説明

糖化用反応装置

【課題】糖化原料混合液から水分の蒸発が少なく、反応容器の内壁に付着する水滴の量が少なく、糖化原料混合液の水分量を一定の条件に維持することが容易な糖化用反応装置を提供する。
【解決手段】糖化原料混合液を収容する有底円筒状の反応容器1と、反応容器1の開口1aを塞ぐ内蓋5と、糖化原料混合液を撹拌するための撹拌手段3とを備えている。内蓋5の軸心には回転軸3bに設けられたネジ山と螺合する雌ネジが形成されており、内蓋5の下端を糖化原料混合液の液面に接近させることが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース等の多糖類を水及び固体酸の存在下で加水分解して糖化するための糖化用反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマスからエタノールを生産し、これをガソリンの代替品とするバイオマス燃料の技術が注目されている。バイオマス燃料を得るには、まずセルロース等の多糖類を加水分解して糖を製造する必要がある。固体酸触媒は、使用した後にろ過等によって分離・回収することが容易であり、リサイクル使用も可能であって、廃酸処理の問題も少ないことから、多糖類の加水分解触媒として適している。
【0003】
特に最近では、安価な原料から容易に製造することができる固体酸触媒として、スルホン化処理したカーボンが注目を集めている(非特許文献1)。このスルホン化処理したカーボンは、セルロースやデンプン等の安価な原料を300℃以上に加熱して炭化させ、微小なカーボンシートとした後、これをスルホン化処理することにより簡単に製造できる。しかも、こうして得られたスルホン化カーボンはスルホン酸基が高い密度で結合しており、大量の親水性分子をそのバルク内に取り込むことができる。このため、バルク内を反応場とすることができ、親水性分子を反応基質とした酸触媒反応、あるいは親水性分子を溶媒とした酸触媒反応に高い触媒活性を示す。
【0004】
こうしたカーボン系固体酸触媒を用いてセルロースの加水分解を行う場合、重量基準でカーボン系固体酸触媒:水=3:7よりも水が少ない条件で、効率的に加水分解反応が起こることが知られている。このため、このように水が少なく、固体酸触媒が多い反応条件下で効率的撹拌ができ、容器壁への混合物の付着の少ない糖化用反応装置の提案がなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2009/099218
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.Hara,et.al Nature,438,(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の糖化用反応装置では、反応容器内に収容された糖化原料混合液の液面と反応容器の開口部を覆う蓋部との間に空間が存在するため、糖化原料混合液から蒸発した水分がその空間に水蒸気として溜まったり、壁に水滴として付着したりして、糖化原料混合液中の水分量が変動しやすかった。このため、加水分解反応にとって常に最適な条件を維持することが困難となっていた。この問題は、特に水分が蒸発しやすい高温において、その傾向が顕著となっていた。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、糖化原料混合液から水分の蒸発が少なく、反応容器の内壁に付着する水滴の量が少なく、糖化原料混合液の水分量を一定の条件に維持することが容易な糖化用反応装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の糖化用反応装置は、糖化原料混合液を収容する有底筒状の反応容器と、該反応容器の開口を塞ぐ蓋部と、該糖化原料混合液を撹拌するための撹拌手段とを備えた糖化用反応装置であって、前記蓋部の下端を前記糖化原料混合液の液面に接近させ、又は離間させる昇降機構が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の糖化用反応装置では、糖化原料混合液が有底筒状の反応容器に収容され、反応容器の開口が蓋部によって塞がれる構造とされている。さらに、蓋部の下端を前記糖化原料混合液の液面に接近させ、又は離間させる昇降機構が設けられている。このため、昇降機構によって蓋部の下端を糖化原料混合液の液面に接近させ、蓋部と糖化原料混合液の液面との間の空間体積を可及的に小さくすることができる。このため、蓋部と糖化原料混合液の液面との間の空間に、糖化原料混合液から蒸発した水分が水蒸気として溜まる量が少なくなり、壁に水滴として付着する量も少なくなる。その結果、糖化原料混合液の水分量が変動し難くなり、加水分解反応にとって常に最適な条件を維持することが容易となる。こうした効果は、特に水分が蒸発しやすい高温において発揮されやすい。
