説明

紫外線吸光度を応用した検出法と検出装置

【課題】有機物の抽出工程において抽出溶媒汚れの管理用分析器として、また、洗浄工程における残留油分ほか残留溶質分の濃度や性状分析をする方法とその分析装置の提供を目的とする。
【解決手段】溶媒抽出分離後の溶液またはフレッシュ溶媒を紫外線吸光度検出器に一定時間流し、検出出力が安定してからフレッシュ溶媒または溶媒抽出分離後の溶液をサンプリング注入して得られる紫外線吸光度検出器におけるマイナスまたはプラス検出出力値より逆算して検査対象溶媒中に含まれる紫外線吸収物質由来の汚染濃度あるいは紫外線吸収物質量を検出する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種分野で使用される有機物成分を溶媒抽出し、その性状を紫外線吸光度分析することにより該有機物成分濃度検出と、該被抽出物の汚れ具合を検出する方法およびその検出装置に関する分野であり、特に精密機械部品等における洗浄後の残留油分の検出、ケミカルプロセスで使用される抽出溶媒の性状変化等の測定に適し、オフライン分析器としても、またインプラント分析器としても用いられる。
【背景技術】
【0002】
今日、多くの溶剤を使って目的成分とする有機物の抽出分離が、石油系や油脂系工業プラントの有効成分の抽出工程や、天然物からの微量有用成分の抽出、さらには洗浄溶剤による油分汚れの除去等でおこなわれているが、多くは溶剤は目的物を抽出分離後再使用されるのが常である。この場合、溶剤に再使用の度に蓄積される物質や熱劣化等で、溶剤の抽出能力が低下、新しい溶剤を投入する必要が出てくる。こうした溶剤のプラント上での運転管理も現状では主に比重計、稀に比色計で行われていることが多い。この場合、人為的要素を排除した測定精度の面で向上したオフライン分析器として、また安定したインプラント分析器としての登場が期待されていた。
【0003】
さらには、溶媒だけでなく、溶質の性状を検出する方法とその分析装置も求められている。特に塩素系溶剤の洗浄剤使用規制にともない洗浄しきれない残留油分の量的分析においても従来の赤外分析に代わる分析も求められている。
【0004】
分析用溶剤として塩素系溶剤が使用できているときは赤外線吸光度計で高精度に測定できていたが、塩素系溶剤を使用しない場合は該方法では測定ができない。特開平6−50884号公報で紫外線吸収のない炭化水素、アルコール類を用いて残留油分のサンプリング抽出を行い、これを紫外線吸光度計にかけて測定する方法が提案されている。
しかし、溶剤を紫外線吸収にないものに、抽出物を吸収のあるものに絞れば、その対象が狭く、溶解力の点で不十分となることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−50884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機物の抽出工程において抽出溶媒汚れの管理用分析器として、また、洗浄工程における残留油分ほか残留溶質分の濃度や性状分析をする方法とその分析装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<溶媒および溶質の性状分析管理>
溶媒抽出分離後の溶媒を紫外線吸光度検出器に一定時間流し、検出出力が安定してからフレッシュ溶媒をサンプリング注入して得られる紫外線吸光度検出器におけるマイナス検出出力値より逆算して検査対象溶媒中に含まれる紫外線吸収物質由来の汚染濃度を検出する方法である。
【0008】
これはヘキサンなどが抽出溶媒として使用されていて、通常、抽出溶媒は抽出分離後回収されて再使用される。該溶媒は再使用される都度、目視と簡単な比重計等で性状チェックがなされ、該溶媒の汚れ具合を管理している。その管理目的はそれぞれ固有の理由に基づくものであるが、一般的には抽出溶媒の汚れ成分が濃縮することによる被抽出物への混入、付着のおそれを回避することにある。かかる汚れ成分のバロメータとして紫外線吸収物質があり、これを測定することにより溶媒の汚れ管理を使用とするものである。
従って、紫外線吸収物質があっても極めて微量しか蓄積しない場合とか逆に極めて多量に蓄積する場合は測定困難であるので、使用できないケースも当然、でてくる。
【0009】
分析に使用する紫外線を波長域で分光した光源を用いないで、多くの汚れ成分および/または抽出溶質成分は低圧水銀灯の波長領域に吸収があり、耐久性の高い該光源を使用したこの方法に特徴がある。
分析方法はフローセルを用いて、抽出溶媒(基準溶液という)を連続で流している中に抽出された溶質を含む抽出溶媒の溶液(試料溶液という)をループを使用して流し測定する方法を特徴とする。抽出溶媒を連続で流している場合一定の濃度であることから測定されるデータは時間に関してほとんど大きく変化しない。そこにループの部分の試料溶液が通過すれば流れていた基準溶液との差分の吸光度のデータが、あるいは凸型もしくは凹型の曲線として得られる。該曲線の積分値もしくはピーク値もしくは半値幅は試料溶液の成分濃度の差によるものであり、この値から試料溶液の成分濃度を校正曲線を用いて決めることができる。
上記に示す基準溶液と試料溶液の関係が反転し、基準溶液に試料溶液(溶媒+溶質)を使用する場合は試料溶液として当該抽出溶媒を使用することもできる。
【0010】
<部品等に付着した残留油分量管理>
あらかじめ紫外線吸光度の低い非塩素系溶媒を紫外線吸光度検出器に一定時間流し、検出出力が安定してから、当該非塩素系溶媒を使って部品等に付着した残留油分を一定条件で抽出後、フローセルと送液系からなる紫外線吸光度検出器にかけて紫外線吸光度差をもとめて残留油分量を算出する測定方法である。
