説明

糖アルコールと共微粒子化されたエンタカポンの医薬組成物

本発明は、エンタカポン又はその医薬的に許容しうる塩を1種以上の糖アルコールと共に含む医薬組成物であって、前記エンタカポンが1種以上の糖アルコールと共微粒子化されている医薬組成物に関する。本発明は、該組成物の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、エンタカポン(entacapone)又はその医薬的に許容しうる塩を1種以上の糖アルコールと共に含む医薬組成物であって、前記エンタカポンが1種以上の糖アルコールと共微粒子化されている、医薬組成物に関する。本発明は、該組成物の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)の阻害薬であるエンタカポンは、レボドパ/カルビドパ療法の補助としてパーキンソン病の治療で使用されるニトロ-カテコール構造化合物である。化学的には、エンタカポンは下記構造式を有する(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)-N,N-ジエチル-2-プロパンアミドである。
【0003】
【化1】

【0004】
エンタカポンは、生物製剤学分類系(Biopharmaceutics Classification system)下のクラスIV薬物であり、低い溶解度、低い溶解速度ひいては低い生物学的利用能力という問題をもたらす。
米国特許第4,963,590号は、エンタカポンと医薬的に許容しうる担体とを含む医薬組成物を提供している。
米国特許第6,599,530号は、エンタカポン、ニテカポン(nitecapone)、又はエンタカポン若しくはニテカポンの医薬的に許容しうる塩を含む錠剤の形の経口圧縮組成物を開示しており、この組成物は、該組成物の少なくとも6質量%の量でクロスカルメロースナトリウムを含む。
国際公開WO第2006/131591号は、エンタカポンの経口剤形及びその調製方法を開示している。
【0005】
界面活性剤又は糖の存在下における物質の微粒子化又は粉砕は、その溶解度を高められることが知られているが、これらのパラメーターが常に十分なわけではない。例えば、微粒子化プロゲステロンの生物学的利用能は不十分であり、例えばカルナウバロウに分散させることによって改善しなければならない。該技術は国際公開(PCT)WO第8902742号に記載されている。従って、微粒子化又は粉砕によって処理された物質の特性、特にその溶解度とその生物学的利用能は予測できず、矛盾する結果が得られることもあるようだ。
マンニトール、ソルビトール等のような糖アルコールを製剤中の充填剤として又は感覚刺激(sensory cue)剤、すなわち経口崩壊錠剤の場合に口内で冷感を与える薬剤として使用することを開示している多くの先行技術文献がある。例えば、国際公開(PCT)WO第2007080601号、第2007001086号、第2006057912号;欧州特許第589981B1号、第906089B1号、第1109534B1号;米国特許第6,328,994号、並びに米国特許出願第20070196494号、第20060240101号、及び第20060057199号。マンニトールのような糖アルコールは、ほとんどの経口崩壊製剤で使用されるが、感覚刺激剤として通常の即時放出製剤では使用されない。経口崩壊錠剤は、通常の即時放出錠剤の場合のように胃腸管内で崩壊する代わりに口内で崩壊するためである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
ある一般的態様では、エンタカポン又はその塩を1種以上の糖アルコールと共に含む単経口用量医薬組成物であって、前記エンタカポンが1種以上の糖アルコールと共微粒子化されている、医薬組成物を提供する。
この医薬組成物の実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含みうる。例えば、医薬組成物はさらに1種以上の医薬的に許容しうる賦形剤を含んでよい。医薬的に許容しうる賦形剤としては、1種以上の結合剤、充填剤、潤沢剤、崩壊剤、流動促進剤などが挙げられる。
別の一般的態様では、エンタカポン又はその塩を1種以上の糖アルコールと共に含む医薬組成物であって、前記エンタカポンが1種以上の糖アルコールと共微粒子化されており;前記組成物は、エンタカポン又はその塩の少なくとも80%が30分以内で放出されような溶解プロファイルを示し;かつ前記放出速度は、USP Dissolution Apparatus 2(パドル、50rpm)で1000mlのpH5.5リン酸緩衝液を37℃±0.5℃で用いて測定される、医薬組成物を提供する。
この医薬組成物の実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含みうる。例えば、医薬組成物はさらに1種以上の医薬的に許容しうる賦形剤を含んでよい。医薬的に許容しうる賦形剤としては、1種以上の結合剤、充填剤、潤沢剤、崩壊剤、流動促進剤などが挙げられる。
【0007】
