であるアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Tissue Culture Collection)から、または刊行された文献から入手可能である。
【0102】
インビトロ産生は、多量の所望のポリペプチドを生じるよう増大し得る。組織培養条件下での哺乳類細胞培養のための技法は当該技術分野で知られており、例えばエアリフト型反応器中または連続撹拌反応器中での均質懸濁培養、あるいは例えば中空繊維中、マイクロカプセル中、アガロースマイクロビーズ上、またはセラミックカートリッジ上での固定化または封入細胞培養を包含する。
【0103】
本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、非哺乳類細胞、例えば細菌または酵母または植物細胞でも発現され得る。この点で、種々の非哺乳類の単細胞性微生物、例えば細菌も形質転換され得る;すなわち、それらは培地でまたは発酵しながら増殖し得る、と理解される。形質転換に感受性である細菌としては、腸内細菌科、例えば大腸菌またはサルモネラの系統;バシラス科、例えば枯草菌;肺炎球菌属;連鎖球菌属およびインフルエンザ菌の成員が挙げられる。さらに、細菌中で発現される場合、ポリペプチドは、典型的には、封入体の一部になる、と理解される。ポリペプチドは、単離され、精製され、次いで機能性分子に集合されなければならない。
【0104】
原核生物のほかに、真核生物微生物も用いられ得る。出芽酵母、または一般的パン酵母は、真核生物微生物の中でも最も一般的に用いられるが、しかし、多数の他の系統も一般的に利用可能である。酵母菌属における発現に関しては、例えば、プラスミドYRp7(Stinchcomb et al., Nature, 282: 39 (1979);Kingsman et al., Gene, 7: 141 (1979);Tschemper et al., Gene, 10: 157 (1980))が一般に用いられる。このプラスミドは、TRP1遺伝子をすでに含有し、この遺伝子は、トリプトファン存在下で増殖する能力を欠く変異系統の酵母(例えば、ATCC番号44076またはPEP4−1(Jones, Genetics, 85: 12 (1977))に対する選択マーカーを提供する。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrpl損傷の存在は、この場合、トリプトファンの非存在下での増殖により形質転換を検出するための有効な環境を提供する。
【0105】
一実施形態では、本発明のIg融合タンパク質は、低培養温度、すなわち慣用的な37℃より下の温度、または28℃〜32℃の温度で、哺乳類細胞培養を用いて発現される。Ig融合タンパク質、特にTNF受容体−Ig融合タンパク質の低温培養は、不活性融合タンパク質の全体的パーセンテージを低減する。
【0106】
低温でのIg融合タンパク質の培養方法は、US 20020039580号(Browning等)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
【0107】
一実施形態では、本発明の方法を用いる精製のための出発物質は、組換えIg融合タンパク質を発現するCHO細胞からの上清である。一実施形態では、CHO細胞は、約28℃〜32℃の温度で培養される。一実施形態では、精製のための出発物質は、約20〜40%の凝集物質を含む。一実施形態では、精製のための出発物質は、約30%の凝集物質を含む。一実施形態では、出発物質は、約50%、または50%より多い凝集物質を含む。
【0108】
本発明の方法を用いる精製の前に、分離されるべきポリペプチドの混合物を含む組成物は、好ましくは、酸性またはほぼ中性のpHを有する緩衝液中に入れられる。これは、例えば、濃縮した緩衝液を付加し、試料を緩衝液中に懸濁し、(例えば、透析または限外濾過を用いて)緩衝液を交換することにより、実行され得る。代替的には、試料緩衝液のpHは、所望の範囲内であるよう簡単に調整され得る。
V.免疫グロブリン融合タンパク質
【0109】
本明細書中に記載される方法は、例えば多重ジスルフィド架橋のため、不適切なフォールディングをおそらくは有すると思われるIg融合タンパク質に関して有用である。このようなタンパク質は、おそらくは不完全なまたは異常なフォールディングを有し、その結果、サイズおよび特質が活性タンパク質に非常によく似ているにもかかわらず、不活性で治療的使用に望ましくない異なる形態の不活性タンパク質を生じる。
【0110】
一態様では、本発明の方法を用いて、複雑なフォールディングを有する融合タンパク質、例えば、ジスルフィド結合を形成する多数のシステイン残基を有するタンパク質を精製し得る。
【0111】
一実施形態では、Ig融合タンパク質は、リガンドまたは受容体の結合ドメイン(例えば、受容体の細胞外ドメイン(ECD))(単数または複数)が、少なくとも1つの重鎖ドメインおよび連結ペプチド(単数または複数)と結合している。一実施形態では、本発明の融合タンパク質を調製する場合、リガンドの結合ドメインまたは受容体ドメインをコードする核酸は、免疫グロブリン定常ドメイン配列のN末端をコードする核酸と、C末端で融合される。N末端融合もあり得る。一実施形態では、融合タンパク質は、CH2およびCH3ドメインを含む。融合はまた、定常ドメインのFc部分のC末端となされ得、あるいは重鎖のCH1または軽鎖の対応する領域のN末端と直接なされ得る。
【0112】
一実施形態では、リガンドまたは受容体結合ドメインの配列は、免疫グロブリン分子のFcドメインのN末端に融合される。全重鎖定常領域をリガンドまたは受容体結合ドメイン配列と融合することも可能である。一実施形態では、パパイン切断部位(すなわち残基216、重鎖定常領域の最初の残基を114であるとみなす)のすぐ上流のヒンジ領域で開始する配列(化学的にIgG Fcと定義する)または他の免疫グロブリンの類似の部位が、融合に用いられる。融合が成される正確な部位は重要ではない;特定部位はよく知られており、分子の生物学的活性、分泌または結合特質を最適化するために、選択され得る。融合タンパク質の製造方法は、当該技術分野で知られている。一実施形態では、結合ドメインを含有するタンパク質は、例えば1〜5アミノ酸長であるアミノ酸リンカーを介してFcドメインに連結される。一実施形態では、TNF受容体およびFcドメインは、単一アミノ酸を介して連結される。
【0113】
好ましい一実施形態では、本明細書中に記載される精製方法は、TNF受容体Ig融合タンパク質を分離するために用いられ得る。他の実施形態において特許請求される本発明は、本明細書中で考察される方法により得られるTNFファミリー受容体−Ig融合タンパク質、ならびにそれらを含む薬学的調製物に関する。TNF受容体の一例は、LTβRである。他の例としては、HVEMが挙げられる。
【0114】
一態様では、本発明の方法は、LTβR−Ig融合タンパク質の精製組成物を達成する。
【0115】
一実施形態では、LTβR−Ig融合タンパク質は、ヒトLTβRの細胞外ドメイン(膜貫通ドメインを欠く形態)および免疫グロブリンFc領域(IgG1 Fcドメイン)を含む。配列番号1は、細胞外ドメインを含めたヒトLTβRの全長配列を記載する。LT−β−R−Ig融合物のスキームは、図10で提供される。
【0116】
他の融合タンパク質も、本発明に含まれる。文献で報告された融合タンパク質の例としては、T細胞受容体(Gascoigne et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 2936−2940 (1987));CD4(Capon et al., Nature 337: 525−531 (1989);Traunecker et al., Nature 339: 68−70 (1989);Zettmeissl et al., DNA Cell Biol. USA 9: 347−353 (1990);およびByrn et al., Nature 344: 667−670 (1990));L−セレクチン(ホーミング受容体)(Watson et al., J. Cell. Biol. 110: 2221−2229 (1990);およびWatson et al., Nature 349: 164−167 (1991));CD44(Aruffo et al., Cell 61: 1303−1313 (1990));CD28およびB7(Linsley et al., J. Exp. Med. 173: 721−730 (1991));CTLA−4(Lisley et al., J. Exp. Med. 174: 561−569 (1991));CD22(Stamenkovic et al., Cell 66: 1133−1144 (1991));TNF受容体(Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535−10539 (1991);Lesslauer et al., Eur. J. Immunol. 27: 2883−2886 (1991);およびPeppel et al., J. Exp. Med. 174: 1483−1489 (1991));ならびにIgE受容体a(Ridgway and Gorman, J. Cell. Biol. Vol.115, Abstract No.1448 (1991))の融合物が挙げられる。
【0117】
本発明の融合タンパク質に含まれうるリガンドおよびそれらの受容体のさらなる例としては、以下のものが挙げられる。
サイトカインおよびサイトカイン受容体
【0118】
サイトカインは、リンパ球の増殖、分化および機能的活性化に及ぼす多面的作用を有する。種々のサイトカインまたはそれらの受容体結合部分は、本発明の融合タンパク質で利用され得る。サイトカインの例としては、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13およびIL−18)、コロニー刺激因子(CSF)(例えば、顆粒球CSF(G−CSF)、顆粒球−マクロファージCSF(GM−CSF)、および単球マクロファージCSF(M−CSF))、腫瘍壊死因子(TNF)αおよびβ、ならびにインターフェロン、例えばインターフェロン−α、βまたはγが挙げられる(米国特許第4,925,793号および第4,929,554号)。サイトカイン受容体は、典型的には、リガンド特異的α鎖および共通β鎖からなる。サイトカイン受容体の例としては、GM−CSF、IL−3(米国特許第5,639,605号)、IL−4(米国特許第5,599,905号)、IL−5(米国特許第5,453,491号)、IFNγ(EP0240975)およびTNFファミリーの受容体(例えば、TNFα(例えばTNFR−1(EP417,563)、TNFR−2(EP417,014)リンホトキシンβ受容体)に関するものが挙げられる。
接着タンパク質
【0119】
接着分子は、細胞を互いに相互作用させる膜結合タンパク質である。その受容体結合部分の、白血球ホーミング受容体および細胞接着分子を含めた種々の接着タンパク質は、本発明の融合タンパク質中に組み入れられ得る。白血球ホーミング受容体は、炎症中に白血球細胞表面上で発現され、ならびに、細胞外マトリックス構成成分との結合を媒介するβ−1インテグリン(例えば、VLA−1、2、3、4、5および6)および血管内皮上の細胞接着分子(CAM)を結合するβ2−インテグリン(例えば、LFA−1、LPAM−1、CR3およびCR4)を包含する。代表的なCAMとしては、ICAM−1、ICAM−2、VCAM−1およびMAdCAM−1が挙げられる。他のCAMとしては、E−セレクチン、L−セレクチンおよびP−セレクチンを含めたセレクチンファミリーのものが挙げられる。
ケモカイン
【0120】
感染の部位に向かう白血球の移動を刺激する走化性タンパク質であるケモカインも、本発明の融合タンパク質に組み入れられ得る。ケモカインの例としては、マクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−αおよびMIP−1−β)、好中球走化性因子、ならびにRANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted(正常T細胞発現および分泌の活性化制御タンパク質))が挙げられる。
増殖因子および増殖因子受容体
【0121】
増殖因子またはそれらの受容体(またはその受容体結合またはリガンド結合部分)は、本発明の融合タンパク質中に組み入れられ得る。増殖因子の例としては、血管内皮増殖因子(VEGF)およびそのアイソフォーム(米国特許第5,194,596号);繊維芽細胞増殖因子(FGF)、例えばaFGFおよびbFGF;心房性ナトリウム利尿因子(ANF);肝臓増殖因子(HGF;米国特許第5,227,158号および第6,099,841号)、神経栄養因子、例えば骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5または−6(NT−3、NT−4、NT−5またはNT−6)、あるいは神経増殖因子、例えばNGF−β血小板由来増殖因子(PDGF)(米国特許第4,889,919号、第4,845,075号、第5,910,574号および第5,877,016号);形質転換増殖因子(TGF)、例えばTGF−αおよびTGF−β(WO 90/14359)、骨誘導因子、例えば骨形成タンパク質(BMP);インスリン様増殖因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II;米国特許第6,403,764号および第6,506,874号);エリスロポイエチン(EPO);幹細胞因子(SCF)、トロンボポイエチン(c−Mplリガンド)およびWntポリペプチド(米国特許第6,159,462号)が挙げられる。本発明のターゲッティング受容体ドメインとして用いられ得る増殖因子受容体の例としては、EGF受容体;VEGF受容体(例えばFlt1またはFlk1/KDR);PDGF受容体(WO 90/14425);HGF受容体(米国特許第5,648,273号および第5,686,292号)および神経栄養因子受容体、例えばNGF、BDNFおよびNT−3を結合する低親和性受容体(LNGFR)(p75NTRまたはp75とも呼ばれる)および受容体チロシンキナーゼのtrkファミリーの成員(例えば、trkA、trkB(EP455,460)、trkC(EP522,530))である高親和性受容体が挙げられる。
