説明

糸巻取装置及びそれを備える自動ワインダ

【課題】パッケージに巻き取られる糸長さを精密に測定することができる糸巻取装置を提供する。
【解決手段】自動ワインダの巻取ユニット10は、パッケージ30に所定長さの糸を巻き取るように構成される。この巻取ユニット10は、糸プール部71と、サーボモータ55と、糸長制御部90と、を備える。糸プール部71は、パッケージ30に巻き取られる前の糸を貯留する。サーボモータ55は、糸プール部71に糸を供給するために駆動される。糸長制御部90は、パッケージ30に所定長さの糸が巻き取られるように、サーボモータ55の正転パルス信号を供給カウント部91によってカウントする。そして、正転パルス信号のカウント値から、パッケージ30に巻き取られた糸長さが算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糸巻取装置及び自動ワインダに関するものであり、詳細には、パッケージに巻き取られる糸長さの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糸巻取装置(自動ワインダ)によって給糸ボビンの糸を繋ぎ合わせて形成されたパッケージは、経糸として使用する場合、後工程としてのワーパー工程へ送られる。このワーパー工程では、多数のパッケージの糸が一様な張力で同時に共通のビームに巻き取られる。従って、パッケージ間で糸長さのバラツキが生じている場合、巻取り長さが最も短いパッケージを基準に巻取作業が行われるため、他のパッケージでは、巻取長さが最も短いパッケージの糸長さを超えた分の糸が大量の無駄糸として廃棄されてしまう。
【0003】
この無駄糸の発生を抑制するために、パッケージごとに糸長さのバラツキが出ないように糸速度及び糸長さを監視しながら巻取作業を行う構成の糸巻取装置が従来から提案されている。この種の糸巻取装置を開示したものに例えば特許文献1がある。特許文献1の紡織機の糸巻き箇所は、糸センサを通過する糸長を高精度に決定するための装置及び通過した糸長を蓄積するための評価装置を有している。この通過する糸長を高精度に決定する装置は、通過する糸の運動方向で互いに前後に配置されている2つの測定点を備えた測定ヘッドと、検出された測定値を処理するための走行時間コレレータを有している。糸巻き箇所は、糸結合装置の範囲内で除去される糸長を決定する装置を備える。糸欠陥の検出により糸が切断されると、前記評価装置は、除去される糸長を、糸センサを通過した糸長から導き出された糸の糸長から減算するように構成されている。特許文献1は、これにより、綾巻きボビンのための所定の糸長の維持を改善できるとしている。
【特許文献1】特開2002−348044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように糸を測定ヘッドで直接センシングする構成は、巻き取られる糸速度及び糸長さの決定のために(例えば前記走行時間コレレータによる)複雑な計算が必要であり、構成の複雑化及び高コスト化の原因となっていた。
【0005】
一方、糸巻取装置においては、パッケージを駆動する巻取ドラムの回転に基づいて、巻き取られる糸速度及び糸長さを演算することも考えられる。しかしながら、実際のパッケージの巻取作業では、巻取ドラムの回転速度とパッケージに巻き取られる糸速度とが一致しない場合がある。例えば、コーン巻のパッケージは軸方向で巻径が異なるため、現実に巻き取られる糸速度は巻取位置によって変動することになる。また、チーズ巻のパッケージにおいても、例えばリボン巻の危険ワインド数を回避するために巻取ドラムに対してパッケージをスリップさせる制御を行った場合、巻取ドラムの回転速度と現実の糸速度との間でズレが生じることになる。従って、巻取ドラムの回転に基づく制御の場合は糸長さを精度良く制御することが難しく、無駄糸を効果的に抑制することができなかった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パッケージに巻き取られる糸長さを精密に測定できる簡素な構成の糸巻取装置及び自動ワインダを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、パッケージに所定長さの糸を巻き取る糸巻取装置において、以下の構成が提供される。即ち、糸巻取装置は、糸プール部と、糸貯留駆動部と、カウント部と、を備える。前記糸プール部は、前記パッケージに巻き取られる前の糸を貯留する。前記糸貯留駆動部は、前記糸プール部に糸を供給するために駆動される。前記カウント部は、前記糸貯留駆動部の駆動量をカウントする。そして、前記駆動量のカウント値から前記パッケージに巻き取られた糸長さが算出される。
【0009】
これにより、糸貯留駆動部の駆動量をカウントすることで、パッケージに巻き取られる糸長さを、当該パッケージに糸を実際に巻き取る前の段階で測定することができる。従って、パッケージの巻取作業の影響を受けずに、パッケージに巻き取られる糸長さを精密に算出することができる。この結果、パッケージごとの糸長さを正確に揃えることができるので、無駄に糸を巻き取ってしまうことを防止でき、パッケージの生産性を向上させることができる。
【0010】
前記の糸巻取装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、糸巻取装置は、糸継作業を行うために前記糸プール部の上流側に配置される糸継装置を備える。前記カウント部は、前記糸継作業時に前記糸プール部から糸を上流側へ引き出す際の前記糸貯留駆動部の駆動量をカウントする。そして、前記糸継作業が行われるまでに、前記糸プール部に糸を供給するために駆動された前記糸貯留駆動部の駆動量をカウントした供給カウント値と、前記糸継作業のために、前記糸プール部から糸を上流側へ引き出す際の駆動量をカウントした戻しカウント値と、を考慮して、前記パッケージに巻き取られた糸長さが算出される。
