説明

紙製収納箱

【課題】 製造過程から消費者が開封するまでの過程で収納箱上面板の切取部周辺に破損が生じることのない衛生用紙収納箱を提供する。
【解決手段】 略直方体形状の紙製収納箱1の内部に衛生用紙を収納するとともに、紙製収納箱1の上面板2に、衛生用紙の取出口Aを形成する切取部が形成されている。切取部は、紙製収納箱1の長手方向に沿って延在し、その幅方向両側縁が長手方向中央部から長手方向両端部に向けて互いに離間するように湾曲している。切取部の周囲には、切取部を挟んで紙製収納箱の幅方向両側に位置して切取部の幅方向両側縁と反対側に湾曲する第1の押罫部19と、切取部を挟んで紙製収納箱の長手方向両側に位置して第1の押罫部19とで切取部を包囲するように湾曲する第2の押罫部21とが形成されている。第1の押罫部19は、その延出方向両端部が切取部の幅方向両側縁から紙製収納箱1の幅方向に離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略直方体形状の紙製収納箱の内部にティシュペーパー等の衛生用紙を収納するとともに、当該紙製収納箱の少なくとも1面に、衛生用紙の取出口を形成する切取部を有する紙製収納箱に関するものである。より詳細には、本発明は、切取部の周辺に強度を高める押罫部を設けたフィルムレスの紙製収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭やオフィス等で広く使われている収納箱入り衛生用紙としては、ティシュペーパー、ちり紙、ペーパータオル、トイレットペーパーなどが挙げられる。これらの衛生用紙を収納した製品は、収納箱の上面に、衛生用紙を取り出すための取出口を形成する帯状の切取部を有しており、使用者は、該切取部を切り離して取出口を形成して使用している。このように形成された取出口の内面には、通常、形成される取出口を収納箱内面側から覆っており、中央部に取り出し用のスリットが形成されているポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムが貼着されている(特許文献1)。
【0003】
上記のような収納箱内に収納されている衛生用紙は、一般的には、2枚重ねの状態を一組として隣接する2枚重ねの衛生用紙と交互に折り重ねられ、150組程度を一束として箱内に収納されており、使用者が取出口を覆っているプラスチックフィルムのスリットから2枚一組の衛生用紙を引き出すと、引出された衛生用紙の後半部分と折り重ねられている後続する2枚一組の衛生用紙の前半部分が収納箱内部から引き出されてくる。
収納箱の内面に貼着されているプラスチックフィルムは、引出された衛生用紙の前半部分をスリットを通して摩擦により衛生用紙が収納箱内に落ち込むことを防いでいるとともに、外部の塵や異物が収納箱内に入り込むのを防止する役割も果たしている。
【0004】
上記のような取出口にプラスチックフィルムを貼着したタイプの紙製収納箱に代わって、近年、取出口内面にプラスチックフィルムを配置していない、フィルムレスタイプの紙製収納箱も提案されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
このようなフィルムレスタイプの取出口を有する収納箱の場合、プラスチックフィルムに形成したスリットと同様に、ポップアップされて取出口から外部に引出されている衛生用紙の後半部分を挟持して該部分が収納箱内部に落ち込む(逆戻りする)ことを防止するための工夫が求められるが、その対策として、収納箱の取出口の形状を、収納箱の長手方向中央部から長手方向両端部に向けて幅狭とする菱形状とすることにより、該両端部の菱形の箇所で衛生用紙の幅方向両端部を保持できる形状としたものが提案されている(特許文献5)。また、取出口の長手方向両端部にスリットを形成した収納箱も提案されている(特許文献6)。
【0005】
