説明

糖類のアルキルエーテル化物の製造方法

【課題】 糖類のアルキルエーテル化物の製造方法において、糖鎖が切断されること無く、かつ選択的に非対称の脱水エーテル化が高効率で進行する、糖類のアルキルエーテル化物の製造方法を提供する。
【解決手段】 糖類のアルキルエーテル化物の製造方法において、触媒と溶剤の存在下、超臨界状態の二酸化炭素中で、上記糖類と分子内に水酸基を有する化合物とを脱水縮合反応させることを特徴とするアルキルエーテル化物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類のアルキルエーテル化物の製造方法に関する。更に詳しくは、触媒(C)と溶剤(D)の存在下、超臨界状態の二酸化炭素(E)中で、該糖類(A)と分子内に水酸基を有する化合物(B)とを脱水縮合反応させることを特徴とするアルキルエーテル化物(F)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルコール間の脱水縮合によるエーテル化合物の製造法は高温(180℃以上)、酸触媒条件下(ブレンステッド酸およびルイス酸)で行われたものが知られている。このブレンステッド酸としては硫酸、塩酸などが挙げられ、
ルイス酸としては、AlClなどのハロゲン化遷移金属酸;及びB(C、Al(Cなどのスーパールイス酸などが知られている。
【0003】
上記のアルコール間の脱水縮合によるエーテル化合物の製造法は、同種アルコール間の対称エーテル化合物(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル)の製造法に用いられる(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、異種アルコール間の脱水縮合による非対称エーテル化合物の製造法は制限される。具体的には、1級アルコールと3級アルコール間でのみ90%以上の選択性が実現されている(例えば非特許文献1)が、通常、1級アルコール、及び2級アルコールを用いた場合には選択性は無く、3種のアルキルエーテルが混在する結果となり、問題となる。
【0005】
その代替反応として、非対称エーテル化合物の製造法は、アルキル化剤(例えば、ジアルキル硫酸エステル、ジアルキルカーボネート、アルキルクロライド)とアルコールを原料とするが一般的である。例えば、スクロース誘導体とジメチル硫酸エステルからのメチル化スクロース合成(例えば非特許文献2)や、マーセル化セルロースをメチルクロライドでメチル化する方法(例えば特許文献2)などが挙げられる。
【0006】
しかしながら、アルキル化剤を用いた非対称エーテル化合物の製造法は、脱塩工程が必要であり、特に分子量が高く良溶媒が少ない糖類への適用においてはその煩雑さがより顕著となる。そのため、脱塩工程を無くす手段として、糖類とアルコール類間の直接的な脱水縮合反応を用いる。しかし、硫酸処理等、従来の技術では180℃以上もの高温が必要であり、糖鎖結合は分解してしまう。さらに1級アルコールや2級アルコールを用いた脱水縮合エーテル化合物の製造法は、3種のエーテルが混在する複雑な反応系となってしまうため、その生成されるエーテル化合物の内、目的とするエーテル化合物を高選択的に得ることは困難である。
【0007】
従来の脱水によるエーテル化合物の製造法として、ブレンステッド酸(例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸)を触媒とした反応系が挙げられるが、180℃以上の高温が必要であるが、この条件では糖鎖結合の切断が副反応として起こる。
【0008】
【特許文献1】特開平11−158102号公報
【特許文献2】特開平10−152502号公報
【非特許文献1】Chemical Communication,2003年,1054−1055頁
【非特許文献2】Carbohydrate Research,1991年,218号,237−245頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、糖類のアルキルエーテル化物の製造方法において、糖鎖が切断されることなく、かつ高選択的に非対称の脱水エーテル化が高置換度で進行する、糖類のアルキルエーテル化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、糖類(A)のアルキルエーテル化物(F)の製造方法において、触媒(C)と溶剤(D)の存在下、超臨界状態の二酸化炭素(E)中で、該糖類(A)と分子内に水酸基を有する化合物(B)とを脱水縮合反応させることを特徴とするアルキルエーテル化物(F)の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の糖類のアルキルエーテル化物の製造方法は次のような効果を奏する。
(i)アルコール間の脱水縮合によるエーテル化合物の製造法である為、脱塩工程を必要としない。
