説明

系統制御システムおよびコンピュータプログラム

【課題】 複数の系統にて供給準備される消費財(たとえば電力)の供給設備に対して合理的な供給を実現するために、当該消費財の需要データを逐次反映させる。
【解決手段】 需要家における需要現場に設置された電力メータから前記消費財の需要データを受信する需要データ受信手段と、 前記供給設備からの供給データを受信する供給データ受信手段と、 過去の需要データおよび供給データを蓄積する蓄積データベースと、 その過去データ、需要データおよび供給データに基づいて合理的な系統制御を実行するための演算を実行する演算手段と、 その演算結果に基づいて前記供給設備に対する制御信号を出力する系統制御手段と、を備えた系統制御システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力線を介して収集する消費財(たとえば電気、ガス、水道)の使用量に関するデータにて供給系統を制御するシステム、より具体的には、外部装置から連続的に供給される消費財(たとえば電気、ガス、水道)の使用量を計量検針し、その検針データを電力線経由で収集し、消費財の供給系統を制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部から連続的に供給される消費財(たとえば電気、ガス、水道)の使用量は、メータの検針データを人海戦術で収集している。収集された検針データを蓄積することによって、たとえば電気であれば、電力の供給系統を制御するためのデータとして用いている。
【0003】
図β2に基づいて説明する。
電力は、火力発電、水力発電、原子力発電、風力発電などの供給設備によって、一般家庭、企業、公共施設などの需要家に対して供給可能なインフラが整備されている。
需要家が消費した電力は、需要家ごとに取り付けられた電力メータを検針することで取得された検針データによって把握される。
【0004】
供給設備と需要家との間には、系統制御システムが存在する。系統制御システムは、供給設備から送信される供給データと、検針データによって蓄積された蓄積データとを用いて、需要家に提供すべき電力量を演算し、供給設備に制御信号を発信している。その制御信号に基づいて、供給設備から需要家に電力が供給されるのである。
【0005】
電力負荷を平準化して電力系統を制御するための技術としては、たとえば特許文献1に開示されている。この技術は、蓄電装置を用いることでピークカット時の電力系統の安定性向上を達成するための技術である。
また、需要家における料金滞納の問題などを、遠隔地から操作するという技術として、たとえば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−14066号公報
【特許文献2】特開2003−153466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術のように蓄電装置を用いるのでは無い場合には、電力は供給側にて発電される発電量と、需要家が使用する使用量とは同じである。したがって、需要家の使用量がリアルタイムに把握できれば、合理的ないし理想的な系統制御が可能である。
【0008】
しかしながら、需要家の使用量をリアルタイムに把握する技術が、これまでは存在しなかったため、「理想的な系統制御」は実現していない。そのため、検針データに基づく過去のデータをデータベースに蓄積するとともに分析し、その分析結果を用いて編み出された複雑な演算によって予想される需要へ対応する、という系統制御にとどまっていた。
演算結果やその演算結果に基づく需要家の検針データは、前記の蓄積データベースに反映されるものの、リアルタイムで需要家の使用量を把握して、合理的な系統制御を実現するには至っていなかった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、需要家が使用している消費財の使用量をできる限りリアルタイムに把握し、把握した使用量に基づく合理的な系統制御技術を実現することである。
【0010】
第一の発明は、需要家が使用している消費財の使用量をできる限りリアルタイムに把握し、把握した使用量に基づく合理的な系統制御システムを提供することを目的とする。
第二の発明は、需要家が使用している消費財の使用量をできる限りリアルタイムに把握し、把握した使用量に基づく合理的なコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(第一の発明)
