説明

細断処理装置および搬送部材

【課題】細断片の詰まりを防ぐことを可能とする細断処理装置等を提供することを目的とする。
【解決手段】紙処理装置の圧縮ユニットは、所定方向に回転して細断片を圧縮するスクリュー33をハウジングの内部に回動自在に備えている。スクリュー33は、回転軸33Aの周囲に螺旋状の送り羽根33Bを有しており、逆方向に回転させた場合に先端となる送り羽根33Bの下流端33Bbには、移動操作面33Bcと下流端33Bbの端面33Beとが成すエッジ33Bfの角度:θ1を、90度以下とした切削刃部33Cが構成されている。これにより、スクリュー33の逆回転によって、切削刃部33Cが上流側に突出する細断片の塊を削り取り、紙詰まりを解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙等を細断片に細断処理する細断処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば機密性のある文書を廃棄する際には、情報漏洩の防止やプライバシー保護等のためにその文書をいわゆるシュレッダで細断処理することが一般的に行われている。
このようなシュレッダとして、細断機構によって細断した細断片を、圧縮して収容容器等に導くように構成されたものがある(たとえば特許文献1参照)。
特許文献1に開示のシュレッダは、破砕手段によって小さな紙片に破砕した古紙を、加湿して圧縮手段で圧縮成形したのちに、鉛直下方へ向かって排出するものである。
圧縮手段は、筒状部材の内部に押出スクリュウが設けられ、押出スクリュウによって下方へ押圧される古紙の移動を抑制することにより古紙を圧縮するとともに少しずつ下方へ排出させるために内径寸法を筒状部材の内径寸法よりも小さくした圧縮円筒が筒状部材の下に結合されて構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−306787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、細断機構によって細断した細断片を搬送手段によって搬送する構成の細断処理装置では、細断片が搬送路の入り口で固く締まって詰まった状態となり、搬送手段に過大な負荷が作用して駆動不能となることがある。
このように、搬送路に細断片が詰まって搬送手段が駆動不能な状態となると、その解消には装置を分解する等の大掛かりで面倒な作業が必要となる。
【0005】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、細断片の詰まりを防ぐことを可能とする細断処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明の細断処理装置は、対象物を細断片に細断する細断機構と、細断片を移動操作する移動操作面を有する移動操作部が軸部の周囲に形成され所定方向に回転することで細断機構が細断した細断片を搬送する搬送部材と、搬送部材を所定方向とは逆方向に回転させた際における移動操作部の先端に設けられて細断片を削り取る削り取り部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、削り取り部は、移動操作面と、移動操作部の先端の端面とが、90度以下の角度を成して構成されていることを特徴とすることができる。
また、削り取り部は、移動操作部の先端の端面が、搬送部材の回転中心軸を含む面と平行な面に対して、移動操作面との角部が鋭角化する側に傾斜して構成されていることを特徴とすることができる。
また、搬送部材を細断片を搬送する正回転と正回転とは逆の逆回転とに駆動可能な回転駆動装置と、回転駆動装置を制御する制御装置と、をさらに備え、制御装置は、搬送部材の回転を開始する際に、搬送部材を所定量逆回転させる逆転制御を行うことを特徴とすることができる。
また、搬送部材を細断片を搬送する正回転と正回転とは逆の逆回転とに駆動可能な回転駆動装置と、回転駆動装置を制御する制御装置と、をさらに備え、制御装置は、搬送部材の駆動負荷が所定以上では、搬送部材を所定量逆回転させる逆転制御を行うことを特徴とすることができる。
また、制御装置による逆転制御は、搬送部材を少なくとも一回転逆回転させることを特徴とすることができる。
【0008】
