説明

紫外線吸収組成物、それを用いた化粧品、医薬製剤及び、紫外線の遮断方法

【課題】UV−A領域の紫外線を効果的に遮断すると共に、さまざまな媒体を用いた場合にも、均一な物性で調製することができ、かつモル吸光係数が高く、かつ着色が少ない紫外線吸収組成物、それ用いた人体への安全性、効果の持続性に優れた紫外線吸収性の化粧品、医薬製剤、効果的な紫外線の遮断方法を提供する。
【解決手段】波長300〜600nmの範囲に極大吸収を有さない溶媒に溶解して、25℃における濃度が1.0×10−6モル/L〜1.0×10−3モル/Lとなるように調製した溶液における最大吸収波長が380nm以下である紫外線吸収性化合物を1.0×10−7モル/g〜1.0×10−3モル/g含有し、且つ、厚さ10μmの膜としたときの該膜における波長390nmの光線透過率が5%以下である紫外線吸収組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収組成物、それを含む化粧品、医薬製剤、及び、該紫外線吸収組成物を用いた紫外線の遮断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
280nmから400nmの波長を有する紫外線の照射によりヒトの表皮は褐色になり、特にUV−B線として知られている280nmから320nmの範囲の波長を有する光線により、所望の自然な日焼け状態よりも皮膚に損傷を与え、有害な皮膚火傷となったり紅斑の原因となったりすることが知られている。健康上、美容上の理由により、有害な紫外線によるダメージを抑制し、皮膚や毛髪における日焼けを防止する、あるいは、日焼けによる損傷を抑制しつつ、皮膚の色調を健康な日焼け状態にコントロールするための手段が必要とされている。このため、このUV−B線は遮蔽することが望ましい。
他方、320nmから400nmの範囲の波長を有し、皮膚を褐色にする原因となるUV−A線も、前記皮膚に機能障害を誘発するおそれがあることが知られており、敏感肌や絶えず太陽光線にさらされている皮膚の場合は特にその影響が懸念される。
UV−A線は、特に、皮膚の弾性を喪失させ、シワを出現せしめ、皮膚を時期尚早の老化に導く原因となる。UV−A線は紅斑の発生の原因となり、さらに、体質によっては、この反応を増幅させ、光毒性又は光アレルギー反応の原因になる場合もある。従って、このような健康上の理由、或いは、例えば皮膚本来の弾力性を維持するというような美容的理由から、皮膚へのUV−A線の影響をコントロールすることが望まれており、前記UV−B線のみならずUV−A線を効果的に遮蔽することが望ましい。
人体用の紫外線吸収組成物の適用分野としては、日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料等の皮膚或いは毛髪用化粧品、スポーツウェア、ストッキング、帽子等の衣料用繊維製品及び繊維、メガネのレンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具等を挙げることができる。
【0003】
また、人体に限らず、たとえば、樹脂製品なども紫外線の影響を受けて徐々に劣化し、強度が低下したり、或いは、そこに含まれる着色剤が分解して退色し、外観を損なったりする懸念がある。
このため、従来から紫外線吸収剤を種々の樹脂などと共用して紫外線吸収性を付与することが行われている。紫外線吸収性を付与した材料の例としては、例えばガラス代替品とその表面コーティング材、住居、施設、輸送機器等の窓ガラス、採光ガラス及び光源保護ガラス用のコーティング材、住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料、蛍光灯、水銀灯等の紫外線を発する光源用部材、精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波等の遮断用材、食品、化学品、薬品等の容器又は包装材、農工業用シート又はフィルム材、印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤、カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品、光学フィルタ、プリズム、鏡、写真材料等の光学用品、テープ、インク等の文房具、標示板、標示器等とその表面コーティング材等を挙げることができる。
【0004】
これらの各種分野に適用される紫外線吸収剤としては、安全性に優れ、高溶解性でかつモル吸光係数の高いものが望まれている。従来の紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸系化合物、トリアジン系化合物、アミノ安息香酸系化合物、ケイ皮酸系化合物などが使われているがこれらは安全性、高溶解性、高モル吸光係数を十分に満たすものではなかった。これを解決するため、紫外光領域の急行性に優れるメロシアニン系化合物の製造法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかしながら、得られた化合物は溶解性が十分ではなく、このため、優れた紫外線吸収能を有し、さらに、溶解性に優れた化合物が求められていた。
【特許文献1】特開昭53−128333号公報
【特許文献2】特開昭58−181041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、UV−A領域の紫外線を効果的に遮断すると共に、さまざまな媒体を用いた場合にも、均一な物性で調製することができ、かつモル吸光係数が高く、含有される紫外線吸収剤由来の着色が少ない紫外線吸収組成物を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、本発明の紫外線吸収組成物を用いた人体への安全性、効果の持続性に優れた紫外線吸収性の化粧品、医薬製剤、さらには、効果的な紫外線の遮断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、下記手段により本発明の上記目的が達成されることを見出した。本発明の構成は以下に示すとおりである。
【0007】
[1] 波長300〜600nmの範囲に極大吸収を有さない溶媒に溶解して、25℃における濃度が1.0×10−6モル/L〜1.0×10−3モル/Lとなるように調製した溶液における最大吸収波長が380nm以下である紫外線吸収性化合物を1.0×10−7モル/g〜1.0×10−3モル/g含有し、且つ、厚さ10μmの膜としたときの該膜における波長390nmの光線透過率が5%以下である紫外線吸収組成物。
[2] 厚さ10μmの膜としたときの該膜における波長440nmの光線透過率が80%以上である[1]記載の紫外線吸収組成物。
[3] 厚さ10μmの膜としたときの該膜における波長420nmの光線透過率が70%以上である[1]または[2]に記載の紫外線吸収組成物。
【0008】
[4] 前記紫外線吸収性化合物の含有量が、前記紫外線吸収組成物1g中、1×10−4g〜5×10−1gである[1]〜[3]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
[5] 前記紫外線吸収性化合物の分子量が400〜4,000の範囲にある[1]〜[4]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
[6] 前記紫外線吸収性化合物が、分子内にメロシアニン骨格を有する化合物である[1]〜[5]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
[7] 前記紫外線吸収性化合物が下記一般式(Ia)で表される化合物である[1]〜[6]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(Ia)中、R11、R12、R13は、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基または炭素原子で結合する複素環基を表し、L11〜L14は各々独立に単結合又は2価の基を表す。−X−は−O−、−S−、−N−、又は、−C(R14)−を表し、R14は水素原子又は置換基である。n11、n12は各々独立に0以上の整数である。但し、n11とn12が同時に1以上の場合は、[ ]内において鎖状構造を形成する各構造単位の配列順は任意である。n13は−X−が−O−又は−S−の場合には0を表し、−N−又は−C(R14)−の場合には1を表す。R11、R12、R13、R14、L11、L12、L13及びL14のうち2以上の置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
また、式中、R31及びR32は各々独立にσ値が0.20以上の置換基を表し、R33、R34及びR35は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は、炭素原子で結合する複素環基を表す。
[8] 前記紫外線吸収性化合物が下記一般式(Ia)で表される化合物である[1]〜[7]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
【0011】
【化2】