ホルモン
【0122】
本発明の融合タンパク質に用いるための成長ホルモンの例としては、レニン、ヒト成長ホルモン(HGH;米国特許第5,834,598号)、N−メチオニルヒト成長ホルモン;ウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;上皮小体ホルモン(PTH);甲状腺刺激ホルモン(TSH);サイロキシン;プロインスリンおよびインスリン(米国特許第5,157,021号および同第6,576,608号);濾胞刺激ホルモン(FSH)、カルシトニン、黄体形成ホルモン(LH)、レプチン、グルカゴン;ボンベシン;ソマトロピン;ミュラー管抑制物質;リラキシンおよびプロリラキシン;ゴナドトロピン関連ペプチド;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;OBタンパク質;またはミュラー管抑制物質が挙げられる。
凝固因子
【0123】
本発明の融合タンパク質に用いるための血液凝固因子の例としては、凝固因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子および第XIII因子、フォン・ヴィレブランド因子);組織因子(米国特許第5,346,991号、第5,349,991号、第5,726,147号および第6,596,84号);トロンビンおよびプロトロンビン;フィブリンおよびフィブリノーゲン;プラスミンおよびプラスミノーゲン;プラスミノーゲン活性剤、例えばウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性剤(t−PA)が挙げられる。
【0124】
他の代表的な融合タンパク質は、例えばWO0069913A1およびWO0040615A2に教示されている。本発明の融合タンパク質に包含され得る別の代表的な分子は、IGSF9である。
【0125】
融合タンパク質は、当該技術分野でよく知られている方法を用いて調製され得る(例えば、米国特許第5,116,964号および第5,225,538号参照)。普通は、リガンドまたはリガンド結合パートナーは、重鎖(または重鎖部分)の定常領域のN末端に、C末端が融合され、可変領域と置き換わる。リガンド結合受容体の任意の膜貫通領域あるいは脂質またはリン脂質アンカー認識配列は、好ましくは、融合前に不活性化されるかまたは欠失される。リガンドまたはリガンド結合パートナーをコードするDNAは、所望のORFセグメントをコードするDNAの5’末端および3’末端でまたはその近位で制限酵素により切断される。その結果生じるDNA断片は、次に、重鎖定常領域をコードするDNA中に容易に挿入される。融合が成される正確な部位は、可溶性融合タンパク質の分泌または結合特質を最適化するよう経験的に選択され得る。融合タンパク質をコードするDNAは、次いで、発現のために宿主細胞中にトランスフェクトされる。
VI.製剤組成物
【0126】
不活性および/またはタンパク質凝集体は、療法において被験者に投与される場合、有害作用を有し得るので、本発明の方法および組成物は、製剤処方物に用いるためのIg融合タンパク質の精製のために特に十分に適している。例えば、不活性型の融合タンパク質およびタンパク質凝集体は、Ig融合タンパク質の効能の損失または免疫原性増大を生じ得る。
【0127】
したがって、本発明は、治療的使用に適している精製された生物学的タンパク質の組成物を提供する。本発明の方法を用いて得られるタンパク質の調製方法および被験者への投与方法は、当業者によく知られているか、あるいは容易に確定される。
【0128】
一実施形態では、本発明は、精製LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む製剤組成物に関する。可溶性LT−β−R−Igは、例えば、自己免疫障害、例えば脱髄障害、例えば多発性硬化症を治療するために被験者に投与するための製剤組成物として処方され得る。典型的には、製剤組成物は、製薬上許容可能な担体を含む。本明細書中で用いる場合、「製薬上許容可能な担体」としては、生理学的に適合性である溶媒、分散媒質、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等が挙げられる。組成物は、製薬上許容可能な塩、例えば酸付加塩または塩基付加塩を含み得る(例えばBerge et al., J. Pharm. Sci. 66: 1−19, 1977参照)。
【0129】
可溶性LT−β−R−Igは、標準方法に従って処方され得る。製剤処方物は十分に確立された技術分野であり、例えば、Gennaro (ed.), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & amp; Wilkins (2000) (ISBN:0683306472);Ansel et al, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Ed., Lippincott Williams & amp; Wilkins Publishers (1999) (ISBN: 0683305727);およびKibbe (ed.), Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association, 3rd ed. (2000) (ISBN: 091733096X)にさらに記載されている。
【0130】
一実施形態では、可溶性LT−β−R−Igは、賦形剤物質、例えば塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム七水和物、リン酸一水素ナトリウムおよび安定剤を用いて処方され得る。それは、例えば、適切な濃度で緩衝溶液中で提供され得るし、2〜8℃で保存され得る。
【0131】
製剤組成物は、種々の形態であり得る。これらの例としては、例えば液体、半固体および固体剤形(例えば液体溶液(例えば注射用および注入用溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、ピル、粉末、リポソームおよび坐剤)が挙げられる。好ましい形態は、意図される投与方式および治療用途に依存し得る。典型的には、本明細書中に記載される薬剤のための組成物は、注射用または注入用溶液の形態である。
【0132】
このような組成物は、非経口方式(例えば静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射または筋肉内注射)により投与され得る。「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、本明細書中で用いる場合、経腸投与および局所投与以外の、通常は注射による投与方式を意味し、例としては、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、硬膜外、大脳内、頭蓋内、頚動脈内および胸骨内注射および注入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
組成物は、高濃度での安定保存に適した溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソームまたはその他の指示された構造物として処方され得る。
【0134】
滅菌注射用溶液は、上で列挙された成分の1つまたは組合せを有する適切な溶媒中に、必要量で本明細書中に記載される薬剤を組み入れ、必要な場合は、その後、濾過滅菌することにより調製され得る。一般的には、分散液は、塩基性分散媒質および上記のものからの必要なその他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に、本明細書中に記載される薬剤を組み入れることにより調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、本明細書中に記載される薬剤の粉末+任意の付加的な所望の成分を、予め滅菌濾過されたそれらの溶液から生じる真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適正な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合に必要な粒子サイズの保持により、ならびに界面活性剤の使用により、保持され得る。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによりもたらされ得る。
【0135】
ある実施形態では、可溶性LT−β−R−Igは、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含めた制御放出組成物のように、迅速放出に対して化合物を保護する担体を用いて調製され得る。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が用いられ得る。
【0136】
このような処方物の多数の調製方法が特許権を受けているか、または一般的に知られている(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978参照)。
【0137】
可溶性LT−β−R−Igは、例えばその安定化および/または例えば血液、血清またはその他の組織中の循環での保持を、例えば少なくとも1.5,2、5、10または50倍改善する部分で修飾され得る。修飾薬剤は、(例えば、標識化形態の薬剤を用いることにより)多発性硬化症のような脱髄障害において起こり得るような炎症(例えば病変または硬化)の部位にそれが到達し得るか否かを査定するために評価され得る。
【0138】
例えば、LT−β−R−Igは、ポリマー、例えば実質的に非抗原性のポリマー、例えばポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドと会合され得る。適切なポリマーは、重量が実質的に様々である。約200〜約35,000ダルトン(または約1,000〜約15,000および2,000〜約12,500)の範囲の数平均分子量を有するポリマーが用いられ得る。
【0139】
例えば、可溶性LT−β−R−Igは、水溶性ポリマー、例えば親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンと結合体化され得る。このようなポリマーの非限定的一覧は、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、そのコポリマーおよびそのブロックコポリマーを包含するが、但し、ブロックコポリマーの水溶性は保持される。さらに有用なポリマーとしては、ポリオキシアルキレン、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ならびにポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックコポリマー(プルロニック);ポリメタクリレート;カルボマー;ならびに分枝鎖または非分枝鎖多糖が挙げられる。
【0140】
可溶性LT−β−R−Igが第二薬剤と組合せて用いられる場合、2つの薬剤は、別個にまたは一緒に処方され得る。例えば、それぞれの製剤組成物は、例えば、投与の直前に混合されて、一緒に投与され得るし、あるいは別々に、例えば同時にまたは別の時間に、投与され得る。
【0141】
可溶性LT−β−R−Igは、種々の方法により、被験者、例えばヒト被験者に投与され得る。多数の用途のために、投与経路は、以下のうちの1つである:静脈内注射または注入(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内注射(IP)、あるいは筋肉内注射。いくつかの場合、投与は、CNSに直接、例えばくも膜下腔内、脳室内(ICV)、大脳内または頭蓋内であり得る。薬剤は、固定用量で、またはmg/kg用量で投与され得る。
【0142】
用量は、薬剤に対する抗体の産生を低減するかまたは回避するようにも選択され得る。
【0143】
可溶性LT−β−R−Igの投与の経路および/または方式は、例えば、磁気共鳴画像(MRI)スキャン、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン、拡散強調画像(DW−IまたはDW−MRI)、拡散テンソル画像、骨髄造影、磁化移動を用いて、例えば被験者における硬化の位置、数またはサイズを確定することにより、個々の症例に関しても適応させられ得る。脱髄障害の重症度または程度は、腰椎穿刺(例えば、脳脊髄液中の白血球増大を調べるため)、神経機能の測定としての誘発電位試験、および/または脱髄障害(例えば多発性硬化症)と関連した任意の他の標準パラメーター、例えば本明細書中に記載される査定判定基準のいずれかからも確定され得る。
【0144】
投薬レジメンは、所望の応答、例えば治療的応答または組合せ治療効果を提供するよう調整される。投薬レジメンは、例えば髄鞘再生を増大させる。一般的には、必要に応じて適切な用量の第二治療薬と別々にまたは一緒に処方される可溶性LT−β−R−Igの用量は、可溶性LT−β−R−Igを被験者に提供するために用いられ得る。
【0145】
可溶性LT−β−R−Igに関する適切な投薬量および/または用量範囲は、被験者における髄鞘再生増大を生じるのに十分な量を包含する。適切な投薬量は本明細書中に記載されるもののいずれかであり得るし、例えば、少なくとも約0.001mgの可溶性LT−β−R−Ig/被験者(例えばヒト患者)体重1kgの用量を包含し得る。
【0146】
