説明

紙幣入出金機

【課題】入金口に投入された紙幣の中に複数の異常紙幣が含まれていた場合において鑑別されない紙幣の発生を防止する。
【解決手段】鑑別部33に紙幣の識別情報を読取る紙幣識別情報読取り部と、その紙幣識別情報読取り部で読取った紙幣の識別情報を記憶する紙幣識別情報記憶部とを備え、鑑別部33で異常紙幣と鑑別された紙幣の識別情報が、既に紙幣識別情報記憶部に記憶されていると判定したとき、紙幣入出金口301の分離手段の分離方法を、先行する紙幣が鑑別部33で鑑別された後に後続する1枚の紙幣を分離して紙幣搬送路34(a)へ繰出す間欠分離に変更し、紙幣入出金口301に集積された紙幣を間欠分離で分離する制御部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動預払機や自動券売機等の自動取引装置に搭載され、紙幣の入金処理を行う紙幣入出金機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣入出金機は、入金口に投入された複数の紙幣を所定の間隔を空け、連続して1枚ずつ分離、搬送し、鑑別部で搬送された紙幣の鑑別を行い、許容以上に接近や斜行した紙幣、偽券、損券等の異常紙幣を検知した場合、その異常紙幣を、投入された紙幣との仕切りがない空間の入金口へ搬送し、再度1枚ずつ分離して搬送し、鑑別部で鑑別を行い、入金処理を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の紙幣入出金機において、10枚の紙幣が入金口に投入された場合の入金処理を図21に基づいて説明する。図21において、M1からM10は紙幣を表し、紙幣位置のAは入金口、Bは一時保留部と鑑別部との間の搬送路、Cは鑑別部、Dは鑑別部と一時保留部との間の搬送路、Eは一時保留部に当該紙幣が存在することを表し、ステップ1〜7は処理の進行を表し、図全体として各ステップにおける各紙幣の位置を表している。なお、入金口に投入された直後の紙幣はM1からM6の順に、所定の間隔を空け、連続して1枚ずつ分離、搬送され、M4は異常紙幣であるものとする。
【0004】
まず、ステップ1では、M1からM10の10枚の紙幣は、入金口に投入された状態であり、分離、搬送されていない状態である。
ステップ2では、紙幣M1〜M6が分離、搬送され、紙幣M4が鑑別部で異常紙幣と鑑別され、紙幣の搬送を停止した状態を示している。このとき、紙幣M1、M2は一時保留部に集積され、紙幣M3は一時保留部と鑑別部との間の搬送路、紙幣M4は鑑別部、紙幣M5、M6が鑑別部と一時保留部との間の搬送路、紙幣M7〜M10は入金口に存在する。
【0005】
ステップ3では、搬送路を動作させ、搬送路上に残留した紙幣M3〜M6を一時保留部へ移動した状態を示している。
ステップ4では、一時保留部へ移動した異常紙幣M4、および未だ鑑別されていない搬送路上の紙幣M5、M6を入金口へ移動した状態を示している。なお、一時保留部は先入れ後出しであるため、紙幣M6、M5、M4の順に入金口へ移動する。
【0006】
ステップ5では、未だ一度も分離、搬送されていない紙幣M7〜M10、および戻された紙幣M6、M5、M4を順に入金口から分離、搬送し、最後尾の紙幣M4が再び鑑別部で異常紙幣と鑑別されると紙幣の搬送を停止し、M7〜M10、M6、およびM5の紙幣は一時保留部に搬送された状態を示している。
ステップ6では、搬送路上の未鑑別の紙幣は存在しないため、異常紙幣M4のみを一時保留部へ移動した状態を示している。
ステップ7では、一時保留部へ移動した異常紙幣M4を入金口へ移動した状態を示している。
【0007】
このように従来の紙幣入出金機は、鑑別部の鑑別の結果で異常紙幣を検知すると、その異常紙幣とともに搬送路に残留した未鑑別の紙幣を入金口へ戻し、再び入金口に存在する紙幣を分離、搬送して入金処理を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−152722号公報(段落「0028」〜段落「0050」、図4、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の技術においては、入金口に投入された紙幣の中に複数の異常紙幣が含まれていた場合、異常紙幣に後続する紙幣(例えば、図21と同様に各ステップにおける各紙幣の位置を表した図22における異常紙幣M4または異常紙幣M8に後続する紙幣M9および紙幣M10)が、搬送路に残留した未鑑別の紙幣として異常紙幣とともに入金口へ戻され続け、鑑別部で鑑別されないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、入金口に投入された紙幣の中に複数の異常紙幣が含まれていた場合であっても鑑別されない紙幣の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明は、投入された入金紙幣を集積する紙幣入金部と、該紙幣入金部から紙幣を分離して紙幣搬送路へ繰出す分離手段と、前記紙幣搬送路で搬送される紙幣の鑑別を行う鑑別部と、前記紙幣入金部内へ搬送された紙幣を集積する集積手段とを有し、前記鑑別部で異常紙幣を検知したとき、該異常紙幣とともに前記紙幣搬送路上の未鑑別紙幣を前記紙幣入金部へ集積する紙幣入出金機において、前記鑑別部に紙幣の識別情報を読取る紙幣識別情報読取り部と、前記紙幣識別情報読取り部で読取った紙幣の識別情報を記憶する紙幣識別情報記憶部とを備え、前記鑑別部で異常紙幣と鑑別された紙幣の識別情報が、既に前記紙幣識別情報記憶部に記憶されていると判定したとき、前記分離手段による分離を先行する紙幣が前記鑑別部で鑑別された後に後続する1枚の紙幣を分離して前記紙幣搬送路へ繰出す間欠分離とする情報を記憶部に記憶し、前記記憶部に記憶した情報に基づいて前記紙幣入金口に集積された紙幣を間欠分離で分離する制御部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このようにした本発明は、入金口に投入された紙幣の中に複数の異常紙幣が含まれていた場合であっても鑑別されない紙幣の発生を防止できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施例における紙幣入出金機の構成を示すブロック図
【図2】第1の実施例における紙幣入出金機の構成を示す側面説明図
【図3】第1の実施例における紙幣入金口の平面説明図
【図4】第1の実施例における紙幣入金口の側面説明図
【図5】第1の実施例における入金処理を示すフローチャート
