説明

紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物及びその塗膜

【課題】液経時安定性が良好であり、高感度で、且つ、表面硬化性、付着性、耐食性、耐候性、耐薬品性が良好な紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物を提供すること。
【解決手段】(A) 以下の(a)〜(c)成分を用いて共重合することにより得られる一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体 50〜80重量部、
(a)置換基として3級アミノアルキル基を有する共重合性ビニル系単量体 4〜15重量部
(b)(a)以外の共重合性ビニル系単量体 85〜96重量部
(c)付加開裂型連鎖移動剤 共重合性ビニル系単量体(a)と(b)の合計100重量部に対し、0.05〜20重量部
(B) 一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物 20〜50重量部、
(C) アルコール系溶剤を3%含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g未満、且つ、200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000L/mol・cm以上である光重合開始剤 (A)と(B)の合計100重量部に対して、0.1〜8重量部
を含有することを特徴とする紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液経時安定性が良好で、高感度であり、熱に弱いメッキ基材に対し、良好な表面硬化性、付着性、耐食性、耐候性、耐薬品性を付与する紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物、及び、それを用いて得られる塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クロムメッキは、6価クロムの規制により、3価クロムによるクロムメッキが検討されている。しかし、3価クロムにより作製したクロムメッキの耐食性は、6価クロムにより作製したものより劣るため、塗装による耐食性の改善が求められており、耐食性、及び、塗装効率が良好である電着塗装への要望が高まっている。
しかし、一般的なメッキ上の電着塗料は熱硬化型であるため、熱変形に弱いプラスチックメッキや熱変色しやすい銀メッキ等の上には使用できなかった。
そこで、その対策として熱硬化型ではなく紫外線硬化型電着塗料が考えられ、その提案は古くからなされてきている(特許文献1〜6)。
【0003】
水溶性又は水分散性の重合性不飽和樹脂を含む成分と非水溶性光重合開始剤を主成分としてからなるアニオン電着性光硬化性組成物が提案されている(特許文献1)。これらの組成物は、光硬化性組成物を複雑な形状の被塗物に均一に塗布する効果はあるが、アニオン型であるので電着時に被塗物の溶出が起こり、メッキ素材の変色を起こすため、基材が限定される問題があった。
カチオン型としては、水溶性又は水分散性樹脂のバインダーの一部にエポキシ化ポリブタジエンを使用した紫外線硬化型カチオン電着性組成物が提案されている(特許文献2)。これらの組成物では、塗膜の黄変が起こるため意匠性が要求される用途に使用はできない。
【0004】
紫外線硬化電着塗料として、電着フォトレジスト、例えば、カチオン性の水溶性又は水分散性の(メタ)アクリル樹脂、多官能(メタ)アクリル樹脂、光重合開始剤等からなる組成物が提案されている(例えば特許文献3)。これらの電着フォトレジストは、エッチング、めっきマスク、プリント配線板の微細加工用途に使用されており、最終的な塗膜としては残存しない。そのため組成物をメッキ素材上に適用しようとした場合、紫外線照射時の硬化塗膜性能として基材への密着性や耐候性に劣り、また、経時での塗膜黄変、剥離が発生するため耐食性の要求されるメッキ素材上には使用できない。
【0005】
メッキ素材用にカチオン電着性を有する平均分子量2000〜30000の樹脂と分子中に3個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレートを使用する方法(特許文献4)が開示されている。しかしながら、これらの組成物では、所定の性能を得るのに非常に多くの光照射量が必要であり、そのためメッキ基材が紫外線硬化ランプ光源から発せられる赤外光を吸収し、ABS樹脂のような耐熱温度の低い基材では熱変形を起こすという問題があった。
【0006】
上記組成物で耐熱性の低いメッキ基材を熱変形させないためには、高感度化(光照射量を下げる)が必要であるが、光重合開始剤として、アルコール系溶剤が存在すると水層に移行しやすいものを使用しているため、光重合開始剤の量を必要以上に増やさないといけなく、光重合開始剤を増やすと基材との密着性低下や、塗膜中に残存して塗膜の経時劣化を促進する原因となるため問題があった。
また、電着塗料は、通常のスプレー塗料のごとく使い切りではなく、使用した塗料固形分を補給して使用するために経時安定性が特に重要であるが、これらの組成物では硬化剤
の加水分解が起こるため経時安定性が悪く、電着塗料液を定期的に全量更新することが必要であった。
【0007】
水層への光重合開始剤の移行性を改良する方法として、水酸基を有する光重合開始剤、水酸基を有するメタアクリロイルエステル、及び、アルカノールアミンとトリイソシアネートの反応物からなる、水分散性光重合開始剤を使用する方法(特許文献5)も考えられるが、水分散性光重合開始剤自体がカチオン電着性を有するので、基体樹脂との電着析出性に差異が生じるため、安定した塗膜性能が得がたく、水分散性光重合開始剤の合成も煩雑である。
【0008】
また感度を上げる方法として、側鎖に不飽和結合を導入する方法が提案されている(特許文献6)。この方法では、一分子中に不飽和結合と水酸基を有する化合物とジイソシアネートの反応から合成された一分子中に不飽和基とイソシアネート基を有する化合物に基体樹脂の水酸基を反応させるが、反応工程が複雑であり、また、イソシアネートエチルアクリレートのごとき一分子中に不飽和基とイソシアネート基を有する化合物を使用しても良いが、製造コストが上昇し、電着塗料として使用する場合は、側鎖の不飽和基が硬化剤と反応して凝集物を生じ、塗料の経時安定性が良好でなかった。