請求項1に記載の発明は、複数の系統にて供給準備される消費財(たとえば電力)の供給設備に対して合理的な供給を実現するために、当該消費財の需要データを逐次反映させる系統制御システムに係る。
すなわち、 需要家における需要現場に設置された消費財メータ(たとえば電力メータ)から前記消費財の需要データを受信する需要データ受信手段と、 前記供給設備からの供給データを受信する供給データ受信手段と、 過去に受信した需要データおよび供給データを時刻データとともに蓄積している蓄積データベースと、 その蓄積データベースに蓄積されたデータ、前記需要データおよび前記供給データに基づいて合理的な系統制御を実行するための演算を実行する演算手段と、 その演算手段が演算した結果に基づいて前記供給設備に対する制御信号を出力する系統制御手段と、を備えた系統制御システムに係る。
【0012】
(用語説明)
「消費財」とは、たとえば電力、都市ガス、上下水道などである。
「消費財メータ」とは、消費財が電力であれば「電力メータ」であり、消費財がガスであればガスメータである。
【0013】
(作用)
まず、需要家における需要現場に設置された消費財メータから前記消費財の需要データを需要データ受信手段が受信する。 一方、前記供給設備からの供給データを供給データ受信手段が受信する。 また、過去に受信した需要データおよび供給データを時刻データとともに、予め蓄積データベースに蓄積している。
その蓄積データベースに蓄積されたデータ、前記需要データおよび前記供給データに基づいて、合理的な系統制御を実行するための演算を演算手段が実行する。 その演算手段が演算した結果に基づいて、系統制御手段が前記供給設備に対する制御信号を出力する。 これによって、需要データおよび供給データを反映させた系統制御が実現される。
【0014】
(第一の発明のバリエーション1)
前記消費財メータは、通信回線を介して当該消費財の消費量を所定時間間隔ごとに送信可能な通信手段を備えたもの、とすることができる。
【0015】
(用語説明)
この消費財メータは、通信機能を備えている。電力線通信の場合の通信機能を果たす機器は、「トランスポンダ」と称される。
使用する「通信回線」は、一般の電話回線や光ファイバなどでもよいが、電力線通信を利用した技術であれば、消費財の需要データの収集という点では好ましい。「電力線通信技術」としては、たとえば、電圧を変調することによって電力とともに情報を通信する技術(TWACS(登録商標)と呼ばれる両方向自動通信システム)を応用したものである。
【0016】
(第二の発明)
第二の発明は、複数の系統にて供給準備される消費財(たとえば電力)の供給設備に対して合理的な供給を実現するために、当該消費財の需要データを逐次反映させる系統制御を実現するコンピュータプログラムに係る。
すなわち、 需要家における需要現場に設置された消費財メータから前記消費財の需要データを受信する需要データ受信手順と、 前記供給設備からの供給データを受信する供給データ受信手順と、 過去に受信した需要データおよび供給データを時刻データとともに蓄積データベースへ蓄積しているデータ蓄積手順と、 前記蓄積データベースに蓄積されたデータ、前記需要データおよび前記供給データに基づいて合理的な系統制御を実行するための演算を実行する演算手順と、 その演算手順にて演算した結果に基づいて前記供給設備に対する制御信号を出力する系統制御手順と、をコンピュータに実行させることとした系統制御用のコンピュータプログラムである。
【0017】
(バリエーション)
第二の発明に係るコンピュータプログラムは、ネットワークを介してオンラインで提供することもできるし、コンピュータプログラムを記録可能な記録媒体に格納して提供することもできる。記録媒体としては、CD−R、DVD−R、各種メモリ装置などである。
【発明の効果】
【0018】
第一の発明によれば、需要家が使用している消費財の使用量をできる限りリアルタイムに把握し、把握した使用量に基づく合理的な系統制御システムを提供することができた。
第二の発明によれば、需要家が使用している消費財の使用量をできる限りリアルタイムに把握し、把握した使用量に基づく合理的なコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における系統制御システムを示す概念図である。
