説明

納豆を用いた惣菜及びこれを具材として含んでなるおにぎり又は弁当

【課題】
おにぎりやお弁当の具材として使用できる納豆を用いた惣菜と、当該納豆を用いた惣菜を具材として含んでなるおにぎり又は弁当を提案する。
【解決手段】
納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合した納豆処理物、または、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量が2〜30mlの範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合して得た納豆処理物からなる納豆を用いた惣菜。納豆処理物は、その食塩含量が1.0%以上になるように調製されていることを特徴とする請求項1記載の納豆を用いた惣菜。前記の納豆を用いた惣菜を具材として含んでなるおにぎり又は弁当。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆を用いた惣菜及び当該惣菜を具材として含んでなるおにぎり又は弁当に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の伝統的な大豆発酵食品である納豆は、大豆由来の栄養が豊富で、納豆菌の発酵により数々の生理的に有用な機能が明らかにされてきている。
【0003】
納豆は、古来より日本の食卓に欠かせないほど食べられてきていて、その主たる喫食形態は、米飯と共に食べるのが一般的である。
【0004】
しかしながら、納豆製造に用いられる納豆菌は、納豆製造後も非常に高い水準で残存し、しかも熱に対して安定な胞子を形成する。そのため、常温で扱われることの多いおにぎりやお弁当などの具材として納豆を使用した場合、納豆自身の過熟成によるアンモニア臭の発生だけでなく、納豆に接する米飯や他のおかずが納豆菌の作用により変質し、異臭や腐敗臭を発生するようになってしまう。
【0005】
また糸引きがあるためおにぎりなどの製造時には作業性が悪く、敬遠されてしまうのが常である。
【0006】
以上のような欠点を補うため冷凍した納豆を使うことも考えられるが、冷凍した納豆であっても、常温で扱われることの多いおにぎりやお弁当などの具材として使用されると、表面は解凍されやすく、お互いにひっつき易く、糸を引くため、製造時にはやはり問題を起こしやすい。
【特許文献1】実開平1−98585号公報
【特許文献2】実開平2−107988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような理由から、伝統的な大豆発酵食品であり、大豆由来の栄養が豊富で、納豆菌の発酵による数々の生理的に有用な機能を発揮でき、米飯と共に食されるのが一般的でありながら、おにぎりやお弁当の具材として用いられる納豆を用いた惣菜は、今まで提案されていなかった。
【0008】
本発明の課題は、納豆の粘りと糸引きが作業性を著しく低下させ、また納豆に接する米飯や他のおかずが変質してしまう問題点を解決し、誰でもが安心しておにぎりやお弁当の具材として使用できる納豆を用いた惣菜と、その納豆を用いた惣菜を具材として含んでなるおにぎり又は弁当を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、この発明が提案する納豆を用いた惣菜は、納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合した納豆処理物、または、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量が2〜30ml(ミリリットル)の範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合して得た納豆処理物からなるものである。
【0010】
ここで、食用有機酸としては、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸などのように食品への使用・添加が認められている有機酸を使用することができ、この食品への使用・添加が認められている有機酸を一種類、あるいは複数種類組み合わせて前記の食用有機酸として使用することができる。
【0011】
また、前記の調味料としては、食品の調味に用いられるものであれば、液体状、ゲル状、ゾル状、個体状(例えば、粉末状、顆粒状)のいずれのものでも使用可能であり、例えば、果汁、酢、醤油、味噌、ソース、調味液のいずれかを用いることができる。これに前記の食用有機酸を含ませて使用するものである。
【0012】
本発明者らの実験によれば、納豆はそのままでは糸引きが強いため、他の材料との混合作業が困難であるが、納豆に前記の食用有機酸、又は、前記の食用有機酸を含む調味料、あるいはこれらの双方を混合することにより、糸引きが弱まり、撹拌・混合が容易になる。
【0013】
前記の食用有機酸や、前記食用有機酸を含有する調味料、あるいはこれらの双方を添加する量は、多い方が糸切れも良くなるので好ましいが、逆に、あまり多いと添加・混合後の納豆処理物に酸味を感じるようになってしまい、好ましくない。
【0014】
かかる観点から、納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合すると、添加・混合後の納豆処理物の味に極端な酸味を付与することなく、納豆を用いた惣菜の混合作業に支障となる納豆の糸切れを弱めることが出来ることを見出した。
