説明

紙製段ボール材の成形品及びその成形方法

【課題】紙製段ボール材を切断加工又は打ち抜き加工する際に生じるブランク材における紙粉の発生を防止すると共に、ブランク材を使用した完成品の取り扱い時に生じる紙粉の発生をも防止することのできる紙製段ボール材の成形品とその製造方法を提供する。
【解決手段】紙製段ボール材をカッター等の切断手段で所定の形状に切断又は打ち抜き加工して型取りされたブランク材1の切断手段によって生じた切断面の開口部を封止する。必要に応じて、切断手段による紙製段ボール材の切断又は打ち抜き加工域には、接着剤を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙製段ボール材を切断加工又は打ち抜き加工したブランク材に生じる紙粉の発生を防止すると共に、ブランク材を使用した完成品の取り扱い時に生じる紙粉の発生をも防止することのできる紙製段ボール材の成形品及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装材料又は緩衝材料として、紙を主体とし、燃え易く、また水にも容易に溶け、再生が可能な紙製段ボール材が注目されている。
【0003】
しかしながら、この紙製段ボール材を包装材又は緩衝材として用いるにあたっての問題として、この紙製段ボール材を切断加工又は打ち抜き加工する際に生じる紙粉がある。
【0004】
つまり、紙製段ボール材の切断加工又は打ち抜き加工時に紙粉が発生すると、作業環境が悪化すると共に、多くの清掃作業を必要とし、作業効率が低下するといった問題がある。しかも、被包装物が食品、薬品又は電子部品等のような塵埃を嫌うものである場合には、食品、薬品又は電子部品等に紙粉が付着する等の理由から採用が拒否されることがあった。
【0005】
そこで、一部では、紙製段ボール材をカッター等で切断加工するに際して、カッター等の切断手段で切断する紙製段ボール材の切断域を、切断手段で切断する前に、押圧して押し潰すようにした紙製段ボール材の加工方法が提案されている(特許文献1を参照のこと)。
【特許文献1】特開2006−181950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の紙製段ボール材の加工方法は、所定の形状に裁断すると共に折り曲げ線を施した平板の紙製段ボール材を使って紙製段ボール箱を組み立てるためのものであって、主としてその製造工程での紙粉の発生を防止することを目的としており、切断手段で切断する前に、切断手段で切断する紙製段ボール材の切断域を圧潰ローラによって押圧して押し潰した後に、切断ローラの外周に備えられたカッターで切断域を切断するというものであった。
【0007】
また、折り畳み状態の紙製段ボール箱の搬送時及び箱組立て時等に紙粉が発生することを防止するには、別途、紙製段ボール材を切断手段で切断した後に、紙製段ボール材の外周端部及び切断面部にコーティング剤を塗布してコーティング処理を施すことで、紙製段ボール材の外周端部及び切断面部をコーティング剤で硬化させることが提案されていた。
【0008】
したがって、従来の紙製段ボール材の加工方法では、圧潰されて硬くなった紙製段ボール材を切断するため、カッターに高価な硬度の大きな特殊材料を採用する必要が生じ、生産コストを引き上げることになっていた。また、コーティング剤を塗布してコーティング処理を施した後には当然にコーティング剤の乾燥工程を必要とし、実際の出荷までにはコーティング処理時間の他に乾燥時間をも要することになっていた。
【0009】
この発明は、以上のような製造コストや製造時間に関する従来の問題点を解消するためになされたもので、紙製段ボール材を切断加工又は打ち抜き加工する際に生じるブランク材における紙粉の発生を防止すると共に、ブランク材を使用した完成品の取り扱い時に生じる紙粉の発生をも防止することのできる紙製段ボール材の成形品とその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を実現するため、請求項1に係る発明は、紙製段ボール材をカッター等の切断手段で所定の形状に切断又は打ち抜き加工して型取りされたブランク材の前記切断手段によって生じた切断面の開口部が、封止されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に係る製造方法の発明は、紙製段ボール材をカッター等の切断手段で所定の形状に切断又は打ち抜き加工して型取りされたブランク材を17〜19%の含水率になるよう吸水させ、前記ブランク材をプレス機械に取り付けられた金型にセットした後、前記ブランク材を100〜170℃に加熱し、高圧を加えることで約2〜3%の含水率になるまで脱水して、所望の立体形状に成型する紙製段ボール材の成形品において、前記切断手段による紙製段ボール材の切断又は打ち抜き加工域を押圧することで、前記切断手段によって生じた切断面を封止したことを特徴としている。
