説明

紙葉類識別装置

【課題】 紙葉類がスキューしたり、特定以外のものであっても、また、紙葉類の端部に磁気スレッドがあっても、紙葉類の磁気スレッドを確実に検出できるようにした。
【解決手段】 磁気スレッドSを有する紙葉類Pを搬送路11に沿って搬送する搬送ローラ対と、この搬送ローラ対によって搬送される紙葉類Pの位置を検出する透過光学検知センサ24、表裏画像検知センサ25,26と、搬送路11の紙葉類搬送方向に対し直交する方向の略全幅に亘って対向配置され、紙葉類Pの磁気スレッドSを検出する第1乃至第3の磁気検出センサ31〜33と、前記透過光学検知センサ24、表裏画像検知センサ25,26によって検出された位置情報に基づいて磁気スレッドSに対応する磁気検出センサ手段31〜33を選択し、この選択した磁気検出センサ手段31(〜33)によって紙葉類Pの磁気スレッドSを検出するように制御する制御部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙幣などの紙葉類が有する磁気スレッドを検出して識別する紙葉類識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の紙葉類識別装置には、紙葉類を搬送路に沿って搬送し、この搬送される紙葉類の磁気スレッドを磁気スレッドセンサによって検出することにより、紙葉類の真偽、種類などを識別するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表平11−505353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来においては、磁気スレッドセンサを搬送路の中央部に1個設けるだけであったため、紙葉類がスキュー等の搬送状態で導入されてきた場合には、紙葉類の磁気スレッドの一部が磁気スレッドセンサから外れて検出できなくなるという問題があった。
【0004】
また、搬送路の中央部に磁気スレッドセンサが1個だけ配置するため、中央部に磁気スレッドを有する特定の紙葉類であればその磁気スレッドを検出できるが、磁気スレッドが中央部から変位する紙葉類の場合にはその磁気スレッドを検出できないという問題があった。
【0005】
さらに、紙葉類処理装置は通常、紙葉類をその短手方向に沿って搬送するため、磁気スレッドが紙葉類の端部にある場合には、紙葉類の表裏/傾きによりその磁気スレッドが磁気スレッドセンサの検知エリアに入らないという問題もあった。
【0006】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、紙葉類がスキューしたり、特定以外のものであっても、また、紙葉類の端部に磁気スレッドがあっても、その磁気材料領域を確実に検出できるようにした紙葉類識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載のものは、磁気材料領域を有する紙葉類を搬送路に沿って搬送する搬送手段と、この搬送手段によって搬送される紙葉類の位置を検出する位置検出手段と、前記搬送路の紙葉類搬送方向に対し直交する方向の略全幅に亘って対向配置され、前記紙葉類の磁気材料領域を検出する複数の磁気検出センサと、前記位置検出手段によって検出された位置情報に基づいて前記磁気材料領域に対応する前記磁気検出センサを選択し、この選択した磁気検出センサによって前記紙葉類の磁性材料領域を検出するように制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紙葉類がスキューしたり、特定以外のものであっても、また、紙葉類の端部に磁気スレッドがあっても、その磁気スレッドを確実に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である紙葉類処理装置を示すものである。
【0010】
紙葉類処理装置は上段ユニット1a、及び下段ユニット1b、さらに操作表示部2を有して構成されている。上段ユニット1aには、紙葉類を搬送するメイン搬送路11が設けられ、下段ユニット1bには、上段ユニット1aから搬送されてくる紙葉類を受けて搬送する搬送路12が設けられている。操作表示部2にはオペレータが触れることにより入力操作を受け付けるタッチパネル、及びオペレータに対する各種操作案内を表示する表示部などが配設されている。上下段のユニット1a、1bは、操作表示部2によって設定入力された業務内容に従って動作するようになっている。