【0015】
前記の食用有機酸に限らず、前記の食用有機酸を含む調味料、あるいは前記の食用有機酸を含む調味料と前記の食用有機酸との双方を納豆に添加・混合しても、糸引きを弱め、納豆を用いた惣菜として容易に撹拌・混合できるようになる。このように、前記の食用有機酸を含む調味料、あるいは前記の食用有機酸を含む調味料と前記の食用有機酸との双方を納豆に添加・混合する場合、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量(滴定酸度)が2〜30ml(ミリリットル)の範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合すると、添加・混合後の納豆処理物の味に極端な酸味を付与することなく、納豆を用いた惣菜の混合作業に支障となる納豆の糸切れを弱めることが出来た。
【0016】
なお、発明者等の実験によれば、0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量(滴定酸度)は2〜30ml(ミリリットル)の範囲に入っていた。
【0017】
発明者等の実験によれば、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合して納豆処理物を準備する場合、添加・混合後の納豆処理物の味に極端な酸味を付与することなく、納豆を用いた惣菜の混合作業に支障となる納豆の糸切れを弱めるという観点からより好ましい滴定酸度は4〜15ml(ミリリットル)であった。
【0018】
前記本発明の納豆を用いた惣菜を、おにぎりや弁当の具材に使用した場合、糸引きが少ないため製造作業性が著しく良く、納豆菌飛散、作業場汚染の心配が少なくなる。
【0019】
なお、前記本発明の納豆を用いた惣菜においては、前記の納豆処理物が、食塩含有量1.0%以上になるように調製されていることが望ましい。
【0020】
前記の納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合した納豆処理物や、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量が2〜30mlの範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合して得た納豆処理物は、このまま惣菜やおにぎりの具材、弁当の具材として使用してもよいが、この場合、納豆菌の作用により、納豆に接する米飯や他のおかずが変質するという問題が生じ得る。
【0021】
そこで、前記の納豆処理物が食塩含有量1.0%以上になるように調製されてなる納豆を用いた惣菜とすることにより、食塩含有量調整後の具材に含まれる塩分により具材内部の納豆菌の生育が抑えられ、米飯や他のおかずの変質が防止できる。
【0022】
なお、このように、食塩含有量1.0%以上という数値は、納豆菌の生育を抑えるという観点から望ましいものである。
【0023】
納豆処理物をその食塩含有量が1.0%以上になるように調製するには、納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合した納豆処理物や、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量が2〜30mlの範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合して得た納豆処理物に対して、更に、調味料を添加、混合する手法などを採用できる。
【0024】
前記本発明の納豆を用いた惣菜を、おにぎりや弁当の具材に使用した場合、糸引きが少ないため製造作業性が著しく良く、納豆菌飛散、作業場汚染の心配が少なくなるだけでなく、食塩含有量調整後の具材に含まれる塩分により具材内部の納豆菌の生育が抑えられ、納豆菌の作用により、納豆に接する米飯や他のおかずが変質するという問題を未然に防止することが可能になる。また、惣菜の内部には生理的に有用な機能を持つ納豆菌が生きたまま残ることになる。
【0025】
次に、前記課題を解決するため、この発明が提案する他の納豆を用いた惣菜は、納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製したものを成形し、油調してなるものである。
【0026】
ここで賦形材は、つなぎとして用いられるものであり、食品分野においてつなぎとして用いられる食材であれば種々のものを使用することができる。例えば、豆腐、片栗粉、澱粉、α化澱粉、おから等、を使用することができる。
【0027】
これらの賦形材を納豆と混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製した後に、例えば、丸、三角、俵型などの所望の形に成形し、油調(天ぷらのように、食用油で揚げる)して、本発明の納豆を用いた惣菜にすることができる。
【0028】
食塩含量が1.0%以上になるようにしたのは、食塩含有量調整後の具材に含まれる塩分により具材内部の納豆菌の生育を抑え、前記本発明の納豆を用いた惣菜に接する米飯や他のおかずの変質を防止するためである。
【0029】
