説明

糊付け機

【課題】適量の糊液を経糸に供給することが容易な糊付け機を提供する。
【解決手段】対の絞りローラ11,12と対の絞りローラ13,14との直下には糊液受け器15が配置されている。絞りローラ11の直上にはパイプ形状の糊液供給器21が絞りローラ11の長さ方向に沿うように配設されており、絞りローラ13の直上にはパイプ形状の糊液供給器22が絞りローラ13の長さ方向に沿うように配設されている。糊液供給器21,22は、絞りローラ11,13の周面上に糊液を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糊液を供給された経糸を一対の絞りローラの間に通し、前記一対の絞りローラの絞り作用によって前記経糸から糊液を絞り取って前記経糸に糊付けを行なう糊付け機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の糊付け機(例えば、特許文献2を参照)では、糊液を貯めているサイズボックス(糊液槽)内の糊液に経糸を浸した後、一対の絞りローラ間で経糸を挟んで経糸から糊を絞り取る。糊液槽内の糊液は、経糸に付着して奪われてゆくので、糊液槽内の糊液を補充する必要がある。又、糊液の液面に糊の皮膜ができると、この糊皮膜が経糸に付着する。糊皮膜が経糸に付着した状態で乾燥工程に移されると、糊皮膜が隣り合う経糸を接着するように固化し、糊皮膜によって接着された経糸が分割される際には、糸切れが生じ易い。
【0003】
このような糊皮膜が生じないようにするため、特許文献2に開示の装置では、糊液槽における糊液の補充では、経糸が糊液槽から糊液を奪ってゆくよりも多い量の糊液を補充し、糊液槽の可動堰壁から糊液を溢れ出させて、糊液の液面に流れを生じさせるようにしている。
【0004】
しかし、糊液槽の立壁と、糊液に浸された下側絞りローラとの間における糊液面に淀みが生じ易く、このような淀みを生じやすい箇所では、糊皮膜が生じ易い。
特許文献1に開示の装置では、上側のバックアップロールと下側のコーティングロールとの間に通される経糸に糊液を供給するため、下側のコーティングロールの周面に接合するアプリケータロールの周面に向けて糊剤供給ノズルから糊液を吐出するようにしている。アプリケータロールの周面に付着された糊液は、下側のコーティングロールの周面に転移し、下側のコーティングロールの周面に転移した糊液が下側のコーティングロールの周面と上側のバックアップロールの周面とのニップラインにて経糸に付着される。
【0005】
特許文献1に開示の装置では、糊液槽(サイズボックス)が不要となり、特許文献2におけるような問題は生じない。
【特許文献1】特公平1−22380号公報
【特許文献2】実公平6−34394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、アプリケータロールの周面に付着された糊液を下側のコーティングロールの周面に転移させる構成では、適量の糊液を下側のコーティングロールの周面に供給すること、つまり適量の糊液を経糸に供給することが難しい。
【0007】
本発明は、適量の糊液を経糸に供給することが容易な糊付け機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために本発明は、糊液を供給された経糸を一対の絞りローラの間に通し、前記一対の絞りローラの絞り作用によって前記経糸から糊液を絞り取って前記経糸に糊付けを行なう糊付け機を対象とし、請求項1の発明では、前記一対の絞りローラから落下する糊液を受けるように前記一対の絞りローラの下方に配置された糊液受け器と、前記一対の絞りローラの間に導入される前記経糸よりも上側の絞りローラの周面、又は前記一対の絞りローラよりも上流の経糸の上面側に糊液を供給する糊液供給手段とを備えた糊付け機を構成し、前記一対の絞りローラから落下する糊液を受ける受け部を、運転中常に記経糸よりも下側の絞りローラに接触しない位置にあるように前記糊液受け器に設定した。
【0009】
経糸を挟み込む上側の絞りローラの周面又は経糸の上面側に糊液供給手段から糊液を供給するので、適量の糊液を経糸に供給することが容易である。糊液受け器が糊液を貯留しないものである場合には、受け部は、糊液受け器の内壁面となる。糊液受け器が糊液を貯留するものである場合には、受け部は、糊液受け器の貯留糊液の液面あるいは糊液受け器の内壁面となる。