【図6】第1の実施例における記憶した記番号の説明図
【図7】第1の実施例における同一記番号処理示すフローチャート
【図8】第1の実施例における紙幣投入を受付ける動作の説明図
【図9】第1の実施例における紙幣分離動作の説明図
【図10】第1の実施例における紙幣搬送の説明図
【図11】第1の実施例における顧客操作表示部の画面表示例の説明図
【図12】第1の実施例における異常紙幣検知時の動作の説明図
【図13】第1の実施例における異常紙幣集積の動作の説明図
【図14】第1の実施例における異常紙幣集積後の動作の説明図
【図15】第1の実施例における異常紙幣検知時の動作の説明図
【図16】第2の実施例における紙幣入出金機の構成を示すブロック図
【図17】第2の実施例における紙幣入出金機の構成を示す側面説明図
【図18】第2の実施例における入金処理を示すフローチャート
【図19】第2の実施例における記憶した紙幣特徴情報の説明図
【図20】第2の実施例における同一紙幣特徴処理示すフローチャート
【図21】従来例における紙幣搬送の説明図
【図22】従来例における紙幣搬送の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明による紙幣入出金機の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は第1の実施例における紙幣入出金機の構成を示すブロック図、図2は第1の実施例における紙幣入出金機の構成を示す側面説明図である。
現金自動預払機や自動券売機等の自動取引装置は、一般に、図示しないCPU(Central Processing Unit)等の演算および制御手段で構成された主制御部、メモリ素子や磁気ディスク等で構成される記憶部を有し、顧客の操作を誘導する画面等を表示する表示手段および顧客の操作を受付ける操作手段からなる顧客操作表示部、紙幣の入出金処理を行う紙幣入出金機等を含めて装置全体の動作をその記憶部に格納された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて制御される。
【0015】
図1および図2において、紙幣入出金機3は、紙幣の入金処理、出金処理等を行うものである。
ここで、入金処理とは、紙幣入出金機3の紙幣受け渡し口である紙幣入金部としての接客部31から投入された紙幣を繰出して計数等し、紙幣カセット32へ収納する処理であり、出金処理とは、紙幣カセット32に収納されている紙幣を繰出して計数等し、接客部31へ集積させ、顧客に払い出す処理である。
【0016】
なお、本実施例では、紙幣の入出金処理を行う紙幣入出金機として説明するが、紙幣の入金処理だけを行う紙幣入金機としても良い。
制御部30は、少なくとも紙幣入出金機3全体の動作を制御する演算手段および制御手段であるが、上述した自動取引装置全体を制御する主制御部と共通化したものでもよい。
【0017】
接客部31は、顧客の操作により紙幣入出金部としての紙幣入出金口301から投入された入金紙幣を受け入れて集積し、また、顧客へ出金する紙幣または入金紙幣のうち異常紙幣と鑑別された紙幣等の返却紙幣を集積し、顧客との間で紙幣の受け渡しを行う部位である。投入された紙幣は、分離ローラ等の分離機構(分離手段)で1枚ずつ分離して紙幣搬送路へ繰り出すことができ、また、紙幣搬送路で搬送された出金される紙幣や返却紙幣を集積ローラ等の集積機構(集積手段)で集積することができる。
【0018】
紙幣カセット32は、紙幣を集積するもので、内部に配置された図示しないステージが昇降機構により上下動し、集積機構により収納される紙幣はこのステージ上に集積される。また、収納された紙幣は紙幣カセット32の上方に設けられた図示しない分離機構で1枚ずつ分離して繰り出すことができる。
この紙幣カセット32は、本実施例では、それぞれ同一構造の紙幣カセット32A、紙幣カセット32B、紙幣カセット32Cおよび紙幣カセット32Dの4つで構成されることになる。
【0019】
33は鑑別部であり、前記接客部31と紙幣カセット32との間の紙幣搬送路上に配置されている。この鑑別部33は、光学式CCD(Charge Coupled Device)センサを備え、そのCCDセンサにより、搬送される紙幣の表裏両面の画像データ等を収得し、その画像データ等と紙幣鑑別データベースに予め登録されている画像データ等を照合して紙幣の真偽、正損、金種等の鑑別および計数を行う。
また、鑑別部33は通過する紙幣の間隔や斜行等の搬送異常を検知することができるようになっており、入金処理において偽券または搬送異常と鑑別された異常紙幣を入金リジェクト紙幣という。
【0020】
さらに、鑑別部33は、紙幣識別情報読取り部としてのCCDセンサにより読取った紙幣の画像データから紙幣毎に印刷された紙幣識別情報としての記番号を文字として認識することができるようになっている。なお、これらの作用は制御部30との連携により行われる。
ここで、紙幣識別情報としての記番号は、紙幣毎に付与されてその紙幣の一面に予め印刷された英数字等で構成されたものである。
【0021】
34は搬送部であり、ベルト対またはローラ対で紙幣の表裏両面を挟持し、搬送する紙幣の搬送速度を任意に設定可能なモータ等の駆動手段により図2に示す紙幣搬送路34(a)、34(b)、34(c)、34(d)、34(e)を制御し、紙幣を搬送する動作を行う。
【0022】
紙幣搬送路34(a)は紙幣入出金口301と鑑別部33とを結び、紙幣搬送路34(b)は鑑別部33と後述する取り忘れ紙幣収納庫への分岐点とを結び、紙幣搬送路34(c)は取り忘れ紙幣収納庫への分岐点と後述する一時保留部とを結び、紙幣搬送路34(d)は一時保留部と紙幣入出金口301とを結び、紙幣搬送路34(e)は鑑別部33と各紙幣カセット32および後述するリジェクト収納庫とを結んでいる。
【0023】
これら紙幣搬送路34(a)、34(b)、34(c)、34(d)、34(e)の各分岐点には切替ブレード34(f)が設けてあり、その切替ブレード34(f)を制御することによって紙幣の搬送先を切り替えることができ、鑑別部33での鑑別結果に応じて紙幣の搬送方向を切り替える。
【0024】
35は一時保留部であり、顧客により紙幣入出金口301に投入された紙幣、すなわち、入金された紙幣を図示しない集積機構により一時的に貯留(集積)しておくものである。この一時保留部35は、顧客の操作により入金取引が成立する(入金金額が確認される)まで入金紙幣を巻き込みテープ等でドラムに巻き付け、一時保留する。一方、顧客の操作により入金取引が取り消された場合、貯留した入金紙幣は紙幣入出金口301に返却する。
