説明

紡績機

【課題】紡績機の奥行き方向の長さを可及的に短くする。
【解決手段】精紡機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、第1吸引ダクト17と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、第1方向に配列され、繊維束8から紡績糸10を生成する。糸継台車3は、第1方向に沿って走行可能であり、複数の紡績ユニット2のいずれか一つに対して糸継作業を行うためのものである。第1吸引ダクト17は、紡績ユニット2の高さ方向において、糸継台車3の上面41cより高い位置及び下面41dより低い位置の少なくともいずれかに第1方向に沿って少なくとも一部が配置される。第1吸引ダクト17は、糸継台車が糸継作業を行ったときに発生する糸屑を吸引して搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機、特に、繊維束に撚りを与えて紡績糸を生成し、生成された紡績糸を巻き取ってパッケージを形成する精紡機等の紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紡績機は、複数の紡績ユニットと、複数の紡績ユニットを一括して支持する複数のユニットフレームと、複数の紡績ユニットに沿って移動可能な糸継作業用の作業台車と、を有している(例えば、特許文献1参照)。複数の紡績ユニットは、繊維束に撚りを与えて紡績糸を生成し、生成された紡績糸を巻き取ってパッケージを生成する。複数の紡績ユニットは第1方向に並べて配置されている。ユニットフレームには、糸継作業で発生する糸屑等を吸引する吸引ダクトが配置されている。吸引ダクトは、複数の紡績ユニットの第1方向に沿って配置されている。作業台車用の吸引ダクトは、作業台車の後方となる位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−77577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の紡績機では、作業台車の後方に吸引ダクトが配置されているので、奥行き方向の長さが長くなる。このため、紡績機全体の奥向き方向が長くなるという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、紡績機の奥行き方向の長さを可及的に短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る紡績機は、複数の紡績ユニットと、糸継台車と、第1吸引ダクトと、を備えている。複数の紡績ユニットは、第1方向に配列され、繊維束から紡績糸を生成する。糸継台車は、第1方向に沿って走行可能であり、紡績ユニットに対して糸継作業を行うためのものである。第1吸引ダクトは、紡績ユニットの高さ方向において、糸継台車の上面より高い位置及び下面より低い位置の少なくともいずれかに第1方向に沿って少なくとも一部が配置される。第1吸引ダクトは、糸継台車が糸継作業を行ったときに発生する糸屑を吸引して搬送する。
この紡績機では、第1吸引ダクトの少なくとも一部が紡績ユニットの高さ方向において糸継台車の上面より高い位置及び下面より低い位置の少なくともいずれかに第1方向に沿って配置される。これにより、糸継台車の背面側の空間に第1吸引ダクトが配置されなくなる。この結果、紡績機の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができる。
【0007】
上記紡績機は、複数の副吸引ダクトと、複数の連結ダクトと、をさらに備えてもよい。副吸引ダクトは、複数の紡績ユニットのうち所定数の紡績ユニット毎に第1方向に沿い、かつ糸継台車に対して第1吸引ダクトと逆側の位置に設けられている。複数の連結ダクトは、第1吸引ダクトと複数の副吸引ダクトとを各別に接続する。糸継台車が糸継作業を行ったときに発生する糸屑は、副吸引ダクトと連結ダクトとを介して第1吸引ダクトに搬送される。
これにより、第1吸引ダクトが糸継台車の上面より高い位置(又は下面より低い位置)に配置され、副吸引ダクトが糸継台車の下面より低い位置(又は上面より高い位置)に配置される。すなわち、第1吸引ダクトと副吸引ダクトとが糸継台車を挟んで逆側に配置される。この結果、紡績機の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができ、かつ糸継台車による糸継作業で発生する糸屑を効率よく吸引及び搬送できる。
【0008】
第1吸引ダクトは、糸継台車の下面の下に配置され、糸継台車には、第1吸引ダクトから吸引空気流が直接供給されてもよい。これにより、第1吸引ダクトと糸継台車との距離が短くなり、上記紡績機における吸引空気流の圧力損失が減少し、上記紡績機は効率よく糸屑を吸引できる。
【0009】
上記紡績機は、紡績ユニットの高さ方向において、糸継台車の上面より高い位置で第1方向に沿って配置される第2吸引ダクトをさらに備えてもよい。第2吸引ダクトは、紡績糸の糸屑を糸屑の発生位置の近傍で吸引して搬送する。これにより、紡績糸の切断時に発生する糸屑を糸屑の発生位置の近傍で吸引できる。この結果、紡績機の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができ、かつ紡績機は、紡績糸の切断時に発生する糸屑を効率よく吸引及び搬送できる。
【0010】
上記紡績機は、紡績ユニットの高さ方向において、糸継台車に対して第1吸引ダクトと逆側に第1方向に沿って配置される第2吸引ダクトをさらに備えてもよい。第2吸引ダクトは、紡績糸の切断時に発生する糸屑を吸引して搬送する。これにより、第1吸引ダクトが糸継台車の下方に配置される場合は、第2吸引ダクトが糸継台車の上方に配置され、逆の場合は、第2吸引ダクトが糸継台車の下方に配置される。したがって、第2吸引ダクトを配置しても、第1吸引ダクトと第2吸引ダクトが糸継台車を挟んで上下に配置されるため、紡績機の奥行き寸法をさらに可及的に短くすることができる。
