説明

糸巻取機

【課題】パッケージ端部の品質低下を防止しつつ、綾振アームと糸案内手段との衝突を確実に防止できる糸巻取機を提供する。
【解決手段】自動ワインダは、給糸部と、クレードル23と、接触ローラ29と、トラバースアーム74と、トラバース駆動モータ76と、スプライサ装置と、上糸捕捉部材26と、を備える。クレードル23は、巻取ボビンを回転可能に支持する。接触ローラ29は、パッケージ30と接触して回転する。トラバースアーム74は、その先端側の糸ガイド部73によって糸を綾振りする。トラバース駆動モータ76は、トラバースアーム74を回転駆動する。スプライサ装置は、糸端同士を繋ぐ。上糸捕捉部材26は、パッケージ30側の糸端を捕捉可能である。接触ローラ29の軸方向で見た場合、トラバースアーム74の回転軸線L1と、綾振り幅の端部における糸ガイド部73近傍の糸道を延長した糸道線L3と、が鋭角をなして交わるか平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸をトラバースしながら巻取管に巻き取る糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糸をトラバース(綾振り)するための糸綾振装置を備えた構成の糸巻取機が知られている。例えば特許文献1や特許文献2に開示されている糸綾振装置は、糸と係合して糸を案内する糸ガイドと、当該糸ガイドが先端に取り付けられた綾振アームと、この綾振アームを往復動させる駆動装置と、から構成されている。駆動装置が綾振アームを往復動(回動)させることで、糸ガイド部によって糸をトラバースしながら、糸をパッケージに巻き取ることが可能となっている。
【0003】
また、上記の糸巻取機において、糸継装置及び当該糸継装置への糸の案内手段(糸案内手段)を備えた糸巻取機についても知られている。糸継装置とは、糸欠点を検出して行う糸切断時や、糸の解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン側の糸端と、パッケージ側の糸端とを糸継ぎするものである。特許文献3は、この種の糸巻取機を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−298499号公報
【特許文献2】特表2002−518276号公報
【特許文献3】特開2007−153554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成は、糸ガイドが綾振り幅の端部近傍に差し掛かったときに当該糸ガイドが下方(糸道の上流側)に位置するため、糸を糸巻取機の下方(パッケージの巻取方向とは反対の方向)へ引っ張ることになる。この場合、綾振り幅の端部及び端部近傍において糸道が屈曲してしまうため、巻取張力が上昇したり、パッケージの硬度が上昇したり、綾落ちが発生したりして、パッケージの品質が低下することがある。
【0006】
この点、特許文献2の構成は、綾振り幅の端部近傍における糸道の屈曲は軽減されているということができる。しかし、特許文献2が開示する糸巻取機はテークアップワインダであるため、糸継装置及び糸案内手段を備えていない。そのため、糸道の屈曲を軽減しつつ上記の部材をどのように配置するかについては開示されていない。
【0007】
また、特許文献3の構成は、サクションマウス(糸案内手段)がパッケージ側の糸端を捕捉するときに、綾振アームを綾振り幅の外側に移動させて、綾振アームとサクションマウスとの衝突を防止している。しかし、この構成では、綾振アームを退避させるまで、サクションマウスによってパッケージ側の糸端を捕捉できないため、生産効率が低下するとともに、動作ミス等により綾振アームとサクションマウスとの衝突が生じる可能性も残されていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、パッケージ端部の品質低下を防止しつつ、綾振アームと糸案内手段との衝突を確実に防止した構成の糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、給糸部と、巻取管支持部と、接触ローラと、綾振アームと、綾振駆動部と、糸継装置と、糸案内部材と、を備える。前記給糸部は、パッケージに巻き取られる糸を供給する。前記巻取管支持部は、前記パッケージを形成するために糸を巻き付ける巻取管を回転可能に支持する。前記接触ローラは、前記巻取管又は前記パッケージと接触して回転する。前記綾振アームは、糸を案内するための糸ガイド部が先端側に配置された構成となっており、糸を綾振りするためのものである。前記綾振駆動部は、前記綾振アームを回転駆動する。前記糸継装置は、前記パッケージ側の糸端と、前記給糸部側の糸端と、を繋ぐ。前記糸案内部材は、前記パッケージ側の糸端を捕捉して案内可能である。前記接触ローラの軸方向で見たときに、前記綾振アームの回転軸線と、綾振り幅の端部における糸ガイド部近傍の糸道を延長した糸道線と、が鋭角をなして交わるか平行である。
【0011】
これにより、綾振アームの回転軸線と上記の糸道線とのなす角が小さいか又は回転軸線と上記の糸道線とが平行であるため、綾振アームが綾振り幅の端部(トラバース端部)まで回転したときにおいても、糸ガイド部が糸道に沿う方向に殆ど移動しない。そのため、特にトラバース端部において糸ガイド部に起因する糸の屈曲を軽減させることができるので、パッケージの品質の低下を防止できる。また、綾振アームの基端部を糸の経路から大きく離すことができるため、綾振アームの基端部と糸案内部材等との接触を回避できるレイアウトを容易に実現することができる。
【0012】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸案内部材は、前記パッケージ側の糸端を吸引して捕捉する吸引口部と、前記吸引口部を支持する吸引アーム部と、を有している。そして、前記吸引口部が前記パッケージ側の糸端を吸引して捕捉する位置において、前記糸ガイド部が前記吸引口部よりも糸道の上流側に位置するように、前記綾振アームは前記綾振駆動部に支持されている。
【0013】
これにより、糸ガイド部と吸引口部とが接触して破損することを確実に防止できる。また、パッケージ側の糸が切れたりして当該糸の糸端を吸引口部により吸引する場合、糸案内部材によりパッケージ側の糸端を吸引捕捉して案内する。このときに綾振アームを特別な退避位置へ移動させる必要がなくなるため、中断していた糸の巻取作業を素早く再開することができる。
【0014】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、並べて配置された巻取ユニットを複数備える。また、糸巻取機は、前記巻取ユニット毎に、前記糸継装置及び前記糸案内部材を1つずつ備える。
【0015】
これにより、複数の巻取ユニットに対して糸継装置及び糸案内部材が1つずつ配置された構成に比べて、糸継ぎに要する時間を軽減させることができる。そのため、糸巻取機の生産性を向上させることができる。
【0016】
前記の糸巻取機においては、前記回転軸線と前記糸道線とが略平行であることが好ましい。
【0017】
これにより、綾振り幅の端部における糸ガイド部による糸の屈曲を最小限に抑えることができるため、パッケージの品質が低下することを効果的に防止できる。