【0025】
36はリジェクト収納庫であり、入金取引等の投入紙幣の取込み処理時に顧客が入金した紙幣の中で循環使用しない金種の紙幣、例えば二千円札や五千円札を収納する収納庫であって、搬送された紙幣を集積する機能を有している。
37は取り忘れ紙幣収納庫であり、出金処理時に紙幣入出金口301に紙幣を搬送した後、その一部またはすべての紙幣を顧客が取り忘れた場合に回収して収納する収納庫である。
【0026】
38はメモリ素子や磁気ディスク等で構成される記憶部であり、鑑別部33が鑑別や計数した結果、紙幣から読取った記番号、紙幣入出金口301の紙幣の分離方法の設定情報等を記憶する。なお、この記憶部38は、自動取引装置全体を制御するための各種制御プログラム(ソフトウェア)の格納部位と共用化してもよい。
ここで、記憶部38に記憶される設定情報である紙幣の分離方法について説明する。紙幣の分離方法とは、紙幣入出金口301に存在する紙幣の分離手段による分離方法であり、連続分離および間欠分離の二つの分離方法がある。
【0027】
連続分離とは、鑑別部33の鑑別処理時間や切替ブレード34(f)の動作時間等を考慮し、入金処理を最も短い時間で完了させることができる所定の最短紙幣間隔で紙幣入出金口301に存在する紙幣を、先行する紙幣が鑑別部33により鑑別される前に、連続して1枚ずつ分離して紙幣搬送路34(a)へ繰出すことをいう。
また、間欠分離(1枚分離)とは、紙幣入出金口301に存在する紙幣を、先行する紙幣が鑑別部33により鑑別された後に、後続する1枚の紙幣を分離して紙幣搬送路34(a)へ繰出すことをいう。
【0028】
したがって、紙幣入出金口301から分離、搬送された紙幣が鑑別部33により鑑別されたとき、連続分離では、鑑別部33と紙幣入出金口301との間の紙幣搬送路34(a)に一または複数の後続紙幣が存在することになるが、間欠分離では、鑑別部33と紙幣入出金口301との間の紙幣搬送路34(a)には後続紙幣が存在しないことになる。
【0029】
39は紙幣入出金口301のシャッタであり、紙幣入出金口301の上部に配置され、紙幣入出金口301内のピックアップローラによる紙幣の繰出し方向に直交する方向に往復移動可能に構成されており、顧客との取引における紙幣の投入時および取り出し時に紙幣入出金口301を解放し、紙幣の取込み処理時等には紙幣入出金口301を閉鎖する機能を備えたスライド式のシャッタである。
【0030】
次に、接客部の紙幣入出金口を図3の第1の実施例における紙幣入金口の平面説明図、図4の第1の実施例における紙幣入金口の側面説明図に基づいて説明する。
図3および図4において、ピックアップローラ302は、ピックアップローラ軸302aを中心に正逆回転可能に構成され、紙幣入出金口301の側方で支持板303の上方に配置され、紙幣の繰り出しが容易なようにその外周面の一部にゴム等の摩擦係数の大きい高摩擦部材が取り付けられており、支持板303上に立位で支持された紙幣を図4において下方(矢印E方向)に繰り出す機能を有している。本実施例における紙幣は、その短手方向によって支持板303上に立位で支持される。
【0031】
304はフィードローラであり、フィードローラ軸304aを中心に正逆回転可能に構成され、ピックアップローラ302の紙幣の繰出し方向の下流で支持板303の端部に配置されて紙幣の搬入、繰出しが容易なようにその外周面の一部にピックアップローラ302と同様の高摩擦部材が取り付けられると共に円周方向の全周にわたりリング状の溝部が2本並設されており、ピックアップローラ302により繰り出される紙幣をさらに搬送して図2に示す紙幣搬送路34(a)に繰り出す機能を有する。
【0032】
このピックアップローラ302とフィードローラ304とは、ギア列等の動力伝達機構で接続されており、フィードローラ304の回転にともなってピックアップローラ302が同方向かつ同速度で回転する。
【0033】
305は分離ローラであり、フィードローラ304に対向して配置され、その外周面にはフィードローラ304の溝部と山部に噛み合う円周方向の全周にわたりリング状の溝が1本設けられており、分離ローラ軸を中心に紙幣の搬入時にはフィードローラ304と共に回転し、紙幣の繰出し時には回転しない一方向回転機構を備えて紙幣入出金口301からフィードローラ304により繰り出される紙幣を1枚毎に分離する紙幣分離手段を有している。
【0034】
306はプールガイドであり、紙幣入出金口301のピックアップローラ302側に紙幣の繰出し方向に直交する方向に往復移動可能に配置されており、図3、図4に示すようにそれぞれのピックアップローラ302に対応させてその外周面を突出させるためのピックアップローラ302に接触しない程度の開口である窓部が設けてある。
【0035】
307はビルプレスであり、ピックアップローラ302の反対側に配置された側面視台形状の厚板部材であって、プールガイド306と対向して紙幣の繰出し方向と直交する方向に往復移動可能に配置されていると共に回転支点を中心に回動可能に構成されており、ピックアップローラ302側の面に支持板303に向けてプールガイド306から離れる方向に傾斜する傾斜面307aが設けられている。
【0036】
ここで、図3に示す紙幣挟持移動部300は、プールガイド306およびビルプレス307を矢印A、B方向への移動を可能にするものである。
プールガイド306およびビルプレス307の側面には案内部307bが設けてあり、側板303aに設けたガイド部に滑動可能に嵌合してある。この案内部307bはモータやベルト等を介して移動させるもので、ステッピングモータの回転制御やモータの回転軸に取り付けたエンコーダ等により、プールガイド306およびビルプレス307の移動量および位置の管理を行う。
【0037】
308は集積ローラであり、集積ローラ軸を中心に回転可能に設けた集積ローラ308と、これに対向配置したプレッシャローラ軸を中心に回転可能に設けたプレッシャローラ309とで構成され、支持板303のフィードローラ304とは反対側の端部に配置され、紙幣搬送路34(d)により搬送された投入リジェクト紙幣(鑑別部で異常紙幣と鑑別された紙幣)をプールガイド306の方向に移動させる紙幣集積機能を有している。
【0038】
SEN1は手挿入検知センサであり、顧客が紙幣入出金口301に紙幣を投入するとき、または、出金や返却された紙幣を取り出すときに挿入される手先などを検知するもので、複数個の光学式センサで構成される。
SEN2は紙幣セット検知センサであり、紙幣入出金口301内に紙幣が存在するか否かを検知するものである。
【0039】