さらに別の態様では、医薬組成物の調製方法を提供する。この方法は、エンタカポン又はその塩を1種以上の糖アルコールと共微粒子化し、他の医薬的に許容しうる賦形剤と混合し、かつ該混合物を医薬剤形に形成する工程を含む。
この医薬組成物の実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含みうる。例えば、医薬的に許容しうる賦形剤としては、1種以上の結合剤、充填剤、潤沢剤、崩壊剤、流動促進剤などが挙げられる。
本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、円板剤、カプレット剤、顆粒剤、ペレット剤、カプセル中顆粒剤、ミニ錠剤、カプセル中ミニ錠剤、カプセル中ペレット剤、サシェ剤及び経口投与に適した他の剤形の形態で存在することができる。
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明で述べる。本発明の他の特徴、目的及び利点は、下記説明及び特許請求の範囲から明白であろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、マンニトール又はソルビトールのような糖アルコールは、フェノフィブラート、イルベサルタン、アリピプラゾールのような他の既知の水不溶性薬物と共に物理的混合物として又は複合体の形態で使用する場合、これらの難溶性薬物の溶解度又は放出率に如何なる有意な差異をも生じさせないことに気づいた。
本発明者らは、エンタカポン製剤について研究しながら、驚くべきことに、エンタカポンを糖アルコールと共微粒子化すると、エンタカポンが糖アルコールと共微粒子化されていない製剤に相対して、エンタカポンの溶解度及びエンタカポンの薬物放出率の有意な増加をもたらすことを見出した。
Comtan(登録商標)は20分でエンタカポンの少なくとも約70%を放出するが、本発明の医薬組成物は、20分でエンタカポンのほとんど100%を放出する。このエンタカポン放出率の有意な増加が、湿潤性、溶解度の改善につながり、ひいては放出率を高める。
【0009】
適切な糖アルコールとしては、マンニトール、マルチトール、マルトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール等の1種以上が挙げられる。
本発明の医薬組成物中、エンタカポンは、エンタカポンと糖アルコールのモル比が約1:1〜10:1であるような、糖アルコールとの相対量で存在しうる。
技術上周知の適切な手段で共微粒子化を行なうことができ、該手段としては、限定するものではないが、ナノミル、ボールミル、アトライターミル、振動ミル、サンドミル、ビーズミル、ジェットミル、超音波処理などの1種以上が挙げられる。
共微粒子化後に得られるエンタカポンと糖アルコールの平均粒径は、30μ未満であってよい。
エンタカポンを1種以上の適切な糖アルコールと共微粒子化し、他の医薬的に許容しうる賦形剤と混合し、造粒することによって本医薬組成物を調製することができる。顆粒を他の適切な医薬的に許容しうる賦形剤と混合してよい。
本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、円板剤、カプレット剤、顆粒剤、ペレット剤、カプセル中顆粒剤、ミニ錠剤、カプセル中ミニ錠剤、カプセル中ペレット剤、サシェ剤及び経口投与に適した他の剤形の形態で存在することができる。
【0010】
本医薬組成物は、さらに1種以上の医薬的に許容しうる賦形剤を含んでよい。医薬的に許容しうる賦形剤としては、結合剤、充填剤、潤沢剤、崩壊剤、及び流動促進剤の1種以上が挙げられる。
好適な結合剤としては、ポビドン、デンプン、ステアリン酸、ガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の1種以上が挙げられる。
好適な充填剤としては、微結晶性セルロース、ラクトース、マンニトール、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、乾燥デンプン、粉糖などの1種以上が挙げられる。
好適な潤沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、硬化植物油などの1種以上が挙げられる。
好適な流動促進剤としては、コロイド二酸化ケイ素、タルク又はトウモロコシデンプン等の1種以上が挙げられる。
好適な崩壊剤としては、デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ナトリウムデンプングリコラート等の1種以上が挙げられる。
【0011】
以下の実施例で本発明をさらに説明する。実施例は、本発明の例示としてのみ提供するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。一定の修正及び均等物が当業者には明白であり、それらは本発明の範囲内に包含されるものとする。
【実施例】
【0012】
実施例1:バッチの組成を表1に提供する。下記処方は本発明の好ましい組成物の代表例である。実施例1の調製について以下に詳述する。
【0013】
表1:エンタカポンの組成物