【0012】
前記一般式(Ib)中、R11〜R13、L11〜L14、−X−、n11、n12、R33、R34及びR35は、前記一般式(Ia)におけるのと同義である。R36、R37は各々独立に脂肪族基、芳香族基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。
[9] 油相成分及び水相成分を含有する乳化組成物である[1]〜[8]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
[10] 前記厚さ10μmの膜が、塗布法により製膜される[1]〜[9]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
[11][1]〜[10]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物を含有する化粧品。
[12] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物を含有する医薬製剤。
[13] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物を用いる紫外線の遮断方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、UV−A領域の紫外線を効果的に遮断すると共に、さまざまな媒体を用いた場合にも、均一な物性で調製することができ、かつモル吸光係数が高く、含有される紫外線吸収剤由来の着色が少ない紫外線吸収組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、この紫外線吸収組成物を用いることで、人体への安全性、効果の持続性に優れた紫外線吸収能にすぐれた化粧品、医薬製剤、さらには、効果的な紫外線の遮断方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態について更に詳しく説明する。
<紫外線吸収組成物>
本発明の紫外線吸収組成物は、波長300〜600nmの範囲に極大吸収を有さない溶媒に溶解して、25℃における濃度が1.0×10−6モル/L〜1.0×10−3モル/Lとなるように調製した溶液における最大吸収波長が380nm以下である紫外線吸収性化合物を1.0×10−7モル/g〜1.0×10−3モル/g含有し、且つ、厚さ10μmの膜としたときの該膜における波長390nmの光線透過率が5%以下であることを特徴とする。言い換えれば、この組成物により製膜された厚さ10μmという薄膜であっても、波長390nmのUV−A波長領域の光を効果的に遮断しうる、紫外線吸収能に優れた組成物である。
【0015】
本発明の紫外線吸収組成物は、製膜して物性評価を行う。この紫外線吸収組成物は、特定領域に吸収を有する紫外線吸収性化合物と、これを溶解、分散又は乳化させうる媒体とを含むものであり、これを、測定のために10μmの厚さに製膜する。
本発明の紫外線吸収組成物において、紫外線吸収性化合物とともに用いられる媒体としては、有機溶媒、水、樹脂などが挙げられるが、勿論、これに限られない。
【0016】
本発明に用いうる紫外線吸収性化合物は、以下に示すような溶媒を用いて調製した1.0×10−6モル/L〜1.0×10−3モル/Lの溶液における最大吸収波長が380nm以下である化合物であり、UV−A領域に吸収を有する。ここで、最大吸収波長は、以下のように測定する。
以下に示すような溶媒に試料である紫外線吸収剤を1.0×10−6モル/L〜1.0×10−3モル/Lの溶液に溶解し、石英製またはガラス製のセルを用いて、該溶液を入れた試料用のセルと、対照用として試料である紫外線吸収剤を含まず、溶媒のみを含むセルとを準備し、2つのセルを用いて分光吸収測定装置によって測定し、対照用セルを標準として試料である紫外線吸収剤の最大吸収波長が測定される。この方法については、例えば、日本化学会編「第4版実験化学講座 7 分光II」(丸善、1992年)180〜186ページなどに詳細に記載されており、測定方法については、これを参照することができる。
【0017】
ここで用いる溶媒は、紫外線吸収剤の溶解性が良好であること考慮して選択すればよく、さらに、測定対象である紫外線吸収剤と同じか或いは、近い波長領域に極大吸収を持たないこと、溶質分子との相互作用が小さいこと、揮発性があまり著しくないこと等が要求されるため、これらを考慮して選択すればよい。上記条件を満たす溶媒であれば、任意のものを選択することができるが、具体的には、溶解性の観点からは、例えば、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン)、スルホン系溶媒(例えば、スルホラン)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えば、テトラメチルウレア)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、エーテル系溶媒(例えば、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル)、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン、n−デカン)、ハロゲン系溶媒(例えば、テトラクロロエタン,クロロベンゼン)、ピリジン系溶媒(例えば、ピリジン、γ―ピコリン、2,6−ルチジン)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、及び水溶媒などが挙げられ、吸収波長の観点からは、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどが好ましく挙げられる。なかでも、好ましくは、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどである。
【0018】
本発明に用いうる紫外線吸収性化合物の極大吸収波長は、前記溶剤を用いて調製した、濃度1.0×10−6モル/L〜1.0×10−3モル/Lの溶液で、25℃において測定するが、前記濃度範囲の中でも、吸光度が0.1〜2、好ましくは1〜2の範囲となるように濃度を制御して液を調製することが好ましく、このような溶液を光路長10mmの石英セルを使用して測定した値を使用する。なお、測定装置は、分光吸収測定装置であれば特に限定されるものではないが、本発明においては、日立ハイテクノロジーズ(株)製U−4100スペクトロフォトメーターを使用し測定した。
【0019】
本発明において前記条件で測定した最大吸収波長が380nm以下である紫外線吸収性化合物の、本発明の紫外線吸収組成物に含まれる好ましい含有量は、5.0×10−7〜0.5×10−3モル/gであり、更に好ましくは1.0×10−6〜3.0×10−4モル/gであり、更に好ましくは0.5×10−6〜1.0×10−4モル/gである。
【0020】
(厚さ10μmの膜の製膜と光線透過率の測定)
本発明の紫外線吸収組成物は、前記した含有量で紫外線吸収性化合物を含むものであり、これを厚さ10μmに製膜したときの光線過率によりその物性が規定される。
本発明の紫外線吸収組成物の形態としては、特に制限はなく、その用途・種類により固体、粉体、液体、ゲル状物、分散物、乳化物などさまざまな形態をとりうる。
以下、剤形に応じた膜の成型方法を説明する。
紫外線吸収組成物が固体である場合は延伸する、或いは、スライスするなどして厚さ10μmの膜を作製し、吸収スペクトルを測定する。
紫外線吸収組成物が粉体である場合は、圧縮成形によりディスクを作製し、吸収スペクトルを測定する。液体である場合は10μmの薄層セルに入れて吸収スペクトルを測定できる。また、ゲル状物である場合は、透明の基板上に10μmの厚みになるように製膜し、膜厚測定器にて厚みを確認して、吸収スペクトルを測定することができる。
【0021】
紫外線吸収組成物が分散物または乳化物の形態をとる場合、粘度が低いもの、より具体的には、薄層セルに流し込める程度の粘度であるものに関しては液体と同様に測定すればよく、粘度が高いもの、たとえば、透明基板上に10μmの薄膜を形成できる程度の粘度のものは、ゲル状物と同様の測定ができる。
これら厚さ10μmの膜の製膜方法は、上記に限定されるものではなく、均一な膜を形成しうる限りにおいて、形態に応じて適宜選択することができる。
測定温度は特に限定しないが、好ましくは0〜80℃である。測定機器は通常の分光吸収測定装置を用いることができる。本発明においては、測定機器として分光吸収測定装置(日立ハイテクノロジーズ(株)製U−4100スペクトロフォトメーター)を用いて、
25℃で測定した値を用いている。
【0022】
25℃において、前記特定の溶媒を用いて調製した1.0×10−6モル/L〜1.0×10−3モル/Lの溶液における最大吸収波長が380nm以下である紫外線吸収性化合物を前記した特定量で含有する本発明の紫外線吸収組成物は、前記手法により、厚さ10μmの膜としたとき、形成された膜における波長390nmの光線透過率が5%以下であることを要する。このことは、薄膜であっても、短波長の紫外線を効率よく吸収、遮断しうることを意味する。
また、好ましくは、このように形成した厚さ10μmの膜における波長440nmの光線透過率が80%以上であることが好ましく、また、波長420nmの光線透過率が70%以上であることが好ましい。
すなわち、本発明の紫外線吸収組成物は、UV−A領域の波長を効率よく吸収すると共に、可視光領域における光透過性に優れたものであることが好ましく、このような物性を有することで、紫外線吸収組成物の黄変、着色を抑制することができる。
【0023】
(紫外線吸収性化合物)
本発明の紫外線吸収組成物に用いられる紫外線吸収性化合物としては、最大吸収波長が380nm以下であって、本発明に規定する前記物性を満たすものであれば、特に制限はないが、製造適性の観点から、分子量が400〜3,000の範囲にある化合物が好ましく、より好ましくは500〜2,500であり、更に好ましくは分子量600〜2,000の範囲の化合物である。
【0024】
また、構造の観点からは、該紫外線吸収性化合物が、分子内にメロシアニン骨格を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、分子内に2以上のメロシアニン骨格を有する化合物であることがより好ましい。
本発明に用いうる分子内にメロシアニン骨格を有する紫外線吸収性化合物としては、例えば、特開昭57−157245号公報に記載される例示化合物II−7、II−8や、特開2008−81455号公報に記載される例示化合物I−2、I−10、I−20などが挙げられ、このような化合物を本発明に適用することができる。
分子内にメロシアニン骨格を有する紫外線吸収性化合物のなかでも、紫外線吸収能、安定性、及び、製剤化の容易性の観点からは、下記一般式(Ia)で表される紫外線吸収性化合物であることが好ましい。
【0025】
【化3】