【図2】本発明に係る実施形態のハードウェア構成を示す概念図である。
【図3】従来の電力線通信のハードウェア構成を示す概念図である。
【図4】本発明に係る実施形態において、上り信号がどのように伝わるかを示す概念図である。
【図5】本発明の実施形態に用いる上り信号のデータ構造を示す概念図である。(A)が比較のために示す標準的なデータ構造、(B)がデータ量を減らしたデータ構造を示している。
【図6】本発明の実施形態に用いる上り信号を作り出す上り信号送信装置の回路図である。(A)が比較のために示す標準的な回路図、(B)が本発明の回路図である。
【図7】本発明の実施形態に用いる上り信号を作り出す上り信号送信装置の電力系統への接続図である。
【図8】上り信号を作り出す回路による出力信号を示す波形図である。(A)が比較のために示す標準的な出力信号、(B)が本発明の出力信号である。
【図9】本発明の実施形態におけるインバウンド信号を示すタイムチャートである。
【図10】図9との比較のために示す標準的なインバウンド信号を示すタイムチャートである。
【図11】従来の系統制御システムを示す概念図である。
【図12】本発明に係る実施形態の伝送手順を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
この実施形態は、消費財として電力を例としており、需要家としては一般家庭、企業、公共施設などを、図1に例示して説明する。
【0021】
(図1)
消費財としての電力の供給設備は、火力発電、水力発電、原子力発電、風力発電などの設備がある。これらの供給設備から、消費財としての電力とは別に、供給データが系統制御システムにおける供給データ受信手段に送信する。
【0022】
一方、消費財の需要家である一般家庭、企業、公共施設などは、図示を省略した変電所、送電線、柱上トランスなどのインフラを介して消費財である電力の供給を受ける(図中の「電力供給」)。そして、消費財の需要データを、電力メータおよびトランスポンダを介して、系統制御システムにおける需要データ受信手段に送信する。
【0023】
系統制御システムは、前述のように、需要データを受信する需要データ受信手段と、 供給設備からの供給データを受信する供給データ受信手段と、 過去に受信した需要データおよび供給データを時刻データとともに蓄積している蓄積データベースと、を備える。
また、蓄積データベースに蓄積されたデータ、前記需要データおよび前記供給データに基づいて合理的な系統制御を実行するための演算を実行する演算手段と、 その演算手段が演算した結果に基づいて前記供給設備に対する制御信号を出力する系統制御手段と、を備える。
【0024】
その蓄積データベースに蓄積されたデータ、前記需要データおよび前記供給データに基づいて、合理的な系統制御を実行するための演算を演算手段が実行する。
演算手段は、例えば、供給データ受信手段により受信されて蓄積データベースに蓄積されている単位時間毎の供給電力量と、需要データ受信手段により受信されて蓄積データベースに蓄積されている単位時間毎の需要電力量との差に基づき、需要電力量が供給電力量を超えることがないような供給電力量を演算する。
その演算手段が演算した結果に基づいて、系統制御手段が前記供給設備に対する制御信号を出力する。
系統制御手段は、例えば、火力、水力、原子力、風力の各発電設備の中から、調整電力量、調整期間に応じて対応可能な最適の発電設備を選択して制御信号(運転指令)を出力する。 これによって、需要データおよび供給データを反映させた系統制御が実現される。
【0025】
トランスポンダを伴う電力メータについての需要データの送信に関しては、以下、図2〜図10、図12を用いて説明する。
【0026】
(図2、図3および図12)
変電所には、制御・送受信ユニット(図中「CRU」と略記される。Control and Receiving Unit)と、下り信号変調ユニット(図中「OMU」と略記される。Outbound Modulation Unit)と、変圧ユニット(図中「MTU」と略記される。Modulation Transformer Unit)と、上り信号検出装置(図中「IPU」と略記される。Inbound Pickup Unit)と、簡易サーバとを備える。図2の簡易サーバは、図1の需要データ受信手段の役割を担い、需要家から需要データを収集して、演算手段に送信する。
