糖濃度に対するシグナル強度の向上した蛍光標識蛋白質及びその用途
【課題】糖濃度に対するシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質及びその用途に係り、さらに詳細には、糖の結合によって構造的な変化を起こす結合蛋白質の両末端に相異なる発光波長帯の蛍光蛋白質を融合させて、細胞内の代謝に関与する多様な糖濃度の変化を、FRETによる発光量の変化を利用して比較できる蛍光標識蛋白質、及び該蛍光標識蛋白質を利用した糖濃度変化の検出方法を提供する。
【解決手段】FRET原理に基づいて、既存の蛍光標識蛋白質よりシグナルの強度が優れており、かつ細胞内のマルトースなどの多様な種類の糖濃度をさらに正確に測定できる糖濃度に対するシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質を提供する。
【解決手段】FRET原理に基づいて、既存の蛍光標識蛋白質よりシグナルの強度が優れており、かつ細胞内のマルトースなどの多様な種類の糖濃度をさらに正確に測定できる糖濃度に対するシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖濃度に対する向上したシグナルの強度を有する蛋白質バイオセンサー及びその用途に係り、さらに詳細には、糖の結合によって構造的な変化を起こす結合蛋白質の両末端に、相異なる発光波長帯を有する蛍光蛋白質を融合させて、細胞内代謝に関与する多様な糖濃度の変化を、蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Energy Transfer:FRET)による発光量の変化を利用して比較できる蛍光標識蛋白質、及び該蛍光標識蛋白質を利用した糖濃度変化の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラゲから由来したwtGFP(wild type Green Fluorescent Protein)の多様な遺伝子変異であるEBFP(Enhanced Blue Fluorescent Protein)、EGFP(Enhanced Green Fluorescence Protein)、あるいはECFP(Enhanced Cyan Fluorescence Protein)とEYFP(Enhanced Yellow Fluorescence Protein)との間のFRET現象を利用した蛍光標識蛋白質センサーの始まりは、サンディエゴ大学のTsienグループで、1997年に‘カルモジュリン(calmodulin)’、及びそれと相互作用する‘M13ペプチド’にEBFP及びEGFPを融合させた、‘カメレオン(cameleon)’と名づけた蛍光標識蛋白質であって、細胞内Ca2+の濃度を測定することによって本格的に始まった(Miyawaki, A.et al., Nature, 388:882, 1997;WO98/40477)。また、1997年、Hellingaグループでは、リガンドの結合により構造が変わる微生物のPBPs(Periplasmic Binding Proteins)の一種であるMBP(Maltose-Binding Protein)に蛍光染料を結合させて、生体外部(in vitro)で高い感度を有するセンサーを構築し、つい最近まで多様な種類のPBPsに適用した事例が報告されている(Marvin, J. S. et al., PNAS, 94:4366, 1997;Robert, M. et al., Protein Science, 11:2655, 2002)。
【0003】
このような研究に基づいて、2002年、Frommerグループでは、MBPの両末端にECFP及びEYFPを融合させて、生きている酵母で安定的に発現して、FRETにより変わるEYFP及びECFPの発光量の比率変化を比較する方法で、生きている酵母内でマルトースの濃度を定量的に測定した結果を発表した(Fehr, M.et al., PNAS, 99:9846, 2002;WO03/025220)。同グループでは、同種のPBPsであるRBP(Ribose-Binding Protein)、GGBP(Glucose/Galactose-Binding Protein)及びGlnBP(Glutamin-Binding Protein)を利用して、生きている細胞内でそれぞれの物質を定量的に分析する研究結果を発表した(Lager, I.et al., FEBS Lett., 553:85, 2003;Fehr, M.et al., JBC., 278:19127, 2003;Okumoto, S. et al., PNAS, 102:8740, 2004)。その他にも、細胞内の信号伝達に重要な役割を行うGTP/GDPの濃度変化を、生きている細胞でリアルタイムで観察した研究 (Mochizuki, N.et al., Nature, 411:1065, 2001)、ボツリヌス(C.botulinum)の神経毒素の活性を測定した研究(Dong, M.et al., PNAS, 101:14701, 2004)、及び細胞内のイノシトール1,4,5−トリリン酸を定量的に測定した研究(Tanimura, A.et al., JBC., 279:38095, 2004)などに、‘カメレオン’と類似した形態の蛍光標識蛋白質を利用して、さらに多様な物質を検出する目的への技術発展が行われてきた。
【0004】
環境モニタリングなどのバイオセンサーと関連して、さらに他の方向への研究としては、RBPを、インシリコ蛋白質の設計に基づいた遺伝子の操作により、TNT(trinitrotoluene)のような環境有害物質と結合できる蛋白質から再構成した形態の新たな機能を行うバイオセンサーの開発が行われ(Looger, L.L.et al., Nature, 423:185, 2003)、マルトース(Maltose)の結合によって構造の変化を伴う、MBPの特定部位にラクタマーゼ(β-lactamase)を挿入した蛍光標識蛋白質の構造的な連動に基づいて、マルトースの結合部位にショ糖(sucrose)が結合できる新たな結合蛋白質の再設計に成功した例がある(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)。これは、前記‘カメレオン’形態の結合蛋白質に新たな結合蛋白質を導入する方式の、“オーダーメードFRETセンサー”の開発が可能であり、したがって、多様な細胞機能の分析に有効に適用できる基盤技術であると言える。
【0005】
しかし、初期に開発された前記蛍光標識蛋白質は、非常に低いシグナルの強度を表すという短所があり、さらに正確かつ定量的な測定手段として活用するためには、シグナルの強度に優れた蛍光標識蛋白質の開発が要求されている(Fehr, M.et al., Current Opinion in Plant Biology, 7:345, 2004)。また、最近は、このような短所を補完しようとする試みがあり、その一例として、Miyawakiグループでは、‘カメレオン’のEYFP遺伝子を改良するか、または順次置換(circular permutation)する方法で蛍光標識蛋白質の低いシグナルの強度を向上させうるという研究結果を、2001年から最近まで持続的に発表してきた(Nagai, T.et al., PNAS, 98:3197, 2001;Nagai, T.et al., PNAS, 101:10554, 2004;WO05/036178)。また、Frommerグループでは、GGBPまたはGlnBPなどの遺伝子に蛍光蛋白質を挿入するイン−フレーム・フュージョン(in-frame fusion)で各蛍光標識蛋白質のFRETシグナルの変化を大きく向上させうるという研究結果を発表した(Deuschle, K.et al., Protein Science, 14:2304, 2005)。しかし、蛍光標識蛋白質のシグナルの強度を向上させる目的で前記方法を適用するには、遺伝子の操作に高度な技術が必要であり、さらに、構造及び動的特性の異なる結合蛋白質及び蛍光蛋白質から構成された新たな蛍光標識蛋白質を製作するには、全ての開発過程が初めから改めて設計されねばならないという問題点がある。
【0006】
従って、本発明者らは、前記問題点を解決するために鋭意努力した結果、結合蛋白質と蛍光蛋白質との間に任意の短い無作為なペプチドを挿入するか、または結合蛋白質に物質が結合する特定部位を遺伝子変異させて高速探索する方法で、多様な糖濃度範囲が感知できるシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質の製作が可能であるという事実を確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、糖濃度に対する高いシグナルの強度を有する蛍光標識蛋白質及び該蛍光標識蛋白質を利用した微生物内の糖濃度変化の検出方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記蛍光標識蛋白質をコードする核酸及び前記核酸を含む組み換え発現ベクターで形質転換された組み換え微生物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記組み換え微生物を培養することを特徴とする糖濃度に対するシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記構造式Iで表示される糖濃度に対するシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質を提供する。
【0011】
〔構造式I〕
【0012】
ここで、BPは、MBP、ALBP(Allose Binding Protein)、ARBP(Arabinose Binding Protein)、RBP及びSBP(Sucrose Binding Protein)から構成された群から選択され、L1及びL2は、2つのアミノ酸または短いペプチドから構成され、FP1は、ECFP、EBFP及びEGFPから構成された群から選択され、FP2は、EYFP、EGFP及びRFP(Red Fluorescent Protein)から構成された群から選択される。
【0013】
本発明において、前記BPは、MBPであり、前記L1は、Gln−IleまたはLeu−Hisであることを特徴とし、前記蛍光標識蛋白質(MBP融合蛋白質)は、配列番号31または配列番号32のアミノ酸配列を有しうる。
【0014】
本発明において、前記BPは、ALBPであり、前記L1は、Gln−Valであることを特徴とし、前記蛍光標識蛋白質は、配列番号36のアミノ酸配列を有しうる。
【0015】
本発明において、前記BPは、ARBPであり、前記L1は、Pro−Argであることを特徴とし、前記蛍光標識蛋白質は、配列番号37のアミノ酸配列を有しうる。
【0016】
本発明において、前記BPは、RBPであり、前記L1は、Asn−Aspであることを特徴とし、前記蛍光標識蛋白質は、配列番号38のアミノ酸配列を有しうる。
【0017】
本発明において、前記BPは、MBP変異体であり、前記変異体は配列番号30のアミノ酸配列のうち62番目のアミノ酸が変異されたことを特徴とし、前記変異はTrp62Ala、Trp62His及びTrp62Leuから構成された群から選択された何れか一つであることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明において、前記蛍光標識蛋白質は、配列番号33ないし配列番号35からなる群のうち、何れか一つのアミノ酸配列を有することを特徴とすることができる。
【0019】
本発明において、前記BPはSBPであることを特徴とし、前記SBPは配列番号30のアミノ酸配列を有するMBPの変異体であることを特徴とすることができる。
【0020】
本発明において、前記変異体は配列番号30のアミノ酸配列のうち、Asp14Leu、Lys15Phe、Trp62Tyr及びGlu111Tyrの変異を含むことを特徴とすることができる、また、前記蛍光標識蛋白質(SBP融合蛋白質)は、配列番号39のアミノ酸配列を有することを特徴とすることができる。
【0021】
本発明は、前記蛍光標識蛋白質をコードする塩基配列からなる核酸を提供する。さらに、本発明は、前記核酸を含む組み換えベクターを提供する。
【0022】
本発明において、前記組み換えベクターは、pECMY−QI、pECMY−LH、pECSY−LH、pECMY−LH/W62A、pECMY−LH/W62H及びpECMY−LH/W62Lから構成された群から選択されうる。
【0023】
本発明において、前記組み換えベクターは、標的信号配列(targeting signal sequence)をさらに含むことを特徴とし、標的信号配列及び付着配列をさらに含みうる。
【0024】
本発明は、また、前記蛍光標識蛋白質をコードする塩基配列を含む組み換えベクターを、バクテリア、酵母、カビ及び動植物の細胞から構成された群から選択される宿主細胞に導入させて得た組み換え微生物または細胞を提供する。
【0025】
また、本発明は、(a)前記組み換え微生物または細胞を培養して蛍光標識蛋白質を発現する工程と、(b)前記培養微生物または細胞から前記蛍光標識蛋白質を得る工程と、を含む構造式Iの蛍光標識蛋白質の製造方法を提供する。
【0026】
また、本発明は、(a)前記組み換え微生物または細胞を培養して、構造式Iの蛍光標識蛋白質を発現する工程と、(b)蛍光分析装備を利用して、前記培養された微生物または細胞内の糖濃度変化を分析する工程と、を含む構造式Iの蛍光標識蛋白質を利用した微生物及び細胞内の糖濃度変化の検出方法を提供する。
【0027】
本発明において、前記(b)工程は、蛍光分析装備で蛍光供与体及び受容体の発光量の変化を比較して、微生物または細胞内の糖濃度が分析できる。
【0028】
本発明において、前記蛍光分析装備は、共焦点顕微鏡または蛍光顕微鏡でありうる。
【0029】
前記BPのうちSBPは、MBPで再設計されたプロテインであり(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)、前記プロテインに制限されず、検出しようとする物質との特異的な結合が可能であり、かつ検出物質の結合によって構造が変わる蛋白質であればいかなるものでもよい。
【0030】
前記FP1及びFP2は、信号発生部として使用した蛍光供与体及び受容体であり、供与体の発光スペクトルと受容体の吸光スペクトルとが互いに重なり合って、FRETを誘発できるものであればいかなるものでもよく、このうち、単量体への発現が可能であり、かつ発現された蛍光蛋白質の吸光係数、量子効率及び光安定性などを考慮すれば、ECFP及びEYFPが望ましい。前記蛍光標識蛋白質センサーの作動原理は、図1に示す通りである。
【発明の効果】
【0031】
本発明はFRETの原理に基づいて、既存の蛍光標識蛋白質よりシグナルの強度に優れており、かつ細胞内のマルトースなどの多様な種類の糖濃度をより正確に測定できる糖濃度に対するシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質を提供する。また、既存のマルトース以外にも、他の多様な種類の糖を検出する蛍光標識蛋白質の製造が可能になり、既存のバイオセンサーとして利用される蛋白質から、信号強度の向上した蛍光標識蛋白質の製造に容易に活用されうるので、さらに普遍的に適用されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明は、生体外部で、または生きている細胞内部(in vivo)に流入されるか、または代謝される物質の濃度を定量的に測定できる蛋白質センサーに関する。また、本発明は、FRETの可能な相異なる二種の蛍光蛋白質の間に、検出しようとする物質の結合により蛋白質の3次元構造が変わる結合蛋白質を融合させた形態のバイオセンサーであって、前記の蛍光標識蛋白質は、検出しようとする物質の結合による結合蛋白質の構造変化が、FRETに変化を誘発して発光の波長を変化させ、このような発光波長の変化は、結合物質の濃度に比例するので、検出しようとする物質の定量的な測定が可能である。
【0034】
本発明において、蛍光の光学的な特性である‘FRET’とは、相異なる二種の蛍光物質の間で発生する非放射性エネルギー転移現象であって、励起された状態の供与体の励起準位エネルギーが受容体に伝達される現象である。FRETは、一般的に供与体から放出される短波長が受容体の吸光スペクトルと重なり合い、光子の出現することなく発生するため、共鳴エネルギー転移と言い、これは、供与体と受容体間の長距離双極子の相互作用による結果である。FRETのエネルギー転移効率は、供与体の発光(emission)スペクトルと受容体の吸収(absorption)スペクトルとがスペクトルオーバーラップ(spectral overlap)される範囲、供与体の量子効率(quantum yield)、供与体及び受容体の転移双極子(transition dipoles)の相対的配向(relative orientation)、及び供与体分子と受容体分子間の距離によって変わる。したがって、FRETのエネルギー転移効率は、供与体分子と受容体分子間の距離及び相対的配向から影響を受けるが、Forsterの数式によれば、下記数式1で表される。
【0035】
【数1】
【0036】
前記数式1で、Eは、FRET効率を表し、Rは、供与体と受容体間の距離であって、蛍光物質によって差はあるが、FRETの発生可能な距離は、通常、2〜9nm以内と定義される。また、R0は、FRET効率が50%になる供与体と受容体間の距離を言い、一般的に、Forster距離またはForster半径と呼ばれる。R0は、下記数式2で表される。
【0037】
【数2】
【0038】
前記数式2で、k2は、配向係数であり、通常、2/3で計算し、供与体の発光及び受容体の吸収の相対的な配向によって0〜4の範囲の値を有する。nは、媒質の屈折率であり、通常、25℃の水は、〜1.334であり、QDは、供与体の量子効率である。J(λ)は、供与体の発光及び受容体の吸収のスペクトル上の重複程度であり、M−1cm−1nm4の単位値を有する(Lakowicz, J.R.Principles of Fluorescence Spectroscopy, 2nd ed., New York:Plenum Press, 1999;Patterson, G.H.et al.,Anal.Biochem.、284:438, 2000;Patterson, G.H.et al.J.Cell Sci.、114:837, 2001)。
【0039】
これにより、前述したFRETの原理を利用して、FRETの供与体及び受容体として作用する蛍光蛋白質であるECFP及びEYFPをMBPの両末端に融合させた蛍光標識蛋白質を構成した。このような蛍光標識蛋白質(MBP融合蛋白質)を、生きている細胞内部で発現させて、内部に流入されるマルトースの濃度を定量的に測定した。さらに詳細には、本発明は、FRETのエネルギー転移効率に影響を及ぼす供与体と受容体間の距離及び相対的な配向に変化を加える目的として、ECFPとMBPとの融合部位に任意の短い無作為なペプチドを挿入して、高いシグナルの強度を有するMBP融合蛋白質を探索する方法で蛍光標識蛋白質を構成し、マルトースが結合するMBPの特定部位に遺伝子操作を加えて、多様な濃度で存在するマルトースが検出できるように構成した。
【0040】
また、本発明は、次の工程を含む蛍光標識蛋白質(MBP融合蛋白質)を改良・製作する方法を提供する。