しかし、上記のように取出口でポップアップされた衛生用紙を保持する機能を付与した収納箱の場合、衛生用紙を取出す際に取出口に存在する鋭角部に衛生用紙の幅方向両端部が引っ掛かって破れたり、取出し時における取出口での摩擦が大きく、ポップアップ方式で継続する衛生用紙をスムーズに取出すことができない場合がある。
【0006】
本出願人は、すでに、上記の取出し抵抗が大きいこと起因するトラブルのないフィルムレスタイプの衛生用紙入り収納箱として、取出口の長手方向中央部に括れ部を有する第1湾曲張出部で衛生用紙面を保持するとともに、取出口の長手方向両端部にも衛生用紙幅方向両端面を保持する機能を有する舌片状の第2湾曲張出部を形成した衛生用紙入り収納箱を提案している(特許文献7)。
しかしながら、上記従来構造では、特に、取出口形成用の切取部の形成板部に十分な強度が得られず、切取部が衛生用紙収納箱の製造過程や、製造された製品の流通過程、店内での取り扱い過程で破損して商品価値が損なわれたり、また使用時に切取部を容易に切り取ることができないという問題があった。
【特許文献1】実公昭41−6464号公報
【特許文献2】実開昭57−167080号公報
【特許文献3】特開平9−150871号公報
【特許文献4】実開平4−80878号公報
【特許文献5】実開平6−72883号公報
【特許文献6】特開平9−30573号公報
【特許文献7】特開2005−225562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、取出口形成用の切取部が衛生用紙収納箱の製造過程や、製造された製品の流通過程、店内での取り扱い過程で破損してしまって商品価値が損なわれてしまうことのないように切取部を外力から保護し、さらに、切取部を容易に切り取ることができるように改良することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)略直方体形状の紙製収納箱の内部に衛生用紙を収納するとともに、当該紙製収納箱の少なくとも1面に、前記衛生用紙の取出口を形成する切取部を有する紙製収納箱であって、
前記切取部は、前記紙製収納箱の長手方向に沿って延在するとともに、その幅方向両側縁が長手方向中央部から長手方向両端部に向けて互いに離間するように湾曲し、
前記切取部の周囲には、前記切取部を挟んで前記紙製収納箱の幅方向両側に位置して前記切取部の幅方向両側縁と反対側に湾曲する第1の押罫部と、前記切取部を挟んで前記紙製収納箱の長手方向両側に位置して前記第1の押罫部とで前記切取部を包囲するように湾曲する第2の押罫部とが形成されており、
前記第1の押罫部は、その延出方向両端部が前記切取部の幅方向両側縁から前記紙製収納箱の幅方向に離間することを特徴とする衛生用紙収納箱。
【0009】
(2)前記第1の押罫部の延出方向両端部と前記切取部の幅方向両側縁との前記紙製収納箱の幅方向の離間幅は、前記紙製収納箱の幅寸法に対し4%以上であることを特徴とする(1)項記載の衛生用紙収納箱。
【0010】
(3)前記第1の押罫部と前記第2の押罫部とは、前記紙製収納箱の長手方向に離間し、両押罫部の間にV字形の第3の押罫部が形成されていることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の衛生用紙収納箱。
【0011】
(4)前記第1の押罫部、前記第2の押罫部及び前記第3の押罫部は、前記紙製収納箱の表面側から内面側に凹んだ凹状溝として形成されていることを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の衛生用紙収納箱。
【0012】
(5)前記紙製収納箱は、該収納箱を形成している紙素材の抄紙方向に対してその長手方向が直交する方向となるように形成されていることを特徴とする(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の衛生用紙収納箱。
【発明の効果】
【0013】