供給者に係る変電所と需要家との間には、6600ボルトの電圧を100/200ボルトに落とすための変圧器が設けられている。
【0027】
簡易サーバは、供給者のデータ管理センターのサーバから需要家に対して発信される下り信号(1)を受信する。この下り信号(1)には、図12に示すように簡易サーバが管理するトランスポンダ1〜nのアドレスが含まれている。この下り信号(1)は一般通信網(公衆電話回線または専用線)を介して受信する。
簡易サーバは、受信した下り信号(1) に含まれているトランスポンダ1〜nのアドレスを順次下り信号(2)として制御・送受信ユニット(CRU)に送信し、下り信号変調ユニット(OMU)および変圧ユニット(MTU)を介して、下り信号(3)として電力線を伝播させ、変圧器を介して前述のトランスポンダに送信させる。
【0028】
トランスポンダは、需要家からの情報として電力メータから検針値を分散して事前収集しており、下り信号(3)を受信すると、上り信号(1)として、自己のトランスポンダアドレスと検針値を発信する。この上り信号(1)は、上り信号検出装置(IPU)および制御・送受信ユニット(CRU)を介して、上り信号(2)として簡易サーバの記憶装置に蓄積される。
他のトランスポンダ2〜nに対しても同様に伝送が行われ、簡易サーバの記憶装置にはトランスポンダ1〜nから送信された検針値が蓄積される。
【0029】
簡易サーバには送信制御手段を備えており、この送信制御手段による送信タイミングの命令を経て、需要データ送信手段がトランスポンダ1〜nのアドレスと各検針値とから構成される上り信号(3)を、一般通信網を介してデータ管理センターに送信する。この送信タイミングは、例えば、所定の期間毎(毎月末或いは毎日の定時等)である。
時間の掛かる電力線通信による需要データの収集を分散しておき、一般通信網にてデータ管理センターへ送信することで、ボトルネックを小さくすることができる。
【0030】
比較のために、図3を説明する。図3に示す変電所においては、簡易サーバを備えておらず、上り信号(1)を受信したら、変調ユニット(MTU)および上り信号検出回路(IPU)を介してデータ管理センターに送信している(上り信号(2))。これでは、一般通信網の送信能力を活かしておらず、需要家に係るトランスポンダから変電所までの下り信号(2)の通信速度に依存したデータ通信しか行えなかった。
【0031】
(図4)
続いて、図4に基づいて補足説明する。ここでは、説明簡易化のために上り信号である需要データのみを図示して説明している。図において、需要データ受信手段が図3の上り信号検出装置(IPU)、制御・送受信ユニット(CRU)に対応し、需要データ蓄積手段、送信制御手段および需要データ送信手段が図3の簡易サーバに対応する構成である。
変電所は需要データ中継基地として捉えることができる。また、変電所に備えられた各ハードウェアは、需要データ受信手段、需要データ蓄積手段、送信制御手段、および需要データ送信手段であると、概念的に捉えることができる。
【0032】
需要家の元に設置された電源メータのトランスポンダが、需要データを需要データ中継サーバに送信する。この送信手段からの命令は、例えば所定の期間毎(毎月末或いは毎日の定時等)に需要データ送信手段に出力され、需要データ蓄積手段に蓄積された需要データが送信される。この送信は、変圧器を含めた電力線通信網を介して行われる。
需要データ中継サーバにおいては、需要データ受信手段が需要データを受信し、需要データ蓄積手段に蓄積する。そして、送信制御手段からの命令を受けて、需要データ送信手段がデータ管理センターに送信する。この送信は、一般通信網を使って行うことができるので、電力線通信網よりも遙かに通信速度を速めることができる。例えば、8時間分の需要データを収集する指令をデータ管理センターから需要データ中継サーバに送信し、需要データ中継サーバは4時間かけて電力線通信網を介した通信にてトランスポンダから需要データを収集する。その後、需要データ中継サーバは数分で8時間分の需要データをデータ管理センターに送信する。このように大量のデータ収集を一括処理することにより、通信速度を速めることができる。
【0033】
(図5)
図5において、(A)には、上り信号によって送信される標準的なデータ構造を示す。また(B)においては、上り信号によって送信されるデータを少なくするために採用するデータ構造である。
