説明

紡糸プロセスがセンサで監視されるエア紡績機

エア紡績機においては空気渦流と繊維による巻付けとが、紡出される糸(25)の品質に決定的な影響を及ぼす。品質低下を早期の段階で認識できるためには、紡績部位あたり少なくとも1つのセンサ(1a,1b,2,3,4)が配置され、該センサ(1a,1b,2,3,4)が空気渦流及び/又は巻付けパラメータの物理的な値を検出するエア紡績機が提案されている。検出された値は監視ユニットにて評価され、これによって紡績プロセスの制御を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載した複数の紡績部位を有するエア紡績機に関する。
【0002】
エア紡績機は多数の紡績部位を有している。各紡績部位では、供給された繊維長尺組織から糸が紡出される。この場合にはまず長尺繊維組織は細分化される。すなわち、長さ単位あたりの繊維量はドラフトによって低減される。次いで細分化された繊維束は撚りを付与することで糸に紡がれる。撚りの付与は空気渦流で行なわれる。
【0003】
公知技術による紡績部位の重要なエレメントは図1の斜視図に示されている。空気渦流により渦流室29にて発生をする負圧によって繊維案内エレメント20を介して平行に配向された繊維束27が吸引される。糸25の硬化、つまり紡出は空気渦流により行なわれる。繊維束27の自由な繊維端部26は流入する空気で捕えられ、前述の繊維束27のコアに巻付けられる。若干の繊維(これは主として短繊維)はその際、結合されずに空気通路19を介して吸い出される(図1に示されていない)。紡出された糸25の品質にとっては繊維案内エレメント20による繊維の吸込みも繊維の巻付け度も特に重要な意味を持つ。この場合には、結合されない繊維が吸い出されず、渦流室29が閉塞し、空気渦流が妨げられるか又は空気渦流が他の影響によって妨げられることが起り得る。これは繊維の好適な巻付けがもはや得られなくなる直接的な理由となる。しかし、残念なことにはこの紡績プロセスの障害を常に、糸切れの形で認識することはできず、紡績プロセスは一見「正しい」形式で継続され、糸質の悪い糸、特に強度の減退した糸が製造されることになる。したがって600m/minに達する高い紡績速度に基づき、さしあたり、知らない間に使用不能な糸が大量に製造される。
【0004】
したがって本発明の課題は複数の紡績部位を有するエア紡績機であって、紡績プロセスの不具合が検出され、ひいては使用不能な糸の紡績が早期に認識され、誤って認識された「正しい」紡績プロセスの期間が限定されるようにすることである。
【0005】
この課題は本発明によれば、請求項1に記載したエア紡績機によって解決された。
【0006】
請求項1の上位概念に述べた形式のエア紡績機においては、
紡績部位に監視ユニットに接続されたセンサがそれぞれ少なくとも1つ配属され、該センサが空気渦流及び/又は紡績しようとする糸の値を検出し、
監視ユニット内に、検出された値の時間的な経過を監視しかつ/又は分析しかつ/又は表示しかつ/又は検出された大きさを規定可能な目標値又は規定された目標値と比較する手段が設けられている。
【0007】
本発明によるエア紡績機によって、個々の紡績部位にとって紡績プロセスが個別に監視され、廃品の生産を阻止するために空気渦流の不具合による紡績プロセスの不具合又は十分ではない巻付けパラメータが適時検出されるようになった。検出されたパラメータは、適宜の手段を使用することによって、紡績プロセスの制御又は調整のために、例えば空気ノズル23を介して供給される空気の供給速度又は圧力を変化させることによって、利用されることもできる。
【0008】
この明細書では<物理的な値>という概念には
− 紡績しようとする糸の巻付けパラメータ
− 紡績部位の主要な個所における圧力(負)
が包含されている。
【0009】
紡出しようとする糸にて検出しようとする巻付けパラメータは特に:
− 繊維サンの回転数、以後<繊維サン回転数>と呼ぶ
− 繊維サンの繊維数
− 紡出された糸の紡績張力
である。
【0010】
検出しようとする圧力は空気渦流と吸引とに関し、特に以下の測定:
− 渦流室における空気圧の測定
− 吸引部の種々異なる部位における空気圧の測定
− 繊維案内エレメントの吸込み開口における空気圧の測定
を含む。
【0011】
先きに述べた検出された値は監視ユニットに供給され、時間的な経過に関して監視されるか又は所定の目標値に関して比較される。前述の目標値を中心とした所定の許容領域の外側の偏差は、紡績プロセスがもはや正常に運転されていないことを表出する。時間的な経過を監視した場合にはゆっくりとした変化も急激な変化も確認することができる。特に有利であることはゆっくりとした変化の認識である。すなわちこれは紡績プロセスに修正干渉し、これにより所定の品質要求を満たす糸の製造の継続を可能にする。
