細胞に基づくスクリーニングシステム
【課題】特異的に特定生物学的機能に影響を及ぼすものについて多数の化合物をスクリーニングする目的で細胞内の蛍光標識レポーター分子の分布、環境、又は活性を迅速に測定するために細胞の光学系解析を行うためのシステム、方法、及びスクリーンを提供する。
【解決手段】蛍光レポーター分子を含有する細胞をある場所の配列で提供するステップ、高倍率蛍光光学系を用いて各場所において非常に多数の細胞をスキャンするステップ、光学情報をデジタルデータに変換するステップ、及び細胞内の蛍光標識レポーター分子の分布、環境又は活性を測定するためにそのデジタルデータを利用するステップを含む。該データを処理、表示及び記憶するための装置及び電子化方法を含む。
【解決手段】蛍光レポーター分子を含有する細胞をある場所の配列で提供するステップ、高倍率蛍光光学系を用いて各場所において非常に多数の細胞をスキャンするステップ、光学情報をデジタルデータに変換するステップ、及び細胞内の蛍光標識レポーター分子の分布、環境又は活性を測定するためにそのデジタルデータを利用するステップを含む。該データを処理、表示及び記憶するための装置及び電子化方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、1997年2月27日に提出された米国特許出願S/N第08/810,983号、及び1997年5月29日に提出されたS/N第08/865,341号;1997年5月29日に提出されたPCT出願WO97/45,730号の一部継続出願であり、さらに1997年12月11日に提出された出願番号が付与される予定の米国特許仮出願(第97,022−A号及び第97,223−A号)の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、新薬発見を目的とした蛍光に基づく細胞及び分子の生化学的アッセイの分野にある。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
技術において現在実践されている新薬発見は、特異的疾患ターゲットの識別、特異的ターゲットに基づくアッセイの開発、アッセイの妥当性確認、スクリーニングを作り出すためのアッセイの至適化及び自動化、“ヒット(当たり)”を識別するためのアッセイを使用した化合物ライブラリーの高スループットスクリーニング、ヒットの妥当性確認及びヒット化合物の至適化を含む、長い時間を要する多重ステップからなるプロセスである。このプロセスの産物は、前臨床試験に進み、妥当性が確認されれば場合によっては臨床試験に進む最重要化合物である。このプロセスでは、スクリーニング期はアッセイ展開期とは別個であり、生きている生物学的系において化合物の有効性を試験することを含む。
【0004】
歴史的に、新薬発見は時間と費用のかかるプロセスであり、1つの新薬が創製されるまでに非常に長い年数と数億ドルもの金額が費される。ゲノミクス及び高スループットスクリーニングの分野における開発は、ターゲット識別及びスクリーニングできる化合物の量の分野において高度の能力及び効率を生じさせた。自動化されたDNAシークエンシング、PCRアプリケーション、位置クローニング、ハイブリダイゼーション配列、及びバイオインフォーマティクス(生物情報学)における大きな前進は、可能性ある新薬スクリーニングターゲットをコードする遺伝子(及び遺伝子断片)の数を大きく増加させてきた。しかし、新薬スクリーニングのための基本スキームは以前として同じである。
【0005】
現在の方法及びプロトコールを使用して行う治療的インターベンションに対する目的としてのゲノムターゲットの妥当性確認は、例えばin vivo機能モデル、組換えタンパク質の機能解析、及び候補遺伝子の安定細胞系発現のような時間のかかる手動方法を使用するために、新薬発見プロセスにおける障害となってきた。自動シークエンシングを通して収集されたプライマリーDNA配列をしようしても遺伝子機能の識別を行うことはできないが、既知の配列順序データベースと比較することによって共通“モチーフ”及び特異的な遺伝子相同性に関する情報を提供することはできる。例えばサブトラクションハイブリダイゼーション及びRADE(弁別発現の迅速増幅)のようなゲノム方法は、疾患状態モデルにおいてアップ又はダウンレギュレートされた遺伝子を識別するために使用することができる。しかし、識別及び妥当性確認は今もなお同一経路を進行する。一部のプロテオミック法は、重要な候補遺伝子を識別するためにタンパク質識別(包括的な発現配列、2D電気泳動法、組合せライブラリー)に逆転遺伝学を組み合わせて使用する。そうした推定上の“疾患関連配列順序(DAS)”若しくは無傷cDNAとして分離されるDASはこれらの方法にとっての大きな長所であるが、それらは何百ものタンパク質によって識別されるので、コードされるタンパク質の種類、活性、及び分布に関する情報は提供しない。新薬スクリーニングターゲットとしてサブセットのDASを選択することは“ランダム”であり、従って非常に非効率的で、疾患と機械的にリンクした機能的データは得られない。