【0026】
一般式(Ia)中、R11、R12、R13は、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基または炭素原子で結合する複素環基を表し、L11〜L14は各々独立に単結合又は2価の基を表す。−X−は−O−、−S−、−N−、又は、−C(R14)−を表し、R14は水素原子又は置換基である。n11、n12は各々独立に0以上の整数である。但し、n11とn12が同時に1以上の場合は、[ ]内において鎖状構造を形成する各構造単位の配列順は任意である。n13は−X−が−O−又は−S−の場合には0を表し、−N−又は−C(R14)−の場合には1を表す。R11、R12、R13、R14、L11、L12、L13及びL14のうち2以上の置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
また、式中、R31及びR32は各々独立にσ値が0.20以上の置換基を表し、R33、R34及びR35は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は、炭素原子で結合する複素環基を表す。
【0027】
一般式(Ia)で表されるアミノブタジエン化合物の立体異性体は複数存在するが本明細書では便宜上一種で全ての異性体を示す。すなわち、本明細書に示されるアミノブタジエン化合物は全ての立体異性体のうち、特定の一種又は複数種の混合物である。
【0028】
また、上記一般式(Ia)において置換基の定義に用いられるσ値はL.P.Hammettにより1935年に提唱された置換基定数であり、ベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論じた経験則である。これは今日広く妥当性が認められている。Hammett則によりもとめられた置換基定数にはσ値とσ値がありこれらの値は多くの一般的な成書に記載があるが、例えばJ.A.Dean編「Lange’sHandbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域増刊」、122号、96〜103頁、1979年(南江堂)に詳しい。本発明においてR31、R32はハメットの置換基定数σ値により規定されるが、これらの成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなくその値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれる限り包含されることは勿論である。
【0029】
前記一般式(Ia)における脂肪族基など、本明細書における脂肪族基とは、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基および置換アラルキル基を意味する。
アルキル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜18であることが更に好ましい。置換アルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アルケニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分は、上記アルケニル基と同様である。アルキニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。置換アルキニル基のアルキニル部分は、上記アルキニル基と同様である。アラルキル基および置換アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基および置換アラルキル基のアリール部分は下記アリール基と同様である。
【0030】
置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例にはハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
【0031】
アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
【0032】
アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、
【0033】
シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
【0034】
アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
【0035】
アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
【0036】
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
【0037】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
【0038】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
【0039】
アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
【0040】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0041】
置換アラルキル基のアリール部分の置換基の例は、下記置換アリール基の置換基の例と同様である。
【0042】
前記一般式(Ia)における芳香族基など、本明細書における芳香族基は、アリール基および置換アリール基を意味する。またこれらの芳香族基は脂肪族環、他の芳香族環または複素環が縮合していてもよい。芳香族基の炭素原子数は6〜40が好ましく、6〜30が更に好ましく、6〜20が更に好ましい。またその中でもアリール基としてはフェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。
【0043】
置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。置換アリール基の置換基の例としては、先に置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例としてあげたものと同様である。
【0044】
一般式(Ia)における複素環基など、本明細書における複素環基は5員または6員の飽和または不飽和複素環を含むことが好ましい。複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。複素環のヘテロ原子の例にはB,N,O,S,SeおよびTeが含まれる。ヘテロ原子としてはN,OおよびSが好ましい。複素環は炭素原子が遊離の原子価(一価)を有する(複素環基は炭素原子において結合する)ことが好ましい。好ましい複素環基の炭素原子数は1〜40であり、より好ましくは1〜30であり、更に好ましくは1〜20である。飽和複素環の例には、ピロリジン環、モルホリン環、2−ボラ−1,3−ジオキソラン環および1,3−チアゾリジン環が含まれる。不飽和複素環の例には、イミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびキノリン環が含まれる。複素環基は置換基を有していても良い。置換基の例としては、先に置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例としてあげたものと同様である。
【0045】
前記一般式(Ia)で表される化合物の好ましい態様として、下記一般式(Ib)で表される紫外線吸収性化合物が挙げられる。
【0046】
【化4】

【0047】
前記一般式(Ib)中、R11〜R13、L11〜L14、−X−、n11、n12、R33、R34及びR35は、前記一般式(Ia)におけるのと同義である。R36、R37は各々独立に脂肪族基、芳香族基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。
【0048】
前記一般式(Ia)及び一般式(Ib)においてR11は置換基を表し、置換基の例としては前述の置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例としてあげたものと同様のものが挙げられる。
【0049】
11、R12およびR13として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、および炭素数6〜20のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、および炭素数6〜10のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、および炭素数6〜10のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基であり、更に好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基であり、最も好ましくはベンジル基である。またR11、R12およびR13の全てが同一であることも好ましい。
【0050】
11、L12,L13として好ましくは単結合、アルキレン、アリーレン、アルキレンとアリーレンの組み合わせからなる2価の基、アルキレンと酸素原子からなる2価の基、アリーレンと酸素原子からなる2価の基およびアルキレンとアリーレンと酸素原子からなる2価の基であり、更に好ましくは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、炭素数6〜20のアリーレン、総炭素数7〜20のアルキレンとアリーレンの組み合わせからなる2価の基、炭素数1〜20のアルキレンと酸素原子からなる2価の基、炭素数6〜20のアリーレンと酸素原子からなる2価の基および総炭素数7〜20のアルキレンとアリーレンと酸素原子からなる2価の基であり、更に好ましくは単結合、炭素数2〜10のアルキレン、炭素数6〜10のアリーレン、総炭素数7〜10のアルキレンとアリーレンの組み合わせからなる2価の基、炭素数2〜10のアルキレンと酸素原子からなる2価の基、炭素数7〜10のアリーレンと酸素原子からなる2価の基であり、更に好ましくは単結合、炭素数2〜10のアルキレン、炭素数6〜10のアリーレン、炭素数2〜10のアルキレンと酸素原子からなる2価の基であり更に好ましくは単結合、炭素数2〜10のアルキレン、炭素数2〜10のアルキレンと酸素原子からなる2価の基であり、最も好ましくは単結合、炭素数2〜10のアルキレンである。またL11とL12、L11とXおよびL13とXの直鎖部分の炭素原子の合計数が2以上となることが好ましい。
【0051】
Xが−C(R14)−となる場合のL14として好ましい範囲は、前述のL11と同様である。Xが−N−となる場合のL14として好ましくはアルキレン、アリーレン、アルキレンとアリーレンの組み合わせからなる2価の基、アルキレンと酸素原子からなる2価の基、アリーレンと酸素原子からなる2価の基およびアルキレンと置換または無置換のアリーレンと酸素原子からなる2価の基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキレン、炭素数6〜20のアリーレン、総炭素数7〜20のアルキレンとアリーレンの組み合わせからなる2価の基、炭素数1〜20のアルキレンと酸素原子からなる2価の基、炭素数6〜20のアリーレンと酸素原子からなる2価の基および総炭素数7〜20のアルキレンとアリーレンと酸素原子からなる2価の基であり、更に好ましくは炭素数2〜10のアルキレン、炭素数6〜10のアリーレン、総炭素数7〜10のアルキレンとアリーレンの組み合わせからなる2価の基、炭素数2〜10のアルキレンと酸素原子からなる2価の基、炭素数7〜10のアリーレンと酸素原子からなる2価の基であり、更に好ましくは炭素数2〜10のアルキレン、炭素数6〜10のアリーレン、炭素数2〜10のアルキレンと酸素原子からなる2価の基であり更に好ましくは炭素数2〜10のアルキレン、炭素数2〜10のアルキレンと酸素原子からなる2価の基であり、最も好ましくは炭素数2〜10のアルキレンである。
【0052】
Xとして好ましくは−N−および−C(R14)−であり更に好ましくは−C(R14)−である。
【0053】
14として好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、イミド基、シリル基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アミノ基であり、最も好ましくは水素原子およびアルキル基である。また、下記一般式(VII)で表されることも好ましい。
【0054】
【化5】

【0055】
15は前述のR12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
15は前述のL14と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0056】
11として好ましくは0〜20であり、更に好ましくは0〜10であり、更に好ましくは0〜5であり、更に好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1〜2であり、最も好ましくは1である。
【0057】
12として好ましくは0〜20であり、更に好ましくは0〜10であり、更に好ましくは0〜5であり、更に好ましくは0〜3であり、最も好ましくは0〜1である。
【0058】
31、R32は各々独立にσ値が0.20以上の置換基を表す。R31、R32として好ましくはσ値が0.30以上の置換基であり、更に好ましくはアルカン又はアリーレンスルホニル基、アシル基、アリールカルボニル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基であり、より好ましくは炭素数6〜20のアレーンスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、p−クロロベンゼンスルホニル基、ナフタレンスルホニル基)、炭素数1〜20のアシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基)、炭素数7〜20のアリールカルボニル基、ニトリル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、p−ニトロフェノキシカルボニル基)であり、更に好ましくは炭素数6〜15のアレーンスルホニル基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数7〜15のアリールカルボニル基、ニトリル基、炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基であり、更に好ましくは炭素数6〜10のアレーンスルホニル基、ニトリル基、炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基であり、最も好ましくは炭素数6〜8のアレーンスルホニル基、炭素数3〜12のアルコキシカルボニル基である。
【0059】
33,R34,R35は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基および炭素原子で結合する複素環基を表し、好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6から10のアリール基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基およびエチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0060】
36およびR37は各々独立に脂肪族基、芳香族基および炭素原子で結合する複素環基をし、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6から10のアリール基であり、更に好ましくは炭素数3〜8のアルキル基、炭素数6から8のアリール基であり、更に好ましくは2−エチルヘキシル基、オクチル基、フェニル基およびベンジル基であり、R36の最も好ましくはフェニル基であり、R37の最も好ましくはオクチル基である。
【0061】
本発明に好適に用いられる一般式(Ia)で表される紫外線吸収性化合物は、下記(式1)で示すスキームに従って合成することができる。
【0062】
【化21】