【0012】
請求項3に係る製造方法の発明は、請求項1又は2に記載した構成に加えて、前記切断手段による紙製段ボール材の切断又は打ち抜き加工をした加工域には、接着剤を塗布することを特徴としている。
【0013】
請求項4に係る製造方法の発明は、請求項2又は3に記載の構成に加えて、前記紙製段ボール材が単層であって、一方のライナを基準として他方のライナを前記基準としたライナに近づけることで、前記切断手段によって生じた切断面を封止することを特徴としている。
【0014】
請求項5に係る製造方法の発明は、請求項2又は3に記載の構成に加えて、前記紙製段ボール材が多層であって、一つの単層紙製段ボール材の一方のライナを基準として他の紙製段ボール材のすべてのライナを前記基準としたライナに近づけることで、前記切断手段によって生じた切断面を封止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明は、紙製段ボール材をカッター等の切断手段で所定の形状に切断又は打ち抜き加工して型取りされたブランク材の切断手段によって生じた切断面の開口部が封止されているので、紙製段ボール材を切断加工又は打ち抜き加工したブランク材の紙製段ボール材の切断又は打ち抜き加工をした加工域に生じた紙粉は、その加工域の内側であるブランク材の内部に留まることとなる。そのため、従来のように作業環境が悪化するようなことはなく清掃作業の必要もないから、作業効率が低下することもない。また、被包装物が食品、薬品又は電子部品等のような塵埃を嫌うものであっても問題なく採用されることとなるから、需要が増大する。
【0016】
請求項2に係る製造方法の発明は、紙製段ボール材をカッター等の切断手段で所定の形状に切断又は打ち抜き加工して型取りされたブランク材を17〜19%の含水率になるよう吸水させ、ブランク材をプレス機械に取り付けられた金型にセットした後、ブランク材を100〜170℃に加熱し、高圧を加えることで約2〜3%の含水率になるまで脱水して、所望の立体形状に成型する紙製段ボール材の成形品において、切断手段による紙製段ボール材の切断又は打ち抜き加工域を押圧することで、切断手段によって生じた切断面を封止することを特徴としているので、ブランク材の切断又は打ち抜き加工域は高度に圧縮乾燥された状態で一体化されるから、封止部はプラスチック成形品と同程度の硬度が確保される。これにより、組立中や完成品の運搬中の外力による損傷が防止され、その際の紙粉の発生がなくなる。
【0017】
請求項3に係る製造方法の発明は、請求項1又は2に記載した発明の効果に加えて、切断手段による紙製段ボール材の切断又は打ち抜き加工域には、接着剤を塗布することを特徴としているので、接着剤が乾燥した後の封止部の強度が増すため、封止性能に関する信頼性がより高まる。
【0018】
請求項4に係る製造方法の発明は、請求項2又は3に記載の発明の効果に加えて、紙製段ボール材が単層であって、一方のライナを基準として他方のライナを基準としたライナに近づけることで、切断手段によって生じた切断面を封止することを特徴としているので、ライナを基準としたブランク材の寸法精度を確保することができると共に、ブランク材を組み合わせた完成品の組立精度をも確保することができる。
【0019】
請求項5に係る製造方法の発明は、請求項2又は3に記載の発明の効果に加えて、紙製段ボール材が多層であって、一つの単層紙製段ボール材の一方のライナを基準として他の紙製段ボール材のすべてのライナを基準としたライナに近づけることで、切断手段によって生じた切断面を封止することを特徴としているので、ライナを基準としたブランク材の寸法精度を確保することができると共に、ブランク材を組み合わせた完成品の組立精度をも確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
[発明の実施の形態]
【0022】
図1乃至図6は、この発明の実施の形態である巻き取り装置のフランジ部材及びその製造方法を示している。
【0023】
図1は、成形前のフランジ部材の素材であるブランク材の平面図である。図2は成形後のフランジ部材の平面図であり、図3はそのA−A拡大断面図である。
【0024】
図1には、円筒状の芯材に線状やテープ状のケーブル等を巻き取っておいて、必要に応じて、芯材Sからケーブル等を少しずつ引き出して使用する巻き取り装置のフランジ部材となる成形前のブランク材1が示されている。
【0025】
巻き取り装置は対向する一対のフランジ部材10,10と、このフランジ部材10の中心部にあってフランジ部材10,10同士を結合する芯材Sとで構成されるが、以下、フランジ部材10についてのみ説明する。
【0026】
