説明

糸貯留引出装置及び糸巻取装置

【課題】糸貯留部に貯留された糸の糸端を確実に引き出す。
【解決手段】給糸部から糸貯留体70に供給される糸Yと、糸貯留体70に巻き付けられた状態で貯留された糸Yとが分断されたときには、糸貯留体70に糸Yを巻き付けるための管状の巻付アーム75に給糸部側に向かう空気流を発生させることにより、糸貯留体70に巻き付いた糸端を吸引して引き出し、給糸部側の糸端との糸継を行う。巻付アーム75の先端部は、平面視での糸貯留体70の接線方向に延びている。また、糸貯留体70においては、巻付アーム75により、仮想円周Rに沿って配列された6本のローラ71の下端部と、ローラ71の間に配置されたスロープ部材74の巻付補助面74aとにまたがって糸Yが巻き付けられる。ローラ71の下端部の表面と巻付補助面74aとは、仮想円周Rに沿ってほぼ連続的に延びた面を形成しており、平面視での糸Yの巻付形状がほぼ円形となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸供給部から引き出した糸を一時的に糸貯留体に貯留し、糸貯留体に貯留された糸を引き出して糸処理を行う糸貯留引出装置及び糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の糸巻取装置(巻取ユニット)においては、給糸ボビン保持部に保持された給糸ボビンから解舒した糸を、貯留ガイドアームにより糸貯留体(貯留部)に巻き付けることで糸貯留体に一旦貯留し、糸貯留体に貯留された糸を巻き取ってパッケージを形成している。
【0003】
そして、糸の巻取中において、糸欠陥が検出されたとき、給糸ボビンの糸がなくなって新しい給糸ボビンに交換されるときなどには、糸貯留体に糸を巻き付けるための貯留ガイドアームの回転を停止させることによって、糸貯留体側の糸端を、貯留ガイドアームに糸を導入するための導入孔から垂れ下がった状態にする。そして、垂れ下がった糸端を下流側糸案内パイプにより捕捉してスプライサ装置に案内するとともに、給糸ボビン側の糸端を上流側糸案内パイプにより捕捉してスプライサ装置に案内し、スプライサ装置によってこれらの糸端の糸継を行う。
【0004】
このとき、糸貯留体に糸が貯留されているため、糸貯留体に貯留された糸を引き出して糸の巻取を継続することができ、これにより、糸の巻取を停止させることなく糸継を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−47360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、給糸ボビンからの糸の解舒速度が速い場合などには、上述したように、糸欠陥が検出されたとき、給糸ボビンの糸がなくなって新しい給糸ボビンに交換されるときなどに、貯留ガイドアームの回転を停止させても、糸欠陥や給糸ボビンの糸がなくなったことが検出されてから貯留ガイドアームの回転を停止させるまでの間に、糸端が糸貯留体に到達して糸貯留体に巻き付いてしまう。すなわち、糸貯留体側の糸端を、導入孔から垂れ下がった状態にすることができないことがある。
【0007】
そのため、このような場合には、糸貯留体に巻き付いた糸端を、導入孔から引き出した上で、下流側糸案内パイプによって糸貯留体側の糸端を捕捉する必要ががある。
【0008】
本発明の目的は、糸貯留体側の糸端を確実に引き出すことが可能な糸貯留引出装置及び糸巻取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る糸貯留引出装置は、糸供給部と、前記糸供給部の糸を、第一端から第二端に向けて巻き取って貯留する糸貯留体と、前記糸貯留体に貯留された糸を前記第二端から解舒して処理を行う解舒処理部と、前記糸供給部から前記糸貯留体への糸の供給が中断され、前記糸貯留体に糸端が巻き取られた場合に、前記糸貯留体に巻き取られた糸端を前記糸貯留体の前記第一端側から引き出す引出機構と、前記引出機構による前記糸貯留体に巻き取られた糸端の引き出し作業を補助する引出補助機構と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明によると、糸供給部から糸貯留体への糸の供給が中断されたときに、解舒処理部において糸貯留体に貯留された糸を第二端から引き出して処理を行いつつ、引出機構により糸貯留体に巻き取られた糸端を第一端側から引き出すことができる。
【0011】
さらに、引出補助部によって、引出機構による糸端の引き出し作業が補助されるため、糸貯留体に巻き付いた糸端を確実に引き出すことができる。
【0012】
第2の発明に係る糸貯留引出装置は、第1の発明に係る糸貯留引出装置において、前記給糸部と前記糸貯留体との間に配置されており、前記引出機構により引き出された前記糸貯留体側の糸端と、前記給糸部側の糸端との糸継を行う糸継部をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明によると、糸供給部側の糸の糸端と、引出機構により引き出した糸貯留体側の糸の糸端とを、糸継部により糸継することができる。
【0014】
第3の発明に係る糸貯留引出装置は、第1又は第2の発明に係る糸貯留引出装置において、前記引出機構は、前記糸端を吸引することによって引き出し、
前記引出補助部は、前記糸端を、前記引出機構により吸引可能な位置に留めることを特徴とする。
【0015】
本発明によると、引出機構が糸端を吸引して引き出す場合に、引出補助部によって、糸端を、引出機構により吸引可能な位置に留めることにより、確実に糸端を引き出すことができる。
【0016】
第4の発明に係る糸貯留引出装置は、第3の発明に係る糸貯留引出装置において、前記糸貯留体は、糸が巻き付けられる巻付部と、前記巻付部の前記第二端側に設けられた、前記巻付部に巻き付けられた糸が移動してきて貯留される貯留部とを備え、前記引出補助部は、前記糸端を前記巻付部に留め、前記引出機構は、前記引出補助部により前記巻付部に留められた前記糸端を吸引することを特徴とする。
【0017】
本発明によると、糸端が糸貯留体の巻付部に留められるため、糸貯留体の貯留部に巻き付けられた糸に影響を与えることなく、糸端の引出を行うことができる。
【0018】
第5の発明に係る糸貯留引出装置は、第4の発明に係る糸貯留引出装置において、前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に巻き付ける巻付機構をさらに備え、前記巻付機構は、前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に案内する案内部材を備え、前記引出機構が、前記巻付機構と共通の前記案内部材と、前記案内部材に、前記糸貯留体側から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、前記案内部材が、前記巻付機構による糸の巻付時に、前記第一端側から第二端側に向かう方向から見て前記糸貯留体の外周方向に沿ってに糸を案内するように構成されていることで前記引出補助部を兼ねていることを特徴とする。
【0019】
本発明によると、第一端側から第二端側に向かう方向から見て糸貯留体の外周方向に沿って糸を案内して糸を巻き付けるので、糸が分断されたときに、糸端が糸処理部側に跳ね上がらずに、引出機構により吸引可能な巻付部に留まる。したがって、引出機構により確実に糸端を引き出すことができる。
【0020】
第6の発明に係る糸貯留引出装置は、第5の発明に係る糸貯留引出装置において、前記糸貯留体の巻付部は、前記第一端側から第二端側に向かう方向から見て、円形の巻付外周を有し、前記案内部材は、前記巻付外周の接線方向に糸を案内することによって、前記第一端側から第二端側に向かう方向から見て前記糸貯留体の外周方向に沿って糸を案内するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明によると、糸貯留体の巻付部が、第一端側から第二端側に向かう方向から見て円形の巻付外周を有している場合には、糸貯留体の巻付外周の接線方向に糸を案内して糸を巻き付けことにより、糸が分断されたときに、糸端が糸処理部側に跳ね上がらずに、引出機構により吸引可能な巻付部に留まる。したがって、引出機構により確実に糸端を引き出すことができる。
【0022】
第7の発明に係る糸貯留引出装置は、第5又は第6の発明に係る糸貯留引出装置において、前記案内部材は、前記糸貯留体側の端部において前記第一端側から前記第二端側に向かう方向から見て前記糸貯留体の外周方向に沿って延びる直線部を有する管状部材であることを特徴とする。
【0023】
本発明によると、糸貯留体側の端部において前記第一端側から前記第二端側に向かう方向から見て前記糸貯留体の外周方向に沿って延びる直線部を有する管状部材により、糸を上記外周方向に沿って案内することができる。
【0024】
第8の発明に係る糸貯留引出装置は、第4の発明に係る糸貯留引出装置において、前記引出補助部は、前記糸貯留体の外周を取り囲むように配置されており、前記糸端と接触することで、前記糸端が前記巻付部から前記貯留部に向かう方向に跳ね上がるのを妨げる環状部材であることを特徴とする。
【0025】
本発明によると、糸が分断されたときに、環状部材により、糸端が巻付部から貯留部に向かう方向に跳ね上がるのが防止されるため、糸端が引出機構により吸引可能な巻付部に留まる。したがって、引出機構により確実に糸端を引き出すことができる。
【0026】
第9の発明に係る糸貯留引出装置は、第8の発明に係る糸貯留引出装置において、前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に巻き付ける巻付機構をさらに備え、前記巻付機構は、前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部へ案内する案内部材を備え、前記引出機構が、前記巻付機構と共通の前記案内部材と、前記案内部材に、前記糸貯留体側から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、前記環状部材は、前記糸貯留体の、前記巻付部よりも前記第二端側の前記貯留部を取り囲むように配置されていることを特徴とする。
【0027】
本発明によると、糸が分断されたときに、糸端を案内部材の近傍に留めておくことができるので、引出機構により確実に糸端を吸引することができる。
【0028】
第10の発明に係る糸貯留引出装置は、第8又は第9の発明に係る糸貯留引出装置において、前記環状部材は、少なくともその内周端を含む部分が弾性材料によって構成されており、前記糸貯留体に糸が巻き付けられていない状態で、前記内周端が前記糸貯留体に接触している、又は、前記内周端と前記糸貯留体との間に糸の径よりも小さい隙間ができるように配置されていることを特徴とする。
【0029】
本発明によると、糸端が、糸貯留体と環状部材との間を抜けて糸処理体側に移動してしまうのを確実に防止することができる。一方、巻付部に巻き付けられて、貯留部に向かって移動するた糸は、環状部材を弾性変形させて押しのけることにより、環状部材を通り抜けることができる。
【0030】