髄鞘再生を増大するのに必要とされる可溶性LT−β−R−Igの用量は、例えば、治療されるべき被験者の年齢、性別および体重を含めた種々の因子に依存し得る。被験者に投与される用量に影響を及ぼす他の因子としては、例えば脱髄障害の種類または重症度が挙げられる。例えば急性劇症多発性硬化症を有する患者は、より軽症の多発性硬化症を有する患者とは異なる投薬量の可溶性LT−β−R−Igの投与を要し得る。他の因子としては、例えば、患者に同時に作用しているまたは以前作用した他の障害、患者の全身の健康状態、患者の遺伝的素質,食餌、投与時間、排泄率、薬剤組合せ、ならびに患者に施される任意の他の付加的治療が挙げられ得る。任意の特定患者に関する具体的な投薬および治療レジメンは、治療する医者の判断に依る、ということも理解されるべきである。活性成分の量は、特定の記載化合物、ならびに組成物中の付加的抗ウイルス薬の存在または非存在および性質にも依っている。
【0147】
投薬単位形態または「固定用量」は、本明細書中で用いる場合、治療されるべき被験者のための単位投薬量として適合させられた物理的に別々な単位を指す;各単位は、必要とされる薬学的担体と共に、必要に応じて他の薬剤と共に、所望の治療効果(例えば、被験者における髄鞘再生の増大)を生じるよう算定された所定量の活性化合物を含有する。
【0148】
製剤組成物は、治療的有効量の本明細書中に記載される可溶性LT−β−R−Igを含み得る。このような有効量は、投与される薬剤の作用、あるいは1つより多い薬剤が用いられる場合には薬剤と第二薬剤との組合せ作用に基づいて決定され得る。薬剤の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重のような因子、ならびに個体において所望の応答、例えば少なくとも1つの障害パラメーターの改善、例えば自己免疫障害(例えば多発性硬化症などの脱髄障害)の少なくとも1つの症候の改善、を引き出す化合物の能力によっても変わり得る。例えば、治療的有効量の可溶性LT−β−R−Igは髄鞘再生を増大し、さらにまた、脱髄も遅らせるかおよび/または改善し得る。治療的有効量は、組成物の任意の有毒作用または有害作用よりも治療的に有益な作用が勝っている量でもある。
【0149】
可溶性LT−β−R−Igを含む製剤組成物のためのデバイスおよびキットは、医療機器を用いて投与され得る。当該デバイスは、例えば訓練されていない被験者により、または野外で救急職員により緊急時に用いられ得、医療施設およびその他の医療設備に移され得るよう、携帯性、室温保存性および易使用性のような特徴を伴って設計され得る。当該デバイスは、例えば、可溶性LT−β−R−Igを含む薬学的調製物を保存するための1つ以上のハウジングを包含し得、1つ以上の単位用量の薬剤を送達するよう改造され得る。
【0150】
例えば、製剤組成物は、経皮送達デバイス、例えば注射器(皮下注射器またはマルチチャンバー型注射器を含む)用いて投与され得る。その他の適切な送達デバイスとしては、ステント、カテーテル、経皮パッチ、顕微針、および埋込み型制御放出デバイスが挙げられる。デバイス(例えば注射器)は、髄鞘再生を生じるのに十分な用量で、乾燥または液体形態の可溶性LT−β−R−Igを含み得る。デバイスは、1つのチャンバーが被験者における髄鞘再生を増大させるのに十分な単位用量の凍結乾燥された可溶性LT−β−R−Igを含有し、第二のチャンバーが凍結乾燥された単位用量の可溶性LT−β−R−Igを再構成するための液体(例えば緩衝液)を含有する二重チャンバー型デバイスでもあり得る。
【0151】
他の例では、製剤組成物は、無針皮下注射デバイス、例えば米国特許第5,399,163号;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,941,880号;第4,790,824号;または第4,596,556号に記載されたデバイスを用いて投与され得る。よく知られた埋込み物およびモジュールの例は、例えば米国特許第4,487,603号(制御速度で薬剤を分配するための埋込み型顕微注入ポンプを開示する);米国特許第4,486,194号(皮膚を通して薬剤を投与するための治療用デバイスを開示する);米国特許第4,447,233号(正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを開示する);米国特許第4,447,224号(連続薬剤送達のための可変流量埋込み型注入装置を開示する);米国特許第4,439,196号(マルチチャンバー区画を有する浸透性薬剤送達システムを開示する);ならびに米国特許第4,475,196号(浸透性薬剤送達システムを開示する)に記載されている。多数の他のデバイス、埋込み物、送達システムおよびモジュールも知られている。
【0152】
可溶性LT−β−R−Igは、キット中で提供され得る。一実施形態では、キットは、(a)1つ以上の単位用量の可溶性LT−β−R−Igを含む組成物を含入する容器、および必要に応じて(b)情報材料を包含する。
【0153】
可溶性LT−β−R−Igの単位用量は、被験者における所望の結果、例えば被験者における疾患の緩徐進行または改善を生じるのに十分である。情報材料は、本明細書中に記載される方法および/または治療的利益のための薬剤の使用に関する説明的な、指示的な、市場的なまたはその他の材料であり得る。当該キットは、髄鞘再生に関する試験(アッセイ)に有用な試薬および使用説明書も包含し得る。髄鞘再生に関するアッセイ方法としては、本明細書中に記載される試験方法のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、キットは、脱髄障害を治療するための1つ以上の付加的薬剤、例えば多発性硬化症を治療するための1つ以上の薬剤を包含する。例えばキットは、可溶性LT−β−R−Igを含む組成物を含入する第一容器、ならびに1つ以上の付加的薬剤を含む第二容器を包含する。
【0154】
キットの情報材料は、その形態において限定されない。一実施形態では、情報材料は、化合物の生産、化合物の分子量、濃度、有効期限、バッチまたは生産拠点情報等についての情報を包含し得る。一実施形態では、情報材料は、脱髄障害を有するか、または発症する危険があるかあるいは脱髄障害に関連した事象を経験している被験者を治療するための、適切な用量、剤形または投与方式(例えば、本明細書中に記載される用量、剤形または投与方式)での、可溶性LT−β−R−Igの投与方法に関する。情報は、種々のフォーマットで、例えば印刷テキスト、コンピューター読取材料、ビデオ記録またはオーディオ記録、あるいは実在の材料へのリンクまたはアドレスを提供する情報で提供され得る。
【0155】
薬剤のほかに、キット中の組成物は、他の成分、例えば溶媒または緩衝液、安定剤または防腐剤を含み得る。薬剤は、任意の形態で、例えば液体、乾燥形態または凍結乾燥形態でにおいて、好ましくは実質的に純粋および/または滅菌性で、提供され得る。薬剤が溶液で提供される場合、溶液は、好ましくは、水溶液である。薬剤が乾燥形態で提供される場合、再構成は一般的には、適切な溶媒の付加による。溶媒、例えば滅菌水または緩衝液は、任意にキット中に提供され得る。
【0156】
キットは、薬剤を含有する1つ以上の組成物のための1つ以上の容器を包含し得る。いくつかの実施形態では、キットは、組成物および情報材料のための別個の容器、仕切りまたは区画を含有する。例えば組成物は、瓶、バイアルまたは注射器中に含入され得、情報材料はプラスチック製のスリーブまたはパケット中に含入され得る。他の実施形態では、キットの別個の素子は、単一の非分割容器内に含入される。例えば、組成物は、ラベルの形態の情報材料を貼り付けた瓶、バイアルまたは注射器中に含入される。いくつかの実施形態では、キットは、各々が薬剤の1つ以上の単位剤形(例えば、本明細書中に記載される剤形)を含有する個々の容器を複数(例えば多数)包含する。容器は、組合せ単位投与量、例えば可溶性LT−β−R−Igおよび第二薬剤の両方を、例えば所望の比率で含む単位を含み得る。例えば、キットは、例えば各々が単一組合せ単位用量を含有する、注射器、アンプル、箔パケット、ブリスターパックまたは医療デバイスを複数包含する。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、湿度の変化または蒸発に対して不浸透性)および/または遮光性であり得る。
【0157】
キットは、任意に、組成物の投与に適したデバイス、例えば注射器またはその他の適切な送達デバイスを包含する。デバイスは、一方または両方の薬剤の充填前に提供されてもよく、あるいは中身がない状態であるが充填に適し得るデバイスであってもよい。
VIII.治療方法
【0158】
本明細書中に記載される方法に従って精製される活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を用いて製造される処方物は、LT−β−R遮断薬で治療可能である多数の疾患を治療するために用いられ得る。このような疾患の例としては、自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、腸疾患、例えばクローン病、ならびに神経学的疾患、例えば多発性硬化症が挙げられる。本明細書中に記載される組成物を用いて治療され得る疾患の他の例は、US20020197254号および米国特許第7,255,854号(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
【0159】
一実施形態では、本発明の精製LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む製剤組成物は、脱髄障害を治療するために用いられる。本明細書中で用いる場合、「脱髄障害」は、神経からの、神経繊維を取り囲み、絶縁する脂肪鞘である髄鞘の破壊または除去に関連した任意の疾患である。脱髄障害としては、例えば多発性硬化症(例えば再発/寛解型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症、進行再発型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症および急性劇症多発性硬化症)、橋中心髄鞘崩壊、急性散在性脳脊髄炎、進行性多巣性白質脳症;亜急性硬化性全脳炎、感染後脳脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギラン・バレー症候群、進行性多巣性白質脳症、デビック病、バロー同心円硬化症、ならびに白質の変性疾患(例えば異染性白質変性疾患、クラッベ病、副腎白質変性疾患、ペリツェウス・メルツバッハー病、カナバン病、中枢性低髄鞘形成による小児期運動失調、アレキサンダー病またはレフサム病)が挙げられる。脱髄障害を有するヒト患者は、脱髄障害の1つ以上の症候、例えば視覚障害、麻痺、四肢の脱力、振顫もしくは痙攣、熱不耐性、言語障害、失禁、眩暈または固有感覚障害(例えば、平衡、協調、肢位感覚)(これらに限定されない)を有し得る。
【0160】
脱髄障害の家族歴(例えば脱髄障害の遺伝的素質)を有するか、あるいは上記の脱髄障害の軽症のまたは稀な症候を示すヒト(例えばヒト患者)は、本発明の目的のために、脱髄障害(例えば多発性硬化症)を発症する危険があるとみなされ得、本明細書中に記載されるような製剤組成物で治療され得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、可溶性LT−β−R−Igは、被験者における症状を改善するのに十分な量で、頻度で、および/または時間の間、被験者に投与され得る。一実施形態では、本発明の組成物を用いて、被験者における髄鞘再生を誘導するかまたは促進し得る。
【0162】
一実施形態では、可溶性LT−β−R−Igは、1回、被験者に投与される。他の実施形態では、可溶性LT−β−R−Igは、1回より多く、例えば3〜10日毎に1回;少なくとも2回、5〜20日毎に1回以下で;少なくとも2回、28〜31日毎に1回以下で;毎週1回;2週間毎に;毎月1回;少なくとも4週間の間毎週1回;少なくとも6週間の間2週間毎に1回;少なくとも3ヶ月の間、毎月1回;または少なくとも6ヶ月の間毎月1回、被験者に投与される。
【0163】
いくつかの実施形態では、投薬量(例えば被験者において髄鞘再生を誘導するのに十分な量)を確定するための試験における可溶性LT−β−R−Igの適切な出発用量は、0.001mgの可溶性LT−β−R−Ig/被験者体重1kgである。いくつかの実施形態では、適切な用量または出発用量は、多数の本発明の患者特異的因子、例えば性別、年齢、体重、身体健康状態または本明細書中に記載される任意の他の因子(これらに限定されない)により確定される。
【0164】
いくつかの実施形態では、可溶性LT−β−R−Igは、静脈内でまたは非経口的に(例えばくも膜下腔内、皮下、筋肉内、鼻内または経口的に)、被験者に投与される。
【0165】
いくつかの実施形態では、可溶性LT−β−R−Igは、単一療法として被験者に投与され得る。いくつかの実施形態では、可溶性LT−β−R−Igは、別の治療、例えば自己免疫障害、例えば脱髄障害(例えば本明細書中に記載される脱髄障害のいずれか(例えば多発性硬化症))のための別の治療との併用療法として、被験者に投与され得る。例えば、併用療法は、自己免疫障害、例えば脱髄障害を有するかまたは発症する危険のある被験者に治療的利益を提供する1つ以上の付加的薬剤を被験者(例えばヒト患者)に投与することを包含し得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、可溶性LT−β−R−Igおよび1つ以上の付加的薬剤は、同時に投与される。他の実施形態では、可溶性LT−β−R−Igが最初に投与され、1つ以上の付加的薬剤が次いで投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の付加的薬剤が先ず投与され、可溶性LT−β−R−Igが次に投与される。可溶性LT−β−R−Igは、以前または最近、施された療法に取って代わるかまたは増大し得る。例えば、LT−β−R−Igで治療する場合、1つ以上の付加的薬剤の投与は中止または縮小し得、例えば低レベルで投与され得る。他の実施形態では、以前の療法の投与は保持される。いくつかの実施形態では、以前の療法は、LT−β−R−Igのレベルが治療効果を提供するのに十分なレベルに到達するまで保持される。2つの療法は、組合せて投与され得る。