標準的なデータ構造においては、30分ごとに需要家に設置されている電力メータの電力使用量を「30分値」として、7桁の数値を用いる。
しかし、(B)に示すデータ構造では、最初のデータは需要家に設置されている電力メータの電力使用量「30分値」として7桁の数値を用い、残りの5つのデータはこの電力使用量からの30分ごとの増分「増分−1」〜「増分−5」として3桁の数値を用いる。これによって、上り信号によって送信すべき情報量の総量を抑えることができ、通信に要するトータル時間を減らすことができる。
【0034】
(上り信号送信装置)
図6から図10を用いて、上り信号送信装置について説明する。
図6には、本発明の実施形態に用いる上り信号を作り出す回路図を(B)に示す。(A)は、比較のために示す標準的な回路図である。また、図7は電力系統への接続図である。
本実施形態に係る電力メータに設けられているトランスポンダは、変電所(需要データ中継サーバ)に対して上り信号を送信する上り信号送信装置30を備えている。
この上り信号送信装置30は、図7に示すように需要家に電力を供給する柱上変圧器の二次側巻線間に接続され、柱上変圧器の漏れインピーダンスを介して二次側巻線による交流電源37の交流電圧が印加される構成である。
そして、上り信号送信装置30のスイッチ(サイリスタ)をオン/オフ制御し、抵抗Rにより巻線間の抵抗を変化させることにより上り信号を電力線に重畳させて需要データ中継サーバに送信するように構成されている。
【0035】
この上り信号送信装置30は、交流の正電圧側でゲート機能が働く第1の正電圧側動作サイリスタ31および交流の負電圧側でゲート機能が働く第1の負電圧側動作サイリスタ32を備えた第1の上り信号重畳回路33と、交流の正電圧側でゲート機能が働く第2の正電圧側動作サイリスタ34および交流の負電圧側でゲート機能が働く第2の負電圧側動作サイリスタ35を備えた第2の上り信号重畳回路36と、を有している。
【0036】
第1の上り信号重畳回路33は抵抗Rを介して、また第2の上り信号重畳回路36は抵抗Rn(一例として上記抵抗Rの1/2の抵抗値)を介して、当該各上り信号重畳回路33、36が互いに並列となるように交流電源37に接続されている。
ここで、抵抗Rnの抵抗値を抵抗Rの1/2とするのは、サイリスタ34、35がオンとなる時の交流電圧の電圧値がゼロポイントに近くなるため、並列抵抗値を小さくして充分な信号レベルを確保するためである。充分な信号レベルを確保できるのであれば、抵抗Rnの抵抗値は、抵抗Rの1/2に限らなくても良い。
【0037】
各上り信号重畳回路33、36の各サイリスタ31,32および各サイリスタ34,35の各ゲートGは、それぞれ上り信号供給回路に接続されている。このため、各上り信号重畳回路33、36の各サイリスタ31,32および各サイリスタ34,35は、上り信号に基づいてオン制御されることとなる。そして、この上り信号送信装置30においては、以下に説明するように上り信号の一つの重畳ポイント(交流電圧値が零となるポイント近傍(=零クロスポイント))に2パルス分の上り信号を重畳することが可能となっている。
【0038】
図9は、上り信号の重畳ポイント、および各上り信号重畳回路33、36の各サイリスタ31,32および各サイリスタ34,35のオン/オフのタイミング等を示すタイムチャートである。
図9(a)は、商用交流電源電圧の零クロスポイントと、この零クロスポイント近傍に重畳される上り信号(電流パルス)を示すタイムチャート、図9(b)は、上り信号供給回路から各上り信号重畳回路33、36の各サイリスタ31,32、34,35の各ゲートGに供給される上り信号(サイリスタのオン制御信号)を示すタイムチャートである。
また、図9(c)は、上り信号重畳回路33、36のサイリスタ31、32のオン/オフ時間を示すタイムチャートであり、図9(d)は、上り信号重畳回路33、36のサイリスタ34、35のオン/オフ時間を示すタイムチャートである。
【0039】
まず、トランスポンダの上り信号送信装置30は、図9(a)の時刻t1〜時刻t13に示す商用交流電源電圧の4周期を1サイクルとし、この4周期内における零クロスポイント近傍に上り信号(電流パルス)を重畳して変電所側に送信するようになっている。
具体的には、例えば50Hzの商用交流電源電圧は所定の時間毎に周期的に電圧値が0Vとなる。制御回路は、タイマにより計時される時刻情報に基づいて、この商用交流電源電圧の電圧値が0Vとなるタイミングを計っている。