このため、生物学的機能を確立するためにDASを迅速にスクリーニングし、それによって新薬発見におけるターゲットの妥当性確認及び候補至適化を改善するための新規のテクノロジーを提供することが必要である。
【0006】
初期の新薬発見の生産性を向上させるためには3つの主要なルートがある。第1に、高い情報処理能力を提供するツールが必要である。バイオインフォーマティクスは、DNAシークエンシングシステムの急速な開発及びゲノムデータベースの進化に伴って発達してきた。ゲノミクスは、可能性のある新しいターゲットを識別することにおいて非常に重要な役割を果たし始めている。プロテオミクスは、薬物相互作用を予想するためにタンパク質ターゲットの構造及び機能に関して必要不可欠なものになってきた。しかし、生物学的複雑性の次の段階は細胞である。このため、細胞から多次元情報を収集し、管理し、そして検索することが必要である。第2に、よりスループット(処理能力)の高いツールが必要である。既にDNAシークエンシング及び高スループット一次スクリーニングにおいて証明されているように、生産性を改善するための重要な鍵は自動化である。そこで本発明は、よりスループットの高いツールに対する必要を満たす、細胞から多重パラメーター情報を引き出す自動システムを提供する。本発明はさらに又、方法を超小型化し、それによってスループット増大を許容し、他方では各アッセイで必要とされる試薬や試験化合物の容量を低下させることを提供する。
【0007】
初期の新薬発見アッセイにおいては、優勢な読み出しは放射能であった。しかし、より多くの情報、より高いスループット及び超小型化に対する必要は蛍光検出を使用する方向への変化を引き起こしてきた。蛍光に基づく試薬類は、スループットがより高く、情報量がより多く、必要とされる試薬や試験化合物の量がより少ない、はるかに強力な多重パラメーターアッセイを生み出すことができる。蛍光は又、放射能に基づく方法より安全かつ安価である。
【0008】
色素及び蛍光試薬を用いて処理された細胞のスクリーニングは技術においてよく知られている。レポーター分子として例えば修飾緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光タンパク質を産生するための細胞の遺伝子工学に関しては相当に多数の文献が存在する。野生型GFPの一部の特性は、Morise et al.,(Biochemistry 13(1974), p.2656−2662)、及びWard et al.,(Photochem. Photobiol. 31(1980), p.611−615)によって開示されている。クラゲのエクオレア・ビクトリアのGFPは395nmで励起極大、510nmで放射極大を有しており、蛍光活性のために外因性因子を必要としない。文献に開示されたGFPの使用は広まっており、遺伝子発現及びタンパク質位置決定の試験(Chalfie et al.,(1994), Science 263, p.12501−12504)細胞下オルガネラを可視化するため(Rizzuto et al.,(1995), Curr. Biology 5, p.635−642)、分泌経路に沿ったタンパク質輸送(Kaether and Gerdes,(1995), FEBS Letters 369, p.267−271)、植物細胞中の発現(Hu and Cheng,(1995), FEBS Letters 369, p.331−334)及びショウジョウバエ(Drosophira)の胚(Davis et al.,(1995), Dev. Biology 170, p.726−729)を可視化するためのツールとして、及び他の重要なタンパク質へ融合したレポーター分子(米国特許第5,491,084号)としてを含んでいる。同様に、WO96/23,898は、タンパク質キナーゼ活性化部位を有するGFP構造体を利用することによって細胞内プロセスに影響を及ぼす生物学的に活性な物質を検出する方法に関する。この特許、及び本出願で参照されている他のすべての特許は、その全体が参照して組み込まれる。
【0009】
生物学的系におけるGFPタンパク質に関連する数多くの文献がある。例えば、WO96/09,598はタンパク質のようなGFPの発現を利用して重要な細胞を単離するシステムを記載している。WO96/27,675は、植物におけるGFPの発現を記載している。WO95/21,191は、突然変異を検出するためのトランスフォーム(形質転換)された有機体中で発現した修飾GFPタンパク質を記載している。米国特許第5,401,629号及び第5,436,128号は、細胞表面レセプターを発現し、さらに細胞表面レセプターの活性に反応性である転写調節エレメントを含むレポーター遺伝子構造体を含有している組換え細胞を用いて、細胞外シグナルの細胞内トランスダクションを検出及び評価するためのアッセイ及び組成物を記載している。
【0010】
