説明

紙幣識別装置

【課題】確実に紙幣詰まりを検出するために専用の終端センサが必要で、装置が複雑化していた。
【解決手段】第1の識別センサと、第2の識別センサと、これら第1及び第2の識別センサを紙幣が通過するよう前記紙幣を搬送する搬送手段と、前記第1及び第2の識別センサの各々の出力信号に基づいて前記紙幣の真偽を識別する識別手段を備えた紙幣識別装置において、前記第2の識別センサの配置位置は前記第1の識別センサよりも前記紙幣の搬送方向の下流側であり、前記第2の識別センサの出力信号に基づいて前記紙幣の終端を検知する終端紙幣検知手段を備えるものである。これにより、第2の識別センサで紙幣の有無を検知し、紙幣が通過したかどうかを確実に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣識別装置121について、図4〜図6を用いて説明する。
【0003】
図4と図5は従来の紙幣識別装置121の構成を示しており、図4は紙幣識別装置121の側面を開閉する蓋122(図5参照)を開いたときの正面図であり、図5はその断面図である。
【0004】
図4及び図5において、123は紙幣識別装置121の前面に設けられた紙幣の挿入口であり、この挿入口123には紙幣の通路124が連結されており、この通路124の後端には紙幣の出口125が連設されている。そして前記通路124の挿入口123側の側壁には紙幣の挿入を検出する入口センサ126が配設されている。また、この通路124の側壁には、前記入口センサ126まで挿入された紙幣を出口125に向けて搬送する搬送ベルト127と、この搬送ベルト127によって搬送された紙幣の識別を行うための検出手段である光学センサ128と磁気センサ129が前記搬送ベルト127の略中央部の前記通路124の側壁に配設されている。そして、この通路124の側壁の出口125の近傍には終端センサ130が通路124の中央線の若干下側に配設されている。また131は搬送モータであり、ギヤブロック132を介して搬送ベルト127に動力を伝えている。
【0005】
また、133は制御回路部であり、前記入口センサ126、光学センサ128、磁気センサ129、終端センサ130と接続されており、それぞれの信号の処理と搬送モータ131の制御とを行っている。
【0006】
次に、図6は従来の紙幣識別装置121の制御回路部133のブロック図である。
【0007】
図6において、126は挿入口の紙幣の検知を行う入口センサであり、この出力は入口センサ126の信号状態で紙幣の有り/無し信号を発生する入口紙幣検知手段138を介して制御手段135に接続されている。128は、紙幣の光学的印刷パターンを検出する光学センサであり、紙幣の磁気的印刷パターンを検出する磁気センサ129と共に、これらの信号を所定の電気信号に変換する識別手段139を介して、前記制御手段135に接続されている。
【0008】
130は出口125近傍に設置された終端センサである。この終端センサ130は、発光ダイオード130aとフォト・トランジスタ130bにより構成されている。終端センサ130の出力は、この出力信号に基づいて紙幣の有り/無し信号を発生させる終端紙幣検知手段140を介して、前記制御手段135に接続されている。
【0009】
さらに、搬送モータ131を正転させる搬送モータ正転手段141と、搬送モータ131を停止させる搬送モータ停止手段142と、搬送モータ131を逆転させる搬送モータ逆転手段143のそれぞれの入力は前記制御手段135に接続され、その出力はそれぞれ搬送モータ131に接続されている。
【0010】
そして搬送モータ131は、ギヤブロック132(図4参照)を介して搬送ベルト127にその動力を伝えている。
【0011】
144は紙幣詰まりを報知する紙幣詰まり報知手段であり、145は真券であることを報知する真券報知手段であり、共に紙幣識別装置121の全体を制御する前記制御手段135に接続されている。
【0012】
以上のように構成された紙幣識別装置121について、以下にその動作を説明する。
【0013】