【0011】
これにより、糸継作業時に糸貯留駆動部の駆動量をカウントすることで、糸プール部から上流側へ戻される糸長さを正確に算出できる。また、このように精密に算出された糸長さを考慮するので、パッケージに巻き取られる糸長さを一層正確に算出することができる。
【0012】
前記の糸巻取装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、糸巻取装置は、前記パッケージに巻き取られる糸を供給するための給糸ボビンを交換してセット可能な給糸ボビンセット部を備える。給糸ボビン交換時において、糸継作業のために前記糸プール部から必要な長さの糸を上流側へ引き出す際の前記糸貯留駆動部の駆動量を前記戻しカウント値としてカウントする。そして、この戻しカウント値と、前記供給カウント値と、を考慮して、前記パッケージに巻き取られた糸長さが算出される。
【0013】
これにより、複数の給糸ボビンの糸を繋ぎ合わせて形成されるパッケージの糸長さを正確に算出できる。
【0014】
前記の糸巻取装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、糸巻取装置は、前記糸プール部の上流側で糸欠陥を検出するための糸欠陥検出器を備える。前記糸欠陥検出器が糸欠陥を検出したときは、前記糸欠陥検出器が糸欠陥を検出している間の前記糸貯留駆動部の駆動量をカウントしたカウント値から糸欠陥長さを算出する。
【0015】
これにより、糸欠陥検出器によって検出された糸欠陥部分の長さを、駆動量をカウントすることで正確に算出することができる。
【0016】
本発明の第2の観点によれば、前記の糸巻取装置を複数備える自動ワインダが提供される。
【0017】
これにより、糸巻取装置のそれぞれで形成されるパッケージの糸長さのバラツキを抑制し、正確に定長管理されたパッケージを形成できる自動ワインダを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る巻取ユニット10の概略的な構成を示した正面図である。
【0019】
図1に示す巻取ユニット(糸巻取装置)10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。
【0020】
本実施形態の自動ワインダは、並べて配置された複数の巻取ユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。それぞれの巻取ユニット10は、図示しないユニットフレームに支持された巻取ユニット本体16を備えている。
【0021】
図1に示すように、前記巻取ユニット本体16は、給糸部5と、糸継部6と、糸欠陥検出部7と、糸貯留部8と、巻取部9と、を備えている。なお、以下の説明では、糸20の走行方向上流側及び下流側を単に「上流側」「下流側」と称する場合がある。
【0022】
給糸部5は、給糸ボビン保持部(給糸ボビンセット部)60と、糸解舒補助装置12と、第1テンサ41と、を備える。
【0023】
給糸ボビン保持部60は、糸20を供給するための給糸ボビン21を交換してセットできるように構成されている。この給糸ボビン保持部60には、新たな給糸ボビン21を当該給糸ボビン保持部60へ供給するための図略のボビン供給装置が接続されている。このボビン供給装置としては、例えばマガジン式の供給装置やトレイ式の供給装置を採用することができる。
【0024】
前記給糸部5は、給糸ボビン保持部60にセットされている給糸ボビン21から糸20が全て引き出されて空ボビンとなると、当該空ボビンを給糸ボビン保持部60から排出する。前記ボビン供給装置は、空ボビンを排出した給糸ボビン保持部60に対し、新しい給糸ボビン21を順次供給することができる。
【0025】
糸解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には、前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられている。前記センサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させる制御が行われる。
【0026】
糸解舒補助装置12の近傍には、糸20の有無を検知可能なヤーンフィーラ(上流側糸検出センサ)37が設けられている。このヤーンフィーラ37は、給糸ボビン21から引き出される糸20が無くなったことを検出して、ユニット制御部50に糸無し検出信号を送信できるように構成されている。
【0027】
第1テンサ41は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。この第1テンサ41としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、図略のロータリ式のソレノイドにより回動することができる。なお、この第1テンサはゲート式のものに限らず、例えばディスク式のテンサを使用することもできる。
【0028】
糸継部6は、前記給糸部5の下流側に配置される。また、糸継部6は、糸継作業を行うスプライサ装置(糸継装置)14と、下流側糸案内パイプ(下流側糸捕捉手段)26と、上流側糸案内パイプ(上流側糸捕捉手段)25と、を備える。
【0029】
スプライサ装置14は、後述のクリアラ15が糸欠陥を検出したとき、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の上流側糸と、パッケージ30側の下流側糸とを糸継ぎするものである。スプライサ装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0030】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の上流側糸を捕捉して案内する上流側糸案内パイプ25と、パッケージ30側の下流側糸を捕捉して案内する下流側糸案内パイプ26と、が設けられている。
