説明

紡機における繊維束集束装置

【課題】案内部材のテーパ部からストレート部へ移行する部分で繊維の詰まりが発生するのを抑制して安定した糸品質で紡出を行うことを可能にする。
【解決手段】繊維束集束装置30は繊維束Fの幅を狭めるように案内する案内面を備えた案内部材31を、案内面に繊維束が接触するのを阻止する音圧を発生するように振動させる励振手段を備えている。案内部材31は一対の板状のガイド部35を備え、一対のガイド部35は、案内面を構成するその対向面の間隔が一定のストレート部35bと、繊維束Fの進行方向上流側が広くなるように形成されたテーパ部35cとを備えている。ガイド部35の形状は、案内部材31が励振手段により所定振動数で励振された際に、ストレート部35bの出口35d及びテーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置が振動の腹となるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡機における繊維束集束装置に係り、詳しくはリング精紡機のドラフト装置(ドラフトパート)の下流に配置され、ドラフト装置でドラフトされた繊維束を集束するのに好適な紡機の繊維束集束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リング精紡機において、ドラフトされた繊維束を撚り掛けの前に予め集束し、むらが少ない、毛羽が少ない等の糸品質の向上を目的とした繊維束集束装置が種々提案されている。そして、繊維束の集束方法としては、機械的なガイド(コレクター)を用いる方法や、多孔ベルト(通気エプロン)上を移動する繊維束に吸引気流を作用させる方法が一般的である。
【0003】
しかし、これらの方法では、繊維束と接触して繊維束を案内するため、繊維束中の繊維配列を乱さないために、案内部材の表面の摩擦を低減させる対策が必要であり、対策を施しても経時的に性能が劣化する。この問題を解消するため、繊維束に接触せずに繊維束を案内することができ、摩耗や異物の付着によって案内面の摩耗状態が経時的に劣化するのを防止する繊維束案内装置が提案されている(特許文献1参照。)。特許文献1の繊維束案内装置は、精紡機に取り付けられた状態において、案内すべき繊維束の移動方向に沿って繊維束の幅を狭める案内面を備えた案内部材と、案内面に繊維束が接触するのを阻止する音圧を発生するように案内部材を振動させる励振手段とを備えている。そして、案内部材が所定の共振周波数(例えば、34kHz前後)で励振されることにより、案内部材が振動して繊維束を非接触状態で案内する。
【特許文献1】特開2007−9391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンパクト糸と言われる高品質な糸は、繊維束集束部(コンデンスゾーン)で繊維束を幅0.5〜1.0mm程度に集束する必要がある。繊維束をそのような狭い範囲で集束させようとすると、案内面は繊維束の進行方向上流側を幅広くしたテーパ部と、テーパ部の下流端に連続して幅が一定のストレート部とを備え、テーパ部からストレート部へ繊維束を案内するのが好ましい。ところが、単に案内部材を振動させたのでは、案内部材の振動の振幅が小さすぎる場合に、繊維束がテーパ部からストレート部へ移行する部分で繊維の詰まりが発生する。また、ストレート部の出口における振幅が小さすぎる場合は、糸品質に悪影響を及ぼす。
【0005】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は案内部材のテーパ部からストレート部へ移行する部分で繊維の詰まりが発生するのを抑制して安定した糸品質で紡出を行うことができる紡機における繊維束案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、上流側から下流側へと移動する繊維束の幅を狭めるように案内する案内面を備えた案内部材と、前記案内面に前記繊維束が接触するのを阻止する音圧を発生するように前記案内部材を振動させる励振手段とを備えた紡機における繊維束集束装置である。そして、前記案内部材は、前記案内面を構成するように互いに対向して設けられた一対の板状のガイド部を備えるとともに、前記一対のガイド部は、前記案内面を構成するその対向面の間隔が一定のストレート部と、前記繊維束の進行方向上流側が広くなるように形成されたテーパ部とを前記ストレート部が前記繊維束の進行方向下流側となるように備えている。前記ガイド部の形状は、前記案内部材が前記励振手段により所定振動数で励振された際に、前記ストレート部の出口及び前記テーパ部と前記ストレート部との連続部の位置が振動の節からずれた位置となるように設定されている。ここで、「テーパ部」とは、対向面の間隔が連続的に次第に変化する形状を意味し、対向面は平面に限らず曲面であってもよい。
