説明

細胞におけるペルオキシソームカタラーゼ機能の促進

【課題】修飾カタラーゼポリペプチドを提供すること。
【解決手段】上記修飾カタラーゼポリペプチドは、配列Xaa−3−Xaa−2−Xaa−1を含むPTSでの置換によって、Lys−Ala−Asn−Leu(配列番号1)の天然配列から修飾カルボキシル末端ペルオキシソーム標的シグナル(PTS)を有し、ここで、独立して、Xaa−3がSer、Ala、またはCysであり;Xaa−2がLys,Arg、またはHisであり;そしてXaa−1がLeuまたはMeである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
生化学および医学分野の本発明は、ペルオキシソームへの移入増加のために設計された修飾カタラーゼタンパク質と、該修飾カタラーゼタンパク質とタンパク質の細胞送達および取り込みを高めるポリペプチドとの組み合わせとを目的とする。これらの組成物は、状態、例えば老化あるいはペルオキシソーム欠乏に関連した疾患または障害ならびに結果として生ずる過剰の過酸化水素および他の活性酵素種を処置するために、用いられる。
【背景技術】
【0002】
(背景技術の説明)
ペルオキシソームは、真核細胞の必須の細胞下オルガネラである。これらの多機能性構造は、約2ダースのタンパク質(ペルオキシンと呼ばれている(TerleckyおよびFransen,2000))の慎重に組織化された反応を通して生ずる。。これらは、重要なプロセスである。すなわち、欠損は細胞に、ペルオキシソームの欠如またはそれらに起因して、オルガネラが、種々の生化学的機能および代謝機能を実行することができなくなることのいずれかをもたらす。しばしば、そのような欠点によって発病する(GouldおよびValle,2000)。
【0003】
どのようにしてペルオキシソームが生じて機能するかを理解することについて最近の主な進歩にかかわらず、オルガネラと細胞老化との関係についての乏しい情報だけが利用可能である。例えば、細胞の老化にともなってオルガネラがどのように機能するか、また、あるとしても、老化プロセスでのペルオキシソームがどのような役割を果たすかについては、不明である。
【0004】
本発明者らは、それらのモデル系として、有限な複製寿命を持つ細胞であるヒト二倍体線維芽細胞(HDF)を使用した。これらの体細胞は、「ヘイフリック(Hayflick)番号」(Hayflick、1965)と呼ばれる限界に達するまで培養中に分裂(または倍加)する。この時点で、それらの細胞周期が停止すると、それらは「老化(senescent)」と呼ばれる。この細胞老化のプロセスは、老いた生体全体でも起こる(Dimriら、1995)。細胞老化に関与する因子として、テロメア短縮、DNA損傷および関連ゲノム不安定性、修飾遺伝子発現、ならびに活性酸素種(ROS)の集積(Johnsonら、1999で概説)が挙げられる。後者に関して、ミトコンドリアはROSの主な細胞性ジェネレーターとして、また皮肉にも遊離基攻撃の主な矛先として、広く考えられている((Leeら、Wei,2001;Beckman and Ames,1998)。しかし、ミトコンドリアは、細胞ROSの唯一の源ではない。
【0005】
もう一つのROS源はペルオキシソームであり、それらの構成酵素の中でも、種々の過酸化水素(H)発生オキダーゼを収容する。これらのオルガネラもまた、カタラーゼを含み、該カタラーゼはHを水および酸素に分解して、このような有害な化合物の蓄積を防ぐ。このように、ペルオキシソームはROSの正味の生産がないことを確実にするために、これらの酵素の相対濃度または活性に関して微妙なバランスを保つ。どのようにしてオルガネラがこの平衡を保つかについては不明である。しかし、ペルオキシソーム酸化促進剤および抗酸化剤が強く連結していること、また正常な状態ではROSの正味の蓄積は起こらないことが知られている。また、細胞(および生体)が老化するにつれて、それらの調節機構に何が起こるかについては知られていない。
【0006】
タンパク質は、受容体分子によって認識される特異的なペプチド配列(ペルオキシソームの標的シグナル(PTS)と呼ばれている)によって、ペルオキシソームに対して向けられている。一部を除けば、ヒトペルオキシソームタンパク質は、カルボキシ末端配列であるPTS1を含む(非特許文献1)。PTS1が同定され、それは、可溶性ペルオキシン(Pex5p)によって、ペルオキシソームにシャトル化されている(非特許文献2)。大部分のペルオキシソーム酵素に関して、PTS1は、Ser−Lys−Leu(=SKL)からなるトリペプチドまたは近縁の改変体である(非特許文献1)。対照的に、カタラーゼPTS1は、非標準的なPTS1であり、4アミノ酸Lys−Ala−Asn−Leu(=KANL)(配列番号1)からなる(非特許文献3)。
【0007】
本明細書に開示されるように、本発明によれば、これらの異なるPTS1は、Pex5pによる異なった認識(SKLは、KANL(配列番号1)よりもかなり良好な基質である)を導き、また老化細胞において、著しく異なる移入効率をもたらす。本明細書中に開示されるように、老化線維芽細胞はペルオキシソームの酸化促進剤および抗酸化剤のこの脱結合の見かけの結果としてROSの量を増加させる。最後に、老化細胞でのペルオキシソームの現在の特徴づけは、これらのオルガネラの寸法および数の変化、ならびにそれらの表面からPex5pを循環させて細胞質ゾルに戻ることを可能とする、それらの能力の変化を明らかにする。
【0008】
F.G.Sheikhら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:2961−2966,1998)は、重篤な神経病理学を有する個人に由来し、カタラーゼを効率的に移入することはないヒト細胞を記載している。これらの細胞でのペルオキシソームカタラーゼを回復させる努力において、研究者は酵素の標的シグナルを変えた。しかし、タンパク質は、対応する遺伝子で一時的なトランスフェクションによって再導入された。この戦略は、細胞がカタラーゼを移入することができないことを修正したが、この文書はアプローチがなぜ作用したかの理由の詳細な分析を提供しなかった。さらに、細胞のトランスフェクションおよび安定な形質転換体のための付随的な(薬物)選択は、本発明の治療的なアプローチとは、明らかに互換性を持たない。本研究で使用されるオリゴヌクレオチドを検査することで、この研究で作られた遺伝子コンストラクトが、筆者がカタラーゼのC末端に付加しようと表面的には求めたSKLトリペプチド末端とは異なり、C末端に配列KANL−SLL(配列番号21)を持つカタラーゼタンパク質をコードすると判断することが可能である。さらに、この研究は単に1人の特定の患者の細胞系でカタラーゼを修復することだけに集中した。しかし、本発明者が発見して、初めてここで開示するもの、すなわち同様なカタラーゼの誤った標的化が老化ヒト細胞で生ずるということを開示しなかった。よって、もちろん、Sheikhらの文献では、予防的に細胞を処理して老化プロセスを遅延させる考えも本明細書中に開示される配列でヒトカタラーゼの天然KANL(配列番号1) C末端の置換も提案しさえしなかった。
【0009】
L.H.Jinら、Free Radic Biol Med 31 1509−1519,2001では、カタラーゼが特化したペプチド配列である「タンパク質形質導入ドメイン(protein transduction domain)」(PTD)を用いるヒト細胞に導入可能であることが開示されている。しかし、Jinらの形質導入方法論は最高水準の技術ではなかった。PTDがカタラーゼのN末端に直接融合した組換え融合タンパク質が生成された。この融合タンパク質は発現され、変性条件下で精製された後、細胞に添加された。これらの条件を考慮して、細胞に入った変性カタラーゼを活性型に再折りたたみしなければならなかった。この酵素が細胞に入り、いくつかのROSを処理する証拠をその文献が提供しているが、その分子がペルオキシソーム(該分子の「正しい」細胞内アドレス)に送達されたことを示唆する証拠はなかった。実際、それとは反対に、酵素が細胞質ゾルに蓄積されることを示唆している知見が得られた。
【0010】
Jinらの研究では、カタラーゼ(またはカタラーゼ融合タンパク質)の一次構造に強力なペルオキシソーム標的シグナルの存在に関するいかなる説明もない。また、注目すべきことは、変性を必要とすることなく、おそらくより重要なこととして目的の分子とインフレーム融合を必要とすることなく、タンパク質の送達を可能とするタンパク質形質導入ドメインが他の研究によって、開発されている。本発明もまた、そのような分子を対象としている。
【0011】
Morrisら、Nature Biotechnology,19:1173−1176,2001は、その天然状態で目的とするタンパク質を効果的に導入するタンパク質形質導入アプローチを記載した。「キャリア(carrier)」は単にかつて細胞に入っていたそのリガンドから解離し、均衡状態の一部としてもはや現れない。本発明者は、この発明の特定の実施形態に基づいて、この技術を再改変カタラーゼ分子と結合すると考えた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Subramani、Physiol.Rev.(1998)78、171〜180
【非特許文献2】Dammai,V.およびSubramani,S.、Cell(2001)105、187〜196
【非特許文献3】Purdue,P.E.およびLazarow,P.B. J.Cell Biol.(1996)134、849-862
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明者らは、新規の修飾カタラーゼ分子を設計した。この分子は、欠陥のあるペルオキシソームでのカタラーゼ機能を促進させる(例えば、回復させる)新規プロセスで使われる。組成物は、重要な抗酸化酵素であるカタラーゼの操作された誘導体を含む。本発明者は、ヒト細胞が老化するにつれて、ペルオキシソームで正しくカタラーゼを区画に分けるそれらの能力が損なわれるということを発見した。細胞が老化するにつれて、他の酵素、すなわちペルオキシソームカタラーゼもまた効率的には移入されないが、カタラーゼの現在の程度に影響を受けるようには見えない。このことは、2種類のタンパク質上でのPTSの性質によると考えられている。ペルオキシソームオキシダーゼはHと他のROSとを生産し続け、カタラーゼのレベルが減少することに起因して、それらの有害な代謝産物が蓄積する。ヒト細胞でのROSの増強は、老化プロセスに対して、また多数の疾患、特に神経変性症、パーキンソン症、アルツハイマー症、筋萎縮性側索硬化症等の変性性疾患に対する有意な一因であると思われる。
【0014】
このように本発明は、動物細胞、好ましくは哺乳類細胞、最も好ましくはヒト細胞で活性な形態のペルオキシソームを促進(例えば、修復)するための組成物および方法に関するもので、このオルガネラの内側でのROSの蓄積を減らし、それによって細胞内での蓄積も減らすことを目的とする。この減少は、そのような細胞の寿命を延ばすこと、および/またはいくつかの他の方法では、老化の影響を減少させること、同様に、長期にわたる酸化ストレスに続く変性変化を予防またはおそらく逆転させることが予測される。
【0015】
ペルオキシソームタンパク質移入の分子機構の新しい理解に基づいて、大部分の状況下で能率的にオルガネラに酵素を導くことは、現在可能である。この改善されたターゲティング効率の1つの基礎はカタラーゼ分子の改変PTSの使用であり、それはペルオキシソームタンパク質移入受容体タンパク質(Pex5p)とのより高い親和性相互作用を可能とする。下記の例は、天然カタラーゼよりも、より効率的に改変PTSを持つカタラーゼがこのPex5pと相互作用することを示す。
【0016】
一実施形態では、本発明は、ペルオキシソームオキシタンパク質移入機構に対する高い親和性のリガンドを生ずるタンパク質生化学を用いて、カタラーゼ「タンパク質療法(タンパク質療法)」の技術を、ヒト細胞内に酵素を「形質導入(transduce)」または送達する能力と組み合わせる。
【0017】
本発明は、長期にわたって応じられなかった要求である生物学的欠損の置換に応える。本明細書に記載される研究は、ヒト細胞が老化にともなってカタラーゼを正しく区画分けする能力が落ちていることを明確に示している。同時に、これらの細胞で産生されるROSのレベルが増加した。タンパク質輸送、細胞生物学、およびタンパク質生化学に関する従来技術を用いて、本発明者はこのカタラーゼ欠乏を逆転させて、ROSの細胞蓄積を減らすか、おそらく除去する戦略、拡大解釈すれば化合物を説明する。
【0018】
Sheikhとその同僚たち(上掲)は、ヒト細胞でのカタラーゼの誤った標的化が「重篤な神経学的障害」を伴うことを開示している。したがって、現在のカタラーゼ技術の開発は、ヒトの健康、疾患、および老化に影響を与える。
【0019】
本発明の結果は、カタラーゼの標的シグナルを修飾することなくヒト細胞にカタラーゼを導入することで、該酵素が細胞質ゾル内に主に蓄積されることを示唆している。そこで、ROS産生の部位から離れた酵素を希釈し、修飾、不活性化、または分解処理する。しかし、下等生物(例えば、虫、ハエ)で示されているように、カタラーゼの細胞質ゾル内レベルが高まっても寿命に劇的な影響を及ぼしうる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明は2つの技術に対して再び焦点をあてる。第1は、きわめて重要な抗酸化酵素を「送達(delivery)」と称してヒト細胞に導入することを伴う。第2は、酵素が通常存在して最も効果的に機能することが知られているオルガネラで該酵素を正しく区画分けすることを意図している。このことを「標的(targeting)」と称する。
【0021】
ほとんどの方法は、(遺伝子、および)タンパク質を細胞に導入することに現在、利用可能ではない。かなり有望な1つの方法は、概して「遺伝子治療(gene therapy)」と称されている。
【0022】
細胞外からカタラーゼを細胞に供給して該酵素にそこからROSをクエンチングさせることが可能かもしれないが、そのようなアプローチは最も効率的な戦略であるようには見えない(そのような方法によるカタラーゼの供給が実際いくつかのROSを処理しうる場合であっても)。
【0023】
したがって、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
配列Xaa−3−Xaa−2−Xaa−1を含むPTSでの置換によって、Lys−Ala−Asn−Leu(配列番号1)の天然配列から修飾カルボキシル末端ペルオキシソーム標的シグナル(PTS)を有する修飾カタラーゼポリペプチドであって、ここで、独立して、
Xaa−3がSer、Ala、またはCysであり;
Xaa−2がLys,Arg、またはHisであり;そして
Xaa−1がLeuまたはMeである
修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目2)
Xaa−3のアミノ末端側に、n個の付加アミノ酸残基(ここで、nは1ないし約17の整数である)をさらに含み、該付加残基が、第1の付加残基に対するXaa−4から17番目の付加残基に対するXaa−20まで連続的に番号付けされている、項目1に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目3)
nが約5ないし約17である、項目2に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目4)
nが約7ないし約13である、項目3に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目5)
nが約9ないし約11である、項目3記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目6)
nが9である、項目3記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目7)
nが少なくとも1、2、または3であり、Xaa−6からXaa−4のいずれか1つにおける残基が、疎水性アミノ酸である、項目2に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目8)
Xaa−6からXaa−4のいずれか1つにおける残基が、独立して、Leu、Val、Ile、Ala、またはGlyである、項目7に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目9)
nが少なくとも1であり、残基Xaa−4が負に帯電したアミノ酸である、項目2に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目10)
残基Xaa−4がLys、Arg、またはHisである、項目9に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目11)
残基Xaa−4がLysである、項目10に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目12)
Xaa−3がSerであり、Xaa−2がLysであり、そしてXaa−1がLeuである、項目1〜11のいずれかに記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目13)
PTS2型配列(Arg/Lys)−(Leu/Ile/Val)−(X)−(His/Gln)−(Ala/Leu/Phe)を含むアミノ酸配列を、アミノ末端またはアミノ末端の近傍に含む、修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目14)
上記PTS2型配列が、Arg−Leu−Gln−Val−Val−Leu−Gly−His−Leu(配列番号11)である、項目13に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。
(項目15)
PTS2型配列(Arg/Lys)−(Leu/Ile/Val)−(X)−(His/Gln)−(Ala/Leu/Phe)を含むアミノ酸配列を、アミノ末端またはアミノ末端近傍にさらに含む、項目1に記載の修飾カタラーゼ。
(項目16)
上記PTS2型配列が、Arg−Leu−Gln−Val−Val−Leu−Gly−His−Leu(配列番号11)である、項目15に記載の修飾カタラーゼ。
(項目17)
項目1、2、13、または15に記載の修飾カタラーゼポリペプチドをコードする核酸分子であって、該コード配列が発現制御配列に作動可能に連結されている、核酸分子。
(項目18)
項目17に記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
(項目19)
項目1、2、13、または15に記載の修飾カタラーゼを調製するための方法であって、
(a)該修飾カタラーゼポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を、該ポリペプチドの発現に有効な条件下でインキュベートする工程、および
(b)該宿主細胞から該修飾カタラーゼを収集する工程
を包含する、方法。
(項目20)
(a)項目1〜11のいずれかに記載の修飾カタラーゼポリペプチドと
(b)薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアと
を含む、薬学的組成物。
(項目21)
(a)項目12に記載の修飾カタラーゼポリペプチドと、
(b)薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアと
を含む、薬学的組成物。
(項目22)
(a)項目13または15のいずれかに記載の修飾カタラーゼポリペプチドと、
(b)薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアと
を含む、薬学的組成物。
(項目23)
(a)項目1〜11のいずれかに記載の修飾カタラーゼポリペプチドと、