【0010】
なお、「運転中常に」とは、「いずれの運転条件においても常に」のこと、つまり「糊付け機の運転速度に関係なく常に」のことを意味する。
請求項2の発明では、請求項1において、前記糊液供給手段は、前記上側の絞りローラの周面に糊液を供給するようにし、前記糊液供給手段による前記上側の絞りローラの周面における糊液供給箇所は、前記周面の頂上から前記上側の絞りローラの回転方向に1/4周辿った範囲にあるようにした。
【0011】
このような範囲は、適量の糊液を経糸に供給する上で好適な糊液供給箇所である。
請求項3の発明では、請求項1及び請求項2のいずれか1項において、経糸は、前記一対の絞りローラの把持部において前記一対の絞りローラの周面に対して接線となる経路をとるようにした。
【0012】
経糸の屈曲箇所が減り、屈曲による経糸の損傷を少なくすることができる。
請求項4の発明では、請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記糊液受け器は、糊液を貯めない器とした。
【0013】
糊液を貯めない糊液受け器は、従来のサイズボックスに比べて簡素な構成にできる。
請求項5の発明では、請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記糊液受け器は、糊液を貯める器とした。
【0014】
糊液受け器で受けた糊液を糊液供給手段に送って再利用する場合には、この糊液を貯めて適度の温度に加熱する必要がある。糊液を貯めるようにした糊液受け器は、糊液を加熱する場所として好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の糊付け機は、適量の糊液を経糸に供給することを容易にするという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
図1に示すように、シート状に配列された多数本の経糸Tは、一対の絞りローラ11,12の間及び一対の絞りローラ13,14の間を通される。対となる絞りローラ11,12は、経糸Tを挟み込んでおり、対となる絞りローラ13,14は、経糸Tを挟み込んでいる。絞りローラ11,13は、矢印R1の方向に回転するようになっており、絞りローラ12,14は、矢印Q1の方向に回転するようになっている。
【0017】
経糸Tは、対となる絞りローラ11,12の把持部H1において絞りローラ11,12の周面111,121に対する接線となる経路をとっている。又、経糸Tは、対となる絞りローラ13,14の把持部H2において絞りローラ13,14の周面131,141に対する接線となる経路をとっている。
【0018】
対の絞りローラ11,12と対の絞りローラ13,14との直下には糊液受け器15が配置されている。糊液受け器15の底壁151は、下に凹む形状となっている。底壁151は、絞りローラ12,14に接触しない位置に配置されている。底壁151の最下部には回収パイプ16が接続されている。
【0019】
糊液受け器15よりも下方には糊液槽17が配設されている。回収パイプ16は、糊液槽17の直上に導かれている。糊液槽17内には糊液Nが貯められている。糊液槽17内には加熱パイプ18が配設されている。加熱パイプ18内には蒸気供給源19から蒸気が供給されるようになっている。加熱パイプ18内に供給された蒸気は、糊液槽17内の糊液Nを加熱する。蒸気供給源19から加熱パイプ18内に供給される蒸気量は、糊液槽17内の糊液Nの温度が所望の温度範囲(例えば、90°C〜95°C)内に入るように調整される。
【0020】
糊液槽17の底壁171には供給パイプ20が接続されている。供給パイプ20は、途中から分岐パイプ201と分岐パイプ202とに分岐している。一方の分岐パイプ201にはパイプ形状の糊液供給器21が接続されており、他方の分岐パイプ202にはパイプ形状の糊液供給器22が接続されている。糊液供給器21は、絞りローラ11の直上で絞りローラ11の長さ方向に沿うように配設されており、糊液供給器22は、絞りローラ13の直上で絞りローラ13の長さ方向に沿うように配設されている。
【0021】
供給パイプ20の途中にはポンプ23が介在されている。ポンプ23は、糊液槽17内の糊液Nを供給パイプ20を介して糊液供給器21,22の筒内へ圧送する。