【0018】
前記の糸巻取機においては、前記接触ローラの軸方向で見たときにおいて、綾振り幅の端部における前記糸ガイド部の位置は、前記綾振アームの基端部から前記糸道線に下ろした垂線と当該糸道線との交点よりも、糸道の下流側であることが好ましい。
【0019】
これにより、綾振アームを適切な長さにすることで、パッケージと接触ローラの接触ラインに糸ガイド部を近づけることができるため、フリーレングス及びプリント長を短くすることができる。そのため、パッケージに巻き取られる糸の挙動を安定させることができるので、パッケージの品質を向上させることができる。なお、「フリーレングス」とは、糸ガイド部と、糸が接触ローラの表面に接触する点と、の間の距離のことである。即ち、フリーレングスに相当している糸は、接触ローラ等に規制されていないため、フリーレングスが長くなると、糸ガイド部により高速で綾振りされている糸の挙動は不安定になり、パッケージを良好に巻き取ることができない。また、糸ガイド部により綾振りされてパッケージへと巻き取られる糸は、接触ローラに一度接触させて(プリントさせて)から巻き取られる。パッケージに巻き取られる糸が接触ローラに接触している部分の長さが「プリント長」である。
【0020】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記給糸部から糸が引き出される方向に引いた直線に垂直な面であって、当該給糸部近傍の面を垂直面としたときに、前記綾振アームは、長手方向において前記垂直面に平行になるように、前記綾振駆動部に支持されている。
【0021】
これにより、本発明のレイアウト(綾振アームの回転軸線と上記の糸道線とのなす角が小さいか又は回転軸線と上記の糸道線とが平行)を採用し、かつ綾振アームが回転軸線に対して垂直であるときに、給糸部からパッケージまでの糸をあまり屈曲させないレイアウトを実現することができる。
【0022】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記給糸部から糸が引き出される方向に引いた直線に垂直な面であって、当該給糸部近傍の面を垂直面としたときに、前記綾振アームは、基端側よりも糸ガイド部が前記垂直面から遠い位置になるように、前記綾振駆動部に支持されている。
【0023】
これにより、給糸部からパッケージまでの糸走行経路をほぼ直線状に構成した場合に、パッケージと接触ローラの接触ラインに糸ガイド部が近づく綾振アームの配置となるため、フリーレングス及びプリント長を短くすることができる。そのため、パッケージに巻き取られる糸の挙動を安定させることができるので、パッケージの品質を向上させることができる。
【0024】
前記の糸巻取機においては、前記綾振アームは、前記接触ローラに近づく方向に曲がっている曲がり部を有することが好ましい。
【0025】
これにより、曲がり部よりも先端側の綾振アームを適切な長さにすることで、パッケージと接触ローラの接触ラインに糸ガイド部を近づけることができるため、フリーレングス及びプリント長を短くすることができる。そのため、パッケージに巻き取られる糸の挙動を安定させることができるので、パッケージの品質を向上させることができる。
【0026】
前記の糸巻取機においては、前記糸ガイド部は、規制部と、案内口と、を有する。前記規制部は、先端側で糸を規制する。前記案内口は、前記規制部に糸を案内するように前記綾振アームの基端側に開口している。
【0027】
これにより、綾振り中に振動及び慣性力等によって糸が引っ張られた場合においても、糸ガイド部から糸が外れることを防止できる。また、綾振アームの綾振動作の開始時に糸ガイド部に糸を案内し易いため、速やかに綾振アームによる糸の綾振りを開始でき、糸巻取機の生産性を向上させることができる。
【0028】
前記の糸巻取機においては、前記糸ガイド部には、前記案内口へ糸を案内する傾斜部が形成されていることが好ましい。
【0029】
これにより、糸ガイド部への糸の案内を確実かつ素早く行うことができるため、糸巻取機の生産性を向上させることができる。
【0030】
前記の糸巻取機においては、前記巻取管を直接的に回転駆動する回転駆動部を備えることが好ましい。
【0031】
これにより、パッケージを従動回転させる構成に比べて、接触ローラの径を小さくすることができる。そのため、フリーレングス及びプリント長を短くすることができるので、巻き取られる糸の挙動を安定させてパッケージの品質を向上できる。
【0032】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、給糸部と、巻取管支持部と、接触ローラと、綾振アームと、糸継装置と、糸案内部材と、綾振り支点と、を備える。前記給糸部は、パッケージに巻き取られる糸を供給する。前記巻取管支持部は、前記パッケージを形成するために糸を巻き付ける巻取管を回転可能に支持する。前記接触ローラは、前記巻取管又は前記パッケージと接触して回転する。前記綾振アームは、糸を案内するための糸ガイド部が先端側に配置された、糸を綾振りするためのものである。前記糸継装置は、前記パッケージ側の糸端と、前記給糸部側の糸端と、を繋ぐ。前記糸案内部材は、前記パッケージ側の糸端を捕捉して案内可能である。前記綾振り支点は、前記パッケージに巻き取られる糸の綾振りの支点である。前記接触ローラの軸方向で見たときに、少なくとも前記パッケージの端部において、前記接触ローラ上の糸の最も上流側の箇所と前記綾振り支点とを接続する直線に対して、前記綾振アームの長手方向に沿った線が略直角である。
【0033】
これにより、綾振アームの綾振りストロークの端部においても、パッケージに巻き取られる糸が糸ガイド部により大幅に屈曲することが軽減できる。その結果、糸継装置を備えた糸巻取機において、糸ガイド部により糸に負担を掛けることなく、糸継作業を適宜行いながら、ダメージの少ない糸をパッケージに巻き取ることができる。
【0034】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記綾振アームの回転軸を支持して、当該綾振アームを回転駆動する綾振駆動部を備える。前記綾振アームは、糸が前記接触ローラに最初に接触する箇所の近傍に前記糸ガイド部が配置されるように、前記綾振駆動部に支持されている。
【0035】
これにより、フリーレングス及びプリント長を短くすることができる。その結果、パッケージに巻き取られる糸の挙動を安定させることができるので、綾落ちや菊巻き等の発生を抑止しつつ、パッケージの品質を向上させることができる。
【0036】
前記の糸巻取機においては、前記綾振アームは、前記接触ローラに近づく方向に曲がっている曲がり部を有することが好ましい。
【0037】
これにより、フリーレングス及びプリント長を更に短くすることができる。その結果、パッケージに巻き取られる糸の挙動を更に安定させることができるので、綾落ちや菊巻き等の発生を抑止しつつ、パッケージの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの模式図。
【図2】ワインダユニットの概略的な構成を示した模式図及びブロック図。
【図3】トラバース装置近傍の拡大側面図。
【図4】糸ガイド部の形状を説明する正面図。