ブランク材1は、平板の紙製段ボール材をカッター等の切断手段による打ち抜き加工して円形状に打ち抜かれたものである。ブランク材1の中心には回転中心となる円形の中心孔2が明いており、その外側周辺には巻き取り装置の芯材Sに巻き取られるケーブル等の残量が外部から確認できるように、複数の放射状に延びる長円からなる覗き孔3が円周上に均等に配置されている。また、巻き取り装置からケーブル等を引き出さずとも、その巻き取り装置にどんなケーブルが収容されているかがわかるように、任意のデザインからなる小孔4が設けられることがある。中心孔2、覗き孔3、小孔4は、ブランク材1を平板の紙製段ボール材から円形状に打ち抜く際に、同時に打ち抜くことで所定の形状に形成される。
【0027】
図1に示したブランク材1では、フランジ部材10としての所定の剛性を持たせるべく、図3で示したように、中央部の内側ライナ5を挟んで小さな波形が連続する第一の中芯6と大きな波形が連続する第二の中芯7とが向かい合っており、第一の中芯6と第二の中芯7の外側にはそれぞれ別個の外側ライナ8,9が配置され、第一の中芯6と第二の中芯7の波形の頂点部と内側ライナ5及び外側ライナ8,9とが接着剤を介して接着された、いわゆるWフルートと呼ばれている紙製段ボール材を使用している。なお、フランジ部材10を形成するブランク材1としては、図示したWフルートの紙製段ボールに限らず、使用環境に応じて、表側のライナと裏側のライナとの間に一種類の波形の中芯を接着剤で張り合わせたいわゆる単層の紙製段ボール材やこの単層の紙製段ボール材を複数重ねて接着剤で張り合わせた多層の紙製段ボール材を採用することは任意である。
【0028】
そして、図4に示したように、中心孔2、覗き孔3、小孔4の周辺部11とブランク材1の外周部12には接着剤を塗布した後、中心孔2、覗き孔3、小孔4の周辺部11とブランク材1の外周部12とを金型で押し潰す圧縮成形により、巻き取り装置のフランジ部材13として必要とされる強度を持たせるようにしている。
【0029】
単層の紙製段ボール材同士を接着する接着剤及び中心孔2、覗き孔3、小孔4の周辺部11とブランク材1の外周部12に塗布する接着剤としては、製造や運搬作業に携わる人への安全性を考慮し、ホルムアルデヒドが検出されることのない、水溶性の酢酸ビニル系接着剤を使用することが好ましい。酢酸ビニル系接着剤としては、例えば、ペガール210PR、ペガール100HHR、ペガール1540、ペガール517R(高圧ガス工業株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
水溶性の酢酸ビニル系接着剤を使用することで、実施の形態に係るフランジ部材10全体を水に浸すことで紙製段ボールと接着剤の両方を水に溶かすことができるので、新たなフランジ部材10の原料として容易に再利用ができ、環境問題を生じる心配もない。
【0031】
図3に示したように、中心孔2、覗き孔3、小孔4の周辺部11とブランク材1の外周部12とを金型で押し潰す圧縮成形を施すことにより、中心孔2、覗き孔3、小孔4に接した平坦部13及びブランク材1の外周部12の平坦部13と、これらの平坦部13と頂面部14とを結ぶ傾斜面15とが形成されることになる。
【0032】
したがって、図5及び図6に示したように、カッター等16の切断手段によって平板の紙製段ボール材から円形状のブランク材1を打ち抜いた際の加工域にあたる外周部12の開口部17と、中心孔2、覗き孔3、小孔4をカッター等16の切断手段によって打ち抜いた際の加工域に当たる中心孔2、覗き孔3、小孔4の周辺部11の開口部17とは、平坦部(封止部)13によって完全に封止された状態となる。
【0033】
これにより、ブランク材1を打ち抜いた際に外周部12の開口部17に付着した紙粉と、中心孔2、覗き孔3、小孔4を打ち抜いた際に中心孔2、覗き孔3、小孔4の周辺部11の開口部17に付着した紙粉とは、ブランク材1の加工域である開口部17の内側であるブランク材1の内部に留まることとなり、圧縮成形後のフランジ部材13にあっては紙粉による作業環境の悪化のおそれはない。そのため、清掃作業の必要もないから、その後の作業効率が低下する心配もなくなる。
【0034】
なお、図示した実施の形態では、外周部12の開口部17と、中心孔2、覗き孔3、小孔4の周辺部11の開口部17とは、平坦部(封止部)13によって完全に封止された状態にあるが、この平坦部13は1〜5mm程度、若しくはそれ以上の明らかに目視できるだけの十分な幅を持たせることが望ましい。これにより、接着剤が硬化した際にはこの平坦部13が他の部位に比べて強固になるから、この平坦部13を補強部材として機能させることができるので、十分な幅を持った平坦部13のないものに比べて、フランジ部材10の剛性をより高めることができる。
【0035】
次に、この発明の実施の形態であるフランジ部材10を例として、紙製段ボール材の成形品の強度をより向上させることのできる製造方法について説明する。
【0036】
まず、図5に示したように、平板の紙製段ボール材から円形状に打ち抜くと共に、中心孔2、覗き孔3、小孔4の打ち抜き加工を施したブランク材1を完成したら、このブランク材1に水分を加湿することで紙製段ボール材に伸縮性を与える加湿工程を実施する。