【0011】
複数の紡績ユニットは、ドラフト部と、空気紡績部と、を各別に有してもよい。ドラフト部は、繊維束をドラフトする。空気紡績部は、ドラフト部でドラフトされた繊維束を旋回気流により撚ることにより紡績糸を生成する。ドラフト部及び空気紡績部は、紡績ユニットの上部に配置される。上記紡績機は、第1方向に沿い、かつ複数の紡績ユニットの上部に配置される第3吸引ダクトをさらに備える。第3吸引ダクトは、ドラフト部及び空気紡績部で発生する糸屑を吸引して搬送する。
【0012】
これにより、ドラフト部及び空気紡績部で発生する糸屑の発生場所の近くに第3吸引ダクトを配置できる。このため、ドラフト部及び空気紡績部で発生する糸屑を第3吸引ダクトにより効率よく吸引及び搬送できる。
【0013】
上記紡績機は、紡績ユニット及び糸継台車を支持するユニットフレームをさらに備えてもよい。第3吸引ダクトは、ユニットフレームの構造部材を兼ねている。これにより、奥行き方向の寸法をコンパクトにしたユニットフレームであっても、第3吸引ダクトを構造部材として兼用できる。このため、奥行き方向がコンパクトな紡績機であってもユニットフレームを所望の強度に維持できる。
【0014】
上記紡績機は、ユニットフレームを上下方向において補強する補強部材をさらに備えてもよい。これにより、奥向き方向がコンパクトな紡績機であっても、補強部材によりユニットフレームを所望の強度に維持できる。
【0015】
紡績ユニットは、空気紡績部で生成された紡績糸を巻き取り、パッケージを形成する巻取部をさらに有してもよい。糸継台車は、空気紡績部と巻取部とにより形成される糸道に面する第1面と、第1面と反対側に設けられた第2面とを有している。ユニットフレームは、糸継台車の第2面に通じる開口部を有する。これにより、開口部から糸継台車の第2面に対してメンテナンスを行ったり、糸継台車を開口部から取り出したりすることができる。このため、糸継台車のメンテナンスのために紡績機全体を停止させる時間が短くなり、紡績機の稼働効率を向上できる。
【0016】
糸継台車は、第1案内部と、第2案内部と、糸継部と、を有してもよい。第1案内部は、紡績糸の切断時において、空気紡績部から紡出された紡績糸の糸端を吸引して案内する。第2案内部は、紡績糸の切断時において、巻取部側の紡績糸の糸端を吸引して案内する。糸継部は、第1案内部と第2案内部とにより案内された紡績糸の二つの糸端を継ぐ。これにより、吸引空気流を利用して紡績糸を糸継する糸継台車を備えた紡績機において、上記のように吸引ダクトを配置したので、紡績機の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、糸継台車の背面側の空間に吸引ダクトが配置されなくなる。この結果、紡績機の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態による精紡機の全体構成を示す正面図。
【図2】精紡機の断面図。
【図3】精紡機の正面斜視図。
【図4】精紡機の背面斜視図。
【図5】変形例の精紡機の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。
【0020】
(1)全体構成
図1に示す紡績機としての精紡機1は、並設された多数の錘である複数の紡績ユニット2を備えている。また、精紡機1は、糸継台車3と、玉揚台車4と、ブロアボックス80と、原動機ボックス5と、ユニットフレーム6と、棒状部材16と、を備えている。さらに、精紡機1は、図2に示すように、第1吸引ダクト17と、第2吸引ダクト18と、第3吸引ダクト19と、をさらに備えている。
【0021】
複数の紡績ユニット2は、ユニットフレーム6に図1左右方向である第1方向に並べて配置されている。各紡績ユニット2は、それぞれ所定長の紡績糸10が巻き付けられたパッケージ45を形成する。1台のユニットフレーム6は、例えば8錘の紡績ユニット2を装着可能である。なお、1台のユニットフレーム6に装着される紡績ユニット2の錘数は、特に限定されない。また、1つの精紡機1には、1つ又は複数のユニットフレーム6が設けられる。
【0022】
(2)紡績ユニット
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に、ドラフト部7と、紡績部9と、糸弛み取り部12と、巻取部13と、を主要な構成として備えている。ドラフト部7は、精紡機1のユニットフレーム6の上端近傍に設けられている。ドラフト部7は、スライバ15を延伸して繊維束8とする。紡績部9は、ドラフト部7から送られてくる繊維束8に旋回気流を利用して撚りを与えて空気紡績する。紡績部9から送出された紡績糸10は、ヤーンクリアラ52を通過した後、糸弛み取り部12に送られて巻取部13によって巻き取られ、これによりパッケージ45が形成される。これにより、各紡績ユニット2の紡績部9から巻取部13にかけて、糸道LP(図2)が上下に形成される。なお、ヤーンクリアラ52は、紡績糸10の太さ異常及び/又は紡績糸10に含まれる異物の有無を検出する。
【0023】
糸弛み取り部12は、紡績糸10に所定の張力を付与して紡績部9から引き出す機能と、糸継台車3による糸継時に紡績部9から送出される紡績糸10を滞留させて紡績糸10の弛みを取る機能と、を有している。また、糸弛み取り部12は、巻取部13側の張力の変動が紡績部9側に伝達されないようにするバッファ機能を有している。
【0024】
巻取部13は、図2に示すように支持軸70回りに揺動自在に支持されたクレードルアーム71と、巻取ドラム72と、を有している。クレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためにボビン48を回転可能に支持する。巻取ドラム72は、ユニットフレーム6の前面に設けられ、ボビン48又はパッケージ45を、その外周面に接触して所定の巻取速度で回転駆動する。