【図5】第1変形例に係るトラバース装置近傍の拡大側面図。
【図6】第2変形例に係るトラバース装置近傍の拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、発明の実施の形態を説明する。初めに、図1を参照して、本実施形態の自動ワインダ(糸巻取機)1の全体的な構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダ1の模式図である。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、糸巻取時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。
【0040】
図1に示すように、自動ワインダ(糸巻取機)1は、並べて配置された複数のワインダユニット10と、自動玉揚装置60と、機台設定装置90と、を主要な構成として備えている。
【0041】
それぞれのワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒された糸20を綾振り(トラバース)しながら巻き取り、パッケージ30を形成できるように構成されている。
【0042】
自動玉揚装置60は、各ワインダユニット10においてパッケージ30が満巻となった際に、当該ワインダユニット10の位置まで走行し、満巻のパッケージ30を回収するとともに空ボビンを供給することができるように構成されている。
【0043】
機台設定装置90は、設定部91と、表示部92と、を主要な構成として備えている。設定部91は、オペレータが所定の設定値を入力したり適宜の制御方法を選択したりすることで、各ワインダユニット10に対する設定を行うことができる。表示部92は、各ワインダユニット10の糸の巻取状況、及び、発生したトラブルの内容等を表示可能に構成されている。
【0044】
次に、図2を参照して、ワインダユニット10の構成を具体的に説明する。図2は、ワインダユニット10の概略的な構成を示した模式図及びブロック図である。
【0045】
それぞれのワインダユニット10は、図2に示すように、巻取ユニット本体16と、ユニット制御部50と、を主要な構成として備えている。
【0046】
ユニット制御部50は、例えば、CPUと、RAMと、ROMと、I/Oポートと、通信ポートと、を備えて構成されている。前記ROMには、巻取ユニット本体16の各構成を制御するためのプログラムが記録されている。前記I/Oポートと前記通信ポートには、当該巻取ユニット本体16が備える各部(詳細は後述)及び機台設定装置90が接続されており、制御情報等の通信ができるように構成されている。これにより、ユニット制御部50は、巻取ユニット本体16が備える各部の動作を制御することができる。
【0047】
巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と接触ローラ29との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、糸解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、スプライサ装置(糸継装置)14と、クリアラ15と、を配置した構成となっている。
【0048】
巻取ユニット本体16の下部には、巻取ボビン22側へ糸20を供給するための給糸部11が備えられている。この給糸部11は、図略のボビン搬送システムによって搬送されてきた給糸ボビン21を所定の位置に保持できるように構成されている。
【0049】
糸解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンを適切な大きさに制御することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられており、このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させることができる。
【0050】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動することができる。なお、テンション付与装置13には、上記ゲート式のもの以外にも、例えば、ディスク式のものを採用することができる。
【0051】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。このような上糸と下糸とを糸継ぎする糸継装置としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0052】
クリアラ15は、糸20の太さを検出するための図略のセンサが配置されたクリアラヘッド49と、このセンサからの糸太さ信号を処理するアナライザ52と、を備えている。クリアラ15は、前記センサからの糸太さ信号を監視することにより、スラブ等の糸欠陥を検出するように構成されている。前記クリアラヘッド49の近傍には、前記クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに糸20を切断するためのカッタ39が設けられている。
【0053】
前記スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の糸端を捕捉してスプライサ装置14に案内する下糸捕捉部材25と、パッケージ30側の糸端を捕捉してスプライサ装置14に案内する上糸捕捉部材(糸案内部材)26と、が設けられている。下糸捕捉部材25は、下糸パイプアーム33と、この下糸パイプアーム33の先端に形成された下糸吸引口32と、を備えている。上糸捕捉部材26は、上糸パイプアーム(吸引アーム)36と、この上糸パイプアーム36の先端に形成された上糸吸引口(吸引口部)35と、を備えている。
【0054】
また、下糸パイプアーム33と上糸パイプアーム36は、それぞれ軸34,37を中心にして回動可能に構成されている。下糸パイプアーム33及び上糸パイプアーム36には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、下糸吸引口32及び上糸吸引口35に吸引流を発生させて、上糸及び下糸の糸端を吸引捕捉できるように構成されている。
【0055】
また、前記巻取ユニット本体16は、巻取ボビン(巻取管)22を着脱可能に支持するクレードル(巻取管支持部)23と、巻取ボビン22の周面又はパッケージ30の周面に接触して回転可能な接触ローラ29と、を備えている。また、巻取ユニット本体16は、糸20をトラバースさせるためのアーム式のトラバース装置70をクレードル23近傍に備えており、このトラバース装置70によって糸20をトラバースしながらパッケージ30に糸20を巻き取ることが可能に構成されている。なお、トラバース箇所のやや上流にはガイドプレート28が設けられ、上流側の糸20をトラバース箇所へと案内している。このガイドプレート28の更に上流には、セラミック製のトラバース支点部(綾振り支点)27が設けられ、トラバース装置70は、このトラバース支点部27を支点として図2の矢印に示す方向に、糸20をトラバースさせている。
【0056】