(ii)超臨界流体を用いたエーテル化合物の製造法であるため、特に精製工程を経る必要が無く、副生成物である同種アルコール同士の縮合による対称エーテル化物の含有量を1重量%以下にすることが可能である。
(iii)超臨界流体を用いたエーテル化合物の製造法であるため、反応の活性化エネルギーが低下し、従来(180℃)よりも低温(40〜120℃)で反応させることが可能であり、糖鎖の切断といった副反応を伴わない。
(iv)ルイス酸を酸触媒として用いたエーテル化合物の製造法であるため、ブレンステッド酸に比べ、糖鎖の切断が80%程度抑えられる。
(v)スーパールイス酸を酸触媒として用いたエーテル化合物の製造法の場合は、酸触媒が触媒量でよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、触媒(C)と溶剤(D)の存在下、超臨界状態の二酸化炭素(E)中で、糖類(A)と分子内に水酸基を有する化合物(B)とを脱水縮合反応させることを特徴とするアルキルエーテル化物(F)の製造方法である。
【0013】
本発明において、原料の糖類(A)としては特に制限はなく、水酸基が未置換の糖類でも、水酸基の一部がアルキルエーテル化やカルボキシメチル化などの置換された水酸基を含んだ糖類でも構わない。
【0014】
水酸基が未置換の糖類としては、単糖類(例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース等)、または二糖類(例えばトレハロース、マルトース、およびスクロース等)(A1);多糖類(例えば木綿、木材由来のパルプ、バクテリアセルロース、リグノセルロース、再生セルロースなどのセルロース;キトサン、キチン、微生物産生多糖類等)(A2)等が挙げられる。
好ましいのは、グルコース、フルクトース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、およびスクロース、セルロース、キトサン、キチンであり、特に好ましいのはトレハロース、、セルロースである。
【0015】
水酸基の一部が置換された糖類としては、糖類のエーテル化物(例えばエチルトレハロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、糖類のエステル化物(例えば、トレハロースアセテート、セルロースアセテート、セルロースラクテート、セルロースブチレート、セルロースアセトブチレート、セルロースカプロネート等)、セルロースエーテルエステル(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースラクテート、ヒドロキシエチルセルロースブチレート等)等が挙げられる。
【0016】
本発明におけるもう1つの原料である分子内に水酸基を有する化合物(B)としては、その種類は特に限定されないが、好ましくは炭素数1〜18の1価の脂肪族または芳香脂肪族アルコールであり、目的とするセルロース誘導体にあわせて、選択すればよい。反応性、生成物の選択性の観点から、さらに好ましくはメタノール、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等である。
【0017】
本発明における脱水縮合反応のための触媒(C)として、ブレンステッド酸(例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸等)を用いると、糖鎖結合の切断が副反応として起こる。そのため、触媒(C)として好ましいのはルイス酸(C1)である。ただし、通常のルイス酸は生成水で失活するため、等量を要する。
【0018】
そこで、求核攻撃に対する耐久性と熱安定性を兼ね備えたルイス酸が少量でも効果を発揮するため、さらに好ましい。このような求核攻撃に対する耐久性と熱安定性を兼ね備えたルイス酸は、一般にスーパールイス酸(C2)と呼ばれる。
スーパールイス酸(C2)の例としては、その化学構造中にパーフルオロフェニル基(以下、Cと略称する)もしくはトリフルオロメタンスルホン酸基(以下、Tfと略称する)を有するルイス酸(C21)、ハフニウムテトラハライド(C22)等が挙げられる。
【0019】
上記のスーパールイス酸(C21)としては、下記一般式(1)で表されるケイ素化合物(C211)、または下記一般式(2)で表される錯体化合物(C212)等が挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
Rは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、メチル基、エチル基などが挙げられる。
Yは窒素原子、炭素原子、硫黄原子、酸素原子またはリン原子を表す。
Zはパーフルオロフェニル基(C)またはトリフルオロメタンスルホン酸基(Tf)を表す。
mは前記のYの個数を表し、1〜3の整数である。nは1〜4の整数である。
【0022】
【化2】