すなわち、食塩含量を1.0%以上にすることにより、前記本発明の納豆を用いた惣菜を米飯の中に埋め込んでおにぎりの具材にした場合や、弁当の具材にした場合であっても、納豆菌の菌数の経時変化はほとんど生じない。また、おにぎりの米飯や、弁当における他の具材や米飯に接触すること等に起因して納豆菌が生育することがほとんどなく、前記本発明の納豆を用いた惣菜の内部に、生理的に有用な機能を持つ納豆菌が生きたまま残ることができる。
【0030】
なお、納豆を前述した賦形材と混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製する場合、合わせて、おにぎりや弁当の具材に使用される種々の食品素材を添加、混合することが可能である。すなわち、本発明において、納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製するとは、おにぎりや弁当の具材に使用される種々の食品素材もが納豆と賦形材とに添加、混合される場合には、納豆と賦形材に、更に、これらの種々の食品素材もが添加、混合されたものの食塩含量が1.0%以上になるように調製することをいう。
【0031】
いずれにしても、前記のように食塩含量を1.0%以上になるように調製することにより、具材内部の納豆菌の生育を抑え、前記本発明の納豆を用いた惣菜に接する米飯や他のおかずの変質を防止できる。
【0032】
また、前記のように油調する(天ぷらのように、食用油で揚げる)ことにより、具材表面の納豆菌菌数が減少するので、前記本発明の納豆を用いた惣菜に接する米飯や他のおかずの変質を防止できる。
【0033】
すなわち、油調する(天ぷらのように、食用油で揚げる)ことにより、具材表面の納豆菌菌数を減少させると共に、食塩含有量調整後の具材に含まれる塩分により具材内部の納豆菌の生育が抑えられ、これによって、米飯や他のおかずの変質をより効果的に防止でき、一方、前記本発明の納豆を用いた惣菜の内部に、生理的に有用な機能を持つ納豆菌を生きたまま残すことができる。
【0034】
なお、納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製し、これを成形したものの表面、又は、前記成形したものを油調した後の表面に衣をつけて油調して本発明の納豆を用いた惣菜にすることもできる。
【0035】
納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製し、これを成形したものの表面に衣をつけて油調することにより、前述した油調によって具材表面の納豆菌菌数を減少させ、本発明の納豆を用いた惣菜に接する米飯や他のおかずの変質を防止できる効果をより優れたものにすることができる。
【0036】
また、納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製し、これを成形したものを油調した後の表面に衣をつけて油調することにより、前述した油調によって具材表面の納豆菌菌数を減少させ、本発明の納豆を用いた惣菜に接する米飯や他のおかずの変質を防止できる効果を更に優れたものにすることができる。
【0037】
これに、前述したように、納豆に賦形材を加えて混合し、当該混合物の食塩含量が1.0%以上になるように調製していることにより、具材内部の納豆菌の生育が抑えられる効果が加わるので、本発明の納豆を用いた惣菜に接する米飯や他のおかずの変質を一層効果的に防止できる。
【0038】
前記において、衣は、天ぷらのように具材を油調(油で揚げる)する料理に一般に用いられるものであり、例えば、天ぷら粉(小麦粉を含んでなる天ぷら粉であって、一般に使用されるように、小麦粉に、澱粉、卵白粉、ベーキングパウダーなどを添加、混合して調製したもの)に対して重量で1〜3倍の量の水分を加えて調製した衣などを用いることができる。
【0039】
なお、前記において、納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製するにあたって、賦形材と混合される納豆として、納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合した納豆処理物、または、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量が2〜30mlの範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合した納豆処理物を用いることができる。
【0040】
前述したように、納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合する、または、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量(滴定酸度)が2〜30mlの範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合することにより、納豆の糸引きを弱め、撹拌・混合を容易にすることができる一方で、これらを添加・混合した後の納豆処理物から特に強い酸味を感じることがないようにできる。
【0041】
そこで、前記のように、納豆に、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸が添加・混合された納豆処理物とした後に、これに賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製するようにすれば、糸引きが少ないため製造作業性が著しく良く、納豆菌が飛散するおそれや、作業場が汚染されるおそれを小さくすることができる。