第11の発明に係る糸貯留引出装置は、第4の発明に係る糸貯留引出装置において、前記引出補助部は、前記巻付部に巻き付けられて前記貯留部に向かって移動する糸から前記糸端を分離することによって前記糸端を前記巻付部に留める糸端分離部材であることを特徴とする。
【0031】
本発明によると、巻付部に巻き付けられて貯留部に向かって移動する糸から糸端を分離することによって糸端を巻付部に留めておくことができるので、引出機構により確実に糸端を吸引することができる。
【0032】
第12の発明に係る糸貯留引出装置は、第11の発明に係る糸貯留引出装置において、前記糸端分離部材は、前記巻付部に設けられており、前記貯留部に向かって移動する前記巻付部に巻き付けられた糸によっては押しのけることができ、且つ、前記分断された糸端によっては押しのけることができない弾性材料からなることを特徴とする。
【0033】
本発明によると、巻き付けられた糸は弾性材料を押しのけて移動するが、糸端は弾性部材を押しのけることができないので、巻付部に巻き付けられた糸から糸端を分離し、分離した糸端を巻付部に留めておくことができる。
【0034】
第13の発明に係る糸貯留引出装置は、第1又は第2の発明に係る糸貯留引出装置において、前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に巻き付ける巻付機構をさらに備え、前記巻付機構は、前記給糸部から引き出した糸を、前記糸貯留体に案内する管状の案内部材を備え、前記引出機構が、前記巻付機構と共通の前記案内部材と、前記案内部材に前記糸貯留体側から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、前記案内部材は、前記糸貯留体側の端における開口面積が、前記糸案内部材の内部通路の面積よりも大きくなっていることにより、前記引出補助部を兼ねていることを特徴とする。
【0035】
本発明によると、案内部材の糸貯留体側の端の開口面積が大きくなっているため、引出機構の糸端を吸引することが可能な範囲が広くなり、これにより、糸端を確実に引き出すことができる。
【0036】
第14の発明に係る糸貯留引出装置は、第13の発明に係る糸貯留引出装置において、前記案内部材は、前記糸貯留体側の端部において前記糸貯留体側の端部において前記第一端側から前記第二端側に向かう方向から見て前記糸貯留体の外周方向に沿って延びる直線部を有する管状部材であり、前記糸貯留体側の端の開口が、前記直線部に対して傾斜し、且つ、前記糸貯留体の周方向に沿って延びていることを特徴とする。
【0037】
本発明によると、引出機構における糸端を吸引することが可能な範囲が広くなるのに加えて、糸貯留体に近い位置で糸端を吸引することができるので、糸端をより確実に引き出すとができる。
【0038】
第15の発明に係る糸貯留引出装置は、第7又は第14の発明に係る糸貯留引出装置において、前記巻付機構は、前記糸貯留体への糸の巻付方向を切替可能に構成されており、前記案内部材は、前記巻付方向に合わせて、前記直線部の向きが切替可能となっていることを特徴とする。
【0039】
本発明によると、糸貯留体にどちら方向に糸を巻き付ける場合でも、糸案内部材により、糸を上記外周方向に沿って案内することができる。
【0040】
第16の発明に係る糸貯留引出装置は、第1又は第2の発明に係る糸貯留引出装置において、前記引出補助部は、前記糸貯留体に巻き付いた糸から前記糸端を掻き出す糸端掻出部材であることを特徴とする。
【0041】
本発明によると、糸端掻出部材により、糸貯留体に巻き付けられた糸にくっついた糸端が掻き出されるため、引出機構により確実に糸端を引き出すことができる。
【0042】
第17の発明に係る糸貯留引出装置は、第16の発明に係る糸貯留引出装置において、前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に巻き付ける巻付機構をさらに備え、前記巻付機構は、前記給糸部から引き出された糸を前記糸貯留体に案内する案内部材と、前記糸貯留体における糸の巻付中心を中心に、前記案内部材と前記糸貯留体とを相対回転させる回転機構とを備え、前記引出機構が、前記巻付機構と共通の前記案内部材及び前記回転機構と、前記案内部材に前記糸貯留体から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、前記糸端掻出部材は、前記案内部材に設けられており、前記引出機構による糸の引出時に、前記案内部材に対して相対回転する前記糸貯留体と接触することによって前記糸端を掻き出すことを特徴とする。
【0043】
本発明によると、案内部材に設けられており、案内部材に対して相対回転する糸貯留体と接触する糸端掻出部材により掻き出された糸端が、案内部材の近傍にくることとなるため、糸端を確実に引き出すことができる。
【0044】
第18の発明に係る糸貯留引出装置は、第16又は第17の発明に係る糸貯留引出装置において、前記糸端掻出部材は、糸貯留体への糸の巻付時には、糸貯留体から離隔するように構成されていることを特徴とする。
【0045】
本発明によると、糸端掻出部材が糸貯留体に巻き付けられた糸に接触して糸にダメージを与えてしまうのを防止することができる。
【0046】
第19の発明に係る糸貯留引出装置は、第16〜第18のいずれかの発明に係る糸貯留引出装置において、前記糸端掻出部材がブラシによって構成されていことを特徴とする。
【0047】
本発明によると、糸端掻出部材の構成を簡単にすることができる。
【0048】
第20の発明に係る糸貯留引出装置は、第1又は第2の発明に係る糸貯留引出装置において、前記糸貯留体は、仮想円周上に配列された複数のローラで構成され、前記複数のローラに糸を案内する案内部材と、前記仮想円周に沿って前記案内部材を回転させる回転機構とを備え、前記引出機構が、前記案内部材及び回転機構と、前記案内部材に前記糸貯留体側から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、前記引出補助部は、前記複数のローラの少なくとも前記案内部材によって糸が案内される部分の間に配置されており、前記複数のローラとともに糸が巻き付けられることによって、前記一端側から第二端に向かう方向から見た前記糸貯留体への糸の巻付形状を、前記複数のローラにのみ糸を巻き付けたとした場合よりも円形に近づける巻付形状調整部材であることを特徴とする。
【0049】
本発明によると、糸がローラと巻付形状調整部材とに巻き付けられることにより、糸の巻付形状が円形に近づくため、案内部材と糸貯留体に巻き付けられた糸との距離が大きくなる部分ができず、引出機構により、確実に糸端を引き出すことができる。
【0050】
第21の発明に係る糸貯留引出装置は、第20の発明に係る糸貯留引出装置において、前記巻付形状調整部材の糸が巻き付けられる面が、前記複数のローラの間で、前記仮想円周に沿って連続的に延びていることを特徴とする。
【0051】
本発明によると、糸の巻付形状をほぼ円形にすることができるので、糸端を確実に引き出すことができる。また、糸端が、ローラ又は巻付形状調整部材の表面上に位置することとなるため、糸端が空中に位置している場合よりも確実に糸端を引き出すことができる。
【0052】
第22の発明に係る糸貯留引出装置は、第20の発明に係る糸貯留引出装置において、前記巻付形状調整部材は、前記複数のローラの間に、前記第一端側から第二端側に向かう方向から見てその面方向が前記糸貯留体の径方向と平行となるようにそれぞれ配置された複数の板状部材であることを特徴とする。
【0053】
本発明によると、巻付形状調整部材の構成を簡単にすることができる。
【0054】
第23の発明に係る糸巻取装置は、第1〜第22のいずれかに記載の糸貯留引出装置によって構成されるものであって、前記解舒処理部は、前記糸貯留体に貯留された糸を引き出してパッケージに巻き取る巻取部であり、前記給糸部は、紡績された糸が巻かれた給糸ボビンが支持されるボビン支持部であることを特徴とする。
【0055】
本発明によると、糸処理部が巻取部となった糸巻取装置においても、給糸部と糸貯留部との間で糸が分断されたときに、糸の巻取を継続しつつ糸継を行うことができ、糸継を行う際に、糸貯留体に巻き付いた糸端を確実に引き出すことができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、糸供給部から糸貯留体への糸の供給が中断されたときに、解舒処理部において糸貯留体に貯留された糸を第二端から引き出して処理を行いつつ、引出機構により糸貯留体に巻き取られた糸端を第一端側から引き出すことができる。
【0057】
さらに、引出補助部によって、引出機構による糸端の引き出し作業が補助されるため、糸貯留体に巻き付いた糸端を確実に引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態に係る巻取ユニットの概略構成図である。
【図2】図1のアキュムレータの概略構成図である。
【図3】図2のローラ、スロープ部材及び巻付アームの位置関係を示す平面図である。
【図4】第2実施形態のアキュムレータの概略構成図である。
【図5】第2実施形態の図3相当の図である。
【図6】第2実施形態における環状部材の作用を模式的に示した図である。
【図7】(a)が第3実施形態の図3相当の図であり、(b)が(a)の一点鎖線で囲んだ領域の部分拡大図である。
【図8】第3実施形態におけるブラシの作用を模式的に示した図である。
【図9】(a)が第4実施形態の図3相当の図であり、(b)が(a)の一点鎖線で囲んだ領域の部分拡大図である。
【図10】第4実施形態におけるブラシの作用を模式的に示した図である。
【図11】第5実施形態におけるアキュムレータの概略構成図である。
【図12】第6実施形態におけるアキュムレータの概略構成図である。
【図13】図12を矢印XIIIの方向から見たときの、回転貯留ドラムと糸案内部材との位置関係を示す図である。
【図14】(a)が第7実施形態におけるアキュムレータの概略構成図であり、(b)が(a)の一点鎖線で囲んだ領域の部分拡大図である。
【図15】(a)が第8実施形態におけるアキュムレータの図13相当の図であり、(b)が(a)の一点鎖線で囲んだ領域の部分拡大図である。
【図16】(a)が変形例1の図3相当の図、(b)が変形例2の図13相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。第1実施形態に係る自動ワインダは、図1に示す巻取ユニット2(糸貯留引出装置、糸巻取装置)が図中左右方向に多数並べて構成されている。各巻取ユニット2は、それぞれ、給糸部5、巻取部6、糸欠陥検出部7、糸継部8及び糸貯留部9を備えている。
【0060】
給糸部5(糸供給部)は、給糸ボビン21を保持するための給糸ボビン保持部60、糸解舒補助装置12及び第1テンション付与装置41を備えている。また、給糸部5は新たな給糸ボビン21を給糸ボビン保持部60に供給するための図示しないボビン供給装置をさらに備えている。このボビン供給装置には、マガジン式の供給装置やトレイ式の供給装置などがある。この給糸部5は、巻取ユニット2にセットされている給糸ボビン21から紡績糸Y(以下、単に糸Yとする)が全て引き出されると、給糸ボビン保持部60に保持されている空ボビンを排出し、ボビン供給装置が新たな給糸ボビン21を順次給糸ボビン保持部60に供給する。