何万何千という化合物についてスクリーニングを実行するためには、多数の化合物及びアッセイ成分試薬の並行したハンドリング及びプロセッシングが必要である。標準的な高スループットスクリーニング(“HTS”)は96ウエル若しくは384ウエルを備えた標準マイクロタイタープレートのウエルの配列内に装填された指示化合物と一緒に化合物と生物学的試薬との混合物を使用する。蛍光放射、光学密度、又は放射能のいずれかによって各ウエルから測定されるシグナルは、ウエル内の全材料からのシグナルを統合しており、ウエル内の全分子の総集団平均値を生じさせる。
【0011】
Science Applications International Corporation(SAIC)(130 Fifth Avenue, シアトル, ワシントン州 98109)は、イメージングプレートリーダー(読み取り装置)について記載している。このシステムは、CCDカメラを使用して96ウエル・プレートの全領域を画像描出する。この画像を解析して、ウエル内の全材料について1ウエル当たりの総蛍光が計算される。
【0012】
Molecular Devices, Inc.(サニーベール、カリフォルニア州)は、細胞単層を画像描出するときのバックグラウンドを減少させるために標準96ウエル・プレートにおいてウエル底部の約200ミクロン以内の蛍光を選択的に励起するためにローアングルレーザー走査照射法及びマスクを使用するシステム(FLIPR)を記載している。このシステムはCCDカメラを使用してプレート底部の全領域を画像描出する。このシステムはウエル底部の細胞単層を起源とするシグナルを測定するが、測定されたシグナルはウエルの面積に渡って平均化されるので、このためまだ細胞集団の平均反応の測定値と見なされる。この画像を解析することにより、細胞に基づくアッセイのために1ウエル当たりの総蛍光が計算される。例えばFLIPRシステムのような細胞に基づくシステムには、応答を開始させるためにさらに液体送達装置が組み込まれており、応答はその後マクロイメージングシステムを使用して全ウエル集団の平均反応として観察される。
【0013】
高スループットスクリーニングとは対照的に、細胞成分及びプロセスの時間的−空間的動態に関するより詳細な情報に対する必要に対処するために様々な高含量スクリーニング(“HCS”)が開発されてきた。高含量スクリーニングは、細胞内に取り込まれた蛍光に基づく特異的試薬から引き出される多色蛍光情報の抽出を自動化する(Giuliano and Taylor,(1995), Curr. Op. Cell Biol. 7:4; Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 24:405)。細胞は、空間的並びに時間的動態を測定できる光学系を用いて解析される(Farkas et al.,(1993), Ann. Rev. Physiol. 55:785; Giuliano et al.,(1990), In Optical Microscopy for Biogy. B. Herman and K. Jacobson (eds.), pp.543−557. Wiley−Liss, New York; Hahn et al.,(1992), Nature 359:736; Waggoner et al.,(1996), Hum. Pathol. 27:494)。そのコンセプトは、各細胞を標識された成分の活性に関する空間的及び時間的情報を持っている“ウエル”として取り扱うことである。
【0014】
細胞に付加された蛍光に基づく試薬を通して現在入手できる生化学的及び分子的情報のタイプには、イオン濃度、膜電位、特異的トランスロケーション、酵素活性、遺伝子発現、並びに代謝物、タンパク質、脂質、炭水化物及び核酸配列の存在、量及びパターンが含まれる(DeBiasio et al.,(1996), Mol. Biol. Cell. 7:1259; Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 24:405; Heim and Tsien(1996), Curr. Biol. 6:178)。
【0015】
高含量スクリーニングは、蛍光標識抗体、生物学的リガンド、及び/又は核酸ハイブリダイゼーションプローブを用いて固定化細胞上で、又は多色蛍光指示薬及び“バイオセンサー”を用いて生きている細胞上でのどちらでも実施できる。
固定化細胞若しくは生きている細胞スクリーニングの選択は、必要とされる細胞に基づく特異的アッセイに依存する。
【0016】
固定化細胞アッセイは、マイクロタイタープレートフォーマットにおける最初は生きている細胞の配列を試験される様々な化合物および用量によって処理でき、その後で細胞を固定し、特異的試薬を用いて標識し、さらに測定できるので、極めて単純である。固定後における細胞の環境調節は必要とされない。空間的情報が収集されるが、1時点だけの情報しか収集できない。細胞に適用できる何千種もの抗体、リガンド及び核酸ハイブリダイゼーションプローブの利用可能性が、これを細胞に基づく多数のタイプのスクリーニングにとって魅力的なアプローチにしている。固定及び標識のステップは自動化できるので、アッセイの効率的処理が可能になる。