【0007】
この発明では、上流側から下流側へと移動する繊維束の幅を狭めるように案内する案内面を構成するように互いに対向して設けられた一対の板状のガイド部を備える案内部材が励振手段により振動されて案内面から音波が発生する。案内部材が励振された場合、振動の振幅が不十分な場合に繊維の詰まりが発生し易いテーパ部とストレート部との連続部の位置は振幅が最小となる振動の節からずれた位置であるため、充分な音圧が繊維束に作用することによりガイド部における繊維の詰まりが抑制される。また、ストレート部の出口においても充分な音圧を繊維束に作用させるための振幅を確保できる。したがって、案内部材のガイド部のテーパ部からストレート部へ移行する部分で繊維の詰まりが発生するのを抑制して安定した糸品質で紡出を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ガイド部の形状は、前記案内部材が前記励振手段により所定振動数で励振された際に、前記ストレート部の出口及び前記テーパ部と前記ストレート部との連続部の位置が振動の腹になるように設定されている。この発明では、繊維の詰まりが発生し易いテーパ部とストレート部との連続部の位置が、振動の振幅が最大となる腹の位置のため、励振手段をより少ない駆動エネルギーで励振させても、案内部材のテーパ部からストレート部へ移行する部分で繊維の詰まりが発生するのを抑制することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ガイド部の形状は、前記案内部材が前記励振手段により所定振動数で励振された際に、前記ガイド部の全長で1波長の振動となり、前記ストレート部の出口及び前記テーパ部と前記ストレート部との連続部の位置が振動の腹になるように設定されている。この発明では、励振手段の駆動エネルギーが同じ場合、2波長以上の振動をガイド部に発生させる場合と比較して、ストレート部の出口及びテーパ部とストレート部との連続部の位置の振幅が最大となる。そのため、案内部材のテーパ部からストレート部へ移行する部分で繊維の詰まりが発生するのをより抑制することができるとともに、より安定した糸品質で紡出を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、案内部材のテーパ部からストレート部へ移行する部分で繊維の詰まりが発生するのを抑制して安定した糸品質で紡出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を精紡機に具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、ドラフト装置11は、3線式ドラフト部の繊維束進行方向下流側に最終送出ローラ対を備えた4線式の構成である。3線式ドラフト部は、フロントボトムローラ12、ミドルボトムローラ13及びバックボトムローラ14を備えている。ミドルボトムローラ13及びバックボトムローラ14は機台を構成するローラスタンド15に対して前後方向に位置調整可能に固定された支持ブラケット16,17を介して支持されている。
【0012】
ウエイティングアーム20のフレーム20bには、フロントトップローラ21、ミドルトップローラ22及びバックトップローラ23が、それぞれフロントボトムローラ12、ミドルボトムローラ13及びバックボトムローラ14と対応する位置にトップローラ支持部材を介してそれぞれ支持されている。ウエイティングアーム20にはレバー20aが加圧位置と解放位置とに回動可能に配設されている。レバー20aが図1(a)に示すウエイティングアーム20のフレーム20bと当接する加圧位置に配置された状態では、ウエイティングアーム20に支持された各トップローラ21,22,23をボトムローラ12,13,14側に押圧する加圧位置(紡出位置)にロック状態で保持される。また、レバー20aが図1(a)に示す状態から上方の解放位置に回動された状態では、前記ロック状態が解除されるようになっている。
【0013】
最終送出ローラ対26は、ローラスタンド15に支持されたボトムニップローラ26aと、ウエイティングアーム20に支持部材を介して支持されたトップニップローラ26bとで構成されている。トップニップローラ26bはドラフト装置11のフロントトップローラ21と同様に2錘毎に、支持部材を介してウエイティングアーム20に支持されている。
【0014】
繊維束集束装置30は、最終送出ローラ対26とその直前のローラであるフロントボトムローラ12及びフロントトップローラ21との間に配置されている。図2(b)に示すように、繊維束集束装置30は案内部材31と、案内部材31を振動させる励振手段32とを備えている。励振手段32は、案内部材31の案内面35aに繊維束Fが接触するのを阻止する音圧を発生するように案内部材31を振動させる。