【0011】
また、本発明の糖化用反応装置は、原料混合液の液面を検知することが可能な水位検知手段が設けられていることとした。こうであれば、水位検知手段によって蓋部の下端を原料混合液の液面の位置に確実に設定することができ、ひいては本発明の上記効果を確実に発揮させることができる。
【0012】
また、本発明の第1の局面の糖化用反応装置を具現化するものとして、本発明の糖化用反応装置の第2の局面では、撹拌手段は前記蓋部に挿通された回転軸と、該回転軸を回転させるための回転手段と、該回転軸に固定され該反応容器内で回転する回転翼とからなることとした。こうであれば、回転手段によって回転軸を回転させることにより、回転翼が反応容器内で回転し、反応容器内に収容されている糖化原料混合液を効率よく撹拌することができる。このため、糖化原料の加水分解反応を迅速に進行させることができる。
【0013】
さらに、前記反応容器は前記回転軸と同軸の有底円筒状とされており、前記蓋部は該反応容器の内壁に整合する円板形状とされており、該蓋部の側面には該反応容器の内壁に形成された雌ねじと螺合する雄ねじが形成されており、これにより該蓋部は上下移動可能とされていることとした。
【0014】
本発明の第1の局面の糖化用反応装置を具現化するものとして、本発明の糖化用反応装置の第3の局面では、前記反応容器は前記回転軸と同軸の有底円筒状とされており、前記蓋部は該反応容器の内壁に整合する円板形状であって回転軸に同軸で固定され該回転軸とともに回転し、固定位置が上下に移動可能とされていることとした。こうであっても、本発明の第1の局面に記載の水位検知手段によって蓋部の下端を原料混合液の液面の位置に確実に設定することができる。
【0015】
さらに、本発明の糖化用反応装置では、蓋部の周縁には反応容器と蓋部との隙間をなくすための弾性部材が設けられていることとした。こうであれば、反応容器内の水蒸気が反応容器と蓋部との隙間から外部へ散逸することを防止できるため、反応容器内の糖化原料混合液の水分量の変動をさらに少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】外蓋2及び内蓋5を閉じた状態の実施例1の糖化用反応装置の部分断面図である。
【図2】外蓋2及び内蓋5を開けた状態の実施例1の糖化用反応装置の部分断面図である。
【図3】糖化原料混合物を入れた状態の実施例1の糖化用反応装置の部分断面図である。
【図4】外蓋12及び内蓋16を閉じた状態の実施例2の糖化用反応装置の部分断面図である。
【図5】実施例2のロック機構周辺の拡大部分断面図である。
【図6】外蓋12及び内蓋16を開けた状態の実施例2の糖化用反応装置の部分断面図である。
【図7】糖化原料混合物を入れた状態の実施例2の糖化用反応装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の糖化用反応装置において原料となる多糖類としては、特に限定はないが、例えばサトウキビや藁から得たセルロースや、とうもろこし等から得たでんぷん等が挙げられる。これらの原料に固体酸と水とを混合した糖化原料混合液が反応容器に収容される。このため、反応容器は固体酸と直接接触することとなりなるため、耐食性に優れた材料(例えばSUS304、316、316L、フッ素樹脂等)であることが好ましい。また、反応容器内表面に耐食性皮膜を被覆してもよい。一方、固体酸としても特に限定はなく、例えばスルホン化処理したカーボンからなるカーボン系固体酸や、シリカアルミナ系の無機固体酸触媒等が挙げられる。これらのなかでも特に好ましいのは、カーボン系固体酸である。さらに好ましいのは、レゾルシノールとホルマリンの重合物を炭化させた多孔性のカーボンをスルホン化したスルホン化多孔性カーボンである。
【0018】
本発明の糖化用反応装置では、蓋部の下端を前記糖化原料混合液の液面に接近させ、又は離間させる昇降機構が設けられている。昇降機構の具体的な形態としては、例えば蓋部を撹拌装置の回転軸にスライド可能に取付るとともに、ストッパー機構によって蓋部を回転軸に固定できるようにしたり、蓋部が反応容器内壁と螺合する構造とし、蓋部を回転させることによって蓋部を昇降可能にしたりすること等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の糖化用反応装置では、蓋部を糖化原料混合液の液面に接近させ、蓋部と界面との間の空間の体積を可及的に小さくさせることによって、糖化原料混合液の水分量が変動し難くし、加水分解反応にとって常に最適な条件の維持を容易にするものである。このため、糖化原料混合液の液面の位置を把握しなければならない。この把握には、糖化原料混合液の投入量から計算によって位置を求めたり、反応容器側面に窓を設け目視によって位置を確認したり、フロー式水位計や、容量式水位計や、導電率式水位計や、静電容量式水位計等を用いて、糖化原料混合液の液面の位置を把握したりすることができる。フロー式水位計とは、反応容器内にフローを投入しておき、反応容器内の液体の増減によるフローの上昇、下降を検出する水位計である。また、重量式水位計とは、反応容器内の液体の重量を計測して水位を求めるものである。さらに、導電率式水位計とは、タンク内に導電率計を配置し、その導電率の変化から水位を検出するものである。そのほか、静電容量型水位計や赤外線反射型水位計を用いることも可能である。