まず、挿入口123から紙幣を挿入することにより、入口センサ126で紙幣が検知され、入口センサ126の紙幣検知により、入口紙幣検知手段138から制御手段135ヘ紙幣有り信号が送信される。次に制御手段135から搬送モータ正転手段141へ搬送モータ正転信号が出力され、搬送モータ131を正転させ、この動力はギヤブロック132を介して搬送ベルト127に伝達され、紙幣が通路124内に引き込まれる。そして紙幣の先端が光学センサ128に到達した時点で、光学センサ128と磁気センサ129の信号を所定の電気信号に変換する識別手段139から識別信号が制御手段135へ出力される。そしてこのことにより、紙幣の識別を開始し、搬送ベルト127で紙幣の搬送を行うのと同時に、紙幣識別を紙幣終端が光学センサ128を通過するまで行う。次に紙幣の終端が光学センサ128を通過した時点で、紙幣の識別を終了し、制御手段135から搬送モータ停止手段142に搬送モータ停止信号が出力されることにより、搬送モータ131を停止する。
【0014】
次に紙幣の識別結果から、制御手段135で紙幣の真偽判定を行い、偽券であれば、制御手段135から搬送モータ逆転手段143へ搬送モータ逆転信号が出力されることにより、搬送モータ131を逆転し、搬送ベルト127により挿入口123まで紙幣の返却動作を行う。
【0015】
また真券と判定されると、制御手段135から搬送モータ正転手段141へ搬送モータ正転信号が出力されることにより、搬送モータ131を正転し、搬送ベルト127により紙幣の搬送を再開する。紙幣終端が所定の時間内に終端センサ130を通過すれば、終端紙幣検知手段140から制御手段135へ紙幣無し信号が出力され、これにより制御手段135では出口125から紙幣が流出されたと判断し、真券報知手段145により、真券であることを報知した後、待機状態で待機する。
【0016】
また紙幣終端が所定の時間内に終端センサ130を通過できない場合には、制御手段135から搬送モータ停止手段142へ搬送モータ停止信号が送信され、搬送モータ131を停止して、紙幣詰まり報知手段144により紙幣詰まりを報知し、詰まり紙幣が取り除かれるまで(終端センサ130の紙幣検知信号がなくなるまで)、紙幣詰まり報知手段144による報知を行う。なお、詰まり紙幣が取り除かれたら待機状態に復帰する。
【0017】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平4−62697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、このような従来の紙幣識別装置121では、紙幣の通過を確実に検出するために専用の終端センサ130が必要であったため、センサ数が増加し装置が複雑化していた。
【0019】
本発明は、このような課題を解決したもので、専用の終端センサを設けなくても紙幣の通過を確実に検出することができる紙幣識別装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そして、この目的を達成するために本発明の紙幣識別装置は、第2の識別センサの配置位置は第1の識別センサよりも紙幣の搬送方向の下流側であり、前記第2の識別センサの出力信号に基づいて前記紙幣の終端を検知する終端紙幣検知手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明は、第2の識別センサの配置位置は第1の識別センサよりも紙幣の搬送方向の下流側であり、前記第2の識別センサの出力信号に基づいて前記紙幣の終端を検知する終端紙幣検知手段を備えるものであり、第2の識別センサの出力信号に基づいて紙幣が通過したかどうかを検知し、紙幣の通過を確実に検出することができる。
【0022】
従って、専用の終端センサが不要であり、識別性能が低下することなくセンサ数を削減できるので、装置の複雑化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態について図1〜図3を用いて説明する。まず図2にて、本実施の形態における紙幣識別装置1の全体構成を説明する。図2に示すように、紙幣2が挿入される挿入口23と、この挿入口23に連結された通路24と、この通路24へ挿入された紙幣2を搬送する搬送ベルト25aと、通路24の壁面に設けられるとともに挿入口23近傍に装着された入口センサ26と、通路24の壁面に設けられるとともに搬送ベルト25aで搬送される紙幣2の特徴を検出する第1の識別センサ27(以後、識別センサ27と記載する)と、通路24の終端近傍に装着された第2の識別センサ28(以後、識別センサ28と記載する)と、通路24の終端に連結されるとともに、真券と判定された紙幣2を格納するスタッカ34とで構成されている。
【0024】