【0061】
糸解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸Yの解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21から糸Yの解舒を補助する。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸Yの回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸Yの解舒を補助する。
【0062】
糸解舒保持装置12の近傍には、糸Yの有無を検知可能なヤーンフィーラ37が設けられている。このヤーンフィーラ37は、給糸ボビン21から引き出される糸Yがなくなったことを検出する。
【0063】
第1テンション付与装置41は、走行する糸Yに所定のテンションを付与する。第1テンション付与装置41としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士がかみ合わせ状態又は開放状態になるように、図示しないロータリ式のソレノイドにより回動することができる。この第1テンション付与装置41によって、後述のアキュムレータ61に貯留される糸Yに一定のテンションを付与し、アキュムレータ61において糸Yを整然と巻き付けて貯留することができる。
【0064】
巻取部6(解舒処理部)は、巻取ボビン22を保持可能に構成された図示しないクレードル(パッケージ支持部)と、糸Yをトラバースさせるとともに巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム24と、第2テンション付与装置42とを備える。クレードルは、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これにより、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。また、図1に示すように巻取ドラム24の外周面には、螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって糸Yがトラバースされる。
【0065】
巻取ドラム24は、図示しないモータにより回転駆動することによって、当該巻取ドラム24に対向して配置される巻取ボビン22を回転させる。
【0066】
第2テンション付与装置42は、糸貯留部9の後述するアキュムレータ61から解舒された糸Yがパッケージ30に巻き取られる際のテンションを制御するものである。これによって、アキュムレータ61から引き出された糸Yは、適宜のテンションが付与された状態で巻取ボビン22に巻き取られる。第2テンション付与装置42は、第1テンション付与装置41と同様に、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。
【0067】
糸欠陥検出部7は、ヤーンクリアラ15を備える。ヤーンクリアラ15は、糸Yの太さを適宜のセンサで監視することで欠陥を検出する。なお、ヤーンクリアラ15は、単に糸Yの有無を検知するセンサとしても機能させることができる。また、ヤーンクリアラ15には、糸欠陥検出時に、糸欠陥の上流側の糸を切断するためのカッター16が備えられている。
【0068】
また、第2テンション付与装置42の下流側には走行中の糸Yにワックス付けをするためのワキシング装置17が配置されている。またワキシング装置17の下流側には、図示しない吸引部が備えられている。この吸引部は、適宜の負圧源に接続され、ワックスの滓や糸屑などを吸引除去することができる。
【0069】
糸継部8は、糸継作業を行うスプライサ装置14と、下糸案内パイプ25と、上糸案内パイプ26とを備えている。
【0070】
スプライサ装置14は、走行中の糸Yが切れたとき、糸欠陥が発生したとき、給糸ボビン21の糸Yがなくなって給糸ボビン21が交換されたときなど、給糸部5と糸貯留部9との間で糸Yが分断されて、給糸部5から糸貯留部9への糸Yの供給が中断されたときに、給糸ボビン21側の糸端と、パッケージ30側の糸端とを糸継するものである。スプライサ装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0071】
下糸案内パイプ25は、スプライサ装置14の下方に位置する軸25aを中心として回動可能に支持されているとともに、図示しないモータにより回動させることができるようになっている。また、下糸案内パイプ25の先端には、吸引口25bが設けられており、吸引口25bには、図示しないクランプ部が設けられている。さらに、下糸案内パイプ25には、図示しない負圧源が接続されていることによって、負圧が供給されており、これにより、吸引口25bに糸Yを吸引するための吸引流が発生する。
【0072】
上糸案内パイプ26は、スプライサ装置14の上方に位置する軸26aを中心として回動可能に支持されているとともに、図示しないモータにより回動させることができるようになっている。また、上糸案内パイプ26の先端には、吸引口26bが設けられており、吸引口26bには、クランプ部26c(図2参照)が設けられている。さらに、上糸案内パイプ26には、負圧源120(図2参照)が接続されていることによって、負圧が供給されており、これにより、吸引口26bに糸Yを吸引するための吸引流が発生する。
【0073】
糸貯留部9は、給糸ボビン21から解舒された、巻取ボビン22に巻き取られる前の糸Yを貯留するためのアキュムレータ61を備える。
【0074】
アキュムレータ61は、図2、図3に示すように、糸貯留体70、巻付アーム75、巻付アームモータ76、減速機77、プーリ78a〜78c、シャフト79等を備えている。糸貯留体70は、6本のローラ71、基材72、回動板73及び3つのスロープ部材74を備えている。
【0075】
基材72は、略円形の板状体であり、巻付アームモータ76の出力軸136の先端部に図示しない軸受けを介して支持されている。
【0076】
6本のローラ71は、基材72の上面に仮想円周Rに沿って配置されており、その下端(第一端)が基材72の上面に枢支されているとともに、その上端(第二端)が回動板73に支持されている。
【0077】
回動板73は、巻付アームモータ76の回転軸C1を中心として回動可能となっており、回動板73を回動させると、回動板73に支持されたローラ71の上端は、糸貯留体70の周方向に互いに同じ中心角に相当する距離だけ移動する。そして、回動板73を回動させることによって、ローラ71の上端を糸貯留体70の周方向に移動させると、ローラ71は、図2に示すように、糸貯留体70の巻付部から糸解舒部に向かう糸貯留方向に対して傾斜する。つまり、全てのローラ71は、回転軸C1に対して傾斜して支持される。
【0078】
また、回動板73には、その外周面を取り囲むようにゴムリング81が配置されており、後述するようにローラ71に巻き付けられた糸Yは回動板73とゴムリング81との間の隙間を通って、巻取部6に向けて送られる。このとき、糸Yには回動板73とゴムリング81との間に挟まれた状態でその間を送られるため、糸Yの毛羽が寝かされる。また、糸Yが回動板73とゴムリング81との間に挟まれているため、ローラ71から解舒されて巻取部6に向けて走行する糸Yにおいてバルーンが発生してしまうのを防止することができる。
【0079】
また、ローラ71の下面にはプーリ82が取り付けられており、プーリ82は、巻付アームモータ76の回転を所定の減速比で減速して伝達する減速機77、減速機77に接続されたプーリ78a、プーリ78aに接続されたプーリ78b、プーリ82に接続されたプーリ78c、及び、プーリ78bとプーリ78cとを連結するシャフト79を介して巻付アームモータ76の出力軸136に接続されている。これにより、巻付アームモータ76が回転すると、その回転が、減速機77、プーリ78a〜78c及びシャフト79を介してプーリ82に伝達され、これにより、プーリ82が取り付けられたローラ71が回転する。なお、第1実施形態では6本のローラ71が、全て巻付アームモータ76により駆動される駆動ローラとなっているが、これらのうちの一部は、巻付アームモータ76とは接続されていない従動ローラであってもよい。
【0080】
3つのスロープ部材74(巻付形状調整部材)は、6本のローラ71の下端部を取り囲むように、互いに約120°ずつ離隔して基材72に取り付けられている。スロープ部材74は、隣接するローラ71の間に位置する部分に、隣接するローラ71の外周面同士を滑らかに繋ぐための巻付補助面74aを有しており、ローラ71の下端部の表面と巻付補助面74aとは、仮想円周Rに沿ってほぼ連続して延びた面を形成している。また、巻付補助面74aは、上方の部分ほど径方向の内側にくるように傾斜している。
【0081】
巻付アーム75(案内部材)は、ローラ71の下端部に糸Yを案内するためのものであって、回転軸C1を中心として回転可能に構成されているとともに、内部に糸Yが走行可能な内部流路128が形成された管状部材である。巻付アーム75は、出力軸136の外周面に連結されており、出力軸136の外周面から径方向外側に糸貯留体70の側方を回り込むように延びてローラ71の下端部近傍に至る。ここで、糸貯留体70の巻付部は、平面視で(第一端側から第二端側に向かう方向から見て)、円形の巻付外周を有しており、巻付アーム75の先端部は、平面視における巻付外周の接線方向に(糸貯留体70の外周方向に沿って)直線状に延びた直線部75aとなっている。
【0082】
また、巻付アーム75の先端には、ローラ71の下端部と対向する開口75bが形成されている。開口75bは、直線部に対して傾斜し、且つ、ローラ71及びスロープ部材74の周方向に沿うように延びており、これにより、開口75bの開口面積が、内部流路128の面積よりも大きくなっている。
【0083】
この構成で、巻付アーム75は、回転軸C1を中心として回転可能となっており、このように回転軸C1を中心として平面視で反時計回りに回転することで、後述するように、巻付アーム75の内部流路128内に導かれた給糸部5側の糸Yが6本のローラ71の下端部及びスロープ部材74に巻き付けられる。また、このとき、糸Yは、巻付アーム75の直線部75aにより、平面視における(第一端側から第二端側に向かう方向から見て)糸貯留体70の巻付部の接線方向に案内される。これにより、糸Yは、巻付アーム75により、糸貯留体70の外周方向に沿って案内される。
【0084】
また、この巻付アーム75の内部流路128は、上記の出力軸136内部に形成された流路144と通じている。また、巻付アーム75と出力軸136を挟んで反対側には、出力軸136と一体形成されたバランサー145が設けられている。
【0085】
巻付アームモータ76(回転機構)は、例えば、サーボモータ、DCブラシレスモータ、ステッピングモータなど、位置制御可能なモータである。なお、第1実施形態では、巻付アーム75と巻付アームモータ76とを合わせたものが、本発明に係る巻付機構に相当する。
【0086】