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
(実施例1)
実施例1の糖化用反応装置は、図1に示すように、糖化原料混合液を収容する有底円筒状の反応容器1と、反応容器1の開口1aを塞ぐ外蓋2と、反応容器1内に収容された糖化原料混合液を混合するための撹拌装置3とを備えている。
【0021】
撹拌装置3は、外蓋2の上方に設けられた固定枠4に固定されたモータ3aと、モータ3aの軸心に接続され、下方に延在する回転軸3bと、回転軸3bに固定され反応容器1の内壁に向かって延在する4枚の撹拌翼3c〜3fからなる。モータ3aは、図示しないモータ制御装置によって制御可能とされている。撹拌翼3c〜3fは下端から上方に向かって90度ずれながら螺旋状に回転軸3bに取付けられている。
【0022】
また、外蓋2の上面側には、昇降支持棒100の下部が取り付けられ、昇降支持棒100の上部は水平方向に設けられた梁101に連結され、更に梁101の一端側にスクリュー軸103と係合する係合体102が設けられている。スクリュー軸103は、垂直方向に立設され、モータ104によって駆動される。モータ104は図示しない支持枠に固定されており、スクリュー軸103も図示しない軸受を介して支持枠に取り付けられている。これにより、モータ104によってスクリュー軸103が駆動されると、スクリュー軸103の回転に伴って係合体102が上下動すると共に、梁101及び昇降支持棒100も同方向に移動することにより、外蓋2が反応容器1の開口1aを開閉可能とされている。なお、梁101には回転軸3bを回転自在に挿通できるようにするための挿通穴101aが設けられている。
【0023】
外蓋2と回転翼3cとの間には、内蓋5が回転軸3bに回転自在に挿通された状態で設けられている。回転軸3b及び内蓋5には互いに螺合するネジ山が形成されており、内蓋5を回転させることにより上下移動が可能とされている。さらに、内蓋5と外蓋2の間には内蓋5を固定するための固定ナット6が回転軸3bに螺合するように設けられている。また、内蓋5の周縁にはフッ素ゴムからなるパッキン7が取りつけられている。さらに、反応容器1の側面には垂直方向に延在する覗き窓8が設けられている。また、反応容器1の外側には近接してヒータ9が設けられており、図示しないヒータ制御装置によって温度制御可能とされている。反応容器1の下部側面には開閉バルブ10が取りつけられている。
【0024】
次に実施例1の糖化用反応装置の使用方法について説明する。
まず、図示しない制御装置によってモータ104を駆動させる。これにより、スクリュー軸103が回転し、係合体102が上方に移動し、それに伴って係合体102、梁101及び昇降支持棒100が上方に移動し、図2に示すように、外蓋2が開いた状態となる。そして固定ナット6をスパナ等により回転して上方に移動させ、さらに、内蓋5も同様にして上方に移動させる。こうして反応容器1の開口1aを開放する。そして、図3に示すように、さとうきびや、わら等の植物から採取されたセルロースと、カーボンをスルホン化したカーボン系固体酸触媒と、水とを所定の割合で反応容器1へ入れ、内蓋5を回転させて覗き窓8を覗きながら内蓋5の下端を液面近傍まで移動させる。さらに、固定ナット6も同様にして下方に移動させて内蓋5を固定する。そして、制御装置によってモータ104を上記と逆方向に駆動させる。これにより、スクリュー軸103が上記と逆回転し、係合体102が下方に移動し、それに伴って梁101及び昇降支持棒100も下方に移動し、外蓋2が下がって反応容器1の開口1aが閉鎖される。
【0025】
そして、モータ制御装置によってモータ3aを駆動させるとともに、ヒータ制御装置によってヒータ9を加熱する。これにより回転軸3bとともに回転翼3c〜3f及び内蓋5が回転し、反応容器1内が撹拌されて糖化原料混合液が90℃〜140℃に加温される。これにより、糖化原料混合液中のセルロースは、固体酸触媒によって加水分解され、グルコースとなる。
【0026】