(1)ECFP−MBP−EYFPから構成された蛍光標識蛋白質で、MBP遺伝子とECFP遺伝子との融合部位の塩基配列を多様化したライブラリーを構築するか、またはマルトースが結合するMBPの特定部位に遺伝子操作を加えた後、MBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを構築する工程;(2)前記MBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを形質転換させた大腸菌から、シグナルの強度が増加し、かつ定量的な特性を異ならせるMBP融合蛋白質を高速探索及び分析する工程;(3)前記工程で獲得したシグナルの強度の増加したMBP融合蛋白質を利用して、単一細胞の内部に流入されるマルトースの濃度を定量的に測定する工程;及び(4)MBPと類似した構造及び機能を有する他種の結合蛋白質に前記開発方法を適用して、新たな物質を検出する蛍光標識蛋白質を構成する工程。
【0041】
本発明によるMBP融合蛋白質は、図1に示すように、ECFP−MBP−EYFPが、一つのポリペプチドから構成されて巨大な融合蛋白質として発現されるが、MBPの大きさが3×4×6.5nm(Spurlino, J.C.et al.、J.Biol.Chem., 266:5202, 1991)であることを考慮すれば、ECFPとEYFP間の距離(distance)が約5〜6nmであるので、FRETが発生可能な距離である。したがって、436nmでECFPを励起させれば、ECFPの励起準位エネルギーがEYFPに伝達されて、ECFP及びEYFPの発光を同時に観察することができる。このように、MBP融合蛋白質にマルトースが結合すれば、MBPの両末端に融合されたECFPとEYFP間の距離及び相対的な配向が変わり、ECFPからEYFPへのFRET効率の差によって発生する二つの蛍光蛋白質の発光量の比率変化を測定する原理でマルトースの検出が可能であるが、発光量の比率変化は、マルトースの濃度に比例するので、定量的な測定が可能である。
【0042】
さらに、前記数式2の計算によれば、ECFP及びEYFPのFRET対は、約5nmのR0値を有するので (Patterson, G.H.et al.Anal.Biochem., 284;438, 2000)、ECFPとEYFP間の距離が約5〜6nmであると仮定すれば、距離または相対的な配向の小さな変化が、FRET効率には大きな差をもたらしうる。したがって、マルトースとの結合以前のFRET効率を最小化し、マルトースの結合によるFRET効率を極大化することが可能であれば、蛍光標識蛋白質のシグナルの強度が大きく向上することになり、これは、MBPと二つの蛍光蛋白質との融合部位の構造を変化させることになって、ECFPとEYFP間の距離及び相対的な配向に変化を与えて、FRET効率の調節が可能になると予想できる。
【0043】
これにより、本発明者らは、図2Aに示すように、MBPの両末端に多様な組成及び長さを有する連結ペプチドが挿入されるように図案した11種の遺伝子を、発現ベクターであるpET21a(+)(Novagen、Germany)のT7プロモーターとHis―6タグの塩基配列との間に存在する制限酵素部位に挿入して、図2Bに示すMBP融合蛋白質発現ベクターを構成した。前記の蛍光標識蛋白質発現ベクターは、生体外部の実験のための発現及び精製の目的で、T7 RNAポリメラーゼ遺伝子を染色体内に有している大腸菌である、JM109(DE3)(Promega、USA)をホストとして形質転換させ、形質転換させた大腸菌をLBメディアに培養しつつ、発現誘導物質であるIPTG(イソプロピル−β−d−チオガラクトピラノシド)を添加することによって、MBP融合蛋白質の発現を誘導した。それぞれのMBP融合蛋白質は、MBP融合蛋白質の末端に発現されたHis―6タグを利用して、Ni SepharoseTMが充填されたHisTrapTM HP1(Amersham Biosciences、Sweden)カラムに結合させた後、イミダゾールを利用した勾配溶離(gradient elution)によって精製した。
【0044】
前記精製された11種のMBP融合蛋白質は、次のような方法で、MBP融合蛋白質としての蛍光特性を検証した。MBP融合蛋白質として使用するための重要な要件の一つは、MBPの両末端に融合させた蛍光蛋白質によるMBPのマルトース結合に障害があってはならないことである。したがって、MBPの末端にEYFPを融合させた蛋白質及び11種類のMBP融合蛋白質を対象として、アミロース樹脂(NEB、米国)を利用したプルダウン分析(pull-down assay)によって、マルトースとの結合の程度を次のような方法で確認した。
【0045】
MBP−EYFP及び11種のMBP融合蛋白質をそれぞれアミロース樹脂と混合した後、遠心分離して沈殿させ、上澄み液に残っているEYFPの発光強度を510nmの波長で測定して、アミロース樹脂との結合以前のEYFPの発光強度と比較することによって結合の程度を分析した。図3に示すように、MBP−EYFP及び11種類のMBP融合蛋白質の残存EYFPの発光強度は約70%であり、ほぼ同じ数値を表した。したがって、MBPの両末端に融合されたECFP及びEYFPは、マルトースとの結合に影響を及ぼさないと判断された。
【0046】
次に、実施例3に詳細に説明された方法により、前記で構成した11種の蛍光標識蛋白質のFRET効率を分析した。FRET効率は、436nmの波長でECFPを励起させて観察されるスペクトルにおいて、EYFP及びECFPの最大発光比率である530/480nmで分析し、図4に示すように、蛍光蛋白質とMBPとを連結するペプチドの長さ及び組成によって異なる結果を表した。
【0047】
その結果、MBP融合蛋白質のFRET効率は、蛍光蛋白質とMBPとを連結するペプチドの長さ及び組成によって変わり、これは、マルトースの結合によるMBP融合蛋白質のシグナルの強度(Δ比率)にも大きな影響を及ぼすということが確認された。
【0048】
本発明では、CMY−BIIの発現ベクターであるpECMY−BIIのECFPとMBPとを連結する6個の塩基配列が、多様な組合わせに置換されるように、突然変異の誘発のためのプライマーとして飽和突然変異(saturation mutagenesis)を加えたMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを構成した。本発明では、ECFP遺伝子の増幅時に使用した逆方向プライマーに6個の任意の塩基配列を置換させて、ECFPとMBPとの間に、2個のアミノ酸からなる多様な組合わせの連結ペプチドを生成させ、同様に、MBPのC−末端にも多様な組合わせの連結ペプチドを生成させることによってライブラリーが構成できた。
【0049】
前記方法で構成したMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させた後、マイクロチター速蛍光分析装備を使用して、個別のMBP融合蛋白質のマルトースに対するΔ比率変化を分析する方式で、約4,000個の融合蛋白質を探索し、シグナルの強度の大きく向上した配列番号31のMBP融合蛋白質CMY−QI及び配列番号32のCMY−LHを選別した。
【0050】
一方、既に発表された資料によれば、MBPのTrp62をAlaに置換させたとき、MBPのKd及びマルトースに対する定量範囲を変えうることが確認されたため(Martineau, P.et al., J.Mol.Biol.、214:337, 1990)、MBPのTrp62を多様な種類のアミノ酸に置換させるための遺伝子の操作を行って、マルトースとの結合能力の変わったMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを製造した。本発明では、MBPのTrp62を置換することにしたが、同様に、マルトースと水素結合またはファン・デル・ワールス相互作用(Van Der Waals interaction)を行うと報告された結合部位(binding site)のアミノ酸にも同じ方式で適用可能である。
【0051】
本発明では、前記方法で構築したMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させた後、探索した結果、シグナルの強度が向上し、かつ定量的な特性の変わった配列番号33のMBP融合蛋白質CMY−LH/W62A、配列番号34のCMY−LH/W62H及び配列番号35のCMY−LH/W62Lを得た。
【0052】
本発明において、CMY−LH/W62Lの発現ベクターで形質転換させた大腸菌は、2005年7月14日に菌株国際寄託機関である生命工学研究所遺伝子銀行(KCTC)(韓国デジョンシユスングオウンドン52KRIBB内、305−333)に寄託番号KCTC 10830BPとして寄託した。しかし、本発明で使用または製作したベクターは、実施例に詳細に説明された方法によって、商業的に購入可能なベクターから通常の操作方法で製作できるので、必ずしも寄託を要するものではない。
【0053】
本発明に係る物質結合蛍光標識蛋白質の効率的な利用分野は、生きている細胞内部に流入または代謝される物質の濃度を定量的に測定及び分析する分野であって、シグナルの強度の向上したMBP融合蛋白質を酵母内部で発現して、イメージングで分析した。その例として、YEGα−HIR525(Sohn et al., Process Biochemistry, 30:653、1995)のGALプロモーターの後位に、MBP融合蛋白質の発現可能な遺伝子を挿入させた組み換え発現ベクターであるYEG−CMY−B、YEG−CMY−BII、YEG−CMY−LH及びYEG−CMY−LH/W62Lを構成した。前記で構成したMBP融合蛋白質の発現ベクターは、栄養要求性(auxotrophic)菌株であるSaccharomyces cerevisiae 2805(Sohn et al., Process Biochemistry、30:653, 1995)に形質転換させて、蛍光顕微鏡を利用してMBP融合蛋白質の発現及びイメージングを分析した。
【0054】
本発明は、特定物質の結合蛍光標識蛋白質のシグナルの強度を向上させる目的のみに制限されるものではなく、さらに多様な種類のシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質の開発に幅広く適用可能である。例えば、MBPの代りに、MBPと類似した構造及び機能を有するBPsの結合蛋白質のうち、ALBP、ARBP、RBP、SBPなどを適用することも可能である。
【0055】
本発明では、前記構成によるMBP融合蛋白質を利用した新たな結合能力を有する蛍光標識蛋白質を製作するために、既に発表されたMBPの遺伝子を部分的に変異させて製作したSBP(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)の遺伝子を、MBP融合蛋白質発現ベクターのMBP遺伝子の部位に置換して構成しようとした。それにより、MBPの遺伝子を部分的に変異させて製作したSBPの遺伝子を製作し、既存のMBP融合蛋白質の発現ベクターであるpECMY−B、pECMY−BII及びpECMY−LHのMBP遺伝子の部位に置換・挿入する方法で、SBP融合蛋白質の発現ベクターを構成した。
【0056】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。それらの実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1:MBP融合蛋白質の発現用組み換えベクターの構築>
図2Aに示すように、三つの蛋白質ドメイン(ECFP、MBP、EYFP)及び二つの合成リンカーが連結ペプチド(cc、yc)とフランキング(flanking)蛋白質の非構造化された末端領域で組み立てれたマルトースの検出用の蛍光標識蛋白質:ECFP―cc−MBP―yc−EYFPが構築された。本発明のMBP融合蛋白質の発現ベクターを構築するために、プライマー1〜11で遺伝子を増幅して発現ベクターを構成した。
【0058】
まず、EYFPの遺伝子を得るために、pEYFP−N1ベクター(Clontech、米国)を鋳型とし、5’の末端には、SacI、EcoRIまたはBamHI制限酵素の認知部位が、3’の末端には、HindIII制限酵素の部位が導入された配列番号1〜4のプライマーを使用してPCR(Polymerase Chain Reaction)を行った。増幅されたEYFP遺伝子は、SacI、EcoRI、BamHI及びHindIII制限酵素で切断した後、MBP発現ベクターであるpMALc2xベクター(NEB、米国)の各制限酵素の部位に挿入してpMEYFP−I、pMEYFP−II、pMEYFP−IIIを構成し、前記三種のベクターから、NdeI、HindIII制限酵素で切断したMBP−yc−EYFP遺伝子を、pET21a(+)ベクター(Novagen、ドイツ)の相応する部位に挿入して、pET―MY−I、pET―MY−II及びpET―MY−IIIの発現ベクターを構築した。
【0059】
次に、pECFPベクター(Clontech、米国)のECFP遺伝子とpMALc2xベクター(NEB、米国)のMBP遺伝子を違うECFP側のコネクター(cc)と共に結合させてECFP―cc−MBP遺伝子を取得した。ECFP遺伝子はECFP遺伝子の3‘末端、cc及びMBP遺伝子の5’末端から構成された配列番号5の一個の正方向のプライマーと配列番号6〜9の四個の逆方向のプライマーを用いて増幅した。同様に、MBP遺伝子は、pMALc2xベクターを鋳型として、配列番号10及び、3’の末端に、SacI及びBamHI制限酵素の認知部位が同時に導入された配列番号11のプライマーを使用したPCRを行うことによって得た。
【0060】
このように増幅されたそれぞれのECFP及びMBP遺伝子は、互いに重なり合うように製作されたプライマーにより重複伸長重合酵素連鎖反応(overlap-extension PCR)が可能であるので、配列番号5及び配列番号11のプライマーを利用して、反応液に同量のECFP及びMBP遺伝子を添加した後にPCRを行って、ECFP及びMBPが合成・増幅された多様な種類の遺伝子を得ることができた。前記増幅されたECFP−MBP遺伝子は、NdeI、SacI及びBamHI制限酵素で切断し、MBP―yc−EYFPの発現ベクターであるpET―MY−I、pET―MY−II及びpET―MY−IIIの制限酵素の認知部位に挿入する方法で、MBPの両末端に、多様な組合わせ及び長さを有する連結ペプチドが生成されうる11種の融合蛋白質発現ベクターを構築して、pECMY系列と名づけ、前記ベクターから発現されたMBP融合蛋白質をCMY系列と名づけた(図2A及び図2B)。
【0061】
発現ベクターの構成、及び突然変異に利用したプライマーの塩基配列は配列番号1から配列番号29として配列目録に表した。
【0062】
<実施例2:MBP融合蛋白質(蛍光標識蛋白質)の発現及び精製>
実施例1で構築したMBP融合蛋白質の発現ベクターは、大腸菌であるJM109(DE3)(Promega、米国)に形質転換させ、形質転換された組み換え菌株は、50μg/mlのアンピシリン(ampicillin)及び0.5mMのIPTG(イソプロピルβ−d−チオガラクトピラノシド)が添加されたLB培地(1%のバクトトリプトン(bacto-trypton)、0.5%の酵母抽出物、1%のNaCl)に接種して、28℃で24時間振盪培養する方法で発現を誘導した。発現が終わった大腸菌を遠心分離によって回収して、50Mmのリン酸ナトリウムバッファ(pH7.5)に分散させ、超音波により細胞膜を破壊し、遠心分離した後、以後の精製工程に使用した。
【0063】
前記MBP融合蛋白質の精製は、EYFPのC−末端に発現させたHis−6タグを利用して、FPLC(Fast Performance Liquid Chromatography、Amersham Biosciences、スウェーデン)に連結させたHistrapTM HP1カラム(Amersham Biosciences、スウェーデン)で精製した。精製に使用したバッファは、0.5mMのPMSF(Phenylmethylsulphonylfluoride:フッ化フェニルメチルスルホニル)、1mMのDTT(dithiothreitol:ジチオスレイトール)及び20mMのイミダゾールが添加された50mMのリン酸ナトリウムバッファ(pH7.5)であり、カラムに結合させた蛋白質は、0.5Mのイミダゾールが添加された50mMのリン酸ナトリウムバッファで勾配溶離した。精製されたMBP融合蛋白質は、FPLCに連結されたHitrapTM脱塩カラム(Amersham Biosciences、スウェーデン)に20%のグリセロールが含まれた、PBSバッファ(pH7.4)で溶出してバッファを交換し、VIVASPIN 20ml(10,000MWCO、Vivascience、ドイツ)で濃縮して、−80℃の冷凍室に保管した。
【0064】
<実施例3:MBP融合蛋白質の蛍光分析>
前記実施例で発現及び精製されたMBP融合蛋白質の蛍光分析は、蛍光分析装備であるCary Eclipse(Varian、オーストラリア)を使用して25℃で行い、MBP融合蛋白質は、PBSバッファ(pH7.4)に0.2μMの濃度に同じく調節して測定した。蛍光分析は、ECFPの励起を436nmにしたときに測定される480nmでの発光強度、及びFRETにより発生する530nmでのEYFPの発光強度の比率を、便宜上、下記数式3に代入する方法でFRET効率を定義した。
【0065】
【数3】
【0066】
また、蛍光標識のシグナルの強度を表す指標は、10mMのマルトースが存在する条件でのFRET効率(ratio10mM)と、マルトースが存在していない条件でのFRET効率(ratioapo)との差(Δ比率)で定義した。
【0067】
前記で発現及び精製されたMBP融合蛋白質のFRET効率は、図4に示すように、蛍光蛋白質とMBPとを連結するペプチドの長さ及び組成によって異なる結果を表した。例えば、MBPとEYFPとの間にGSの短いペプチドで連結させたCMY−B系列の蛍光標識蛋白質の初期FRET効率(ratioapo)は、CMY−B(〜1.3)を除いては、相対的に高い数値である〜1.8を表した。これに対し、CMY−E及びCMY−S系列のMBPとEYFPとの間に、約20個以上のアミノ酸のペプチドで連結された融合蛋白質は、相対的に低いratioapoである1.2〜1.5の数値を表した。
【0068】
また、前記で構成した11種のMBP融合蛋白質のFRET効率に基づいて、マルトースに対するシグナルの強度を測定した。マルトースのシグナルの強度を表す指標は、既に報告された資料(Fehr, M.et al., PNAS, 99:9846, 2002)から引用して、Δ比率で確認した。対照区としては、MBPと蛍光蛋白質との間に連結ペプチドのないCMY−0(Δ比率=0.05)を使用し、図4に示すように、CMY−BII及びCMY−BIIIMBP融合蛋白質は、ECFP側のコネクター(図2A)を除いては、最も類似しているものと見られるが、Δ比率値は、CMY−BIIがCMY−BIIIに比べて約6倍以上高かった。また、11種のMBP融合蛋白質のうち、ECFPとMBPとの間にSRペプチドで連結されたCMY−BII融合蛋白質が、最も高いΔ比率である0.17を表した。これに対し、CMY−E及びCMY−S系列のMBP融合蛋白質は、ECFPとMBPとの間の連結ペプチドの種類に関係なく、非常に低いΔ比率値を表すところ、これは、マルトースの結合以前のFRET効率及びマルトースの結合によるFRET効率にほとんど差が無いことを表す。前記結果は、ECFPとMBPとの間の連結ペプチドが、マルトースの結合によるΔ比率に非常に重要な役割を行うと判断された。したがって、ECFPとMBPとの連結ペプチドを最適化させて、マルトースの結合によるΔ比率を極大化しようとした。