【0017】
生きている細胞のアッセイは、必要な試薬を含有している生きている細胞の配列を経時的並びに空間的にスクリーニングできるので、より洗練されたかつ強力なアッセイである。経時的な多重蛍光測定のためには細胞の生理学的健康状態を維持しなければならないので、測定中には細胞の環境調節(温度、湿度及び二酸化炭素)が必要とされる。細胞内の生化学的及び分子活性における変化を報告できる生理学的蛍光指示薬及び“バイオセンサー”のリストは増加しつつある(Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 24:205; Hahn et al.,(1993), In Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity. W.T. Mason, (ed.), pp.349−359, Academic Press, サンディエゴ)。
【0018】
蛍光に基づく試薬の利用可能性及び使用は、固定化細胞及び生きている細胞両方の高含量スクリーニングの開発を前進させるために役立ってきた。自動的に多色高含量情報を引き出すための器械類における最近の進歩は、HCSを自動ツールに開発することを可能にした。Taylor et al.,(1992), American Scientist 80, p.322−335)による論文は、これらの方法の多数及びそれらの適用について記載している。例えば、Proffitt et al.(Cytometry 24:204−213(1996))は、様々な組織培養プレートフォーマット、特に96ウエル・マイクロタイタープレートにおいてin situで相対細胞数を定量するための半自動化蛍光デジタルイメージングシステムを記載している。このシステムは、電動ステージ、ビデオカメラ、イメージインテンシファイアーを備えたエピフルオレセンス倒立顕微鏡と、PC−ビジョン・デジタイザーを備えたマイクロコンピューターとから構成される。Turbo Pascalソフトウエアが、1ウエル当たり複数の画像を取りながら、ステージを制御し、プレートをスキャンする。このソフトウエアは1ウエル当たりの総蛍光を計算し、日常キャリブレーションを行い、さらに様々な組織培養プレートフォーマットを容易に構成する。
デジタル画像及び生きている細胞によって取り込まれたときにのみ蛍光を発する試薬の閾値を使用して、過剰の蛍光試薬を取り除かずにバックグラウンド蛍光を減少させることができる。
【0019】
走査型同焦点顕微鏡イメージング(Go et al.,(1997), Analytical Biochemistry 247:210−215; Goldman et al.,(1995), Experimental Cell Research 221:311−319)及び多光子顕微鏡イメージング(Denk et al.,(1990), Science 248:73; Gratton et al.,(1994), Proc. of the microscopical Society of America, pp.154−155)も又、顕微鏡標本の高解像度画像を入手するための著明に確立された方法である。これらの光学系の主要な長所は焦点深さが非常に浅いことにあり、これによってバックグラウンドに対して解明される軸方向の広がりが限定されるという特徴が生じる。例えば、細胞表面上の特徴から付着細胞の内部細胞質特徴を解明することが可能である。走査型多光子イメージングは必要な高い光子流速を達成するために非常に持続時間の短いパルスレーザーシステムを必要とするので、蛍光の寿命も又これらのシステムで測定することができ(Lakowicz et al.,(1992), Anal. Biochem. 202:316−330; Gerrittsen et al.,(1997), J. of fluorescence 7:11−15)、様々な検出モードにとって追加の能力を提供する。全くのルーチン方法で適用する多光子同焦点顕微鏡検査を可能にするためには、現在では例えばレーザーダイオード・ポンピングレーザーのような小型で確実な、そして比較的安価なレーザーシステムを利用できる。
【0020】
集団における細胞の生物学的異質性(Bright et al.,(1989), J. Cell. Physiol. 141:410; Giuliano,(1966), Cell MOtil. Cytoskel. 35:237)と細胞内に存在する化学的及び分子的情報の空間的及び時間的頻度が高いことが組み合わさると、現在あるすべてのマイクロタイタープレートリーダーを使用しても細胞の集団から高含量情報を引き出すことは不可能である。現在ある高含量スクリーニングプラットフォームは、個別的に分析される細胞を使用した多色蛍光に基づくスクリーニングに適するようにデザインされていない。同様に現在は、特にマイクロタイタープレート内で増殖した細胞から、HCS解析によって識別される細胞応答を誘導する能力について化合物を系統的にスクリーニングする目的で、細胞の配列に自動分注装置を組み合わせる方法は利用できない。さらに、現在の技術には1つのアッセイにおいて“ヒット”を識別するために高スループットのウエル毎の測定を組合せ、その後に同一プレート上でヒットであると識別されたウエルについてだけ細胞毎の第2の高含量測定を行う方法は存在しない。
