説明

精製方法及びキット

液体試料から核酸を分離するための方法であり、核酸が、例えば慣用の側方流動装置の吸水性膜の長手方向に分布されるように、前記核酸を含有する液体試料、又は前記核酸を含有することが疑われる液体試料を前記吸水性膜に沿って流す工程を含む、前記方法。核酸は、膜上で検出され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々なアッセイにおいて使用され得る新規精製方法並びに該方法において有用な試薬及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
多様なアッセイ方法が、診断又は検出において使用されている。様々な固体支持体上のタンパク質等の分析物の検出は、本分野において周知である。このような検査の多くは、分析物を含有する液体試料の膜に沿った側方流に依存する「試験紙」アッセイの形態であり、このような検査において、それらは、検出可能な可視的シグナルが膜上に展開される順序で、標識、標識された結合対及び/又は固定化された結合対に遭遇する。このような方法は、迅速な結果を与え、ほぼあらゆる場所で、熟練していない操作者によって使用され得るという点で有利である。
【0003】
例えば、このような検査は、真菌の抗原又はウイルス感染症など、穀物植物上の特定の有害生物又は病原体を検出するために、農業で使用され得る。
【0004】
ある種の状況では、分析物の存在又は不存在を示唆する単純な陽性又は陰性結果のみが必要とされる。例えば、このようなアッセイは、妊娠検査で一般的に使用されており、単に、HCGなどの特異的なホルモンの存在することが、当該被験者が妊娠していることを示唆する。
【0005】
しかしながら、多くの事例において、この種の検査は、存在する可能性がある問題又は症状の予備的な診断を与え得るに過ぎない。多くの微生物の事例では、例えば、特定のタンパク質の存在は、存在する一般的な細菌、真菌又はウイルスのクラスなど、生物の特定の種類の存在の指標となり得るが、生物の正確な系統は、このようにして検出し得ない。正確な系統は、しばしば、何らかのシナリオのリスクの正確なレベルを決定する上で不可欠であるので、さらなる調査が必要とされる。例えば、イー・コリなどの特定の細菌又はインフルエンザウイルスなどのウイルスの多くの系統が存在し得るが、イー・コリO157又は鳥インフルエンザH5N1株などの特定の株のみが重大な健康上のリスクをもたらす。診断技術において使用される抗体は様々な株に由来するタンパク質と反応又は交叉反応し得るので、これらの株の正確な診断は困難であり得る。
【0006】
検出又は診断の別の方法は、核酸レベルで作用する。これらの方法では、DNA又はRNA配列などの特定の核酸配列が試料中で検出され、これが特定の生物の存在を示す。これらの技術は極めて感度が高く、適切な特徴的標的核酸の選択によって、ゲノム疾患又はある種の病状に対する素因に特徴的であり得る特定の遺伝子の正確な株又は特定の遺伝子の正確な対立遺伝子形態若しくはゲノム形態でさえ検出され得る。
【0007】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)などの増幅技術は、アッセイ中に存在し、又は存在する可能性がある核酸の量が実際には極めて少ない場合でさえ、これらの技術を使用できることを意味する。
【0008】
従って、これらの技術は、検出及び診断分野での強力なツールである。
【0009】
しかしながら、これらの技術は、一般に、重要な試料準備方法を必要とする。核酸検出方法を阻害し、又は結果を遮蔽する試料中の部分を除去するために、しばしば、植物若しくは動物組織などの組織から得られた未精製抽出物又は血液若しくは尿試料などの大量の試料の精製又は調製を行う必要がある。その結果、しばしば、研究室環境外でこれらの検査を実施することが困難であり、従って、さらなる分析のために、採取された試料を輸送しなければならない。
【0010】
遺伝材料を含有する液体試料の輸送は困難であり得、このような試料の収集の無菌性及び/又は試料の凍結を必要とする。固体支持体、特にろ紙などの膜上の核酸上に乾燥された血液などの遺伝材料を含有する試料の一時的な保存は公知である。しかしながら、このような保存された材料の安定性に伴う問題が存在し得ることが一般に認識されており、弱塩基及びキレート剤などの様々な化学的試薬を固体支持体に含浸させることを含む、これを改善するための方法が示唆されている(例えば、US Patent No.5,756,126を参照されたい。)。
【0011】
細胞溶解及びタンパク質変性などのある種の予備的試料調製工程を実施することを目的とし、その後の分析において使用され得るPCRプライマーなどの試薬を添加する可能性がある保存カードもUS Patent No.5,756,126中に開示されており、WhatmanからFTAカードとして入手可能である。これらは、保存能力を高めるために、キレート剤、塩基及びイオン性界面活性剤などの特異的試薬を担持する。
【0012】
特異的な核酸、ハプテン及び/又は標識された部分に対する結合剤を使用する複雑な装置及びシステムを用いて、膜上での核酸の直接の検出が、慣用のタンパク質分析物を用いて見出されるシグナルと同様のシグナルを発生できるようにするための試みが行われてきた(例えば、WO00/29112及びDinerva et al., J. of Clin.Microbiol.(2005)p4015−4021を参照されたい。)。一般的に、これらの事例では、例えば、試料中に存在する標的DNAを十分に得て検出可能なシグナルを与えるために、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて増幅することが必要である。
【0013】
しかしながら、出願人は、例えば、試験紙型のイムノアッセイにおいて使用されるような慣用の液体側方流動装置が、その後の分析に直ちに使用できる、核酸の優れた精製及び保存手段を提供し得ることを見出した。
【0014】
本発明によれば、液体試料から核酸を分離するための方法であり、核酸が吸水性膜の長手方向に分布されるように、前記核酸を含有する液体試料、又は前記核酸を含有することが疑われる液体試料を前記吸水性膜に沿って流す工程を含む、前記方法が提供される。
【0015】
出願人は、液体流動装置中で使用されている条件下の種類を含む吸水性膜に沿って流したときに、核酸は、これらの装置中に使用されている膜、特にセルロース又はニトロセルロース膜に結合した状態となることを見出した。吸水性膜に沿って液体試料を通過させることによって、存在する一切の核酸が膜上に優先的に保持され、従って、試料中の他の成分から分離され得るようである。これらの状況下において、核酸は、それらが安定な形態で、膜の長手方向に沿って、とりわけ、膜の実質的に全長、好適には全長に沿って、分布した状態となる。特定の領域中に核酸が確実に保持又は濃縮されるようにするために、又は膜から完全に溶出されることを防ぐために、膜上に特異的な結合剤を与える必要はない。これによって、装置の製造がより簡易で、より経済的になる。膜上の核酸の存在は、慣用の検出方法の何れかを用いて検出することができる。
【0016】
膜上の核酸の存在が続いて検出され得、又は膜を乾燥させる前若しくは後に、核酸が続いて前記膜から回収され得る。
【0017】
その結果、これらの膜は、多様な用途に使用できる、容易に入手可能で、使用しやすい精製手段を与える。これらが使用され得る分野には、食品及び農業検査、診断(ヒト、獣医診断を含む。)、環境のモニタリング(水及び土壌のモニタリングを含む。)、法医学、遺伝子導入、輸血医療、プラスミドスクリーニング、薬物送達、ゲノム科学、植物又は動物の同定又は分類、薬理遺伝学、STR分析及び分子生物学研究が含まれる。
【0018】
例えば、本発明の方法は、SNPの種類決定、DNAフィンガープリント法又は核酸配列決定など、あらゆる形態又は遺伝学的分析に対する予備的工程として実施することができ、及び疾病の診断又は病原体の検出において有用であり得る特異的な核酸の検出において実施することができる。
【0019】
一旦膜上で分離されたら、核酸は原位置でさらなる分析に供され得、又は、必要であれば、核酸は、適切な緩衝液を用いて膜から溶出若しくはその他除去され、溶出液若しくは抽出液に対して分析を実施し得る。
【0020】
慣用の精製カラムに代えて膜を使用することができ、ずっと経済的で、使用しやすい選択肢となる。
【0021】
出願人は、長期間にわたって、例えば、何年にもわたって、核酸が、乾燥させた膜上に保たれ、安定的であることも見出した。その結果、分析の前に、試料を長期間保存することが可能であり、又は記録することさえ可能である。
【0022】
膜は、好適には、慣用の液体流動装置の要素である。
【0023】