【0069】
広範囲の結合物質濃度での比率変化はSigmaplot(SPSS、米国)のHillの方程式及び4―パラメータ(four-parameter)方式を適用した。また、ratio10mMとratioapoとの中間に該当する結合物質の濃度を、融合蛋白質の解離定数(Kd)と定めた。
【0070】
一方、表1に示すように、CMY−BIIのΔ比率、定量的に測定可能なマルトースの濃度範囲及び解離定数(Kd)は、既に報告されたFRET―基盤ナノセンサーであるFLIPmal−2μ(FLIPmal−5AA)と類似していると確認された(Fehr, M.et al., PNAS, 99:9846, 2002;WO03/025220)。
【0071】
<実施例4:MBP融合蛋白質ライブラリーの構築及び蛍光標識蛋白質の探索>
MBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーの構築は、CMY−BIIの発現ベクターであるpECMY−BIIに基づいて、MBPとEYFPとの間には、GSのペプチドが挿入されるように固定させ、ECFPとMBPとの間には、多様な組合わせの2個のアミノ酸から構成された連結ペプチドが挿入されうる変異プライマーを使用して、MBP融合蛋白質の組み換え発現ベクターライブラリーを構築した。
【0072】
具体的に、ECFP遺伝子は、配列番号5及び配列番号12のプライマーを使用して増幅し、MBPの遺伝子は、配列番号10及び配列番号11のプライマーで増幅した。ECFP及びMBPの遺伝子は、配列番号5及び配列番号11のプライマーを使用して重複伸長PCRで合成・増幅し、NdeI及びBamHI制限酵素で切断して、既に構築されたpECMY−BII発現ベクターからECFP−cc−MBPの遺伝子を除去した後、増幅された遺伝子を挿入する方法で発現ベクターライブラリーを構築した。したがって、ECFP遺伝子とMBP遺伝子との間に挿入した6個のN塩基(Nは、アデニン、グアニン、シトシン、又はチミンを示す)によって、2個のアミノ酸の組合わせで連結された多様なペプチドが生成されうるが、6個の塩基を考慮した計算的な数値は、46=4,096である。
【0073】
前記構築されたMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーは、大腸菌であるJM109(DE3)(Promega、米国)に形質転換させ、得られたそれぞれのクローンを、50μg/mlのアンピシリン及び0.5mMのIPTGが添加されたLB培地が分株されている96ディープウェルプレート(deep well plate)(Bioneer、韓国)に接種して、28℃で24時間振盪培養して発現させた。発現が終わった大腸菌を、3,000×gで20分間遠心分離して回収した後、1ユニットのDNase、20μg/mlのリゾチーム、及び微生物細胞溶解液であるCellytic B(Sigma、米国)を50%になるように添加した250μlのPBSバッファ(pH7.4)に1時間分散させて細胞膜を破壊し、さらに3,000×gで20分間遠心分離して、上澄み液200μlを新たな96ウェルプレートに移して分析した。
【0074】
発現させたMBP融合蛋白質ライブラリーの分析は、フィルタ方式の高速蛍光分析装備であるVictor2(Perkin-elmer、米国)を使用し、450/8nmの励起フィルタと、480/10nm及び535/25nmの発光フィルタとを使用して、ECFP及びEYFPの発光強度を測定した。シグナルの強度を表す指標は、10mMのマルトースが存在する条件でのratio10mMと、マルトースが存在していない条件でのratioapoとのratioの変化(Δ比率)で定義した。
【0075】
ECFPとMBPとの連結ペプチドを多変化させて製作した約4,000個のMBP融合蛋白質ライブラリーの分析結果は、次の通りである。図5に示すように、CMY−BIIに比べてΔ比率の向上したMBP融合蛋白質は、約5%以内で存在し、結果的に、Δ比率が大きく向上した配列番号31の融合蛋白質CMY−QI及び配列番号32のCMY−LHの選別が可能であったが、CMY−QIは、ECFPとMBPとの間にGln−Iluを介して融合され、CMY−LHは、Leu−Hisを介して融合されたことが確認された。前記のCMY−QI及びCMY−LHのratioapoは、それぞれ1.96及び3.02であることが確認され、Δ比率は、図6で確認できるように、それぞれ0.34及び0.5であり、CMY−0を基準に、シグナルの強度が約7〜10倍向上して、マルトースの濃度をより正確かつ定量的に測定できるMBP融合蛋白質を得ることが可能になった。それらを利用した定量範囲及びKdは、表1に示すように、核MBP融合蛋白質が 前記実施例3で構築したCMY−BIIと類似していると確認された。
【0076】
<実施例5:マルトース結合部位の変異された融合蛋白質の構成及び分析>
既に発表された資料によれば、MBPのTrp62をAlaに置換したとき、MBPのKd及びマルトースに対する定量範囲を変えうることが確認されたため(Martineau, P.et al., J.Mol.Biol.214:337, 1990)、MBPのTrp62を多様な種類のアミノ酸に置換するための遺伝子操作を行って、マルトースとの結合能力の変わったMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを製造した。
【0077】
マルトースとの結合に重要な役割を行うMBPのTrp62を他の種類のアミノ酸に置換するために、MBPのTrp62をコードする塩基配列をNNN(Nは、アデニン、グアニン、シトシン、又はチミンを示す)に置換した、配列番号13のプライマー及び配列番号10のプライマーを使用して、MBPのN−末端部位の遺伝子を増幅させたメガ−プライマーを増幅した。次いで、メガ−プライマー及び配列番号11のプライマーを使用して、完全な長さの変異MBP遺伝子を増幅し、配列番号5のプライマー及び、ECFPとMBPとの間にLeu−Hisが生成されるように製作した配列番号14のプライマーを使用して、ECFPの遺伝子を増幅した。ECFP及び変異MBP遺伝子は、重複伸長PCRで連結し、NdeI及びBamHIで切断した後、pECMY−BIIベクターのECFP−MBPの部位に置換・挿入して、変異MBP遺伝子に置換された発現ベクターライブラリーを構築した。
【0078】
前記各MBP融合蛋白質のECFP遺伝子とMBP遺伝子との連結部位、及びMBPのTrp62部位の遺伝子変異は、配列番号15プライマーを使用して塩基配列を確認した。
【0079】
前記方法で構築したMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させた後、マイクロチター速蛍光分析装置Victor2(Perkin−elmer,USA)を使用して探索した結果、配列番号33のMBP融合蛋白質CMY−LH/W62A、配列番号34のCMY−LH/W62H、及び配列番号35のCMY−LH/W62Lを得ることができた。CMY−LH/W62Aは、MBPのTrp62部位がAlaに置換されたものであって、対照群として使用するために確保し、CMY−LH/W62Hは、MBPのTrp62部位がHisに置換されたものであり、CMY−LH/W62Lは、MBPのTrp62部位がLeuに置換されたものであると確認された。
【0080】
前記のCMY−LH/W62A、CMY−LH/W62H、及びCMY−LH/W62Lのratioapoは、2.66〜2.81の範囲であり、CMY−LHに比べて少し低かった。しかし、Δ比率は、非常に大きな差を表したが、CMY−LH/W62A、CMY−LH/W62H及びCMY−LH/W62Lは、それぞれ0.30、0.69、1.00のΔ比率を表した(図7)。これは、CMY−0を基準に、CMY−LH/W62Hは、14倍、CMY−LH/W62Lは、20倍程度向上した数値を有し、 前記MBP融合蛋白質などを利用して定量的に測定可能なマルトースの濃度範囲及びKdは、下記表1に表されている。したがって、前記MBP融合蛋白質を得たことによって、さらに幅広い濃度のマルトースの定量が可能になった。
【0081】
【表1】
【0082】
一方、MBP融合蛋白質のうち、マルトースとの結合能力の異なる3種(CMY−LH、CMY−LH/W62H、CMY−LH/W62L)の基質特異性を調べるために、多様な種類の単糖類、二糖類、三炭糖、糖アルコールなどの結合の程度を、実施例3の方法で分析した。図8A〜Cは結合物質に対するMBP融合蛋白質の結合力を比較した結果を表す。図8Aは、マルトースを除いたほとんどの糖類は、MBP融合蛋白質との結合が確認されていないが、d−グルコース及びメレジトース(melezitose)は、濃度を10mMに上げると、低い親和力を表した。これは、d−グルコースの場合には、マルトース単位で結合されている炭水化物を加水分解して生産するので、微量のマルトースの汚染によって、比率の変化(Δ比率 )が発生したことである(Guntas, G.et al., J.Mol.Biol., 336:263-273, 2004)。図8B及び図8Cは、CMY−LH/W62H及びCMY−LH/W62Lの基質に対する親和力を比較した結果であり、マルトース以外のあらゆる糖類及び濃度に関係なく親和力を表していない。
【0083】
前記結果から、前記MBP融合蛋白質は、マルトースに対してのみ特異的な結合力を表し、その他の糖による干渉なしに、生きている細胞の顕微鏡分析による細胞内のマルトース濃度の定量的な測定に有効に使用されうることが立証された。
【0084】
<実施例6:酵母でのMBP融合蛋白質を利用したイメージング分析>
MBP融合蛋白質を利用した生きている酵母のマルトース吸収及び細胞内の濃度変化などを分析するために、次のように発現ベクターを構築した。発現ベクターとしては、YEGα−HIR525(Sohn et al., Process Biochemistry, 30:653、1995)を使用し、酵母発現ベクターを構成するために、SacI及びNdeI制限酵素の部位がGALプロモーターの5’の末端及び3’の末端に挿入されるように、プライマー16及びプライマー17を製作して、YEGα−HIR525からGALプロモーター遺伝子を増幅させた。
【0085】
前記GALプロモーター遺伝子をSacI及びNdeI制限酵素で切断し、NdeI及びSalI制限酵素で、pECMY−B、pECMY−BII、pECMY−LH及びpECMY−LH/W62LのMBP融合蛋白質をコードする遺伝子をそれぞれ切断した後、SacI及びSalIの制限酵素で切断したYEGα−HIR525に同時に挿入させる方法で、YEG−CMY系列と名づけた酵母発現ベクターを構築した(図9)。
【0086】
イメージングによる酵母内部に流入されるマルトース濃度の定量的な測定のために、MBP融合蛋白質の発現ベクターの宿主としてHaploid Saccharomyces cerevisiae2805(Mat a prep4::HIS3 prb1 can1 his3 ura3)(Sohn et al., Process Biochemistry, 30:653, 1995)を使用して形質転換させた。前記で構成したYEG−CMY系列のベクターでそれぞれ形質転換させたS.cerevisiae 2805は、アミノ酸を含んでいない0.67%の酵母窒素塩基(BD Bioscience、米国)、及び0.077%の−Ura DO supplement(BD Bioscience、米国)から構成されたSD培地に1%のグルコースと1%のガラクトースとを炭素源及び誘導物質として使用して、約30〜40時間培養した。
【0087】
イメージングに先立って、培地に残っている炭素源を除去するために、糖のなしSD培養液(pH7.4)に、取得した酵母を分散させて約2時間培養した。次に、25μlの培養培地を糖フリーのSD培養液の入っているガラス底皿(35×10mm、SPL、韓国)に添加して1時間定置した。顕微鏡で観察する間に細胞の沈殿が浮遊することを防ぐために、酵母を含んでいる皿を両面テープを利用して顕微鏡の試料台に固定させた。
【0088】
イメージングは、スプリット・プライマリー・イメージ・カメラ・ポート(split primary image camera port)(U-SIP)に連結させたDP30BW(Olympus、日本)の高感度CCD(Charge Coupled Device)カメラ及びIX71倒立顕微鏡(Olympus、日本)から構成されたFRETスプリットイメージングシステム(Olympus、日本)を使用し、PlanApo N 60x、1.42na、油浸対物レンズ(Olympus、日本)で観察した。顕微鏡で観察された映像の保存及び分析には、CellPソフトウェア(Olympus、日本)を使用し、生きている酵母のFRETによる比率イメージングを観察するためのFRETフィルタセットは、440AF21励起、455DRLPダイクロイックミラー(dichroic mirror)、そして、480AF30及び535AF26の発光フィルタで組合わせられたXF88−2(Omega Optical、米国)を使用した。
【0089】
酵母内部に流入されるマルトース濃度の定量的な測定は、蛍光顕微鏡に装着されたCCDカメラを通じて蛍光イメージを観察し、30秒の間隔で10分間蛍光イメージを取って、CellPソフトウェア(Olympus)で保存して定量分析した。マルトースの観察は、最初の時間から2分経過後、全体的な濃度が10mMになるように添加し、経時による細胞内のマルトース濃度の変化は、EYFP及びECFPの発光強度を比較して分析した。
【0090】
図10Aは、マルトースのシグナルの強度の喪失されたCMY−Bを発現した酵母のイメージング分析結果であり、マルトースを添加していない酵母のratioapoと、2分経過後に飽和濃度である10mMのマルトースを添加したratio10mMとは同じであった。したがって、図10Aの分析結果を対照区として、他種のMBP融合蛋白質が発現された酵母のマルトース濃度によるFRETの変化を分析した。
【0091】
図10Bは、CMY−BIIを発現した酵母のイメージング結果であり、マルトースを添加していない条件と、2分経過後に10mMのマルトースを添加した条件とでその比率に差があることと、マルトース添加後に2分程度経過すれば、細胞内のマルトース濃度が飽和状態に到達することが確認された。
【0092】
図10Cは、CMY−LHを発現した分析結果であり、2分経過後に10mMのマルトースを添加した比率の変化幅が、CMY−BIIを発現した酵母より2倍以上大きかった。これは、ECFPとMBPとの連結ペプチドを最適化してシグナルの強度を向上させたMBP融合蛋白質が、生体外部だけでなく、細胞内部でもそのまま適用されることを立証する結果である。
【0093】
図10Dは、CMY−LH/W62Lを発現した酵母のイメージング結果であり、比率の変化幅は、生体外部で測定した結果と同様に、CMY−LHより大きくなることが確認された。しかし、図10Bまたは図10Cの結果とは異なり、10分経過後にも細胞内のマルトース濃度が飽和状態に到達していないことが確認されたが、これは、CMY−LH/W62LのKdが80μMに向上したためである。したがって、細胞内部に流入または代謝されるマルトースの定量的な測定範囲が大きく拡張して、生理的なレベルでのリガンドの濃度変化を上限値の制約なしに測定可能であろう。
【0094】
<実施例7:多様なPBPsを利用した蛍光標識蛋白質の製作>
マルトース検出用の蛍光標識蛋白質のMBPの位置に、構造的・機能的に類似した大腸菌由来のPBPsを導入して、多様な物質の検出のための蛍光標識蛋白質を開発するために、遺伝子の操作を行った。
【0095】
MBPの位置に導入するBPsの選抜は、SCOP(Structural Classification of Proteins;http://scop.mrc-lmb.cam.ac.uk/scop/)から資料を収集した後、PDB(Protein Data Bank、http://www.rcsb.org/pdb/)で、基質結合に伴われる三次構造の動力学的な変化を確認して選抜した。その例として、ALBP、RBP及びARBPの3種の大腸菌由来のPBPsを、本発明に係るMBP融合蛋白質のMBPの位置に導入させようとした。Swiss−Prot(http://kr.expasy.org/)で前記のPBPsの遺伝子配列情報を得、これに基づいて、各PBPsをコードする遺伝子を増幅させうるプライマーを製作して、大腸菌MG1655の染色体からPCRを行って遺伝子を増幅した。
【0096】
ALBP融合蛋白質の発現ベクターを構築するためのECFP遺伝子の増幅は、塩基配列5及び配列番号18のプライマーを使用し、ALBP遺伝子は、配列番号19及び配列番号20のプライマーを使用して増幅した。増幅されたECFP及びALBP遺伝子は、配列番号5及び配列番号20のプライマーを利用した重複伸長PCRで、ECFP−ALBPの遺伝子を増幅した。したがって、MBP融合蛋白質と同様に、ECFPとALBPとの間には、6個のN塩基(Nは、アデニン、グアニン、シトシン、又はチミンを示す)によって、2個のアミノ酸の組合わせで連結された多様なペプチドが生成され、前記ECFP−ALBP遺伝子は、NdeI、BamHI制限酵素の認知部位を利用して、pECMY−BII発現ベクターからECFP−MBP遺伝子を除去して挿入する方法でライブラリーを構築した。同様に、ARBP融合蛋白質の発現ベクターを構築するためのECFP遺伝子の増幅は、塩基配列5及び配列番号21のプライマーを使用し、ARBP遺伝子は、配列番号22及び配列番号23のプライマーを使用して増幅した。増幅されたECFP及びARBP遺伝子は、配列番号5及び配列番号23のプライマーを利用した重複伸長PCRで、ECFP−ARBP遺伝子として連結し、pECMY−BII発現ベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入する方法でライブラリーを構築した。また、RBP融合蛋白質の発現ベクターを構築するためのECFP遺伝子の増幅は、塩基配列5及び配列番号24のプライマーを使用し、RBPは、配列番号25及び配列番号26のプライマーを使用して増幅した。増幅されたECFP及びRBP遺伝子は、配列番号5及び配列番号26のプライマーを利用した重複伸長PCRで、ECFP−RBPの遺伝子として連結し、pECMY−BIIベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入してライブラリーを構築した。
【0097】
前記のように、MBP融合蛋白質の発現ベクターは、ライブラリーの形態に製作して、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させ、実施例4の過程による探索過程を経ず、任意に3〜5個ずつ選別して、実施例2の方法によって発現及び精製を行った。次に、多様なPBP融合蛋白質でそれぞれの結合物質に対す蛍光性質を分析した。結果的に、図11A〜C及び下記表2に示すように、シグナルの強度の最も良い糖センサー(糖検出用の蛍光標識蛋白質)を選定し、配列番号36のCalsBY−QV、配列番号37のCaraFY−PR、及び配列番号38のCrbsBY−NDなどを得ることができた。
【0098】
【表2】
【0099】