【0063】
一般式(I)及び(II)中、R11、R12、及びR13は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で結合する複素環基を表し、L11〜L14は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。−X−は、−O−、−S−、−N−、−C(R14)−を表し、R14は水素原子又は置換基である。n11及びn12は、各々独立に、0以上の整数である。但し、n11とn12が同時に1以上の場合、[ ]内において鎖状構造を形成する各構造単位の配列順は任意である。n13は、−X−が−O−又は−S−の場合は0であり、−N−、−C(R14)−の場合は1である。R11、R12、R13、R14、L11、L12、L13、及びL14は互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(III)中、Lは、少なくとも1つの炭素原子を含む基を表し、Cは炭素原子を含む一価の基を表し、該Cが一般式(II)中の窒素原子によって置換されることで、一般式(I)で表される化合物が形成される。
一般式(IV)中、Lは、一般式(III)におけるLと同義である。
式(1)において、一般式(III)で表される化合物は1種又は2種以上用いられ、その際、一般式(I)におけるCは同一でも異なっていてもよい。
【0064】
(A)特定紫外線吸収性化合物(上記スキーム中、一般式(I)で示される化合物に相当する)は、前記(式1)で示される置換反応工程を行うことにより得ることができる。
【0065】
反応に用いる溶媒としては、例えば、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン)、スルホン系溶媒(例えば、スルホラン)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えば、テトラメチルウレア)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、エーテル系溶媒(例えば、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル)、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン、n−デカン)、ハロゲン系溶媒(例えば、テトラクロロエタン,クロロベンゼン)、ピリジン系溶媒(例えば、ピリジン、γ―ピコリン、2,6−ルチジン)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、及び水溶媒(尚、必要に応じて無機化合物や塩などを含んでいてもよい)を、単独或いは併用して用いることができる。これらの溶媒のうち好ましくは、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、及び水系溶媒であり、より好ましくは、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、及び水系溶媒であり、更に好ましくは、アルコール系溶媒、炭化水素系溶媒、及び水系溶媒である。アルコール系溶媒と水溶媒との混合溶媒で反応を行うことが最も好ましい。
【0066】
上記置換反応程における反応温度は、0〜250℃が好ましく、より好ましくは20〜200℃、更に好ましくは40〜150℃、更に好ましくは60〜130℃、更に好ましくは70〜110℃である。
このような製造方法によれば、目的物質である一般式(I)で表される化合物に加え、その副生成物である一般式(IV)で表される化合物が得られるために、反応終了後、精製工程を行い、副生成物を除去してもよい。
上記(式1)で示されるスキームにおいて、出発物質及び溶媒などを適宜選択することで、一般式(Ia)で表される紫外線吸収性化合物に包含される以下に示す化合物を合成することができる。
【0067】
以下に、本発明において紫外線吸収性化合物として好ましく用いうる、一般式(Ia)で表される化合物の具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−26)〕を示すが、本発明はこれに制限されない。
【0068】
【化6】