【0012】
次に図面に基づき本発明の実施例を詳細に説明する。
【0013】
図1は繊維案内エレメントとスピンドルとを有する紡績部位の斜視図。
【0014】
図2はセンサ配置を有する渦流室の断面図。
【0015】
図3aは検出された物理的な値の定常の経過を示した図。
【0016】
図3bは検出された物理的な値の非定常の経過を示した図。
【0017】
図1には以下の事柄を説明するために、繊維案内エレメント20とスピンドル22とを有する自体公知の紡績ボックス10(以後紡績部位10と呼ぶ)が斜視図で示されている。繊維束27は繊維案内エレメント20を通して渦流室29内へスピンドル開口24へ導かれる。空気ノズル23を通して供給された圧縮空気によって渦流が発生され、この渦流により繊維束27から糸25が紡出される。糸25はスピンドル22の糸引出し通路を通して巻取り装置(図示せず)へ供給される。図1では空気及び遊離した繊維の排出に役立つ空気通路19は詳細には示されていない。
【0018】
図2には図1と関連して本発明による紡績機の1実施例における1つの紡績部位におけるセンサの目的とした配置が示されている。この場合には図示されたセンサの形式と個数とは自由に組合わせることができることに留意されたい。
【0019】
エア紡績プロセスでは周知のようにスピンドル開口24の周囲にいわゆる繊維サン26が形成される。繊維サン26の個々の繊維は紡出しようとする糸25のコアに巻付けられる。ファイバコア(本来撚られていない)の周囲の繊維の巻付け数は繊維強度の尺度であり、特に紡出された糸の品質を決定する。巻付け数はいわゆる「繊維サン回転数」に直接的に比例する。すなわち、繊維サン回転数が高ければ高いほど糸のコアの周囲の繊維巻付け数も大きい。特に目標値に対して低い繊維サン回転数は強度損失をもたらす。この結果、極端な場合にはいわゆる「コルク栓抜き」が生じる。したがって好適な紡績プロセスにとっては繊維サン回転数を所望された目標値に一定に保つことが重要である。本発明によって可能な第1実施例によれば、ライトバリヤ2で繊維サンの存在が検出される。したがってライトバリヤ2においては繊維サンの個々の繊維の順序の時間的な表出を含む信号が発せられる。この信号は監視ユニット(図示せず)に供給され、この監視ユニットにて前記時間的な表出が信号技術的に評価され、これからその瞬間の繊維サン回転数が検出されかつ場合によっては目標値と比較される。この場合、目標値は有利には調節可能である。渦流室29内へ供給された空気の供給速度及び/又は圧力を比較の結果から適宜調節する手段が設けられていることができる。又、比較の結果に従って該当する紡績部位における紡績プロセスを監視ユニットによって中断し、これを信号化し、この紡績部位が作業員によって点検されかつ場合によっては再び正常化することができる。
【0020】
選択的に又は補足的に繊維サン回転数を他の測定方法で検出すること、例えば共鳴の検出又はスピンドル22に発生するトルクMの測定で検出することもできる。
【0021】
(A)回転する繊維はいわゆる共鳴として展開されかつ本来の繊維サン回転数と関係づけられる振動を発生する。単数又は複数のセンサ4、例えば圧電センサ4で前記振動は受容され、監視ユニットに供給される。監視ユニットにおいては前記振動はその周波数に関してもしくはその時間的な経過に関して分析される。振動のゆるやかな変化又は突然の変化は原因として相応の回転数変化を有している。前述の変化の分析から紡績プロセスの不具合を結論付けることができる。したがってゆるやかなもしくはゆっくりとした変化の場合にはまだ糸切れの前に、使用不能である糸の製造が行なわれないように適時な処置を施すことができる。
【0022】
(B)繊維サンはスピンドルのコーンにおいて発生する摩擦に基づき、本来の繊維サン回転数もしくは紡績プロセスに対する結論づけを許すトルクMを発生させる。トルクセンサ3(図2には原理的にのみ図示)によって紡績部位あたり該当スピンドル22において発生するトルクMを測定することができる。トルクセンサ3にて発生した信号は同様に監視ユニットに供給され、そこでその時間的な経過に関して分析される。繊維サン回転数の変化はスピンドル22の上に発生させられたトルクと直接的に相関する。監視ユニットにおいて検出された時間的な経過及び/又は所定の目標値、有利には調節可能な目標値に対するトルクの変化は、紡績プロセスを修正するため又は期間的に限定して干渉するためのリアクションを惹起する。