(b)それに結合もしくはそれと会合した送達もしくは転位分子または部分と
を含む、送達可能なペルオキシソーム標的ポリペプチド。
(項目24)
(a)項目12に記載の修飾カタラーゼポリペプチドと、
(b)それに結合もしくはそれと会合した送達もしくは転位分子または部分と
を含む、送達可能なペルオキシソーム標的ポリペプチド。
(項目25)
(a)項目13または15のいずれかに記載の修飾カタラーゼポリペプチドと、
(b)それに結合もしくはそれと会合した送達もしくは転位分子または部分と
を含む、送達可能なペルオキシソーム標的ポリペプチド。
(項目26)
上記送達分子が、ペプチドまたはポリペプチドである、項目23に記載の送達可能なペルオキシソーム標的ポリペプチド。
(項目27)
上記送達分子が、ペプチドまたはポリペプチドである、項目24に記載の送達可能なペルオキシソーム標的ポリペプチド。
(項目28)
上記送達分子が、ペプチドまたはポリペプチドである、項目25に記載の送達可能なペルオキシソーム標的ポリペプチド。
(項目29)
上記ペプチドまたはポリペプチドが、以下:
(a)HIV−TATタンパク質またはその転位活性誘導体、
(b)配列RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号4)を有するペネトラチン、
(c)配列RQIKIFFQNRRMKWKK(配列番号5)を有するペネトラチン改変体W48F、
(d)配列RQIKIWFQNRRMKFKK(配列番号6)を有するペネトラチン改変体W56F、
(e)配列RQIKIWFQNRRMKFKK(配列番号7)を有するペネトランチン改変体、
(f)異なるヘルペスウイルスに由来する単純ヘルペスウイルスタンパク質VP22またはその転位活性相同体、および
(g)配列KETWWETWWTEWSQPKKKRKV(配列番号9)を有するPep−1
からなる群から選択される、項目26に記載の送達可能なポリペプチド。
(項目30)
上記ペプチドまたはポリペプチドが
(a)HIV−TATタンパク質またはその転位活性誘導体、
(b)配列RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号4)を有するペネトラチン、
(c)配列RQIKIFFQNRRMKWKK(配列番号5)を有するペネトラチン改変体W48F、
(d)配列RQIKIWFQNRRMKFKK(配列番号6)を有するペネトラチン改変体W56F、
(e)配列RQIKIWFQNRRMKFKK(配列番号7)を有するペネトランチン改変体、
(f)異なるヘルペスウイルスに由来する単純ヘルペスウイルスタンパク質VP22またはその転位活性相同体、および
(g)配列KETWWETWWTEWSQPKKKRKV(配列番号9)を有するPep−1
からなる群から選択される、項目27に記載の送達可能なポリペプチド。
(項目31)
上記ペプチドまたはポリペプチドが
(a)HIV−TATタンパク質またはその転位活性誘導体、
(b)配列RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号4)を有するペネトラチン、
(c)配列RQIKIFFQNRRMKWKK(配列番号5)を有するペネトラチン改変体W48F、
(d)配列RQIKIWFQNRRMKFKK(配列番号6)を有するペネトラチン改変体W56F、
(e)配列RQIKIWFQNRRMKFKK(配列番号7)を有するペネトランチン改変体、
(f)異なるヘルペスウイルスに由来する単純ヘルペスウイルスタンパク質VP22またはその転位活性相同体、および
(g)配列KETWWETWWTEWSQPKKKRKV(配列番号9)を有するPep−1
からなる群から選択される、項目28に記載の送達可能なポリペプチド。
(項目32)
上記送達分子がPep−1である、項目29に記載の送達可能なポリペプチド。
(項目33)
上記修飾カタラーゼと会合した送達部分が、リポソームである、項目23に記載の送達可能なポリペプチド。
(項目34)
上記リポソームが、食細胞または他のホスファチジルセリン認識細胞による取り込みのために、有効濃度の外部膜ホスファチジルセリンを含む、項目33記載の送達可能なポリペプチド。
(項目35)
細胞内の過酸化水素の濃度を減少させるための方法であって、該細胞を、項目1〜11および13〜16のいずれかに記載の修飾カタラーゼポリペプチドに、該ポリペプチドが該濃度を減少させるために十分な量でペルオキシソームに対して標的化される条件下で、接触させる工程を包含する、方法。
(項目36)
上記修飾カタラーゼポリペプチドが、それに結合もしくはそれと会合した送達もしくは転位分子または部分をさらに含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
上記接触させる工程が、インビトロである、項目35に記載の方法。
(項目38)
上記接触させる工程が、インビボである、項目35に記載の方法。
(項目39)
上記細胞が幹細胞である、項目37に記載の方法。
(項目40)
上記細胞が人工器官の一部である、項目37に記載の方法。
(項目41)
上記接触させる工程が、インビトロである、項目36に記載の方法。
(項目42)
上記接触させる工程が、インビボである、項目36に記載の方法。
(項目43)
上記細胞が幹細胞である、項目41に記載の方法。
(項目44)
上記細胞が人工器官の一部である、項目41に記載の方法。
(項目45)
ペルオキシソーム活性カタラーゼの不適当なレベルに関連するかまたはペルオキシソーム活性カタラーゼの不適当なレベルによって引き起こされる疾患または状態に罹患する哺乳類被験体を処置するための方法であって、該被験体に、項目1〜11および13〜16のいずれかに記載の修飾カタラーゼポリペプチドの有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目46)
ペルオキシソーム活性カタラーゼの不適当なレベルに関連するかまたはペルオキシソーム活性カタラーゼの不適当なレベルによって引き起こされる疾患または状態に罹患する被験体を処置するための方法であって、該被験体に項目20に記載の薬学的組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目47)
ペルオキシソーム活性カタラーゼの不適当なレベルに関連するかまたはペルオキシソーム活性カタラーゼの不適当なレベルによって引き起こされる疾患または状態に罹患する被験体を処置するための方法であって、該被験体に項目21に記載の薬学的組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目48)
ペルオキシソーム活性カタラーゼの不適当なレベルに関連するかまたはペルオキシソーム活性カタラーゼの不適当なレベルによって引き起こされる疾患または状態に罹患する被験体を処置するための方法であって、該被験体に項目22に記載の薬学的組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目49)
上記被験体がヒトである、項目45に記載の方法。
(項目50)
上記疾患または状態が年齢関連性である、項目45に記載の方法。
(項目51)
年齢関連性皮膚皺または他の美観的損傷の発達を予防するための処置方法であって、項目45に記載の方法を実行する工程を包含する、方法。
(項目52)
上記投与する工程が局所的である、項目45に記載の方法。
(項目53)
上記疾患または状態が、高脂血症、皮膚疾患、神経変性疾患、既存の虚血性状態、または該虚血性状態の処置後の再灌流傷害の危険性である、項目45に記載の方法。
(項目54)
上記投与する工程が局所的である、項目53に記載の方法。
(項目55)
上記被験体が、家畜またはクローン動物である、項目45に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、継代早期、継代中期、および継代後期のヒト二倍体線維芽細胞(HDF)でのPTS1(−SKL)タンパク質移入を示す一連のグラフである。図1A:半無傷IMR90 HDFを37℃で、インビトロ移入反応でビオチニル化ルシフェラーゼとインキュベートした。45分後、細胞を遠心およびホモゲナイズし、オルガネラペレット/ペルオキシソーム分画を調製した。オルガネラペレットの等価部分への移入の度合い(レベル)は、酵素結合免疫測定法(ELISA)で測定した。表示された値(重複試料の平均値および範囲)は、時間0の値を減算した、時間経過にともなう490nmでの吸光度単位である。E=継代早期細胞、M=継代中期細胞、およびL=継代後期細胞。図1B:移入を細胞で直接検定したことを除いて図1Aと同様に、半無傷Hs27 HDFをビオチニル化ルシフェラーゼとともにインキュベートした。
【図2】図2は、カタラーゼ潜在性を示すグラフである。IMR90 HDFは、ジギトニン濃度を増大させて処理し、カタラーゼ(黒四角)および乳酸デヒドロゲナーゼ(黒丸)のレベルを測定した。データは、1%TritonX−100存在下で測定し、全細胞活性(100と設定)の%として表した。ベタのシンボル=継代早期細胞、白抜きのシンボル=継代後期細胞。
【図3】図3は、固相アッセイでのPex5p結合の分析を示すグラフおよび一連のブロットである。図3A:2μgのルシフェラーゼ(Luc)、カタラーゼ(Cat)、ウシ血清アルブミン(BSA)、または卵白アルブミン(Oval)をマイクロタイタープレートに被覆し、GST−Pex5pの結合を調べた。示した値(490nmでの吸光度単位)は、平均値±標準偏差(SD)(n=5)を表す。リガンドブロットアッセイを図3Bないし図3Fに示す。800ngのLuc、Cat、またはBSAをSDS−PAGEで分離し、クマシーブルーで染色するか(図3B)、もしくはニトロセルロース膜に移してGST−Pex5pでブロットした(図3C)。図3D、3E、および3F:特有のPTS1(KANL)(配列番号1)、改変PTS1(SKL)、もしくは無PTS1(−)を含む200ngの組換えヒトカタラーゼをSDS−PAGEで分離し、クマシーブルーで染色するか(図3D)、またはニトロセルロース膜に移して抗カタラーゼ抗血清で免疫ブロット(図3E)もしくはGST−Pex5pでブロット(図3F)した。
【図4】図4は、オルガネラ膜とPex5との結合を示す一連のブロットおよびグラフである。図4Aないし図4Cは、老化HDFのオルガネラ上でのPex5p蓄積を示す。Pex5pは、抗Pex5p抗血清(α5)または免疫前血清(PI)を用いた継代早期(E)、継代中期(M)、または継代後期(L)IMR90 HDFの界面活性剤可溶化オルガネラ由来の免疫沈降であり、また示したように、抗Pex5p抗血清によって免疫ブロットした。オルガネラPMP70もまた、免疫ブロッティングによって調べた。図4Dは、Fujifilm LAS 100plusルミネッセンスイメージアナライザによるα5免疫ブロットの定量化を示す。縦軸の単位は任意である。同等の結果が3つの異なる実験で得られた。図4Eは、継代後期細胞から得たオルガネラの外側でPex5pが蓄積することを示す。継代後期IMR90 HDFから得たオルガネラを、プロティナーゼKおよびTritonX−100による処理を施すか未処理とし、示されるように、結果として生ずるオルガネラを抗Pex5pまたは抗カタラーゼ抗血清により免疫ブロットした。
【図5】図5は、老化HDFに蓄積するHがペルオキシソームタンパク質移入を阻害することを示すグラフである。継代早期IMR90 HDFをHで前処理し、ペルオキシソーム移入を図1Aに示すように検討した。結果(平均値±SD)を4回の実験からプールし、未処理対照値(任意に100に設定)に対して正規化して比較をおこなった。
【図6】図6は、継代早期(E)および継代後期(L)ヒト二倍体線維芽細胞へのカタラーゼ移入を示す。Legakisら(2002)Mol.Biol.Cell.13,4243−4255に概説されたように細胞数に対して正規化した反応で、ビオチニル化カタラーゼのペルオキシソーム移入を記載通りに検討した(Terleckyら(2001),Exp.Cell Res.263,98−106)。
【図7】図7は、カタラーゼ誘導体に対するPex5pの結合を示す。表面プラズモン共鳴を用いて、それ自身のPTSを有するカタラーゼ(カタラーゼ−KANL)(配列番号1)ならびに改変PTSを有するカタラーゼ(カタラーゼ−SKL)に対するPex5pの結合を検討した。提示される結果が応答単位(RU)であって、対照面に対しての非特異的結合について修正された点に注意する。GST標識Pex5pの1000応答単位を、BIACOREのプロトコルに従ってアミン結合により、CM5センサーチップ表面に結合させた。10μMのカタラーゼコンストラクトを10μL/分で1分間にわたり、チップ表面上に注入した。全ての実験で、BIACOREバイオセンサー3000を用いた。
【図8】ペルオキシソームタンパク質移入の定量分析(ヒト二倍体線維芽細胞へのカタラーゼ−SKL(−SKL)およびカタラーゼ−KANL(−KANL)(配列番号1)移入の比較)を示す。ビオチニル化ルシフェラーゼおよびカタラーゼのペルオキシソーム移入を、種々の時間で、既に説明されたように(Terleckyら(2001),Exp.Cell Res.263,98−106)、ELISA法による定量分析によって測定した。
【図9】図9は、カタラーゼ誘導体のペルオキシソーム移入(ヒト細胞のペルオキシソームへのルシフェラーゼ(−SKL)およびカタラーゼ(−KANL)(配列番号1)移入の比較)を示す。ビオチニル化カタラーゼ誘導体のペルオキシソーム移入を、種々の時間で、既に説明されたように(Terleckyら(2001),Exp.Cell Res.2632,98−106)、ELISA法による定量分析によって測定した。
【図10】図10は、カタラーゼの形質導入を示す。無カタラーゼ症細胞(Acat)、IMR90細胞(IMR90)、またはヒトカタラーゼが形質導入された無カタラーゼ症細胞(Acat+Cat)、あるいはHisタグ付きカタラーゼ(Acat+His−Cat)のウエスタンブロットを生成した(抗ヒトカタラーゼ抗体をプライマリーインキュベーションで使用した。注記:カタラーゼモノマーがSDS−PAGE上で60kDaに移動)。
【図11】図11は、細胞過酸化水素(H)レベルの分析を示す。ヒト無カタラーゼ症(Acat)と、カタラーゼが形質導入された無カタラーゼ症細胞(Acat+Cat)を、蛍光色素2’,7’−ジクロロフルオレセインジアセテートを用いて、Hの存在について検討した。累積細胞蛍光の定量分析は、アメリカ国立衛生研究所のImage J Softwareを用いておこなった。注意する点は、表示された結果が、カタラーゼ処理細胞でのHレベルが約60%減少することを示しているということである。
【図12】図12は、ペルオキシソームタンパク質移入の定量的インビトロアッセイを模式的に示す。このアッセイはELISAに基づき、半透過性ヒト細胞およびビオチニル化移入基質を用いる。「基本プロトコル」では、移入は細胞で直接評価される。「代替プロトコル」では、移入は細胞オルガネラ/ペルオキシソームの単離後に定量化される。A、アビジン;B、ビオチン;HRP、西洋わさびペルオキシダーゼ;P、ペルオキシソーム;PTS、ペルオキシソーム標的シグナル;SA、ストレプトアビジン。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(好ましい実施形態の説明)
本開示は、特定の細胞(老化ヒト細胞を含む)が効率的に該細胞のペルオキシソーム酵素(カタラーゼを含む)を移入することに失敗することを明らかにする。カタラーゼは、特に「弱い」ターゲッティングシグナル(KANL(配列番号1) C末端テトラペプチド)を含む。本発明は、部分的に以下の概念に基づく。すなわち、「強い」ターゲッティングシグナル、例えば−SKLまたはSKLの機能的誘導体を含むように改変されたカタラーゼは、かなり有害な活性酸素種(ROS)の細胞蓄積(例えば、年齢関連細胞蓄積)を減少、またはおそらく逆転させる。そのようなカタラーゼは、本明細書では「修飾(modified)」または「標的(targeted)」カタラーゼと称する。
【0026】
したがって、好ましい修飾カタラーゼでは、KANL(配列番号1)配列が取り除かれ、SKLまたはその機能的改変体(実施例参照)と置換されている。トリペプチドSKLのいずれかの改変体を本発明で使用し得る。ただし、この改変体が十分な、しかし高すぎることのない親和性でPex5pに結合し、ペルオキシソームへのカタラーゼの効率的移入および放出を可能にし、それによってペルオキシソームに生じたHの分解をもたらすことが条件である。一実施形態では、トリペプチドはSLLではない。一般に、トリペプチドがKANL(配列番号1)の後にあることが好ましい。
【0027】
好ましいSKL改変体では、少なくとも1アミノ酸残基および、好ましくは1つのみが、異なる残基によって置換される。タンパク質化学および構造の詳細な説明については、例えば、Schulz, G.E.ら、Principles of Protein Structure,Springer−Verlag,New York,1979,およびCreighton,T.E.,Proteins:Structure and Molecular Principles,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,1984(これらは本発明で援用される)を参照せよ。アミノ酸配列でおこなうことが可能な置換の種類は、異なる種の相同タンパク質間でのアミノ酸変化の頻度の分析にもとづくものであってもよい。そのような分析にもとづいて、保存的置換、以下のような交換が挙げられる。すなわち、
【0028】
【表1】

【0029】
本発明にもとづく最多数置換は、ペプチド分子の機能的特徴に変化をもたらさないものであり、PTS 1のようにその作用が主に見られる。そうすることに先立って置換の正確な効果を予測することが難しいときでも、当業者は、効果がルーチンのスクリーニングアッセイによって、好ましくは本明細書中の生物学的および生化学的アッセイによって、評価することができることを理解する。置換アミノ酸は、天然または非天然のアミノ酸またはアミノ酸誘導体であり得る。
【0030】
好ましい置換改変体は、S、K、およびLのいずれか1つ以上の保存的置換を有する。好ましい置換として、
(1)N末端“−3”位置にあるSのかわりにA、G、C、またはT(好ましくはAまたはC)、
(2)第2の(−2)位置にあるKのかわりにRまたはH、
(3)第3の(−1)位置にあるLのかわりにI、V、またはM(好ましくはM)が挙げられる。
【0031】
置換の上記の種のいかなる組合せでも、許容範囲内である。1つの好ましい置換改変体はAKLであり、いくつかのペルオキシソーム酵素および有効なPTS1にある既知のC末端配列である。面白いことに、標的カタラーゼの調製は、天然のカタラーゼ配列で一つのアミノ酸置換だけを作ることによって、おこなわれる。ここで、3つのC末端残基がANLである。Asn(N)に対するLys(K)の置換は、酵素に対して強いペルオキシソーム移入シグナルを与えるAKLペプチドで終わるカタラーゼをもたらす。
【0032】
また、1または2つの残基がSKLまたはその置換改変体のN末端側で加えられる付加改変体は、発明に含まれる。また、それがこのペプチド構造のペルオキシソーム移入強化機能に干渉しなければ、そのようないかなる付加も企画される。
【0033】
機能的PTSとして働くことのできる改変体についての議論は、Lametschwandtnerら(1998)J Biol.Chem.273,33635−33643およびGottoら(2003)J.Biochem.42,1660−1666を参照せよ。
【0034】
本発明は、「普遍的ペルオキシソームターゲッティング配列(universal peroxisomal tareting sequence)」(UPTS)も含む。この配列を、ペルオキシソームにそのタンパク質または他の分子を標的とするために、任意のタンパク質または他の分子に付加することができる(望ましくは融合または結合)。好ましいUPTSは、3ないし約20アミノ酸、より好ましくは3ないし約16残基、最も好ましくは約8ないし12残基を有する。便宜上、残基は、以下の通りに負の整数をさかのぼることでC末端から番号付けされている。