【0069】
【化7】

【0070】
【化8】

【0071】
【化9】

【0072】
【化10】

【0073】
上記例示化合物のうち、製造適性の観点から、特に好ましくは、(I−4)、(I−5)、(I−6)、(I−10)、(I−16)、(I−26)などが挙げられる。
【0074】
本発明の紫外線吸収組成物に用いられる紫外線吸収性化合物は、1種単独であっても、2種以上を併用してもよい。
また、含有量は、紫外線吸収組成物に対して、紫外線吸収性化合物を1.0×10−7モル/g〜1.0×10−3モル/g含有することが好ましい。
【0075】
質量換算の含有量としては、本発明の紫外線吸収組成物1g中に含有される該紫外線吸収性化合物の好ましい含有量は5×10−4〜1.0×10−1gであり、更に好ましくは1.0×10−3〜8.0×10−2gであり、更に好ましくは5.0×10−3〜7.0×10−2gである。
【0076】
本発明の紫外線吸収組成物は、本発明に規定する前記紫外線吸収性化合物を含有することを要するが、該紫外線吸収性化合物と組み合わせて用いられる他の成分は任意であり、その剤形にも制限はない。但し、その他の成分は、前記物性、すなわち、厚さ10μmに製膜したときの光透過性を達成しうる範囲にて、適宜選択することが必要である。
【0077】
本発明の紫外線吸収組成物は、樹脂を媒体とする紫外線吸収性の樹脂組成物として、繊維、樹脂成型品、コーティング剤、塗料、樹脂フィルムなどに適用することができる。ガラスなどの無機材料を媒体とする紫外線吸収性の無機材料として、紫外線吸収性ガラスやその成型品などにも適用することができる。さらに、人体用皮膚或いは毛髪用化粧品、医療用製剤の基剤を媒体とすることができる。
【0078】
(媒体)
以下、本発明の紫外線吸収組成物において、紫外線吸収性化合物とともに用いられる各種の媒体について説明する。
媒体としては、溶剤、樹脂、無機材料が挙げられる。
本発明に用いられる媒体である有機溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタンなどの炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルなどのエーテル系、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、メチルエチルケトンなどのケトン系、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン系、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸系、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系、テトラヒドロフラン、ピリジンなどのヘテロ環系、などが挙げられる。これらを任意の割合で組み合わせて使用することもできる。
また、有機溶媒として、目的に応じて高沸点有機溶媒なども用いることができる。高沸点有機溶媒の例には、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、安息香酸エステル、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、炭酸エステル、アミド、エーテル、ハロゲン化炭化水素、アルコールおよびパラフィンが含まれる。
【0079】
樹脂としては、従来公知の各種成形体、シート、フィルム等の製造に従来から使用されている熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、液晶ポリエステル樹脂(LCP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられ、これらは一種または二種以上のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとして使用される。また、これらの樹脂は、ナチュラル樹脂にガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズ等のフィラーや難燃剤等を含有させた熱可塑性成形材料としても使用される。また、必要に応じて従来使用されている樹脂用の添加剤、例えば、ポリオレフィン系樹脂微粉末、ポリオレフィン系ワックス、エチレンビスアマイド系ワックス、金属石鹸等を単独であるいは組み合わせて使用することもできる。
【0080】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、さらに、ガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズ等のフィラーや難燃剤を含有させた熱硬化性成形材料としても使用することができる。
【0081】
無機材料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、ガラス、炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,未焼成クレー等が挙げられる。
【0082】
これらの溶剤、樹脂、無機材料を基剤として本発明の紫外線吸収組成物を調製するには、用いる紫外線吸収性化合物の物性に応じて、これらの基剤に直接、溶解、分散させてもよく、適切な溶媒に溶解した後、基剤に添加して調製してもよい。
【0083】
また、本発明の紫外線吸収組成物を人体用の化粧品、医薬品に用いる場合には、各種の化粧品、医薬品製剤である外用剤の基剤に紫外線吸収性化合物を、前記の物性を満たす範囲で添加して調製することができる。
このような、化粧品、外用医薬品に用いられる基剤としては、皮膚や毛髪に適用しうる使用性、安全性に優れた処方であれば、他の構成成分には、特に制限はなく、当業者によく知られている技術に従って、目的に応じて調製することができる。
ここで媒体(基剤)として用いうる成分としては、化粧品や医薬製剤の基剤として汎用の油脂類やロウ類、炭化水素油、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、シリコーン類、粉体などが挙げられる。また、他の併用可能な成分としては、化粧品や医薬製剤の有効成分となりうる、糖類、動植物性抽出物、アミノ酸類、ビタミン類など;基剤の物性を調整したり、外観を向上させたり、感触を改良するために用いうる界面活性剤、色材など;が挙げられる。
一般に、紫外線吸収性化合物は、親油性のものが多いため、これら化粧品、医薬製剤の基剤に配合する際には、油相に紫外線吸収性化合物を添加して、調製することができる。
【0084】
<紫外線吸収組成物に用いうる他の成分>
本発明の紫外線吸収組成物には、前記特定紫外線吸収剤に加え、上記基剤など種々の化合物を併用しうる。以下、本発明の紫外線吸収組成物を化粧品組成物や医薬組成物など、ヒト或いは動物の皮膚、毛髪などを紫外線から防御するための種々の製剤に適用する場合に併用される、外用剤的に許容可能な種々の材料について説明する。本発明の紫外線吸収組成物は、例えば、皮膚化粧料組成物、毛髪化粧料組成物、皮膚或いは毛髪に使用する医薬品組成物などに好適である。
【0085】
本発明の紫外線吸収組成物を、皮膚や毛髪に適用する場合、安全性に優れた処方であれば、他の構成成分には、特に制限はなく、当業者によく知られている技術に従って、目的に応じて調製することができる。
他の成分としては、紫外線吸収組成物の基材となりうる油脂類やロウ類、炭化水素油、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、シリコーン類、粉体など、該組成物の有効成分となりうる、糖類、動植物性抽出物、アミノ酸類、ビタミン類、基材の物性を調整したり、外観を向上させたり、感触を改良するために用いうる界面活性剤、色材などを目的応じて選択して使用しうる。
【0086】
また、前記条件に適合する紫外線吸収性化合物以外の、有機又は無機の紫外線吸収性化合物を含むことができる、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料、着色剤、その他化粧品に含まれる有効成分としての添加剤等も用いることができる。
以下に、本発明の紫外線吸収組成物をヒトや動物に適用する場合に用いうる各種成分について順次説明する。
【0087】
(油脂類)
油脂としては、化粧油の基剤、クリームの油相成分やエモリエント剤、メークアップ化粧品の粉体の結合剤、シャンプー・リンスの加脂剤・感触改良剤として利用されている。
本発明に用いうる油脂類としては、トリグリセリドすなわち脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを主成分とするものが挙げられ、通常、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルであるロウ類とは区別されている。
油脂類は、天然の動植物界に広く存在しており、食用をはじめとして。種々の工業に利用されている。常温での性状により、液体のものを脂肪油、固体のものを脂肪と称する。
【0088】
(油)
油としては、鉱物性油(液状パラフィン);植物性油(例えば、スイートアルモンド油、マカダミア油、クロフサスグリの種油、ホホバ油、オリーブ油、ひまし油、ヒマワリ油など);合成油(例えばペルヒドロスクアレン)、脂肪アルコール、脂肪酸又は脂肪エステル(例えばウィトコ社(Witco)から「ウィトコノール(Witconol)TN」又は「フィンソルブTN」の商品名で販売されている安息香酸C12-C15アルキル、パルミチン酸オクチル、ラノリン酸イソプロピル、カプリン酸/カプリル酸のものを含むトリグリセリド類、又はコグニス社(Cognis)から「セチオール(Cetiol)CC」の名称で販売されている炭酸ジカプリリル、又はオキシエチレン化又はオキシプロピレン化脂肪エステル及びエーテル;シリコーン油(シクロメチコーン、ポリジメチルシロキサン又はPDMS);フッ化油;又はポリアルキレン類を挙げることができる。
【0089】
(ロウ類)
ロウ類としては、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル(ロウエステル)を主成分とするものであり、例えば、ミツロウ、ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油などが挙げられる。構成成分によらず、慣用的に、あるいは物理的状態によりロウとよばれる物質もあるが、化粧品に使われるロウ類は天然ロウエステルが主である。
また、ロウ状化合物としては、水添ヒマシ油、ポリエチレンロウ、及びポリメチレンロウ、例えばサソール社(Sasol)からCirebelle303の名称で販売されているものを挙げることができる。
【0090】
炭化水素類としては、炭素と水素よりなる化合物の総称で、炭素原子の配列により、鎖状炭化水素と環式炭化水素に大別される。化粧品原料としては鎖状炭化水素が多く使用される。石油系、天然に産出する鉱物系、合成系、動物系、植物系などがある。
【0091】
炭化水素油としては鉱物油(軽油又は重油)、ペトロラタム(黄色又は白色)、微晶性ワックス、パラフィン性化合物及びイソパラフィン性化合物、水素化イソパラフィン性分子、例えば、ポリデセン及びポリブテン、水素化ポリイソブテン、スクアラン、イソヘキサデカン、イソドデカン、並びに植物界及び動物界由来の他のものなどが挙げられる。
【0092】
脂肪酸としては、天然脂肪酸と合成脂肪酸に大別され、天然の脂肪酸は動植物油脂を原料として製造される。合成脂肪酸は主として液状であり、分岐脂肪酸が化粧品に利用されることが多い。
具体的には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリル酸などが挙げられる。
【0093】
アルコール類とは、一般式R−OHで表される化合物である。水酸基の数が1個、2個、3個などのアルコールを1価アルコール、2価アルコール(グリコール)、3価アルコールなどという。また芳香族炭化水素の側鎖に水酸基が置換したものは芳香族アルコールと称する。化粧品基剤や界面活性剤原料、油性成分には炭素数8〜24程度の高級アルコール用いられることが多い。
化粧品に用いうるアルコール類としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール(セチルとステアリルの混合物)、オレイルアルコール、オクチルドデカノールなどが挙げられ、炭素原子を6〜18個、好ましくは8〜10個有する脂肪族アルコールに基づくGuerbetアルコール、炭素数12〜15のアルコールのベンゾエート、アセチル化ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0094】
エステル類とは、脂肪酸とアルコールとの脱水反応によって得られる化合物である。
エステル油の例は、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n−ブチル、ラウリン酸n−ヘキシル、オレイン酸n−デシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸2−ヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシル、オクタン酸セテアリル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル、オレイン酸セチル、ベヘン酸セチル、酢酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ベヘン酸ミリスチル、オレイン酸ミリスチル、ステアリン酸ミリスチル、パルミチン酸ミリスチル、乳酸ミリスチル、ジカプリル酸/カプリン酸プロピレングリコール、ヘプタン酸ステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル等である。
【0095】
シリコーン油とフッ素油;シリコーン油は有機基のついたケイ素と酸素が化学結合により交互に連なった合成高分子であり、安定であるために、化粧品に使用される。
シリコーン(ジメチルポリシロキサン類)、有機置換ポリシロキサンなどを用いることができ、具体的には例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状シリコーンが挙げられ、さらに、アミノ−、脂肪酸−、アルコール−、ポリエーテル−、エポキシ−、フッ素−、グリコシド−及び/又はアルキル−修飾されたシリコーン化合物なども適宜使用できる。これらは室温で液体であってもよく、樹脂状形態をとるものであってもよく、剤形に応じて使用すればよい。
汎用のシリコーン類としては、直鎖ポリシロキサン、ジメチコーン(例えば、Dow Corning 社製の200オイル等)、環状シリコーンオイル、シクロペンタシロキサン揮発物(例えば、Dow Corning社製 345オイル)、フェニルトリメチコーン(例えば、Dow Corning社製、556オイル)が挙げられ、また、200〜300個のジメチルシロキサン単位の平均鎖長を有するジメチコーンと水素化シリケートとの混合物である、シメチコーンがなども用いることができる。
【0096】
フッ素油又は過フッ素油の例としては、ペルフルオロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロペンタン、ポリペルフルオロメチルイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0097】