本明細書において使用される「液体流動装置」という用語は、多孔性又は吸水性の膜を含む装置であり、該装置を通じて液体試料及び試薬(幾つかの事例では、標識された試薬を含む。)が通過し得る装置を表す。これらには、周知の側方流動装置(LFD;lateral flow device)が含まれ得る。
【0024】
回収又は検出される核酸は、例えば、病原性生物、例えば、ウイルス、真菌若しくは細菌などの特定の生物に特徴的である核酸であり得、又は、より好適には、このような生物の特定の病原性株若しくは種に特徴的である核酸であり得る。
【0025】
あるいは、診断目的のために、核酸は、植物若しくはヒトを含む動物中の遺伝病状態に特徴的であり、又は遺伝病若しくは症状に対する素因に特徴的である(この場合には、配列内の1つ又はそれ以上の多型又は変動の存在を検出することが必要であり得る。)特異的な核酸配列を含み得る。
【0026】
上述のように、分析を目的とする核酸の単離は、幅広い分野において広く使用されており、本発明は、これらの何れにおいても使用され得る。
【0027】
複数の核酸配列が、膜上で検出され、又は膜から回収され得る。これらは、検査の目的に応じて、同一又は別異の源に由来し得る。例えば、試料内の感染性生物の存在を同定することを目的とする場合には、試料の正確さを確認するために、感染性生物に特徴的である核酸のみならず、宿主生物に特徴的な核酸の検出も望む場合があり得る。
【0028】
これは、例えば、(例えば、多重PCRを用いて)膜の特定の試料上で2以上の核酸を検出することによって、又は膜の異なる試料を異なる検出反応に供することによって実施され得る。
【0029】
本明細書において使用される「膜」という用語は、一般に平面状であり、及び多孔性である固体マトリックスを表す。適切なマトリックス又は膜は、セルロース、ニトロセルロース又はカルボキシメチルセルロースなどのセルロースをベースとした材料、ポリエステル、ポリアミド、炭水化物ポリマーなどの合成親水性ポリマーを含む親水性ポリマー、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン化されたポリマー、ガラス繊維又は多孔性セラミックなどの疎水性ポリマーを含み得る。
【0030】
特に適切な膜には、セルロース膜、とりわけ、Milliporeから入手可能なものなど、積層化され得るニトロセルロース膜が含まれる。これらは、ポリエステル(Mylar(R))などのプラスチックを基礎とする膜又はPETを基礎とするセルロース膜などの裏打ち材料の上に支持され得る。膜の孔径は、広く変動し得る。出願人は、核酸の保持又はその他に関して、孔径が重要でないように見受けられることを見出した。35から240秒の範囲で、膜の4cm長にわたって側方流速を有する膜を使用することが可能であり、本発明の方法では、好適には、65から180秒が効果的である。これは、一般に、本分野で理解されているように、ニトロセルロースなどの膜材料の孔径及び/又は処方に相関する。
【0031】
前記装置は様々な形態を採り得るが、一般に、試料受容部分を含み、試料受容部分は膜自体の一部であり、又は液体を通じて膜と接触している吸収性パッドである。好適には、膜そのものが細長い片の形態であり、試料受容部分中に戴置された液体がこれに沿って移動することができる。過剰な試料を吸収するために、また、膜に沿って液体試料を効果的に吸引するために、吸収性パッドは、試料受容部分から離れた膜の端部に位置し得る。
【0032】
好適には、少なくとも膜は、プラスチック収納体などの固体収納体内に収容され、固体収納体には、慣用のイムノアッセイ操作において使用されたときに、試料を送達するための及び/又は結果を読み取るための1以上の開口部又は窓が付与され得る。あるいは、試料受容部分は、収納体の外側に設置され得る。
【0033】
しかしながら、幾つかの事例では、特に、実験室用途に関しては、とりわけ、支持及び保護のために積層化されていれば、収納されていない試験紙構造が好ましい場合があり得る。
【0034】
一実施形態において、前記方法は、液体試料中の特異的な核酸の存在を検出するためのアッセイにおいて使用することができる。
【0035】
適用される試料は、好適には、核酸配列を含有し、又は含有すると疑われる全ての液体試料である。従って、試料は、その中に溶解され、懸濁され、混合され、又はその他含有される液体、核酸(DNA及び/又はRNAを含む。)、又はDNA及び/又はRNAを含有する細胞、細胞成分若しくは細胞抽出物を含む。
【0036】
この性質の試料は、多様な採取源から得られ得る。これには、例えば、ヒト又は動物の分泌、排泄、浸出液及び漏出液などの生理的、病理的又は臨床的体液、並びに血液、血清、リンパ、滑液、精液、(特に、頬細胞を含有する)唾液、皮膚擦過物及びヒトを含む動物から採取された毛根細胞などの細胞懸濁物が含まれる。さらなる試料には、植物の生理的又は病理的液体又は細胞懸濁物、細菌、真菌、プラスミド又はウイルスなどの抽出液又は懸濁液などの液体産物並びに蠕虫、原生動物、スピロヘータなどの寄生生物の液体産物、抽出液又は懸濁液が含まれ得る。組織抽出物、例えば、植物又は動物組織を形成することによって得られる液体試料も、形成され得る。しかしながら、試料は、化学的に又は生化学的に合成されたDNA又はRNAのDNA又はRNA合成又は混合物から得られた溶媒も含み得る。
【0037】
特に、試料は、血液、尿、乳若しくは唾液及び血清などの生理的若しくは臨床的試料を含み得、又は組織抽出物、例えば、葉、茎、樹皮若しくは塊茎抽出物などの植物組織抽出物、若しくは動物組織(血液、骨、肝臓、腎臓など)若しくは糞便抽出物を含み得る。
【0038】
好ましくは、試料は、例えば、微生物、特に病原性微生物によって感染され得る、又は種類決定若しくはその他の目的で遺伝的分析を行うことが必要とされる植物又は動物などの生物から得られる組織抽出物を含む。抽出物は、好適には、適切な緩衝溶液中に試料を抽出することによって調製される。出願人は、イムノアッセイにおいて使用するためのタンパク質試料の抽出のために使用される緩衝液が核酸も抽出し、従って、本発明の方法においてこれらを使用し得ることを見出した。何れかの事例においても、使用される正確な緩衝溶液は、検査されている試料の性質に依存する。しかしながら、植物又は動物試料から得られた核酸の抽出に関しては、適切な緩衝溶液は、リン酸緩衝化された生理的食塩水(PBS)又はTris緩衝化された生理的食塩水(TBS)などの容易に入手可能な緩衝液を含み得る。
【0039】
緩衝液は、好適には、アジ化ナトリウム、ホルマリン又はチオマーサルなどの防腐剤を含み得る。何れの事例においても、添加される防腐剤の量は、使用される具体的な防腐剤、含まれる緩衝液の種類及び容量に依存するが、例えば、アジ化ナトリウムに関しては、好適には、0.2から1.5%w/w、例えば、約0.5%w/wの量で添加され得る。
【0040】
好適には、検査されるべき組織試料は、場合によって機械的破壊手段を用いて、抽出緩衝液と密接に混合される。例えば、組織試料、特に植物組織試料は、抽出緩衝液及びボールベアリングを含む小さな瓶の中にこれらを配置し、ボールベアリングが試料に対して影響を与え、細胞構造の破壊を助けるように、これらを激しく震盪することによって、イムノアッセイ操作のために調製されてきた。
【0041】
組織又は他の試料は、取り扱いが異なり得るが、抽出物中に核酸を抽出する正確な手段は、当業者によって決定される。
【0042】
試料受容ゾーン中の膜に試料が付与されると、試料は、吸水性の流れの結果、膜に沿って移動することが可能となる。試料及び膜の性質に応じて、この操作は素早く実施することができ、必要とされる操作者の技術及び関与は最小限に抑えられる。
【0043】
その後、膜、又は、より好適には、膜の一部、例えば、小片若しくは膜から抽出された切り抜かれた穿孔が、例えば、研究室環境内において採取され、さらなる分析のために使用される。これは、上述されているようなSNPの種類決定又はDNAフィンガープリント法及び核酸検出アッセイなどの遺伝的分析を含み得る。
【0044】
前記一部は、膜の何れの部分からも採取することが可能であるが、試料受容部分から離れた領域から試料を抽出することが好ましい場合があり得る。これは、例えば、膜に沿って十分に溶出せず、従って、試料受容部分中に集まり、PCRなどのその後の何れかの検出方法を阻害し得る特に巨大なタンパク質又は分子を試料が含有する場合に特に適切であり得る。このように作用され得る具体的な試料には、クロロフィルなどの巨大分子が装置上の試料受容部分の領域内の膜上に集まる傾向がある植物抽出物が含まれる。
【0045】
所望であれば、膜には、適切な部分のサイズと位置を示すために印を付し得る。膜試料を取り出すための具体的な部位は、慣用のイムノアッセイLFD中の検出及び対照ゾーンの領域中であり得る。特にイムノアッセイ技術によってアッセイの間に展開される対照ラインは、試料抽出部分との境界を定めるために標識を使用し得る。これは、アッセイが適切に進行したことを確認するというさらなる利点を提供する。核酸の定量が必要であれば、検査において使用される膜の部分のサイズは、特に重要であり得る。
