説明

素材処理装置及び素材処理方法

【課題】収録素材のデータ構成の変更に合わせて、タイムライン情報の修正を簡単かつ短時間に行ない得る素材処理装置を提供する。
【解決手段】収録中の素材をMXFファイル化して転送しようとする場合に、MXF化部12のヘッダ生成機能121により映像・音声・アンシラリの各MXFファイルのヘッダ部にはクリップ全体のタイムライン情報を記録せずに、そのファイル自身のタイムライン情報のみを記録し、クリップ情報生成機能123によりこれらMXFファイルとは別に、クリップ全体のタイムライン情報とリンク情報のみを記録するクリップ情報MXFファイルを新たに生成して編集機2に出力するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば放送番組で使用する映像/音声等の素材を収録する際に、編集装置に各素材をファイル化して転送する素材処理装置及び素材処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、放送番組送出システムにあっては、放送番組の送出素材を予め記録再生装置に格納しておき、再生指示に従って該当する素材を再生し、オンエアを行うようになっている。このようなオンエア処理において、通常、オンエア前にオンエア順序に従った素材の確認作業が行われている。
【0003】
この素材確認作業は、記録再生装置により素材収録と同時に、収録すべき素材をMXF(material exchange format)ファイルに変換して編集装置に転送することにより行なわれる。
【0004】
ところで、収録中の素材をMXFファイル化する際、素材長が長い素材の場合、1つのMXFファイルに収まらず、データ転送可能なデータ量となるタイムラインごとに素材を分割することになり、複数のMXFファイルとなる場合がある。この場合、複数のMXFファイルそれぞれのヘッダ部に、全収録素材のタイムライン情報が記録されることになる。
【0005】
このため、収録素材のデータ構成を変更する必要がある場合に、各MXFファイルのヘッダ部に記録される全収録素材のタイムライン情報を修正しなければならず、オペレータにとっては煩雑な作業が強いられる。
【0006】
なお、この種の問題に関連する従来技術として、特許文献1に、光ディスクに記録されるコンテンツデータから当該コンテンツに関するクリップ情報を抽出して管理する構成が示されている。但し、この特許文献1に記載のものは、光ディスクからデータをスムーズに再生することを目的としており、収録素材のデータ構成の変更に伴い、各MXFファイルのヘッダ部の修正に関するものではない。
【特許文献1】特開2005−4868公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上述べたように、従来の記録再生装置では、収録素材のデータ構成を変更する必要がある場合に、各MXFファイルのヘッダ部に記録される全収録素材のタイムライン情報を修正しなければならず、オペレータにとっては煩雑な作業が強いられる。特に、MXFファイルの数が多いほど顕著となる。
【0008】
そこで、この発明の目的は、収録素材のデータ構成の変更に合わせて、タイムライン情報の修正を簡単かつ短時間に行ない得る素材処理装置及び素材処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明に係る素材処理装置は、素材データを符号化して記録媒体に収録すると共に、符号化データから収録素材の収録開始から収録終了までのクリップを含むヘッダ部及び符号化データ自体を含む本体部を備える規格化されたファイル構造の転送データを生成して編集装置に転送する素材処理装置において、符号化データを解析し、当該符号化データを編集装置に転送可能なデータ量となるタイムラインに分割し、タイムラインごとに編集装置への送出順序を示すタイムライン情報をファイルのヘッダ部に挿入するヘッダ生成手段と、このヘッダ生成手段により生成されるヘッダ部に続く本体部に、タイムライン情報に対応する分割データを挿入して1ファイルの転送データを生成し編集装置に出力するファイル生成手段と、このファイル生成手段による1ファイルの転送データの生成完了後に、タイムラインごとにクリップ全体のタイムライン情報と、1ファイル前の転送データに連結するために必要なリンク情報とを組み合わせたクリップ情報ファイルを生成して編集装置に出力するクリップ情報ファイル生成手段とを備えるようにしたものである。
【0010】
この構成によれば、収録中の素材をファイル化して転送しようとする場合に、映像・音声・アンシラリの各ファイルのヘッダ部にはクリップ全体のタイムライン情報を記録せずに、そのファイル自身のタイムライン情報のみを記録し、これらファイルとは別に、クリップ全体のタイムライン情報とリンク情報のみを記録するクリップ情報ファイルを新たに生成して編集装置に出力するようにしている。
【0011】