本発明の搬送部材は、細断機構によって細断された細断片を所定方向に回転することで搬送する搬送部材であって、細断片を移動操作する移動操作部と、所定方向とは逆に回転した際の先端部に設けられて細断片を削り取る削り取り部と、を備えることを特徴とする。
また、削り取り部は、移動操作部の先端部が90度以下の角度に形成されて構成されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成された本発明の細断処理装置によれば、移動操作部の先端に設けられた削り取り部で障害となる細断片を削り取ることで、細断片の詰まりを防ぐことが可能となる。また、詰まりが生じた場合でも容易に解消することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本実施の形態に係る細断処理装置としての紙処理装置10の外観図である。また、図2は紙処理装置10の内部を示す概略構成図、図3は圧縮ユニット30の拡大断面図である。
紙処理装置10は、装置本体を構成する本体部11の上面部12に、細断処理する対象物としての紙が投入される投入部13が形成されている。そして、投入部13に投入された紙の処理(細断処理等)を行い、処理済みの細断片を本体部11の内部に一時的に収容する。本体部11には、その内部に収容された細断片を外部へ排出する際に開閉する開閉扉14が設けられている。また、本体部11の上面には、使用者が紙処理装置10の駆動指示等の操作を行うための操作パネル15が設けられている。
【0011】
紙処理装置10の本体部11の内部には、投入部13に投入された紙を細断する細断機構20と、この細断機構20によって細断された細断片を圧縮して塊化する圧縮ユニット30とが設けられている。
また、圧縮ユニット30で塊化された細断片を移送するダクト40と、このダクト40により移送された細断片の塊を収容する収容ボックス50とを備えている。
さらに、この紙処理装置10の全体の駆動を制御する制御装置60を備えている。制御装置60は、使用者による操作パネル15を介した指令に基づいて、紙処理装置10の各機構部を駆動制御する。
【0012】
細断機構20は、第1の回転刃軸21と第2の回転刃軸22とが略平行に配置されて成る細断部20Aと、この細断部20Aを駆動する細断モータ20Mと、を備えている。
細断部20Aは、長方形の平面形状を呈しており、細断モータ20Mはその側方に位置している。
細断部20Aの第1の回転刃軸21と第2の回転刃軸22には、それぞれ回転刃21a,22aが軸方向に所定間隔で複数設けられている。回転刃21a,22aは、円盤状でその周面に複数の刃が放射状に形成されており、両回転刃軸21,22に設けられた回転刃21a,22aは、交互に入り組んで配置されている。すなわち、第1の回転刃軸21の回転刃21aと第2の回転刃軸22の回転刃22aとは、それぞれ軸方向にずれて配置され、また、一方の回転刃21a,22aが他方の回転刃22a,21aの間に相互に所定量入り込んでいる。これにより、両回転刃軸21,22の回転刃21a,22aが軸方向に見て重なり合った重合域23を形成している。
【0013】
第1の回転刃軸21および第2の回転刃軸22は、細断モータ20Mによって互いに逆回転に回転駆動される。
すなわち、たとえば、通常(正回転時)には、図2中に矢印で示すように、第1の回転刃軸21は時計方向に回転し、第2の回転刃軸22は反時計方向に回転する。これにより、重合域23では下側から上側に向かって回転刃21a,22aが移動するようになっている。
また、第1の回転刃軸21の回転速度(回転刃21aの周速度)と第2の回転刃軸22の回転速度(回転刃22aの周速度)とは異なっている。すなわち、紙投入側(投入部13)の第1の回転刃軸21は遅く(低速)回転し、紙投入側から遠い第2の回転刃軸22は速く(高速)回転するようになっている。その速度差は例えば2倍の値を採用することができる。
なお、細断モータ20Mは、正逆反転が可能なものであり、第1の回転刃軸21および第2の回転刃軸22を図2の矢印方向とは反対の方向に回転させることも可能となっている。
【0014】
細断機構20の下方には、圧縮ユニット30が設けられている。