【0011】
上段ユニット1aの一側部には、処理対象となる紙葉類を短手方向に沿って取り出す取出部3が設けられている。取出部3の紙葉類取出方向には紙葉類を1枚ずつ取り込んでメイン搬送路11に供給する取込部4が設けられている。メイン搬送路11中には紙葉類の搬送方向に沿って整列部5、及び識別装置6、さらに表裏反転機構8が配設されている。表裏反転機構8の手前側には分岐路13を介してリジェクト部7が接続されている。
【0012】
整列部5は、取込部4によってメイン搬送路11上に取り出された紙葉類の搬送姿勢を検出する複数のセンサ(図示せず)を有し、この複数のセンサの検出結果に基づいて紙葉類の搬送姿勢を補正するものである。
【0013】
識別装置6は、整列部5にて搬送姿勢が補正された紙葉類から各種特徴量を検出する複数のセンサを有する。識別装置16で検出した各種特微量に基づいて紙葉類処理装置の制御部により当該紙葉類の搬送先が決定されるようになっている。
【0014】
リジェクト部7は、識別装置6で排除すべき紙葉類であると判断された紙葉類を集積させるものである。表裏反転機構8は、搬送ベルトをその走行方向に沿って180度捻った構造を有し、紙葉類の表裏を反転させるものである。
【0015】
下段ユニット1b内には、上段ユニット1aからメイン搬送路11を介して下段ユニット1bに送り込まれてくる紙葉類を集積させる一時集積部9及び集積装置10が複数配設されている。
【0016】
次に、上記した紙葉類処理装置の処理動作について説明する。
【0017】
取出部3から紙葉類が取り出されると、この紙葉類は取込部4によって取り込まれてメイン搬送路11に供給される。この供給された紙葉類は整列部5で搬送姿勢が補正されて識別装置6に送られ、ここで、紙葉類の各種特徴量が検出される。この検出情報に基づいて制御部により当該紙葉類の搬送先が決定される。例えば、排除すべきであると判断された場合には、分岐路13を介してリジェクト部17に搬送され、排除すべきでない判断された場合には、そのままメイン搬送路11に沿って搬送される。メイン搬送路11に沿って搬送される紙葉類は表裏反転機構18で反転され、或いは迂回路14に搬送されて反転されることなく、下段ユニット1bに送り込まれる。この紙葉類は搬送路12を介して所定の集積装置10の一時集積部9へ導かれて区分集積されることになる。
【0018】
図2は上記した識別装置6を示す構成図である。
【0019】
識別装置6内には紙葉類Pの搬送方向に亘って所定間隔を存して搬送手段としての第1乃至第3の搬送ローラ対23a〜23cが配設され、これら第1乃至第3の搬送ローラ対23a〜23cの各ロ−ラはメイン搬送路11を介して対向配置されている。
【0020】
第1の搬送ローラ対23aと第2の搬送ローラ対23bとの間には位置検出手段を構成する透過光学検知センサ24及び表反射画像検知センサ25がメイン搬送路11を介して対向配置されている。第2の搬送ローラ対23bと第3の搬送ローラ対23cとの間にはメイン搬送路11の下部側に位置して裏反射画像検知センサ26が設けられている。第3の搬送ローラ対23cの下流側には磁気検出手段27とローラ30とがメイン搬送路11を介して対向配置されている。
【0021】
上記透過光学検知センサ24は紙葉類の搬送方向に沿う搬送基準位置(図3に示す)に対する紙葉類の端部位置を検出するものである。
【0022】
上記表及び裏反射画像検知センサ25,26は、フォトダイオードをアレイ状に1次元に並べられた素子で構成され、紙葉類Pをアレイと垂直方向に搬送することで2次元画像を読み取るものである。この2次元の画像データは検知データ処理部28のA/D変換回路を通してデジタル化され、画像処理を施されて制御手段としての制御部29へ送られるようになっている。
【0023】
制御部29は、その画像情報により紙葉類Pが搬送路の搬送基準位置からどのくらい離れて搬送されているかを計算し、紙葉類情報とともに磁気検出手段27に対する紙葉類Pの情報を求めるものである。また、制御部29には、予め各種紙葉類の後で説明する磁気スレッドの位置が記憶されている。
【0024】
上記磁気検出手段27は、ローラ30によって紙葉類Pが押圧されることにより接触されて磁気出力を得る。
【0025】
ところで、紙葉類Pは図3に示すように、その一端部に磁気材料領域としての磁気スレッドSが設けられている。