本発明の衛生用紙収納箱によれば、切取部の周囲には、切取部を挟んで紙製収納箱の幅方向両側に位置して切取部の幅方向両側縁と反対側に湾曲する第1の押罫部と、切取部を挟んで紙製収納箱の長手方向両側に位置して第1の押罫部とで切取部を包囲するように湾曲する第2の押罫部とが形成されているので、製造過程、製品の流通過程、販売のための取り扱い過程で切取部の形成板部に曲げ力等が加わった場合、第1の押罫部及び第2の押罫部により、切取部形成板部の変形が抑制されて切取部が開封前に不用意に破損することがなく、商品価値が損なわれることがない。
なお、第1の押罫部及び第2の押罫部を切取部と合わせて全体的にバランスの取れた対称形に配置すれば、紙製収納箱の切取部の形成板部に力感あふれる機能美を感じさせる優れた外観を付与できる。
【0014】
また、切取部を切り取ったあとの取出口側縁に形成される一対の湾曲張出部(以下、「第1湾曲張出部」という。)に、切取部の切取時や衛生用紙を引出して取出す際に上方への曲げ力が加わっても、第1の押罫部により、第1湾曲張出部がその付け根に相当する部分で上方に折れ曲がることが抑制され、使用中に第1湾曲張出部の端縁が上方に反り返ることがなく、ポップアップされて取出口に引出されている衛生用紙面に対する十分な接触保持力を維持することができる。
【0015】
前記第1の押罫部の延出方向両端部と前記切取部の幅方向両側縁との前記紙製収納箱の幅方向の離間幅は、前記紙製収納箱の幅寸法に対し4%以上であることが好ましい。前記第1の押罫部の延出方向両端部と前記切取部の幅方向両側縁との前記紙製収納箱の幅方向の離間幅は、前記紙製収納箱の幅寸法に対し4%未満であると、切取部の切取時や衛生用紙を取出す際に第1湾曲張出部が上方に折れ曲がることを効果的に抑制できず、また使用中に第1湾曲張出部の端縁が上方に反り返ることを効果的に防止できず、ポップアップされて取出口に引出されている衛生用紙面に対する十分な接触保持力を維持することができない。
【0016】
第1の押罫部と第2の押罫部とを紙製収納箱の長手方向に離間し、両押罫部の間にV字形の第3の押罫部を形成すれば、切取部が開封前に不用意に破損するのをより効果的に防止できる。
【0017】
第1の押罫部、第2の押罫部及び前記第3の押罫部を紙製収納箱の表面側から内面側に凹んだ凹状溝として形成すれば、製品の流通過程において複数の紙製収納箱を崩れ落ちることなく積み重ねることができる。
【0018】
紙製収納箱を形成している紙素材の抄紙方向に対してその長手方向が直交する方向となるように紙製収納箱を形成すれば、切取部の切取時や衛生用紙を引出す際に第1湾曲張出部が上方に折れ曲がることをより効果的に抑制でき、また使用中に第1湾曲張出部の端縁が上方に反り返ることをより効果的に防止でき、ポップアップされて取出口に引出されている衛生用紙面に対する十分な接触保持力をより確実に維持することができる。
【0019】
なお、衛生用紙がポップアップされて取出口から上方に引き出された後、自重等によって収納箱内に落ち込もうとする衛生用紙はその面が幅の狭い括れ箇所で湾曲張出部と接触し、その接触抵抗によってポップアップ状態が維持されることとなる。
【0020】
以上のように、本発明の衛生用紙収納箱は、切取部が製造過程や、製造された製品の流通過程、店内での取り扱い過程で破損してしまって商品価値が損なわれてしまうことがなく、しかも切取部を容易に切り取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の衛生用紙収納箱は、前記したように、基本的には以下の構造を有している。
略直方体形状の紙製収納箱の内部に衛生用紙を収納するとともに、当該紙製収納箱の少なくとも1面に、衛生用紙の取出口を形成する切取部を有する紙製収納箱であって、切取部は、紙製収納箱の長手方向に沿って延在するとともに、その幅方向両側縁が長手方向中央部から長手方向両端部に向けて互いに離間するように湾曲し、切取部の周囲には、切取部を挟んで紙製収納箱の幅方向両側に位置して切取部の幅方向両側縁と反対側に湾曲する第1の押罫部と、切取部を挟んで紙製収納箱の長手方向両側に位置して第1の押罫部とで切取部を包囲するように湾曲する第2の押罫部とが形成されており、第1の押罫部は、その延出方向両端部が切取部の幅方向両側縁から紙製収納箱の幅方向に離間する。
