説明

紙の製造方法

【課題】紙の初期特性に優れ、かつカレンダー耐性に優れるパルプ処理剤、及びそのパルプ処理剤を使用した紙の製造方法の提供。
【解決手段】式(1)のアルコキシシラン、有機酸、及び水を配合してなり、式(1)のアルコキシシラン中の50重量%以上が式(2)のトリアルコキシシラン及び式(3)のジアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種であり、水の配合量が式(1)のアルコキシシランの配合量の3倍モル以上であり、pH(20℃)が2〜5であるパルプ処理剤をパルプ繊維に接触させる工程(I)を有する紙の製造方法。
1pSi(OR2)4-p (1)
1Si(OR2)3 (2)
12Si(OR2)2 (3)
〔R1はC1-6のアルキル基等、R2はC1-6のアルキル基、pは1〜3の整数を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプを原料とする嵩高な紙の製造方法及び嵩高な紙を得るためのパルプ処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルプを原料とする紙(以下、単に紙ともいう)に対して、優れた印刷適正やボリューム感を付与するための嵩高剤が報告されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、特定のアルコキシシランを、紙に処理して、紙に多様な機能を付与したり(特許文献2)、パルプスラリーに処理して、紙の耐水性、寸法安定性及び耐摩擦性を向上させる(特許文献3)ことが試みられている。
【特許文献1】国際公開第98/03730号パンフレット
【特許文献2】特開2003−319721号公報
【特許文献3】特開2001−181599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙の表面特性を改善するのに、乾燥後の紙を、さらに、カレンダー加工することが多く行われている。
【0005】
特許文献1〜特許文献3に具体的に開示されている剤により、パルプ又は紙を処理して、所望の特性を紙に付与しても、さらにカレンダー加工した場合に、付与された特性が大きく損なわれる場合がある。
【0006】
本発明は、紙の初期特性、特に、静摩擦係数、動摩擦係数及び嵩高性を含む紙質(緊度、白色度、不透明度)が従来の処理剤より優れ、かつ、カレンダー加工しても、緊度が大きく損なわれることがない(以下、カレンダー耐性に優れるともいう)パルプ処理剤、及び、そのパルプ処理剤を使用した好適な紙の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、アルコキシシラン系の処理剤をさらに詳細に検討した結果、紙の初期特性、特に、静摩擦係数、動摩擦係数及び嵩高性を含む紙質が従来の処理剤に比べて優れ、かつ、カレンダー耐性に優れるパルプ処理剤とその剤を使用した紙の好適な製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)、有機酸(b)、及び水を配合してなるパルプ処理剤(以下第1のパルプ処理剤という)をパルプ繊維に接触させる工程(I)を有する紙の製造方法であって、アルコキシシラン(a)中の50重量%以上が一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン(a1)及び一般式(3)で表されるジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種であり、水の配合量がアルコキシシラン(a)の配合量の3倍モル以上であり、20℃におけるパルプ処理剤のpHが2〜5である紙の製造方法(以下第1の紙の製造方法という)に関する。
1pSi(OR2)4-p (1)
1Si(OR2)3 (2)
12Si(OR2)2 (3)
〔式中、R1は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基又は炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基を示し、R2は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示し、p個のR1及び(4−p)個のR2は同一でも異なってもよい。pは1〜3の整数を示す。〕
【0009】
また、本発明は、アルコキシシラン(a’)、有機酸(b)、及び水を配合してなるパルプ処理剤(以下第2のパルプ処理剤という)を対パルプ水分量が50〜1000重量%のパルプウェブに接触させる工程(I’)を有する紙の製造方法であって、アルコキシシラン(a’)中の50重量%以上が上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)であり、水の配合量がアルコキシシラン(a’)の配合量の3倍モル以上であり、20℃における処理剤のpHが2〜5である紙の製造方法(以下第2の紙の製造方法という)に関する。
【0010】
また、本発明は、上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)、有機酸(b)、及び水を配合してなるパルプ処理剤であって、アルコキシシラン(a)中の50重量%以上が上記一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン(a1)及び一般式(3)で表されるジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種であり、水の配合量がアルコキシシラン(a)の配合量の3倍モル以上であり、20℃におけるpHが2〜5であるパルプ処理剤、即ち、第1のパルプ処理剤に関する。