また、紫外線吸収組成物には、粘度調整、或いは、保湿性向上のため、多価アルコールを用いることができる。多価アルコールは、分子内に2個以上の水酸基を持つ化合物で、水酸基の数で2価、3価アルコールなどと呼ばれる。化粧品における多価アルコールの利用は、スキンケア化粧品をはじめ、シャンプー。リンスなどへ保湿剤としても用いられる。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコールなどが挙げられる。
【0098】
糖類は、生理活性・薬理活性のある糖やその誘導体が、医薬品として開発・利用されている。化粧品への利用はスキンケア化粧品、ヘアケア化粧品に保湿剤や皮膚の柔軟剤として用いられることが多い。
糖類の例としては、ソルビトール、D−ソルビット、グルシトール、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、マルト−ス、マルチトール、トレハロース等が挙げられる。
【0099】
紫外線吸収組成物には、基材として、或いは、粘度調整として、各種の高分子化合物を用いることができる。高分子化合物は、組成物中での機能により増粘剤・乳化剤・保湿剤・皮膜形成剤などと呼ばれる。
例えば、親水性増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー〔例えばカルボポール(カルボマー(carbomers))及びペミュレン(Pemulen)(アクリレートと、炭素数10〜30のアルキルアクリル酸エステルとのコポリマー);ポリアクリルアミド類〔例えばセピック社(Seppic)からセピゲル(Sepigel)305(CTFA名:ポリアクリルアミド/炭素数13〜14のイソパラフィン/ラウレス(Laureth)7)、シマルゲル(Simulgel)600(CTFA名:アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80)の名称で販売されている架橋コポリマー〕;架橋或いは、中和されていてもよい2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のポリマー及びコポリマー〔例えばヘキスト社(Hoechst)から「ホスタセリン(Hostacerin)AMPS」の商品名で販売されているポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)(CTFA名:ポリアクリロイルジメチルタウリン酸アンモニウム)、セピック社から販売されているシマルゲル800(CFTA名:ポリアクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム/ポリソルベート80/オレイン酸ソルビタン)〕、;アクリル酸ヒドロキシエチルと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のコポリマー〔例えば、セピック社から販売されているシマルゲルNS及びセピノブ(Sepinov)EMT10等〕;セルロース誘導体〔例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメルセルロース〕;多糖類〔特にガム類、例えばキサンタンガム〕;及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0100】
例えば、親油性増粘剤としては、合成ポリマー、例えばランデック社(Landec)から「インテリマー(Intelimer)IPA13-1」及び「インテリマーIPA13-6」の名称で販売されているポリ(アクリル酸アルキルエステル(炭素数10〜30のアルキル))、例えばベントーンの名で販売されている製品等の、変性クレー類、例えばヘクトライト及びその誘導体を挙げることができる。
【0101】
紫外線吸収組成物を乳化系の組成物として用いる場合になどには、界面活性剤が有用である。
用途から乳化剤、可溶化剤、分散剤、展着剤などと称されることがある。
本発明に用いうる界面活性剤の例としては、脂肪族アルコールポリグリコールエーテルサルフェート、モノグリセリドサルフェート、モノ−及び/又はジ−アルキルスルホスクシネート、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、脂肪酸グルタメート、α−オレフィンスルホネート、エーテルカルボン酸、アルキルオリゴグルコシド、脂肪酸グルカミド、アルキルアミドベタイン及び/又はタンパク質脂肪酸縮合生成物が挙げられる。
【0102】
粉体および色材;化粧品に使用される粉体は体質粉体、有機色材、無機色材、パール顔料、表面処理粉体、複合粉体に大別される。
体質粉体としては、マイカ、タルクに代表される粘土鉱物の粉砕品、合成無機粉体、有機粉体、金属セッケン、合成高分子粉体などがある。
また、有機色材としては、タール色素、天然色素などがあり、無機色材には、酸化鉄類、グンジョウ、カーボンブラックなどが挙げられる。パール顔料としては雲母チタンが挙げられる。
【0103】
また、有効成分として動植物抽出物を用いることもできる。これらは何らかの抽出方法により、動植物から抽出した化合物或いは組成物である。
機能としては保湿作用、柔軟・エモリエント作用、細胞賦活作用、チロシナーゼ活性阻害作用などが主に挙げられ、それによって呼び方が変わる場合もある。
動植物抽出物の例としては、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キチン、キトサン、コラーゲン、エラスチン、ペプチド、レシチン、プラセンタエキス、ヘマチン、ウシ脾臓抽出液、プラセンタエキスなどが挙げられる。
【0104】
アミノ酸類は、アミノ基をもつカルボン酸をアミノ酸であるが、プロリン、ヒドロキシプロリンのようなイミノ酸もその中に含める。例としてはグリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、アルギニン、水溶性コラーゲン、カゼインなどが挙げられる。
【0105】
ビタミン類は、たんぱく質、脂質、糖質、無機塩類のほかに微量で動植物の栄養を支配し、繁殖、代謝などの生理機能を円滑に行わせる為に触媒的に作用する有機化合物の一群を総称したものである。例としてはビタミンA、B1、B2、B5、B6、B12、C、D2、D3、E、K1、K2、K3、ビオチン、ニコチン酸、葉酸などが挙げられる。
【0106】
(殺菌・防腐剤)
紫外線吸収組成物における微生物汚染を防止し、製品の品質維持や安全性のために殺菌・防腐剤を用いることができる。殺菌剤は皮膚上で増殖する菌を死滅または減少させるために用いられる化粧品に配合することもできる。
殺菌・防腐剤の例としては、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロカルバン、2,4,4−トリクロロ−2−ヒドロキシフェノールなどが挙げられる。また、ふけ発生の一因と考えられる頭皮細菌類の抑制に用いられる殺菌・防腐剤として、トリクロロカルバニリド、ジンクピリチオン、ヒノキチオール、フェノールなどが挙げられる。
【0107】
(酸化防止剤)
化粧品には油脂・ロウ類、脂肪酸、エステル類、界面活性剤、香料、各種活性成分が含まれているが、これら原料は、空気中の酸素を吸収して徐々に自動酸化を起こして変質し、いわゆる酸敗の現象を呈する。酸敗は不快なにおい、変色の原因となり、製品の安定性を損なうのみならず、酸敗により生ずる過酸化物は代表的皮膚刺激性物質であり、人体に悪影響を及ぼす。添加することにより酸化を防ぐ、あるいは酸化の開始を遅らせる物質のことを酸化防止剤または抗酸化剤とよぶ。
【0108】
酸化防止剤の例としては、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびその誘導体、イミダゾール(例えば、ウロカニン酸)およびその誘導体、ペプチド例えばD,L−カルノシン、D−カルノシン、L−カルノシン、およびこれらの誘導体(例えば、アンセリン)、カロテノイド、カロテン(例えば、β−カロテン、リコペン)およびその誘導体、クロロゲン酸およびその誘導体、リポ酸およびその誘導体(例えば、ジヒドロリポ酸)、アウロチオグルコース、プロピルチオウラシル、およびその他のチオール(例えば、チオロドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、ならびにこれらのグリコシル、N−アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチルならびにラウリル、パルミトイル、オレイル、γ−リノレイル、コレステリル、およびグリセリルエステル)ならびにこれらの塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド、および塩)ならびに極少耐量(例えば、ピコモル〜マイクロモル/kg)のスルホキシミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシミン、ホモシステインスルホキシミン、ブチオニンスルホン、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−チオニンフルホキシミン、
【0109】
さらには(金属)キレート剤(例えば、α−ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α−ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTAおよびその誘導体、不飽和脂肪酸およびその誘導体(例えば、γ−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールならびにこれらの誘導体、ビタミンCおよびその誘導体(例えば、アスコルビルパルミテート、リン酸アスコルビルMg、酢酸アスコルビル)、トコフェロールおよび誘導体(例えば、酢酸ビタミンE、トコトリエノール)、ビタミンAおよび誘導体(ビタミンAパルミテート)ならびにベンゾインレジンのコニフェリルベンゾエート、ルチン酸およびその誘導体、α−グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアヤクレジン酸、ノルジヒドログアヤレチック酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えば、ZnO、ZnSO4)、セレニウムおよびその誘導体(例えば、セレノメチオニン)、スチルベンおよびその誘導体(例えば、スチルベンオキシド、トランス−スチルベンオキシド)などが挙げられる。
【0110】
また、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルエチル]イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス−[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]や、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイトや、ジラウリル チオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、
【0111】
ペンタエリスリトールテトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス−(β−ヘキシルチオプロピオネート)や、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)セバケート、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N’−ジ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−t−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合生成物、トリス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,1’−(1,2−エタンジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとテトラメチロールアセチレン二尿素との縮合生成物などを用いることができる。
【0112】
(金属イオン封鎖剤)
金属イオンは化粧品原料の酸化を促進し、変臭、変色の原因になったり、透明系の化粧品に濁りや沈殿を生じさせたりするなど、化粧品の品質劣化の原因となることがある。また、薬剤の作用を阻害したり、薬剤と化合物を作り発色したりすることがある。これらを防止する目的で金属イオン封鎖剤が用いられてもよい。
金属イオン封鎖剤の例としては、エデト酸塩、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸、酒石酸などが挙げられ、造塩能をもつ酸性基または、配位能をもつ原子団を含む。
【0113】
(香料油)
紫外線吸収組成物に香りを付与するための香料油としては、天然及び/又は合成芳香族物質の香料油混合物として挙げることができる。天然芳香族物質は、例えば、花からの抽出物(ユリ、ラベンダー、ローズ、ジャスミン、ネロール、イランイラン)、茎及び葉からの抽出物(ゼラニウム、パチョュリ、プチグレン)、果実からの抽出物(アニシード、コリアンダー、キャラウェイ、ビャクシン)、果実の皮からの抽出物(ベルガモット、レモン、オレンジ)、根からの抽出物(メース、アンゲリカ、セロリ、カルダモン、コスタス(costus)、アイリス(iris)、カルマス(calmus))、木からの抽出物(パインウッド、サンダルウッド、グアヤクウッド、シダーウッド、ローズウッド)、ハーブ及び草からの抽出物(タラゴン、レモングラス、セージ、タイム)、針葉及び枝からの抽出物(ツガ、マツ、スコットマツ、ヤママツ(mountain pine))、樹脂及びバルサムからの抽出物(ガルバヌム、エレミ、ベンゾイン、ミルラ、オリバナム、オポパナックス(opoponax))である。動物原材料の香料も用いることができ、例えば、ジャコウネコ及びビーバー由来の香料が挙げられる。
【0114】
香料油としては、合成香料を用いることができ、典型的な合成芳香族物質は、例えば、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコール又は炭化水素型の生成物である。エステル型の芳香族物質化合物は、例えば、酢酸ベンジル、フェノキシエチルイソブチレート、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、酢酸リナリル、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、エチルメチルフェニルグリシネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、スチルアリルプロピオネート及びサリチル酸ベンジルである。
