説明

紫外線硬化型インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法

【課題】硬化性及び色相に優れた紫外線硬化型インクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】重合性化合物と、光重合開始剤と、蛍光増白剤と、を含む紫外線硬化型インクジェットインク組成物であって、前記重合性化合物の少なくとも1種が、式(A1)で表される化合物であり、前記光重合開始剤の少なくとも1種が、アシルホスフィンオキサイド系開始剤であり、且つ前記アシルホスフィンオキサイド系開始剤が前記紫外線硬化型インクジェットインク組成物の総量に対して5〜12質量%含み、前記蛍光増白剤として、式(B1)で表される化合物を前記紫外線硬化型インクジェットインク組成物の総量に対して0.1〜0.5質量%含む、紫外線硬化型インクジェットインク組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録方法、その中でもインクジェット記録方法はインク組成物の液滴をノズルから飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う記録方法である。このインクジェット記録方法は、高解像度且つ高品位な画像を高速で印刷できるという特徴を有しており、様々な技術分野で用いられるようになってきている。このインクジェット記録方法に使用される紫外線硬化型インク組成物に、光重合開始剤の開始反応を促進させる目的で増感剤が用いられる場合がある。
【0003】
従来、増感剤として最も使用されているのはチオキサントン系増感剤である。しかし、チオキサントン系増感剤を用いた場合、硬化時において着色が発生したり、初期の色相が劣ったりする。
【0004】
例えば、特許文献1には、少なくとも重合性化合物、光重合開始剤、重合促進剤、及び蛍光増白剤を含有し、光重合開始剤の吸収波長帯と蛍光増白剤の発光波長帯との間で重なり合う部分があることを特徴とするインク組成物が開示されている。このインク組成物は、良好な硬化性及び色相を両立できることを特徴としている。
【0005】
また、特許文献1に記載のインク組成物は、蛍光増白剤の吸収と光重合開始剤の吸収の重なりによる感度低下を避けるために、長波長に光吸収を持つ開始剤を使用して、蛍光増白剤の発光波長と重なりを持つことを特徴としている。
【0006】
特許文献2には、白色顔料、重合性化合物、重合開始剤、及び蛍光増白剤を含有し、且つ重合開始剤の吸収スペクトルと蛍光増白剤の発光スペクトルとが重なる波長帯で吸収を有する、インク組成物が開示されている。
【0007】
特許文献3には重合性化合物、重合開始剤、及び蛍光増白剤を含有するインク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−274025号公報
【特許文献2】特開2009−191118号公報
【特許文献3】特開2006−249155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献に記載のインク組成物は、硬化性についての問題、即ち重合性化合物の重合速度が依然不十分であるいう問題と、色相についての問題、即ちCIE Lab色空間のうちb*値が極めて高いという問題と、において改善の余地がある。
【0010】
そこで、良好な硬化性、即ち重合性化合物の重合速度が顕著に大きいことと、良好な色相、即ちb*値が顕著に低いことと、に優れた紫外線硬化型インクジェットインク組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、後述する一般式(A1)で表される重合性化合物と光重合開始剤とを組み合わせることで、硬化性の極めて優れたインク組成物が得られることを見出した。その上で、増感剤として蛍光増白剤を用いることにより、光重合開始剤及び既知の増感剤(チオキサントン類等)のインク組成中の添加量を低減できるか、又は、インク組成中に未添加とすることができる。そのため、光重合開始剤及び既知の増感剤自身の少なくともいずれかに由来する硬化膜の着色を低減でき、蛍光増白剤以外の増感剤を使用する場合に比して、当該インク組成物による硬化膜の色相(b*値の低減度)が一層良好になることも見出した。このようにして、本願発明者らは本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明の適用例は、下記のとおりである。
【0013】
[適用例1]重合性化合物と、光重合開始剤と、を含む紫外線硬化型インクジェットインク組成物であって、
前記重合性化合物が少なくとも、下記一般式(A1)
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3・・・(A1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される化合物を含み、
前記光重合開始剤が少なくとも、アシルホスフィンオキサイド系開始剤をインク組成物の総質量に対して5〜12質量%含み、
さらに、ナフタレンベンゾキサゾール誘導体を、インク組成物の総質量に対して0.1〜0.5質量%含む紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【0014】
[適用例2]前記ナフタレンベンゾキサゾール誘導体が、下記一般式(B1)で表される化合物を含む、適用例1に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【0015】
【化1】

式(B1)中、R1〜R8は水素あるいは炭素数1〜10からなる一価の有機残基を表し、R1〜R8はそれぞれ同じであっても、異なっていても良い。
【0016】
[適用例3]前記式(A1)で表される化合物を、インク組成物の総質量に対して10〜80質量%含む、適用例1又は適用例2に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【0017】
[適用例4]前記式(A1)で表される化合物が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、上記適用例のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【0018】
[適用例5]前記式(B1)で表される化合物が1,4−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレンである、適用例2に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【0019】
[適用例6]前記紫外線硬化型インクジェットインクがクリアインクである、上記適用例のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【0020】