【0015】
案内部材31は一対の平板33と、平板33を所定間隔をおいて接続するスペーサ34とで構成されている。両平板33は、基端部33aにおいてスペーサ34に、例えばろう付けで固着され、基端部33aより幅が狭い中間部33bと、中間部33bとほぼ直交するように延びるガイド部35とを備えている。即ち、案内部材31は、互いに対向して設けられた一対の板状のガイド部35を備えている。一対のガイド部35は、その対向面が一対の案内面35aを構成し、案内面35aは上流側から下流側へと移動する繊維束Fの幅を狭めるように案内する。案内部材31の中間部33b及び基端部33aはガイド部35の支持部を構成する。この実施形態では、案内部材31は、ガイド部35に連続するとともに、励振手段32に連結される支持部も2枚の板で構成されている。
【0016】
図3に示すように、ガイド部35は、案内面35aを構成するその対向面の間隔が繊維束Fの進行方向下流側において一定のストレート部35bと、繊維束Fの進行方向上流側が広くなるように形成されたテーパ部35cとを備えている。ガイド部35の形状は、案内部材31が励振手段32により所定振動数で励振された際に、ストレート部35bの出口35d及びテーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置が振動の節(ガイド部35の長手方向で、ガイド部35の案内面35aに音圧を発生する方向の振動の振幅が最小となる部位)からずれた位置となるように設定されている。一対の案内部材31は、対向するストレート部35bの間隔が、紡出条件によっても異なるが、1mm以下となるように形成されている。
【0017】
この実施形態では、ガイド部35の形状は、案内部材31が励振手段32により所定振動数で励振された際に、図1(b)に示すように、ストレート部35bの出口35d及びテーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置が振動の腹(ガイド部35の長手方向で、ガイド部35の案内面35aに音圧を発生する方向の振動の振幅が最大となる部位)になるように設定されている。図1(b)において、2点鎖線で示す直線Lより左側がストレート部35bになる。また、ガイド部35の形状は、案内部材31が励振手段32により所定振動数で励振された際に、ガイド部35の全長で1波長の振動となり、出口35d及び連続部35eの位置が振動の腹になるように設定されている。
【0018】
励振手段32を構成する振動子36には所謂ランジュバン形振動子が使用され、一対のリング状のピエゾ素子37a,37bを備えている。両ピエゾ素子37a,37b間にリング状の電極板38が配置され、ピエゾ素子37a,37bの電極板38と当接する側と反対側の面に当接する金属ブロック39,40を、図示しないボルトによって締め付け固定することにより振動子36が構成されている。ボルトは金属ブロック39に形成された図示しないねじ穴に、金属ブロック40側から螺合されている。両金属ブロック39,40はボルトを介して互いに導通された状態となっている。金属ブロック39の先端にはフランジ39aが形成され、金属ブロック39はフランジ39aにおいて取付片41に固定されている。振動子36は取付片41を介してローラスタンド15に対して図示しないボルトにより固定されるようになっている。
【0019】
案内部材31は振動子36により励振されるホーン42に固定されている。ホーン42は、その先端においてろう付けにより案内部材31の一端寄りに固着されている。ホーン42は案内部材31が締結される面と反対側の面において振動子36に固定されている。ホーン42の先端面は振動子36の軸方向と直交する平面に形成されている。
【0020】
振動子36は発振器43に接続されている。電極板38は配線44aを介して発振器43と接続され、発振器43の接地端子が配線44bを介して金属ブロック40に接続されている。振動子36、ホーン42及び発振器43により案内部材31を振動させる励振手段32が構成されている。発振器43は案内部材31を人の可聴領域より高い周波数で振動させるように振動子36を励振させる。
【0021】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
精紡機の運転に先立って、紡出原料に合わせて、ミドルボトムローラ13及びバックボトムローラ14の位置が、支持ブラケット16,17の位置を調整することで適正な位置に調整される。ミドルトップローラ22及びバックトップローラ23の位置もミドルボトムローラ13及びバックボトムローラ14の位置に対応して調整される。
【0022】