また、巻付アームモータ76のヤーンクリアラ15側には、出力軸136の流路144と連通する糸流路146と、この糸流路146に開口するとともに巻付アーム75側から上糸案内パイプ26側へ向かって傾斜して形成される吹下流路147と、を有する吹下ノズル148が設けられている。
【0087】
そして、吹下流路147には接続パイプ149と接続パイプ150を介して圧力空気源151(空気流発生装置)が接続されており、接続パイプ149と接続パイプ150の間には、電磁弁152が設けられている。
【0088】
この構成で、電磁弁152を開き圧力空気源151の圧力空気が接続パイプ150と接続パイプ149、吹下流路147を順に経由して糸流路146に吐出されると、巻付アーム75の内部流路128、巻付アームモータ76の出力軸136の流路144、及び、吹下ノズル148の糸流路146には、ローラ71側から上糸案内パイプ26側へ向かう空気流が形成されるようになっている。
【0089】
そして、この空気流によって、後述するように、ローラ71に巻き付いた糸Yの糸端を吸引し、これとほぼ同時に、巻付アーム75を糸貯留体70への糸Yの巻付時と逆方向に回転させることにより、吸引した糸端を糸継部8側に引き出すようになっている。すなわち、第1実施形態では、巻付機構を構成する巻付アーム75及び巻付アームモータ76と、接続パイプ149、150、151により互いに接続された吹下ノズル148、圧力空気源151及び電磁弁152とを合わせたものが、本発明に係る引出機構に相当する。
【0090】
また、上記の吹下ノズル148の下端には、アキュムレータ61に巻き込まれている糸Yの糸端が実際に糸継部8側に引き出されたことを検出するための引出センサ154が設けられている。
【0091】
次に、巻取ユニット2における糸Yの巻取動作について説明する。
【0092】
自動ワインダ(巻取ユニット2)のオペレータは、給糸ボビン21から糸Yを解舒して、この糸Yを糸解舒補助装置12、ヤーンフィーラ37、第1テンション付与装置41、ヤーンクリアラ15、アキュムレータ61、第2テンション付与装置42、ワキシング装置17にセットし、巻取ボビン22に固定する。アキュムレータ61における糸Yの糸道は、図2に示す通りである。すなわち、オペレータは、糸Yを、引出センサ154と、吹下ノズル148の糸流路146と、出力軸136の流路144と、巻付アーム175の内部流路128とに順に通す。この状態で、オペレータは、巻付アーム75の開口75b側で糸Yを引き出して、ローラ71及びスロープ部材74に例えば5〜20回程度巻き付け、第2テンション付与装置42にセットする。なお、図2における糸Yは説明の都合上、太く描かれているとともに、その巻付間隔も大きくなっているが、実際にはローラ71には常時、小さい巻付間隔で600巻き程度巻き付けられた糸Yの束が貯留されるようになっている。
【0093】
そして、この状態で、巻付アームモータ76により巻付アーム75を回転させるとともに、巻取ドラム24を回転させる。すると、巻付アーム75が回転することにより、給糸ボビン21の糸Yが解舒され(引き出され)、解舒された糸Yが6本のローラ71の下端部及び3つのスロープ部材74にまたがって巻き付けられる。巻き付けられた糸Yは、スロープ部材74の巻付補助面74aの傾斜に沿って上方に移動し、スロープ部材74よりも上方まで移動すると、6本のローラ71にのみ巻き付けられた状態となる。
【0094】
また、このとき、6本のローラ71も回転し、6本のローラ71に巻き付けられた糸Yは、回転するローラ71により、ローラ71の周方向に搬送される。ここで、ローラ71は、上述したように糸貯留方向(回転軸C1方向)に対して傾いているため、ローラ71の周方向は巻付部から解舒部に向かうベクトル成分を有しており、ローラ71に巻き付けられた糸Yは、上方に移動する。
【0095】
そして、これにより、給糸ボビン21から解舒された糸Yは、上下方向に沿って、6本のローラ71にその下端(第一端、巻付側端部)から上端(第二端、解舒側端部)に向かって巻き付けられた状態で、糸貯留体70に貯留される。
【0096】
また、巻取ドラム24の回転により、ローラ71に巻き付けられた状態で貯留された糸Yが、上端から順に巻取部6によって引き出され、巻取ドラム24によってトラバースされながらパッケージ30に巻き取られる(糸処理される)。
【0097】
なお、第1実施形態では、巻付アーム75により、スロープ部材74とともに糸Yが巻き付けられるローラ71の下端部が、本発明に係る巻付部に相当し、スロープ部材74の巻付補助面74aの傾斜や、ローラ71の回転によって、この巻付部に巻き付けられた糸Yが移動してくる、ローラ71やスロープ部材74の上記巻付部よりも上方(第二端側)に位置する部分が、本発明に係る貯留部に相当する。
【0098】
次に、巻取ユニット2における糸継動作について説明する。巻取ボビン22への糸Yの巻取中において、走行している糸が切れたとき、糸欠陥が検出されてカッター16により糸Yが切断されたとき、給糸ボビン21の糸Yがなくなり給糸ボビン21が交換されるときなどには、給糸部5と糸貯留部9との間で糸Yが分断され、給糸部5から糸貯留部9への糸の供給が中断される。そこで、巻取ユニット2では、このような場合に、以下に説明するように、分断された糸Yの糸継を行う。
【0099】
一方、以下に説明する糸継を行っている間、巻取部6は、巻取ボビン22への糸Yの巻取を停止させることはなく、糸貯留体70に貯留された糸Yを引き出して巻取ボビン22への糸Yの巻取を継続する。
【0100】
走行している糸が切れたことが検出されたとき、糸欠陥が検出されたとき、給糸ボビン21の糸Yがなくなったことが検出されたときなどには、巻付アーム75の回転を停止させる。このとき、アキュムレータ61側の糸端は、巻付アーム75の回転が停止されるまでの間に糸貯留体70に達し、ローラ71の下端部及びスロープ部材74に巻き付く。
【0101】
次に、巻付アーム75を巻取時とは反対方向に低速回転させるとともに、電磁弁152を開くことによって、上述したように、巻付アーム75の内部流路128、巻付アームモータ76の出力軸136の流路144、及び、吹下ノズル148の糸流路146に、糸貯留体70側から上糸案内パイプ26側へ向かう空気流を発生させる。
【0102】
吸引しつつ回転する巻付アーム75により、糸貯留体70に巻き付いていた糸Yの糸端が、開口75bから巻付アーム75に吸引され、吸引された糸端が、内部流路128、流路144及び糸流路146を通って、上糸案内パイプ26側に引き出される。そして、引出センサ154により糸端が上糸案内パイプ26側に引き出されたことが検出されたときに、電磁弁152を閉じる。
【0103】
次に、上糸案内パイプ26の吸引口26bを開いて、引き出された糸の糸端を吸引捕捉するとともに、クランプ部26cにより捕捉した糸端を把持する。そして、巻付アーム75を低速回転させたまま、クランプ部26cにより糸端を把持した上糸案内パイプ26を、軸26aを中心に約180°旋回させて、糸貯留体70側の糸端をスプライサ装置14にセットした後に、巻付アーム75の低速回転を停止させる。
【0104】
一方、下糸案内パイプ25により、ヤーンフィーラ37の周辺に存在する糸Yの糸端を吸引捕捉し、この糸Yをスプライサ装置14にセットする。そして、スプライサ装置14により、セットされたアキュムレータ61側の糸端と給糸部5側の糸端との糸継作業を行う。
【0105】
そして、上述の糸継が完了すると、巻付アーム75を回転させて、糸貯留体70への糸の巻付を再開する。
【0106】
以上に説明した第1実施形態では、糸貯留体70に糸Yを巻き付ける際に、巻付アーム75の先端部が、平面視における巻付部の巻付外周の接線方向に直線状に延びた直線部75aとなっており、糸Yがこの接線方向に案内されるため、糸Yが分断されたときに、分断されたアキュムレータ61側の糸端も、巻付アーム75により上記接線方向に案内される。
【0107】
そのため、糸貯留体70に案内された糸端は、ローラ71やスロープ部材74に衝突して上方に跳ね上がってしまうことがなく、巻付アーム75により糸Yが案内されるローラ71の下端部あるいはスロープ部材74の近傍(巻付部)、すなわち、開口75bから吸引可能な位置に留まっている。したがって、上記糸端を確実に吸引して引き出すことができる。
【0108】
また、このとき、上記糸端が、ローラ71の下端部あるいはスロープ部材74の近傍に留められているため、ローラ71のスロープ部材74よりも上方の部分(貯留部)に巻き付けられて貯留された糸Yに影響を与えることなく、当該糸端を吸引することができる。
【0109】
また、巻付アーム75の開口75bが、直線部75aに対して傾斜し、且つ、糸貯留体70の周方向に沿って延びていることにより、開口75bの開口面積が、内部流路128の面積よりも大きくなっているとともに、ローラ71の下端部の表面、及び、巻付補助面74aに近い位置にくることとなり、さらに確実に上記糸端を吸引することができる。
【0110】
また、第1実施形態とは異なり、仮にスロープ部材74がないとすると、ローラ71に巻き付けられた糸Yの、平面視での(第一端側から第二端側に向かう方向から見た)巻付形状が略六角形となり、巻き付けられた糸Yは、ローラ71の間の部分において、ローラ71に掛かっている部分よりも内側に位置することとなる。そのため、糸端がローラ71の間に位置しているときには、糸端がローラ71上に位置しているときに比べて、巻付アーム75と糸端との間の距離が大きくなってしまい、糸Yを吸引できない虞がある。
【0111】
これに対して、第1実施形態では、6本のローラ71の間にスロープ部材74が設けられており、ローラ71の下端部の表面とスロープ部材74の巻付補助面74aとが、仮想円周Rに沿ってほぼ連続して延びた面を形成しているため、巻付アーム75によって、ローラ71とスロープ部材74とにまたがるように巻き付けられた糸Yの巻付形状は、ほぼ円形となる。したがって、糸端がローラ71上に位置しているときと、糸端がスロープ部材74上に位置しているときとで、巻付アーム75と糸端との間の距離がほぼ同じとなっている。したがって、糸貯留体70からさらに確実に糸Yを吸引することができる。
【0112】
さらに、ローラ71の下端部の表面と巻付補助面74aとは、仮想円周Rに沿ってほぼ連続して延びた面を形成しており、糸分断時に糸貯留体70に巻き付いた上記糸端は、ローラ71の表面の上及び巻付補助面74aのいずれかの上にくるため、当該糸端が空中にある場合よりも確実に糸端を吸引することができる。
【0113】
以上のことをまとめると、第1実施形態では、糸貯留体70に糸Yを巻き付けるための巻付機構、及び、糸貯留体70に巻き付いた糸Yの糸端を吸引して引き出すための引出機構を構成している巻付アーム75が、平面視における糸貯留体70の外周に沿う方向(接線方向)に延びているとともに、開口75bが、直線部75aに対して傾斜し、糸貯留体70の周方向に延びていることで開口面積が内部流路128の面積よりも大きくなっていることによって、糸Yの吸引、つまり、糸Yの引き出し動作を成功しやすくするための引出補助部を兼ねている。
【0114】
また、糸Yの巻付形状を、ほぼ円形にするスロープ部材74も、糸Yの引き出し動作を成功しやすくするための引出補助部を構成している。