【0011】
また本発明は、上記第1のパルプ処理剤を得るためのパルプ処理キットであって、上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)を含有し、有機酸(b)及び水を含有しない第1剤と、有機酸(b)及び水を含有し、アルコキシシラン(a)を含有しない第2剤で構成され、使用時に水の配合量がアルコキシシラン(a)の配合量の3倍モル以上であり、20℃におけるパルプ処理剤のpHが2〜5となるように混合されるパルプ処理キット(但し、アルコキシシラン(a)中の50重量%以上が上記一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン(a1)及び一般式(3)で表されるジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種である)に関する。
【0012】
また本発明は、上記第2のパルプ処理剤を得るためのパルプ処理キットであって、アルコキシシラン(a’)を含有し、有機酸(b)及び水を含有しない第1剤と、有機酸(b)及び水を含有し、アルコキシシラン(a’)を含有しない第2剤で構成され、使用時に水の配合量がアルコキシシラン(a’)の配合量の3倍モル以上であり、20℃におけるパルプ処理剤のpHが2〜5となるように混合されるパルプ処理キット(但し、アルコキシシラン(a’)中の50重量%以上が上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)である)に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、紙の初期特性、特に、静摩擦係数、動摩擦係数及び嵩高性を含む紙質(緊度、白色度、不透明度)が従来の処理剤より優れ、かつ、カレンダー耐性に優れる紙の製造方法、並びにかかる紙を得るためのパルプ処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[アルコキシシラン(a)]
本発明に用いられるアルコキシシラン(a)は、嵩高発現性、特にカレンダー耐性の観点から、その50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは100重量%がトリアルコキシシラン(a1)及びジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
アルコキシシラン(a)、トリアルコキシシラン(a1)、ジアルコキシシラン(a2)において、R1及びR2で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、R1で示されるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられ、またR1としてフェニル基も挙げられる。R1としては、パルプ繊維内部への浸透性の観点より、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキル基が更に好ましい。R2としては、加水分解により生じる副生成物の安全性、加水分解反応の反応性等の点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましい。pは1〜2が好ましい。
【0016】
トリアルコキシシラン(a1)としては、アルキル(炭素数1〜6)トリメトキシシラン、アルキル(炭素数1〜6)トリエトキシシランが好ましく、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシランがより好ましい。ジアルコキシシラン(a2)としては、ジアルキル(炭素数1〜6)ジメトキシシラン、ジアルキル(炭素数1〜6)ジエトキシシラン等が好ましく、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランがより好ましい。
【0017】
アルコキシシラン(a)中のトリアルコシキシラン(a1)とジアルコシキシラン(a2)の重量比は、嵩高発現性、特にカレンダー耐性の観点から、10/0〜1/9が好ましく、10/0〜5/5がより好ましく、10/0〜7/3がさらに好ましく、パルプ処理剤中に界面活性剤を配合した場合及びトリアルコシキシラン(a1)とジアルコシキシラン(a2)のパルプスラリー、パルプシート又はパルプウェブへの処理量の大きい場合に特に好ましい。
【0018】
[アルコキシシラン(a’)]
本発明に用いられるアルコキシシラン(a’)は、嵩高発現性、特にカレンダー耐性の観点から、その50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは100重量%が上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)である。
尚、アルコキシシラン(a’)中、アルコキシシラン(a)以外のものとして、一般式(4)で表される化合物等を好ましく使用できる。
【0019】
【化1】

【0020】