【0022】
本発明の衛生用紙収納箱の箱体を形成する素材は、一般に紙製のボックス型の包装用容器に使用されるタイプの紙であり、古紙などを使用している紙器板紙、ダンボー原紙、建材原紙等の厚紙が使用されるが、特に限定されるものではない。白板乃至白板紙は印刷適性が優れていることから好ましい素材である。
【0023】
本発明の衛生用紙収納箱の切取部は、例えばミシン目状切取線や鎖線状切取線で囲まれて形成される。切取線は、切取部の長手方向中央部ではミシン目状切取線、鎖線状切取線のいずれでもよいが、製品製造過程、流通過程、店頭販売時の取り扱い過程での破損防止と切り取り易さ、及び切取部を切取った後の端部がポップアップされた衛生用紙面と接触した状態における保持性の観点からミシン目状切取線であることが好ましい。
【0024】
本発明の衛生用紙収納箱の第1の押罫部、第2の押罫部及び第3の押罫部は、断面形状が凹状溝となる溝幅を有するように形成されることが好ましい。収納箱の製造工程や流通過程で収納箱の板面を変形させる力は、長手方向に対する直角方向、すなわち、曲線状切取線に直交する方向に加わる場合が多いので、特に、第1の押罫部の溝幅を広くして補強効果を高めておくことが有効である。
【0025】
本発明の衛生用紙収納箱の第2の押罫部は、種々の形状とすることができるが、特に、円弧状とする場合には溝幅の狭い溝部となるように形成することが好ましい。第2の押罫部を円弧状として溝幅を広くすると、曲率半径が小さいため、押罫部周辺に亀裂が生じて補強効果が小さくなり、外観が損なわれるおそれがある。
【0026】
以下、図面に従い、本発明が適用された衛生用紙収納箱の形状、構造について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明の衛生用紙収納箱の一例を示す展開図であり、図2は、平面図であり、図3は、図2のX−X線断面図、図4は、本発明の衛生用紙収納箱の使用状態を示している。各図中、同一符号は同一部分を表わしている。
【0028】
図1において、符号1は紙製収納箱、2は紙製収納箱1の上面板、12は帯部、13は摘み部、14は両側縁におけるミシン目状切込線、15は摘み部の折目線、16は摘み部の鎖線状切込線、17は第1湾曲張出部、18は第2湾曲張出部、19は曲線型の第1の押罫部、20はV字型の第3の押罫部、21は曲線形の第2の押罫部を示す。
図1に示すように、紙製収納箱1は、紙素材の抄紙方向に対してその長手方向が直交する方向となるように形成されている。そして、例えば、白板紙のような厚紙を打ち抜いて切込線、押罫部等を入れたブランクを形成し、折線に沿って直方体形状に組み立ててられている。紙製収納箱1の大きさは、長手方向の寸法が242mmであり、幅方向の寸法が116mmであり、高さが50mmとなっている。紙製収納箱1の大きさは、これに限らず、適宜変更可能である。この紙製収納箱1には、内部に衛生用紙が収納されている。衛生用紙としては、一例として、縦寸法197mm、横寸法226mmのティシュペーパー等の衛生用紙が用いられ、2枚を1組として隣接する2枚重ねの衛生用紙と交互に折り重ねられ、150組を一束として紙製収納箱1に収納される。
【0029】
図1に示すように、紙製収納箱1の底面3には、収納衛生用紙が少なくなった場合に箱内に押し込み収納衛生用紙を押上げることができるように、押罫部22で囲まれた矩形部を挟んでその一辺を付け根に相当する部分とする半円形の押し込み片24が切込線23によって形成されている。
図1において、符号5と6は側面板で、7,8は端面板で、9,10は内フラップ、11は解体用切込線を表わしている。
【0030】
図4に示した衛生用紙の取出口Aは、開封前は、図1における上面板2の中央部の収納箱の長手方向に沿って延在する切取部によって覆われている。切取部は、摘み部13−帯状部12−摘み部13で構成され、その幅方向両側縁が長手方向中央部から長手方向両端部に向けて互いに離間するように湾曲されている。