[適用例7]前記紫外線硬化型インクジェットインクがカラーインクである、上記適用例のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【0021】
[適用例8]前記重合性化合物としてさらに、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有する上記適用例のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【0022】
[適用例9]前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを、インク組成物の総質量に対して10〜50質量%含有する、適用例8に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【0023】
[適用例10]上記適用例の何れか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物をヘッドから被記録媒体に吐出して、吐出したインク組成物に照射を行う、インクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書における「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルを意味する。
【0025】
[紫外線硬化型インクジェットインク組成物]
本発明の一実施形態は、紫外線硬化型インクジェットインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)に係る。具体的には、照射光源として350nm〜450nmの範囲にピーク波長を有する光を利用するインクジェットインク組成物に係る。
本実施形態のインク組成物は、重合性化合物と、光重合開始剤と、蛍光増白剤と、を含む。そして、前記重合性化合物の少なくとも1種が、式(A1)で表される化合物であり、前記光重合開始剤の少なくとも1種が、アシルホスフィンオキサイド系開始剤であり、且つ前記アシルホスフィンオキサイド系開始剤が前記紫外線硬化型インクジェットインク組成物の総量に対して5−12%含み、前記蛍光増白剤として、式(B1)で表される化合物を前記紫外線硬化型インクジェットインク組成物の総量に対して0.1−0.5%含むことを特徴とする。以下、インク組成物の各構成要素及び特徴を詳細に説明する。
【0026】
〔重合性化合物〕
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により光照射時に重合されて、印刷されたインクを硬化させることができる。
【0027】
(一般式(A1)で表される化合物)
本実施形態において必須の重合性化合物は、一般式(A1)で示される。以下一般式(A1)で示される化合物をモノマーAとも呼ぶ。
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3・・・(A1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される化合物であり、
【0028】
インク組成物がモノマーAを含有することにより、インクの硬化性を良好なものとすることができる。
【0029】
上記の一般式(A1)において、R2で表される2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する炭素数2〜20の置換されていてもよいアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0030】
上記の一般式(A1)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0031】
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基等が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0032】
上記の一般式(A1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0033】
上記したものの中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0034】
これらの中でも、低粘度で、引火点が高く、かつ、硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましく、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。
【0035】
モノマーAの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し制限なく使用可能であるが、好ましくは10〜80質量%であり、特に好ましくは10〜60%であり、さらに好ましくは10〜30%である。含有量が上記範囲内であると、特にインクの硬化性を良好にすることができる。
【0036】
上記一般式(A1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とアルキルビニルエーテル類とをエーテル交換する方法(製法I)が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが好ましい。
【0038】
〔その他の重合性化合物〕
本実施形態のインク組成物は必要に応じてその他の重合性化合物を用いてもよい。用いられる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線などの光の照射時に重合し、固化する化合物であれば、特に制限はないが、単官能基、2官能基、及び3官能基以上の多官能基を有する種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。
【0039】
上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩またはエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、及びそれらの誘導体が挙げられる。
上記で列挙したものの中でも(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
上記(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
上記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