【0046】
核酸の検出又は分析は、あらゆる慣用技術を用いて実施され得る。必要であれば又は所望であれば、膜上に保存又は保持された核酸は、まず、水を用いて、膜から洗浄除去することができ、又は、必要であれば、慣用の溶出緩衝液を用いて溶出することができ、洗浄液又は溶出液は分析に供せられる。周囲温度から例えば最高100℃までの高温にわたる温度で10分間洗浄すると、一般に、膜から核酸を放出する。
【0047】
しかしながら、好ましくは、分析は、膜の一部に対して直接実施される。
【0048】
予め、核酸分析がどのような形態を採るかが明らかであれば、使用に先立って、例えば、乾燥された形態で、その分析において有用な1以上の試薬を膜内に取り込ませることが便利であり得る。これらの試薬は膜の長手方向に沿って配置され得、又は、これらの試薬が膜を通じて移動するが、少なくともある程度は膜上に保持されるのであれば、これらの試薬が膜の長手方向に沿って液体試料とともに輸送されるように、これらの試薬は膜上の試料受容部分又はパッド中に拡散可能に配置され得る。
【0049】
例えば、膜上の特異的な核酸の存在を検出するために、膜又は膜の一部はPCR混合物中に浸漬される。PCR混合物は、本分野において周知である。PCR混合物は、好適には、ヌクレオチド、ポリメラーゼ及び特定の生物に特徴的であり得る特異的な核酸配列を増幅するように設計されたPCRプライマーの組などの試薬を含有する。PCR反応は、緩衝液、マグネシウム塩などをさらに含み得る。
【0050】
所望であれば、PCRを実施するのに必要な1以上の試薬は、膜の上に「予め搭載され」得、その長手方向に沿って、又は試料受容部分又は膜上のパッド中に拡散可能に搭載され得る。後者の場合には、これらの1以上の試薬に対して特異的である抗体又は抗体の結合断片などの適切な「捕捉」剤は、その部分にこれらの試薬を濃縮し、後者の用途に対して準備が整えられた状態になるように、その後の分析が予定されている膜の部分内に固定化され得る。試薬がポリメラーゼ酵素などのポリペプチド又はタンパク質である場合に、これは、特に望ましく、便利であり得る。
【0051】
このように含めるのに特に適した試薬には、特異的な核酸を実施又は検出するために必要とされ得るあらゆるプライマー又はプローブが含まれる。この種の特異的な試薬を膜内に取り込ませることによって、PCRレディビーズ(PCRready bead)などの予め混合された増幅混合物又は部分を分析のために使用することが可能である。
【0052】
膜上の核酸の存在下でPCR混合物が形成されたら、次いで、試料中に存在する核酸の変性を引き起こすために、これを熱サイクルの複数に供し、反応混合物中に存在する何れかの標的配列にプライマーを徐冷させ、次いで、各サイクルの間にポリメラーゼによって伸長させる。
【0053】
特定の実施形態において、PCR反応は定量的な様式で実施される。この目的のために、標識された試薬、例えば、標識されたプローブ及び/又は挿入色素などのDNA結合剤をPCR反応中に含め得る。具体的な定量的アッセイの種類はTAQMANTMアッセイであり、本アッセイでは、FET又はFRETによって、互いに相互作用する2つの蛍光部分でプローブが標識される。PCRの間、プローブは増幅された配列とハイブリッドを形成し、ハイブリッドが形成されると、ポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性がプローブを消化することによって、前記部分間の物理的距離が増加し、相互作用がもはや起こらなくなると、異なって蛍光を発する蛍光性部分を分離する。蛍光の変化は容易に検出することが可能であり、これにより、増幅された核酸配列の量の増加をモニターすることができる。増幅サイクルにわたって変化をモニターすることによって、試料中の核酸の量を測定することができる。
【0054】
膜上に存在する核酸の量を試料内に含有される量と関連付けるために、まず試料の正確な量又は測定された量が膜に確実に付与され、及び分析で使用される膜のあらゆる部分の大きさが調節されることが必要であり得、又は望ましい場合があり得る。
【0055】
例えば、European Patent No. 1049802B(その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されているように、並びにScorpionTMプローブ(http://www.dxsgenotyping.com/technology.htm)及びLoop−Mediated Isothermal Amplification Method(LAMP)(http://loopamp.eiken.co.Jp/e/index.html)の使用によって、他の定量的なPCR法が利用可能である。
【0056】
特定の実施形態において、本発明は、試料中の標的核酸の存在を検出するためのアッセイであり、前記核酸を含有すると疑われる液体試料を、例えば液体流動装置の膜に沿って流す工程と、及び前記膜上の前記標的核酸の存在を検出する工程とを含む、前記方法を提供する。
【0057】
広い領域にわたって核酸を効果的に「広げる」ことによって、例えば、試料そのものがPCRなどの慣用の核酸検出方法によって分析された場合と比べて、このような方法を用いて核酸をずっと手軽且つ容易に検出できるように核酸が試料中の他の成分から十分に分離された状態になるものと思われる。実際には、核酸は膜構造中に保持され、これが精製効果を有するようである。
【0058】
上に示唆されているように、これは、何れの分析においても、単純な精製工程を実施するための極めて費用効果が高く、効率的な方法であるが、とりわけ、著しい阻害なしに膜材料の存在下で実施することができるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸増幅を伴う分析に対して極めて費用効果が高く、効率的な方法である。
【0059】
上記方法のさらなる利点は、精製段階が「現地」、例えば、野外状況で実施できること、又は自宅で、又は手術(医学的及び獣医学的手術を含む。)中に使用できるキットを用いて実施できることである。膜のみ又は膜を含有する装置のみを、分析のために研究室に送り、液体試料を送らないようにして、研究室の装置及び人員の汚染リスクを実質的に排除することが必要である。
【0060】
しかしながら、試料の輸送を必要とせずに、分析プロセス全体を実施できるようにするために、現場で核酸分析を実施することができる携帯装置も使用し得る。このような装置は入手可能となっているが、現在までの問題は、複雑な試料調製操作に対する必要性がそれらの有用性と携帯性を制約しているということであった。
【0061】
所望であれば、膜を保持するように改変されており、使い捨てであり得る膜又はカセット、カートリッジなどを、このような装置中に含め得る。これは、現場での分析前に、「野外」状況での迅速且つ簡易な精製の実施を可能とする。
【0062】
上述のように検出される核酸は、あらゆる所望の標的核酸であり得る。しかしながら、一実施形態において、細菌、ウイルス又は真菌などの植物又は動物の特定の病原性生物に特徴的であり、特に、これらの生物の株の種類決定又は血清型の決定を可能にする核酸を検出することが一般に必要である。
【0063】
しかしながら、上述のように、前記方法は、遺伝子型決定又はSNP分析を含む配列決定又は遺伝的分析などのあらゆる目的で、核酸を精製するために使用することが可能である。これらの技術の多くは、PCRなどの増幅反応を使用し、上記方法はこれらの何れとも組み合わせて使用することができる。
【0064】
特に好ましい実施形態において、膜は上記方法又はアッセイにおいて使用され、異なる分析物のためのアッセイ、例えば、特定のポリペプチド分析物、例えば、タンパク質又はペプチド分析物のためのイムノアッセイを実施するように配置された液体流動装置の要素であるが、この事例では、化学物質、例えば、殺虫剤又は殺虫剤残留物などの他の分析物が異なる分析物を含み得る。異なる分析物は、検査されている特定の病原体又は症状の指標でもある分析物であり得る。
【0065】
このように、イムノアッセイ法は、アッセイ操作における予備的工程として機能することができる。イムノアッセイ工程の結果が陰性であれば、より複雑な核酸検出工程とともに継続することが不要であり得る。しかしながら、結果が陽性であれば、例えば、特定の生物種の存在を示すこと、その生物に特徴的である核酸を検出する第二の段階が結果の確認を与え、さらに、標的核酸配列の性質に応じて、生物の性質、種又は株のさらなる明確化を与え得る。
【0066】
しかしながら、異なる分析物及び該核酸又は各核酸は同一の源又は生物に由来する必要はない。例えば、分析物又は核酸の一方が特定の感染性生物に特徴的であり、及び他方が前記生物の宿主に特徴的であることが望ましい場合があり得る。特に、分析物が感染性生物に特徴的である場合には、該生物に対する宿主の感受性又は耐性に対して影響を与える宿主の遺伝子中に見出される核酸を検出することが有用であり得る。例えば、異なる分析物が殺虫剤又は殺虫剤残留物である場合には、例えば、殺虫剤に対する宿主植物の耐性に対して影響を与える宿主植物中の遺伝子の存在を検出することが有用であり得る。