【0035】
NH−...Xaa−n...Xaa−4Xaa−3Xaa−2Xaa−1−COO−(または単一文字コード NH−...X−n...X−4−3−2−1−COO−)
したがって、12残基UPTSでは、Xaa−nはXaa−12、およびnは12に等しい。
【0036】
本発明の配列のいずれかにおけるアミノ酸は、天然アミノ酸、または非天然アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体である。
【0037】
したがって、本発明の一実施形態は、配列Xaa−3Xaa−2Xaa−1を含むPTSでの置換によって、Lys−Ala−Asn−Leu(配列番号1)の天然配列から修飾されたカルボキシル末端ペルオキシソームターゲッティングシグナル(PTS)を持つ修飾カタラーゼポリペプチドであり、
式中、独立して、(a)Xaa−3はSer、Ala、またはCys;(b) Xaa−2はLys,Arg、またはHis;および(c)Xaa−1はLeuまたはMetである。
【0038】
本発明のさらなる実施形態では、上記したように修飾カタラーゼポリペプチドは、Xaa−3のアミノ末端側に、n個の付加アミノ酸残基(式中、nが1ないし約17の整数)をさらに有し、付加残基は、第1の付加残基のXaa−4から第17の付加残基のXaa−20間で連続的に番号が付けられている。付加アミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、またはその修飾改変体であってもよい。好ましくは、nは、約5ないし約17(例えば、約7ないし約13、または約9ないし約11、あるいは9)である。別の実施形態では、nは少なくとも1、2、または3であり、Xaa−6ないしXaa−4のいずれか1つにある残基は、疎水性アミノ酸(例えば、残基Xaa−6ないしXaa−4は、独立して、Leu(L)、Val(V)、Ile(I)、Ala(A)、またはGly(G))である。別の実施形態では、nは少なくとも1であり、残基Xaa−4は正に帯電したアミノ酸(例えば、残基Xaa−4は、Lys(K)、Arg(R),またはHis(H)、好ましくはLys(K))である。好ましくは、本発明の修飾カタラーゼのいずれかで、Xaa−3はSer(S)、Xaa−2はLys(K)、およびXaa−1はLeu(L)である。一実施形態では、置換PTSは配列 Ser−Leu−Leuまたは 配列 Lys−Ala−Asn−Leuを含まない。
【0039】
別の実施形態では、カタラーゼは、ペルオキシソームへの移入を強化する強いペルオキシソームターゲッティングシグナルとして働くSKLのペプチドミメティックの結合によって、修飾される。好ましいペプチド模倣(ミメティック)化合物は、SKLまたはその生物学的活性のある改変体の生物学的効果を模倣する。ペプチド模倣薬は、非天然ペプチドまたは非ペプチド剤であってもよく、SKLの受容体結合活性または生物学的活性を持つように、SKLの結合要素の立体特異性を再び生成する(カタラーゼのC末端にある場合、または他のタンパク質に結合したUPTSの形状である場合)。ミメティックが結合する好ましい受容体は、Pex5pである。したがって、ミメティックはPex5pの「基質」であると考えることもできる。生物学的活性のあるSKLペプチドに類似して、ペプチドミメティックは、結合面(SKLが結合する任意のリガンドまたは受容体と相互作用する)結合面を有する。また、部分的なペプチド特性を保持する化合物も含まれる。例えば、本発明のペプチド内にあるタンパク質分解に不安定な結合のいずれかが同配体(N−メチル化;D−アミノ酸)等の非ペプチド因子あるいは還元型ペプチド結合(一方、分子の残りの部分はペプチド様の性質を保持)によって選択的に置換され得る。ペプチド模倣化合物(アゴニスト、基質、または阻害剤のいずれか)は、多数の生理活性ペプチド(例えばオピオイドペプチド、VIP、トロンビン、およびHIVプロテアーゼ)について記載されている。ペプチド模倣化合物を設計および調製する方法は公知である(Hruby,V.J.,Biopolymers 33:1073−1082(1993);Wiley,R.A.ら、Med.Res.Rev.13:327−384(1993);Mooreら、Adv.in Pharmacol 33:91−141(1995);Giannisら、Adv.in Drug Res.29:1−78(1997))(これらの参照文献をそっくりそのまま援用する)。これらの方法は、SKLのPex5p結合特異性および生物活性を所有するペプチドミメティックを作るのに用いられる。そのような化合物を設計して合成するために、本開示を鑑みて、当業者が利用できるペプチド化学および一般の有機化学の知識で充分である。例えば、そのようなペプチドミメティックの同定は、本発明のペプチドの結晶学的に誘導された3D構造の検査によって、遊離したかたちで、別のポリペプチドに融合したかたちで、あるいはPex5p等のリガンド/受容体との複合体に結合したかたちで、おこなうことが可能である。あるいは、またはそれに加えて、ペプチドの構造を、核磁気共鳴スペクトル測定法の技術によって得ることができる。そのリガンドまたは受容体とのペプチドの相互作用の立体化学についてのより良好な知見によって、そのようなペプチド模倣薬の合理的な設計が可能になる。
【0040】
上述のC末端PTS−1型分子に加えて、第2の保存されたペルオキシソーム標的配列(PTS2−型配列)が、N末端または該N末端の近傍にいくつかのペルオキシソーム局在タンパク質分子(しかしカタラーゼにはない)が天然に見つけられる。PTS2の受容体は、Pex7Pである。PTS2配列および機能に関しての概説は、Purdueら、2001を参照せよ。N末端の「近傍(near)」は、該N末端の約40アミノ酸内にあることを意味している。この9つのアミノ酸ターゲッティング部分のコンセンサス配列は、(Arg/Lys)−(Leu/Ile/Val)−(X)−(His/Gln)−(Ala/Leu/Phe)である。好ましい実施形態において、このターゲッティング部分は、アミノ酸配列RLQVVLGHL(配列番号11)を持つ。この配列の活性改変体(例えば、1種類以上の保存的アミノ酸置換が存在する)は、それがペルオキシソームターゲティング活性を保持するという条件で、本発明にも含まれる。当業者は、それが所望の活性を保持するかどうか決定するために、推定配列を簡単に試験することができる。したがって、本発明の修飾カタラーゼポリペプチドは、そのC末端のPTS 1−型配列に加えて、またはその代わりに、上述のコンセンサスPTS2−型配列を持つペプチドを含み、望ましくは配列番号11の配列を持つものであってもよい。PTS2配列は、カタラーゼポリペプチドのN末端、またはその近傍で操作されることが好ましい。
【0041】
PTS1およびPTS2配列は、種々の動物種について記載されており、本発明の修飾カタラーゼタンパク質で「混合およびマッチング」される。もちろん、1つの動物種由来のPTSがもう一つの種に導入される場合、異種間抗原性の効果が起こらないことが好ましい。
【0042】
本発明の組成物および方法で使用される修飾カタラーゼ分子は、任意の動物源、望ましくは哺乳類、最も望ましくはヒトのカタラーゼに由来することができる。修飾カタラーゼは、数あるなかでも、家畜(例えば、ニワトリ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、またはウマ)、愛玩動物、またはヒト(例えば、1つまたは別の疾患または状態について処置を受けている患者)に由来する(さらに再導入される)ことができる。1つの動物種からのカタラーゼ分子がもう一つの種に導入される場合、異種間抗原性の効果が起こらないことは好ましい。
【0043】
ヒトカタラーゼタンパク質の配列は、(配列番号2)である。
【0044】
【数1】

【0045】
また、上記の配列の修飾カタラーゼ対立遺伝子改変体(多数の改変体が同定されている)も意図している。本発明は、非ヒト哺乳類のカタラーゼ対立遺伝子改変体と同様に、それらの改変体のいずれかの配列を持つカタラーゼを含む。本明細書のどこかに記載された種類の人工的に作られたカタラーゼ改変体およびフラグメントの修飾形態もまた本発明の範囲内である。
【0046】
上記ヒトカタラーゼタンパク質をコードする核酸の配列は、停止コドンを含んで、(配列番号3)である。
【0047】
【数2】

【0048】
本発明の一実施形態は、カタラーゼを動物細胞(例えばヒト細胞)に導入する方法を含む。臨床設定では、老化または特定の疾患に伴う種々の欠乏症が現れる前に、これは老化関連プロセスまたは他の病理学的プロセスを遅くするために、予防的に実行される可能性がある。この方法のために有用な組成物は、カタラーゼ分子を含むもので、1種類以上のPTS(例えば、UPTS)またはPTSのミメティック、および任意に、ポリペプチドまたはペプチド送達(「ターゲッティング」とは異なる)系となる別の成分と結合している。本明細書で用いられるように、「送達(delivery)』は細胞に分子を持ち込むことを意味しており、一方「ターゲティング(targeting)」はペルオキシソームに分子を持ち込むことを意味する。本明細書中に考察される送達分子は、細胞エントリーを生じるために他によって使われるポリペプチドまたはペプチドを含む。例えば、Morris et al.(上掲)を参照せよ。この文献を本明細書ではそのまま全体として援用する。好ましい戦略は以下の通りである。すなわち、新しく設計されたカタラーゼ分子(例えばカタラーゼ−SKL)を特別に設計したペプチドとインキュベートする。ここで、該ペプチドは、カタラーゼを「被覆」し、そのヒト細胞へのエントリーを促進する。この送達系は、カタラーゼに融合する送達ペプチドを必要とせず、カタラーゼは「形質導入」プロセスの前に変性されてはならない。多くの以前の送達系の不都合な点は、それが送達の前に「ペイロード(payload)」タンパク質の変性および細胞内でのその後の再生を必要としたということである。発明のこの態様は、細胞にタンパク質転位を促進するために、十分検査されたアプローチに基づく。この方法は、完全に折り畳んだタンパク質は、形質膜をまたがって形質導入されており、この状態でペルオキシソームに移入されることができるという事実を利用する。
【0049】
細胞エントリーおよび転位を促進する「送達」ペプチド/ポリペプチドの1つの型として、HIV−TATタンパク質(Frankel,ADら、Cell 55:1189−1193(1998))とAntennapoedia homeodomain由来の第3のαヘリクス((Derossiら、J Biol.Chem.269:10444−10450(1994);Lindgren,Mら、Trends in Pharmacol.Sci. 21:99−103 (2000))が含まれる。後者のペプチドもまた、「ペネトラチン(penetratin)」として知られており、野生型配列RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号4)を持つ16個のアミノ酸からなるペプチドまたはW48F((RQIKIFFQNRRMKWKK,配列番号5)およびW56F(RQIKIWFQNRRMKFKK,配列番号6)と示されるその2つの類似体/改変体((Christiaens Bら、Eur J Biochem 2002,269:2918−2926)である。上記変異の両方を持つ別の改変体も含まれる(RQIKIFFQNRRMKFKK,配列番号7)。
【0050】
別のタンパク質(ファミリー)として、VP22、単純ヘルペスウイルス(HSV−1)タンパク質が含まれ細胞内輸送の特性が優れており、また多くの周辺細胞に対してタンパク質を分配する能力を持っている(Elliott, Gら、1997,Cell 88:223−33;O’Hare & Elliott,米国特許第6,017,735号)。例えば、VP22は、p53(Phelan,A.ら、1998,Nat Biotechnol 16:440−3)またはチミジンキナーゼ(Dilber,MSら、1999,Gene Ther 6:12−21)に結合し、インビトロで周辺細胞に対する結合したタンパク質の拡散を促進する。VP22は、他のヘルペスウイルス(例えば鳥類のマレック病ウイルス(MDV))に、「ホモログ(homologues)」を持つ。マレック病ウイルス1型UL49はHSV−1 VP22と相同性を共有し(Koptidesovaら、1995,Arch Virol.140,355−362)、また外因性の適用後、細胞内輸送ができることが示されている(Dorangeら、2000,J Gen Virol.81 Pt 9:2219−2230)。これら全てのタンパク質は、この発明の修飾カタラーゼの細胞内取り込みを強化するためのアプローチを提供する細胞間拡散の性質を持っている。
【0051】
また、HIV−TATもしくはVP22等の上記細胞間拡散または「送達」タンパク質の「機能的誘導体」も含まれ、それらには相同アミノ酸置換改変体、「フラグメント」、または化学的誘導体が包含され、該用語は以下のように定義される。機能的誘導体は、測定可能な転位または細胞間拡散(VP22様)活性を保持するもので、該活性は所望のタンパク質、好ましくは修飾カタラーゼが、その後に効果的にペルオキシソームに移入されるように、細胞に首尾良くエントリーするのを促進する。このプロセスは、本発明にもとづいて、タンパク質の実用(例えば、治療)を可能とする。「機能的誘導体」は、該用語が本明細書中で統合的または代替的に用いられるかどうかにかかわりなく「改変体」および「フラグメント」を包含する。
【0052】
上記の輸送タンパク質が輸送しているタンパク質(例えばカタラーゼ)と結合体化または他の方法で結合している場合、上記の輸送タンパク質が最も作用すると言われているので、それらを使用する場合に多くの欠点がある。標的カタラーゼと混合され、かつその作用にとって化学的に結合している必要のないより有効な送達ポリペプチドは、Morrisら(上掲)に記載されており、以下の両親媒性アミノ酸配列KETWWETWWTEWSQPKKKRKV(配列番号8)を持つPep−1である。Pep−1は、以下の3つのドメインからなる。すなわち、
(1)5つのTrp残基(KETW WETWWTEW、配列番号9)(上記配列番号8のN末端の12残基)を含む疎水性Trp−リッチモチーフ。細胞膜に対する有効なターゲッティングおよびタンパク質との疎水性相互作用の開始にとって、このモチーフは望ましいか、必要とされる。
(2)ペプチドベクターの溶解度および細胞間送達を改善する親水性Lysリッチドメイン(KKKRKV、配列番号10)(SV−40ウイルスラージT抗原の核局在化配列に由来する配列の6つのC末端残基)。
(3)配列番号8の内部残基であって、2つの活性なドメインを切り離し、疎水性および親水性の両ドメインの柔軟性と完全性とを改善するプロリンを含むスペーサードメイン(SQP)。
【0053】
したがって、本発明の別の実施形態は、送達可能なペルオキシソーム標的ポリペプチドであって、該ポリペプチドは本発明の修飾カタラーゼとそれに結合もしくは会合した送達もしくは転位分子または部分を含む。この送達分子は、ペプチドまたはポリペプチドであってもよい。例えば、
(a)HIV−TATタンパク質またはその転位活性のある誘導体、
(b)配列RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号4)を持つペネトラチン(penetratin)、
(c)配列RQIKIFFQNRRMKWKK(配列番号5)を持つペネトラチン改変体W48F、
(d)配列RQIKIWFQNRRMKFKK(配列番号6)を持つペネトラチン改変体W56F、
(e)配列RQIKIWFQNRRMKFKK(配列番号7)を持つペネトラチン改変体、
(f)異なるヘルペスウイルスからの単純ヘルペスウイルスタンパク質VP22またはその転位活性のある相同体、または
(g)配列KETWWETWWTEWSQPKKKRKV(配列番号9)を持つPep−1、である。
【0054】
送達タンパク質(例えば、上記したペプチド)とPTS2型配列とが修飾カタラーゼポリペプチドに存在する場合、N末端からはじまる配列の順番が好ましい。すなわち、「送達配列」、PTS2型配列、カタラーゼのN末端である。
【0055】
以下に詳細に説明するように、送達可能なペルオキシソーム標的ポリペプチドは、リポソームに連結してもよい。したがって、本発明の別の態様は、本発明の送達可能なポリペプチドである(例えば、修飾カタラーゼポリペプチド)。ここで、修飾カタラーゼに伴う送達部分は、リポソームである。一実施形態では、食細胞または他のホスファチジルセリン認識細胞によって取り込むために、リポソームは有効濃度の外部膜ホスファチジルセリンを含んでいる。
【0056】
本発明の修飾カタラーゼポリペプチドが、ペルオキシソーム内で、結果として細胞内で、Hのレベルを減少させる能力を保ち、かつ間接的に他のROSのレベルを減少させる能力を保つならば、それを任意に適当な長さとすることができる。種々の源由来のカタラーゼタンパク質の触媒部位の位置および特性は、当業者に周知である。したがって、例えば、本発明の修飾カタラーゼタンパク質を、基本的にタンパク質の1種類以上の触媒部位(さらにもちろん、本発明のC末端PTS1型配列および/またはN末端PTS2型配列、さらに上記したような任意の送達配列)から成るペプチドと同程度に小さなものとすることができる。より大きいフラグメントも含まれ、該フラグメントは、触媒部位に加えて、該触媒部位の側面のいずれか一方またはその両方に約1〜20の追加のアミノ酸を含む分子から、完全長カタラーゼタンパク質よりも1アミノ酸だけ短い分子までの大きさの範囲である(C末端PTS配列、N末端PTS配列、または上記したような送達配列を含む)。適当なフラグメントを生成する方法、および酵素活性を該フラグメントが保持することを確立する方法は、決まり切った日常的な従来方法である。タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドという用語は、本明細書ではしばしば同義的に使用される。「ポリペプチド」の長さは、いかなる特定のサイズを意図したものではないので、「ポリペプチド」および「ペプチド」は重なる。
【0057】
本発明の一実施態様は、本発明の修飾カタラーゼポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド(例えば単離したポリヌクレオチド)であり、そのコード配列は発現制御配列に対して操作可能に連結されている(ポリヌクレオチドおよび核酸は、本明細書中で同義的に用いられる)。ポリヌクレオチドは、本発明の任意の修飾カタラーゼポリペプチドをコードすることが可能であり、上記のようにPTS 1および/またはPTS2配列を含む。任意には、ポリヌクレオチドは、修飾カタラーゼのN末端、またはその近傍で、フレーム単位で融合した、上記のような送達ペプチドをさらにコードする可能性がある。本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列は、天然に生ずる配列と異なり得る。例えば、ポリヌクレオチドは遺伝暗号の縮重を反映するものであってもよく、および/または本明細書の他のところで述べられている型の改変体ポリペプチドをコードするものであってもよい。インビトロまたはインビボで、更なる使用のために修飾カタラーゼを調製する方法として、本発明のポリヌクレオチドは、例えば宿主細胞で組換え的に修飾カタラーゼポリペプチドを発現する上で、有用である。
【0058】
本明細書で使用されるように、「発現制御配列」という用語はポリヌクレオチド配列を意味するもので、この配列は、それが機能的に連結させられる(「操作可能に(operably)ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの発現を調整する。発現は、メッセンジャーRNAまたはポリペプチドのレベルで調整される。このように、発現制御配列という用語は、mRNA関連エレメントおよびタンパク質関連エレメントを含む。そのようなエレメントとして、プロモータ、プロモータ内のドメイン、上流エレメント、エンハンサー、組織または細胞特異性を与えるエレメント、応答エレメント、リボソーム結合配列、転写終結因子等が含まれる。発現制御配列がコード配列の発現をもたらすか、または該発現を達成するためにこのような方法で配置される場合、発現制御配列はヌクレオチド配列(例えばコード配列)に対して操作可能に連結する。例えば、プロモーターが操作可能に5’をコード配列に連結させる場合、コード配列がプロモーターによって駆動される。