また紙幣識別装置1は、識別センサ27の出力が接続された増幅器29と、この増幅器29の出力が接続されたアナログ・デジタル変換器(以下、A/D変換器という)30aと、このA/D変換器30aの出力が一方の入力に接続された比較器30cと、この比較器30cの他方の入力に接続されるとともに紙幣2を識別するための基準値が格納されたメモリ30bと、比較器30cの出力が接続された判別部30dと、この判別部30dと接続された制御部32と、この制御部32の出力が接続された出力端子31と、制御部32に接続された直流モータ25bと、制御部32に接続されるとともに、紙幣識別装置1を外部から制御する制御端子33とを備えている。
【0025】
さらに、識別センサ28の出力は、その出力信号の状態で紙幣2の終端2aを検知し紙幣2の有り/無し信号を発生させる終端紙幣検知手段39を介して、前記制御手段32に接続されている。識別センサ28の出力は、判別部30dにも接続されている。
【0026】
次に、紙幣識別装置1の要部を、図1を用いて説明する。入口センサ26は、2個の入口センサ26a、26bで構成されている。入口センサ26aは、通路24の一方の側面24a近傍に装着されており、入口センサ26bは、通路24の他方の側面24b近傍に装着されている。
【0027】
入口センサ26aは、図2の通路24の上側壁面に装着された赤外波長発光ダイオード(図示せず)と、この赤外波長発光ダイオードに対応して、通路24の下側壁面に装着された受光素子であるフォト・トランジスタ(図示せず)とで構成されている。
【0028】
入口センサ26bも、入口センサ26aと同様に、赤外波長発光ダイオード(図示せず)とフォト・トランジスタ(図示せず)とで構成されている。
【0029】
これらの赤外波長発光ダイオードは夫々制御部32の出力に接続されており、フォト・トランジスタは夫々判別部30dの入力に接続されている。
【0030】
識別センサ27は、通路24の中央線よりも上方の側面24a寄りに装着された識別センサ27aと、通路24の中央線よりも下方の側面24b寄りに装着された識別センサ27bとで構成されている。本実施の形態のように識別センサ27を2個で構成し識別センサ28を1個で構成する場合には、識別センサ27aと識別センサ27bは紙幣2を長手方向に3等分した上方側(通路24の上方の側面24a側)及び下方側(通路24の下方の側面24b側)が識別位置となる配置とし、識別センサ28は紙幣2を長手方向に3等分した中央側が識別位置となる配置が最適である。
【0031】
識別センサ27aは、通路24の上側壁面に隣接して装着された3つの発光素子である赤色発光ダイオード(図示せず)と、赤外波長発光ダイオード(図示せず)と、青色発光ダイオード(図示せず)と、これら3つの発光素子に対応して通路24の下側壁面に装着された1つの受光素子であるフォト・ダイオード(図示せず)とで構成されている。
【0032】
識別センサ27bも、識別センサ27aと同様に、3つの発光素子と1つの受光素子とで構成されている。
【0033】
これらの3つの発光素子は夫々制御部32(図2参照)の出力に接続されており、フォト・ダイオードは、切換スイッチ(図示せず)を介して増幅器29(図2参照)の入力に接続されている。
【0034】
次に識別センサ28は、識別センサ27よりも紙幣2の搬送方向3の下流側であって、識別センサ27の紙幣2の識別位置とは異なる位置に設けられている。この識別センサ28は、図2に示す通路24の上側壁面に装着された赤外波長発光ダイオード28aと、この赤外波長発光ダイオード28aに対応して、通路24の下側壁面に装着された受光素子であるフォト・トランジスタ28bとで構成されている。
【0035】
本実施の形態において、識別センサ28は一個で構成したがこれは一個に限ることはなく、複数個の識別センサ28を紙幣2の搬送方向3と交差する方向に設けても良い。
【0036】
図2に戻って、この赤外波長発光ダイオード28aは制御部32の出力に接続されており、フォト・トランジスタ28bは判別部30dの入力に接続されている。識別手段30は、A/D変換器30aと、メモリ30bと、比較器30cと、判別部30dで構成されている。また、識別手段30と制御部32はマイクロコンピュータ35で構成されている。
【0037】
搬送手段25は、直流モータ25bと、この直流モータ25bに連結された複数のプーリ25cと、これらのプーリ25c間に架けられた搬送ベルト25aと、プーリ25cに対応して設けられたローラ25dとで構成されている。搬送ベルト25aは通路24の下面側に設けられ、挿入口23から挿入された紙幣2を搬送ベルト25aとローラ25dで挟んで搬送する。