圧縮ユニット30は、その上部に開口するホッパ31と、ホッパ31が接続する略筒状のハウジング32と、このハウジング32の内部に回動自在に設けられた搬送部材としてのスクリュー33と、このスクリュー33を回転駆動する回転駆動装置としての圧縮モータ30Mとを備えている。スクリュー33の回転(すなわち圧縮モータ30Mの回転)は、制御装置60によって制御される。
【0015】
ホッパ31は、細断機構20の細断部20Aと対応する大きさの上部開口部と、圧縮ユニット30の導入管部32aと対応する径の下部開口部とを連続させた漏斗状に形成されている。そして、ステー31aによってフレーム16に固定され、ハウジング32の直上に設けられている。これにより、細断機構20から落下する細断片を受け、集合させてハウジング32に導く。
【0016】
スクリュー33は、回転軸33Aの周囲に螺旋状に連続する移動操作部としての送り羽根33Bを備えて構成され、ハウジング32の中心に回転自在に設けられている。このスクリュー33については、後に詳述する。
回転軸33Aの上側の軸端には、攪拌ロッド32eが設けられている。
攪拌ロッド32eは、金属等の剛性を有する素材による所定厚さで所定幅の板を、中央を挟んで上向きに所定の角度で屈曲して形成され、その中央部でスクリュー33の回転軸33Aの上端面にネジによって相対回転不能に固定されている。これにより、攪拌ロッド32eは、ホッパ31の内部に位置し、スクリュー33の回転に伴って回転して、細断片の移動を促し、細断片がホッパ31に滞留することを防ぐ。
【0017】
ハウジング32は、ホッパ31が接続される導入管部32aと、導入管部32aから連続する円筒状の移送管部32bと、移送管部32bの先端の圧縮管部32cと、から成る。
導入管部32aは、ホッパ31の勾配と略連続する漏斗状で、紙処理装置10のフレーム16に固定されている。
導入管部32aの上端の外周には、駆動リング32dがベアリングを介して回転自在に装着されている。
駆動リング32dは、その内周側の周方向三カ所に設けられた支持バー32fによって、中心部にスクリュー33を支持している。また、駆動リング32dはその外周に歯を備えたタイミングプーリであり、この駆動リング32dと圧縮モータ30Mの軸に固定されたタイミングプーリ34とがタイミングベルト35で連繋されている。これにより、圧縮モータ30Mによって駆動リング32dが回転駆動され、これに伴ってスクリュー33が回転するようになっている。
【0018】
移送管部32bは、スクリュー33の送り羽根33Bの外径と近接する内径の円筒状で、その内面には、長さ方向に延びる図示しない複数の小突起部が全周にわたって形成されている。これにより、スクリュー33の回転によって、内部の細断片をスクリュー33との共回りを防いで圧縮管部32cに円滑に移送するようになっている。
圧縮管部32cは、その内径が、移送管部32bの内径と連続する上流部に対して、下流の開口が小径となる先細りのテーパ状に形成されており、送り込まれる細断片の移動断面の径を絞るようになっている。
このような構成の圧縮ユニット30は、スクリュー33が圧縮モータ30Mによって所定速度(たとえば70rpm)で回転駆動され、ホッパ31が受けた細断片を、導入管部32aから移送管部32bを介して圧縮管部32cに向けて加圧搬送し、圧縮管部32cで圧縮して密度の高い塊状にして送り出す。
なお、圧縮モータ30Mは、正逆両方の回転が可能なものであり、細断片を加圧搬送する方向にスクリュー33を回転させる正回転と、スクリュー33をこれとは反対方向に逆回転させることができるようになっている。この圧縮モータ30Mは、制御装置60によって回転制御される。
【0019】
圧縮ユニット30に後続して、ダクト40および収容ボックス50が設けられている。
ダクト40は、略U字状を二つ組み合わせたように屈曲した管路であって細断片の搬送を形成している。その一方端が圧縮ユニット30のハウジング32の下流端(圧縮管部32c)に接続され、他端が収容ボックス50の上側領域に開口している。そして、圧縮ユニット30から送り出される細断片の圧縮塊を、収容ボックス50に導く。
収容ボックス50は、上部が開口する所定容量の箱状であって、ダクト40によって搬送された細断片を受け取るように配置されている。この収容ボックス50は、開閉扉14を開けて本体部11から外部に取り出すことができるようになっている。
【0020】