【0167】
一実施形態では、本明細書中に記載されるような製剤組成物を用いて脱髄障害のために治療されている被験者は、髄鞘再生に関してモニタリングされ得る。髄鞘再生に関する被験者(例えばヒト患者)のモニタリングは、本明細書中で定義されるように、変化、例えば髄鞘再生を示す1つ以上のパラメーターにおける改善に関して被験者を評価することを意味し、例えば、脱髄障害の1つ以上の症候の改善をモニタリングし得る。そのような症候は、本明細書中に記載される脱髄障害の任意の症候を含む。髄鞘再生は、被験者における髄鞘の状態の直接的確定を包含する方法によってもモニタリングされ得、例えば磁気共鳴画像法(MRI)を用いて白質量を測定するか、または磁気共鳴分光分析(MRS)脳スキャンを用いて髄鞘繊維の厚みを測定し得る。いくつかの実施形態では、評価は、可溶性LT−β−R−Igの投与後、好ましくは最初の投与後、少なくとも1時間、例えば少なくとも2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間または48時間、あるいは少なくとも1日、2日、4日、10日、13日、20日またはそれ以上、あるいは少なくとも1週間、2週間、4週間、10週間、13週間、20週間またはそれ以上、実施される。被験者は、以下の期間のうちの1つ以上で評価され得る:治療の開始前;治療中;または1つ以上の治療要素が投与された後。評価は、さらなる治療の必要性を評価すること、例えば投薬量、投与頻度、または治療持続期間が変更されるべきか否かを評価することを包含し得る。それは、選択した治療様式を付加するかまたは終える必要性を、例えば、本明細書中に記載される脱髄障害のための治療のうちのいずれかを付加するかまたは終える必要性を、評価することも包含し得る。例えば、可溶性LT−β−R−Igの継続投与は、必要な場合、1つ以上の付加的治療薬を用いて実行され得る。好ましい一実施形態では、評価についての予め選択した結果が得られる場合、付加的工程が取られ、例えば被験者は、別の治療を施され、あるいは別の評価または試験が実施される。
【0168】
例えば、腰椎穿刺(すなわち脊椎穿刺)は、脳脊髄液の試料を得るために患者で実施され得る。次いで、脳脊髄液は、例えば(i)異常タンパク質、例えば髄鞘の小断片、(ii)リンパ球のレベル上昇またはその特定の型、および/または(iii)異常レベルの免疫グロブリン(IgG)分子の存在に関して試験される。脱髄障害に関する定量的試験の別の例は誘発電位試験であり、これは、眼、耳または皮膚からの神経インパルスが脳に到達するのに要する時間の関数として神経活動を測定する。脱髄障害は、いくつかの画像診断法、例えば磁気共鳴画像(MRI)スキャン、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン、拡散強調画像(DW−IまたはDW−MRI)、拡散テンソル画像、骨髄造影、磁化移動(これらに限定されない)のうちのいずれかを用いて、中枢神経系に存在する炎症病変(すなわち硬化)のサイズおよび/または数を評価することによっても査定され得る。患者は、例えば、上記の多発性硬化症の症候のいずれかを含む患者により提示される彼等の神経心理学知見(例えば、記憶、算術、注意、判断および推理のような種々の能力の状態)あるいは症候(臨床パラメーター)の種々の半定量的または定量的査定を用いても、診断され得る。さらに、脱髄障害の程度または進行は、髄鞘塩基性タンパク質様物質((MBPLM)この物質は、疾患進行中に軸索損傷が起きると増大するようになる)のレベル上昇に関して患者の尿を試験することにより検出され得る(例えば、Whitaker et al. (1995) Ann. Neural. 38(4): 635−632参照)。色盲に関するある種の試験も、眼に及ぼす脱髄障害の作用を追跡するのに役立ち得る。
【0169】
上記のこのような診断方法は、可溶性LT−β−R−Igによる治療後の被験者(例えば患者)における髄鞘再生増大を評価するためにも用いられ得る。例えば、髄鞘再生は、本明細書中に記載される画像診断法のいずれかにより確定される、患者に存在する硬化部位(sclerose)のサイズまたは数の低減と同時に起こり得る。さらにまた、被験者における髄鞘再生は、誘発電位試験により確定される、耳、眼または皮膚から脳へのシグナルの伝達速度の増大として測定され得る。いくつかの症例では、特に、脱髄障害が神経萎縮を生じていた場合、髄鞘再生は、白質体積(例えば脊髄または脳の神経塊)の増大として評価され得る。いくつかの場合、被験者における髄鞘再生の程度または発生は、例えば磁気共鳴分光分析スキャンを用いて、被験者における髄鞘の厚みを直接測定することにより査定され得る。
【0170】
本発明は、脱髄症状を引き起こし得る療法または薬剤と組合せた本明細書中に記載される方法および組成物の使用も包含する。例えば、関節リウマチの治療のための抗TNF療法は、副作用として、脱髄症状の一型を生じ得る。したがって、可溶性LT−β−R−Igは、抗TNF療法と組合せて投与されて(例えば同時投与されて)、脱髄副作用を防止し、改善し、または逆転し、髄鞘再生を促し得る。抗TNF療法としては、アダリムマブ(フミラ)、エタネルセプト(エンブレル)またはインフリキシマブ(レミケード)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
いくつかの場合、可溶性LT−β−R(例えばLT−β−R−Fc)は、第二選択療法として用いられる。例えば、脱髄障害(例えば多発性硬化症)のための1つ以上の療法に対して非応答性であると確定されている患者は、1つ以上の治療を受けるのを中止し、可溶性LT−β−R−Igによる治療を開始する。
【0172】
前記の開示は、本発明の態様、例えば本発明の製造および使用方法を、当業者に教示する。以下の実施例は、本発明のさらなる説明を提供するよう意図されるが、しかし本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は、生成物関連不純物から抗体ベースの生物製剤、すなわちLT−β−R−Igを精製するための方法を記載する。CHO細胞中で発現される場合、3つの生成物関連不純物がLT−β−R−Igと同時発現される。これらの生成物関連不純物は、精製工程において攻撃誘発を呈する。この不純物としては、2つの、単量体であるが構造的に異なる不活性型のLT−β−R−Ig(「不活性型−1」および「不活性型−2」と呼ばれる)および凝集体(これらは二量体およびより高分子量の物質を含んだ)が挙げられる。CHO細胞中のFc融合タンパク質の発現後の不純物のパーセンテージ対タンパク質生成物のパーセンテージの例は、約46%生成物(活性単量体タンパク質)、約35%凝集体、約13%不活性型−2および約6%不活性型−1である。
実施例1:抗体ベースの生物製剤の精製中に、多数の生成物関連不純物を除去し得る高分解能疎水性相互作用クロマトグラフィー工程の開発(サイクル1)
【0174】
2つの、単量体であるが不活性な生成物関連不純物を抗体ベースの生成物から除去し得るHICステップを、第一相臨床製造のために開発した。その後の開発中に、クロマトグラフィー分解能を保持しながら、容量および頑強性の改良を追求した。代替的HIC樹脂および結合塩を探究し、実験計画アプローチにより分離効率に重要なパラメーターを同定した開発試験を記載する。異なる分解能を有する第二のHICステップを、第三の生成物関連不純物の除去のために前述の工程の下流に用いた。製造規模の臨床生産に適した堅調な工程の確立に際して遭遇する問題および難題を考察する。
【0175】
以下の実施例は、臨床製造のために開発された抗体ベースの生成物から生成物関連不純物、例えば2つの不活性型のタンパク質を除去し得る疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程を説明する。以下の実施例は、HICブチルおよびフェニル樹脂、結合塩および分離効率に重要であると確認されたパラメーターを説明する。
【0176】
全体的に、以下の工程(「サイクル1−1」および「サイクル1−2」と呼ばれる)は、第一HICブチルカラム、例えばブチル−650M樹脂(Tosoh Bioscience)と、その後の第二HICフェニルカラムを用いた。HIC工程の組合せは、不活性型および凝集化分子の低減を生じた。ブチル−650M樹脂は、他の形態、すなわち、不活性型−1、不活性型−2および凝集体形態から活性LT−β−R−Igを分離するのに有効であると確定された。サイクル1−1は、LT−β−R−Igの2000L製造のために用い、一方、サイクル1−2は、高力価出発物質に関して最適化した(すなわち800mg/mL)。サイクル1−1および1−2はともに、第一ブチルHIC分離および第二フェニルHIC分離を包含した。
材料および方法
【0177】
この実施例に用いられる樹脂は、Toyopearlブチル−650M(Tosoh Biosciences)およびフェニルセファロース6Fast Flow(Pharmacia)を包含した。ブチル−650Mクロマトグラフィー工程は、平衡および洗浄ステップ(20mMのリン酸ナトリウム、pH7.5、1.65MのNaClを含む溶液を使用)、ならびに溶出ステップ(20mMのリン酸ナトリウム、pH7.5、0.7MのNaClを含む溶液を使用)を包含した。
【0178】
PharmaciaUV−1検出器を用いて吸光度280nm(A280)により、カラム溶出物をモニタリングした。PharmaciaからのAKTA FPLCおよびUnicornソフトウェア バージョン3.2.6を、種々の実験のために用いた。
【0179】
特に言及する場合を除いて、18〜28℃の温度でクロマトグラフィーを実施した。Torrey Pines Scientific HPLCカラム冷却器/加熱器モデルC030を用いて、特定の場合においてカラム温度を調節した。いくつかの実験では、Neslab水浴モデルRTE−211を用いて、精製溶液の温度を制御した。
【0180】
JMP(登録商標)ソフトウェア(SAS Institute)バージョン3.2.6を用いて、統計分析を実施し、実験計画および結果分析のために利用した。
【0181】
この報告全体を通してのLT−β−R−Igタンパク質濃度は、吸光係数1.25に基づいている。
1.1 サイクル1−1
【0182】
哺乳動物細胞培養中で発現されるLT−β−R−Igから不純物を除去するために、サイクル1−1を開発した。除去される必要がある不純物は、2つの異なる不活性型のLT−β−R−Igタンパク質、すなわち、不活性型−1形態および不活性型−2形態、ならびに凝集体を包含した。サイクル1−1の工程の要約を、図1に記載する。
【0183】
フェド・バッチ工程を用いて、組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で、LTBR−Igを先ず発現させた。サイクル1−1では、力価は約300mg/Lで、凝集体は約12%、不活性型−1は約5%および不活性型−2は約9%であった。発現後、細胞培養物を採取し、遠心分離した。清澄化状態調節培地を、プロテインA捕捉カラム上で処理した。その結果生じたLT−β−R−Ig混合物をブチル樹脂HICカラム(HIC−1と呼ばれる)(ブチル−650M;Tosoh Bioscience)上で処理したが、この場合、樹脂は8g/Lの容量を有した。HIC−1ステップは、LT−β−R−Igの不活性型1および2の混合物を取り除いた。HIC−1ステップを、タンパク質容量に関して最適化した。
【0184】
他の試験樹脂に勝る多数の理由のため、例えば以下の好ましい特質のために、ブチル−650M樹脂を選択した:1)強固なメタクリレート主鎖;2)40〜90μmの粒子サイズ;3)操作速度80〜300cm/時;ならびに4)可能なストリンジェント清浄条件、例えば、1NのNaOH、50%メタノール。ブチル樹脂は、99%より多くの不活性型のLT−β−R−Igを除去し得た。
【0185】
不活性型形態および凝集体形態からLT−β−R−Igタンパク質生成物を分離するのに最も有効なものを確定するために、多数の塩をスクリーニングした。NaClおよびNaSOはともに、LTBR−Ig生成物から不純物を分離し得ると確認された。LTBR−Igに関する不活性型−1および不活性型−2形態を、それぞれ洗浄NaCl溶液および除去NaCl溶液においてブチル樹脂から溶出した。ブチルHIC−1ステップは、不活性型−1および不活性型−2を溶出画分中1.0%未満に低減した。
【0186】
図3は、HIC−1後の工程中間体のHPLC分析を記載し、これは、活性LT−β−R−Igおよび凝集体から不活性型LT−β−R−Igの両方を分離するHIC−HLPC、ならびに活性単量体LT−β−R−Ig融合タンパク質から凝集体を分離するサイズ排除HPLC(SE−HPLC)を含む。
【0187】
HIC−1ブチルステップ後の結果の要約を図2に示すが、この場合、2つの不活性型のLT−β−R−Igを活性LT−β−R−Igから分離した。図2に示すように、0.7MのNaClを用いて、HIC−1ブチル樹脂からLT−β−R−Ig生成物を溶出した。HIC−1に関する最終サイクル1−1条件は、以下のとおりである:1.65MのNaClで結合させ(全て結合される)、次いで、1.55MのNaClで洗浄し(不活性型−1をカラムから洗い落とす)、次いで、0.7MのNaClで溶出し(生成物および凝集体が溶出)、次に、0MのNaClで除去する(不活性型−2がカラムから出る)(図2も参照)。
【0188】
次に、低pH工程を用いてHIC−1ステップからの溶出物をウイルス不活性化し、その後、フェニルセファロース(フェニルセファロース6Fast Flow Hi Sub)を用いて第二HICクロマトグラフィーカラム上で処理した。
【0189】
第二HICステップ(フェニル)は、タンパク質凝集体を除去し、溶出物の分離を最適化した。HIC−2(フェニル)ステップによる凝集体クリアランスを示す結果を、図8Aで説明する(図8Aは、充填の作用を含む)。
【0190】
第二HIC(HIC−2)ステップ後、ウイルス除去フィルター(VF)および限外濾過/膜分離(UF/DF)により、溶出物をさらに処理した。