前記クレードル23は回動軸48を中心に回動可能に構成されており、巻取ボビン22への糸20の巻取に伴う糸層径の増大を、クレードル23が回動することによって吸収できるように構成されている。
【0057】
前記クレードル23の巻取ボビン22を挟持する部分にはパッケージ駆動モータ(回転駆動部)41が取り付けられており、このパッケージ駆動モータ41によって巻取ボビン22を回転駆動して糸20を巻き取るように構成されている。パッケージ駆動モータ41のモータ軸は、巻取ボビン22をクレードル23に支持させたときに、当該巻取ボビン22と相対回転不能に連結されるようになっている(いわゆるダイレクトドライブ方式)。このパッケージ駆動モータ41の動作はパッケージ駆動制御部42により制御され、このパッケージ駆動制御部42はユニット制御部50からの運転信号を受けて前記パッケージ駆動モータ41の運転及び停止を制御するように構成している。
【0058】
また、前記回動軸48には、クレードル23の角度(回動角)を検出するための角度センサ(パッケージ径取得部)44が取り付けられている。この角度センサ44は例えばロータリエンコーダからなり、クレードル23の角度に応じた角度信号をユニット制御部50に対して送信するように構成されている。クレードル23はパッケージ30が巻き太るに従って角度が変化するので、クレードル23の回動角を前記角度センサ44によって検出することにより、パッケージ30のパッケージ径(糸層の径)を検出することができる。なお、パッケージ径を検出する方法としては、角度センサ44以外にも、ホールICを用いたものやアブソリュート型エンコーダ等、パッケージの径を検出できるものであれば、適宜の構成を用いることができる。
【0059】
このように、自動ワインダ1では、給糸ボビン21から解舒された糸20が略上方向に走行し、パッケージ30に巻き取られている。従って、本実施形態において給糸部11から糸20が引き出される方向に引いた直線に垂直な面であって給糸部11の近傍の面(垂直面)は、自動ワインダ1が設置される設置面と略平行となっている。
【0060】
次に、図3を参照して、トラバース装置70の構成とトラバース装置70近傍の構成のレイアウトについて説明する。図3は、トラバース装置70近傍の拡大側面図である。なお、本実施形態では接触ローラ29は、軸方向が巻取ユニット本体16の側方を向くように配置されているため、例えば図3のような側面図は、接触ローラ29の軸方向に見た図であるということができる。
【0061】
図3に示すように、トラバース装置70は、トラバース駆動モータ(綾振駆動装置)76と、出力軸77と、トラバースアーム(綾振アーム)74と、を備える。
【0062】
トラバース駆動モータ76は、トラバースアーム74を駆動するためのものであって、サーボモータ等により構成されている。このトラバース駆動モータ76の作動は、図2に示すように、トラバース制御部78により制御されている。なお、トラバース駆動モータ76は、ステップモータやボイスコイルモータ等の他のモータであっても良い。
【0063】
このトラバース制御部78は、専用のマイクロプロセッサによるハードウェア等から構成されており、ユニット制御部50からの信号を受けてトラバース駆動モータ76の運転及び停止を制御するように構成されている。
【0064】
そして、このトラバース駆動モータ76の動力は、図3に示す出力軸77を介して、トラバースアーム74の基端部に伝達されている。そして、トラバース駆動モータ76のロータが正逆回転することで、トラバースアーム74が、図3の紙面垂直方向(図2の左右方向)に往復旋回運動を行う。なお、図3におけるトラバースアーム74は、トラバースの端部における位置を示している。
【0065】
そして、トラバースアーム74の先端部には後述の糸ガイド部73が形成されており、この糸ガイド部73によって糸20を保持(案内)できるように構成されている。この糸ガイド部73が糸20を保持した状態で往復旋回運動を行うことにより、糸20をトラバースさせることができる。
【0066】
次に、糸20をトラバースさせたときに生じる糸道の屈曲について説明する。
【0067】
トラバース装置70の側面図である図3には、トラバース駆動モータ76の回転軸線(トラバースアーム74の回転軸線)が符号L1で、トラバースアーム74の基端部からトラバースアーム74の側面における長手方向へ真っ直ぐ引いた仮想線(トラバースアーム74の側面における中心線)が符号L2で、それぞれ示されている。トラバースアーム74の往復旋回運動に伴って、糸ガイド部73は、トラバースアーム74の回転軸線L1に垂直な仮想平面内で円弧状の軌跡を描いて往復運動する(以下、この仮想平面を「旋回面」と称する)。本実施形態においてトラバースアーム74は回転軸線L1に対してほぼ垂直に配置されているので、前記仮想線L2は回転軸線L1に対して垂直となっている。従って、トラバースアーム74は前記旋回面内で往復旋回運動するということができる。
【0068】
本実施形態では、トラバースアーム74の先端部付近の糸道(ガイドプレート28の端部から接触ローラ29に至る糸道)を示す直線である糸道線L3を考えたときに、当該糸道線L3と、トラバースアーム74の回転軸線L1と、が平行になるようなレイアウトが実現されている。言い換えれば、糸道線L3と前記旋回面(及び仮想線L2)とが垂直なレイアウトとなっている。
【0069】
なお、糸道線L3は、上記の方法以外にも、「接触ローラ29と接触している糸のうち最も上流側に位置している箇所を点P1として、この点P1とトラバース支点部27とを接続する直線」と表すことができる。また、この点P1は、「糸ガイド部73によってガイドされた糸20が接触ローラ29に接触し始める箇所を示す点」と表現することもできる。
【0070】
従って、トラバース時には糸ガイド部73が回転軸線L1を中心とする円弧状の軌跡を描くように往復運動することで糸20を綾振りするが、このときに糸20に加わる力は上記の旋回面に平行な方向のみとなる。即ち、トラバース時に糸20を糸道線L3の方向(糸道に沿う方向)に引っ張ったり弛ませたりする力が加わらないため、糸道の屈曲を軽減させることができる。特に、本実施形態では、綾振りの端部において糸ガイド部73の糸ガイド点が糸道線L3上に位置するようにトラバースアーム74が配置されているため、綾振りの端部における糸道の屈曲を最小にすることができる。なお、仮に回転軸線L1と糸道線L3とが平行でないとすると、トラバース中の糸20は、旋回面内の方向に加え、糸道線L3に沿う方向にも力を受けるため、糸道の屈曲が本実施形態よりも大きくなる。この場合、パッケージ30に巻き取られる糸20の巻取張力が上昇したり、パッケージ30の硬度が特にパッケージ端部で上昇したり、綾落ちが発生したりするため、パッケージの品質が低下してしまう。
【0071】
また、図3に示すように、トラバースアーム74は、接触ローラ29に近づく方向に折れ曲がっている屈曲部(曲がり部)72aを有している。なお、この屈曲部72aは急角度に曲がる(折れ曲がる)構成であるが、滑らかに曲がる(湾曲する)構成にしても良い。
【0072】
この構成により、パッケージ30と接触ローラ29の接触ラインに糸ガイド部73を近づけることができるため、フリーレングス(トラバースアーム74から接触ローラ29に接触するまでの糸20の長さ)及びプリント長(接触ローラ29に接触している糸の長さ)を短くすることができる。そのため、巻き取られる糸の挙動を安定させることができるので、パッケージ30の品質を向上させることができる。
【0073】
また、ワインダユニット10によりコーン形状のパッケージを巻き取る場合は、屈曲部72aを有するトラバースアーム74を採用することが特に望ましい。以下、その理由を説明する。即ち、パッケージ30の巻き始めから糸層が大きくなるまでの間は、円筒形状(円柱形状)の接触ローラ29とコーン形状の巻取ボビン22(パッケージ30)とでは、周速差が大きい。この結果、パッケージ30の巻き幅方向の中央部に対して、大径側では巻取テンションが高く、小径側では巻取テンションが低くなることがある。そのため、パッケージ30の端部に綾落ちや菊巻きが発生し易く、不良パッケージが形成されてしまうことがある。この点、本実施形態のような屈曲部72aを備えたトラバースアーム74により糸20をトラバースすることにより、パッケージ端部(トラバース端部)での糸のフリーレングス及びプリント長を短くしつつ糸20の屈曲も軽減することができ、上記のような不良パッケージの形成を防止できるからである。
【0074】
次に、糸端捕捉中の上糸捕捉部材26とトラバースアーム74との位置関係について説明する。なお、図3には、糸端捕捉中の上糸捕捉部材26の位置を示している。
【0075】
図3に示すように、本実施形態のトラバースアーム74の先端部(糸ガイド部73)は、接触ローラ29の近傍(接触ローラ29の下方かつ正面側)に配置されている。これは、フリーレングス及びプリント長を短くするためである。このようにフリーレングス及びプリント長を短くすることで、巻取り中における糸20の挙動を安定させて、パッケージの品質を向上させることができる。
【0076】
また、トラバースアーム74は、糸ガイド部73が糸道線L3上に配置され、アーム部72は糸道線L3から退避した位置に配置されるように設けられている。具体的には、糸ガイド部73は、ワインダユニット10の正面側に設けられており、アーム部72は、ワインダユニット10の奥側に設けられている。そのため、トラバース中のトラバースアーム74と、糸端捕捉中の上糸捕捉部材26と、が干渉することがなくなり、これらの部材の衝突を確実に防止することができる。そのため、糸切れ及び糸カット後に即座に上糸捕捉部材26をパッケージ30近傍に回動させることができるので、素早く糸継動作に入ることができ、パッケージ30の巻取動作を速やかに再開することができる。
【0077】
なお、トラバースアーム74が糸道線L3に沿うように配置されている構成を仮に本実施形態で採用する場合、上糸捕捉部材26がパッケージ30近傍に回動する前に、糸ガイド部73をトラバース端部(上糸吸引口35の幅)を超えた退避位置に移動させなければ、上糸捕捉部材26の上糸吸引口35の部分が糸ガイド部73に衝突して、糸ガイド部73が破損してしまうことがある。そのため、上糸捕捉部材26による糸端の捕捉前に糸ガイド部73を上記退避位置にいったん移動させ、スプライサ装置14による糸継作業が完了した後に糸ガイド部73をトラバース範囲内に移動させる必要があった。しかし、本実施形態のようにトラバースアーム74を配置することにより、上記のような上糸捕捉部材26の動作に対応した糸ガイド部73の移動制御を省略することができる。
【0078】
なお、トラバースアームが設置面に対してほぼ鉛直方向に延びている構成のトラバース装置(例えば、前記特許文献1のトラバース装置)を仮に本実施形態で採用する場合、上糸吸引口35とトラバースアームとの衝突を防ぐ方法としては、当該トラバースアームを糸道の上流側に(接触ローラからある程度離して)配置することが考えられる。しかし、このようなレイアウトではフリーレングスが長くなってしまい、糸の挙動が不安定になって、パッケージの品質が低下したり、糸が周辺の部材等に引っ掛かってパッケージ30の巻取動作が継続できなくなったりしてしまう。この点、本実施形態では、接触ローラ29の軸方向で見たときに、図3のようにトラバースアーム74が斜め上方向に(言い換えれば、側面図におけるパッケージ30と接触ローラ29の接触ラインにおける接線にほぼ沿う方向に)延びている。つまり、トラバースアーム74の仮想線L2は、ワインダユニット10の設置面に対して、糸ガイド部73側がワインダユニット10の上方へ傾斜するように設定されている。そして、トラバースアーム74の先端部(糸ガイド部73)とパッケージ30との間に接触ローラ29が位置するレイアウトとなっている。これにより、糸の短いフリーレングスを維持しながら、糸端捕捉中の上糸捕捉部材26と糸ガイド部73との干渉を容易に防止することができる。なお、トラバースアーム74の仮想線L2は、ワインダユニット10の設置面に対して、0度(平行な状態)から60度の範囲になるように設定することが望ましい。
【0079】
また、上記のようにトラバースアーム74を設置面に対して斜め上方向を向くように配置する構成とすることで、トラバースアーム74の基端部を糸20の経路から大きく離すことができる。従って、糸道の周辺の構成(上下に回動する上糸捕捉部材26等)とトラバースアーム74の基端部とが干渉しにくいレイアウトを実現できている。特に、本実施形態ではトラバースアーム74の基端部にトラバース駆動モータ76が直結されているが、このトラバース駆動モータ76も糸20の経路から離して配置できるので、レイアウト上の自由度が良好である。
【0080】
次に、図4を参照して、トラバースアーム74が備える糸ガイド部73について説明する。図4は、糸ガイド部73の形状を説明する正面図である。
【0081】
図4に示すように、トラバースアーム74は、先端側に配置された糸ガイド部73と、基端側に配置されたアーム部72と、で構成されている。
【0082】
糸ガイド部73は、セラミック及びアルミニウム等によってフック状に構成されており、アーム部72の先端側に接続されている。図4に示すように、この糸ガイド部73は片側へ湾曲する形状に形成されており、その内周側には、糸20を引っ掛けるための細長い糸掛け溝71が形成されている。この糸掛け溝71は、糸ガイド部73の一側の側部に開放部(案内口)71bを形成しつつ、トラバースアーム74の長手方向に沿って先端側へ真っ直ぐ延びるように形成されている。また、糸掛け溝71の終端部(規制部)71aは閉鎖状となっている(トラバースアーム74の先端側は開放されていない)。糸掛け溝71の開放側の端部(前記開放部71b)は、終端されている端部(前記終端部71a)よりもトラバースアーム74の基端側に位置している。
【0083】
糸ガイド部73により糸20を案内しながらトラバースして、糸20をパッケージ30に巻き取っているときは、糸20は糸掛け溝71の内部に位置している。そして、糸ガイド部73の往復動に伴って糸掛け溝71の内壁面が糸20を押すことで、糸20はパッケージ30に対してトラバースされる。なお、本実施形態では、糸掛け溝71の開放部71bがトラバースアーム74の先端側を向かず、基端側を向いている。このため、トラバースアーム74の先端側に向く力が糸20に作用したとしても、糸20が糸ガイド部73から外れてしまうことがない。
【0084】