以上のようにプラスチックメッキ素材上の紫外線硬化型カチオン電着塗料として、液経時安定性が良好であり、且つ、高感度で十分な塗膜性能を満たすものはこれまで得られていなかった。
【0009】
【特許文献1】特開昭52−21526号公報
【特許文献2】特開昭60−76572号公報
【特許文献3】特開2003−330188号公報
【特許文献4】特許3192197号公報
【特許文献5】特開2007−138134号公報
【特許文献6】特開2004−10779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記したような従来技術における問題を解決し、液経時安定性が良好であり、高感度で、且つ、表面硬化性、付着性、耐食性、耐候性、耐薬品性が良好な紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願発明者らは、特定の水溶性又は水分散性ビニル系共重合体、一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物、さらに、特定の光重合開始剤を含有することを特徴とする紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物を用いて、電着塗装を行なうことで克服できることを見出し、本願発明にいたった。
すなわち本発明は、
(A) 以下の(a)〜(c)成分を用いて共重合することにより得られる、一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体 50〜80重量部、
(a)置換基として3級アミノアルキル基を有する共重合性ビニル系単量体 4〜15重量部
(b)(a)以外の共重合性ビニル系単量体 85〜96重量部
(c)付加開裂型連鎖移動剤 共重合性ビニル系単量体(a)と(b)の合計100重量部に対し、0.05〜20重量部
(B) 一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物 20〜50重量部、
(C) アルコール系溶剤を3%含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g未満、且つ、200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000
L/mol・cm以上である光重合開始剤 (A)と(B)の合計100重量部に対して、0.1〜8重量部
を含有することを特徴とする紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物、を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上説明したように構成されているから、本発明の紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物を使用することで照射光量が低くなるためプラスチックメッキ基材の変形がなく、経時で安定した塗膜性能が得られ、また、当該電着塗料用組成物を用いて形成された電着塗膜は、良好な表面硬化性、付着性、耐食性、耐候性、耐薬品性を有しており、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の構成と作用を説明する。本発明においては、一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体(A)、一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物(B)、アルコール系溶剤を3%含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g未満、且つ、200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000L/mol・cm以上である光重合開始剤(C)の各成分は、紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物を得るための必須構成成分である。
【0014】
(A)成分の水溶性又は水分散性のビニル系共重合体を構成する、置換基として3級アミノアルキル基を有する共重合性ビニル系単量体(a)としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリル系カチオン電着塗料に一般的に使用されるものを用いられるがこれらに限定されない。なかでもジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートを用いるのが望ましい。
【0015】
また本発明において置換基としてアミノアルキル基を有する共重合性ビニル系単量体は、これまでのアクリルカチオン電着における水分散性や電気泳動性の効果だけでなく、置換基のアミノアルキル基に紫外線硬化時の酸素による硬化障害の原因となるパーオキシラジカルが連鎖移動することで、パーオキシラジカルを失活させ、且つ、重合開始する効果があり、塗膜表面の硬化性を向上させる。
【0016】
(A)成分の一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体を構成する、その他のビニル系単量体(b)としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ノルマルブチルアクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、ノルマルヘキシルアクリレート、ノルマルヘキシルメタクリレート、ノルマルヘプチルアクリレート、ノルマルヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノルマルラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等の炭素数約20までのアルキル基を有する同様な共重合性ビニルエステルやシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートなどの側鎖に脂環式炭化水素基を有する共重合性ビニルエステル系単量体、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアク
リレート等の水酸基含有単量体、及び、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族基を有するビニル系単量体が使用できる。さらにアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−イソブトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類やアクリロニトリル、酢酸ビニル等を使用することも出来る。
【0017】
(A)成分の一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体を構成する付加開裂型連鎖移動剤(c)は、開始剤により発生した開始ラジカルや成長ラジカルが付加開裂型連鎖移動剤に付加反応することでω末端が開裂し、新たに、ラジカルを生成して、その生成ラジカルが重合開始するタイプの連鎖移動剤であり、その開裂の際にポリマー末端に不飽和結合を形成することで、マクロモノマーの合成に利用される。
【0018】
本発明における付加開裂型連鎖移動剤の効果としては、水溶性、または、水分散性ビニル系共重合体の一部の主鎖末端に不飽和結合を導入できる。そのため一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物との相溶性がきわめて優れ、一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物をコアとしたコアシェル型エマルジョンを形成するので、一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物の加水分解が抑制されるため液安定性が良好である。また紫外線硬化時には、マクロモノマーとして、架橋ネットワークに組み込まれることで、硬化収縮を低減して、メッキ基材との密着性を向上させる効果もある。
具体的には、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(αメチルスチレンダイマー)、α−ブロモメチルアクリル酸メチル、α−ベンジルオキシメチルアクリル酸エチル、α−ベンジルオキシメチルスチレン等が上げられるが、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンが好ましい。
【0019】
(A)成分の一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体を重合する際に使用される溶剤は、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブタノール等のアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル等のセロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類が望ましい。
(A)成分の一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体を重合する際に使用される重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等の過酸化物等が使用できる。
【0020】
さらに(B)成分の一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオール誘導体の多官能(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールトリアリレート、ペンタエリスリトールテトラアリレート、トリメチロールプロパントリアリレート等の多官能アリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類、市販品としてはアロニックスM−7100、M−8030、M−8060(いずれも東亞合成(株)製)、ウレタンアクリレート、デンドリティックアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が用いることが出来るがこれらに限定されない。また、上記の一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物は、1種単独又は2種以上を組み合
わせて使用することができる。
本発明における一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体(A)のアルキルアミノ基を中和するのに用いることのできる酸としては、ギ酸、酢酸、乳酸等が挙げられる。酸は、(A)成分中の3級アルキルアミノ基に対して、モル比が0.3〜0.9となるように添加すればよい。
【0021】
次に、(C)成分のアルコール系溶剤を3%含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g未満、且つ、200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000L/mol・cm以上である光重合開始剤について詳細を示す。
通常の塗布型水系紫外線硬化塗膜においては特に問題とはならないが、紫外線硬化型電着塗料では、光重合開始剤の塗膜中への共進性が非常に重要な要件である。これまで、疎水性や非水溶性の光重合開始剤を使用すれば電着塗料に使用できると特許等の文献に多数示されているが、今回本願発明者らは、実際のところアルコール系溶剤を使用している場合、水に溶けない光重合開始剤もアルコール系溶剤を介し、水中に溶け出していることを見出した。アルコール系溶剤(イソプロピルアルコール1g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2g)に光重合開始剤を溶かし、脱イオン水で総量を100gにしたときに、液が完全に透明な場合を溶解していると判断した。その主な結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
イソプロピルアルコールやプロピレングリコールモノメチルエーテルは、水溶性又は水分散性のビニル系共重合体を合成する際に一般的に使用されるが、水に容易に溶解するた