SEN3は繰出し紙幣計数手段としての通過検知センサであり、ピックアップローラ302やフィードローラ304の回転により、紙幣搬送路34(a)に繰り出された紙幣の通過監視および通過した紙幣の枚数を計数するものである。なお、この通過検知センサSEN3が紙幣を検知する場合には、紙幣の一部がフィードローラ304と分離ローラ305の間で挟持、すなわち、紙幣搬送路側に突出しているものとして取り扱われる。
【0040】
なお、図2におけるSEN4は受渡検知センサであり、紙幣搬送路34(b)から一時保留部35に取り込まれる紙幣の通過監視を行うもので、この受渡検知センサSEN4のONまたはOFFのタイミングを利用して紙幣搬送路34(b)との間で紙幣の給送を制御する。
以上の他に、搬送用モータや紙幣搬送路の切替ブレード用のソレノイド等を有するが、本願発明に関係しないために説明を省略する。
【0041】
上述した構成の作用について図5の第1の実施例における入金処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップに従って、図1、図2、図6〜図15を参照しながら説明する。なお、本実施例では、自動取引装置を現金自動預払機として説明する。
【0042】
S1:顧客が「預入」取引を選択すると、接客部31を図8に示す如く、プールガイド306とビルプレス307で構成される紙幣挟持移動部を紙幣入出金口301のほぼ中央に移動させながら、シャッタ39を開き、紙幣の投入を可能にする。顧客は、通帳またはキャッシュカードを図示しない処理部に挿入する。
また、「預入」取引が選択されると制御部30は、紙幣入出金口301の紙幣分離方法が連続分離であることを記憶部38に記憶させる。
【0043】
S2:紙幣セット検知センサSEN2が投入された紙幣を検知した後、手挿入検知センサSEN1が顧客の手を検知していない場合には、顧客が紙幣を投入して紙幣入出金口301に手はないと判断してシャッタ39を閉める。
【0044】
S3:シャッタ39の閉が図示しない検知器により検出されると、ビルプレス307を図9に示す矢印B方向に移動をさせる。紙幣は、ビルプレス307によりプールガイド306と挟まれ、分離位置の近傍まで移動する。ビルプレス307は分離位置の近傍まで接近すると、図示しない回転機構により斜面307aが起立し、ピックアップローラ302に紙幣を押し付ける。
【0045】
S4:ピックアップローラ302およびフィードローラ304を図9に示す矢印C方向に回転させ、紙幣の繰出しを開始する。なお、分離ローラ305は回転しない。同時に、搬送部34は紙幣搬送路34(a)から紙幣搬送路34(c)をはじめ、各部を起動させる。なお、繰出された紙幣は通過検知センサSEN3により計数される。
【0046】
このとき、記憶部38に連続分離が記憶されている場合、制御部30は、所定の最短紙幣間隔で紙幣入出金口301に存在する紙幣を連続して1枚ずつ分離して紙幣搬送路34(a)へ繰出す。一方、記憶部38に間欠分離が記憶されている場合、制御部30は、紙幣入出金口301に存在する紙幣を、先行する紙幣が鑑別部33により鑑別された後に、1枚分離して紙幣搬送路34(a)へ繰出す。なお、紙幣入出金口301の1枚目の紙幣は、先行する紙幣が存在しないため、直ぐに分離を開始する。
【0047】
S5:接客部31から紙幣搬送路34(a)に繰り出された紙幣は、図2に示す搬送路(a)、(b)と進み、鑑別部33を通過する。なお、連続分離が設定されている場合は、これらの接客部31による分離繰出し動作は、鑑別結果に左右されることなく連続的に続けられる。一方、間欠分離が設定されている場合、先行する紙幣が鑑別部33により鑑別された後に、接客部31による後続する紙幣の分離繰出し動作が行われる。
【0048】
S6:鑑別部33は、通過する紙幣の両面の画像データを読取り、その紙幣の記番号を読取り、制御部30へ通知する。制御部30は、通知された紙幣の記番号を図6に示すように鑑別部33を通過した順に記憶部38の紙幣識別情報記憶部としての記番号記憶領域381に記憶させる。
例えば、記番号がM1、M2、M3、M4の紙幣が、M1、M2、M3、M4の順に紙幣入出金口301から繰出されて鑑別部33を通過したとき、図6に示すように記番号M1、M2、M3、M4の順に記番号記憶領域381に記憶される。なお、記番号記憶領域381に記憶される紙幣の記番号は、「預入」取引が選択されたとき(入金処理の開始時)に初期化される。
【0049】
S7:制御部30は、鑑別部33による鑑別結果を監視し、「鑑別異常」があるとステップS8に進み、異常がなければステップS9に進む。ここでの「鑑別異常」とは、紙幣間隔異常(連続分離時の紙幣間の距離が所定の紙幣間隔よりも短いもの)、許容以上の斜行、偽券判定等である。
【0050】
S8:鑑別異常が発生したときは、制御部30は接客部31の分離、繰出し動作および搬送部34の動作を停止させ、ステップS11へ進む。なお、紙幣入出金口301内に残存紙幣がなくなった時点、すなわち、紙幣セット検知センサSEN2が紙幣を検知しなくなった時点で分離動作は終了する。
S9:一方、鑑別部33で正券と判断された紙幣は、図2に示す紙幣搬送路(b)、(c)と進み、一時保留部35に収納される。
【0051】
S10:ステップS4からステップS9の連続動作が、鑑別異常を検出しないまま行われると、紙幣入出金口301内に残存紙幣がなくなり分離を終了する。このとき、制御部30は鑑別した紙幣の金種、損傷程度、枚数等の情報の収納順位を識別させて記憶部38に格納する。
【0052】
ここで、ステップS7において「鑑別異常」が発生した場合を説明する。
なお、記憶部38に設定情報として連続分離が記憶されている場合の入金取引を図10に示すケースで説明する。
【0053】
一万円紙幣10枚の入金取引とし、紙幣分離が開始され、一時保留部35には正券2枚(M1、M2とする。)、紙幣搬送路34(c)に正券1枚(M3とする。)、鑑別部33で鑑別異常とする要因であるリジェクト要因が検出され「鑑別異常」となったもの1枚(異常紙幣と称し、M4とする。)、紙幣搬送路34(a)に2枚(M5、M6とする。)、分離途中のもの(M7とする。)、そして、紙幣入出金口301内に3枚(M8、M9、M10とする。)が存在するものとする。
【0054】
S11:制御部30は、通過検知センサSEN3の出力有無を判断する。具体的には、フィードローラ304と分離ローラ305で構成される分離ゲート部に紙幣が存在するか否かを検出する。本説明では、紙幣M7が存在することになるので、ステップS12に進むが、紙幣が存在しないと検出された場合にはステップS16に進む。