1.2 サイクル1−2
【0191】
サイクル1−2は、上記のサイクル1−1の変更バージョンであって、この場合、サイクル1−2は、容量を増大する能力改善を示した(出発物質におけるタンパク質力価増大)。サイクル1−2の概要を、図5に示す。以下に記載するように、サイクル1−2では、硫酸ナトリウムを用いて(塩化ナトリウムの代わりに)、ブチルカラム上の容量を8〜20g/L樹脂に増大させた。
【0192】
容量特性の改良と活性型LT−β−R−Igから不活性型(1型および2型)LT−β−R−Igを分離する能力との両方に関して、種々のリオトロピック塩をスクリーニングした。スクリーニングを実施して、力価増大後に不活性型および凝集体型のLT−β−R−Igを効果的に除去し得る塩および樹脂を確定した。リオトロピック塩のスクリーニングからの結果を、表1に示す。
【0193】
【表1】

【0194】
低塩濃度で高容量を促進するその能力のために硫酸ナトリウムを選択したが、これは、経費の点でNaClに匹敵し、温度および他の塩に対して溶解度感受性であるという事実にもかかわらず廃棄物管理が好都合であり、周囲温度で約1.3Mの最大溶解度を有する。
【0195】
樹脂スクリーニングからの結果を、表2に示す。種々の結合塩を用いたHIC樹脂のスクリーニングは、試験した他の組合せも、不純物を分離するのに有効であることを立証したが、0.6MのNaSOで充填されたブチル樹脂−2(Tosoh Biosciences Toyopearlブチル600M樹脂)はサイクル1−2のHIC−1ステップのための最適組合せである、ということを示唆した。したがって、0.6M硫酸ナトリウムで充填されたブチル樹脂−2(750Aの孔サイズを有する)が、最良の候補であることを立証した。
【0196】
【表2】

【0197】
一般的に、サイクル1−2の工程は、ウイルス不活性化の順序とブチルステップに関する硫酸ナトリウムベースの洗浄の使用を除いて、サイクル1−1に関して上記したものと同様であった。フェド・バッチ工程を用いて、組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で、LT−β−R−Igを先ず発現させた。細胞発現からの力価は約800mg(LT−β−R−Ig)/Lで、これは、5%の不活性型−1 LT−β−R−Ig、14%の不活性型−2 LT−β−R−Igおよび22%のLT−β−R−Ig凝集体を含んだ。発現後、細胞培養を採取し、遠心分離した。清澄化状態調節培地を、プロテインA捕捉カラム上で処理した。低pH工程を用いてウイルスを不活性化した。その結果生じたLT−β−R−Ig混合物をブチル樹脂HICカラム(HIC−1と呼ばれる)(ブチル−600M;Tosoh Bioscience)上で処理したが、この場合、樹脂は20g/Lを超える容量を有した。HIC−1ステップは、LT−β−R−Igの不活性型1および2の混合物を取り除いた。HIC−1ステップを、タンパク質容量に関して最適化した。
【0198】
2つの洗浄戦略を用いて、容量を増大するための、ブチル樹脂洗浄の最適パラメーターを確定した(すなわち、硫酸ナトリウム段階洗浄および硫酸ナトリウム段階洗浄/その後の逆勾配洗浄)。これら2つの戦略の結果を図6に示すが、この場合、戦略B−段階および勾配洗浄は、より良好に分離された溶出を提供することを立証した。異なる量の充填、硫酸ナトリウム洗浄濃度、および硫酸ナトリウム溶出溶液濃度を試験した(以下の表3および4に記載)。
【表3】

【表4】

【0199】
等高線プロットを分析して、サイクル1−2のHIC−1ブチル精製ステップに関する重要な因子を確定した。不活性型−1クリアランスに関して同定された重要因子は、カラム充填(18〜26g/Lの範囲で)およびNaSO洗浄濃度(0.455〜0.465Mの範囲、狭い導電率およびモル浸透圧濃度仕様を使用)を包含した。不活性型−2クリアランスに関する重要因子は、0.22Mより上で保持されるNaSO溶出濃度であった。精製工程において重要でないと確定された因子は、充填体積(NaSO濃度が0.56M超であった場合)および溶出体積(NaSO濃度が0.22M超であった場合)を包含した。他の潜在的に重要な因子としては、洗浄体積、温度、樹脂ロット導電率および充填タンパク質濃度が挙げられた。
サイクル1−1および1−2の要約
【0200】
したがって、HICカラムの組合せを用いてLT−β−R−Igタンパク質の精製を達成し、その結果、3つの異なる生成物関連不純物、すなわち2つの異なる不活性型のLT−β−R−Igタンパク質およびLT−β−R−Igの凝集体から、活性LT−β−R−Igタンパク質(薬剤物質)を分離した(結果の要約に関しては、図7参照)。
【0201】
活性LTBR−Igタンパク質の分離を保持しながら、容量増大のためにHIC−1カラムステップ(ブチル樹脂)を最適化した。ブチルHICカラムは、2つの異なる不活性型のタンパク質から活性LT−β−R−Igタンパク質を分離し得た、すなわち、LT−β−R−Igのジスルフィド・スクランブル化単量体種(不活性型−1および不活性型−2)を除去し得た。生成物収率を、HIC−1カラムステップでの不活性種のLT−β−R−Igのクリアランスに対して評価した。硫酸ナトリウムは、高容量かつ上記種の高い分離を促進した。生成物収率に対する不活性形態のクリアランスを最大にする上で重要な因子は、カラム充填およびNaSOの洗浄濃度を包含した(サイクル1−2に関して)。
【0202】
2つの工程は、第三カラムステップ、すなわちHIC−2(フェニル樹脂)の最適化も包含し、これは、凝集体形態のLT−β−R−Igタンパク質ならびに残留不活性型−2を含まない物質を生じた。HIC−2ステップに関して同定された重要因子は、カラム充填、層高および流速を包含した。
実施例2:生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質の精製:サイクル2
【0203】
以下の実施例は、Ig融合生物製剤、すなわちLT−β−R−Ig融合タンパク質を、高パーセンテージの生成物関連不純物、すなわち約50%の生成物関連不純物を含有する供給材料から精製する工程を説明する。上記のように、LT−β−R−Igの供給材料は、異なる型の不純物、すなわち凝集化種および2つの異なるジスルフィドスクランブル化形態の物質(不活性型−1形態および不活性型−2形態のLT−β−Rと呼ばれる)を含有する。これらの不純物はLT−β−R−Ig(生成物)と密接に関連するので、所望の生成物の精製は難題を呈する。
【0204】
LT−β−R−Igに関する製造工程は、最初は初期臨床試験のために開発され、後に、商業化のために十分なレベルに生産性を増大するよう修正された。これを達成するために、4つのうちの1つの因子により、細胞培養生産性を増大した。しかしながら、この変化は、総生成物関連タンパク質の20%から約50%への、生成物変異体の増大を伴なった。最も注目すべきは、凝集体レベルが2倍より多くなったことであり、それらは全体の約12%から約35%に増大した。供給物質は、1350mg/Lまでの力価を含み、これは、約6%の不活性型−1 LT−β−R−Igタンパク質、約14%の不活性型−2 LT−β−R−Igタンパク質および約28〜35%の凝集体を包含した。LT−β−R−Igタンパク質産生の増大は、活性LT−β−R−Ig(薬剤物質)を増大させただけでなく、この融合タンパク質に関連した3つの不純物も増大させた。
【0205】
したがって、哺乳類細胞発現からのLT−β−R−Ig融合タンパク質力価の増大に応答して、特に、精製に関する難題を呈するタンパク質凝集体の大きな増大に関して、サイクル−2を設計した。細胞培養採取物からこれらの不純物を除去するために、最適化工程を開発した。これは、第一混合モードHIC樹脂および第二フェニルHIC樹脂を用いた2部分離を基礎にした。不純物の増大についての概要を、以下の表5に示す。
【表5】

生成物関連不純物は、下流プロセスのための供給材料中に、総タンパク質の50%を超えて存在した(46%生成物;35%凝集体;6%不活性型−1;および13%不活性型−2)。
【0206】
サイクル2は、出発供給材料の50%より多くが望ましくない不活性型変異体および凝集化変異体で構成された場合、生成物の精製を成功させた。サイクル2工程を用いて、15000L製造規模で、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を首尾よく精製した。不活性型−1はクロマトグラフィーのいくつかの方式で生成物(凝集していない活性なLT−β−R−Ig)と同時に精製されたが、これら2つの形態のLT−β−R−Igタンパク質の効率的分離を、混合モード樹脂を用いて達成した。不活性型−2を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いて、堅調に生成物から分離した。薬剤物質中1%未満に凝集体をクリアランスすることは、混合モードクロマトグラフィーおよびHICクロマトグラフィー、ならびに混合モード樹脂上の洗浄−1ステップの正確な制御により達成し、この正確な制御を、重要パラメーターを同定し、検査するための要因設計実験により誘導した。
【0207】
サイクル−2工程では、混合モードクロマトグラフィーは、約28%(充填中)から約10〜24%(溶出物中)に凝集体を低減した。その後のフェニルステップは、残存凝集体を除去した。すなわち、凝集体は除去されて少なくとも23%(フェニル充填中)から1%(フェニル溶出物中)未満となった。
【0208】
サイクル−2の概要を図9に示し、以下のように要約する。遠心分離前に、バイオリアクター材料(14、15または16日)をpH4.7〜5.3に調整して、工程関連不純物の除去を促進した。採取物遠心分離後、プロテインA捕捉のための充填材料にトリトンX−100を0.05%で付加して、レトロウイルス不活性化を促した。21g/Lの容量でプロテインAカラムを用いて、その後のLT−β−R−Igタンパク質の捕捉を実施した。プロテインA捕捉後、低pHウイルス不活性化を実施し、その後、さらなるパルボウイルスクリアランスのためにQ膜吸着装置を用いた。次に、31g/Lの容量で混合モードHICカラムを用いて、不活性型−1形態のLT−β−R−Igおよび凝集体の一部の混合物を除去した。混合モードカラム工程後、溶出物を、15g/Lの容量および約30cm+の層高でフェニルを含有するHICカラムに付した。このHICカラムは、活性LT−β−R−Igタンパク質を凝集体および不活性型−2形態から分離した。フェニルカラムを約30cmに増大して不純物のクリアランスを最適化した。この高さのための最適充填範囲は、約10〜15g/Lであった。
【0209】
したがって、より高いタンパク質力価/高度に不純物を含む供給材料を処理するために用いられる下流の変化は、クロマトグラフィー工程への修正を包含した。以前のサイクル−1工程と比較して、サイクル−2は、採取前にバイオリアクターの低pH調整が存在するよう、修正された。これが、生成物関連不純物の沈殿および除去を改良させ、DNAクリアランス増大およびカラムのための「清浄な」供給物を提供した。採取物材料中の限定された生成物安定性のため、低pH修正と共に迅速処理を要した。高容量プロテインA親和性樹脂も用いたが、これは、容量の約140%増大、ならびに生産性を増大しながら供給材料を処理するのに要するサイクル数の低減を提供した。イオン交換膜吸着装置も、パルボウイルスクリアランスのためのさらなる能力を提供するために工程に付加された。新規の第二のカラム(混合モード)を工程に付加して、容量および生成物関連不純物のクリアランスを改良した。この新規の第二のカラムは、容量を380%より上に増大し、堅調な不活性型−1除去、ならびに凝集体のクリアランスを提供した。サイクル−2工程に関するさらなる詳細を、以下で記載する。
採取およびウイルス不活性化
【0210】
単量体活性LT−β−R−Ig(生成物)の精製の前に、哺乳類CHO細胞中でタンパク質を産生し、採取し、その後、清澄化した。採取時に、状態調節培地を2〜8℃に冷却し、pHを4.7〜5.3に調整した。pH調整状態調節培地を、ディスクスタック遠心分離ボウルに供給した。細胞および細胞破砕屑をボウル沈殿物保持空間に収集し、採取操作中に断続的に除去した。清澄化無細胞遠心分離物はボウル上部に上がり、遠心分離ポンプによる圧力下で連続的に放出された。遠心分離工程完了時に、収集遠心分離物を混合し、中和して、pH6.9〜7.5とした。
【0211】
活性LT−β−R−Igおよび関連不純物をともに含有する混合物の採取および遠心分離後、生成物を損傷することも非許容可能な高レベルの凝集体を生じることもなく、外因性ウイルスを不活性するために、トリトンX−100を付加した。中和遠心分離物の温度を15〜25℃に調整し、トリトンX−100を、最終濃度0.05%(w/v)で付加した。このトリトンX−100調整遠心分離物を最低2時間保持した後、さらに処理した。
【0212】
混合物(不活性および活性型のLT−β−R−Igおよび凝集体を含有する)を、組換えプロテインAカラム上で動かした。この樹脂がLT−β−R−Igに対して示す高結合親和性および特異性のため、組換えプロテインA(rプロテインA)MabSelect SuRe樹脂を捕捉工程用に選択した。工程関連不純物からのLT−β−R−Igの精製を、工程中のこのクロマトグラフィー工程で行った。さらに、MabSelect SuReステップは、潜在的ウイルス夾雑物、宿主細胞DNA、宿主細胞タンパク質のクリアランスを提供し、工程体積を8分の1に低減した。18〜26℃で、このクロマトグラフィー工程を操作した。
【0213】
第二カラムステップ(混合モード)のための新規のクロマトグラフィー樹脂の導入は容量および生成物関連不純物のクリアランスを改良したが、しかし潜在的パルボウイルスのクリアランスに関する能力を低減した。外因性パルボウイルスの高い(excess)クリアランスを、最も容易に(optimal facility-fit)回復させるために、Q膜吸着装置単位操作をこの工程で履行した。展開は、約100%の生成物収率を提供しながら、モデルパルボウイルス−マウス微小ウイルス(MMV)−のクリアランスのための最適pH(約pH6.4)および導電率(高導電率)を確認した。Q膜をプロテインAアフィニティーと第二カラムステップとの間で実行し、GMP材料を用いて、縮小ウイルススパイク試験で3Log10超を提供した。