めに、水溶性または水分散性のビニル系共重合体を中和し、乳化転相した後に、樹脂中に存在するものも水層に移行する傾向にある。
その際に、アルコール系溶剤を3%含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g以上の光重合開始剤は、例えば、電着塗料が加熱残分10%に対し、1%光重合開始剤を使用している場合、塗膜中に存在する光重合開始剤の20%以上が水層に移行する可能性があることを示している。
【0024】
その結果、水層に移行する量が多くなり、電着時に塗料樹脂とともに析出する光重合開始剤の量が低下することとなり、さらに、塗膜表面のムラをなくす目的で電着後に析出塗膜表面の不安定層を除去する水洗工程においても、塗膜表面に存在する光重合開始剤が水洗水中に溶解するために塗膜の硬化性がさらに低くなる。
しかしながら、アルコール系溶剤を3%含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g以上の光重合開始剤を使用しても良好な表面硬化性が出ない場合がある。
そこで、さらに鋭意研究した結果、理論的な機構は解明していないが、分光光度計にて測定した200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000L/mol・cm以上である光重合開始剤(C)を使用することで良好な表面硬化性が得られることを見出した。
【0025】
本発明に使用できるアルコール系溶剤を3%含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g未満、且つ、200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000L/mol・cm以上である光重合開始剤(C)として、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、2−(4−メチル)ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノンなどのα−アミノケトン類、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、オリゴ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン(商品名:EsacureKIP150、EsacureONE等Lamberti社製)等の分子量300以上のα−ヒドロキシケトン類、2,4−ジエチルチオキサントン、高分子チオキサントン(商品名:GENOPOL TX、RAHN社製)等のチオキサントン類、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルフォニル]プロパン−1−オン等のケトスルフォン類が使用できる。
【0026】
なかでも、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、2−(4−メチル)ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノンなどのα−アミノケトン類、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、オリゴ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン(商品名:EsacureKIP150、EsacureONE等Lamberti社製)等の分子量300以上のα−ヒドロキシケトン類、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルフォニル]プロパン−1−オン等のケトスルフォン類が好ましい。
上記の光重合開始剤においては、1種、または、2種以上組み合わせて使用することができる。また、黄変しない程度にアミン等の光増感剤を併用することもできる。
【0027】
本発明における一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性、または、水分散性ビニル系共重合体(A)により得られた電着塗膜は、プラスチックメッキ基材への優れた密着性を
有し、置換基としてアミノアルキル基を有する共重合性ビニル系単量体(a)4〜15重量部、好ましくは6〜12重量部、(a)以外の共重合性ビニル系単量体(b)が85〜96重量部、好ましくは88〜94重量部、共重合性ビニル系単量体(a)と(b)の合計100重量部に対し、付加開裂型連鎖移動剤(c)0.05〜20重量部、好ましくは0.5重量部〜5重量部を重合し作製した一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性、または、水分散性ビニル系共重合体により得られた電着樹脂組成物は、水分散性が特に良好であり、それにより得られた電着塗膜は、塗膜性能に優れている。
【0028】
本発明の一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体(A)の構成である置換基としてアミノアルキル基を有する共重合性ビニル系単量体(a)が4重量部未満である電着樹脂組成物は液安定性が悪く、15重量部を超えると得られた塗膜の耐水性、耐薬品性が悪く、また、増感作用が大きくなるため黄変、基材との密着性が悪くなる。
共重合性ビニル系単量体(a)と(b)の合計100重量部に対し、付加開裂型連鎖移動剤(c)が0.05重量部未満であると液安定性が低下し、また硬化収縮が大きくなるので基材との密着性が悪くなり、20重量部を超えると未反応の付加開裂型連鎖移動剤が残存して硬化不足を生じる。
【0029】
本発明の一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体(A)50〜80重量部、好ましくは、60〜75重量部、一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物(B)20〜50重量部、好ましくは、25〜40重量部で用いる。水溶性又は水分散性ビニル系共重合体(A)の割合が50重量部未満では、十分な水分散性が得られず液安定性が悪く沈降を生じやすくなり、80重量部を超えると十分な塗膜性能が得られない。