【0067】
さらなる分析物は、例えば、特定の病原体に対する抗体を含み得、従って、宿主生物によって生成され得る。しかしながら、病原性生物そのものに特徴的であり、又は弱化されたワクチン株若しくはサブユニットワクチンに特徴的であり、例えば、マーカー配列を含み、その後検出される核酸を探す核酸分析は、動物が疾病に曝露され又はワクチン接種されたか否かの指標を与えることができる。本発明の方法は、このような複合的分析を即時且つ容易に実施することを可能にし、動物のワクチン接種状態についての情報をもたらすことができる。これは、ワクチン接種された動物の追跡が必要とされる結核又は狂犬病などの病気の場合に特に重要であり得る。
【0068】
本発明の方法を使用するために検査され得る植物病原体の例には、例えば、特に葉に感染するロドデンドラム(Rhododendrum)植物の害虫であり得るフィトフソラ属種又はタバコの葉の問題であるPVYが含まれるが、他の多くの用途が想定される。
【0069】
動物の健康の分野では、この方法を用いて、口蹄疫、ブタ熱及び鳥インフルエンザウイルスなどの動物の疾病を都合よく検出し得る。ヒトの健康の問題の場合には、イー・コリ又はサルモネラ感染症などの細菌感染症及びインフルエンザ、特に、鳥インフルエンザなどのウイルス感染症が、本方法を用いて診断され得る。本方法は、感染生物の特定の株を検出するように設計することが可能であり、このことは、異なる株の病原性が大幅に変動し、予後又は治療結果がそれに応じて変動する場合に極めて重要であり得る。
【0070】
従って、さらなる実施形態において、本発明は、分析物の存在を検出し、液体試料中の核酸も場合によって検出するための二段階アッセイであり、(i)前記さらなる分析物の存在を検出するためのアッセイ(例えば、イムノアッセイ)を実施することができる液体流動装置の膜に沿って、前記分析物及び核酸を含有すると疑われる液体試料を流す工程と、及び(ii)工程(i)の結果に応じて、前記核酸の膜上の存在を検出する工程とを含む、前記方法を提供する。
【0071】
このようにして使用される場合には、液体流動装置の膜は、好適には、膜上に拡散可能に配置された、標的された結合剤をさらに含む。標識された結合剤は、好適には、液体試料とともに膜に沿って運搬されるように、試料受容ゾーン中に又は試料受容ゾーンの領域中に配置される。
【0072】
例えば、標識された結合剤は、試料受容ゾーン中に配置されたガラス繊維パッドなどの吸収性パッドに付与され得、液体を通じて膜と接触している。例えば、ラテックス標識された抗体又は分析物のラテックス標識された類縁体を含む標識された結合剤が、好適には、以下に論述されているようなタンパク質ブロッキング剤などの強力なブロッキング剤を含有する緩衝溶液中のパッドに付与される。緩衝液は、タンパク質安定化剤、粘度修飾剤又は防腐剤などのさらなる慣用の薬剤を含み得、これらの具体例は以下に記載されている。
【0073】
パッドは、上記のように、プライマー、プローブ又はポリメラーゼなどのその後の核酸分析において使用される試薬の1つ又はそれ以上も収容し得る。
【0074】
さらに、膜には、試料受容ゾーンの「下流」に存在する検出ゾーン中において、膜上に固定化された第二の特異的結合剤が付与される。試料が膜を通過するにつれて、存在する全ての分析物は、標識された結合剤及び/又は第二の特異的な結合剤の何れかと相互作用して、試料中の分析物の存在又は不存在の指標となるシグナルの発生(又はシグナルの欠如)を検出ゾーン中にもたらす。
【0075】
標識された結合剤及び固定化された第二の結合剤は、十分に確立されたイムノアッセイ原理に従って、分析物に特異的に結合し、又は互いに特異的に結合する。
【0076】
例えば、いわゆる「サンドイッチアッセイ」において、標識された結合剤は、試料中の何れかの分析物に特異的に結合して、標識された複合体を形成する。第二の結合剤は、標識された複合体が検出ゾーン中に濃縮されて、可視的シグナルを発生するように、分析物も特異的に結合する。これは、時に、「検査ライン」として知られる。
【0077】
競合アッセイにおいて、標識された結合剤は、前記分析物に対する結合対又は前記分析物の標識された類縁体の何れかである。この場合には、検出ゾーン中の第二の結合剤は、分析物と競合して標識された結合剤を特異的に結合する。従って、例えば、標識された結合剤が前記分析物に対する標識された結合対である場合には、標的分析物の類縁体は検出ゾーン中に固定化される。試料が検出ゾーンを通過するにつれて、あらゆる遊離の標識された結合剤(すなわち、分析物に結合していない)は、固定化された結合剤と会合し、可視的シグナルが発生する。しかしながら、分析物が試料中に存在するのであれば、検出ゾーンに到達する前に、分析物は標識された結合対に結合して、この結合を妨げる。従って、検出ゾーン中のシグナルの不存在は、試料中の分析物の存在を示唆する。
【0078】
同様に、標識された結合剤が前記分析物の標識された類縁体である場合には、第二の固定化された結合剤は前記分析物の結合対であり、分析物の標識された類縁体である。この場合には、分析物と標識された類縁体の両方が、検出ゾーン中の結合部位に関して競合する。シグナルは、標識された類縁体の結合の結果としてのみ生じ、従って、この事例でも、同じく、より多くの分析物が存在すれば、より少量のシグナルが検出ゾーン中に蓄積する。
【0079】
本明細書において使用される「分析物の類縁体」という表現は、アッセイ系において、分析物と類似の様式で挙動する部分を表す。従って、分析物の類縁体は、分析物そのもの又は、分析物そのものと同様に、アッセイにおいて使用される特異的結合剤と相互作用する分析物のバリアント若しくは断片(エピトープ性断片など)を含み得る。
【0080】
出願人は、液体流動装置が試料中の特異的なタンパク質を検出するための迅速且つ簡易な方法を提供するのみならず、試料が供される条件が、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応又は「PCR」などの核酸増幅方法を用いて容易に検出され得る形態で核酸を捕捉する有用な手段であると思われることを見出した。これら2つの技術を組み合わせることによって、顕著な利点が生じ得る。
【0081】
好ましくは、標識された結合試薬に対して使用される標識は、裸眼を用いて又は反射率読み取り装置を用いて、最も好ましくは携帯又はデスクトップ反射率読取装置を用いて読み取り可能なシグナルを与えるために使用することができる可視的標識である。このような標識の例は、ラテックス、金及びシリカなどの粒子状標識である。
【0082】
それぞれ蛍光光度計又は光測定装置を用いて検出され得る蛍光又は化学発光標識などの他の可視的標識を使用し得る。
【0083】
あるいは、標識は、放射線検出装置を用いて検出され得る放射性標識を含み得る。
【0084】
しかしながら、上述のように、本発明の方法は、核酸の分析又は検出のためのあらゆる可視的検出手段の不存在下で利用可能である。
【0085】
液体流動装置中で使用される膜及び特に、ニトロセルロース膜など、上記方法で使用するのに適した膜は、性質上疎水性であり、これが必要なウィッキング効果を生じる。しかしながら、これらの装置中で使用される膜は、好適には、慣用のブロッキング剤を用いてブロッキングされる点で、これらが慣用のイムノアッセイ操作において使用される場合には、疎水性は問題を生じ得る。ブロッキング剤とは、試料中の何れのタンパク質と膜との間の非特異的相互作用も低下させ得、又は試料のウィッキング速度を増加させ得る薬剤である。ブロッキング剤は、一般に、固定化された結合剤の付与後に付与され、通常、タンパク質、界面活性剤及び合成ポリマーなどの薬剤の3種から選択される。
【0086】
ブロッキング剤として使用され得るタンパク質の具体例には、カゼインなどの無脂肪ドライミルク成分のウシ血清アルブミン(BSA)が含まれる。
【0087】
ブロッキング剤として使用され得る界面活性剤の例には、TweenTM20の商品名で販売されているポリオキシエチレンソルビタンモノラウレアートなどの非イオン性界面活性剤及び例えば、TritonXTMシリーズ、例えばTritonX−100としてDowによって販売されているオクチルフェノールエトキシラートなどの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0088】
ブロッキング試薬として使用するための適切な合成ポリマーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)及びラウリル、セチル、ステアリル及びオレイルアルコールから誘導され、BrijTMの商品名で販売されているものなどのポリオキシエチレン脂肪エーテルが含まれる。これらのポリマーの分子量は、使用されるポリマーの性質に応じて変動するが、一般に、5から50kDaの範囲、例えば、8から15kDaの範囲である。