糊液槽17内の糊液が一定量以下になると、糊液供給源10から糊液が糊液槽17へ補給されるようになっている。糊液槽17内の糊液Nの液面N1の高さは、レベルセンサ28によって検出される。レベルセンサ28によって得られた液面レベル情報は、コントローラCへ送られる。コントローラCは、液面レベル情報に基づいて開閉弁29の開閉を制御する。糊液槽17内の糊液Nの液面N1の高さが一定以下になると、コントローラCは、開閉弁29を開く。これにより糊液供給源10内の糊液が糊液槽17へ送られる。糊液槽17内の糊液Nの液面N1の高さが所定高さになると、コントローラCは、開閉弁29を閉じ、糊液供給源10内の糊液の供給が停止される。糊液供給源10からの糊液供給が停止される所定高さの液面は、糊液受け器15より下方に設定されている。
【0022】
図2(b)に示すように、パイプ形状の糊液供給器21,22の周壁の外周面には溝24が糊液供給器21,22の長さ方向に沿って形成されている。溝24の底には複数の吐出孔25が一定の間隔を置いて形成されている。吐出孔25は、溝24と、糊液供給器21,22の筒内とを連通しており、糊液供給器21,22の筒内へ圧送された糊液が吐出孔25から溝24へと吐出される。
【0023】
図1及び図2(a)に示すように、溝24は、垂直方向に見て、絞りローラ11,13の上半周側の降り四半周S1,S2の範囲内に入る位置に配置されている。つまり、溝24は、垂直方向に見て、絞りローラ11,13の頂上112,132から絞りローラ11,13の回転方向R1に1/4周辿って上半周と下半周との境K1,K2に至る範囲(降り四半周S1,S2)内に入る位置に配置されている。
【0024】
絞りローラ11〜14が回転しているときには、ポンプ23が作動し、糊液槽17内の糊液Nがポンプ23の作動によって糊液供給器21,22の筒内へ圧送される。糊液供給器21,22へ供給される糊液の流量調整は、例えばポンプ23の回転数を調整することによって容易に行える。
【0025】
糊液供給手段としての糊液供給器21,22の筒内へ圧送された糊液は、複数の吐出孔25から吐出される。複数の吐出孔25から吐出された糊液は、溝24内で合流して膜状となって絞りローラ11,13の降り四半周S1,S2上に供給される。膜状の糊液は、絞りローラ11,13の降り半周S3,S4(図1に図示)を伝い降りて把持部H1,H2付近で経糸Tに付着する。把持部H1付近で経糸Tに付着した糊液の一部は、絞りローラ11,12の絞り作用によって経糸Tから絞り取られる。把持部H2付近で経糸Tに付着した糊液の一部は、絞りローラ13,14の絞り作用によって経糸Tから絞り取られる。
【0026】
経糸Tから絞り取られた糊液は、下側の絞りローラ12,14の昇り半周U1,U2(図1に示すように把持部H1,H2から絞りローラ12,14の周面121,141の最下位122,142に至る範囲)を伝い降りる。絞りローラ12,14の昇り半周U1,U2を伝い降りる糊液の一部は、絞りローラ12,14の回転に伴って把持部H1,H2に移行して経糸Tに付着する。絞りローラ12,14の昇り半周U1,U2を伝い降りる糊液の一部は、糊液受け器15の底壁151の内壁面152上に落下する。糊液受け器15の底壁151の内壁面152上に落下した糊液は、絞りローラ12,14に付着しない。つまり、絞りローラ12,14が糊液受け器15の底壁151の内壁面152に落下した糊液をピックアップすることはない。下側の絞りローラ12,14に接触しない位置にあるように糊液受け器15に設けられた底壁151の内壁面152は、絞りローラ11〜14から落下する糊液を受ける受け部である。受け部としての内壁面152は、運転中常に、つまりいずれの運転条件においても常に絞りローラ12,14に接触しない位置にある。つまり、内壁面152は、糊付け機の運転速度(つまり、絞りローラ11〜14の周速)に関係なく常に絞りローラ12,14に接触しない位置にある。糊液受け器15内に落下した糊液は、回収パイプ16を経由して糊液槽17内へ回収される。
【0027】
糊液槽17に回収された糊液は、ポンプ23の作動によって糊液供給器21,22へ送られる。糊液槽17、供給パイプ20及びポンプ23は、糊液受け器15によって受けられた糊液を糊液供給器21,22に送る還流手段を構成する。
【0028】
絞りローラ13,14間を通過した経糸Tは、図示しない乾燥装置で乾燥された後に図示しない巻き取り部で巻き取られる。
