説明

糖尿病媒介タンパク質およびその治療的使用

【課題】糖尿病媒介タンパク質およびその治療的使用を提供すること。
【解決手段】保護的および有害な糖尿病媒介タンパク質およびそれをコードするポリヌクレオチド、糖尿病媒介タンパク質を発現するトランスジェニック動物、糖尿病媒介タンパク質の発現を変化し得る試験化合物を同定するための薬物スクリーニング法、および糖尿病媒介タンパク質の発現を変化子得る化合物を投与することによって糖尿病を予防または回復させる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は一般に、糖尿病媒介タンパク質、糖尿病媒介タンパク質を同定する方法、本発明のアッセイにおいて有用なトランスジェニック動物、糖尿病媒介タンパク質の発現に影響を与える薬物のスクリーニングのための方法、および糖尿病の処置および予防のための治療化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
ヒトおよびヒトの疾患の動物モデルにおけるインシュリン依存性糖尿症(IDDM)の発症は、単核細胞の浸潤、および膵臓島(インシュリン島、insulitis)でのβ細胞の崩壊によって特徴付けられる。β細胞の崩壊の機構は知られていない。蓄積している証拠は、マクロファージおよび単球によって主に産生されるサイトカインインターロイキン-1,6(IL-1β)が、島のβ細胞崩壊の媒介因子であり得ることを示す。
【0003】
ヒト糖尿病の動物モデルとして、糖尿病の傾向があるBB(BB-DP)ラットおよび非肥満糖尿病(NOD)マウスが挙げられる。ラットの島タンパク質の2次元(2D)ゲルマップが構築され、そしてIL-1βへのラットの島細胞のインビトロでの暴露によって生じる、タンパク質合成における定性的および定量的変化を決定するために使用されている(Andersenら、Diabetes44:400-407(1995))。
【0004】
ヒト糖尿病のトランスジェニック動物モデルが知られている。例えば、ヒト糖尿病の1つのモデルは、ラットのインシュリンプロモーターの制御下で膵臓のβ細胞中でウイルスタンパク質を発現するトランスジェニックマウスである(vanHerrathら、J. Clin. Invest.98:1324-1331(1996))。2%未満のトランスジェニックマウスが、内発的に糖尿病を発症する;しかし、ウイルスでの2ヶ月のチャレンジ後、IDDMは95%以上のマウスで生じる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、一部、糖尿病媒介(DM)タンパク質の発見および同定に基づき、DMタンパク質は、糖尿病の発症、または糖尿病の発症の危険がある被験体における糖尿病の発症の予防に関連するタンパク質である。そして、DMタンパク質は、疾患の発症の存在下と非存在下のと間の異なる発現によって同定される。糖尿病の発症には、臨床的に検出可能な段階に進行する全ての段階が含まれる。
【0006】
従って、本発明の1つの局面において、糖尿病の発症の非存在下での発現と比較して、糖尿病の発症の間の変化した発現を示す、実質的に精製された糖尿病媒介タンパク質が特徴である。本発明の精製された糖尿病媒介タンパク質は、表1および2に列挙されたタンパク質から選択される。新規の糖尿病媒介タンパク質は、分子量、pI、および図6〜40に示されるような質量スペクトルによる特徴によって特徴づけられる。これらのタンパク質は、10%IEFまたはNEPHG 2次元ゲル(図1A-1B)上のそれらの位置を参照して、NEPHGE 7、9、102、123、129、130、174、181、182、211、231、236、253、298、およびIEF665、939、941、950、1196からなる群より選択される。
【0007】
DMタンパク質はさらに、防御(protective)または有害(deleterious)DMタンパク質として特徴づけられる。防御糖尿病媒介タンパク質(「防御タンパク質」)は、糖尿病の発症を防御し得、そして/または糖尿病の発症の危険性を有する被験体において糖尿病の発症を遅延し得るか、または糖尿病を罹患している被験体において糖尿病の症状を緩和し得るタンパク質として特徴づけられる。防御タンパク質はまた、糖尿病の発症の間には発現が変化しないが、糖尿病の発症を避ける糖尿病の危険性を有する被験体において変化した発現を示すタンパク質であり得る。有害糖尿病媒介タンパク質(「有害タンパク質」)は、糖尿病の発症を増強し得る、被験体の糖尿病を発症する危険性を増大し得る、または糖尿病の発症の危険性を有する被験体において糖尿病の発症に必要とされる時間を短縮し得るタンパク質として特徴づけられる。有害タンパク質はまた、糖尿病の発症の間に発現を変化しないが、糖尿病の発症を避ける、糖尿病の危険性を有する被験体において変化した発現を示すタンパク質であり得る。本発明の糖尿病媒介タンパク質は、ゲル電気泳動、イムノブロッティング、質量スペクトル分析、またはクロマトグラフィーを含む、当該分野で公知の任意の手段によって同定され得、そして糖尿病の発症の非存在下で発現される同じタンパク質と比較して、糖尿病の発症の間の変化したタンパク質発現によって特徴づけられる。米国仮特許出願第60/029,324号は、分子量およびpIによって同定された、膵臓の島細胞中で発現されるタンパク質を同定している(図1Aおよび1B)。本出願は、表1および2ならびに図6〜40に列挙される、糖尿病媒介タンパク質として同定されたこれらのタンパク質の選択を提供する。
【0008】
本発明の糖尿病媒介タンパク質は、糖尿病の発症を調節し得る化合物を同定するための薬物スクリーニングアッセイに有用であり、糖尿病の処置または予防のための治療薬として有用であり、そして糖尿病媒介タンパク質の発現を調節することによって糖尿病を予防し得るかまたは緩和し得る治療薬の標的として有用である。
【0009】
特異的なDMタンパク質の発現における変化は、糖尿病の発症の指標として診断的に有用である。従って、本発明の1つの局面において、表1に列挙された糖尿病媒介タンパク質からなる群から選択される1つ以上のタンパク質におけるタンパク質発現の増大、および表2に列挙された糖尿病媒介タンパク質からなるリストから選択される1つ以上のタンパク質のタンパク質発現における減少を測定することによって、糖尿病の発症を診断する方法が特徴である。タンパク質発現における変化は、糖尿病を発症している疑いがあるか、または糖尿病の発症の危険性を有する試験被験体において測定され、そして正常な非糖尿病のコントロールにおけるタンパク質発現と比較して示される。好ましい実施態様において、表1および2の1つ以上のタンパク質の組み合わせの変更は、糖尿病の発症の指標である。さらに好ましい実施態様において、表1および/または2のタンパク質の5つ以上の組み合わせの変更は、糖尿病の発症の指標である。なおさらに好ましい実施態様において、表1および/または2の10以上のタンパク質の組み合わせの変更が、糖尿病の発症の指標である。
【0010】
1つの局面において、本発明は、疾患(例えば、糖尿病)の発症に関連するタンパク質を同定するためのインビボのアッセイ方法を特徴とする。本発明のインビボのアッセイ方法の特異的な実施態様において、インシュリンを分泌するかまたはインシュリン産生細胞に成長し得る細胞は、糖尿病の発症の危険性を有する動物である、免疫学的に適合性の宿主動物に移植される。タンパク質発現は、移植から疾患の発症までの間の時点でレスキューした移植した細胞において分析され、そして糖尿病の発症の非存在下でのそれらの発現と比較して糖尿病の発症の間に変化した発現を示すタンパク質が同定される。特異的な実施態様において、移植された細胞は、糖尿病の発症の危険性を有する動物モデルに移植された新産の島細胞である。1つの特異的な実施態様において、新産の島細胞は新産のBB-DPラットから採取され、そして宿主動物はBB-DPラットである。別の実施態様において、移植細胞の供給源および宿主細胞は、NODマウスである。
【0011】
本発明は、防御または有害タンパク質としてさらに特徴づけられ得る、同定した糖尿病媒介タンパク質を提供する。本発明の1つの実施態様において、候補防御タンパク質または有害タンパク質は、候補防御タンパク質または有害タンパク質をコードするポリヌクレオチドで培養細胞をトランスフェクトすることによって、インビトロで同定される。そして、IL-1βでのチャレンジの際のインビトロでの細胞の機能性に対する糖尿病媒介性タンパク質の発現の効果が決定される。ポリヌクレオチドは、誘導性のプロモーターに作動可能に連結され得、その結果、候補の防御タンパク質または有害タンパク質の発現は、外因的な制御下にある。外因的な制御は、薬剤(例えば、インターフェロン)によって発揮され得、このような薬剤は、選択されるプロモーターによって決定される。特異的な実施態様において、細胞の機能性は、一酸化窒素(NO)産生、インシュリンの分泌、細胞の生存性、および/またはIL−1βへの暴露の際の細胞傷害性の測定によって決定される。
【0012】
防御または有害糖尿病媒介タンパク質を同定するためのインビボの方法において、候補タンパク質を発現するトランスジェニック哺乳動物が作成される。ここで、トランスジェニック哺乳動物は、糖尿病を発症する危険性を有しており、そして糖尿病の発症および発症のタイミングに対するトランスジーン発現の効果が決定される。防御タンパク質は、糖尿病の危険性を有する被験体において糖尿病の発症を予防、阻害、または遅延させるタンパク質である。そして有害タンパク質は、糖尿病の発症を生じるか、糖尿病の発症の危険性を増大させるか、または糖尿病の発症の危険性を有する被験体において糖尿病の発症に必要な時間を短縮するタンパク質である。有害タンパク質はまた、防御タンパク質の発現を妨げるかまたは妨害するタンパク質でもある。
【0013】
本発明は、実質的に精製された防御または有害糖尿病媒介タンパク質、および本発明の糖尿病媒介タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。1つの限定的でない実施態様において、防御タンパク質は、ガレクチン-3(galectin-3)である(図4および5)(配列番号1〜2)。別の限定的でない実施態様において、有害タンパク質は、モルタリン(mortalin)である(図2〜3)(配列番号3〜4)である。
【0014】
1つの局面において、本発明は、そのゲノムに挿入された外因性の糖尿病媒介タンパク質遺伝子(単数または複数)を有するトランスジェニック哺乳動物を特徴とする。本発明のトランスジェニック哺乳動物は、糖尿病の発症における糖尿病媒介タンパク質の発現の効果を決定するため、および防御タンパク質または有害タンパク質を同定するためのアッセイ方法において有用である。トランスジーンは、天然の、または部分的にもしくは完全に人工的な糖尿病媒介遺伝子であり得、そして内因性の糖尿病媒介タンパク質遺伝子と異なり得るかまたは同じであり得る。1つの実施態様において、トランスジーンは、誘導性プロモーターの制御下にある。
【0015】
関連する局面において、本発明は、外因性の有害遺伝子を有し、そして予想される時間内に増大した自発的な糖尿病の発症の発病率を示す、トランスジェニック哺乳動物を特徴とする。好ましい実施態様において、トランスジェニック哺乳動物は、50%以上の発病率、より好ましくは、60%以上の発病率、なおさらに好ましくは70%以上の発病率、なおさらに好ましくは80%以上の発病率、そして最も好ましくは90以上の糖尿病の発病率を示す。本発明の1つの実施態様において、本発明のトランスジェニック哺乳動物は、有害糖尿病媒介タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子についてトランスジェニックである。別の実施態様において、トランスジェニック哺乳動物は、さらに、1つ以上の内因性糖尿病媒介タンパク質遺伝子が除去されている。一般に、トランスジェニック哺乳動物は、インシュリン、CMV、インターフェロン、またはMHCプロモーターの制御下にトランスジェニック遺伝子を有する。さらに特異的な実施態様において、トランスジェニック哺乳動物は、増強されたプロモーターによって得られた内因性糖尿病媒介遺伝子を上昇したレベルで発現するか、または高コピー数の内因性の糖尿病媒介遺伝子を発現する。さらに特異的な実施態様において、トランスジェニック哺乳動物は、破壊された糖尿病媒介タンパク質遺伝子を有する。
【0016】
本発明はさらに、内因性の糖尿病媒介タンパク質遺伝子が当該分野で公知の方法によって(例えば、米国特許第5,641,670号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載された遺伝子活性化技術の適用によって)外因的に変化される哺乳動物を含む。
【0017】
1つの局面において、本発明は、1つ以上の糖尿病媒介タンパク質の発現に影響を与える化合物をスクリーニングするためのアッセイを特徴とする。1つの実施態様において、糖尿病の自発的な発症の危険性を有する動物が、1つ以上の糖尿病媒介タンパク質(単数または複数)の発現に影響を与える化合物の能力を決定するためのアッセイにおいて使用される。好ましい実施態様において、アッセイ動物は、糖尿病の発症の高い危険性を有する本発明のトランスジェニック動物である。用語「糖尿病媒介タンパク質の発現に影響を与える」は、内因性の糖尿病媒介タンパク質の発現を誘導する、増強する、阻害する、または減少させる化合物を意味する。
【0018】
特異的な実施態様において、本発明は、内因性の防御タンパク質の発現を誘導し得るかまたは増強し得、従って、糖尿病の発症を遅延させ得るかまたは阻害し得る化合物を同定するためのアッセイを提供する。別の特異的な実施態様において、本発明のアッセイ方法は、有害糖尿病媒介タンパク質の発現を抑制し得るかまたは阻害し得、従って、糖尿病の発症を遅延させ得るかまたは阻害し得る化合物の同定に有用である。
【0019】
関連する局面において、本発明は、糖尿病媒介タンパク質の活性を調節する化合物(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト)を同定するためのアッセイ、または糖尿病媒介タンパク質の活性化に必要とされる翻訳後の工程をブロックすることによるアッセイを提供する。特異的なDMタンパク質の発現における変化は、DMタンパク質の発現を調節し得る化合物を同定するためのスクリーニング方法において有用である。1つ以上の糖尿病媒介タンパク質の発現を調節する化合物は、糖尿病の処置または予防における潜在的な治療薬として有用である。従って、本発明の1つの局面は、1つ以上の糖尿病媒介タンパク質を発現する細胞または組織と試験化合物とを接触させる工程、および1つ以上の糖尿病媒介タンパク質の発現に対する試験化合物の効果を決定する工程を有する、糖尿病媒介タンパク質の発現を調節し得る化合物を同定するための方法アッセイ方法を特徴とする。化合物の効果の決定は、プローブもしくは他のオリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーション、抗体認識(例えば、免疫拡散(immunodiffusion)、免疫蛍光、ELISA、RIA、ブロッティング、免疫沈降、免疫電気泳動、またはクロマトグラフィー)、および電気泳動を含む、当該分野で公知の種々の方法によって行われ得る。表1および2に列挙される糖尿病媒介タンパク質からなる群より選択される1つ以上のタンパク質の発現を増大し得る化合物、ならびに表1および2に列挙される糖尿病媒介タンパク質からなるリストより選択される1つ以上のタンパク質の発現を減少させ得る化合物が、糖尿病の予防または処置のための候補治療薬である。タンパク質の発現における変化は、試験化合物の非存在下での発現と比較して決定される。
【0020】
別の局面において、本発明は、糖尿病の危険性を有する被験体において糖尿病を予防するための治療方法、または治療有効量の防御糖尿病媒介タンパク質を投与することによって糖尿病の被験体における糖尿病の症状を緩和する方法を提供する。好ましくは、被験体はヒトである。本発明はまた、防御糖尿病媒介タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供することによる遺伝子治療を含む。本発明はさらに、有害糖尿病媒介タンパク質のインビボでの発現を阻害する、有効量のポリヌクレオチドを投与することによる、糖尿病の予防および/または処置のための治療方法を含む。候補の治療化合物は、表1および2のタンパク質から選択される。
【0021】
関連する局面において、本発明は、内因性の有害糖尿病媒介タンパク質の発現を抑制し得るかまたは低下させ得る治療有効量の化合物を投与することによる、糖尿病の危険性を有する被験体において糖尿病を予防および/または処置する治療方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、内因性の防御糖尿病媒介タンパク質の発現を誘導し得るかまたは増強し得る治療有効量の化合物を投与することによる、糖尿病の予防および/または処置のための治療方法を提供する。関連する局面において、本発明は、糖尿病媒介タンパク質の活性を調節し得る治療有効量の化合物(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト)を投与することによるか、または糖尿病媒介タンパク質の活性化を妨げることによる、糖尿病の危険性を有する被験体において糖尿病を予防および/または処置する治療方法を提供する。本発明の治療方法として、必要している被験体に治療薬を提供するための、当該分野で公知のエキソビボの方法が挙げられる。
【0022】
本発明の1つの目的は、糖尿病の発病を媒介するタンパク質を同定することである。
【0023】
本発明の1つの目的は、糖尿病媒介タンパク質の同定のためのインビボでのアッセイを提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、被験体における糖尿病を予防、遅延、または緩和し得る試験化合物を同定するためのアッセイにおいて有用な、糖尿病媒介タンパク質を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、防御または有害糖尿病媒介タンパク質を同定するためのアッセイにおいて有用なトランスジェニック動物を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、糖尿病媒介タンパク質の発現に影響を与え得る試験化合物を同定するためのアッセイにおいて有用なトランスジェニック動物を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、天然の、または部分的にもしくは完全に人工的な糖尿病媒介遺伝子を含む、マウス、ラット、またはハムスターのようなトランスジェニック宿主哺乳動物(小さく(例えば、完全に成長した場合に1kg未満である)、そして維持が安価である)を提供することである。
【0028】
本発明の1つの利点は、トランスジェニック哺乳動物が、現在利用可能なアッセイ方法よりも実質的により早く、より効果的に、そして安価である様式で、疾患の発症を予防または阻害し得る防御タンパク質を同定するために使用され得ることである。
【0029】
別の利点は、トランスジェニック哺乳動物が、糖尿病を罹患しているかまたは糖尿病の発症の危険性を有するヒトの処置に有効である、試験薬物に対して試験動物として使用され得ることである。
【0030】
本発明の別の目的は、糖尿病媒介タンパク質の発現に影響を与え、そしてその疾患の発症の危険を有する被験体における糖尿病の発病を妨げ得る試験化合物を同定するため、または糖尿病の被験体における糖尿病の症状を緩和するためのアッセイを提供することである。
【0031】
本発明のこれらおよび他の目的、利点、および特徴は、以下および請求の範囲によってさらに完全に記載される、糖尿病媒介遺伝子(単数または複数)およびタンパク質(単数および複数)、アッセイ方法、ならびにトランスジェニックマウスの詳細を読むことによって、当業者に明らかになる。
1.糖尿病媒介性タンパク質を同定するためのインビトロ方法であって、以下の工程:
(a)インスリンを分泌するか、またはインスリン分泌細胞へ発達し得る細胞または組織を得る工程;
(b)該細胞または組織を宿主哺乳動物に移植する工程であって、ここで該宿主哺乳動物は、糖尿病を発症する危険性がある、工程;
(c)移植と糖尿病の発症との間の複数の時間で、該移植された細胞または組織を、該宿主哺乳動物から取り出す工程;
(d)該取り出された細胞または組織のタンパク質発現を、分析する工程;
(e)糖尿病発症の存在下のある時間での該タンパク質の発現と、糖尿病発症の不在下の該タンパク質の発現とを比較して、糖尿病の発症の結果として変化された発現を示すタンパク質を同定する工程であって、ここで該タンパク質は、糖尿病媒介性タンパク質である、工程、
を包含する、方法。
2.項目1に記載の方法であって、前記細胞が、膵臓島細胞またはβ細胞である、方法。
3.項目1に記載の方法であって、前記宿主哺乳動物が、移植された細胞と、免疫学的に適合性である、方法。
4.項目1に記載の方法であって、タンパク質発現の前記分析が、ゲル電気泳動、イムノブロッティング、質量分析、またはクロマトグラフィーによってである、方法。
5.項目4に記載の方法であって、前記電気泳動が、二次元ゲル電気泳動である、方法。
6.項目1に記載のプロセスを介して同定される、単離された糖尿病媒介性タンパク質。
7.糖尿病媒介性タンパク質であって、該タンパク質が、糖尿病不在下の同じタンパク質の発現に比べて、糖尿病発症の間に変化された発現を示すとして特徴づけられる、タンパク質。
8.項目7に記載の糖尿病媒介性タンパク質であって、該タンパク質が、表1および2に列挙されるタンパク質からなる群より選択される、タンパク質。
9.項目7に記載の糖尿病媒介性タンパク質であって、該タンパク質が、図6〜48に示されるタンパク質の質量分析の特徴を有するとして特徴づけられるタンパク質の群から選択される、タンパク質。
10.項目7に記載のタンパク質であって、該タンパク質が、以下;
(a)糖尿病を発症する危険性がある被験体において糖尿病の発症に対して防御すること;
(b)糖尿病を発症する危険性がある被験体において糖尿病の発病を遅延すること;または
(c)糖尿病を発症する危険性がある被験体において糖尿病の症状を改善すること、を行い得るタンパク質として特徴づけられる防御的タンパク質である、タンパク質。
11.項目7に記載のタンパク質であって、該タンパク質が、以下:
(a)糖尿病の発症を増強すること;
(b)被験体が糖尿病を発症する危険性を増加すること;
(c)糖尿病を発症する危険性がある被験体において、糖尿病の発症に必要とされる時間を減少すること;または
(d)被験体の症状の重篤度を増加すること、
を行い得るとして特徴づけられる、有害なタンパク質である、タンパク質。
12.糖尿病の発症を予測するための方法であって、以下の工程:
(a)試験被験体から得られたサンプルにおいて、表1に示されるタンパク質のうちの1つ以上の発現を測定する工程;
(b)試験被験体から得られたサンプルにおいて、表2に示されるタンパク質のうちの1つ以上の発現を測定する工程;および
(c)コントロールサンプルにおける発現に比べて、工程(a)および(b)のタンパク質の発現を比較する工程を包含し、ここで、表1および表2のタンパク質のうちの1つ以上の変化が、糖尿病の発症の指標である、方法。
13.項目12に記載の方法であって、前記サンプルが、表1および表2に列挙される糖尿病媒介性タンパク質のうちの1つ以上を発現する、1つの細胞、複数の細胞、または組織のいずれかである、方法。
14.防御的なまたは有害な糖尿病媒介性タンパク質を同定するインビトロ方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)糖尿病媒介性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いて、該ポリヌクレオチドがタンパク質として発現される条件下で、細胞をトランスフェクトする工程;および
(b)該細胞に対する、該発現されたタンパク質の影響を決定する工程を包含し、該影響は、サイトカインの不在下または存在下で、1つ以上の細胞機能の変化として測定され、該細胞機能は、一酸化窒素(NO)生成、インスリン分泌、細胞生存、タンパク質発現、および細胞傷害性のうちの1つ以上である、方法。
15.防御的なまたは有害な糖尿病媒介性タンパク質を同定するインビボ方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該タンパク質が発現される条件下で、糖尿病媒介性タンパク質を発現するトランスジェニック哺乳動物を作製する工程;および
(b)糖尿病発病の発症およびタイミングに対する、該タンパク質の発現の影響を決定する工程を包含し、防御的なタンパク質は、糖尿病の危険性がある患者において、糖尿病の発症を、防止、阻害、または遅延するタンパク質であり、および有害なタンパク質は、糖尿病を発症する危険性がある患者において、糖尿病の発症を引き起こす、糖尿病発症の危険性を増加する、重篤度を増加する、または糖尿病の発症に必要とされる時間を減少する、タンパク質である、方法。
16.外因性の糖尿病媒介性タンパク質の導入遺伝子を含有する、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
17.化合物をスクリーニングするためのアッセイ方法であって、該化合物は、糖尿病媒介性タンパク質の発現を達成し得、以下の工程:
(a)項目16に記載のトランスジェニック哺乳動物に、試験化合物を投与する、工程;
(b)糖尿病の発症の発病率およびタイミングに対する、該化合物の効果を測定する工程を包含し、該化合物は、該タンパク質の発現を、阻害、減少、誘導、または増加する、方法。
18.項目17に記載のアッセイ方法によって同定される化合物であって、以下:
(a)内因性の防御的なタンパク質の発現を、誘導または増強すること;または
(b)有害な糖尿病媒介性タンパク質の発現を、抑制または阻害すること;によって特徴づけられ、ここで該化合物は、糖尿病の発症の危険性がある患者において糖尿病の発症を、遅延または防止し得る、化合物。
19.糖尿病または糖尿病関連性の異常を処置または防止するための方法であって、糖尿病を発症する危険性がある患者において、糖尿病の発症を防止または遅延し得る化合物、または糖尿病の被験体において糖尿病の症状を改善し得る化合物を投与する工程を包含する、方法。
20.項目19に記載の方法であって、前記化合物が、アンチセンス配列である、方法。
21.項目19に記載の方法であって、前記化合物が糖尿病媒介性タンパク質抗体に対して抗体特異的である、方法。
22.項目19に記載の方法であって、前記化合物が、糖尿病媒介性タンパク質である、方法。