【0115】
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。第2実施形態では、図4、図5に示すように、アキュムレータ61(図2参照)に代わってアキュムレータ261が設けられている。アキュムレータ261は、巻付アーム275の形状が巻付アーム75(図2参照)と異なっている点、及び、環状部材201が設けられている点がアキュムレータ61と異なっている。
【0116】
巻付アーム275は、巻付アーム75とは異なり、その先端部が、平面視で糸貯留体70の外周方向とほぼ直交する方向に延びている。また、巻付アーム275の開口275bは、その内部流路228と断面積が同じになっている。
【0117】
環状部材201は、ゴムなどの弾性材料からなる薄板状のものであり、ローラ71の下端部及びスロープ部材74の上端部を取り囲むように配置されており、環状部材201の内周端を、ローラ71の表面及びスロープ部材74の巻付補助面74aに接触させて配置している。あるいは、環状部材201の内周端と、ローラ71及びスロープ部材74との間に、糸Yの径よりも小さい隙間をあけて配置している。ここで、環状部材201がローラ71及びスロープ部材74との間に隙間ができている場合には、環状部材201は、アキュムレータ261の図示しないフレームなどに固定されることとなる。なお、第2実施形態では、環状部材201の全体が弾性材料によって構成されているが、環状部材201は、少なくともその内周端を含む部分が弾性材料によって構成されていればよい。
【0118】
そして、第2実施形態では、ローラ71の表面及びスロープ部材74の巻付補助面74aに接触するように環状部材201が配置されており、ローラ71及びスロープ部材74(巻付部)に巻き付けられて、上方に(貯留部に向かって)移動する糸Yは、環状部材に接触する。このとき、糸Yには第1テンション付与装置41によりテンションが付与されているため、図6(a)に示すように、この糸Yは、弾性材料からなる環状部材201を弾性変形させることにより押しのけて、上方に移動する。
【0119】
一方、糸Yの巻取中に糸Yが分断されたときには、巻付アーム275も停止されるが、巻付アーム275が停止するまでの間に、アキュムレータ261側の糸端が、巻付アーム275により糸貯留体70に案内される。このとき、糸端は、平面視で、ローラ71の表面あるいはスロープ部材74の巻付補助面74aとほぼ直交する方向に糸貯留体70案内される。そのため、当該糸端がローラ71あるいはスロープ部材74の表面に衝突して上方に跳ね上がろうとすることがある。
【0120】
しかしながら、第2実施形態では、上方に跳ね上がろうとする糸端には、テンションが付与されておらず、環状部材201を弾性変形させて押しのけるほどの力はないので、図6(b)に示すように、環状部材201により、糸端が上方に跳ね上がってしまうのが防止され、糸端は、ローラ71の下端部あるいはスロープ部材74の近傍に留められる。これにより、巻付アーム275から確実に糸端を吸引することができる。
【0121】
すなわち、第2実施形態では、巻付アーム75(図2参照)に代わって、環状部材201が、本発明に係る引出補助部を構成している。
【0122】
[第3実施形態]
次に、本発明の好適な第3実施形態について説明する。第3実施形態では、図7に示すように、第2実施形態のアキュムレータ261(図4参照)に代わってアキュムレータ361が設けられている。アキュムレータ361は、スロープ部材74(図4参照)の代わりに、6枚の板部材301が設けられている点、及び、各板部材301に、糸貯留体70に巻き付いた糸Yから糸端を分離するための糸端分離ブラシ302が設けられている点が、アキュムレータ261と異なっている。
【0123】
6枚の板部材301(巻付形状調整部材、板状部材)は、6つのローラ71の間に、平面視で、それぞれ、その面方向が糸貯留体70の径方向と平行なるように配置されている。また、板部材301の外周側の端は、糸貯留体70の径方向に関して、ローラ71の外周端とほぼ同じ位置に位置している。ここで、板部材301は、上下方向(図7の紙面垂直方向)に関しては、少なくとも、巻付アーム275により糸Yが巻き付けられるローラ71の下端部と対向するような長さとなっている。
【0124】
糸端分離ブラシ302は、その先端部302a(毛の部分)が弾性材料からなるブラシであり、上記先端部分が、糸貯留体70の径方向に関して、板部材301よりも外側に突出するように、各板部材301に配置されている。なお、第3実施形態では、6つの板部材301の全てに、それぞれ、糸端分離ブラシ302が設けられているが、一部の板部材301にのみ糸端分離ブラシ302が設けられていてもよい。
【0125】
そして、第3実施形態では、図7に示すように、巻付アーム275により、ローラ71の下端部及び板部材301にまたがるように糸Yが巻き付けられる。巻き付けられた糸Yは、ローラ71の回転によって上方に移動する際に、板部材301から突出した糸端分離ブラシ302の先端部302aに接触する。しかしながら、この糸Yには第1テンション付与装置41によりテンションが付与されているため、図8(a)に示すように、この糸Yは、糸端分離ブラシ302の先端部302aを弾性変形させることにより押しのけて、上方に移動する。
【0126】
一方、糸Yが分断されたときには、糸貯留体70に巻き付いた糸端が糸端分離ブラシ302の先端部に接触するが、糸端には、テンションが付与されておらず、糸端分離ブラシ302の先端部302aを弾性変形させて押しのけるほどの力はない。そのため、図8(b)に示すように、糸端は、糸端分離ブラシ302よりも上方には移動しない。これにより、糸端は、巻き付けられた糸Yと分離されてローラ71又は板部材301の下端部近傍に留まることとなり、巻付アーム275から確実に糸端を吸引することができる。
【0127】
また、板部材301がなく、ローラ71にのみ糸Yが巻き付けられているとした場合には、糸Yの巻付形状が略正六角形となるが、第3実施形態では、ローラ71と板部材301とにまたがって糸Yが巻き付けられるため、巻き付けられた糸Yの巻付形状が、略正十二角形となり、円形に近づく。
【0128】
したがって、糸端が糸貯留体70の周方向におけるどの位置にある場合でも、巻付アーム75と糸端との間の距離が大きくなってしまうことがなく、糸端を確実に吸引することができる。
【0129】
すなわち、第3実施形態では、板部材301、及び、糸端分離ブラシ302が、本発明に係る引出補助部となっている。
【0130】
[第4実施形態]
次に、本発明の好適な第4実施形態について説明する。第4実施形態では、アキュムレータ261(図4参照)に代わって、アキュムレータ461が設けられている。アキュムレータ461は、糸端掻出ブラシ401を備えている点が、アキュムレータ261と異なっている。
【0131】
糸端掻出ブラシ401は、その先端部401a(毛の部分)が弾性材料によって構成されており、図9に示すように、巻付アーム275の巻付時の回転方向(図9の反時計回り方向)の下流側の端面に設けられており、巻付アーム275が回転していない状態では、先端部401aが、ローラ71の下端部あるいはスロープ部材74に接触している。
【0132】
そして、回転軸C1(糸貯留体70における糸Yの巻付中心)を中心に巻付アーム275を回転させて(巻付アーム275と糸貯留体70とを相対回転させて)糸貯留体70に糸Yを巻き付ける際には、巻付アーム275の回転速度がある程度速いので(例えば、3000rpm程度)、図10(a)に示すように、糸端掻出ブラシ401の先端部401aは、巻付アーム275の回転によって生じる風圧によって倒れ、ローラ71及びスロープ部材74から離隔している。これにより、糸端掻出ブラシ401の先端部401aが、巻き付けられた糸Yに接触して糸Yにダメージを与えてしまうのを防止することができる。
【0133】
一方、巻付アーム275を糸貯留体70への糸Yの巻付時と逆方向に回転させて、糸端を吸引する際には、巻付アーム275の回転速度は遅い(例えば50rpm以下)ので、糸端掻出ブラシ401の先端部401aが風圧で倒れることはなく、図10(b)に示すように、ローラ71及びスロープ部材74に接触している。
【0134】
ここで、糸Yが分断されたときに、糸貯留体70に巻き付いた糸Yの糸端は、糸貯留体70に既に巻き付けられた糸Yにくっついた状態となることがあるが、糸端掻出ブラシ401をその先端部401aをローラ71及びスロープ部材74に接触させた状態で巻付アーム275を回転させることにより、糸Yにくっついた糸端を掻き出すことができる。これにより、巻付アーム275から確実に糸端を吸引することができる。
【0135】
さらに、第4実施形態では、巻付アーム275に糸端掻出ブラシ401が設けられているため、糸端掻出ブラシ401によって掻き出された糸端は、巻付アーム275の近傍にくる。したがって、巻付アーム275から確実に糸端を吸引することができる。
【0136】
すなわち、第4実施形態では、糸端掻出ブラシ401が、本発明に係る引出補助部を構成している。
【0137】
また、第4実施形態の場合のように、糸端掻出ブラシ401が設けられた巻付アーム275が糸貯留体70の外周に沿って回転する場合には、巻付アーム275に比較的簡単な構成の糸端掻出ブラシ401を設けることにより、糸貯留体70への糸Yの巻付時には、糸貯留体70から離隔し、糸継前の糸端の引出時には、糸貯留体70に接触する糸端掻出部材を構成することができる。
【0138】
[第5実施形態]
次に、本発明の好適な第5実施形態について説明する。第1〜第4実施形態では、アキュムレータが、糸Yが巻き付けられる6本のローラ71を備えた糸貯留体70(図2など参照)を備えたものであったが、第5実施形態では、図11に示すように、アキュムレータ561が、回転貯留ドラム571、回転貯留ドラムモータ572、糸案内部材573、吹下ノズル574、糸経路形成部材575などを備えたものとなっている。
【0139】
回転貯留ドラム571は、回転軸C2を中心として回転可能なドラムであり、後述するように、回転貯留ドラム571を一方向に回転させると、給糸ボビン21(図1参照)から糸Yが解舒されるとともに、解舒された糸Yが回転貯留ドラム571に巻き付けられることで、回転貯留ドラム571に糸Yが貯留される。すなわち、第5実施形態では、回転貯留ドラム571が、本発明に係る糸貯留体と巻付機構の両方を構成するものとなっている。
【0140】
また、回転貯留ドラム571は、その両端部が、それぞれ、反対側の端部に近づくほどその径が小さくなったテーパ部571a、571bとなっているとともに、テーパ部571aとテーパ部571bとの間の部分が、その径がほぼ一定となったストレート部571cとなっている。
【0141】
さらに、回転貯留ドラム571のストレート部571cの右上端部には、例えば、輪ゴム、Oリングなどのゴムリング581が巻き付けられており、ゴムリング581は、回転貯留ドラム571と一体的に回転する。そして、後述するように回転貯留ドラム571から引き出された糸Yはストレート部571cとゴムリング581との間の隙間を通り、糸ガイド582を経て巻取部6に向けて送られる。このとき、糸Yにはストレート部571cとゴムリング581との間に挟まれた状態でその間を送られるため、糸Yの毛羽が寝かされる。また、糸Yがストレート部571cとゴムリング581との間に挟まれているため、回転貯留ドラム571から解舒されて巻取部6に向けて走行する糸Yにおいてバルーンが発生してしまうのを防止することができる。