【0038】
次に、以上のように構成された紙幣識別装置1の動作について、図2を参照しながら以下に説明する。挿入口23へ紙幣2が挿入されると、入口センサ26で紙幣2の挿入が検知される。入口センサ26で紙幣2の挿入が検知されると、直流モータ25bが回転する。直流モータ25bが回転すると、この直流モータ25bに連結されたプーリ25cが回転し、このプーリ25cに架けられた搬送ベルト25aが挿入口23側からスタッカ34方向へ回転する。このときプーリ25cに対向して設けられたローラ25dも回転し、挿入された紙幣2を挟んで通路24内を搬送することになる。
【0039】
この搬送の途中において、識別センサ27a、27bにより紙幣2の搬送方向3と交差する方向の特徴が検出される。この識別センサ27a、27bは、夫々赤色発光ダイオードと赤外波長発光ダイオードと青色発光ダイオードを用いているので、異なる波長を用いて紙幣2の印刷の濃淡やインク色などの特徴を透過率の違いにより詳細に検出することができる。
【0040】
識別センサ27で特徴が検出された紙幣2は、更に識別センサ28で特徴が検出される。この識別センサ28では、赤外波長発光ダイオード28aを用いて、紙幣2の中央部における印刷の濃淡や紙質などの特徴を検出している。
【0041】
この識別センサ28において、紙幣2が挿入された場合は、フォト・トランジスタ28bからは紙幣2の中央部の模様に対応した強弱の信号が出力される。一方、中央部分が真券でなく白紙が貼り付けられたような偽造紙幣が挿入された場合は、フォト・トランジスタ28bからは偽造紙幣の中央部に貼り付けられた白紙の透過信号が出力される。この白紙の透過信号は、変化しない一定レベルの信号となる。従って、中央部に白紙が取り付けられた偽造紙幣を真券と誤認識することを防止できる。
【0042】
この識別センサ28は、識別センサ27による紙幣2の識別位置と異なる位置に設けることが重要である。このことにより、偽造紙幣の識別率を向上させることができる。特に識別センサ28を識別センサ27aと識別センサ27bの略中心線上で、紙幣2の搬送方向3の下流側に設けることが望ましい。
【0043】
識別センサ27を構成するフォト・ダイオードの出力は、紙幣2が所定の距離搬送される毎に時分割で、増幅器29へ入力されて増幅される。フォト・ダイオードの出力はこの増幅器29で増幅された後、識別手段30へ入力される。識別手段30では、増幅器29から出力された信号をA/D変換器30aでデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された信号は、比較器30cに出力される。
【0044】
紙幣2の終端2aが識別センサ27を通過すると、識別手段30は制御手段32に通過信号を出力し、制御手段32は直流モータ25bに停止信号を送る。識別センサ27から識別センサ28までは14mmの距離37(紙幣2の搬送方向3に平行に測った距離を示す、以下も同様)を有しているので、直流モータ25bの慣性を考慮しても識別センサ27と識別センサ28との間で紙幣2の搬送を停止させることができる。また、識別センサ28には紙幣2の搬送速度に係わらず出力が一定である光学式のセンサを用いているので、直流モータ25bに停止信号を送ってから紙幣2が停止するまでの識別センサ28の出力を、直流モータ25bに停止信号を送るまでの識別センサ28の出力と全く同様に識別手段30で用いることができる。
【0045】
比較器30cでは、A/D変換器30aから出力されるデジタル信号とメモリ30bに予め格納された基準値とを比較する。そして、この比較出力が予め定められた範囲内に在るか否かを判別部30dで判別する。この判別部30dでは、紙幣2の真偽と種類が判別される。特に識別しようとする紙幣の種類が多い場合、判別部30dでの判別に時間を要するので、制御手段32から直流モータ25bに停止信号を送ることにより、紙幣2の終端2aが識別センサ28を通過する前に紙幣2の真偽の識別を完了させている。しかし、識別しようとする紙幣の種類が少ない場合や搬送手段25に急速停止が可能なステッピングモータを用いる場合など、必ずしも紙幣2の搬送を停止させる必要はない。
【0046】
判別部30dが真券と判定した場合は、更に搬送ベルト25aでスタッカ34方向に移動させ、紙幣2はスタッカ34に収納される。紙幣2が通路24を通過してスタッカ34方向に搬送されたことは、終端紙幣検知手段39で確認される。
【0047】
