紙媒体搬送方法及び紙媒体搬送機構並びに紙媒体取扱装置
【課題】集積動作では紙媒体を速やかに整列して集積させ、繰り出し動作では各紙媒体をその重走を抑えて1枚ずつ繰り出す。
【解決手段】帯電ローラーを用い、当該帯電ローラーによって前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送、集積又は繰り出しを行う。複数の紙媒体を内部に集積する集積部と、当該集積部内に前記紙媒体を取り込み、又は当該集積部内の前記紙媒体を外部に繰り出す紙媒体搬送機構とを備えた紙媒体取扱装置において、前記紙媒体搬送機構が前記帯電ローラーを備えた。
【解決手段】帯電ローラーを用い、当該帯電ローラーによって前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送、集積又は繰り出しを行う。複数の紙媒体を内部に集積する集積部と、当該集積部内に前記紙媒体を取り込み、又は当該集積部内の前記紙媒体を外部に繰り出す紙媒体搬送機構とを備えた紙媒体取扱装置において、前記紙媒体搬送機構が前記帯電ローラーを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の紙媒体を搬送して集積したり、集積した複数の紙媒体を繰り出したりする紙媒体搬送方法及び紙媒体搬送機構並びに紙媒体取扱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の紙媒体を搬送して集積したり、集積した紙媒体を繰り出したりする紙媒体取扱装置を組み込んだ装置としては、例えば銀行ATMがある。さらに、上記集積及び繰り出しの両方を必要とする装置としては、例えばリサイクルATMがある。このような装置の一例としては特許文献1がある。この特許文献1の紙葉類取扱装置を以下に概説する。ここでは、ATMの例であるため、紙葉類として紙幣を用いる。
【0003】
特許文献1の紙幣取扱装置は、紙幣入金整理機に組み込まれた例である。この紙幣入金整理機1は、図2に示すように、紙幣取扱機構2の他に、表示操作部3、認識部4、入金部5、帯封部6及び表裏反転部7を有する。前記表示操作部3は、キーボード、タッチパネル等の入力装置、及び、液晶ディスプレイ等の表示装置を備え、オペレータがこれを操作する。そして、入金部5にセットされた紙幣(図示せず)は、紙幣入金整理機1内に取り込まれ、搬送路9に沿って搬送され、紙幣取扱機構2に送り込まれる。
紙幣取扱機構2は、複数の収納部(紙媒体取扱装置)10を備えている。各収納部10は、あらかじめ対応付けられた所定の金種の紙幣を集積して収納すると共に、集積した紙幣を適宜繰り出す。
【0004】
このようなリサイクルATMとしての紙幣入金整理機1では、顧客が入金した紙幣を1枚ずつ連続して収納部10に取り込んで集積し、集積した紙幣を顧客への出金紙幣として、1枚ずつ連続して繰り出して使用する。
【0005】
この収納部10における、従来の集積方法を図3に示す。なお、図3等において紙幣8は、説明のために厚みを持たせている。まず搬送路12を通ってくる紙幣8は、搬送路12との間の摩擦により摩擦帯電した状態で、収納部10の入り口まで搬送され、上下2つのローラー13,14を通過して収納部10の空中に放出される。このとき、紙幣8に除電バー16が接触されて、紙幣8に帯電した電荷を金属フレーム側に逃がして除電される。放出された紙幣8は、リサイクルのため整列される。即ち、紙幣8は、出金繰り出し紙幣として再使用(リサイクル)されるため、集積の際に集積機構17によってたたき落として整列される。
【0006】
次に、収納部10における、従来の繰り出し方法を図4に示す。繰り出し時は、紙幣8を1枚ずつ確実に収納部10より繰り出す必要がある。図4は、最初の収納部10の状態であって、収納部10内に紙幣8が整列して集積されている状態である。まず、集積された紙幣8が押し上げられる。即ち、集積されている一番上の紙幣8が繰り出し機構19に押される位置まで、ステージ20を上昇させて、紙幣8が押し上げられる。
【0007】
次に、繰り出し機構19が回転して紙幣8を擦り、繰り出し機構部19と紙幣8の間の摩擦力によって紙幣8を収納部10から繰り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−210309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような従来の収納部10での集積方法及び繰り出し方法では、以下の課題があった。
【0010】
集積動作においては、使い込まれた紙幣等のように柔らかい紙幣8の場合は、ローラー13,14を通過して収納部10の空中に放出されて、空中に留まる時間が長くなり、その次の紙幣8に接触することがある。即ち、複数の紙幣8が連続的にローラー13,14を通過して空中に放出されると、先に放出された紙幣8に、次の紙幣8が空中で接触して、集積状態に悪影響を与えることがある。
【0011】
また、紙幣8は、帯電した状態で空中に放出されるため、既に集積されている紙幣8との間に電気的疎力が働いた場合に、空中に留まる時間がさらに長くなり、その次の紙幣8が空中で接触して集積状態に悪影響を与えることがある。
【0012】
さらに、紙幣8が空中に長く留まると、集積機構17が、空中にいる紙幣8を叩くため、叩き具合が一定にならず、紙幣の集積状態がばらついてしまう。
【0013】
また、集積機構17を必要とするため、この集積機構17の部品コストや組立てコストがかかり、収納部10のコストが嵩む。
【0014】
繰り出し動作の場合は、紙幣8を1枚ずつ繰り出す必要があるが、繰り出し機構19が繰り出す紙幣8を押す力加減が非常に難しい。力加減の違いによって、1枚目の紙幣8と共に2枚目の紙幣8も一緒に重走状態で繰り出してしまうことがある。紙幣8は、正確に1枚ずつ繰り出す必要があるが、集積されている複数の紙幣8の帯電状態により、繰り出す最上段の紙幣8と次の紙幣8との間に電気的引力が働いていると、これらの紙幣8が互いにくっつき合って、重走状態で繰り出されてしまうことがある。
【0015】
本発明は、これら従来技術の課題を解決するためのものであり、複数の紙媒体の良好な集積を実現すると共に、繰り出し時の重走を防ぐ紙媒体搬送方法及び紙媒体搬送機構並びに紙媒体取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたもので、本発明に係る紙媒体搬送方法は、複数の紙媒体をローラーで1枚ずつ搬送する紙媒体搬送方法において、前記ローラーとして帯電ローラーを用い、当該帯電ローラーによって前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る紙媒体搬送機構は、複数の紙媒体をローラーで1枚ずつ搬送する紙媒体搬送機構において、前記ローラーとして、前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送する帯電ローラーを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る紙媒体取扱装置は、複数の紙媒体を内部に集積する集積部と、当該集積部内に前記紙媒体を取り込み、又は当該集積部内の前記紙媒体を外部に繰り出す紙媒体搬送機構とを備えた紙媒体取扱装置において、前記紙媒体搬送機構として、請求項4乃至8のいずれか1項に記載の紙媒体搬送機構を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
集積動作では、紙媒体を速やかに整列して集積することができる。繰り出し動作では、各紙媒体を互いに離間させ、重走を抑えて、1枚ずつ繰り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る紙媒体取扱装置を示す概略構成図である。
【図2】従来の紙幣入金整理機を示す概略構成図である。
【図3】従来の紙媒体取扱装置を用いた集積方法を示す概略構成図である。
【図4】従来の紙媒体取扱装置を用いた繰り出し方法を示す概略構成図である。
【図5】帯電系列表を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る紙媒体取扱装置を示す概略構成図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るダブル帯電ローラー及び第2帯電ローラーを示す概略構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るダブル帯電ローラーの集積時の動作を示す概略構成図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るダブル帯電ローラーの繰り出し時の動作を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るスライド帯電ローラー及び第2帯電ローラーを示す正面図及び側面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るスライド帯電ローラーの集積時の動作を示す正面図及び側面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係るスライド帯電ローラーの繰り出し時の動作を示す正面図及び側面図である。