精紡機が運転されると、繊維束Fはドラフト装置11の3線式ドラフト部でドラフトされた後、案内部材31の案内面35aを介して最終送出ローラ対26のニップ部へと案内され、最終送出ローラ対26から送出される。精紡機の運転時には、発振器43の駆動により、振動子36が案内部材31の所定の共振周波数(例えば、30kHz前後)で励振され、ホーン42が縦振動してホーン42を介して案内部材31が撓み振動する。この際、ガイド部35は繊維束Fが引き出される方向に延びているので、ガイド部35を平面視した場合に波状に振動し、ホーン42の縦振動の方向(図2の左右方向)について腹(振幅が最大となる部位)と節(振幅が最小となる部位)とが存在する。繊維束Fはボトムニップローラ26a及びトップニップローラ26bのニップ点を過ぎた後、撚り掛けを受けながら下流側へ移動し、図示しないボビンに巻き取られる。最終送出ローラ対26はフロントボトムローラ12及びフロントトップローラ21の表面速度より若干速く回転され、繊維束Fは適度な緊張状態で最終送出ローラ対26のニップ点を過ぎた後、転向して撚り掛けを受けながら下流側へ移動する。
【0023】
3線式のドラフト部でドラフトされた繊維束Fは、案内面35aを通過する間に幅が1mm以下に圧縮された状態で最終送出ローラ対26へ案内されてニップ点を過ぎる。従って、繊維束集束装置30を装備しない3線式のドラフト装置が装備された精紡機に比較して、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質が改善される。
【0024】
繊維束集束装置30を用いて非接触状態で繊維束Fを集束しつつ案内する場合、ストレート部35bとテーパ部35cとの連続部35eにおける繊維詰まりを抑制したり、毛羽数を少なくしたり、糸むらを少なくしたりする糸品質向上には、単に非接触状態で繊維束Fを案内しただけでは不十分であることが判明した。そして、図4に示すように、ガイド部35の振幅、特にストレート部35bの出口35d及び連続部35eの振幅が小さすぎると糸品質が悪化することを見いだした。
【0025】
この実施形態では、案内部材31は、励振手段32により励振された際、ストレート部35bの出口35d及び連続部35eが腹になる状態で振動するようにガイド部35の形状が形成されている。そのため、案内部材31が励振された場合、振動の振幅が不十分な場合に繊維の詰まりが発生し易いテーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置は振幅が最大の腹の位置であるため、連続部35eで繊維束Fに作用する音圧もまた大きくなり、ガイド部35における繊維の詰まりを抑制する状態で案内部材31を励振させるのに必要な励振手段32の駆動エネルギーを小さくすることができる。また、ストレート部35bの出口35dも振動の腹の位置にあるので振幅を確保できる。即ち、励振時にストレート部35bの出口35d及び連続部35eの振幅が、図4におけるX以上となり、糸品質悪化あるいは糸切れの発生が抑制される。
【0026】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)繊維束集束装置30は、案内面35aに繊維束Fが接触するのを阻止する音圧の音波を発生するように案内部材31を振動させる励振手段32を備えている。したがって、繊維束Fとの摩擦による案内面35aの摩耗や異物の付着によって案内面35aの摩擦状態が経時的に劣化するのを防止した状態で、低摩擦状態で繊維束Fを案内することができる。
【0027】
(2)案内部材31は、案内面35aを構成する一対の板状のガイド部35を備えるとともに、一対のガイド部35は、案内面35aを構成するその対向面の間隔が一定のストレート部35bと、繊維束Fの進行方向上流側が広くなるように形成されたテーパ部35cとをストレート部35bが繊維束Fの進行方向下流側となるように備えている。ガイド部35の形状は、案内部材31が励振手段32により所定振動数で励振された際に、ストレート部35bの出口35d及び連続部35eの位置が振動の節からずれた位置となるように設定されている。したがって、ストレート部35bの出口35d及び連続部35eの位置が振動の節に一致して繊維束Fに対する充分な音圧が得られないような状態が回避され、案内部材31のガイド部35のテーパ部35cからストレート部35bへ移行する部分で繊維の詰まりが発生するのを抑制して安定した糸品質で紡出を行うことができる。
【0028】