【0142】
また、上述したように、回転貯留ドラム571の右上端部がテーパ部571bとなっていることにより、ゴムリング581が回転貯留ドラム571から右上方に抜け落ちてしまうことが防止されている。
【0143】
回転貯留ドラムモータ572(回転機構)は、DCブラシレスモータ、ステッピングモータ、サーボモータなどの位置制御可能なモータであり、回転貯留ドラム571を両方向に回転させる。
【0144】
糸案内部材573は、図11、図12に示すように、内部に内部流路573aが形成された管状部材であって、その先端部が、回転軸C2の方向から見て、回転貯留ドラム571の接線方向に直線状に延びた直線部573bとなっているとともに、直線部573bと反対側の端部において回転貯留ドラム571の径方向に折れ曲がって吹下ノズル574に接続されている。また、直線部573bの先端には開口573cが形成されている。開口573cは、直線部573bに対して傾斜し、且つ、テーパ部571aの周方向に沿って延びている。
【0145】
吹下ノズル574は、糸案内部材573の図中右側に配置されており、糸案内部材573の内部流路573aと接続された糸流路546と、この糸流路546に開口するとともに、糸流路546に対して傾斜して形成される吹下流路547とを有している。
【0146】
吹下流路547には接続パイプ549と接続パイプ550を介して圧力空気源551が接続されており、接続パイプ549と接続パイプ550の間には電磁弁552が設けられている。
【0147】
糸経路形成部材575は、糸経路528を形成するものであり、上糸案内パイプ26の吸引口26bと、吹下ノズル574との間に配置されている。糸経路528は、上糸案内パイプ26の吸引口26bのすぐ上方に位置しているその下端からほぼ真上に延びているとともに、その上端部において、図11の左上方に曲がって、その上端が、吹下ノズル574の糸流路546の右下端部と対向している。
【0148】
そして、電磁弁552を開いて、圧力空気源551の圧力空気が接続パイプ550と接続パイプ549、吹下流路547を順に経由して糸流路546に吐出されると、糸案内部材573の内部流路573a、糸流路546、糸経路528には、回転貯留ドラム571側から上糸案内パイプ26側へ向かう空気流が形成されるようになっている。そして、この空気流によって、回転貯留ドラム571に巻き付けられている糸Yの糸端を吸引して、これとほぼ同時に、回転貯留ドラム571を糸Yの巻付時と逆方向に回転させることにより、吸引した糸端を糸継部8側に引き出すことができるようになっている。すなわち、第5実施形態では、回転貯留ドラム571及び回転貯留ドラムモータ572と、互いに接続された、糸案内部材573、吹下ノズル574、糸経路形成部材575、接続パイプ549、550、圧力空気源551及び電磁弁552とを合わせたものが、本発明に係る引出機構に相当する。
【0149】
また、上記の糸経路形成部材575の下端には、アキュムレータ561に巻き込まれている糸Yの糸端が実際に糸継部8側に引き出されたことを検出可能な引出センサ554が設けられている。
【0150】
そして、第5実施形態では、給糸ボビン21から糸Yを解舒して、解舒した糸Yを巻取ボビン22に巻き取るために、図11に示すように糸Yをセットしてから、回転貯留ドラムモータ572により回転貯留ドラム571を回転させるとともに、巻取ドラム24(図1参照)を回転させる。
【0151】
すると、給糸ボビン21(図1参照)から糸Yが解舒され、解舒された糸Yが、回転貯留ドラム571の回転軸C2の方向(第一端側から第二端側に向かう方向)から見て回転貯留ドラム571の接線方向に案内されて、テーパ部571a(巻付部)に巻き付けられる。テーパ部571aに巻き付けられた糸Yは、テーパ部571aの傾斜面に沿ってストレート部571cに向けて移動し、ストレート部571c(貯留部)に貯留される。これにより、回転貯留ドラム571には、回転軸C2方向(第一端側から第二端側に向かう方向)に沿って、テーパ部571a側の端(第一端)からテーパ部571b側の端(第二端)に向かって糸Yが巻き付けられた状態で、糸Yが貯留される。
【0152】
一方、巻取ボビン22への糸Yの巻取中において、給糸部5と糸貯留部9との間で糸Yが分断されたときには、回転貯留ドラム571の回転を停止させる。このとき、アキュムレータ561側の糸端は、回転貯留ドラム571の回転が停止されるまでの間に回転貯留ドラム571に到達し、テーパ部571aに巻き付く。
【0153】
次に、回転貯留ドラム571を、糸Yの巻付時とは反対方向に低速回転させるとともに、電磁弁552を開くことによって、上述したように、糸案内部材573内部の内部流路573a、糸流路546及び吹下流路547に、回転貯留ドラム571側から上糸案内パイプ26側へ向かう空気流を発生させる。
【0154】
これにより、回転貯留ドラム571(テーパ部571a)に巻き付いていた糸Yの糸端が、開口573cから吸引され、吸引された糸端が、内部流路573a、糸流路546及び吹下流路547を通って、上糸案内パイプ26側に引き出される。そして、引出センサ154により糸端が上糸案内パイプ26側に引き出されたことが検出されたときに、電磁弁552を閉じる。
【0155】
そして、第1実施形態で説明したのと同様にして、上糸案内パイプ26及び下糸案内パイプ25により、それぞれ、回転貯留ドラム571側の糸Yの糸端、及び、ヤーンフィーラ37の周辺に存在する糸Yの糸端をスプライサ装置14にセットし、スプライサ装置14により糸継作業を行う。そして、糸継の完了後、回転貯留ドラム571を回転させて、回転貯留ドラム571への糸Yの巻付を再開する
【0156】
なお、第5実施形態においても、第1実施形態などと同様、糸継を行っている間、巻取ボビン22への糸Yの巻取を停止させず、回転貯留ドラム571に貯留された糸Yを引き出して巻取ボビン22への糸Yの巻取を継続する。
【0157】
そして、以上に説明した第5実施形態では、回転貯留ドラム571に糸Yを巻き付ける際に、糸案内部材573の直線部573bが、回転軸C2の方向から見た回転貯留ドラム571の接線方向に直線状に延びており、糸Yがこの接線方向に案内されるため、第1実施形態と同様、糸Yが分断されたときに、回転貯留ドラム571側の糸端も、糸案内部材573により上記接線方向に案内されることとなる。
【0158】
そのため、回転貯留ドラム571(テーパ部571a)に案内された糸端は、テーパ部571aに衝突してストレート部571c側(図中右上方)に跳ね上がってしまうことがなく、糸案内部材573により案内されるテーパ部571aの近傍、すなわち、糸案内部材573の開口573cから吸引可能な位置に留まっている。したがって、上記糸端を確実に吸引することができる。
【0159】
また、糸案内部材573の開口573cが、直線部573bに対して傾斜し、且つ、回転貯留ドラム571(テーパ部571a)の周方向に沿って延びていることにより、開口573cの開口面積が、内部流路573aの面積よりも大きくなっているとともに、テーパ部571aに近い位置にくることとなり、さらに確実に上記糸端を吸引することができる。
【0160】
すなわち、第5実施形態では、上述したように回転貯留ドラム571に糸Yを巻き付けるための巻付機構、及び、回転貯留ドラム571に巻き付いた糸Yの糸端を吸引して引き出すための引出機構を構成する糸案内部材573が、回転軸C2の方向から見て回転貯留ドラム571の接線方向に延びているとともに、その先端の開口573cがテーパ部571aの周方向に沿って延びていることにより、本発明に係る引出補助部を兼ねている。
【0161】
[第6実施形態]
次に、本発明の好適な第6実施形態について説明する。第6実施形態では、図13に示すように、アキュムレータ561(図11参照)に代わってアキュムレータ661が設けられている。アキュムレータ661は、糸案内部材673の形状が糸案内部材573(図11参照)と異なっている点、及び、環状部材601が設けられている点がアキュムレータ561と異なっている。
【0162】
糸案内部材673は、糸案内部材573(図11参照)とは異なり、途中で折れ曲がっておらず、吹下ノズル574との接続部分から、テーパ部571aの表面と直交する方向にまっすぐに延びている。
【0163】
環状部材601は、環状部材201(図4参照)と同様の弾性材料からなる薄板状の部材であり、テーパ部571aの上端部を取り囲むように配置されている。また、環状部材601の内周端が、テーパ部571aに接触している。あるいは、環状部材601の内周端とテーパ部571aとの間に糸Yの径よりも小さい隙間ができている。なお、環状部材601も、環状部材201(図4参照)と同様、少なくともその内周端を含む部分が弾性材料によって構成されていればよい。
【0164】
そして、第6実施形態においては、第2実施形態の場合と同様、テーパ部571aに巻き付けられた糸Yは、環状部材601を弾性変形させることにより押しのけて、ストレート部571cに向かって移動する。
【0165】
一方、糸Yが分断されたときには、テーパ部571aに案内された糸端は、テーパ部571aの表面と直交する方向に案内されることとなるため、テーパ部571aに衝突してストレート部571c側に跳ね上がろうとすることがある。
【0166】
しかしながら、第6実施形態では、上方に跳ね上がろうとした糸端には、テンションが付与されておらず、環状部材601を弾性変形させて押しのけるほどの力はないので、第2実施形態の場合と同様、環状部材601により、糸端がストレート部571c側に跳ね上がってしまうのが防止される。これにより、糸端がテーパ部571aの近傍に留められ、糸案内部材673から確実に糸端を吸引することができる。すなわち、第6実施形態では、環状部材601が本発明に係る引出補助部となっている。
【0167】
[第7実施形態]
次に、本発明の好適な第7実施形態について説明する。第7実施形態に係るアキュムレータ761は、第6実施形態に係るアキュムレータ661において、環状部材601の代わりに糸端分離ブラシ701が設けられたものである。
【0168】
糸端分離ブラシ701は、その先端部701a(毛の部分)が糸端分離ブラシ302(図7参照)と同様の弾性材料からなり、図14に示すように、テーパ部571aの表面に形成された凹部571d内に配置されていることにより、上記先端部701aが、テーパ部571aの表面から突出している。
【0169】
そして、第7実施形態においては、第3実施形態の場合と同様、テーパ部571aに巻き付けられた糸Yが、糸端分離ブラシ701の先端部を弾性変形させることにより押しのけて、ストレート部571cに向かって移動する。
【0170】