【0089】
ブロッキング試薬のこれらの種類又はクラスの2つ又はそれ以上の混合物、例えば、上に概説されているような界面活性剤と合成ポリマーを含む混合物を特に使用し得ることが一般に認められている。
【0090】
上に概説されているもののようなある種のブロッキング剤の存在は、本出願人によって言及されたように、核酸の精製を妨害しないように思われる。
【0091】
本出願人は、上述のような通例の方法でブロッキングされた膜は、核酸の非特異的結合にも適していることを見出した。従って、イムノアッセイ目的のための膜を調製し、本発明の利点を保持することが可能である。
【0092】
ブロッキング試薬は、通例、緩衝溶液の形態で膜に付与され、次いで、使用前に乾燥させられる。本出願人は、適切な緩衝液が8から9の範囲のpH、好ましくは約8.5を有することを見出した。この特性を有する様々な緩衝液は、当業者に自明である。酸又は塩基が適宜含まれ得る慣用の緩衝液、例えば、Tris、ホスファート、フタル酸水素カリウム、水和ホウ素ナトリウム(sodium borohydrate)又は炭酸水素カリウム若しくはナトリウムを基礎とする緩衝液、これらは、核酸の保持を低下させないと思われる。
【0093】
これに加えて又はこれに代えて、膜に沿って確実に拡散できるようにするために、ブロッキング剤は標識された試薬と組み合わされ得る。
【0094】
膜にブロッキング試薬を付与するために又は試料送達領域に標識された試薬を付与するために使用される緩衝溶液は、好適には、スクロース又はトレハロースなどのタンパク質安定化剤をさらに含み得る。これらは、単にその中に浸漬させると直ちに、ブロッキング剤が膜に結合された状態になるのに十分な程度まで、緩衝溶液の粘度も修飾し得る。緩衝液中に含まれる安定化剤の量は、緩衝液の性質及び安定化剤又は粘度改変剤の正確な性質に応じて変動する。
【0095】
この場合にも、必要であれば、抽出緩衝液に関して上に概説されているような防腐剤を、ブロッキング剤を含有する緩衝液に添加し得る。
【0096】
所望であれば、イムノアッセイは、本分野において理解されているように、さらなる試薬又は成分を含み得る。例えば、検出ゾーンの下流に適切に配置された「対照」ゾーン中に固定化された、標識された結合剤に対する結合対が存在し得る。何れの残余の標識された結合剤も、この第二のゾーン中で結合して、好適には、「対照ライン」を与え、これは、標識された結合剤の十分な流動の指標となる。あるいは、特異的な標識された対照試薬は、例えば、第一の標識された結合剤及び対照ゾーン中に固定化された、標識された対照試薬に対する特異的結合剤と混合して、膜上に拡散可能に添加されて、対照ラインを生じ得、イムノアッセイが満足に進行したことを確認することができる。
【0097】
所望であれば、イムノアッセイは、例えばWO2006003394(その内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。)に概説されているように、定量的又は半定量的な方法を用いて実施することができる。
【0098】
PCRを用いて、LFD片上の陽性試験ラインからシグナルを増幅することができるかどうかを決定するための研究を設定した。試験ラインを切り出し、研究室中でPCRを実施することによって陽性LFDの結果を確認するために、この能力を有することが有用であり得ると予想された。LFD試験が試料中に存在する標的の株又は種を区別できない場合に、例えば、疫病菌又は鳥インフルエンザアッセイの場合に、この技術が標的の株又は種の区別を可能にすることがさらに予想された。
【0099】
以下に報告されている研究から得られた結果は、試験ラインから得られた結果をPCRによって実際に確認できることを示した。本結果は、使用されたLFD片上の何れのドメインから採取されたDNAからも陽性PCR分析を実施可能であることをさらに示した。試験ラインの上流及び下流にあるドメインが、首尾よく検査された。
【0100】
さらに、LFD膜からのDNAのPCR分析から得られたC値は、標準的な複雑な精製及び/又は保存方法を用いた分析から得られたものと同じであった。これは、LFD分析中で使用される抽出緩衝液及び/又は膜処理システムが機能して、DNAを精製し、標準的な方法と同程度に効果的にきょう雑物/阻害剤を除去することを示唆している。
【0101】
以下でさらに概説されているように、標準的なサンドイッチアッセイフォーマットを基礎とする側方流動装置(LFD)を開発するために既存の技術及び専門的技術が使用され、これらの原理は、ニトロセルロース膜上の標的特異抗体の固定化されたライン(試験ライン)と標的の存在の可視的な確認を表示するための着色されたラテックス−抗体連結体(抗標的マウス抗体)の間に標的を捕捉することに依存している。ラテックスの流れを視覚的に確認するために、一連の抗マウス抗体が装置中に取り込まれ(対照ライン)、陽性検出の指標及び陰性結果に対する単一のラインとして2つラインがもたらされた。安定な粒子貯蔵場所を与えるために、ガラス繊維放出パッド上にラテックス抱合体を付与し、膜及び吸収性パッドとともに保護用プラスチック収納体の中に設置した。
【0102】
試料上への試料抽出物75μL(約2から3滴)の添加は、ラテックス抱合体を膜上に十分に放出させ、ラテックス抱合体は吸収性パッドの方向に流動し始めた。標的抗原が試料抽出物中に存在すれば、抗体結合が起こってラテックス抗原複合体を生成し、次いで、該複合体は試験ラインによって捕捉され、堆積されたラテックスの可視的なラインを生成する。抗マウス抗体は全ての過剰なラテックス連結体を捕捉し、ラテックスの流動の可視的な確認を与えた。
【0103】
その後、リアルタイムPCRアッセイにより、膜の長手方向に沿って膜の試料を分析することによって、膜の長手方向に沿って、標的生物(この事例では、フィトフソラ・ラモラム)の特定種に特徴的な核酸を検出できることが示された。膜のさらなる分析によって、膜は宿主であるロドデンドロンに由来するCOXDNAも含有することが明らかとなった。
【0104】
上に概説されているように、一般に、使用時には、試験のイムノアッセイ要素の何れもが野外状況で実施され得ること、及び、液体流動装置は、一旦使用されると、さらなる分析のために研究室環境へ核酸を輸送する便利な手段を提供することが想定され得る。しかしながら、アッセイを実施するためにキットを調製し得る。
【0105】
従って、さらなる態様において、本発明は、先行する請求項の何れか一項に記載のアッセイを実施するためのキットであり、吸水性膜、例えば、液体流動装置の要素を形成する吸水性膜、及び核酸の検出において使用される少なくとも1つの試薬を含むキットを提供する。
【0106】
核酸の検出において使用される適切な試薬には、標的核酸配列の増幅に適した1つ又はそれ以上のプライマーが含まれるが、他の試薬は、プローブ、特に、標的核酸に対して特異的であるTAQMANTMアッセイにおいて使用されるものなど蛍光標識されたプローブ及びDNAポリメラーゼ、緩衝液、塩などの酵素が含まれ得る。
【0107】
好適には、液体流動装置は、分析物、特に、標的核酸と同じ種に由来するポリペプチド分析物を検出するためのイムノアッセイを実施するために配置される。イムノアッセイは、上述のようなサンドイッチ又は競合アッセイ形式を採り得る。
【0108】
ここで、添付の図面を参照しながら、例として、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0109】
フィトフソラ・ラモナムの検出
メスの刃を用いて、フィトフソラ・ラモラムに感染したロドデンドロン種の葉の試料(1から2cm)を小さな片に切断し、抽出緩衝液を含有するPocketDiagnosticsTM(CSL,York,UK)から得られたLFDキットのLFD抽出瓶の中においた。
【0110】
約2分間、瓶を震盪し、次いで、フィトフソラ属種の試料ウェルに試料2滴を移した。LDFはキット内に含有した。この場合のLFDは、図1に示されているように慣用のサンドイッチアッセイフォーマットを含む。
【0111】
一旦、試料が吸収されたら、プラスチック収納体から膜を取り出し、膜の長手方向に沿って、1から2mm幅の8つの片を切り出した(図2)。各片を半分に切断し、P.ラモラム及びCOX(1×PCR緩衝液(50mMKCl、10mMTris−HCl、0.001%ゼラチン)、0.025U/μLHotTaq、0.2mM各dNTP、5.5mMMgCl、1×ROX受動参照色素、300nMの各P.ラモラムプライマー、200nMの各COXプライマー及び100nMの各P.ラモラム及びCOXプローブ)に対する多重リアルタイムPCR用の25μLマスターミックス(Taqman)を含有する96ウェルプレートの別々のウェル中に、各半分の片を配置した。