また、糸ガイド部73の側部には2つの傾斜部73a,73bが形成されている。傾斜部73aは、糸ガイド部73の湾曲した先端部から糸掛け溝71の開放部71bに向かって斜め方向に延びている。また、傾斜部73bは、糸ガイド部73の基端部(アーム部72との接続部分)から開放部71bの近傍に向かって斜めに延びている。従って、パッケージ30の巻取始め及び糸継作業直後であってトラバースアーム74から糸20が外れている状態においては、トラバースアーム74を図4の左側に回動させることで、傾斜部73a,73bに糸20が接触し、その案内作用によって糸20を開放部71bから糸掛け溝71に入れることができる。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態の自動ワインダ1は、給糸部11と、クレードル23と、接触ローラ29と、トラバースアーム74と、トラバース駆動モータ76と、スプライサ装置14と、上糸捕捉部材26と、を備える。給糸部11は、パッケージ30に巻き取られる糸20を供給する。クレードル23は、パッケージ30を形成するために糸20を巻き付ける巻取ボビン22を回転可能に支持する。接触ローラ29は、巻取ボビン22又はパッケージ30と接触して回転する。トラバースアーム74は、糸20を案内するための糸ガイド部73が先端側に配置された構成となっており、糸20をトラバースするためのものである。トラバース駆動モータ76は、トラバースアーム74を回転駆動する。スプライサ装置14は、パッケージ30側の糸端と、給糸部11側の糸端と、を繋ぐ。上糸捕捉部材26は、パッケージ30側の糸端を捕捉してスプライサ装置14へ案内可能である。接触ローラ29の軸方向で見たときに、トラバースアーム74の回転軸線L1と、トラバースの端部における糸ガイド部73近傍の糸道を示す糸道線L3と、が平行である。
【0086】
これにより、回転軸線L1と糸道線L3とが平行であるため、トラバースアーム74が端部まで回転したときにおいても、糸ガイド部73が糸道線L3に沿う方向に殆ど移動しない。そのため、糸20の屈曲を最小限に抑えることができるので、パッケージ30の品質の低下を防止できる。また、トラバースアーム74の基端部を糸20の経路から大きく離すことができるため、トラバースアーム74の基端部と上糸捕捉部材26等との接触を回避できるレイアウトを容易に実現することができる。
【0087】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、上糸捕捉部材26は、パッケージ30側の糸端を吸引して捕捉する上糸吸引口35と、上糸吸引口35を支持する上糸パイプアーム36と、を有している。そして、上糸吸引口35がパッケージ側の糸端を吸引して捕捉する位置において、糸ガイド部73が上糸吸引口35よりも糸道の上流側に位置するように、トラバースアーム74はトラバース駆動モータ76(出力軸77)に支持されている。
【0088】
これにより、糸ガイド部73と上糸吸引口35とが接触して破損することを確実に防止できる。また、上糸捕捉部材26による糸端の捕捉動作中にトラバースアーム74を特別な退避位置へ移動させる必要がなくなるため、例えば上糸捕捉部材26によりパッケージ30側の糸端を捕捉してスプライサ装置14等による適宜の処理を行った後、糸20の巻取作業を素早く再開することができる。また、上記実施形態のようなトラバースアーム74により糸20を綾振りしてパッケージ30を巻き取るワインダユニット10の場合、トラバース駆動モータ76によりトラバースアーム74を旋回駆動しているので、巻き取るパッケージ30の幅を自由に変更することができる。従って、本実施形態のワインダユニット10は、巻取ボビン22の端部に近い位置まで糸20を綾振りしてパッケージ30を形成することも、巻取ボビン22の軸方向において中央部近傍の領域の狭い幅で糸20を綾振りしてパッケージ30を形成することもできる。そこで、例えば特許文献3に開示の糸巻取機では、パッケージの巻き幅が狭い場合は、糸案内手段によりパッケージ側の糸端を捕捉するときに当該糸案内手段が干渉しない位置へトラバースアーム(糸ガイド部)を退避させようとすると、巻き幅が巻取ボビンの端部に近い位置にあるパッケージを巻き取っている場合と比較して、糸ガイド部を退避させる距離が長くなり、糸案内手段による糸案内動作時のワインダユニットの作業効率が低くなる。この点、本実施形態では、パッケージの巻き幅が狭い場合であっても、上糸捕捉部材26による糸端の捕捉動作等を効率良く行うことができる。
【0089】
また、本実施形態の自動ワインダ1は、並べて配置された巻取ユニット本体16を複数備える。そして、自動ワインダ1は、巻取ユニット本体16毎に、スプライサ装置14及び上糸捕捉部材26を1つずつ備える。
【0090】
これにより、糸継台車等を備えて糸継ぎが必要となると該当の巻取ユニットまで移動して糸継ぎを行う構成に比べて、糸継ぎに要する時間を軽減させることができる。そのため、生産性を向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、トラバースアーム74は、基端側よりも糸ガイド部73が設置面(垂直面)から遠く離れた位置になるように、トラバース駆動モータ76(出力軸77)に支持されている。
【0092】
これにより、パッケージ30と接触ローラ29の接触ラインに糸ガイド部73が近づくトラバースアーム74の配置となるため、フリーレングス及びプリント長を短くすることができる。
【0093】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、トラバースアーム74は、接触ローラ29に近づく方向に折れ曲がっている屈曲部72aを有している。
【0094】
これにより、フリーレングス及びプリント長を短くすることができる。そのため、パッケージ30に巻き取られる糸20の挙動を安定させることができるので、パッケージ30の品質を向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、糸ガイド部73は、先端側で糸20を規制する終端部71aと、当該終端部71aに糸20を案内するようにトラバースアーム74の基端側に開口している開放部71bと、を有する。
【0096】
これにより、トラバース中に振動及び慣性力等によって糸が引っ張られた場合においても、糸が外れることを防止できる。また、糸ガイド部73に糸20を案内し易いため、速やかにトラバースを開始でき、自動ワインダ1の生産性を向上させることができる。
【0097】
また、本実施形態の自動ワインダ1においては、糸ガイド部73には、糸掛け溝71の開放部71bへ糸20を案内する傾斜部73a,73bが形成されている。
【0098】
これにより、糸ガイド部73への糸20の案内を確実かつ素早く行うことができるため、自動ワインダ1の生産性を向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態の自動ワインダ1においては、巻取ボビン22を直接的に回転駆動するパッケージ駆動モータ41を備える。
【0100】
これにより、パッケージ30を従動回転させる構成に比べて、接触ローラ29の径を小さくすることができる。そのため、フリーレングス及びプリント長を短くすることができるので、巻き取られる糸20の挙動を安定させてパッケージ30の品質を向上できる。