なお、時刻t1〜時刻t13は、例えば、交流電源電圧の立ち上がりにある零クロスポイントを検出し、検出した零クロスポイントから次の立ち上がり零クロスポイントを予測し、その10度〜30度前に設定される。
図9(b)に示すように、上記1サイクルの商用交流電源電圧の第1周期目における正電圧波形の立ち下がりのタイミング、商用交流電源電圧の第2周期目における負電圧波形の立ち上がりのタイミング、商用交流電源電圧の第3周期目における正プラス電圧波形の立ち下がりのタイミング、および商用交流電源電圧の第4周期目における負電圧波形の立ち上がりのタイミングで、上記いずれかのサイリスタ31、32、34、35を選択的にオン動作させる。
【0040】
すなわち、上述のように第1の上り信号重畳回路33の第1の正電圧側動作サイリスタ31、および第2の上り信号重畳回路36の第2の正電圧側動作サイリスタ34は、それぞれ交流電圧の正電圧側でゲート機能が働くようになっている。これに対して、第1の上り信号重畳回路33の第1の負電圧側動作サイリスタ32、および第2の上り信号重畳回路36の第2の負電圧側動作サイリスタ35は、それぞれ交流電圧の負電圧側でゲート機能が働くようになっている。
【0041】
トランスポンダに設けられた制御回路(図示せず)は、図9(b)に示す商用交流電源電圧の第1周期目および第3周期目における正電圧波形の立ち下がりのタイミングにおいて、以下のような信号を形成する。すなわち、該商用交流電源電圧が0Vとなる時刻t4よりも所定時間前の時刻t2から該商用交流電源電圧が0Vとなる時刻t4までの間、および該商用交流電源電圧が0Vとなる時刻t10よりも所定時間前の時刻t8から該商用交流電源電圧が0Vとなる時刻t10までの間に、送信する上り信号が「1」の場合はオン制御信号を形成する。また、送信する上り信号が「0」の場合はオン制御信号を形成しない。そして、このオン制御信号を第1の正電圧側動作サイリスタ31のゲートGに供給する。
【0042】
また、制御回路は、図9(b)に示す商用交流電源電圧の第1周期目および第3周期目における正電圧波形の立ち下がりのタイミングにおいて、以下のような信号を形成する。すなわち、上記第1の正電圧側動作サイリスタ31のゲートGに供給するオン制御信号を形成した時刻から所定の時間的間隔を空けて略連続的に、送信する上り信号が「1」の場合は正電圧のオン制御信号を形成し、送信する上り信号が「0」の場合はオン制御信号を形成しない。このオン制御信号を第2の正電圧側動作サイリスタ34のゲートGに供給する。
【0043】
同様に、制御回路は、図9(b)に示す商用交流電源電圧の第2周期目および第4周期目における負電圧波形の立ち上がりのタイミングにおいて、以下のような信号を形成する。すなわち、該商用交流電源電圧が0Vとなる時刻t7よりも所定時間前の時刻t5から該商用交流電源電圧が0Vとなる時刻t7までの間、および該商用交流電源電圧が0Vとなる時刻t13よりも所定時間前の時刻t11から該商用交流電源電圧が0Vとなる時刻t13までの間に、送信する上り信号が「1」の場合はオン制御信号を形成し、送信する上り信号が「0」の場合はオン制御信号を形成しない。このオン制御信号を第1の負電圧側動作サイリスタ32のゲートGに供給する。
【0044】
また、制御回路は、図9(b)に示す商用交流電源電圧の第2周期目および第4周期目における負電圧波形の立ち上がりのタイミングにおいて、以下のような信号を形成する。すなわち、上記第1の負電圧側動作サイリスタ32のゲートGに供給するオン制御信号を形成した時刻から所定の時間的間隔を空けて略連続的に、送信する上り信号が「1」の場合はオン制御信号を形成し、送信する上り信号が「0」の場合はオン制御信号を形成しない。このオン制御信号を第2の負電圧側動作サイリスタ35のゲートGに供給する。
【0045】
第1の上り信号重畳回路33の第1の正電圧側動作サイリスタ31は、「1」の上り信号を送信する際に、ゲートGにオン制御信号供給されたタイミングでオン動作し、アノードA−カソードK間に交流電源37からの交流電流が流れ始める。この第1の正電圧側動作サイリスタ31は、図9(c)の時刻t2〜時刻t4、および時刻t8〜時刻t10に示すようにアノードA−カソードK間を流れる交流電流の電流量が零となるまでの間オン動作する。
【0046】