【0037】
ブランク材1に水分を加湿させる含水率としては、紙製段ボール材の厚みや材質によって異なるが、通常、水分を加湿させる前の紙製段ボール材の含水率である6〜8%よりも多い17〜19%程度の含水率とするとよいことが、発明者らの実験によってわかっている。
【0038】
ブランク材1に水分を加湿させる方法としては、特に限定されるものではないが、中芯6,7水分を加湿させないことを考慮すると外側ライナ9に水蒸気を吹き付ける方法が望ましい。これにより、後述する賦形工程において、中芯6,7の波形方向に関係なく紙製段ボールのライナ5,9が伸縮して立体的な形状を賦形することが可能となる。
【0039】
次に、加湿工程により水分が加湿されたブランク材1に所定の形状に形成する賦形工程と加熱工程とを行う。
【0040】
賦形工程と加熱工程とは、第6図に示したような、一対の金型20を用いて賦形する成形方法であり、この一対の金型20によりブランク材1を加圧して所定の形状に形成すると共に、ブランク材1を加熱して加湿されたブランク材1の水分を除湿し硬化させることにより賦形された形状を維持することができる。
【0041】
一対の金型20は、予め中心孔2、覗き孔3、小孔4の周辺部11とフランジ部材10の外周部12に形成される平坦部13と、この平坦部13と頂面部14とを結ぶ傾斜面15とを形成する形状を有する立体形状に形成された上金型18と、フランジ部材10の基準面21に対応した平滑面22を有する下金型19とで構成されている。
【0042】
また、上金型18は、少なくとも上下方向に可動するように構成され、これによりブランク材1を加圧して所定のフランジ部材10の立体形状に成形できる構造としている。さらに、上金型18の下面には、図示しない突起部が形成されており、上金型18と下金型19とを重ね合わせたときに突起部の底面が下金型19の上面に接触して圧縮量を決定するクリアランスが設けられるように形成されている。この圧縮加工のためのクリアランスの高さは、発明者らの実験によりブランク材1の成形前の厚さの70〜90%の寸法になるように設定するとよいことがわかっている。なお、ここでは、上金型18の方に突起部を設けるとしたが、これに限定されず、下金型19の方に突起部を設けるようにしてもよいことは勿論である。
【0043】
次に、一対の金型20は、加湿されたブランク材1の水分を蒸発させて除湿するために、所定の温度に加熱する。この加熱する温度としては、紙製段ボールの材質や厚みに応じて設定されるが、加熱温度が100℃未満の場合には、ブランク材1の水分が沸騰しないので除湿できず、また、温度が170℃以上の場合には、ブランク材1の表面が焦げたように黒変してしまうおそれがあるので、一般的には、100〜170℃程度、より好ましくは140〜160℃の範囲で一対の金型20の温度を設定するのがよい。この一対の金型20を加熱する方法としては、特に限定されるものではないが、一対の金型20に電熱加熱装置(図示せず)を設けて加熱する方法等が例示できる。
【0044】
また、一対の金型20には、加熱された一対の金型20と併用してブランク材1を加熱除湿する高周波発生装置(図示せず)を接続することで、ブランク材1全体をほぼ均一に加熱し除湿することにより、成形時のブランク材1の中芯6,7及び外側ライナ8,9と内側ライナ5の含水率がほぼ均一なものにできる。
【0045】
上金型18のブランク材1との接触面及び下金型19のブランク材1との接触面には、加熱されてブランク材1から発生する水蒸気が流出可能な逃孔(図示せず)を複数形成している。
【0046】
以上のような構成を有する一対の金型20を使用してフランジ部材10を成形する場合には、前述した水分が加湿されたブランク材1を、上金型18と下金型19との間に挿入して、図6に示すように、上金型18を下金型19側に可動させて、一対の金型20の間に挿入されたブランク材1を加圧して所定の形状に賦形する。
【0047】
一対の金型20で加圧する圧力は、紙製段ボールの厚みやその他の成形性条件に合わせて調整されるが、おおむね0.1〜0.3kg/cmの高圧とすることが多い。
【0048】
ブランク材1は加湿され伸縮性を有しているので、外側ライナ9と内側ライナ5の一部に伸びが発生し、破れが生じることなく屈曲され、外側ライナ9と内側ライナ5の一部には縮みが発生し、皺が発生することなく、一対の金型20の形状に沿ってブランク材1が賦形されて伸縮部である傾斜面15と圧縮部である平坦部13とを有する立体形状をしたフランジ部材10が形成される。また、伸縮部である傾斜面15に対応する箇所の中芯6,7は、接着剤が剥離することなく、極力、成形前の波形を維持して異形状の台形波の形状に変形する。
【0049】
さらに、上金型18の動きによって加圧されると同時に、加熱された一対の金型20に接触したブランク材1は、加熱されることで加湿された水分が沸点を超えて水蒸気となり、この水蒸気でブランク材1の中芯6,7と内側ライナ5が若干加湿され、ある程度の伸縮性が与えられると共に、一対の金型20に形成した逃孔から水蒸気が排出されてブランク材1から水分が除湿される。