【0059】
適当な発現制御列を、宿主適合性および所望の目的のために選択することができる。これらはエンハンサー(例えば、SV40、CMV、RSV由来)、誘導または構成型プロモーター、および細胞型または組織型特異的エレメントもしくは配列を含むもので、選択的または特異的細胞発現を可能とする。発現を駆動するのに用いられることができるプロモーターは、例えば、内因性プロモーター、MMTV、SV40、CMV、c−fos、β−globin (哺乳類宿主細胞に対して);trp、lac、tac、またはT7プロモーター(細菌宿主に対して);あるいはアルファファクター、アルコールオキシダーゼ、またはPGHプロモーター(酵母に対して)が含まれる。例えば、Meltonら、(1984)Polynucleotide Res.12(18),7035−7056;Dunnら(1984)J Mol.Bio.166,477−435;米国特許第5,891,636号;Studierら(1987)Gene Expression Technology,in Methods in Enzymology,85,60−89を参照せよ。遺伝子の天然発現制御配列を用いて、ペプチドを組換え的に発現することが可能であり、例えばカタラーゼタンパク質由来の発現制御配列を用いて、本発明の組換え修飾カタラーゼポリペプチドの発現を駆動することができる。
【0060】
目的とするタンパク質(例えば修飾カタラーゼポリペプチド)をコードする配列が発現制御配列に操作可能に連結されている組換えコンストラクトを作る方法は、従前通りである。一般に、目的のコード配列は発現ベクターの発現制御配列に対して操作可能に連結される。細胞に導入された場合、このようにして生成されたコンストラクト(組換えコンストラクト)はタンパク質を発現することができる。組換えコンストラクトを作る方法は、本発明と同時に使用される多くの他の分子生物学的方法と同様に、例えばSambrookら、(1989),Molecular Cloning,a Laboratory
Manual,Cold Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Ausubelら、(1995),Current Protocols in Molecular Biology,N.Y.,John Wiley & Sons;Davisら、(1986),Basic Methods in Molecular Biology,Elseveir Sciences Publishing,Inc.,New York;Hamesら、(1985),Nucleic Acid Hybridization,IL Press;Dracopoliら、Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,Inc.;およびColiganら、Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,Inc.で述べられている。
【0061】
適当な発現制御配列の制御下におかれた目的とする配列は、一般に適当なベクターにクローニングされて、「コンストラクト」を形成する。数多くの適当なベクターが当業者に知られており、その多くは市販されている。以下のベクターを一例として挙げる。すなわち、細菌: pQE70、pQE60、pQE−9 (Qiagen)、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pBluescript SK、pBSKS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene); pTRC99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia); 真核生物:pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTI、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)である。しかし、宿主で複製および生存が可能な限り、他のプラスミドまたはベクターのいずれかを用いることも可能である。適当な宿主細胞は当業者に明らかで、例えば、原核生物、酵母、昆虫、および動物(哺乳類含む)細胞が挙げられる。大量のコンストラクト、および/またはそれにコードされるポリペプチドを、適当な宿主細胞でコンストラクトを発現させることで調製することができる。
【0062】
インビトロで本発明のポリヌクレオチドを細胞に導入する(細胞に「接触する」)方法は、当業者に明らかである。これらとしては、例えば、トランスフェクション(例えば、DEAE−デキストランまたはリン酸カルシウム沈殿を媒介とする)、ウィルスベクターを介した感染(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス、プソイド型レトロウイルス、またはポックスウイルスベクター)、注射(例えば、微量注入、電気穿孔法、ソノポレーション、遺伝子銃)、リポソーム送達(例えば、Lipofectin(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)(GIBCO−BRL, Inc.、Gaithersburg、MD)、Superfect(登録商標)(Qiagen,Inc. Hilden, Germany)およびTransfectam(登録商標)(Promega Biotec, Inc., Madison, WI)または従来の標準的な手順に従って開発された他のリポソーム)、または受容体媒介取り込みおよび他のエンドサイトーシス機構が挙げられる。当業者が理解するように、先行する方法の一部もまた細胞をインビボで「接触させる」のに用いられ得る。本発明のポリペプチドによりインビボで細胞を接触させる他の方法(例えば、そのようなポリペプチドを必要としている被験者に該ポリペプチドを投与する方法)を、以下に説明する。
【0063】
本発明のポリヌクレオチドを含む細胞を、該ポリヌクレオチドによってコードされた組換えポリペプチドの発現にとって有効な条件下で、インキュベートすることが可能である。有効な条件は、当業者に明らかである。それらは、例えば、温度、OまたはCOの濃度、適当な培養容器、および培地、その他であり、それらの全てが日常的に最適化される。ポリペプチドを収集して単離(例えば精製)する方法は、従来のものであり、当業者に周知である。
【0064】
本発明の修飾カタラーゼポリペプチドまたはそれをコードする核酸を生成するための別の方法は、従来の手順を用いて、化学合成によってポリペプチドまたはポリヌクレオチドを生産することが含まれる。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部(例えば、カタラーゼの一部、例えば活性部位;PTS;または送達ペプチド、あるいはそのようなペプチドをコードするポリヌクレオチド)を合成することができ、合成された他のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと連結しても、または組換えにより生成された1種類以上の分子、または天然の源から単離された分子と連結してもよい。そのような分子を連結する手順は従来通りである。
【0065】
他の実施形態において、本発明は、例えば年齢関連および/または遊離基関連のヒト細胞病理学を処置する種々の生理的、製薬的、または治療的な組成物で、本発明の標的カタラーゼの使用に関する。本発明の方法によって予防または処置することができる状態(疾患状態または障害)は、ペルオキシソームの異常または欠陥に関連する状態(特に、異常なほどに低い有効性またはカタラーゼのレベルをもたらし、細胞内HレベルとROS生成のレベルの結果的上昇をもたらす状態)を含む。また、そのような状態を予防または処置する方法は、Hレベルおよび他のROSレベルをペルオキシソーム内で、結果的に細胞内で、また引き続いて周辺組織で、減少させることを含む。
【0066】
一般に、本発明は、ペルオキシソームカタラーゼが不適当なレベルであることに関連した状態(例えば、疾患)の被験体(例えば、ヒト等の哺乳類)を処置する方法に関するもので、該方法は、被験体に対して本発明の修飾カタラーゼを有効量投与、好ましくは本発明の送達可能な修飾カタラーゼを投与することを含む。本発明の方法によって予防または処置される症状の種類のなかには、例えば、(1)皮膚疾患、好ましくは年齢関連性の変化および癌放射線障害性損傷に対する皮膚の保護;(2)乏血、特に再灌流損傷に対する保護;(3)一つには特定の脂質低下性の薬剤が肝癌を促進するので高脂血症を処置するために与えられる薬剤と同時におこなう血清脂質の低下;(4)神経変性疾患;および(5)老化が挙げられる。
【0067】
鉄原子が触媒部位に存在する形態で、カタラーゼ酵素を本発明の方法で使用することができる。あるいは、酵素のアポ酵素型(鉄原子欠如)を使用してもよい。
【0068】
UPTSおよびペプチド送達系、特に本発明のカタラーゼターゲッティングおよび送達系の1つの好ましい使用は、局所キャリア(例えば、クリーム)のかたちで皮膚に対して投与することで、年齢関連皮膚変化を予防および/または処置する。正しく標的化可能なカタラーゼ(ヒト基底皮膚細胞に導入)は、ペルオキシソームに入り、年齢依存型の変化の予防および日光によって誘発される皮膚の変化からの保護に寄与する。一定の濃度のカタラーゼ溶液が酵素活性部位に結合した鉄原子によって緑色を呈することから、物質は潜在的利用者にとって不評である可能性がある。このことは、金属原子を欠いたカタラーゼアポ酵素の使用、またはビヒクル製剤に染料物質を含有させて、例えば、溶液またはクリームの色を変更することによって対処できる。
【0069】
上記のように、本発明の標的カタラーゼ技術を用いることで、細胞(ヒト細胞を含む)の寿命を延ばすことができる。細胞は、通常、50または60回の集団倍加で老化する。操作されたカタラーゼを細胞および該細胞のペルオキシソームに導入することで、集団倍加回数の増加が予想される。本組成物は、細胞および生物レベルで寿命を延ばすことに使用することができる。例えば、幹細胞での集団倍加回数を、特定の人工臓器の寿命が延び得るように、増加させることができる。最終的には、組成物は、例えば、家畜、ペット、クローン動物、またはヒトの寿命を増加させることに適用できる。
【0070】
本技術は、組織工学、特に老化から幹細胞および前駆細胞を遠ざけようとする分野に適用できる。これらの細胞は、調製するのが非常に困難(かつ高価)である。すなわち、それらの細胞が長期間にわたって機能を保つ何らかの機構が、大きな関心事になっている。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、任意のクラスまたはタイプの培養幹細胞に対して送達されるもので、該細胞として、全能性幹細胞、多能性造血幹細胞、神経、心臓、肝臓、骨、筋肉などの幹細胞を含む任意の系統の分化が決定付けられた(committed)幹細胞、および組織、器官体腔または体液に存在する任意の幹細胞が挙げられる。細胞へのエントリーとペルオキシソームに対するターゲティングによって、カタラーゼSKL等の上記組成物は幹細胞の寿命を延ばす一方で、「若い」状態に細胞を保ち、さらに/または分裂を繰り返すことによるインビトロでの老化を抑制する。一実施形態では、そのような幹細胞または前駆細胞に対する処置が人工臓器の寿命を高める。
【0071】
注目すべきことは、この標的カタラーゼ技術が寿命を延ばすことを求めており、損傷した細胞が分裂するのを妨げる天然の障壁を取り除くことによってではなく、遊離基の蓄積や誘導された損傷が以後起こることを妨げることによる。
【0072】
心臓または脳の乏血の1つの徴候はROSによって誘発された損傷である。そして、それはこれらの器官の組織に相当な損傷をもたらす。病理学の多くは特に再灌流中に蓄積する、ROSから生じる。これは、医療を受けているが、患部組織に酸素の再導入による罹患率および死亡率で苦しむ患者の深刻な問題である。この発明によれば、ペルオキシソームのターゲティング技術(望ましくは標的カタラーゼまたは他のタンパク質の細胞に改良された送達に連結する)は、再灌流損傷を予防する際に、また乏血の処置の他の用途のために適用できる。遊離基攻撃を経験している組織における正しくターゲッティングされた高レベルのカタラーゼの適時の存在は、患者の回復のためになる。
【0073】
本発明の好ましい動物の被験体は、哺乳類である。本発明は、特にヒト被験体の処置に有用である。用語「処置(treating)」は、本発明の修飾カタラーゼを含んでいる薬学的組成物の被験体に投与することを意図する。治療用組成物、例えば、Pep−1と混合した標的カタラーゼ(例えば、C末端でSKLまたはAKLのようなUPTSを持つ)の組合せは、生物学的に有効であるか治療的有効量で、薬学的に受容可能なキャリアで哺乳類の被験体(望ましくはヒト)に投与される。上記組成物は、単独でまたはもう一つの薬剤と組み合わせて投与することが可能である。例えば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を持つポリペプチドまたはペプチドと同時に、またはSOD活性を刺激する小分子とともに投与してもよい。治療的有効量は、有効期間にわたって投与される場合、測定可能な臨床効果を達成する投薬量である。
【0074】
本組成物の治療上効果のある量は、個体の症状、年齢、性、および体重やその個体での所望の応答を引き出す該組成物の能力等の要因によって変化する。投薬レジメンは、最適治療反応を提供するために調整され得る。例えば、毎日幾つかに分割した服用量を投与することができ、または服用量を治療状況の要求により指示されるとおりに比例的に減少させることができる。
【0075】
標的カタラーゼの有効量は、一般にレシピエントの体重1キログラムあたり約1ナノグラムないし約50ミリグラムであり、より好ましくは約1μgないし約10mg/kgである。内服に適した剤形は、好ましくは1単位あたり約0.01μgないし100μgの活性成分を含む(後の用量範囲のために)。活性成分は、組成物の全重量に基づいて重量あたり0.5から95%まで変動させることも可能である。ペルオキシソームの欠乏症(正常な老化に起因するものを含む)を伴う状況の治療の当業者は、過度の実験なしでこれらの用量を調整することが可能である。
【0076】
活性化合物は、簡便な方法(例えば簡便かつ効果的なルートでの注射)で投与されることができる。好ましいルートとして、皮下、皮内、静脈内、腹膜内、および筋肉内のルートが挙げられる。他の可能なルートとして、局所(経口)髄腔内、吸入、経皮または直腸内適用が挙げられる。
【0077】
本発明の1つの好ましい実施形態は、老化関連の変化を予防または改善するためにヒト皮膚を処置するための局所医薬(および/または化粧品)製剤における本標的カタラーゼ組成物である。
【0078】
他の可能な美容的に許容可能なキャリアとして、流動パラフィン、イソプロピルパルミテート、ポリエチレングリコール、エタノール(95%)、水中のポリオキシエチレンモノラウリル酸塩(5%)、または水中のラウリル硫酸ナトリウム(5%)が挙げられる。他の材料、例えば抗酸化剤、湿潤薬、粘性安定剤(水性の注射懸濁物用)、および類似の薬剤を必要に応じて添加してもよい。また、芳香剤を組成物に添加してその香りを改善してもよく、あるいは外観を強調するために有色の薬剤を添加してもよい。
【0079】
そのような製剤は、多数の典型的な油のいずれかを含むものであってもよく、該油として、鉱油(流動パラフィン)、植物油(カライト(karite)バター、ひまわり油、ごま油の液体分画)、動物油(パーヒドロスクアレン)、合成油(パーセリン(purcellin)油)、シリコーン油(シクロメチコン)、およびフルオロ油(ペルフルオロポリエーテル)が挙げられる。脂肪族アルコール、脂肪酸(ステアリン酸)、または合成脂肪酸エステル(エチルオレエートまたはトリグリセライド)およびワックス(固形パラフィン、カマウバ(carnauba)ワックス、および蜜蝋)を脂肪として使うこともできる。
【0080】
本明細書で使用されるように、「美容的に許容可能な局所キャリア」または「美容的に許容可能なビヒクル」とは、キャリア、希釈剤、または分散剤のことをいい、細胞送達ペプチド/ポリペプチドと組み合わさった標的カタラーゼを皮膚(またはその適当な層)に、過度の有害性、刺激、アレルギー性等をともなうことなく、送達することができる。加えて、美容的に許容可能であるために、局所キャリアは、望ましくは、有利な美容性質(例えば全体の感触、すりこまれる能力、過剰なべとつきの欠如等)を持つ。最も好ましい局所キャリアは、活性薬剤が分散または溶解することができる有機物質であり(Sagarin, Eら、(1972)Cosmetics, Science and Technology,第2版、1:48−65、本明細書で援用)、美容的に許容可能な適当な局所キャリアの数多くの例が含まれる。例は、後述するように、種々の緩和剤、乳化剤、湿潤薬、増粘剤、および粉、さらに溶媒(水を含む)を含む。
【0081】
美容的に許容可能な有機溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(200−600)、ポリプロピレングリコール(425−2025)、グリセロール、ソルビトールエステル、1,2,6−ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ブタンジオール、およびそれらの混合物である。
【0082】
美容的に許容可能なビヒクルは、一般に活性組成物の重量で5%ないし99.9%、好ましくは25%ないし80%であり、他の化粧用添加剤がない場合、組成物の残りを形成することができる。
【0083】
組成物は、水性、水性/アルコール性、または油性の溶液;ローション剤または乳漿型の分散物;無水のまたは親油性ゲル類;水相中脂肪相またはその逆の分散によって得られる液体または半液体のコンシステンシーのエマルジョン;または、クリームまたはゲル型のやわらかい、半固体もしくは固体のコンシステンシーの懸濁物またはエマルジョンの形態であり得る。これらの組成物は、周知の技術によって処方される。
【0084】
本発明の組成物がエマルジョンとして処方される場合、脂肪相の比率は組成物の全重量を基準として、5重量%ないし80重量%、好ましくは5%ないし50%とすることができる。エマルジョン形状で組成物に取り入れられる油、乳化剤、および共乳化剤は、化粧または皮膚科学的分野では従来使用されているものの中から選択される。乳化剤および共乳化剤は、組成物の全重量に対して、0.3重量%ないし30重量%、好ましくは0.5%ないし20%の範囲の比率で、組成物に存在することができる。
【0085】
本発明の組成物が油性溶液またはゲルとして処方される場合、脂肪相は組成物の全重量の90%超を構成することができる。
【0086】
本発明の組成物は、添加物およびアジュバントを含むこともでき、それらは化粧、医薬、または皮膚科学の分野で従前通りであり、例えば親水性または親油性ゲル化剤、親水性または親油性の活性薬剤、防腐剤、抗酸化剤、溶媒、芳香剤、充填材、殺菌剤、脱臭剤、色素、または着色剤が挙げられる。これらの種々の添加物およびアジュバントの量は、従来技術で使用される量であって、例えば組成物の全重量の0.01%から10%まで変動する。それらの性質に従い、これらの添加物およびアジュバントを、脂肪相に、または水相に導入することができる。
【0087】