前記融合蛋白質のDNA配列を分析した結果、CalsBY−QVは、ECFPとALBPとの間にGln−Valを介して融合され、CaraFY−PRは、ECFPとARBPとの間にPro−Argを介して融合され、CrbsBY−NDは、ECFPとRBPとの間にAsn−Aspを介して融合されたことが確認された。CalsBY−QV及びCrbsBY−NDは、アロースやリボースの結合によりΔ比率が低下するが、これは、MBPやARBPとは異なり、結合物質の結合により結合蛋白質の両末端が離れる構造を有するためである(Chaudhuri, B.N.et al.J.Mol.Biol., 286:1519, 1999;Magnusson, U.et al., J.Bio.Chem., 277:14077, 2002)。
【0100】
前記三種の蛍光標識蛋白質に対する基質親和力を調べるために、多様な種類の糖類を対象として基質特異性を分析した。図12Aは、CalsBY−QVの基質に対する結合力を比較した結果であり、アロースを除いたほとんどの糖類ではALBP融合蛋白質との結合が確認されていないが、リボースが、mM水準の濃度に上昇すると、ALBP融合蛋白質とは低い親和力を表した(Chaudhuri, B.N.et al., J.Mol.Biol., 286:1519, 1999)。逆に、図12Cは、CrbsBY−NDの基質に対する結合力を比較した結果であり、ほとんどの糖類は、RBP融合蛋白質との親和力は表していないが、アロースとは非常に高い親和力を表し、キシロースも、アロースよりは低いが、高い親和力を表すことを確認した(Kim, C.H.et al., J.Bacteriol., 179:7631, 1997)。図12Bは、CaraFY−PRの基質に対する結合力を比較した結果である。ARBP融合蛋白質は他種の融合蛋白質に比べては相対的に基質特異性が低下することが確認されたが、特に、ガラクトースとは非常に高い親和力を表し(Fukada, H.et al., J.Biol.Chem., 258:13193, 1983)、そして、その他のキシロース、ラムノース、乳糖及びメリビオースなどともある程度の親和力を表すことが確認された。
【0101】
<実施例8:SBPを利用した蛍光標識蛋白質の製作>
既に発表されたMBPの遺伝子を部分的に変異させて製作したSBP(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)の遺伝子を、MBP融合蛋白質の発現ベクターのMBP遺伝子の部位に置換して構成しようとした。
【0102】
鋳型として使用するMBPをコードする遺伝子は、pMALc2xベクター(NEB、米国)を使用し、SBPの遺伝子を製作するために、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号11のプライマーを用いてPCRを行った。前記で増幅された遺伝子は、MBPのAsp14をLeuに、Lys15をPheに、Trp62をTyrに、そしてGlu111をTyrに置換させる部分突然変異を含むため、既存の報告によれば、ショ糖と結合可能なSBPの遺伝子をコードしている(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)。
【0103】
CSY−Bの発現ベクターを構成するために、塩基配列5及び塩基配列6のプライマーを使用して増幅したECFP遺伝子及び前記SBP遺伝子を、配列番号5及び塩基配列11のプライマーを利用した重複伸長PCRでECFP−SBP遺伝子に連結し、pECMY−BII発現ベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入してpECSY−Bベクターを構成した。同様に、CSY−BIIの発現ベクターは、塩基配列5及び塩基配列8のプライマーを使用して増幅したECFPの遺伝子及び前記SBPの遺伝子を、配列番号5及び塩基配列11のプライマーを利用した重複伸長PCRでECFP−SBP遺伝子に連結し、pECMY−BII発現ベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入してpECSY−BIIベクターを構成した。また、CSY−LHの発現ベクターを構成するために、塩基配列5及び塩基配列14のプライマーを使用して増幅したECFP遺伝子及び前記のSBPの遺伝子を、配列番号5及び配列番号11のプライマーを利用した重複伸長PCRでECFP−SBP遺伝子に連結し、pECMY−BII発現ベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入してpECSY−LHベクターを構成した。
【0104】
前記SBP融合蛋白質の発現ベクターは、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させ、実施例3の方法で発現及び精製を行った。次に、多様なSBP融合蛋白質を用いて蛍光分析でショ糖及びマルトースに対するシグナルの強度を分析し、それそれのSBP融合蛋白質の性質を分析した。結果的には、図13A、図13B及び表3に示すように、多様なSBP融合蛋白質の中で、ショ糖に対するシグナルの強度の最も高い配列番号39の蛍光標識蛋白質CSY−LHを得た。
【0105】
【表3】
【0106】
前記表3から分かるように、シグナルの強度の最も向上したSBP融合蛋白質であるCMY−LHのMBPの両末端の連結ペプチドをそのまま適用させた、ショ糖結合蛍光標識蛋白質であるCSY−LHが最も高いΔ比率を表すことが確認された。したがって、MBPを鋳型として新たな結合能力を有する蛍光標識蛋白質の構成は、CMY−LHの最適化された連結ペプチドをそのまま使用して、シグナルの強度に優れた新たな機能を有する結合蛋白質の構成が可能であるということが確認された。しかし、CSY−LHを基準に、ショ糖及びマルトースに対するKdは、既に報告された結果とは異なり、約25倍以上向上した結果が表れた(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)。
【0107】
前記CSY−LHを利用した多様な種類の糖類との結合親和力を分析した。図14の結果から、CSY−LHは、既に報告された結果と同様に、ショ糖及びマルトースを除いたほとんどの糖類では結合しないことが確認された(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)。
【0108】
以上、本発明の内容の特定な部分を詳述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施の態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明による蛍光標識蛋白質の一例として、MBP融合蛋白質の基本的な構成及び作動原理を示す図面である。
【図2A】本発明に係る蛍光蛋白質と連結されるMBPの両末端部を異ならせたMBP融合蛋白質の模式図である。
【図2B】前記MBP融合蛋白質の発現のための発現ベクターの構成を示すフローチャートである。
【図3】実施例1で製作したベクターから発現された MBP融合蛋白質の、アミロース樹脂(amylose resin)に対する結合の程度(融合蛋白質の結合能)を示すグラフである(黒色のバー:アミロース樹脂を利用したプルダウン(pull-down)以前のEYFPの発光量;斜線のバー:アミロース樹脂を加えてプルダウンした後の上澄み液中のEYFPの発光量)。
【図4】実施例1で製作したベクターから発現されたMBP融合蛋白質のマルトース結合によるFRET効率の変化を比較したグラフである(黒色のバー:マルトースとの結合以前のFRET効率;斜線のバー:マルトースとの結合以後のFRET効率;バーの上に表記された数字:シグナルの強度の指標であるΔ比率(Δratio))。
【図5】ECFPとMBPとの連結ペプチドを無作為的に多変化させて製作したMBP融合蛋白質ライブラリーから探索した結果であるΔ比率の分布グラフである(白抜きの四角で囲まれた部分:CMY−BIIよりシグナルの強度の向上した融合蛋白質の分布;横線の四角で囲まれた部分:CMY−BIIよりシグナルの強度の低下した融合蛋白質の分布;○で囲まれた部分:CMY−BIIのグループ)。
【図6】本発明に係るMBP融合蛋白質のマルトースの濃度変化によるΔ比率変化を、シグモイド曲線(sigmoidal curve)で示すグラフである(●:CMY−0;○:CMY−BII;▼:CMY−QI;▽:CMY−LH)。
【図7】本発明によってMBPのTrp62に突然変異を加えて得られたマルトースに対する定量範囲が多様なMBP融合蛋白質のマルトースの濃度変化によるΔ比率変化をシグモイド曲線で示すグラフである(●:CMY−0;○:CMY−LH;▼:CMY−LH/W62A;▽:CMY−LH/W62H;■:CMY−LH/W62L)。
【図8A】本発明に係る定量的な特性の相異なるMBP融合蛋白質を、多様な種類の糖類を対象として結合親和力を比較したグラフであり、CMY−LHの場合を示すグラフである。
【図8B】本発明に係る定量的な特性の相異なるMBP融合蛋白質を、多様な種類の糖類を対象として結合親和力を比較したグラフであり、CMY−LH/W62Hの場合を示すグラフである。
【図8C】本発明に係る定量的な特性の相異なるMBP融合蛋白質を、多様な種類の糖類を対象として結合親和力を比較したグラフであり、CMY−LH/W62Lの場合を示すグラフである。
【図9】生きている酵母の細胞内部に流入されるマルトースの濃度変化を観察する目的で酵母発現用ベクターの製作する工程を示すフローチャートである。
【図10A】蛍光顕微鏡を利用したFRETイメージングで、生きている酵母細胞内のマルトースの濃度変化を観察した結果であって、CMY−Bを発現させた酵母で分析した結果である(●:マルトースを非存在下の時の酵母の発光量の比率;○:最初の観察時間から2分経過後に10mMのマルトースを添加した酵母の発光量比率)。
【図10B】蛍光顕微鏡を利用したFRETイメージングで、生きている酵母細胞内のマルトースの濃度変化を観察した結果であって、CMY−BIIを発現させた酵母で分析した結果である(●:マルトースを添加していない酵母の発光量の比率;○:最初の観察時間から2分経過後に10mMのマルトースを添加した酵母の発光量比率)。
【図10C】蛍光顕微鏡を利用したFRETイメージングで、生きている酵母細胞内のマルトースの濃度変化を観察した結果であって、CMY−LHを発現させた酵母で分析した結果である(●:マルトースを添加していない酵母の発光量の比率;○:最初の観察時間から2分経過後に10mMのマルトースを添加した酵母の発光量比率)。
【図10D】蛍光顕微鏡を利用したFRETイメージングで、生きている酵母細胞内のマルトースの濃度変化を観察した結果であって、CMY−LH/W62Lを発現させた酵母で分析した結果である(●:マルトースを添加していない酵母の発光量の比率;○:最初の観察時間から2分経過後に10mMのマルトースを添加した酵母の発光量の比率)。
【図11A】ALBP、ARBP、RBPを感知部として導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質を、アロース(allose)、アラビノース(arabinose)、リボース(ribose)の濃度変化によるFRET効率変化をシグモイド曲線で示すグラフであり、CalsBY−QVの場合を示すグラフである。
【図11B】ALBP、ARBP、RBPを感知部として導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質を、アロース、アラビノース、リボースの濃度変化によるFRET効率変化をシグモイド曲線で示したグラフであり、CaraFY−PRの場合を示すグラフである。
【図11C】ALBP、ARBP、RBPを感知部として導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質を、アロース、アラビノース、リボースの濃度変化によるFRET効率変化をシグモイド曲線で示したグラフであり、CrbsBY−NDの場合を示すグラフである。
【図12A】ALBP、ARBP、RBPを感知部に導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質の、多様な種類の糖類に対する結合親和力を比較したグラフであり、CalsBY−QVの場合を示すグラフである。
【図12B】ALBP、ARBP、RBPを感知部に導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質の、多様な種類の糖類に対する結合親和力を比較したグラフであり、CaraFY−PRの場合を示すグラフである。
【図12C】ALBP、ARBP、RBPを感知部に導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質の、多様な種類の糖類に対する結合親和力を比較したグラフであり、CrbsBY−NDの場合を示すグラフである。
【図13A】MBPに遺伝子変異を起こして再構成したSBP(Sucrose-binding Protein)を結合部位として導入して構成したSBP融合蛋白質を、ショ糖の濃度変化によるΔ比率変化をシグモイド曲線で示したグラフである(●:CSY−B;○:CSY−BII;▼:CSY−LH)。
【図13B】MBPに遺伝子変異を起こして再構成したSBP(Sucrose-binding Protein)を結合部位として導入して構成したSBP融合蛋白質を、マルトースの濃度変化によるΔ比率変化をシグモイド曲線で示したグラフである(●:CSY−B;○:CSY−BII;▼:CSY−LH)。
【図14】ショ糖結合蛍光標識蛋白質のうち、高いシグナルの強度を有するCSY−LHの多様な種類の糖類に対する結合親和力を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖濃度に対する向上したシグナルの強度を有する蛋白質バイオセンサー及びその用途に係り、さらに詳細には、糖の結合によって構造的な変化を起こす結合蛋白質の両末端に、相異なる発光波長帯を有する蛍光蛋白質を融合させて、細胞内代謝に関与する多様な糖濃度の変化を、蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Energy Transfer:FRET)による発光量の変化を利用して比較できる蛍光標識蛋白質、及び該蛍光標識蛋白質を利用した糖濃度変化の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラゲから由来したwtGFP(wild type Green Fluorescent Protein)の多様な遺伝子変異であるEBFP(Enhanced Blue Fluorescent Protein)、EGFP(Enhanced Green Fluorescence Protein)、あるいはECFP(Enhanced Cyan Fluorescence Protein)とEYFP(Enhanced Yellow Fluorescence Protein)との間のFRET現象を利用した蛍光標識蛋白質センサーの始まりは、サンディエゴ大学のTsienグループで、1997年に‘カルモジュリン(calmodulin)’、及びそれと相互作用する‘M13ペプチド’にEBFP及びEGFPを融合させた、‘カメレオン(cameleon)’と名づけた蛍光標識蛋白質であって、細胞内Ca2+の濃度を測定することによって本格的に始まった(Miyawaki, A.et al., Nature, 388:882, 1997;WO98/40477)。また、1997年、Hellingaグループでは、リガンドの結合により構造が変わる微生物のPBPs(Periplasmic Binding Proteins)の一種であるMBP(Maltose-Binding Protein)に蛍光染料を結合させて、生体外部(in vitro)で高い感度を有するセンサーを構築し、つい最近まで多様な種類のPBPsに適用した事例が報告されている(Marvin, J. S. et al., PNAS, 94:4366, 1997;Robert, M. et al., Protein Science, 11:2655, 2002)。
【0003】
このような研究に基づいて、2002年、Frommerグループでは、MBPの両末端にECFP及びEYFPを融合させて、生きている酵母で安定的に発現して、FRETにより変わるEYFP及びECFPの発光量の比率変化を比較する方法で、生きている酵母内でマルトースの濃度を定量的に測定した結果を発表した(Fehr, M.et al., PNAS, 99:9846, 2002;WO03/025220)。同グループでは、同種のPBPsであるRBP(Ribose-Binding Protein)、GGBP(Glucose/Galactose-Binding Protein)及びGlnBP(Glutamin-Binding Protein)を利用して、生きている細胞内でそれぞれの物質を定量的に分析する研究結果を発表した(Lager, I.et al., FEBS Lett., 553:85, 2003;Fehr, M.et al., JBC., 278:19127, 2003;Okumoto, S. et al., PNAS, 102:8740, 2004)。その他にも、細胞内の信号伝達に重要な役割を行うGTP/GDPの濃度変化を、生きている細胞でリアルタイムで観察した研究 (Mochizuki, N.et al., Nature, 411:1065, 2001)、ボツリヌス(C.botulinum)の神経毒素の活性を測定した研究(Dong, M.et al., PNAS, 101:14701, 2004)、及び細胞内のイノシトール1,4,5−トリリン酸を定量的に測定した研究(Tanimura, A.et al., JBC., 279:38095, 2004)などに、‘カメレオン’と類似した形態の蛍光標識蛋白質を利用して、さらに多様な物質を検出する目的への技術発展が行われてきた。
【0004】
環境モニタリングなどのバイオセンサーと関連して、さらに他の方向への研究としては、RBPを、インシリコ蛋白質の設計に基づいた遺伝子の操作により、TNT(trinitrotoluene)のような環境有害物質と結合できる蛋白質から再構成した形態の新たな機能を行うバイオセンサーの開発が行われ(Looger, L.L.et al., Nature, 423:185, 2003)、マルトース(Maltose)の結合によって構造の変化を伴う、MBPの特定部位にラクタマーゼ(β-lactamase)を挿入した蛍光標識蛋白質の構造的な連動に基づいて、マルトースの結合部位にショ糖(sucrose)が結合できる新たな結合蛋白質の再設計に成功した例がある(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)。これは、前記‘カメレオン’形態の結合蛋白質に新たな結合蛋白質を導入する方式の、“オーダーメードFRETセンサー”の開発が可能であり、したがって、多様な細胞機能の分析に有効に適用できる基盤技術であると言える。
【0005】