上記のごとく構成された紙処理装置10は、制御装置60によって制御され、投入部13に投入された紙を、細断機構20で細断片に細断し、その細断片を圧縮ユニット30によって圧縮して収容ボックス50に排出する。
すなわち、細断機構20は、第1の回転刃軸21と第2の回転刃軸22とが、その速度差で投入された紙を引きちぎって、図示しない所定間隔のフィルタを通過するまで破砕を繰り返して細断片とする。
その細断片は、圧縮ユニット30のホッパ31に落下する。
圧縮ユニット30は、ホッパ31に落下した細断片を、圧縮モータ30Mで回転駆動されるスクリュー33によってハウジング32内を搬送して圧縮する。
圧縮ユニット30によって圧縮された細断片は、圧縮ユニット30の押し出し力によってダクト40内を移動し、収容ボックス50に排出される。
制御装置60は、圧縮ユニット30による細断片の圧縮動作に関連する制御として、圧縮動作を円滑に行うための紙詰まり防止制御を行う。この紙詰まり防止制御については、後に詳述する。
【0021】
つぎに、本願発明の主要部分である圧縮ユニット30のスクリュー33について、前述の図1乃至図3と、図4及び図5とを参照して詳細に説明する。
図4はスクリュー33の下流端33Bbを正面側にした(図3の側面側から見た)拡大図である。また、図5はスクリュー33の切削刃部33Cの作用を説明する概念図である。
スクリュー33は、前述のごとく、回転軸33Aの周囲に送り羽根33Bを備えて構成され、ハウジング32の中心に回転自在に設けられている。
送り羽根33Bは、所定の厚さの板状で、回転軸33Aの周囲に螺旋状に連続して形成されている。本実施の形態の送り羽根33Bは、回転軸33Aの軸方向に所定の距離でその周囲を略一周するように(約360°の範囲で)設けられている。すなわち、細断片の搬送方向における上流側の端(上流端33Ba)と、下流側の端(下流端33Bb)とが、回転軸33Aの軸方向に所定の距離離れ、周方向の位置はほぼ一致するようになっている。送り羽根33Bの軸方向端部側から見た平面形状は、ハウジング32の移送管部32bの内径に対して所定量小径の円形となっている。
【0022】
このような送り羽根33Bを備えるスクリュー33は、その回転に伴う送り羽根33Bの軸方向の位置変位によって、一方の面(移動操作面33Bc)で周囲の細断片を押圧して移動操作する。本実施の形態では、送り羽根33Bは反時計回り(左回り)で軸方向に遠ざかるように形成されており、スクリュー33は時計回り(右回り)に回転駆動され、これによって細断片を上側から下側に(圧縮管部32cに向けて)移動操作する。従って、送り羽根33Bの図中下側の面が移動操作面33Bcである。以下の説明においては、細断片を圧縮管部32cに向けて移動操作する方向の回転を正回転、これと逆方向の回転を逆回転と称する。
【0023】
送り羽根33Bの移動操作面33Bcは、回転軸33Aの中心を通る断面で見ると回転軸33Aと略直交しており、回転軸33Aの中心軸回りの角度に応じて軸方向に位置が所定の割合で変位して螺旋状を成しているが、送り羽根33Bの下流端33Bbの端面Beから上流側に所定の範囲では変位率が極めて小さい(又は変位が無い)押圧面33Bdとなっている。図4に示す本実施の形態の押圧面33Bdは、変位が無い(回転軸33Aの軸中心と直交する)面となっているものである。
【0024】
上記のごとく構成されたスクリュー33は、送り羽根33Bの下流端33Bb(すなわち押圧面33Bd)を、ハウジング32の圧縮管部32cと移送管部32bとの接続部位に対応させて設けられている。そして、スクリュー33は、その回転によって送り羽根33B(移動操作面33Bc)で細断片を圧縮管部32cに向けて移動操作し、送り羽根33Bの下流端33Bbの押圧面33Bdが細断片を圧縮管部32cに押し込むように搬送する。つまり、軸方向の変位が少ない押圧面33Bdが、上流側の送り羽根33B(移動操作面33Bc)によって移動操作される細断片をより強い押圧力で圧縮管部32cに圧入するものである。
【0025】
ここで、スクリュー33を逆方向に回転させた場合に先端となる送り羽根33Bの下流端33Bb(押圧面33Bdの先端部)には、削り取り部としての切削刃部33Cが設けられている。