【図13】本発明の第1変形例を示す正面図及び側面図である。
【図14】本発明の第2変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る紙媒体搬送方法及び紙媒体搬送機構並びに紙媒体取扱装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係る紙媒体取扱装置は、例えば、金融機関等に配設されたATM、CD等の自動取引装置や現金処理機に取り付けられる装置である。その他、鉄道の駅、バスの停留所、遊園地、ゲームセンタ等の遊技場、映画館等の劇場、博物館、駐車場、レストラン等の食堂、ゴルフ場等のスポーツ施設等に配設された、飲料、切符、食券等を販売する自動販売機や、両替機等にも取り付けられる装置である。この紙媒体取扱装置は、紙幣等の紙媒体を集積し、集積した紙媒体を繰り出すための装置である。本実施形態に係る紙媒体搬送方法は紙媒体搬送機構によって実施される。紙媒体搬送機構は紙媒体取扱装置に組み込まれている。
【0022】
[第1実施形態]
本実施形態の紙媒体取扱装置は紙媒体の集積用の装置である。紙媒体取扱装置25は、図1に示すように、複数の紙媒体としての紙幣26を内部に取り込んで積み上げる集積部27と、この集積部27内に紙幣26を取り込む紙媒体搬送機構28と、集積部27に集積された紙幣26を移動させる移動機構部(図示せず)等を備えて構成されている。
【0023】
集積部27は、紙幣26の寸法よりも少し大きい程度の底面を有する筺体で構成されている。集積部27内には、積層されて紙幣26を整列させる案内板30が設けられている。集積部27内に取り込まれた各紙幣26は、案内板30に案内されて底面に落下するようになっている。
【0024】
紙媒体搬送機構28は、紙幣26を搬送する紙幣搬送路31と、この紙幣搬送路31を搬送されてきた紙幣26を集積部27の入り口32で上下から挟んで帯電させると共に1枚ずつ集積部27内に取り込む第1,2帯電ローラー33,34とから構成されている。
【0025】
紙幣搬送路31は、ATMの紙幣投入口等から集積部27の入り口32まで紙幣26を搬送するための搬送路である。紙幣搬送路31は、案内レールや搬送ベルト等で構成されている。
【0026】
第1,2帯電ローラー33,34は、各紙幣26を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙幣26間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送するためのローラーである。第1,2帯電ローラー33,34には、各ローラーを駆動させる駆動装置(図示せず)がそれぞれ設けられている。ここでは、第1,2帯電ローラー33,34は、紙幣26を集積するためのローラーであるため、互いに異極性に帯電するように構成されている。具体的には、第1,2帯電ローラー33,34は、紙幣搬送路31を境に上下に配置されて、上側の第1帯電ローラー33がマイナスに、下側の第2帯電ローラー34がプラスに帯電するように構成されている。第1,2帯電ローラー33,34は、帯電系列表(図5参照)で選択した材料で構成される。即ち、各第1,2帯電ローラー33,34は、帯電系列表に沿って帯電させたい極性に応じた材料で構成される。例えば、第1帯電ローラー33は、マイナスに帯電しやすい塩化ビニルを、第2帯電ローラー34は、プラスに帯電しやすいナイロンを用いる。これらの材料で第1,2帯電ローラー33,34の外周を覆ったり、これらの材料で第1,2帯電ローラー33,34を構成したりする。これにより、第1,2帯電ローラー33,34が、互いに反対の極性に帯電して、紙幣26を挟んで搬送しながらその上側面と下側面とで反対の極性に帯電させるようになっている。
【0027】
これにより、第1,2帯電ローラー33,34は、隣接する2枚の紙幣26の対向する面(互いに向き合う面)を互いに異極性に帯電させて紙幣26を集積部27内に取り込み、隣接する紙幣26間に電気的引力を発生させ互いに整列して集積させるようになっている。なお、第1,2帯電ローラー33,34は隣接する2枚の紙幣26の対向する面を互いに異極性に帯電させればよいため、第1,2帯電ローラー33,34の帯電極性を逆に、即ちプラスとマイナスを逆に帯電させるようにしてもよい。
【0028】
次に、上述の構成の紙媒体取扱装置25の紙媒体搬送機構28を用いた紙媒体搬送方法について説明する。
【0029】
まず、紙幣26を、紙幣搬送路31に通して集積部27に向けて搬送する。集積部27の入り口32に入った紙幣26は、第1,2帯電ローラー33,34で挟まれて、集積部27の内部に取り込まれる。このとき、上側の第1帯電ローラー33はマイナスに、下側の第2帯電ローラー34はプラスに帯電しやすい材料で構成されているため、第1,2帯電ローラー33,34を通過した紙幣26は、剥離帯電により上側がプラスに、下側がマイナスに帯電する。紙幣26は、その状態で集積部27内の空中に放出され、底部に落下する。
【0030】
この動作が連続的に繰り返されると、1枚前に集積された紙幣26の上側面はプラスに帯電しており、その次に集積される紙幣26の下側面はマイナスに帯電しているため、その間に電気的引力が働き、空中の紙幣26が、集積部27に既に集積されている1枚前の紙幣26に引き付けられる。これにより、空中の紙幣26は、集積部27の内壁と案内板30とに案内されて整列しながら、既に集積されている紙幣26の上側に短時間で速やかに集積される。
【0031】
以上のように、紙幣搬送路31を搬送されてきた各紙幣26の上下面を、第1,2帯電ローラー33,34で互いに逆の極性に帯電させて、集積部27に既に集積されている紙幣26と電気的引力で互いに引き合うようにしたため、特別な装置を必要とせずに、連続的に送られてくる複数の紙幣26を速やかに整列して集積させることができる。
【0032】
本実施形態の紙媒体取扱装置25では、新たな機構部を追加することなく、既に集積部27に備えられている第1,2帯電ローラー33,34の材質を帯電系列表のプラス側とマイナス側の部材に変更することで、本実施形態の作用、効果を奏することができるため、汎用性に優れている。
【0033】
また、集積部27に集積された紙幣26と、第1,2帯電ローラー33,34で繰り出された紙幣26が互いに引き付け合って集積するため、以下の効果が得られる。
【0034】
搬送路で摩擦帯電によって紙幣26に蓄積した電荷を従来のように除電バーで逃がすのではなく、その逆に第1,2帯電ローラー33,34で紙幣26を積極的に帯電させて、その帯電に伴う電気的引力を利用して、紙幣26を速やかに整列して集積することができる。
【0035】
紙幣26を集積部27内に集積させるとき、集積部27内に放出された紙幣26にその周囲の装置が接触することがなく電気的引力で集積されるため、紙幣26の物理的状態に関係なく、かつ紙幣26の挙動へ悪影響を与えることなく、短時間で確実に集積させることができる。この結果、紙媒体取扱装置25に対する信頼性が向上する。
【0036】
さらに、集積部27の入り口32に搬送されてきた紙幣26をたたき落とす集積機構や、紙幣26に接触して除電する除電バーが必要ないため、部品点数が減って、コスト低減を図ることができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る紙媒体取扱装置について説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は紙媒体の繰り出し用の装置である。この紙媒体取扱装置は、前記第1実施形態の紙媒体取扱装置25とほぼ同様の構成を有するため、同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
本実施形態の紙媒体取扱装置41は、図6に示すように、集積部42と、紙媒体搬送機構43等を備えて構成されている。
【0039】
集積部42は、案内板30と共に、昇降ステージ45と、繰り出し機構46とを備えている。昇降ステージ45は、集積部42内に集積された紙幣26を繰り出すに際して、紙幣26を繰り出し機構46に接触させるために紙幣26を上昇させるための機構である。昇降ステージ45を昇降させる機構としては、公知の昇降装置すべてを用いることができる。繰り出し機構46は、回転ローラーを備えて構成され、集積部42内に集積された紙幣26を、回転ローラーの摩擦力で後述する第1,2帯電ローラー47,48側へ送るための機構である。繰り出し機構46には、回転ローラーを駆動させる駆動装置(図示せず)が設けられている。この繰り出し機構46によって、紙幣26が1枚ずつ第1,2帯電ローラー47,48側へ送られるようになっている。
【0040】
紙媒体搬送機構43は、第1実施形態と同様の紙幣搬送路31と、集積部42内に集積された紙幣26を集積部42の出口44から1枚ずつ紙幣搬送路31に繰り出す第1,2帯電ローラー47,48とから構成されている。
【0041】