しかし、初期に開発された前記蛍光標識蛋白質は、非常に低いシグナルの強度を表すという短所があり、さらに正確かつ定量的な測定手段として活用するためには、シグナルの強度に優れた蛍光標識蛋白質の開発が要求されている(Fehr, M.et al., Current Opinion in Plant Biology, 7:345, 2004)。また、最近は、このような短所を補完しようとする試みがあり、その一例として、Miyawakiグループでは、‘カメレオン’のEYFP遺伝子を改良するか、または順次置換(circular permutation)する方法で蛍光標識蛋白質の低いシグナルの強度を向上させうるという研究結果を、2001年から最近まで持続的に発表してきた(Nagai, T.et al., PNAS, 98:3197, 2001;Nagai, T.et al., PNAS, 101:10554, 2004;WO05/036178)。また、Frommerグループでは、GGBPまたはGlnBPなどの遺伝子に蛍光蛋白質を挿入するイン−フレーム・フュージョン(in-frame fusion)で各蛍光標識蛋白質のFRETシグナルの変化を大きく向上させうるという研究結果を発表した(Deuschle, K.et al., Protein Science, 14:2304, 2005)。しかし、蛍光標識蛋白質のシグナルの強度を向上させる目的で前記方法を適用するには、遺伝子の操作に高度な技術が必要であり、さらに、構造及び動的特性の異なる結合蛋白質及び蛍光蛋白質から構成された新たな蛍光標識蛋白質を製作するには、全ての開発過程が初めから改めて設計されねばならないという問題点がある。
【0006】
従って、本発明者らは、前記問題点を解決するために鋭意努力した結果、結合蛋白質と蛍光蛋白質との間に任意の短い無作為なペプチドを挿入するか、または結合蛋白質に物質が結合する特定部位を遺伝子変異させて高速探索する方法で、多様な糖濃度範囲が感知できるシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質の製作が可能であるという事実を確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、糖濃度に対する高いシグナルの強度を有する蛍光標識蛋白質及び該蛍光標識蛋白質を利用した微生物内の糖濃度変化の検出方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記蛍光標識蛋白質をコードする核酸及び前記核酸を含む組み換え発現ベクターで形質転換された組み換え微生物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記組み換え微生物を培養することを特徴とする糖濃度に対するシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記構造式Iで表示される糖濃度に対するシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質を提供する。
【0011】
〔構造式I〕
【0012】
ここで、BPは、MBP、ALBP(Allose Binding Protein)、ARBP(Arabinose Binding Protein)、RBP及びSBP(Sucrose Binding Protein)から構成された群から選択され、L1及びL2は、2つのアミノ酸または短いペプチドから構成され、FP1は、ECFP、EBFP及びEGFPから構成された群から選択され、FP2は、EYFP、EGFP及びRFP(Red Fluorescent Protein)から構成された群から選択される。
【0013】
本発明において、前記BPは、MBPであり、前記L1は、Gln−IleまたはLeu−Hisであることを特徴とし、前記蛍光標識蛋白質(MBP融合蛋白質)は、配列番号31または配列番号32のアミノ酸配列を有しうる。
【0014】
本発明において、前記BPは、ALBPであり、前記L1は、Gln−Valであることを特徴とし、前記蛍光標識蛋白質は、配列番号36のアミノ酸配列を有しうる。
【0015】
本発明において、前記BPは、ARBPであり、前記L1は、Pro−Argであることを特徴とし、前記蛍光標識蛋白質は、配列番号37のアミノ酸配列を有しうる。
【0016】
本発明において、前記BPは、RBPであり、前記L1は、Asn−Aspであることを特徴とし、前記蛍光標識蛋白質は、配列番号38のアミノ酸配列を有しうる。
【0017】
本発明において、前記BPは、MBP変異体であり、前記変異体は配列番号30のアミノ酸配列のうち62番目のアミノ酸が変異されたことを特徴とし、前記変異はTrp62Ala、Trp62His及びTrp62Leuから構成された群から選択された何れか一つであることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明において、前記蛍光標識蛋白質は、配列番号33ないし配列番号35からなる群のうち、何れか一つのアミノ酸配列を有することを特徴とすることができる。
【0019】
本発明において、前記BPはSBPであることを特徴とし、前記SBPは配列番号30のアミノ酸配列を有するMBPの変異体であることを特徴とすることができる。
【0020】
本発明において、前記変異体は配列番号30のアミノ酸配列のうち、Asp14Leu、Lys15Phe、Trp62Tyr及びGlu111Tyrの変異を含むことを特徴とすることができる、また、前記蛍光標識蛋白質(SBP融合蛋白質)は、配列番号39のアミノ酸配列を有することを特徴とすることができる。
【0021】
本発明は、前記蛍光標識蛋白質をコードする塩基配列からなる核酸を提供する。さらに、本発明は、前記核酸を含む組み換えベクターを提供する。
【0022】
本発明において、前記組み換えベクターは、pECMY−QI、pECMY−LH、pECSY−LH、pECMY−LH/W62A、pECMY−LH/W62H及びpECMY−LH/W62Lから構成された群から選択されうる。
【0023】
本発明において、前記組み換えベクターは、標的信号配列(targeting signal sequence)をさらに含むことを特徴とし、標的信号配列及び付着配列をさらに含みうる。
【0024】
本発明は、また、前記蛍光標識蛋白質をコードする塩基配列を含む組み換えベクターを、バクテリア、酵母、カビ及び動植物の細胞から構成された群から選択される宿主細胞に導入させて得た組み換え微生物または細胞を提供する。
【0025】
また、本発明は、(a)前記組み換え微生物または細胞を培養して蛍光標識蛋白質を発現する工程と、(b)前記培養微生物または細胞から前記蛍光標識蛋白質を得る工程と、を含む構造式Iの蛍光標識蛋白質の製造方法を提供する。
【0026】
また、本発明は、(a)前記組み換え微生物または細胞を培養して、構造式Iの蛍光標識蛋白質を発現する工程と、(b)蛍光分析装備を利用して、前記培養された微生物または細胞内の糖濃度変化を分析する工程と、を含む構造式Iの蛍光標識蛋白質を利用した微生物及び細胞内の糖濃度変化の検出方法を提供する。
【0027】
本発明において、前記(b)工程は、蛍光分析装備で蛍光供与体及び受容体の発光量の変化を比較して、微生物または細胞内の糖濃度が分析できる。
【0028】
本発明において、前記蛍光分析装備は、共焦点顕微鏡または蛍光顕微鏡でありうる。
【0029】
前記BPのうちSBPは、MBPで再設計されたプロテインであり(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)、前記プロテインに制限されず、検出しようとする物質との特異的な結合が可能であり、かつ検出物質の結合によって構造が変わる蛋白質であればいかなるものでもよい。
【0030】
前記FP1及びFP2は、信号発生部として使用した蛍光供与体及び受容体であり、供与体の発光スペクトルと受容体の吸光スペクトルとが互いに重なり合って、FRETを誘発できるものであればいかなるものでもよく、このうち、単量体への発現が可能であり、かつ発現された蛍光蛋白質の吸光係数、量子効率及び光安定性などを考慮すれば、ECFP及びEYFPが望ましい。前記蛍光標識蛋白質センサーの作動原理は、図1に示す通りである。
【発明の効果】
【0031】
本発明はFRETの原理に基づいて、既存の蛍光標識蛋白質よりシグナルの強度に優れており、かつ細胞内のマルトースなどの多様な種類の糖濃度をより正確に測定できる糖濃度に対するシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質を提供する。また、既存のマルトース以外にも、他の多様な種類の糖を検出する蛍光標識蛋白質の製造が可能になり、既存のバイオセンサーとして利用される蛋白質から、信号強度の向上した蛍光標識蛋白質の製造に容易に活用されうるので、さらに普遍的に適用されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明は、生体外部で、または生きている細胞内部(in vivo)に流入されるか、または代謝される物質の濃度を定量的に測定できる蛋白質センサーに関する。また、本発明は、FRETの可能な相異なる二種の蛍光蛋白質の間に、検出しようとする物質の結合により蛋白質の3次元構造が変わる結合蛋白質を融合させた形態のバイオセンサーであって、前記の蛍光標識蛋白質は、検出しようとする物質の結合による結合蛋白質の構造変化が、FRETに変化を誘発して発光の波長を変化させ、このような発光波長の変化は、結合物質の濃度に比例するので、検出しようとする物質の定量的な測定が可能である。
【0034】
本発明において、蛍光の光学的な特性である‘FRET’とは、相異なる二種の蛍光物質の間で発生する非放射性エネルギー転移現象であって、励起された状態の供与体の励起準位エネルギーが受容体に伝達される現象である。FRETは、一般的に供与体から放出される短波長が受容体の吸光スペクトルと重なり合い、光子の出現することなく発生するため、共鳴エネルギー転移と言い、これは、供与体と受容体間の長距離双極子の相互作用による結果である。FRETのエネルギー転移効率は、供与体の発光(emission)スペクトルと受容体の吸収(absorption)スペクトルとがスペクトルオーバーラップ(spectral overlap)される範囲、供与体の量子効率(quantum yield)、供与体及び受容体の転移双極子(transition dipoles)の相対的配向(relative orientation)、及び供与体分子と受容体分子間の距離によって変わる。したがって、FRETのエネルギー転移効率は、供与体分子と受容体分子間の距離及び相対的配向から影響を受けるが、Forsterの数式によれば、下記数式1で表される。
【0035】
【数1】
【0036】
前記数式1で、Eは、FRET効率を表し、Rは、供与体と受容体間の距離であって、蛍光物質によって差はあるが、FRETの発生可能な距離は、通常、2〜9nm以内と定義される。また、R0は、FRET効率が50%になる供与体と受容体間の距離を言い、一般的に、Forster距離またはForster半径と呼ばれる。R0は、下記数式2で表される。
【0037】
【数2】
【0038】
前記数式2で、k2は、配向係数であり、通常、2/3で計算し、供与体の発光及び受容体の吸収の相対的な配向によって0〜4の範囲の値を有する。nは、媒質の屈折率であり、通常、25℃の水は、〜1.334であり、QDは、供与体の量子効率である。J(λ)は、供与体の発光及び受容体の吸収のスペクトル上の重複程度であり、M−1cm−1nm4の単位値を有する(Lakowicz, J.R.Principles of Fluorescence Spectroscopy, 2nd ed., New York:Plenum Press, 1999;Patterson, G.H.et al.,Anal.Biochem.、284:438, 2000;Patterson, G.H.et al.J.Cell Sci.、114:837, 2001)。
【0039】
これにより、前述したFRETの原理を利用して、FRETの供与体及び受容体として作用する蛍光蛋白質であるECFP及びEYFPをMBPの両末端に融合させた蛍光標識蛋白質を構成した。このような蛍光標識蛋白質(MBP融合蛋白質)を、生きている細胞内部で発現させて、内部に流入されるマルトースの濃度を定量的に測定した。さらに詳細には、本発明は、FRETのエネルギー転移効率に影響を及ぼす供与体と受容体間の距離及び相対的な配向に変化を加える目的として、ECFPとMBPとの融合部位に任意の短い無作為なペプチドを挿入して、高いシグナルの強度を有するMBP融合蛋白質を探索する方法で蛍光標識蛋白質を構成し、マルトースが結合するMBPの特定部位に遺伝子操作を加えて、多様な濃度で存在するマルトースが検出できるように構成した。
【0040】
また、本発明は、次の工程を含む蛍光標識蛋白質(MBP融合蛋白質)を改良・製作する方法を提供する。
(1)ECFP−MBP−EYFPから構成された蛍光標識蛋白質で、MBP遺伝子とECFP遺伝子との融合部位の塩基配列を多様化したライブラリーを構築するか、またはマルトースが結合するMBPの特定部位に遺伝子操作を加えた後、MBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを構築する工程;(2)前記MBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを形質転換させた大腸菌から、シグナルの強度が増加し、かつ定量的な特性を異ならせるMBP融合蛋白質を高速探索及び分析する工程;(3)前記工程で獲得したシグナルの強度の増加したMBP融合蛋白質を利用して、単一細胞の内部に流入されるマルトースの濃度を定量的に測定する工程;及び(4)MBPと類似した構造及び機能を有する他種の結合蛋白質に前記開発方法を適用して、新たな物質を検出する蛍光標識蛋白質を構成する工程。
【0041】
本発明によるMBP融合蛋白質は、図1に示すように、ECFP−MBP−EYFPが、一つのポリペプチドから構成されて巨大な融合蛋白質として発現されるが、MBPの大きさが3×4×6.5nm(Spurlino, J.C.et al.、J.Biol.Chem., 266:5202, 1991)であることを考慮すれば、ECFPとEYFP間の距離(distance)が約5〜6nmであるので、FRETが発生可能な距離である。したがって、436nmでECFPを励起させれば、ECFPの励起準位エネルギーがEYFPに伝達されて、ECFP及びEYFPの発光を同時に観察することができる。このように、MBP融合蛋白質にマルトースが結合すれば、MBPの両末端に融合されたECFPとEYFP間の距離及び相対的な配向が変わり、ECFPからEYFPへのFRET効率の差によって発生する二つの蛍光蛋白質の発光量の比率変化を測定する原理でマルトースの検出が可能であるが、発光量の比率変化は、マルトースの濃度に比例するので、定量的な測定が可能である。
【0042】
さらに、前記数式2の計算によれば、ECFP及びEYFPのFRET対は、約5nmのR0値を有するので (Patterson, G.H.et al.Anal.Biochem., 284;438, 2000)、ECFPとEYFP間の距離が約5〜6nmであると仮定すれば、距離または相対的な配向の小さな変化が、FRET効率には大きな差をもたらしうる。したがって、マルトースとの結合以前のFRET効率を最小化し、マルトースの結合によるFRET効率を極大化することが可能であれば、蛍光標識蛋白質のシグナルの強度が大きく向上することになり、これは、MBPと二つの蛍光蛋白質との融合部位の構造を変化させることになって、ECFPとEYFP間の距離及び相対的な配向に変化を与えて、FRET効率の調節が可能になると予想できる。
【0043】
これにより、本発明者らは、図2Aに示すように、MBPの両末端に多様な組成及び長さを有する連結ペプチドが挿入されるように図案した11種の遺伝子を、発現ベクターであるpET21a(+)(Novagen、Germany)のT7プロモーターとHis―6タグの塩基配列との間に存在する制限酵素部位に挿入して、図2Bに示すMBP融合蛋白質発現ベクターを構成した。前記の蛍光標識蛋白質発現ベクターは、生体外部の実験のための発現及び精製の目的で、T7 RNAポリメラーゼ遺伝子を染色体内に有している大腸菌である、JM109(DE3)(Promega、USA)をホストとして形質転換させ、形質転換させた大腸菌をLBメディアに培養しつつ、発現誘導物質であるIPTG(イソプロピル−β−d−チオガラクトピラノシド)を添加することによって、MBP融合蛋白質の発現を誘導した。それぞれのMBP融合蛋白質は、MBP融合蛋白質の末端に発現されたHis―6タグを利用して、Ni SepharoseTMが充填されたHisTrapTM HP1(Amersham Biosciences、Sweden)カラムに結合させた後、イミダゾールを利用した勾配溶離(gradient elution)によって精製した。
【0044】
前記精製された11種のMBP融合蛋白質は、次のような方法で、MBP融合蛋白質としての蛍光特性を検証した。MBP融合蛋白質として使用するための重要な要件の一つは、MBPの両末端に融合させた蛍光蛋白質によるMBPのマルトース結合に障害があってはならないことである。したがって、MBPの末端にEYFPを融合させた蛋白質及び11種類のMBP融合蛋白質を対象として、アミロース樹脂(NEB、米国)を利用したプルダウン分析(pull-down assay)によって、マルトースとの結合の程度を次のような方法で確認した。
【0045】
MBP−EYFP及び11種のMBP融合蛋白質をそれぞれアミロース樹脂と混合した後、遠心分離して沈殿させ、上澄み液に残っているEYFPの発光強度を510nmの波長で測定して、アミロース樹脂との結合以前のEYFPの発光強度と比較することによって結合の程度を分析した。図3に示すように、MBP−EYFP及び11種類のMBP融合蛋白質の残存EYFPの発光強度は約70%であり、ほぼ同じ数値を表した。したがって、MBPの両末端に融合されたECFP及びEYFPは、マルトースとの結合に影響を及ぼさないと判断された。
【0046】
次に、実施例3に詳細に説明された方法により、前記で構成した11種の蛍光標識蛋白質のFRET効率を分析した。FRET効率は、436nmの波長でECFPを励起させて観察されるスペクトルにおいて、EYFP及びECFPの最大発光比率である530/480nmで分析し、図4に示すように、蛍光蛋白質とMBPとを連結するペプチドの長さ及び組成によって異なる結果を表した。
【0047】
その結果、MBP融合蛋白質のFRET効率は、蛍光蛋白質とMBPとを連結するペプチドの長さ及び組成によって変わり、これは、マルトースの結合によるMBP融合蛋白質のシグナルの強度(Δ比率)にも大きな影響を及ぼすということが確認された。
【0048】
本発明では、CMY−BIIの発現ベクターであるpECMY−BIIのECFPとMBPとを連結する6個の塩基配列が、多様な組合わせに置換されるように、突然変異の誘発のためのプライマーとして飽和突然変異(saturation mutagenesis)を加えたMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを構成した。本発明では、ECFP遺伝子の増幅時に使用した逆方向プライマーに6個の任意の塩基配列を置換させて、ECFPとMBPとの間に、2個のアミノ酸からなる多様な組合わせの連結ペプチドを生成させ、同様に、MBPのC−末端にも多様な組合わせの連結ペプチドを生成させることによってライブラリーが構成できた。
【0049】
前記方法で構成したMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させた後、マイクロチター速蛍光分析装備を使用して、個別のMBP融合蛋白質のマルトースに対するΔ比率変化を分析する方式で、約4,000個の融合蛋白質を探索し、シグナルの強度の大きく向上した配列番号31のMBP融合蛋白質CMY−QI及び配列番号32のCMY−LHを選別した。
【0050】