【0021】
そこで本発明は、多数の細胞スクリーニングフォーマットと、蛍光に基づく分子試薬及びコンピューターに基づく機能抽出、データ解析、及び自動化とを組み合わせることによって、ターゲットの妥当性確認及び候補の至適化を大きく改善し、データ収集の量及び速度の増加、サイクル時間の短縮、そして最終的には前途有望な新薬候補のより迅速な評価を生じさせる、高スループットスクリーニング(HTS)と高含量スクリーニング(HCS)とを結合したシステム、方法、及びスクリーニングを提供する。本発明はさらに、手方法を超小型化し、それによってスループット増加を許容し、他方では各アッセイで必要とされる試薬および試験化合物の量を減少させることも提供する。
【0022】
発明の概要
ある局面では、本発明は細胞を分析するための下記のステップを含む方法に関する:
・ ある場所の配列に蛍光レポーター分子を含有する細胞を提供するステップ、
・ その場所の配列内の細胞を1種以上の試薬によって処理するステップ、
・ 各場所に含まれる多数の細胞を蛍光光学系によって画像描出するステップ、
・ 光学情報をデジタルデータに変換するステップ、 ・ 細胞内の蛍光標識レポーター分子の分布、環境又は活性及び細胞の分布を測定するためにデジタルデータを利用するステップ、及び
・ 生物学的機能について試験されている化合物の正、負又はゼロ作用に関してその情報を解釈するステップ。
【0023】
この実施態様では、本法は特定生物学的機能に特異的に影響を及ぼす化合物について非常に多数の化合物をスクリーニングする目的で細胞内の蛍光標識レポーター分子の分布、環境又は活性を迅速に測定する。場所の配列は、マイクロタイタープレートであっても、又は1つの場所の配列内に細胞を有しているマイクロプレートであるマイクロチップであってもよい。ある好ましい実施態様では、本方法はデータを収集するため、処理するため、表示するため、さらに収集したデータを記憶するためのコンピューター手段を含んでいる。ある好ましい実施態様では、本方法はさらに細胞の配列への自動化液体送達を含んでいる。もう1つの好ましい実施態様では、同一プレート上で高スループット測定から入手した情報を使用して、プレート上のサブセットの細胞場所についてのみ選択的に高含量スクリーニングが実施される。
【0024】
本発明のもう1つの局面では、下記を含む細胞スクリーニングシステムが提供される:
・ 対物レンズを有する高倍率蛍光光学系;
・ 細胞の配列を含有するプレートを保持するために適しており、細胞の配列を適切にアライメント及びフォーカスする目的でプレートを移動させるための手段を有するXYステージ;
・ デジタルカメラ;
・ 励起光を細胞の配列に方向付けるための光学手段と細胞から放射された蛍光をデジタルカメラへ方向付ける手段とを有する光源;及び
・ デジタルカメラからのデジタルデータを受信して処理するためのコンピューター手段であって、カメラから画像を受信するためのデジタルフレームグラバー、ユーザーインタラクション(交互作用)及びアッセイ結果表示のためのディスプレイ、データの記憶及び保存を行うためのデジタル記憶媒体、及び結果の制御、収集、処理及び表示のための手段を含むコンピューター手段。
【0025】
ある好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらにデータを表示するためにコンピューターと操作可能に接続されているコンピュータースクリーンを含んでいる。もう1つの好ましい実施態様では、デジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するためのコンピューター手段はバイオインフォーマティクス・データベースにデータを記憶する。さらに別の好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらに多数若しくはすべてのウエルからのシグナルを並行して測定するリーダー(読み取り装置)を含んでいる。もう1つの好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらに高スループットスクリーニングと高含量スクリーニングとの間でモードを変更できるように、システムの倍率を変更するための機械的−光学的手段を含んでいる。もう1つの好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらに細胞を生きたまま保持するために必要とされるレベルでプレート周囲の温度、CO2濃度及び湿度を維持するためのチャンバー及び制御システムを含んでいる。さらに別の好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムは同焦点走査型照明及び検出システムを利用する。