従って、編集装置では、収録素材のデータ構成の変更に合わせて、クリップ情報ファイルを修正するだけでよく、これによりタイムライン情報の修正を簡単かつ短時間に行なうことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したようにこの発明によれば、収録素材のデータ構成の変更に合わせて、タイムライン情報の修正を簡単かつ短時間に行ない得る素材処理装置及び素材処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態となる映像音声記録再生装置とその周辺構成を示すブロック図である。図1において、符号1は映像音声記録再生装置で、エンコーダ11と、MXF化部12とを備えている。また、映像音声記録再生装置1には、ディスク等といった収録用メディアMが着脱可能となるように装着される。さらに、映像音声記録再生装置1には、編集機2が接続される。
【0014】
映像音声記録再生装置1に入力される映像信号、音声信号及びアンシラリ信号は、エンコーダ11により圧縮符号化されて収録用メディアMに収録される。この収録と同時に、エンコーダ11の出力は、MXF化部12によってMXFファイルに変換されて編集機2に出力される。以下では、素材の収録開始から終了までの部分をクリップと定義する。
【0015】
MXF化部12は、ヘッダ生成機能121と、ファイル生成機能122と、クリップ情報生成機能123とを備えている。ヘッダ生成機能121は、映像、音声及びアンシラリの符号化データを解析処理してタイムラインに分割し、タイムラインごとに編集機2への送出順序を示すタイムライン情報をMXFファイルのヘッダ部に挿入する。
【0016】
ファイル生成機能122は、映像、音声及びアンシラリのそれぞれについて、ヘッダ生成機能121により生成されるヘッダ部に続くボディ部に、タイムライン情報に対応する分割データを挿入してMXFファイルを生成し編集機2に出力する。
【0017】
クリップ情報生成機能123は、上記ファイル生成機能122によるMXFファイル生成完了後に、タイムラインごとにクリップ全体のタイムライン情報と、1ファイル前のMXFファイルに連結するために必要なリンク情報とを組み合わせたクリップ情報MXFファイルを生成して編集機2に出力する。
【0018】
上記構成において、以下にMXFファイルの転送処理について説明する。
【0019】
図2は、MXFファイルの構造を示すものである。MXFファイルの構成は大きく分けて、ヘッダ部、ボディ部、フッタ部から成る。ヘッダ部には、主にメタデータが記述されるが、メタデータはさらに、マテリアルパッケージやファイルパッケージなどから成る。
【0020】
ファイルパッケージは入力された素材の情報で、マテリアルパッケージは出力されるクリップのタイムライン情報である。ボディ部は、主に映像・音声・アンシラリ等のデータ本体を格納する。フッタ部は主にインデックス情報が入る(以上、SMPTE377M)。
【0021】
MXFファイルにはいくつかの形式(オペレーショナルパターン)が存在するが、ここでは、OP-Atomという形式のMXFファイルを前提とする。OP-Atomは一つのファイルに一つのトラックの情報だけを記録するという形式である(以上、SMPTE390M)。以下では、素材が映像・音声・アンシラリの3つのトラックからなる場合を例にして説明する。
【0022】
収録中の素材をMXFファイル化する際、素材長が長い素材の場合は、各トラックが1個のMXFファイルに収まらず、複数のMXFファイルとなる場合がある。
【0023】
このような場合、従来は図3に示すように、i番目の各MXFファイルのマテリアルパッケージには1〜i番目までの全データのタイムライン情報を記録していた。この方式では、クリップを構成する全てのMXFファイルに、クリップのタイムライン情報が分散されることになる。
【0024】
なお、ここでは、同一番号の映像・音声・アンシラリの各MXFファイルは同期が取れており、フレーム数は同じであるものとする。
【0025】
そこで、この実施形態では、図4に示すように、各トラックのMXFファイルのマテリアルパッケージには、自身のタイムライン情報のみを記録するものとする。さらに、これらの各トラックのMXFファイルに加え、図5に示すようなクリップ全体のタイムライン情報と、各MXFファイルへのリンク情報を記述したMXFファイル(これを仮に、クリップ情報MXFファイルと呼ぶことにする)を作成する。このクリップ情報MXFファイルは、i番目の全トラックのMXFファイルの作成が完了する度ごとに、更新して転送するものとする。この構成では、クリップ全体の情報はクリップ情報MXFファイルだけに集約されることになる。
【0026】
図6は、MXF化部12によるMXFファイルの生成処理動作を示すフローチャートである。
【0027】
まず、MXF化部12は、収録中にある映像、音声、アンシラリそれぞれの符号化データの内容を解析し(ステップST6a)、素材長が編集機2への転送可能なデータ量を超える場合に、各符号化データを複数のタイムラインに分割し(ステップST6b)、タイムラインごとに、ファイル自身のタイムライン情報をヘッダ部のメタデータに挿入する(ステップST6c)。
【0028】
続いて、MXF化部12は、ヘッダ部に続くボディ部に映像、音声、アンシラリそれぞれの符号化データ本体を挿入し(ステップST6d)、1つのMXFファイルを生成して編集機2に出力する(ステップST6e)。
【0029】
1つのMXFファイルの生成完了後に、MXF化部12はタイムラインごとにクリップ全体のタイムライン情報と、1ファイル前のMXFファイルに連結するために必要なリンク情報とを組み合わせたクリップ情報MXFファイルを生成して編集機2に出力する(ステップST6f)。
【0030】