加水分解反応が終了した後、ヒータ9による加熱及びモータ3aによる撹拌を停止する。温度が50℃以下となってから開閉バルブ10を開け、図示しない回収容器に回収する。
【0027】
上記実施例1の糖化用反応装置によれば、内蓋5が上下に移動可能とされているため、糖化原料混合液の液面近傍まで近づいた状態で、撹拌翼3c〜3fによって撹拌することができる。このため、内蓋5と糖化原料混合液の液面との間にできる空間の体積が小さくなることから、その空間に溜まる水蒸気の量も少なくなり、さらには、反応容器1の内壁に水滴として付着する量も少なくなる。その結果、糖化原料混合液の水分量が変動し難くなり、加水分解反応にとって常に最適な条件を維持することが容易となる。
【0028】
また、内蓋5を糖化原料混合液の液面近傍まで近づける際、液面の位置を覗き窓8によって確認できるため、内蓋5の下端の位置を糖化原料混合液の液面近傍に確実に設定することができる。
【0029】
さらに、内蓋5の周縁にはフッ素ゴムからなるパッキン7が取りつけられているため、反応容器1内の水蒸気が反応容器1と内蓋5との隙間から外部へ散逸することを防止できる。このため、反応容器1内の糖化原料混合液の水分量の変動をさらに少なくすることができ、加水分解反応を最適な状態で進行させることができる。
【0030】
(実施例2)
実施例2の糖化用反応装置は、図4に示すように、糖化原料混合液を収容する有底円筒状の反応容器11と、反応容器11の開口11aを塞ぐ外蓋12と、反応容器11内に収容された糖化原料混合液を混合するための撹拌装置13とを備えている。
【0031】
撹拌装置13は、外蓋12の上方設けられた固定枠14に固定されたモータ13aと、モータ13aの軸に接続され下方に延在する回転軸13bと、回転軸13bに固定され反応容器11の内壁に向かって延在する4枚の撹拌翼13c〜13fからなる。モータ13aは、図示しないモータ制御装置によって、制御可能とされている。撹拌翼13c〜13fは下端から上方に向かって90度ずれながら螺旋状に回転軸13bに取付けられている。
【0032】
外蓋12の軸心にはフッ素ゴムからなる軸受15が取付けられており、軸受15には回転軸13bが回転可能に挿通されている。
【0033】
また、外蓋12の上面側には、昇降支持棒110の下部が取り付けられ、昇降支持棒110の上部は水平方向に設けられた梁111に連結され、更に梁111の一端側にスクリュー軸113と係合する係合体112が設けられている。スクリュー軸113は、垂直方向に立設され、モータ114によって駆動される。
モータ114及びスクリュー軸113は、実施例1と同様にして、支持枠に取り付けられている。これにより、モータ114によってスクリュー軸113が駆動されると、スクリュー軸113の回転に伴って係合体112が上下動すると共に、梁111及び昇降支持棒110も同方向に移動することにより、外蓋12が反応容器11の開口11aを開閉可能とされている。なお、梁111には回転軸13bを回転自在に挿通できるようにするための挿通穴111aが設けられている。
【0034】
また、外蓋12と撹拌翼13cとの間には内蓋16が設けられており、内蓋16の軸心にはフッ素ゴムからなる軸受17が取付けられており、軸受17には回転軸13bが回転可能に挿通されている。また、図5に示すように、内蓋16の周縁はフッ素ゴムからなるリング部材18が取付けられており、リング部材18の周縁は雄ネジが形成されている。また、反応容器11の内壁にはリング部材18と螺合する雌ネジが形成されており、これにより内蓋16は上下移動可能とされている。なお、図示してはいないが、内蓋16をロックするためのロック機構を設けてもよい。また、図4に示すように、内蓋16の上面には取手19a、19bが設けられている。反応容器11の側面には垂直方向に延在する覗き窓20が設けられている。さらに、反応容器11の外側には近接してヒータ21が設けられており、図示しないヒータ制御装置によって温度制御可能とされている。また、反応容器11の下部側面には開閉バルブ22が取りつけられている。
【0035】
次に実施例2の糖化用反応装置の使用方法について説明する。
そして、内蓋16の取手19a、19bを掴んで内蓋16を回転させて上方に移動させ、図6に示すように、反応容器11の開口11aを解放する。そして、図7に示すように、さとうきびや、わら等の植物から採取されたセルロースと、カーボンをスルホン化したカーボン系固体酸触媒と、水とを反応容器11へ入れ、覗き窓20を覗きながら内蓋16の下端を液面近傍まで移動させ、外蓋12を下方へ移動させ、開口11aを閉じる。そして、制御装置によってモータ114を上記と逆方向に駆動させる。これにより、スクリュー軸113が上記と逆回転し、係合体112が下方に移動し、それに伴って梁111及び昇降支持棒110も下方に移動し、外蓋12が下がって反応容器11の開口11aが閉鎖される。