【0014】
手順:マルチミルを介してエンタカポンとマンニトールを混合かつ共微粒子化した。共微粒子化混合物に、クロスポビドン、ポビドン及びステアリン酸マグネシウムを添加し、混合し、ロール圧縮機を用いて造粒して適切なサイズの顆粒を得た。顆粒にクロスポビドンとステアリン酸マグネシウムを添加し、結果として生じた混合物を適切な機械設備で圧縮して錠剤を製した。
【0015】
表2:Comtan(登録商標)対実施例1のように調製した本発明の組成物の比較溶解データ。薬物放出速度の決定のため、USP Type 2 Apparatus(rpm 50)を使用し、媒体として900mlのpH5.5リン酸緩衝液を37℃±0.5℃で用いた。

【0016】
本発明をその特有の実施形態について述べたが、一定の修正及び均等物が当業者には明白であり、それらは本発明の範囲内に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンタカポン又はその塩を1種以上の糖アルコールと共に含む医薬組成物であって、前記エンタカポンが1種以上の糖アルコールと共微粒子化されている、医薬組成物。
【請求項2】
前記エンタカポンと糖アルコールが、約1:1〜10:1のモル比で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記糖アルコールが、マンニトール、マルチトール、マルトール、ソルビトール、ラクチトール及びキシリトールの1種以上を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記共微粒子化されたエンタカポンと糖アルコールの混合物が、約30μ未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物が、錠剤、カプセル剤、散剤、円板剤、カプレット剤、顆粒剤、ペレット剤、カプセル中顆粒剤、ミニ錠剤、カプセル中ミニ錠剤、カプセル中ペレット剤及びサシェ剤の1種以上を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
さらに1種以上の医薬的に許容しうる賦形剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬的に許容しうる賦形剤が、結合剤、充填剤、潤沢剤、崩壊剤、及び流動促進剤の1種以上を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
エンタカポン又はその塩を1種以上の糖アルコールと共に含む医薬組成物であって、前記エンタカポンが1種以上の糖アルコールと共微粒子化されており;前記組成物は、30分以内で前記エンタカポンの少なくとも80%が放出されるような溶解プロファイルを示し;かつ前記放出速度は、Apparatus 2(USP、Dissolution、パドル、50rpm)で、1000mlのpH5.5リン酸緩衝液を37℃±0.5℃で用いて測定される、医薬組成物。
【請求項9】
前記エンタカポンと糖アルコールが、約1:1〜10:1のモル比で存在する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記糖アルコールが、マンニトール、マルチトール、マルトール、ソルビトール、ラクチトール及びキシリトールの1種以上を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記共微粒子化されたエンタカポンと糖アルコールの混合物が、約30μ未満の平均粒径を有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、錠剤、カプセル剤、散剤、円板剤、カプレット剤、顆粒剤、ペレット剤、カプセル中顆粒剤、ミニ錠剤、カプセル中ミニ錠剤、カプセル中ペレット剤及びサシェ剤の1種以上を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
さらに1種以上の医薬的に許容しうる賦形剤を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬的に許容しうる賦形剤が、結合剤、充填剤、潤沢剤、崩壊剤、及び流動促進剤の1種以上を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項15】
エンタカポン又はその塩を1種以上の糖アルコールと共微粒子化する工程、他の医薬的に許容しうる賦形剤と混合する工程、及び該混合物を医薬剤形に形成する工程を含む、エンタカポン医薬組成物の調製方法。
【請求項16】
前記糖アルコールが、マンニトール、マルチトール、マルトール、ソルビトール、ラクチトール及びキシリトールの1種以上を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬的に許容しうる賦形剤が、結合剤、充填剤、潤沢剤、崩壊剤、及び流動促進剤の1種以上を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記共微粒子化が、ナノミル、ボールミル、アトライターミル、振動ミル、サンドミル、ビーズミル、ジェットミル、超音波処理の1種以上で行なわれる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬剤形が、錠剤、カプセル剤、散剤、円板剤、カプレット剤、顆粒剤、ペレット剤、カプセル中顆粒剤、ミニ錠剤、カプセル中ミニ錠剤、カプセル中ペレット剤及びサシェ剤の1種以上を含む、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2011−526241(P2011−526241A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545597(P2010−545597)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050490
【国際公開番号】WO2009/098663
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(509053444)
【Fターム(参考)】