【0026】
本発明のもう1つの局面では、細胞スクリーニングシステムが特異的な細胞の成分及びプロセスの分布及び活性を定義するための手順を実行すること引き起こすための1セットの指示を含有するプログラムを含む機械可読記憶媒体が提供される。ある好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムは細胞を保持するために適合したステージ及びそのステージを移動させるための手段、デジタルカメラ、デジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するための光源、及びデジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するためのコンピューター手段を備えた高倍率蛍光光学系を含んでいる。機械可読記憶媒体の好ましい実施態様は、細胞スクリーニングシステムが図9、11、12、13、14又は15に記載の手順を実行することを惹起するための1セットの指示を含有するプログラムを含んでいる。もう1つの好ましい実施態様は、細胞スクリーニングシステムが特異的な細胞の成分及びプロセスの分布及び活性を検出するための手順を実行することを惹起するための1セットの指示を含有するプログラムを含んでいる。最も好ましい実施態様では、細胞プロセスにはタンパク質の核トランスロケーション、細胞肥大、アポトーシス(断片化)、及びタンパク質のプロテアーゼ誘発性トランスロケーションが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
実施の形態
ここに引用された特許、特許出願及びその他の参考文献はその全体が参照してここに組み込まれる。
【0028】
ここで使用される下記の用語は特定の意味を有する:
細胞ドメインのマーカー。特異的オルガネラ若しくは分子を含有する特異的細胞成分に対して高親和性を有する発光プローブ。これらのプローブは、小さい発光分子であっても、又は“標識試薬”、“環境指示薬”、又は“バイオセンサー”として使用される蛍光タグ付き高分子のどちらであってもよい。
【0029】
標識試薬。標識試薬には、蛍光タンパク質アナログ及びバイオセンサーを含む発光標識高分子、緑色蛍光タンパク質及びそのミュータントと一緒に形成されたものを含む発光高分子キメラ、生理学的応答に含まれる細胞抗原と反応する発光標識第一若しくは第二抗体、発光性の染料、色素及びその他の小分子が含まれるが、それらに限定されない。
【0030】
細胞トランスロケーションのマーカー。何らかの細胞プロセス又は生理学的応答中に1つの細胞ドメインから別の細胞ドメインへ移動する発光タグ付き高分子又はオルガネラ。トランスロケーションマーカーは細胞ドメインのマーカーに比較したロケーションを単純に報告できるか、又は同様に何らかの生化学的若しくは分子活性を報告する“バイオセンサー”になることができるかのどちらかである。
【0031】
バイオセンサー。生物学的機能的ドメインと、内部又は表面上のどちらかで発生する環境変化を報告する1種若しくは複数の発光プローブとから構成される高分子。これらの変化を感知して報告するようにデザインされたあるクラスの発光標識高分子は、“蛍光タンパク質バイオセンサー”と呼ばれてきた。バイオセンサーのタンパク質成分は高度に進化した分子認識部分を生じさせる。活性部位の近位でタンパク質成分に付着した蛍光分子は環境変化を、例えば本発明の細胞スキャニングシステムのような適切な時間的及び空間的解明を行うシステムを用いて検出される蛍光シグナルに変換する。生きている細胞内の天然タンパク質活性の変調は可逆性であり、さらに蛍光タンパク質バイオセンサーはタンパク質活性における可逆性変化を感知するようにデザインすることができるので、これらのバイオセンサーは本質的に再使用できる。
【0032】
疾患関連配列(“DAS”)。この用語は、例えばプライマリーDNA配列順序データのような標準方法、例えばサブトラクションハイブリダイゼーション及びRADEのようなゲノム方法、及び新薬候補化合物についてのものであるような逆転遺伝学と組み合わせたプロテオミック法によって識別される核酸塩基配列に関する。この用語は、配列が疾患状態としか関連してないことを意味するものではない。
【0033】
高含量スクリーニング(HCS)は、例えばシグナルトランスダクション経路のような複合分子イベント、並びにアポトーシス、細胞分割、細胞接着、移動、エキソサイトーシス(細胞外排出作用)、及び細胞−細胞連絡を含むがこれらに限定されない細胞機能に薬物が及ぼす作用を測定するために使用できる。多色蛍光は、複数のターゲット及び細胞プロセスを単一スクリーニングにおいてアッセイすることを許容する。細胞応答の交差相関は、ターゲットの妥当性確認に必要とされる豊富な情報を産生し、至適化を導くであろう。
【0034】