親水性ゲル化剤として、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリルコポリマー、例えばアクリレート/アルキルアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリサッカリド、例えばヒドロキシプロピルセルロース、天然のガムおよびクレイが挙げられ、さらに親油性ゲル化剤として、典型的には改質クレイ(例えばベントン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸アルミニウムおよび疎水性二酸化ケイ素)、あるいはエチルセルロースおよびポリエチレンが挙げられる。
【0088】
使用される緩和剤の平均親水性−親油性バランス(HLB)に主に依存して、油中水型乳剤または水中油型乳剤を提供する緩和剤とともに、油または油性材料が存在してもよい。そのような緩和剤の量は、組成物全体の約0.5重量%ないし約50重量%、好ましくは約5重量%ないし30重量%である。緩和剤は、エステル、脂肪酸およびアルコール類、ポリオール、ならびに炭化水素として分類される。
【0089】
エステルは、モノエステルまたはジエステルであってもよい。許容される脂肪酸ジエステルとして、ジブチルアジペート、セバシン酸ジエチル、ジイソプロピルジメレート、およびジオクチルスクシネートが挙げられる。許容可能な分枝脂肪酸エステルとして、2−エチルヘキシルミリステート、ステアリン酸イソプロピル、およびパルミチン酸イソステアリルが挙げられる。許容可能な三塩基性酸性エステルとして、トリリノール酸トリイソプロピルおよびトリラウリルシトラートが挙げられる。許容可能な直鎖脂肪酸エステルとして、パルミチン酸ラウリル、乳酸ミリスチル、オレイルユーケート(eurcate)、オレイン酸ステアリルを含む。好ましいエステルとして、ココ−カプリル酸塩/カプリン酸塩(ココ−カプリル酸塩とココ−カプリン酸塩との混合)、プロピレングリコールミリスチルエーテル酢酸塩、ジイソプロピルアジペート、およびセシルオクタン酸塩が挙げられる。
【0090】
適当な脂肪族アルコールおよび酸として、10〜20炭素原子の鎖を持つ化合物が挙げられる。特に好ましいものは、セチル、ミリスチル、パルミチルおよびステアリルアルコールならびに酸などの化合物である。
【0091】
直鎖または分岐状鎖アルキルポリヒドロキシル化合物は、皮膚軟化剤として用いることができるポリオールの一つである。例えば、プロピレングリコール、ソルビト−ル、およびグリセリンが好ましい。また、有用なものは、重合体ポリオール(例えばポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)である。ブチレングリコールおよびプロピレングリコールも浸透増進剤として特に好ましい。
【0092】
典型的な炭化水素は、どこでも12ないし30の炭素原子の炭化水素鎖を持つ。具体例としては、鉱油、石油ゼリー、スクアレン、およびイソパラフィンが挙げられる。
【0093】
本発明の化粧用組成物に含まれる機能的な成分のもう一つのカテゴリーは、増粘剤である。増粘剤は、通常、組成物の重量で、どこでも0.1ないし20重量%、好ましくは約0.5重量%ないし10重量%で存在する。典型的な増粘剤は、Carbopol(登録商標)のもとで利用できる架橋ポリアクリラート材料である。キサンタン、カラギーナン、ゼラチン、カラヤ、ペクチン、およびローカストビーンゴムのようなゴムを用いることができる。場合によっては、増粘機能は、シリコーンや緩和剤としても機能する物質によって達成可能である。例えば、10センチストークより粘度の高いシリコーンゴム及びステアリン酸グリセロールのようなエステルは両方の機能を有している。
【0094】
本発明の化粧品組成物には粉末を配合してもよい。該粉末として、チョーク、タルク、白土、澱粉、スメクタイトクレイ、化学的に改質した珪酸アルミウニムマグネシウム、有機的に改質されたモンモリロナイトクレイ、水和珪酸アルミニウム、ヒュームドシリカ、アルミニウム澱粉オクテニルスクシネート、および混合物が挙げられる。
【0095】
組成物は、凍結乾燥された粒子状材料(無菌または無菌的に生産された溶液)のかたちであってもよい。ビヒクル、例えば水(好ましくは、生理学的に許容されるpHに、例えばリン酸緩衝生理食塩水で緩衝されている)または他の不活性固体若しくは液体材料、例えば通常生理食塩溶液または種々の緩衝液が存在してもよい。局所または皮下投与のために組成物を最適化する際に、特定のビヒクルを選ばれなければならない。
【0096】
一般的な用語では、医薬/化粧用組成物は、標的カタラーゼ組成物を1種類以上の水不溶性または水溶性水性または非水性ビヒクルと混合、溶解、結合、またはさもなれば化合することによって調製される。必要に応じて、もう一つの適当な添加物またはアジュバントも含むませることができる。それはビヒクル、キャリア、または賦形剤、同様に組成物を処方するための条件は、タンパク質またはペプチドの生物活性または医薬活性に対して悪影響を及ぼすことがないようにすることが不可欠である。
【0097】
本方法では、組成物を一度に投与することができるが、一般には複数回、当該分野の技術の範囲内で経験的に決定するように、一般に、おそらく数週、数月、または数年にわたって定期的に投与する。処置を毎日(または1日あたり2回以上)おこなうことができるが、有益、所望、または必要に応じて、一般には2〜3日毎に、あるいは週に一度というようにたまに、おこなう。被験体間の投薬量および期間必要条件は、皮膚および体型に応じて変えることが可能である。概して、約1.0ngないし約1.0g、好ましくは1.0μgないし約100mg、最も好ましくは約100μgないし約10mgの標的カタラーゼを、好ましくは適当な比率で細胞送達ポリペプチドと組み合わせて組成物に含ませる。いずれにしても、所望の結果を達成するのに必要とされる頻度および/または投薬量が経験的に決定されることは、当業者にとってルーチンワークの範囲内である。
【0098】
所望の領域に直接活性成分を投与するための手段として、活性薬剤を局所的に適用されたビヒクル、例えば、溶液、懸濁物、エマルジョン類、油、クリーム、軟膏、粉、塗布剤、塗剤等の中に好ましくは取り込む。活性薬剤のためのキャリアは、噴霧可能または噴霧不可能な形状のどちらでもよい。噴霧不可能な形状は、局所適用に固有のキャリアを含んでおり、動粘性率を水のそれより望ましくは大きくしている半固体または固体の形態であるとよい。必要に応じて、これらを殺菌することができるか、補助薬剤(例えば浸透圧などに影響を及ぼす防腐剤、安定剤、湿潤剤、緩衝液または塩類)を混ぜ合わせることができる。噴霧不可能な局所製剤が含む好ましいビヒクルの例として、軟膏基剤(例えばポリエチレングリコール−1000(PEG−1000));HEBクリームのような従来のクリーム;ゲル類;およびワセリン等が挙げられる。
【0099】
ヒトの皮膚に対する好ましい局所適用について、本発明にもとづく化合物の有効量を所望の皮膚面に投与することが好ましい。処置される領域と使用される局所ビヒクルの性質とによって、この量は、通常、1回の適用あたり約0.001mgないし約1gまで変動する。好ましい局所調製物は、軟膏であり、約0.01mg〜約50mgの活性成分が、PEG−1000等の軟膏基剤1mlあたりで使用される。
【0100】
投与経路に依存して、活性化合物が材料でおおわれ、該化合物を不活性化することができる酵素、酸、および他の自然条件の作用から保護されている。したがって、組成物をその不活性化を遮る材料で覆う、もしくはそれと同時投与することが必要かもしれない。例えば、ヌクレアーゼまたはプロテアーゼの酵素阻害剤(例えば、膵臓トリプシンインヒビター、ジイソプロピルフルオロホスフェート、およびトラジロール)またはリポソーム等のキャリア(従来のリポソームと同様に水中油中水型乳剤を含む)(Strejanら、(1984)J.Neuroimmunol 7:27)を用いることができる。
【0101】
ペルオキシソームターゲッティング用として、修飾カタラーゼポリペプチドまたは他のポリペプチド(融合タンパク質、結合体、フラグメント、改変体等を含む)を、移植可能な制御された放出(または「持続性放出」)製剤およびマトリックスを介して投与してもよい。これらの製剤として、限定されるものではないが、一般にポリオペプチドに適用可能であるポリ(D−、L−、またはDL−乳酸/ポリグリコリド)ポリマー、エチレン−ビニルアセテート(EVAc:Elvax40W、Dupont)−生体腐食性ポリ無水物、ポリイミノ炭酸塩、アルギン酸ナトリウムミクロスフェア、ヒドロゲル、DおよびポリDL(ラクチド/グリコリド)コポリマーが、本明細書で援用する以下の特許および刊行物で詳細に説明される数あるなかでも、挙げられる(米国特許第4,891,225号、第4,942,035号、第4,877,606号、第4,906474号、第4,806,621号、第4,789,516号、第4,925,677号、欧州特許第92918B1号、欧州特許第166596B1号;Jeyanthi, Rら、J. Controlled Release,13:91−98(1990);Greig,Nら、J Controlled Release 11:61−78(1990);Kaitsu,I.ら、J.Controlled Release 6:249−263(1987);Yang,M.B.ら、Cancer Res 49:5103−5107(1989);Eckenhoff,Bら、Biomaterials 2:89(1981))。
【0102】
鎌型赤血球は、修飾カタラーゼポリペプチドのキャリアとして用いられることができる。鎌型赤血球が正常な赤血球より微小血管内皮に付着して、局所低酸素およびアシドーシスの条件下でより大きな範囲に付着することは、知られている。低酸素血症の条件は、正常な赤血球の付着に対してはなんら効果はないが、血管内皮細胞への鎌赤血球付着は有意に増加する。脱酸素されたヘモグロビンSの重合は、赤血球の変形とその変形性の著しい減少とをもたらす。これらの柔軟性のない細胞は、鎌型赤血球疾患の脈管閉塞現象の原因となる。微小血管内皮へのこの増加した付着は、αβインテグリンおよびCD36の発現が異常に増加することによって起こる。領域がよりいっそう低酸素になるので、反応性内皮上でのVCAM−1およびPセレクチンの発現が上方制御される。それによって、その領域でさらに多く循環鎌状細胞が捕捉される。
【0103】
本発明では、修飾カタラーゼポリペプチド、または該修飾ポリペプチドをコードする核酸を、内皮、特に微小血管系の細胞に対して、送達することが求められている場合、鎌形赤血球を送達ビヒクルとして使うことができる。生理的状況下で正常であることから、鎌状赤血球体質細胞(異型接合体から)の使用が好ましい。しかし、アシドーシスおよび/または低酸素血症微小血管系では鎌形となり、粘着しやすくなる。腫瘍に対する薬剤の送達のためのそのような鎌型赤血球の使用が記載されている。核摘出に先行する分化段階で、鎌形細胞を目的とする遺伝子で形質移入または形質導入することができる。核を摘出した細胞も作用するにもかかわらず、核をもつ鎌網状赤血球は遺伝物質を導入するための好ましい段階である。
【0104】
鎌型赤血球は、注射または輸液によって非経口的に投与される。第一に、しかし、鎌形赤血球は適合細胞を選択するために、ABOおよびRh表現型について試験される。好ましくは、目的とする特異的な部位または器官、例えば頸動脈、門脈、大腿動脈、その他を、従来の血液輸液の注入に必要とされる時間と同じ時間にわたって、そして治療上有効な量(すなわち、治療量の組成物を送達する)の細胞で、潅流して、細胞を血管に静脈内または動脈内送達させる。これは、1時間にわたって、静脈内投与された1〜25ml容量の充填細胞を含むことができる。一般に処置は、3日毎におこなわれるが、処置スケジュールは、柔軟であり、患者の応答に応じて延長されたり、短くなったりする。
【0105】
本発明の一実施態様は、本発明の修飾カタラーゼポリペプチドのいずれかと、薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアとを含む薬学的組成物である。
【0106】
本明細書で使用されるように、「薬学的に受容可能なキャリア」として、任意のそして全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等を含む。製薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び作用物質の使用は、当業界では周知されている。いかなる従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない限り、治療用組成物で用いることが企画される。補助活性化合物は、組成物に組み込まれることもできる。
【0107】
好ましい薬学的に受容可能な希釈剤として、生理食塩水および水性緩衝液が挙げられる。注射のために適当な薬学的組成物として、無菌水溶液(水溶性)、あるいは無菌の注射可能溶液または分散物を即席調製するための分散物および無菌粉である。等張性剤、例えば、糖、マンニトールのような多価アルコール、ソルビトール、塩化ナトリウムを薬学的組成物に含んでもよい。全例において、内用のために、組成物は無菌でなければならず、かつ流動的でなければならない。製造および保存の条件下で、安定でなければならず、微生物(例えば細菌と菌類)による汚染を予防する防腐剤を含まなければならない。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれら混合物中、および油中で分散液を調製することもできる。通常の貯蔵および使用条件で、これらの調製は、微生物の増殖を防ぐために、防腐剤を含むことができる。
【0108】
キャリアは、溶媒または分散媒であり、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、ならびにその他)、およびそれらの適当な混合物を含む。適当な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合は必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0109】
微生物の作用を防止することは種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成可能である。
【0110】
非経口組成物は、投与の容易さと投薬量の均一性のために投薬量単位形態で望ましくは処方される。投薬量単位形態は、哺乳類の被験体のために一体的投薬量として適している物理的に離散的な単位のことをいう。各々の単位は、必須の医薬キャリアに関連して所望の治療効果を生産するように計算された活性化合物の予め定められた量を含む。本発明の投薬単位形態に関する明細書は、以下によって指示され、かつ直接、以下の点に依存する。すなわち、
(a)活性化合物の独特の特徴と達成すべき特定の治療効果、および
(b)個体における処置の感受性のために、そのような活性化合物を合成する従来技術で固有の限界。
【0111】
肺滴下注入のために、エアロゾル化した溶液が使われる。噴霧可能なエアゾール調製物では、活性タンパク質が、固体または液体不活性キャリア材料と組み合わせることができる。これは、スクイーズボトルにも充填し、または加圧された揮発性、かつ通常のガス状の推進体とともに混合される。エアゾール調製物は、本発明のタンパク質に加えて、溶媒、緩衝液、界面活性剤および抗酸化剤を含むことができる。
【0112】
本発明にもとづく組成物に対する他の薬学的に受容可能なキャリアは、リポソームであり、活性タンパク質が含まれる薬学的組成物は、分散しているか、脂質層に粘着した水性かつ同心性の複数の層からなる小体内に様々に存在する。活性タンパク質は、好ましくは水性層と脂質層、内側または外側、あるいはいずれにせよ、リポソーム懸濁液として一般に知られている非均質系で存在する。疎水性層、すなわち脂質層は、一般に、排他的ではないが、リン脂質(例えば、レシチンおよびスフィンゴミエリン)、ステロイド(例えば、コレステロール)、多少のイオン表面活性物質(ジアセチルホスフェート、ステアリルアミン、またはホスファチジン酸)、ならびに/または疎水性である他の物質を含む。
【0113】
好ましい実施形態では、例えばカタラーゼSKLを運搬するリポソームは、該リポソームの表面にホスファチジルセリン(PS)が豊富であるように設計される。細胞の内側および外側の膜リーフレットのアミノリン脂質含量に関して詳細な検討がなされた。通常、健康な若い細胞で、PSは細胞膜の細胞質側で比較的高い濃度で見つけられるのに対し、ホスファチジルエタノールアミン(PE)は膜の外面で比較的高い濃度で見つかる。このPE/PS比率(外側/内部)は、老化細胞で、またはある種の癌細胞で逆転する。老化またはプログラム死細胞の食細胞排除は、マクロファージ(クリアランスに関係する他の細胞型と同様に)のような食細胞上で、受容体が外部のPSを認識することよって、部分的に生じる。このように、外部のPSは、取り込みのために「細胞をマークする」傾向がある。このことは、インビトロで見いだされるだけではなく、そのようなリポソームがインビボで注射されて、特定の部位(例えば肝臓洞様血管および脳)取り込まれる場合にも見られ得る。例えば、以下の文献を参照せよ。Kagan VEら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.2003 Jul;285(l):L1−17;Borisenko GGら、Arch Biochem Biophys.2003 May 1;413(1):41−52;Balasubramanian Kら、Annu Rev Physiol.2003;65:701−34.Epub 2002 May 01;Manno S,ら、7:Proc Natl Acad Sci USA.2002 Feb 19;99(4):1943−8;Hoffmann PRら、J Cell Biol.2001 Nov 12;155(4):649−59;Schlegel RAら、Cell Death Differ.2001 Jun;8(6):551−63;Schlegel RAら、Ann NY Acad Sci. 2000;926:217−25;Fadok VAら、J Biol Chem.2001 Jan 12;276(2):1071−7;Witting Aら、J Neurochem.2000 Sep;75(3):1060−70;Kamps JAら、−Biochem Biophys Res Commun.1999 Mar 5;256(1):57−62;Bevers EMら、Lupus.1998;7 Suppl 2:S126−31;Bevers EMら、21:Lupus.1996 Oct;5(5):480−7;Bruckheimer EMら、J Leukoc Biol.1996 Jun;59(6):784−8;Tomizawa Hら、Pharm Res.1993 Apr;10(4):549−52;Lee KDら、Biochim Biophys Acta.1992 Jan 31;1103(2):185−97;Palatini Pら、Br J Pharmacol.1991 Feb;102(2):345−50;Utsugi Tら、Cancer Res.1991 Jun 1;51(11):3062−6.;Connor Jら、Proc Natl Acad Sci U S A.1989 May;86(9):3184−8.;Fidler IJら、Biochim Biophys Acta.1988 Nov 15;948(2):151−73;Allen TMら、Proc Natl Acad Sci USA.1988 Nov;85(21):8067−71;Schroit AJら、J Biol Chem.1985 Apr 25;260(8):5131−8;Schroit AJら、Biol Cell.1984;51(2):227−38.;Rimle Dら、Mol Cell Biochem.1984 Sep;64(l):81−7;Fidler IJら、Cancer Res.1980 Dec;40(12):4460−6;Poste Gら、Proc Natl Acad Sci U S A.1976 May;73(5):1603−7;これらの文献を本明細書では援用する。
【0114】