これらの中でも、硬化時の塗膜の伸び性が高く、且つ低粘度であるため、インクジェット記録時の射出安定性が得られやすいという観点から、重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。さらに塗膜の硬さが増すという観点から、単官能(メタ)アクリレートと2官能(メタ)アクリレートとを併用することがより好ましい。
【0045】
また、本実施形態のインク組成物に含まれる具体的なその他の重合性化合物として、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、フェノキシエチルアクリレート(以下、「PEA」ともいう。)、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及びテトラヒドロフルフリルアクリレートからなる群より選択される1種以上が好ましく挙げられる。これらの中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレートのうち少なくともいずれかがより好ましい。これらの具体的な重合性化合物を使用することにより、インク組成物の溶解性を一層良好なものとすることができる。特に、4−ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0046】
さらに、上記単官能(メタ)アクリレートは、芳香環骨格、飽和脂環骨格、及び不飽和脂環骨格からなる群より選択される1種以上の骨格を有することが好ましい。重合性化合物が上記骨格を有する単官能(メタ)アクリレートであることにより、インク組成物の粘度を低下させ、且つ上記の光重合開始剤と蛍光増白剤とをインク組成物中に効果的に溶解させることができる。
【0047】
芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。また、飽和脂環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、不飽和脂環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
上記のその他の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、硬化膜の耐擦性を確保する点から、重合性化合物の含有量は、インク組成物の総量に対して、9質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、特に好ましくは65質量%以下である。特に、4−ヒドロキシブチルアクリレート及びあるいはフェノキシエチルアクリレートを含有する場合、これらを9質量%以上含有することが好ましく、20質量%以上がより好ましく、また、85質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以下である。
【0049】
上記のその他の重合性化合物の中でも、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートが特に好ましく、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートの中でも、下記一般式(C1)で示される、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートがさらに好ましい。単官能(メタ)アクリレートが芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含む場合、光重合開始剤と蛍光増白剤とをインク組成物中に効果的に溶解させる点や、インク組成物の硬化性の点で特に優れている。
CH2=CR1−COOR2−Ph ・・・(C1)
式(C1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数1~20の2価の有機残基であり、Phはフェニル基である。
【0050】
上記の一般式(C1)において、R2で表される2価の有機残基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキレン基、炭素数6〜20の置換されていてもよい2価の芳香族基、炭素数1〜20の置換されていてもよい2価のカルボニル基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数1〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数1〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0051】
上記の有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基等が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
上記の一般式(C1)で示される、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、があげられる。これらのうちでも、低粘度である点や、硬化性や、開始剤や蛍光増白剤の溶解性の点でフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0052】
上記の芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物の総量に対して、10〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートが上記の含有量である場合、低粘度である点や、硬化性や、開始剤や蛍光増白剤の溶解性を一層よくできる。
【0053】
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインク組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線などの光のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0054】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0055】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0056】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF・ジャパン社製)、DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co.,Ltd.)製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0057】
本実施形態のインク組成物は、光重合開始剤の中でも、フォトブリーチングという硬化膜の色相に有利な効果が得られ、インク組成物の硬化性も優れるため、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する。