識別センサ28は、従来の終端センサ130の役目も兼ね備えているので、専用の終端センサ130を廃止することができる。
【0048】
所定時間を経過してもなお、終端紙幣検知手段39が識別センサ28の出力信号で紙幣2の通過を検知しない場合には異常と判定し、例えば異常信号を出力するなど図示しない報知手段で報知する。
【0049】
判別部30dが挿入された紙幣2を偽券と判定した場合は、搬送ベルト25aで挿入口23方向に移動させ、紙幣2は挿入口23から返却される。識別手段30で判定する間、紙幣2は識別センサ27と識別センサ28の間に停止しているので、この紙幣2はスタッカ34に収納されることはなく、確実に搬送ベルト25aにより挿入口23から返却させることができる。
【0050】
図3は、紙幣識別装置1の各センサの位置関係を示した要部断面図である。入口センサ26から識別センサ27までの距離36は38mmである。これだけの距離36を有しているので、たとえ外気温度等の条件が変わって搬送条件が変動したとしても、搬送手段25を構成するモータに直流モータ25bを用いることができる。即ち、ステッピングモータ等に比べて低価格の直流モータを使用したとしても十分安定した搬送速度に達した後に、紙幣2の特徴を識別センサ27で検知することができる。
【0051】
また、識別センサ27から識別センサ28までの距離37は5mmから20mmの間で、好ましくは14mmである。繰り返しになるが、ここで距離とは紙幣2の搬送方向3に平行に測った距離を示す。これだけの距離37を有しているので、たとえ外気温度等の条件が変わって搬送条件が変動したとしても、同様に搬送手段25を構成するモータに直流モータ25bを用いることができる。即ち、停止に対して慣性を有する直流モータ25bを用いたとしても直流モータ25bに停止信号を送った後、識別センサ27と識別センサ28との間で紙幣2の搬送を停止させることができる。従って、真券と判定された紙幣2を収納するスタッカ34へ偽券と判定された紙幣2が収納されることはなく、挿入口23へ確実に返却することができる。
【0052】
さらに識別センサ28では、紙幣2の終端2aから最大で14mmまで、すなわち日本の千円紙幣であれば長さが150mmであるので先端から少なくとも136mmまで紙幣2の特徴を検出できる。紙幣2の長さ150mmに対して、8分の7以上を検出できれば、識別は可能である。
【0053】
識別センサ28は、通路24の中央線より若干下側に設置するのが望ましい。これは、例えば紙幣を8つ折りに折り畳んだ場合に紙幣の長手方向の中央に生ずる折り目に識別センサ28の位置が来て、紙幣との浮きによって生ずる空間で、識別センサ28の出力が不安定になるのを防ぐためである。さらに、識別センサ27から識別センサ28までの距離37が一定であれば、識別センサ28はできるだけ通路24の出口の近傍に設置するのが望ましい。出口の近傍に識別センサ28を設けることにより、識別センサ27を通過した後、紙幣2が出口近傍を通過するのを確実に検出できる。
【0054】
また、識別センサ28と搬送ベルト25aが架けられた出口側のプーリ25cの中心までの距離38は、5.5mmとしている。従って、真券と判定した場合は識別センサ28を通過した紙幣2を確実にスタッカ34へ搬送して収納することができ、偽券と判定した場合は識別センサ27、28間に停止している紙幣2を確実に挿入口23へ返却することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態における紙幣識別装置1は、識別センサ28の出力信号に基づいて前記紙幣2の終端2aを検知する終端紙幣検知手段39を備えるものであり、識別センサ28で紙幣の有無を検知し、紙幣が通過したかどうかを確実に検出することができる。従って、専用の終端センサが不要であり、識別性能が低下することなくセンサ数を削減できるので、装置の複雑化を防止することができる。
【0056】
また、識別手段30は紙幣2の終端2aが識別センサ28を通過する前に紙幣2の真偽を識別するので、たとえ偽造紙幣が挿入されても、紙幣2を収納する前に搬送手段25により挿入口23から返却することができる。
【0057】
識別センサ28には透過型で赤外波長の光学式センサを用いているので、外部温度等による搬送速度の変化に依存することなく、精密に識別することができる。また、識別センサ28に透過型で赤外波長の光学式センサを用いていることで、紙幣2の有無をより感度良く高速な応答性で検知しているが、可視光などの他の波長や反射型の光学式センサを用いても良い。さらに、光学式以外の静電容量センサや超音波センサ、あるいは機械的に厚みを検出するセンサで構成することも可能である。