本発明のある局面では、顕微鏡対物レンズ、細胞を保持するための場所の配列を備えたプレートを保持するために適合したXYステージ、顕微鏡対物レンズとの位置をアライメントするためにプレートを移動させるための手段及びフォーカシング(焦点合わせ)を実行するための方向にプレートを移動させるための手段を有する高倍率蛍光光学系;デジタルカメラ;場所の配列内の細胞に励起光を方向付けるための光学手段及び細胞から放射される蛍光をデジタルカメラへ方向付けるための手段を有する光源;及びデジタルカメラからのデジタルデータを受信して処理するためのコンピューター手段であって、カメラから画像を受信するためのデジタルフレームグラバー、ユーザーインタラクション(交互作用)及びアッセイ結果表示のためのディスプレイ、データの記憶及び保存を行うためのデジタル記憶媒体、及び結果の制御、収集、処理及び表示のための手段を含むコンピューター手段を含む細胞スクリーニングシステムが提供される。
【0035】
図1は、細胞スキャニングシステムの好ましい実施態様の略図である。例えばZeiss Axiovert倒立蛍光顕微鏡のような、カメラに対して1−100倍の倍率を備えた標準対物レンズ及び電源装置2を備えた白色光源(例、100Wの水銀アークランプ又は75Wキセノンランプ)を使用する倒立蛍光顕微鏡1が使用されている。顕微鏡対物レンズの上方にはXY方向にプレート4を移動させるためのXYステージ3がある。Z軸焦点駆動装置5は、対物レンズをフォーカシングのためにZ方向に移動させる。ジョイスティック6はXYZ方向へのステージの手動による移動を生じさせる。高解像度デジタルカメラ7はプレート上の各ウエル若しくは場所から画像を収集する。カメラ電源装置8、自動制御装置9及び中央処理装置10がある。PC11はディスプレイ12を提供し、関連ソフトウエアを有している。プリンター13はハードコピーの記録を印刷する。
【0036】
図2は、本発明の顕微鏡組立体1のある実施態様の略図であり、XYステージ3、Z軸焦点駆動装置5、ジョイスティック6、光源2、及び自動制御装置9をより詳細に示している。各々コンピューター及び顕微鏡へのケーブル15及び16も又用意されている。さらに、図2はXYステージ上でXY方向へ移動させられる96ウエル・マイクロタイタープレート17を示している。光源2からの光線はPC制御シャッター18を通って励起フィルター20を備えた電動フィルターホイール19まで通過する。光線はダイクロイックミラー26及び発光フィルター27を有するフィルターキューブ25内に通過する。励起光はダイクロイックミラーからマイクロタイタープレート17内のウエルに反射し、蛍光28がダイクロイックミラー26及び発光フィルター27を通ってデジタルカメラ7へ通過する。
【0037】
図3は、好ましいカメラ組立体の略図である。露出調節のための自動シャッター及び電源装置31を含んでいるデジタルカメラ7は、顕微鏡組立体からの蛍光28を受信する。デジタルケーブル30がデジタルシグナルをコンピューターへ転送する。
【0038】
上記で説明した標準光学系構成は、検体の高解像度画像をキャプチャーする目的でカメラセンサー上において検体の拡大画像を直接的に作り出すために顕微鏡光学系を使用する。この光学系は一般には“広視野(wide field)”顕微鏡と呼ばれている。顕微鏡に関する当業者であれば、どちらもCCD検出器上で、又は光増倍管のアナログ出力の同期デジタル化によって画像を形成することのできる、検体上方でスキャンされた照明の焦点合わせされた点又は線の標準走査型同焦点検出(Go et al., 1997,上記)及び多光子走査型同焦点顕微鏡(Denk et al., 1990,上記)を含むがこれらに限定されない様々な他の光学系によって検体の高解像度画像を作り出せることを認識するであろう。
【0039】
スクリーニング用途では、細胞の特定機能を利用するために特定の細胞系、又は初代細胞培養を使用することがしばしば必要である。細胞培養の当業者であれば一部の細胞系は接触阻止されることを認識するであろうが、接触阻止とは一部の細胞系が他の細胞によって取り囲まれたときに増殖を中止するが、他の細胞系はそのような条件下で増殖し続け、それらの細胞が多層を形成しながら文字通り蓄積することを意味する。そうした細胞系の例はHEK293(ATCC CRL−1573)系である。層を形成する傾向のある細胞系と一緒に使用するためには、多層標本中の単一細胞層の画像を収集できる光学系が必要とされる。広視野顕微鏡の視野の大きな深さは、層形成細胞における細胞下空間的分布の解析を極めて困難にする多層の細胞を通しての投影画像を作り出す。或いは又、同焦点顕微鏡上で達成できる極めて浅い視野の深さ(約1ミクロン)は高解像度での単一細胞層の区別を許容し、細胞下空間的分布の測定を単純化する。同様に、蛍光寿命イメージングのような検出モードが必要な場合は同焦点イメージングが好ましい。
【0040】