以上のステップST6a乃至ステップST6fの処理が、収録完了となるまで繰り返し実行されることになる。
【0031】
以上のように上記実施形態では、収録中の素材をMXFファイル化して転送しようとする場合に、MXF化部12のヘッダ生成機能121により映像・音声・アンシラリの各MXFファイルのヘッダ部にはクリップ全体のタイムライン情報を記録せずに、そのファイル自身のタイムライン情報のみを記録し、クリップ情報生成機能123によりこれらMXFファイルとは別に、クリップ全体のタイムライン情報とリンク情報のみを記録するクリップ情報MXFファイルを新たに生成して編集機2に出力するようにしている。
【0032】
従って、クリップ全体の情報を集約することにより、クリップへのトラックの追加や削除などの変更が、クリップ情報MXFファイル内の変更だけで済むことになる。また、既存のトラックのMXFファイルを組み合わせて、新しいクリップを作成したい場合は、新たなクリップ情報MXFファイルを作成し、そこに新しいクリップのタイムライン情報とリンク情報を記述するだけでよいので、比較的容易に実現できる。
【0033】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一実施形態となる映像音声記録再生装置とその周辺構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態におけるMXFファイルの構造を示す図。
【図3】以前に行われていたMXFファイルの転送動作を説明するために示すタイミング図。
【図4】同実施形態における映像、音声、アンシラリのMXFファイルの転送動作を説明するために示すタイミング図。
【図5】同実施形態におけるクリップ情報MXFファイルの転送動作を説明するために示すタイミング図。
【図6】同実施形態におけるMXFファイルの生成処理動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0035】
1…映像音声記録再生装置、2…編集機、11…エンコーダ、12…MXF化部、121…ヘッダ生成機能、122…ファイル生成機能、123…クリップ情報生成機能。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材データを符号化して記録媒体に収録すると共に、符号化データから収録素材の収録開始から収録終了までのクリップを含むヘッダ部及び前記符号化データ自体を含む本体部を備える規格化されたファイル構造の転送データを生成して編集装置に転送する素材処理装置において、
前記符号化データを解析し、当該符号化データを前記編集装置に転送可能なデータ量となるタイムラインに分割し、タイムラインごとに前記編集装置への送出順序を示すタイムライン情報を前記ファイルのヘッダ部に挿入するヘッダ生成手段と、
このヘッダ生成手段により生成されるヘッダ部に続く本体部に、前記タイムライン情報に対応する分割データを挿入して1ファイルの転送データを生成し前記編集装置に出力するファイル生成手段と、
このファイル生成手段による1ファイルの転送データの生成完了後に、前記タイムラインごとに前記クリップ全体のタイムライン情報と、1ファイル前の転送データに連結するために必要なリンク情報とを組み合わせたクリップ情報ファイルを生成して前記編集装置に出力するクリップ情報ファイル生成手段とを具備したことを特徴とする素材処理装置。
【請求項2】
前記ヘッダ生成手段は、前記符号化データのうち、映像、音声及びアンシラリのそれぞれについてタイムラインに分割し、タイムラインごとに前記タイムライン情報を前記ファイルのヘッダ部に挿入し、
前記ファイル生成手段は、映像、音声及びアンシラリのそれぞれについて、前記ヘッダ生成手段により生成されるヘッダ部に続く本体部に、前記タイムライン情報に対応する分割データを挿入して1ファイルの転送データを生成し前記編集装置に出力することを特徴とする請求項1記載の素材処理装置。
【請求項3】
素材データを符号化して記録媒体に収録すると共に、符号化データから収録素材の収録開始から収録終了までのクリップを含むヘッダ部及び前記符号化データ自体を含む本体部を備える規格化されたファイル構造の転送データを生成して編集装置に転送する素材処理方法において、
前記符号化データを解析し、当該符号化データを前記編集装置に転送可能なデータ量となるタイムラインに分割し、タイムラインごとに前記編集装置への送出順序を示すタイムライン情報を前記ファイルのヘッダ部に挿入し、
このヘッダ部に続く本体部に、前記タイムライン情報に対応する分割データを挿入して1ファイルの転送データを生成し前記編集装置に出力し、
前記1ファイルの転送データの生成完了後に、前記タイムラインごとに前記クリップ全体のタイムライン情報と、1ファイル前の転送データに連結するために必要なリンク情報とを組み合わせたクリップ情報ファイルを生成して前記編集装置に出力することを特徴とする素材処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−164894(P2009−164894A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−599(P2008−599)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】