一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物(B)の割合が、20重量部未満では、十分な塗膜性能が得られず(耐薬品性、塗膜硬度)、50重量部以上では、十分な水分散性が得られず、また、製造コストも上昇する。
【0030】
さらに(A)と(B)の合計100重量部に対して、アルコール系溶剤を3%含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g未満、且つ、200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000L/mol・cm以上である光重合開始剤(C)は、0.1〜8重量部、好ましくは、0.5〜5重量部で使用し、0.1重量部未満では、十分な塗膜性能(耐溶剤性、耐薬品性、塗膜硬度等)が得られず、8重量部を超えると硬化塗膜のメッキ基材との密着性の低下、黄変、さらに製造コストが上昇する。
【0031】
本発明により構成される紫外線硬化型カチオン電着樹脂組成物を用いた電着条件としては、通電工程において印加される電圧は10〜400V、好ましくは40〜150Vであり、通電時間は0.5分〜5分、好ましくは1〜4分である。電圧が高いほど通電時間は短く、電圧が低ければ通電時間を長くする。印加電圧は通電と同時に設定電圧をかけるハードスタート、あるいは徐々に設定電圧まで電圧を上げていくソフトスタートのいずれでもかまわない。
電着塗装された被塗装物は、水洗され、次いで60℃で10分間程度加熱し、塗装膜中の水分を乾燥したのちに紫外線硬化装置を用い、積算光量200mJ/cm〜2,000mJ/cmを照射して硬化塗膜を得る。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の部は、特に断りのない限り重量部である。
製造例1
攪拌装置、還流冷却器および窒素導入管を備えた3リットルの4つ口フラスコにイソプロパノール10.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部を仕込み、90℃に昇温した。別にイソプロパノール5部、プロピレングリコールモノメチルエーテル13部、ジエチルアミノエチルメタクリレート8部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、スチレン10部、n−ブチルアクリレート20部、メチルメタクリレート52部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン1部の混合液を滴下ロートに仕込み、前記フラスコ内に120分かけて滴下した。滴下終了後、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル0.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部を、30分毎に3回添加したのちに、さらに90℃で90分反応を続けた。それにより得られた共重合体は、アミン価23.5mgKOH/g−resinの一部の主鎖末端に不飽和基を有する水分散性ビニル共重合体(固形分72.5%)であった。
【0033】
製造例2
攪拌装置、還流冷却器および窒素導入管を備えた3リットルの4つ口フラスコにイソプロパノール10.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部を仕込み、90℃に昇温した。別にイソプロパノール5部、プロピレングリコールモノメチルエーテル13部、ジエチルアミノエチルメタクリレート10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、スチレン10部、n−ブチルアクリレート20部、メチルメタクリレート50部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン1部の混合液を滴下ロートに仕込み、前記フラスコ内に120分かけて滴下した。滴下終了後、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル0.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部を、30分毎に3回添加したのちに、さらに90℃で90分反応を続けた。それにより得られた共重合体は、アミン価29.4mgKOH/g−resinの一部の主鎖末端に不飽和基を有する水分散性ビニル共重合体(固形分72.5%)であった。
【0034】
製造例3
攪拌装置、還流冷却器および窒素導入管を備えた3リットルの4つ口フラスコにイソプロパノール10.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部を仕込み、90℃に昇温した。別にイソプロパノール5部、プロピレングリコールモノメチルエーテル13部、ジエチルアミノエチルメタクリレート10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、スチレン10部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、n−ブチルアクリレート20部、メチルメタクリレート40部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン1部の混合液を滴下ロートに仕込み、前記フラスコ内に120分かけて滴下した。滴下終了後、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル0.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部を、30分毎に3回添加したのちに、さらに90℃で90分反応を続けた。それにより得られた共重合体は、アミン価29.4mgKOH/g−resinの一部の主鎖末端に不飽和基を有する水分散性ビニル共重合体(固形分72.5%)であった。
【0035】
製造例4