【0112】
95℃で10分、引き続き、95℃で15秒と60℃で1分の2段階40サイクルのサイクル条件を用いて、ABI7900HT上でリアルタイムPCRを実行した。
【0113】
結果
各片に対するP.ラモラムとCOXのC値が、図3に示されている(エラーバーは、反復反応(各片の半分2つ)に対する標準偏差を示している。)。PVYLFDを用いて、極めて類似したC値が得られた(データは示さず。)。
【0114】
値は、試料位置とは無関係に、宿主DNA(COX)と標的DNA(P.ラモラム)の両方がLFD膜から同定され得ることを示している。PVYLFDに対してPラモラムの試料を用いた結果は極めて似通っており、LFDの特異性、すなわち、特異的なモノクローナル抗体は、核酸抽出にとって重要でないことを示している。
【実施例2】
【0115】
PVY分析
PVYに感染した植物(ジャガイモ)抽出物に曝露され(従って、陽性結果を示した)PVY抗原に対して特異的な抗体を使用することを除き、実施例1に上述されているように調製されたジャガイモウイルスY(PVY)LFDを、6年間より長く、密封されたプラスチックバッグ中に、周囲温度で保存した。LFDから膜を取り出し、1から2mm幅の数個の片を膜から切断した。各片を半分に切断し、PVYに対するリアルタイムRT−PCR(Taqman)用のマスターミックス25μL(1×PCR緩衝液(50mMKCl、10mMTris−HCl、0.001%ゼラチン)、0.02U/μLM−MLV逆転写酵素、0.025U/μLHotTaq、0.2mMの各dNTP、5.5mMMgCl、1×ROX受動参照色素、300nM各PVYプライマー及び100nMPVYローブ)又は植物チトクロムオキシダーゼ(COX)遺伝子に対するリアルタイムPCR(Taqman)用のマスターミックス25μL(1×PCR緩衝液、0.025U/μLHotTaq、0.2mMの各dNTP、5.5mMMgCl、1×ROX受動参照色素、300nMの各COXプライマー及び100nMCOXプローブ)を含有する96ウェルプレートの別々のウェル中に、各半分の片を配置した。48℃で30分、次いで、95℃で10分、続いて、95℃で15秒と60℃で1分の2段階40サイクルのサイクル条件を用いて、ABI7900HT上でリアルタイムPCRを実行した。
【0116】
結果
PVY及びCOXは、それぞれ、RT−PCR及びPCRによって首尾よく検出された。PVY及びCOXのC値が、表1に示されている。
【0117】
【表1】

【0118】
この結果は、長期にわたって、安定に、側方流動装置すなわちLFDが核酸を保持したことを示している。
【0119】
PVYの新鮮な試料を用いて、及びPVXに対して実施されたリアルタイムアッセイにおいて、類似の優れた結果が得られた(それぞれ、図9及び10参照)。
【実施例3】
【0120】
膜/LFDの効果
以下のような市販の様々な膜として、P.ラモラムが接種されたロドデンドロンの抽出物を試料として用いてP.ラモラムを検出するために、実施例1に記載されている実験を反復した。
【0121】
1Millipore Corp.HiFlow180
2Millipore Corp.HiFlow135
3Millipore Corp.HiFlow120
4Millipore Corp.HiFlow90
5Millipore Corp.HiFlow75
6Millipore Corp.HiFlow65
7Schleicher & Schuell Prima 40
LFD作製において使用された慣用のブロッキング溶液で、及び慣用のLFDのラテックス標識システムを適用するために使用された慣用の緩衝液を用いて又は用いずに、それぞれの膜を処理した。以降の実験では、処理されていない膜試料Millipore Corp.HiFlow75及びMillipore Corp.HiFlow180も使用した。
【0122】
多岐にわたる市販のLFDを、実施例1に記載されているような処理にも供した。これらには、「ClearblueTM」妊娠検査キット、Tesco家庭用妊娠検査キット、Anigenから入手可能な鳥インフルエンザウイルス検出用の市販のキット及びAgdiaによって製造されているキュウリモザイクウイルス(CMV)ImmunoStripが含まれた。これらのキットの幾つかは、タンパク質シグナル伝達機序として、金の標識を使用し、他のキットはラテックスを使用した。
【0123】
P.ラモラム核酸は、孔径又は膜の前処理スキームの存在若しくは不存在若しくは性質とは無関係に、上に列記されている全ての膜及びLFDから採取された試料中で首尾よく検出された。
【実施例4】
【0124】
純粋なDNA検出との比較
実施例1に記載されているようにP.ラモラムを検出するためのTaqManTMアッセイに、同じく実施例1に記載されているようにP.ラモラムに対する健康なロドデンドロンの未精製抽出物で処理されたLFD由来の膜と一緒に、純粋なP.ラモラムDNAの試料を供した。次いで、TaqManTMを実施する前に、P.ラモラムDNAの等量を試料に加えた。結果は表1に示されており、本明細書の以下の図4に示されている。
【0125】
【表2】

(効率は、10(−1/勾配)−1として標準曲線の勾配から算出した。)
【0126】
これらの結果から、膜の存在は増幅反応の効率に対して無視できる効果を有することが明らかである。さらに、ロドデンドロンDNAの存在は、いかなる意味においても、アッセイの効率を阻害しなかった。
【実施例5】
【0127】
保存実験
調製後に直接、実施例3に記載されている未精製抽出物を、実施例1に記載されているTaqManアッセイに直接供した。未精製抽出物は実施例1に記載されているようにLFDに対しても適用され、未精製抽出物が走行したら直ちに、本装置由来の膜を類似のアッセイに供した。結果(図5)は、調製後直ちに、両試料が陽性結果を与えたことを示している。
【0128】
次いで、未精製抽出物と膜の両方を、7ヶ月間、室温で保存し、分析を繰り返した。結果が図6及び図7に示されており、図7は、図6に示されている結果のTaqMan増幅プロットである。
【0129】
これらの結果は、膜が効果的な核酸貯蔵機構として作用することを示している。
【実施例6】
【0130】
他の試料の種類での核酸の検出。
【0131】
マウス血清をLFDに添加し、LFDに沿って走行させた。一旦、試料が吸収されたら、プラスチック収納体から膜を取り出し、真核生物の18SrRNA遺伝子を検出するように設計されたTaqManリアルタイムPCRアッセイに供した。これは、AppliedBiosystemsから入手可能な予め展開された内在性対照アッセイである。陰性対照(水)も、第二のLFDに適用した。
【0132】
結果は、図8に示されている。明らかに、血清は、本方法と組み合わせて使用するのに適した試料の種類である。
【0133】
(18SrRNA遺伝子は全ての真核生物中に見出され、おそらく、陰性対照中の僅かな汚染を説明する)。
【実施例7】
【0134】
異なる検出方法
実施例1に記載されているLFD装置の膜に沿って、試料を走行させ、次いで、リアルタイムPCR、具体的にはTaqManアッセイ又は慣用のPCR及びLAMPアッセイを用いて、該試料中に存在する核酸が検出される多様な異なるアッセイを実施した。
【0135】
TaqManPCR反応は、典型的には、1×Applied Biosystems Buffer A(50mMKCl、10mMTris−HClpH8.3、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)受動参照色素)、0.025U/μLApplied Biosystems AmpliTaq Gold、0.2mM各dNTP、5.5mMMgCl、300nMの各プライマー及び100nMTaqManプローブを含有する。RNAウイルスの検出のためのTaqMan逆転写酵素PCR(RT−PCR)は、M−MLV逆転写酵素0.02U/μLも含有する。サイクリング条件は、95℃で10分後に、95℃で15秒及び60℃で1分の2段階40サイクルであった。RT−PCR48℃で30分の逆転写段階がこの前に先行した。リアルタイムPCRをABI7900HT上で実施した。
【0136】
結果は、Ct値、すなわち、蛍光が閾値を越えるサイクルの観点で解釈される。
【0137】
LAMP反応は、0.32U/μLBstDNAポリメラーゼ(New England Biolabs、Ipswich、MA)、1×Thermopol緩衝液、1.4mM各dNTP、6mMMgCl(Thermopol緩衝液中では2mMを含む)、1.2Mベタイン、200nM各外部プライマー(F3及びB3)、2μM各内部プライマー(FIP及びBIP)及び1μM各ループプライマー(F−Loop及びB−Loop)を含有する。65℃で40分間、反応を温置し、次いで、Bstポリメラーゼを不活化するために、80℃で5分間温置した。Quant−iTPicoGreendsDNA試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)2μLを添加し、色の変化(オレンジから黄色)を観察することによって、増幅された産物を可視化した。