【0055】
S12:フィードローラ304と分離ローラ305を図9に示す矢印D方向に所定数だけ回転させる。この分離ゲート部に存在する紙幣M7は紙幣入出金口301内に戻され、分離取込み待ちである紙幣M8、M9、M10と重なる。
さらに、通過検知センサSEN3からの情報により、矢印D方向への回転量(回数)を増加させることもできる。
【0056】
なお、上記説明において、紙幣の分離戻しを行うが、この紙幣分離戻し動作の正常終了は、通過検知センサSEN3の検出結果に従う。しかしながら、図15に示すように、通過検知センサSEN3による検出はできても、フィードローラ304と分離ローラ305に係合していない場合には、紙幣入出金口301内に戻せない。したがって、このような紙幣も紙幣搬送路に残留している紙幣として取り扱うことになる。
【0057】
この場合には、後述するステップS13の判定の後、異常紙幣の一時保留部35への格納動作を実行した後に再度、通過検知センサSEN3による紙幣分離戻しの良否確認を行う(S14)。これにより、紙幣分離戻し不良による係員対応の可能性を低くすることができることになる。
【0058】
S13:フィードローラ304と分離ローラ305を図9に示す矢印D方向に所定数だけ回転させても、通過検知センサSEN3が紙幣M7を検知したままのときには、分離戻し不良としてステップS14に進む。一方、通過検知センサSEN3が紙幣M7を検知しなくなった場合には、紙幣分離戻しが完了したとしてステップS16に進む。
【0059】
S14:ステップS13において、分離戻しが正常に終了しなかった場合には、入金動作を中止することになる。この場合には、分離ゲート部で紙幣M7がジャムしている可能性があるので、接客部31の動作は停止し、紙幣搬送路34(b)および紙幣搬送路34(c)上にあるほかの紙幣M3、M4および紙幣搬送路34(a)上にある紙幣M5、M6は一時保留部35まで搬送して収納する。
【0060】
S15:その後、顧客操作表示部2に図11(a)に示すような取扱い不能の画面表示を行う。以後の操作は係員対応となる。
係員は、接客部31内に存在する紙幣M8、M9、M10とジャムしていると想定される紙幣M7、そして一時保留部35に収納されている紙幣M1、M2、M3、M4、M5、M6を取り出してたとえば顧客に返却する。
【0061】
S16:図12に示す如く、プールガイド306とビルプレス307で紙幣M7、M8、M9、M10の4枚を挟んだまま集積ローラ308側に移動する。なお、プールガイド306は途中で移動を停止し(投入ポジションでもよいが、それより集積ローラ308に近い位置とする。)、ビルプレス307は出金受け入れポジションまで移動する。図示しない検知手段が移動を確認したら移動を完了と判断する。
【0062】
一般的な事象として、分離繰出しが連続されると、次繰出し紙幣はフィードローラと分離ローラの直近まで引きずり込まれる。この状態でのプールガイドとビルプレスの移動が行われると、引きずり込まれている紙幣がうまく移動できずに障害となる場合があるために、プールガイドとプレスガイドの移動前に紙幣戻しを行うもので、本願においても、この紙幣戻し動作は行われることになる。
【0063】
S17:プールガイド306とビルプレス307の移動と並行して紙幣搬送路34(a)、紙幣搬送路34(b)、紙幣搬送路34(c)上にある紙幣M3、M4、M5、M6(以後、鑑別異常紙幣という。)を一時保留部35に向けて搬送し、格納する。これにより、一時保留部35内の格納順はM1、M2、M3、M4、M5、M6となる。
【0064】
S18:各紙幣搬送路上に紙幣が存在しないことを図示しない検知センサにより確認すると、一時保留部35への鑑別異常紙幣(M3、M4、M5、M6)の格納を完了と判断しS19へ、確認しない場合はS15に進む。
なお、ステップS16で説明したプールガイド306とビルプレス307の移動動作とステップS17で説明した鑑別異常紙幣(M3、M4、M5、M6)の搬送は同時に行われる。
【0065】
S19:制御部30は、鑑別部33で異常紙幣と鑑別された紙幣から読取った記番号が記憶部38の記番号記憶領域381に既に記憶されている場合に分離方法を連続分離から間欠分離に変更する同一記番号処理を行う。
【0066】
ここで、同一記番号処理を図7の第1の実施例における同一記番号処理示すフローチャートに基づいて説明する。
S31:制御部30は、図5のS6において紙幣の記番号を記憶した記番号記憶領域381から最新の紙幣、すなわち異常紙幣(M4)の記番号を取り出し、取り出した記番号に基づいて記番号記憶領域381の先頭から最後尾までを検索し、取り出した記番号を除き一致する記番号が存在するか否かを判定する。その結果、一致する記番号が存在すると判定すると処理をS32へ進め、一致する記番号が存在しないと判定すると同一記番号処理を終了する。
【0067】
S32:一致する記番号が存在すると判定すると制御部30は、紙幣入出金口301の紙幣分離方法が間欠分離であることを記憶部38に記憶させ、分離方法を連続分離から間欠分離に変更して同一記番号処理を終了する。
【0068】
このように、記番号記憶領域381から取り出した最新の紙幣の記番号と、取り出した記番号を除き一致する記番号が記番号記憶領域381に存在する場合、紙幣入出金口301に投入された紙幣の鑑別が一巡して行われたものとし、投入された紙幣と紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣とを区別する。そして、紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣は間欠分離で紙幣入出金口301から分離、搬送する。
【0069】
同一記番号処理を終了すると処理は図5のS20へ移行する。
S20:一時保留部35に格納した鑑別異常紙幣(M3、M4、M5、M6)を紙幣入出金口301に戻すために一時保留部35と搬送部34を駆動する。
【0070】
このときには、一時保留部35に格納した紙幣は後入れ先出しとなるものの、順位は把握できている。したがって、一時保留部35から紙幣搬送路34(c)への紙幣の受け渡し動作を変化させることもできる。
図13に示す如く、矢印H方向から鑑別異常紙幣(M3、M4、M5、M6)が取り込まれ、紙幣入出金口301に鑑別異常紙幣と分離待ち紙幣が重ね合わされる。このとき、舌片車(羽根車)310で鑑別異常紙幣の下端が叩かれ、プールガイド306側に沿うようになる。
【0071】