第1,2帯電ローラー47,48は、隣接する紙幣26の対向する面を互いに同極性に帯電させるためのローラーである。ここで、第1,2帯電ローラー47,48は、両方とも、帯電系列表でプラスに帯電しやすいナイロンを用いる。
【0042】
この材料で第1,2帯電ローラー47,48の外周を覆ったり、これらの材料で第1,2帯電ローラー47,48を構成したりする。これにより、第1,2帯電ローラー47,48が、互いに同極性に帯電して、紙幣26を挟んで搬送しながらその上側面と下側面とで同極性に帯電させるようになっている。これにより、第1,2帯電ローラー47,48は、繰り出し機構46によって2枚重ね状態で送られてきた紙幣26の上側面と下側面とを同極性に帯電させ、各紙幣26の間も同極性に帯電させるようになっている。これにより、各紙幣26の間に電気的疎力を発生させて、各紙幣26を互いに離間させ、重走を抑えて、1枚ずつ繰り出すようになっている。
【0043】
次に、上述の構成の紙媒体取扱装置41の紙媒体搬送機構43を用いた紙媒体搬送方法について説明する。ここでは、紙媒体搬送方法は、紙幣26の繰り出し方法である。
【0044】
図6中の集積部42は、紙幣26が整列して積み上げて集積されている状態である。まず、集積されている一番上の紙幣26が、繰り出し機構46に押される位置まで昇降ステージ45を上昇させる。次に、繰り出し機構46を駆動して紙幣26を擦り、紙幣26が第1,2帯電ローラー47,48に接触する位置まで繰り出す。このとき、紙幣26の帯電状態によって、図6のように2枚重ね状態で第1,2帯電ローラー47,48に繰り出されることがある。
【0045】
一方、第1,2帯電ローラー47,48は、両方ともプラスに帯電しているため、2枚重ねの各紙幣26が各ローラーで上下両側から挟まれると、上側の紙幣26の上側面と下側の紙幣26の下側面とはそれぞれ、剥離帯電によって各ローラーのプラス極性と逆のマイナスに帯電する。このため、各紙幣26の間の対向する面(上側の紙幣26の下側面と下側の紙幣26の上側面)は共に同極性のプラスに帯電する。これにより、各紙幣26の間に電気的疎力が発生して、各紙幣26が互いに離間する。この結果、2枚重ねの各紙幣26は互いに離れて1枚だけが第1,2帯電ローラー47,48によって紙幣搬送路31に繰り出される。
【0046】
以上のように、第1,2帯電ローラー47,48によって、隣接する紙幣26の対向する面を互いに同極性に帯電させて、隣接する紙幣26間に電気的疎力を発生させ互いに離間させ重走を抑えて繰り出すようにしたため、集積部42に集積された紙幣26を確実に1枚ずつ繰り出すことができるようになる。この結果、紙媒体取扱装置41に対する信頼性が向上する。
【0047】
本実施形態の紙媒体取扱装置41では、新たな機構部を追加することなく、既に集積部42に備えられている紙幣搬送路31の上下の第1,2帯電ローラー47,48の材質を帯電系列表のプラス側(またはマイナス側)の同極性に変更することで、本実施形態の作用、効果を奏することができるため、汎用性に優れている。
【0048】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る紙媒体取扱装置について説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は紙媒体の集積及び繰り出し用の装置である。この紙媒体取扱装置は、前記第1及び第2実施形態の紙媒体取扱装置とほぼ同様の構成を有するため、ここでは、帯電ローラーを中心に説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は、第1実施形態の集積用の帯電ローラーと、第2実施形態の繰り出し用の帯電ローラーの両方の機能を兼ね備えたダブルローラー機構を備えたものである。具体的には、図7に示すように、ダブル帯電ローラー51と、第2帯電ローラー52とを備えた。
【0049】
ダブル帯電ローラー51は、集積時に、隣接する紙幣26の対向する面を互いに異極性に帯電させると共に、繰り出し時に、隣接する紙幣26の対向する面を互いに同極性に帯電させるためのローラーである。ダブル帯電ローラー51は、集積用帯電ローラー54と、繰り出し用帯電ローラー55と、各ローラー54,55を支持するローラー支持アーム56と、集積時と繰り出し時とで各ローラー54,55を回動させる切換機構57とから構成されている。
【0050】
集積用帯電ローラー54は、第1実施形態の第1帯電ローラー33と同一部材である。繰り出し用帯電ローラー55は、第2実施形態の第1帯電ローラー47と同一部材である。また第2帯電ローラー52は、第1実施形態の第2帯電ローラー34及び第2実施形態の第2帯電ローラー48と同じ機能を有する部材である。これにより、集積用帯電ローラー54と第2帯電ローラー52とが協働すると、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。また、繰り出し用帯電ローラー55と第2帯電ローラー52とが協働すると、第2実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0051】
ローラー支持アーム56は、集積用帯電ローラー54及び繰り出し用帯電ローラー55を回転可能に支持するための部材である。ローラー支持アーム56は、V字型に形成され、集積用帯電ローラー54及び繰り出し用帯電ローラー55の両端部にそれぞれ取り付けられている。
【0052】
切換機構57は、集積時と繰り出し時とで各ローラー54,55を切り替えるためにローラー支持アーム56を回動させる装置である。切換機構57は、ローラー支持アーム56を支持する動作軸58と、この動作軸58を回動させる駆動装置(図示せず)とを備えて構成されている。駆動装置は、集積時と繰り出し時とに応じて動作軸58を介してローラー支持アーム56を回動させる。
【0053】
以上の構成により、集積時には、図8に示すように、切換機構57で集積用帯電ローラー54を第2帯電ローラー52に対向させる。これにより、上述した第1実施形態と同様の作用を奏する。繰り出し時には、図9に示すように、切換機構57で繰り出し用帯電ローラー55を第2帯電ローラー52に対向させる。これにより、上述した第2実施形態と同様の作用を奏する。
【0054】
以上のように、本実施形態の紙媒体取扱装置では、ダブル帯電ローラー51を備えたので、集積と繰り出しの両方の処理を、1つの装置で行うことができるようになり、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0055】
切換機構57で集積と繰り出しの両方の処理を適宜切り替えることができるため、リサイクルATM等の集積と繰り出しの両方の処理を行う必要がある装置に用いることができる。
【0056】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る紙媒体取扱装置について説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は紙媒体の集積及び繰り出し用の装置である。この紙媒体取扱装置は、前記第1及び第2実施形態の紙媒体取扱装置とほぼ同様の構成を有するため、ここでは、帯電ローラーを中心に説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は、前記第3実施形態と同様に、第1実施形態の集積用の帯電ローラーと、第2実施形態の繰り出し用の帯電ローラーの機能を兼ね備えたダブルローラー機構を備えたものである。
【0057】
具体的には、図10に示すように、スライド帯電ローラー61と、第2帯電ローラー62とを備えた。
【0058】
スライド帯電ローラー61は、集積時に、隣接する紙幣26の対向する面を互いに異極性に帯電させると共に、繰り出し時に、隣接する紙幣26の対向する面を互いに同極性に帯電させるためのローラーである。スライド帯電ローラー61は、集積用帯電ローラー64と、繰り出し用帯電ローラー65と、各ローラー64,65を支持するローラー支持軸66と、集積時と繰り出し時とで各ローラー54,55をスライドさせて切り替える切換機構67とから構成されている。
【0059】
集積用帯電ローラー64は、第1実施形態の第1帯電ローラー33と同一の材質で構成されている。繰り出し用帯電ローラー65は、第2実施形態の第1帯電ローラー47と同一の材質で構成されている。集積用帯電ローラー64と繰り出し用帯電ローラー65は、共に肉厚の円盤状に形成され、ローラー支持軸66に交互に取り付けられている。
【0060】
ローラー支持軸66は、交互に配設された集積用帯電ローラー64と繰り出し用帯電ローラー65とを一体的に支持する軸である。ローラー支持軸66は、軸方向にスライド可能に支持され、集積時と繰り出し時に応じて切換機構67で軸方向にスライドされるようになっている。
【0061】