攪拌装置、還流冷却器および窒素導入管を備えた3リットルの4つ口フラスコにイソプロパノール10.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部を仕込み、90℃に昇温した。別にイソプロパノール5部、プロピレングリコールモノメチルエーテル13部、ジエチルアミノエチルメタクリレート10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、スチレン10部、n−ブチルアクリレート20部、メチルメタクリレート50部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部の混合液を滴下ロートに仕込み、前記フラスコ内に120分かけて滴下した。滴下終了後、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル0.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部を、30分毎に3回添加したのち
に、さらに90℃で90分反応を続けた。
それにより得られた共重合体は、アミン価29.6mgKOH/g−resinの水分散性ビニル共重合体(固形分72.3%)であった。
【0036】
[実施例1]
製造例1で得られたビニル系共重合体96.6部とペンタエリスリトールテトラアクリレート30部を混合し、乳酸1.5部を混合し、さらに2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名:Irgacure127、チバスペシャルティケミカルズ社製)2部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を209.9加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を666.1部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液333.3部を投入し、次に乳酸を0.6部添加し電着塗料を得た。
【0037】
[実施例2]
製造例2で得られたビニル系共重合体96.6部とペンタエリスリトールテトラアクリレート30部を混合し、乳酸1.8部を混合し、さらに2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名:Irgacure127、チバスペシャルティケミカルズ社製)2部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を209.6部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を665.9部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液333.3部を投入し、次に乳酸を0.8部添加し電着塗料を得た。
【0038】
[実施例3]
製造例2で得られたビニル系共重合体を使う代わりに製造例3で得られたビニル系共重合体を使う以外は、実施例2と同様な方法で電着塗料を作製した。
[実施例4]
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名:Irgacure127、チバスペシャルティケミカルズ社製))を使う代わりに1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルフォニル]プロパン−1−オン(商品名:Esacure1001M、Lamberti社製)を使う以外は、実施例2と同様な方法で電着塗料を作製した。
[実施例5]
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名:Irgacure127、チバスペシャルティケミカルズ社製)を使う代わりに2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン(商品名:Irgacure907、チバスペシャルティケミカルズ社製)を使う以外は、実施例2と同様な方法で電着塗料を作製した。
[実施例6]
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名:Irgacure127、チバスペシャルティケミカルズ社製))を使う代わりにオリゴ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン(商品名:EsacureKIP150、Lamberti社製)を使う以外は、実施例2と同様な方法で電着塗料を作製した。
【0039】
[比較例1]
製造例4で得られたビニル系共重合体96.8部とペンタエリスリトールテトラアクリレート30部を混合し、乳酸1.9部を混合し、さらに2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名:Irgacure127、チバスペシャルティケミカルズ社製)2部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を209.3部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を665.9部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液333.3部を投入し、次に乳酸を0.8部添加し電着塗料を得た。
【0040】
[比較例2]
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名:Irgacure127、チバスペシャルティケミカルズ社製)を使う代わりに1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Irgacure184、チバスペシャルティケミカルズ社製)を使う以外は、実施例2と同様な方法で電着塗料を作製した。
【0041】
[比較例3]
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名:Irgacure127、チバスペシャルティケミカルズ社製)を使う代わりにベンゾインイソプロピルエーテルを使う以外は、実施例2と同様な方法で電着塗料を作製した。
前記実施例1〜5および比較例1〜3の電着塗料用原液および電着塗料液の成分を総括して表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
樹脂組成物の評価 実施例1〜4、比較例1〜3で調整した電着塗料液を使用し、常法に従って陰極に各3価クロム液を用いニッケルクロムメッキを施したABS樹脂板(5c