衛生用紙の取出口Aの形成は、上面板2に鎖線状切込線16,16、ミシン目状切込線14,14で囲まれた摘み部13,13、帯状部12からなる切取部全体を切り離し、取り除くことによって形成される。また、摘み部周囲の切取線は、摘み部13,13となる部分を指で軽く押し込むだけで、周辺に押し込む力の影響を及ぼすことなく切り離しできるものであることが好ましく、長い切込線と短い接続部の組合せからなる鎖線状切取線が好ましい。ミシン目状切込線14と摘み部13の鎖線状切込線とが接続する接続点付近には、上面板2の表面側から上面板2の厚さ方向中間層に至る切込線からなる折目線15が形成されている。折目線15は、摘み部13を押し下げた際に切り離されてしまうことがなく、かつ、切り離した後に該摘み部13を摘んで上方に引き上げながら切取部を切取線14に沿って切り取る際に該折目線15から千切れてしまうことがない限り、連続線状及び所定間隔の不連続腺状のいずれの状態の切込線であってもよい。
なお、本実施例では、切取部の最小幅寸法B1が約16mmであり、切取部の最大幅寸法B2が約55mmであり、折目線15間の長さL1が約116mm、切取部の全体長さL2が160mmとなっている。
【0031】
具体的手順は、まず、摘み部13を指で箱内に押し込んで鎖線状切込線16を切り離す。このとき、折目線15は上層側から板紙の中間層に止まる深さの切込線として形成されているので、摘み部13は箱内方向に折り曲げ易くなっている。また、切込線16は一点鎖線状で接合部が少ないので切り離し易く、摘み部13は他の部分、たとえば、第2湾曲張出部18に、該部分を箱内方向に折り曲げてしまうような悪い影響を与えることがなく切り離すことができる。
次いで、箱内から摘み部13を引き上げ、該摘み部13を把持して帯状部12の両側縁のミシン目14に沿って帯状部12を切り離し、最後に帯状部12を挟んで反対側に配置されている摘み部13を切り離して取り除く。
【0032】
このように取出口Aが形成された状態で、帯状部12が取り除かれた両側に取出口方向に弓形の曲線状に膨らんで、ミシン目状切込部14が切り離されて形成された端縁を有する第1湾曲張出部17,17が形成され、摘み部13が取り除かれた両端部には、中央部が取出口方向に膨らんだ第2湾曲張出部18が形成される。
【0033】
上記のように取出口Aが形成されたのち、紙製収納箱1は、図4に示すように収納衛生用紙を引出して使用される。
図4に示すように、収納衛生用紙を上層から順に引出すと、引出された衛生用紙に続く衛生用紙は、通常、ポップアップされて取り出された先行する衛生用紙部分と折り重ねられている部分が引出された衛生用紙と一緒に引出され、図4に示す状態に保持される。
【0034】
このように一部が引出された状態の衛生用紙は、何らかの対策を講じないと自重や、その他の要因で箱内に落ち込んでしまうことがあり、再度落ち込んだ衛生用紙を引出すためには、箱内に指を差し入れ、手探りでその折り畳み端部を探し当てて引出さなければならない。
紙製収納箱1の場合、図4のようにポップアップされた衛生用紙は、その面の幅方向中心部が第1湾曲張出部17の取出口Aの内方側に膨らんで最も突き出た状態の端縁部分と接触し、該端縁との接触抵抗によって収納箱内に落ち込むことが防止されることとなるが、このとき、第1湾曲張出部17の端縁は、相対している第1湾曲張出部17の端縁との間が小さくなっていることに加えて、ミシン目14を切り離した端縁にミシン目の接続部が凸状に残存しているためにポップアップされた衛生用紙面との接触抵抗が適度である。
【0035】
また、取出口Aの長手方向両端において、摘み部13が除かれて形成されている第2湾曲張出部18,18の端縁の中央部が取出口Aの内方になだらかに突き出た凸形状を有していることから、ポップアップされてくる衛生用紙の両側面も舌片部なだらかな凸部の端縁との接触抵抗によって箱内に落ち込むことが抑制される。