切換機構67は、ローラー支持軸66の一端(図10中の右端)に設けられた集積動作用従動ギア69と、この集積動作用従動ギア69の外側(右側)に集積動作用従動ギア69と一体的に設けられたクラッチ板70と、このクラッチ板70に対抗して設けられ集積動作時にクラッチ板70を吸着して集積動作用従動ギア69を後述する集積用駆動ギア75に噛み合わせる集積動作用クラッチ71と、ローラー支持軸66の他端に設けられた繰り出し動作用従動ギア72と、この繰り出し動作用従動ギア72の外側(左側)に繰り出し動作用従動ギア72と一体的に設けられたクラッチ板73と、このクラッチ板73に対抗して設けられ繰り出し動作時にクラッチ板73を吸着して繰り出し動作用従動ギア72を後述する繰り出し用駆動ギア76に噛み合わせる繰り出し動作用クラッチ74と、駆動モーター(図示せず)に連結されて集積動作用従動ギア69と繰り出し動作用従動ギア72とにそれぞれ対抗して設けられた集積用駆動ギア75及び繰り出し用駆動ギア76とから構成されている。集積用駆動ギア75と繰り出し用駆動ギア76とは、それぞれ逆方向に回転するように設定されている。
【0062】
第2帯電ローラー62は、第1実施形態の第2帯電ローラー34及び第2実施形態の第2帯電ローラー48と同じ機能を有する帯電ローラー部77と、相手側の集積用帯電ローラー64及び繰り出し用帯電ローラー65に影響を与えることも影響を受けることもない材料であるノーマル材料からなる非帯電ローラー部78と、これらを交互に配列して一体的に支持する支持軸79とから構成されている。
【0063】
支持軸79で支持された帯電ローラー部77及び非帯電ローラー部78は、従動ローラーであり、定位置で回転可能に支持され、集積用帯電ローラー64又は繰り出し用帯電ローラー65で回転駆動されるようになっている。これにより、集積用帯電ローラー64と帯電ローラー部77とが協働すると、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。また、繰り出し用帯電ローラー65と帯電ローラー部77とが協働すると、第2実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0064】
以上の構成により、集積時には、図11に示すように、切換機構67の集積動作用クラッチ71が作動して、クラッチ板70を吸着する。これにより、集積用帯電ローラー64が帯電ローラー部77と対向して、上述した第1実施形態と同様の作用を奏する。繰り出し時には、図12に示すように、切換機構67の繰り出し動作用クラッチ74が作動して、クラッチ板73を吸着する。これにより、繰り出し用帯電ローラー65が帯電ローラー部77と対向して、上述した第2実施形態と同様の作用を奏する。
【0065】
以上のように、本実施形態の紙媒体取扱装置では、スライド帯電ローラー61を備えたので、第3実施形態と同様に、集積と繰り出しの両方の処理を、1つの装置で行うことができるようになり、第1及び第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0066】
切換機構57で集積と繰り出しの両方の処理を適宜切り替えることができるため、リサイクルATM等の集積と繰り出しの両方の処理を行う必要がある装置に用いることができる。
【0067】
[変形例]
第2実施形態において、第1,2帯電ローラー47,48で紙幣26を繰り出す際に、その繰り出し力が変化することがある。即ち、第1,2帯電ローラー47,48の材料変更によって第1,2帯電ローラー47,48の摩擦係数が変更して、紙幣26の繰り出し力が変化することがある。この場合は、図13に示すように、第1,2帯電ローラー47,48を、第1部材81,83と第2部材82,84とから構成して一定間隔で材料を混在させて、1枚の紙幣26全体に働く摩擦力を調節する。また、第1,2帯電ローラー47,48の形状において、環状凹溝85を適宜設けて紙幣26との接触面積を調節して、紙媒体1枚全体に働く摩擦力を調節する。
【0068】
また、前記各実施形態では、各帯電ローラーを、その材料を変えて帯電させるようにしたが、図14に示すように、積極的に電圧を印加して帯電させてもよい。具体的には、帯電性を備えた第1帯電ローラー87及び第2帯電ローラー88と、これらのローラー87,88と電気的に接続されて適宜電圧を印加する電圧印加装置89とを備え、電圧印加装置89で各ローラー87,88に対して、帯電させたい極性に応じて電圧を印加する。さらに、紙媒体の種類に応じて帯電量を調整したい場合には、印加電圧値を適宜調整する。これにより、各ローラー87,88を確実に帯電させることができると共に、その帯電量を設定値に確実にすることができ、前記各実施形態同様の作用、効果を奏することができる。
【0069】
また、前記各実施形態及び前記変形例では、ローラーを対向して2つ設けたが、1つのローラーの場合も本発明を適用することができる。具体的には、ローラーを接触する紙媒体との関係で帯電する材料にしたり、ローラーと紙媒体との間に電圧をかけたりして帯電させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
前記各実施形態では、紙幣を集積、繰り出しするATMを例に説明したが、紙幣以外の紙媒体を搬送、集積、繰り出しする装置を含む、紙媒体取扱装置全般に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
25:紙媒体取扱装置、26:紙幣、27:集積部、28:紙媒体搬送機構、30:案内板、31:紙幣搬送路、32:入り口、33:第1帯電ローラー、34:第2帯電ローラー、41:紙媒体取扱装置、42:集積部、43:紙媒体搬送機構、44:出口、45:昇降ステージ、46:繰り出し機構、47:第1帯電ローラー、48:第2帯電ローラー、51:ダブル帯電ローラー、52:第2帯電ローラー、54:集積用帯電ローラー、55:繰り出し用帯電ローラー、56:ローラー支持アーム、57:切換機構、58:動作軸、61:スライド帯電ローラー、62:第2帯電ローラー、64:集積用帯電ローラー、65:繰り出し用帯電ローラー、66:ローラー支持軸、67:切換機構、69:集積動作用従動ギア、70:クラッチ板、71:集積動作用クラッチ、72:繰り出し動作用従動ギア、73:クラッチ板、74:繰り出し動作用クラッチ、75:集積用駆動ギア、76:繰り出し用駆動ギア、77:帯電ローラー部、78:非帯電ローラー部、79:支持軸、
81,83:第1部材、82,84:第2部材、85:環状凹溝、87:第1帯電ローラー、88:第2帯電ローラー、89:電圧印加装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の紙媒体を搬送して集積したり、集積した複数の紙媒体を繰り出したりする紙媒体搬送方法及び紙媒体搬送機構並びに紙媒体取扱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の紙媒体を搬送して集積したり、集積した紙媒体を繰り出したりする紙媒体取扱装置を組み込んだ装置としては、例えば銀行ATMがある。さらに、上記集積及び繰り出しの両方を必要とする装置としては、例えばリサイクルATMがある。このような装置の一例としては特許文献1がある。この特許文献1の紙葉類取扱装置を以下に概説する。ここでは、ATMの例であるため、紙葉類として紙幣を用いる。
【0003】
特許文献1の紙幣取扱装置は、紙幣入金整理機に組み込まれた例である。この紙幣入金整理機1は、図2に示すように、紙幣取扱機構2の他に、表示操作部3、認識部4、入金部5、帯封部6及び表裏反転部7を有する。前記表示操作部3は、キーボード、タッチパネル等の入力装置、及び、液晶ディスプレイ等の表示装置を備え、オペレータがこれを操作する。そして、入金部5にセットされた紙幣(図示せず)は、紙幣入金整理機1内に取り込まれ、搬送路9に沿って搬送され、紙幣取扱機構2に送り込まれる。
紙幣取扱機構2は、複数の収納部(紙媒体取扱装置)10を備えている。各収納部10は、あらかじめ対応付けられた所定の金種の紙幣を集積して収納すると共に、集積した紙幣を適宜繰り出す。
【0004】
このようなリサイクルATMとしての紙幣入金整理機1では、顧客が入金した紙幣を1枚ずつ連続して収納部10に取り込んで集積し、集積した紙幣を顧客への出金紙幣として、1枚ずつ連続して繰り出して使用する。
【0005】
この収納部10における、従来の集積方法を図3に示す。なお、図3等において紙幣8は、説明のために厚みを持たせている。まず搬送路12を通ってくる紙幣8は、搬送路12との間の摩擦により摩擦帯電した状態で、収納部10の入り口まで搬送され、上下2つのローラー13,14を通過して収納部10の空中に放出される。このとき、紙幣8に除電バー16が接触されて、紙幣8に帯電した電荷を金属フレーム側に逃がして除電される。放出された紙幣8は、リサイクルのため整列される。即ち、紙幣8は、出金繰り出し紙幣として再使用(リサイクル)されるため、集積の際に集積機構17によってたたき落として整列される。
【0006】
次に、収納部10における、従来の繰り出し方法を図4に示す。繰り出し時は、紙幣8を1枚ずつ確実に収納部10より繰り出す必要がある。図4は、最初の収納部10の状態であって、収納部10内に紙幣8が整列して集積されている状態である。まず、集積された紙幣8が押し上げられる。即ち、集積されている一番上の紙幣8が繰り出し機構19に押される位置まで、ステージ20を上昇させて、紙幣8が押し上げられる。
【0007】