この特性は、相対的に高濃度のPSを外側層に有するリポソームを用いることで、本発明で利用され、「標識」細胞を模倣する。このことは、細胞質ゾルに放出された後にペルオキシソームに移動されるカプセルに入れられた材料、例えばカタラーゼSKLが送達される効率を高める。
【0115】
別の実施形態では、リポソームは、さらに、融合誘導特性を有するタンパク質(例えばいくつかのウイルスタンパク質)、またはそのフラグメントもしくは改変体を含む。そのようなタンパク質は当業者に周知であり、議論されている。例えば、米国特許第5,916,803号;Hughson(1995)Current Biol.5,265;Iloekstra(1990)J.Bioenergetics Biomembranes 22,675;およびWhite(1990)Ann.Rev.Physiol.52,675を見よ。従来の方法は、そのようなタンパク質またはフラグメントをリポソームに付着させることができる。
【0116】
関連する実施形態では、赤血球細胞、または好ましくは、赤血球細胞ゴーストを、本発明の組成物をある種の細胞に入れる強化送達ビヒクルとして用いてもよい。上記リストに示す参照文献を見よ。
【0117】
この出願の考察の多くは、修飾ペルオキシソーム標的カタラーゼポリペプチドに向けられている。しかし、当業者はペルオキシソームに対するターゲティングカタラーゼ分子のための方法が同様に他の分子に適用され、これらの標的とされた分子が標的カタラーゼのために記載されるそれらと同等の組成物および方法で使用できることを理解する。発明の方法は、目的とする任意の分子をペルオキシソームに対して標的化させることにも用いられる。好ましい実施形態において、標的分子は、ペルオキシソームでHまたは他のROSのレベルの減少を促進するものである。
【0118】
本発明の一実施形態では、標的分子は、ペルオキシソームHの量を調整することができる種々の小分子のいずれかを含む。適当な小分子は、当業者に明らかなものであり、例えば、ペルオキシソームでオキシダーゼの一つ以上の活性を阻害する小有機分子またはカタラーゼの活性を刺激する小有機分子を含む。本発明のペルオキシソームターゲティング分子をそのような小分子(それらの有効性のためのテストのための方法と同様に)に取り付ける方法は、従前通りである。
【0119】
別の実施形態では、標的分子はカタラーゼ(カタラーゼについて上記したように、または活性改変体もしくはそのフラグメント)以外の種々の酵素のいずれかを含み、それによってペルオキシソームの過酸化水素のレベルを低下させる。そのような酵素は、例えば、(a)グルタチオンレダクターゼとグルタチオンペルオキシダーゼとの組合せ;および(b)ペルオキシレドキシンを含む。
【0120】
ペルオキシソームで効果的にROSを減らすために、グルタチオンレダクターゼ、およびグルタチオンペルオキシダーゼは、オルガネラに対して共輸送されなければならない。細胞質ゾルで還元グルタチオンを高レベルに維持するヒトグルタチオンレダクターゼは、適当なグルタチオンレダクターゼの一つである。適当なグルタチオンペルオキシダーゼのうちの一つが、ヒトグルタチオンペルオキシダーゼ1であり、酸化分解から赤血球内のヘモグロビンを保護する。
【0121】
種々のペルオキシレドキシンを本発明の組成物および方法で使うことができる。これらは、ヒトおよび他の動物源からの酵素を含む。例えば、ヒト酵素は、適当なペルオキシレドキシンの1つである。
【0122】
(1)ペルオキシレドキシン1(チオレドキシンペルオキシダーゼ2;チオレドキシン依存過酸化物レダクターゼ2;増殖関連タンパク質PAG;ナチュラルキラー細胞増強因子A(NKEF−A))。この酵素は、細胞のレドックス調節に関与している;それは、グルタレドキシンからではなくチオレドキシン系を通して提供される還元当量で、過酸化物を還元する。酵素は代謝の間、発生する過酸化物を除去することにおいて重要な役割を果たすことができ、H細胞内濃度を調整することによって、成長因子および腫瘍壊死因子アルファのシグナル伝達カスケードに関与するかもしれない。
【0123】
(2)ペルオキシレドキシン2(チオレドキシンペルオキシダーゼ1;チオレドキシン依存過酸化物レダクターゼ;チオール特異性抗酸化剤タンパク質(TSA);PRP;ナチュラルキラー細胞増強因子B(NKEF−B))。この酵素は、細胞のレドックス調節に関与している;それは、チオレドキシン系を通して提供される還元当量で、過酸化物を還元する。酵素は、グルタレドキシンから電子を受け取ることができない。それは代謝の間、発生する過酸化物を除去することにおいて重要な役割を果たすことができ、Hの細胞内濃度を調整することによって、成長因子と腫瘍壊死因子アルファのシグナル伝達カスケードに関与すると考えられる。
【0124】
(3)ペルオキシレドキシン3(チオレドキシン依存過酸化物レダクターゼ、ミトコンドリア前駆体;抗酸化剤タンパク質(AOP−1);MER5タンパク質ホモログ;HBC189;PRX III)。この酵素は、細胞のレドックス調節に関与している。それは、ラジカル発生系による酸化損傷から遊離基感受性の酵素を保護する。
【0125】
(4)ペルオキシレドキシン4(Prx−IV;チオレドキシンペルオキシダーゼA0372;チオレドキシン依存過酸化物レダクターゼA0372;抗酸化剤酵素AOE372;AOE37−2)。この酵素は、細胞のレドックス調節に関与していると思われる。それは、I−κ−B−αリン酸化の変調によって、細胞質ゾルでNF−κ−Bの活性化を調整する。
【0126】
(5)ペルオキシレドキシン5(a,b,c)(ペルオキシレドキシン5前駆体イソ型a,b,またはc;抗酸化剤酵素B 166;TPx型VI;肝臓組織二次元−PAGEスポット71B;Aluコリプレッサー1[ヒト])。ペルオキシレドキシン5は抗酸化剤酵素のペルオキシレドキシンファミリーのメンバーであり、過酸化水素とアルキルヒドロペルオキシドとを還元する。タンパク質は、標準条件下で、および炎症性のプロセスの間、異なる組織において抗酸化剤保護役割を果たすことができる。このタンパク質は、Pex5pと相互作用する。還元型であるこのタンパク質の結晶構造は、1.5オングストローム解像度に分解された。ペルオキシレドキシン5をコードする遺伝子は、ミトコンドリアまたはペルオキシソームの/細胞質の形態を生成するために、代替的なインフレームの翻訳開始部位を使用する。異なったイソ型をコードしている3つの転写産物改変体(a、b、およびc)は、この遺伝子に関して同定された。
【0127】
(6)ペルオキシレドキシン6(ペルオキシレドキシン6;抗酸化剤タンパク質2;非セレングルタチオンペルオキシダーゼ;酸性のカルシウム非依存型ホスホリパーゼA2;1−Cysペルオキシレドキシン[ヒト])。ペルオキシレドキシン6は、チオール特異性抗酸化剤タンパク質ファミリーのメンバーである。このタンパク質は、2つの異なった活性部位を有する二機能性酵素である。細胞のレドックス調節に関与している;Hと有機短鎖脂肪酸とリン脂質ヒドロペルオキシドを還元することができる。酸化的損傷に対する防御と同様にリン脂質代謝回転の調節の役割を果たすことができる。
【0128】
したがって、本発明の一実施態様は1つの分子または二個以上の分子の組合せであり、そのような処置を必要とする細胞(例えば老化細胞)のペルオキシソームで、H(および間接的に、他のROSのレベルを減少させる)のレベルを減少させる。例えば、そのような分子は、Hの分解に関与するか、もしくは合成がHに依存しているもう一つのROSの生成を阻害する、酵素を含むことができる。ここで、この酵素は本発明にしたがうPTSペプチドに結合する。酵素は、そのC末端に付着されたPTS1型配列を有し得、および/またはそのN末端で、またはその近傍で付着したPTS2型配列を有し得る。一実施態様において、酵素はペルオキシレドキシン(例えば上述のヒトペルオキシレドキシンの6つのタイプのうちの1つ)である。もう一つの実施形態において、2つの分子が存在することができる。すなわち、グルタチオンレダクターゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼであり、どちらの酵素も本発明のPTSを含む。
【0129】
ここで本発明の一般的な説明をおこなったが、以下の実施例を参照することで同じことがよりいっそう容易に理解される。なお、実施例は例証すること目的に提供されるものであって、特に言及しない限り、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0130】
(実施例I)
(材料および方法)
(細胞培養)
National Institutes of Aging,Aging Cell Repository/Coriell Institute for Medical Research(Camden, NJ)およびATCC(Manassas, VA)からそれぞれ得た継代早期IMR90およびHs27 HDFを、10%のウシ胎仔血清(Gibco,Grand Island、NY)、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補充したDMEMで培養した。細胞を、5%の二酸化炭素で補充された加湿インキュベーターで、37℃に維持した。高継代レベルを達成するために、継代培養を通して細胞を増殖させた。継代後期細胞は、老化に関連するβ−ガラクトシダーゼ(Dimriら、1995に記載される)について染色することによって、複製老化またはその近くであることを確認した。
【0131】
ここで示す細胞はProNectin F(Biosource International, Camarillo,CA)で前処理されたガラスカバーグラスの上で成長した。
【0132】
(インビトロ移入アッセイ)
ペルオキシソームタンパク質移入は、ELISAおよび免疫蛍光をベースとするインビトロアッセイを使用する半透過細胞において検討された。両方のアプローチでは、PTS1(−SKL)を含む基質タンパク質(ルシフェラーゼ)を使用した。ELISA(酵素結合免疫測定法)システムのために、ルシフェラーゼは、直接に細胞でまたは細胞/オルガネラ/ペルオキシソームの単離後に、ビオチニル化および移入を定量化した(Terlecky、2002)。この方法に関する図示を、図2に示す。比較が等価数の細胞からなされることを確実にするために、全ての実験でDNA含有量を測定し、適切に修正した。DNA定量化の蛍光定量的方法は、SYBR(登録商標)Green(Molecular Probes,Eugene、OR)をDNA結合染料として使用したことを除き、DownsとWilfinger(1983)によって記載されたようにした。
【0133】
免疫蛍光をベースとする移入アッセイは、LegakisおよびTerlecky(2001)でIMR90線維芽細胞について詳述されたようにして実施した。
【0134】
移入に対するHの影響を検討するために、細胞を、血清添加培地中の125μM Hで終夜にわたって、および収穫/透過化処理に先立って無血清培地中の250μM Hで2時間にわたって前処理した。
【0135】
(免疫細胞化学/顕微鏡検査)
細胞(ガラスカバーグラス上で成長した)を、4%(w/v)のパラホルムアルデヒドに10分間にわたって固定し、10mM NHClで10分間処理し、そして1%(v/v)のトリトンX−100を用いて5分間にわたって透過処理した。細胞を、4%(w/v)のウシ血清アルブミンで1時間にわたってブロックし、1時間、一次抗体とともにインキュベートし、そして30〜45分間、二次抗体とともにインキュベートした。ウサギ抗PMP70(70kDaのペルオキシソーム膜タンパク質)抗体は、1/250倍希釈で使用し、ウサギ抗カタラーゼ抗体は1/500倍希釈で使用し、ウサギ抗Pex5p抗体は1/500倍希釈で使用し、そしてCY3結合体化ヤギ抗ウサギ抗体は1/300倍希釈で使用した。全て反応をPBSで実施した。カバーグラスは、Slowfade antifade(Molecular Probes)を使用してマウントした。Zeiss LSM−310の共焦点顕微鏡を、全ての蛍光画像を得るために使用した。
【0136】
細胞Hの検出のために、使用する方法は、Ohbaら、1994およびBassら、1983から修正した。ここで、細胞はPBSで3回洗浄し、25μMの2’,7’−ジクロロフルオレシンジアセテートを用いて37℃で10分間処理した。細胞を再び洗浄し、細胞蛍光について488ナノメートルの励起波長を使用する共焦点顕微鏡によって検討した。ここで示す継代早期Hs27 HDFは、それらに赤いFluoSphere(登録商標)ミクロスフェア(Molecular Probes)をエンドサイトーシスさせることによって「標識」された。終夜にわたるインキュベーションの後、それらの細胞を洗浄し、(「非標識である」)継代後期細胞を含むカバーグラス上へ接種した。その後、細胞のこれらの混合した集団を、Hの生成について調べた。
【0137】
(酵素潜在性(Enzyme Latency))
Wandersら(1984)からの改変として、潜在性実験を行った。手短に言うと、集密的な15cmの皿を、HBSSを用いて2回洗浄し、細胞をトリプシン処理によって取り除き、(約10ml)10mMのHepes(pH7.4)、0.25Mのスクロース、0.1%(v/v)のエタノール(緩衝液A)中に再懸濁させた。次いで、細胞は、(i)臨床用小型遠心器中でペレットにし、(ii)緩衝液Aを用いて1回洗浄し、(iii)緩衝液A中に再懸濁させ、(iv)適当なジギトニンおよびトリトンX−100を含有する緩衝液A反応溶液に等分した。透過化処理は、細胞を遠心分離(microfuged)(2分)した後、4℃で5分間にわたって実施し、その結果生じた上澄を、Storrie および Madden(1990)に記載されたように、乳酸デヒドロゲナーゼまたはカタラーゼについて試験した。
【0138】
(プラスミド/タンパク質の調製)
pGFP−KANL(配列番号1)およびpDsRed2−SKL哺乳類の発現ベクターを、PCR増幅によってpEGFP−C3ベクター(Clontech、パロアルト、CA)におけるGFPの3’末端に15ヌクレオチド配列を、そしてpDsRed2−C1ベクター(Clontech)におけるDsRed2の3’末端に12ヌクレオチド配列に加えることによって生成した。GFP−KANL(配列番号1)については、正方向のプライマーである5’−GTGAACCGTCAGATCCGCT−3’(配列番号12)は、Eco47III部位を含み、GFP ATG開始部位の上流のヌクレオチド配列を補足した。
逆方向プライマー5’−CGTctcgagTTATAGATCAGCTTTCAGCTCGTC−CATGCCGAGAGTGATCC−3’(配列番号13)であり、GFPの最後の22ヌクレオチドを補足し、そしてカタラーゼのペルオキシソームのターゲティングシグナル(−KANL(配列番号1)(下線部))、停止コドン、およびXhoI部位(小文字部)をコードするヌクレオチドを含むインフレームの3’末端を生成する。DsRed2−SKLについては、正方向のプライマーである5’−CCGCTAGCGCTACCGGTCGCCACCATGGCC−3’(配列番号14)は、Eco47III部位を含み、DsRed2 ATG開始部位の上流の核酸配列を補足した。逆プライマー5’CGTctcgagTTATAATTTGGACAGGAACAGGTGGTGGCGGCC−3’(配列番号15)は、DsRed2の最後の21ヌクレオチドを補足し、そして、ペルオキシソームのターゲティングシグナル(−SKL(下線部))、停止コドン、Xhol部位(小文字部)をコードするヌクレオチドを含むインフレームの3′末端を生成する。PCRは、Pwo重合酵素(Roche,Laval,Canada)を用いるパーキンエルマーGeneAmp PCR System 2400において実施し、Eco47IIIおよびXhoI部位に挟まれたGFP−KANL(配列番号1)かDsRed2−SKLかをコードしたフラグメントを得た。pEGFP−C3およびpDsRed2−C1ベクターは、それぞれ、XhoIおよびEco47IIIを使用して消化され、GFPを含有するフラグメントとDsRed2を含有するフラグメントの放出をもたらした。次いで、直線化ベクターを、T4DNA Ligase(Roche,Laval,Quebec,Canada)を用いて、適当な消化されたPCRフラグメント、GFP−KANL(配列番号1)またはDsRed2−SKLのいずれかとともに終夜にわたって連結させた。結果は、pGFP−KANLおよびpDsRed2−SKL(それぞれ、GFP−KANL(配列番号1)およびDsRed2−SKLを含む哺乳類の発現プラスミド)であり、それぞれサイトメガロウイルスプロモータの制御下にある。連結産物を、JM109細菌宿主に形質転換し、50μg/mlカナマイシンを含むLBプレートの上で平板培養した。各々の形質転換体の1つを選択し、増幅し、(pGFP−KANL(配列番号1)とpDsRed2−SKL)プラスミドを単離し、配列決定(Robarts Research Institute Sequencing Facility)し、適切なコンストラクトの配列を確認した。ペルオキシソームのターゲティングシグナル−SKLをコードするヌクレオチドコーディングを−KANL(配列番号1)の代わりに使用することを除き、同様にしてpGFP−SKLを構築した。
【0139】
Pex5p−結合アッセイにおける使用のために、それらのカルボキシ末端残基の同一性によってのみ異なる3つの(His)タグ付き(配列番号1)ヒトカタラーゼタンパク質を、細菌内で発現させ、Ni−NTAアガロースを利用して精製した。組換えタンパク質は、(i)天然に存在するKANL(配列番号1)配列(KANL(配列番号1))、(ii)SKL配列(SKL)か、または(iii)全くPTS1配列がない(−)、のいずれかをそれらのカルボキシ末端に含むように設計した。後者の場合、KANL配列(配列番号1)を単に削除した。これらの分子を生成するための、ヒトカタラーゼ遺伝子は、全長のcDNAクローン(Invitrogen)からPCR増幅された。同じ正方向のプライマーを、3つのコンストラクトの各々を増幅するために使用した。このヌクレオチドプライマーは5’−ACGCaggcctGCTGACACGCGGGATCCCGCC−3’(配列番号16)であり、StuI制限部位(小文字の)とともに、ヒトカタラーゼのアミノ末端側配列を補足した。
【0140】
3つの逆方向プライマー:
5’−GGGCGCAAGCTTTCACAGATTTGCCTTCTCCCT−3’(配列番号17)、
5’−GGGCGCAAGCTTTCACAGTTTCGATTTCTCCCTTGCCGCCAAGT−3’(配列番号18)、および
5’−GGCGCAAGCTTTCACTCCCTTGCCGCCAAGTG−3’(配列番号19)
を、カタラーゼのKANL(配列番号1)、SKL、および「−」バージョンをそれぞれ生成するために設計した。これらのプライマーは、適当なアミノ酸置換および/または欠失をコードしたヌクレオチド変化を含んだ。HindIII制限部位(小文字部)についても、停止コドンの下流に組み込まれた。「カタラーゼ」遺伝子の各々を、PCR(Eppendorf Mastercycler)によって増幅し、適切に消化して、pQE30−Xa(Qiagen)に連結させた。連結産物を大腸菌株DH5αに形質転換し、そして回収されたプラスミドを切断解析とDNA塩基配列決定によって正しいことを確認した。次いで、配列を確認した(His)タグ付き(配列番号20)ヒトカタラーゼコンストラクトを、発現させ、製造業者の指示(Qiagen)に従って精製した。
【0141】
(核微量注入及びイメージング)
ガラスカバーグラスの上で成長する継代早期および継代後期のHs27細胞を、微量注入器(マイクロインジェクター)を備えるLeitz Labovert FSの上に微量注入した。ガラス毛管針(World Precision Instruments,Sarasota,FL)は、Kopf Vertical Pipette puller(ガラス電極製作器)を用いて作製した。プラスミドは、100mMのKCIと20mMのKHPO(pH7.4)からなる注入緩衝液において15μg/mlに希釈した。細胞は、pGFP−SKLかまたはpGFP−KANL(配列番号1)を用いて核注入し、18または45時間にわたってインキュベートした。微量注入された細胞の生の蛍光画像は、FITCフィルタセットとCCDカメラを備えたZeiss Axiovert S100倒立顕微鏡の上で収集された。画像は、SensiCamイメージングソフトウェア(PCO CCD Imaging)を使用して加工した。