【0025】
(3)糸継台車
糸継台車3は、ユニットフレーム6に設けられた第1走行レール81上を第1方向に沿って走行可能である。糸継台車3は、糸切断時に、糸継が必要な紡績ユニット2の位置まで走行し、紡績部9側の上糸と巻取部13側の下糸とを糸継できるように構成されている。糸継台車3は、図1では1台しか描かれていないが、精紡機1全体では、複数台設けられている。各糸継台車3は、図1及び図2に示すように、台車部41と、台車部41に装着された糸継装置(糸継部の一例)43、サクションパイプ(第1案内部の一例)44、サクションマウス(第2案内部の一例)46、及び吸引空気供給パイプ47(図2)と、を有している。
【0026】
台車部41は、糸道LPに面する正面41aと、正面41aと反対側に設けられた背面41bと、正面41aと背面41bとを上下でつなぐ上面41c及び下面41dと、を有している。正面41a及び背面41bの奥行き方向(図2左右方向)の投影面積は同じである。また、上面41cと下面41dの上下方向の投影面積も同じである。
【0027】
台車部41は、走行方向に間隔を隔てて配置された二つの走行輪41eを第1方向の両端に有している。台車部41の上部及び下部には、1対のガイドローラ41fがそれぞれ設けられている。上部のガイドローラ41fは、案内レール41gにより案内される。
糸継装置43は上糸と下糸の糸継を行う。サクションパイプ44は、水平軸回りに回動して紡績部9にある上糸端を捕捉する。サクションマウス46は、上下方向に移動して巻取部13にある下糸端を捕捉する。
【0028】
吸引空気供給パイプ47は、第1吸引ダクト17からの吸引空気流を糸継台車3に供給するものである。吸引空気供給パイプ47は、台車部41の上面41cに設けられている。吸引空気供給パイプ47は、後述する副吸引ダクト17bの各紡績ユニット2に対応する位置に設けられたシャッタ95を開閉する。これにより、副吸引ダクト17bから糸継装置43、サクションパイプ44及びサクションマウス46にそれぞれ吸引空気流が供給される。
【0029】
(4)玉揚台車
玉揚台車4は、図1、図2及び図3に示すように、紡績ユニット2の正面側に第1方向に沿って走行可能に配置されている。玉揚台車4は、紡績ユニット2でパッケージ45が満巻になると、第2走行レール82上を当該紡績ユニット2まで走行し、そこで停止する。玉揚台車4は、図1及び図2に示すように、台車ケーシング85を有している。台車ケーシング85には、サクションパイプ88と、空ボビン供給部材89と、クレードル操作アーム90と、が設けられている。
【0030】
台車ケーシング85は、第1方向の両端に配置された二つの走行輪85aを有している。走行輪85aは、台車ケーシング85の下面の紡績ユニット2から離反する側に配置されている。したがって、玉揚台車4は、紡績ユニット2に離反する側で第2走行レール82に案内される。台車ケーシング85の高さは、紡績ユニット2の高さより低い。具体的には、台車ケーシング85の高さは、紡績ユニット2の糸弛み取り部12の位置より僅かに低い。
【0031】
台車ケーシング85は、ユニットフレーム6に設けられた後述するパッケージ載置部21を上方から覆うように形成されている。したがって、本実施形態では、玉揚台車4が精紡機1の最も外側に配置されている。台車ケーシング85は、棒状部材16が通過可能な断面視C字状に凹んだ通過凹部を有している。通過凹部は、紡績ユニット2に対向する面に形成され、棒状部材16に加えて棒状部材16を支持する支持部材96も通過可能な大きさを有している。
【0032】
サクションパイプ88は、台車ケーシング85に伸縮可能かつ揺動可能に設けられている。サクションパイプ88は、紡績部9に進出して紡績部9から送出される紡績糸10の上糸端を吸い込みながら捕捉する。そして、退入しながら揺動して捕捉した紡績糸10を巻取部13に装着されるボビン48に案内する。サクションパイプ88の案内動作の範囲GLは、図2に二点鎖線で示した範囲である。空ボビン供給部材89は、空のボビン48を巻取部13に供給するために台車ケーシング85に回動自在に設けられている。クレードル操作アーム90は、台車ケーシング85に揺動自在に装着され、巻取部13のクレードルアーム71を揺動させてパッケージ45を取り外すことができる。
【0033】
(5)ブロアボックス
ブロアボックス80には、第1吸引ダクト17、第2吸引ダクト18、及び第3吸引ダクト19が接続されている。ブロアボックス80には、これらの第1吸引ダクト17、第2吸引ダクト、及び第3吸引ダクト19に吸引する空気の流れを発生するための図示しないブロアが搭載されている。
【0034】
(6)ユニットフレーム
ユニットフレーム6は、例えば8個の紡績ユニット2を装着する枠形状の部材である。ユニットフレーム6は、紡績ユニット2を装着するメインフレーム20と、メインフレーム20の正面側に配置されたパッケージ載置部21と、ステップ22と、つま先収納部23と、を有している。
【0035】
(6−1)メインフレーム
メインフレーム20は、鋼材を組んで構成された部材である。メインフレーム20の正面上部には、図2及び図3に示すように、紡績ユニット2のドラフト部7と紡績部9とを支持するための傾斜した支持部20aが形成されている。支持部20aの傾斜角度αは、たとえば50度以上70度以下の角度の範囲である。これにより、ドラフト部7及び紡績部9は、従来の精紡機よりも起立して配置される。この結果、作業通路からドラフト部7及び紡績部9までの距離が短くなり、作業者は、ドラフト部7及び紡績部9をメンテナンスしやすくなる。
【0036】
メインフレーム20の正面中央部には、糸継台車3が走行する走行空間20cが凹んで形成されている。走行空間20cの下部に糸継台車3用の第1走行レール81が第1方向に沿って装着されている。
【0037】