(3)ガイド部35の形状は、案内部材31が励振手段32により所定振動数で励振された際に、ストレート部35bの出口35d及びテーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置が振動の腹になるように設定されている。したがって、繊維の詰まりが発生し易いテーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置が、振動の振幅が最大となる腹の位置のため、励振手段32をより少ない駆動エネルギーで励振させても、案内部材31のテーパ部35cからストレート部35bへ移行する部分で繊維の詰まりが発生するのを抑制することができる。
【0029】
(4)ガイド部35の形状は、案内部材31が励振手段32により所定振動数で励振された際に、ガイド部35の全長で1波長の振動となり、ストレート部35bの出口35d及びテーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置が振動の腹になるように設定されている。したがって、励振手段32の駆動エネルギーが同じ場合、2波長以上の振動をガイド部35に発生させる場合と比較して、ストレート部35bの出口35d及びテーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置の振幅が最大となる。そのため、案内部材31のテーパ部35cからストレート部35bへ移行する部分で繊維の詰まりが発生するのをより抑制することができるとともに、より安定した糸品質で紡出を行うことができる。
【0030】
(5)案内部材31は2枚の平板33がスペーサ34を介して連結された構成になっている。したがって、1枚の板材を折り曲げて形成する場合に比較して、所望の形状のガイド部35を所定の間隔で精度良く構成することができる。
【0031】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。
○ ガイド部35の形状は、案内部材31が励振された際に、ガイド部35の全長で1波長の振動となるのではなく、ストレート部35bの出口35d及びテーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置が振動の腹になる形状であればよい。例えば、出口35dと連続部35eが腹になるとともに、出口35dと連続部35eとの間に節が1個のみ存在するのではなく、2個の節が存在する2波長の振動となるようにしたり、あるいはN波長(Nは自然数)の振動となるようにしたりしてもよい。しかし、ガイド部の長さが同じ場合は振動の周波数が低い方が腹の部分の振幅が大きくなるため、ガイド部35の全長で1波長の振動となるのが好ましい。
【0032】
○ ガイド部35の形状は、案内部材31が励振された際に、出口35d及び連続部35eの位置が振動の腹になる形状に限らず、出口35d及び連続部35eの位置が振動の節からずれた位置となる形状であればよい。出口35d及び連続部35eの位置が振動の節になる形状では、出口35d及び連続部35eの位置における振幅を必要な大きさにすることはできないが、節からずれた位置であれば、励振手段32に加えるエネルギーによっては振幅を必要な大きさにすることができる。しかし、出口35d及び連続部35eの位置が振動の節の近くでは出口35d及び連続部35eの位置における振幅を必要な大きさにするのに必要なエネルギーが大きくなるため、出口35d及び連続部35eの位置が振動の腹の近くになる形状が好ましい。振動の腹の近くとは、振動の腹からの距離が例えば、隣接する腹と節との間隔の2割以内の範囲である。
【0033】
○ 案内部材31は、案内面35aを構成するように互いに対向して設けられた一対の板状のガイド部35を備えるとともに、ガイド部35がストレート部35bと、テーパ部35cとを備えておればよく、2枚の平板33がスペーサ34で連結された構成に限らない。例えば、図5(a)に示すように、ホーン42に固定される基端部33a、中間部33b及びガイド部35が一体に形成された構成の案内部材31としたり、図5(b)に示すように、ガイド部35のみ一対の板状に形成され、基端部33a及び中間部33bは1枚の板部で形成された構成としたりしてもよい。しかし、2枚の平板33がスペーサ34で連結された構成や図5(a)の構成の方が、図5(b)に示すガイド部35のみ一対の板状に形成される構成に比較して、ガイド部35を所望の振動状態で振動させる形状に形成するのが容易になる。
【0034】
○ ガイド部35の形状は、テーパ部35cとストレート部35bとの連続部35eの位置がガイド部35のほぼ中央となるのではなく、ストレート部35b側が長い形状としてもよい。例えば、図6に示すように、ガイド部35の形状を、連続部35eから出口35dまでの長さが、連続部35eからガイド部35の入口までの長さのほぼ2倍の長さとした場合でも、出口35d、出口35dと連続部35eの中央部、連続部35e及びテーパ部35cの入口の4つの位置が振動の腹になるような3/2波長に対応する形状としてもよい。この場合、ガイド部35を支持する中間部33bの位置は、節となる3箇所のいずれの位置でもよい。