一方、既に発表された資料によれば、MBPのTrp62をAlaに置換させたとき、MBPのKd及びマルトースに対する定量範囲を変えうることが確認されたため(Martineau, P.et al., J.Mol.Biol.、214:337, 1990)、MBPのTrp62を多様な種類のアミノ酸に置換させるための遺伝子の操作を行って、マルトースとの結合能力の変わったMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを製造した。本発明では、MBPのTrp62を置換することにしたが、同様に、マルトースと水素結合またはファン・デル・ワールス相互作用(Van Der Waals interaction)を行うと報告された結合部位(binding site)のアミノ酸にも同じ方式で適用可能である。
【0051】
本発明では、前記方法で構築したMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させた後、探索した結果、シグナルの強度が向上し、かつ定量的な特性の変わった配列番号33のMBP融合蛋白質CMY−LH/W62A、配列番号34のCMY−LH/W62H及び配列番号35のCMY−LH/W62Lを得た。
【0052】
本発明において、CMY−LH/W62Lの発現ベクターで形質転換させた大腸菌は、2005年7月14日に菌株国際寄託機関である生命工学研究所遺伝子銀行(KCTC)(韓国デジョンシユスングオウンドン52KRIBB内、305−333)に寄託番号KCTC 10830BPとして寄託した。しかし、本発明で使用または製作したベクターは、実施例に詳細に説明された方法によって、商業的に購入可能なベクターから通常の操作方法で製作できるので、必ずしも寄託を要するものではない。
【0053】
本発明に係る物質結合蛍光標識蛋白質の効率的な利用分野は、生きている細胞内部に流入または代謝される物質の濃度を定量的に測定及び分析する分野であって、シグナルの強度の向上したMBP融合蛋白質を酵母内部で発現して、イメージングで分析した。その例として、YEGα−HIR525(Sohn et al., Process Biochemistry, 30:653、1995)のGALプロモーターの後位に、MBP融合蛋白質の発現可能な遺伝子を挿入させた組み換え発現ベクターであるYEG−CMY−B、YEG−CMY−BII、YEG−CMY−LH及びYEG−CMY−LH/W62Lを構成した。前記で構成したMBP融合蛋白質の発現ベクターは、栄養要求性(auxotrophic)菌株であるSaccharomyces cerevisiae 2805(Sohn et al., Process Biochemistry、30:653, 1995)に形質転換させて、蛍光顕微鏡を利用してMBP融合蛋白質の発現及びイメージングを分析した。
【0054】
本発明は、特定物質の結合蛍光標識蛋白質のシグナルの強度を向上させる目的のみに制限されるものではなく、さらに多様な種類のシグナルの強度の向上した蛍光標識蛋白質の開発に幅広く適用可能である。例えば、MBPの代りに、MBPと類似した構造及び機能を有するBPsの結合蛋白質のうち、ALBP、ARBP、RBP、SBPなどを適用することも可能である。
【0055】
本発明では、前記構成によるMBP融合蛋白質を利用した新たな結合能力を有する蛍光標識蛋白質を製作するために、既に発表されたMBPの遺伝子を部分的に変異させて製作したSBP(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)の遺伝子を、MBP融合蛋白質発現ベクターのMBP遺伝子の部位に置換して構成しようとした。それにより、MBPの遺伝子を部分的に変異させて製作したSBPの遺伝子を製作し、既存のMBP融合蛋白質の発現ベクターであるpECMY−B、pECMY−BII及びpECMY−LHのMBP遺伝子の部位に置換・挿入する方法で、SBP融合蛋白質の発現ベクターを構成した。
【0056】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。それらの実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1:MBP融合蛋白質の発現用組み換えベクターの構築>
図2Aに示すように、三つの蛋白質ドメイン(ECFP、MBP、EYFP)及び二つの合成リンカーが連結ペプチド(cc、yc)とフランキング(flanking)蛋白質の非構造化された末端領域で組み立てれたマルトースの検出用の蛍光標識蛋白質:ECFP―cc−MBP―yc−EYFPが構築された。本発明のMBP融合蛋白質の発現ベクターを構築するために、プライマー1〜11で遺伝子を増幅して発現ベクターを構成した。
【0058】
まず、EYFPの遺伝子を得るために、pEYFP−N1ベクター(Clontech、米国)を鋳型とし、5’の末端には、SacI、EcoRIまたはBamHI制限酵素の認知部位が、3’の末端には、HindIII制限酵素の部位が導入された配列番号1〜4のプライマーを使用してPCR(Polymerase Chain Reaction)を行った。増幅されたEYFP遺伝子は、SacI、EcoRI、BamHI及びHindIII制限酵素で切断した後、MBP発現ベクターであるpMALc2xベクター(NEB、米国)の各制限酵素の部位に挿入してpMEYFP−I、pMEYFP−II、pMEYFP−IIIを構成し、前記三種のベクターから、NdeI、HindIII制限酵素で切断したMBP−yc−EYFP遺伝子を、pET21a(+)ベクター(Novagen、ドイツ)の相応する部位に挿入して、pET―MY−I、pET―MY−II及びpET―MY−IIIの発現ベクターを構築した。
【0059】
次に、pECFPベクター(Clontech、米国)のECFP遺伝子とpMALc2xベクター(NEB、米国)のMBP遺伝子を違うECFP側のコネクター(cc)と共に結合させてECFP―cc−MBP遺伝子を取得した。ECFP遺伝子はECFP遺伝子の3‘末端、cc及びMBP遺伝子の5’末端から構成された配列番号5の一個の正方向のプライマーと配列番号6〜9の四個の逆方向のプライマーを用いて増幅した。同様に、MBP遺伝子は、pMALc2xベクターを鋳型として、配列番号10及び、3’の末端に、SacI及びBamHI制限酵素の認知部位が同時に導入された配列番号11のプライマーを使用したPCRを行うことによって得た。
【0060】
このように増幅されたそれぞれのECFP及びMBP遺伝子は、互いに重なり合うように製作されたプライマーにより重複伸長重合酵素連鎖反応(overlap-extension PCR)が可能であるので、配列番号5及び配列番号11のプライマーを利用して、反応液に同量のECFP及びMBP遺伝子を添加した後にPCRを行って、ECFP及びMBPが合成・増幅された多様な種類の遺伝子を得ることができた。前記増幅されたECFP−MBP遺伝子は、NdeI、SacI及びBamHI制限酵素で切断し、MBP―yc−EYFPの発現ベクターであるpET―MY−I、pET―MY−II及びpET―MY−IIIの制限酵素の認知部位に挿入する方法で、MBPの両末端に、多様な組合わせ及び長さを有する連結ペプチドが生成されうる11種の融合蛋白質発現ベクターを構築して、pECMY系列と名づけ、前記ベクターから発現されたMBP融合蛋白質をCMY系列と名づけた(図2A及び図2B)。
【0061】
発現ベクターの構成、及び突然変異に利用したプライマーの塩基配列は配列番号1から配列番号29として配列目録に表した。
【0062】
<実施例2:MBP融合蛋白質(蛍光標識蛋白質)の発現及び精製>
実施例1で構築したMBP融合蛋白質の発現ベクターは、大腸菌であるJM109(DE3)(Promega、米国)に形質転換させ、形質転換された組み換え菌株は、50μg/mlのアンピシリン(ampicillin)及び0.5mMのIPTG(イソプロピルβ−d−チオガラクトピラノシド)が添加されたLB培地(1%のバクトトリプトン(bacto-trypton)、0.5%の酵母抽出物、1%のNaCl)に接種して、28℃で24時間振盪培養する方法で発現を誘導した。発現が終わった大腸菌を遠心分離によって回収して、50Mmのリン酸ナトリウムバッファ(pH7.5)に分散させ、超音波により細胞膜を破壊し、遠心分離した後、以後の精製工程に使用した。
【0063】
前記MBP融合蛋白質の精製は、EYFPのC−末端に発現させたHis−6タグを利用して、FPLC(Fast Performance Liquid Chromatography、Amersham Biosciences、スウェーデン)に連結させたHistrapTM HP1カラム(Amersham Biosciences、スウェーデン)で精製した。精製に使用したバッファは、0.5mMのPMSF(Phenylmethylsulphonylfluoride:フッ化フェニルメチルスルホニル)、1mMのDTT(dithiothreitol:ジチオスレイトール)及び20mMのイミダゾールが添加された50mMのリン酸ナトリウムバッファ(pH7.5)であり、カラムに結合させた蛋白質は、0.5Mのイミダゾールが添加された50mMのリン酸ナトリウムバッファで勾配溶離した。精製されたMBP融合蛋白質は、FPLCに連結されたHitrapTM脱塩カラム(Amersham Biosciences、スウェーデン)に20%のグリセロールが含まれた、PBSバッファ(pH7.4)で溶出してバッファを交換し、VIVASPIN 20ml(10,000MWCO、Vivascience、ドイツ)で濃縮して、−80℃の冷凍室に保管した。
【0064】
<実施例3:MBP融合蛋白質の蛍光分析>
前記実施例で発現及び精製されたMBP融合蛋白質の蛍光分析は、蛍光分析装備であるCary Eclipse(Varian、オーストラリア)を使用して25℃で行い、MBP融合蛋白質は、PBSバッファ(pH7.4)に0.2μMの濃度に同じく調節して測定した。蛍光分析は、ECFPの励起を436nmにしたときに測定される480nmでの発光強度、及びFRETにより発生する530nmでのEYFPの発光強度の比率を、便宜上、下記数式3に代入する方法でFRET効率を定義した。
【0065】
【数3】
【0066】
また、蛍光標識のシグナルの強度を表す指標は、10mMのマルトースが存在する条件でのFRET効率(ratio10mM)と、マルトースが存在していない条件でのFRET効率(ratioapo)との差(Δ比率)で定義した。
【0067】
前記で発現及び精製されたMBP融合蛋白質のFRET効率は、図4に示すように、蛍光蛋白質とMBPとを連結するペプチドの長さ及び組成によって異なる結果を表した。例えば、MBPとEYFPとの間にGSの短いペプチドで連結させたCMY−B系列の蛍光標識蛋白質の初期FRET効率(ratioapo)は、CMY−B(〜1.3)を除いては、相対的に高い数値である〜1.8を表した。これに対し、CMY−E及びCMY−S系列のMBPとEYFPとの間に、約20個以上のアミノ酸のペプチドで連結された融合蛋白質は、相対的に低いratioapoである1.2〜1.5の数値を表した。
【0068】
また、前記で構成した11種のMBP融合蛋白質のFRET効率に基づいて、マルトースに対するシグナルの強度を測定した。マルトースのシグナルの強度を表す指標は、既に報告された資料(Fehr, M.et al., PNAS, 99:9846, 2002)から引用して、Δ比率で確認した。対照区としては、MBPと蛍光蛋白質との間に連結ペプチドのないCMY−0(Δ比率=0.05)を使用し、図4に示すように、CMY−BII及びCMY−BIIIMBP融合蛋白質は、ECFP側のコネクター(図2A)を除いては、最も類似しているものと見られるが、Δ比率値は、CMY−BIIがCMY−BIIIに比べて約6倍以上高かった。また、11種のMBP融合蛋白質のうち、ECFPとMBPとの間にSRペプチドで連結されたCMY−BII融合蛋白質が、最も高いΔ比率である0.17を表した。これに対し、CMY−E及びCMY−S系列のMBP融合蛋白質は、ECFPとMBPとの間の連結ペプチドの種類に関係なく、非常に低いΔ比率値を表すところ、これは、マルトースの結合以前のFRET効率及びマルトースの結合によるFRET効率にほとんど差が無いことを表す。前記結果は、ECFPとMBPとの間の連結ペプチドが、マルトースの結合によるΔ比率に非常に重要な役割を行うと判断された。したがって、ECFPとMBPとの連結ペプチドを最適化させて、マルトースの結合によるΔ比率を極大化しようとした。
【0069】
広範囲の結合物質濃度での比率変化はSigmaplot(SPSS、米国)のHillの方程式及び4―パラメータ(four-parameter)方式を適用した。また、ratio10mMとratioapoとの中間に該当する結合物質の濃度を、融合蛋白質の解離定数(Kd)と定めた。
【0070】
一方、表1に示すように、CMY−BIIのΔ比率、定量的に測定可能なマルトースの濃度範囲及び解離定数(Kd)は、既に報告されたFRET―基盤ナノセンサーであるFLIPmal−2μ(FLIPmal−5AA)と類似していると確認された(Fehr, M.et al., PNAS, 99:9846, 2002;WO03/025220)。
【0071】
<実施例4:MBP融合蛋白質ライブラリーの構築及び蛍光標識蛋白質の探索>
MBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーの構築は、CMY−BIIの発現ベクターであるpECMY−BIIに基づいて、MBPとEYFPとの間には、GSのペプチドが挿入されるように固定させ、ECFPとMBPとの間には、多様な組合わせの2個のアミノ酸から構成された連結ペプチドが挿入されうる変異プライマーを使用して、MBP融合蛋白質の組み換え発現ベクターライブラリーを構築した。
【0072】
具体的に、ECFP遺伝子は、配列番号5及び配列番号12のプライマーを使用して増幅し、MBPの遺伝子は、配列番号10及び配列番号11のプライマーで増幅した。ECFP及びMBPの遺伝子は、配列番号5及び配列番号11のプライマーを使用して重複伸長PCRで合成・増幅し、NdeI及びBamHI制限酵素で切断して、既に構築されたpECMY−BII発現ベクターからECFP−cc−MBPの遺伝子を除去した後、増幅された遺伝子を挿入する方法で発現ベクターライブラリーを構築した。したがって、ECFP遺伝子とMBP遺伝子との間に挿入した6個のN塩基(Nは、アデニン、グアニン、シトシン、又はチミンを示す)によって、2個のアミノ酸の組合わせで連結された多様なペプチドが生成されうるが、6個の塩基を考慮した計算的な数値は、46=4,096である。
【0073】
前記構築されたMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーは、大腸菌であるJM109(DE3)(Promega、米国)に形質転換させ、得られたそれぞれのクローンを、50μg/mlのアンピシリン及び0.5mMのIPTGが添加されたLB培地が分株されている96ディープウェルプレート(deep well plate)(Bioneer、韓国)に接種して、28℃で24時間振盪培養して発現させた。発現が終わった大腸菌を、3,000×gで20分間遠心分離して回収した後、1ユニットのDNase、20μg/mlのリゾチーム、及び微生物細胞溶解液であるCellytic B(Sigma、米国)を50%になるように添加した250μlのPBSバッファ(pH7.4)に1時間分散させて細胞膜を破壊し、さらに3,000×gで20分間遠心分離して、上澄み液200μlを新たな96ウェルプレートに移して分析した。
【0074】
発現させたMBP融合蛋白質ライブラリーの分析は、フィルタ方式の高速蛍光分析装備であるVictor2(Perkin-elmer、米国)を使用し、450/8nmの励起フィルタと、480/10nm及び535/25nmの発光フィルタとを使用して、ECFP及びEYFPの発光強度を測定した。シグナルの強度を表す指標は、10mMのマルトースが存在する条件でのratio10mMと、マルトースが存在していない条件でのratioapoとのratioの変化(Δ比率)で定義した。
【0075】
ECFPとMBPとの連結ペプチドを多変化させて製作した約4,000個のMBP融合蛋白質ライブラリーの分析結果は、次の通りである。図5に示すように、CMY−BIIに比べてΔ比率の向上したMBP融合蛋白質は、約5%以内で存在し、結果的に、Δ比率が大きく向上した配列番号31の融合蛋白質CMY−QI及び配列番号32のCMY−LHの選別が可能であったが、CMY−QIは、ECFPとMBPとの間にGln−Iluを介して融合され、CMY−LHは、Leu−Hisを介して融合されたことが確認された。前記のCMY−QI及びCMY−LHのratioapoは、それぞれ1.96及び3.02であることが確認され、Δ比率は、図6で確認できるように、それぞれ0.34及び0.5であり、CMY−0を基準に、シグナルの強度が約7〜10倍向上して、マルトースの濃度をより正確かつ定量的に測定できるMBP融合蛋白質を得ることが可能になった。それらを利用した定量範囲及びKdは、表1に示すように、核MBP融合蛋白質が 前記実施例3で構築したCMY−BIIと類似していると確認された。
【0076】
<実施例5:マルトース結合部位の変異された融合蛋白質の構成及び分析>
既に発表された資料によれば、MBPのTrp62をAlaに置換したとき、MBPのKd及びマルトースに対する定量範囲を変えうることが確認されたため(Martineau, P.et al., J.Mol.Biol.214:337, 1990)、MBPのTrp62を多様な種類のアミノ酸に置換するための遺伝子操作を行って、マルトースとの結合能力の変わったMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを製造した。
【0077】
マルトースとの結合に重要な役割を行うMBPのTrp62を他の種類のアミノ酸に置換するために、MBPのTrp62をコードする塩基配列をNNN(Nは、アデニン、グアニン、シトシン、又はチミンを示す)に置換した、配列番号13のプライマー及び配列番号10のプライマーを使用して、MBPのN−末端部位の遺伝子を増幅させたメガ−プライマーを増幅した。次いで、メガ−プライマー及び配列番号11のプライマーを使用して、完全な長さの変異MBP遺伝子を増幅し、配列番号5のプライマー及び、ECFPとMBPとの間にLeu−Hisが生成されるように製作した配列番号14のプライマーを使用して、ECFPの遺伝子を増幅した。ECFP及び変異MBP遺伝子は、重複伸長PCRで連結し、NdeI及びBamHIで切断した後、pECMY−BIIベクターのECFP−MBPの部位に置換・挿入して、変異MBP遺伝子に置換された発現ベクターライブラリーを構築した。
【0078】
前記各MBP融合蛋白質のECFP遺伝子とMBP遺伝子との連結部位、及びMBPのTrp62部位の遺伝子変異は、配列番号15プライマーを使用して塩基配列を確認した。
【0079】
前記方法で構築したMBP融合蛋白質の発現ベクターライブラリーを、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させた後、マイクロチター速蛍光分析装置Victor2(Perkin−elmer,USA)を使用して探索した結果、配列番号33のMBP融合蛋白質CMY−LH/W62A、配列番号34のCMY−LH/W62H、及び配列番号35のCMY−LH/W62Lを得ることができた。CMY−LH/W62Aは、MBPのTrp62部位がAlaに置換されたものであって、対照群として使用するために確保し、CMY−LH/W62Hは、MBPのTrp62部位がHisに置換されたものであり、CMY−LH/W62Lは、MBPのTrp62部位がLeuに置換されたものであると確認された。
【0080】
前記のCMY−LH/W62A、CMY−LH/W62H、及びCMY−LH/W62Lのratioapoは、2.66〜2.81の範囲であり、CMY−LHに比べて少し低かった。しかし、Δ比率は、非常に大きな差を表したが、CMY−LH/W62A、CMY−LH/W62H及びCMY−LH/W62Lは、それぞれ0.30、0.69、1.00のΔ比率を表した(図7)。これは、CMY−0を基準に、CMY−LH/W62Hは、14倍、CMY−LH/W62Lは、20倍程度向上した数値を有し、 前記MBP融合蛋白質などを利用して定量的に測定可能なマルトースの濃度範囲及びKdは、下記表1に表されている。したがって、前記MBP融合蛋白質を得たことによって、さらに幅広い濃度のマルトースの定量が可能になった。
【0081】
【表1】
【0082】
一方、MBP融合蛋白質のうち、マルトースとの結合能力の異なる3種(CMY−LH、CMY−LH/W62H、CMY−LH/W62L)の基質特異性を調べるために、多様な種類の単糖類、二糖類、三炭糖、糖アルコールなどの結合の程度を、実施例3の方法で分析した。図8A〜Cは結合物質に対するMBP融合蛋白質の結合力を比較した結果を表す。図8Aは、マルトースを除いたほとんどの糖類は、MBP融合蛋白質との結合が確認されていないが、d−グルコース及びメレジトース(melezitose)は、濃度を10mMに上げると、低い親和力を表した。これは、d−グルコースの場合には、マルトース単位で結合されている炭水化物を加水分解して生産するので、微量のマルトースの汚染によって、比率の変化(Δ比率 )が発生したことである(Guntas, G.et al., J.Mol.Biol., 336:263-273, 2004)。図8B及び図8Cは、CMY−LH/W62H及びCMY−LH/W62Lの基質に対する親和力を比較した結果であり、マルトース以外のあらゆる糖類及び濃度に関係なく親和力を表していない。
【0083】
前記結果から、前記MBP融合蛋白質は、マルトースに対してのみ特異的な結合力を表し、その他の糖による干渉なしに、生きている細胞の顕微鏡分析による細胞内のマルトース濃度の定量的な測定に有効に使用されうることが立証された。
【0084】
<実施例6:酵母でのMBP融合蛋白質を利用したイメージング分析>
MBP融合蛋白質を利用した生きている酵母のマルトース吸収及び細胞内の濃度変化などを分析するために、次のように発現ベクターを構築した。発現ベクターとしては、YEGα−HIR525(Sohn et al., Process Biochemistry, 30:653、1995)を使用し、酵母発現ベクターを構成するために、SacI及びNdeI制限酵素の部位がGALプロモーターの5’の末端及び3’の末端に挿入されるように、プライマー16及びプライマー17を製作して、YEGα−HIR525からGALプロモーター遺伝子を増幅させた。
【0085】
前記GALプロモーター遺伝子をSacI及びNdeI制限酵素で切断し、NdeI及びSalI制限酵素で、pECMY−B、pECMY−BII、pECMY−LH及びpECMY−LH/W62LのMBP融合蛋白質をコードする遺伝子をそれぞれ切断した後、SacI及びSalIの制限酵素で切断したYEGα−HIR525に同時に挿入させる方法で、YEG−CMY系列と名づけた酵母発現ベクターを構築した(図9)。
【0086】
イメージングによる酵母内部に流入されるマルトース濃度の定量的な測定のために、MBP融合蛋白質の発現ベクターの宿主としてHaploid Saccharomyces cerevisiae2805(Mat a prep4::HIS3 prb1 can1 his3 ura3)(Sohn et al., Process Biochemistry, 30:653, 1995)を使用して形質転換させた。前記で構成したYEG−CMY系列のベクターでそれぞれ形質転換させたS.cerevisiae 2805は、アミノ酸を含んでいない0.67%の酵母窒素塩基(BD Bioscience、米国)、及び0.077%の−Ura DO supplement(BD Bioscience、米国)から構成されたSD培地に1%のグルコースと1%のガラクトースとを炭素源及び誘導物質として使用して、約30〜40時間培養した。
【0087】
イメージングに先立って、培地に残っている炭素源を除去するために、糖のなしSD培養液(pH7.4)に、取得した酵母を分散させて約2時間培養した。次に、25μlの培養培地を糖フリーのSD培養液の入っているガラス底皿(35×10mm、SPL、韓国)に添加して1時間定置した。顕微鏡で観察する間に細胞の沈殿が浮遊することを防ぐために、酵母を含んでいる皿を両面テープを利用して顕微鏡の試料台に固定させた。
【0088】
イメージングは、スプリット・プライマリー・イメージ・カメラ・ポート(split primary image camera port)(U-SIP)に連結させたDP30BW(Olympus、日本)の高感度CCD(Charge Coupled Device)カメラ及びIX71倒立顕微鏡(Olympus、日本)から構成されたFRETスプリットイメージングシステム(Olympus、日本)を使用し、PlanApo N 60x、1.42na、油浸対物レンズ(Olympus、日本)で観察した。顕微鏡で観察された映像の保存及び分析には、CellPソフトウェア(Olympus、日本)を使用し、生きている酵母のFRETによる比率イメージングを観察するためのFRETフィルタセットは、440AF21励起、455DRLPダイクロイックミラー(dichroic mirror)、そして、480AF30及び535AF26の発光フィルタで組合わせられたXF88−2(Omega Optical、米国)を使用した。
【0089】
酵母内部に流入されるマルトース濃度の定量的な測定は、蛍光顕微鏡に装着されたCCDカメラを通じて蛍光イメージを観察し、30秒の間隔で10分間蛍光イメージを取って、CellPソフトウェア(Olympus)で保存して定量分析した。マルトースの観察は、最初の時間から2分経過後、全体的な濃度が10mMになるように添加し、経時による細胞内のマルトース濃度の変化は、EYFP及びECFPの発光強度を比較して分析した。
【0090】
図10Aは、マルトースのシグナルの強度の喪失されたCMY−Bを発現した酵母のイメージング分析結果であり、マルトースを添加していない酵母のratioapoと、2分経過後に飽和濃度である10mMのマルトースを添加したratio10mMとは同じであった。したがって、図10Aの分析結果を対照区として、他種のMBP融合蛋白質が発現された酵母のマルトース濃度によるFRETの変化を分析した。
【0091】
図10Bは、CMY−BIIを発現した酵母のイメージング結果であり、マルトースを添加していない条件と、2分経過後に10mMのマルトースを添加した条件とでその比率に差があることと、マルトース添加後に2分程度経過すれば、細胞内のマルトース濃度が飽和状態に到達することが確認された。
【0092】
図10Cは、CMY−LHを発現した分析結果であり、2分経過後に10mMのマルトースを添加した比率の変化幅が、CMY−BIIを発現した酵母より2倍以上大きかった。これは、ECFPとMBPとの連結ペプチドを最適化してシグナルの強度を向上させたMBP融合蛋白質が、生体外部だけでなく、細胞内部でもそのまま適用されることを立証する結果である。
【0093】
図10Dは、CMY−LH/W62Lを発現した酵母のイメージング結果であり、比率の変化幅は、生体外部で測定した結果と同様に、CMY−LHより大きくなることが確認された。しかし、図10Bまたは図10Cの結果とは異なり、10分経過後にも細胞内のマルトース濃度が飽和状態に到達していないことが確認されたが、これは、CMY−LH/W62LのKdが80μMに向上したためである。したがって、細胞内部に流入または代謝されるマルトースの定量的な測定範囲が大きく拡張して、生理的なレベルでのリガンドの濃度変化を上限値の制約なしに測定可能であろう。
【0094】
<実施例7:多様なPBPsを利用した蛍光標識蛋白質の製作>
マルトース検出用の蛍光標識蛋白質のMBPの位置に、構造的・機能的に類似した大腸菌由来のPBPsを導入して、多様な物質の検出のための蛍光標識蛋白質を開発するために、遺伝子の操作を行った。
【0095】
MBPの位置に導入するBPsの選抜は、SCOP(Structural Classification of Proteins;http://scop.mrc-lmb.cam.ac.uk/scop/)から資料を収集した後、PDB(Protein Data Bank、http://www.rcsb.org/pdb/)で、基質結合に伴われる三次構造の動力学的な変化を確認して選抜した。その例として、ALBP、RBP及びARBPの3種の大腸菌由来のPBPsを、本発明に係るMBP融合蛋白質のMBPの位置に導入させようとした。Swiss−Prot(http://kr.expasy.org/)で前記のPBPsの遺伝子配列情報を得、これに基づいて、各PBPsをコードする遺伝子を増幅させうるプライマーを製作して、大腸菌MG1655の染色体からPCRを行って遺伝子を増幅した。
【0096】
ALBP融合蛋白質の発現ベクターを構築するためのECFP遺伝子の増幅は、塩基配列5及び配列番号18のプライマーを使用し、ALBP遺伝子は、配列番号19及び配列番号20のプライマーを使用して増幅した。増幅されたECFP及びALBP遺伝子は、配列番号5及び配列番号20のプライマーを利用した重複伸長PCRで、ECFP−ALBPの遺伝子を増幅した。したがって、MBP融合蛋白質と同様に、ECFPとALBPとの間には、6個のN塩基(Nは、アデニン、グアニン、シトシン、又はチミンを示す)によって、2個のアミノ酸の組合わせで連結された多様なペプチドが生成され、前記ECFP−ALBP遺伝子は、NdeI、BamHI制限酵素の認知部位を利用して、pECMY−BII発現ベクターからECFP−MBP遺伝子を除去して挿入する方法でライブラリーを構築した。同様に、ARBP融合蛋白質の発現ベクターを構築するためのECFP遺伝子の増幅は、塩基配列5及び配列番号21のプライマーを使用し、ARBP遺伝子は、配列番号22及び配列番号23のプライマーを使用して増幅した。増幅されたECFP及びARBP遺伝子は、配列番号5及び配列番号23のプライマーを利用した重複伸長PCRで、ECFP−ARBP遺伝子として連結し、pECMY−BII発現ベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入する方法でライブラリーを構築した。また、RBP融合蛋白質の発現ベクターを構築するためのECFP遺伝子の増幅は、塩基配列5及び配列番号24のプライマーを使用し、RBPは、配列番号25及び配列番号26のプライマーを使用して増幅した。増幅されたECFP及びRBP遺伝子は、配列番号5及び配列番号26のプライマーを利用した重複伸長PCRで、ECFP−RBPの遺伝子として連結し、pECMY−BIIベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入してライブラリーを構築した。
【0097】
前記のように、MBP融合蛋白質の発現ベクターは、ライブラリーの形態に製作して、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させ、実施例4の過程による探索過程を経ず、任意に3〜5個ずつ選別して、実施例2の方法によって発現及び精製を行った。次に、多様なPBP融合蛋白質でそれぞれの結合物質に対す蛍光性質を分析した。結果的に、図11A〜C及び下記表2に示すように、シグナルの強度の最も良い糖センサー(糖検出用の蛍光標識蛋白質)を選定し、配列番号36のCalsBY−QV、配列番号37のCaraFY−PR、及び配列番号38のCrbsBY−NDなどを得ることができた。
【0098】
【表2】
【0099】
前記融合蛋白質のDNA配列を分析した結果、CalsBY−QVは、ECFPとALBPとの間にGln−Valを介して融合され、CaraFY−PRは、ECFPとARBPとの間にPro−Argを介して融合され、CrbsBY−NDは、ECFPとRBPとの間にAsn−Aspを介して融合されたことが確認された。CalsBY−QV及びCrbsBY−NDは、アロースやリボースの結合によりΔ比率が低下するが、これは、MBPやARBPとは異なり、結合物質の結合により結合蛋白質の両末端が離れる構造を有するためである(Chaudhuri, B.N.et al.J.Mol.Biol., 286:1519, 1999;Magnusson, U.et al., J.Bio.Chem., 277:14077, 2002)。
【0100】
前記三種の蛍光標識蛋白質に対する基質親和力を調べるために、多様な種類の糖類を対象として基質特異性を分析した。図12Aは、CalsBY−QVの基質に対する結合力を比較した結果であり、アロースを除いたほとんどの糖類ではALBP融合蛋白質との結合が確認されていないが、リボースが、mM水準の濃度に上昇すると、ALBP融合蛋白質とは低い親和力を表した(Chaudhuri, B.N.et al., J.Mol.Biol., 286:1519, 1999)。逆に、図12Cは、CrbsBY−NDの基質に対する結合力を比較した結果であり、ほとんどの糖類は、RBP融合蛋白質との親和力は表していないが、アロースとは非常に高い親和力を表し、キシロースも、アロースよりは低いが、高い親和力を表すことを確認した(Kim, C.H.et al., J.Bacteriol., 179:7631, 1997)。図12Bは、CaraFY−PRの基質に対する結合力を比較した結果である。ARBP融合蛋白質は他種の融合蛋白質に比べては相対的に基質特異性が低下することが確認されたが、特に、ガラクトースとは非常に高い親和力を表し(Fukada, H.et al., J.Biol.Chem., 258:13193, 1983)、そして、その他のキシロース、ラムノース、乳糖及びメリビオースなどともある程度の親和力を表すことが確認された。
【0101】
<実施例8:SBPを利用した蛍光標識蛋白質の製作>
既に発表されたMBPの遺伝子を部分的に変異させて製作したSBP(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)の遺伝子を、MBP融合蛋白質の発現ベクターのMBP遺伝子の部位に置換して構成しようとした。
【0102】
鋳型として使用するMBPをコードする遺伝子は、pMALc2xベクター(NEB、米国)を使用し、SBPの遺伝子を製作するために、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号11のプライマーを用いてPCRを行った。前記で増幅された遺伝子は、MBPのAsp14をLeuに、Lys15をPheに、Trp62をTyrに、そしてGlu111をTyrに置換させる部分突然変異を含むため、既存の報告によれば、ショ糖と結合可能なSBPの遺伝子をコードしている(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)。
【0103】
CSY−Bの発現ベクターを構成するために、塩基配列5及び塩基配列6のプライマーを使用して増幅したECFP遺伝子及び前記SBP遺伝子を、配列番号5及び塩基配列11のプライマーを利用した重複伸長PCRでECFP−SBP遺伝子に連結し、pECMY−BII発現ベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入してpECSY−Bベクターを構成した。同様に、CSY−BIIの発現ベクターは、塩基配列5及び塩基配列8のプライマーを使用して増幅したECFPの遺伝子及び前記SBPの遺伝子を、配列番号5及び塩基配列11のプライマーを利用した重複伸長PCRでECFP−SBP遺伝子に連結し、pECMY−BII発現ベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入してpECSY−BIIベクターを構成した。また、CSY−LHの発現ベクターを構成するために、塩基配列5及び塩基配列14のプライマーを使用して増幅したECFP遺伝子及び前記のSBPの遺伝子を、配列番号5及び配列番号11のプライマーを利用した重複伸長PCRでECFP−SBP遺伝子に連結し、pECMY−BII発現ベクターのECFP−MBP遺伝子の位置に挿入してpECSY−LHベクターを構成した。
【0104】
前記SBP融合蛋白質の発現ベクターは、大腸菌であるJM109(DE3)に形質転換させ、実施例3の方法で発現及び精製を行った。次に、多様なSBP融合蛋白質を用いて蛍光分析でショ糖及びマルトースに対するシグナルの強度を分析し、それそれのSBP融合蛋白質の性質を分析した。結果的には、図13A、図13B及び表3に示すように、多様なSBP融合蛋白質の中で、ショ糖に対するシグナルの強度の最も高い配列番号39の蛍光標識蛋白質CSY−LHを得た。
【0105】
【表3】
【0106】
前記表3から分かるように、シグナルの強度の最も向上したSBP融合蛋白質であるCMY−LHのMBPの両末端の連結ペプチドをそのまま適用させた、ショ糖結合蛍光標識蛋白質であるCSY−LHが最も高いΔ比率を表すことが確認された。したがって、MBPを鋳型として新たな結合能力を有する蛍光標識蛋白質の構成は、CMY−LHの最適化された連結ペプチドをそのまま使用して、シグナルの強度に優れた新たな機能を有する結合蛋白質の構成が可能であるということが確認された。しかし、CSY−LHを基準に、ショ糖及びマルトースに対するKdは、既に報告された結果とは異なり、約25倍以上向上した結果が表れた(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)。
【0107】
前記CSY−LHを利用した多様な種類の糖類との結合親和力を分析した。図14の結果から、CSY−LHは、既に報告された結果と同様に、ショ糖及びマルトースを除いたほとんどの糖類では結合しないことが確認された(Guntas, G.et al., PNAS, 102:11224, 2005)。
【0108】
以上、本発明の内容の特定な部分を詳述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施の態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明による蛍光標識蛋白質の一例として、MBP融合蛋白質の基本的な構成及び作動原理を示す図面である。
【図2A】本発明に係る蛍光蛋白質と連結されるMBPの両末端部を異ならせたMBP融合蛋白質の模式図である。
【図2B】前記MBP融合蛋白質の発現のための発現ベクターの構成を示すフローチャートである。
【図3】実施例1で製作したベクターから発現された MBP融合蛋白質の、アミロース樹脂(amylose resin)に対する結合の程度(融合蛋白質の結合能)を示すグラフである(黒色のバー:アミロース樹脂を利用したプルダウン(pull-down)以前のEYFPの発光量;斜線のバー:アミロース樹脂を加えてプルダウンした後の上澄み液中のEYFPの発光量)。
【図4】実施例1で製作したベクターから発現されたMBP融合蛋白質のマルトース結合によるFRET効率の変化を比較したグラフである(黒色のバー:マルトースとの結合以前のFRET効率;斜線のバー:マルトースとの結合以後のFRET効率;バーの上に表記された数字:シグナルの強度の指標であるΔ比率(Δratio))。