切削刃部33Cは、移動操作面33Bc(押圧面33Bd)と下流端33Bbの端面33Beとが成す先端部としてのエッジ33Bfの角度:θ1を、90°以下として構成されている。
より好ましくは、下流端33Bbの端面33Beが、回転軸33Aの軸中心を含む面と平行な面33S(図4中に一点鎖線で示す)に対して、エッジ33Bfが鋭角化する側に傾斜する(傾斜角:θ2を有する)ように構成されている。これにより、スクリュー33を逆回転させると、90°以下の角度のエッジ33Bfが進行方向に向かうこととなる。
【0026】
このような切削刃部33Cを備えたスクリュー33は、逆回転することで切削刃部33Cが、圧縮管部32cの入り口に団塊状に溜まった細断片の塊を、削り取るように作用する。これにより、スクリュー33を逆回転することによって圧縮ユニット30の圧縮管部32cの入り口部位における紙詰まりを解消することができる。とりわけ、細断片は一枚一枚が重なり合って層を成しており、90°以下の鋭角な刃が挿し込まれれば層と層との間に入りやすく、小さな力でも塊の削り取りを容易に行うことができる。
【0027】
すなわち、先細りのテーパ状の圧縮管部32cに細断片を押し込んで圧縮塊に成形しつつ搬送する際には、細断片の塊は圧縮管部32cの内部でその外径を小さくするように圧縮される。このため、圧縮管部32c内において細断片の圧縮塊はその外周を内外に折り畳むように変形し、外側に突出する部位と内側に入り込む部位とが周方向に交互に形成される。外側に突出するは圧縮管部32cの内面に圧接されて固く締まり、スクリュー33の側にも突出して図5に示すように凸部70を形成し、送り羽根33Bの移動操作面33Bc(押圧面33Bd)に圧接して移動抵抗となる。凸部70の突出量が大きくなると、スクリュー33の移動抵抗の増大によって最悪の場合にはスクリュー33が回転不能となる。
【0028】
このようにスクリュー33が回転不能な状態は、図5(a)に示すように送り羽根33Bの移動操作面33Bc(押圧面33Bd)が細断片の圧縮塊による凸部70を乗り越えることができない(押圧面33Bdが凸部70を圧縮管部32c内に押し込むことができない)ことによって生ずる。
この状態では、スクリュー33の正回転は困難であっても逆回転は比較的容易に可能である。そして、スクリュー33を逆回転することにより、切削刃部33Cが、正回転では押圧面33Bdが乗り越えることのできなかった凸部70に対向し、図5(b)に示すように干渉する凸部70を削り取るように作用する。切削刃部33Cは90度以下の角度を有しており、凸部70の圧縮(乗り越え)は不能であってもその削り取りは容易に行えるものである。逆回転は、回転停止を引き起こす直接の原因となっている凸部70を削り取るために少なくとも一回転行うことが好ましい。
このようにして押圧面33Bdに干渉する凸部70が除去されると、移動抵抗が解消されることとなってスクリュー33の正回転が可能となると共に細断片塊の圧縮状態も緩くなる。その結果、引き続いて細断片の圧入を行うことができるようになる。なお、スクリュー33を二回転以上逆回転すれば、干渉する凸部70が除去されることで緩んで膨張した細断片塊を再度切削刃部33Cが除去することとなるため、より好ましい。
【0029】
つぎに、制御装置60による紙詰まり防止制御について説明する。なお、以下の説明中における紙処理装置10の各構成要素の符号は、前述の図1乃至図5参照のこと。
図6は紙詰まり防止制御のフローチャートである。
紙詰まり防止制御は、運転開始時と、圧縮動作時においてスクリュー33の回転負荷が大きく紙詰まりが生じたと判定した際とに、スクリュー33を逆回転させて圧縮管部32cの入り口部に存在する細断片塊(凸部70)を除去する逆転制御としての紙詰まり解消制御を行って、円滑な運転(圧縮動作)を可能とするものである。
【0030】
すなわち、紙処理装置10の電源が投入され(または節電モード等の待機状態から復帰する)と(ステップ101)、圧縮モータ30Mを逆回転させて(ステップ102)、スクリュー33を所定量(一回転以上、本実施の形態では二回転)逆回転駆動する(ステップ103)。回転数の制御は、回転角に基づいて行っても、時間を計測して行っても何れでも良い。
これらのステップ101からステップ103までが、紙詰まり解消制御である。この紙詰まり解消制御では、スクリュー33の回転抵抗となる圧縮管部32cから上流側に突出する細断片塊の凸部70を、送り羽根33Bの切削刃部33Cによって削り取り、スクリュー33の回転抵抗を軽減する。なお、図6のフローチャートには示さないが、紙詰まり解消制御の際には、細断機構20による細断動作は停止状態とされるものである。
【0031】
その後、圧縮モータ30Mを正回転させ、スクリュー33を正回転駆動して通常の圧縮動作を開始する(ステップ104)。
圧縮モータ30Mの正回転によってスクリュー33を正回転させる圧縮動作時には、圧縮モータ30Mに流れる電流値を検知し(ステップ105)、その検知した電流値を予め定められた所定の電流閾値(たとえば定格電流値の120%)と比較する(ステップ106)。
そして、電流値が電流閾値以上となった場合には、圧縮モータ30Mへの通電を遮断してスクリュー33の正回転駆動を停止し(ステップ107)、スクリュー33を二回転逆回転させる前述のステップ101〜103の紙詰まり解消制御を行う。
つまり、圧縮モータ30Mに閾値以上の電流(過電流)が流れた場合には、スクリュー33の回転負荷が大きく紙詰まりが生じたと判定し、スクリュー33の回転による細断片の圧縮動作を停止して紙詰まり解消制御を行うものである。圧縮モータ30Mに閾値以上の電流(過電流)が流れた状態では、負荷によって圧縮モータ30Mが既に停止してスクリュー33を回転駆動していない場合も有り得る。
なお、スクリュー33の回転を停止する際には、細断機構20の細断モータ20Mも停止させ、細断動作も停止させるものである。
【0032】
上記のごとき紙詰まり防止制御によれば、運転開始時にスクリュー33を一回転以上の所定量逆回転させる紙詰まり解消制御を行うことにより、長時間停止後も円滑な運転開始が可能となる。たとえば、一日の作業が終了して紙処理装置10の電源を切り、圧縮管部32c内に圧縮途中の圧縮塊が存在する状態で長時間(一晩)停止させると、圧縮作業によって高温化した細断片が冷却すると共に乾燥して圧縮管部32cの内部で固く締まり、凸部70の硬度が増すため、翌日等に細断作業を開始しようとした際に始動できない(スクリュー33を正回転できない)といった不具合が生じ得るが、このような不具合を未然に防いで確実に運転開始できるものである。
また、圧縮動作時には、圧縮モータ30Mに過電流が流れた場合に紙詰まり解消制御を行うことにより、作業者の手を煩わせることなく自動的にスクリュー33の回転負荷を軽減して圧縮動作を継続することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態の紙処理装置10によれば、スクリュー33を逆回転させることで、送り羽根33Bの切削刃部33Cによって紙詰まりの原因となる細断片塊を除去することができる。これにより、圧縮ユニット30における紙詰まりを未然に防ぐことができると共に、紙詰まりが生じた場合でも圧縮ユニット30を分解する等の面倒な作業を要することなく容易に解消して、圧縮作業を継続することが可能となる。
【0034】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更可能なものである。
すなわち、上記実施の形態では、制御装置60が圧縮ユニット30における紙詰まりを検知して紙詰まり解消制御を行うように構成したが、圧縮ユニット30における紙詰まりに際してスクリュー33を逆回転させる操作を手動によって行うように構成することもできる。
たとえば、操作パネル15に逆回転を指令するスイッチ(逆回転スイッチ)を設け、圧縮ユニット30に紙詰まりが生じた場合には、その逆回転スイッチを、一度の押圧操作によって一回転以上の所定量逆回転するように構成すれば良い。また、逆回転スイッチを押圧している間だけ逆回転する完全に手動操作によって行う構成としても良いものである。
【0035】
また、上記実施の形態では、削り取り部としての切削刃部33Cは、スクリュー33の送り羽根33Bの下流端33Bbに一体に構成したが、別体に形成したものを装着する構成であっても良いものである。
さらに、上記実施の形態の紙処理装置10の細断機構20は、紙を引きちぎって細断片とするものであるが、細断対象物は紙に限らず、また、カッタによって切断して短冊状や矩形の細断片とするものに適用しても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施の形態に係る紙処理装置の外観斜視図である。
【図2】紙処理装置の内部を示す概略構成図である。
【図3】圧縮ユニットの拡大断面図である。
【図4】スクリューの下流端を正面側にした拡大図である。
【図5】スクリューの切削刃部の作用を説明する概念図である。
【図6】制御装置による紙詰まり防止制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
10…紙処理装置(細断処理装置)、20…細断機構、33…スクリュー(搬送部材)、33B…送り羽根(移動操作部)、33Bc…移動操作面、33Be…端面(移動操作部の先端の端面)、33Bf…エッジ(先端部)、33C…切削刃部(削り取り部)、30M…圧縮モータ(回転駆動装置)、33S…面(搬送部材の回転中心軸を含む面と平行な面)、60…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を細断片に細断する細断機構と、
細断片を移動操作する移動操作面を有する移動操作部が軸部の周囲に形成され所定方向に回転することで前記細断機構が細断した細断片を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を前記所定方向とは逆方向に回転させた際における前記移動操作部の先端に設けられて細断片を削り取る削り取り部と、
を備えることを特徴とする細断処理装置。
【請求項2】
前記削り取り部は、前記移動操作面と、前記移動操作部の先端の端面とが、90度以下の角度を成して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の細断処理装置。
【請求項3】
前記削り取り部は、前記移動操作部の先端の端面が、前記搬送部材の回転中心軸を含む面と平行な面に対して、前記移動操作面との角部が鋭角化する側に傾斜して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の細断処理装置。
【請求項4】
前記搬送部材を細断片を搬送する正回転と当該正回転とは逆の逆回転とに駆動可能な回転駆動装置と、
前記回転駆動装置を制御する制御装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記搬送部材の回転を開始する際に、当該搬送部材を所定量逆回転させる逆転制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の細断処理装置。
【請求項5】
前記搬送部材を細断片を搬送する正回転と当該正回転とは逆の逆回転とに駆動可能な回転駆動装置と、
前記回転駆動装置を制御する制御装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記搬送部材の駆動負荷が所定以上では、当該搬送部材を所定量逆回転させる逆転制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の細断処理装置。
【請求項6】
前記制御装置による前記逆転制御は、前記搬送部材を少なくとも一回転逆回転させることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の細断処理装置。
【請求項7】
細断機構によって細断された細断片を所定方向に回転することで搬送する搬送部材であって、
細断片を移動操作する移動操作部と、
前記所定方向とは逆に回転した際の先端部に設けられて細断片を削り取る削り取り部と、
を備えることを特徴とする搬送部材。
【請求項8】
前記削り取り部は、前記移動操作部の先端部が90度以下の角度に形成されて構成されていることを特徴とする請求項7に記載の搬送部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−200649(P2008−200649A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42275(P2007−42275)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(591227686)富士ゼロックスエンジニアリング株式会社 (41)
【Fターム(参考)】