メインフレーム20の背面は、図4に二点鎖線で示すように、開口部20bが形成されている。開口部20bは、糸継台車3の背面41bに通じて形成され、糸継台車3をメインフレーム20の背面側から取出可能な大きさである。具体的には、開口部20bは、糸継台車の台車部41の背面41bより大きい。より詳細には、開口部20bは、正面41a及び背面41bの奥行き方向の投影面積より大きい。
【0038】
開口部20bの第1方向の両側には、補強用の一対のリブ部材20dと梁部材20eとが設けられている。リブ部材20dは、メインフレーム20の上部から下部を連結しており、第1方向の端部からの長さが上部より下部のほうが長くなっている。梁部材20eは、メインフレーム20の上部から下部の第1方向の端部に向けて斜めに配置されている。この一対のリブ部材20dと梁部材20eとの間に開口部20bが形成されている。リブ部材20d及び梁部材20eは、開口部20bを設けたことによるメインフレーム20の強度の低下を防止するために設けられている。
【0039】
メインフレーム20の背面の開口部20bの側方には、ユニット電源ボックス31が配置されている。また、開口部20bの上方には、ユニット電源ダクト32が配置されている。これらは、従来は糸継台車3の後方に配置されている。
【0040】
メインフレーム20の背面下部には、作業者の踏み台として使用される背面ステップ20fが形成されている。背面ステップ20fは、作業者が背面側から作業する際に使用される。背面ステップ20fは、正面側のステップ22より高さが僅かに高く設定されている。
【0041】
(6−2)パッケージ載置部
パッケージ載置部21は、図2及び図3に示すように、巻取部13で満巻になったパッケージ45が載置される場所である。パッケージ載置部21は、頭部が切断された円錐台形状のパッケージ45を転がらずに載置することを目的として、断面視多角形状に凹んで形成されている。パッケージ載置部21は、図1に示すように、精紡機1の全長にわたり第1方向に沿って配置されている。パッケージ載置部21は、例えばベルトコンベアの形態のパッケージ搬送部を有している。パッケージ搬送部は、載置されたパッケージ45を第1方向の一端側(例えばブロアボックス80側)又は他端側に搬送する。
【0042】
パッケージ載置部21と巻取部13との間には、玉揚台車4で玉揚する際に使用されるパッケージ案内部28が設けられている。パッケージ案内部28は、紡績糸10が巻き取られたパッケージ45をパッケージ載置部21に案内する。パッケージ案内部28は、巻取部13からパッケージ載置部21に向かって先下がりの傾斜面28aを有している。
【0043】
このような傾斜面28aを有するパッケージ案内部28を巻取部13とパッケージ載置部21との間に設けることにより、巻取中のパッケージ45とパッケージ載置部21上に配置されたパッケージ45とが干渉しなくなる。したがって、パッケージ載置部21に載置されているパッケージ45の状況に関係なく、巻取部13がパッケージ45の巻取動作を行える。このため、精紡機1の紡績効率が向上する。
【0044】
(6−3)ステップ
ステップ22は、パッケージ載置部21の作業者通路側(図2左側面)に配置されている。ステップ22は、作業者が紡績ユニット2のメンテナンスのために使用する踏み台として使用される。ステップ22は、平坦面で構成されている。ステップ22の上面には、玉揚台車4が走行する第2走行レール82が配置されている。第2走行レール82は、僅かな厚みの金属製の板状の部材である。ステップ22の内部には、玉揚台車4に電力の供給、各種の信号の通信及び圧縮空気の供給を行うための配線及び空圧配管ホースを通すためのケーブルベア26が配置されている。ステップ22の紡績ユニット2から離反する外側は作業者通路となっている。
【0045】
(6−4)つま先収納部
つま先収納部23は、図2に示すように、作業者の靴のつま先部分を収納可能な空間を有している。つま先収納部23は、パッケージ載置部21の下方に入り込むように形成されている。このようなつま先収納部23を設けることにより、ステップ22に乗った作業者が紡績ユニット2にさらに接近することができる。これにより、作業者がメンテナンス等の作業を行うとき、作業性を向上させることができる。
【0046】
(7)棒状部材
棒状部材16は、手すりとしての機能と、玉揚台車4の案内部としての機能を有している。棒状部材16は、例えば、ステンレス鋼製のパイプ部材であり,紡績ユニット2から離反した位置に配置されている。これにより、例えば、紡績ユニット2に対してメンテナンス等の作業を行う際に、作業者が棒状部材16に手を置く、又は体を預けて作業を行うことができる。このため、紡績ユニット2に面して作業を行っても作業者が姿勢を安定して作業できるようになる。
棒状部材16の外周面には、図2に示すように、玉揚台車4のガイドローラ85cが左右の両側から接触している。棒状部材16は、図1に示すように、第1方向に沿って配置されている。棒状部材16は、図2に示すように、玉揚台車4のサクションパイプ88の案内動作の範囲GLより紡績ユニット2から離反する側に配置されている。また、棒状部材16は、糸道LPとステップ22の間に配置されている。
このようにして、玉揚台車4の案内を第2走行レール82と棒状部材16により行える。ここで、棒状部材16で玉揚台車4の上部を案内し、第2走行レール82で玉揚台車4の上部を案内することにより、玉揚台車4の紡績ユニット2に対する位置精度が高くなる。このため、玉揚台車4が玉揚位置から精度良く玉揚作業を行うことができる。
【0047】
棒状部材16は、第1方向に間隔を隔てて配置された複数の支持部材96により支持されている。
【0048】
支持部材96は、例えば4個の紡績ユニット2毎に配置されている。支持部材96は、メインフレーム20の正面に固定されている。支持部材96は肉厚の板状部材であり、内部に第2吸引ダクト18に連通する吸引通路(図示せず)を有している。吸引通路の先端には吸引部としての吸引キャップ96aが、例えば開位置と閉位置とに回動自在に装着されている。この吸引キャップ96aを開位置に回動させると、吸引通路を開放でき、糸屑等を吸引できる。これにより、作業者がメンテナンス作業等で集めた糸屑等の廃棄物を吸引キャップ96aから廃棄することができる。