〔式中、R3、R4、R5、R6は各々独立して、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示し、nは2〜8の数を示す。〕
【0021】
また、アルコキシシラン(a’)は、トリアルコキシシラン(a1)及びジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種を含有することが更に好ましい。アルコキシシラン(a’)中のトリアルコシキシラン(a1)とジアルコシキシラン(a2)の重量比は、嵩高発現性、特にカレンダー耐性の観点から、10/0〜1/9が好ましく、10/0〜5/5がより好ましく、10/0〜7/3がさらに好ましい。
【0022】
[有機酸(b)]
本発明に用いられる有機酸(b)としては、シュウ酸(pKa=1.04、3.82)、マレイン酸(pKa=1.75、5.83)、酒石酸(pKa=2.82、3.96)、フマル酸(pKa=2.85、4.10)、クエン酸(pKa=2.90、4.34)、リンゴ酸(pKa=3.24、4.71)、コハク酸(pKa=4.00、5.24)、ギ酸(pKa=3.55)、乳酸(pKa=3.66)、アジピン酸(pKa=4.26、5.03)、酢酸(pKa=4.56)、プロピオン酸(pKa=4.67)等を例示することができるが、pH調整が容易な点から、pKaが2.9〜5.0の範囲にある有機酸が好ましく、3.5〜5.0の範囲にある有機酸が更に好ましい。これらの中ではアルコキシシラン(a)の加水分解反応と重合反応の制御が容易であるアジピン酸、リンゴ酸、酢酸及びプロピオン酸が好ましく、更には、臭気が少ないアジピン酸が特に好ましい。
尚、解離定数pKaは、「改訂4版 化学便覧 基礎編II」10.2.3.水溶液中の有機化合物の解離定数(P317)による。
【0023】
[パルプ処理剤]
本発明に用いられる第1のパルプ処理剤は、アルコキシシラン(a)、有機酸(b)、及び水を配合してなる。また、本発明に用いられる第2のパルプ処理剤は、アルコキシシラン(a’)、有機酸(b)、及び水を配合してなる。
また、本発明のパルプ処理剤が二剤式のキット(以下、パルプ処理キットともいう)により製造される場合、アルコキシシラン(a)又は(a’)を含有し、有機酸(b)及び水を含有しない第1剤と、有機酸(b)及び水を含有し、アルコキシシラン(a)及び(a’)を含有しない第2剤で構成される。
【0024】
本発明のパルプ処理剤において、アルコキシシラン(a)又は(a’)の配合量は、本発明の処理剤全量中(二剤式の場合には第1剤と第2剤を合わせた全組成中;以下同じ)0.1重量%以上、更に1重量%以上、特に2重量%以上が好ましく、また85重量%以下、更に60重量%以下、更に50重量%以下、特に25重量%以下が好ましい。また、第1剤中のアルコキシシラン(a)又は(a’)の含有量は、保存安定性の点から、70〜100重量%、更には80〜100重量%、特に90〜100重量%が好ましい。
【0025】
本発明のパルプ処理剤中の有機酸(b)の配合量は、アルコキシシラン(a)又は(a’)の加水分解物の重合反応の抑制の点から、0.001〜5重量%が好ましく、0.001〜1重量%がより好ましい。有機酸(b)は、本発明のパルプ処理剤が二剤式のパルプ処理キットにより製造される場合には、第1剤に配合されるアルコキシシラン(a)又は(a’)とは別個に第2剤に配合することが溶解性、保存安定性の点から好ましい。
【0026】
本発明のパルプ処理剤中の水の配合量は、パルプ繊維を十分に膨潤させ、アルコキシシラン(a)の加水分解で生成する、下記式(5)で表されるシラノール化合物(以下シラノール化合物(5)という)をパルプ繊維に十分接触させる観点から、30重量%以上であることが好ましく、50重量%以上が更に好ましく、70重量%以上が特に好ましい。上限は、99.9重量%以下であることが好ましく、98重量%以下が更に好ましく、90重量%以下が特に好ましい。
【0027】
【化2】

【0028】
〔式中、Xは、R1、OR2又はOHで示される基、tは0〜2の整数を示し、(2t+4)個のXは同一でも異なってもよく、これらのうち少なくとも1つはOHである。R1及びR2は前記の意味を示す。〕
【0029】
また本発明のパルプ処理剤中のアルコキシシラン(a)又は(a’)と水との割合は、アルコキシシラン(a)の加水分解で生成するシラノール化合物(5)をパルプ繊維へ十分接触させる観点から、アルコキシシラン(a)又は(a’)の配合量の3倍モル以上であり、10〜1000倍モルが好ましく、25〜980倍モルがより好ましい。
【0030】
本発明のパルプ処理剤では、水は、本発明の二剤式のパルプ処理キットの場合には、第1剤に配合されるアルコキシシラン(a)又は(a’)とは別個に、第2剤に配合される。
【0031】
本発明のパルプ処理剤では、水は、嵩高発現性、特にカレンダー耐性の観点から、イオン交換水が好ましいが、生産効率の観点からは、製紙工業で通常使用される工業用水を好ましく使用できる。
【0032】
本発明のパルプ処理剤は、アルコキシシラン(a)又は(a’)の水相への分散を良好にし、加水分解反応を促進することと、特にトリアルコシキシラン(a1)の配合量が大きくパルプスラリー、パルプシート又はパルプウェブへの処理量の小さい場合の、嵩高発現性、特にカレンダー耐性の観点から、界面活性剤(c)を配合することが好ましい。
界面活性剤(c)を配合する場合、本発明のパルプ処理剤中の界面活性剤(c)の配合量は、混合時の乳化、加水分解の促進の点から、0.1〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が更に好ましい。