【0023】
又、繊維サン回転数の他に、先きに述べたように繊維サン26における繊維数もしくは繊維質量も、紡出しようとする糸25の品質にとって重要な値を形成する。繊維サン26における繊維数が増加すると、巻付け繊維の割合も同様に増大する。これは紡出しようとする糸25の強度を高める結果をもたらす。しかしこの場合には糸品質の定常性が特に重要であることに留意することが必要である。繊維数は−繊維サン回転数と混同しないように−同様に先きに述べたセンサ2,4及び3で、すなわち、ライトバリヤ2又は振動検出器4又はトルク検出器3で検出することができる。
【0024】
繊維サン26の繊維質量の低減は例えばトルクの低減を結果としてもたらし、時間的な経過及び/又は所定の目標値との比較で同様に検出することができる。
【0025】
紡出された糸の別の巻付けパラメータ、ひいては紡績プロセスのインディケータはいわゆる紡績張力F(図示せず)である。繊維センサはスピンドル22のコーンにおいて発生する繊維摩擦に基づきトルクMを発生させるだけではなく、糸引出し通路からの紡出された糸の引出しに抗して作用する抵抗−いわゆる紡績張力F−も誘発する。したがって紡績張力Fは単位[N]又は[cN]で表わされる力であって、紡出された糸25を引出すために使用されなければならない力又は引出し力と解される。紡績張力Fの値は主として繊維サン回転数にも繊維サン26における繊維数、つまり繊維質量にも関連する。したがって紡績張力Fは同様に、ちょうど紡出された糸25の品質のインディケータである。この場合にも紡績張力Fの恒常性が均等に紡出された糸の尺度であると見なすことができる。したがって本発明の有利な別の実施態様では糸張力測定用のセンサも設けられている。糸張力測定用のセンサにおいて測定された信号は有利には同様に前記監視ユニット又は別の監視ユニットに供給され、そこで当該信号の時間的な経過に関して分析される。紡績張力Fの変化は紡績プロセスの変化、繊維サン回転数又は繊維サン26における繊維質量(いわゆる繊維数)の変化に直接的に相関する。時間的な経過及び/又は規定されかつ有利には調節可能な目標値に対する、監視ユニットにおいて検出された紡績張力Fの変化は、監視ユニットを介して、紡績プロセスにて同様に修正又は期間を定める干渉を行なう。したがって本発明によっては紡績プロセスを監視するために紡績張力Fも使用される。
【0026】
紡績張力Fを測定するためには、本発明によれば有利にはパワセンサとして構成されたセンサを設けることができる。
【0027】
本発明による紡績張力測定に考えられ得る1実施例はドラフト機構と引出しローラ対(図示せず)を有する紡績ユニットを有している。この場合には、センサ32は引出しローラもしくはその駆動装置に設けられている。引出しローラは紡出された糸25を紡績部位10の糸引出し通路から引出す。このためには引出しローラは先きに述べた、繊維サンによって誘発された紡績張力Fを克服する必要がある。したがって引出しローラにおいて紡績張力Fを測定することが特に有利である(例えば引出しローラに作用するトルクの検出を経て紡績張力はこれから容易に算出可能である)。次いで糸張力測定のためのセンサにて測定された信号は記述したように、有利には1つの監視ユニット(図示せず)に供給され、そこで当該信号の時間的な経過に関して分析される。次いで監視ユニットは検出された信号と目標値又は所望の時間的な経過との間に差異がある場合にはリアクションを発する。
【0028】
紡績プロセスはさらに空気圧センサ1aと1bとによって以下のように監視されることができる。
【0029】
A)吸引室7からはいわゆる遊離繊維が吸引通路8を介して吸引される。このためには吸引室7には負圧が必要である。この負圧は図2の配置による圧力センサ1aで測定される。しかしこの配置位置は純然たる1例であるに過ぎない。
【0030】
B)繊維、つまり繊維束27は繊維案内エレメント20によって渦流室29へ吸引される。この場合、吸引作用は渦流室29における空気渦流によって生ぜしめられる。繊維案内エレメントの内室6内にはしたがって負圧が作用している。監視ユニットを用いたこの圧力(負圧)の測定とこの圧力の経過の時間的な監視とは、紡績プロセスに発生する不均等を検出する。
【0031】
C)紡糸ノズルもしくは渦流室29とが閉塞すると、渦流室吸引部における負圧と容積流とが変化する。したがって前記負圧を監視することによっても容積流の監視を推論することができる。
【0032】
図3aにおいては該当する紡績プロセスの定常状態を推論できる、検出された物理的な値の経過が示されている。所定数の値が固定的に与えられた時間区分内と示された許容誤差領域の外とにあると、紡績プロセスがもはや定常状態にないことが結論づけられる。