次に、繰り出し機構19が回転して紙幣8を擦り、繰り出し機構部19と紙幣8の間の摩擦力によって紙幣8を収納部10から繰り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−210309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような従来の収納部10での集積方法及び繰り出し方法では、以下の課題があった。
【0010】
集積動作においては、使い込まれた紙幣等のように柔らかい紙幣8の場合は、ローラー13,14を通過して収納部10の空中に放出されて、空中に留まる時間が長くなり、その次の紙幣8に接触することがある。即ち、複数の紙幣8が連続的にローラー13,14を通過して空中に放出されると、先に放出された紙幣8に、次の紙幣8が空中で接触して、集積状態に悪影響を与えることがある。
【0011】
また、紙幣8は、帯電した状態で空中に放出されるため、既に集積されている紙幣8との間に電気的疎力が働いた場合に、空中に留まる時間がさらに長くなり、その次の紙幣8が空中で接触して集積状態に悪影響を与えることがある。
【0012】
さらに、紙幣8が空中に長く留まると、集積機構17が、空中にいる紙幣8を叩くため、叩き具合が一定にならず、紙幣の集積状態がばらついてしまう。
【0013】
また、集積機構17を必要とするため、この集積機構17の部品コストや組立てコストがかかり、収納部10のコストが嵩む。
【0014】
繰り出し動作の場合は、紙幣8を1枚ずつ繰り出す必要があるが、繰り出し機構19が繰り出す紙幣8を押す力加減が非常に難しい。力加減の違いによって、1枚目の紙幣8と共に2枚目の紙幣8も一緒に重走状態で繰り出してしまうことがある。紙幣8は、正確に1枚ずつ繰り出す必要があるが、集積されている複数の紙幣8の帯電状態により、繰り出す最上段の紙幣8と次の紙幣8との間に電気的引力が働いていると、これらの紙幣8が互いにくっつき合って、重走状態で繰り出されてしまうことがある。
【0015】
本発明は、これら従来技術の課題を解決するためのものであり、複数の紙媒体の良好な集積を実現すると共に、繰り出し時の重走を防ぐ紙媒体搬送方法及び紙媒体搬送機構並びに紙媒体取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたもので、本発明に係る紙媒体搬送方法は、複数の紙媒体をローラーで1枚ずつ搬送する紙媒体搬送方法において、前記ローラーとして帯電ローラーを用い、当該帯電ローラーによって前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る紙媒体搬送機構は、複数の紙媒体をローラーで1枚ずつ搬送する紙媒体搬送機構において、前記ローラーとして、前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送する帯電ローラーを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る紙媒体取扱装置は、複数の紙媒体を内部に集積する集積部と、当該集積部内に前記紙媒体を取り込み、又は当該集積部内の前記紙媒体を外部に繰り出す紙媒体搬送機構とを備えた紙媒体取扱装置において、前記紙媒体搬送機構として、請求項4乃至8のいずれか1項に記載の紙媒体搬送機構を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
集積動作では、紙媒体を速やかに整列して集積することができる。繰り出し動作では、各紙媒体を互いに離間させ、重走を抑えて、1枚ずつ繰り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る紙媒体取扱装置を示す概略構成図である。
【図2】従来の紙幣入金整理機を示す概略構成図である。
【図3】従来の紙媒体取扱装置を用いた集積方法を示す概略構成図である。
【図4】従来の紙媒体取扱装置を用いた繰り出し方法を示す概略構成図である。
【図5】帯電系列表を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る紙媒体取扱装置を示す概略構成図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るダブル帯電ローラー及び第2帯電ローラーを示す概略構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るダブル帯電ローラーの集積時の動作を示す概略構成図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るダブル帯電ローラーの繰り出し時の動作を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るスライド帯電ローラー及び第2帯電ローラーを示す正面図及び側面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るスライド帯電ローラーの集積時の動作を示す正面図及び側面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係るスライド帯電ローラーの繰り出し時の動作を示す正面図及び側面図である。
【図13】本発明の第1変形例を示す正面図及び側面図である。
【図14】本発明の第2変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る紙媒体搬送方法及び紙媒体搬送機構並びに紙媒体取扱装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係る紙媒体取扱装置は、例えば、金融機関等に配設されたATM、CD等の自動取引装置や現金処理機に取り付けられる装置である。その他、鉄道の駅、バスの停留所、遊園地、ゲームセンタ等の遊技場、映画館等の劇場、博物館、駐車場、レストラン等の食堂、ゴルフ場等のスポーツ施設等に配設された、飲料、切符、食券等を販売する自動販売機や、両替機等にも取り付けられる装置である。この紙媒体取扱装置は、紙幣等の紙媒体を集積し、集積した紙媒体を繰り出すための装置である。本実施形態に係る紙媒体搬送方法は紙媒体搬送機構によって実施される。紙媒体搬送機構は紙媒体取扱装置に組み込まれている。
【0022】
[第1実施形態]
本実施形態の紙媒体取扱装置は紙媒体の集積用の装置である。紙媒体取扱装置25は、図1に示すように、複数の紙媒体としての紙幣26を内部に取り込んで積み上げる集積部27と、この集積部27内に紙幣26を取り込む紙媒体搬送機構28と、集積部27に集積された紙幣26を移動させる移動機構部(図示せず)等を備えて構成されている。
【0023】
集積部27は、紙幣26の寸法よりも少し大きい程度の底面を有する筺体で構成されている。集積部27内には、積層されて紙幣26を整列させる案内板30が設けられている。集積部27内に取り込まれた各紙幣26は、案内板30に案内されて底面に落下するようになっている。
【0024】
紙媒体搬送機構28は、紙幣26を搬送する紙幣搬送路31と、この紙幣搬送路31を搬送されてきた紙幣26を集積部27の入り口32で上下から挟んで帯電させると共に1枚ずつ集積部27内に取り込む第1,2帯電ローラー33,34とから構成されている。
【0025】
紙幣搬送路31は、ATMの紙幣投入口等から集積部27の入り口32まで紙幣26を搬送するための搬送路である。紙幣搬送路31は、案内レールや搬送ベルト等で構成されている。
【0026】
第1,2帯電ローラー33,34は、各紙幣26を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙幣26間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送するためのローラーである。第1,2帯電ローラー33,34には、各ローラーを駆動させる駆動装置(図示せず)がそれぞれ設けられている。ここでは、第1,2帯電ローラー33,34は、紙幣26を集積するためのローラーであるため、互いに異極性に帯電するように構成されている。具体的には、第1,2帯電ローラー33,34は、紙幣搬送路31を境に上下に配置されて、上側の第1帯電ローラー33がマイナスに、下側の第2帯電ローラー34がプラスに帯電するように構成されている。第1,2帯電ローラー33,34は、帯電系列表(図5参照)で選択した材料で構成される。即ち、各第1,2帯電ローラー33,34は、帯電系列表に沿って帯電させたい極性に応じた材料で構成される。例えば、第1帯電ローラー33は、マイナスに帯電しやすい塩化ビニルを、第2帯電ローラー34は、プラスに帯電しやすいナイロンを用いる。これらの材料で第1,2帯電ローラー33,34の外周を覆ったり、これらの材料で第1,2帯電ローラー33,34を構成したりする。これにより、第1,2帯電ローラー33,34が、互いに反対の極性に帯電して、紙幣26を挟んで搬送しながらその上側面と下側面とで反対の極性に帯電させるようになっている。
【0027】