エーテルとしては、例えば、ベンジルエチルエーテルであり;アルデヒドとしては、例えば、8〜18個の炭化水素原子を有する直鎖アルカノール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアール及びブーゲオナール(bourgeonal)が挙げられ;ケトンとしては、例えば、イオノン、イソメチルイオノン及びメチルセドリルケトンが挙げられ;アルコールとしては、例えば、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール及びテルピノールが挙げられ;炭化水素としては、主にテルペン及びバルサムが挙げられる。
【0115】
香料は、魅力的な香りを創造したり、また、付香の効果を持続させたりする目的で、通常は、複数種の芳香族物質の混合物を使用する。
アロマ成分として主に使用される比較的低揮発性のエーテル性油はまた、香料油としても好適であり、例えば、セージ油、カモミール油、クローブ油、メリッサ油、シナモン葉油、ライムブロッサム油、ジュニパーベリー油、ベチバー油、オリバナム油、ガルバヌム油、ラボラナム(labolanum)油及びラバンジン油である。ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアール、リラール(lyral)、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ブワアンバーフォルト(boisambrene forte)、アンブロキサン、インドール、ヘジオン、サンデライス(sandelice)、レモン油、タンジェリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコレート、シクロバータル(cyclovertal)、ラバンジン油、ムスカテール(muscatel)サージ油、ダマスコン、バーボンゼラニウム油、サリチル酸シクロヘキシル、ヴェルトフィックスクール(vertofix coeur)、イソ−E−スーパー、Fixolide NP、エバーニル(evernyl)、イラルダインガンマ(iraldein gamma)、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキシド、ロミラート(romillat)、イロチル(irotyl)及びフローラマット(floramat)などが挙げられる。
【0116】
(着色剤)
着色剤は、例えば、「Kosmetische Faerbemittel」、Farbstoffkommission der Deutschen Forschungsgemeinschaft、Verlag Chemie、Weinheim、1984、pp81〜106の刊行物中に記載されている。
【0117】
他の添加剤としては、消泡剤、例えば、シリコーン、構造化剤(structurant)、例えば、マレイン酸、可溶化剤、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン又はジエチレングリコール、乳白剤、例えば、ラテックス、スチレン/PVP又はスチレン/アクリルアミドコポリマー、錯化剤、例えば、EDTA、NTA、アラニンニ酢酸又はホスホン酸、噴射剤、例えば、プロパン/ブタン混合物、NO、ジメチルエーテル、CO、N又は空気、酸化染料前駆体としてのいわゆるカップリング剤及び顕色成分、還元剤、例えば、チオグリコール酸及びそれらの誘導体、チオール酢酸、システアミン、チオリンゴ酸又はメルカプトエタンスルホン酸、又は酸化剤、例えば、過酸化水素、カリウム臭素酸塩又はナトリウム臭素酸塩を、化粧品等に含有することが可能である。
【0118】
また、本発明の紫外線吸収組成物を皮膚化粧品に用いる場合には、有効成分として、肌荒れ防止剤、老化防止剤、美白剤、育毛剤などがさらに含まれていてもよい。
【0119】
(抗ふけ剤)
抗ふけ剤として、上記殺菌剤の項で挙げた、クリンバゾール(climbazole)、オクトピロックス(octopirox)及びジンクピリチオンなどを使用することができる。
(フィルム形成剤)
本発明に使用しうるフィルム形成剤としては、例えば、キトサン、微晶性キトサン、四級化キトサン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸、コラーゲン、ヒアルロン酸及びそれらの塩を高い比率で含有する四級セルロース誘導体のポリマー、及び同様の化合物が挙げられる。
【0120】
(屈水剤)
流動挙動を向上させるために、屈水剤を使用することも可能であり、例えば、少ない数の炭素原子を有するエトキシル化又は非エトキシル化モノ−アルコール、ジオール又はポリオール又はそれらのエーテル(例えば、エタノール、イソプロパノール、1,2−ジプロパンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び類似の製品)である。
この目的のために使用されるポリオールは、好ましくは、炭素数2〜15であり少なくとも2つのヒドロキシ基を有する化合物であることが好ましい。
ポリオールはまた、さらなる官能基、特にアミノ基を含有してもよく、及び/又は窒素で修飾されていてもよい。典型的な例は以下に挙げられる:グリセロール、アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、さらにまた、100〜1000ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコール;1.5〜10の固有縮合度を有する工業的なオリゴグリセロール混合物、例えば、40〜50重量%のジグリセロール含量を有する工業用ジグリセロール混合物;メチロール化合物、例えば、特に、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール;低級アルキル−グルコシド、特に、1〜8個の炭素原子をアルキル基中に有するもの、例えばメチル及びブチルグルコシド;5〜12個の炭素原子を有する糖アルコール、例えばソルビトール又はマンニトール;5〜12個の炭素原子を有する糖、例えばグルコース又はショ糖;アミノ糖、例えばグルカミン;ジアルコールアミン、例えば、ジエタノールアミン又は2−アミノ−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0121】
本発明の紫外線吸収組成物を化粧品や外用医薬品に用いる場合には、その用途に応じて、前記した化合物を適宜配合して使用することができる。以下に、典型的な剤形を挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
〔水性組成物〕
化粧品における化粧水のごとき水性組成物は、主成分としてイオン交換水、精製水などを用い、所望により、水溶性のアルコール類などを併用する低粘度の組成物であり、水相に、水溶性、水分散性の保湿剤や緩衝剤を添加し、アルコール相に保湿剤や香料などを添加したのち、水相をアルコール層とを混合することで得ることができる。
紫外線吸収性化合物は、アルコール層に添加することが好ましく、また、他の紫外線吸収性化合物として金属酸化物粒子などを用いる場合には、使用時に振ることで再分散させて用いることもできる。
【0122】
〔乳化組成物〕
乳化組成物は、比較的低粘度の乳液状(ローション状)組成物と高粘度のクリーム状組成物の形態をとることができる。乳化状態は、オイルインウォーター(O/W)型でも、ウォーターインオイル(W/O)型でもよい。
乳化組成物は、水及び保湿成分などを含む水相と油分や油溶性の有効成分を含む油相を予め調整し、通常は油相に含まれる界面活性剤の機能により、加温しつつ剪断力を付与することで得られる。
薬効成分や紫外線吸収剤は、通常、油相に配合される。
乳液状(ローション)組成物の場合には、油相の比率が3〜30質量%程度のものや10〜50質量%のものなどが挙げられ、クリーム状の場合には、30〜50質量%のものや50〜85質量%のものが挙げられる。
【0123】
〔ジェル状組成物〕
また、水相成分、油相成分のいずれかを主成分とするゲル状の組成物の態様ととることができる。水性のジェルは、水溶性高分子のゲル化能を利用して形成され、小量であれば、油分を含むこともできる。また、油相のみを油性ゲル化剤で硬化させたオイルゲル状の組成物、界面活性剤や液晶構造を利用して油分を多く含む乳化物をゲル化させて形成することもできる。
【0124】
〔固形状組成物〕
顔料などの粉体を油脂類やゲルなどをバインダーとして成形した固体状組成物もまた、本発明の紫外線吸収組成物の態様として用いることができる。この剤形では、顔料などの粉末80〜95質量%と油分5〜20質量%とを含む所謂パウダリータイプ、粉末35〜60質量%と油分40〜65質量%とを含む油性スティックタイプ、などの形態をとることできる。
【0125】
本発明の紫外線吸収組成物は、前記様々な剤形の態様をとることができる。また、各種の有効成分を含む医薬品、化粧品などに適用することで、それらの組成物が本来有する有効な作用に、さらに、紫外線防御性を付与することができる。
本発明の紫外線吸収組成物を皮膚や毛髪に適用することにより、皮膚や毛髪に有害な紫外線の影響を効果的に防ぐことができ、その用途は広い。
【0126】
<紫外線の遮断方法>
前記本発明の紫外線吸収組成物は、薄膜としたときも、高いUV−A領域での紫外線吸収性を示すために、紫外線の影響を抑制しようとする対称、すなわち、人体や各種部材に本発明の紫外線吸収組成物を適用することで、紫外線を効果的に遮断することができる。
紫外線の影響を抑制しようとする部材、或いは、人体などの対象物に、本発明の紫外線吸収組成物を適用することにより、効果的に紫外線を遮断することができる。なお、このとき、対象物に直接適用してもよく、透明基板に紫外線吸収組成物を塗布したものを適用してもよい。たとえば、樹脂基剤を用いた本発明の紫外線吸収組成物を製膜し、このシートで対象物を被覆することで、紫外線を効果的に遮断することができる。
【実施例】
【0127】
以下の実施例により、本発明の紫外線吸収材料をより詳細に説明する。
本発明に用いられる基剤は後述のものに限定されるものではない。
〔実施例1〕
ポリメタクリル酸メチル樹脂5gを有機溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=1:1の混合液)に溶解し、ここに紫外線吸収性化合物〔前記例示化合物(I−5)〕を0.096g〔紫外線吸収組成物に対する含有量:1.3×10−5モル/g〕添加し30分間攪拌させることで完溶させ紫外線吸収材料組成物を調製した。
ここで、紫外線吸収性化合物〔前記例示化合物(I−5)〕をジメチルスルホキシドに0.53×10−5モル/L溶解させた溶液の最大吸収波長を、日立ハイテクノロジーズ(株)製U−4100スペクトロフォトメーターを使用し測定したところ、375nmであった。
(物性評価)
得られた実施例1の紫外線吸収組成物を、5×7cmのガラス基板に、乾燥後の厚みが10μmになるように塗布し、送風乾燥機に入れ100℃ 90秒間乾燥させて、ガラス基板上に、紫外線吸収組成物からなる厚さ10μmの膜を形成し、以下の物性評価を行い、結果を下記表1に示した。
【0128】
〔実施例2〕
ポリメタクリル酸メチル樹脂5gを有機溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=1:1の混合液)に溶解し、ここに紫外線吸収性化合物〔前記例示化合物(I−6)〕を0.096g〔紫外線吸収組成物に対する含有量:1.3×10−5モル/g〕添加し30分間攪拌させることで完溶させ紫外線吸収材料組成物を調製した。
ここで、紫外線吸収性化合物〔前記例示化合物(I−6)〕をジメチルスルホキシドに0.53×10−5モル/L溶解させた溶液の最大吸収波長を、実施例1と同様にして測定したところ、375nmであった。
(物性評価)
得られた実施例1の紫外線吸収組成物を、5×7cmのガラス基板に、乾燥後の厚みが10μmになるように塗布し、送風乾燥機に入れ100℃ 90秒間乾燥させて、ガラス基板上に、紫外線吸収組成物からなる厚さ10μmの膜を形成し、以下の物性評価を行い、結果を下記表1に示した。
【0129】
〔実施例3〕
ポリメタクリル酸メチル樹脂5gを有機溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=1:1の混合液)に溶解し、ここに〔特開2008−81445号公報記載の例示化合物(I−2)〕を0.32g〔紫外線吸収組成物に対する含有量:1.5×10−4モル/g〕添加し30分間攪拌させることで完溶させ紫外線吸収組成物を調製した。
ここで、紫外線吸収性化合物〔特開2008−81445号公報記載の例示化合物(I−2)〕を酢酸エチルに1.5×10−5モル/L溶解させた溶液の最大吸収波長を、実施例1と同様にして測定したところ、369nmであった。
(物性評価)
得られた実施例1の紫外線吸収組成物を、5×7cmのガラス基板に、乾燥後の厚みが10μmになるように塗布し、送風乾燥機に入れ100℃ 90秒間乾燥させて、ガラス基板上に、紫外線吸収組成物からなる厚さ10μmの膜を形成し、以下の物性評価を行い、結果を下記表1に示した。
【0130】
〔比較例1〕
実施例2に記載の紫外線吸収組成物において用いた紫外線吸収性化合物〔前記例示化合物(I−6)〕に代えて、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾールを用いること以外は、実施例2と同様にして紫外線吸収組成物を得て同様に評価した。
ここで、紫外線吸収性化合物〔2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール〕をトルエンに溶解させた溶液の最大吸収波長を実施例1と同様にして測定したところ、341nmであった。
〔比較例2〕
実施例2に記載の紫外線吸収組成物において用いた紫外線吸収性化合物〔前記例示化合物(I−6)〕に代えて、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンを用いること以外は、実施例2と同様にして紫外線吸収組成物を得て同様に評価した。
ここで、紫外線吸収性化合物〔2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン〕をテトラヒドロフランに溶解させた溶液の最大吸収波長を実施例1と同様にして測定したところ、349nmであった。
【0131】
<光線透過率試験>
上記で得られた10μmの膜の光透過性を評価した。
吸光度は日立ハイテクノロジーズ(株)製U−4100スペクトロフォトメーターを使用し、390nm,420nm及び440nmでの吸収スペクトルの測定を行い、光線透過率を求めた。評価は下記の評価基準に基づいて行った。
(波長390nmにおける光線透過性)
○;390nmにおける光線透過率が5%以下
△;390nmにおける光線透過率が5%を超え、10%以下
×;390nmにおける光線透過率が10%を超える
【0132】
(波長420nm及び440nmにおける光線透過性)
○;440nmにおける透過率が80%以上、且つ、420nmにおける透過率が70%以上
×;440nmにおける透過率が80%未満、且つ、420nmにおける透過率が70%未満
【0133】
<溶解性試験>
溶解性は実施例、比較例における紫外線吸収組成物の調製時に、基剤に紫外線吸収性化合物を溶解させた際に、調製温度で溶解したかどうかを目視観察して、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
○;容易に溶解した
△;溶解したものの、時間を要した。
【0134】
【表1】