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
【0029】
(1−1)糊液槽17内の糊液は、糊液供給器21,22のみから経糸Tを挟み込む上側の絞りローラ11,13の周面111,131に供給される。経糸Tを挟み込む上側の絞りローラ11,13の周面111,131に糊液供給器21,22のみから糊液を供給する構成では、適量の糊液を経糸Tに供給することが容易である。
【0030】
(1−2)表1は、綿糸40番手の単糸に糊付けしている工程での糸切れ発生を検査したデータである。綿糸40番手の単糸(経糸)は、5890本である。実施例では、経糸の長さは14反数である。実施例では、糊付着率〔=(乾燥糊の重量)/(糊付け前の乾燥された糸の重量)〕は、12.1%であり、糸切れ本数は3本であった。比較例では、経糸の長さは20反数である。比較例では、糊付着率は、10.4%であり、糸切れ本数は11本であった。平均糸切れ本数は、長さ10000mの経糸5000本に換算したときの糸切れ本数を表す。
【0031】
【表1】

表2における実施例1〜実施例9は、経糸として表1の実施例における経糸(綿糸40番手の単糸)を用いて製織を行なった場合における糸切れ発生及び織機稼働率を検査したデータである。経糸切れのデータは、1時間当たりの経糸切れ本数を表す。実施例1〜実施例9は、それぞれ実施日を異ならせて1日のうちの所定時間に製織を行なっている。緯糸は、綿糸40番手の単糸を用いた。経糸の織り密度は、124本/インチであり、緯糸の織り密度は、65本/インチである。
【0032】
【表2】

表3における比較例1〜比較例9は、経糸として表1の比較例における経糸(綿糸40番手の単糸)を用いて製織を行なった場合における糸切れ発生及び織機稼働率を検査したデータである。経糸切れのデータは、1時間当たりの経糸切れ本数を表す。比較例1〜比較例9は、それぞれ実施日を異ならせて1日のうちの所定時間に製織を行なっている。緯糸は、綿糸40番手の単糸を用いた。経糸の織り密度は、124本/インチであり、緯糸の織り密度は、65本/インチである。
【0033】
【表3】

表1,2,3の実験データから明らかなように、糊液供給器21,22から絞りローラ11,13の周面111,131に糊液を供給して糊付けした経糸Tは、従来の糊付け槽内に貯められた糊液に浸して糊付けした経糸に比べ、糸切れが少ない。これは、糊付け槽内に貯められた糊液に浸して糊付けした経糸においては糊付着率が過少であるのに比べ、糊液供給器21,22から絞りローラ11,13の周面111,131に糊液を供給して糊付けした経糸Tにおいては糊付着率が適正であるためと考えられる。つまり、糊付け槽内に貯められた糊液に経糸を浸した場合に糊付着率が過少となったのは、糊付着率を適正に制御することが難しいためと考えられる。これに対し、糊液供給器21,22に対する糊液の供給流量を調整することによって経糸Tに対する糊液付着量を調整できる本実施形態では、経糸Tにおける糊付着率が適正に設定されたために糸切れが少ないものと考えられる。経糸Tにおける糊付着率を適正に設定するための糊液供給流量の調整は、ポンプ23の回転数を調整することにより容易に行える。
【0034】
(1−3)降り四半周S1,S2は、絞りローラ11,13の回転に伴って経糸T上に向けて降ってゆく範囲であり、糊液供給器21,22から吐出された糊液は、経糸T上に向けて降ってゆく降り四半周S1,S2上に着地する。降り四半周S1,S2上に着地した糊液は、把持部H1,H2付近の経糸T上に確実に到達する。降り四半周S1,S2は、糊液供給器21から吐出された糊液を経糸T上に適量導く上で好適な糊液供給箇所である。
【0035】
(1−4)経糸Tは、把持部H1において一対の絞りローラ11,12の周面111,121に対する接線となる経路をとっている。又、経糸Tは、把持部H2において一対の絞りローラ13,14の周面131,141に対する接線となる経路をとっている。つまり、経糸Tは、屈曲しないで把持部H1,H2を通過している。経糸Tを屈曲しないで把持部H1,H2を通過させる構成は、経糸Tの屈曲箇所を減らし、屈曲による経糸Tの損傷を少なくすることができる。
【0036】
(1−5)糊液受け器15内に落下した糊液は、糊液受け器15内に溜まることなく糊液槽17へ移行する。糊液を貯めない糊液受け器15は、従来の糊付け槽(サイズボックス)に比べて簡素な構成にできる。又、糊液を貯めない糊液受け器15は、従来の糊付け槽(サイズボックス)に比べてコンパクトにできる。