【0214】
各サイクルのMabSelect SuRe溶出物を、低pHウイルス不活性化およびQ膜濾過により処理した後、プールした。この工程は、生成物を損傷することも非許容可能な高レベルの凝集体を生じることもなく、pH感受性ウイルスを不活性化することを意図した。MabSelect溶出物をpH3.5〜3.9であるよう調整し、次に、18〜26℃で2〜2.5時間保持した。次いで、溶液をpH6.2〜6.6に調整し、パルボウイルスクリアランスのための吸着装置である陰イオン交換装置(SartobindQ膜吸着装置(QMA))を含めた次のステップへと続けて処理した。
混合モード樹脂
【0215】
混合モード樹脂、すなわち、Capto MMCクロマトグラフィー(GE/Healthcare)は、サイクル−2のLT−β−R−Ig精製工程における第二クロマトグラフィーステップであった(第一工程はプロテインA)。Capto MMCは混合モード樹脂であるが、しかしそれを陽イオン交換モードで操作した。LT−β−R−Igに関するその高結合容量ならびに工程関連不純物および生成物関連不純物から活性単量体LT−β−R−Igを分離するその能力のために、混合モード樹脂を選択した。さらに、Capto MMCステップは、宿主細胞タンパク質、MabSelect SuReカラムrプロテインA溶脱液および潜在的ウイルス夾雑物のクリアランスを提供した。Capto MMCクロマトグラフィーは、生成物関連不純物、例えばLTBR−Igの凝集体および不活性種も低減した。このステップは、16〜24℃で実行した。Capto MMCステップならびに不活性型−1および凝集体不純物の両方の除去のための条件としては、以下のものが挙げられる:4.8〜5.2の充填pHで26〜31g/Lの充填比。さらに、第一洗浄液は、7.0〜7.2のpHを有した。カラム充填ステップおよび洗浄ステップは、収率および凝集体クリアランスに影響を及ぼした。
【0216】
サイクル−1 LT−β−R−Ig精製工程における第二カラムステップの主な役割(第一カラムはプロテインAである)は、活性単量体LT−β−R−Ig生成物から、ジスルフィド・スクランブル化生成物関連不純物、すなわち不活性型−1種を除去することであった。サイクル−1では、Tosoh Bioscience ブチル650M樹脂を用いて、この分離を実施した。しかしながら、ブチル650M樹脂は、それが相対的に低い結合容量であるため、力価増大に適していない、という点で制限された。したがって、LT−β−R−Ig サイクル−2工程開発のための課題は、サイクル−1で達成したものに匹敵する不活性型−1クリアランスを保持しながら、(カラムサイクルを最小にしながら増大された力価に対応するために)第二カラムステップの容量を増大するための条件を確定することであった。高容量IEX樹脂を用い、そして中間洗浄ステップを用いて堅調な不活性型−1クリアランスを可能にした。
【0217】
選択された陽イオン交換/HIC混合モード樹脂は、Capto MMC(GE/Healthcare)であった。0.66cm(I.D.)×15〜20cm層高のガラスカラム(Omnifit)を用い、実験を室温(22〜26℃)で実施した。
【0218】
Capto MMC樹脂は、混合モードリガンド(GE/Healthcare)で誘導体化された架橋アガロースビーズで構成される。リガンドは、イオン相互作用および疎水性型相互作用を包含する、標的タンパク質との相互作用のためのいくつかの多重官能基を含有する。したがって、樹脂を、疎水性モードおよび陽イオン性モードの両方のクロマトグラフィーで操作し得る。LT−β−R−Ig精製工程に関しては、陽イオンモードでCapto MMCカラムを操作したが、この場合、緩衝液pHおよび/または緩衝液導電性を増大することにより、樹脂からLT−β−R−Igを溶出した。
【0219】
Capto MMC展開中に実施したアッセイは、分析的HICおよび分析的SECであった。
【0220】
収率を確定するためにOD280を用いるほかに、方程式(1)で定義されるような「活性単量体収率」を用いても、LTBR−Ig回収を定量した:
【数1】

式中、Vは溶液体積(mL)であり、OD280は280nm/mLでの吸光度である。HPLC−SECおよび分析的HICをそれぞれ用いて、単量体%および「活性」種%を測定した。LT−β−R−Ig凝集体は、二量体(ジスルフィド結合分子の4つの鎖を含有する多量体として定義される)および高分子量種の両方を包含した。
【0221】
Capto MMCに関する5%貫流での動的結合容量(DBC)を、方程式(2)を用いて算定した:
【数2】

式中、Cは充填中のタンパク質の濃度(mg/mL)であり、VBTは5%貫流時点で充填された体積(mL)であり、Vは樹脂層の総体積であり、そしてVDVは系およびカラムデッドボリュームである。
【0222】
Capto MMC樹脂(混合モード)は、活性単量体LT−β−R−Ig(所望の生成物)から、不活性型−1形態を効果的に分離し得、凝集化形態を部分的に分離し得た。Capto MMCは、活性形態のLT−β−R−Ig、ならびに凝集体種の一部をともに分離し得た。
【0223】
3つの実験を実施して、Capto MMC樹脂のための操作条件を限定し、ならびに初期細胞培養開発研究からの供給材料を用いて操作条件の変化に対する樹脂の感受性を調べた。これらの試験の結果は、Capto MMCの性能が、カラム充填、洗浄緩衝液pH、および洗浄緩衝液濃度に対して感受性であることを示した。カラム充填範囲を、20〜31mg LTBR−Ig/樹脂1mLであると確定し、洗浄−1緩衝液pHをpH7.0〜7.2に設定し、洗浄−1緩衝液濃度を約80mM Bisトリスに設定した。第二洗浄液(洗浄−2)は、5.5〜5.7のpH(例えばpH5.6)、ならびに約20〜30mMの酢酸ナトリウムの濃度を有した。50mMリン酸塩および150mM NaCl(pH7.0)を用いて、LT−β−R−Igを混合モード樹脂から溶出した。
【0224】
クロマトグラフィー条件の因子分析は、カラム充填比および洗浄溶液条件が分離のためには重要である、ということを確認した。
【0225】
展開中、バイオリアクター力価の増大は、混合モード第二カラムステップによる凝集体の部分的クリアランスを必要とする、凝集体レベルの増大を伴った。洗浄条件のストリンジェンシーを増大することにより、凝集体クリアランスを得た。しかしながら、生成物からの凝集体の完全分離は達成されなかった−洗浄中の部分的な生成物損失を犠牲にして、凝集体クリアランスを得た。生成物収率および凝集体クリアランスはカラム充填比および洗浄条件に依っていたため、最適操作範囲が両パラメーターに関して必要とされた。
【0226】
混合モードカラム操作条件ならびに不活性型−1および/または凝集体を分離する性能を、図11に示す。不活性型−1クリアランスは堅調で、広範囲の充填および洗浄条件に亘って高生成物収率を伴った。これに対して、凝集体クリアランスは、最適範囲内でさえ、生成物収率に負の影響を及ぼし、かつ収率および凝集体クリアランスをカラム充填および洗浄条件に依存させる、よりストリンジェントな洗浄条件を要した。製造中、洗浄溶液に関して必要とされる最適範囲仕様は、緩衝構成成分におけるロット毎の可変性を示し、このため、溶液ロット記録の変更を要した。
【0227】
混合モード樹脂を用いた不活性型−1形態のLT−β−R−Igおよび凝集体における低減の要約を、以下の表6に示す。表6は、同様の条件下でのLT−β−R−Ig産生および精製の複数回の実行の分析を示す。混合モード樹脂の使用は、不活性型−1形態のLT−β−R−Igを、細胞培養工程から得られた元の混合物における約6%から、1%未満または検出不可能量に低減した。さらに、表6に示したように、凝集体のパーセンテージも約30%(28〜35%)から約10〜24%に低減した。
【表6】

Capto MMC洗浄−1および溶出ステップ中の生成物関連不純物の脱着
【0228】
Capto MMCステップ中の生成物関連不純物のクロマトグラフィー的挙動を調べるために、Capto MMC洗浄−1および溶出を通して、画分を収集した。吸光度、SEC−HPLCおよびHIC−HPLC、ならびに確定された各々の個々の生成物関連種の総量により、各画分を分析した。用いた条件下では、不活性型−1種は洗浄−1工程中に効率的に除去され、溶出画分中で検出不可能であった、ということをこの分析は明示した。これに対して、高分子量変異体および二量体(集合的に凝集体と呼ばれる)は、洗浄−1および溶出プール中で回収された。注目すべきは、凝集体の脱着が、pH7.0での洗浄−1工程終了前に、ならびに洗浄−2(pH5.6)の開始前に減少したことであった。したがって、わずかな塊の凝集体が洗浄−1(80mMのBis−トリス中、pH7.0)中のカラムから生じたが、一方、さらなる凝集体はカラムが50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7.0で溶出されるまで依然として結合したままであった。活性単量体および不活性型−2が、洗浄−1ステップ中および溶出ステップ中にカラムから脱着した。溶出プールの分析は、それが活性単量体に関して濃化された、ということを明示した。充填物質中および溶出プール中の不活性型−2のパーセントが同様であったため、これは主に、洗浄−1ステップ中の不活性型−1および凝集体の優先的損失によるものであった。
フェニルセファロース樹脂
【0229】
フェニルセファロース6Fast Flow Hi Sub(フェニルセファロース)は、LT−β−R−Ig精製工程における最終(第三)クロマトグラフィーステップであった。フェニルセファロースは、LT−β−R−Igに対するその高結合容量ならびに工程関連不純物および生成物関連不純物から生成物を分離する能力のため、最終仕上げカラムとして選択される疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂である。当該ステップは、凝集体および不活性型−2形態のLT−β−R−Igを除去することを見出した。供給材料中に存在する高レベルの凝集体を除去するために、層高を20cmから30cmに拡大することにより、HIC第三カラムの分離力を増大させた。さらに、フェニルステップは、宿主細胞DNA、宿主細胞タンパク質、MabSelect SuReカラムrプロテインA溶脱液および潜在的ウイルス夾雑物のさらなるクリアランスを提供した。リスク査定と組合せたクロマトグラフィー条件の因子分析は、図12に示したように、カラム充填および樹脂ロット(リガンド密度)が分離のための重要因子である、ということを確認した。硫酸アンモニウムによる充填調整後、Capto MM溶出物プールをフェニルセファロースカラム(フェニルセファロース6Fast Flow (hi sub);0.66cm(I.D.)×20〜40cm層高ガラスカラム)上に充填した。充填範囲および層高を、凝集体および不活性型−2のクリアランスのために最適化したが、この場合、凝集体パーセンテージは1%未満であり、不活性型−2はLLOQ未満であった。
【0230】
HICスクリーニングおよびフェニルセファロースF.F.クロマトグラフィー工程の展開中に用いたアッセイは、分析的HICおよび分析的SECであった。
【0231】
収率を確定するためにOD280を用いるほかに、方程式(1)で定義されるような「活性単量体収率」を用いても、LT−β−R回収を定量化した:
【数3】

式中、Vは溶液体積(mL)であり、OD280は280nm/mLでの吸光度である。
【0232】
HPLC−SECおよび分析的HICをそれぞれ用いて、単量体%および「活性」種%を測定した。LT−β−R−Ig凝集体種は、二量体および高分子量種の両方を包含した。
【0233】
凝集体クリアランスに及ぼす層高の作用を調べるために、フェニルセファロースを3つの層高(20cm、30cmおよび40cm)で詰め込んだ。LT−β−R−Igを、約15mg LT−β−R−Ig/樹脂1mLを目標にして、フェニルセファロースカラム上に充填し、次いで、3CVの平衡溶液で洗浄した。カラムを洗浄し、LT−β−R−Igを硫酸アンモニウム緩衝液を用いて溶出した。画分を溶出中に収集し、収率および単量体含量に関して分析した。カラム充填および生成物回収を、吸光度(OD280)の測定により確定した。
【0234】
表7は、LT−β−R凝集体除去および回収に及ぼす層高および操作速度の作用を示す(供給:15%凝集体、9%不活性型−2;カラム充填:15mgのLT−β−R/樹脂1mL、硫酸アンモニウム溶出緩衝液濃度:0.325M、溶出体積:6CV)。LT−β−R−Igおよび凝集体タンパク質の最適分離を提供したパラメーターは、30cmの層高(サイクル−1フェニル層高における20cmに対して)および50cm/時の流速を包含した。さらに、これらのパラメーターに伴う最適充填範囲は、10〜20g/樹脂1Lであった。代替的には、100cm/時の流速、および0.44Mの硫酸アンモニウム(0.3〜0.5の範囲)の溶出溶液も有効であると確定した。
【表7】

【0235】
表7で分かり得るように、フェニルカラムの層高を増大させると、活性LT−β−R−Ig(上記では「活性単量体」)の全体的収率が改良し、凝集体パーセンテージは低減した。
【0236】
収率および凝集体クリアランスはカラム充填および樹脂リガンド密度に大きく依存しているため、それらのパラメーターに関しては最適操作範囲を要した(以下でさらに詳細に記載)。分離(20%超の凝集体の除去)の難しさは、リガンド密度仕様と相関する樹脂性能におけるロット毎の可変性を示した。
【0237】
一般的に、フェニルステップは室温で、充填層高30cmで実行した。充填後、カラムを2.6mMの酢酸、1.0Mの硫酸アンモニウム、50mMの酢酸塩、pH5.8で洗浄した(洗浄−1)。その後、2.6mMの酢酸、0.44Mの硫酸アンモニウム、50mMの酢酸塩、pH5.8を用いた洗浄後に、LT−β−R−Igを溶出した。
【0238】