【0142】
pGFP−KANL(配列番号1)およびDsRed2−SKLが継代後期HDFに同時に核微量注入される場合、それらは、20μg/mlおよび15μg/mlの濃度でそれぞれ加えた。これらの細胞を、ガラスカバーグラスの上で成長させ、微量注入し、42時間後に固定した。ガラススライドにマウントした後、細胞はZeiss Axioplan2顕微鏡の上で像形成した。
【0143】
(Pex5p 結合アッセイ)
Ameryら、(2001)に記載されたように、ヒトPex5pは、大腸菌からグルタチオンSトランスフェラーゼ融合タンパクとして単離された。タンパク質(Sigmaから入手した)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.0)において、マイクロタイターのウェル細片(Maxisorp Immunomodule、Nunc)上に、終夜にわたってコートした。(マイクロウェルのタンパク質の等価コーティングは、その場で実施されるBio−Radタンパク質アッセイによって確認した。)ウェルは、PBSを用いて2回洗浄し、PBSの10mg/mlの脱脂乳に加えて0.05%(v/v)のTween−20を用いて、30℃で4時間にわたってブロックした。ウェルを再び洗浄して、PBS中で1.6μgのGST−HsPex5pを用いて終夜にわたってインキュベートした。GST−Pex5p結合の量を測定するために、ウェルを洗浄し、ウサギ抗GST抗体(希釈1:2500)に続いてペルオキシダーゼで標識したヤギ抗ウサギ抗体(希釈1:2500)とともにインキュベートした。洗浄後、Smytheら(1992)およびTerlecky(2002).に記載されたように、ウェルを発色させ、停止した。ミクロプレートリーダーは、490nmで吸光度を決めるために使用した。
【0144】
Pex5pリガンドブロッティングは、以降の変化を伴いFransenら(1998年)に記載したようにして実施した。ここでは、反応緩衝液中にメチオニンを使用せず、そしてリガンドはGST−Pex5pであった。また、結合と洗浄ステップの後、GST−Pex5pは、ウサギ抗GST抗体(1:2500)とペルオキシダーゼで標識したヤギ抗ウサギIg二次抗体(1:2500)を用いて検出された。
【0145】
(免疫沈降/プロテアーゼ防御)
免疫沈降とプロテアーゼ防御実験は、IMR90線維芽細胞からのオルガネラの上で実施した。それらを調製するために、等価な数の細胞(上述のようにDNA含有量測定によって確認した)は、HBSSで洗浄し、ラバーポリスマンを用いてホモジナイゼーション緩衝液(10mMのエタノールアミン(pH7.8)、10mMの酢酸、1mMのEDTA、0.1%のエタノール、0.25Mのスクロース)で集められ、細いゲージ針を通過させることそれに続くDounceホモジナイゼーションによって破壊した。核と破壊していない細胞は、4℃で10分間にわたって1000Xgで遠心分離によって取り除き、そしてオルガネラは4℃で20分間にわたって10,000Xgで遠心分離によって単離した。(後のステップは、これら細胞からPMP70/ペルオキシソームに定量的にペレットにする)。免疫沈降については、改質RIPA緩衝液(50mMのTris/HCl(pH 7.4)、150mMのNaCl、1%(v/v)のNP40、0.5%(v/v)のデオキシコール酸、0.1%(w/v)のSDS)にプロテアーゼ阻害剤(完全なカクテル−Sigma)を加えたものを用いてオルガネラを溶解し、抗Pex5p(または免疫前)抗体を加えた。回転器の4℃、2時間後に、プロテインAセファロース(Sigma)を4℃で30分間にわたり加えた。免疫沈降物を遠心分離によって採集し、洗浄し、10%のSDS−PAGEゲルで泳動した。ニトロセルロースへの移動後、抗Pex5p抗体、引き続き化学発光二次抗体(KPL、Gaithersburg、MD)を用いてブロットをプローブした。
【0146】
プロテアーゼを処理した場合、オルガネラは氷上で30分間にわたり50μg/mlのプロティナーゼK(Sigma)でインキュベートした。2mg/mlのフェニルメチルスルホニルフルオリドを追加することによって、反応を終了させた。次いで、SDS−PAGE試料緩衝液を試料に加え、タンパク質を10%のゲル上で分離した。ニトロセルロースへの移動後、上述のようにして、抗Pex5pまたは抗カタラーゼ抗体を用いて免疫ブロットを実施した。ここで示すオルガネラは、プロテアーゼ処理の前に1%のトリトンX−100で破壊した。
【0147】
(実施例II)
(PTS1移入効率の年齢関連低下)
生化学的に規定されるインビトロアッセイは、ペルオキシソームのPTS1タンパク質移入が老化細胞において低下されることを示すために使用された(図1)。この分析で使用された細胞(IMR90か、あるいはHs27 HDF)は、適切な集団倍加レベル(PDL)を達成するために、連続して継代させた。細胞のPDLは、その年齢に類似しているとみなしてよく(検討のために、Beckman および Ames(1998年)、Dice(1993年)を参照されたい)、ここで、我々の目的のために、(IMR90)継代早期細胞をPDL1−35として、継代中期細胞をPDL36−45として、継代後期をPDL46−60として定義する。IMR90細胞は、約PDL60で複製老化に到達する。Hs27細胞(比較可能な継代数で老化する)は、継代早期、継代中期、および継代後期で同様にして分析した。興味深いことに、両方の細胞型は、継代中期で始まる移入欠損を示した(図1)。
【0148】
これらのアッセイの移入基質は、ルシフェラーゼ、カルボキシ末端配列(セリン−リシン−ロイシン)を含むPTS 1−タンパク質(Gouldら、1987)であった。図1AとBにおいて、我々は移入を評価するために、この基質のビオチニル化バージョンとELISA法による定量分析を利用した。このアッセイは、半透過性細胞を使用し、ペルオキシソームの内側のビオチニル化−ルシフェラーゼの蓄積を測定する(Terleckyら、2001、Terlecky,2002)。輸送反応の後、非移入基質におけるビオチン基はブロックされ、移入は、細胞の均質化および分画化によって調製されたオルガネラ(図1A)、または(溶解された)細胞(図1B)のいずれかで評価した。使用される細胞型またはアッセイのバリエーションにかかわりなく、PTS 1−タンパク質移入は、継代後期HDFで最高60%まで減少した。質的に類似の結果は、免疫蛍光をベースとする移入アッセイを使用して得られた(WendlandおよびSubramani,1993;Rappら、1993)。そのアッセイでは、細胞がストレプトリジン−Oを用いて半透過され、ルシフェラーゼのペルオキシソームの蓄積が決定される。検出可能なペルオキシソームの数は、細胞の各々において免疫反応性構造を計数することによって決定された。継代早期細胞では平均の個数/細胞は約160であり、継代中期細胞では約40であり、継代後期細胞では約170であった。この系で、移入は継代中期細胞でより劇的に影響を受けているようであり、おそらくアッセイの閾値性質を反映する。すなわち、得られる免疫蛍光シグナルは、大部分は、全部または無であり、特定のクリティカルなレベルよりも下に低下した移入は単に検出されない。
【0149】
(実施例III)
(老化細胞でのペルオキシソームの特徴付け)
継代早期、継代中期、および継代後期HDFのペルオキシソームは、間接的な免疫蛍光顕微鏡によって検討された。オルガネラ(70kDa(PMP70)のペルオキシソーム膜タンパク質に対する抗体との反応性によって同定される)は、継代早期細胞においてランダムに散在する点状構造として現れた。継代中期および継代後期細胞において、これら構造の数は、増加した。より慎重にこの点を記載するために、我々は、継代早期、継代中期、および継代後期IMR90細胞における単位面積当たりの免疫反応性構造の数を計数した。我々は、誰であっても、継代早期細胞におけるそのような構造が、継代中期細胞で1.6、継代後期細胞で2.2存在することを発見した。同様の結果がHs27細胞を用いて得られた。さらにまた、ペルオキシソームの存在度におけるこの増加は、膜ペルオキシン(peroxin)(Pexl4p)に対する抗体を用いても観察された。
【0150】
継代早期および継代後期細胞をより直接的に比較するために、我々は共培養細胞においてペルオキシソームのマーカーを分析した。これらの実験のために、継代早期および継代後期HDFは、免疫染色の前に、同じ培養皿とカバーグラス上で継代培養した(継代後期細胞の正体は、組織化学的バイオマーカーの老化関連(β−ガラクトシダーゼ)を用いた染色によって確認した)。一旦、PMP70に対する抗体を用いて染色した後に、再度、異なった齢の細胞においてペルオキシソーム番号および形状の違いを明らかにした。
【0151】
ペルオキシソームマトリックスタンパク質についても、共培養細胞における免疫細胞化学によって検討された。この目的のために2つの抗体、カタラーゼに対して発生するもの、カルボキシ末端PTS1配列(セリン−リシン−ロイシン)を含むペプチドに対して特異的なものを使用した。両方の抗体は、継代早期細胞において点状構造を認識した。しかし、継代後期細胞では染色は顕著に異なり、IMR90では、両方のマトリックスマーカーが、相当量の広がった細胞質ゾル染色を伴って、より少ない強度で現れた。継代後期細胞のペルオキシソームマトリックスマーカーの挙動もまた、より可変的でもあった。Hs27sにおいて、例えば、いくつかの老いた細胞のカタラーゼは、異なった、ペルオキシソームの構造にあるようだったが、細胞質ゾルにもあるようだった。他の染色では、より完全に細胞質ゾルだった。これらの結果は、少なくとも、一部の細胞カタラーゼと他のPTS1を含有する酵素が継代後期細胞において誤って局在化されることを示唆する。
【0152】
さらに、この点を調査するために、我々は潜在性分析を実施した(図2)。このアッセイにおいて、継代早期および継代後期(IMR90)細胞は、ジギトニン濃度を増大して処理され、(細胞質ゾル)乳酸デヒドロゲナーゼと(ペルオキシソーム)カタラーゼとの放出を酵素的に測定した。100μg/mlジギトニンで、乳酸デヒドロゲナーゼは継代早期細胞でほぼ完全に放出された。(類似するプロフィールは継代後期細胞で得られたが、簡潔化のために示さない。)かかる濃度は、形質膜が損なわれ、細胞質ゾルの区画へのアクセスが得られる点を確立する。ジギトニンのこの濃度、そしてジギトニンのより大きな濃度において、検出可能なカタラーゼの相対量は、継代後期細胞において著しく高く、それにより免疫蛍光によって示唆される誤った局在化を確認した。カタラーゼの完全な放出が、TritonX−100で補充した緩衝液でのみ得られた点に注意されたい。
【0153】
(実施例IV)
(カタラーゼは、Pex5pと弱く相互作用する、弱いPTS1を含む)
原型のセリン−リシン−ロイシンカルボキシ末端を含むPTS1−タンパク質の移入は、老化細胞において明らかに損なわれている(例えば図1参照)。また、多様なPTS1(特に、リシン−アラニン−アスパラギン−ロイシン)を含むカタラーゼは、その移入効率の年齢に関連した低下を示す(図2参照)。これらのシグナルのうちの1つが他より有意に影響を受けるか否かを調べるために、我々は、継代早期HDFおよび継代後期HDFに対して、セリン−リシン−ロイシン(GFP−SKL)またはリシン−アラニン−アスパラギン−ロイシン(GFP−KANL)(配列番号1)のいずれかと連結した緑色蛍光タンパク質をコードするプラスミドを、核微量注入した。次いで、生細胞は、蛍光顕微鏡下で18時間後と45時間後に、雑種タンパク質の発現について検討された。
【0154】
GFP−SKLは、継代早期細胞において効率的に移入され、18時間までにペルオキシソームに蓄積した(例えば、図2を参照のこと)。継代後期細胞において、移入は遅延し、18時間後に現れた蛍光構造は微かなもののみであった。45時間までになってやっと、GFP−SKLが有意な程度に移入されたように見える。カタラーゼPS−1で標識したGFP(GFP−KANL(配列番号1))は、微量注入後の45時間まで継代早期細胞のペルオキシソームに現われず、継代後期細胞のペルオキシソームに45時間で全く蓄積しなかった。老いた細胞において、最終的にGFP−KANL(配列番号1)の移入が発見される前に、約115時間を要した。
【0155】
また、我々は、同じ(老化)細胞において2つのPTS1配列を含むレポーターの移入を検討した。この実験では、DsRed2はセリン−リシン−ロイシンに結合され(DsRed2−SKL)、GFPはリシン−アラニン−アスパラギン−ロイシンに結合された(GFP−KANL)(配列番号1)。微量注入の42時間後に、DsRed2−SKLがペルオキシソームにおいてどのように現れたかを記録したが、GFP−KANL(配列番号1)は細胞質ゾルに大部分が留まった。明らかに、老化は、ペルオキシソームタンパク質移入装置を損ない、カタラーゼのPTSは特に影響を受ける。
【0156】
PTS 1を含有するタンパク質の移入は、Pex5p、可溶性の受容体分子(細胞質ゾルとオルガネラの間を往復する)(DammaiおよびSubramani,2001);DodtおよびGould(1996)によって媒介される。Pex5pの機能的なサイクルは、細胞質ゾルにおけるそのカーゴ(cargo)の結合で始まる。2つのPTS 1を含有するタンパク質の移入効率の違いの潜在的な説明は、このステップにおけるPex5pによって異なる認識である。Pex5pが、セリン−リシン−ロイシンPTS1を含むタンパク質(例えばルシフェラーゼ)と、これに対しリシン−アラニン−アスパラギン−ロイシンPTS1を含むタンパク質(例えばカタラーゼ)との優先的な相互作用を示したか否かを決定するために、我々は固相とリガンドブロット結合アッセイを実施した(図3A〜3F)。前者において、ルシフェラーゼ、カタラーゼと2つの対照のタンパク質(ウシ血清アルブミンと卵白アルブミン)を、ミクロプレートのウェルにコートし、GSTタグ付きのヒトPex5pを調べた。我々の結果は、ルシフェラーゼに対するPex5pの結合が、一貫して、カタラーゼ(図3Aに示される代表的な実験を参照)に対するよりも3倍から4倍高いことを示す。ほとんど結合していないことが対照のタンパク質について観察され(図3A)、非結合は、(i) Pex5pの添加なし、(ii)コートされたタンパク質なし、(iii)または熱変性したPex5pで実施した実験において検出された。類似の結果はリガンドブロッティングで得られた。リガンドブロッティングにおいて、ルシフェラーゼ、カタラーゼ、およびウシ血清アルブミンは、SDS−PAGEによって分離され、ニトロセルロースへ移され、Pex5pでブロットした。再度、ルシフェラーゼに対するPex5pの結合は、試験される他のタンパク質に対するよりも劇的に高かった(図3B、3C)。
【0157】
我々は、それらのカルボキシ末端残基の正体のみによって異なる精製組換えヒトカタラーゼ分子に対するPex5pの結合を検討することによって、この点についても示した。この実験では、カタラーゼ分子は、ポリ−ヒスチジンタグ(精製用)、およびそれ自身のPTS1(KANL)(配列番号1)、変更されたPTS1(SKL)、あるいはPTS1なし(−)のいずれかを含むように設計された。発現、精製、および特徴づけの後(図3D、3E)、3つの種がPex5pでブロットした。図3Fで示すように、Pex5pは優先して「SKL」PTS1を有するカタラーゼと結合する。
【0158】
(実施例V)
(Pex5p循環)
ペルオキシソームに対するその「拡張シャトル」の一部として、Pex5pおよび結合したカーゴは、オルガネラの膜上でドッキングタンパク質と相互作用する。この相互作用は一時的である;ペルオキシソーム膜の受容体の蓄積は、循環機構におけるエラーとタンパク質移入の結果として生じる減少と関係している(DodtおよびGould,1996)。異常なPex5p循環が老化細胞に関連しているかどうかを調べるために、我々はペルオキシソーム関連Pex5pのレベルを分析した。これを達成するために、我々は、異なる年齢のHDFからオルガネラ(等量のPMP70に正規化)を単離し、Pex5pを免疫沈降した(図4A−4D)。重要なことに、膜結合Pex5pのレベルは、継代中期のおよび継代後期細胞で一貫してより高かった。対照実験によれば、細胞Pex5pの総量がこれらの細胞で変わらず、オルガネラ膜に結合した量のみが変化したことを明らかにした。細胞のPex5pの免疫染色によって、ペルオキシソーム結合での年齢関連増加が確認された。
【0159】
近年では、Pex5pはその反応サイクルの一部として実際にペルオキシソームに入ることが示された(DammaiおよびSubramani,2001)。継代後期細胞で観察されるペルオキシソーム関連Pex5pが膜またはオルガネラ内部にあったかどうか決定するために、我々はプロテアーゼ−防御アッセイ(図4E)を実行した。この実験では、継代後期細胞からのオルガネラをプロティナーゼKで処理して免疫ブロットにかけた。管腔の酵素であるカタラーゼが主に非感受性であった条件下で、我々の結果は、Pex5pがプロテアーゼによって完全に分解したことを示す。重要なことに、オルガネラが界面活性剤で前処理されたとき、Pex5pおよびカタラーゼ両方はプロテアーゼによって完全に分解した。まとめると、これらの結果は、老化細胞がそれらのペルオキシソームの表面でPex5pを蓄積することを示唆する。Pex5pも継代早期細胞でペルオキシソーム(高プロテアーゼ感受性である)の表面に現れ、おそらくPTS 1移入受容体の正常な輸送を反映する点に留意する必要がある。
【0160】
(実施例VI)
(ペルオキシソーム老化における過酸化水素の役割)
酵素移入能力の減退を示すペルオキシソームに起こりうる結果は、恒常性調整の喪失である。すなわち、多分、それはHや他の活性酸素(ROS)を作り出すペルオキシソーム酵素と有害代謝物を分解するカタラーゼのようなものとの間のバランスの変化が存在する。そうした不均衡の一つの現れは、細胞中のHの蓄積である。これを分析するため、我々は多様な年齢のヒト二倍体線維芽細胞(HDF)を酸化反応型の染料(oxidation−sensitive dye)2’,7’ジクロロフルオレシンジアセテート(dichlorofluorescin diacetate)で処理した(Bass et al、1983;Ohbaら、1994)。この化合物は細胞に入り、非蛍光性で細胞不浸透の誘導体に変換される。次いで、それをHにさらすと、化合物はその蛍光型である2’、7’ジクロロフルオレセン(dichlorofluorescein)に変換され、共焦点顕微鏡で容易に視覚化できる。少量のHが早期および継代中期細胞で見られた。しかしながら、継代後期細胞においては、ROSの目覚しい増加が現れた。同様な結果が、この測定を共培養された継代早期および後期ヒト二倍体線維芽細胞に行った際も観察された。また、継代早期HDFをカタラーゼ阻害剤のアミノトリアゾール(aminotriazole)で処理したものは、H誘発という継代後期細胞でみられたものと大変似通った結果となった。従って、我々の研究は、ペルオキシソームが継代後期細胞でのH産生に貢献するかもしれないという考え方を確かに支持はするものの、その貢献の程度については未解決の重要な問題として残されている。また、ペルオキシソームのタンパク質移入が既に継代中期細胞で損なわれているにもかかわらず、なぜHが継代後期細胞において大量に蓄積するのかも、完全には明らかではない(図1)。多分、これはグルタチオンペルオキシダーゼ、あるいは、継代後期細胞において活性酸素を処理する能力が事実上圧倒的になる他のHの分解活動の関与を反映している。
【0161】