【0035】
○ ガイド部35の形状は、ストレート部35b側が短い形状としてもよい。しかし、ストレート部35b側が短い形状の場合、ガイド部35のコンパクト化が難しくなる。
○ テーパ部35cは直線状に延びる形状、即ち平面状に限らず、曲面で形成されてもよい。この場合、連続部35eにおいてテーパ部35cとストレート部35bとが滑らかに連続するため好ましい。また、テーパ部35cが直線状に延びる形状の場合、ストレート部35bとの連続部35e付近のみ曲面としてストレート部35bに滑らかに連続するように形成してもよい。
【0036】
○ 特許文献1に記載された構成のように案内部材31を2枚の独立した板で構成するとともに、それぞれに振動子36を取り付ける構成としてもよい。
○ ガイド部35は、側面の形状が、入口側及び出口側の幅(高)が中央部より小さい形状に限らず、入口から出口まで一定の幅であってもよい。
【0037】
○ 案内部材31をホーン42にろう付けで固着する代わりに、半田付けや接着剤で固着したり、ボルトで締め付け固定したりしてもよい。
○ ホーン42の形状は円錐台状等先端側が細くなった形状に限らず、例えば、円柱状としてもよい。
【0038】
○ 励振手段32は圧電素子を用いて構成された振動子36に代えて、磁歪素子や超磁歪素子を用いて振動子を構成してもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
【0039】
(1)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記案内部材は、前記ガイド部に連続するとともに前記励振手段に連結される支持部も2枚の板で構成されている。
【0040】
(2)請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明において、案内部材は、2枚の板がスペーサで連結されて構成されている。
(3)請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(1),(2)のいずれか一項に記載の繊維束集束装置を備えたリング精紡機。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は一実施形態におけるドラフト装置の側面図、(b)は案内部材の側面図。
【図2】(a)は繊維束案内装置の正面図、(b)はガイド部の側面図。
【図3】トップ側から見た案内部材とボトムローラの関係を示す概略図。
【図4】糸品質と振幅の関係を示す線図。
【図5】(a),(b)はそれぞれ別の実施形態の案内部材の正面図。
【図6】別の実施形態のガイド部の形状を示す模式図。
【符号の説明】
【0042】
F…繊維束、30…繊維束集束装置、31…案内部材、32…励振手段、35…ガイド部、35a…案内面、35b…ストレート部、35c…テーパ部、35d…出口、35e…連続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側へと移動する繊維束の幅を狭めるように案内する案内面を備えた案内部材と、前記案内面に前記繊維束が接触するのを阻止する音圧を発生するように前記案内部材を振動させる励振手段とを備えた紡機における繊維束集束装置であって、
前記案内部材は、前記案内面を構成するように互いに対向して設けられた一対の板状のガイド部を備えるとともに、前記一対のガイド部は、前記案内面を構成するその対向面の間隔が一定のストレート部と、前記繊維束の進行方向上流側が広くなるように形成されたテーパ部とを前記ストレート部が前記繊維束の進行方向下流側となるように備えており、前記ガイド部の形状は、前記案内部材が前記励振手段により所定振動数で励振された際に、前記ストレート部の出口及び前記テーパ部と前記ストレート部との連続部の位置が振動の節からずれた位置となるように設定されている紡機における繊維束集束装置。
【請求項2】
前記ガイド部の形状は、前記案内部材が前記励振手段により所定振動数で励振された際に、前記ストレート部の出口及び前記テーパ部と前記ストレート部との連続部の位置が振動の腹になるように設定されている請求項1に記載の紡機における繊維束集束装置。
【請求項3】
前記ガイド部の形状は、前記案内部材が前記励振手段により所定振動数で励振された際に、前記ガイド部の全長で1波長の振動となり、前記ストレート部の出口及び前記テーパ部と前記ストレート部との連続部の位置が振動の腹になるように設定されている請求項1又は請求項2に記載の紡機における繊維束集束装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate