説明

細幅布を製織するための方法および細幅織機

細幅織機が、細幅布の両側部から同時にかつ互いに逆向きの方向に作動する2つの横針(2a、2b)と細幅布の両側部に配置される編針(28a、28b)とを備えている。製造すべき細幅布を改善するために、開構造を有する横針(2a、2b)には横糸(4a、4b)を供給するように個々に作動する糸リフタ(18a、18b)が細幅布の各側部に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載された細幅織機で細幅布を製織するための方法および請求項5の前文に記載されたこの方法を実施するための細幅織機に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に述べた種類の細幅布を製織するための方法および細幅織機が、独国特許出願公開第4009455号明細書によって公知となっている。そこに述べられた細幅織機によって細幅布を製造する方法は互いに逆向きの方向に作動する2つの閉構造を有する横針で行われており、細幅布は両方の横針を共通の杼口に打ち込むことによって製織されることとなる。互いに逆向きの方向に打ち込まれる横糸ループの頭部は、細幅布の各側部で各1本の補助糸で形成される畝によって固定されており、畝は細幅布の両方の耳部に設けられている。ところが、この欠点として、常に2つの横糸ループを共通の杼口に打ち込まなければならないということがあり、杼口の交換時に2つの横糸ループ、すなわち4つの横糸部分を同時に織り込まれねばならないということがある。その結果として、製造されるべき細幅布の安定性が損なわれることとなる。また、常に横糸を配置している案内ループを有する閉構造の横針が用いられることとなるため、いかなる変更もできなくなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、同時にかつ互いに逆向きの方向に作動する2つの横針を備える細幅織機によって細幅布を製織するための方法を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、a.冒頭に述べた方法において請求項1の特徴部分の態様によって、またb.冒頭に述べた細幅織機において請求項5の特徴部分の態様によって、解決されることとなる。
【0005】
2つの横針の一方に供給される横糸のみを打ち込むことによって、所望のあらゆる横パターンを形成することができる。先行技術のように2つの横糸を同時に杼口に挿入できるだけでなく、特に請求項2のように横糸を細幅布の側部ごとに交互に打ち込むことができ、各杼口の交換時に単に1つの横糸ループが打ち込まれることとなる。さらに、色および品質の異なる横糸を横針に供給することができる。これにより、製造された細幅布の機械的な品質が改良されるだけでなく、柄出しをする可能性も高まる。
【0006】
請求項3によれば、細幅布の各側部で横糸ループは、その横ループ自身とともに編まれ、また細幅布の各側部で横糸ループは、請求項4によれば、織り合わされる補助糸によって編まれることとなる。
【0007】
この方法を実施するのに役立つ細幅織機にとって重要なことは、開構造を有する横針に横糸を供給するとともに個々に作動する糸リフタが、細幅布の各側部に設けられていることである。
【0008】
請求項6に述べられた好ましい構成の横針は、針柄に配置されるとともに横糸を収容するように構成されるフォークと、針柄に沿ってフォークの前方にまで延びる横糸用のガイド孔とを備えている。
【0009】
以下、本発明の実施形態が図面に基づいて詳しく説明される。図面は様々な製織段階における細幅織機の製織領域を示し、さらに図1〜図4では打ち込まれた横糸ループを補助糸で結ぶ状態を示し、図5〜図7では打ち込まれた横糸ループを補助糸なしに結んでいる状態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図4は、互いに逆向きの方向に駆動される2つの横針2a,2bを備える細幅織機の製織領域を示しており、横針が横糸4a,4bを杼口6に打ち込むこととなる。縦糸8で形成される杼口6内で、横糸は製織筬9によって筬打ち耳部10に筬打ちされ、こうして細幅布12が生成されることとなる。
【0011】
横針2a,2bはそれぞれ開構造を有する針であり、すなわち針柄14a、14bの前端にフォーク16a,16bを有する。各横糸4a,4bは上下動可能な糸リフタ18a,18bによってこのフォークに挿入されることとなる。横針2a,2bは、それぞれガイド孔20a,20bを備えており、ガイド孔20a,20bは、針柄14a,14bに沿って延びて、フォーク16a,16bの上方にまで達している。ガイド孔20a,20bは、横糸が杼口6に打ち込まれないときに横糸4a,4bを案内することに役立ち、また各糸リフタ18a,18bの補助によってフォーク16a,16bへの挿入を容易にすることに役立つこととなる。その都度、打ち込まれる横糸ループ22a,22bは、補助糸24a,24bによって固定され、補助針はそれぞれ糸ガイド26a,26bによって編針28a,28bに供給されて、横糸ループ22a,22bと織り合わされることとなる。
【0012】
図1に示す位置では、左側部の横針2aが、まさに横糸ループ22aを杼口6に打ち込まれている状態であって、製織筬11によって筬打ち耳部10に筬打ちされている状態となっている。横針2aのフォーク16aの左側部の横糸4aは、左側部の糸リフタ18aによって糸リフタ18aの上昇に伴って持ち上げられ、横針2aのフォーク16aによって把持できなくなっている。杼口の右側部で糸リフタ18bは降下し、横糸4bを横針2bのフォーク16bに係合させて、このフォークは、図2に示すように横糸ループ22bを開口する杼口6に打ち込むことができる。左側部の横針2aは空で杼口に走り込むこととなり、横糸4aはガイド孔20a内で案内されることとなる。
【0013】