【0023】
Mはアルミニウム原子、スカンジウム原子またはホウ素原子を表す。
Yは窒素原子、炭素原子、硫黄原子、酸素原子またはリン原子を表す。
ZはCまたはTfを表す。
jおよびkは1〜3の整数である。
【0024】
上記のケイ素化合物(C211)としては、MeSiNTf、(CCTf)SiMeが好ましい。
上記の錯体化合物(C212)としては、B(C、Al(C、Sc(NTf、Sc(OTf、Sc(CTfが好ましい。
【0025】
前述のハフニウムテトラハライド(C22)としては、下記一般式(3)で表されるハフニウム化合物が好ましい。
【0026】
【化3】

【0027】
〜Xはそれぞれ独立にハロゲン原子である。
例えば、テトラクロロハフニウム、ジブロモジクロロハフニウムなどが挙げられる。好ましいのはテトラクロロハフニウムである。
【0028】
本発明におけるスーパールイス酸の使用量は、糖類の水酸基に対して、0.1mol%〜10mol%が好ましく、さらに好ましくは0.5mol%〜1mol%である。
【0029】
本発明の糖類のアルキルエーテル化物(F)の製造方法では、溶剤(D)の存在下で脱水縮合反応させるが、この際に、例えば、
(1)溶剤(D1)を用いて、予め単糖類もしくは二糖類(A1)を溶剤(D1)に溶解させた後に、脱水縮合反応させること場合と、
(2)膨潤剤(D2)を用いて、予め多糖類(A2)を膨潤剤(D2)に膨潤させた後に、脱水縮合反応させる場合がある。
【0030】
本発明の単糖類および二糖類(A1)における溶剤(D1)としては、溶剤100gに対して前記糖類を1g以上溶解させる溶剤が好ましく、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、イオン液体等が挙げられる。
【0031】
多糖類(A2)に関しては、溶解性に優れた溶剤が限られており、その溶剤の使用条件等も特殊である(例えば、銅アンモニア溶液など)ため、通常の溶剤を用いることが困難であるが、本発明においては均一溶液系にする必要は無く、膨潤剤による、膨潤処理で十分反応が進行する。
上記理由により、多糖類(A2)に関しては、膨潤剤(D2)を用いることが好ましく、本発明の多糖類(A2)における膨潤剤(D2)としては、溶剤100gに対して前記多糖類を1g以上膨潤させる膨潤剤が好ましく、例えば、N−メチルモルホリンオキシド、イオン液体、DMSO、水、トルエン、エチレンジアミン等が挙げられる。
本発明の多糖類(A2)における膨潤処理法としては、反応させる前に、予め多糖類を膨潤剤(D2)に膨潤させておく手法が好ましい。
【0032】
本発明の糖類のアルキルエーテル化物(F)の製造方法は、糖類(A)と分子内に水酸基を有する化合物(B)を、超臨界状態の二酸化炭素(E)中で脱水縮合反応させることを特徴とする。
本発明における超臨界状態の二酸化炭素(E)とは、臨界温度(31.0℃)及び臨界圧力(7.4MPa)以上の条件を満たした時に見受けられる圧縮性流体の事である。更に、超臨界流体は物質に固有の気液臨界温度、圧力を超えた非凝縮性流体と定義される。
臨界温度を超えているために分子の熱運動が激しく、かつ密度を理想気体に近い希薄な状態から液体に対応するような高密度な状態まで圧力を変えることによって連続的に変化させることができる。
【0033】
また、超臨界流体を用いることで、通常の高温反応(180℃以上)よりも低温(120℃以下)で反応系をデザインする事が可能となる。その理由として、1つ目に、反応系の遷移状態を安定化し活性化エネルギーを下げるためであり、2つ目として、糖類(A)の糖鎖骨格への浸透作用があるためと考えられる。
【0034】
本発明の製造方法における超臨界状態の二酸化炭素(E)は温度40〜120℃、圧力10〜20MPaが好ましい。
【0035】
本研究における超臨界状態の流体として二酸化炭素を用いたのは、超臨界状態の二酸化炭素がルイス酸性場であるが故に脱水縮合反応によるアルキルエーテル化物(F)の生成を促進する為であり、超臨界状態の窒素等ではこのような反応を促進する効果は見受けられない。
【0036】
本発明における反応時の温度は、二酸化炭素の超臨界領域温度の範囲であり、糖鎖分解等の副反応の観点から31℃〜180℃が好ましく、更に好ましくは40℃〜120℃である。
【0037】
本発明における反応時の圧力は、二酸化炭素の超臨界領域圧力の範囲であり、反応速度、副反応、装置の簡便性の観点から7.4MPa〜30MPaが好ましく、更に好ましくは10MPa〜20MPaである。
【0038】
本発明における反応時間は反応温度に応じて調整すればよいが、生産性の観点から0.1〜20時間が好ましく、更に好ましくは0.3〜20時間である。
【0039】