【0049】
また、図1及び図3に示すように、棒状部材16の下方には、棒状部材16に沿って、停止操作部29が配置されている。支持部材96の先端下部には、停止操作部29が通過可能な貫通孔96bが形成されている。停止操作部29は、一端に非常停止ボタン30が連結されたロープ状の部材である。支持部材96から離反する方向に停止操作部29を引っ張ると、非常停止ボタン30が押圧操作された場合と同様に非常停止動作するように、停止操作部29は構成されている。これにより、作業者は精紡機1の正面であればどのような位置にいても非常停止操作を迅速に行える。しかも、停止操作部29は、棒状部材16の下方に配置されるので、作業者が誤って停止操作部29を操作しにくい。
【0050】
(8)吸引ダクト
図2、図3、及び図4に示すように、第1吸引ダクト17は、糸継台車3が糸継作業を行うときに発生する糸屑を回収してブロアボックス80に搬送する。第2吸引ダクト18は、紡績糸10の切断による糸継作業の前後で発生する糸屑を回収してブロアボックス80に搬送する。第2吸引ダクト18には、ヤーントラップ35が接続されている。ヤーントラップ35は、先端が糸弛み取り部12の上方に開口し、基端が第2吸引ダクト18に接続されている。ヤーントラップ35は、紡績糸10の切断時に発生する糸屑を吸い込む吸引口として機能する。第3吸引ダクト19は、ドラフト部7のドラフト中に発生するダスト及び浮遊繊維と、紡績部9による紡績中に発生するダスト及び糸屑等と、を回収してブロアボックス80に搬送する。
【0051】
従来の第1吸引ダクト及び第2吸引ダクトは、糸継台車3の後方に位置しているので、糸継台車3の背面41bに対して作業することができない。そこで、本実施形態では、紡績ユニット2の高さ方向において、第1吸引ダクト17は、糸継台車3の下面41dより低い位置に配置されるようにメインフレーム20内に配置されている。また、第2吸引ダクト18は、糸継台車3の下面41dより高い位置に配置されるようにメインフレーム20内に配置されている。第3吸引ダクト19は、ドラフト部7及び紡績部9の後方に配置されるようにメインフレーム20内に配置されている。
【0052】
ここで、第1吸引ダクト17と、第2吸引ダクト18と、第3吸引ダクト19と、は精紡機1の各メインフレーム20に連続して設けられている。第1吸引ダクト17には、副吸引ダクト17bが連結ダクト17cを介して接続されている。副吸引ダクト17bは、各メインフレーム20に両端が閉塞して設けられている。連結ダクト17cは、第1吸引ダクト17と副吸引ダクト17bとを連結する。副吸引ダクト17bは、第2吸引ダクト18の下方に設けられており、糸継台車3の上面41cより高い位置に設けられている。副吸引ダクト17bは、所定数の紡績ユニット2毎に設けられており、この実施形態では、8個の紡績ユニット2毎、すなわち1つのユニットフレーム6毎に分断して設けられている。副吸引ダクト17bの両端は閉塞されている。連結ダクト17cは、ユニットフレーム6毎に、例えば一つ設けられている。副吸引ダクト17bには、下面の紡績ユニット2に対応する位置に糸継台車3の走行に応じて開閉するシャッタ95が設けられている。これにより、紡績ユニット2に停止した糸継台車3に吸引空気流が供給される。
【0053】
第1吸引ダクト17及び第2吸引ダクト18は、断面が円形である。第1吸引ダクト17及び第2吸引ダクト18は、メインフレーム20に固定されているが、メインフレーム20に直接連結されていない。したがって、第1吸引ダクト17及び第2吸引ダクト18は、メインフレーム20の構造部材としては機能しない。
第3吸引ダクト19は、矩形の断面の一つの角部を切り欠いた形状の変形五角形状断面を有している。第3吸引ダクト19は、メインフレーム20に連結されており、メインフレーム20の構成部材として機能する。したがって、第3吸引ダクト19は、メインフレーム20の強度を高めるためにも用いられている。
【0054】
(9)メンテナンス作業
このように構成された精紡機1では、糸継台車3のメンテナンス作業を行う場合には、糸継台車3を最寄りのユニットフレーム6のメインフレーム20の開口部20bに面した位置に停止させる。この状態で、糸継台車3は、そのまま開口部20bを通って取り出し可能である。このとき、糸継台車3は、メインフレーム20の背面側から取り出されるので、紡績ユニット2の紡績動作を妨げることがない。このため、取出作業が終わればメンテナンス作業中も紡績動作を継続して行える。
また、紡績ユニット2のメンテナンス作業を行う場合、作業者は、ステップ22に乗る。ステップ22に作業者が乗るときに、靴のつま先をつま先収納部23に配置することができる。つま先収納部23は、パッケージ載置部21の下方に位置しているので、作業者は可及的に紡績ユニット2に接近できる。このため、作業者の作業効率を高めることができる。しかも、紡績ユニット2の正面に面して棒状部材16が第1方向に沿って配置されている。このため、作業者は、棒状部材16に手をつく又は棒状部材16に体を預けてメンテナンス作業を行うことができる。これにより、作業者の作業効率をさらに高めることができる。
【0055】
(10)変形例
上記実施形態では、精紡機1の全長にわたり形成された第1吸引ダクト17に、各ユニットフレーム6に設けられた副吸引ダクト17bを、連結ダクト17cを介して接続している。そして、第1吸引ダクト17及び副吸引ダクト17bを紡績ユニット2の高さ方向において、糸継台車3の下面41dより低い位置及び上面41cより高い位置に配置している。
なお、以降の説明では上記実施形態と異なる構成のみを説明する。
【0056】