【0037】
(1−6)従来の糊付け槽内の糊液に経糸を浸す糊付け機では、必要に応じて糊付け機を停止させた場合(つまり、絞りローラの回転を止めて経糸の移動を停止させた場合)には、対の絞りローラの把持部付近で糊液の固化が生じて所謂ストップマークが生じる場合がある。本実施形態では、必要に応じて糊付け機を停止させた場合、糊液供給器21,22からの糊液の供給を継続しておけば、把持部H1,H2での糊液の固化を防止することができる。
【0038】
次に、図3の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
絞りローラ11〜14の直下には糊液貯留式の糊液受け器26が配置されている。糊液受け器26内には糊液Nが貯められており、絞りローラ11〜14から落下する糊液は、糊液受け器26内の貯留糊液Nの液面N1上で受けられる。糊液受け器26内の糊液Nが一定量以下になると、糊液供給源10から糊液が開閉弁29を介して糊液受け器26へ補給されるようになっている。糊液供給源10からの糊液供給が停止される所定高さの液面は、下側の絞りローラ12,14より下方に設定されている。つまり、糊液受け器26内の貯留糊液Nの液面N1は、絞りローラ12,14よりも下方にあり、絞りローラ12,14が糊液受け器26内の糊液をピックアップすることはない。
【0039】
絞りローラ11〜14から落下する糊液を受ける液面N1は、下側の絞りローラ12,14に接触しない位置にあるように糊液受け器15に設定された受け部である。受け部としての液面N1は、運転中常に、つまりいずれの運転条件においても常に絞りローラ12,14に接触しない位置にある。つまり、液面N1は、糊付け機の運転速度(つまり、絞りローラ11〜14の周速)に関係なく常に絞りローラ12,14に接触しない位置にある。
【0040】
絞りローラ11〜14から落下する糊液を受ける液面N1は、下側の絞りローラ12,14に接触しない位置にあるように糊液受け器15に設定された受け部である。
糊液受け器26内の糊液Nは、ポンプ23の作動によって糊液供給器21,22へ供給される。糊液受け器26内には加熱パイプ18が配設されている。加熱パイプ18内には蒸気供給源19から蒸気が供給されるようになっている。加熱パイプ18内に供給された蒸気は、糊液受け器26内の糊液Nを加熱する。
【0041】
第2の実施形態では、第1の実施形態における(1−1)項、(1−3)項、(1−4項及び(1−6)項と同様の効果が得られる。
糊液Nを貯めるようにした糊液受け器26は、糊液Nを加熱する場所として好適である。
【0042】
糊液受け器26には糊液が貯められるが、糊液受け器26内の糊液に経糸Tを浸す必要がないため、糊液受け器26は、従来の糊付け槽(サイズボックス)に比べて簡素かつコンパクトな構成にできる。
【0043】
次に、図4の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
糊液槽17内の糊液Nは、ポンプ23Aの作動によって供給パイプ20Aを介して糊液供給器21へ供給される。糊液槽17内の糊液Nは、ポンプ23Bの作動によって供給パイプ20Bを介して糊液供給器22へ供給される。
【0044】
第3の実施形態では、第1の実施形態における(1−1)項及び(1−3)〜(1−6)項と同様の効果が得られる。
ポンプ23Bの回転数をポンプ23Aの回転数と異ならせれば、糊液供給器21からの糊液供給流量と糊液供給器22からの糊液供給流量とを異ならせることができる。絞りローラ11,12の絞り作用によって糊付けされた経糸Tに絞りローラ13,14の絞り作用によって経糸Tにさらに糊付けする際には、糊液供給器21からの糊液供給流量と糊液供給器22からの糊液供給流量とに差を持たせることにより、糊付着率の一層の適正化が可能である。
【0045】
次に、図5の第4の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
糊液供給器21は、絞りローラ11,12の把持部H1よりも上流の経糸Tの直上、かつ糊液受け器15の直上に配設されている。糊液供給器22は、絞りローラ13,14の把持部H2よりも上流の経糸Tの直上、かつ糊液受け器15の直上に配設されている。