【0050】
そして、ブランク材1のライナ4が伸縮され、ブランク材1が賦形されて伸縮部である傾斜面15と圧縮部である平坦部13とを有する立体形状に形成された状態のまま、ブランク材1から水分を除湿して乾燥させることで硬化し、ブランク材1が塑性変形されて所定の立体形状をしたフランジ部材10が完成する。
【0051】
加熱された一対の金型20及び高周波発生装置でブランク材1の水分を除湿する量としては、成形前の紙製段ボール材の含水率6〜8%より、さらに乾燥した状態とすることで、フランジ部材10の伸縮性をなくして強度を向上させることができるため、含水率が3%以下、より好ましくは、限りなく0%に近づくまで除湿するのがよい。
【0052】
なお、この発明の実施の形態に係るフランジ部材10では、成形品の一部に傾斜面15と平坦面13を有する立体形状を形成しているが、これに限定されず、金型で成形可能な形状であれば、より複雑な立体形状に成形することも可能である。そのため、実施の形態で示した条件に基づいた、ブランク材1の加湿工程とその加湿工程を経たブランク材1を一対の金型20による賦形工程と加熱工程とを実施することにより、例えば、曲面を有する半球状の立体製品の製造も可能となるから、巻き取り装置のフランジ部材10の成形以外の用途も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施の形態に係る成形前のフランジ部材のブランク材の平面図である。
【図2】同実施の形態に係る成形後のフランジ部材の平面図である。
【図3】図2のA−A拡大断面図である。
【図4】この発明の実施の形態に係る成形前のフランジ部材のブランク材に接着剤を塗布した状態を示す平面図である。
【図5】同実施の形態に係るフランジ部材のブランク材の打ち抜き加工状態を示す拡大断面図である。
【図6】同実施の形態に係るフランジ部材の成形状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ブランク材
2 中心孔
3 覗き孔
10 フランジ部材
11 周辺部
12 外周部
13 平坦部(封止部)
14 頂面部
15 傾斜部
17 開口部
18 上金型
19 下金型
20 一対の金型
21 基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製段ボール材をカッター等の切断手段で所定の形状に切断又は打ち抜き加工して型取りされたブランク材の前記切断手段によって生じた切断面の開口部が、封止されていることを特徴とする紙製段ボール材の成形品。
【請求項2】
紙製段ボール材をカッター等の切断手段で所定の形状に切断又は打ち抜き加工して型取りされたブランク材を17〜19%の含水率になるよう吸水させ、前記ブランク材をプレス機械に取り付けられた金型にセットした後、前記ブランク材を100〜170℃に加熱し、高圧を加えることで約2〜3%の含水率になるまで脱水して、所望の立体形状に成形する紙製段ボール材の成形品において、前記切断手段による紙製段ボール材の切断又は打ち抜き加工域を押圧することで、前記切断手段によって生じた切断面を封止することを特徴とする紙製段ボール材の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記切断手段による紙製段ボール材の切断又は打ち抜き加工をした加工域には、接着剤を塗布することを特徴とする請求項1又は2に記載の紙製段ボール材の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記紙製段ボール材が単層であって、一方のライナを基準として他方のライナを前記基準としたライナに近づけることで、前記切断手段によって生じた切断面を封止することを特徴とする請求項2又は3に記載の紙製段ボール材の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記紙製段ボール材が多層であって、一つの単層紙製段ボール材の一方のライナを基準として他の紙製段ボール材のすべてのライナを前記基準としたライナに近づけることで、前記切断手段によって生じた切断面を封止することを特徴とする請求項2又は3に記載の紙製段ボール材の成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−51056(P2009−51056A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218613(P2007−218613)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(598171911)株式会社イシバシ (7)
【Fターム(参考)】