【0135】
表1より、実施例1〜3の紫外線吸収組成物は、UV−A領域での紫外線吸収性に優れ、且つ、可視光の透過性が良好であることがわかる。他方、比較例1及び2では、UV−A領域での紫外線吸収性が不十分であった。
ここで、比較例1および比較例2について、波長390nmにおける光線透過率が5%以下になるように紫外線吸収性化合物の量を0.096gから0.54gまで増加させて紫外線吸収組成物を調製し、同様にして厚さ10μmの膜を形成して評価を行ったところ、380nmにおける評価は「○」となったが、溶解性が更に低下し、420nmと440nmの透過率は大幅に低下して「×」となることが確認された。
【0136】
〔実施例4〕
サンスクリーンクリームの調製
下記表2に示す処方に従い、(I)相、(II)相を、それぞれ70〜80℃に加温し、均一に溶解する。その後、(I)相を(II)相中に添加し、80℃に保ちながらホモミキサーにより、5,000rpm、7分間攪拌する。さらに、パドル攪拌しながら冷却し、35〜30℃で攪拌を止め、放置することで、サンスクリーンクリームを得た。
なお、下記表2に記載のNIKKOLニコムルス41は日光ケミカルズ社製の乳化剤である。
【0137】
【表2】

【0138】
〔実施例5〕
サンスクリーンクリームの調製
下記表3に示す処方に従い、(I)相を予め80℃に加温しながらホモミキサーにより6,000rpm、10分間攪拌し、混合物を調製する。また、(II)相、(III)相はそれぞれ80℃に加温する。まず、加温した(II)相成分を(I)相に添加して攪拌し、均一に混合した後、そこに(III)相成分を攪拌しながら徐々に加え、乳化し、80℃を維持しながらホモミキサーにより5,000rpm、7分間攪拌する。その後、パドル攪拌しながら冷却し、35〜30℃で攪拌を止め、静置することでサンスクリーンクリームを得た。
【0139】
【表3】

【0140】
上記で得られた実施例4及び5の紫外線吸収組成物(サンスクリーンクリーム)を、前記実施例1における物性評価で用いたのと同様の透明の基板に塗布して10μmの膜を形成し、日立ハイテクノロジーズ(株)製U−4100スペクトロフォトメーターを使用し吸光度を測定し、波長390nmにおける光線透過率を求めた。その結果、実施例1〜3と同様、結果は光線透過率がいずれも5%以下であり、有効なUV−A領域における紫外線吸収効果を示した。
これらのサンスクリーンクリームを手にとって使用したところ、よく肌になじみ、容易に薄く伸ばすことができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長300〜600nmの範囲に極大吸収を有さない溶媒に溶解して、25℃における濃度が1.0×10−6モル/L〜1.0×10−3モル/Lとなるように調製した溶液における最大吸収波長が380nm以下である紫外線吸収性化合物を、1.0×10−7モル/g〜1.0×10−3モル/g含有し、且つ、厚さ10μmの膜としたときの該膜における波長390nmの光線透過率が5%以下である紫外線吸収組成物。
【請求項2】
厚さ10μmの膜としたときの該膜における波長440nmの光線透過率が80%以上である請求項1記載の紫外線吸収組成物。
【請求項3】
厚さ10μmの膜としたときの該膜における波長420nmの光線透過率が70%以上である請求項1または請求項2に記載の紫外線吸収組成物。
【請求項4】
前記紫外線吸収性化合物の含有量が、前記紫外線吸収組成物1g中、1×10−4g〜5×10−1gである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
【請求項5】
前記紫外線吸収性化合物の分子量が400〜4,000の範囲にある請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
【請求項6】
前記紫外線吸収性化合物が、分子内にメロシアニン骨格を有する化合物である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
【請求項7】
前記紫外線吸収性化合物が下記一般式(Ia)で表される化合物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
【化1】


一般式(Ia)中、R11、R12、R13は、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基または炭素原子で結合する複素環基を表し、L11〜L14は各々独立に単結合又は2価の基を表す。−X−は−O−、−S−、−N−、又は、−C(R14)−を表し、R14は水素原子又は置換基である。n11、n12は各々独立に0以上の整数である。但し、n11とn12が同時に1以上の場合は、[ ]内において鎖状構造を形成する各構造単位の配列順は任意である。n13は−X−が−O−又は−S−の場合には0を表し、−N−又は−C(R14)−の場合には1を表す。R11、R12、R13、R14、L11、L12、L13及びL14のうち2以上の置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
また、式中、R31及びR32は各々独立にσ値が0.20以上の置換基を表し、R33、R34及びR35は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は、炭素原子で結合する複素環基を表す。
【請求項8】
前記紫外線吸収性化合物が下記一般式(Ib)で表される化合物である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
【化2】


前記一般式(Ib)中、R11〜R13、L11〜L14、−X−、n11、n12、R33、R34及びR35は、前記一般式(Ia)におけるのと同義である。R36、R37は各々独立に脂肪族基、芳香族基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。
【請求項9】
油相成分及び水相成分を含有する乳化組成物である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
【請求項10】
前記厚さ10μmの膜が、塗布法により製膜される請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物を含有する化粧品。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物を含有する医薬製剤。
【請求項13】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の紫外線吸収組成物を用いる紫外線の遮断方法。

【公開番号】特開2010−111823(P2010−111823A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287490(P2008−287490)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】