【0058】
識別センサ28の受光素子としてフォト・トランジスタ28bを用いており、フォト・ダイオードを用いる場合と比較して大幅に安価に識別センサ28を構成できる。しかし、出力の直線性がより良いフォト・ダイオードを識別センサ27と同様に用いても良い。識別センサ28の出力に基づき、より高精度な識別が可能になる。
【0059】
更に、搬送手段25の駆動源とした直流モータ25bを使用しているので、低価格の紙幣識別装置1を実現することができるが、急速停止が可能なステッピングモータを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明にかかる紙幣識別装置は、識別性能を低下させることなく構成を簡素化できるので、自動販売機等に使用する紙幣識別装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施の形態における紙幣識別装置の要部正面図
【図2】同、紙幣識別装置のブロック図
【図3】同、要部断面図
【図4】従来の紙幣識別装置の正面図
【図5】同、紙幣識別装置の断面図
【図6】同、紙幣識別装置のブロック図
【符号の説明】
【0062】
1 紙幣識別装置
2 紙幣
2a 終端
25a 搬送ベルト
27 識別センサ(第1の識別センサ)
28 識別センサ(第2の識別センサ)
30 識別手段
39 終端紙幣検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の識別センサと、第2の識別センサと、これら第1及び第2の識別センサを紙幣が通過するよう前記紙幣を搬送する搬送手段と、前記第1及び第2の識別センサの出力信号に基づいて前記紙幣の真偽を識別する識別手段を備えた紙幣識別装置において、
前記第2の識別センサの配置位置は、前記第1の識別センサよりも前記紙幣の搬送方向の下流側であり、前記第2の識別センサの出力信号に基づいて前記紙幣の終端を検知する終端紙幣検知手段を備えることを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
識別手段は、紙幣が第1の識別センサを通過した後であって、かつ前記紙幣の終端が第2の識別センサを通過する前に前記紙幣の真偽を識別する請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
搬送手段は、識別手段で紙幣の真偽の識別後に、前記紙幣が真券の場合は前記紙幣を搬送方向に搬送させ、前記紙幣が偽券の場合は逆方向に搬送させると共に、終端紙幣検知手段が所定時間経過するまでに前記紙幣の通過を検知しない場合には異常と判定する請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
搬送手段は、第1及び第2の識別センサとの間で紙幣の搬送を停止させ、前記紙幣の搬送が停止している間に識別手段が前記紙幣の真偽を識別する請求項2に記載の紙幣識別装置。
【請求項5】
第1及び第2の識別センサとの間隔は、前記第1の識別センサで紙幣の通過を検知した後、前記紙幣の終端が前記第2の識別センサを通過する前に停止できる距離とした請求項2に記載の紙幣識別装置。
【請求項6】
第1及び第2の識別センサとの間隔は、紙幣の長さの8分の1以下である請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項7】
第2の識別センサは、紙幣の搬送速度に係わらず出力が一定である請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項8】
第2の識別センサは、光学式のセンサである請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項9】
第2の識別センサは、受光素子としてフォト・トランジスタを用いる請求項8に記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−140389(P2009−140389A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318138(P2007−318138)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】