【0033】
界面活性剤(c)としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれをも使用することができ、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0034】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが特に好ましい。
【0035】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)を挙げることができる。
【0036】
カチオン界面活性剤としては、一般式(6)で表される第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0037】
【化3】

【0038】
〔式中、R7及びR8は各々独立して水素原子、炭素数1〜28のアルキル基又はベンジル基を示し、同時に水素原子又はベンジル基となる場合、及び、炭素数1〜3の低級アルキル基となる場合を除く。An-はアニオンを示す。〕
【0039】
一般式(6)において、R7及びR8は、その一方が炭素数16〜24、更には22のアルキル基、特に直鎖アルキル基であるのが好ましく、また他方は炭素数1〜3の低級アルキル基、特にメチル基であるのが好ましい。アニオンAn-としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、炭酸メチルイオン、サッカリネートイオン等の有機アニオン等が挙げられ、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンが好ましい。
【0040】
カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、特に塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0041】
両性界面活性剤としてはイミダゾリン系、カルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系等が挙げられる。
【0042】
これらの界面活性剤(c)のうち、乳化能(アルコキシシラン(a)又は(a’)、有機酸(b)、水及び界面活性剤(c)の混和性)の点から、HLB9〜15、特に11〜14の非イオン界面活性剤が好ましい。なお、ここでのHLBは、グリフィンの方法による計算値を示す。
【0043】
本発明のパルプ処理剤には、アルコキシシラン(a)の加水分解で生成する、シラノール化合物(5)を溶解する目的で、メタノール、エタノール等の炭素数1〜3の低級1価アルコール、グリセリンなどの水溶性有機溶剤を配合することもできる。
【0044】
本発明のパルプ処理剤には、その他、pH調整剤、油剤、シリコーン誘導体、カチオン性ポリマー、保湿剤、粘度調整剤、香料、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤等を、目的に応じて適宜配合することができる。
【0045】
本発明のパルプ処理剤で、水溶性有機溶剤を使用する場合、その配合量は、パルプ繊維を十分に膨潤させ、シラノール化合物(5)をパルプ繊維に十分に接触させる観点から、35重量%以下、更に20重量%以下とすることが好ましい。なお、これ以外に、アルコキシシラン(a)の加水分解後のパルプ処理剤には、副生物としてのR2OH(R2は前記の意味を示す)が含有されることになる。
【0046】
本発明のパルプ処理剤は、アルコキシシラン(a)を加水分解させ、シラノール化合物(5)を生成させ、及びシラノール化合物(5)をパルプ繊維に十分に接触させるために、20℃におけるpHを2〜5、好ましくは2〜4に調整する。なお、二剤式のパルプ処理キットの場合には第2剤の20℃におけるpHが上記範囲に調整される。
【0047】
本発明のパルプ処理剤は、使用直前にアルコキシシラン(a)又は(a’)、有機酸(b)、及び水、必要により界面活性剤(c)、若しくはその他任意成分を配合し、20℃におけるpHを2〜5とすることによって調製されたものであってよい。
【0048】
本発明の第1のパルプ処理剤は、長期間の安定性を確保する点から、アルコキシシラン(a)を含有し、アルコキシシラン(a)中の50重量%以上がトリアルコキシシラン(a1)及びジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種である第1剤と、有機酸(b)及び水を含有し、20℃におけるpHが2〜5である第2剤から構成される二剤式のパルプ処理キットを配合して製造されることが好ましい。
【0049】
本発明の第2のパルプ処理剤は、長期間の安定性を確保する点から、アルコキシシラン(a’)を含有し、アルコキシシラン(a’)中の50重量%以上がアルコキシシラン(a)である第1剤と、有機酸(b)及び水を含有し、20℃におけるpHが2〜5である第2剤から構成される二剤式のパルプ処理キットを配合して製造されることが好ましい。
【0050】
本発明の二剤式のパルプ処理キットは、界面活性剤(c)は第2剤に含有させることが好ましいが、第1剤が水分を含有しない場合は第1剤に含有させることもできる。また、その他の任意成分も、第2剤に含有させることが好ましいが、非水系の液体成分や固体成分であれば、第1剤中に配合することもできる。