【0031】
下流側糸案内パイプ26は、下流側糸を捕捉するための捕捉位置と、捕捉した下流側糸をスプライサ装置14へ案内するための案内位置と、の間で、軸35を中心として回動可能に構成されている。また、上流側糸案内パイプ25は、上流側糸を捕捉するための捕捉位置と、捕捉した上流側糸をスプライサ装置14へ案内するための案内位置と、の間で、軸33を中心として回動可能に構成されている。
【0032】
上流側糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、同様に下流側糸案内パイプ26の先端にも吸引口34が形成されている。上流側糸案内パイプ25及び下流側糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及び吸引口34に吸引流を作用させることができる。
【0033】
糸欠陥検出部7は、前記糸継部6の下流側に配置される。この糸欠陥検出部7は、走行する糸20の太さを監視するクリアラ(糸欠陥検出器)15を備えている。
【0034】
クリアラ15は適宜のセンサを備えており、このセンサからの信号をアナライザ52で処理することで、スラブ等の糸欠陥を検出可能に構成されている。なお、前記クリアラ15は、糸20の走行速度を検知するセンサ、及び、単に糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。
【0035】
クリアラ15の近傍には、当該クリアラ15が糸欠陥を検出したときに糸を切断するためのカッタ(糸切断手段)18が配置されている。また、クリアラ15の下流側には、走行中の糸にワックス付けをするためのワキシング装置17が配置されている。更に、ワキシング装置17の下流側には図略の吸引部が備えられている。この吸引部は適宜の負圧源に接続され、ワックスの滓や糸屑等を吸引除去することができる。
【0036】
糸貯留部8は、前記糸欠陥検出部7の下流側に配置される。また、糸貯留部8は、給糸ボビン21から解舒された糸20を糸プール部71に貯留可能なアキュムレータ(糸貯留装置)61を備えている。給糸ボビン21から解舒された糸20はアキュムレータ61に貯留され、その後、アキュムレータ61から引き出されてパッケージ30に巻き取られる。
【0037】
前記アキュムレータ61は、貯留した糸20を上流側及び下流側の両方に同時に引き出すことができるように構成されている。この構成により、貯留されている糸20をパッケージ30に巻き取るのと並行して、給糸ボビン21側にも糸20を引き出して糸継作業を行うことができる。なお、アキュムレータ61の構成の詳細については後述する。
【0038】
巻取部9は、前記糸貯留部8の下流側に配置される。また、巻取部9は、巻取ボビン22を保持可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、第2テンサ42と、を備える。
【0039】
クレードル23は巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、糸20の巻取りに伴うパッケージ30の径の増大を吸収することができる。前記巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって糸20をトラバースさせるように構成している。
【0040】
第2テンサ42はアキュムレータ61の下流側に配置されており、アキュムレータ61から糸20が解舒される際に発生するテンションを制御するものである。これによって、アキュムレータ61から引き出された糸は適宜のテンションが付与された状態で巻取ボビン22に巻き取られることになる。この第2テンサ42としては第1テンサ41と同様に、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものや、ディスク式のものを使用することができる。
【0041】
巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0042】
なお、パッケージ30の巻取中に巻取ドラム24とパッケージ30の回転数が整数倍或いは整数分の1の関係になると、綾振り周期とパッケージ30の巻取周期が同期して、巻き取られる糸が同一箇所に集まり重なるいわゆるリボン巻きが発生する。このリボン巻きが発生したパッケージ30では、糸同士が相互に絡み易く、後工程で糸を解舒する際に糸切れが発生するなどの問題がある。この点を考慮して、本実施形態のユニット制御部50(モータ制御部54)は、リボン巻き発生径の近傍で巻取ドラム24の回転を急激に増減速させてパッケージ30と巻取ドラム24間にスリップを生じさせ、綾振り糸の糸道を分散させて巻き取る制御を行っている(ディスターブ制御)。これによりリボン巻を崩し、解舒性に優れたパッケージ30を形成することができる。
【0043】
次に図2を参照してアキュムレータ61について説明する。図2は、アキュムレータ61の概略的な構成を示す模式断面図である。図2に示すように、アキュムレータ61は、回転軸ケーシング70と、糸プール部71と、糸案内部72と、を備える。また、前記回転軸ケーシング70は、上方が開放された円筒状の筒部78と、この筒部78の開放側端部に形成された鍔部79と、を備えている。
【0044】
前記糸プール部71は、前記鍔部79の上方に配置されている。この糸プール部71は、円板状に形成される支持板81と、この支持板81から上方に突出する複数のロッド部材82と、この複数のロッド部材82の先端部分が接続される円板状の取付板83と、を備える。また、糸プール部71は、前記支持板81と前記鍔部79との間に隙間を形成するように配置されており、この隙間の内部を後述の貯留ガイドアーム75が回転できるように構成されている。