【0042】
本発明の納豆を用いた惣菜は、前述した各工程に従って製造されるものである。
【0043】
また、前述した本発明の納豆を用いた惣菜を、おにぎりや弁当の具材として使用することにより、本発明の納豆を用いた惣菜を具材として含んでなるおにぎり又は弁当にすることができる。
【0044】
これによって、糸引きが少ないため製造作業性が著しく良く、納豆菌飛散、作業場汚染のおそれを防いで、納豆を用いた惣菜を具材として含んでなるおにぎり又は弁当を製造することができる。
【0045】
また、米飯や他のおかずを変質させることなく、内部に、生理的に有用な機能を持つ納豆菌を生きたまま残している納豆を用いた惣菜を具材に含んでいるおにぎりや弁当を提供することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合した納豆処理物、または、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量(滴定酸度)が2〜30mlの範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合した納豆処理物からなる納豆を用いた惣菜にすることによって、納豆の糸引きを弱め、撹拌・混合を容易にすることができる。これにより、納豆を用いた惣菜を製造し、これを使用・利用するにあたって、納豆菌飛散、作業場汚染の心配を減少させ、作業性を著しく改善することができる。
【0047】
一方、こうして製造した前記の納豆処理物及び、前記の納豆処理物からなる本発明の納豆を用いた惣菜は、特別な酸味を感じることのないものになっている。
【0048】
そこで、前記の納豆処理物からなる本発明の納豆を用いた惣菜を、おにぎりや弁当の具材に使用した場合、糸引きが少ないため、製造作業性が著しく改善し、納豆菌飛散、作業場汚染の心配を減少させることができる。そして、大豆由来の栄養が豊富で、納豆菌の発酵による数々の生理的に有用な機能を発揮できる納豆を、特別な酸味を感じることのない惣菜として提供することができる。
【0049】
更に、前記の納豆処理物を食塩含有量1.0%以上になるように調製してなる本発明の納豆を用いた惣菜によれば、糸引きがないため製造作業性が著しく良く、納豆菌飛散、作業場汚染の心配が少なくなるだけでなく、食塩含有量調整後の具材に含まれる塩分により具材内部の納豆菌の生育が抑えられ、納豆菌の作用により、納豆に接する米飯や他のおかずが変質するという問題を未然に防止することが可能になる。また、惣菜の内部には生理的に有用な機能を持つ納豆菌が生きたまま残ることになる。
【0050】
次に、納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製したものを成形し、油調してなる本発明の納豆を用いた惣菜によれば、油調する(天ぷらのように、食用油で揚げる)ことにより、具材表面の納豆菌菌数を減少させると共に、食塩含有量調整後の具材に含まれる塩分により具材内部の納豆菌の生育が抑えられ、米飯や他のおかずの変質をより効果的に防止でき、一方、前記本発明の納豆を用いた惣菜の内部に、生理的に有用な機能を持つ納豆菌を生きたまま残すことができる。
【0051】
納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製し、これを成形したものの表面、又は、前記成形したものを油調した後の表面に衣をつけて油調して得た本発明の納豆を用いた惣菜によれば、前記の油調する(天ぷらのように、食用油で揚げる)ことによる効果を一層大きく発揮させることができる。
【0052】
すなわち、本発明の納豆を用いた惣菜において、前述した納豆処理物の食塩含有量が1.0%以上になるように調整している場合、あるいは、納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含有量が1.0%以上になるように調製している場合には、食塩含有量調整後の具材に含まれる塩分により具材内部の納豆菌の生育が抑えられ、納豆菌の菌数の経時変化がほとんどなくなるため、米飯や他のおかずの変質を効果的に防止できる一方、おにぎりの米飯や、弁当における他の具材や米飯での納豆菌の生育がほとんどなく、惣菜の内部に生理的に有用な機能を持つ納豆菌を生きたまま残すことができる。
【0053】
また、油調工程を経ている本発明の納豆を用いた惣菜は、油で揚げてあるため、特有の香ばしい風味を持ち、その一方、表面が加熱されているため、表面には納豆菌が少ない。
【0054】
特に、納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含有量が1.0%以上になるように調製したものを成形した表面に衣を付けて油調した、あるいは、納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含有量が1.0%以上になるように調製したものを成形した後、これを油調し、その表面に衣を付けて油調した場合には、前記の油調工程を経ていることによる効果を一層大きく発揮させることができる。
【0055】