【0101】
また、本実施形態の自動ワインダ1は、トラバース支点部27を備える。トラバース支点部27は、パッケージ30に巻き取られる糸20の綾振りの支点である。そして、接触ローラ29の軸方向で見たときに、少なくともパッケージ30の端部において、接触ローラ29上の糸20の最も上流側の箇所を示す点P1とトラバース支点部27とを接続する糸道線L3に対して、トラバースアーム74の長手方向に沿った線を示す仮想線L2が略直角をなしている。
【0102】
これにより、トラバースアーム74の綾振りストロークの端部においても、パッケージ30に巻き取られる糸20が糸ガイド部73により大幅に屈曲することが軽減できる。その結果、糸継装置を備えた糸巻取機において、糸ガイド部73により糸20に負担を掛けることなく、糸継作業を適宜行いながら、ダメージの少ない糸20をパッケージ30に巻き取ることができる。
【0103】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、トラバースアーム74は、糸20が接触ローラ29に最初に接触する箇所の近傍に糸ガイド部73が配置されるように、出力軸77を介して、トラバース駆動モータ76に支持されている。
【0104】
これにより、フリーレングス及びプリント長を短くすることができる。その結果、パッケージ30に巻き取られる糸20の挙動を安定させることができるので、綾落ちや菊巻き等の発生を抑止しつつ、パッケージ30の品質を向上させることができる。
【0105】
次に、図5を参照して、上記実施形態の第1変形例を説明する。図5は、第1変形例に係るトラバース装置70近傍の拡大側面図である。なお、以下の変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0106】
上記実施形態では、トラバースアーム74の回転軸線L1と糸道線L3とが平行になるようなレイアウトであったが、第1変形例では、糸道線L3aをパッケージ30から離れる向きに延長したときに、回転軸線L1aと糸道線L3aとが角度θをなして交わるようなレイアウトとなっている。本変形例では、トラバースアーム74の基端部から糸ガイド部73へ引いた線である仮想線L2aは、糸道線L3aに対して直角ではなく略直角をなしている。ここで、「略直角」とは、直角に極めて近い角度だけでなく、図5の仮想線L2aと糸道線L3aとがなす角度も含むような、比較的広い範囲の角度を示すものとする。
【0107】
そして、第1変形例の自動ワインダ1においては、側面視(接触ローラ29の軸方向に見た場合)において、トラバースアーム74の基端部から糸ガイド部73を通るように引いた仮想線L2aと、糸道線L3aと、の交点P2(言い換えれば、糸ガイド部73の位置)は、トラバースアーム74の基端部から糸道線L3aへ下ろした垂線L4aと糸道線L3aとの交点P3よりも糸道の下流側である。
【0108】
これにより、トラバースアーム74を適切な長さにすることで、パッケージ30と接触ローラ29の接触ラインに糸ガイド部73を近づけることができるため、フリーレングス及びプリント長を短くすることができる。そのため、パッケージ30へ巻き取られる糸20の挙動を安定させることができるので、パッケージ30の品質を向上させることができる。
【0109】
なお、第1変形例において角度θは鋭角であり、この角度θが小さいほど(回転軸線L1aと糸道線L3aとの関係が平行に近づくほど)、トラバースの端部における糸道の屈曲を減らすことができる。
【0110】
次に、図6を参照して、第2変形例を説明する。図6は、第2変形例に係るトラバース装置70近傍の拡大側面図である。上記実施形態及び第1変形例では、トラバースアーム74の仮想線L2がワインダユニット10の設置面に対して傾いているが、第2変形例では、トラバースアーム74の仮想線L2bがワインダユニット10の設置面に対して平行になるように、トラバースアーム74が配置されている。なお、トラバースアーム74の仮想線L2bがワインダユニット10の設置面に対して略平行になるように、トラバースアーム74を配置しても良い。
【0111】
これにより、上記実施形態及び第1変形例ではガイドプレート28によって糸20が屈曲していたが、第2変形例では、給糸部11からトラバースアーム74までの糸20をあまり屈曲させないレイアウトを実現している。
【0112】
なお、第2変形例における糸ガイド部73は、上記実施形態の糸ガイド部73と比較して、パッケージ30と接触ローラ29の接触ラインから離れて配置されている。そのため、フリーレングス及びプリント長を短くする観点からは、上記実施形態のレイアウトの方が好適である。
【0113】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0114】
ワインダユニット10は、チーズ形状のパッケージ以外にも、コーン形状及びテーパ形状等、各種の形状のパッケージを形成することができる。
【0115】
糸ガイド部73の形状は、上記実施形態で示した例に限られない。例えば、開放部71bから終端部71aまでをより長くした長孔状の糸掛け溝を形成しても良い。この場合、トラバース中の糸外れをより効果的に防止することができる。
【0116】
上記実施形態では、トラバースアーム74の回転軸線L1と糸道線L3とが平行になるようにレイアウトされているが、これに代えて、トラバースアーム74の回転軸線L1と糸道線L3とが略平行になるようにレイアウトされていても良い。
【0117】
上記実施形態及び変形例では、巻取ユニット本体16がスプライサ装置14及び上糸捕捉部材26をそれぞれ1つずつ備える構成であるが、これに代えて、糸継台車等を備えて糸継ぎが必要となると該当の巻取ユニット本体16まで移動して糸継ぎを行う構成にしても良い。ただし、直ちに糸継動作を始めてもトラバースアーム74と上糸捕捉部材26が衝突しないという本発明の効果は、糸継台車の到着まで待つことなく糸継動作を開始できる上記実施形態のような構成において、より良好に発揮されるということができる。
【0118】
上記実施形態及び変形例では、パッケージ駆動制御部42及びトラバース制御部78はユニット制御部50と独立して設けられる構成であるが、これに代えて、ユニット制御部50がパッケージ駆動制御部42及びトラバース制御部78のうち少なくとも何れか一方を備える構成にしても良い。
【0119】
上記実施形態及び変形例では、接触ローラ29は円筒形状(円柱形状)に構成されているが、接触ローラ29の形状は上記の形状に限定されない。例えば、コーン形状のパッケージを巻き取る場合には、接触ローラ29の形状を、巻取ボビン22と同様にコーン形状としても良い。具体的には、接触ローラの小径側の径に対する大径側の径の比率を1.1以上1.8未満としても良い。なお、コーン形状のパッケージを巻き取る際に利用される一般的な巻取ボビンは、小径側の径に対する大径側の径の比率が1.6や1.8である。また、接触ローラに糸をプリントさせてからコーン形状のパッケージを巻き取る構成の自動ワインダでは、パッケージと接触ローラとの間で周速差が発生する事により、接触ローラ上で糸がスリップすることがある。そこで、このように接触ローラの径を大径側と小径側とで比率を付けて設定することにより、接触ローラを円筒形状に形成する構成と比べて、接触ローラとパッケージとの間で発生する周速差を小さくし、接触ローラにプリントされた糸のスリップを軽減させることができる。これにより、コーン形状のパッケージに巻き取られる際に生じ易い大径側の綾落ち等を防止し、高品質なパッケージを形成することができる。