【0033】
図3b図においてはもはや定常ではない紡績プロセスを推論する1例が示されている。この場合には検出された値の変化が評価ユニットにおいて測定される。この時間的な変化がないと、紡績プロセスがもはや定常ではないと結論づけられ、監視ユニットから当該紡績部位の制御装置が制御され、当該紡績部位が遮断され、操作員にあてた信号化が行なわれる。
【0034】
本発明による原理は先きに述べたセンサの自由な組合わせによっても構成することができる。なぜならば検出された1つの物理的な値は他の検出しようとする値の検出に影響を及ぼすことは原則的にはないからである。ライトバリヤを用いた繊維サンの検出は圧電式センサ4を用いた共鳴の検出に影響を及ぼすことは決してない。
【0035】
これに対し、物理的な値とその検出値は該当する紡績部位の状態に関連する。したがってこのような物理的な複数の値の検出は個々の検出された値の信頼性を他の検出された値に比較することも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】繊維案内エレメントとスピンドルとを有する紡績部位の斜視図。
【図2】渦流室をセンサ配置と共に示した断面図。
【図3a】検出された物理的な値の定常の経過を示した図
【図3b】検出された非定常の経過を示した図。
【符号の説明】
【0037】
1 吸引室7における空気圧を検出するセンサ
1b 繊維案内エレメント20の内室6における空気圧を検出するセンサ
2 繊維サン26を検出するライトバリヤ
3 トルクを検出するトルク検出器
4 振動、例えば共鳴の結果発生する振動を検出するためのセンサ
6 繊維案内エレメント20の内室
7 吸引室
8 吸引通路
9 送出ローラ
10 紡績部位
19 空気通路
20 繊維案内エレメント
21 紡績方向で見た繊維案内エレメントの入口
22 スピンドル
23 空気ノズル
24 スピンドル開口
25 糸
26 繊維サン
27 繊維束
28 渦流室ケーシング
29 渦流体の内部の渦流室
30 糸吸引通路
M 繊維サン26からスピンドル22に発生させられたトルク
P 空気圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紡績部位(10)を有するエア紡績機であって、各紡績部位(10)が
− 空気渦流を発生させるための複数の空気ノズル(23)が開口する渦流室(29)を有し、
− 繊維案内エレメント(20)を有し、
− スピンドル開口(24)を有する中空スピンドル(22)を有し、
− 繊維束(27)が繊維案内エレメント(20)によって渦流室(29)へ導かれ、渦流室(29)において空気渦流によって繊維束(27)が繊維(26)を巻付けることにより糸(25)に紡がれかつ中空スピンドル(22)のスピンドル開口を通して導出可能であり、紡績部位(10)にそれぞれ1つの、監視ユニットと接続されたセンサ(1a,1b,2,3,4)が対応配置され、該センサ(1a,1b,2,3,4)が空気渦流及び/又は紡出しようとする糸(25)の物理的な値を検出しており、監視ユニット内に、検出された値(M,p)の時間的な経過を監視しかつ/又は分析しかつ/又は表示しかつ/又は確定可能な目標値と検出された値(M,p)との比較を実施する手段が設けられている形式のものにおいて、
− 繊維案内エレメント(20)の内室(6)における圧力を検出する圧力センサ、
− スピンドル開口(24)に発生する繊維サン(26)を検出するライトバリヤ(2)、
− 回転する繊維サン(26)からスピンドル(22)に発生させられたトルクを検出するトルク検出器(3)、
− スピンドル(22)に存在する振動を検出する圧電式のセンサ(4)、
− 紡出された糸(25)の紡績張力F、有利には紡績部位(10)の出口における紡績張力Fを測定するパワセンサ、
上記センサの少なくとも1つが設けられていることを特徴とする、紡績プロセスがセンサで監視されるエア紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2008−533318(P2008−533318A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501131(P2008−501131)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000154
【国際公開番号】WO2006/097008
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】