【0045】
支持板81は水平に配置されるとともに、この支持板81の上面に、複数のロッド部材82が円周上に等間隔で並べて配置されている。前記糸プール部71は、これらのロッド部材82によって略円筒形状を形成するように構成されている。この糸プール部71の外周部分に糸20を巻き回すことによって、糸20が糸プール部71に貯留されることになる。
【0046】
糸案内部72は、前記回転軸ケーシング70の内部に配置されている。回転軸ケーシング70において、前記筒部78の下部(糸プール部71と反対側の端部)には導入孔80が形成されており、給糸ボビン21から引き出された糸20は前記導入孔80から糸案内部72へ導かれるようになっている。
【0047】
前記筒部78の内部には回転軸73が配置され、この回転軸73は、前記回転軸ケーシング70及び糸プール部71に対して相対回転可能に支持されている。この回転軸73と前記筒部78の間にはサーボモータ(糸貯留駆動部)55が組み込まれており、回転軸73を正転及び逆転させることができる。また、この回転軸73の中心には、軸孔状の糸通路74が形成されている。
【0048】
この回転軸73の一端(前記導入孔80と反対側の端部)には、円筒状に形成される貯留ガイドアーム(巻付手段)75が固定されている。この貯留ガイドアーム75は、上向きに若干傾斜しながら、回転軸ケーシング70(鍔部79)と支持板81との隙間を通過するようにして径方向に延び、その先端部分の一部が回転軸ケーシング70より若干飛び出すように構成されている。この貯留ガイドアーム75は回転軸73と一体的に回転するように構成される。また、貯留ガイドアーム75の内部は前記糸通路74と接続されている。
【0049】
以上の構成において、糸案内部72の導入孔80から回転軸ケーシング70内に導かれた糸20は、糸通路74及び貯留ガイドアーム75の内部を通って当該貯留ガイドアーム75の先端から排出されることで、前記糸プール部71の側面部分に誘導される。従って、前記サーボモータ55を正方向に駆動すると、貯留ガイドアーム75が回転軸73とともに回転し、これによって前記側面部分に糸20が巻き回されることになる。また、アキュムレータ61から上流側に糸20を戻すときには、サーボモータ55をニュートラル(フリー回転可能)な状態とし、下流側糸案内パイプ26が、下流側糸端を吸引捕捉した状態で下方に回転することによって、糸20を上流側に引き出す。このとき、糸20の引き出しに伴って貯留ガイドアーム75が回転軸73とともに糸を引き出す方向に回転し、サーボモータ55は、糸20を糸プール部71に巻き取る駆動方向に対して反対方向に逆回転させられる。
【0050】
前記糸プール部71において複数配置されるロッド部材82のそれぞれは、支持板81側の端部から取付板83側の端部へ近づくに従って糸プール部71の内側方向へ傾斜するように配置されている。糸20には前記第1テンサ41によって一定のテンションが付与されているので、前記ロッド部材82の傾斜によって、糸プール部71に巻き付けられた糸は上方に滑るように自然に移動する。従って、前記貯留ガイドアーム75によって糸20が連続して巻き付けられると、前記傾斜部分に巻き取られた糸が上方へと移動していくので、ロッド部材82で構成される前記側面部分には糸20が螺旋状に整列した状態で貯留されることになる。
【0051】
本実施形態では貯留ガイドアーム75の糸貯留駆動部としてサーボモータ55が使用されているので、貯留ガイドアーム75の回転の急停止又は加減速等を精密に行うことができる。これによって、糸プール部71へ糸20を供給する場合の供給長さやそのタイミング、糸プール部71から糸20を上流側へ戻す場合の戻し長さやそのタイミング等を正確に制御でき、各種の作業をよりスムーズに行うことができる。
【0052】
図1に示すように、巻取ユニット10は、糸プール部71の上部に配置される第1貯留センサ76と、糸プール部71の下部に配置される第2貯留センサ77と、を備えている。この2つの貯留センサ(糸貯留量検出手段)76,77は非接触型の光学センサ等で構成されており、それぞれがユニット制御部50に電気的に接続されている。
【0053】
第1貯留センサ76は、糸プール部71を構成するロッド部材82の上端側に巻き付けられた糸を検出できるように糸プール部71の上端側に配置され、アキュムレータ61の最大貯留状態を検知する。また、第2貯留センサ77は、ロッド部材82の下端側に巻かれた糸を検出できるように糸プール部71の下流側に配置され、アキュムレータ61の糸貯留不足を検知する。ユニット制御部50は、第1貯留センサ76及び第2貯留センサ77からの糸検出信号に基づいて、サーボモータ55の回転速度(糸プール部71への糸20の供給速度)を制御する。これによって、アキュムレータ61の糸貯留量を過不足が生じないように調節することができる。
【0054】
なお、アキュムレータ61において糸20が糸プール部71に巻き付けられる速度(換言すれば、糸プール部71への糸供給速度)は、糸の巻取を開始した時点では、時間とともに増加するパッケージ30の糸巻取速度と等しい速度又はそれよりも速い速度になるように制御される。そして、巻取開始から所定時間が過ぎ、糸継作業時に必要な糸量がアキュムレータ61に貯留されたときには、パッケージ30の糸巻取速度と等しい速度で糸を糸プール部71に巻き付け、アキュムレータ61に貯留された糸量を維持させるように制御される。なお、糸継作業時に必要な糸量とは、後述するスプライサ装置14での糸継作業のためにアキュムレータ61から上流側へ引き出される糸量に、当該糸継作業と並行して行われるパッケージ30への巻取のためにアキュムレータ61から下流側へ引き出される糸量を加算したものである。糸プール部71においては、この必要な糸量以上の糸を貯留した状態を常に維持することが好ましい。