【0138】
PCR反応は、1×FermentasPCR緩衝液(10mMTris−HCl(25℃でpH8.8)、50mMKCl、0.08%(v/v)NonidetP40.)、0.025U/μLFrementasTaqポリメラーゼ、0.2mM各dNTP、2mMMgCl、500nM各プライマーを含有する。サイクリング条件は、95℃で2分後に、95℃で30秒、57℃で30秒及び72℃で30秒の3段階30サイクルであった。ゲル電気泳動(1.2%アガロースゲル)後に、臭化エチジウムでの染色によって、産物を可視化した(図11)。
【0139】
全ての事例では、膜上で核酸が首尾よく検出されることが見出された。
【0140】
アッセイ及びアンプリコンのサイズは、表2に要約されている。
【0141】
【表3】

【0142】
膜の上で、多様な異なるアンプリコンサイズが検出され、核酸が膜上に保持されているかどうかを決定する上で、核酸のサイズが重要でないことを示唆している。
【実施例8】
【0143】
LFD上へのDNAの抽出及びWhatmanFTAカード及びその後のリアルタイムPCRによる、根頭癌腫病の病原体であるアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の存在に関する、東アフリカのバラ素材の検査
最近、東アフリカ全体にわたってバラ穀物が、根頭癌腫病として知られる病気によって深刻な影響を受けている。本疾患は、Ti−プラスミドとして知られるDNAの小さな環状片を有する細菌アグロバクテリウム・ツメファシエンスの株によって引き起こされる。これらのプラスインドは、細菌の内部に保有されているので、また、多くの非病原性アグロバクテリウム株が天然に存在するので、病原体を検出する唯一の方法は、細菌DNAを単離し、次いで、Ti−プラスミドの存在に関して、本DNAを検査することによる方法である。
【0144】
最近、ケニアのバラ生育場へ旅をした。罹病したバラ植物から試料を採取し、MilliporeHiflow75膜及びWhatmanFTAカードを基礎とする両LFDに投与した。次いで、アグロバクテリウム病原体を検出するT−DNAアッセイとして知られるTi−プラスミド特異的リアルタイムPCRアッセイ、又はDNA抽出プロセスが機能したことを確かめるために、内部対照として使用されるCOX植物DNAリアルタイムPCRアッセイの何れかを使用する検査のために、これらをイギリスに輸送した。
【0145】
膜の加工
(a)LFD装置の加工。HarrisUnicoreHolePunchを用いて、接種された各LFD膜から2つの直径1.25mmの円板を採取した。96ウェルPCRぷラートの1つのウェル中にこれらの円板を直接配置した。全ての膜を試料として採取した後、円板を含有する各ウェルに、リアルタイムPCRマスターミックス25μLを添加した。ディスク及びマスターミックスの両者が各ウェルの底に位置するようにするため、PCRプレートを短時間遠心した。次いで、リアルタイムPCR機の中に、プレートを直接配置し、サイクリング反応を開始した。(b)WhatmanFTAカード。HarrisUnicoreHolePunchを用いて、接種された各FTAカードから2つの直径1.25mmの円板を採取した。96ウェルPCRプレートの1つのウェル中にこれらの円板を直接配置した。全ての膜を試料として採取した後、Whatman精製緩衝液200μLを各ウェルに添加し、室温で5分間、プレートを温置した。5分後、円板がウェル中に残存するように注意を払いながら、各ウェルから緩衝液を除去した。この精製工程を、さらに2回繰り返した。第三の精製工程後、1×TE緩衝液200μLをを各ウェルに添加し、室温で5分間、プレートを温置した。5分後、円板がウェル中に残存するように注意を払いながら、各ウェルから緩衝液を除去した。この工程を、さらに1回繰り返した。ウェルから、1×TE緩衝液の最後の分取試料を取り出した後、56℃で20分間、PCR機ヒートブロックを用いて、プレートを乾燥させた。円板が乾燥したら、円板を含有する各ウェルに、リアルタイムPCRマスターミックス25μLを添加した。ディスク及びマスターミックスの両者が各ウェルの底に位置するようにするため、PCRプレートを短時間遠心した。次いで、リアルタイムPCR機の中に、プレートを直接配置し、サイクリング反応を開始した。
【0146】
結果
バラ植物の様々な異なる点から試料が採取された。接木部によって創出された創が病原性アグロバクテリウム属種を惹きつけ、従って、病原体がこの点に集合するので、茎部分、特に、開花変種が台木変種に融合されている接木部が、根頭癌腫病の病原体を検出するための最も可能性が高い場所であることが見出された。以下に示されている結果は、液体に浸して柔らかくされ、2つの小さなDNAキット瓶の中に供給された緩衝液を用いて両装置に適用された10個の異なる1から2cmの幹切片から得られたものである。これらの試料のうち4つが、接木部を横切って採取された。
【0147】
【表4】

【0148】
GU−接木部を取り込んだ幹切片
これは、本発明の方法から得ることができる結果が、WhatmanFTAカードを用いて得られる結果より優れていないとしても、少なくとも同等であることを示している。しかしながら、記載されているプロトコールから明らかであるように、本方法は操作がずっと簡便であった。
さらに、LFDの使用は、予備的タンパク質診断アッセイを同時に実施し得るというさらなる利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、本発明の方法において使用され得る液体流動装置を模式的に示している。
【図2】図2は、本発明の方法において使用され得る膜試料採取スキームを示している。
【図3】図3は、本発明の実施形態において実施されるPCR反応の結果を示している。
【図4】図4は、フィトフソラ・ラモラム(Phytophthora ramorum)によって感染されたロドデンドロン種由来の未精製抽出物の試料が走行するLFDからの膜上で実施されたものと比べた、抽出されたP.ラモラムDNAの希釈系列のTaqManTM増幅に対するCt値を示すグラフである。
【図5】図5は、図4に関して使用されたものと同一であるが、調製が行われた後に直接、未精製抽出物そのものの上での(未精製抽出物)、及び、調製後に直接未精製抽出物で処理されたLFDの膜上での(装置)C値を示すグラフである。
【図6】図6は、同一の未精製物質及び膜に対して、但し、室温で7ヵ月の保存後に実施された後における、図6に示されているものに対するC値の同様の比較を示すグラフである。
【図7】図7は、図6に示されている結果のTaqMan増幅プロットである。
【図8】図8は、正常なマウス血清中の18SrRNAのTaqManTM検出に対する増幅プロットである。陰性対照=水。
【図9】図9は、播種されたタバコ中のPVYのTaqManTM検出に対する増幅プロットを示している。
【図10】図10は、播種されたタバコ中のPVXのTaqManTM検出に対する増幅プロットを示している。
【図11】図11は、P.ラモラムに対する慣用のPCR反応後に得られたゲルを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料から核酸を分離するための方法であり、核酸が吸水性膜の長手方向に分布されるように、前記核酸を含有する液体試料又は前記核酸を含有することが疑われる液体試料を前記吸水性膜に沿って流す工程を含む、前記方法。
【請求項2】
その後の工程において、膜上の核酸の存在が検出され、又は核酸が前記膜から回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体が膜に沿って流れた後に、膜が乾燥され、又は膜を乾燥させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
乾燥された膜が保存され、及び、その後の工程において、膜上の核酸の存在が検出され、又は核酸が前記膜から回収される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
分離された核酸がさらなる分析に供せられる、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらなる分析が膜の試料を用いて実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記さらなる分析の前に、核酸が膜から溶出される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