これにより、第1,2帯電ローラー33,34は、隣接する2枚の紙幣26の対向する面(互いに向き合う面)を互いに異極性に帯電させて紙幣26を集積部27内に取り込み、隣接する紙幣26間に電気的引力を発生させ互いに整列して集積させるようになっている。なお、第1,2帯電ローラー33,34は隣接する2枚の紙幣26の対向する面を互いに異極性に帯電させればよいため、第1,2帯電ローラー33,34の帯電極性を逆に、即ちプラスとマイナスを逆に帯電させるようにしてもよい。
【0028】
次に、上述の構成の紙媒体取扱装置25の紙媒体搬送機構28を用いた紙媒体搬送方法について説明する。
【0029】
まず、紙幣26を、紙幣搬送路31に通して集積部27に向けて搬送する。集積部27の入り口32に入った紙幣26は、第1,2帯電ローラー33,34で挟まれて、集積部27の内部に取り込まれる。このとき、上側の第1帯電ローラー33はマイナスに、下側の第2帯電ローラー34はプラスに帯電しやすい材料で構成されているため、第1,2帯電ローラー33,34を通過した紙幣26は、剥離帯電により上側がプラスに、下側がマイナスに帯電する。紙幣26は、その状態で集積部27内の空中に放出され、底部に落下する。
【0030】
この動作が連続的に繰り返されると、1枚前に集積された紙幣26の上側面はプラスに帯電しており、その次に集積される紙幣26の下側面はマイナスに帯電しているため、その間に電気的引力が働き、空中の紙幣26が、集積部27に既に集積されている1枚前の紙幣26に引き付けられる。これにより、空中の紙幣26は、集積部27の内壁と案内板30とに案内されて整列しながら、既に集積されている紙幣26の上側に短時間で速やかに集積される。
【0031】
以上のように、紙幣搬送路31を搬送されてきた各紙幣26の上下面を、第1,2帯電ローラー33,34で互いに逆の極性に帯電させて、集積部27に既に集積されている紙幣26と電気的引力で互いに引き合うようにしたため、特別な装置を必要とせずに、連続的に送られてくる複数の紙幣26を速やかに整列して集積させることができる。
【0032】
本実施形態の紙媒体取扱装置25では、新たな機構部を追加することなく、既に集積部27に備えられている第1,2帯電ローラー33,34の材質を帯電系列表のプラス側とマイナス側の部材に変更することで、本実施形態の作用、効果を奏することができるため、汎用性に優れている。
【0033】
また、集積部27に集積された紙幣26と、第1,2帯電ローラー33,34で繰り出された紙幣26が互いに引き付け合って集積するため、以下の効果が得られる。
【0034】
搬送路で摩擦帯電によって紙幣26に蓄積した電荷を従来のように除電バーで逃がすのではなく、その逆に第1,2帯電ローラー33,34で紙幣26を積極的に帯電させて、その帯電に伴う電気的引力を利用して、紙幣26を速やかに整列して集積することができる。
【0035】
紙幣26を集積部27内に集積させるとき、集積部27内に放出された紙幣26にその周囲の装置が接触することがなく電気的引力で集積されるため、紙幣26の物理的状態に関係なく、かつ紙幣26の挙動へ悪影響を与えることなく、短時間で確実に集積させることができる。この結果、紙媒体取扱装置25に対する信頼性が向上する。
【0036】
さらに、集積部27の入り口32に搬送されてきた紙幣26をたたき落とす集積機構や、紙幣26に接触して除電する除電バーが必要ないため、部品点数が減って、コスト低減を図ることができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る紙媒体取扱装置について説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は紙媒体の繰り出し用の装置である。この紙媒体取扱装置は、前記第1実施形態の紙媒体取扱装置25とほぼ同様の構成を有するため、同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
本実施形態の紙媒体取扱装置41は、図6に示すように、集積部42と、紙媒体搬送機構43等を備えて構成されている。
【0039】
集積部42は、案内板30と共に、昇降ステージ45と、繰り出し機構46とを備えている。昇降ステージ45は、集積部42内に集積された紙幣26を繰り出すに際して、紙幣26を繰り出し機構46に接触させるために紙幣26を上昇させるための機構である。昇降ステージ45を昇降させる機構としては、公知の昇降装置すべてを用いることができる。繰り出し機構46は、回転ローラーを備えて構成され、集積部42内に集積された紙幣26を、回転ローラーの摩擦力で後述する第1,2帯電ローラー47,48側へ送るための機構である。繰り出し機構46には、回転ローラーを駆動させる駆動装置(図示せず)が設けられている。この繰り出し機構46によって、紙幣26が1枚ずつ第1,2帯電ローラー47,48側へ送られるようになっている。
【0040】
紙媒体搬送機構43は、第1実施形態と同様の紙幣搬送路31と、集積部42内に集積された紙幣26を集積部42の出口44から1枚ずつ紙幣搬送路31に繰り出す第1,2帯電ローラー47,48とから構成されている。
【0041】
第1,2帯電ローラー47,48は、隣接する紙幣26の対向する面を互いに同極性に帯電させるためのローラーである。ここで、第1,2帯電ローラー47,48は、両方とも、帯電系列表でプラスに帯電しやすいナイロンを用いる。
【0042】
この材料で第1,2帯電ローラー47,48の外周を覆ったり、これらの材料で第1,2帯電ローラー47,48を構成したりする。これにより、第1,2帯電ローラー47,48が、互いに同極性に帯電して、紙幣26を挟んで搬送しながらその上側面と下側面とで同極性に帯電させるようになっている。これにより、第1,2帯電ローラー47,48は、繰り出し機構46によって2枚重ね状態で送られてきた紙幣26の上側面と下側面とを同極性に帯電させ、各紙幣26の間も同極性に帯電させるようになっている。これにより、各紙幣26の間に電気的疎力を発生させて、各紙幣26を互いに離間させ、重走を抑えて、1枚ずつ繰り出すようになっている。
【0043】
次に、上述の構成の紙媒体取扱装置41の紙媒体搬送機構43を用いた紙媒体搬送方法について説明する。ここでは、紙媒体搬送方法は、紙幣26の繰り出し方法である。
【0044】
図6中の集積部42は、紙幣26が整列して積み上げて集積されている状態である。まず、集積されている一番上の紙幣26が、繰り出し機構46に押される位置まで昇降ステージ45を上昇させる。次に、繰り出し機構46を駆動して紙幣26を擦り、紙幣26が第1,2帯電ローラー47,48に接触する位置まで繰り出す。このとき、紙幣26の帯電状態によって、図6のように2枚重ね状態で第1,2帯電ローラー47,48に繰り出されることがある。
【0045】
一方、第1,2帯電ローラー47,48は、両方ともプラスに帯電しているため、2枚重ねの各紙幣26が各ローラーで上下両側から挟まれると、上側の紙幣26の上側面と下側の紙幣26の下側面とはそれぞれ、剥離帯電によって各ローラーのプラス極性と逆のマイナスに帯電する。このため、各紙幣26の間の対向する面(上側の紙幣26の下側面と下側の紙幣26の上側面)は共に同極性のプラスに帯電する。これにより、各紙幣26の間に電気的疎力が発生して、各紙幣26が互いに離間する。この結果、2枚重ねの各紙幣26は互いに離れて1枚だけが第1,2帯電ローラー47,48によって紙幣搬送路31に繰り出される。
【0046】
以上のように、第1,2帯電ローラー47,48によって、隣接する紙幣26の対向する面を互いに同極性に帯電させて、隣接する紙幣26間に電気的疎力を発生させ互いに離間させ重走を抑えて繰り出すようにしたため、集積部42に集積された紙幣26を確実に1枚ずつ繰り出すことができるようになる。この結果、紙媒体取扱装置41に対する信頼性が向上する。
【0047】
本実施形態の紙媒体取扱装置41では、新たな機構部を追加することなく、既に集積部42に備えられている紙幣搬送路31の上下の第1,2帯電ローラー47,48の材質を帯電系列表のプラス側(またはマイナス側)の同極性に変更することで、本実施形態の作用、効果を奏することができるため、汎用性に優れている。
【0048】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る紙媒体取扱装置について説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は紙媒体の集積及び繰り出し用の装置である。この紙媒体取扱装置は、前記第1及び第2実施形態の紙媒体取扱装置とほぼ同様の構成を有するため、ここでは、帯電ローラーを中心に説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は、第1実施形態の集積用の帯電ローラーと、第2実施形態の繰り出し用の帯電ローラーの両方の機能を兼ね備えたダブルローラー機構を備えたものである。具体的には、図7に示すように、ダブル帯電ローラー51と、第2帯電ローラー52とを備えた。
【0049】
ダブル帯電ローラー51は、集積時に、隣接する紙幣26の対向する面を互いに異極性に帯電させると共に、繰り出し時に、隣接する紙幣26の対向する面を互いに同極性に帯電させるためのローラーである。ダブル帯電ローラー51は、集積用帯電ローラー54と、繰り出し用帯電ローラー55と、各ローラー54,55を支持するローラー支持アーム56と、集積時と繰り出し時とで各ローラー54,55を回動させる切換機構57とから構成されている。