紙幣入出金口301に紙幣が集まることにより、図14に示す如く、鑑別異常紙幣を含めた紙幣の分離動作を再開することになる。制御部30は分離リトライ回数に1を加算して記憶部38に格納する。
このときには、分離ゲート側から紙幣の並びは、紙幣M7、M8、M9、M10、M6、M5、M4、M3となる。
なお、構造上、鑑別異常紙幣はその上下が入れ替わり状態となるので、分離(方向)条件が変化することになる。
【0072】
S21:制御部30は、以降、ステップS3からステップS20の動作を繰り返す都度、分離リトライ回数をカウントアップしていく。設定回数オーバー(例えば4回)になったら、分離不良として処理を中止するが、設定回数オーバーになるまではステップS3以降の処理を行う。
【0073】
この場合、S4において、記憶部38に間欠分離であることが記憶されている場合、制御部30は、紙幣入出金口301に存在する紙幣を、先行する紙幣が鑑別部33により鑑別された後に、1枚分離して紙幣搬送路34(a)へ繰出すものとする。
したがって、先行する紙幣が鑑別部33により鑑別された時点では、紙幣搬送路34(a)に後続する紙幣は未だ繰出されていないことになる。
【0074】
なお、設定回数オーバー(例えば4回)になったら、分離不良として処理を中止する。この場合は、先に説明したステップS15と同様に顧客に報知するものであるが、入金として受け入れ可能な紙幣も存在するので、その表示はたとえば図11(b)のように「投入されました紙幣の中にお預かりできない紙幣があります。」のようなものとなる。紙幣の確認ができた場合は、図11(c)に示すようにその旨を表示する。
【0075】
次に、紙幣入金口に投入されたすべての紙幣が正常に分離でき、鑑別されたときの処理について説明する。
S22:制御部30は、紙幣入出金口301に投入された紙幣がなくなったことを紙幣セット検知センサSEN2により検知し、鑑別部33での鑑別、計数結果を集計する。
S23:制御部30は、顧客操作表示部2に集計結果を表示する。たとえば、一万円札を10枚投入した場合には、合計金額として「10万円を口座入金」としてその可否の最終確認を求めることになる。
【0076】
S24:顧客が表示内容を見て、確認ボタンを押すと、その表示金額の入金が承認されたものとして、一時保留部35に格納したすべての紙幣を紙幣搬送路(c)に繰り出す。紙幣は、紙幣搬送路(c)→紙幣搬送路(b)→紙幣搬送路(e)を経て、紙幣カセット32の該当金種のカセットに格納される。なお、鑑別部33の通過時に真偽以外に損券や還流対象外金種(例えば、二千円札や五千円札)の場合にはリジェクト収納庫36に搬送することもある。
【0077】
S25:ステップS23で、顧客が取消ボタン203を選択した場合には、入金取消として処理を開始する。
まず、プールガイド306とビルプレス307を集積ローラ308側に移動して、出金紙幣の受け入れが可能な状態にする。
【0078】
S26:一時保留部35に格納している紙幣をすべて紙幣搬送路34(d)へ受け渡し、紙幣入出金口301に搬送して集積する。このときには、紙幣セット検知センサSEN2が最初に取り込まれる紙幣を検出する。
【0079】
S27:すべての紙幣が紙幣入出金口301内に集積されると、制御部30はシャッタ39を開とする。顧客が紙幣を取り出すと、手挿入検知センサSEN1がこれを検知してシャッタ39を閉じる。なお、紙幣セット検知センサSEN2が紙幣有と検知している状態では、シャッタ閉動作を一時保留し、顧客操作表示部2に「紙幣をお取りください。」を表示し続ける。
【0080】
なお、ステップS23において、確認ボタン202が押された場合には、入金成立として通帳記載や口座残高情報の更新等、そして媒体(通帳またはキャッシュカード)の返却になるが、説明は省略する。
【0081】
このように、制御部30は、鑑別部33で読取った紙幣の記番号を通過した順に記憶部38の記番号記憶領域381に記憶させておき、異常紙幣を検知した直後に、記番号記憶領域381から取り出した最新の紙幣(検知した異常紙幣)の記番号と、取り出した記番号を除き一致する記番号が記番号記憶領域381に存在する場合(すなわち、異常紙幣の記番号が既に記番号記憶領域381に記憶されていると判定した場合)、紙幣入出金口301に投入された紙幣の鑑別が一巡して行われたものとし、投入された紙幣と紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣とを区別する。そして、紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣を含む紙幣を間欠分離で紙幣入出金口301から分離、搬送するようにしたことにより、鑑別されない紙幣の発生を防止することができる。
【0082】
例えば、図22に示すように紙幣M1〜M10の10枚の紙幣に、異常紙幣M4および異常紙幣M8の2枚の異常紙幣が含まれていた場合、ステップ1からステップ7までは連続分離で紙幣入出金口301から紙幣が分離、搬送されるが、ステップ8において異常紙幣M4が記番号記憶領域381に既に記憶されていることにより、連続分離から間欠分離に変更される。したがって、ステップ9以降では紙幣M4、M9、M10、M8の4枚の紙幣は間欠分離され、必ず鑑別部33において鑑別されるため、鑑別されない紙幣の発生を防止することができる。
また、紙幣入出金口301に投入された紙幣の鑑別が一巡して行われるまでは紙幣入出金口301からの分離、搬送は連続分離で行われるため、入金処理を短時間で行うことができる。
【0083】
以上説明したように、第1の実施例では、制御部が、鑑別部で読取った紙幣の記番号を通過した順に記憶部の記番号記憶領域に記憶させておき、異常紙幣を検知した直後に、記番号記憶領域から取り出した最新の紙幣(検知した異常紙幣)の記番号と、取り出した記番号を除き一致する記番号が記番号記憶領域に存在する場合、紙幣入金口に投入された紙幣の鑑別が一巡して行われたものと判定することにより、投入された紙幣と紙幣入金口へ戻された鑑別異常紙幣とを区別することができるという効果が得られる。
【0084】
また、投入された紙幣と区別され、紙幣入金口へ戻された鑑別異常紙幣は、間欠分離で紙幣入金口から分離、搬送するようにしたことにより、鑑別されない紙幣の発生を防止することができるという効果が得られる。
さらに、紙幣入金口に投入された紙幣の鑑別が一巡して行われるまでは紙幣入金口からの分離、搬送は連続分離で行われるため、入金処理を短時間で行うことができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0085】
