説明

紙缶容器

【課題】意匠性に優れ、商品収容部の上端開口を密閉するシール材を引き剥がした状態においても、蓋体部分の脱落を防止してその上端開口を開閉する紙缶容器を提供する。
【解決手段】上端に内方カーリング部213Aが形成された円筒状の内筒部21、内筒部21の内方カーリング部213Aに貼着されたシール材23および内筒部21の下端に貼着された底面板からなる内筒体2と、上端にカーリング部312Aが形成されるとともに、上部に略V字状の切り裂き目が両端接着部を除いて形成された円筒状の外筒部31および外筒部31のカーリング部312Aに貼着された天面板32からなる外筒体3とから構成される。そして、外筒体3は内筒体2の外周面に嵌挿されることによって紙缶容器1が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙缶容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品や菓子などを収容する容器として、コストの観点から金属缶に代えて紙製の容器である紙缶容器が採用されるようになっている。
【0003】
この紙缶容器は、例えば、特許文献1に示されるように、円筒状胴部の上端部に蓋体を着脱自在に嵌挿して構成されている。そして、紙缶容器に食品などを収容して出荷する場合、異物の混入を防止するために上端開口はシール材によって密閉されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−20354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した紙缶容器においては、円筒状胴部と蓋体とを別個に形成し、食品などを収容した後、円筒状胴部に蓋体を嵌挿しなければならず、蓋体が脱落し易いという欠点があった。特に、商品を取り出すためにシール材を引き剥がした後に、蓋体が脱落して紛失すると、商品は直接外部に露出することになり、商品が食品の場合には衛生上好ましくない。また、円筒状胴部の外周面に蓋体が板厚分積層されて凹凸が発生し、意匠性が低下するという欠点があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、凹凸がないために意匠性に優れるとともに、商品収容部の上端開口を密閉するシール材を引き剥がした状態においても、蓋体部分の脱落を防止してその上端開口を容易に開閉することのできる紙缶容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上端に内方カーリング部が形成された円筒状の内筒部、内筒部の内方カーリング部に貼着されたシール材および内筒部の下端に貼着された底面板からなる内筒体と、上端にカーリング部が形成されるとともに、上部に略V字状の切り裂き目が両端接着部を除いて形成された円筒状の外筒部および外筒部のカーリング部に貼着された天面板からなる外筒体とから構成され、前記外筒体は、内筒体の外径に対応する内径を有するとともに、内筒体の高さよりも若干大きな高さを有して内筒体の外周面に嵌挿されたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、内筒体および外筒体が個別に組み立てられ、内筒体に外筒体を嵌挿して紙缶容器を形成することから、内筒体に収容された商品をシール材によって確実に密閉することができる。そして、外筒体に形成された切り裂き目に沿って切り裂いて上方部分と下方部分に分離させることにより、外筒体の両端接着部分をヒンジとして、天面板を設けた外筒体の上方部分を下方部分に対して回動させることにより、内筒体の上端開口を開閉する蓋体として機能させることができる。
【0009】
この結果、切り裂き目が形成されていない外筒体の両端接着部分がヒンジとなって、蓋体としての外筒体の上方部分の脱落を防止することができるとともに、内筒体の外周面を開閉時のガイドとして内筒体の上端開口を容易に開閉することができる。また、紙缶容器の外周面に凹凸が発生せず、意匠性に優れたものとなる。さらに、内筒体は、外筒体とは別個に組み立てられることから、内筒体に収容された商品をシール材によって密閉することができ、製造工程における異物の混入を可及的に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、凹凸がないために意匠性に優れるとともに、商品収容部の上端開口を密閉するシール材を引き剥がした状態においても、蓋体部分の脱落を防止してその上端開口を容易に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の紙缶容器の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の紙缶容器を分解して示す斜視図である。
【図3】図1の紙缶容器の内筒体の半断面図である。
【図4】図1の紙缶容器の外筒体の半断面図である。
【図5】図1の紙缶容器を構成する内筒体の展開図である。