【0050】
集積用帯電ローラー54は、第1実施形態の第1帯電ローラー33と同一部材である。繰り出し用帯電ローラー55は、第2実施形態の第1帯電ローラー47と同一部材である。また第2帯電ローラー52は、第1実施形態の第2帯電ローラー34及び第2実施形態の第2帯電ローラー48と同じ機能を有する部材である。これにより、集積用帯電ローラー54と第2帯電ローラー52とが協働すると、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。また、繰り出し用帯電ローラー55と第2帯電ローラー52とが協働すると、第2実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0051】
ローラー支持アーム56は、集積用帯電ローラー54及び繰り出し用帯電ローラー55を回転可能に支持するための部材である。ローラー支持アーム56は、V字型に形成され、集積用帯電ローラー54及び繰り出し用帯電ローラー55の両端部にそれぞれ取り付けられている。
【0052】
切換機構57は、集積時と繰り出し時とで各ローラー54,55を切り替えるためにローラー支持アーム56を回動させる装置である。切換機構57は、ローラー支持アーム56を支持する動作軸58と、この動作軸58を回動させる駆動装置(図示せず)とを備えて構成されている。駆動装置は、集積時と繰り出し時とに応じて動作軸58を介してローラー支持アーム56を回動させる。
【0053】
以上の構成により、集積時には、図8に示すように、切換機構57で集積用帯電ローラー54を第2帯電ローラー52に対向させる。これにより、上述した第1実施形態と同様の作用を奏する。繰り出し時には、図9に示すように、切換機構57で繰り出し用帯電ローラー55を第2帯電ローラー52に対向させる。これにより、上述した第2実施形態と同様の作用を奏する。
【0054】
以上のように、本実施形態の紙媒体取扱装置では、ダブル帯電ローラー51を備えたので、集積と繰り出しの両方の処理を、1つの装置で行うことができるようになり、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0055】
切換機構57で集積と繰り出しの両方の処理を適宜切り替えることができるため、リサイクルATM等の集積と繰り出しの両方の処理を行う必要がある装置に用いることができる。
【0056】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る紙媒体取扱装置について説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は紙媒体の集積及び繰り出し用の装置である。この紙媒体取扱装置は、前記第1及び第2実施形態の紙媒体取扱装置とほぼ同様の構成を有するため、ここでは、帯電ローラーを中心に説明する。本実施形態の紙媒体取扱装置は、前記第3実施形態と同様に、第1実施形態の集積用の帯電ローラーと、第2実施形態の繰り出し用の帯電ローラーの機能を兼ね備えたダブルローラー機構を備えたものである。
【0057】
具体的には、図10に示すように、スライド帯電ローラー61と、第2帯電ローラー62とを備えた。
【0058】
スライド帯電ローラー61は、集積時に、隣接する紙幣26の対向する面を互いに異極性に帯電させると共に、繰り出し時に、隣接する紙幣26の対向する面を互いに同極性に帯電させるためのローラーである。スライド帯電ローラー61は、集積用帯電ローラー64と、繰り出し用帯電ローラー65と、各ローラー64,65を支持するローラー支持軸66と、集積時と繰り出し時とで各ローラー54,55をスライドさせて切り替える切換機構67とから構成されている。
【0059】
集積用帯電ローラー64は、第1実施形態の第1帯電ローラー33と同一の材質で構成されている。繰り出し用帯電ローラー65は、第2実施形態の第1帯電ローラー47と同一の材質で構成されている。集積用帯電ローラー64と繰り出し用帯電ローラー65は、共に肉厚の円盤状に形成され、ローラー支持軸66に交互に取り付けられている。
【0060】
ローラー支持軸66は、交互に配設された集積用帯電ローラー64と繰り出し用帯電ローラー65とを一体的に支持する軸である。ローラー支持軸66は、軸方向にスライド可能に支持され、集積時と繰り出し時に応じて切換機構67で軸方向にスライドされるようになっている。
【0061】
切換機構67は、ローラー支持軸66の一端(図10中の右端)に設けられた集積動作用従動ギア69と、この集積動作用従動ギア69の外側(右側)に集積動作用従動ギア69と一体的に設けられたクラッチ板70と、このクラッチ板70に対抗して設けられ集積動作時にクラッチ板70を吸着して集積動作用従動ギア69を後述する集積用駆動ギア75に噛み合わせる集積動作用クラッチ71と、ローラー支持軸66の他端に設けられた繰り出し動作用従動ギア72と、この繰り出し動作用従動ギア72の外側(左側)に繰り出し動作用従動ギア72と一体的に設けられたクラッチ板73と、このクラッチ板73に対抗して設けられ繰り出し動作時にクラッチ板73を吸着して繰り出し動作用従動ギア72を後述する繰り出し用駆動ギア76に噛み合わせる繰り出し動作用クラッチ74と、駆動モーター(図示せず)に連結されて集積動作用従動ギア69と繰り出し動作用従動ギア72とにそれぞれ対抗して設けられた集積用駆動ギア75及び繰り出し用駆動ギア76とから構成されている。集積用駆動ギア75と繰り出し用駆動ギア76とは、それぞれ逆方向に回転するように設定されている。
【0062】
第2帯電ローラー62は、第1実施形態の第2帯電ローラー34及び第2実施形態の第2帯電ローラー48と同じ機能を有する帯電ローラー部77と、相手側の集積用帯電ローラー64及び繰り出し用帯電ローラー65に影響を与えることも影響を受けることもない材料であるノーマル材料からなる非帯電ローラー部78と、これらを交互に配列して一体的に支持する支持軸79とから構成されている。
【0063】
支持軸79で支持された帯電ローラー部77及び非帯電ローラー部78は、従動ローラーであり、定位置で回転可能に支持され、集積用帯電ローラー64又は繰り出し用帯電ローラー65で回転駆動されるようになっている。これにより、集積用帯電ローラー64と帯電ローラー部77とが協働すると、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。また、繰り出し用帯電ローラー65と帯電ローラー部77とが協働すると、第2実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0064】
以上の構成により、集積時には、図11に示すように、切換機構67の集積動作用クラッチ71が作動して、クラッチ板70を吸着する。これにより、集積用帯電ローラー64が帯電ローラー部77と対向して、上述した第1実施形態と同様の作用を奏する。繰り出し時には、図12に示すように、切換機構67の繰り出し動作用クラッチ74が作動して、クラッチ板73を吸着する。これにより、繰り出し用帯電ローラー65が帯電ローラー部77と対向して、上述した第2実施形態と同様の作用を奏する。
【0065】
以上のように、本実施形態の紙媒体取扱装置では、スライド帯電ローラー61を備えたので、第3実施形態と同様に、集積と繰り出しの両方の処理を、1つの装置で行うことができるようになり、第1及び第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0066】
切換機構57で集積と繰り出しの両方の処理を適宜切り替えることができるため、リサイクルATM等の集積と繰り出しの両方の処理を行う必要がある装置に用いることができる。
【0067】
[変形例]
第2実施形態において、第1,2帯電ローラー47,48で紙幣26を繰り出す際に、その繰り出し力が変化することがある。即ち、第1,2帯電ローラー47,48の材料変更によって第1,2帯電ローラー47,48の摩擦係数が変更して、紙幣26の繰り出し力が変化することがある。この場合は、図13に示すように、第1,2帯電ローラー47,48を、第1部材81,83と第2部材82,84とから構成して一定間隔で材料を混在させて、1枚の紙幣26全体に働く摩擦力を調節する。また、第1,2帯電ローラー47,48の形状において、環状凹溝85を適宜設けて紙幣26との接触面積を調節して、紙媒体1枚全体に働く摩擦力を調節する。
【0068】
また、前記各実施形態では、各帯電ローラーを、その材料を変えて帯電させるようにしたが、図14に示すように、積極的に電圧を印加して帯電させてもよい。具体的には、帯電性を備えた第1帯電ローラー87及び第2帯電ローラー88と、これらのローラー87,88と電気的に接続されて適宜電圧を印加する電圧印加装置89とを備え、電圧印加装置89で各ローラー87,88に対して、帯電させたい極性に応じて電圧を印加する。さらに、紙媒体の種類に応じて帯電量を調整したい場合には、印加電圧値を適宜調整する。これにより、各ローラー87,88を確実に帯電させることができると共に、その帯電量を設定値に確実にすることができ、前記各実施形態同様の作用、効果を奏することができる。