【0055】
前記アキュムレータ61の糸プール部71から解舒された糸20は、巻取ドラム24により駆動されるパッケージ30に巻き取られる。そして、このときに第2テンサ42が糸20へ付与するテンションは、ユニット制御部50により巻取速度に応じて制御される。
【0056】
次にユニット制御部50について説明する。ユニット制御部50は、CPU及び記憶部等からなるマイクロコンピュータ式に構成されている。図1に示すように、ユニット制御部50は巻取ユニット本体16の給糸部5、糸継部6、糸欠陥検出部7、糸貯留部8及び巻取部9等に接続されており、巻取作業全体を制御する。また、各種の設定を行うための図略の設定器がユニット制御部50に接続されている。
【0057】
図1に示すように、ユニット制御部50はサーボモータ55に電気的に接続されている。また、ユニット制御部50は、サーボモータ55の駆動を制御することでパッケージ30に巻き取られる糸長さを制御する糸長制御部90を備えている。この糸長制御部(カウント部)90は、供給カウント部91と、戻しカウント部92と、供給長さ演算部93と、比較部94と、を主要な構成として備えている。
【0058】
供給カウント部91は、サーボモータ55が糸20を糸プール部71に供給する方向に回転した場合、サーボモータ55からの正回転パルス信号(駆動量)をカウントして、供給カウント値を更新する。
【0059】
戻しカウント部92は、サーボモータ55が糸20を糸プール部71から上流側へ引き出す方向に回転した場合、サーボモータ55からの逆回転パルス信号(駆動量)をカウントして、戻しカウント値を更新する。ここでいう駆動量は、糸を糸プール部71の上流側に引き出すことによって、サーボモータ55が逆方向に駆動される駆動量を示している。なお、この駆動量は、糸が引き出されることによってサーボモータ55が受身的に駆動される場合に限定されるわけではない。例えば、糸を糸プール部71から上流側に引き出す際に、サーボモータ55を自発的に逆回転させるような構成の場合、自発的に逆回転した駆動量も戻しカウント部92によってカウントされることになる。
【0060】
供給長さ演算部93は、供給カウント値及び戻しカウント値に基づいて、現時点までに糸プール部71に供給された糸長さの累積値(ただし、供給後に再び上流側に戻された糸長さを除く。以下、「供給糸長さ累積値」と称する)を演算する。
【0061】
比較部94は、パッケージ30を満巻とするのに十分な長さの糸20を糸プール部71側へ貯留したか否かを判定する。ユニット制御部50には、パッケージ30を完成させるために巻き取るべき糸長さである設定巻取長さが、前記設定器等によって予め設定されている。比較部94は、糸プール部71に現在貯留されている糸20が全てパッケージ30に巻き取られたと仮定したときに当該パッケージ30が満巻になるか否かを、前記供給糸長さ累積値を前記設定巻取長さと比較することにより判定する。現時点で糸プール部71に貯留されている糸20の巻取りによってパッケージ30が満巻となる状態の場合、ユニット制御部50は、糸プール部71の糸20がパッケージ30に全て巻き取られるのを待って満巻と判定する。
【0062】
次に、上記の構成の巻取ユニット10による糸の巻取りについて説明する。最初に準備作業として、糸プール部71に糸が貯留されていない状態で、新しい空の巻取ボビン22が巻取ユニット本体16のクレードル23にセットされる。また、給糸ボビン保持部60に給糸ボビン21がセットされるとともに、当該給糸ボビン21から糸20が引き出されて巻取ボビン22に取り付けられる。
【0063】
その後、ユニット制御部50に巻取開始が指示されると、当該ユニット制御部50は最初に、前記供給カウント値及び前記戻しカウント値をゼロにリセットする。その後、ユニット制御部50はアキュムレータ61及び巻取ドラム24の駆動を順次開始する。
【0064】
アキュムレータ61のサーボモータ55が糸プール部71への糸の巻付けを開始すると、当該サーボモータ55の回転状態を示す信号がユニット制御部50に入力される。供給カウント部91は、サーボモータ55が正方向に所定角度回転するごとに出力するパルス信号に基づいて、供給カウント値を加算する。糸プール部71に貯留された糸20は、やがて更に下流側に引き出され、巻取ドラム24により駆動されるパッケージ30に巻き取られる。
【0065】
この巻取りの途中で例えばクリアラ15が糸欠陥を検出した場合、ユニット制御部50は糸20をカッタ18で切断するとともにアキュムレータ61のサーボモータ55をニュートラル(フリー)とし、下流側の糸端を下流側糸案内パイプ26で捕捉させる。そして、下流側糸案内パイプ26を下方に回転させることによって上流側へ糸20を引き出す。この結果、アキュムレータ61(糸プール部71)の糸20の貯留量は減少することになる。戻しカウント部92は、サーボモータ55が逆方向に所定角度回転させられる(駆動される)ごとに出力するパルス信号に基づいて、戻しカウント値を加算する。
【0066】
下流側糸案内パイプ26によって糸プール部71から上流側へ解舒された糸20は、スプライサ装置14へ案内され、糸欠陥部分が切除されるとともに、給糸ボビン21側の糸20と糸継ぎされる。なお、糸欠陥検出時における制御の詳細は後述する。
【0067】
また、巻取中に給糸ボビン21の糸が全て解舒されたことをヤーンフィーラ37が検出した場合、ユニット制御部50はアキュムレータ61のサーボモータ55をニュートラル(フリー)として、下流側糸案内パイプ26によって糸20を上流側へ引き出す。戻しカウント部92は糸欠陥の検出時と同様に、サーボモータ55が逆方向に所定角度回転させられるごとに出力するパルス信号に基づいて、戻しカウント値を加算する。糸プール部71から上流側へ解舒された糸20は下流側糸案内パイプ26によってスプライサ装置14へ引き出され、給糸ボビン保持部60に新しくセットされた給糸ボビン21の糸20と糸継ぎされる。なお、給糸ボビンの交換時における制御の詳細は後述する。
【0068】
供給長さ演算部93は、供給カウント値から戻しカウント値を減算し、その結果に所定の定数を乗じることで、現時点までに糸プール部71に供給された糸長さの累積値(前記供給糸長さ累積値)を演算する。ここで、糸プール部71に供給された糸20は、上流側に引き出されることがない限り、その全てがパッケージ30に巻き取られる。従って、現時点での供給糸長さ累積値は、パッケージ30に既に巻き取られている長さに、近い将来巻き取ることになる糸の長さを加算したものに相当する。
【0069】
比較部94は、供給長さ演算部93によって得られた供給糸長さ累積値と、所定の設定巻取長さを比較する。前記供給糸長さ累積値が設定巻取長さ以上になれば、これ以上の糸プール部71への糸20の供給は不要になるので、サーボモータ55の駆動を停止する。その後、ユニット制御部50は、糸プール部71に貯留された糸20が全てパッケージ30に巻き取られるまで巻取ドラム24の駆動を継続する。その後は、満巻のパッケージ30をクレードル23から取り外す玉揚作業が、図略の玉揚装置等を使用すること等により行われる。
【0070】
ユニット制御部50は、以上のようにサーボモータ55を制御することで糸プール部71に貯留される糸長さを調節し、最終的にパッケージ30に巻き取られる糸長さを制御する。ここで、前述のとおり、糸プール部71への糸20の貯留(供給)は、貯留ガイドアーム75を回転させて糸20を糸プール部71の側面部分に巻き付けることによって行う。従って、貯留される糸の長さは、貯留ガイドアーム75の回転角度と糸プール部71の糸巻付け部分の径によって正確かつ容易に計算することができる。
【0071】
また、糸長制御部90では、巻取部9での巻取長を直接計算するのではなく、その前段階での糸貯留部8における供給糸長さ累積値を計算している。従って、前記ディスターブ制御によるパッケージ30のスリップ等、巻取作業に起因する誤差の影響を排除して、パッケージ30に所定の長さの糸を巻き取ったか否かを正確に判定することができる。
【0072】
また、糸継作業のために糸プール部71側の糸20をスプライサ装置14へ引き出す必要が生じた場合、その引き出す長さは、サーボモータ55が逆回転させられる角度(回数)をカウントすることで精密に算出することができる。具体的には、糸プール部71から上流側へ戻される(引き出される)糸の長さは、貯留ガイドアーム75の逆回転角度と糸プール部71の糸巻付け部分の径によって正確かつ容易に計算することができる。従って、パッケージ30に所定の長さの糸を巻き取ったか否かの判定にあたっては、糸20の巻取過程で発生する糸継作業の影響を正確に考慮することができる。
【0073】
また、本実施形態の巻取ユニット10は、糸貯留部8の糸プール部71に一定の糸長さが貯留される構成のため、糸貯留部8における供給糸長さ累積値が直ちにパッケージ30に巻き取られた糸長さとはならない。しかし、供給糸長さ累積値に対して、パッケージ30の巻取りが開始されたときの貯留量と、パッケージ30の巻取りが終了したときの貯留量と、を考慮して演算することにより、現実にパッケージ30に巻き取られた糸長さを容易に算出することができる。
【0074】
次に、クリアラ15が糸欠陥を検出した場合の制御について説明する。クリアラ15は、糸太さの監視により糸欠陥を検出すると、ユニット制御部50に糸欠陥検出信号を送信する。この糸欠陥検出信号に基づき、前記ユニット制御部50はアキュムレータ61のサーボモータ55を停止させ、貯留ガイドアーム75の回転を停止させる。更に、ユニット制御部50は、カッタ18を駆動して糸20を切断する。これにより、切断箇所より下流側の糸は、アキュムレータ61の導入孔80より下方で停止させられる。なお、前記糸20が、アキュムレータの導入孔80より下方で停止させられるのであれば、貯留ガイドアーム75の回転停止制御と同時にカッタ18で糸20を切断するように制御しても良い。
【0075】
ユニット制御部50は、クリアラ15が糸欠陥を検出した時点から前記貯留ガイドアーム75が正方向に回転した角度(回数)等に基づいて、当該糸欠陥を有する部分の糸長さを演算することができる。即ち、クリアラ15からの検出信号を受け取った時点から欠陥が検出されなくなるまでの間の正回転パルス信号をカウントし、このカウント値に基づいて糸欠陥部分の糸長さを計算する。
【0076】
次に、ユニット制御部50は、アキュムレータ61の導入孔80より下方に位置している下流側糸を下流側糸案内パイプ26により吸引捕捉させて、下流側糸案内パイプ26をスプライサ装置14の下方の案内位置まで回動させる。これによって、下流側糸案内パイプ26によって糸欠陥部分を有する糸20が糸プール部71から引き出される。そして、戻しカウント部92によって、糸20の引き出しによって逆転するサーボモータ55のパルス信号に基づいて戻しカウント値を加算していく。このとき、糸欠陥部分を有する糸長さと、糸継作業に必要な長さと、を足した糸長分が糸プール部71から解舒されて上流側へ引き出されることになる。糸継作業に必要な糸長さは、アキュムレータ61とスプライサ装置14との位置関係等に基づいて予め設定されている値を用いることができる。
【0077】
ユニット制御部50は、上流側糸を上流側糸案内パイプ25により吸引捕捉させて、上流側糸案内パイプ25をスプライサ装置14の上方の案内位置まで回動させる。上流側糸案内パイプ25及び下流側糸案内パイプ26によって上流側の糸端と下流側の糸端とがスプライサ装置14に案内されると、スプライサ装置14によって糸継作業が開始される。糸欠陥を含む下流側糸の糸端部は、スプライサ装置14のカッタにより切断され、除去される。
【0078】
上記の糸継作業はパッケージ30への糸20の巻取作業と並行して行われるので、巻取ドラム24を停止及び逆転させることなく糸欠陥を除去することができる。糸継作業が終了すると、サーボモータ55は正転を開始してアキュムレータ61への糸の供給を再開する。これにより、供給カウント値の更新が再開される。供給長さ演算部93は、供給カウント値及び戻しカウント値を考慮して、供給糸長さ累積値を随時演算していく。
【0079】
次に、給糸ボビン21を交換する場合の制御について説明する。給糸ボビン21から供給される糸が無くなったことを前記ヤーンフィーラ37が検出すると、当該ヤーンフィーラ37は糸無し検出信号をユニット制御部50に送信する。この糸無し検出信号を受信したユニット制御部50は、アキュムレータ61への糸の供給を停止させる。
【0080】
次に、ユニット制御部50はサーボモータ55をニュートラル(フリー)とし、下流側糸案内パイプ26によって、糸継作業に必要な長さの糸をアキュムレータ61から上流側へ引き出すように制御する。この糸継作業に必要な長さは、糸継作業で除去される糸を含むように、アキュムレータ61からスプライサ装置14までの位置関係等を考慮して予め設定されている。そして、糸20が上流側に引き出されることでサーボモータ55が逆転し、戻しカウント部92が、サーボモータ55の逆転を示すパルス信号に基づいて戻しカウント値を加算していく。
【0081】
空になった給糸ボビン21が給糸ボビン保持部60から排出され、当該給糸ボビン保持部60に新しい給糸ボビン21が供給される。その後は、糸欠陥が検出された場合と同様に、アキュムレータ61側の下流側糸が下流側糸案内パイプ26によって捕捉されてスプライサ装置14に引き出され、新しい給糸ボビン21からの上流側糸が上流側糸案内パイプ25によって捕捉されてスプライサ装置14に引き出される。そして、下流側糸と上流側糸とをスプライサ装置14で糸継ぎした後、サーボモータ55を制御して、糸20が貯留される方向に貯留ガイドアーム75を再び回転させる。これにより、供給カウント値の更新が再開される。供給長さ演算部93は、供給カウント値及び戻しカウント値を考慮して、供給糸長さ累積値を随時演算していく。
【0082】
なお、少なくとも糸継作業の完了直後は、糸プール部71への糸20の供給速度をパッケージ30の巻取速度よりも大きくするよう制御することが好ましい。これにより、糸継作業中に減少した糸プール部71の貯留量を素早く回復させることができる。
【0083】
以上に示したように、本実施形態の巻取ユニット10は、パッケージ30に所定長さの糸を巻き取るように構成される。また、巻取ユニット10は、糸プール部71と、サーボモータ55と、糸長制御部90と、を備える。糸プール部71は、パッケージ30に巻き取られる前の糸20を貯留する。サーボモータ55は、糸プール部71に糸20を供給するために駆動される。糸長制御部90は、サーボモータ55の正回転パルス信号をカウントする。そして、正回転パルス信号のカウント値から前記パッケージに巻き取られた糸長さが算出される。
【0084】
これにより、サーボモータ55の正回転パルス信号をカウントすることで、パッケージ30に巻き取られる糸長さを、当該パッケージ30に実際に糸を巻き取る前の段階で測定することができる。従って、本実施形態のように巻取作業でディスターブ制御を行うことによってパッケージ30がスリップするような場合でも、当該スリップの影響を受けずに、パッケージ30に巻き取られる糸長さを精密に算出することができる。この結果、パッケージ30ごとの糸長さを正確に揃えることができるので、当該パッケージ30の糸20を例えば後工程としてのワーパー工程で経糸として使用する場合、糸長さが揃ってない部分として廃棄される無駄糸を少なくでき、一連の工程の生産性を向上させることができる。
【0085】
また、本実施形態の巻取ユニット10は、糸継作業を行うために糸プール部71の上流側に配置されるスプライサ装置14を備える。糸長制御部90は、糸継作業時に糸プール部71から糸を上流側へ引き出す際のサーボモータ55の逆回転パルス信号をカウントする。そして、前記糸継作業が行われるまでに、糸プール部71に糸20を供給するために駆動されたサーボモータ55の正回転パルス信号をカウントした供給カウント値と、前記糸継作業のために、糸プール部71から糸を上流側へ引き出す際の逆回転パルス信号をカウントした戻しカウント値と、を考慮して、パッケージ30に巻き取られた糸長さが算出される。
【0086】
これにより、糸継作業時にサーボモータ55の逆回転パルス信号をカウントすることで、糸プール部71から上流側へ戻される糸長さを正確に算出できる。また、このように精密に算出された糸長さを考慮するので、パッケージ30に巻き取られる糸長さを一層正確に算出することができる。
【0087】
また、本実施形態の巻取ユニット10は、パッケージ30に巻き取られる糸20を供給するための給糸ボビン21を交換してセット可能な給糸ボビン保持部60を備える。給糸ボビン21交換時において、糸継作業のために糸プール部71から必要な長さの糸を上流側へ引き出す際のサーボモータ55の逆回転パルス信号を戻しカウント値としてカウントする。そして、この戻しカウント値と、供給カウント値と、を考慮して、パッケージ30に巻き取られた糸長さが算出される。
【0088】
これにより、給糸ボビン21の糸を繋ぎ合わせて形成されるパッケージ30の糸長さを正確に算出できる。
【0089】