【0120】
上記実施形態及び変形例では、パッケージ駆動モータ41がパッケージ30を駆動する構成であるが、これに代えて、接触ローラ29を適宜の駆動装置によって駆動し、パッケージ30を従動回転させる構成にしても良い。
【0121】
上記実施形態及び変形例では、給糸部11へ給糸ボビン21をボビン搬送システムによって供給する構成であるが、これに代えて、巻取ユニット本体16に設けられたマガジン式供給システムから給糸ボビン21を給糸部11に供給する構成にしても良い。
【0122】
上記実施形態及び変形例は、自動ワインダに限定されず、巻返し機及び精紡機(例えば空気紡績機、オープンエンド紡績機)等の糸巻取機に広く適用することができる。また、糸貯留装置を備えた自動ワインダに適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1 自動ワインダ(糸巻取機)
10 ワインダユニット
14 スプライサ装置(糸継装置)
23 クレードル(巻取管支持部)
26 上糸捕捉部材(糸案内部材)
29 接触ローラ
35 上糸吸引口(吸引口部)
36 上糸パイプアーム(吸引アーム部)
70 トラバース装置
71a 終端部(規制部)
71b 開放部(案内口)
73 糸ガイド部
74 トラバースアーム(綾振アーム)
76 トラバース駆動モータ(綾振駆動部)
L1 回転軸線
L3 糸道線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージに巻き取られる糸を供給する給糸部と、
前記パッケージを形成するために糸を巻き付ける巻取管を回転可能に支持する巻取管支持部と、
前記巻取管又は前記パッケージと接触して回転する接触ローラと、
糸を案内するための糸ガイド部が先端側に配置された、糸を綾振りする綾振アームと、
前記綾振アームを回転駆動する綾振駆動部と、
前記パッケージ側の糸端と、前記給糸部側の糸端と、を繋ぐ糸継装置と、
前記パッケージ側の糸端を捕捉して案内可能な糸案内部材と、
を備え、
前記接触ローラの軸方向で見たときに、前記綾振アームの回転軸線と、綾振り幅の端部における糸ガイド部近傍の糸道を延長した糸道線と、が鋭角をなして交わるか平行であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記糸案内部材は、前記パッケージ側の糸端を吸引して捕捉する吸引口部と、前記吸引口部を支持する吸引アーム部と、を有しており、
前記吸引口部が前記パッケージ側の糸端を吸引して捕捉する位置において、前記糸ガイド部が前記吸引口部よりも糸道の上流側に位置するように、前記綾振アームは前記綾振駆動部に支持されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
並べて配置された巻取ユニットを複数備え、
前記巻取ユニット毎に、前記糸継装置及び前記糸案内部材を1つずつ備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記回転軸線と前記糸道線とが略平行であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラの軸方向で見たときにおいて、綾振り幅の端部における前記糸ガイド部の位置は、前記綾振アームの基端部から前記糸道線に下ろした垂線と当該糸道線との交点よりも、糸道の下流側であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部から糸が引き出される方向に引いた直線に垂直な面であって、当該給糸部近傍の面を垂直面として、
前記綾振アームは、長手方向において前記垂直面に平行になるように、前記綾振駆動部に支持されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部から糸が引き出される方向に引いた直線に垂直な面であって、当該給糸部近傍の面を垂直面として、
前記綾振アームは、基端側よりも糸ガイド部が前記垂直面から遠い位置になるように、前記綾振駆動部に支持されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記綾振アームは、前記接触ローラに近づく方向に曲がっている曲がり部を有することを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記糸ガイド部は、
先端側で糸を規制する規制部と、
前記規制部に糸を案内するように前記綾振アームの基端側に開口している案内口と、
を有することを特徴とする糸巻取機。
【請求項10】
請求項9に記載の糸巻取機であって、
前記糸ガイド部には、前記案内口へ糸を案内する傾斜部が形成されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記巻取管を直接的に回転駆動する回転駆動部を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項12】
パッケージに巻き取られる糸を供給する給糸部と、
前記パッケージを形成するために糸を巻き付ける巻取管を回転可能に支持する巻取管支持部と、
前記巻取管又は前記パッケージと接触して回転する接触ローラと、
糸を案内するための糸ガイド部が先端側に配置された、糸を綾振りする綾振アームと、
前記パッケージ側の糸端と、前記給糸部側の糸端と、を繋ぐ糸継装置と、
前記パッケージ側の糸端を捕捉して案内可能な糸案内部材と、
前記パッケージに巻き取られる糸の綾振り支点と、
を備え、
前記接触ローラの軸方向で見たときに、少なくとも前記パッケージの端部において、前記接触ローラ上の糸の最も上流側の箇所と前記綾振り支点とを接続する直線に対して、前記綾振アームの長手方向に沿った線が略直角であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項13】
請求項12に記載の糸巻取機であって、
前記綾振アームの回転軸を支持して、当該綾振アームを回転駆動する綾振駆動部を備え、
前記綾振アームは、糸が前記接触ローラに最初に接触する箇所の近傍に前記糸ガイド部が配置されるように、前記綾振駆動部に支持されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の糸巻取機であって、
前記綾振アームは、前記接触ローラに近づく方向に曲がっている曲がり部を有することを特徴とする糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−195218(P2011−195218A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60900(P2010−60900)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】