【0051】
本発明のパルプ処理剤を、使用直前にアルコキシシラン(a)又は(a’)、有機酸(b)、及び水、必要により界面活性剤(c)、若しくはその他任意成分を混合することによって調製する場合、混合する順序は、特に限定されないが、アルコキシシラン(a)の加水分解によって生成したシラノール化合物(5)をパルプ繊維に十分に接触させるため、有機酸(b)、水、必要により界面活性剤(c)を混合した後にアルコキシシラン(a)又は(a’)を混合することが好ましい。
【0052】
さらに、アルコキシシラン(a)又は(a’)としてトリアルコキシシラン(a1)とジアルコキシシラン(a2)の両方を用いる場合、まず、トリアルコシキシラン(a1)、有機酸(b)、及び水を混合した後、ジアルコシキシラン(a2)を混合することがより好ましい。トリアルコシキシラン(a1)、有機酸(b)、及び水を混合した後、少なくともトリアルコシキシラン(a1)の一部が加水分解することが好ましい。加水分解の進行は、液の透明度が増加することにより判断することができる。
【0053】
[紙の製造方法]
本発明において、第1の紙の製造方法は、第1のパルプ処理剤をパルプ繊維に接触させる工程(I)を有する方法である。
【0054】
工程(I)において、第1のパルプ処理剤をパルプ繊維に接触させる方法としては、例えば、以下の(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
(i)パルプスラリー中のパルプ繊維に第1のパルプ処理剤を接触させる方法。
(ii)パルプウェブに第1のパルプ処理剤を接触させる方法。
(iii)パルプシートに第1のパルプ処理剤を接触させる方法。
【0055】
(i)の方法において、パルプスラリーとは、好ましくはパルプ繊維重量が0.1〜10重量%の、パルプ処理剤又はその希釈液を媒質とするパルプ分散液である。具体的には、パルプ原料の稀薄液が金網上を進む間に濾水されて紙層を形成する抄紙工程以前で、パルパーやリファイナー等の離解機や叩解機、マシンチェストやヘッドボックスや白水タンク等のタンク、あるいはこれらの設備と接続された配管中に第1のパルプ処理剤を添加してもよいが、リファイナー、マシンチェスト、ヘッドボックスで第1のパルプ処理剤を添加する等、均一にパルプ原料にブレンドできる場所が望ましい。
【0056】
パルプ処理剤をパルプ、パルプシート又はパルプウェブに十分に浸透させるために、これらを接触させておく時間は、5〜90分、特に20〜60分が好ましい。接触後一定時間放置することで、アルコキシシランの加水分解物はパルプ内部まで浸透すると考えられる。
【0057】
(ii)の方法において、パルプウェブとは、パルプ繊維同士が、水素結合やバインダーで結合されていない状態で絡み合ってシート状になっているものをいう。パルプウェブの対パルプ水分量は、好ましくは50〜1000重量%、より好ましくは50〜800重量%、更に好ましくは50〜500重量%、特に好ましくは100〜500重量%、最も好ましくは150〜500重量%である。
【0058】
(ii)の方法は、パルプ製造工程では、脱墨工程中の洗浄後の脱水工程後のパルプウェブに、紙製造工程では、抄紙後のプレス工程後で、乾燥工程前のパルプウェブに、パルプ処理剤をスプレーすることが好ましく、後者の方がより好ましい。
【0059】
(iii)の方法において、パルプシートに第1のパルプ処理剤を接触させる方法として、パルプシートを第1のパルプ処理剤に浸漬したり、第1のパルプ処理剤をスプレー噴霧する方法が挙げられる。
【0060】
(iii)の方法に用いられるパルプシートとしては、対パルプシート水分量が50重量%未満のものが好ましい。尚、パルプシートとは、パルプ繊維同士が水素結合やバインダーで結合されてシート状に形成されたパルプ繊維集合体をいう。
【0061】
(iii)の方法は、パルプ製造工程では、乾燥工程後の、好ましくは巻き取り前のパルプシートに、第1のパルプ処理剤をスプレー、塗工及び/又は浸漬することが好ましく、浸漬することがより好ましい。
【0062】
本発明のパルプ処理剤を用いてパルプを処理する際に、アルコキシシラン、有機酸、水及び界面活性剤、並びにその他任意成分を使用前に混合後、振とう等の手段により攪拌混合して、目視で混合溶液の透明性が高くなったことを確認した後に、得られたパルプ処理剤にパルプ、パルプシート又はパルプウェブを接触させるのが好ましい。
【0063】
得られたパルプ処理剤は、30分以内、更に15分以内に、パルプ、パルプシート又はパルプウェブに接触させることが好ましい。
【0064】
パルプ処理剤を接触させたパルプ、パルプシート又はパルプウェブを40〜120℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは90〜120℃に加温してもよい。具体的には温風乾燥、ドライヤー乾燥やプレス加熱で加温することが好ましい。また、繊維を乾燥させずに、液のpHを5〜8に調整することによって重合を促進することができる。繊維を液に浸漬したまま、あるいは余分な液を除去した後、酸又は塩基を用いてpHを調整することができる。
【0065】
工程(I)においては、嵩高発現性及びカレンダー耐性の観点から、上記(ii)及び(iii)の方法が好ましく、特に、プレス前では、対パルプ水分量が、好ましくは100〜1000重量%、より好ましくは100〜500重量%、更に好ましくは100〜300重量%、プレス後では対パルプ水分量が、好ましくは50〜300重量%、より好ましくは50〜200重量%、更に好ましくは50〜150重量%のパルプウェブ中の水として、本発明の第1のパルプ処理剤を使用することが望ましい。