一方、このトランスポンダの上り信号送信装置30の場合、上述のように上記第1の正電圧側動作サイリスタ31のゲートGにオン制御信号を形成した時刻から所定の時間的間隔を空けて略連続的に、上記第2の上り信号重畳回路36の第2の正電圧側動作サイリスタ34のゲートに対して、送信する上り信号が「1」の場合はオン制御信号が供給され、また、送信する上り信号が「0」の場合はオン制御信号が供給されないようになっている。
【0047】
このため、「1」の上り信号を送信すべく、第2の正電圧側動作サイリスタ34のゲートGに対して、オン制御信号が供給された場合には、このオン制御信号が供給されたタイミングで当該第2の正電圧側動作サイリスタ34がオン動作し、アノードA−カソードK間に交流電源37からの交流電流が流れ始める。この第2の正電圧側動作サイリスタ34は、図9(d)の時刻t3〜時刻t4、および時刻t9〜時刻t10に示すようにアノードA−カソードK間を流れる交流電流の電流量が零となるまでの間オン動作する。
【0048】
これにより、第1の上り信号重畳回路33の第1の正電圧側動作サイリスタ31がオン動作することでアノードA−カソードK間に交流電源37からの交流電流が流れ始め、この第1の正電圧側動作サイリスタ31のアノードA−カソードK間に流れる交流電流の電流量が零となる前に、第2の上り信号重畳回路36の第2の正電圧側動作サイリスタ34がオン動作してアノードA−カソードK間に交流電源37からの交流電流が流れることとなる。
【0049】
したがって、上記第1の正電圧側動作サイリスタ31、および第2の正電圧側動作サイリスタ34を上述のように略連続的にオン制御した場合には、図9(a)の時刻t2〜t4、および時刻t8〜t10に示すように、いわば正方向に2つ山のある波形の上り信号を形成して、商用交流電源電圧に重畳することができる。上記上り信号の一つの山は1ビットの上り信号に相当するため、当該トランスポンダの上り信号送信装置30の場合、従来、1ビットの上り信号を重畳していた区間に、2ビットの上り信号を重畳することができ、従来と比較して2倍のデータ量の上り信号を送信可能とすることができる。
すなわち、4つの上り信号がゼロクロスポイントのどこに含まれているかによって「0」、「1」を判断して1ビットの信号送信を行う場合、従来は零クロスポイント近傍で送信される上り信号が1つであったため1ビットの信号送信に4周期が必要であったが、本発明では、上り信号が2つであるので1ビットの信号送信は2周期に短縮することができる。
【0050】
以上の説明は正電圧側動作サイリスタ31、34の動作であったが、負電圧側動作サイリスタ32、35の動作も同様である。
すなわち、第1の上り信号重畳回路33の第1の負電圧側動作サイリスタ32は、「1」の上り信号を送信する際に、ゲートGにオン制御信号が供給されたタイミングでオン動作し、アノードA−カソードK間に交流電源37からの交流電流が流れ始める。この第1の負電圧側動作サイリスタ32は、図9(c)の時刻t5〜時刻t7、および時刻t11〜時刻t13に示すようにアノードA−カソードK間を流れる交流電流の電流量が零となるまでの間オン動作する。
【0051】
一方、このトランスポンダの上り信号送信装置30の場合、上述のように上記第1の負電圧側動作サイリスタ32のゲートGにオン制御信号を形成した時刻から所定の時間的間隔を空けて略連続的に、上記第2の上り信号重畳回路36の第2の負電圧側動作サイリスタ35のゲートに対して、送信する上り信号が「1」の場合はオン制御信号が供給され、また、送信する上り信号が「0」の場合はオン制御信号が供給されないようになっている。
【0052】
このため、「1」の上り信号を送信すべく、第2の負電圧側動作サイリスタ35のゲートGに対して、オン制御信号が供給された場合には、このオン制御信号が供給されたタイミングで当該第2の負電圧側動作サイリスタ35がオン動作し、アノードA−カソードK間に交流電源37からの交流電流が流れ始める。この第2の負電圧側動作サイリスタ35は、図9(d)の時刻t5〜時刻t7、および時刻t11〜時刻t13に示すようにアノードA−カソードK間を流れる交流電流の電流量が零となるまでの間オン動作する。
【0053】
これにより、第1の上り信号重畳回路33の第1の負電圧側動作サイリスタ32がオン動作することでアノードA−カソードK間に交流電源37からの交流電流が流れ始め、この第1の負電圧側動作サイリスタ32のアノードA−カソードK間に流れる交流電流の電流量が零となる前に、第2の上り信号重畳回路36の第2の負電圧側動作サイリスタ35がオン動作してアノードA−カソードK間に交流電源37からの交流電流が流れることとなる。