【0058】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤として、特に限定されないが、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO)、及びIRGACURE 1870が挙げられる。これらの中でも、照射光源の波長に対する光応答性という観点で、IRGACURE 819及びDAROCUR TPOのうち少なくとも一方が好ましく、IRGACURE 819がより好ましい。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、1種類を用いても2種類以上を用いても良い。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量は、インク組成物の総量(100%)に対し、5〜12質量%であり、好ましくは7〜11質量%である。また、インク組成物がクリアインクである場合は、5〜10質量%が特に好ましい。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量が上記の範囲である場合、インク組成物の硬化性、塗膜の色相、インク組成物への開始剤の溶解性の点で優れる。
なお、光重合開始剤として上記の2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドを用いる場合、その含有量は、インク組成物の総量に対し、3.0質量%以上8.0質量%以下とすることが好ましい。含有量が上記範囲内の場合、感度低下の抑制と環境安全性の向上とを両立することができる。
【0059】
アシルホスフィン系光重合開始剤以外の光重合開始剤として、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤が含有されていてもよい。
【0060】
アシルホスフィン系光重合開始剤以外の光重合開始剤を用いる場合、その含有量はインク組成物の総量に対し、0.5質量%以上含有することが好ましく、1〜10質量%含有することがより好ましい。含有量が上記範囲内であると、硬化性とインクの貯蔵安定性とを両立させることができる。
【0061】
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
〔一般式B1で示される化合物〕
本実施形態のインク組成物に含まれる一般式B1で示される化合物は、一般に蛍光増白剤であり、増感剤でもある。蛍光増白剤は、紫外〜短波可視である300〜450nm付近の波長を有する光を吸収可能であり、且つ400〜500nm付近の波長を有する蛍光を発光可能な無色ないし弱く着色した化合物である。蛍光増白剤は、蛍光性白化剤(Fluorescent Whitening Agent)としても知られている。蛍光増白剤の物理的原理及び化学性の記述は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Sixth Edition,Electronic Release,Wiley−VCH 1998に示されている。
【0063】
蛍光増白剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、他の物質、例えばラジカル発生剤や酸発生剤などと、例えばエネルギー移動や電子移動といった相互作用をすることにより、ラジカルや酸等の有用基の発生を促すことができる。このような相互作用が生じ得る場合として、例えば、蛍光増白剤分子の三重項励起状態のエネルギー準位とラジカル発生剤や酸発生剤の三重項励起状態のエネルギー準位とが非常に近接しており、かつ、ラジカル発生剤や酸発生剤の三重項励起状態のエネルギー準位の方が僅かに低い場合が挙げられる。実際には、蛍光増白剤が350nm〜450nmの波長帯の照射光を捕集でき、かつ、蛍光増白剤分子の三重項励起状態のエネルギー準位がラジカル発生剤や酸発生剤の三重項状態のエネルギー準位と上記所定の関係を持つ必要がある。そのため、一重項励起状態及び三重項励起状態のエネルギー準位が互いに近接している必要がある。したがって、ラジカル発生剤や酸発生剤との相互作用の観点から蛍光増白剤を用いるとともに、照射波長に対するインク液としてのラジカルや酸の発生効率という観点から蛍光増白剤の吸収波長帯に対して光重合開始剤の吸収波長帯が重なることが挙げられる。この場合、本実施形態における蛍光増白剤は光重合開始剤の開裂可能な吸収波長帯と少なくとも一部重複する波長帯に吸収領域を有する。
【0064】
本実施形態において、増感剤として蛍光増白剤を用いることにより、蛍光増白剤以外の増感剤を使用する場合に比して、インク組成物の色相、即ちb*値の低減が一層顕著になる。
【0065】
蛍光増白剤として、一般に、ナフタレンベンゾキサゾール誘導体、チオフェンベンゾキサゾール誘導体、スチルベンベンゾキサゾール誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、スチルベン誘導体、ベンゼン及びビフェニルのスチリル誘導体、ビス(ベンザゾールー2−イル)誘導体、カルボスチリル、ナフタルイミド、ジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシドの誘導体、ピレン誘導体、及びピリドトリアゾールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上記のうち、インク組成物の色相(b*値の低減)をさらに一層優れたものとすることや、溶解性、低ブリード性などのために、蛍光増白剤はナフタレンベンゾオキサゾール誘導体であることが好ましい。特に、ナフタレンビスベンゾオキサゾール誘導体が好ましく、特に下記一般式(B1)で表される化合物が好ましい。
【0067】
【化2】

式(B1)中、R1〜R8は水素あるいは炭素数1〜10からなる一価の有機残基を表し、R1〜R8はそれぞれ同じであっても、異なっていても良い。
【0068】
上記の炭素数1〜10の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素数6〜10の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0069】
上記の有機残基が置換されている基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基等が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0070】
式(B1)で示されるナフタレンベンゾオキサゾール誘導体の市販品として、クラリアントジャパン社製のHOSTALUX KCB(1,4−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレン)等が挙げられる。