変形例では、図5に示すように、糸継台車103の台車部141の下面141dは段差がない平面で構成されている。第1吸引ダクト117は、台車部141の下面141dより低い位置、具体的には、走行輪41eより低い位置に配置されている。台車部141の下面141dには、吸引空気供給パイプ147が設けられている。
第1吸引ダクト117は、例えば、矩形断面のパイプ形状である。第1吸引ダクト117は、前記実施形態と異なり、吸引用空気流を糸継台車103に直接供給する。第1吸引ダクト117には、上面の紡績ユニット2に対応する位置に糸継台車103の走行に応じて開閉するシャッタ195が設けられている。これにより、紡績ユニット2に停止した糸継台車3に吸引空気流が第1吸引ダクト117から直接供給される。この結果、糸継台車103が糸継作業を行ったときに発生する糸屑が第1吸引ダクト117で直接吸引及び搬送される。
このような構成においても、第1吸引ダクト117が糸継台車103の下面141dより低い位置に配置されるので、精紡機1全体の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができる。
【0057】
(11)特徴
上記実施形態は、下記のように表現可能である
【0058】
(A)紡績機としての精紡機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、第1吸引ダクト17と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、第1方向に配列され、繊維束8から紡績糸10を生成する。糸継台車3は、第1方向に沿って走行可能であり、紡績ユニット2に対して糸継作業を行うためのものである。第1吸引ダクト17は、紡績ユニット2の高さ方向において、糸継台車3の上面41cより高い位置及び下面41dより低い位置の少なくともいずれかに第1方向に沿って少なくとも一部が配置される。第1吸引ダクト17は、糸継台車3が糸継作業を行ったときに発生する糸屑を吸引して搬送する。
この精紡機1では、第1吸引ダクト17(又は117)の少なくとも一部が紡績ユニット2の高さ方向において糸継台車の上面41c(又は141c)より高い位置及び下面41d(又は141d)より低い位置の少なくともいずれかに第1方向に沿って配置される。これにより、糸継台車3の背面41b(又は141d)側の空間に第1吸引ダクト17(又は117)が配置されなくなる。この結果、精紡機1の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができる。
【0059】
(B)精紡機1は、複数の副吸引ダクト17bと、複数の連結ダクト17cと、をさらに備えている。副吸引ダクト17cは、複数の紡績ユニット2のうち所定数の紡績ユニット2毎に第1方向に沿い、かつ糸継台車3に対して第1吸引ダクト17と逆側の位置に設けられている。複数の連結ダクト17cは、第1吸引ダクト17と複数の副吸引ダクト17bとを各別に接続する。糸継台車3が糸継作業を行ったときに発生する糸屑は、副吸引ダクト17bと連結ダクト17cとを介して第1吸引ダクト17に搬送される。
これにより、第1吸引ダクト17が糸継台車3の上面41cより高い位置(又は下面41dより低い位置)に配置され、副吸引ダクト17bが糸継台車3の下面41dより低い位置(又は上面41cより高い位置)に配置される。すなわち、第1吸引ダクト17と副吸引ダクト17bとが糸継台車3を挟んで逆側に配置される。この結果、精紡機1の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができ、さらに精紡機1は、糸継台車3による糸継作業で発生する糸屑を効率よく吸引及び搬送できる。
【0060】
(C)第1吸引ダクト117は、糸継台車103の下面41dの下に配置され、糸継台車103には、第1吸引ダクト117から吸引空気流が直接供給される。これにより、第1吸引ダクト117と糸継台車3との距離が短くなり、精紡機1における吸引空気流の圧力損失が減少し、精紡機1は、効率よく糸屑を吸引できる。
【0061】
(D)精紡機1は、紡績ユニット2の高さ方向において、糸継台車3の上面41cより高い位置で第1方向に沿って配置される第2吸引ダクト18をさらに備えている。第2吸引ダクト18は、紡績糸の切断時に発生する糸屑を糸屑の発生位置の近傍で吸引して搬送する。これにより、精紡機1は、紡績糸の切断時に発生する糸屑を糸屑の発生位置の近傍で吸引できる。この結果、紡績機の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができ、さらに、精紡機1は、紡績糸の切断時に発生する糸屑を効率よく吸引及び搬送できる。
【0062】
(E)精紡機1は、紡績ユニット2の高さ方向において、糸継台車3に対して第1吸引ダクト17と逆側に第1方向に沿って配置される第2吸引ダクト18をさらに備えている。第2吸引ダクト18は、紡績糸10の切断時に発生する糸屑を吸引して搬送する。これにより、第1吸引ダクト17(又は117)が糸継台車3(又は103)の下方に配置される場合は、第2吸引ダクト18が糸継台車3(又は103)の上方に配置され、逆の場合は、第2吸引ダクトが糸継台車3の下方に配置される。したがって、第2吸引ダクト18を配置しても、第1吸引ダクト17(又は117)と第2吸引ダクト18が糸継台車3を挟んで上下に配置されるため、精紡機1の奥行き寸法をさらに可及的に短くすることができる。
【0063】
(F)複数の紡績ユニット2は、ドラフト部7と、紡績部9と、を各別に有している。ドラフト部7は、繊維束8をドラフトする。紡績部9は、ドラフト部7でドラフトされた繊維束を旋回気流により撚ることにより紡績糸10を生成する。ドラフト部7及び紡績部9は、紡績ユニット2の上部に配置される。精紡機1は、第1方向に沿いかつ複数の紡績ユニット2の上部に配置される第3吸引ダクト19をさらに備える。第3吸引ダクト19は、ドラフト部7及び紡績部9で発生する糸屑を吸引して搬送する。