本発明のアルキルエーテル化糖類(F)の置換度(DS)は0〜2.5である。
【0040】
また、上記のアルキルエーテル化糖類(F)中の塩類及び有機溶剤の含有量は、100ppm以下であり、高純度なアルキルエーテル化糖類である。また、反応後の超臨界二酸化炭素(E)での抽出回数を増やす事で50ppm以下にする事も可能である。
【0041】
このアルキルエーテル化糖類(F)の反応率は以下の方法で測定する。
<アルキルエーテル化糖類(F)の反応率の測定方法>
JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」の7.3ピリジン−塩化アセチル化法に準拠して反応前後の水酸基価を測定して、次式から求められる。
反応率(%)=(アルキル化後の水酸基価/アルキル化前の水酸基価)×100
【0042】
このアルキルエーテル化糖類(F)の分解率(糖鎖の切断率)は以下の方法で測定する。
<分解率の測定方法>
GPCによる平均分子量の測定により、次式から求められる。
分解率(%)=(アルキル化後の実測平均分子量/アルキル化後の理論分子量)×100
【0043】
このアルキルエーテル化糖類(F)の選択性は以下の方法で測定する。
<選択性の測定方法>
CO2フローによる分離後の、アルキルエーテル化糖類(F)と対称アルキルエーテル化物(G)の重量の実測により、次式から求められる。
選択性(%)=F/(F+G)×100
但し、F:アルキルエーテル化糖類の重量(g)
G:対称アルキルエーテル化物の重量(g)
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)トレハロースのエチルエーテル化
トレハロース二水和物(分子量378.3)3.7gをDMSO30gに溶解させた後、エタノール180gとパーフルオロトリフェニルボラン0.05g(1mol%)を加え、容積300mLの耐高圧釜に仕込んだ。
45℃まで昇温した後、液化二酸化炭素をポンプで送り込み、反応釜内を18MPaとした。撹拌しつつ、8時間反応させた後、35℃まで冷却し、液化二酸化炭素をポンプで送り込みながら、反応釜の内圧が18MPaで一定になるように、異なるバルブからガス抜きをし(以下、フローと略す)、パーフルオロトリフェニルボランと未反応エタノールを回収した。
十分にフローし、生成物が乾燥した時点で、反応釜から目的とするエチルトレハロース(A−1)4.2g(原料の糖類に基づいて反応率77%)を取り出した。
副生成物としての対称エーテルであるジエチルエーテルと糖鎖同士のエーテル縮合物の含有量をNMR法により分析した。ジエチルエーテル(G−1)0.12g(生成物 に基づいて含有率3%)、糖鎖同士の縮合物(G−2)0g(含有率0%)であった。
【0046】
(実施例2)セルロースのエチルエーテル化
実施例1において、トレハロース二水和物の代わりにセルロース粉末(平均分子量5000)3.7gを用いてDMSO30gで膨潤させた以外は、実施例1と同様な操作を行い、目的とするエチルセルロース(A−2)4.2g(反応率40%)を得た。なお、ジエチルエーテル(G−3)0.11g(含有率3%)、糖鎖同士(G−4)の縮合物0g(含有率0%)であった。
【0047】
(比較例1)トレハロースのエチルエーテル化(超臨界窒素中での反応)
実施例1において、液化二酸化炭素を液化窒素として、超臨界状態の窒素中で反応させた以外は、実施例1と同様な操作を行い、未反応の原料トレハロース(A’−1)を3.7g(反応率0%)回収した。
【0048】
(比較例2)トレハロースのエチルエーテル化(溶剤無しでの反応)
実施例1において、DMSOなどの溶剤も膨潤剤も一切用いなかった以外は、実施例1と同様な操作を行い、未反応の原料トレハロース(A’−2)を3.7g(反応率0%)回収し、さらにジエチルエーテル(G’−3)0.12g、糖鎖同士(G’−4)の縮合物0gを得た。
【0049】
(比較例3)トレハロースのエチルエーテル化(ブレンステッド酸触媒での従来反応)
実施例1において、パーフルオロトリフェニルボランの代わりに硫酸0.01g(1mol%)を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、トレハロースの分解物(エチルグルコース)(A’−3)5.2g(反応率7%)、ジエチルエーテル(G’−5)0.15g(含有率3%)、糖鎖同士(G’−6)の縮合物0g(含有率0%)であった。
【0050】
表1に記載の反応率(%)、分解率(%)、選択率(%)は前述の計算式に基づいて計算した。その結果を表1に示す。
なお、比較例1と比較例2は、原料が未反応(反応率0%)であったため、選択率は測定できなかった。
【0051】
【表1】