【0066】
本発明において、第2の紙の製造方法は、第2のパルプ処理剤を対パルプ水分量が50〜1000重量%のパルプウェブに接触させる工程(I’)を有する紙の製造方法である。
【0067】
工程(I’)において、第2のパルプ処理剤をパルプウェブに接触させ方法としては、例えば、上記(ii)の方法が挙げられる。
【0068】
工程(I’)においては、嵩高発現性及びカレンダー耐性の観点から、特に、プレス前では、対パルプ水分量が、好ましくは100〜1000重量%、より好ましくは100〜500重量%、更に好ましくは100〜300重量の%、プレス後では、対パルプ水分量が、好ましくは50〜300重量%、より好ましくは50〜200重量%、更に好ましくは50〜150重量%のパルプウェブ中の水として、第2のパルプ処理剤を使用することが望ましい。
【0069】
本発明のパルプ処理剤を用いた抄紙方法は一般的な抄紙機でよく、抄紙機としては例えば、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式、及び傾斜ワイヤー式抄紙機等があげられる。特に紙の表裏差を少なくする観点からツインワイヤー式が好ましい。抄紙速度は、嵩、白色度、不透明度向上の顕著な効果発現の点で200m/分以上が好ましく、300m/分以上がより好ましく、500m/分以上が特に好ましい。
【0070】
なお、抄紙時にはサイズ剤、填料、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力向上剤等を添加してもよい。特に、本発明のパルプ処理剤がその機能を発現するためには、パルプ繊維に定着することが重要であり、そのために定着を促進する剤(以下、定着促進剤という)を添加することが好ましい。定着促進剤としては、硫酸アルミニウム、アクリルアミド基を有する化合物、ポリエチレンイミン等が挙げられる。定着促進剤の添加量はパルプ原料100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。本発明のパルプ処理剤における定着促進剤の添加量は、アルコキシシラン(a)又は(a’)100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましい。また、定着促進剤を本発明のパルプ処理剤中に含有させてもよい。
【0071】
本発明のパルプ処理剤の処理量は、パルプ繊維原料100重量部に対して、固形分として0.01〜50重量部が好ましく、0.1〜50重量部がより好ましく、0.1〜25重量部が更に好ましく、0.5〜20重量部が特に好ましく、1〜20重量部が最も好ましい。
【0072】
本発明の紙の製造方法においては、必要に応じて、工程(I)又は(I’)の後で、パルプシートをカレンダー加工するカレンダー工程を有していてもよく、本発明の紙の製造方法は、カレンダー加工する際のパルプシートのカレンダー耐性を付与するのに特に有効である。
カレンダー加工においてはスーパーカレンダー、ソフトカレンダー、マシンカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用いることができ、これらを併用してもよい。本発明の紙を塗工紙の原紙として用いる場合にはスーパーカレンダーが好ましい。カレンダーの表面温度は特に限定はないが、50℃以上で行うことが好ましい。
【0073】
本発明の紙の製造方法は、坪量が、好ましくは30〜1000g/m2、より好ましくは30〜700g/m2、更に好ましくは30〜300g/m2、更により好ましくは30〜200g/m2の紙を製造する場合に、紙の初期特性、特に、静摩擦係数、動摩擦係数及び嵩高性を含む紙質(緊度、白色度、不透明度)が効果的に発現される。
【0074】
本発明の紙の製造方法は、各種の紙に適用できる。例えば、書籍用紙や雑誌などに用いられる非塗工紙や微塗工紙、カタログ、ポスターに用いられる塗工紙といった印刷用紙及びこれらの原紙、あるいは、インクジェット用紙、PPC用紙、フォーム用紙、感熱紙、感圧紙などの情報用紙及びその原紙、あるいは新聞用紙、包装用紙、その他白板紙や色板紙等の板紙など、酸性、中性又はアルカリ性抄紙した紙を挙げることができ、なかでも、印刷用紙及びその原紙に好適に用いられる。
【0075】
さらに具体的には、例えば上質紙、書籍用紙、中質紙、上更紙、更紙、帳薄用紙、ケント紙、色上質紙、キャストコート紙、A0アート紙、A1アート紙、A2コート紙、A3コート紙、軽量コート紙、中質コート紙、グラビア紙、純白ロール紙、片艶晒クラフト紙、純白包装紙、両更クラフト紙、晒クラフト紙、色クラフト紙、筋入クラフト紙、片艶クラフト紙、薄模造紙、模造紙、インディア紙、複写紙、タイプ紙、トレーシング紙、コピー紙、グラシン紙、その他加工紙や工業用雑種紙、微塗工紙、衛生用紙、段ボール原紙、家庭用雑種紙などの製造に好適である。
【実施例】
【0076】
以下の例において、%は重量%である。
【0077】
製造例1
アジピン酸、水、更に必要によりポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製 エマルゲン108)を混合した溶液に、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製 LS−1890)を加え、白濁した懸濁液が透明になるまで攪拌して、表1に示す組成(加水分解前の組成)のパルプ処理剤1、3、5〜7、9を得た。