【0064】
これにより、ドラフト部7及び紡績部9で発生する糸屑の発生場所の近くに第3吸引ダクト19を配置できる。このため、ドラフト部7及び紡績部9で発生する糸屑を第3吸引ダクト19により効率よく吸引及び搬送できる。
【0065】
(G)精紡機1は、紡績ユニット2及び糸継台車3(又は103)を支持するユニットフレーム6をさらに備えている。第3吸引ダクト19は、ユニットフレーム6の構造部材を兼ねている。これにより、奥行き方向の寸法をコンパクトにしたユニットフレーム6であっても、第3吸引ダクト19を構造部材として兼用できる。このため、奥行き方向がコンパクトな精紡機1であってもユニットフレーム6を所望の強度に維持できる。
【0066】
(H)精紡機1は、ユニットフレーム6を上下方向において補強する補強部材としてのリブ部材20d及び梁部材20eをさらに備えている。これにより、奥向き方向がコンパクトな精紡機1であっても、リブ部材20d及び梁部材20eによりユニットフレーム6を所望の強度に維持できる。
【0067】
(I)紡績ユニット2は、紡績部9で生成された紡績糸10を巻き取り、パッケージ45を形成する巻取部13をさらに有している。糸継台車3(103)は、紡績部9と巻取部13とにより形成される糸道LPに面する正面41a(又は141a)と、正面41a(又は141a)と反対側に設けられた背面41b(141b)とを有している。ユニットフレーム6は、糸継台車3(又は103)の背面41b(又は141b)に通じる開口部20bを有する。これにより、開口部20bから糸継台車3(又は103)の背面41b(又は141b)に対してメンテナンスを行ったり、糸継台車3(又は103)を開口部20bから取り出したりすることができる。このため、糸継台車3(又は103)のメンテナンスのために精紡機1全体を停止させる時間が短くなり、精紡機1の稼働効率を向上できる。

【0068】
(J)糸継台車3(又は103)は、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、糸継装置43と、を有している。サクションパイプ44は、紡績糸10の切断時において、紡績部9から紡出された紡績糸10の糸端を吸引して案内する。サクションマウス46は、紡績糸10の切断時において、巻取部13側の紡績糸10の糸端を吸引して案内する。糸継装置43は、サクションパイプ44とサクションマウス46とにより案内された紡績糸10の二つの糸端を継ぐ。これにより、吸引空気流を利用して紡績糸を糸継する糸継台車3(又は103)を備えた精紡機1において、上記のように第1吸引ダクト17を配置したので、精紡機1の奥行き方向の長さを可及的に短くすることができる。
【0069】
(12)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0070】
(a)前記実施形態及び変形例では、上方から下方に糸道が形成されているが、下方から上方に糸道が形成される紡績機にも本発明を適用できる。
【0071】
(b)前記実施形態及び変形例では、第2吸引ダクト18が糸継台車3(又は103)の上方に配置され、第1吸引ダクト17が糸継台車3(又は103)の下方に配置されていたが、第1吸引ダクト17を糸継台車3(又は103)の上方に配置し、第2吸引ダクト18を糸継台車3(又は103)の下方に配置してもよい。この場合、第2吸引ダクト18から複数の紡績部9のそれぞれに対して吸引チューブを配置してもよい。
【0072】
(c)前記実施形態及び変形例では、第3吸引ダクト19がユニットフレーム6の構造部材を兼用しているが、第1吸引ダクト及び第2吸引ダクトの少なくともいずれかが構造部材を兼用してもよい。なお、ユニットフレーム6が所定の強度を保てる場合は、第1吸引ダクト17、第2吸引ダクト18、及び第3吸引ダクト19のいずれも構造部材を兼用しなくても良い。
【0073】
(d)前記実施形態及び変形例では、糸弛み取り部12により紡績糸10を紡績部9から引き出しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、糸弛み取り部12に代えて、公知のデリベリローラ及びニップローラを配置し、2つの回転するローラで紡績糸10をニップし、紡績糸10を紡績部9から引き出すように構成してもよい。この場合でも、巻取動作時に発生する紡績糸10の弛みを解消するために、デリベリローラとニップローラの下流側に糸弛み取り部12を配置してもよい。
【0074】
(e)前記実施形態及び変形例では、第1吸引ダクト17(又は117)を糸継台車3(又は103)の下方に配置した。しかし、本発明はこれに限定されず、第2吸引ダクト18を糸継台車の下方に配置する場合は、第1吸引ダクト17を糸継台車3(又は103)の上方に配置してもよい。
【0075】
(f)前記実施形態及び変形例では、第1吸引ダクト17(又は117)全体を糸継台車3(又は103)の下方に配置した。しかし、本発明はこれに限定されず、第1吸引ダクト17の一部を、ユニットフレーム6に対して着脱自在又は退避可能に構成することにより、第1吸引ダクト17の一部を糸継台車3の背面側に配置してもよい。
この場合、糸継台車3の背面側に配置された第1吸引ダクト17の一部をユニットフレーム6から外す又は退避させることにより、糸継台車3の背面41bの全面を見えるようにすることができる。これにより、開口部20bから糸継台車3の背面41bに対してメンテナンスを行ったり、糸継台車3を開口部20bから取り出したりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、吸引ダクトを有する紡績機に広く適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 精紡機
2 紡績ユニット
3 糸継台車
4 玉揚台車