フェニル樹脂を用いたLT−β−R−Igの凝集体不純物形態の低減についての要約を表8に示すが、これは、同様条件下でのLT−β−R−Ig産生および精製の複数回の実行の分析を提供する。
【表8】

【0239】
要するに、フェニルHIC工程の使用は、凝集体のパーセンテージを1%未満に低減した。フェニルHICステップは、不活性型−2形態のLTBR−Igも1%未満に低減した。
15,000L規模のためのサイクル−2の使用
【0240】
サイクル−2を大規模で、すなわち15,000Lで首尾よく用いて、望ましくない不純物、例えば凝集体および2つの不活性形態のタンパク質からLTBR−Igを精製した。15,000L規模への最初の移行時には、工程を保存的に操作して、生成物の品質に対するリスクを最小限にした。採取は14日目または15日目に行い、30%の凝集体がバイオリアクター中に含まれていた。サイクル−2は、不活性型−1および凝集体のクリアランスを促進するための第二カラム上への高充填量、ならびに凝集体および不活性型−2クリアランスを促進するための第三カラム上への低充填量を包含した。
【0241】
バッチ1〜3における工程実施に基づいて、その後、より高収率の条件下で工程を操作した(バッチ4〜7)が、この場合、採取は16日目で、35%の凝集体がバイオリアクター中に含まれていた。第三カラム上の高充填量を実施して、高収率を促進した。図13は、15k製造における、変更した下流工程の重要な実施特徴の要約を提供する。
要約
【0242】
全体的工程を要約するために、細胞培養採取物の清澄化はディスクスタック遠心分離を用いた。トリトンX−100を、ウイルス不活性化のために清澄化状態調節培地に付加した。清澄化状態調節培地を組換えプロテインA(rプロテインA)MabSelect SuReクロマトグラフィーカラム上で処理して、生成物を捕捉した。次に、低pHウイルス不活性化を実施した。次いで、このウイルス不活性化rプロテインA MabSelect溶出物を、外因性パルボウイルスクリアランスのためにSartobindQ膜吸着装置(QMA)を通して濾過した。生成物を、Capto MMC混合モードクロマトグラフィーにより精製し、その後、フェニルセファロース6Fast Flow Hi Sub(フェニルセファロース)を用いて疎水性相互作用クロマトグラフィー処理した。次に、フェニルセファロース溶出物を、Planova15Nウイルス除去フィルターを通して濾過し、次いで、限外濾過(UF)により濃縮し、膜分離した。UF残存物をその後、100g/Lの生成物濃度で最終処方緩衝液中に処方して、−70℃で保存した。
【0243】
サイクル2工程(特に、混合モードとその後のフェニルHIC)は、例えば15,000L規模の製造目的のための、LT−β−R−Igの産生および精製のスケールアップのために有効であることを立証した。サイクル−2工程を用いた不活性型−1、不活性型−2および凝集体パーセンテージの低減についてのパーセンテージの要約を、以下の表9に示す。
【表9】

等価物
【0244】
本発明は、精製活性形態のIg融合タンパク質、例えばLT−β−R−Fc融合物に関する改良方法および組成物を特に提供する。本発明の具体的実施形態を考察してきたが、上記明細書は例証のためのものであり、本発明を限定するものではない。この明細書を再検討すれば、本発明の多数の変更が当業者に明らかになる。本発明の全範囲は、その全範囲の等価物とともに特許請求の範囲を、ならびに本明細書をこのような変更とともに参照することにより確定されるべきである。
【0245】
本明細書中で言及される出版物および特許は全て、各々の個々の出版物または特許が具体的に且つ個別に参照により援用されるべきであると示されているように、その記載内容が参照により本明細書中で援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に活性なリンホトキシン−β−受容体免疫グロブリン(LT−β−R−Ig)融合タンパク質を含む組成物であって、該LT−β−R−Ig融合タンパク質の6%未満が生物学的に不活性であり、該LT−β−R−Ig融合タンパク質の2%未満が凝集している組成物。
【請求項2】
前記LT−β−R−Ig融合タンパク質の5%未満が生物学的に不活性である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記LT−β−R−Ig融合タンパク質の1%未満が生物学的に不活性である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記LT−β−R−Ig融合タンパク質の0.5%未満が生物学的に不活性である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
2%未満の凝集LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
1%未満の凝集LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記LT−β−R−Ig融合タンパク質がIgG1アイソタイプのIg定常領域を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記LT−β−R−Ig融合タンパク質が配列番号2で記述されるアミノ酸配列を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質が標準インビトロIL−8抑制アッセイにおいてIL−8放出を抑制し得る請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物および製薬上許容可能な担体を含む製剤組成物。
【請求項11】
自己免疫障害の治療方法であって、それを必要とする被験者に請求項10に記載の製剤組成物を投与することを含む方法。
【請求項12】
前記自己免疫障害が多発性硬化症である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記自己免疫障害が、続発性進行性多発性硬化症または再発寛解型多発性硬化症である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
生物学的に活性なリンホトキシン−β受容体免疫グロブリン(LT−β−R−Ig)融合タンパク質を生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離するための方法であって、以下の:
生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質および生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む混合物をブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂上に充填するステップ、ならびに
該樹脂を塩勾配を含む溶液と接触させて、生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第一溶出物および生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第二溶出物を得るステップ、
を包含する方法。
【請求項15】
前記塩勾配が段階的または連続的勾配である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記塩勾配が1.6M〜0.0MのNaClを含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む前記第二溶出物が、1.5MのNaCl洗浄液で前記HIC樹脂を洗浄することにより得られる請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記塩勾配が0.6M〜0.0MのNaSOを含む請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記段階的勾配が0.6M〜0.0Mの範囲のNaSOの増分を含む請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ブチルHIC樹脂が600〜750Aの孔サイズを有する請求項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記HIC樹脂が約8mg〜約20mgのタンパク質/樹脂1Lの充填容量を有する請求項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む前記第二溶出物が、2%未満の生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む前記第二溶出物が、1%未満の生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
非凝集化生物学的活性リンホトキシン−β−受容体免疫グロブリン(LT−β−R−Ig)融合タンパク質を、凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質から分離するための方法であって、以下の:
非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質および凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む混合物をフェニル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂上に充填するステップ(ここで、該樹脂は、約10〜20gのタンパク質/樹脂1Lの充填容量および約30〜31cmの層高を有する)、ならびに
該樹脂を約50〜150cm/時間の流速で溶液と接触させて、生物学的非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第一溶出物および凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む第二溶出物を得るステップ、
を包含する方法。
【請求項25】
前記非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む前記第一溶出物が2%未満の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む前記第一溶出物が1%未満の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
生物学的に活性なリンホトキシン−β−受容体免疫グロブリン(LT−β−R−Ig)融合タンパク質を、生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離するための方法であって、以下の:
i)生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質をブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、該生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質および生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む混合物を該ブチル樹脂上に充填するステップ、
ii)該ブチルHIC樹脂を塩勾配を含む溶液と接触させて、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関して濃化された第一溶出物を得るステップ、
iii)該生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を第二HIC樹脂に結合させる条件下で、ステップii)の第一溶出物を該第二HIC樹脂上に充填するステップ、そして
iv)該第二HIC樹脂を溶液と接触させて、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関してさらに濃化された第二溶出物を得るステップ、を包含し、
それにより、該生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を該生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離する方法。
【請求項28】
前記(ii)の塩勾配が段階的または連続的勾配である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ブチルHIC樹脂がヒドロキシル化メタクリレート主鎖を含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ブチルHIC樹脂が600〜750Aの孔サイズを有する請求項27〜29に記載の方法。
【請求項31】
前記第一溶出物が2%未満の前記不活性LT−β−R−Ig融合タンパク質の第一形態(不活性型−1)を含む請求項27〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第一溶出物が1%未満の前記不活性LT−β−R−Ig融合タンパク質の第一形態(不活性型−1)を含む請求項27〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第二溶出物が2%未満の前記不活性LT−β−R−Ig融合タンパク質の第二形態(不活性型−2)を含む請求項27〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第二溶出物が1%未満の前記不活性LT−β−R−Ig融合タンパク質の第二形態(不活性型−2)を含む請求項27〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記混合物中のLT−β−R−Ig融合タンパク質の濃度が少なくとも300mg/Lである請求項14〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記混合物中のLT−β−R−Ig融合タンパク質の濃度が少なくとも800mg/Lである請求項14〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記混合物中のLT−β−R−Ig融合タンパク質の濃度が少なくとも1350mg/Lである請求項14〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記混合物の体積が少なくとも5000Lである請求項14〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記混合物の体積が少なくとも10000Lである請求項14〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記混合物の体積が少なくとも15000Lである請求項14〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を、生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離するための方法であって、以下の:
i)生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を混合モード樹脂に結合させる条件下で、該生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質および生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む混合物を該混合モード樹脂上に充填するステップ、
ii)溶液でステップi)の混合モード樹脂から該生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を溶出して、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関して濃化された第一溶出物を得るステップ、
iii)該生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、ステップii)の第一溶出物を該HIC樹脂上に充填するステップ、そして
iv)ステップiii)の生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を溶液で溶出して、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関してさらに濃化された第二溶出物を得るステップを、包含し、
それにより、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を生物学的に不活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質から分離する方法。
【請求項42】
非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を、凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質から分離するための方法であって、以下の:
i)生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を混合モード樹脂に結合させる条件下で、該非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質および凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む混合物(ここで、該混合物中の約30%より多いかまたは約30%のLT−β−R−Ig融合タンパク質が凝集している)を該混合モード樹脂上に充填するステップ、
ii)溶液を用いてステップi)の混合モード樹脂から該生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を溶出して、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関して濃化された第一溶出物を得るステップ、
iii)該生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、ステップii)の第一溶出物を該HIC樹脂上に充填するステップ、そして
iv)ステップiii)の生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を溶液を用いて溶出して、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関してさらに濃化された第二溶出物を得るステップ、を包含し、
それにより、該凝集していない生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を該凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質から分離する方法。
【請求項43】
前記混合モード樹脂が、イオン相互作用能力および疎水性相互作用能力をともに有するものと特徴付けられる請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記混合物が約5.0のpHで前記混合モード樹脂上に充填される請求項41または42に記載の方法。
【請求項45】
前記充填された混合モード樹脂が、ステップ(ii)前に、約7.0〜7.2のpHを有する緩衝液で洗浄される請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記緩衝液がビス・トリスである請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記HIC樹脂がフェニル樹脂である請求項41〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記フェニル樹脂がフェニルセファロースである請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記生物学的に活性なLT−β−R−Igが硫酸アンモニウムで前記フェニル樹脂から溶出される請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記生物学的に活性なLT−β−R−Igが0.3〜0.5Mの硫酸アンモニウムで前記フェニル樹脂から溶出される請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記フェニル樹脂の流速が50〜150cm/時である請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記流速が約100cm/時である請求項51に記載の方法。
【請求項53】
非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質および凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む混合物から少なくとも97%の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を除去するための方法であって、以下の:
i)該非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を混合モード樹脂に結合させる条件下で、該混合物を該混合モード樹脂上に充填するステップ、
ii)溶液でステップi)の混合モード樹脂から該非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を溶出して、非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関して濃化された第一溶出物を得るステップ、
iii)該非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で、ステップii)の第一溶出物を該HIC樹脂上に充填するステップ、そして
iv)ステップiii)の非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質を溶液で溶出して、非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関してさらに濃化された第二溶出物を得るステップ、を包含し、
それにより、少なくとも97%の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を、非凝集化生物学的活性LT−β−R−Ig融合タンパク質および凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む該混合物から除去する方法。
【請求項54】
前記第一溶出物が25%未満の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第一溶出物が20%未満の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記第一溶出物が15%未満の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記第一溶出物が約10%の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記第二溶出物が2%未満の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記第二溶出物が1%未満の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記混合物を、ステップ(i)前に、組換えプロテインA(rプロテインA)と接触させることをさらに含む請求項53〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
組換えプロテインAと接触させられる前記混合物が哺乳類細胞培養上清である請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記哺乳類細胞培養上清が28℃で培養された哺乳類細胞から得られる請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記細胞培養上清が非イオン性界面活性剤を含む請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記非イオン性界面活性剤がトリトンX−100である請求項63に記載の方法。
【請求項65】
生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む組成物を製造する方法であって、該組成物は1%未満の該LT−β−R−Ig融合タンパク質の第一不活性形態(不活性型−1)、1%未満の該LT−β−R−Ig融合タンパク質の第二不活性形態(不活性型−2)および1%未満の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含み、該方法は以下の:
i)該LT−β−R−Ig融合タンパク質をコードするDNAで形質転換された哺乳類宿主細胞を含む哺乳類細胞培養系から細胞培養上清を得るステップ、
ii)該細胞培養上清を組換えプロテインA(rプロテインA)と接触させてLT−β−R−Ig融合タンパク質混合物を得るステップ、
iii)該LT−β−R−Ig融合タンパク質を混合モード樹脂に結合するような条件下で、約5.0のpHで、ii)のLT−β−R−Ig融合タンパク質混合物を該混合モード樹脂上に充填するステップ、
iv)該混合モード樹脂を、約7.0〜7.2のpHを有する緩衝液で洗浄するステップ、
v)ステップiii)の混合モード樹脂を溶液と接触させて、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関して濃化された第一溶出物を得るステップ、
vi)該LT−β−R−Ig融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に結合させる条件下で該HIC樹脂上にステップiv)の第一溶出物を充填するステップ、そして
vii)ステップvi)のHIC樹脂を溶液と接触させて、生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質の存在に関してさらに濃化された第二溶出物を得る(ここで、該第二溶出物は、1%未満の該第一不活性形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−1)、1%未満の該第二不活性形態のLT−β−R−Ig融合タンパク質(不活性型−2)および1%未満の凝集化LT−β−R−Ig融合タンパク質を含む)ステップ、を包含する方法。
【請求項66】
請求項14〜65の方法のいずれか1つにより調製される少なくとも97%の生物学的に活性なLT−β−R−Ig融合タンパク質を含む組成物。
【請求項67】
被験者における自己免疫障害の治療方法であって、請求項67に記載の組成物を該被験者に投与することを包含する方法。
【請求項68】
前記自己免疫障害が多発性硬化症である請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記混合物を、ステップ(i)前に、陰イオン交換膜吸着装置と接触させることをさらに包含する請求項53〜65に記載の方法。

【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−514895(P2011−514895A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548926(P2010−548926)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/035581
【国際公開番号】WO2009/111347
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】