【図6】図1の紙缶容器を構成する外筒体の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1および図2には、本発明の紙缶容器1の一実施形態が示されている。
【0014】
この紙缶容器1は、菓子、例えば、タブレット状のガムを収容するものであり、コートボールを展開図にしたがって打ち抜いた後、各構成部品を貼着して組み立てられる。そして、紙缶容器1にガムを収容して包装した後、出荷される。
【0015】
この包装容器1は、個別に組み立てられた内筒体2および外筒体3から構成され、内筒体2にガムを供給してシール材23を介して密閉した後、内筒体2の外周面に外筒体3を嵌挿して形成される。
【0016】
内筒体2は、図5の展開図において、内筒部21、底面板22およびシール材23から構成されている。
【0017】
内筒部21は、内筒本体211の左端縁に糊代212が連設される一方、内筒本体211の上端縁にカーリング形成部213が折り目21aを介して連設されるとともに、その下端縁に折り返し形成部214が折り目21bを介して連設されて形成されている。
【0018】
なお、内筒部21の内筒本体211は、後述する外筒部31の外筒本体311の内周長に相当する横寸法と、その高さよりも若干小さな縦寸法との方形に形成されている。
【0019】
底面板22は、内筒部21の直径に略相当する直径の底面本体221の周縁に折り返し形成部222が折り目22aを介して連設された円板に形成されている。
【0020】
シール材23は、ラミネートフィルムからなり、内筒部21の直径に略相当する直径のシール材本体に摘まみ部231を有して形成されている。
【0021】
外筒体3は、図6の展開図において、外筒部31および天面板32から構成されている。
【0022】
外筒部31は、外筒本体311の左端縁に糊代312が連設される一方、外筒本体311の上端縁にカーリング形成部312が折り目31aを介して連設されて形成されている。そして、外筒部31の外筒本体311には、その上端部近傍において糊代312および該糊代312に貼着される右端縁部にそれぞれ横方向に延びる折り目31b,31bが左右対称に形成されるとともに、これらの折り目31b,31bの内端縁に連続して、中央に向かって緩やかにほぼ直線状に下降する一対の切り裂き目31c,31cが全体として略V字状となるように、左右対称に形成されている。また、外筒部31の外筒本体311の左右方向略中央部には、一対の切り裂き目31c,31cに跨がって略楕円状の穴31dが形成されている。
【0023】
なお、外筒部31の外筒本体311は、紙缶容器1の外周長に相当する横寸法と、その高さに相当する縦寸法との方形に形成されている。
【0024】
天面板32は、外筒部31の直径に略相当する直径の円板に形成されている。
【0025】
次に、このように構成された紙缶容器1の組み立て手順について説明する。
【0026】
まず、図5の展開図にしたがってコートボールから内筒部21および底面板22を打ち抜く。そして、内筒部21の裏面が上面を向くように反転させた後、糊代212の表面に接着剤を塗布した後、内筒部21を円筒状に丸めて内筒部21の裏面側左端縁部裏面に貼着し、上下両端が開口された円筒体を形成する。次いで、円筒体状の内筒部21における折り返し形成部214が上方に位置するように、円筒体状の内筒部21を上下反転させて倒立させた後、底面板22の折り返し形成部222を折り目22aに沿って立ち上げ、折り返し部222A(図3参照)を形成するとともに、底面板22の折り返し部222Aの外周面に接着剤を塗布し、円筒体状の内筒部21の内方に嵌挿し、その内周面に貼着する。この際、円筒体状の内筒部21における内筒本体211と折り返し形成部214との折り目21bに、底面板22の折り返し部222Aの上端縁を沿わせて貼着する。次いで、円筒体状の内筒部21の折り返し形成部214の内周面に接着剤を塗布し、折り目21bに沿って内筒部21の内方に向けて折り込んで折り返し部214A(図3参照)を形成し、先に貼着した底面板5の折り返し部222Aの内周面に貼着する。
【0027】
底面板22を貼着したならば、円筒体状の内筒部21におけるカーリング形成部213が上方に位置するように、円筒体状の内筒部21を再び上下反転させて正立させた後、内筒部21のカーリング形成部213を内方にカーリングし、内方カーリング部213A(図3参照)を形成する。そして、底面板22が貼着されて下端側開口部が閉鎖された円筒体状の内筒部21の内部に設定個数のガムを供給した後、内方カーリング部213Aの頂部に接着剤を塗布し、シール材23の周縁を貼着すれば、内部にガムが収容された内筒体2を形成することができる。
【0028】
これにより、製造工程において、内筒体2の内部に異物が混入する機会を可及的に削減することができる。
【0029】