さらなる分析がSNPの種類決定、DNAフィンガープリント法又は配列決定を含む、請求項5から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
特異的な標的核酸が検出される、請求項5から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
膜がニトロセルロース膜である、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
膜が液体流動装置の要素である、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
液体流動装置が試料受容部分及び膜上の前記試料受容部分から離隔して配置された吸収性部分を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
膜が固形収納体の中に収容されており、又は膜が積層化されている、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
液体の膜に沿ったウィッキングを増強するように膜が加工されている、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
試料が生理的若しくは臨床的試料又は組織抽出物である、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
試料が植物又は動物組織の抽出物である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
試料が血液、血清、尿、乳又は唾液又は糞便抽出物である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
試料が環境試料である、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
試料が水試料又は固体抽出物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
試料中の標的核酸の存在を検出するためのアッセイにおいて使用される請求項1に記載の方法であり、前記核酸を含有すると疑われる液体試料を液体流動装置の膜に沿って流す工程と、及び前記膜上の特異的な核酸の存在を検出する工程とを含む、前記方法。
【請求項21】
膜に沿って試料を走行させた後に膜の一部が採取され、及び膜上の核酸の存在が検出される、請求項1から20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
核酸が核酸増幅反応を用いて検出される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
試料が膜に沿って流れた後に、前記核酸増幅反応において有用な試薬が膜上に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
試料を付与する前に、前記試薬が膜上に存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記試薬が試料受容部分中に存在し、及び試料とともに膜に沿って移動する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記試薬が増幅プライマーである、請求項23から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である、請求項22から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
PCRの進行がリアルタイムにモニターされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
膜に付与された試料の量が知られており、及び存在する核酸の量を定量するためにモニタリングの結果が使用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
膜上の2以上の核酸の存在が検出される、請求項1から29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
膜の同じ又は異なる試料を用いて複数のPCR反応が実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
単一のPCR中で2以上の核酸を検出できるようにするために、多重PCR反応が実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
2以上の核酸が膜から回収される、請求項1から29の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
膜が、さらなる分析物のためのアッセイを実施するように配置された液体流動装置の一部である、請求項1から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
アッセイがイムノアッセイである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
分析物の存在を検出し、液体試料中の核酸も場合によって検出するための二段階アッセイであり、(i)さらなる分析物の存在を検出するためのアッセイを実施することができる液体流動装置の膜に沿って、前記分析物及び核酸を含有すると疑われる液体試料を流す工程と、及び(ii)工程(i)の結果に応じて、前記核酸の膜上での存在を検出する工程とを含む、前記アッセイ。
【請求項37】
工程(i)のアッセイがイムノアッセイである、請求項36に記載のアッセイ。
【請求項38】
前記分析物及び核酸が同一の生物又は該生物の特定の種若しくは遺伝子型に由来する、請求項36又は請求項37に記載のアッセイ。
【請求項39】
分析物が生物の種類に特徴的であり、及び核酸が前記生物の特定の種に特徴的である、請求項38に記載のアッセイ。
【請求項40】
分析物又は核酸の一方が特定の感染性生物に特徴的であり、及び他方が前記生物の宿主に特徴的である、請求項36又は請求項37に記載のアッセイ。
【請求項41】
分析物が感染性生物に特徴的であり、及び前記生物に対する宿主の感受性又は耐性に対して影響を与える宿主の遺伝子中に核酸が見出される、請求項40に記載のアッセイ。
【請求項42】
分析物が植物に付与可能な殺虫剤であり、及び核酸が植物の遺伝子中に見出される、請求項36又は請求項37に記載のアッセイ。
【請求項43】
請求項1から35の何れか一項に記載の方法又は請求項36から請求項42の何れか一項に記載のアッセイを実施するためのキットであり、吸水性膜及び核酸の検出において使用される少なくとも1つの試薬を含む、前記キット。
【請求項44】
試料が膜に沿って流れた後に、前記試薬が膜上に存在する、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
試料を付与する前に、前記試薬が膜上に存在する、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記試薬が試料受容部分中に存在し、及び試料とともに膜に沿って移動する、請求項44に記載のキット。
【請求項47】
前記少なくとも1つの試薬が標的核酸配列の増幅に適したプライマーを含む、請求項43から46の何れか一項に記載のキット。
【請求項48】
吸水性膜が液体流動装置の要素である、請求項43又は47の何れか一項に記載のキット。
【請求項49】
さらなる分析物を検出するためのアッセイを実施するように、液体流動装置が配置されている、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
さらなる分析物がポリペプチドであり、及びアッセイがイムノアッセイであり、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
実施例を参照して本明細書に実質的に記載されている液体試料から核酸を分離するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−529345(P2009−529345A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558892(P2008−558892)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000865
【国際公開番号】WO2007/104962
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(505377887)ザ セントラル サイエンス ラボラトリー、”シーエスエル”、 リプリゼンティング ザ セクレタリー オブ ステート フォー エンバイロメント、フード アンド ルーラル アフェアーズ (2)
【Fターム(参考)】