m×10cm)を、陽極にSUS304板を用いて、10μmの塗膜厚が得られる条件で電着塗装を実施した。次いで電着塗装されたニッケルクロムメッキ処理したABS樹脂板を取り出して充分に水洗したのち、60℃の温度で10分間乾燥して、水分、溶剤分を乾燥し、高圧水銀灯にて積算光量1,000mJ/cmを照射して塗膜を硬化させた。ニッケルクロムメッキ処理されたABS樹脂板上に形成された電着塗膜の特性は表3に示すとおりであった。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例において、一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体を使用しているため、硬化剤との相溶性が向上するため液安定性が良好であり、一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体がマクロモノマーとしても機能し、硬化反応時に硬化収縮を低減することで付着性も良好になる。また、分光光度計にて測定した200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000L/mol・cm以上である光重合開始剤を使用しているので優れた表面硬化性を有する。
【0046】
評価方法
(1)肌感 目視判定で◎:良好 ○:やや不足 ×:不足をそれぞれ示す。
(2)鉛筆硬度 JIS K 5600−5−4 に従って評価した。
(3)付着性:JIS K 5600−5−6 に従って評価、◎:100/100で塗膜剥離なし、○:100/100でクロスカット交点での塗膜剥離が15%未満、×:100/100以下でクロスカット交点での塗膜剥離が15%以上。
(4)表面硬化性:脱脂綿にエタノールを染み込ませ、1kgの荷重で100回往復した後の塗膜厚残存率で評価:◎:90%以上、○:90〜80%、×:80%未満
(5)耐候性:サンシャインウェザーオーメーター200時間後の外観で評価。
◎:異常なし、○:塗膜表面に少し荒れがある、×:塗膜表面全面が荒れる。
【0047】
(6)耐食性:中性塩水噴霧試験は、JIS K 5600−7−1に従い実施し、塗膜にクロスカットを入れ、72時間後のブリスターの幅で評価、◎:0mm、○:3mm未満、×:3mm以上。
(7)耐酸性:内径32mm、高さ30mmのリングをワセリンで塗膜表面に接触させ、リングの高さ1/2まで5%硫酸水溶液を入れ、20℃で120時間後の外観状態をR.N.で評価:◎:R.N.9.8以上、○:R.N.9〜9.5、×:R.N.9未満。(8)耐アルカリ性:内径32mm、高さ30mmのリングをワセリンで塗膜表面に接触させ、リングの高さ1/2まで5%水酸化ナトリウム水溶液を入れ、20℃で48時間後の外観状態をR.N.で評価:◎:R.N.9.8以上、○:R.N.9〜9.5、×:R.N.9未満。
(9)液経時安定性 液調整した後1ヶ月遮光容器中にて保存後、再電着した時の電着塗膜外観(ピンホール)で評価。◎:なし、○:少しある、×:多い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物を使用することで照射光量が低くなるためプラスチックメッキ基材の変形がなく、経時で安定した塗膜性能が得られ、また、当該電着塗料用組成物を用いて形成された電着塗膜は、良好な表面硬化性、付着性、耐食性、耐候性、耐薬品性を有しており、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 以下の(a)〜(c)成分を用いて共重合することにより得られる、一部の主鎖末端に不飽和基を有する水溶性又は水分散性ビニル系共重合体 50〜80重量部、
(a)置換基として3級アミノアルキル基を有する共重合性ビニル系単量体
4〜15重量部
(b)(a)以外の共重合性ビニル系単量体 85〜96重量部
(c)付加開裂型連鎖移動剤 共重合性ビニル系単量体(a)と(b)の合計100重量部に対し、0.05〜20重量部
(B) 一分子中に3個以上の不飽和基を有する化合物 20〜50重量部、
(C) アルコール系溶剤を3%含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g未満、且つ、200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000L/mol・cm以上である光重合開始剤 (A)と(B)の合計100重量部に対して、0.1〜8重量部
を含有することを特徴とする紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物。
【請求項2】
付加開裂型連鎖移動剤(c)が、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンである請求項1に記載された紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物。
【請求項3】
アルコール系溶剤3%を含む水100gに対する25℃での溶解量が0.02g未満、且つ、200nm〜400nmにおける極大吸収のモル吸光係数εが10,000L/mol・cm以上である光重合開始剤(C)が、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、オリゴ 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、及び、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルフォニル]プロパン−1−オンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載された紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの紫外線硬化型カチオン電着塗料用組成物を紫外線硬化して得られることを特徴とする塗膜。

【公開番号】特開2009−79105(P2009−79105A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248430(P2007−248430)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000111591)ハニー化成株式会社 (13)
【Fターム(参考)】