第2の実施例の構成は、紙幣の特徴を読取る鑑別部を備えたことが第1の実施例の構成と異なっている。その第2の実施例の構成を図16の第2の実施例における紙幣入出金機の構成を示すブロック図および図17の第2の実施例における紙幣入出金機の構成を示す側面説明図に基づいて説明する。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0086】
図16および図17において、331は鑑別部であり、接客部31と紙幣カセット32との間の紙幣搬送路上に配置されている。この鑑別部331は光学式CCDセンサを備え、そのCCDセンサにより、搬送される紙幣の表裏両面の画像データ等を収得し、その画像データ等と紙幣鑑別データベースに予め登録されている画像データ等を照合して紙幣の真偽、正損、金種等の鑑別および計数を行う。
【0087】
また、鑑別部331は通過する紙幣の間隔や斜行等の搬送異常を検知することができるようになっており、入金処理において偽券または搬送異常と鑑別された異常紙幣を入金リジェクト紙幣という。
さらに、鑑別部331は、紙幣識別情報読取り部としてのCCDセンサにより読取った紙幣の画像データから紙幣毎の折れ、汚れ、破れ、切れ、または記入された文字や絵図(落書き)等の特徴を、紙幣識別情報としての紙幣特徴情報として抽出することができるようになっている。なお、これらの作用は制御部30との連携により行われる。
【0088】
ここで、紙幣特徴情報は、紙幣毎の折れや皺、汚れ、破れ、切れ、または第三者により記入された文字や絵図(落書き)等の特徴を紙幣の画像データから抽出し、その特徴が存在する紙幣上の位置情報(紙幣上の座標および表裏面)と抽出した特徴とを対応付けた情報であり、鑑別した紙幣を識別するための情報である。
また、記憶部38は、鑑別部33が鑑別や計数した結果、紙幣から抽出した紙幣特徴情報、紙幣入出金口301の紙幣の分離方法の設定情報等を記憶する。
【0089】
上述した構成の作用について図18の第2の実施例における入金処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップに従って、図16、図17、図6〜図15を参照しながら説明する。なお、本実施例では、自動取引装置を現金自動預払機として説明する。
S101〜S103:図5におけるS1〜S3と同様の処理なので説明を省略する。
【0090】
S104:ピックアップローラ302およびフィードローラ304を図9に示す矢印C方向に回転させ、紙幣の繰出しを開始する。このとき、分離ローラ305は回転しない。同時に、搬送部34は紙幣搬送路34(a)から紙幣搬送路34(c)をはじめ、各部を起動させる。なお、繰出された紙幣は通過検知センサSEN3により計数される。
【0091】
このとき、記憶部38に連続分離が記憶されている場合、制御部30は、所定の最短紙幣間隔で紙幣入出金口301に存在する紙幣を連続して1枚ずつ分離して紙幣搬送路34(a)へ繰出す。一方、記憶部38に間欠分離が記憶されている場合、制御部30は、紙幣入出金口301に存在する紙幣を、先行する紙幣が鑑別部331により鑑別された後に、1枚分離して紙幣搬送路34(a)へ繰出す。なお、紙幣入出金口301の1枚目の紙幣は、先行する紙幣が存在しないため、直ぐに分離を開始する。
【0092】
S105:接客部31から紙幣搬送路34(a)に繰り出された紙幣は、図17に示す搬送路(a)、(b)と進み、鑑別部331を通過する。なお、連続分離が設定されている場合は、これらの接客部31による分離繰出し動作は、鑑別結果に左右されることなく連続的に続けられる。一方、間欠分離が設定されている場合、先行する紙幣が鑑別部331により鑑別された後に、接客部31による後続する紙幣の分離繰出し動作が行われる。
【0093】
S106:鑑別部331は、通過する紙幣の両面の画像データを読取り、その紙幣の特徴を抽出し、紙幣の特徴情報として制御部30へ通知する。制御部30は、通知された紙幣の特徴情報を図19に示すように鑑別部331を通過した順に記憶部38の紙幣識別情報記憶部としての紙幣特徴情報記憶領域382に記憶させる。
【0094】
例えば、M1、M2、M3、M4の紙幣が、M1、M2、M3、M4の順に紙幣入出金口301から繰出されて鑑別部331を通過したとき、図19に示すように紙幣特徴M1、M2、M3、M4の順に紙幣特徴情報記憶領域382に記憶される。なお、紙幣特徴情報記憶領域382に記憶される紙幣の特徴情報は、「預入」取引が選択されたとき(入金処理の開始時)に初期化される。
【0095】
S107:制御部30は、鑑別部331による鑑別結果を監視し、「鑑別異常」があるとステップS108に進み、異常がなければステップS109に進む。ここでの「鑑別異常」とは、紙幣間隔異常(連続分離時の紙幣間の距離が所定の紙幣間隔よりも短いもの)、許容以上の斜行、偽券判定等である。
【0096】
S108〜S118(S128):図5におけるS8〜S18(S28)と同様の処理なので説明を省略する。
S119:制御部30は、鑑別部331で異常紙幣と鑑別された紙幣から抽出した紙幣特徴情報が記憶部38の紙幣特徴情報記憶領域382に既に記憶されている場合に分離方法を連続分離から間欠分離に変更する同一紙幣特徴処理を行う。
【0097】
ここで、同一紙幣特徴処理を図20の第2の実施例における同一紙幣特徴処理示すフローチャートに基づいて説明する。
S41:制御部30は、図18のS106において紙幣の特徴情報を記憶した紙幣特徴情報憶領域382から最新の紙幣、すなわち異常紙幣(M4)の紙幣特徴情報を取り出し、取り出した紙幣特徴情報に基づいて紙幣特徴情報記憶領域382の先頭から最後尾までを検索し、取り出した紙幣特徴情報を除き一致する紙幣特徴情報が存在するか否かを判定する。その結果、一致する紙幣特徴情報が存在すると判定すると処理をS42へ進め、一致する紙幣特徴情報が存在しないと判定すると同一紙幣特徴処理を終了する。
【0098】
S42:一致する紙幣特徴情報が存在すると判定すると制御部30は、紙幣入出金口301の紙幣分離方法が間欠分離であることを記憶部38に記憶させ、分離方法を連続分離から間欠分離に変更して同一紙幣特徴処理を終了する。
【0099】
このように、紙幣特徴情報記憶領域382から取り出した最新の紙幣の特徴情報と、取り出した紙幣特徴情報を除き一致する紙幣特徴情報が紙幣特徴情報記憶領域382に存在する場合、紙幣入出金口301に投入された紙幣の鑑別が一巡して行われたものとし、投入された紙幣と紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣とを区別する。そして、紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣は間欠分離で紙幣入出金口301から分離、搬送する。