一方、糸Yの巻取中に糸Yが分断されたときには、テーパ部571aに巻き付いた糸端が糸端分離ブラシ701の先端部701aに接触するが、糸端には、テンションが付与されておらず、糸端分離ブラシ701を弾性変形させて押しのけるほどの力はないため、第3実施形態の場合と同様、糸端は、糸端分離ブラシ701よりもストレート部571c側には移動せず、テーパ部571aに留められる。すなわち、第7実施形態では、糸端分離ブラシ701が、本発明に係る引出補助部となっている。
【0171】
[第8実施形態]
次に、本発明の好適な第8実施形態について説明する。第8実施形態に係るアキュムレータ861は、図15に示すように、第6実施形態に係るアキュムレータ661において、環状部材601の代わりに糸端掻出ブラシ801を備えたものである。
【0172】
糸端掻出ブラシ801は、第4実施形態の糸端掻出ブラシ401(図9参照)と同様、その先端部801a(毛の部分)が弾性材料によって構成されたものであり、糸案内部材673に設けられている。
【0173】
ただし、糸端掻出ブラシ801は、糸端掻出ブラシ401とは異なり、図15(b)に矢印で示すように糸案内部材673に沿って両方向に移動可能となっており、これにより、テーパ部571aに対して接離可能となっている。なお、糸端掻出ブラシ801をこのように移動可能としているのは、第4実施形態とは異なり、糸端掻出ブラシ801が設けられた糸案内部材673は自ら回転せず、先端部801aを風圧により倒してテーパ部571aから離隔させることができないからである。
【0174】
そして、第8実施形態では、回転軸C2(回転貯留ドラム571における糸Yの巻付中心)を中心に回転貯留ドラム571を回転させて(糸案内部材573と回転貯留ドラム571に対して相対回転させて)、テーパ部571aに糸Yを巻き付けるときには、糸端掻出ブラシ801を、その先端部がテーパ部571aに接触しない位置に移動させ、テーパ部571aに巻き付いた糸端を引き出すときには、糸端掻出ブラシ801を、その先端部がテーパ部571aに接触する位置に移動させる。
【0175】
これにより、第4実施形態と同様、糸Yの巻付時には、糸端掻出ブラシ801の先端部801aが巻き付けられた糸Yに接触して糸Yにダメージを与えてしまうのを防止することができる。また、糸端を引き出す際には、糸端掻出ブラシ801によりテーパ部571aに巻き付けられた糸Yにくっついた糸端を掻き出すことにより、確実に糸端を吸引することができる。すなわち、第8実施形態では、糸端掻出ブラシ801が、本発明に係る引出補助部に相当する。
【0176】
次に、第1〜第8実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、第1〜第8実施形態と同様の構成については適宜その説明を省略する。
【0177】
一変形例(変形例1)では、図16(a)に示すように、第1実施形態において、巻付アーム75の先端部に位置する直線部75cが、糸貯留体70の径方向に延びた軸Aを中心に回動可能となっており、これにより、直線部75cの向きを変更することができるようになっている。
【0178】
巻付アーム75の先端部が糸貯留体70の径方向に延びている場合に、その先端部に位置する設けられた直線部の向きを変更できないとすると、巻付アーム75を回転させて糸貯留体70に糸Yを巻き付ける際の糸Yの巻付方向が一方向(第1実施形態では図3の反時計回り方向)に限定されてしまう。
【0179】
これに対して、変形例1では、直線部75cの位置を、軸A1を中心に回動させることにより、図16(a)において実線で示す位置(第1実施形態と同様の位置)と、この位置から軸Aを中心に約180°回動させた、図16(a)において二点鎖線で示す位置とで切り替えることにより、糸貯留体70にどちら方向にも糸Yを巻き付けることが可能となる。
【0180】
また、第5実施形態においても、図16(b)に示すように、糸案内部材573の直線部573dを、回転貯留ドラム571の径方向に延びた軸A2を中心に回動可能に構成することで、直線部573dの位置を図中実線で示す位置と、この位置から軸A2を中心に約180°回動させた図中二点鎖線で示す位置との間で切替可能とすることにより、回転貯留ドラム571にどちら方向にも糸Yを巻き付けることができるようにしてもよい(変形例2)。
【0181】
また、第1実施形態では、巻付アーム75の開口75bが、糸貯留体70の周方向に沿って延びていることにより、その開口面積が、内部流路128の面積よりも大きくなっていたが、開口75bは、糸貯留体70の周方向からずれた方向に延びてその断面積が内部流路128の断面積よりも大きくなっていてもよい。さらには、開口75bは、糸貯留体70の径方向に延びていることにより、その開口面積が内部流路128の面積とほぼ同じとなっていてもよい。
【0182】
また、第2実施形態では、環状部材201は、その内周端が、ローラ71及びスロープ部材74に接触して、あるいは、ローラ71及びスロープ部材74との間に糸Yの径よりも小さい隙間ができるように配置されていたが、環状部材201は、その内周端とローラ71及びスロープ部材74との間に、糸Yの径よりも大きい隙間ができるように配置されていてもよい。
【0183】
この場合には、糸端がローラ71やスロープ部材74に近い位置で跳ね上がったときに、糸端が環状部材201とローラ71及びスロープ部材74との間の隙間を通って上方に移動してしまう可能性はあるものの、糸端がローラ71やスロープ部材74からある程度離れた位置で跳ね上がった場合には、環状部材201に接触することで上方に移動してしまうのが防止することができる。
【0184】
同様の観点から、第6実施形態においても、環状部材601が、その内周端とテーパ部571aとの間に糸Yの径よりも大きな隙間ができるように配置されていてもよい。
【0185】
また、第3、第7実施形態では、巻き付けられた糸Yから糸端を分離するために、糸端分離ブラシ302、701が設けられていたが、糸端を分離するための部材は、ブラシであることには限られず、巻き付けられた糸Yによって押しのけることが可能なものであれば、例えば、先端部が弾性材料からなる薄板状になった部材など、別の部材であってもよい。
【0186】
さらには、巻き付けられた糸Yから糸端を分離することが可能な構成であれば、巻き付けられた糸Yによって押しのけることが可能な弾性材料からなる部分を備えたものであることにも限られない。
【0187】
また、第4実施形態では、ローラ71及びスロープ部材74に巻き付けられた糸Yから糸端を掻き出すために糸端掻出ブラシ401が設けられており、糸Yを巻き付けているときには、風圧により糸端掻出ブラシ401の先端部401aが倒れてローラ71及びスロープ部材74に接触しないようになっていたが、これには限られず、糸端掻出ブラシ401が、第8実施形態の糸端掻出ブラシ801と同様、巻付アーム75に沿って移動することで、糸貯留体70に対して接離可能となっていてもよい。
【0188】
さらに、この場合や第8実施形態の場合には、糸端を掻き出すための部材は、ブラシであることには限られず、例えば先端部が薄板状になった部材など、糸端を掻き出すことが可能な別の部材であってもよい。
【0189】
また、第4、第8実施形態では、糸貯留体70及び回転貯留ドラム571への糸Yの巻付時に、糸端掻出ブラシ401、801の先端部401a、801aが、糸貯留体70及び回転貯留ドラム571に接触しないようになっていたが、例えば、糸Yの糸種が、先端部401a、801aが接触してもほとんどダメージを受けないものである場合などには、先端部401a、801aが、常に糸貯留体70及び回転貯留ドラム571に接触していてもよい。
【0190】
また、第1、第2、第4実施形態では、ローラ71の間にスロープ部材74が配置されており、第3実施形態では、ローラ71の間に板部材301が配置されていたが、これとは逆に、第1、第2、第4実施形態において、ローラ71の間に板部材301が配置され、第3実施形態において、ローラ71の間にスロープ部材74が配置されていてもよい。
【0191】
また、ローラ71の間に板部材301が配置される場合においては、ローラ71の間に板部材301が1つだけ配置されることには限られず、ローラ71の間に複数の板部材301が配置されていてもよい。
【0192】
さらには、ローラ71とともに糸Yが巻き付けられることにより、糸Yの巻付形状を仮想円周Rに近づけることができるものであれば、ローラ71の間に、例えば、従動ローラなど、スロープ部材74や板部材301以外の部材が配置されていてもよい。
【0193】
また、6本のローラ71に糸Yを巻き付けることによって糸Yを貯留する第1〜第4実施形態では、引出補助部として、糸Yの巻取形状を円形に近づけるためのスロープ部材74又は板部材301が設けられているのに加えて、直線部75aを有する巻付アーム75、環状部材201、糸端分離ブラシ302、糸端掻出ブラシ401のうちのいずれか1つのみが設けられていたが、これには限られない。
【0194】
例えば、引出補助部として、スロープ部材74及び板部材301のいずれもが設けられておらず、巻付アーム75、環状部材201、糸端分離ブラシ302、糸端掻出ブラシ401のうちのいずれかのみが設けられていてもよい。また、巻付アーム75、環状部材201、糸端分離ブラシ302及び糸端掻出ブラシ401のうちの2つ以上が設けられていてもよい。
【0195】
また、回転貯留ドラム571に糸Yを巻き付けることによって糸Yを貯留する第5〜第8実施形態では、引出補助部として、直線部573bを有する糸案内部材573、環状部材601、糸端分離ブラシ701及び糸端掻出ブラシ801のいずれか1つのみが設けられていたが、これらのうち2つ以上が設けられていてもよい。
【0196】
また、以上では、糸Yを貯留する糸貯留体が、複数のローラ71を備えたものである場合、及び、回転貯留ドラム571を備えたものである場合について説明したが、糸貯留体は、例えば、自らは回転しない略円柱形状の部材など、糸Yを一方向に沿ってその第一端から第二端に向かって巻き付けられた状態で貯留することが可能な別のものであってもよい。
【0197】
また、第1〜第8実施形態では、巻付アーム75、175や、糸案内部材573、673が管状部材となっていたが、これらの部材は、管状であることには限られない。
【0198】
また、第1〜第8実施形態では、糸Yの巻付時に糸Yを案内するための巻付アーム75、175や、糸案内部材573、673を用いて糸端を吸引していたが、これには限られず、巻付アーム75、175や糸案内部材573、673とは別に糸端を吸引するための専用の部材を設けてもよい。
【0199】
また、この場合には、糸Yの巻付時に糸Yが案内される、糸貯留体70の下端部や、テーパ部571aの近傍以外の位置で、糸端を吸引してもよい。なお、この場合には、例えば、引出補助部により、糸端の吸引位置の近傍に糸端を留めるなどすればよい。
【0200】
また、以上では、糸貯留体70や回転貯留ドラム571に巻き付いた糸端を吸引することによって引き出したが、これには限られず、例えば、上記糸端を把持して引き出すなどしてもよい。
【0201】
また、以上では、巻取ボビン22への糸Yの巻取中に糸Yが分断された場合に、糸継部8においてアキュムレータ側の糸端と、給糸ボビン21側の糸端との糸継を行ったが、糸継部8が設けられておらず、オペレータが手動で糸継作業を行うなどしてもよい。