【0046】
糊液供給器21の吐出孔25から吐出された糊液は、把持部H1よりも上流の経糸T上に落下し、糊液供給器22の吐出孔25から吐出された糊液は、把持部H1よりも上流の経糸Tの上面側に落下する。経糸T上に落下した糊液の一部は、糊液受け器15内に落下し、経糸T上に落下した糊液の一部は、経糸Tの移動に伴って把持部H1,H2へ移行する。経糸と共に把持部H1へ移行した糊液の一部は、絞りローラ11,12の絞り作用によって絞り取られ、経糸と共に把持部H2へ移行した糊液の一部は、絞りローラ13,14の絞り作用によって絞り取られる。
【0047】
経糸Tから絞り取られた糊液は、下側の絞りローラ12,14の昇り半周U1,U2を伝い降りる。絞りローラ12,14の昇り半周U1,U2を伝い降りる糊液の一部は、絞りローラ12,14の回転に伴って把持部H1,H2に移行して経糸Tに付着する。絞りローラ12,14の昇り半周U1,U2を伝い降りる糊液の一部は、糊液受け器15内に落下する。
【0048】
糊液槽17(図1参照)内の糊液は、糊液供給器21,22のみから把持部H1,H2より上流の経糸Tの上面側に供給される。把持部H1,H2より上流の経糸T上に糊液供給器21,22のみから糊液を供給する構成では、適量の糊液を経糸Tに供給することが容易である。
【0049】
又、第4の実施形態では、第1の実施形態における(1−4)項及び(1−5)項と同様の効果が得られる。
次に、図6の第5の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
【0050】
絞りローラ13,14は、矢印R2,Q2の方向に回転し、絞りローラ11,12の間を通された経糸Tは、絞りローラ14に半周ほど巻き回された後に絞りローラ14,13の間に通される。絞りローラ14,13の間に通された経糸Tは、絞りローラ13に半周ほど巻き回される。糊液供給器22の吐出孔25から吐出された糊液は、膜状となって絞りローラ13の上半周側の降り四半周S5上に供給される。膜状の糊液は、絞りローラ13の降り半周S6を伝い降りて把持部H2付近で経糸Tに付着する。把持部H2付近で経糸Tに付着した糊液の一部は、絞りローラ13,14の絞り作用によって経糸Tから絞り取られる。
【0051】
経糸Tから絞り取られた糊液は、下側の絞りローラ14の昇り半周Uを伝い降りる。絞りローラ14の昇り半周U3を伝い降りる糊液の一部は、絞りローラ14の回転に伴って把持部H2に移行する。絞りローラ14の昇り半周U3にある経糸Tを伝い降りる糊液の一部は、糊液受け器15内に落下する。
【0052】
第5の実施形態では、第1の実施形態における(1−1)項、(1−3)項、(1−5)項及び(1−6)項と同様の効果が得られる。
次に、図7の第6の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
【0053】
絞りローラ11,13の上方には糊液槽17が配設されている。糊液槽17内の糊液が一定量以下になると、糊液供給源10から糊液が糊液槽17へ補給されるようになっている。糊液受け器15に接続された回収パイプ16は、糊液槽17の直上に導かれており、回収パイプ16の途中にはポンプ23が介在されている。糊液槽17の底壁171に接続された供給パイプ20の途中には手動式の流量調整弁27が介在されている。
【0054】
糊液槽17内の糊液Nは、供給パイプ20及び流量調整弁27を経由して糊液供給器21,22へ供給される。糊液供給器21,22へ供給された糊液は、吐出孔25から絞りローラ11,13上に供給される。絞りローラ12,14から糊液受け器15内に落下した糊液は、回収パイプ16内へ導かれる。回収パイプ16内へ導かれた糊液は、ポンプ23の作動によって糊液槽17内へ排出される。
【0055】
糊液供給器21,22への糊液の供給流量の調整は、流量調整弁27における弁開度(通過断面積)を調整することによって容易に行える。
第6の実施形態では、第1の実施形態における(1−1)項及び(1−3)〜(1−6)項と同様の効果が得られる。
【0056】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
(1)第1の実施形態において、把持部H1,H2において経糸Tを屈曲させて把持部H1,H2を通過させるようにしてもよい。
【0057】