【0071】
上記蛍光増白剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、蛍光増白剤は、インク組成物の総量に対し0.1質量%〜0.5質量%含まれ、0.25〜0.5質量%含まれることが好ましい。含有量が上記範囲内であると、蛍光増白剤自身が及ぼし得る、硬化膜の色相への影響を軽減できる。また、インク組成物がクリアインクである場合は、0.1〜0.3質量%が特に好ましい。特に式(B1)で示される蛍光増白剤をインク組成物の総量に対し、0.1質量%〜0.5質量%含有することが好ましい。
【0072】
また、本実施形態のインク組成物は、蛍光増白剤と併用して、蛍光増白剤以外の増感剤を含んでもよい。そのような蛍光増白剤以外の増感剤として、特に限定されないが、例えばチオキサントン系増感剤が挙げられる。チオキサントン系増感剤の市販品としては、例えば、Speed cure DETX、Speed cure ITX(以上、LAMBSON社製)等が挙げられる。
【0073】
〔色材〕
本実施形態のインク組成物は、カラーインク組成物として用いられる場合、色材をさらに含んでもよい。上記色材は、顔料及び染料から選択される。また、クリアインク組成物として用いられる場合も少量の色材をさらに含んでもよい。
【0074】
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0075】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック、及びチタンブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0076】
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0077】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、顔料の含有量は、インク組成物の総量に対して、2〜25質量%の範囲が好ましい。
【0078】
(染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0079】
〔分散剤〕
本実施形態のインク組成物には、顔料分散性を高める観点から、分散剤を含有させてもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂等の一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、ビッグケミー(BYKChemie)社製のBYKシリーズ、味の素ファインテクノ社(Ajinomoto Fine-Techno Co.,Inc.)製のアジスパーシリーズ、ノベオン社(Noveon Inc.)製のソルスパーズシリーズ、及び楠本化成社(Kusumoto Chemicals Co. Ltd.)製のディスパロンシリーズ等が挙げられる。
【0080】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−377、BYK−378、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)製)を挙げることができる。
【0081】
〔その他添加剤〕
その他添加剤として、特に限定されないが、例えば、従来公知の湿潤剤(保湿剤)、浸透(促進)剤、有機溶剤、防黴剤・防腐剤・防錆剤、酸化防止剤、増粘剤、糖類、pH調整剤、(定着)樹脂、ポリアルキレングリコール、及び表面張力調整剤を適宜用いてもよい。
【0082】
このように、本実施形態によれば、蛍光増白剤の効果により、硬化性に優れ、塗膜の色相が優れた紫外線硬化型インクジェットインク組成物を提供することができる。
【0083】
〔クリアインク〕
本発明のインク組成物はクリアインクとして用いことも可能である。クリアインクとは、記録媒体に着色するために用いるインクではなく、記録物の光沢感の調整や、保護膜としてや、カラーインクの発色性や濡れ広がり性などの画質向上などのために用いるインクであって、一般には色材を含有しないか含有しても少量(0.1%以下)のインクである。クリアインクとして用いる場合、塗膜の色相の点で特に有用である。
【0084】
[被記録媒体]
上記実施形態に係るインク組成物は、後述のインクジェット記録方法を実施することにより、被記録媒体上に画像を形成するために用いられ得る。
被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。なお、非吸収性の被記録媒体を使用した場合は、紫外線を照射してインクを硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
【0085】
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、電子写真用紙などの普通紙、及びインクジェット用紙、並びに一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、及びキャスト紙が挙げられる。ここで、上記のインクジェット用紙は、詳細には、シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙ということもできる。
【0086】
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルムやプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレートが挙げられる。
【0087】
[インクジェット記録方法]
上記実施形態に係るインク組成物は、インクジェット記録用として使用されることが好ましい。即ち、本発明の一実施形態は、インクジェット記録方法に係る。当該インクジェット記録方法は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に光を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜が形成される。
【0088】
〔吐出工程〕
上記吐出工程においては、従来公知のインクジェット記録装置を用いることができる。インク組成物の吐出は、インク組成物の粘度が常温(20〜25℃程度)において所定値になるようなインク組成物とするか、インク組成物を所定温度に加熱することによってインクの粘度を所定値となる様にして吐出を行うのが好ましい。上記所定値は、好ましくは30mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下である。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
【0089】