【0036】
そして、モータ制御装置によってモータ13aを駆動させるとともに、ヒータ制御装置によってヒータ21を加熱する。これにより回転軸13bとともに回転翼13c〜13fも回転し、反応容器1内が撹拌されて糖化原料混合液が140℃に加温される。これにより、糖化原料混合液中のセルロースは、固体酸触媒によって加水分解され、グルコースとなる。
【0037】
加水分解反応が終了した後、ヒータ21による加熱及びモータ13aによる撹拌を停止する。温度が50℃以下となってから開閉バルブ22を開け、図示しない回収容器に回収する。
【0038】
上記実施例2の糖化用反応装置によれば、実施例1と同様に、内蓋16が上下に移動可能とされているため、糖化原料混合液の液面近傍まで近づいた状態で、撹拌翼13c〜13fによって撹拌することができる。このため、内蓋16と糖化原料混合液の液面との間にできる空間の体積が小さくなることから、その空間に溜まる水蒸気の量も少なくなり、さらには、反応容器11の内壁に水滴として付着する量も少なくなる。その結果、糖化原料混合液の水分量が変動し難くなり、加水分解反応にとって常に最適な条件を維持することが容易となる。
また、内蓋16を糖化原料混合液の液面近傍まで近づける際、液面の位置を覗き窓20によって確認できるため、内蓋16の下端の位置を糖化原料混合液の液面近傍に確実に設定することができる。
【0039】
さらに、内蓋16と回転軸13bとの間にはフッ素ゴムからなる軸受17が取りつけられ、また内蓋16の周縁にはフッ素ゴムからなるリング部材18が取りつけられているため、反応容器11内の水蒸気が反応容器11と内蓋16との隙間から外部へ散逸することを防止できる。このため、反応容器11内の糖化原料混合液の水分量の変動をさらに少なくすることができ、加水分解反応を最適な状態で進行させることができる。
【0040】
上記実施例1及び実施例2では、液面検出手段として覗き窓を設けたが、それの代替品として、あるいは覗き窓とともに、フロー式水位計や、容量式水位計や、導電率式水位計や、静電容量式水位計等を用いることも可能である。
【0041】
また、実施例1及び実施例2において、回転翼3c〜3eを着脱可能としておいてもよい。こうであれば、糖化原料混合液の水位に合わせて回転翼3c〜3eを着脱することができる。
【0042】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1,11…反応容器
1a、11a…開口
2,12…外蓋(蓋部)
3,13…撹拌手段(3a,13a…モータ(回転手段),3b,13b…回転軸,3c〜3f,13c〜13f…撹拌翼)
8,20…覗き窓(水位検知手段)
7…パッキン(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖化原料混合液を収容する有底筒状の反応容器と、該反応容器の開口を塞ぐ蓋部と、該糖化原料混合液を撹拌するための撹拌手段とを備えた糖化用反応装置であって、
前記蓋部の下端を前記糖化原料混合液の液面に接近させ、又は離間させる昇降機構と、前記原料混合液の液面を検知することが可能な水位検知手段とが設けられていることを特徴とする糖化用反応装置。
【請求項2】
前記撹拌手段は前記蓋部に挿通された回転軸と、該回転軸を回転させるための回転手段と、該回転軸に固定され該反応容器内で回転する回転翼とからなり、
前記反応容器は前記回転軸と同軸の有底円筒状とされており、前記蓋部は該反応容器の内壁に整合する円板形状とされており、該蓋部の側面には該反応容器の内壁に形成された雌ねじと螺合する雄ねじが形成されており、これにより該蓋部は上下移動可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の糖化用反応装置。
【請求項3】
前記撹拌手段は前記蓋部に挿通された回転軸と、該回転軸を回転させるための回転手段と、該回転軸に固定され該反応容器内で回転する回転翼とからなり、
前記反応容器は前記回転軸と同軸の有底円筒状とされており、前記蓋部は該反応容器の内壁に整合する円板形状であって該回転軸に同軸で固定されており該回転軸とともに回転し、固定位置が上下に移動可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の糖化用反応装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−212560(P2011−212560A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82094(P2010−82094)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】