【0069】
また、前記各実施形態及び前記変形例では、ローラーを対向して2つ設けたが、1つのローラーの場合も本発明を適用することができる。具体的には、ローラーを接触する紙媒体との関係で帯電する材料にしたり、ローラーと紙媒体との間に電圧をかけたりして帯電させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
前記各実施形態では、紙幣を集積、繰り出しするATMを例に説明したが、紙幣以外の紙媒体を搬送、集積、繰り出しする装置を含む、紙媒体取扱装置全般に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
25:紙媒体取扱装置、26:紙幣、27:集積部、28:紙媒体搬送機構、30:案内板、31:紙幣搬送路、32:入り口、33:第1帯電ローラー、34:第2帯電ローラー、41:紙媒体取扱装置、42:集積部、43:紙媒体搬送機構、44:出口、45:昇降ステージ、46:繰り出し機構、47:第1帯電ローラー、48:第2帯電ローラー、51:ダブル帯電ローラー、52:第2帯電ローラー、54:集積用帯電ローラー、55:繰り出し用帯電ローラー、56:ローラー支持アーム、57:切換機構、58:動作軸、61:スライド帯電ローラー、62:第2帯電ローラー、64:集積用帯電ローラー、65:繰り出し用帯電ローラー、66:ローラー支持軸、67:切換機構、69:集積動作用従動ギア、70:クラッチ板、71:集積動作用クラッチ、72:繰り出し動作用従動ギア、73:クラッチ板、74:繰り出し動作用クラッチ、75:集積用駆動ギア、76:繰り出し用駆動ギア、77:帯電ローラー部、78:非帯電ローラー部、79:支持軸、
81,83:第1部材、82,84:第2部材、85:環状凹溝、87:第1帯電ローラー、88:第2帯電ローラー、89:電圧印加装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙媒体をローラーで1枚ずつ搬送する紙媒体搬送方法において、
前記ローラーとして帯電ローラーを用い、当該帯電ローラーによって前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送することを特徴とする紙媒体搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の紙媒体搬送方法において、
前記帯電ローラーによって、隣接する紙媒体の対向する面を互いに異極性に帯電させて紙媒体を取り込み、隣接する紙媒体間に電気的引力を発生させ互いに整列して集積させることを特徴とする紙媒体搬送方法。
【請求項3】
請求項1に記載の紙媒体搬送方法において、
前記帯電ローラーによって、隣接する紙媒体の対向する面を互いに同極性に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的疎力を発生させ互いに離間させ重走を抑えて繰り出すことを特徴とする紙媒体搬送方法。
【請求項4】
複数の紙媒体をローラーで1枚ずつ搬送する紙媒体搬送機構において、
前記ローラーとして、前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送する帯電ローラーを備えたことを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項5】
請求項4に記載の紙媒体搬送機構において、
前記帯電ローラーによって、隣接する紙媒体の対向する面を互いに異極性に帯電させて紙媒体を取り込み、隣接する紙媒体間に電気的引力を発生させ互いに整列して集積させることを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項6】
請求項4に記載の紙媒体搬送機構において、
前記帯電ローラーによって、隣接する紙媒体の対向する面を互いに同極性に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的疎力を発生させ互いに離間させ重走を抑えて繰り出すことを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の紙媒体搬送機構において、
前記帯電ローラーが、紙媒体をその両側から挟むように2つ設けられ、各帯電ローラーが、帯電系列表に沿って帯電させたい極性に応じた材料で構成されたことを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項8】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の紙媒体搬送機構において、
前記帯電ローラーが、紙媒体をその両側から挟むように2つ設けられ、各帯電ローラーに接続されて、帯電させたい極性に応じて電圧を印加する電圧印加装置を備えたことを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項9】
複数の紙媒体を内部に集積する集積部と、当該集積部内に前記紙媒体を取り込み、又は当該集積部内の前記紙媒体を外部に繰り出す紙媒体搬送機構とを備えた紙媒体取扱装置において、
前記紙媒体搬送機構として、請求項4乃至8のいずれか1項に記載の紙媒体搬送機構を用いたことを特徴とする紙媒体取扱装置。
【請求項1】
複数の紙媒体をローラーで1枚ずつ搬送する紙媒体搬送方法において、
前記ローラーとして帯電ローラーを用い、当該帯電ローラーによって前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送することを特徴とする紙媒体搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の紙媒体搬送方法において、
前記帯電ローラーによって、隣接する紙媒体の対向する面を互いに異極性に帯電させて紙媒体を取り込み、隣接する紙媒体間に電気的引力を発生させ互いに整列して集積させることを特徴とする紙媒体搬送方法。
【請求項3】
請求項1に記載の紙媒体搬送方法において、
前記帯電ローラーによって、隣接する紙媒体の対向する面を互いに同極性に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的疎力を発生させ互いに離間させ重走を抑えて繰り出すことを特徴とする紙媒体搬送方法。
【請求項4】
複数の紙媒体をローラーで1枚ずつ搬送する紙媒体搬送機構において、
前記ローラーとして、前記各紙媒体を正極又は負極に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的引力又は電気的疎力を発生させて搬送する帯電ローラーを備えたことを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項5】
請求項4に記載の紙媒体搬送機構において、
前記帯電ローラーによって、隣接する紙媒体の対向する面を互いに異極性に帯電させて紙媒体を取り込み、隣接する紙媒体間に電気的引力を発生させ互いに整列して集積させることを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項6】
請求項4に記載の紙媒体搬送機構において、
前記帯電ローラーによって、隣接する紙媒体の対向する面を互いに同極性に帯電させて、隣接する紙媒体間に電気的疎力を発生させ互いに離間させ重走を抑えて繰り出すことを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の紙媒体搬送機構において、
前記帯電ローラーが、紙媒体をその両側から挟むように2つ設けられ、各帯電ローラーが、帯電系列表に沿って帯電させたい極性に応じた材料で構成されたことを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項8】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の紙媒体搬送機構において、
前記帯電ローラーが、紙媒体をその両側から挟むように2つ設けられ、各帯電ローラーに接続されて、帯電させたい極性に応じて電圧を印加する電圧印加装置を備えたことを特徴とする紙媒体搬送機構。
【請求項9】
複数の紙媒体を内部に集積する集積部と、当該集積部内に前記紙媒体を取り込み、又は当該集積部内の前記紙媒体を外部に繰り出す紙媒体搬送機構とを備えた紙媒体取扱装置において、
前記紙媒体搬送機構として、請求項4乃至8のいずれか1項に記載の紙媒体搬送機構を用いたことを特徴とする紙媒体取扱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−180641(P2011−180641A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41604(P2010−41604)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]