本発明の納豆を用いた惣菜を、おにぎりや弁当の具材として使用する本発明の納豆を用いた惣菜を具材として含んでなるおにぎり又は弁当は、糸引きが少ないため製造作業性が著しく良く、納豆菌飛散、作業場汚染の心配を少なくして製造することができ、米飯や他のおかずを変質させることなく、内部に、生理的に有用な機能を持つ納豆菌を生きたまま残している納豆を用いた惣菜を具材に含んでいるおにぎりや弁当となる。
【0056】
本発明により、納豆を使用した材料の混合・小分けなど、おにぎり、弁当の製造などの作業性が大幅に改善され、おにぎり、弁当の具材などに使用した場合、おにぎりや弁当のの米飯での納豆菌の生育がない納豆惣菜を製造できる。
【0057】
すなわち、本発明によれば、糸を引くため撹拌・混合作業が難しい納豆の糸切れを改善し、納豆を使用した惣菜の混合・小分けなど、おにぎり、弁当の製造などの作業性を大幅に改し、工業的規模で納豆を用いた惣菜を含んでいるおにぎり、弁当を大量に生産することが可能となる。
【0058】
以下、本発明の好ましい実施例を説明する。
【実施例1】
【0059】
納豆500gにビタミンC5gを加え、よく混合しておく。水切りした豆腐をすりつぶしたもの100g、砂糖20g、塩25gを加え、よく混ぜた後、ビタミンCを加えた上記の納豆を加えて混ぜ、片栗粉60gを添加し程よい固さにした。約l0gをはかり取り、1辺30mmの三角形に成形し、165℃の天ぷら用油で、45秒間油調したのち、天ぷら粉100g、水150g、食塩5gを混合して調製した衣溶液に通し、再び180℃で20秒間油調して調理した。
【0060】
この実施例の滴定酸度は4.5mlであった。また、最初の油調を行う前の混合物の食塩含有量は3.0%であった。
【0061】
出来上がった惣菜は表面が衣で覆われ、加熱されているので、表面に納豆菌が少なく、おにぎりの具として使用したとき、表面の糸引きが少ないため、おにぎり製造の作業性がよく、納豆菌の飛散やそれによる作業場の汚染の心配が少ないものであった。表1に惣菜の25℃保管時の菌数の経時変化を示す。惣菜の表面は納豆菌の菌数が少なく、内部には有用な機能性を持つ納豆菌が生き残っている。
【表1】

【実施例2】
【0062】
納豆500gにビタミンC5gを加え、よく混合しておく。水切りした豆腐をすりつぶしたもの200g、砂糖40g、塩20g、味噌30g、醤油50gを加え、よく混ぜた後、ビタミンCを加えた上記の納豆を加えて混ぜ、片栗粉100gを添加し程よい固さにした。約10gをはかり取り、1辺30mmの三角形に成形し、165℃の天ぷら用油で、45秒間油調し、惣菜(納豆おにぎりの具)を製造した。
【0063】
この実施例の滴定酸度は5.5mlであった。また、油調を行う前の混合物の食塩含有量は2.9%であった。
【0064】
出来上がった惣菜は表面が油で加熱調理されているので、表面に納豆菌が少なく、おにぎりの具として使用したとき、表面の糸引きが少ないため、おにぎり製造の作業性がよく、納豆菌の飛散やそれによる作業場の汚染の心配が少ないものであったばかりでなく、味噌、醤油等の調味料が程よく加熱され、香ばしい風味で、おにぎりの具として好ましいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合した納豆処理物、または、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量が2〜30mlの範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合して得た納豆処理物からなる納豆を用いた惣菜。
【請求項2】
納豆処理物は、その食塩含量が1.0%以上になるように調製されていることを特徴とする請求項1記載の納豆を用いた惣菜。
【請求項3】
納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製したものを成形し、油調してなる納豆を用いた惣菜。
【請求項4】
納豆に賦形材を加えて混合し、食塩含量が1.0%以上になるように調製した後、これを成形したものの表面、又は、前記成形したものを油調した後の表面に衣をつけて油調したことを特徴とする納豆を用いた惣菜。
【請求項5】
賦形材と混合される納豆は、納豆に対して0.3〜3.0重量%の食用有機酸を添加・混合した納豆処理物、または、食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を添加・混合した納豆10gを中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウム溶液の量が2〜30mlの範囲になるように食用有機酸を含む調味料及び/又は食用有機酸を納豆に添加・混合した納豆処理物であることを特徴とする請求項3又は4記載の納豆を用いた惣菜。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の納豆を用いた惣菜を具材として含んでなるおにぎり又は弁当。

【公開番号】特開2006−230324(P2006−230324A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52198(P2005−52198)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000116943)旭松食品株式会社 (22)
【Fターム(参考)】