【図5】ECFPとMBPとの連結ペプチドを無作為的に多変化させて製作したMBP融合蛋白質ライブラリーから探索した結果であるΔ比率の分布グラフである(白抜きの四角で囲まれた部分:CMY−BIIよりシグナルの強度の向上した融合蛋白質の分布;横線の四角で囲まれた部分:CMY−BIIよりシグナルの強度の低下した融合蛋白質の分布;○で囲まれた部分:CMY−BIIのグループ)。
【図6】本発明に係るMBP融合蛋白質のマルトースの濃度変化によるΔ比率変化を、シグモイド曲線(sigmoidal curve)で示すグラフである(●:CMY−0;○:CMY−BII;▼:CMY−QI;▽:CMY−LH)。
【図7】本発明によってMBPのTrp62に突然変異を加えて得られたマルトースに対する定量範囲が多様なMBP融合蛋白質のマルトースの濃度変化によるΔ比率変化をシグモイド曲線で示すグラフである(●:CMY−0;○:CMY−LH;▼:CMY−LH/W62A;▽:CMY−LH/W62H;■:CMY−LH/W62L)。
【図8A】本発明に係る定量的な特性の相異なるMBP融合蛋白質を、多様な種類の糖類を対象として結合親和力を比較したグラフであり、CMY−LHの場合を示すグラフである。
【図8B】本発明に係る定量的な特性の相異なるMBP融合蛋白質を、多様な種類の糖類を対象として結合親和力を比較したグラフであり、CMY−LH/W62Hの場合を示すグラフである。
【図8C】本発明に係る定量的な特性の相異なるMBP融合蛋白質を、多様な種類の糖類を対象として結合親和力を比較したグラフであり、CMY−LH/W62Lの場合を示すグラフである。
【図9】生きている酵母の細胞内部に流入されるマルトースの濃度変化を観察する目的で酵母発現用ベクターの製作する工程を示すフローチャートである。
【図10A】蛍光顕微鏡を利用したFRETイメージングで、生きている酵母細胞内のマルトースの濃度変化を観察した結果であって、CMY−Bを発現させた酵母で分析した結果である(●:マルトースを非存在下の時の酵母の発光量の比率;○:最初の観察時間から2分経過後に10mMのマルトースを添加した酵母の発光量比率)。
【図10B】蛍光顕微鏡を利用したFRETイメージングで、生きている酵母細胞内のマルトースの濃度変化を観察した結果であって、CMY−BIIを発現させた酵母で分析した結果である(●:マルトースを添加していない酵母の発光量の比率;○:最初の観察時間から2分経過後に10mMのマルトースを添加した酵母の発光量比率)。
【図10C】蛍光顕微鏡を利用したFRETイメージングで、生きている酵母細胞内のマルトースの濃度変化を観察した結果であって、CMY−LHを発現させた酵母で分析した結果である(●:マルトースを添加していない酵母の発光量の比率;○:最初の観察時間から2分経過後に10mMのマルトースを添加した酵母の発光量比率)。
【図10D】蛍光顕微鏡を利用したFRETイメージングで、生きている酵母細胞内のマルトースの濃度変化を観察した結果であって、CMY−LH/W62Lを発現させた酵母で分析した結果である(●:マルトースを添加していない酵母の発光量の比率;○:最初の観察時間から2分経過後に10mMのマルトースを添加した酵母の発光量の比率)。
【図11A】ALBP、ARBP、RBPを感知部として導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質を、アロース(allose)、アラビノース(arabinose)、リボース(ribose)の濃度変化によるFRET効率変化をシグモイド曲線で示すグラフであり、CalsBY−QVの場合を示すグラフである。
【図11B】ALBP、ARBP、RBPを感知部として導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質を、アロース、アラビノース、リボースの濃度変化によるFRET効率変化をシグモイド曲線で示したグラフであり、CaraFY−PRの場合を示すグラフである。
【図11C】ALBP、ARBP、RBPを感知部として導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質を、アロース、アラビノース、リボースの濃度変化によるFRET効率変化をシグモイド曲線で示したグラフであり、CrbsBY−NDの場合を示すグラフである。
【図12A】ALBP、ARBP、RBPを感知部に導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質の、多様な種類の糖類に対する結合親和力を比較したグラフであり、CalsBY−QVの場合を示すグラフである。
【図12B】ALBP、ARBP、RBPを感知部に導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質の、多様な種類の糖類に対する結合親和力を比較したグラフであり、CaraFY−PRの場合を示すグラフである。
【図12C】ALBP、ARBP、RBPを感知部に導入して構成したそれぞれの蛍光標識蛋白質の、多様な種類の糖類に対する結合親和力を比較したグラフであり、CrbsBY−NDの場合を示すグラフである。
【図13A】MBPに遺伝子変異を起こして再構成したSBP(Sucrose-binding Protein)を結合部位として導入して構成したSBP融合蛋白質を、ショ糖の濃度変化によるΔ比率変化をシグモイド曲線で示したグラフである(●:CSY−B;○:CSY−BII;▼:CSY−LH)。
【図13B】MBPに遺伝子変異を起こして再構成したSBP(Sucrose-binding Protein)を結合部位として導入して構成したSBP融合蛋白質を、マルトースの濃度変化によるΔ比率変化をシグモイド曲線で示したグラフである(●:CSY−B;○:CSY−BII;▼:CSY−LH)。
【図14】ショ糖結合蛍光標識蛋白質のうち、高いシグナルの強度を有するCSY−LHの多様な種類の糖類に対する結合親和力を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式Iで表示される糖濃度に対するシグナルの強度が向上された蛍光標識蛋白質:
〔構造式I〕
ここで、BP(Binding Proteins)は、MBP(Maltose-Binding Protein)、ALBP(Allose Binding Protein)、ARBP(Arabinose Binding Protein)、RBP(Ribose-Binding Protein)及びSBP(Sucrose Binding Protein)から構成された群から選択され、L1及びL2は、2つのアミノ酸から構成され、FP1は、ECFP(Enhanced Cyan Fluorescence Protein)、EBFP(Enhanced Blue Fluorescence Protein)及びEGFP(Enhanced Green Fluorescence Protein)から構成された群から選択され、FP2は、EYFP(Enhanced Yellow Fluorescence Protein)、EGFP及びRFP(Red Fluorescent Protein)から構成された群から選択される。
【請求項2】
前記BPは、MBPであり、前記L1は、Gln−IleまたはLeu−Hisであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項3】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号31または配列番号32のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項2に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項4】
前記BPは、ALBPであり、前記L1は、Gln−Valであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項5】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号36のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項4に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項6】
前記BPは、ARBPであり、前記L1は、Pro−Argであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項7】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号37のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項6に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項8】
前記BPは、RBPであり、前記L1は、Asn−Aspであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項9】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号38のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項8に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項10】
前記BPは、MBPの変異体であり、前記MBPの変異体は配列番号30のアミノ酸配列のうち62番目のアミノ酸が変異されたことを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項11】
前記変異はTrp62Ala、Trp62His及びTrp62Leuから構成された群から選択された何れか一つであることを特徴とする請求項10に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項12】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号33ないし配列番号35から構成された群から選択された、何れか一つのアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項11に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項13】
前記BPはSBPであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項14】
前記SBPは配列番号30のアミノ酸配列を有するMBPの変異体であることを特徴とする請求項13に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項15】
前記変異体は配列番号30のアミノ酸配列のうち、Asp14Leu、Lys15Phe、Trp62Tyr及びGlu111Tyrの変異を含むことを特徴とする請求項14に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項16】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号39のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項5に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16の中何れか一項の蛍光標識蛋白質をコードする塩基配列からなる核酸。
【請求項18】
請求項17の核酸を含む組み換えベクターを、バクテリア、酵母、カビ及び動植物の細胞から構成された群から選択される宿主細胞に導入させて得られた組み換え微生物または細胞。
【請求項19】
下記の工程を含む構造式Iの蛍光標識蛋白質の製造方法:
(a)請求項18の組み換え微生物または細胞を培養して蛍光標識蛋白質を発現する工程;及び(b)前記培養微生物または細胞から前記蛍光標識蛋白質を得る工程。
【請求項20】
下記の工程を含む構造式Iの蛍光標識蛋白質を利用した微生物及び細胞内の糖濃度変化の検出方法:
(a)請求項18の組み換え微生物または細胞を培養して、構造式Iの蛍光標識蛋白質を発現する工程;及び(b)蛍光分析装備を利用して、前記培養された微生物または細胞内の糖濃度変化を分析する工程。
【請求項1】
下記構造式Iで表示される糖濃度に対するシグナルの強度が向上された蛍光標識蛋白質:
〔構造式I〕
ここで、BP(Binding Proteins)は、MBP(Maltose-Binding Protein)、ALBP(Allose Binding Protein)、ARBP(Arabinose Binding Protein)、RBP(Ribose-Binding Protein)及びSBP(Sucrose Binding Protein)から構成された群から選択され、L1及びL2は、2つのアミノ酸から構成され、FP1は、ECFP(Enhanced Cyan Fluorescence Protein)、EBFP(Enhanced Blue Fluorescence Protein)及びEGFP(Enhanced Green Fluorescence Protein)から構成された群から選択され、FP2は、EYFP(Enhanced Yellow Fluorescence Protein)、EGFP及びRFP(Red Fluorescent Protein)から構成された群から選択される。
【請求項2】
前記BPは、MBPであり、前記L1は、Gln−IleまたはLeu−Hisであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項3】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号31または配列番号32のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項2に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項4】
前記BPは、ALBPであり、前記L1は、Gln−Valであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項5】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号36のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項4に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項6】
前記BPは、ARBPであり、前記L1は、Pro−Argであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項7】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号37のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項6に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項8】
前記BPは、RBPであり、前記L1は、Asn−Aspであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項9】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号38のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項8に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項10】
前記BPは、MBPの変異体であり、前記MBPの変異体は配列番号30のアミノ酸配列のうち62番目のアミノ酸が変異されたことを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項11】
前記変異はTrp62Ala、Trp62His及びTrp62Leuから構成された群から選択された何れか一つであることを特徴とする請求項10に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項12】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号33ないし配列番号35から構成された群から選択された、何れか一つのアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項11に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項13】
前記BPはSBPであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項14】
前記SBPは配列番号30のアミノ酸配列を有するMBPの変異体であることを特徴とする請求項13に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項15】
前記変異体は配列番号30のアミノ酸配列のうち、Asp14Leu、Lys15Phe、Trp62Tyr及びGlu111Tyrの変異を含むことを特徴とする請求項14に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項16】
前記蛍光標識蛋白質は、配列番号39のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項5に記載の蛍光標識蛋白質。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16の中何れか一項の蛍光標識蛋白質をコードする塩基配列からなる核酸。
【請求項18】
請求項17の核酸を含む組み換えベクターを、バクテリア、酵母、カビ及び動植物の細胞から構成された群から選択される宿主細胞に導入させて得られた組み換え微生物または細胞。
【請求項19】
下記の工程を含む構造式Iの蛍光標識蛋白質の製造方法:
(a)請求項18の組み換え微生物または細胞を培養して蛍光標識蛋白質を発現する工程;及び(b)前記培養微生物または細胞から前記蛍光標識蛋白質を得る工程。
【請求項20】
下記の工程を含む構造式Iの蛍光標識蛋白質を利用した微生物及び細胞内の糖濃度変化の検出方法:
(a)請求項18の組み換え微生物または細胞を培養して、構造式Iの蛍光標識蛋白質を発現する工程;及び(b)蛍光分析装備を利用して、前記培養された微生物または細胞内の糖濃度変化を分析する工程。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【公開番号】特開2007−29095(P2007−29095A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202057(P2006−202057)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(506272301)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(506272301)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (17)
【Fターム(参考)】
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