上記実施形態に係る紫外線硬化型インク組成物は、通常のインクジェット記録用インクで使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。かかるインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。従って、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
【0090】
〔硬化工程〕
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出されたインク組成物が、光を照射することによって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が光の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。
【0091】
上記の光としては、紫外線(UV)が挙げられる。光源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED)及びLD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。
【0092】
UV−LED及びUV−LDを含めて紫外線発光ダイオードとする。紫外線発光ダイオードを光源として用いる場合、その発光ピーク波長は単波長でも複数の波長でもよい。発光ピーク波長の波長域は限定されないが、特に、発光ピーク波長を360〜420nmの波長域に有する紫外線発光ダイオードを用いることが光源の低コストの点で好ましい。本発明の硬化工程は、特に、発光ピーク波長を360〜420nmの波長域に有する紫外線発光ダイオードを用いた工程とすることができ、本実施形態のインク組成物は、このような紫外線発光ダイオードを用いた硬化工程に用いた場合でも優れた硬化性を得ることができるインク組成物である。
また、LEDを光源として用いた場合の、照射エネルギーは、400mJ/cm2未満とすることが好ましく、300mJ/cm2未満とすることがより好ましく、200mJ/cm2未満とすることがさらに好ましい。また、照射エネルギーは100mJ/cm2以上とすることができる。本実施形態のインク組成物は上記の照射エネルギーによる硬化工程に用いた場合でも優れた硬化性を得ることができるインク組成物である。
さらに、LEDを光源として用いた場合の、照射強度は、800〜2000mW/cm2とすることが好ましい。本実施形態のインク組成物は上記の照射強度による硬化工程に用いた場合でも優れた硬化性を得ることができるインク組成物である。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施形態を例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの例のみに限定されるものではない。
インク組成物として、クリアインク(以下、「CL」ともいう。)を作製した。以下、CLの作製を詳細に説明する。
【0094】
〔インク組成物の作製〕
表1〜6に記載の種類及び質量で記載した使用量の、光重合性化合物、光重合開始剤、蛍光増白剤、重合禁止剤及び界面活性剤などを調合後、スターラーを用いて一晩、混合攪拌し、インクジェット記録用の光硬化型インク(紫外線硬化型インク)を作製した。なお、表中の空欄部分は無添加を意味する。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
【表6】

【0101】
[材料]
ここで、各表で使用した各成分は、以下の通りである。
・フェノキシエチルアクリレート(PEA):ビスコートD192(大阪有機化学工業社製)
・4−ヒドロキシブチルアクリレート:4−HBA(大阪有機化学工業社製)
・2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート:VEEA−AI(日本触媒社製)
・ジプロピレングリコールジアクリレート:SR508(サートマー社製)
・トリプロピレングリコールジアクリレート:SR306H(サートマー社製)
・2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート:DA−141(ナガセケムテック社製)
・ピグメントブルー15:4(FASTOGEN BLUE GLVO、DIC社製、表中ではCyanと記載)
・ピグメントレッド122:CROMOPHTAL PinkPT、BASF社製、表中ではMagentaと記載
・ピグメントホワイト06:二酸化チタン、御国色素社製、表中ではWhiteと記載
・Solsperse 36000:顔料分散剤、ルーブリゾール社製、表中では36000と記載)
・アシルホスフィン系光重合開始剤:IRGACURE 819(BASF・ジャパン社製)
・アシルホスフィン系光重合開始剤:Speedcure TPO(BASF・ジャパン社製)
・界面活性剤:BYK−3500(ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan K.K)製)
・重合禁止剤:ハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)(関東化学社(KANTO CHEMICAL CO.,INC)製)
・蛍光増白剤:HOSTALUX KCB(クラリアントジャパン社製)
・蛍光増白剤:HOSTALUX KSB(クラリアントジャパン社製)
・蛍光増白剤:HOSTALUX KS(クラリアントジャパン社製)
・蛍光増白剤:HOSTALUX KS−N(クラリアントジャパン社製)
・蛍光増白剤:HAKKOL P(昭和化学工業社製)
・KAYALIGHT OS(日本化薬社製)
・KAYALIGHT OSN(日本化薬社製)
上記の蛍光像白剤のうち、HOSTALUX KCBが前述の式(B1)に該当する。
【0102】
〔記録物の作製〕
サブストレート#125−E20(東レ社製)に、インクジェットプリンターPX−G5000を改造したインクジェットプリンターを用いてインク組成物の塗布を行なった。膜厚10μmとなるように塗布した。記録解像度は720×720dpiとし、記録解像度で規定される記録単位領域である画素の記録領域における各画素にインクの塗布を行なった。その後、紫外線照射装置Firefly(Phoseon社製)を用いて発光ピーク波長395nm、照度1000mW/cm2の紫外線を、CLが硬化するまで照射して硬化物を得た。
ここで、硬化とはジョンソン綿棒(ジョンソンエンドジョンソン社製)で50gの荷重を加えて塗膜表面を擦り、塗膜表面に擦り傷が付かない状態のことを言う。
また、照度の値は、紫外線照度計UM−10、受光部UM−400(コニカミノルタ・センシング社製)を用いて測定した値である。
【0103】
〔評価の項目及び基準〕
(溶解性評価)
各表に示す材料を各表に示す組成比で、スターラーで1日間混合攪拌した。その後、未溶解物の有無を目視にて評価した。結果を下記表に示す。