【0026】
また、磁気検出手段27は、搬送路の紙葉類搬送方向に対し直交する方向の全幅に亘って対向配置される第1乃至第3の磁気スレッドセンサ31,32,33を有して構成されている。第1乃至第3の磁気スレッドセンサ31,32,33は千鳥状に配置され、かつ、その端部が紙葉類搬送方向に沿ってそれぞれオーバーラップする状態で配設されている。この配置により、紙葉類P上の全ての領域で磁気スレッドSの検知を可能としている。第1乃至第3の磁気スレッドセンサ31,32,33を互いにオーバーラップする状態で配置するのは、紙葉類Pの搬送位置が多少ばらついても磁気スレッドSを確実に検知できるようにするためである。
【0027】
また、紙葉類Pが搬送不良などにより、斜め方向に搬送された場合でも、第1乃至第3の磁気スレッドセンサ31,32,33の各々の間を磁気スレッドSが通り抜けて未検出となることを防止し、磁気スレッドSを確実に検知できるようにするためである。
【0028】
次に、識別装置6における紙葉類Pの搬送状態と磁気スレッド検知処理について説明する。
【0029】
紙葉類Pが透過光学検知センサ24によりその搬送位置が検出されて搬送エリア内にあると判定されると、表裏反射画像検知センサ25,26により紙葉類Pの傾きと表裏が判定される。そして、予め記憶されている各種紙葉類の磁気スレッドの位置情報と、透過光学検知センサ24により検出された紙葉類の右端位置情報とに基づいて磁気スレッドSの位置が検出される。この検出により磁気スレッドSが検知エリアのどのエリア(P1〜P5)に搬送されるかが判別され、その磁気スレッドSに対応する磁気スレッドセンサ31(〜33)が選択される。
【0030】
例えば、図3に示すように、磁気スレッドSが紙葉類Pの右側にあり、磁気スレッドSの先端と後端がエリアP1を通過すると判別された場合には、第1の磁気スレッドセンサ31によって磁気データ判定処理が行なわれる。
【0031】
また、紙葉類Pが裏向きで搬送されてその磁気スレッドSが紙葉類Pの左側に位置して、磁気スレッドSの先端と後端がエリアP2とP3を通過すると判別された場合には(共通エリアP5)、第2及び第3の磁気スレッドセンサ32と33とによって磁気データ判定処理が行なわれる。
【0032】
同様に磁気スレッドSの先端と後端がエリアP1とP2を通過すると判別された場合は(共通エリアP4)、第1及び第2の磁気スレッドセンサ21と22とによって磁気データ判定処理が行なわれる。
【0033】
図4は磁気スレッドSの検出量を示すグラフである。
【0034】
図4中a線は、第1の磁気スレッドセンサ31の磁気検出量を示し、b線は第3の磁気スレッドセンサ33の磁気検出量を示し、c線は第2の磁気スレッドセンサ32の磁気検出量を示し、d線は第2の磁気スレッドセンサ32と第3の磁気スレッドセンサ33の磁気検出量を合体したものである。
【0035】
次に、図5に示すフローチャートを参照して磁気スレッドSの検知処理動作を説明する。
【0036】
測定対象である紙葉類Pが識別装置6内に導入されて搬送されると、まず透過光学検知センサ24により紙葉類Pの位置情報が読み取られる(ステップST1)。この読取情報に基づいて紙葉類Pの右端検出処理が行なわれ(ステップST2)、ついで、左端検出処理が行なわれ(ステップST3)、紙葉類Pが搬送エリア内に位置するか否かが判別される(ステップST4)。ここで、紙葉類Pが搬送エリア内に位置しないと判別された場合には、紙葉類Pの位置ズレが異常として処理が終了される(ステップST5)。
【0037】
紙葉類が搬送エリア内に位置すると判別された場合には、表反射画像検知センサ25と裏反射画像検知センサ26とにより反射画像が読み取られる(ステップST6)。この読取情報に基づいて、紙葉類の紙葉類Pの種類および傾きと表裏を検出して紙葉類判別処理を行う(ステップST7)。
【0038】
つぎに、各検知センサの磁気データを読み取り(ステップST8)、予め記憶部に記憶されている紙葉類の磁気スレッドの位置情報と、検出した紙葉類Pの右端の位置情報とに基づいて磁気スレッドSの位置を割り出す(ステップST9)。ついで、この割り出された磁気スレッドSに対応する磁気スレッドセンサ31〜33を選択する(ステップST10)。この選択した磁気スレッドセンサ31〜33によって磁気スレッドSの磁気データを読み出して紙葉類の磁気判定処理を行う(ステップST11)。これにより、紙葉類に対するより安定した詳細な磁気判定が可能となる。