【0202】
また、以上では、給糸ボビン21から解舒した糸Yを糸貯留体に一旦貯留し、糸貯留体に貯留された糸Yを引き出して巻取ボビン22に巻き取る糸巻取装置に本発明を適用した例について説明したが、これには限られず、給糸部から引き出した糸を糸貯留体に一旦貯留し、糸貯留体に貯留された糸を引き出して巻取ボビン22への巻取以外の処理を行う、巻取装置以外の糸貯留引出装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0203】
2 巻取ユニット
5 給糸部
6 巻取部
8 糸継部
70 糸貯留体
71 ローラ
74 スロープ部材
75 巻付アーム
75a 直線部
151 空気圧供給源
201 環状部材
275 巻付アーム
301 板部材
302 ブラシ
401 ブラシ
551 圧力空気源
571 回転貯留ドラム
573b 直線部
573d 直線部
673 糸案内部材
601 環状部材
701 ブラシ
801 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸供給部と、
前記糸供給部の糸を、第一端から第二端に向けて巻き取って貯留する糸貯留体と、
前記糸貯留体に貯留された糸を前記第二端から解舒して処理を行う解舒処理部と、
前記糸供給部から前記糸貯留体への糸の供給が中断され、前記糸貯留体に糸端が巻き取られた場合に、前記糸貯留体に巻き取られた糸端を前記糸貯留体の前記第一端側から引き出す引出機構と、
前記引出機構による前記糸貯留体に巻き取られた糸端の引き出し作業を補助する引出補助機構と、
を備えたことを特徴とする糸貯留引出装置。
【請求項2】
前記給糸部と前記糸貯留体との間に配置されており、前記引出機構により引き出された前記糸貯留体側の糸端と、前記給糸部側の糸端との糸継を行う糸継部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の糸貯留引出装置。
【請求項3】
前記引出機構は、前記糸端を吸引することによって引き出し、
前記引出補助部は、前記糸端を、前記引出機構により吸引可能な位置に留めることを特徴とする請求項1又は2に記載の糸貯留引出装置。
【請求項4】
前記糸貯留体は、
糸が巻き付けられる巻付部と、
前記巻付部の前記第二端側に設けられた、前記巻付部に巻き付けられた糸が移動してきて貯留される貯留部とを備え、
前記引出補助部は、前記糸端を前記巻付部に留め、
前記引出機構は、前記引出補助部により前記巻付部に留められた前記糸端を吸引することを特徴とする請求項3に記載の糸貯留引出装置。
【請求項5】
前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に巻き付ける巻付機構をさらに備え、
前記巻付機構は、前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に案内する案内部材を備え、
前記引出機構が、
前記巻付機構と共通の前記案内部材と、
前記案内部材に、前記糸貯留体側から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、
前記案内部材が、前記巻付機構による糸の巻付時に、前記第一端側から第二端側に向かう方向から見て前記糸貯留体の外周方向に沿って糸を案内するように構成されていることで前記引出補助部を兼ねていることを特徴とする請求項4に記載の糸貯留引出装置。
【請求項6】
前記糸貯留体の巻付部は、前記第一端側から第二端側に向かう方向から見て、円形の巻付外周を有し、
前記案内部材は、前記巻付外周の接線方向に糸を案内することによって、前記第一端側から第二端側に向かう方向から見て前記糸貯留体の外周方向に沿って糸を案内するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の糸貯留引出装置。
【請求項7】
前記案内部材は、前記糸貯留体側の端部において、前記第一端側から前記第二端側に向かう方向から見て前記糸貯留体の外周方向に沿って延びる直線部を有する管状部材であることを特徴とする請求項5又は6に記載の糸貯留引出装置。
【請求項8】
前記引出補助部は、前記糸貯留体の外周を取り囲むように配置されており、前記糸端と接触することで、前記糸端が前記巻付部から前記貯留部に向かう方向に跳ね上がるのを妨げる環状部材であることを特徴とする請求項4に記載の糸貯留引出装置。
【請求項9】
前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に巻き付ける巻付機構をさらに備え、
前記巻付機構は、前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部へ案内する案内部材を備え、
前記引出機構が、
前記巻付機構と共通の前記案内部材と、
前記案内部材に、前記糸貯留体側から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、
前記環状部材は、前記糸貯留体の、前記巻付部よりも前記第二端側の前記貯留部を取り囲むように配置されていることを特徴とする請求項8に記載の糸貯留引出装置。
【請求項10】
前記環状部材は、少なくともその内周端を含む部分が弾性材料によって構成されており、前記糸貯留体に糸が巻き付けられていない状態で、前記内周端が前記糸貯留体に接触している、又は、前記内周端と前記糸貯留体との間に糸の径よりも小さい隙間ができるように配置されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の糸貯留引出装置。
【請求項11】
前記引出補助部は、前記巻付部に巻き付けられて前記貯留部に向かって移動する糸から前記糸端を分離することによって前記糸端を前記巻付部に留める糸端分離部材であることを特徴とする請求項4に記載の糸貯留引出装置。
【請求項12】
前記糸端分離部材は、前記巻付部に設けられており、前記貯留部に向かって移動する前記巻付部に巻き付けられた糸によっては押しのけることができ、且つ、前記分断された糸端によっては押しのけることができない弾性材料からなることを特徴とする請求項11に記載の糸貯留引出装置。
【請求項13】
前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に巻き付ける巻付機構をさらに備え、
前記巻付機構は、前記給糸部から引き出した糸を、前記糸貯留体に案内する管状の案内部材を備え、
前記引出機構が、
前記巻付機構と共通の前記案内部材と、
前記案内部材に前記糸貯留体側から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、
前記案内部材は、前記糸貯留体側の端における開口面積が、前記糸案内部材の内部通路の面積よりも大きくなっていることにより、前記引出補助部を兼ねていることを特徴とする請求項1又は2に記載の糸貯留引出装置。
【請求項14】
前記案内部材は、
前記糸貯留体側の端部において前記第一端側から前記第二端側に向かう方向から見て前記糸貯留体の外周方向に沿って延びる直線部を有する管状部材であり、
前記糸貯留体側の端の開口が、前記直線部に対して傾斜し、且つ、前記糸貯留体の周方向に沿って延びていることを特徴とする請求項13に記載の糸貯留引出装置。
【請求項15】
前記巻付機構は、前記糸貯留体への糸の巻付方向を切替可能に構成されており、
前記案内部材は、前記巻付方向に合わせて、前記直線部の向きが切替可能となっていることを特徴とする請求項7又は14に記載の糸貯留引出装置。
【請求項16】
前記引出補助部は、前記糸貯留体に巻き付いた糸から前記糸端を掻き出す糸端掻出部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の糸貯留引出装置。
【請求項17】
前記給糸部から引き出した糸を前記巻付部に巻き付ける巻付機構をさらに備え、
前記巻付機構は、
前記給糸部から引き出された糸を前記糸貯留体に案内する案内部材と、
前記糸貯留体における糸の巻付中心を中心に、前記案内部材と前記糸貯留体とを相対回転させる回転機構とを備え、
前記引出機構が、
前記巻付機構と共通の前記案内部材及び前記回転機構と、
前記案内部材に前記糸貯留体から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、
前記糸端掻出部材は、前記案内部材に設けられており、前記引出機構による糸の引出時に、前記案内部材に対して相対回転する前記糸貯留体と接触することによって前記糸端を掻き出すことを特徴とする請求項16に記載の糸貯留引出装置。
【請求項18】
前記糸端掻出部材は、糸貯留体への糸の巻付時には、糸貯留体から離隔するように構成されていることを特徴とする、請求項16又は17に記載の糸貯留引出装置。
【請求項19】
前記糸端掻出部材がブラシによって構成されていことを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の糸貯留引出装置。
【請求項20】
前記糸貯留体は、仮想円周上に配列された複数のローラで構成され、
前記複数のローラに糸を案内する案内部材と、
前記仮想円周に沿って前記案内部材を回転させる回転機構とを備え、
前記引出機構が、
前記案内部材及び回転機構と、
前記案内部材に前記糸貯留体側から前記給糸部側に向かう空気流を発生させる空気流発生装置とを備え、
前記引出補助部は、前記複数のローラの少なくとも前記案内部材によって糸が案内される部分の間に配置されており、前記複数のローラとともに糸が巻き付けられることによって、前記一端側から第二端に向かう方向から見た前記糸貯留体への糸の巻付形状を、前記複数のローラにのみ糸を巻き付けたとした場合よりも円形に近づける巻付形状調整部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の糸貯留引出装置。
【請求項21】
前記巻付形状調整部材の糸が巻き付けられる面が、前記複数のローラの間で、前記仮想円周に沿って連続的に延びていることを特徴とする請求項20に記載の糸貯留引出装置。
【請求項22】
前記巻付形状調整部材は、前記複数のローラの間に、前記第一端側から第二端側に向かう方向から見てその面方向が前記糸貯留体の径方向と平行となるようにそれぞれ配置された複数の板状部材であることを特徴とする請求項20に記載の糸貯留引出装置。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載の糸貯留引出装置によって構成されるものであって、
前記解舒処理部は、前記糸貯留体に貯留された糸を解舒してパッケージに巻き取る巻取部であり、
前記給糸部は、紡績された糸が巻かれた給糸ボビンが支持されるボビン支持部であることを特徴とする糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−188185(P2012−188185A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50987(P2011−50987)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】