の細胞内蓄積と老化表現型の関係は、既に確立されている。特に、ChenとAmesは(1994)、Hの準致死量投与(sub−lethal doses)で処理されたHDFが、成長停止、重要な細胞内酵素の活性低下、そして「老化」形態を含む、多くの老化細胞の特徴を示すことを明らかにした。我々は、図5で少し違った問題点に目を向け、継代早期細胞をHにさらすことが「ペルオキシソーム老化」を誘発するのか否か、そしてその構成酵素を移入するオルガネラの能力を低減させる結果となるか、を試した。我々の結果は、細胞のHによる処理がPTS1タンパク質の移入を著しく減少させる例を示している(図5)。さらに、これらのタンパク質は、免疫蛍光や免疫沈降で測定された通り、そのペルオキシソームにPex5pを蓄積していた。要するに、これらの結果は、Hが老化した細胞に蓄積し、そうした蓄積がペルオキシソームの機能的な完全さを減退させることに貢献しているかもしれないことを示している。こうした現象は、「ペルオキシソームの老化」だけでなく、細胞の老化にも同様に貢献していると推定できる。
【0162】
(実施例VII)
(ペルオキシソームへのカタラーゼ移入の追加的研究)
その後の研究ではヒトの健康や老化におけるペルオキシソームタンパク質移入とオルガネラ生物発生(organelle biogenesis)の分子メカニズムの理解に関した。上で見た通り、ペルオキシソームの移入装置は年齢によって損なわれ、酵素カタラーゼが特に影響を受ける。ペルオキシソームはそのオルガネラで行われる多くの酸化反応の副産物としてHを作り出す。1つの結果としてのペルオキシソーム内におけるカタラーゼ濃度の低下は、H、おそらくは有害なROSの蓄積可能性をもたらす。この結果は、老化細胞は実に高いレベルのHを産生し、これがオルガネラの移入能力の更なる低下に貢献し得ることを示唆した。また、ペルオキシソームの酸化促進剤および抗酸化剤の間のバランスの喪失は、細胞の老化に貢献しているのであろう。
【0163】
本発明者らは以前に、その構成酵素を効果的に移入することはできなかったが、老化したヒトの細胞にペルオキシソームがしかしながら大量に現れることを観察した。ペルオキシソーム生物発生を制御するメカニズムが機能しなくなったために、このオルガネラが、重要なタンパク質移入を欠いている間に、分裂する。この観察は、継代早期および継代後期細胞を電子顕微鏡で検査することで補強された。継代後期(古い)線維芽細胞は、免疫蛍光分析による観察でペルオキシソームであると解釈される大量の小さな小胞を明らかに収容している。少なくともこれらの小胞の一部はペルオキシソーム膜タンパク質70(PMP70)に特異的な抗体、および金標識二次抗体により免疫装飾される。
【0164】
上記で議論した通り、老化に伴うタンパク質移入の欠陥はペルオキシソームの機能に障害をもたらす。これは、ある種のペルオキシソーム酵素の活性が、その移入減少のためか、または多分Hの蓄積による不活発化のために、損なわれるからである。この問題は、エーテル−リン脂質生合成の第1段階の触媒作用を担っている酵素、すなわちジヒドロキシアセトン−フォスフェイトアシルトランスフェラーゼ(DHAP−AT)を測る測定法を用いることで対応した。その結果は、継代後期細胞はこの重要な酵素の活動減退を表しており、このことは継代後期細胞のペルオキシソームは、DHAP−ATにより開始される酵素的カスケードの最終産物である膜プラズマロゲンを低いレベルでしか含んでいないであろうとの予測へと結びつく。ペルオキシソームおよび/または他の細胞膜でのプラズマロゲンの減少は、プラズマロゲンが各種の有害な損傷に保護的な効果を発揮するだけに、その影響は深刻である。DHAP−AT酵素自身PTS1とPTS2の2つの要素を含み、すなわち異種二量体である。このことは、PTS1移入の不足(例えば、ツェルヴェーガー症候群(Zellweger syndrome)患者の細胞中)、またはPTS2移入の不足(例えば、近節短縮性点状軟骨形成異常症患者の細胞中)がDHAP−ATレベルの顕著な減少をもたらすという観察により支持される。
【0165】
カタラーゼは継代早期および継代後期細胞両方において比較的少量移入される基質であるという我々の公開した観察を拡張するために、インビトロでの移入アッセイを行った。結果は図6(図8および図9につづく)の通りである。とりわけ、カタラーゼの移入は継代後期ヒト細胞において減少しており、上記IからVIまでの実施例とも合わせて、このことはこの酵素の細胞内における誤った局在化を示している。再度、カタラーゼはそのC末端に非標準的な(non−canonical)PTS1(−KANL)(配列番号1)を持っている。リガンドブロッティング(ligand blotting)手法に基づく研究は、再構築された(re−engineered)C末端、すなわち−SKLペプチド(−SKL peptide)の存在を持つカタラーゼが、PTS1移入受容体のPex5pとより強固な相互作用を行うことを示した。ここに記述した通り、これらの観察はBIACOREバイオセンサー3000を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)を使うことにより拡張した(図7)。この結果は前の観察を支持するものであり、その自然発生的なPTS1を持つカタラーゼは、−SKL PTS1を含むその分子の変形に比べると不十分にしか認知されない。1つの濃度しか示されていないが、広範な「動力学」分析はオンレート(on−rates)、オフレート(off−rates)およびK値の計算を可能にした。
【0166】
別の実験では、−SKLを含む酵素、ルシフェラーゼおよびカタラーゼの、インビトロでの移入効率を比較した。図8に示された通り、ルシフェラーゼはカタラーゼに比べ、ペルオキシソームの移入装置のための、はるかに強固な基質であり、影響は、細胞の老化によりさらにひどくなる。
【0167】
これらの結果からの1つの予測は、−SKL PTS1を含むように操作されたカタラーゼは自然発生する−KANL(配列番号1)−を含む酵素よりもより効率的に移入されるということである。図9はこの予測を確認しており、「強い」PTS1を持つカタラーゼははるか大量に移入される。この実験は通常使われる細胞株である、ヒト細胞(A431)を用いて行った。同様な結果はヒト線維芽細胞からも得られている。
【0168】
この変更された(PTS1)標的シグナルによるより効率的なカタラーゼの移入は、ペルオキシソーム劣化の経過を変更しようとする本発明者の戦略の基礎として役立つ。ペルオキシソームに「再導入」されたカタラーゼは、管理できるレベルのHを産生し、このおよび他の有害なROSの蓄積の影響の減少を経験する細胞をもたらす。
【0169】
カタラーゼの細胞中への効率的な導入のために、本発明者はMorrisとその同僚により記述された「タンパク質形質導入(protein transduction)」戦略を活用する(Nature Biotechnology、19、1173−1176、2001)。この手法の基本は、特別に設計された21アミノ酸ペプチド(Pep1またはChariotTAと呼ばれる)が関心対象のタンパク質、ここではカタラーゼを初期結合段階で吸着する点にある。このペプチド/カタラーゼ複合体は、次いでこの手順の形質導入段階で細胞に加えられる。複合体は細胞膜を越えて形質導入され、細胞の細胞質に接近し、その時点で複合体は分離する。カタラーゼは今やペルオキシソームの移入装置に自由に係合し、そしてそのオルガネラ内に移入される。
【0170】
最初に、容易に視覚化できるリポータータンパク質、ベータ−ガラクトシダーゼ(β−galactosidase)を用い、本発明者はヒト線維芽細胞へのタンパク質の形質導入を行った。重要なことに、実験を4℃またはATP不在の下で行った時には、細胞は未だ青色で(このことは、細胞β−ガラクトシダーゼの存在を示す)エンドサイトーシスはその結果を表さなかった。
【0171】
次いで、カタラーゼは本技法により細胞中へと送達された(図10)。これらの実験は極めて少量のカタラーゼしか発現しない細胞である無カタラーゼ性(acatalasemic)の線維芽細胞に依存して行った(「Acat」と表示された細胞と通常の「IMR90」線維芽細胞の細胞中の免疫反応性カタラーゼのレベルを比較して欲しい)。しかしながら、形質導入が行われるや、(Acat)細胞内でカタラーゼのレベルは著しく増加した。もし、カタラーゼのHisタグ付き(His−tagged)ものが用いられたとしたら、このより大きい分子は形質導入され、やや遅く移動する(免疫反応性)種として存在した。この実験では研究対象のカタラーゼは独自のPTS1を持っていたが、他の結果から、この細胞の−SKL−タグ付きの種類についても同様に形質導入されることが示唆される。
【0172】
本発明者らは前に継代早期細胞に比べ継代後期線維芽細胞は高いレベルのHを産生することを示した。ここで、無カタラーゼ性線維芽細胞もまた高いレベルのHを産生することを示し、そのレベルは例えば継代早期のIMR90細胞と比べてもかなり高いものであった。重要なことに、こうした細胞へのカタラーゼの形質導入はHの含有量を劇的に減少させた。こうした方法で調べた数多くの細胞で定量分析を可能にした。重要なことに、細胞中のHの量はこの実験でおよそ50%減少した。これらの無カタラーゼ性細胞は通常量のカタラーゼを作らないことに留意すべきである。しかしながら、それらの細胞が本質的に移入欠陥を有するという事前の証拠は存在しない。従って、これらの細胞を「老化」したとみなしてはならず、それ自身の「より弱い」PTS1を有していてもカタラーゼを移入することが期待される。
【0173】
強い標識シグナル(SKL)を含むようにカタラーゼを操作し、それを継代後期細胞に導入する実験も行った。そうしたカタラーゼは細胞のHを減少させる。更に、カタラーゼ−SKLの継代早期細胞への導入は老化の開始を遅らせる(あるいは、解消する)。
【0174】
(実施例VIII)
(哺乳動物でのカタラーゼ−SKL処置のインビボ研究)
「タンパク質形質導入」は、マウスで研究されるように、動物の細胞および組織の中に生物学的に関連のあるポリペプチドを導入する比較的新しい形態である。例えば、「インビボタンパク質形質導入:生物学的活性タンパク質のマウスへの送達(In Vivo Protein Transduction:Delivery of a Biologically Active Protein into the Mouse)」を参照(Science、1999、285:1569−1572)。
【0175】
従って、研究はカタラーゼ−SKLを生きている生物に導入して行う。手順は次の通りである。HIV−Tatタンパク質(既述)からのタンパク質形質導入ドメインをカタラーゼ−SKLのN末端に融合させる。ポリヒスチジン親和性タグ(His−Tag)を分子に取り付ける(グループA)。1つの対照として(グループB)、天然のカタラーゼを同様にHis−Tagを有するHIV−Tatドメインに融合させる。他の対照として(グループC)、天然のカタラーゼからPTS配列を取り除いたものをHis−Tagを有するHIV−Tatドメインに融合させる。追加の対照はグループDで、ヒト血清アルブミンを含む同様な分子量を持つ無関係のタンパク質でカタラーゼ酵素活性を欠いているもの、を融合させ同じように取扱い、SKLに連結させる。
【0176】
融合タンパク質を、ポリヒスチジン配列を金属原子に結合させることに基づくNi−クロマトグラフィーを用いて単離する。単離した融合タンパク質を次に変性し、別個のグループのマウスにマウス一匹当たり10μgから1mg(Kg当たり0.1mgから10mg)の投与量で腹膜内注射をする。
【0177】
2から4時間の間隔を空けた後、注入されたタンパク質の生体内配分(biodistribution)と活性を測定する。生体内配分は関心ある組織夫々の酵素測定により測定する。トータルとしての細胞カタラーゼの活性は、Dを除くA,BそしてCグループで増加していることが分かる。グループAにおける増加が一番大きい。処理されたマウスから採られた肝臓、線維芽細胞、肺、心臓、脳、脾臓そして腎臓の細胞や組織から取得されたペルオキシソームに存在するカタラーゼの量と酵素活性を測定する。グループAは、グループBとCよりもカタラーゼ酵素活性に加え、目立って多くのカタラーゼタンパク質を有する。グループDはペルオキシソーム中に血清アルブミンタンパク質の存在を示しはするが、当然のことにカタラーゼ酵素活性の増加は全く無い。
【0178】
形質導入されたカタラーゼタンパク質の存在を、抗−His抗体またはNi−HRP細胞化学的染色試薬との反応性に加え、大きさ(内因性の形態よりもわずかに大きい)により、内因性カタラーゼ酵素から区別できる。
【0179】
生体内配分の研究は、測定可能な量のカタラーゼとグループDのタンパク質が事実上検査された全ての組織に行きわたっていることを確認する。
【0180】
前述を踏まえて、次のパラメーターを測定すべく研究を設計し、次の結果を得る。
【0181】
(1)カタラーゼ−SKLを受け入れたより多くの動物が、対照に比べ酸化的ストレスに対し耐性である(この効果を定量化するために、細胞および/または生物を酸化的ストレス導入剤パラコートで処理し、タンパク質、DNAそして脂質への損傷を評価する。Hsp70ファミリーのメンバーを含むストレスマーカーを測定する。更に、(a)酸化されたタンパク質(タンパク質のカルボニル修飾の程度を検査して測定)、(b)プラズマロゲンを決定する。そして、DNAへの酸化損傷を測定する。);
(2)マウスが齢をとると、かれらの注入された天然カタラーゼを移入する能力は、注入されたカタラーゼ−SKLを移入する能力に比べて、低下する;
(3)カタラーゼ−SKLにより長期間にわたり(1週間に1回または2週間に1回)処置された動物においては(対照と比べて):
(i)ペルオキシソームおよび他の細胞小器官および生化学的過程が、構造と機能において「より若い」レベルを維持している。
【0182】
(ii)その発現が加齢に関連していることで知られている遺伝子の発現プロファイルが、より若い動物のそれとより密接に似通っている。
【0183】
(iii)「生活の質」(例えば、免疫機能、性欲、食欲、身体活動)や認知機能の尺度が改善する。
【0184】
(4)カタラーゼ−SKLにより長期間にわたり(1週間に1回または2週間に1回)処置された動物は(対照に比べ)より長く生きる。―彼らの寿命は約30%増加する。
【0185】
(実施例の考察)
ペルオキシソームは、有核細胞の遍在するオルガネラである。ペルオキシソームは、コレステロールの種々の生理的プロセスで役割を果たす。例えば、該プロセスとして、脂質代謝と、コレステロール、胆汁酸、およびプラスマロゲン生合成の特異的なステップが挙げられ、ペルオキシソームがヒト健康のために不可欠なものとしている。オルガネラは、呼吸の一形態を実行し、そのオキシダーゼが、Hを最終産物として生成する。この非常に有毒なROSは、ペルオキシソームカタラーゼの作用を通して、少なくとも大部分の状況下で水に急速に変わる。ヒト細胞が老化するにつれて、ペルオキシソームが持つHの生成と分解活性とのバランスの維持する能力と酸化ストレスを妨げる能力が損なわれて、細胞老化プロセスに貢献する。本発明者は、老化HDFでのペルオキシソームを特徴づけて、平衡が失われ、オルガネラ機能が減少したこの状態がどのようにして起こるのかを説明する。
【0186】
翻訳後に細胞質ゾルから酵素がペルオキシソームに移入される(Lazarow and Fujiki、1985)。上記したように、オルガネラの移入効率の年齢関連性の変化を検討した。結果は、高齢ではヒトペルオキシソームによるSKL含有PTS1−レポーターの移入の効率が低いことを示した。PTS 1は、ペルオキシソームにタンパク質を導くペプチド配列のクラスに与えられる名前である。全てのPTSlを含有する酵素は、それらの移送機構の一部として循環受容体(Pex5p)を係合すると考えられる。カタラーゼは、PTS 1を含有するが、他の全てのものと非常に異なるものである。GFPへPTS1を付加して融合タンパク質をもたらし、これは、(a)継代早期細胞のセリン−リジン−ロイシンタグ付きGFPレポーターよりも効率が低く移入が起こり、また(b)継代後期細胞での他のレポーターよりもかなり移入が少ない。これらの結果は、カタラーゼがペルオキシソームタンパク質移入装置にとって相対的に劣った基質であることを再び確認した(Lazarowら、1982)。より最近の研究において、2つの線維芽細胞細胞系統はゼルウィガー(Zellweger)様障害を有する患者から単離していた。ここでは、カタラーゼの移入は選択的に損なわれる(Sheikhら、前出)。「無カタラーゼペルオキシソーム」は、幼児レフサム疾患の患者でも説明されている(Fujiwaraら、2000)。
【0187】
継代早期細胞であってもカタラーゼの移入効率が劣る理由および継代後期細胞でその影響が悪化する理由の問題に関しては、Pex5pがカタラーゼを十分に認識するだけではないという事実に、部分的に、1番目の問題に対する答えが見える。
【0188】
本研究は、老化細胞で影響を受ける少なくとも1つの重要な機械的ステップ(Pex5p循環の機械的ステップ)を同定した。酸化的に損傷を受けた巨大分子の蓄積は、細胞老化で一定の役割を果たし、これは生物の寿命の重要な決定因子であることがたしかなようである(Lee and Wei,2001;Johnsonら、1999;BeckmanおよびAmes,1998)。多数の変性性疾患を、細胞機能(MastersおよびCrane,1995)でのROSによって誘発された変更にも関連させることが可能である。本発明によれば、ペルオキシソーム(脂質−膜の生合成および機能を果たすことに不可欠なオルガネラ)は老化細胞によって経験される酸化的負荷の一因である。オルガネラは、それがH(Singh, 1996)に消費する分子状酸素のほとんど全てを変える。10%以上の全細胞酸素を消費している肝性ペルオキシソームの推定値を加味すると、これが考慮中のROSの有意な量であることは明らかである。ペルオキシソームにおけるPTS1含有酵素(特にカタラーゼ)を移入する能力の減少は、Hを能率的に代謝しない老化細胞で、機能的に損なわれたオルガネラを作成し、これは、深刻な潜在的結果である。蓄積したHは酸化ストレスを増して、細胞構成要素に損傷を与える。最後に、Hの影響は、実際にさらにペルオキシソームの基質タンパク質移入の効率を低下させ得ることができることから、無際限に継続する悪循環を結果として生じることになる。重要なことは、老化の明らかな特徴がなんらか観察される前に、この循環は早く動き得、ペルオキシソーム機能障害および細胞老化の初期に貢献することができる。このように、本組成物および方法(そのような循環に反対に作用するようになっている)は、重要な構成要素を老化の影響の一部と戦う我々の能力に加える。
【0189】
(上記で引用した文献)
【0190】
【数3】

【0191】
【数4】

【0192】
【数5】

【0193】
【数6】

【0194】
上記で引用されたすべての参考文献は、特に援用されていようとなかろうと、その全体が本明細書中で参考として援用される。本願は、米国仮特許出願番号60/422,100(2002年10月30日出願)(その全体が本明細書中で参考として援用される)の出願日の利益を主張する。
【0195】
ここで、本発明を完全に記載することにより、同一のものが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、そして過度の実験を必要とせずに、等価なパラメータ、濃度、および条件の広範な範囲内で実施され得ることが当業者により理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の修飾カタラーゼポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−239971(P2010−239971A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163435(P2010−163435)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願2004−550263(P2004−550263)の分割
【原出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【出願人】(504338070)ウェイン・ステート・ユニバーシティー (3)
【Fターム(参考)】