【0054】
以上のようなことから、上記第1の負電圧側動作サイリスタ32、および第2の負電圧側動作サイリスタ35を上述のように略連続的にオン制御した場合には、図9(a)の時刻t5〜t7、時刻t11〜t13、および図8(B)に示すように、いわば負方向に2つ山のある波形の上り信号を形成して、商用交流電源電圧に重畳することができる。そして、上記上り信号の一つの山は1ビットの上り信号に相当するため、当該トランスポンダの上り信号送信装置30の場合、従来、1ビットの上り信号を重畳していた区間に、2ビットの上り信号を重畳することができ、従来と比較して2倍のデータ量の上り信号を送信可能とすることができる。
系統制御システムは得られた需要データ、供給データおよび、入力されている系統設備データを用いて、演算手段にて最適潮流計算を行い、最も効率の良い電力供給状態を算出する。その供給状態に沿うよう、系統制御手段から系統設備(発・送・変・配電設備)へ指令を送信し、各系統設備は指令に応じた状態に操作される。また、日常の系統運用からデータを蓄積して系統設備のボトルネックを割り出し、最適な設備投資となる系統設備計画へ反映する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願発明は、電力、ガスまたは水道の供給サービス業、電力、ガスまたは水道のメータ製造業、電力、ガスまたは水道のデータサービス(ソフトウェアの作成やメンテナンスを含む)業などにおいて、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0056】
30 上り信号送信装置
31、32、34、35 サイリスタ
33 第一の上り信号重畳回路
36 第二の上り信号重畳回路
37 交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の系統にて供給準備される消費財の供給設備に対して合理的な供給を実現するために、当該消費財の需要データを逐次反映させる系統制御システムであって、
需要家における需要現場に設置された消費財メータから前記消費財の需要データを受信する需要データ受信手段と、
前記供給設備からの供給データを受信する供給データ受信手段と、
過去に受信した需要データおよび供給データを時刻データとともに蓄積している蓄積データベースと、
その蓄積データベースに蓄積されたデータ、前記需要データおよび前記供給データに基づいて合理的な系統制御を実行するための演算を実行する演算手段と、
その演算手段が演算した結果に基づいて前記供給設備に対する制御信号を出力する系統制御手段と、を備えた系統制御システム。
【請求項2】
前記消費財メータは、通信回線を介して当該消費財の消費量を所定時間間隔ごとに送信可能な通信手段を備えた請求項1に記載の系統制御システム。
【請求項3】
複数の系統にて供給準備される消費財の供給設備に対して合理的な供給を実現するために、当該消費財の需要データを逐次反映させる系統制御を実現するコンピュータプログラムであって、
需要家における需要現場に設置された消費財メータから前記消費財の需要データを受信する需要データ受信手順と、
前記供給設備からの供給データを受信する供給データ受信手順と、
過去に受信した需要データおよび供給データを時刻データとともに蓄積データベースへ蓄積しているデータ蓄積手順と、
前記蓄積データベースに蓄積されたデータ、前記需要データおよび前記供給データに基づいて合理的な系統制御を実行するための演算を実行する演算手順と、
その演算手順にて演算した結果に基づいて前記供給設備に対する制御信号を出力する系統制御手順と、をコンピュータに実行させることとした系統制御用のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−217470(P2011−217470A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81580(P2010−81580)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(309042071)東光東芝メーターシステムズ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】