一方、図6の展開図にしたがってコートボールから外筒部31および天面板32を打ち抜く。そして、外筒部31の裏面が上面を向くように反転させた後、糊代312の表面に接着剤を塗布した後、外筒部31を円筒状に丸めて外筒部31の裏面側左端縁部裏面に貼着し、上下両端が開口された円筒体を形成する。次いで、円筒体状の外筒部31におけるカーリング形成部312が上方に位置するように、円筒体状の外筒部31を正立させた後、外筒部31のカーリング形成部312を内方カーリングし、内方カーリング部312A(図4参照)を形成する。そして、内方カーリング部312Aの頂部に接着剤を塗布し、天面板32の周縁を貼着すれば、外筒体3を形成することができる。
【0030】
なお、天面板32の裏面には、ガムの噛みかすを包み込んで廃棄するための包み紙10が貼り付けられている。
【0031】
ガムが収容されて密閉された内筒体2および外筒体3を形成したならば、内筒体2の上方から外筒体3を嵌め合わせ、内筒体2の外周面に外筒体3の内周面を嵌挿し、紙缶容器1を形成する。この後、詳細には図示しないが、紙缶容器1はフィルムで包装されて出荷される。
【0032】
一方、店頭にてガムを購入した消費者はフィルムを剥離した後、外筒体3の切り裂き目31cよりも上方部分を把持して上方に引き上げることにより、外筒体3の上方部分を回動させて、内筒体2の上端部を開放させることができる。
【0033】
すなわち、外筒体3の上方部分を把持し、楕円状穴31dの周縁に指先をかけながら上方に持ち上げる方向に回動操作すると、外筒体3に形成された切り裂き目31cが切り裂かれ、糊代312および該糊代312に貼着された外筒部31の側端縁部を除いて上方部分と下方部分とに切り離される。そして、糊代312および該糊代312に貼着された外筒部31の側端縁部に形成された折り目31b,31bをヒンジとして切り離された外筒体3の上方部分が回動し、内筒体2の上端部を開放させることができる。
【0034】
内筒体2の上端部を開放させたならば、内筒体2のシール材23の摘まみ部231を摘んで引き上げれば、シール材23を内筒体2の上端開口から引き剥がして、その上端開口を開放させることができる。したがって、内筒体2に収容されたガムをその上端開口を通して取り出すことができる。
【0035】
一方、ガムを取り出した後、上端開口を閉鎖する場合は、外筒体3の上方部分を把持して押し下げれば、糊代312および該糊代312に貼着された外筒部31の側端縁部に形成された折り目31b,31bをヒンジとして外筒体3の上方部分が回動し、内筒体2の外周面に嵌合されて、その上端部を閉鎖することができる。
【0036】
これにより、切り裂き目31cが形成されていない部分、すなわち、糊代312および該糊代312が貼着された外筒本体311の側端縁部に形成された折り目31b,31bをヒンジとして切り離された外筒体3の上方部分が回動することから、蓋体としての外筒体3の上方部分の脱落を防止することができる。また、外筒体3の内周面に嵌挿された内筒体2が外筒体2の上方部分の開閉時のガイドとして機能することから、内筒体2の上端部を容易に開放し、あるいは、閉鎖することができるとともに、外筒体3の外周面に凹凸が発生せず、外周面に広告宣伝を施す際に違和感が発生することがなく、意匠性に優れたものとなる。
【0037】
さらに、内筒体2のシール材23を引き剥がした後においても、外筒体3の上方部分を蓋体として活用することができることから、内筒体2に収容されたガムの密閉性を確保することができ、衛生的である。
【0038】
なお、前述した実施形態においては、内筒体の収容商品としてガムを例示したが、ガムに限定されるものではなく、多様な商品を収容することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 紙缶容器
2 内筒体
21 内筒部
211 内筒本体
213A 内方カーリング部
214A 折り返し部
22 底面板
221 底面本体
222A 折り返し部
23 シール材
3 外筒体
31 外筒部
311 外筒本体
312A 内方カーリング部
31b 折り目(ヒンジ)
31c 切り裂き目
32 天面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に内方カーリング部が形成された円筒状の内筒部、内筒部の内方カーリング部に貼着されたシール材および内筒部の下端に貼着された底面板からなる内筒体と、上端にカーリング部が形成されるとともに、上部に略V字状の切り裂き目が両端接着部を除いて形成された円筒状の外筒部および外筒部のカーリング部に貼着された天面板からなる外筒体とから構成され、前記外筒体は、内筒体の外径に対応する内径を有するとともに、内筒体の高さよりも若干大きな高さを有して内筒体の外周面に嵌挿されたことを特徴とする紙缶容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−254319(P2010−254319A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104144(P2009−104144)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000106885)シグマ紙業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】