5 原動機ボックス
6 ユニットフレーム
7 ドラフト部
8 繊維束
9 紡績部
10 紡績糸
12 糸弛み取り部
13 巻取部
15 スライバ
16 棒状部材
17 第1吸引ダクト
17b 副吸引ダクト
17c 連結ダクト
18 第2吸引ダクト
19 第3吸引ダクト
20 メインフレーム
20a 支持部
20b 開口部
20c 走行空間
20d リブ部材(補強部材の一例)
20e 梁部材(補強部材の一例)
20f 背面ステップ
21 パッケージ載置部
21a 側面
22 ステップ
23 つま先収納部
25 パッケージ搬送部
26 ケーブルベア
27 パッケージ保護部
28 パッケージ案内部
28a 傾斜面
29 停止操作部
30 非常停止ボタン
31 ユニット電源ボックス
32 ユニット電源ダクト
35 ヤーントラップ
41 台車部
41a 正面
41b 背面
41c 上面
41d 下面
41e 走行輪
41f ガイドローラ
41g 案内レール
43 糸継装置(糸継部の一例)
44 サクションパイプ(第1案内部の一例)
45 パッケージ
46 サクションマウス(第2案内部の一例)
47 吸引空気パイプ
48 ボビン
52 ヤーンクリアラ
70 支持軸
71 クレードルアーム
72 巻取ドラム
80 ブロアボックス
81 第1走行レール
82 第2走行レール
85 台車ケーシング
85a 走行輪
85b 通過凹部
85c ガイドローラ
88 サクションパイプ
89 空ボビン供給部材
90 クレードル操作アーム
95 シャッタ
96 支持部材
96a 吸引キャップ
96b 貫通孔
117 第1吸引ダクト
103 糸継台車
141 台車部
141a 正面
141b 背面
141c 上面
141d 下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配列され、繊維束から紡績糸を生成する複数の紡績ユニットと、
前記第1方向に沿って走行可能であり、前記紡績ユニットに対して糸継作業を行うための糸継台車と、
前記紡績ユニットの高さ方向において、前記糸継台車の上面より高い位置及び下面より低い位置の少なくともいずれかに前記第1方向に沿って少なくとも一部が配置され、前記糸継台車が糸継作業を行ったときに発生する糸屑を吸引して搬送する第1吸引ダクトと、
を備えた紡績機。
【請求項2】
前記複数の紡績ユニットのうち所定数の紡績ユニット毎に前記第1方向に沿い、かつ前記糸継台車に対して前記第1吸引ダクトと逆側の位置に設けられた複数の副吸引ダクトと、
前記第1吸引ダクトと前記複数の副吸引ダクトとを各別に接続する複数の連結ダクトと、をさらに備え、
前記糸継台車が糸継作業を行ったときに発生する糸屑は、前記副吸引ダクトと前記連結ダクトとを介して前記第1吸引ダクトに搬送される、請求項1に記載の紡績機。
【請求項3】
前記第1吸引ダクトは、前記糸継台車の下面の下に配置され、
前記糸継台車には、前記第1吸引ダクトから吸引空気流が直接供給される、請求項1に記載の紡績機。
【請求項4】
前記紡績ユニットの高さ方向において、前記糸継台車の上面より高い位置で前記第1方向に沿って配置され、前記紡績糸の切断時に発生する糸屑を前記糸屑の発生位置の近傍で吸引して搬送する第2吸引ダクトをさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の紡績機。
【請求項5】
前記紡績ユニットの高さ方向において、前記糸継台車に対して前記第1吸引ダクトと逆側に前記第1方向に沿って配置され、前記紡績糸の切断時に発生する糸屑を吸引して搬送する第2吸引ダクトをさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の紡績機。
【請求項6】
前記複数の紡績ユニットは、
前記繊維束をドラフトするドラフト部と、
前記ドラフト部でドラフトされた前記繊維束を旋回気流により撚ることにより前記紡績糸を生成する空気紡績部と、を各別に有し、
前記ドラフト部及び前記空気紡績部は、前記紡績ユニットの上部に配置され、
前記第1方向に沿い、かつ前記複数の紡績ユニットの上部に配置され、前記ドラフト部及び前記空気紡績部で発生する糸屑を吸引して搬送する第3吸引ダクトをさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の紡績機。
【請求項7】
前記紡績ユニット及び前記糸継台車を支持するユニットフレームをさらに備え、
前記第3吸引ダクトは、前記ユニットフレームの構造部材を兼ねている、請求項6に記載の紡績機。
【請求項8】
前記ユニットフレームを上下方向において補強する補強部材をさらに備える、請求項7に記載の紡績機。
【請求項9】
前記紡績ユニットは、前記空気紡績部で生成された前記紡績糸を巻き取り、パッケージを形成する巻取部をさらに有し、
前記糸継台車は、前記空気紡績部と前記巻取部とにより形成される糸道に面する第1面と、前記第1面と反対側に設けられた第2面とを有し、
前記ユニットフレームは、前記糸継台車の前記第2面に通じる開口部を有する、請求項7又は8に記載の紡績機。
【請求項10】
前記糸継台車は、
前記紡績糸の切断時において、前記空気紡績部から紡出された前記紡績糸の糸端を吸引して案内する第1案内部と、
前記紡績糸の切断時において、前記巻取部側の前記紡績糸の糸端を吸引して案内する第2案内部と、
前記第1案内部と前記第2案内部とにより案内された前記紡績糸の二つの糸端を継ぐ糸継部と、を有する、請求項7〜9のいずれかに記載の紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−57274(P2012−57274A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202658(P2010−202658)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】