23.項目22に記載の方法であって、前記糖尿病媒介性タンパク質が、表1および表2のタンパク質の群から選択される、方法。
24.項目19に記載の方法であって、前記化合物が、糖尿病媒介性タンパク質の発現を増強または増加する、方法。
25.項目19に記載の方法であって、前記化合物が、糖尿病媒介性タンパク質の発現を阻害または減少する、方法。
26.項目25に記載の方法であって、前記化合物が、糖尿病媒介性タンパク質のインビボ発現を阻害する、方法。
27.糖尿病媒介性タンパク質の活性を調節し得る化合物を同定するための方法であって、糖尿病媒介性タンパク質の活性を調節し得ることが推測される試験化合物で、細胞、組織、または動物を処置する工程、および1つ以上の糖尿病媒介性タンパク質の活性に対する、該化合物の効果を決定する工程を、包含する、方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
好ましい実施態様の詳細な説明
アッセイで使用される本発明の糖尿病媒介タンパク質および遺伝子、アッセイ方法論、およびトランスジェニックが記載される前に、本発明が、記載される特定のアッセイ方法、糖尿病媒介タンパク質および遺伝子、試験化合物、またはトランスジェニック哺乳動物には限定されず、従って、方法、遺伝子、調製物、および動物は、もちろん、変更し得ることが理解されべきである。本明細書中で使用される用語は、特定の実施態様のみを記載する目的のためであり、そして、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ制限されるので、限定することを意図しないこともまた理解される。
【0033】
本明細書および添付の請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈で他に明らかに指示されない限りは複数の意味を含む。従って、例えば、「糖尿病媒介タンパク質(diabete-mediatingprotein)」または「糖尿病媒介タンパク質(a diabete-mediating protein)」に関しては、このような糖尿病媒介タンパク質の混合物を含み、「処方物(theformulation)」または「方法(the method)」に関しては、1つ以上の処方物、方法、ならびに/あるいは本明細書中で記載される型の工程および/または本開示を読んで、その結果、当業者に明らかである工程を含む。
【0034】
他に規定されない限りは、本明細書中で使用される全ての技術および科学的な用語は、本発明が属する分野で当業者に通常理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと同様または等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が、ここで記載される。本明細書中で記載される全ての刊行物が、開示を参照して本明細書中に参考として援用され、そして引用される刊行物と組合わせて方法および/または材料を記載する。
【0035】
定義
用語「タンパク質」は、全ての翻訳後の改変体(例えば、プロセシング、短縮、グリコシル化、またはリン酸化)を含む、タンパク質、ポリペプチド、およびアミノ酸の鎖であるペプチドを含み、これはしばしば、タンパク質機能の調節において決定的な役割を果たす。この用語はまた、天然のタンパク質、ならびに合成または組換えタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを含む。
【0036】
用語「糖尿病」は、インシュリン依存型糖尿症(IDDM)およびI型糖尿病を含む。用語「糖尿病関連疾患」は、肥満、循環系の不全、インシュリン耐性、X症候群、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、ならびに神経障害およびアテローム性動脈硬化症における進行した糖化最終産物(advancedglycation end products、AGE)の併発のような症状を含む。
【0037】
用語「糖尿病媒介タンパク質」は、糖尿病の発症に関連するタンパク質を意味する。糖尿病媒介タンパク質は、糖尿病の発症の間に変化した発現を示すタンパク質であり、すなわち、糖尿病が発症していないときの同じタンパク質の発現と比較して、糖尿病の発症の間に、アップレギュレートされるかまたはダウンレギュレートされるタンパク質、またはその発現が上方調節または下方調節されるタンパク質である。糖尿病媒介タンパク質はまた、糖尿病または糖尿病関連疾患の発達に付随して改変されるタンパク質も意味する。さらに、インターロイキン1α(IL-1α)は、インシュリンを分泌するランゲルハンス島に対して、インビボおよびインビトロの両方で有害な影響を有し、そして糖尿病の発症において主要な役割を果たすと予想される。島の処置は、それらの発現をアップまたはダウンレギュレートする106個のタンパク質の改変を生じる。本発明の目的のために、用語「糖尿病媒介タンパク質」は、米国仮出願第60/029,324号、(1996年10月25日出願)、同第60/030,186号(1996年11月5日出願)、および同第60/030,088号(1996年11月5日出願)(これらの全ての内容が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載されるように、インビトロでラットの島においてIL-αによって調節されることが示されている全てのタンパク質(およびそれらの改変産物の全て)もまた含むと定義される。
【0038】
用語「タンパク質改変」は、タンパク質の構造における任意の変化(例えば、定性的変化)を含む。このような改変体は、アミノ酸配列における変化、転写または翻訳のスプライシング変異体、DNAまたはRNA配列に対する翻訳前または翻訳後改変体、DNA、RNA、またはタンパク質に対する巨大分子または低分子(例えば、当該分野で周知のペプチド、イオン、ビタミン、原子、糖含有分子、脂質含有分子、低分子など)の付加を含み得るが、これらに限定されない。
【0039】
本発明のタンパク質改変体の1つの型は、アミノ酸配列の1つ以上の変化(置換、欠失、または挿入)による。このような変化は、1つ以上のアミノ酸での、荷電したアミノ酸から別の荷電したアミノ酸への変化、荷電していないアミノ酸から荷電したアミノ酸への変化、荷電したアミノ酸から荷電していないアミノ酸への変化(例えば、pIまたは可能な分子量における差異を生じさせる)を含み得る。アミノ酸配列における任意の他の変化もまた、本発明に含まれ得る。荷電したアミノ酸配列を有する改変したタンパク質のゲル中での全体的な位置変化はまた、当該分野で公知であるように、タンパク質中に存在する全電荷の数に依存する。ゲルの分解能の変更(例えば、ゲルのpHまたは他の勾配成分における変更)は、主要なまたは主要でないアミノ酸配列の変化の検出を可能にし得る。この型の分析はまた、例えば、配列決定、質量スペクトル、標識抗体の結合を使用して、どのような変化が検出されるかに影響を与え得る。
【0040】
別の型の改変は、細胞内でオープンリーディングフレームが読まれる方法に影響を与える、タンパク質をコードするDNAまたはRNAの長さ、構造、または方向における変化による。これは、ゲル上のスポットの位置において大きな変化を生じ得、そしてタンパク質型およびゲル中での位置の分析に影響を与え得る。
【0041】
別の型のタンパク質の改変は、細胞内でのタンパク質のプロセスにおける変化による。限定的でない例は、いくつかのタンパク質が「アドレス標識」を有する(ここでは、細胞の内部(または外部)でそれらが使用されるのを特定する)。このような標識またはタグは、タンパク質に付加するかまたはタンパク質から取り出して、タンパク質が細胞内のどこに位置するかを決定する場合、ペプチド、糖、または脂質の形態であり得る。
【0042】
さらなる型のタンパク質の改変は、他の巨大分子のタンパク質への付着による。この群は、このような巨大分子の任意の付加/除去を含み得るが、これらに限定されない。これらの分子は、多くの型であり得、そして永久的または一時的のいずれかであり得る。例として、以下が挙げられる:(i)ポリリボシル化;(ii)DNA/RNA(一本鎖または二本鎖);(iii)脂質およびリン脂質(例えば、膜付着物);(iV)糖類/多糖;ならびに(v)グリコシル化(多数の変異体の可能性を増大させるような、多数の種々の型の糖およびシアル酸−種々の一本鎖および分岐構造、の付加)。
【0043】
別の型のタンパク質の改変は、他の低分子のタンパク質への付着による。例として、以下が挙げられれるが、これらに限定されない:(i)リン酸化;(ii)アセチル化;(iii)ウリジル化;(iv)アデニル化;(v)メチル化、および(vi)キャッピング(分類の理由のために、タンパク質のN末端の複雑な改変を区別する)。これらの変化のほとんどはしばしば、タンパク質の活性を調節するために使用される。(v)および(vi)はまた、タンパク質自体の半減期を変更するために使用される。これらのタンパク質の変化は、いくつかの方法(例えば、標識、pIの変化、抗体、または当該分野で公知の分子自体に指向する他の特異的技術)を使用して2Dによって検出され得る。分子量の変化は、2DGEによって検出され得るが、必ずしもそうでなくても良く、MALD(逃避質量分析法のマトリックス補助レーザー放出、matrixassisted laser desorption of flight mass spectrometry)が、これらの改変を検出および特徴づけるために好ましい。
【0044】
用語「発現」は、タンパク質の生理的な発現だけではなく、発現されたタンパク質の活性の測定も含むことを意味する。例えば、タンパク質は、不活性な形態で発現され得、これは、リン酸化によって活性化される。タンパク質の実際の発現は変化しないが、その有効な発現(活性)は改変されている。ゲル上では、活性における変化が、改変された形態のタンパク質の発現の変化として測定され得る。
【0045】
用語「影響を受けたタンパク質」は、発現において改変されたタンパク質または構造的に改変されたタンパク質を意味する。従って、影響を受けたタンパク質は、その発現が、タンパク質が由来する細胞内または細胞外での、1つ以上の化合物での処置、疾患状態もしくは病理学的状態、および/または免疫学的変化によって改変された、タンパク質であり得る。あるいはまたはさらに、影響されたタンパク質はまた、アップレギュレートされたかまたはダウンレギュレートされた変化した発現を示すタンパク質、またはその発現が、このような処置、疾患、もしくは免疫学的変化の非存在下での同じタンパク質(すなわち、「影響を受けていないタンパク質」)の発現と比較して、本発明の方法によっては検出され得ない任意の方法で構造が改変されているタンパク質であり得る。
【0046】
用語「糖尿病媒介遺伝子またはポリペプチド」は、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質のフラグメントをコードする遺伝子物質を意味し、これは、完全な糖尿病媒介タンパク質または糖尿病媒介タンパク質のフラグメントをコードする。この用語は、糖尿病媒介タンパク質をコードする任意の種由来の任意の遺伝子を含む。糖尿病媒介遺伝子またはポリヌクレオチドは、天然に存在し得るか、または部分的もしくは全部が合成であり得る。
【0047】
ポリペプチドについて言及する場合、用語「実質的に純粋」は、少なくとも60重量%が、タンパク質および天然に存在する有機分子(天然に付随する)を含まない、ポリペプチドを意味する。実質的に純粋な糖尿病媒介タンパク質は、少なくとも75%重量が、より好ましくは、少なくとも90重量%が、そして最も好ましくは、少なくとも99重量%が、糖尿病媒介タンパク質である。実質的に純粋な糖尿病媒介タンパク質は、天然の供給源から抽出によって;糖尿病媒介タンパク質をコードする組換え核酸の発現によって、またはタンパク質の化学的合成によって得ることができる。純度は、任意の適切な方法(例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析)によって測定され得る。
【0048】
本明細書中で使用される「ポリヌクレオチド」は、大きな構築物の別々のフラグメントまたは成分の形態における、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの核酸配列をいう。本発明のポリペプチドの一部または全てをコードするDNAは、組換え転写ユニット中で発現され得る合成遺伝子を提供する、cDNAフラグメントからまたはオリゴヌクレオチドから組み立てられ得る。本発明のポリヌクレオチド配列は、DNA、RNA、およびcDNA配列を含み、そして天然の供給源または当該分野で公知の方法によって合成される合成配列由来であり得る。
【0049】
本明細書中で使用される「単離された」ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドが由来する生物の天然に存在するゲノム中で、そのポリヌクレオチドがすぐに連続する(すなわち、共有結合する)コード配列のいずれとも(すなわち、一方は5'末端で、そして他方は3'末端で)すぐに連続しない、ポリヌクレオチドである。従って、この用語は、例えば、ベクター、自律複製性プラスミドもしくはウイルス、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれる組換えポリヌクレオチド、あるいは他の配列とは独立して別々の分子として存在する組換えポリヌクレオチドを含む。これはまた、さらなるポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である、組換えDNAを含む。
【0050】
本発明の単離されたおよび精製されたポリヌクレオチド配列はまた、本明細書中で特定されたポリヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む。用語「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイズするポリヌクレオチド配列間の特異性を保証する、ハイブリダイゼーション条件を意味する。当業者は、非特異的ハイブリダイゼーションの数を減少させ、その結果、高度に相補的な配列のみが同定される、温度および塩濃度を含むハイブリダイゼーション後の洗浄条件を選択し得る(Sambrookら、Molecular Cloning、第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press、ColdSpring Harbor,NY(1989)、本明細書中で参考として特に援用される)。例えば、このような条件は、特殊化された条件下でのハイブリダイゼーション(例えば、5×SSC中での予備浸透、ならびに20%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、および50μgの変性した超音波処理ウシ胸腺DNA溶液中で約40℃にて1時間の予備ハイブリダイゼーション、続く100μMのATPを補充した同じ溶液中で約40℃にて18時間のハイブリダイゼーションを含む)である(Sambrookら、前出(1989))。本発明の単離および精製されたポリヌクレオチド配列はまた、糖尿病媒介タンパク質をコードするポリヌクレオチドに相補的な配列(アンチセンス配列)およびリボザイムを含む。
【0051】
用語「宿主動物」および「宿主哺乳動物」は、ドナー細胞が移植される動物を記載するために使用される。簡便な宿主動物として、マウス、ハムスター、およびラットが挙げられる。
【0052】
用語「除去された糖尿病媒介タンパク質遺伝子」、「破壊された糖尿病媒介遺伝子」などは、遺伝子を非作動性にするような様式で変更(例えば、ヌクレオチドの付加および/または除去)されている、内因性の糖尿病媒介タンパク質遺伝子を意味するように、本明細書中で互換的に使用される。これはまた、それらもまた遺伝子を非作動性にする、制御配列または調節遺伝子の除去または改変を含むように使用される。
【0053】
用語「糖尿病の発症の増大した危険性」などは、遺伝的に糖尿病を発症する傾向があり、好ましくは、50%よりも大きい危険性、より好ましくは、60%より大きい危険性、なおさらに好ましくは、70%より大きい危険性、なおさらに好ましくは、80%より大きい危険性、そして最も好ましくは90%より大きい糖尿病の発症の危険性を有する動物を意味する。
【0054】
「変化したタンパク質」または「変化したタンパク質発現」は、糖尿病の発症の間にその発現が増大される(「アップレギュレート」)、減少される(「ダウンレギュレート」)、阻害される(すなわち、オフにされる)または誘導される(すなわち、オンにされる)タンパク質を意味する。
【0055】
用語「活性を調節する」などは、例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、として、その通常の活性を妨げるかまたは増強するようにタンパク質の活性を変化させること、あるいは、タンパク質の活性に必要とされる翻訳後の改変工程をブロックすることによりタンパク質の活性を変化させることを意味する。
【0056】
用語「有効量」または「治療有効量」は、所望の生理学的効果(例えば、糖尿病の発症の抑制または遅延)を得るために十分な化合物の量を意味する。
【0057】
本明細書中で使用される用語「処置」、「処置する」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを一般に意味する。この効果は、これらの疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防することに関して予防的であり得、そして/あるいは疾患および/または疾患に寄与する有害な影響を部分的、または完全に治癒することに関して治療的であり得る。本明細書中で使用される「処置」は、哺乳動物(特に、ヒト)における疾患の任意の処置を含み、そして以下を含む:
(a)疾患の傾向があり得るがまだ疾患を有するとは診断されていない被験体において、疾患の発病を予防すること;
(b)疾患を阻害すること、すなわちその発症を阻止すること;または
(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を生じること。本発明は、糖尿病、および糖尿病に媒介される関連する状態、インシュリン不全症、またはインシュリン耐性を発症しているかまたはその危険性を有する患者を処置することに関する。より詳細には、「処置」は、糖尿病の危険性を有するかまたは糖尿病を罹患している患者に、治療的に検出可能なそして有用な効果を提供することを意味することが意図される。
【0058】
「処置」は、治療的処置、および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)測定の両方をいい、ここで、その目的は、疾患の発症を妨げるかまたは遅延させることである。処置を必要とするものとして、障害をすでに有しているもの、および障害を有する傾向にあるもの、または障害が予防されているものが挙げられる。
【0059】
用語「相乗」「相乗効果」などは、1つ以上の治療薬を併用することによって得られる、改善された処置効果を記載するように本明細書中で使用される。いくつかの分野での相乗効果は足し算以上の(例えば、1+1=3)効果を意味するが、医療の分野では、足し算(1+1=2)または足し算未満の(例えば、1+1=1.6)効果が相乗的であり得る。例えば、2つの薬物のそれぞれが、個体に与えられた場合に50%までの糖尿病の発症を阻害する場合、併用された2つの薬物が糖尿病の発症を完全に停止することは期待できない。多くの例において、受容できない副作用のために、2つの薬物は一緒に投与し得ない。他の例において、一緒に投与された場合、薬物は互いに相殺し、50%未満の糖尿病の発症を遅延させる。従って相乗効果は、2つの薬物が50%より多くの糖尿病の発症を遅延させるが、受容できない有害な副作用の増大を伴わない場合に得られると言われる。
【0060】
本明細書中で使用される略語として以下が挙げられる:IDDM=インシュリン依存性糖尿症;BB-DP=糖尿病の傾向がある人工交配(Bio-Breeding)ラット;NOD=非肥満糖尿病マウス。
【0061】
発明の一般的な局面
本発明は、以下のいくつかの局面を含む:(1)糖尿病の発症の存在下および非存在下での異なる発現によって同定される、糖尿病媒介タンパク質;(2)糖尿病の発症を予想するため、および所望の様式でDMタンパク質の組み合わせに影響を与え得る化合物を同定するために有用なDMタンパク質のパターンおよび組み合わせ;(3)防御糖尿病媒介タンパク質;(4)有害糖尿病媒介タンパク質;(5)体液中の1つ以上のDMタンパク質、それらの翻訳後改変体、または分解産物の検出に基づく糖尿病の発病または発症の診断のための方法;(6)糖尿病媒介タンパク質を同定するためのインビボの方法;(7)糖尿病媒介タンパク質をコードする外因性遺伝子を含むトランスジェニック哺乳動物;(8)防御または有害糖尿病媒介タンパク質を同定するためのインビボアッセイにおいて有用なトランスジェニック哺乳動物;(9)防御または有害糖尿病媒介タンパク質を同定するために有用な糖尿病媒介タンパク質を発現する形質導入した培養細胞を使用するインビトロアッセイ;(10)防御または有害糖尿病媒介タンパク質を同定するために有用な糖尿病媒介タンパク質を発現する形質導入された島細胞を使用するインビボアッセイ;(11)予想される時間内に糖尿病の高い発症率を示す動物である、ヒト疾患の改良された動物モデル;(12)1つ以上の防御タンパク質の発現を誘導または増強し得る試験化合物を同定するためのインビボのアッセイ方法;(13)有害タンパク質の発現を阻害または減少し得る試験化合物を同定するためのインビボのアッセイ方法;(14)防御糖尿病媒介タンパク質の治療有効量を提供することによって、哺乳動物における糖尿病を処置、および/または糖尿病の発症を予防もしくは遅延させるための方法;(15)防御糖尿病媒介タンパク質の発現を誘導もしくは増強し得るか、または糖尿病媒介タンパク質の活性を調節し得る化合物の治療有効量を提供することによって、哺乳動物における糖尿病を処置、および/または糖尿病の発症を予防もしくは遅延させるための方法;ならびに(16)有害糖尿病媒介タンパク質の発現を阻害もしくは減少し得るか、または糖尿病媒介タンパク質の活性を調節し得る化合物の治療有効量を提供することによって哺乳動物における糖尿病を処置、および/または糖尿病の発症を予防もしくは遅延させるための方法。
【0062】
I.糖尿病媒介タンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、および抗体。
【0063】
本発明は、糖尿病媒介タンパク質、すなわち、糖尿病の発症に関連するかまたは糖尿病の発症の間に影響を受けると同定されたタンパク質を提供する。糖尿病媒介タンパク質は、その発現が、糖尿病の発症の非存在下でのそれらの発現と比較して、糖尿病の発症の間に変化されるタンパク質として特徴づけられる。本発明の開示は、膵臓の島細胞タンパク質の2次元ゲルデータベースにより糖尿病媒介タンパク質を同定する。糖尿病媒介タンパク質には、防御糖尿病媒介タンパク質および有害糖尿病媒介タンパク質を含む。
【0064】
本発明は、サイトカイン媒介細胞傷害性におけるそれらの有害または防御的役割を確立するために、トランスフェクトされた細胞中のセンスまたはアンチセンス構築物としての、クローニングされたcDNAの発現による機能的評価を含む、糖尿病媒介タンパク質を同定するためのインビトロの方法を提供する。ランゲルハント島のB細胞は、サイトカインの毒性効果に特に敏感である。熱ショックタンパク質70(HSP70)でのラットβ細胞のリポフェクション、およびIL-1に暴露された細胞のインビトロの生存性を改善された、ヘミンに対する暴露によるヘムオキシゲナーゼ(HO)の誘導が以前に示されている(Karlsenら、InsulinSecretion and Pancreatic B Cell Research、P.R. FlattおよびS.Lenzen編;Smith-Gordon、USA、499-507頁(1994))。細胞は、多数の当該分野で公知の方法(例えば、アデノウイルスベクター法)でトランスフェクトされ得る。例えば、Korbuttら、TransplantationProceedings 27:3414(1995);Cseteら、26:756-757(1994);Beckerら、J.Biol.Chem.269:21234-21238(1994)を参照のこと。
【0065】
安定なトランスフェクトされたβ細胞クローンの確立に続いて、糖尿病媒介タンパク質の発現の効果が、サイトカインの非存在下および存在下で培養されたクローンの機能的分析によって決定され得る。機能的分析は、窒素として測定される一酸化窒素の産生(NO)(Greenら、Anal.Biochem.126:131-138(1982))、インシュリンの分泌(Id)、細胞傷害性、および2Dゲル電気泳動を含む。細胞傷害性は、以下を含む当該分野で公知の種々の方法によって測定され得る:(1)乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出に基づく比色アッセイ(CytoTox、Promega)、(2)生細胞のカルセインの取り込みおよび蛍光、ならびに死細胞の核のエチジウムブロマイド染色に基づく生死アッセイ(MolecularProbes)、(3)非放射活性細胞増殖アッセイ(MTT、Promega)、アポトーシス(Nerupら、IDDM,S.BabaおよびT.Kaneko編、ElsevierScience、15-21頁(1994))、および/または遺伝子発現の半定量的複合PCR分析。2次元ゲルは、応答するタンパク質を同定するために、コントロールとサイトカインで刺激した島とを比較するために使用され得、これによって細胞応答において役割を果たすタンパク質を同定する。内部結合分析は、タンパク質の機能的な群を定義し、そしてそれらを調節する(例えば、キナーゼリン酸化または他の翻訳後改変による)ために使用され得る。
【0066】
このようなアッセイにおける使用について好ましい細胞は、インシュリン分泌細胞(例えば、MSLまたはRIN細胞)である。MSL細胞株は、多能性または幹細胞様転移性ラット島細胞腫細胞株である。インビトロおよびインビボでの培養および/または継代条件に依存して、MSL細胞は、ランゲルハンス島の特徴である、全部で4つのホルモン分泌表現系をもたらし得る(Mandrup-Poulsenら、Eur.J.Endocrinology133:660-671(1995);Eur.J.Endocrinology編、134:21-30(1996))。RIN細胞は、島細胞腫細胞の培養株である(Nielsen、Exp.Clin.Endocrinol.93:277-285(1989))。
【0067】
防御糖尿病媒介タンパク質。本発明は、糖尿病の発症の危険性を有する被験体における糖尿病の発症に対して防御し得るか、または糖尿病を罹患している被験体において糖尿病の症状を緩和し得ると特徴づけられる、実質的に精製された防御糖尿病媒介タンパク質(「防御タンパク質」)を提供する。本発明の防御タンパク質は、糖尿病に対して防御するように直接作用し得るか、あるいは第2の防御タンパク質の合成を誘導もしくは増大するか、または有害タンパク質の合成を減少もしくは阻害することによって間接的に作用し得る。
【0068】
特異的な実施態様において、本発明は、実質的に純粋な防御タンパク質ガレクチン-3を提供する。ラットのガレクチンの配列(配列番号3)を図4に示し、ヒトのガレクチンの配列(配列番号4)を図5に示す。以下に示すように、トランスフェクトした細胞中で発現されるgal-3は、IL-1βでのチャレンジの際に細胞の生存性を増大する。ガレクチンは、胎児および生体の膵臓の島細胞中に存在する、βガラクトシド糖または糖結合体に特異的なレクチンである。本明細書中で使用される用語「実質的に純粋な」は、他のタンパク質、脂質、炭水化物、または天然に付随する他の物質を実質的に含まないgal-3をいう。当業者は、タンパク質精製のための標準的な技術を使用して、gal-3を精製し得る。gal-3ポリペプチドの純度はまた、アミノ末端のアミノ酸配列分析によって決定され得る。gal-3タンパク質は、防御活性を維持している限りは、ポリペプチドの機能的フラグメントを含む。gal-3の生物学的活性を有するより小さいペプチドが、本発明に含まれる。本発明はさらに、配列番号4の全長のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。相同性または同一性の割合は、例えば、Universityof Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータープログラム(バージョン6.0)を使用して配列情報を比較することによって決定され得る。GAPプログラムは、SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)によって改訂された、NeedlemannおよびWunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)のアラインメント法を利用する。簡潔には、GAPプログラムは、2つの配列の短い方の記号(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の総数で割り算した、類似であるアラインメントした記号の数として類似性を定義する。GAPプログラムのための好ましいデフォルトパラメーター(defaultparameter)として、以下が挙げられる:(1)SchwartzおよびDayhoff編、Atlas of Protein Sequence andStructure、National Biomedical Research Foundation、353-358頁(1979)に記載されるような、一元比較マトリックス(同一性について1、そして非同一性について0の値を有する)ならびにGribsovおよびBurgess、Nucl.AcidsRes.14:6745(1986)の質量測定比較マトリックス;(2)各ギャップについて3.0のペナルティーおよび各ギャップ中の各記号について0.10のペナルティー;ならびに(3)末端のギャップについてはペナルティーなし。
【0069】
本発明はまた、コンピューターシステムまたは本発明の方法によって同定されるかまたは特徴づけられる、精製されたタンパク質を提供する。ここで、タンパク質は、以下からなる群から選択され得る:
(a)表8に示される、対応する分子量およびpIを有する影響を受けていないタンパク質;
(b)表9に示される、対応する分子量およびpIを有する影響を受けたタンパク質;および
(c)表10に示される、対応する分子量およびpIを有するマーカータンパク質、
そしてここで、少なくとも1つの上記のタンパク質が、必要に応じて以下からさらに選択される:
(i)表11に示される、対応する分子量およびpIを有する影響を受けていないタンパク質;
(ii)表12に示される、対応する分子量およびpIを有する影響を受けたタンパク質;および
(iii)表13に示される、対応する分子量およびpIを有するマーカータンパク質。
【0070】
本発明に従って、影響を受けたタンパク質または影響を受けていないペプチドは、影響を受けたペプチドまたは影響を受けていないペプチド(例えば1〜40ドメイン、またはその中の任意の範囲もしくは値)に対応する2つ以上のポリペプチドドメイン(例えば、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、疎水性ドメイン、親水性ドメイン、リガンド結合ドメイン、または孔内層ドメイン)またはそのフラグメントの会合を含む。本発明の影響を受けたペプチドまたは影響を受けていないペプチドのこのようなドメインは、少なくとも74%の相同性(例えば、全体で74〜100%の相同性または同一性)を有し得るか、あるいは本明細書中に記載される、1つ以上の対応する、影響を受けたまたは影響を受けていないタンパク質またはペプチドドメインに対して、その中の任意の範囲または値を有し得る。当業者に理解されるように、上記のドメインの立体配置は、本発明の影響を受けたペプチドまたは影響を受けていないペプチドの一部として提供され、その結果、機能的に影響を受けたまたは影響を受けていないタンパク質またはペプチドは、適切な細胞中で発現される場合、島細胞型に影響を与えることが見出される生物学的活性に関連し得る。このような活性は、適切な影響を受けたまたは影響を受けていないタンパク質またはペプチドの活性アッセイによって測定される場合、本発明の1つ以上の影響を受けたまたは影響を受けていないタンパク質またはペプチドの、影響を受けたまたは影響を受けていないタンパク質またはペプチド活性を確立する。
【0071】
従って、あるいは、本発明の影響を受けたまたは影響を受けていないペプチドは、少なくとも1つの20〜10,000アミノ酸のフラグメントに実質的に対応する影響を受けたかまたは影響を受けていないタンパク質またはペプチドアミノ酸配列の一部を有するペプチド、および/あるいは影響を受けたまたは影響を受けていないペプチドあるいは影響を受けたがまたは影響を受けていないペプチド群のコンセンサス配列を含む。ここで、影響を受けたまたは影響を受けていないタンパク質またはペプチドは、少なくとも74〜99%(例えば、88〜99%(またはその中の任意の範囲もしくは値(例えば、87〜99、88〜99、89〜99、90〜99、91〜99、92〜99、93〜99、94〜99、95〜99、96〜99、97〜99、または98〜99%))の相同性または同一性を、本発明に従って1つ以上のタンパク質の質量スペクトル特徴を有する、表8〜13の1つ以上に示されるかまたは図2〜7に示されるとして特徴付けられる、少なくとも1つのタンパク質の少なくとも1つの配列またはコンセンサス配列に対して有する。
【0072】
1つの局面において、このような影響を受けたまたは影響を受けていないペプチドは、影響を受けたまたは影響を受けていないタンパク質またはペプチドの生物学的活性を維持し得る。本発明の影響を受けたまたは影響を受けていないペプチドは、天然に存在しないか、または天然に存在するが天然には存在しない形態で精製または単離されることが好ましい。好ましくは、本発明の影響を受けたかまたは影響を受けていないペプチドは、実質的に、本発明に従って1つ以上のタンパク質の質量スペクトル特徴を有する、配列番号を含む表8〜13の1つ以上において特徴付けられる、少なくとも10個の連続するアミノ酸のタンパク質を有する、本発明の影響を受けたまたは影響を受けていないタンパク質のドメインの任意のセットに実質的に対応する。
【0073】
あるいはまたはさらに、本発明の影響を受けたまたは影響を受けていないペプチドは、既知のタンパク質のドメイン(例えば、74〜100%の全体の相同性、またはその中の任意の範囲もしくは値を有する、細胞質ドメイン、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞外ドメイン、または公知の他のドメイン)に対応する少なくとも1つのドメインを含む。別のドメインもまた、本発明に従って1つ以上のタンパク質の質量スペクトル特性を有する、配列番号を含む表8〜13、図2〜7の1つ以上において特徴付けられる、少なくとも10個の連続するアミノ酸のタンパク質をコードするか、またはそれに対して74%の相同性を有するか、または置換されたコドンを有し、それにより、特定のコドンについて同じアミノ酸をコードする、少なくとも30個の連続するヌクレオチドに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされる。さらに、リン酸化(例えば、PKAおよびPKC)ドメインはまた、当業者によって認識される場合、本発明に従って影響を受けたかまたは影響を受けていないペプチドまたはコードする核酸配列が提供される場合に考慮される。この限定的でない例は、表12のタンパク質672-674に示され、ここで同じタンパク質が別々にリン酸化される。
【0074】
本発明はさらに、DNA、cDNA、およびRNA配列を含む、本発明の糖尿病媒介タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。糖尿病媒介タンパク質の全てまたは一部をコードする全てのポリヌクレオチドもまた、それらが糖尿病媒介活性を有するポリペプチドをコードする限りは、本明細書中に含まれる。このようなポリヌクレオチドは、天然に存在する、合成の、および意図的に操作されたポリヌクレオチドを含む。例えば、このようなポリヌクレオチドは、部位特異的変異誘発に供され得る。本発明のポリヌクレオチド配列はまた、アンチセンス配列を含む。アンチセンス配列は、改変されたオリゴヌクレオチドを用いて合成された配列を含む。本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子コードの結果として縮重している配列を含む。これらは、20の天然のアミノ酸であり、これらのほとんどは、1を超える**コドンによって特定される。従って、全ての縮重ヌクレオチド配列が、そのヌクレオチド配列によってコードされる糖尿病媒介ポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に変化していない限りは、本発明に含まれる。
【0075】
本発明のDNA配列は、いくつかの方法によって得ることができる。例えば、DNAは、当該分野で周知のハイブリダイゼーション技術を使用して単離され得る。これらは以下を含むが、それらに限定されない:1)相同ヌクレオチド配列を検出するための、プローブとのゲノムまたはcDNAライブラリーのハイブリダイゼーション、2)目的のDNA配列にアニーリングし得るプライマーを使用する、ゲノムDNAまたはcDNAについてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および3)共有する構造特性を有するクローニングしたDNAフラグメントを検出するために、発現ライブラリーの抗体スクリーニング。
【0076】
好ましくは、本発明のDNA配列は、哺乳動物の器官由来であり、そして最も好ましくは、ヒト由来である。適切なプローブが入手可能である限り、核酸ハイブリダイゼーションによるスクリーニング手順によって、任意の生物からの任意の遺伝子配列の単離が可能になる。目的のタンパク質をコードする配列の一部に対応するオリゴペプチドプローブが、化学合成され得る。これは、アミノ酸配列の短いオリゴヌクレオチドストレッチが公知でなければならないことを必要とする。タンパク質をコードするDNA配列は、遺伝子コードから推定され得るが、しかし、コードの縮重を考慮しなければならない。生物のコドン偏向は、最も可能性のあるヌクレオチドのトリプレットを選択するために考慮され得る。配列が縮重する場合、混合した付加反応を行うことが可能である。これは、変性した二本鎖DNAの異種混合物を含む。このようなスクリーニングについて、好ましくは、ハイブリダイゼーションは、一本鎖DNAまたは変性させた二本鎖DNAのいずれかについて行われる。ハイブリダイゼーションは、目的のポリペプチドに関連するmRNA配列が極微量で存在する場合、供給源に由来するcDNAクローンの検出に特に有用である。言い換えれば、非特異的結合を避けるためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を使用することによって、例えば、その完全な相補物である混合物中の単一のプローブに対する標的DNAのハイブリダイゼーションによって、特異的なcDNAクローンのオートラジオグラフィーによる可視化が可能である(Sambrookら、MolecularCloning、A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、NY(1989))。
【0077】
本発明の糖尿病媒介タンパク質をコードする特異的DNA配列の生成は、以下によっても得ることができる:1)ゲノムDNA由来の二本鎖DNA配列の単離;2)目的のポリペプチドに必要なコドンを提供するための、DNA配列の化学的な操作;および3)真核生物ドナー細胞から単離されたmRNAの逆転写による、二本鎖DNA配列のインビトロ合成。最後の場合、mRNAに相補的な二本鎖DNAが最終的に形成され、これは一般にcDNAと呼ばれる。組換え手順での使用のための特異的DNA配列を産生するための上記の3つの方法のうち、ゲノムDNA単離物の単離は最もまれである。これは特に、哺乳動物ポリペプチドの微生物での発現を得ることが所望される場合に特に正しく、イントロンの存在に起因する。
【0078】
DNA配列の合成はしばしば、所望のポリペプチド産物のアミノ酸残基の完全な配列が既知である場合の方法の選択である。所望のポリペプチドのアミノ酸残基の配列の全体が未知である場合、DNA配列の直接の合成は不可能であり、そして選択される方法は、cDNA配列の合成である。目的のcDNA配列を単離するための標準的な手順は、目的のタンパク質について高レベルの遺伝子発現を有するドナー細胞中に豊富な、mRNAの逆転写に由来するプラスミド保有cDNAまたはファージ保有cDNAライブラリーの形成である。ポリメラーゼ連鎖反応技術が組み合わせて使用される場合、さらにまれな発現産物がクローニングされ得る。ポリペプチドのアミノ酸配列の有意な部分が既知である場合において、標的cDNA中に存在すると推定される配列を二倍にする、標識された一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAプローブ配列の生成は、一本鎖形態に変性されているcDNAのクローニングされたコピーについて行われる、DNA/DNAハイブリダイゼーション手順において使用され得る(Jayら、Nucl.Acid.Res.11:2325(1983))。
【0079】
cDNA発現ライブラリー(例えば、λgt11)は、糖尿病媒介タンパク質に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つのエピトープを有する糖尿病媒介ペプチドについて間接的にスクリーニングし得る。このような抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルのいずれかで得られ、そして所望のcDNAの存在の指標である発現産物に由来し、そしてそれを検出するために使用され得る。
【0080】
糖尿病媒介因子をコードするDNA配列は、適切な宿主細胞中へのDNA移入によってインビトロで発現され得る。「宿主細胞」は、ベクターが増殖され得るかまたはそのDNAが発現される細胞である。この用語はまた、被験体の宿主細胞の任意の子孫を含む。全ての子孫が、親細胞にと同一でなくてもよいことが理解され得る。なぜなら、複製の間に生じる変異が存在し得るからである。しかし、このような子孫は、用語「宿主細胞」が使用される場合、含まれる。安定な導入方法とは、外来DNAが宿主中で連続的に維持されることが当該分野で公知であることを意味する。
【0081】
本発明において、糖尿病媒介タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、組換え発現ベクター中に挿入され得る。用語「組換え発現ベクター」は、プラスミド、ウイルス、またはX130遺伝子配列の挿入または取り込みによって操作されている当該分野で公知の他のビヒクルをいう。このような発現ベクターは、宿主の挿入された遺伝子配列の効率的な転写を容易にする、プロモーター配列を含む。発現ベクターは代表的には、複製起点、プロモーター、および形質転換された細胞の表現系の選択を可能にする特異的な遺伝子を含む。本発明での使用に適切なベクターとして、以下が挙げられるが、これらに限定されない:細菌中での発現のためのT7に基づく発現ベクター(Rosenbergら、Gene56:125(1987))、哺乳動物細胞中での発現のためのpMSXND発現ベクター(LeeおよびNathans、J.Biol.Chem.263:3521(1988))、および昆虫細胞中での発現のためのバキュロウイルス由来ベクター。DNAセグメントは、調節エレメント(例えば、プロモーター(例えば、T7、メタロチオネインI、またはポリヘドロンプロモーター))に作動可能に連結されて、ベクター中に存在し得る。
【0082】
糖尿病媒介タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、原核生物または真核生物のいずれかで発現され得る。宿主は、微生物、酵母、昆虫、および哺乳動物の器官を含み得る。真核生物またはウイルス配列を有するDNA配列を原核細胞中で発現させるための方法は、当該分野で周知である。宿主中で発現および複製し得る生物学的に機能的なウイルス、およびプラスミドDNAベクターが、当該分野で公知である。このようなベクターは、本発明のDNA配列を取り込むために使用される。
【0083】
組換えDNAでの宿主細胞の形質転換は、当業者に周知である従来の方法によって行われ得る。宿主が原核生物(例えば、E.coli)である場合、DNAを取り込み得るコンピテント細胞が、当該分野で周知の手順を使用して、対数増殖期後に細胞を回収し、その後CaCl2法によって処理することによって調製され得る。あるいは、MgCl2またはRbClが使用され得る。形質転換はまた、所望される場合、宿主細胞のプロトプラストを形成した後に行われ得る。
【0084】
宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈、従来の機械的手順(例えば、マイクロインジェクション)、エレクトロポレーション、リポソーム中に包埋されたプラスミドの挿入のようなDNAのトランスフェクションまたはウイルスベクターの方法が使用され得る。真核生物細胞はまた、本発明の糖尿病媒介タンパク質をコードするDNA配列、および選択可能な表現系をコードする第2の外来DNA分子(例えば、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子)で同時形質転換され得る。別の方法は、真核生物ウイルスベクター(例えば、シミアンウイルス40(SV40)、またはウシ乳頭腫ウイルス)を、真核生物細胞を感染、形質転換、または形質導入させ、そしてタンパク質を発現させるために使用することである(例えば、EukaryoticViral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、Gluzman編、1982を参照のこと)。
【0085】
本発明によって提供される、微生物発現されるポリペプチドまたはそのフラグメントの単離および精製は、予備クロマトグラフィーおよび免疫学的分離(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む)を含む、従来の手段によって行われ得る。2DGEは、互いからのタンパク質の改変変異体の精製のための好ましい方法である。
【0086】
糖尿病媒介有害タンパク質。糖尿病媒介有害タンパク質(「有害タンパク質」)は、糖尿病の発症を増強するか、または被験体の糖尿病を発症する危険性を増大させると特徴づけられる。本発明は、実質的に精製された防御糖尿病媒介タンパク質、およびこのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。好ましい実施態様において、有害タンパク質はモルタリンである。マウスのモルタリンのアミノ酸配列(配列番号1)を図2に示す、そしてヒトのモルタリンのアミノ酸配列(配列番号2)を図3に示す。
【0087】
糖尿病媒介タンパク質に特異的な抗体。本発明の糖尿病媒介タンパク質はまた、糖尿病媒介タンパク質のエピトープに免疫反応性であるか、または結合する抗体を産生するために使用され得る。抗体は本質的に、種々のエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体、および異なるモノクローナル抗体調製物からなり得る。モノクローナル抗体は、当該分野で周知の方法によってタンパク質のフラグメントを含む抗原から作成される(Kohlerら、Nature 256:495(1975);Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、1989)。
【0088】
本明細書中で使用される用語「抗体」は、完全な分子およびそのフラグメント(例えば、Fab、F(ab')2、およびFv)を含み、これらは、エピトープ決定基に結合し得る。これらの抗体フラグメントは、その抗原またはレセプターに選択的に結合するいくつかの能力を維持しており、そして以下のように定義される:
(1)Fab(抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含むフラグメント)は、インタクトな軽鎖および1つの重鎖の一部を生じるための、酵素であるパパインでの抗体全体の消化によって産生され得る;
(2)Fab'(抗体分子のフラグメント)は、インタクトな軽鎖および重鎖の一部を生じるための、ペプシンでの抗体全体の処理、続く還元によって、得ることができる;1つの抗体分子あたり2つのFab'フラグメントが得られる;
(3)(Fab')2(抗体のフラグメント)は、続く還元を伴わない酵素ペプシンでの抗体全体の処理によって得ることができる;F(ab')2は、2つのジスルフィド結合で互いに結合した2つのFab'フラグメントの二量体である;
(4)Fvは、2つの鎖として発現される、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;そして
(5)単鎖抗体(「SCA」)は、遺伝的に融合された単鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む遺伝子操作された分子として定義される。
【0089】
これらのフラグメントを作成する方法は、当該分野で公知である。例えば、HarlowおよびLane、Antibodies;ALaboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1988)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0090】
本明細書中で使用される用語「エピトープ」は、抗体のパラトープが結合する、抗原の任意の抗原性決定基を意味する。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面基からなり、そして通常は、特異的な三次元構造特性および特異的な電荷特性を有する。
【0091】
本発明の糖尿病媒介ポリペプチドに結合する抗体は、免疫抗原としての目的の小ペプチドを含む完全なポリペプチドまたはフラグメントを使用して調製され得る。動物を免疫するために使用されるポリペプチドまたはペプチドは、翻訳されたcDNA、または所望される場合は、キャリアタンパク質に結合され得る化学合成物由来であり得る。ペプチドに化学結合されるこのように一般的に使用されるキャリアとして、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)、および破傷風毒素が挙げられる。次いで、結合されたペプチドが、動物(例えば、マウス、ラット、またはウサギ)を免疫するために使用される。
【0092】
所望される場合は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、例えば、抗体が惹起されるポリペプチドまたはペプチドが結合されるマトリックスに結合させるかおよびマトリックスからの溶出によってさらに精製され得る。当業者は、ポリクローナル抗体、およびモノクローナル抗体の精製および/または濃度について免疫学的分野で一般的な種々の技術を知っている。例えば、Coliganら、第9章、Current Protocols in Immunology、Wiley Interscience(1994)(本明細書中で参考として具体的に援用される)を参照のこと。
【0093】
エピトープを模倣するモノクローナル抗体を産生するために、抗イディオタイプ技術を使用することもまた可能である。例えば、第一のモノクローナル抗体を作成するための抗イディオタイプモノクローナル抗体は、第一のモノクローナル抗体によって結合されるエピトープの「典型(image)」である、超可変領域中の結合ドメインを有する。
【0094】
本発明の目的のために、糖尿病媒介タンパク質に特異的な抗体または核酸プローブは、生物学的液体または組織中の糖尿病媒介タンパク質を検出するため(抗体を使用して)またはコードするポリヌクレオチドを検出するため(核酸プローブを使用して)に使用され得る。糖尿病媒介タンパク質または核酸プローブと反応性である抗体は、好ましくは、糖尿病媒介タンパク質への結合の検出を可能にする化合物で標識される。検出可能な量の抗原またはポリヌクレオチドを含有する任意の標本が、使用され得る。さらに、特異的タンパク質が、それらのリガンド(例えば、レクチン結合タンパク質へのガレクチン-3の結合)によって選択され得、そして目的のタンパク質の診断および/または精製に有用である。
【0095】
細胞成分が核酸である場合、糖尿病媒介タンパク質特異的プローブとの結合の前に核酸を増幅することが必要であり得る。好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が使用されるが、しかし、他の核酸増幅手順(例えば、リガーゼ連鎖反応、連結活性化転写(LAT)、および核酸配列に基づく増幅(NASBA)が使用され得る。
【0096】
II.糖尿病媒介タンパク質の同定のための方法
インビボの動物移植モデル。本発明は、糖尿病の発症に関連するか、または糖尿病の発症の間に特異的に影響されるタンパク質を検出するインビボのアッセイシステムを提供することにより、糖尿病媒介タンパク質を同定するための方法を特徴とする。本明細書中に記載される本発明のインビボの移植アッセイは、関連するまたは影響を受けるタンパク質の同定を可能にする。
【0097】
本発明の糖尿病媒介タンパク質の同定のための方法において、インシュリン分泌細胞またはインシュリン分泌細胞に成長し得る細胞が、宿主動物に移植される。移植された細胞は、移植と糖尿病の発症との間の時点でレスキューされ、そしてタンパク質発現が決定され、そして移植されていない島細胞および糖尿病を発症していない動物中の相乗移植物とタンパク質発現が比較される。本発明の方法は、糖尿病の発症の間に変化した発現を示すタンパク質を同定することを可能にする。次いで、同定されたタンパク質が単離され、そして防御または有害糖尿病媒介タンパク質としての同定のためにさらに試験される。
【0098】
インシュリン産生細胞に成長し得る細胞として、膵臓島細胞およびβ細胞が挙げられる。移植された細胞は、ヒトを含む目的の任意の種から得ることができる。宿主動物は、好ましくは、移植された細胞が宿主動物中で拒絶されないように、移植される細胞と免疫学的に適合性である動物である。
【0099】
宿主動物は、糖尿病を発症する任意の動物であり得、そして研究に便利である。好ましい宿主動物は、マウス、ラット、およびハムスターであり、ラットおよびマウスが最も好ましい。特に好ましい実施態様において、宿主動物は、糖尿病の発病率の増大のために交配された株(BB−DPラットおよびNODマウスを含む)から選択される。本発明の方法はまた、予め決定された時間に(例えば、特異的抗原への暴露の際に)糖尿病を発症するように操作された宿主動物で使用され得る。例えば、Oldstoneら、APMIS104:689-97(1996):von Herrathら、J.Clin.Invest.98:1324-1331(1996);Morganら、J.Immunol.157:978983(1996)を参照のこと。他の可能性のある宿主動物として、Mus(例えば、マウス)およびRattus(例えば、ラット)、Oryctolagus(例えば、ウサギ)、およびMesocricetus(例えば、ハムスター)、およびCavia(例えば、モルモット)から選択される属に属する動物が挙げられる。一般に、交配および維持が容易である、1kg未満の正常の完全に成長した成体体重を有する哺乳動物が、使用され得る。
【0100】
タンパク質発現を決定するための方法。タンパク質発現は、一次元または二次元ゲル電気泳動およびイムノブロッティングを含む、当該分野で公知の種々に手段によって評価され得る。
【0101】
二次元ゲル電気泳動(2-DGE)は、タンパク質の混合物を分離するための特に有効な方法である(Andersenら、Diabetes44:400-407(1995))。細胞タンパク質抽出物は、ゲル上に載せられ、そして個々のタンパク質は、最初に電荷によって、次いで大きさによって分離される。結果は、それぞれが通常は単一のタンパク質である、1,000〜5,000個程度のスポットの特徴的な写真である。解像度は、ゲルの大きさを大きくすることによって、ならびに放射性標識法、銀染色の使用、および1.5mm以下にゲルの厚さを薄くすることによって感受性を増強することによって改善される。
【0102】
糖尿病媒介タンパク質の単離のための方法。以下の実施例に記載されるように、2Dゲルから回収される単一のタンパク質が、各ペプチドのトリプシン切断パターンおよび正確な分子量を得るために質量スペクトル分析によって同定され得る。次いで、これらの観察された値は、以前に同定されたタンパク質と適合するものが存在するかどうかを決定するために、DNAおよびタンパク質のデータベースを検索するために使用される。同一性は、既知のタンパク質から決定され得るか、または既知のタンパク質に対する高い相同性によって推定され得る。2Dゲル電気泳動が、糖尿病の発症の間の変化した合成を示すタンパク質のスポットを分離および同定するために使用される場合、同定されたタンパク質スポットはゲルから切り出され、そしてペプチドを産生するためにトリプシンで消化される。ペプチドはゲルから回収され、そして質量スペクトル分析(マトリックス補助レーザー吸収/イオン化質量スペクトル分析)(MALDI)に供され、そして得られるMS-プロフィールが、公の配列ベータベース中に見出される全ての配列のコンピューター化されたMS-プロフィールに対して、および適切な配列情報に対して分析される。以前にクローニングされた配列に対するいくらかの適合が得られる場合、対応する遺伝子およびコードされるタンパク質についての情報が集められる。同定された糖尿病媒介タンパク質が以前にクローニングされているタンパク質と適合しない場合は、タンパク質は、当該分野で公知の方法によって微配列決定されて、部分的なアミノ酸配列情報が得られ得る(以下の実施例5を参照のこと)。データベース検索またはアミノ酸配列決定によって得られた結果に基づいて、特異的なまたは縮重プライマーが構築され、そしてラットおよびヒト島ライブラリーをスクリーニングするために使用されるか、またはPCRによる第1鎖cDNAが、対応するcDNA配列の部分的配列をクローニングするために使用される。次いで、得られた配列は、5'-racePCRまたは従来のハイブリダイゼーションスクリーニング技術のいずれかによって完全長のコード領域を得るため、続く組換えタンパク質の発現のために使用される(Karlsenら、Proc.Natl. Acad.Sci.USA 88:8337-8341(1991);Karlsenら、Insulin secretion and pancreaticB-cell research、Flatt,P.R.編、Smith-Gordon、USA;第64章、1〜9頁(1994);Karlsenら、Diabetes44:757-758(1995))。
【0103】
糖尿病媒介タンパク質は、生物学的材料からの精製、組換えDNAの発現を含む、当該分野で公知の種々の方法で単離され得る(上記を参照のこと)。従来の方法の工程は、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、および電気泳動を含む。例えば、糖尿病媒介タンパク質を発現する細胞は、遠心分離によってまたは適切な緩衝液を用いて回収され得、溶解され得、そしてカラムクロマトグラフィー(例えば、DEAE-セルロース、ホスホセルソース、ポリリボシチジル酸アガロース、ヒドロキシアパタイト)、または電気泳動、または免疫沈降によってタンパク質が単離され得る。あるいは、糖尿病媒介タンパク質は、特異的な抗体の使用によって免疫沈降によって単離され得る。
【0104】
III.糖尿病媒介タンパク質トランスジーンを発現するトランスジェニック動物。
【0105】
1つの局面において、本発明は、糖尿病媒介タンパク質をコードする遺伝子を含むトランスジェニック動物、および本発明のトランスジェニック動物の子孫であるトランスジェニック動物を含む。糖尿病媒介タンパク質をコードする遺伝子は、天然に存在するポリヌクレオチド配列、または部分的にもしくは全体が人工のポリヌクレオチド配列(すなわち、コドン配列が天然の遺伝子配列には存在しない)からなり得る。上昇したレベルの本発明の糖尿病媒介遺伝子の発現を有するトランスジェニック動物は、例えば、増強したプロモーター、および/または高コピー数の天然の遺伝子を用いる遺伝子の過剰発現によって得ることができる。トランスジェニック動物はまた、特に、1つ以上の糖尿病媒介タンパク質遺伝子(単数または複数)が除去されている動物とトランスジェニック動物とを交配させることによって産生される、ハイブリッドトランスジェニック動物を含む。
【0106】
本発明のトランスジェニック動物は、糖尿病の発症の際の候補の防御または有害糖尿病媒介タンパク質の効果を決定するためのアッセイを含む、多数の方法において有用である。例えば、候補防御タンパク質のトランスジーンを有するトランスジェニック動物は、糖尿病の発症の際の防御トランスジーンの発現の効果を決定するために有用である。
【0107】
好ましい宿主動物は、マウス、ラット、およびハムスターであり、ラット、およびマウスは、トランスジェニック動物の産生についての多くの知見が存在する点で最も好ましい。他の可能性のある宿主動物として、Mus(例えば、マウス)、Rattus(例えば、ラット)、Oryctolagus(例えば、ウサギ)、Mesocricetus(例えば、ハムスター)、およびCavia(例えば、モルモット)から選択される属に属する動物が挙げられる。一般に、交配および維持が容易である、1kg未満の正常の完全に成長した生体体重を有する哺乳動物が、使用され得る。
【0108】
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物(好ましくは、ラットまたはマウス)は、哺乳動物またはその哺乳動物の祖先に胚または生殖細胞段階に導入された、糖尿病媒介タンパク質(例えば、1つ以上の防御タンパク質または有害タンパク質)をコードする遺伝子を、有核細胞のいくらかまたは全ての中に有する。この「胚段階」は、胎児の胚発生の全ての段階にわたる、時間の概念による任意の時点(例えば、精子または卵子が外来遺伝子を保有する時)であり得る。本明細書中で使用される「トランスジェニック動物」は、その有核細胞の全てまたはいくらかの中に、同種または異種に由来する1つ以上の遺伝子を有する哺乳動物を示す;外来遺伝子を有する細胞が動物の生殖系細胞を含む場合、遺伝子は、動物の子孫に伝達され得る。
【0109】
本発明の遺伝子構築物および方法論は、それらの遺伝的成り立ちにより糖尿病を発症し、そして予想される時間に疾患の症状を示す動物を作成するために使用され得る。好ましい実施態様において、本発明のトランスジェニック哺乳動物は、70±10日で80%の糖尿病の発病率を示し、より好ましくは、60±5日で90%の糖尿病の発病率を示し;最も好ましくは、55±5日で95%の糖尿病の発病率を示し;そしてなおより好ましくは、50±5日で97%の糖尿病の発症率を示す。本発明の動物は、候補の防御または有害糖尿病媒介タンパク質、または糖尿病の発症を予防、増強、または遅延させる化合物の能力を試験するためのアッセイで使用される。
【0110】
本発明の1つの局面において、本発明の遺伝子構築物および方法論が、候補の防御または有害タンパク質をコードするトランスジーンを有する動物を作成するために使用される。トランスジェニック動物は、糖尿病を発症しやすい遺伝的バックグラウンドによって選択され得るか、または予想可能な糖尿病を、短期間に発症する二重トランスジェニック動物であり得る。本発明のこの実施態様において、動物は、疾患の発病率を阻害するかまたは低下させる候補の防御タンパク質の能力を試験するためのアッセイにおいて使用される。関連する局面において、動物は、防御タンパク質の発現を誘導する化合物の能力を試験するため、およびそれにより疾患の発症から動物を防御するためのアッセイにおいて使用される。
【0111】
本発明の1つの局面において、本発明の遺伝子構築物および方法論は、それらの遺伝的成り立ちにより予想される時間内に糖尿病を発症する動物を作成するために使用される。例えば、1つの実施態様において、例えばモルタリンのような有害な糖尿病媒介疾患を発現するトランスジェニック動物が作成される。本発明の動物は、糖尿病の発症を防止するかまたは遅延することのできる試験化合物のアッセイにおいて使用される。1つの実施態様において、コピー数の増大は疾患の発症に必要な時間を短縮する傾向があるので、比較的高いコピー数でトランスジェニック動物中で有害タンパク質遺伝子を含むことが好ましい。
【0112】
さらに、調整が、コピー数を増大させることなく発現のレベルを上昇させるために、増強プロモーターの特定の型の使用に関してなされ得る。コピー数の増大を伴わずに糖尿病媒介タンパク質トランスジーンの発現の増強を提供する特定の型の増強プロモーターは、公知である。増強プロモーターは、構成的または誘導的に作動し得る。
【0113】
本発明はまた、糖尿病または糖尿病関連疾患についての動物モデルを作成するための手段を提供する。本発明のトランスジェニック動物は、糖尿病の可能性のある治療法を開発および試験する方法を提供し、そして最終的にこの疾患の治癒を導く。
【0114】
IV.糖尿病媒介タンパク質の発現をもたらし得る薬物のスクリーニングのためのアッセイ。
【0115】
本発明によって提供されるアッセイ方法は、糖尿病媒介タンパク質の発現をもたらし得る、従って、哺乳動物における糖尿病の発症をもたらし得る化合物をスクリーニングするために有用である。1つ以上の糖尿病媒介タンパク質の発現をもたらし得る薬物をスクリーニングするための1つのモデルは、培養物中の細胞に有利な効果を有すると推測される化合物(アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)の投与である。有用な細胞は、RIN、トランスフェクトされた細胞、または島細胞である。次いで、タンパク質の発現に対する試験化合物の効果は、2Dゲル電気泳動によってアッセイされ得る。
【0116】
別のスクリーニングモデルは、糖尿病の発症の危険性を有する哺乳動物を使用するインビボの方法である。簡潔には、糖尿病の増大した危険性を有する哺乳動物(例えば、糖尿病の傾向があるBBラット、またはNODマウス)が、試験化合物に曝され、そして糖尿病の発症に対する試験化合物への暴露の効果が決定される。
【0117】
糖尿病の発症は、1つ以上の糖尿病媒介タンパク質の発現を決定することによって発症の期間にわたってモニターされ、そして疾患の発病の時間と、疾患の発症の非存在下での発現および時期とを比較することによって比較され得る。1つ以上の糖尿病媒介タンパク質の発現の決定は、糖尿病媒介タンパク質自体、翻訳後の改変産物、および/または糖尿病媒介タンパク質分解産物を含む。1つの実施態様において、糖尿病媒介タンパク質の活性化は、試験サンプル中の糖尿病媒介タンパク質発現のレベルを測定することによって決定される。適切な試験サンプルとして、体液(例えば、血液、尿、または髄液)、またはそれらに由来する液体(例えば、血漿または血清)が挙げられる。特定の実施態様において、試験サンプル中のタンパク質発現のレベルは、ウエスタンブロット分析によって測定される。サンプル中に存在するタンパク質は、ゲル電気泳動によって分画され、メンブレンに移され、そしてタンパク質(単数または複数)に特異的な標識抗体でプローブされる。別の特異的な実施態様において、糖尿病媒介タンパク質の発現レベルは、ノーザンブロット分析によって測定される。ポリアデニル化[poly(A)+]mRNAが試験サンプルから単離される。mRNAは、電気泳動によって分画され、そしてメンブレンに移される。メンブレンは、標識cDNAでブローブされる。別の実施態様において、タンパク質発現は、発現されたmRNAに対して適用された定量的PCRによって測定される。
【0118】
より特定の実施態様において、糖尿病を発症し得る哺乳動物は、糖尿病の発病率を増大させるために交配された哺乳動物株から選択される哺乳動物である。好ましくは、哺乳動物は、69±25日で75%の糖尿病の発病の機会を示す株から選択される。より好ましくは、哺乳動物は、予想される時間内に糖尿病の高い発病率を示すように操作されたトランスジェニック哺乳動物である、特定の実施態様において、トランスジェニック哺乳動物は、70±10日で80%の糖尿病の発病率を示し;より好ましくは、60±5日で90%の糖尿病の発病率を示し;最も好ましくは、55±5日で95%の糖尿病の発病率を示し;そしてなおより好ましくは、50±5日で97%の糖尿病の発症率を示す。
【0119】
なお別の局面において、本発明は、内因性の有害タンパク質の発現を抑制または減少させ得る化合物を同定するための方法、および内因性の有害タンパク質の発現を抑制または減少させ得る化合物の治療有効量を投与することによって糖尿病を予防および/または処置する方法を提供する。
【0120】
本発明の糖尿病媒介タンパク質はまた、糖尿病媒介タンパク質活性を調節する試薬をスクリーニングするために有用である。従って、1つの局面において、本発明は、糖尿病媒介タンパク質を発現する細胞を試験試薬とともにインキュベートし、そして糖尿病媒介タンパク質の合成、リン酸化、機能、または活性に対する試験試薬の効果を測定することにより、糖尿病媒介タンパク質の活性を調節する試薬を同定する方法を特徴とする。糖尿病媒介タンパク質の活性化がリン酸化を介する場合、試験試薬は、糖尿病媒介タンパク質と、γ標識-ATPまたは[35S]メチオニンのいずれかとともにインキュベートされ、そしてリン酸化の速度が決定される。別の実施態様において、試験試薬は、糖尿病媒介タンパク質ポリヌクレオチド発現ベクターでトランスフェクトされた細胞とともにインキュベートされ、そして糖尿病媒介タンパク質の転写に対する試験試薬の効果がノーザンブロット分析によって測定される。さらなる実施態様において、糖尿病媒介タンパク質の合成に対する試験試薬の効果が、糖尿病媒介タンパク質に対する抗体を使用するウェスタンブロット分析によって測定される。なお別の実施態様において、糖尿病媒介タンパク質活性に対する試薬の効果が、糖尿病媒介タンパク質を、試験試薬、[32P]-ATP、および糖尿病媒介タンパク質経路の基質とともにインキュベートすることによって測定される。全ての実験は、タンパク質発現の調節を決定するために、通常の[35S]メチオニン標識した細胞と比較される。基質のリン酸化の速度は、当該分野で公知の方法によって決定される。
【0121】
用語、糖尿病媒介タンパク質活性の調節は、アゴニストおよびアンタゴニストを含む。本発明は、有害タンパク質の活性を阻害する試薬をスクリーニングするために特に有用である。このような試薬は、糖尿病の処置または予防に有用である。
【0122】
V.治療適用
本発明は、治療有効量の防御糖尿病媒介タンパク質を投与することによる、哺乳動物において糖尿病を予防および/または処置するための方法を提供する。好ましくは、哺乳動物は、糖尿病の危険性を有するヒト被験体である。
【0123】
同定した糖尿病媒介タンパク質および関連する糖尿病治療薬を使用する薬物スクリーニング。本発明の薬物スクリーニングアッセイにおいて、同定した防御または有害糖尿病媒介タンパク質が、それらの発現をもたらし得る試験化合物を同定するために使用される。そのように同定された試験化合物は、危険性を有する被験体における糖尿病の発病を妨げる、緩和する、または遅延させるための候補治療薬である。
【0124】
糖尿病媒介タンパク質の発現をもたらしる試験治療化合物は、以下であり得るがこれらに限定されない:核酸、化合物、タンパク質、エレメント、脂質、抗体、糖類、放射性同位元素、炭水化物、画像化剤、リポタンパク質、糖タンパク質、酵素、検出可能なプローブ、および抗体もしくはそのフラグメント、またはそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つ。これらは、本明細書中に記載のように、抗体を標識するために検出可能に標識され得る。このような標識として以下が挙げられるが、これらに限定されない:酵素標識、放射性同位元素または放射活性化合物またはエレメント、蛍光化合物または金属、化学発光化合物および生物発光化合物。
【0125】
治療化合物は、防御タンパク質の発現を誘導または増強し、その結果、糖尿病の発症の危険性を有する被験体において疾患の発症を予防または遅延させるその能力によって、本発明の薬物スクリーニングアッセイにおいて同定される。候補の治療化合物がまた、有害タンパク質の発現を妨げるかまたは減少させ、その結果、糖尿病の発症の危険性を有する被験体において疾患の発症を妨げるかまたは遅延させるその能力によって、同定される。
【0126】
治療化合物としての治療用核酸は、標的細胞に対して少なくとも1つの以下の治療効果を有するが、これらに限定されない:有害タンパク質のDNA配列の転写の阻害;有害タンパク質のRNA配列の翻訳の阻害;有害タンパク質に対応するRNAまたはDNA配列の逆転写の阻害;タンパク質の翻訳後修飾の阻害;防御タンパク質に対応するDNA配列の転写の誘導;防御タンパク質に対応するRNA配列の翻訳の誘導;防御タンパク質に対応するRNAまたはDNA配列の逆転写の誘導;タンパク質または酵素としての核酸の翻訳;ならびに治療用核酸の構成的または一過性の発現のための標的細胞の染色体への核酸の組み込み。
【0127】
治療用核酸の治療効果は、以下を含み得るが、これらに限定されない:アンチセンスRNAまたはDNAのような、有害遺伝子をオフにするかまたはその発現をプロセシングする;ウイルスの複製または合成を阻害する;治療用タンパク質または対応する欠損タンパク質をコードする異種核酸を発現するような遺伝子治療;hnRNA、mRNA、tRNA、またはrRNAのようなRNAの欠損または過少発現を改変する;薬物、プロドラッグ、または糖尿病媒介タンパク質もしくはペプチドを発現する病理学的細胞もしくは正常細胞中の薬物もしくはプロドラッグのような化合物を生成する酵素をコードする;ならびに任意の他の公知の治療効果。
【0128】
防御糖尿病媒介タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供することによる遺伝子治療もまた、本発明に含まれる。
【0129】
本発明はさらに、インビボでの有害糖尿病媒介タンパク質の発現を阻害するポリヌクレオチドの治療有効量を投与するよって糖尿病を予防するための方法を含む。
【0130】
本発明の治療方法において、治療化合物は、ヒト患者に慢性的または急性的に投与される。必要に応じて、防御タンパク質が、治療化合物とは異なる経路で作用する、有効量の化合物と組み合わせて慢性的に投与される。本発明の治療化合物は、糖尿病の他の処置または糖尿病の管理方法と併用され得る。
【0131】
糖尿病を処置または予防するための治療化合物の治療処方物は、任意の生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences,第16版、Oslo,A.編、1980)を所望の純度で有する化合物と混合されることによって、凍結乾燥された塊または水溶液の形態での貯蔵のために調製される。受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、そして以下を含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンのようなアミノ酸;一単糖、二単糖、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート化剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成カウンターイオン;ならびに/あるいはTween、Pluronics、またはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤。化合物はまた、種々の非タンパク質ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレン)の1つに適切に、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791、192号、または同第4,179,337号に示される様式で連結される。処方物中で使用されるキャリアの量は、約1〜99重量%、好ましくは、約80〜99重量%、必要に応じて90〜99重量%の間の範囲であり得る。
【0132】
インビボでの投与に使用される治療化合物は、滅菌でなければならない。これは、当該分野で公知の方法によって(例えば、凍結乾燥および再構成前のまたは後の滅菌の濾過メンブレンを通す濾過によって)容易に達成される。治療化合物は通常、凍結乾燥形態でまたは溶液中におかれる。
【0133】
治療組成物は一般に、滅菌の接触穴を有する容器(例えば、静脈内溶液バッグ、またはストッパー付きの刺し通すことができる皮下注射針のバイアル)内に入れられる。
【0134】
慢性の様式での治療化合物の投与は、例えば、以下の経路の1つである:静脈内、腹膜内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内、または病変内経路による注入または注射、経口、あるいはいかに記載されるような徐放システムを使用して。治療化合物は、クリアランス速度が十分に遅い場合は注射または周期的な大量瞬時投与によって連続的に投与されるか、あるいは血流またはリンパへの投与によって投与される。好ましい投与の態様は、目的の組織(β細胞または膵臓細胞)に対して指向され、その結果、供給源に対して分子を標的化し、そして化合物の副作用を最小にする。
【0135】
除放調製物の適切な例として、タンパク質を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられる。このマトリックスは、成形された粒子(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル)の形態である。徐放マトリックスの例として以下が挙げられる:ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)(Langerら、J. Biomed.Mater.Res.15:167-277(1981)およびLangerChem.Tech.12:98-105(1982)に記載される)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L-グルタミン酸およびγ-エチル-L-グルタミン酸塩のコポリマー(Sidmanら、Biopolymers 22:547-556(1983))、非分解性エチレンビニルアセテート(Langerら、前出(1981))、LupronDepotTMのような分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマーおよびロイプロリド酢酸から構成される注射可能なマイクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸(EP133,988)。
【0136】
治療化合物はまた、調製されたマイクロカプセル中に、例えば、以下によって捕捉され得る:コアセルベーション技術または種間(interracial)重合(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル、およびポリ-[メチルメタクリレート]マイクロカプセル)によって、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)中、またはマイクロエマルジョン中。このような技術は、Remington'sPharmaceutical Sciences(前出)に開示されている。
【0137】
エチレン−ビニルアセテートおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーが100日以上にわたって分子を放出し得るが、特定のヒドロゲルはより短期間に分子を放出する。カプセル化された分子が長期間体内に維持される場合、それらは、37℃にて湿気に曝された結果、変性または凝集し得、生物学的活性の欠失および免疫原性の可能な変化を生じる。合理的なストラテジーは、例えば、適切な添加剤の使用および特定のポリマーマトリックス組成物の開発により、関与するメカニズムに依存して安定化のために工夫され得る。
【0138】
徐放組成物はまた、リポソームに捕捉された治療化合物(単数または複数)を含む。治療化合物(単数または複数)を含むリポソームは、それ自体が公知である方法によって調製される:DE 3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688-3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4030-4034(1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;日本国特許出願第83-118008号;米国特許第4,485,045号、および同第4,544,545号;ならびにEP102,324。通常、リポソームは、小さい(約200〜800オングストローム)単層型であり、ここで脂質含量は、約30mol%コレステロールより大きく、選択された比率が、適切なアゴニスト治療のために調節される。適切な徐放処方物の特定の例は、EP647,449にある。
【0139】
治療的に使用される治療化合物の有効量は、例えば、治療目的、投与経路、および患者の状態に依存する。従って、医師は、適切な治療効果を得るために必要な場合は、投与量を滴定することおよび投与経路を改変することが必要である。
【0140】
2つの治療化合物がともに投与される場合、これらは、同じ経路で、そして同じ処方物中で投与される必要はない。しかし、これらは、所望される場合は、1つの処方物中で組み合わされ得る。両方の治療化合物が、それぞれの有効量で、またはそれぞれ最適に満たないが組み合わされた場合は効果である量で、患者に投与され得る。1つの実施態様において、両方の治療化合物の投与は、使用されるタンパク質の型に依存して、例えば、静脈内または皮下手段を使用して注射による。代表的には、医師は、投与量が糖尿病の処置または予防について所望の効果を達成する量に到達するまで、治療化合物(単数または複数)を投与する。例えば、この量は、糖尿病の症状を緩和し、そして正常血糖を回復する量である。この治療の進行は、従来のアッセイによって容易にモニターされる。
【0141】
本発明のこの局面の特異的な実施態様において、治療化合物は、gal-3をコードする防御糖尿病媒介遺伝子および/またはgal-3の翻訳後改変産物である。代表的な、単独で使用される治療化合物の1日の投与量は、上記の因子に依存して患者の体重あたり約1μg/kg/日〜100mg/kg/日の範囲またはそれ以上であり、好ましくは約10μg/kg/日〜50mg/kg/日である。
【0142】
遺伝子治療。本発明はまた、防御ポリペプチドによって改善されるかまたは緩和される糖尿病および糖尿病関連障害の処置のための遺伝子治療を提供する。このような治療は、インシュリン産生細胞への防御ポリヌクレオチドの導入によってその治療効果を達成する。防御ポリヌクレオチドの送達は、キメラウイルスのような組換え発現ベクター、またはコロイド状分散システムを使用して達成され得る。配列の治療的送達には、標的化リポソームの使用が特に好ましい。
【0143】
本明細書中で教示される遺伝子治療のために利用され得る種々のウイルスベクターとして、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、または好ましくは、レトロウイルスのようなRNAウイルスが挙げられる。好ましくは、インビトロの細胞の形質転換のためのレトロウイルスベクターは、マウスまたはトリのレトロウイルスであるアデノウイルスの誘導体である。他のトランスフェクション法と比較してアデノウイルス形質導入の利点は、高いトランスフェクション効率および全島をトランスフェクトする能力である。さらに、発現のレベルが、使用されるウイルスの濃度および形質導入時間によって調節され得る。アデノウイルス媒介発現は一過性であるが、島内での発現は、少なくとも数週間の間安定である(Beckerら、J.Biol.Chem.269:21234(1994);Korbuttら、TransplantationProc.27:3414(1995))。
【0144】
哺乳動物へのトランスジーンの安定な組み込みのために、レトロウイルスベクターが好ましい。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腫瘍ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)。好ましくは、被験体がヒトである場合、gibbonサル白血病ウイルス(GaLV)のようなベクターが利用される。多数のさらなるレトロウイルスベクターが、複数の遺伝子を取り込み得る。これらのベクターの全てが、選択マーカーの遺伝子を導入または取り込み得、その結果、形質導入した細胞が同定および作成され得る。特定の標的細胞に対するレセプターのリガンドをコードする別の遺伝子とともにウイルスベクター中に目的の糖尿病媒介タンパク質を挿入することによって、例えば、ベクターは、ここで標的特異的になる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質を付着させることによって標的特異的にされ得る。好ましい標的化は、レトロウイルスベクターを標的化する抗体を使用して達成される。当業者は、レトロウイルスゲノムに挿入され得るかまたはウイルスエンベロープに付着され得る特異的なポリヌクレオチド配列が、防御ポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にするか、または過度の実験を行うことなく容易に確認し得る。
【0145】
組換えレトロウイルスが欠損であるので、これらは、感染性ウイルス粒子を産生するために補助を必要とする。この補助は、例えば、LTR中の調節配列の制御下にレトロウイルスの構造遺伝子の全てをコードするプラスミドを含むヘルパー細胞株を使用することによって、提供され得る。これらのプラスミドは、キャプシド化のためにRNA転写物を認識するパッケージング機構を可能にするヌクレオチド配列を欠いている。パッケージングシグナルの欠失を有するヘルパー細胞株として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:例えば、ψ2、PA317、およびPA12。これらの細胞株は空のビリオンを産生する。なぜなら、ゲノムがパッケージングされないからである。レトロウイルスベクターは、パッケージングシグナルは完全であるが、構造遺伝子は他の目的の遺伝子と置き換えられているこのような細胞に導入される場合、ベクターはパッケージングされ得、そしてベクタービリオンが産生される。
【0146】
あるいは、NIH 3T3または他の組織培養細胞は、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによってレトロウイルス構造遺伝子gag、pol、およびenvをコードするプラスミドで直接トランスフェクトされ得る。次いで、これらの細胞は、目的の遺伝子を含有するベクタープラスミドでトランスフェクトされる。得られる細胞は、培養培地にレトロウイルスベクターを放出する。
【0147】
防御ポリヌクレオチドの別の標的化された送達システムは、コロイド状分散システムである。コロイド状分散システムとして、マクロ分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質に基づくシステムが挙げられる。本発明の好ましいコロイド状システムは、リポソームである。リポソームはインビトロおよびインビボでの送達ビヒクルとして有用な、人工的な膜ビヒクルである。0.2〜4.0μmの大きさの範囲である大きな単層ベシクル(LW)が、大きなマクロ分子を含有する水性緩衝液の実質的な割合をカプセル化し得る。RNA、DNA、および完全なビリオンは、水溶性の内部にカプセル化され得、そして生物学的に活性な形態で細胞に送達され得る(Fraleyら、TrendsBiochem.Sci.6:77(1981))。哺乳動物細胞に加えて、リポソームは、植物、酵母、および細菌細胞中でポリヌクレオチドを送達するために使用されている。リポソームが有効な遺伝子送達ビヒクルであるために、以下の特性が存在するべきである:(1)それらの生物学的活性を損傷することなく、高い効率で目的の遺伝子をカプセル化する;(2)非標的細胞と比較して、標的細胞に対する、優先的および実質的な結合;(3)高い効率で標的細胞の細胞質にベシクルの水溶性内容物を送達する;および(4)遺伝情報の迅速および効果的な発現(Manningら、Biotechniques6:682(1988))。
【0148】
リポソームの組成物は、通常、リン脂質の組み合わせであり、通常は、ステロール(特に、コレステロール)と組み合わせた、特に、高い相転移温度のリン脂質の組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質もまた使用され得る。リポソームの生理学的特性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0149】
リポソームの産生に有用な脂質の例として、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジル-グリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシド)が挙げられる。脂質部分が14〜18個の炭素原子(特に、16〜18個の炭素原子)を含み、そして飽和している、ジアシルホスファチジルグリセロールが特に有用である。例示的なリン脂質として、卵のホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidylcholine)およびジステロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0150】
リポソームの標的化は、構造的および機械的因子に基づいて分類され得る。構造的分類は、選択性(例えば、器官特異性、細胞特異性、および細胞小器官特異性)のレベルに基づく。機械的標的化は、それが受動的または能動的のいずれであるかに基づいて、区別され得る。受動的な標的化は、シヌソイド毛細血管を含む器官の網内皮系(RES)の細胞に分布するリポソームの天然の傾向を利用する。一方、能動的な標的化は、特異的なリガンド(例えば、モノクローナル抗体、糖、糖脂質、またはタンパク質)へのリポソームのカップリング、あるいは天然に生じる局在部位よりも、器官および細胞型に対する標的化を達成するためのリポソームの組成物または大きさを変化させることによる、リポソームの変更を含む。
【0151】
標的化送達系の表面は、種々の方法において改変され得る。リポソーム標的化送達系の場合、脂質の群は、リポソーム二重層と安定に会合した標的リガンドを維持するために、リポソームの脂質二重層に取り込まれ得る。種々の架橋基が、標的リガンドへの脂質側鎖の連結のために使用され得る。
【0152】
治療化合物の生物学的活性が、二次的な治療化合物の合成を増強するので、このような二次的なタンパク質の発現に関連する障害への適用を含む、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを使用する種々の適用が存在する。
【0153】
本発明は、有害糖尿病媒介遺伝子の発現または活性の調節により改善または緩和される、糖尿病および糖尿病関連障害の処置のための方法を提供する。本発明のこの局面の1つの特異的な実施態様において、有害糖尿病媒介遺伝子は、モルタリンをコードする。用語「調節」は、モルタリンの発現の抑制を想定する。
【0154】
有害タンパク質の発現の抑制(例えば、モルタリンの抑制)が所望される場合、翻訳レベルでモルタリンの発現を妨害する核酸配列が、使用され得る。このアプローチは、例えば、アンチセンス核酸、リボザイム、または特異的なモルタリンmRNAの転写もしくは翻訳をブロックする三部(triplex)試薬を、そのmRNAをアンチセンス核酸もしくは三部試薬でマスクするか、またはリボザイムでそれを切断するかのいずれかによって利用し得る。
【0155】
アンチセンス核酸は、特定のmRNA分子の少なくとも一部に相補的である、DNAまたはRNA分子である(WeintraubScientific American 262:40(1990))。細胞中で、アンチセンス核酸は対応するmRNAにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する。アンチセンス核酸は、mRNAの翻訳を妨害する。なぜなら、細胞は、二本鎖であるmRNAを翻訳しないからである。約15ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが好ましい。なぜなら、これらは、容易に合成され、そして標的のモルタリン産生細胞に導入された場合により長い分子よりも問題を生じる可能性が少ないからである。
【0156】
区画(stall)転写のためのオリゴヌクレオチドの使用は、三部ストラテジーとして公知である。なぜなら、オリゴマーが二重らせんのDNAのまわりに撒きついて三本鎖ヘリックスを形成するからである。従って、これらの三部化合物は、選択された遺伝子上の独特の部位を認識するように設計され得る(Maherら、AntisenceRes. and Dev.1:227(1991);Helene、Anticancer Drug Design、6:569(1991))。
【0157】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼに類似な様式で、他の1本鎖RNAを特異的に切断するための能力を保有する、RNA分子である。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の改変を介して、RNA分子中の特異的なヌクレオチド配列を認識し、そしてそれを切断する分子を操作することが可能である(CechJ. Amer.Med.Assn. 260:3030(1988))。このアプローチの主要な利点は、それらが配列特異的であるので、特定の配列を有するmRNAのみが不活性化されることである。
【0158】
リボザイムの2つの基本的な型、すなわち、テトラヒメナ型(HasselhoffNature 334:585(1988))および「ハンマーヘッド」型が存在する。テトラヒメナ型リボザイムは、4塩基長である配列を認識し、一方「ハンマーヘッド」型リボザイムは、11〜18塩基長の塩基配列を認識する。認識配列が長くなるほど、配列が標的mRNA種に排他的に生じる可能性は高くなる。その結果として、ハンマーヘッド型リボザイムは、特定のmRNA種を不活性化するために、テトラヒメナ型リボザイムよりも好ましく、そして18塩基の認識配列は、より短い認識配列よりも好ましい。
【0159】
抗モルタリン抗体、またはモルタリンアンチセンスポリヌクレオチドのいずれかで、モルタリン作用をブロックすることは、糖尿病を遅延または改善するために有用であり得る。防御的なポリヌクレオチドを送達するための上記の方法は、望ましい場合、モルタリンの発現および/または活性を特異的にブロックするためのモルタリンアンタゴニストを送達するために、十分に適用可能である。モルタリンアンタゴニストは、モルタリン抗体、アンチセンスポリヌクレオチド配列、またはモルタリンの発現を抑制もしくは阻害する化合物であり得る。
糖尿病媒介性タンパク質の同定および特徴づけ
高い分離能の二次元(2D)ゲル電気泳動が、約2500個のタンパク質スポットを分離するために使用され得、各スポットは分子量およびpIに従うタンパク質に相当する。81%の定性再現性を伴って、1373個のWFラットの島タンパク質のコンピューター化された2-Dゲルデータベースが、最近、報告されている(AndersenらDiabetes 44:400-407(1995))(図1A〜1B)。IL-1βは、インビトロでインキュベートされたBB-DP島細胞において、82個のタンパク質の発現の変化を誘導することが示されている。糖尿病の発病後に動物から採取されたBB-DP島のインビトロインキュベーションは、IL-1βに応答することが決定された82個のタンパク質のうちの33個が、糖尿病の発病時に、発現の有意な変化を示すことを示す。
【0160】
2Dゲル分析、およびペプチド配列決定、または質量分析解析の結果に基づいて、いくつかの候補糖尿病媒介性タンパク質が同定されて(表1)、そしてラットおよびヒトの島細胞からクローン化されており、iNOS、モルタリン、およびガレクチン-3を含む(MadsenらInsulin secretion and pancreatic B cell research、P.R.FlattおよびS.Lenzen編、Smith-Gordon、USA、61-68頁(1994))。マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)は、アデノウイルス媒介性の遺伝子移入および発現を使用して、β細胞および全ランゲルハンス島にトランスフェクトされている。トランスフェクションは、安定なまたは一時的にトランスフェクトされた細胞の生成を含む。
【0161】
トランスフェクション、サブクローニング、およびCMVまたはインスリンプロモーターの制御下で、目的のタンパク質のコード領域またはアンチセンス画分を発現する安定なRINクローンの樹立後、目的の糖尿病媒介性タンパク質は、機能的に特徴づけられる。予備的な結果は、RIN細胞における100%の形質導入、および単離された島における70%までの形質導入を示す。最初に、トランスフェクトされた細胞におけるタンパク質の増加または減少した発現が、NO生成、インスリン分泌、および/または細胞傷害性の測定によって、インビトロで特徴づけられる。さらに、細胞周期およびミトコンドリア活性は、FACS分析(Mandrup-PoulsenらDiabetes/Metabolism Reviews 9:295-309(1993))によって、および多重PCR(Nerupら Anales EspanolesPediatria 58:40-41(1994))により特徴づけられる遺伝子発現の半定量的分析によって、決定され得る。さらに、タンパク質の過剰発現または過小発現の、ならびに翻訳後修飾の二次的な細胞影響は、トランスフェクトされた細胞の2Dゲル電気泳動によって特徴づけられ得る。この分析は、タンパク質の発現パターンにおけるIL-1β誘導性の変化における一次的な影響と、二次的な影響との間で区別がなされることを許容する。
【0162】
島細胞におけるIL-1β誘導性の変化を確立するために、NO生成およびインスリン放出を、IL-1β曝露、およびIL-1曝露から生じるタンパク質の変化を検出するための高い分離能の二次元ゲル電気泳動の後、インビトロでBB-DPのランゲルハンス島において測定した(実施例2)。コントロールの島におけるNO生成およびインスリン放出は、WF島において観察されたものに類似した。IL-1βは、NO生成を4.4倍、およびインスリン放出を3.4倍、阻害した。2Dゲル分析は、IL-1βが82個のタンパク質の発現を変化させたことを示し−22個のタンパク質がアップレギュレートされ、および60個のタンパク質がダウンレギュレートされた。
【0163】
高い分離能の2DGEをまた使用して、30日齢のBB-DPラットに移植されたBB-DP島同族移植片における、タンパク質の変化を検出した(実施例3)。新しく糖尿病を発病したBB-DPラットからのBB-DP島同族移植片において、これらの82個のタンパク質のうち15個が発現のレベルを変化することが見出されたが、WF島同族移植片においては見出されなかった(実施例4)。
【0164】
インビトロでのタンパク質発現におけるIL-1β誘導性の変化を、BB-DP島同族移植片中の疾患発生のプロセスにおける(実施例4)、またはBB-DP島同種移植片拒絶における(実施例6)、タンパク質変化に比較した。新しく糖尿病を発病したBB-DPラットからのBB-DP島同族移植片において、これらの82個のタンパク質のうち15個が発現のレベルを変化することが見出されたが、WF島同族移植片においては見出されなかった。
【0165】
同族移植された島における糖尿病の発病を伴って、変化した発現を示すタンパク質を、さらに特徴づけした(実施例5)。変化したタンパク質のスポットのうちの1つが、アミノ酸配列決定により、熱ショック70タンパク質(モルタリン)に高い相同性を有することが同定された。熱ショック70タンパク質は、核周辺から細胞質領域へのこの構成的に発現されるタンパク質のトランスロケーション後の、細胞死およびアポトーシスに関与することが実証されている(WadhwaらJ.Biol.Chem. 268:6615および268:22239(1993))。アミノ酸配列に基づいて、モルタリンcDNAは、糖尿病発症におけるその関与のさらなる特徴づけのために、ラットおよびヒトの島からクローン化された。CMVプロモーター下での、ラットインスリノーマ(RIN)β細胞におけるモルタリンの過剰発現は、β細胞に致死的であった。
【0166】
別の糖尿病媒介性タンパク質は、ガレクチン-3として同定された。ガレクチン-3(gal-3)は、2Dゲルにおいて、スポット1S(2回リン酸化された)、スポット16(1回リン酸化された)、およびスポット19(リン酸化されなかった)として同定された(AndersenらDiabetes 44:400-407(1995))(実施例5)。gal-3は、島発生およびアポトーシスの阻害に関与するタンパク質である。ヌクレオチド配列を用いて、gal-3は、ラットおよびヒトの島からクローン化され、サブクローン化され、そして安定なクローンの選択後、RIN細胞において発現された。gal-3を発現するRIN細胞は、増加した代謝活性および増殖速度を示し、サイトカインのネガティブな影響に対してより耐性になった。gal-3発現のインビボでの影響を、200の新生児の島を、30日齢の糖尿病傾向のBio-Breedingラット(BB-DP)に移植することによって研究した(実施例8)。
【0167】
NIGMS(National Institute of GeneralMedical Science)のヒト/ラット体細胞ハイブリッドマッピングパネル番号2、およびgal-3遺伝子の第2イントロンからのプライマーを用いるさらなる研究は、gal-3を第14染色体にマップした。同じプライマーを用いて、P1クローンが、GenomeSystems,Inc.から得られ、FISHについて使用した。48の測定で得られた最初のFISHの結果は、14q13領域に局在化された6.2%、14q21領域に局在化された54.2%、および14q22領域に局在化された39.6%を示した。これは、14q21.3領域における末端の位置を示す。
【0168】
誘導性の一酸化窒素シンターゼ(iNOS)がクローン化された(KarlsenらDiabetes 44:753(1995))。iNOS遺伝子は、マウス第11染色体にマップされ、これはidd4領域の真ん中(糖尿病傾向のNODマウスにおける糖尿病連鎖領域として同定されている領域(GerlingらMammalian Genome 5:318(1994))にある。線維芽細胞において組換えタンパク質として発現された場合、組換えiNOSが酵素的に活性であることが見出された。
【0169】
マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)は、2Dゲル分析によって、ダウンレギュレートされるタンパク質として同定された。MnSODの発現は、アデノウイルス形質導入および移植後、インビトロおよびインビボでβ細胞および島細胞において、さらに特徴づけされた。ミトコンドリアイソクエン酸(isocitate)デヒドロゲナーゼを糖尿病媒介性タンパク質として同定した。
【0170】
同種移植片拒絶と関連するタンパク質発現における変化がまた、測定された。30日齢のWKラットへ移植された新生児のBB-DP島細胞は、12日後に回収され、そしてタンパク質の発現が測定された(実施例6)。WKラットにおけるBB-DP島同種移植片において、82個のタンパク質のうちの9個が発現のレベルを変化したことが見出されたが、WF島同族移植片においては見出されなかった。
【0171】
同族移植されたBB-DP島および同種移植されたBB-DP島の両方が、インビトロでBB-DP島のIL-1曝露の間、発現レベルを変化することが見出されたタンパク質に関して、移植されなかったBB-DP島と比較された。移植手順によって誘導されるタンパク質変化について制御するために、200の新生児のWF島が、30日齢のWFラットに移植された。コロニーにおいておよび同族移植されたBB-DPラットにおいて、糖尿病の発病の平均時間に対応する、移植後48日目に、移植片は回収された。IL-1インキュベーションの間に変化されることが以前に見出された105個のタンパク質に関して、WFコントロール島との比較について記載されたように、移植片は、プロセスおよび分析された。これは、IL-1および島同族移植の両方によって誘導性のタンパク質の変化を同定するために、ならびに拒絶特異的タンパク質を同定するためになされた。
【0172】
糖尿病病因論におけるこれらのタンパク質の潜在的な役割をさらに決定するために、ならびに治療的化合物、および治療的化合物の発現を誘導する化合物を同定するために、候補タンパク質をコードする遺伝子を保有し、そして組織特異的プロモーター下で候補タンパク質を発現し得る、トランスジェニック動物が作製される。本発明のトランスジェニック動物は、インスリンプロモーター、アミリンプロモーター、CMVプロモーター、またはHLAプロモーターのような特異的なプロモーター下で、候補タンパク質を発現する。
【0173】
最初に、ベクター誘導性の毒性の不在下での、アデノウイルス媒介性の、ランゲルハンス島への遺伝子移入について、至適な条件を決定するための研究が行われた。実施例Xに記載されるように、島のアデノウイルス媒介性の形質導入は、用量依存性の効率の良い遺伝子移入を生じ、毒性の不在下で、導入遺伝子を安定に発現した。
【0174】

実施例
以下の実施例は、本発明の、キメラ遺伝子、トランスジェニックマウス、およびアッセイをどのように作製しそして使用するのかの完全な開示および説明を、当業者に提供するために記載され、そして本発明者らが、本発明者らの発明であると考える範囲を制限することを意図しない。使用される数に関して(例えば、量、温度など)正確性を確実するために努力がなされたが、いくつかの実験誤差が考慮されるべきであり、偏差は考慮されるべきである。他に記載しない限り、部は重量による割合であり、分子量は、量平均分子量であり、温度は摂氏においてであり、圧力は大気でまたは大気の近くである。
【実施例】
【0175】
実施例1。材料および方法
試薬。ケタミンをPark-Davis(Barcelona、Spain)から、キシラジンをBayer(Leverkusen、Germany)から、およびTemgesic(登録商標)をReckittand Colemann(Hull、UK)から購入した。RPMI 1640、Hanks平衡化塩溶液(HBSS)、およびDMEMを、Gibco、Paisley、Scotlandから購入した。RPMI1640は、11mmol D-グルコースを含み、20mM HEPES緩衝液、100,000IU/lペニシリン、および100mg/l ストレプトマイシンが補充された。真正の組換えヒトIL-1βは、NovoNordisk Ltd.(Bagsvaerd、Denmark)から提供され、400 U/ngの比活性を有した。
【0176】
使用した他の試薬:2-メルカプトエタノール、ウシ血清アルブミン(BSA)、TrisHCl、Tris塩基、グリシン、(Sigma、St.Louis、USA);トリクロロ酢酸(TCA)、リン酸、NaOH、グリセロール、n-ブタノール、ブロモフェノールブルー、ニトロプルシドナトリウム(SNP)、H3PO4、およびNaNO2(Merck、Darmstadt、Germany);フィルター類(HAWP0.25mmの孔サイズ)(Millipore、Boston、USA);RNAse A、DNAse I(Worthington、Freehold、NJ、USA);[35S]-メチオニン(SJ204、比活性:>1.000Ci/mmol、0.1% 2-メルカプトエタノールを含有する)、Amplify(登録商標)(AmershamInternational、Amersham、UK);尿素(超純粋)(Schwarz/Mann、Cambridge、MA、USA);アクリルアミド、ビスアクリルアミド、TEMED、過硫酸アンモニウム(BioRad、Richmond、CA、USA);両性電解質類:pH5〜7、pH3.5〜10、pH7〜9、pH8〜9.5(Pharmacia、Uppsala、Sweden);NonidentP-40(BDH、Poole、UK);両性電解質類:pH5〜7およびドデシル硫酸ナトリウム(Serve、Heidelberg、Germany);アガロース(Litex、Copenhagen、Denmark);エタノール(無水96%)(DanishDistillers、Aalborg、Denmark);メタノール(Prolabo、Brione Le Blanc、France);酢酸(工業用、99% 氷状)(Bie& Berntsen、Arhus、Denmark)およびX線フィルム(Curix RP-2)(AGFA)。
【0177】
動物。30(28〜32)日齢のBB/Wor/Mol-BB2(BB-DP)ラット、WistarFurth(WF)ラットおよびWistar Kyoto(WK)ラットを、Mollegarden、Ll、Skensved、Denmarkから購入した。Mollegardenにおいて、およびStenoDiabetes Center/Hagedorn Research Institute(Gentofte、Denmark)の動物施設において、BB-DPラットは、特定の病原体がいない環境において、別々に飼育された。全てのラットは、移植の5日前から屠殺されるまで、光(午前6:00〜午後6:00までの照明)、湿度(60〜70%)、および温度(20〜22℃)の制御された条件下、飼育された。ラットは、標準的なラットの食事(Altromin、Chr.PetersenA/S、Ringsted、Denmark)、および水道水への自由な接近を与えられた。4〜5日齢のBB-DPラットおよびWFラットを、島単離の日の午前中にMollegardenにて集め、そして動物輸送ボックスにおいて輸送した。
【0178】
移植手順および移植片回収。新生児の島を、以前に記載されるように(KorsgrenらJ.Clin.Invest. 75:509-514(1990))、滅菌条件下で28〜32日齢のレシピエントラットの腎臓被膜下に移植した。糖尿病発病率は、雄性および雌性のBB-DPマウスにおいて同様であったので(PriesらFrontiers in Diabetes Research:8:19-24(Shafrir,E.編)、Smith-Gordon、London(1991))、両方の性別を、等しく使用した。任意の性関連の不適合性に起因する移植片拒絶の潜在的な危険性を減少するために、雄性の島を、雄性レシピエントに移植し、および雌性の島を、雌性レシピエントに移植した(SteinerらElectrophoresis 16:1969-1976(1995))。200(範囲:187〜215)の島を、10ml Transpferpettor(Brand、Germany)ピペットを使用して、手で集めた。島を沈殿させ、そして可能な限り多くの上清を、1〜2mlの容量の移植のまえに除去した。レシピエントラットを秤量し、そして血液グルコース(BG)を測定した。次いで、ラットを、ケタミン(8.75mg/100g)およびキシラジン(0.7mg/100g)腹腔内で、麻酔した。小切開を、左腎臓上で行い、腎臓を前方に持ち上げ、そしてナイフを用いて小切開を行った。平らな器具を用いて、穴を被膜に穏やかに作製した。島を、腎臓下極に向って、被膜の下に置いた。筋肉および皮膚を縫合し、ラットを手術施設におけるかごの中で回復させ、そして動物施設に戻す前に、首中にTemgesic(0.01mg)皮下を与えた。移植後3日間、ラットに、毎日2回、Temgesicを与えた。血液グルコース(BG)を、3日毎に測定した。ラットを、頸椎脱臼によって殺傷し、そしてその後即座に、移植された腎臓を取り出した。移植片を、顕微鏡下で腎臓および被膜から注意深く切開し、そしてHBSS中に置いた。
【0179】
移植片および島の標識化。移植片を回収後すぐに標識した。培養した島を、IL-1を伴うまたは伴わない、24時間のインキュベーションの後、標識した。移植片および島を、HBSS中で2回洗浄し、そしてアミノ酸に対して透析された10%NHS、および移植片について330mCi[35S]-メチオニン、または島について200mCi[35S]メチオニンのいずれかを含有する、メチオニン非含有Dulbecco改変Eagle培地(DMEM)の200ml中で、37℃で4時間、標識した。2-メルカプトエタノールを除去するために、[35]-メチオニンを標識化の前に少なくとも4時間、凍結乾燥した。標識後、移植片および島を、HBSS中で3回洗浄し、上清を除去し、そして組織を即座に-80℃で凍結した。
【0180】
サンプル調製。凍結された移植片を、乳鉢中で破砕した。移植片および島を100mlDNAse I/RNAse A溶液中に再懸濁し、そして2回の凍結−解凍によって溶解した。2回目の解凍後、核酸の消化のために、サンプルを氷上で30分間放置し、次いで一晩凍結乾燥した。サンプルを、120ml溶解緩衝液(8.5M 尿素、2% Nonident P-40、5% 2-メルカプトエタノール、および2% 両性電解質、pH範囲7〜9)中で、最小4時間、振とうすることによって溶解した。
【0181】
[35S]-メチオニン取込みの測定。[35S]-メチオニン取込みの量を、10mgBSA(0.2mg/ml H2O)をタンパク質キャリアとして、各サンプルの1:10希釈物の5mlに2連で添加し、次いで0.5mlの10%TCAを添加することによって、定量した。これを30分間4℃で沈殿させ、その後0.25mm HAWPフィルターを介して濾過した。フィルターを乾燥し、そしてカウントのためにシンチレーション液中に置いた。
【0182】
2-Dゲル電気泳動。この手順は、以前に記載されている(O’Farrellら、Cell12:1133-1142(1977))。簡潔には、1次元ゲルは、4%アクリルアミド、0.25%ビスアクリルアミドおよび両性電解質を含んだ。各サンプルの等数のカウント(106cpm)を、ゲルに適用した。より低い量の放射能の場合、比較可能な全体の光学密度が得られるように、ゲルの暴露時間を調節する必要があった。サンプルを、等電点電気泳動(IEF;pH3.5〜7)および非平衡pH勾配電気泳動(NEPHGE;pH6.5-10.5)ゲルの両方に対して分析した。2次元ゲルは、12.5%アクリルアミドおよび0.063%ビスアクリルアミドを含み、そして一晩電気泳動した。電気泳動後、ゲルを固定し、そして蛍光間接撮影法のために、Amplify(登録商標)で処理し、その後乾燥した。ゲルを、X線フィルムと接触させて置き、そして-70℃で3〜40日間、露光した。各ゲルを少なくとも3回の期間露光し、X線フィルムの動力学的範囲の損失について補った。
【0183】
MWおよびpIの測定。タンパク質の分子量を、標準ゲルとの比較によって測定した。ゲル上の個々のタンパク質についてのpIを、pI検定キットによって測定した。目印のタンパク質を、以下の技術:イムノブロッティング、免疫沈降、微量配列決定、またはぺプチドマッピングのうちの1つまたはいくつかによって、ゲル上に同定した。
【0184】
蛍光間接撮影のコンピューター解析。SunsparcワークステーションにおけるBioImage(登録商標)プログラム(バージョン6.1)を用いて、コンピューター解析を行った。先ず、蛍光間接撮影をスキャンし、そしてスポットを同定し、そしてBioImage(登録商標)プログラムによって定量した。次いで、アンカーポイントをゲル上に置き(各ゲルにおける同じスポットは、同じアンカーポイントを割り当てられた)、そしてコンピューターでゲルを適合させた。コンピューターでの適合後、手動編集を行って、同定を確実にし、コンピューターの正確な適合によりスポットが見出され、そしてスポットの定量は、最初は、コンピュータープログラムによって見出されなかった。最後に、データを、QuatroPro(登録商標)スプレッドシート(Borland バージョン4.0)における算定のために導き出した。IEFおよびNEPHGE亜群における重複スポットの存在を回避するために、IEFゲルの塩基部分またはNEPHGEゲルの酸性部分のいずれかにおける重複するスポットを、解析から削除した。
【0185】
統計学的解析。Studentのt検定を適用し、そしてP<0.01を、有意性のレベルとして選択した。
【0186】
実施例2。インビトロでの亜硝酸塩およびインスリンの測定
BB-DP島におけるIL-1誘導性のタンパク質の変化を調査するために、150の新生児BB-DPラットの島を、150pg/mlのIL-1とともに、またはこれを伴わないで、24時間インキュベートし、その後、培地を亜硝酸塩およびインスリンの測定のためにサンプリングした。島の2次元ゲル分析を下記のように行い、そして島の蛍光間接撮影をコンピューターで解析し(以下を参照、各群についてn=3)、そしてIL-1を曝露されたWFラットの島の以前に確立されたタンパク質データベースと比較した。
【0187】
島の単離および培養。4〜5日齢の近交系BB-DPラットおよびWFラットの膵臓からの島を、Brunstedtら(Methodsin Diabetes Research、第1巻、Wiley & Sons、New York、254-288頁(1984)(本明細書中に参考として具体的に援用される))によって記載されるように、コラゲナーゼ消化後、単離した。RPMI1640+10% 胎児ウシ血清中での前培養の4日後、島を以下のように培養した:150のBB-DP島を、300ml RPMI 1640+0.5% 正常ヒト血清(NHS)中で、150pa/mlIL-18の添加を伴ってまたは伴わないで、24時間、37℃の加湿化された雰囲気の空気においてインキュベートした。別個の実験の系列において、200のBB-DPラットまたはWFラットの島を、300mlRPMI 1640+0.5% NHS中で、移植の前に24時間インキュベートした。
【0188】
亜硝酸塩およびインスリンの測定。亜硝酸塩を、以前に記載されるように(Greenら、Anal.Biochem.126:131-138(1982))、Griess試薬によって測定した。アッセイの検出限界は、1mmol/lであり、2pmol/島に対応した。島を含有しない対応の培地の亜硝酸塩レベルを、島非含有培地が検出限界を超えた場合、引き算した。実験を、同じアッセイにおいて行った。標準曲線上の3点から算定されたアッセイ内およびアッセイ間の変動係数は:1mmol/l:1.6%、16.3%;10mmol/l:1.6%、15.3%;25mmol/l:1.5、17.0%であった。インスリンをRIAによって測定した(Yangら、Proc.Natl.Acad.Sci.93:6737-6742(1996))。検出限界は、35fmol/mlであった。3つの公知のコントロール間のアッセイ内およびアッセイ間の変動係数は、A:5.4%、12.5%;B:3.6%、10.2%;C:3.1%、9.4%であった。
【0189】
結果。2-Dゲル分析のために以前に使用された(Andersenら、前出(1995))、BB-DP島とWF島との間の作用(蓄積されたインスリンの放出)およびIL-1に対する応答の点における比較可能性を確実にするために、NO生成およびインスリン放出を、IL-1を伴う、またはこれを伴わない24時間のインキュベーションの後、測定した。基底のインスリン放出およびNO生成は、WF島からのデータに類似した(基底のインスリン放出(WF島)3.3±0.5対(BB-DP島)2.0±1.1pmol*島-1*24時間-1、基底のNO生成<2pmol*島-1*24時間-1(BB-DP島およびWF島の両方について)。IL-1は、蓄積された島インスリンの放出を3.4%倍阻害し、そして新生児WFラットの島を用いて得られる結果に類似して、NO生成を4.4倍増加させた(IL-1誘導性のNO生成:(WF島)9,29±1,21対(BB-DP島)8.91±1.05pmol*島-1*24時間-1、およびインスリン放出:(WF島)1,4±0,3対(BB-DP島)0,6±0.6pmol*島-1*24時間-1、18、19)。
【0190】
BB-DPラットの島±IL-1からの蛍光間接撮影の分析。新生児BB-DPラットの島ホモジネートの2次元ゲルのコンピューターベースの解析において、全1815(1275個のIEFおよび540個のNEPHGE)個のタンパク質が12,5%アクリルアミドゲルの3つのうちの3つにおいて、見出された。IL-1とともに、24時間、インキュベートした新生児BB-DPラットの島において、1721(1171個のIEFおよび550個のNEPHGE)個が3つのゲルのうちの3つにおいて、見出された。IL-1は、コントロール島に比べて、82個のタンパク質の発現レベルを有意に変化させることが見出され(P<0.01);60個のタンパク質は発現レベルが減少し、および22個のタンパク質は発現レベルが増加した(P<0.01)(表1)。
【0191】
実施例3。動物移植モデル。
【0192】
実験1。最初に、IDDMの発症の間に生じる細胞性事象および分子性事象の調査のために同調モデルを作製するために、200の新生児BB-DPラットの島を単離し、そして30日齢のBB-DPラットの腎臓被膜下に移植した。血液グルコースを3日毎に測定し、そして糖尿病の発病率を測定した。
【0193】
移植後7、12、23、37、48、および173日目に、または糖尿病の発病時に、ラットを屠殺した(各群においてn=6)。移植片をインスリンおよび以下のMHCクラスI、II、αβ-TCR、CD4、CD8、またはED1うちの1つについて二重染色した。染色は、全移植片面積の百分率として(インスリン)またはmm2あたりの染色された細胞の数として、表した。インサイチュの宿主島を、同じ方法で染色し、そして島細胞の全数のうちの炎症を起こした島のパーセントとして表した。統計的解析を、SpearmanRank CorrelationおよびMann-Witneyで行った。
【0194】
結果。糖尿病の発病率(75%)または糖尿病の発症の日(69±25日)は、移植されなかったBB-DPラットと有意に異ならなかった。移植片およびインサイチュの島の両方において、浸潤する細胞の数の2〜3倍の増加が、12日目および37日目に見られた。移植の48日後、糖尿病を発症するラットについて、移植片およびインサイチュの島の両方において、それぞれ、前糖尿病のラットにおける37日目、および48日目での非糖尿病ラットと比較して、細胞の数が増加した(P<0.04)。移植片インスリン染色面積は、非糖尿病移植片において80〜90%であり、および糖尿病移植片において全移植片面積の30%であり、インスリン含量と細胞性浸潤とは逆比例した。全ての細胞型について、および全ての研究された時点で、宿主膵臓スライドガラスにおける浸潤された島の百分率と、同じ動物からの移植片における浸潤する細胞の数との間に、正の相関が見出された(P=0.002〜0.00001;r=0.4〜0.7)。
【0195】
実験2.200の新生児BB-DPラットの島を、30日齢のBB-DPラットの腎臓被膜下に移植した。WisterFurth島からWistar Kyotoラットへの同種異系移植を、コントロールとして同様に行った。
【0196】
移植された島は、IDDM発病率および疾患発病の時間に影響を与えなかった。糖尿病発病の日(78±5日)およびコントロールWK動物において17日目に、移植片を免疫組織化学および[35S]-メチオニン標識化のために切り出した。
【0197】
結果。糖尿病BBラットからの移植片の免疫組織化学的実験は、MHCクラスIポジティブ細胞(1982/mm2±534)、マクロファージ(661/mm2±406)、T-ヘルパー細胞(1331/mm2±321)、細胞傷害性T細胞(449/mm2±117)との広範囲におよぶ炎症を実証し、およびインスリンポジティブ細胞は、移植片の33〜66$に減少した。同種異系移植のコントロールは、線維症を示し、単核細胞、MHCクラスIIポジティブ細胞(152/mm2)、MHCクラスIポジティブ細胞(48/mm2)、マクロファージ(172/mm2)、T-へルーパー細胞(254/mm2)、細胞傷害性T細胞(42/mm2)の炎症をほとんど示さず、および残存細胞における100%のインスリン含量を示した。
【0198】
2Dゲルのコンピューター解析はIL-1曝露によってインビトロで変化された33個のタンパク質のうちの18個の発現の、2倍を超える増加を示した。14個は、BB-DP動物における同族移植片に特異的であった。8個のタンパク質は、発現のレベルを特異的に変化した。
【0199】
実施例4。糖尿病発症によって誘導されるタンパク質発現における変化
糖尿病発生の間のBB-DP島の同族移植片におけるタンパク質の変化を調査するために、200の新生児BB-DPラットの島を、30日齢のBB-DPラットに移植した。標識、2次元ゲル電気泳動および移植されていないBB-DP島とのコンピューターベースの比較のために、移植片を、糖尿病の発症時に回収した(連続2日間でBG>14mmol/lとして規定された、n=5)。
【0200】
新しく糖尿病を発症したBB-DPラットからの同族島移植片からの蛍光間接撮影の分析。新しく糖尿病を発症したBB-DPラットからのBB-DP島同族移植片において、コンピューター解析は、1818個のタンパク質(1259個のIEFおよび577個のNEPHGE)が、5つのゲルのうちの5つに存在することを示した。(これらのデータは、コントロールの新生児BB-DPラット島に比較した場合に、発現レベルが変化した(64個は発現レベルが増加し、そして131個は発現レベルが減少した)(P<0.01、データ示さず)インビトロでの島および移植片の両方に存在する予備的なタンパク質である)。インビトロでIL-1インキュベーション後にBB-DPラットの島において発現のレベルが変化した、82個のタンパク質のうちの71個が、移植片において再同定された。71個の再同定されたタンパク質のうちの33個は、糖尿病の発症時での島同族移植片において、発現レベルが有意に変化した(4個がアップレギュレートされ、29個がダウンレギュレートされた)(表2)。
【0201】
島WF同族移植片からの蛍光間接撮影の解析。移植手順自体によって引き起こされるタンパク質発現における変化を制御するために、WF島の同族移植片を、インビトロでWF新生児の島においてIL-1によって引き起こされるタンパク質の変化に比較した。インビトロでIL-1とともにインキュベートされたWF島において発現レベルが変化した、105個のタンパク質のうちの89個のタンパク質が、WFコントロール島と比較した場合、再同定されたのに対し、12個は、WF島移植片において存在しなかった(n=3)。93個の再同定されたタンパク質のうちの42個は、発現のレベルが有意に変化した(27個が減少し、および15個が増加した、p<0.01、表5)。インビトロでのIL-1誘導性のタンパク質は、疾患発生の間、または島−移植片拒絶の間に、島−移植片において特異的に見られた。インビトロでのIL-1インキュベーション後に島における発現のレベルが変化することが見出され、および同族移植されたWF島において発現のレベルの有意な変化が見出されなかったタンパク質は、同族移植されたBB-DP島において見出された場合、疾患の発生に特異的であると示されるか、またはWKラットへ同種移植されたBB-DP島において見出された場合、移植片拒絶に特異的であると示された。同族移植されたBB-DP島における28個のタンパク質、および同種移植されたBB-DP島における29個のタンパク質は、発現のレベルが変化した(データは示さず)。BB-DP同種移植片における14個のタンパク質、およびWKラットにおけるBB-DP同族移植片における8個のタンパク質は、特異的に発現のレベルが変化した。
【0202】
実施例5。糖尿病媒介性タンパク質の特徴づけ
合成のIL-1β誘導を示すタンパク質を、以下に記載するように、質量分析および微量配列決定によって分析した。市販のタンパク質データベースを、適合性について検索し、これらは、SWISS-PROT、PIR、NIH、およびGENEBANKを含んだ。
【0203】
微量配列決定。2DGEによって、糖尿病媒介性タンパク質として同定されたタンパク質スポットを、公知の方法に従って、ゲル中でトリプシンで消化し、濃縮し、HPLC分離し、ピークを配列決定し、そして部分配列を、公知の配列と比較することによって、さらに特徴づけした。微量配列決定の結果は、以下のようである:
タンパク質22(ピーク22):AQYEELIANG(D)(M)(配列番号5)
(ピーク13):KKPLVYDEG(K)(配列番号6)
タンパク質25(ピーク15):LLEXTXXLX(配列番号7)
(ピーク16):PSLNSXEX(配列番号8)
ガレクチン-3(ピーク22):IELXEIX(配列番号9)
1つのタンパク質(分子量 68,700)の直接的な配列決定は、以下の部分配列を生じた:PEAIKGAVVGIDLG(配列番号10)(表2:GR75)。このタンパク質は、75kDグルコース調節タンパク質(GR75、表2)(PBP74、P66mot、モルタリン)に高い相同性を示し;hsp70タンパク質ファミリーの構成メンバーであり、非熱誘導性であり;異なる組織において偏在的に発現され;75kDが66kDにプロセスされるの46残基のリーダーペプチドを含み;ミトコンドリアにおいて見出され;細胞死と、および抗原提示と関連する。
【0204】
1つのタンパク質は、ガレクチン-3と同定され、これはいくつかの組織に存在する27kDのタンパク質であり、プレmRNAスプライシング因子としての役割を有することが知られている。ヒトgal-3のアミノ酸配列を、図5(配列番号4)に示す。
【0205】
質量分析。インサイチュ消化を、本発明に従う少なくとも1つのゲルにおいて少なくとも1つのタンパク質スポットを含む、少なくとも1つのゲルプラグに対して行う。Feyら Electrophoresis18:1-12(1997)に記載されるように、RosenfeldらAnal.Biochem.203:173-179(1992)の方法の改変によって(これらの両方は、本明細書中に参考として詳細に援用される)ゲルを調製する。簡潔には、ゲルを迅速に染色し、そして脱染色する。¥メスでタンパク質を含有するゲルバンドを切断し、そしてUHQ水を含有するエッペンドルフチューブに-20℃で保存することによって、目的のタンパク質を得る。40%アセトニトリル/60%消化緩衝液中で、クマシー染色が除去されるまで、少なくとも1時間、ゲルプラグを洗浄することによって、タンパク質を消化する。この洗浄は、クマシー染色、ゲル緩衝液、SDS、および塩を除去する。必要であれば、洗浄は反復され得る。次いで、ゲルプラグを、プラグが縮み、そして表面が白くなるまで、真空遠心機で、20〜30分間、乾燥させる。乾燥時間は、ゲルプラグのサイズおよび厚さに依存する。トリプシン(または使用する酵素)を、消化緩衝液に溶解し、そして5mlをゲルプラグに添加する(分析されるべきゲル中のタンパク質の量(0.1mg)に依存する)。さらなる消化緩衝液を、ゲルプラグが、チューブの底において、緩衝液にほとんど覆われるまで添加する(約10ml)。次いで、ゲルプラグを、37℃で6時間または一晩インキュベートし、次いで70〜100ml60%アセトニトリル/40%水とともに、2〜6時間インキュベートして、ペプチドを抽出する。抽出は、回収を増大するために反復され得る。次いで、抽出物を凍結乾燥し、そしてMALDI-MSによって分析する前に、30%アセトニトリル/2%TFA中で溶解する。
【0206】
図6〜48は、表1および2に示されるタンパク質について得られた、質量分析のデータを提供する。
【0207】
実施例6。同種移植片拒絶の間のインビボでのタンパク質の発現
拒絶の間のBB-DP島同種移植片におけるタンパク質の変化を調査するために、200の新生仔BB-DPラットの島を、30日齢のWKラットに移植した(N=3)。実質的な単核浸潤が予測される時点の、移植後12日目に移植片を回収した。移植片を、上述のようにプロセスし、そして分析した。
【0208】
WKラットにおけるBB-DP島同種移植片からの蛍光光度分析。移植後12日目に、移植片において単核細胞の浸潤が観察され(18)、そしてこの時点でサンプリングされたBB-DP島同種移植片からの蛍光光度のコンピューター解析は、1714(1064IEFおよび650 NEPHGE)個のタンパク質が、3つのゲルのうちの3つに存在することを示した。BB-DP島同種移植片のゲルを、インビトロでのIL-1のインキュベーション後にBB-DP島における発現のレベルが有意に変化した82個のタンパク質に関して、新生仔のBB-DPラットの島のゲルに比較した。82個のタンパク質のうちの66個が再び同定された。66個の再び同定されたタンパク質のうちの33個が、発現レベルを変化することが見出された(28個が減少し、そして5個が増大した。p<0.01)。
【0209】
実施例7。島細胞における非毒性のアデノウイルス媒介性の遺伝子移入の確立。
【0210】
ベクター誘導性の毒性の不在下での、ランゲルハンス島へのアデノウイルス媒介性の遺伝子移入についての至適な条件を決定するために、新生仔ラットの島を、島あたり、0、10、100、および1000pfuの感染多重度(moi)の用量で、アデノウイルスベクターβ-ガラクトシダーゼ(AdβGal)を用いて、3連で、25の群において形質導入した。遺伝子移入の効率を、おおまかな検査によって測定し、そして形質導入後1、4、7、および10日目での島分散後の、6-ガラクトシダーゼポジティブ細胞のパーセントによって評価した。簡潔には、島の毒性を、各時点での蓄積されたインスリンレベルを測定することによって、ならびに3および10日目での高血糖症に応じてインスリン放出を評価することによって、評価した。
【0211】
結果。島への効率の良い用量依存性の遺伝子移入を、形質導入後1、4、7、および10日目で記録した。1日目で、moi10、100、1000にて、それぞれ、分散された島における8.3%、34.1%、および58.6%の細胞が、導入遺伝子を発現した。導入遺伝子発現は、実験の持続時間について安定であった。インスリン蓄積は、各時点で、形質導入された島と形質導入されない島との間で、差異はなく;そして10日目で発現された蓄積されたインスリンは、島あたりのインスリンnmolとして、14.3±1.5(0のmoiで)、15.0±2.6(10のmoiで)、22.0±7.8(100のmoiで)、および15.3±1.5(1,000のmoiで)であった。
【0212】
同様に、グルコースに対するインスリン分泌応答は、高いグルコースインキュベーションに対するインスリン応答を、低いグルコースインキュベーションに対するインスリンの応答で割ることによって得られ、研究した全ての用量で、3日目での形質導入された島および形質導入されない島において、類似であった(mod0;12.7±4.1;moi10、14.9±7.9;moi100、15.7±0.7;およびmoi1,000.22.3±6.7)。形質導入後10日目で、形質導入された細胞および形質導入されない細胞における比率は類似であった。
【0213】
実施例8。IDDMの自然発症におけるガレクチン-3の発現。
【0214】
200の新生仔BB-DPラットの島を、30日齢のBB-DPラットの腎臓被膜下に移植した。移植片を、移植の7日後(前糖尿病、n=6)、糖尿病発病時(n=6)、または移植の174日後(糖尿病を免れた動物、n=3)に回収し、そしてIL-1β刺激しした新生仔BB-DP島およびIL-1β刺激しなかった新生仔BB-DP島を、[35S]-メチオニンで標識し、そして高い分離度の2次元ゲル電気泳動のために調製した。
【0215】
各サンプルを、等電点電気泳動(IEF、pH3.5〜7)および非平衡pH勾配電気泳動(NEPHGE、pH6.5〜10.5)について行った。ゲルの蛍光光度を、上述のように分析した。タンパク質の発現レベルにおける変化は、0.01よりも低いp値で有意性を考慮された(Studentのt検定)。
【0216】
結果。インビトロでIl-1βで刺激された新生仔BB-DP島は、82個のタンパク質における変化を示した。これらのタンパク質のうちの97〜98%は、全ての時点で、全ての移植片において同定された。インビトロでの刺激されない正常なBB-DP島と比較された移植片タンパク質の発現レベルは、以下の変化を示した:新生仔島細胞をインビトロでIL-βで処理した場合、増大した発現を示す82個のタンパク質のうちの42個が7日目の移植島において増大し、31個が糖尿病の発病とともに増大し、そして14個が糖尿病を発症しなかった動物において増大した。増大したタンパク質のうち、それらのうち4個が、IDDMの発病時にのみ見られ、そして詳述される時点で見られない。7日目に、インビトロでのIL-β曝露で変化しない5個のタンパク質が、変化することが観察されたが、2個のタンパク質は、糖尿病の発症時に変化することが観察され、そして3個のタンパク質が、糖尿病を発症しなかった動物において観察された。インビボで変化するが、インビトロで変化しないことが観察されたタンパク質のうちの、これらの1個が、IDDM特異的であるとして同定された。Gel-3発現は、7日目およびIDDMの開始時で、顕著にダウンレギュレートされた。対照的に、gal-3発現は、インビトロでIL-1β刺激された島において、および糖尿病を発症しなかった動物からの移植片において、増大された。
【0217】
実施例9。インスリン産生細胞における、IL-1変換酵素(ICE)、誘導性の一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、およびアポトーシスのサイトカイン誘導。
【0218】
ICE、iNOSの発現、およびアポトーシスの誘導を調査した。ラットインスリノーマおよび多能性細胞株のRIN-SAHおよびMSL-G2を、20時間、サイトカインの混合物(IL-1β、TNFoα、およびIFNγ)とともに培養し、RNAを単離し、そしてICE、iNOS、およびSP-1(正規化のためのハウスキーピングコントロールとして使用される、一般的な転写因子)に対するプライマーを用いて、多重PCR分析(27サイクル)を形成した。ゲル電気泳動分離、およびPhosphorImager定量後、結果を、SP-1mRNA発現に対して正規化し、そしてケイ酸した。
【0219】
結果。ICE発現もiNOS発現も、コントロール細胞において見出されなかった。SP-1遺伝子産物のアップレギュレーションのレベルに対して顕著なアップレギュレーションが、サイトカイン曝露の20時間後に、ICEおよびiNOSの両方において見られた。RIN細胞において、ICEはSP-1の98%で産生され、およびiNOSはSP-1の97%で産生された。アポトーシスもNOS産生も、コントロール細胞において観察されなかったが、サイトカインで誘導されたiNOS産生は、その後アポトーシス頻度およびNO産生を高度に増大した。RIN細胞において、蓄積された亜硝酸塩は、3日後に19.7±0.7μMであると測定された。
【0220】
【表1】


【0221】
【表2】


【0222】
【表3】


【0223】
【表4】


【0224】
【表5】


【0225】
【表6】


【0226】
【表7】


【0227】
【表8】


【0228】
【表9】


【0229】
実施例8:ラット島におけるタンパク質発現のインターロイキン-1DF誘導した変化:コンピューター処理化データベース
要約
膵臓島タンパク質の2次元(2-D)ゲル電気泳動は、インスリン依存性糖尿病の分子的病原性の研究を容易にする重要なツールであり得る。インスリン依存性糖尿病は、ランゲルハンス島のβ細胞の自己免疫破壊によって引き起こされる。サイトカインのインターロイキン1βはインスリン放出を阻害し、そして単離された膵臓のラット島におけるβ細胞に対して選択的に細胞傷害性である。免疫応答の引き金になる1つまたは複数の抗原、ならびにインターロイキン1βが媒介したβ細胞細胞傷害性の作用の細胞内メカニズムは、知られていない。しかし、これまでの研究は、タンパク質合成の変化に関連することを見いだしている。したがって、島タンパク質の2-Dゲル電気泳動は、1)β細胞の免疫破壊を開始する一次抗原(単数または複数)の同定、2)サイトカインによって誘導される特定の島タンパク質の定性的および定量的変化の決定、および3)サイトカイン作用を調節する薬剤の効果の決定を導き得る。したがって、この研究の目的は、標準化された培養条件下で標識された、新生仔ラット島における10%および15%アクリルアミド2-Dゲル(10%および15%DB)上のすべての再生可能に検出可能なタンパク質スポットのデータベースを作製することであった。1792スポットが、15%DBにおける5つのゲルのうちの5つに存在したが、1373スポットが、10%DBにおける5つのゲルのうちの5つに存在し、75.2%と91.7%との間の定量的再生性を得た。両方のDBでは、すべてのゲルに存在するスポットについての積分した光学密度のパーセントの変動(%IODのCV%)の平均係数は、42.4%と45.7%との間であった。同じ試料を、異なる日に、ゲルの連続的セットで分析した場合(アッセイ間分析)、%IODの平均CV%は、35.5%〜36.1%であった。同じ試料をゲルの1つのセットで繰り返して分析した場合(アッセイ内分析)、%IODの平均CV%は、IEFゲルでは30.2%であったが、%IODの平均CV%は、NEPHGEゲルでは変わらなかった(45.7%)。IL-1βによって発現が変化したタンパク質を区別するために10%DBを適用すると、105の現在未同定のタンパク質スポットは、IL-1βによって新たにアップ/ダウンレギュレートまたは合成されることを見いだした。結果として、本発明者らは、ランゲルハンスの新生仔ラット島の第1の10%および15%アクリルアミド2-Dゲルタンパク質データベースを示し、そしてIL-1βによって発現が変化したタンパク質を同定するための利用を証明する。
【0230】
序論
サイトカインのインターロイキン1βは、インスリン放出を阻害し、そして単離された膵臓ラット島においてβ細胞に対して選択的に細胞傷害性である(Mandrup-Poulsen,T, Diabetologia in press (1996))。活性タンパク質合成は、サイトカインのような発作後のβ細胞破壊、防御、および修復の重要な部分である。遊離ラジカル一酸化窒素(NO)は、島α細胞におけるサイトカインの有害な効果の重要なメディエーターであることが証明されている(Southernら,FEBS. Lett. 276:42-44 (1990);Welshら, Endocrinol. 129:3167-3173 (1991);Corbettら,J. Biol. Chem. 266:21351-21354 (1991))。したがって、NO産生のための基質であるL-アルギニンのアナログは、インターロイキン1β(IL-1β)の有害な効果を防止し(Southernら,FEBS. Lett. 276:42-44 (1990);Welshら, Endocrinol. 129:3167-3173 (1991);Corbettら,J. Biol. Chem. 266:21351-21354 (1991))、そしてサイトカイン誘導性イソ型のNOシンターゼ(iNOS)についてのmRNAは、β細胞でIL-1βによって誘導されるがα細胞では誘導されない(Corbettら,J. Clin. Invest. 90:2384-2391 (1992))。本発明者らは、最近、新生仔ラット島からiNOSをクローニングし、そして2次元(2-D)ゲル上の一連のスポットとして、おそらくリン酸化したイソ型としての組換えiNOSの発現を証明し、131kDaの予測分子量および6.8〜7.0の範囲のpI値を有する(Karlsenら,Diabetes 44:753-758 (1995))。
【0231】
さらに、タンパク質合成のインヒビターは、島機能におけるIL-1βの阻害効果をブロックし(Hughesら,J. Clin. Invest. 86:856-863 (1990))、このことは新たなタンパク質合成がIL-1βの有害な効果に必要であることを示す。IL-1βはまた、熱ショックタンパク質(HSP)HSP32(ヘムオキシゲナーゼ)およびHSP70の合成を誘導し(Helqvistら,Acta Endocrinol. (Copenh.) 121:136-140 (1989);Helqvistら, Diabetologia34:150-156 (1991);Welshら, Autoimmunity 9:33-40 (1991))、細胞性ストレスに対する防御および細胞修復において役割を果たすことが公知である(Kaufmann,Immunol. Today 11:129-136 (1990))。さらに、IL-1βは、島における45、50(Hughesら, J. Clin.Invest. 86:856-863 (1990))、75、85、95、および120kDa(Welshら, Autoimmunity 9:33-40(1991))の分子量を有する多くの未知のタンパク質の合成を阻害する。2-Dゲル電気泳動を使用して、本発明者らは、最近、IL-1βが、新生仔ラット島においてそれぞれ29および3タンパク質をアップレギュレートおよびダウンレギュレートすることを証明した。
【0232】
内分泌島細胞は、β細胞破壊およびおそらく生存に重要な役割を果たし得る。島細胞の分散およびソーティングは、タンパク質合成パターンに影響を及ぼし得る潜在的に有害な手順である。選択した島細胞材料の不都合は、他の細胞からの合成によって希釈されるので、1つの細胞タイプにおけるタンパク質発現の何らかの変化が、より小さく現れることである。
【0233】
したがって、この研究の目的は、スポット検出再現性を決定すること、およびすべての(35S)-メチオニン標識した島タンパク質データベーススポットについて積分した光学密度のパーセントの変動(%IODのCV%)の係数を算出することであった。さらに、本発明者らは、スポットの%IODの総CV%に対するゲル調製のアッセイ内およびアッセイ間変動の寄与を研究する必要があった。最後に、本発明者らは、コンピュータ分析によって島タンパク質パターンのIL-1β誘導された変化の数を定義する必要があった。
【0234】
材料および方法
試薬。DMEM、RPMI 1640、およびハンクス平衡化塩溶液(HBSS)を、Gibco,Paisley, Scotlandから購入した。RPMI 1640に、20mM HEPES緩衝液、100,000 IU/Iペニシリン、および100mg/Lストレプトマイシンを補充した。認証された組換えヒトIL-1βは、NovoNordisk Ltd. (Bagsvaerd, Denmark)によって提供された。比活性は、400 U/ngであった(Moelvigら, Scand.J. Immunol. 31:225-235 (1990))。以下の他の試薬を使用した:2-メルカプトエタノール、ウシ血清アルブミン(BSA)、TrisHCl、Tris塩基、グリシン(Sigma, St. Louis USA);トリクロロ酢酸(TCA)、リン酸、NaOH、グリセロール、n-ブタノール、ブロモフェノールブルー(Merck,Darmstadt, Germany);(35S)-メチオニン(SJ 204, 比活性:>1.000 Ci/mmol、0.1% 2-メルカプトエタノールを含む)、Amplify(登録商標)(AmershamInternational .Amersham, UK);フィルター(HAWP 0.25μm孔サイズ)(Millipore, Boston, USA);RNA'seA、DNA'se I(Worthington, Freehold, NJ, USA);尿素(超純粋)(Schwartz/Mann, Cambridge,MA, USA);アクリルアミド、ビスアクリルアミド、TEMED、過硫酸アンモニウム(BioRad, Richmond, CA, USA);両性電解質:pH5-7、pH 3.5-10,pH 7-9、pH 8-9.5(Pharmacia, Uppsala, Sweden);Nonidet P-40(BDH,Poole, UK);両性電解質:pH 5-7およびドデシル硫酸ナトリウム(Serva, Heidelberg, Germany);アガロース(Litex,Copenhagen, Denmark);エタノール(無水96%)(Danish Distillers, Aalborg, Denmark);メタノール(Prolabo,Brione Le Blanc, France);酢酸(技術品質、99%氷酢酸)(Bie & Berntsen, Arhus, Denmark)、およびX線フィルム(CurixRP-2)(AGFA)。
【0235】
島単離および培養。データベースおよびアッセイ変動実験について、12の異なる島単離(データベースについては10、アッセイ内分析については1、およびアッセイ間分析については1)を行った。IL-1βに関する研究については、3つのさらなる島単離を行った。
【0236】
4日齢の近交系Wistar Fursthラット(Mollegard, LilleSkensved, Denmark)の膵臓からの島を、コラゲナーゼ切断後に単離した(Brunstedt, Larner, J, Polh, S.L.(編), MethodsIn Diabetes Research, 1巻 (Laboratory methods, Part C). Wiley & Sons, NewYork, 254-288頁(1984))。RPMI 1640+10%ウシ胎児血清中での4日間の前培養後、150島を、300μl RPMI 1640+0.5%正常ヒト血清(NHS)中で24時間インキュベートした。別のシリーズの実験では、150島を、150pg/mlIL-1βの添加ありまたはなしで、300μl RPMI 1640+0.5%NHS中で24時間インキュベートした。
【0237】
島標識。培養の24時間後、150島細胞を採取し、HBSSで2回洗浄し、そしてアミノ酸について透析した10%NHSを含む200μlのメチオニン非含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、および200μCi(35S)-メチオニン中で4時間標識した。2-メルカプトエタノールを除去するために、(35S)-メチオニンを、標識前に少なくとも4時間凍結乾燥した。標識後、島をHBSSで3回洗浄し、ペレットにし、そして−80℃で凍結した。
【0238】
試料調製。凍結した島を、100μl DNAse I/RNAse A溶液に再懸濁し、そして2回凍結融解することによって溶解した。2回目の融解後、それらを核酸の切断のために30分間氷上に放置した。次いで、溶解した試料を一晩凍結乾燥した。試料を、最大4時間120μl溶解緩衝液(8.5M尿素、2%Nonidet P-40、5% 2-メルカプトエタノール、および2%両性電解質pH範囲7-9)中で振盪することによって溶解した。
【0239】
(35S)-メチオニン取り込みの決定。(35S)-メチオニン取り込みの量を、各試料の1:10希釈の5μlにキャリアとして10μgBSA(0.2μg/ml HO)を、次いで0.5mlの10%TCAを添加することによって、二連で定量した。これを、0.25μmフィルターを通して濾過する前に、40℃にて30分間沈殿させるために放置した。HAWPフィルターを乾燥し、そしてカウントのためにシンチレーション液に入れた。
【0240】
2-Dゲル電気泳動。手順は、本質的に、O'Farrellら, Cell12:1133-1142 (1977)およびFey, S.J.ら, The protein variation in basal cells andcertain basal cell related benign and malignant diseases, Faculty of NaturalScience, University of Aarhus, Denmark (1984)に記載のとおりであった。簡単にいえば、第一次元ゲルは、4%アクリルアミド、0.25%ビスアクリルアミド、および両性電解質(実際の比はバッチに依存する)を含み、そして175mm長および1.55mm直径であった。各試料の等しい数のカウント(10cpm)を、ゲルにアプライした。より低い量の放射活性の場合、比較できる総光学密度を得るようにゲルの曝露時間を調節する必要があった。試料を、等電点電気泳動(IEF;pH3.5-7)および非平衡pHグラジエント電気泳動(NEPHGE;pH 6.5-10.5)ゲルの両方で分析した。IEFゲルを、140μA/ゲル(限界電流)で約4時間プレフォーカシングし、次いで、試料をアプライし、そして1200V(限界電圧)にて18時間フォーカシングした。NEPHGEゲルを、限界パラメータとして140μA/ゲルおよび1200Vを使用して約6.5時間フォーカシングした。
【0241】
第二次元ゲルは、1mm厚、200mm長、および185mm幅であり、これは15%アクリルアミドおよび0.075%ビスアクリルアミド、または10%アクリルアミドおよび0.05%ビスアクリルアミドのいずれかを含み、そして一晩泳動した。電気泳動後、ゲルを、45%エタノールおよび7.5%酢酸中で45分間固定し、そして乾燥前に45分間Amplify(登録商標)での蛍光写真のために処理した。ゲルを、X線フィルムと接触して置き、そして−70℃で1〜40日間曝露した。各ゲルを、少なくとも3倍の期間曝露して、X線フィルムのダイナミックレンジの欠乏を補った。
【0242】
分子量およびpIの決定。タンパク質の分子量を、標準ゲルとの比較によって決定した(Fey,S.J.ら, The protein variation in basal cells and certain basal cell relatedbenign and malignant diseases, Faculty of Natural Science, University ofAarhus, Denmark (1984))。ゲル上の個々のタンパク質のpIを、pI較正キットの使用によって決定した。目標タンパク質を、以下の技法の1つまたはいくつかによってゲルで同定した:免疫ブロッティング、免疫沈降法、マイクロ配列決定、またはペプチドマッピング。
【0243】
実験的設計。研究は、以下の3つの異なるシリーズの分析を含んだ:データベース分析、アッセイ内分析、およびアッセイ間分析。各分析について、IEFおよびNEPHGEゲルを、第二次元で10%および15%アクリルアミドを使用して流した。これは4つの亜群を提供した:10%IEF;15%IEF;10%NEPHGE;15%NEPHGE。10%アクリルアミドゲルでは、検出のおおよその分子量範囲は20と250kDaとの間であったが、15%アクリルアミドゲルでの検出のおおよその範囲は6と125kDaとの間であった。結果として、20と125kDaとの間の分子量を有するタンパク質は両方のデータベースに含まれるが、より低いおよびより高い分子量を有するタンパク質は、それぞれ15%および10%DBに特定された。10%および15%DBの比較は、10%IEFおよびNEPHGE亜群の両方で検出可能なより低い数の検出スポットを示した(結果を参照のこと)。結果として、アッセイ内およびアッセイ間分析(以下を参照のこと)を、15%IEFおよびNEPHGEゲルでのみ行った。
【0244】
データベースは、ゲルの1つのセットにおいて分析した10の異なる単離物に基づいた。2-Dゲル電気泳動後、最良の技術的品質および比較可能な光学密度を有する5つのゲルを、コンピュータ分析のために選択した。コンピュータ分析前に、各亜群における1つのゲルを、他の4つのデータベースゲル、5つのアッセイ内ゲル、および5つのアッセイ間ゲルでの比較のために使用した「マスターゲル」であるように任意に選択した。データベース「マスターゲル」を、アッセイ内およびアッセイ間分析についてマスターとして使用して、所定のスポットが、3つのシリーズの分析において同じ適合数を有することを確実にした。「マスターゲル」からのデータは、データベース分析にのみ含まれる。「マスターゲル」は、すべての4つの亜群における同じ単離物からであるが、4つの他のデータベースゲルを生じる単離物の同定は、亜群から亜群までわずかに変化した(表3)。
【0245】
アッセイ内分析について、同じ試料の10ゲルを、1つのセットのゲルで分析した。2-Dゲル電気泳動後、最良の技術的品質および比較可能な光学密度を有する5つのゲルを、コンピュータ分析のために選択した(表3)。
【0246】
アッセイ間分析について、同じ試料を、異なる日に10の連続したセットのゲルで分析した。2-Dゲル電気泳動後、最良の技術的品質および比較可能な光学密度を有する5つのゲルを、コンピュータ分析のために選択した(表3)。
【0247】
IL-1βによって発現が変化したタンパク質同定について、これまでに可視的に分析された(Andersenら,Diabetes 44:400-407 (1995))、IL-1βで曝露した島の10%IEFおよびNEPHGEゲルを、10%IEFおよびNEPHGE DBに適合した。
【0248】
蛍光写真のコンピュータ分析。コンピュータ分析を、SunsparcワークステーションでBioImage(登録商標)プログラム(バージョン4.6M)を使用して行った。第1に、蛍光写真をスキャンし、そしてスポットを同定し、そしてBioImage(登録商標)プログラム,BioImage, Ann Arbor, MA, USAによって定量した。次に、各非マスターゲルを、「マスターゲル」と比較し、そしてコンピュータプログラムによって最初に見いだされないスポットの同定および定量を確実にするために手動で編集した。この比較を、BioImage(登録商標)プログラムを使用して同じ観察者(H.U.A.)によって行った。これに続いて、ゲルをBioImage(登録商標)プログラムによって適合し、そして適合の正確性を検査し、そして同じ観察者によって修正した。最後に、データを、QuattroPro(登録商標)スプレッドシート(Borland バージョン4.0)での算出について抽出した。
【0249】
IEFおよびNEPHGE亜群の二重スポットの存在を避けるために、IEFゲルの塩基性部分またはNEPHGEゲルの酸性部分のいずれかの重複スポットを、データベースにおける解析およびアッセイ解析から除いた。
【0250】
統計学的解析。2つの異なる解析を、IL-1βによる発現で変化したタンパク質を区別するために適用した。第一の解析では、IL-1β曝露ゲルにおけるスポットの平均%IODが、DBにおける同じスポットの平均%IOD±2SDより高いかまたは低い場合、変化が有意であると見なした。二群間の第二の比較では、スチューデントt検定を適用し、p<0.01を有意性のレベルとして選択した。
【0251】
新生仔ラット島タンパク質データベースおよびアッセイ解析の質的再現性。1293〜1411個(IEF)および605〜764個(NEPHGE)のスポットが15%DBを構築するために用いた個々のゲルにおいて見出され、一方、1101〜1200個(IEF)および462〜577個(NEPHGE)のスポットが10%DBについて用いたゲルにおいて見出された(表4および表5)。「マスターゲル」を10%のIEFおよびNEPHGEDBのために作製した。全体で、1792個のスポットが15%DBにおいて5つのゲルの内5つに存在し、一方、1373個のスポットが10%DBにおいて5つのゲルの内5つに存在した。このことは、75.2%(NEPHGE10%)〜91.7%(IEF 15%)の間の亜群における質的再現性(5つのゲルの内5つに見出されるスポットの百分率の平均)を生じた(表4および5)(5つのゲルの内5つに存在する各スポットについて、データベースは、スポット適合数、5つの個々のスポットに対する%IOD、平均%IOD、%IODの標準偏差、%IODのCV%、MW、およびpIからなる)。
【0252】
表4および5に示されるように、個々のゲル中のスポットの総数、ならびに5つのゲルのうち5つに存在するスポットの数および百分率は、10%DBにおいて15%DBにおけるよりも少なかった。しかし、データベースを5つのゲルのうち少なくとも3つのゲルに存在するスポットを含むように拡張する場合、2つのデータベース間では、存在するスポットの百分率において差異は見られなかった(IEF:15%:98.8±1.2;10%:97.4±1.5;NEPHGE:15%:94.8±5.7;10%:94.1±3.5、表4および5)。両データベースにおいて、5つのゲルの内5、4、3、または2つに存在するスポットの百分率は、NEPHGEゲルにおいてIEFゲルにおけるより低かった(表4および5)。5未満のゲルに存在するスポットの空間的位置を調査した。これは、スポットが1、2、3または4つのゲルに存在するか否かに依存してゲルの特定の領域において群分けされなかったことを示す。
【0253】
アッセイ内解析およびアッセイ間解析を15%ゲルにおいてのみ実施した。なぜなら、検出可能なスポットの数がこのデータベースにおいてより高かったからであった。両解析において、個々のゲル中のスポットの数ならびに5つのゲルの内5つに存在するスポットの数および百分率は、15%DBに比較してわずかに(9%〜19%)減少した(表4および6を比較する)。
【0254】
新生仔ラット島タンパク質データベースおよびアッセイ解析の量的再現性。量的再現性を、5つのゲルのうち5つに存在する各スポットについての%IODのCV%の平均として定義した。データベースについて、平均CV%は、ゲルの10%および15%の両方のIEFならびにNEPHGE亜群において相当のレベルであった(42.4%〜45.7%)(表7)。全DB亜群について、CV%は、3.0%〜167.9%の間の範囲であった(表7)。アッセイ間解析について、平均CV%は、IEFおよびNEPHGEゲル亜群の両方について35.5%〜36.1%であった。一方、平均CV%は、IEFゲルのアッセイ内解析について30.2%であり、そしてNEPHGEゲルについて45.7%であった。
【0255】
続いて、全てのゲル中に存在するデータベーススポットを、%IODのCV%の桁を増大させて階級付けした。これは、4つのデータベース亜群全てにおいて、スポットに対して同様のシグモイド型曲線を生じる。従って、スポットの30%は、29.7%〜32.5%より低いCV%を有し、スポットの50%は、37.8%〜42.8%より低いCV%を有し、スポットの90%は、68.4%〜80.6%より低いCV%を有した。曲線の傾斜は、最高CV%を伴う5%〜10%のスポットが%IODの平均CV%に有意に寄与することを示している。これは、データベースの亜群のメジアン値が、亜群の平均値より2.3%〜5.5%低いという事実によって支持される(表7)。
【0256】
データベース亜群における各スポットに対する平均%IODと%IODのCV%との間の回帰解析。NEPHGEの10%および15%のDB亜群において、最高平均IOD%を伴う10個のスポットのうちそれぞれ2個および6個が最低CV%を伴うパーセント点において見出された(上記を参照のこと)。最高平均IOD%を伴う10個のスポットのどれもがIEFDB亜群においてはこのパーセント点で見出されなかったが、回帰解析を行ってスポットの平均%IODとCV%との間に相関があるか否かを調べた。回帰解析は、これらの2つのパラメーター間で有意な負の相関があることを示した(範囲:p=0(IEF10%)−p=0.00288(IEF 15%))。しかし、R値は全ての亜群に対して非常に低かったので(範囲:R=0.0072(IEF15%)R=0.0317(IEF 10%))、CV%の可変性の大部分は、平均%IODの変動によっては説明されない。
【0257】
IL-1βによる発現において変化したタンパク質を区別するための10%IEFおよびNEPHGEDBの適用。近年の論文で、本発明者らは、IL-1βBが新生仔ラット島タンパク質の2-Dゲルにおいて、29個のタンパク質をアップレギュレートし、そして4つのタンパク質をダウンレギュレートすることをそれぞれ示した(Andersenら、Diabetes44:400-407 (1991))。10%ゲルを、本研究と類似の条件下で培養した(35S)メチオニン標識Wistar Furth新生仔ラット島から調製した。従って、ラット島の10%のIEFおよびNEPHGEDBを、以前の論文(Andersenら、Diabetes 44:400-407(1991))で可視解析したIL-1β曝露島のコンピューター解析ゲルとの比較のために使用した。各DBスポットのIOD%の±2SDをカットオフレベルとして用いて(可視解析における有意なアップまたはダウンレギュレーションのための基準に匹敵する)、10%DBとの比較は、これらの変化の32個を確認し、そして予期されるようにいくつかの新規なタンパク質変化を同定した。従って、IL-1βによって、全部で183個のスポットがアッブレギュレートされ、113個がダウンレギュレートされ、そして34個が新規に合成された(結果は示さず)。スチューデントt検定においてp<0.01をカットオフレベルとして用いた場合、最終的な解析は、IL-1βによって、52個のスポットがアップレギュレートされ、47個がダウンレギュレートされ、そして6個が新規に合成されることを示し、これらのうち13個は、可視解析により選択された33個のスポット中に含まれた。
【0258】
考察:
本研究において、本発明者らは、新生仔ラットランゲルハンス島の10%および15%のアクリルアミド2-Dゲルタンパク質DBを提示する。これは、任意の種における島またはインスリン分泌細胞の第一のタンパク質データベースを含む。1792個のスポットが15%DBにおいて5つのゲルのうち5つに存在したが、一方、1373個のスポットが10%DBにおいて5つのゲルのうち5つに存在した。このことは、75.2%〜91.7%の間の質的再現性を生じている。両データベースにおいて、%IODの平均CV%は、42.4%〜45.7%の間であった。IL-1βによる発現で変化したタンパク質を区別するために10%DBを適用し、105個の現在未同定のタンパク質スポットが、IL-1βによりアップ/ダウンレギュレートされるかまたは新規に合成されることが分かった。
【0259】
新生仔Wistar Furthラット島の特徴。可変性を減少させるために、ラットの同系繁殖WistarFurth系を本発明者らのデータベースの島供給者として選択した。この系統は、本発明者らの研究所において島実験のために日常的に使用されている異系交配Wistarの同系繁殖変種である(Andersenら、Diabetes43:770-777(1994))。本発明者らは、IL-1βを用いてまたは用いずに培養したWistar Furth新生仔ラット島の機能がWistar新生仔ラット島の機能に匹敵することを以前に決定し(Andersenら、Diabetes44:400-407(1995);Andersenら、Acta Endocrinol. 120:92-98(1989))、そしてWistar Furth島の2-Dゲルタンパク質パターンに対するIL-1βの効果を決定した(Andersenら、Diabetes44:400-407(1995))。本データベースは新生仔ラット島に基づくのであって、成体ラット島には基づいていないので、本発明者らは、成体島のタンパク質パターンが異なることを排除できない。しかし、異系交配Wistarラット由来の成体および新生仔島は、IL-1の有害な影響に対して同等に感受性である(Mandrup-Poulsenら、Diabetes36:641-647(1987))。
【0260】
島単離のために使用される新生仔ラットの各同腹仔は、代表的には、種々の頻度で雄または雌である8〜12の仔ラットからなる。雄および雌の異系交配Wistarラット由来の肝臓タンパク質のクマシーブルー染色ゲルの比較は、250個の解析したスポットのうち7個において量的差異を示し、そして6つのタンパク質が雄において独占的に見出され、そして1つのタンパク質が雌において独占的に見出された(Steinerら、Electrophoresis16:1969-1976 (1995))ので、本発明者らのデータベースにおけるタンパク質のいくつかは、性特異的または性調節的であると考えられる。従って、本発明者らのデータベースにおけるスポットのいくつかの高い変動は、本発明者らが雄および雌のラット由来の島の別個のデータベースを作成するために選択した場合減少され得る。しかし、肝臓タンパク質のゲルを、非培養細胞において実施した。これは、性決定タンパク質可変性は、循環性ステロイドによって誘導され得、肝細胞自体の固有の形質ではないことを意味し得る。循環ホルモンは、本発明者らのタンパク質パターンに干渉しないと思われる。なぜなら、I)本発明者らは、実験前に4日間島を予備培養し、そしてII)性ステロイドの血清濃度における差異は思春期前には見られないからである。さらに、本発明者らは、雄および雌異系交配Wistarラット由来の島は、IL-1の有害な影響に対して同等に感受性であることを以前に示した(Steinerら、Electrophoresis16:1969-1976(1995))。
【0261】
島タンパク質の検出。本発明者らのデータベースにおいて検出された全てのスポットが、異なるタンパク質体(entity)を表しているわけではない。なぜなら、いくつかのスポットは他のタンパク質の改変(例えば、アセチル化、メチル化、リン酸化、またはカルバミル化)を表し得るからである。しかし、スポットの検出数は、島タンパク質の総数の低めの見積もりである。なぜなら、タンパク質データベースは、感度限界未満のタンパク質、メチオニンを含まないタンパク質、6kDaより低いかもしくは250kDaより高い分子量を有するタンパク質、または3.5より低いかもしくは10.5より高いpHを有するタンパク質を含まない。さらに、検出限界を上回るIODを有するスポットの約40%は、以前には、それらが他のスポットに覆われているので失われていると見積もられていた(Garrels、J.Biol. Chem. 264:5269-5282 (1989))。最後に、4時間の標識化期間が、高い合成速度でのタンパク質の標識化を与えるが、より長い標識化期間が、全てのタンパク質が定常状態にあるデータベースを作成するために必要とされ得る。
【0262】
質的再現性。2-Dゲルタンパク質データベースの質的再現性の以前の報告は少なく、結果は可変である:クマシーブルー染色2-Dゲルのマウス肝臓タンパク質データベースでは、826個のスポットがマスター画像に存在し、平均して500個のスポットが他のマウス肝臓パターンの85%において適合した(Giomettiら、Electrophoresis13:970-991(1992))。(35S)-メチオニン標識マウス胚のタンパク質データベースでは、4つのゲル画像の各々において80%以上のスポットが、自動的に標準画像に適合された(Shiら、Molec.Reprod. Develop. 37:34-47 (1994))。本発明者らの研究では、1792個のスポット(75.2%〜91.7%)が15%DB中の5つのゲルの内5つに存在したが、5つのゲルの内5つに存在するスポットの平均百分率は10%DBにおけるより5〜10%低かった。これは、おそらく10%ゲルでのみ解析可能な高分子量領域には、15%ゲルでのみ解析可能な低分子量領域におけるよりも、より少ないタンパク質が存在するという事実に起因する。解析した全ての群において、NEPHGEゲルの質的再現性は、IEFゲルにおける再現性より低かった。NEPHGEゲルは、IEFゲルとは反対に、非平衡性ゲルなので、同一のスポットがわずかに異なる水平位置を有する危険性が増大する。しかし、本発明者らの手動編集は、この問題が可能な限り取り除かれていることを確認した。
【0263】
量的再現性。量的再現性に関しては、他の研究との比較は困難である。なぜなら、スポット同定のために用いられる方法は同一ではないからである。さらに、以前に公開されたデータベースのほとんどにおける%IODのCV%の計算に含まれるスポットは、種々の基準に従って適合スポットの総数から選択される。雄および雌のWistarラット肝タンパク質の10個のクーマシーブルー染色ゲルにおいて、「マスターゲル」に存在する1,000個より多くのスポットのうち250個を、良好な形状、大きさ、および解像度、ならびに以前の実験における存在および良好な質に従って選択した(Steinerら、Electrophoresis16:1969-1976(1995))。これらの基準を用いて、スポットの3分の1は、20%を下回るCV%を有し、半分より多くは、30%を下回るCV%を有し、そして4分の3は40%を下回るCV%を有した(Steinerら、Electrophoresis16:1969-1976(1995))。緻密八細胞(compacted eight-cell;CEC)マウス胚の5つのゲルおよび胞胚期(BS)マウス胚の4つのゲルからなる(35S)-メチオニン標識マウス胚のタンパク質データベースでは、それぞれ1,674個のスポットおよび1,653個のスポットが、全てのゲルにおいて適合した(Shiら、Molec.Reprod. Develop. 37:34-47 (1994))。全ての適合スポットに基づいて算定すると、これらのスポットの74%(CEC)または79%(BS)の百分率誤差(SEM×100/平均として定義)は50%未満であり、そしてスポットの45%(CEC)または47%(BS)は30%を下回る百分率誤差を有した(Shiら、Molec.Reprod. Develop. 37:34-47 (1994))。比較のために、SDのSEMへの変換(SEM=SD/√n)が、島IEFの15%DBにおいて20.3%の平均CV%を与え、スポットの97.7%および83.2%は、それぞれ50%および30%を下回る百分率誤差を有する。
【0264】
本発明者らの研究の量的再現性は、マウス胚における研究(Shiら、Molec. Reprod.Develop. 37:34-47 (1994))に匹敵するか、またはずっとより良好であるが、本発明者らのデータベースにおける%IODの平均CV%はなお相対的に高い。以前に述べたように、島の異種細胞集団および島単離の異なる雄/雌比がゲル可変性に寄与し得る。本発明者らは、匹敵する全光学密度を有するゲルを用いるよう試みた(各亜群内の最大差異は3.5の係数(factor)であった(ゲルDB10対ゲルDB3、IEF15% DB、表3))が、X線フィルムの非線形飽和が全データベーススポットについてのCV%の大きさに寄与する。ホスホイメージング(本研究が開始されたとき本発明者らの研究室では利用可能ではなかった技術)の適用は、この現象のCV%の大きさへの寄与を減少させた。最後に、コンピューター解析における電気ノイズおよびスポット境界規定の差異が、CV%の大きさに寄与し得る。いくつかの他のゲル解析プログラムとは反対に、BioImage(登録商標)プログラムは、境界規定のために局所的であって、全体的ではないバックグラウンドを使用し、後者の因子のCV%への寄与を減少させる。
【0265】
複製ゲルの研究。(35S)-メチオニン標識REF 52細胞の10の複製ゲルの研究において、Garrelsは、全体で約2,000スポットのうち最も優勢なスポットの1109個を選択し、そして<5%および>100%の間の範囲ならびに10%と15%との間の様式値(modalvalue)では、平均CV%が26.5%であることを見出した(Garrels、J. Biol. Chem. 264:5269-5282 (1989))。試料を連続して解析したか同じセットのゲルで解析したかは明確ではない。スポットの質(Gaussian形状への適合、隣接スポットの重複)に従ってスポットを群分けし、そして全てのゲルにおいて低密度を有するスポットを省くとき、最高の質の19.1%のスポットは、13.0%の平均CV%を有した(Garrels、J.Biol. Chem. 264:5269-5282 (1989))。予期されるように、%IODの平均CV%は、15%IEFおよびNEPHGEアッセイ間解析を15%IEFDBに比較したとき減少した。この減少は、約9%である。アッセイ内解析ではゲル調製物の日毎の変動を除いたので、平均CV%はよりずっと減少すると予期された。15%IEF亜群において、CV%は、データベースに比較して約15%減少したが、15%NEPHGE亜群では減少は見られなかった。15%NEPHGEアッセイ内亜群(これはまた、全ての亜群のうち最も低い質的再現性を有する(表4〜6))における高い平均CV%の理由は、不明である。データベースゲルもまた1セットのゲルにおいて解析したとき、生物学的変動に起因するCV%の部分は、データベースと所定のスポットに対するアッセイ内解析との間のCV%における差異によって与えられるべきである。従って、15%NEPHGEアッセイ内解析の結果が無視される場合、IOD%の平均CV%の約3分の1は、生物学的変動に起因する。
【0266】
島タンパク質発現に対するIL-1βの影響。IL-1βは、105個のこれまで同定されていないタンパク質の発現を変化させた。島細胞におけるIL-1β作用機構は十分に解明されていないが、3つの異なるタンパク質群は重要な役割を果たしている:シグナル伝達に関与するタンパク質およびいわゆる初期応答および後期応答遺伝子によりコードされたタンパク質(Eizirikら、Diabetologia39:875-890 (1996))。標的細胞におけるIL-1β誘導シグナル伝達は、4つの主要なシグナル伝達経路を包含すると思われる:核因子-κb、ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK/JNK)、タンパク質キナーゼC、およびチロシンキナーゼ(Mandrup-Poulsen,T.、Diabetologia 39:1005-1029 (1996);Eizirikら、Diabetologia 39:875-890 (1996))。3つの経路は、c-fos、c-jun、およびインターフェロン応答因子-1が島細胞におけるサイトカイン作用に関与している初期応答遺伝子の迅速でかつ一過的な誘導を導く。初期応答遺伝子は、島において有害な可能性のある作用(iNOS、シクロキシゲナーゼ-2、およびリポキシゲナーゼ)および保護的作用(HSP72、ヘムオキシゲナーゼ、Mnスーパーオキシドジスムターゼ)を伴う特定の遺伝子を活性化する(Mandrup-Poulsen,T.、Diabetologia 39:1005-1029 (1996);Eizirikら、Diabetologia 39:875-890 (1996))。従って、島細胞におけるIL-1β作用機構に関する情報はなお限定されており、そしてIL-1βによる発現で変化された105個のタンパク質の同定は、シグナル伝達ならびに保護作用および有害作用を伴うタンパク質に関する新たな知識を導き得る。
【0267】
結論
本発明者らは、他の細胞および組織において以前に公開されたデータベースを改善する、高い質的再現性および量的再現性を有する新生仔ラットランゲルハンス島のタンパク質データベースを確立した。さらに、本発明者らは、新生仔ラット島タンパク質データベースのアッセイ内変動およびアッセイ間変動を決定した。このデータベースはさらに、IL-1βによる発現において変化したタンパク質(IL-1β作用機構において重要な役割を有し得る)を同定するために適用される。IL-1βは、インスリン産生ラットB細胞に対して細胞傷害性であるので、現在、質量分析法および微量配列決定により行われているこれらのタンパク質の同定は、インスリン依存性糖尿病の病原に関して重要な知識を生じると期待される。
【0268】
【表10】


【0269】
【表11】


【0270】
【表12】


【0271】
【表13】


【0272】
【表14】


【0273】
【表15】


【0274】
【表16】


【0275】
【表17】


【0276】
【表18】


【0277】
【表19】


【0278】
【表20】


【0279】
【表21】


【0280】
【表22】


【0281】
【表23】


【0282】
本明細書中において引用されるすべての参考文献(ジャーナル論文もしくは要約、公開もしくは係属中の米国もしくは外国の特許出願、発行された米国もしくは外国の特許、または任意の他の参考文献を含む)は、その全体(その引用された参考文献のすべてのデータ、表、図、および文章を含むが本明細書中において参考として援用される。さらに、本明細書中で引用された参考文献において引用された参考文献の全内容もまた、その全体が参考として援用される。
【0283】
公知の方法工程、従来の方法工程、公知の方法、または従来の方法の参照は、本発明の任意の局面、説明、または実施態様が、関連する技術において開示されるか、教示されるか、または示唆されるという承認では決してない。
【0284】
特定の実施態様の先述の説明は、本発明の一般的な性質を十分に示すので、他の人々が、当該分野の技術内の知識(本明細書中において引用された参考文献の内容を含む)を適用することによって、過度の実験なしに、本発明の一般的な概念から逸脱することなしに、種々の適用のためにそのような特定の実施態様を容易に改変および/または応用し得る。従って、そのような応用および改変は、本明細書中において示される教示および案内に基づいて、開示された実施態様の等価物の意味および範囲内であることが意図される。本明細書の術語または専門用語が、当業者の知識と組み合わせて、本明細書中に示される教示および案内を考慮して、当業者によって解釈されるように、本明細書中における専門用語または術語は、説明の目的であり、限定の目的ではないことが理解されるべきである。
【0285】
(配列表)
【0286】
【表24】

【0287】
【表25】

【0288】
【表26】

【0289】
【表27】

【0290】
【表28】

【0291】
【表29】

【0292】
【表30】

【0293】
【表31】

【0294】
【表32】

【0295】
【表33】

【図面の簡単な説明】
【0296】
【図1A】図1Aおよび1Bは、RPMI 1640+0.5%の正常なヒト血清中で24時間インキュベートし、続いて[35S]-メチオニンで4時間標識した新産のラットの島細胞中で発現されたタンパク質の2次元ゲルの蛍光写真を示す。図1Aは、等電収束ゲルである(IEF;pH3.5〜7)。図1Bは、非平衡pH勾配電気泳動ゲルである(NEPHGE;pH 6.5〜10.5)。矢印は、105個の糖尿病媒介タンパク質を示す。
【図1B】図1Aおよび1Bは、RPMI 1640+0.5%の正常なヒト血清中で24時間インキュベートし、続いて[35S]-メチオニンで4時間標識した新産のラットの島細胞中で発現されたタンパク質の2次元ゲルの蛍光写真を示す。図1Aは、等電収束ゲルである(IEF;pH3.5〜7)。図1Bは、非平衡pH勾配電気泳動ゲルである(NEPHGE;pH 6.5〜10.5)。矢印は、105個の糖尿病媒介タンパク質を示す。
【図2】図2は、マウスのモルタリンのアミノ酸配列である。
【図3】図3は、ヒトのモルタリンのアミノ酸配列である。
【図4】図4は、ラットのガレクチンのアミノ酸配列である。
【図5】図5は、ヒトのガレクチンのアミノ酸配列である。
【図6】図6は、図に示すパラメーターを使用して決定した、糖尿病媒介タンパク質GR75(モルタリン)、IEFSpot No.340の質量スペクトルである。
【図7】図7は、示したように決定した、ラミン IEF Spot No.655として仮に同定された糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図8】図8〜10は、示したように決定した、ピルビン酸キナーゼ NEPHGE Spot No.1として仮に同定された糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図9】図8〜10は、示したように決定した、ピルビン酸キナーゼ NEPHGE Spot No.1として仮に同定された糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図10】図8〜10は、示したように決定した、ピルビン酸キナーゼ NEPHGE Spot No.1として仮に同定された糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図11】図11は、示したように決定した、6-ホスホブルクトース-2-キナーゼ NEPHGESpot No.169として仮に同定された糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図12】図12は、示したように決定した、トリオースリン酸イソメラーゼ NEPHGE SpotNo.334として仮に同定された糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図13】図13は、示したように決定した、フルクトース二リン酸アルドラーゼ NEPHGESpot No.668として仮に同定された糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図14】図14〜15は、示したように決定した、分子量42,243ダルトンおよびpI 5.82を有する、「IEFSpot No.665」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図15】図14〜15は、示したように決定した、分子量42,243ダルトンおよびpI 5.82を有する、「IEFSpot No.665」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図16】図16は、示したように決定した、分子量25,851ダルトンおよびpI 5.09を有する、「IEFSpot No.939」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図17】図17〜18は、示したように決定した、分子量22,704ダルトンおよびpI 5.15を有する、「IEFSpot No.941」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図18】図17〜18は、示したように決定した、分子量22,704ダルトンおよびpI 5.15を有する、「IEFSpot No.941」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図19】図19は、示したように決定した、分子量25,753ダルトンおよびpI 4.53を有する、「IEFSpot No.950」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図20】図20〜23は、示したように決定した、分子量143,064ダルトンおよびpI5.41を有する、「IEF Spot No.1196」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図21】図20〜23は、示したように決定した、分子量143,064ダルトンおよびpI5.41を有する、「IEF Spot No.1196」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図22】図20〜23は、示したように決定した、分子量143,064ダルトンおよびpI5.41を有する、「IEF Spot No.1196」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図23】図20〜23は、示したように決定した、分子量143,064ダルトンおよびpI5.41を有する、「IEF Spot No.1196」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図24】図24は、示したように決定した、分子量65,522ダルトンおよびpI 7.28を有する、「IEFSpot No.7」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図25】図25は、示したように決定した、分子量115,709ダルトンおよびpI 8.33を有する、「IEFSpot No.9」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図26】図26は、示したように決定した、分子量63,560ダルトンおよびpI 7.26を有する、「IEFSpot No.102」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図27】図27は、示したように決定した、分子量57,040ダルトンおよびpI 8.17を有する、「IEFSpot No.123」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図28】図28は、示したように決定した、分子量57,609ダルトンおよびpI 7.72を有する、「IEFSpot No.129」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図29】図29は、示したように決定した、分子量55,734ダルトンおよびpI 8.07を有する、「IEFSpot No.130」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図30】図30〜31は、示したように決定した、分子量53,830ダルトンおよびpI 7.92を有する、「IEFSpot No.174」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図31】図30〜31は、示したように決定した、分子量53,830ダルトンおよびpI 7.92を有する、「IEFSpot No.174」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図32】図32〜33は、示したように決定した、分子量49,422ダルトンおよびpI 7.40を有する、「IEFSpot No.181」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図33】図32〜33は、示したように決定した、分子量49,422ダルトンおよびpI 7.40を有する、「IEFSpot No.181」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図34】図34〜35は、示したように決定した、分子量54,098ダルトンおよびpI 7.61を有する、「IEFSpot No.182」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図35】図34〜35は、示したように決定した、分子量54,098ダルトンおよびpI 7.61を有する、「IEFSpot No.182」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図36】図36は、示したように決定した、分子量47,925ダルトンおよびpI 7.28を有する、「IEFSpot No.211」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図37】図37は、示したように決定した、分子量44,362ダルトンおよびpI 8.34を有する、「IEFSpot No.231」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図38】図38は、示したように決定した、分子量43,162ダルトンおよびpI 7.90を有する、「IEFSpot No.236」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図39】図39〜40は、示したように決定した、分子量39,160ダルトンおよびpI 9.05を有する、「IEFSpot No.253」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図40】図39〜40は、示したように決定した、分子量39,160ダルトンおよびpI 9.05を有する、「IEFSpot No.253」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図41】図41は、示したように決定した、分子量34,600ダルトンおよびpI 4.76を有する、「IEFSpot No.831」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図42】図42〜43は、示したように決定した、分子量26,800ダルトンおよびpI 4.49を有する、「IEFSpot No.949」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図43】図42〜43は、示したように決定した、分子量26,800ダルトンおよびpI 4.49を有する、「IEFSpot No.949」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図44】図44〜46は、示したように決定した、分子量57,600ダルトンおよびpI 7.72を有する、「IEFSpot No.129」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図45】図44〜46は、示したように決定した、分子量57,600ダルトンおよびpI 7.72を有する、「IEFSpot No.129」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図46】図44〜46は、示したように決定した、分子量57,600ダルトンおよびpI 7.72を有する、「IEFSpot No.129」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図47】図47は、示したように決定した、分子量35,800ダルトンおよびpI 7.57を有する、「IEFSpot No.310」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。
【図48】図48は、示したように決定した、分子量34,500ダルトンおよびpI 8.62を有する、「IEFSpot No.326」と呼ばれる新規の糖尿病媒介タンパク質の質量スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate


【公開番号】特開2008−195721(P2008−195721A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40600(P2008−40600)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【分割の表示】特願平10−521182の分割
【原出願日】平成9年10月24日(1997.10.24)
【出願人】(508053876)
【出願人】(507185381)
【出願人】(508054862)
【出願人】(508054884)
【出願人】(508054851)
【出願人】(508054840)
【出願人】(508054873)
【Fターム(参考)】