【0011】
塩素系溶媒に匹敵する脱脂能力を有する非塩素系溶媒は環境問題等の要請から研究開発が進展し、従来の塩素系溶媒に匹敵する非塩素系溶剤が開発されてきている。しかし抽出される油分は紫外部の吸収がなく該方法では測定できない。
だが、非塩素系溶媒を使った部品等に付着した残留油分量の測定はたとえ吸光度が非常に小さくとも該測定器の持つ特性に基づく何らかの変化を検出できればその値を油分濃度で補正し抽出油分濃度の値を求めることはできる。
ここで一般的に基準溶液との差を検出できさえすれば、それが吸光度差であろうと装置の持つ特性から来る差であろうと基準溶液からの差である限り限定されない。
かつ基準溶液に溶解した既知濃度の溶液の測定値で補正すれば少なくとも抽出試料の換算濃度は得られる。この値を使えば洗浄による被洗浄物の清浄度合いは定義できる。
このフローセルと送液系ならびに試料インジェクション系からなる装置を用いることにより相対値として基準溶液からの差が簡単に高感度で検出でき残留油分および/または汚染濃縮の測定管理ができる。
【0012】
<分析装置>
本発明の測定法を実現するための装置として
(A)基準参照液を送る定流量ポンプと
(B)前記(A)記載のポンプ吐出部に設けたアキュムレーターと
(C)サンプル液を注入するインジェクションバルブと
(D)光源ランプおよび受光素子の付帯した紫外線吸光度セルと
(E)3方電磁弁を介して液回収配管および廃液配管と
(F)ポンプ、インジェクションバルブ、紫外線吸光度セルをパソコン制御する手段と
を備えた紫外線吸光度測定器である。
【0013】
本発明に用いる基準参照液は前記した溶媒である。溶媒汚れを調べる場合はその汚れた溶媒そのものであるし、溶質や油分の測定ではそれを分析用に溶解した溶媒である。
定流ポンプはパソコン制御で流速をキーボードから設定できるようになっている。
さらにポンプ吐出にはポンプによる送液時に発生しやすい脈動を抑えるため、ポンプ吐出から紫外線吸光度セル出口の3方電磁弁までの間を加圧状態にするためアキュムレーターを設けている。さらに六方バルブをパソコン制御で切り替え操作を行い、基準参照液を六方バルブ経由で直接、紫外線吸光度セルへ流すルートとサンプリング注入により計量された六方バルブ内サンプリング液を六方バルブの切り替えで基準参照液で押し流して紫外線吸光度セルへ流すインジェクションルートがある。六方バルブの使用により正確なインジェクションが行える。紫外線吸光度セルは光源に低圧水銀灯を使用し、円筒状で前後に集光レンズがあり、セル内にはいった溶液に紫外線を照射し、その透過光をセルに隣接したホトディテクターで受光することにより電気信号としてとりだす。電気信号はAD変換されて接続されたパソコンで受信、記憶し、データ処理されてCRT、プリンターに出力される。
【発明の効果】
【0014】
高精度の溶媒汚れの管理を連続して、あるいはバッチ式で行い簡易な操作で測定することができ、また残留油分の量的分析にも溶剤選択の範囲を広げ、脱脂力の違いを考慮して補正して得られるデータ値に信頼性をより高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】紫外線吸光度測定装置ブロック図
【図2】測定データ
【産業上の利用可能性】
【0016】
溶媒抽出プロセスを有する化学工業、香料、医薬、食品工業の現場で溶媒汚れ管理で好適に用いられる。また、残留油分量の測定を要する金属機械部品、含油焼結金属部品等製造現場で好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒抽出分離後の溶液またはフレッシュ溶媒を基準液として紫外線吸光度検出器に一定時間流し、検出出力が安定してからフレッシュ溶媒または溶媒抽出分離後の溶液を試料溶液としてサンプリング注入して得られる紫外線吸光度検出器における出力値の差より検査対象溶媒中に含まれる紫外線吸収物質由来の汚染濃度または紫外線吸収物質量を検出する方法。
【請求項2】
あらかじめ紫外線吸光度の低い非塩素系溶媒を紫外線吸光度検出器に一定時間流し、検出出力が安定してから、当該非塩素系溶媒を使って部品等に付着した残留油分を一定条件で抽出後、紫外線吸光度検出器にかけて紫外線吸光度差もしくは装置の特性上の出力値の差をもとめて残留油分量を算出する測定方法。
【請求項3】
(A)基準参照液を送る定流量ポンプと
(B)前記(A)記載のポンプ吐出部に設けたアキュムレーターと
(C)サンプル液を注入するインジェクションバルブと
(D)光源ランプおよび受光素子の付帯した紫外線吸光度セルと
(E)3方電磁弁を介して液回収配管および廃液配管と
(F)ポンプ、インジェクションバルブ、紫外線吸光度セルをパソコン制御する手段と
を備えた請求項1から3項記載のいずれかの測定方法で測定する紫外線吸光度測定器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−83204(P2012−83204A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229613(P2010−229613)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(592157722)日理工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】