【0052】
表1から明らかなように、
本発明の単糖類の実施例1と、多糖類の実施例2はいずれも反応率が十分高く、選択率も非常に高い(対称エーテル化物の含有量が3重量%以下)。
一方、超臨界流体としては窒素を用いた比較例1は反応が進行せず、糖類に対して溶剤、膨潤剤を用いない比較例2も反応が進行しなかった。
また、触媒としてブレンステッド酸の硫酸を用いた比較例3は、反応自体は進行するものの、トレハロースの全てがグルコース単位に分解されてしまった。

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のアルキルエーテル化糖類は、対称エーテル化物(G)の含有量が5重量%以下と、優れた高純度を示す為、医薬品としても極めて有用である。また、化粧品、pH依存性農薬、電子材料用バインダー、建材等にも利用可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類のアルキルエーテル化物(F)の製造方法において、触媒(C)と溶剤(D)の存在下、超臨界状態の二酸化炭素(E)中で、糖類(A)と分子内に水酸基を有する化合物(B)とを脱水縮合反応させることを特徴とするアルキルエーテル化物(F)の製造方法。
【請求項2】
該触媒(C)が、ルイス酸(C1)である請求項1記載のアルキルエーテル化物の製造方法。
【請求項3】
該ルイス酸(C1)が、スーパールイス酸(C2)である請求項2記載のアルキルエーテル化物の製造方法。
【請求項4】
該スーパールイス酸(C2)が、その化学構造中にパーフルオロフェニル基(以下、Cと略称する)もしくはトリフルオロメタンスルホン酸基(以下、Tfと略称する)を有するルイス酸(C21)、またはハフニウムテトラハライド(C22)である請求項3記載のアルキルエーテル化物の製造方法。
【請求項5】
該スーパールイス酸(C21)が、下記一般式(1)で表される、ケイ素化合物(C211)または下記一般式(2)で表される錯体化合物(C212)である請求項4記載のアルキルエーテル化物の製造方法。
【化1】

[Rは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素;Yは窒素原子、炭素原子、硫黄原子、酸素原子、またはリン原子であり;ZはCまたはTfを表す。mは1〜3の整数であり、nは1〜4の整数である。]
【化2】

[Mはアルミニウム原子、スカンジウム原子またはホウ素原子;Yは窒素原子、炭素原子、硫黄原子、酸素原子またはリン原子;ZはCまたはTfであり、jおよびkは1〜3の整数である。]
【請求項6】
該化合物(B)が、1価または2価の脂肪族もしくは芳香脂肪族アルコールである請求項1〜5いずれか記載のアルキルエーテル化物の製造方法。
【請求項7】
該糖類(A)が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、およびスクロースからなる群より選ばれる単糖類もしくは二糖類(A1)、またはセルロース、キトサンおよびキチンからなる群より選ばれる多糖類(A2)である請求項1〜6いずれか記載のアルキルエーテル化物(F)の製造方法。
【請求項8】
溶剤(D)100gに対して該糖類(A1)を1g以上溶解させる溶剤(D1)を用いて、予め該糖類(A1)を該溶剤(D1)に溶解させた後に、脱水縮合反応させることを特徴とする請求項7いずれか記載のアルキルエーテル化物の製造方法。
【請求項9】
該溶剤(D)100gに対して該多糖類(A2)を1g以上膨潤させる膨潤剤(D2)を用いて、予め該多糖類(A2)を膨潤剤(D2)に膨潤させた後に、脱水縮合反応させることを特徴とする請求項7いずれか記載のアルキルエーテル化物(F)の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか記載のアルキルエーテル化物(F)の製造方法によって得られ、該化合物(B)同士の縮合、および該糖類(C)同士の縮合による、対称エーテル化物(G)の含有量が5重量%以下であるアルキルエーテル化物(F)。

【公開番号】特開2010−53038(P2010−53038A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216260(P2008−216260)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】