このように、紙製収納箱1は、第1湾曲張出部17,17と第2湾曲張出部18,18の両端縁でポップアップされる衛生用紙の面を保持するので、衛生用紙が箱内に逆戻りすることが効果的に防止される。
【0036】
このように構成されている切取部、すなわち摘み部13、13、帯状部12の周囲には、第1の押罫部19、第2の押罫部21及び第3の押罫部20が形成されている。第1の押罫部19、第2の押罫部21及び第3の押罫部20は、図4に示されるように紙製収納箱1の上面板2の表面側から内面側に凹んだ凹状溝として形成されている。
第1の押罫部19は、帯状部12を挟んで紙製収納箱1の幅方向両側に1対設けられ、帯状部12の幅方向両側縁と反対側に湾曲している。この第1の押罫部19は、その延出方向両端部が切取部の幅方向両側縁から紙製収納箱1の幅方向に幅B3(図2に図示)だけ離間している。離間幅B3は、紙製収納箱の幅寸法に対し4%以上に設定されており、本実施例では10mmに設定されている。離間幅B3が紙製収納箱1の幅寸法に対し4%未満であると、切取部の切取時や衛生用紙を取出す際に第1湾曲張出部17が上方に折れ曲がることを効果的に抑制できず、また使用中に第1湾曲張出部17の端縁が上方に反り返ることを効果的に防止できず、ポップアップされて取出口Aに引出されている衛生用紙面に対する十分な接触保持力を維持することができない。なお、第1の押罫部19の延出方向両端部には、第1の押罫部19と直交する止め用押罫部が連続して形成されている。
この第1の押罫部19は、取出口Aを形成するために切取部を切り取るときや、収納衛生用紙を取り出すときに第1湾曲張出部17を持ち上げる力が作用しても、第1湾曲張出部17の付け根に相当する部分となる部分、すなわち、両端部の第2湾曲張出部18の幅方向に最も突出している部分同士を結んだ線Lが折れ線となって第1湾曲張出部17が上方に折れ曲がることを抑制し、第1湾曲張出部17に衛生用紙面に対する保持機能を付与する役目を有している。
【0037】
第2の押罫部21は、摘み部13、帯状部12、摘み部13を挟んで紙製収納箱1の長手方向両側に摘み部13に隣接して1対設けられ、第1の押罫部19とで摘み部13、帯状部12、摘み部13を包囲するように湾曲している。第2の押罫部21は、第2湾曲張出部18が上方に持ち上げられて折り曲げられることを抑制し、特には第2湾曲張出部18に衛生用紙の保持機能を付与する役目を有している。
第1の押罫部19と第2の押罫部21とは、紙製収納箱1の長手方向に離間し、両押罫部の間に第3の押罫部20が形成されている。第3の押罫部20は、第1湾曲張出部17の付け根部分(線L(図2に一点鎖線で図示))と交差する辺を有するV字型となっている。この第3の押罫部20は、第1の押罫部19と同様に、取出口Aを形成するために切取部を切り取るときや、収納衛生用紙を取り出すときに第1湾曲張出部17を持ち上げる力が作用しても、第1湾曲張出部17の付け根に相当する部分となる部分、すなわち、両端部の第2湾曲張出部18の幅方向に最も突出している部分同士を結んだ線Lが折れ線となって第1湾曲張出部17が上方に折れ曲がることを抑制し、第1湾曲張出部17に衛生用紙面に対する保持機能を付与する役目を有している。
以上のように、切取部、すなわち摘み部13、13、帯状部12の周囲に第1の押罫部19、第2の押罫部21及び第3の押罫部20が形成され、第1の押罫部19、第2の押罫部21及び第3の押罫部20によって摘み部13、13、帯状部12が包囲されるので、紙製収納箱1の製造過程、製品の流通過程、販売のための取り扱い過程において、紙製収納箱1の上面板2にひずみが生じるような力が加わった場合にも上面板2が変形することを抑制でき、これにより切取線14、16が切り離されることがなく、商品価値が損なわれることがないという作用効果を有する。加えて、切取部、すなわち摘み部13、13、帯状部12が切り取られて取出口Aが形成され、使用者の利用に供された状態においても、ポップアップされた衛生用紙が紙製収納箱1の内部に逆戻りしてしまことがないような取出口Aの湾曲張出部17、18を形成することにも寄与しているものである。