また、本実施形態の巻取ユニット10は、糸プール部71の上流側で糸欠陥を検出するためのクリアラ15を備える。糸長制御部90は、クリアラ15が糸欠陥を検出したときは、クリアラ15が糸欠陥を検出している間のサーボモータ55の正回転パルス信号をカウントしたカウント値から糸欠陥長さを算出する。
【0090】
これにより、クリアラ15によって検出された糸欠陥部分の長さを、正回転パルス信号をカウントすることで正確に算出することができる。従って、糸欠陥を除去するために必要な糸長さを正確に算出できる。
【0091】
また、本実施形態の自動ワインダは前記巻取ユニット10を複数備えている。
【0092】
この構成の自動ワインダは、巻取ユニット10のそれぞれで形成されるパッケージ30の糸長さのバラツキを抑制し、正確に定長管理されたパッケージ30を形成できる。
【0093】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0094】
上記実施形態のサーボモータ55はユニット制御部50によって制御される構成であるが、この構成に限定されない。例えば図3に示すように、サーボモータ55を制御するためのサーボモータ制御部150を巻取ユニット10に備え、当該サーボモータ制御部150に前記糸長制御部90を備える構成とすることもできる。
【0095】
上記実施形態では、サーボモータ55の正転パルス信号に基づいて供給カウント値を加算し、逆転パルス信号に基づいて戻しカウント値を加算し、最終的に供給カウント値から戻しカウント値を減算するように構成している。しかしながら、サーボモータ55から逆転パルス信号が入力された時点で供給カウント値を減算するように変更することもできる。
【0096】
また、上記実施形態では、サーボモータ55からの信号に基づいて加算される供給カウント値及び戻しカウント値に基づいて供給糸長さ累積値を演算し、これを設定巻取長さと比較するように構成されている。しかしながらこれに代えて、空の巻取ボビンへの巻取開始時には設定巻取長さに相当する値を適宜の変数に設定しておき、サーボモータ55からの正転パルス信号に基づいて当該変数をカウントダウンしていく構成とすることもできる。この場合、前記比較部は、前記変数の値をゼロと比較することになる。糸継作業等により糸プール部71から糸が上流側へ戻されたときは、サーボモータ55からの逆転パルス信号に基づいて前記変数を逆にカウントアップすることで、上流側へ戻された糸長さを考慮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係る巻取ユニットの概略的な構成を示した正面図。
【図2】本実施形態のアキュムレータの様子を示した模式断面図。
【図3】変形例の巻取ユニットの概略的な構成を示した正面図。
【符号の説明】
【0098】
10 巻取ユニット(糸巻取装置)
14 スプライサ装置(糸継装置)
15 クリアラ(糸欠陥検出器)
20 糸
21 給糸ボビン
30 パッケージ
50 ユニット制御部
55 サーボモータ(糸貯留駆動部)
60 給糸ボビン保持部(給糸ボビンセット部)
61 アキュムレータ
71 糸プール部
90 糸長制御部(カウント部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージに所定長さの糸を巻き取る糸巻取装置において、
前記パッケージに巻き取られる前の糸を貯留するための糸プール部と、
前記糸プール部に糸を供給するために駆動される糸貯留駆動部と、
前記糸貯留駆動部の駆動量をカウントするカウント部と、
を備え、
前記駆動量のカウント値から前記パッケージに巻き取られた糸長さが算出されることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取装置であって、
糸継作業を行うために前記糸プール部の上流側に配置される糸継装置を備え、
前記カウント部は、前記糸継作業時に前記糸プール部から糸を上流側へ引き出す際の前記糸貯留駆動部の駆動量をカウントし、
前記糸継作業が行われるまでに、前記糸プール部に糸を供給するために駆動された前記糸貯留駆動部の駆動量をカウントした供給カウント値と、前記糸継作業のために、前記糸プール部から糸を上流側へ引き出す際の駆動量をカウントした戻しカウント値と、を考慮して、前記パッケージに巻き取られた糸長さが算出されることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の糸巻取装置であって、
前記パッケージに巻き取られる糸を供給するための給糸ボビンを交換してセット可能な給糸ボビンセット部を備え、
給糸ボビン交換時において、糸継作業のために前記糸プール部から必要な長さの糸を上流側へ引き出す際の前記糸貯留駆動部の駆動量を前記戻しカウント値としてカウントし、
この戻しカウント値と、前記供給カウント値と、を考慮して、前記パッケージに巻き取られた糸長さが算出されることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
前記糸プール部の上流側で糸欠陥を検出するための糸欠陥検出器を備え、
前記糸欠陥検出器が糸欠陥を検出したときは、前記糸欠陥検出器が糸欠陥を検出している間の前記糸貯留駆動部の駆動量をカウントしたカウント値から糸欠陥長さを算出することを特徴とする糸巻取装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取装置を複数備えることを特徴とする自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−47406(P2010−47406A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215580(P2008−215580)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】