図3で明らかにされるように、横糸ループ22bが杼口内に完全に打ち込まれたならば、左側部の編針28aは、補助糸24aを把持して、この補助糸を打ち込まれた横糸ループ22b内に通して、さらに補助糸24aの最終ループ30a内に通すこととなる。右側部では補助糸24bが、補助糸24b自身と、その最終ループ30bとに編み込まれ、横糸ループ内には通されないこととなる。打ち込まれた横糸ループ22bを補助糸24aによってこのように固定した後、横針2a,2bが杼口から出て、製織筬11がこのように打ち込まれた横糸ループを筬打ち耳部10に筬打ちすることとなる。次に、糸リフタ18bは、再び持ち上げられ、横糸4bが横針2bのフォーク16bで把持されることを防止することとなる。その代わりに、横糸4aは糸リフタ18aによって横針2aのフォーク16aに係合させられ、次の杼口の開口時に他の横糸ループ22aが同様に細幅布の左側部から打ち込まれることとなる。
【0014】
図5〜図7で示されり細幅織機は、図1〜図4の細幅織機と同様の構成となっており、第1実施例と同じ部品には同じ符号が付されている。ここで、図1〜図4に関連する詳細な記述を参照するものとする。しかしながら、図5〜図7の実施例では、補助糸が用いられることなく横糸40a,40bが横糸40a,40b自身と編み込まれている。図6は、横糸40aからなる横糸ループ42aが左側部の横針2aによって杼口内にどのように打ち込まれるのかを示している。打ち込みが完全に行なわれた後に、右側部の編針28bは、打ち込まれた横糸ループ42aを把持し、この横糸ループを既に脱出した横糸ループ42a内に通すこととなる。細幅布の左側部から横針2aによって横糸ループ42aを打ち込む間、右側部の横針2bは空の状態で杼道内を動くこととなる。横糸40bは、図7から読み取ることができるように右側部の横針2bのガイド孔20b内で案内されることとなる。横針2a,2bが杼道から引き戻されたならば、打ち込まれた横糸ループ42aは図5に示すように製織筬11によって筬打ち耳部10で筬打ちされることとなる。杼口の交換後、細幅布の右側部で横糸ループの打ち込みが続き、この過程は、細幅布の左側部における横糸の打ち込みと同様に行われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】左側部の横針によって打ち込まれた横糸ループの筬打ち時の製織領域を示す略図である。
【図2】右側部の横針によって横糸ループを打ち込むときの図1の製織領域を示す。
【図3】横糸ループを打ち込んでそれを結ぶ前の図2の製織領域を示す。
【図4】右側部の横針によって打ち込まれた横糸ループを筬打ちし横糸を左側部の横針に供給するときの図3の製織領域を示す。
【図5】右側部の横針によって打ち込まれた横糸ループを筬打ちするときの製織領域を示す。
【図6】左側部の横針によって打ち込まれた横糸ループを打ち込むときの図5の製織領域を示す。
【図7】打ち込まれた横糸ループを織り合せるときの図6の製織領域を示す。
【符号の説明】
【0016】
2a 横針
2b 横針
4a 横糸
4b 横糸
6 杼口
8 縦糸
10 筬打ち耳部
11 製織筬
12 細幅布
14a 針柄
14b 針柄
16a フォーク
16b フォーク
18a 糸リフタ
18b 糸リフタ
20a ガイド孔
20b ガイド孔
22a 横糸ループ
22b 横糸ループ
24a 補助糸
24b 補助糸
26a 糸ガイド
26b 糸ガイド
28a 編針
28b 編針
40a 横糸
40b 横糸
42a 横糸ループ
42b 横糸ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細幅布の両側部から同時にかつ互いに対して逆向きの方向に作動する2つの横針(2a、2b)を備える細幅織機によって前記細幅布を製織する方法であって、
所望の各横パターンを形成可能にするために、前記2つの横針(2a、2b)のうち一方に供給される横糸(4a,4b,40a,40b)のみを打ち込むステップを含む方法。
【請求項2】
前記横糸(4a,4b,40a,40b)を前記細幅布の側部ごとに交互に打ち込むステップを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記細幅布の各側部で前記横糸ループ(42a,42b)を前記横ループ自身とともに編むステップを含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記細幅布の各側部で、織り合わされる補助糸(24a,24b)によって横糸ループ(22a、22b)を結ぶステップを含む請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を実施するための細幅織機であって、前記細幅布の両側部から同時にかつ互いに対して逆向きの方向に作動する2つの横針(2a,2b)と前記細幅布の両側部に配置される編針(28a,28b)とを有する細幅織機において、
開構造を有する前記横針(2a,2b)に横糸(4a,4b,40a,40b)を供給するとともに個々に作動する糸リフタ(18a,18b)を、前記細幅布の各側部に設けていることを特徴とする細幅織機。
【請求項6】
前記横針(2a,2b)は、針柄(14a,14b)に配置されるとともに前記横糸(4a,4b,40a,40b)を収容するように構成されるフォーク(16a,16b)と、前記針柄(14a,14b)に沿って前記フォーク(16a,16b)の前方まで延びる前記横糸(4a,4b,40a,40b)用のガイド孔(20a,20b)とを備えていることを特徴とする請求項5に記載の細幅織機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−510280(P2009−510280A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533842(P2008−533842)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000489
【国際公開番号】WO2007/038883
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(500031009)テクスティルマ・アクチェンゲゼルシャフト (22)
【Fターム(参考)】