(2)第1の実施形態において、糊液供給器21,22から糊液を把持部H1,H2へ直接供給するようにしてもよい。
(3)第1の実施形態において、絞りローラ11,13の周面111,131に接触して糊液を絞りローラ11,13の周面111,131に塗布する糊液供給手段を用いてもよい。
【0058】
(4)第1の実施形態において、一対の絞りローラ11,12と一対の絞りローラ13,14とのいずれか一方を無くしてもよい。
前記した実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0059】
〔1〕前記経糸よりも下側の絞りローラより下方に液面が位置するように前記一対の絞りローラから落下する糊液を貯留する糊液貯留部を備えている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の糊付け機。
【0060】
ここにおける糊液貯留部は、糊液槽17あるいは糊液受け器26のことである。
〔2〕前記糊液受け器によって受けられた糊液を前記糊液供給手段に送る還流手段を備えている請求項1乃至請求項5及び前記〔1〕項のいずれか1項に記載の糊付け機。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態を示す糊付け機の概略図。
【図2】(a)は要部拡大断面図。(b)は(a)のA−A線断面図。
【図3】第2の実施形態を示す糊付け機の概略図。
【図4】第3の実施形態を示す糊付け機の概略図。
【図5】第4の実施形態を示す要部概略図。
【図6】第5の実施形態を示す要部概略図。
【図7】第6の実施形態を示す要部概略図。
【符号の説明】
【0062】
11,12,13,14…絞りローラ。111,121,131,141…周面。112,132…頂上。15,26…糊液受け器。152…受け部としての内壁面。21,22…糊液供給手段としての糊液供給器。H1,H2…把持部。T…経糸。N…糊液。N1…受け部としての液面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糊液を供給された経糸を一対の絞りローラの間に通し、前記一対の絞りローラの絞り作用によって前記経糸から糊液を絞り取って前記経糸に糊付けを行なう糊付け機において、
前記一対の絞りローラから落下する糊液を受けるように前記一対の絞りローラの下方に配置された糊液受け器と、
前記一対の絞りローラの間に導入される前記経糸よりも上側の絞りローラの周面、又は前記一対の絞りローラよりも上流の経糸の上面側に糊液を供給する糊液供給手段とを備え、
前記一対の絞りローラから落下する糊液を受ける受け部が運転中常に前記経糸よりも下側の絞りローラに接触しない位置にあるように前記糊液受け器に設定されている糊付け機。
【請求項2】
前記糊液供給手段は、前記上側の絞りローラの周面に糊液を供給し、前記糊液供給手段による前記上側の絞りローラの周面における糊液供給箇所は、前記周面の頂上から前記上側の絞りローラの回転方向に1/4周辿った範囲にある請求項1に記載の糊付け機。
【請求項3】
前記経糸は、前記一対の絞りローラの把持部において前記一対の絞りローラの周面に対して接線となる経路をとるようにした請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の糊付け機。
【請求項4】
前記糊液受け器は、糊液を貯めない器である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の糊付け機。
【請求項5】
前記糊液受け器は、糊液を貯める器である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の糊付け機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−77361(P2006−77361A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262757(P2004−262757)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000124672)河本製機株式会社 (2)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】