なお、上記実施例では、第1の押罫部19と第2の押罫部21との間に第3の押罫部20を形成したが、第1の押罫部19の延出方向両端部が切取部の幅方向両側縁から紙製収納箱1の幅方向に離間する構成であればよく、第3の押罫部20を省略してもよい。
また、上記実施例では、紙製収納箱1の上面板2に切取部を形成したが、紙製収納箱1の少なくとも一面に切取部が形成される構成であればよく、紙製収納箱1の上面板2及び底面板3の双方に切取部を形成するようにしてもよい。

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の衛生用紙収納箱の一例を示す展開図である。
【図2】本発明の衛生用紙収納箱の平面図である。
【図3】図2のX−X線に沿う断面図である。
【図4】本発明の衛生用紙収納箱の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1:紙製収納箱
2:上面板
3:底面版
4:糊代片
5,6:側面板
7,8:端面板
9,10:内フラップ
11:解体用切込線
12:帯部
13:摘み部
14:ミシン目状切込線
15:折目線
16: 一点鎖線状切込線
17:第1湾曲張出部
18:第2湾曲張出部
19:第1の押罫部、
20:第3の押罫部、
21:第2の押罫部
22:矩形押罫部
23:切込線
24:押し込み片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状の紙製収納箱の内部に衛生用紙を収納するとともに、当該紙製収納箱の少なくとも1面に、前記衛生用紙の取出口を形成する切取部を有する衛生用紙収納箱であって、
前記切取部は、前記紙製収納箱の長手方向に沿って延在するとともに、その幅方向両側縁が長手方向中央部から長手方向両端部に向けて互いに離間するように湾曲し、
前記切取部の周囲には、前記切取部を挟んで前記紙製収納箱の幅方向両側に位置して前記切取部の幅方向両側縁と反対側に湾曲する第1の押罫部と、前記切取部を挟んで前記紙製収納箱の長手方向両側に位置して前記第1の押罫部とで前記切取部を包囲するように湾曲する第2の押罫部とが形成されており、
前記第1の押罫部は、その延出方向両端部が前記切取部の幅方向両側縁から前記紙製収納箱の幅方向に離間する
ことを特徴とする衛生用紙収納箱。
【請求項2】
前記第1の押罫部の延出方向両端部と前記切取部の幅方向両側縁との前記紙製収納箱の幅方向の離間幅は、前記紙製収納箱の幅寸法に対し4%以上であることを特徴とする請求項1記載の衛生用紙収納箱。
【請求項3】
前記第1の押罫部と前記第2の押罫部とは、前記紙製収納箱の長手方向に離間し、両押罫部の間にV字形の第3の押罫部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の衛生用紙収納箱。
【請求項4】
前記第1の押罫部、前記第2の押罫部及び前記第3の押罫部は、前記紙製収納箱の表面側から内面側に凹んだ凹状溝として形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生用紙収納箱。
【請求項5】
前記紙製収納箱は、該収納箱を形成している紙素材の抄紙方向に対してその長手方向が直交する方向となるように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の衛生用紙収納箱。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−267987(P2007−267987A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97818(P2006−97818)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】