【0078】
製造例2
アジピン酸、水、更に必要によりポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製 エマルゲン108)を混合した溶液に、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製 LS−1890)を加え、白濁した懸濁液が透明になるまで攪拌した。更にジメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製 LS−1370)を加え、再度懸濁液が透明になるまで攪拌して、表1に示す組成(加水分解前の組成)のパルプ処理剤2、4、8、10を得た。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例1〜10、比較例1
下記に示すパルプ原料を用い、下記方法で得られた水分量10重量%のパルプシートに、製造例で調製した調製直後のパルプ処理剤1〜10を下記方法で処理して紙を製造した。また、比較としてパルプ処理剤を処理しない紙を製造した。
【0081】
<パルプシートの製造法及びパルプ処理剤の処理法>
パルプ原料として、化学パルプLBKP(広葉樹晒パルプ)を用い、25℃で叩解機にて離解、叩解して2.2%のLBKPスラリーとした。このもののカナダ標準濾水度(JIS P 8121)は420mlであった。
【0082】
LBKPスラリーを、抄紙後のシートの坪量が約80g/m2になるように計り取り、その後パルプ濃度が0.5%になるように水で希釈し、攪拌後角型タッピ抄紙機にて150メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。抄紙後の湿潤シートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥してパルプシートを得た。
このパルプシートをパルプ処理剤に浸漬、ただちに引き上げ、室温で5分放置した。その後ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥して紙を得た。
【0083】
実施例11〜18
実施例1と同様のパルプ原料を用い、実施例1と同様の方法で抄紙して湿潤シートを得た。この湿潤シートを3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし対パルプ水分量150%のパルプウェブを得、得られたパルプウェブに、製造例で調製した調製直後のパルプ処理剤1〜4、7〜10を表2に示す量スプレー処理し、密封した。その後室温で30分放置した後開封し、さらに5分放置した。その後ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥して紙を得た。
【0084】
実施例19
実施例1と同様のLBKPスラリーを抄紙後のシートの坪量が約80g/m2になるように計り取り、製造例で調製した調製直後のパルプ処理剤7をパルプに対して20重量%(アルコキシシラン重量換算)添加して40分間攪拌した後、パルプ濃度が0.5%になるように水で希釈し、攪拌後角型タッピ抄紙機にて150メッシュワイヤーで抄紙し、湿紙を得た。抄紙後の湿潤シートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥してパルプシートを得た。
【0085】
上記実施例1〜19及び比較例1で得られた紙について、23℃、湿度50%の条件で5時間以上調湿を行った後に、下記方法で各種の紙物性を測定した。また、その紙をさらに下記方法でカレンダー加工した紙について、下記方法で緊度を測定した。なおカレンダー加工後の緊度の測定においては調湿を行わず、カレンダー加工後ただちに測定した。これらの結果を表2に示す。
【0086】
<カレンダー加工>
調湿した紙をラボカレンダー装置(熊谷理機工業株式会社製 30FC−200Eスーパーカレンダー)を用いてカレンダー加工(処理速度10m/min、ロール温度50℃、処理回数2回)した。なお実施例における300kg/cmの処理は100kg/cmで処理した後にさらに線圧をあげて同じ紙に処理したものである。
【0087】
<坪量の測定法>
調湿した紙を150mm×150mmに裁断し、この紙の重量を測定し、下記式(6)により坪量(g/m2)を求める。
【0088】
坪量(g/m2)=紙重量/0.0225 (6)
【0089】
<緊度の測定法>
調湿された紙の厚さを、紙用マイクロメータを用いて、圧力53.9±4.9kPaで、5ヶ所以上測定し、得られる平均値を紙の厚さ(mm)とする。
調湿された紙の坪量(g/m2)と厚み(mm)から、下記式(7)により緊度(g/cm3)を求める。
【0090】
緊度=(坪量)/(厚み)×0.001 (7)
緊度は小さいほど嵩が高く、また緊度の0.02の差は有意差として十分に認識されるものである。
【0091】
<白色度の測定法>
JIS P 8123ハンター白色度により測定する(白色度Bの測定)。白色度の0.5ポイントの差は有意差として十分に認識されるものである。
【0092】
<不透明度の測定法>
JIS P 8138A法により測定する(不透明度Pの測定)。不透明度の0.5ポイントの差は有意差として十分に認識されるものである。
【0093】