なお、評価基準は以下のとおりである。
A:未溶解物なし
B:未溶解物あり
【0104】
(硬化性評価)
(記録物の作製)で、硬化物を得るために必要な照射エネルギーを求めた。ここで、照射エネルギー[mJ/cm2]は、照度[mW/cm2]と硬化に必要な時間[t]の積より求めた。結果を下記表に示す。
なお、評価基準は、以下のとおりである。
AA:硬化に必要な照射エネルギーが200mJ/cm2未満
A:硬化に必要な照射エネルギーが200mJ/cm2以上300mJ/cm2未満
B:硬化に必要な照射エネルギーが300mJ/cm2以上400mJ/cm2未満
C:硬化に必要な照射エネルギーが400mJ/cm2以上
【0105】
(ブリードアウト評価)
(記録物の作製)より得られた記録物を、60℃に保持された恒温槽PL−4KP(エスペック社製)に1週間放置した。その後、塗膜表面をレーザーマイクロスコープ VK−9710(キーエンス社(Keyence Corporation)製)を用いて観察した。結果を下記表に示す。
なお、評価基準は、以下のとおりである。
A:結晶状の異物なし
B:結晶状の異物あり
【0106】
(CL塗膜の色相評価)
(記録物の作製)より得られた記録物のL*、a*、b*を、Spectrolino(GretagMacbeth社製)を用いて測色した。評価基準は以下の通りである。結果を下記表に示す。なお、カラーインク組成物については色相評価は行わなかった。
AA:b*が1以下
A:b*が2以下
B:b*が3以下
C:b*が4以上
【0107】
(吐出性)
上記のインクジェットプリンターを用いてインク組成物の吐出を行った。吐出をPETフィルム記録媒体に対して48時間連続して行い、このときの、ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛散の発生を目視により観察した。評価基準は下記の通りである。
A:ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛散の発生が50回未満であった。
B:ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛散の発生が50回以上100回未満であった。
C:ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛散の発生が100回以上であった。
【0108】
【表7】

【0109】
【表8】

【0110】
【表9】

【0111】
【表10】

【0112】
【表11】

【0113】
【表12】

【0114】
上記の結果より、重合性化合物(式A1で表される化合物)、インク組成物の総質量に対し5〜12質量%の含有量のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びインク組成物の総質量に対し0.1〜0.5質量%の含有量の蛍光増白剤(式B1で表される化合物)を含む実施例のインク組成物が、良好な溶解性を示し、硬化性に優れ、硬化膜の透明性に優れ、さらに、吐出安定性にも優れ、蛍光増白剤の硬化膜へのブリードアウトが抑制できることが明らかとなった。これに対して比較例のインク組成物は全ての評価項目を満たすことはできなかった。なお、溶解性評価がBのものについては硬化させての評価は行なわなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、光重合開始剤と、を含む紫外線硬化型インクジェットインク組成物であって、
前記重合性化合物が少なくとも、下記一般式(A1)
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3・・・(A1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される化合物を含み、
前記光重合開始剤が少なくとも、アシルホスフィンオキサイド系開始剤をインク組成物の総質量に対して5〜12質量%含み、
さらに、ナフタレンベンゾキサゾール誘導体を、インク組成物の総質量に対して0.1〜0.5質量%含む、紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記ナフタレンベンゾキサゾール誘導体が、下記一般式(B1)で表される化合物を含む、請求項1に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【化1】

式(B1)中、R1〜R8は水素あるいは炭素数1〜10からなる一価の有機残基を表し、R1〜R8はそれぞれ同じであっても、異なっていても良い。
【請求項3】
前記式(A1)で表される化合物を、インク組成物の総質量に対して10〜80質量%含む、請求項1又は請求項2に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記式(A1)で表される化合物が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記式(B1)で表される化合物が1,4−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ナフタレンである、請求項2に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記紫外線硬化型インクジェットインクがクリアインクである、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記紫外線硬化型インクジェットインクがカラーインクである、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項8】
前記重合性化合物としてさらに、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有する請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項9】
前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを、インク組成物の総質量に対して10〜50質量%含有する、請求項8に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物をヘッドから被記録媒体に吐出して、吐出したインク組成物に照射を行う、インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−207199(P2012−207199A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244207(P2011−244207)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】