【0039】
上記したように、この実施の形態によれば、搬送路11の全面に第1乃至第3の磁気スレッドセンサ31〜33を配置しているため、紙葉類Pの搬送位置および傾きに関係なく磁気スレッドSの検出が可能となるとともに、予め、各種紙葉類の磁気スレッドの位置情報を記憶しておくだけで、各種紙葉類の磁気スレッドの検出が可能となる。
【0040】
また、紙葉類Pの磁気スレッドSに対応する磁気スレッドセンサ31〜33を選択して磁気スレッドSを検出するため、他の磁気出力の影響を受けることなく、磁気スレッドSのみの信号を精度よく検出できる。
【0041】
さらに、紙葉類Pが磁気スレッドSではなく、アルミスレッドなど金属スレッドを備えている場合であっても、第1乃至第3の磁気スレッドセンサ31〜33をアルミスレッドセンサ等対象となる金属を検出可能なセンサに置き換えることで対応できる。
【0042】
なお、本発明は、上記一実施の形態に限られることなく、その要旨の範囲内で種々変形実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態である紙葉類処理装置を示す構成図。
【図2】同紙葉類識別部を示す正面図。
【図3】同紙葉類識別部を示す平面図。
【図4】同検出部の磁気スレッドの検出量を示すグラフ図。
【図5】同磁気スレッドの検出動作を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0044】
S…磁気スレッド(磁気材料領域)、P…紙葉類、11…搬送路、23a〜23c…搬送ローラ対(搬送手段)、24…透過光学検知センサ(位置検出手段)、25…表画像検知センサ(位置検出手段)、26…裏画像検知センサ(位置検出手段)、29…制御部(制御手段)、31〜33…第1乃至第3の磁気スレッドセンサ(磁気検出センサ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気材料領域を有する紙葉類を搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
この搬送手段によって搬送される紙葉類の位置を検出する位置検出手段と、
前記搬送路の紙葉類搬送方向に対し直交する方向の略全幅に亘って対向配置され、前記紙葉類の磁気材料領域を検出する複数の磁気検出センサと、
前記位置検出手段によって検出された位置情報に基づいて前記磁気材料領域に対応する前記磁気検出センサを選択し、この選択した磁気検出センサによって前記紙葉類の磁気材料領域を検出するように制御する制御手段と
を具備することを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記複数の磁気検出センサはその端部を紙葉類搬送方向に沿ってオーバラップさせる状態で配設されたことを特徴する請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記位置検出手段は、透過光学検知センサ、及び表画像検知センサ、裏画像検知センサを有し、
前記透過光学検知センサは、紙葉類搬送方向に沿う搬送基準に対する前記紙葉類の端部位置を検出し、
前記表画像検知センサ及び裏画像検知センサは、前記紙葉類の傾き、表裏を検出することを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記制御手段は、予め各種紙葉類の磁気材料領域の位置情報を記憶しており、前記透過光学検出センサが検出した前記紙葉類の端部位置と前記予め記憶している磁気材料領域の位置情報とに基づいて前記紙葉類の磁気材料領域の位置を割り出すことを特徴とする請求項3記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記磁気材料領域は金属材料領域で、前記磁気検出センサは金属検出センサであることを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−350820(P2006−350820A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178086(P2005−178086)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】