<摩擦係数の測定法>
JIS P8147法により測定する。
【0094】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)、有機酸(b)、及び水を配合してなるパルプ処理剤をパルプ繊維に接触させる工程(I)を有する紙の製造方法であって、アルコキシシラン(a)中の50重量%以上が一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン(a1)及び一般式(3)で表されるジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種であり、水の配合量がアルコキシシラン(a)の配合量の3倍モル以上であり、20℃におけるパルプ処理剤のpHが2〜5である紙の製造方法。
1pSi(OR2)4-p (1)
1Si(OR2)3 (2)
12Si(OR2)2 (3)
〔式中、R1は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基又は炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基を示し、R2は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示し、p個のR1及び(4−p)個のR2は同一でも異なってもよい。pは1〜3の整数を示す。〕
【請求項2】
工程(I)において、パルプ繊維重量0.1〜10重量%のパルプスラリー中でパルプ処理剤を接触させる、請求項1記載の紙の製造方法。
【請求項3】
工程(I)において、対パルプシート水分量が50重量%未満のパルプシートにパルプ処理剤を接触させる、請求項1記載の紙の製造方法。
【請求項4】
アルコキシシラン(a’)、有機酸(b)、及び水を配合してなるパルプ処理剤を対パルプ水分量が50〜1000重量%のパルプウェブに接触させる工程(I’)を有する紙の製造方法であって、アルコキシシラン(a’)中の50重量%以上が請求項1記載の一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)であり、水の配合量がアルコキシシラン(a’)の配合量の3倍モル以上であり、20℃における処理剤のpHが2〜5である紙の製造方法。
【請求項5】
アルコキシシラン(a’)が、請求項1記載の一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン(a1)及び一般式(3)で表されるジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項4記載の紙の製造方法。
【請求項6】
パルプ処理剤が、さらに、界面活性剤(c)を配合してなる、請求項1〜5いずれか記載の紙の製造方法。
【請求項7】
パルプ処理剤が、トリアルコキシシラン(a1)、有機酸(b)及び水を混合した後、ジアルコキシシラン(a2)を混合してなるものである、請求項1〜3、5〜6いずれか記載の紙の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)、有機酸(b)、及び水を配合してなるパルプ処理剤であって、アルコキシシラン(a)中の50重量%以上が請求項1記載の一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン(a1)及び一般式(3)で表されるジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種であり、水の配合量がアルコキシシラン(a)の配合量の3倍モル以上であり、20℃におけるpHが2〜5であるパルプ処理剤。
【請求項9】
請求項1〜3、6〜8いずれかに記載のパルプ処理剤を得るためのパルプ処理キットであって、請求項1記載の一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)を含有し、有機酸(b)及び水を含有しない第1剤と、有機酸(b)及び水を含有し、アルコキシシラン(a)を含有しない第2剤で構成され、使用時に水の配合量がアルコキシシラン(a)の配合量の3倍モル以上であり、20℃におけるパルプ処理剤のpHが2〜5となるように混合されるパルプ処理キット(但し、アルコキシシラン(a)中の50重量%以上が請求項1記載の一般式(2)で表されるトリアルコキシシラン(a1)及び一般式(3)で表されるジアルコキシシラン(a2)から選ばれる少なくとも1種である)。
【請求項10】
請求項4〜7いずれかに記載のパルプ処理剤を得るためのパルプ処理キットであって、アルコキシシラン(a’)を含有し、有機酸(b)及び水を含有しない第1剤と、有機酸(b)及び水を含有し、アルコキシシラン(a’)を含有しない第2剤で構成され、使用時に水の配合量がアルコキシシラン(a’)の配合量の3倍モル以上であり、20℃におけるパルプ処理剤のpHが2〜5となるように混合されるパルプ処理キット(但し、アルコキシシラン(a’)中の50重量%以上が請求項1記載の一般式(1)で表されるアルコキシシラン(a)である)。

【公開番号】特開2007−177366(P2007−177366A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377094(P2005−377094)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】