【0100】
同一紙幣特徴処理を終了すると処理は図18のS120へ移行する。
S120〜S127:図5におけるS20〜S27と同様の処理なので説明を省略する。
【0101】
このように、制御部30は、鑑別部331で読取った紙幣の特徴情報を通過した順に記憶部38の紙幣特徴情報記憶領域382に記憶させておき、異常紙幣を検知した直後に、紙幣特徴情報記憶領域382から取り出した最新の紙幣(検知した異常紙幣)の特徴情報と、取り出した紙幣特徴情報を除き一致する紙幣特徴情報が紙幣特徴情報記憶領域382に存在する場合(すなわち、異常紙幣の紙幣特徴情報が既に紙幣特徴情報記憶領域382に記憶されていると判定した場合)、紙幣入出金口301に投入された紙幣の鑑別が一巡して行われたものとし、投入された紙幣と紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣とを区別する。そして、紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣を含む紙幣を間欠分離で紙幣入出金口301から分離、搬送するようにしたことにより、鑑別されない紙幣の発生を防止することができる。
【0102】
例えば、図22に示すように紙幣M1〜M10の10枚の紙幣に、異常紙幣M4および異常紙幣M8の2枚の異常紙幣が含まれていた場合、ステップ1からステップ7までは連続分離で紙幣入出金口301から紙幣が分離、搬送されるが、ステップ8において異常紙幣M4が記番号記憶領域381に既に記憶されていることにより、連続分離から間欠分離に変更される。したがって、ステップ9以降では紙幣M4、M9、M10、M8の4枚の紙幣は間欠分離され、必ず鑑別部331において鑑別されるため、鑑別されない紙幣の発生を防止することができる。
【0103】
また、紙幣入出金口301に投入された紙幣の鑑別が一巡して行われるまでは紙幣入出金口301からの分離、搬送は連続分離で行われるため、入金処理を短時間で行うことができる。
さらに、鑑別部で記番号が読取れない場合であっても、紙幣入出金口301に投入された紙幣と紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣とを区別することができる。
【0104】
また、同一記番号の偽造紙幣等が紙幣入出金口301に投入された場合であっても、紙幣入出金口301に投入された紙幣と紙幣入出金口301へ戻された鑑別異常紙幣とを区別することができる。
【0105】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、鑑別部で紙幣の記番号が読取れない場合であっても、紙幣入金口に投入された紙幣と紙幣入金口へ戻された鑑別異常紙幣とを区別することができるという効果が得られる。
【0106】
また、同一記番号の偽造紙幣が紙幣入金口に投入された場合であっても、紙幣入金口に投入された紙幣と紙幣入金口へ戻された鑑別異常紙幣とを区別することができるという効果が得られる。
なお、第1の実施例における同一記番号処理および第2の実施例における同一紙幣特徴処理は制御部で行うこととして説明したが、記憶部を備えた鑑別部で行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0107】
3 紙幣入出金機
30 制御部
31 接客部
32 紙幣カセット
33 鑑別部
34 搬送部
34(a)、34(b)、34(c)、34(d)、34(e) 紙幣搬送路
34(f) 切替ブレード
35 一時保留部
36 リジェクト収納庫
37 取り忘れ紙幣収納庫
38 記憶部
381 記番号記憶領域
39 シャッタ
300 紙幣挟持移動部
301 紙幣入出金口
302 ピックアップローラ
303 支持板
304 フィードローラ
305 分離ローラ
306 プールガイド
307 ビルプレス
307a 傾斜面
307b 案内部
308 集積ローラ
309 プレッシャローラ
310 舌片車
SEN1 手挿入検知センサ
SEN2 紙幣セット検知センサ
SEN3 通過検知センサ
SEN4 受渡検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された入金紙幣を集積する紙幣入金部と、該紙幣入金部から紙幣を分離して紙幣搬送路へ繰出す分離手段と、前記紙幣搬送路で搬送される紙幣の鑑別を行う鑑別部と、前記紙幣入金部内へ搬送された紙幣を集積する集積手段とを有し、前記鑑別部で異常紙幣を検知したとき、該異常紙幣とともに前記紙幣搬送路上の未鑑別紙幣を前記紙幣入金部へ集積する紙幣入出金機において、
前記鑑別部に紙幣の識別情報を読取る紙幣識別情報読取り部と、
前記紙幣識別情報読取り部で読取った紙幣の識別情報を記憶する紙幣識別情報記憶部とを備え、
前記鑑別部で異常紙幣と鑑別された紙幣の識別情報が、既に前記紙幣識別情報記憶部に記憶されていると判定したとき、前記分離手段による分離を先行する紙幣が前記鑑別部で鑑別された後に後続する1枚の紙幣を分離して前記紙幣搬送路へ繰出す間欠分離とする情報を記憶部に記憶し、前記記憶部に記憶した情報に基づいて前記紙幣入金口に集積された紙幣を間欠分離で分離する制御部を設けたことを特徴とする紙幣入出金機。
【請求項2】
請求項1の紙幣入出金機において、
前記識別情報は、紙幣に予め印刷された記番号であることを特徴とする紙幣入出金機。
【請求項3】
請求項1の紙幣入出金機において、
前記識別情報は、紙幣の特徴情報であることを特徴とする紙幣入出金機。
【請求項4】
請求項3の紙幣入出金機において、
前記紙幣の特徴情報は、紙幣毎の折れや皺、汚れ、破れ、切れまたは第三者により記入された文字や絵図の特徴を前記紙幣識別情報読取り部で読取った紙幣の画像データから抽出し、その特徴が存在する紙幣上の位置情報と抽出した特徴とを対応付けた情報であることを特徴とする紙幣入出金機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−84065(P2012−84065A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231655(P2010−231655)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】