顕微鏡に標準同焦点イメージング装置を取り付けた場合の産物は、上記の他の細胞スクリーニングシステムの実施態様によって作り出される画像と同一フォーマットに変換できる、そしてそのためにそれらの画像と正確に同じ方法で処理できるデジタル画像である。この実施態様における全部の制御、収集及び解析は本質的に同一である。同焦点顕微鏡システムの光学系構成は、照明装置及び検出装置について以外は上記と本質的に同一である。同焦点顕微鏡のために必要とされる照明及び検出システムは、本発明のもの(Zeiss, ドイツ)と同様に標準顕微鏡光学系に取り付けられる付属機器としてデザインされてきた。このためこれらの代替光学系は上記のようにシステム内に容易に統合することができる。
【0041】
図4は、参照してその全体がここに組み込まれる同時継続米国特許出願S/N第08/865,341号に記載されている細胞配列がマイクロプレート41上のマイクロウエル40内にある、本発明の代替実施態様を図解している。典型的には、標準96ウエル・マイクロタイタープレートの寸法が86mm×129mmであるのに比較して、マイクロプレートの寸法は20mm×30mmである。
マイクロプレート上の細胞の高密度配列は、マイクロプレートが高スループットのために1ピクセル当たり数ミクロンの低解像度で画像描出されること、そしてマイクロプレート上の特定場所が1ピクセル当たり0.5ミクロン未満のより高い解像度で画像描出されることを許容する。これら2種の解像度モードはシステムの全体的スループットを向上させるために役立つ。
【0042】
マイクロプレートチャンバー42は、化合物を細胞に付着させるための微量液体分注システムとして役立つ。マイクロプレートチャンバー42内のマイクロプレート41はDYマイクロプレートリーダー43内に配置されている。デジタルデータは上記の通りに処理される。このマイクロプレートシステムはサイズが小さいので、スループットを上昇させ、試薬量を最小限に抑え、さらに迅速かつ正確な細胞に基づく解析を行うために細胞の分布及び配置の制御を可能にする。処理されたデータはPCスクリーン11上に表示でき、さらにバイオインフォーマティクス・データベース44の一部にすることができる。このデータベースは本発明の方法を通して入手されたデータの記憶及び保存を許容するだけではなく、さらに細胞に関連する外部データの収集及び記憶も許容する。図5は、ソフトウエアの作動を図解している。
【0043】
ある代替実施態様では、高スループットシステム(HTS)が同一プラットフォーム上又は電子的に接続された(例、ローカルエリアネットワークによって)2つの個別プラットフォーム上のどちらかでHCSと直接に結合されている。デュアルモード光学系と呼ばれる本発明のこの実施態様は、HCSをHTSと接続することによってHCSのスループットを上昇させ、さらにそれによって結合されたHTSにおいて応答を示す小さなサブセットのウエルについてのみより緩徐な高解像度データ収集及び解析を要求するという長所を有している。
【0044】
高スループットの“ホールプレート”リーダーシステムは技術においてよく知られており、非常に多数の化合物をスクリーニングするために使用されるHTSシステムの構成要素として一般的に使用されている(Beggs,(1977), J. of Biomolec. Screening 2:71−78; Macaffrey et al., (1996), J. of Biomolec. Screening 1:187−190)。
【0045】
細胞に基づくデュアルモードスクリーニングのある実施態様では、高スループット収集が1つのプラットフォームで行われ、高含量収集が第2プラットフォームで行われる2プラットフォーム式アーキテクチャーが提供される(図6)。処理は各プラットフォームで個別に行われ、その結果がネットワークインターフェースを通して通過させられるか、又は単一制御装置を使用して両方のプラットフォームからのデータが処理される。
【0046】
図6に図解されているように、例示されている2プラットフォーム式デュアルモード光学系は、2つの発光光学器械である高スループットプラットフォーム60及び高含量プラットフォーム65から構成されており、これらはマイクロタイタープレート又はマイクロプレート上のマイクロウエル配列内で培養された細胞から放出された蛍光シグナルを読み取り、さらに電子連絡64を通して相互に連絡する。高スループットプラットフォーム60は、並行又は迅速逐次方法のどちらかで全プレート内の全ウエルを解析する。スクリーニングの当業者であれば、デュアルモードの細胞に基づくスクリーニングシステムに数多くのそうした市販で入手できる高スループットリーダーシステムを統合できることを認識するであろう(Topcount (Packard Instruments, メリデン、コネチカット州); Spectramax, Lumiskan(Molecular Devices, サニーベール、カリフォルニア州); Fluoroschan(Labsystems,ビバリー、マサチューセッツ州))。上記のような高含量プラットフォーム65は、ウエルを1つずつスキャンし、ウエル内の個々の細胞から集められた高解像度画像データを収集して解析する。
【0047】
システムのコンピューター62上に常駐しているHTSソフトウエアは高スループット器械を制御し、その結果はモニター61上に表示される。そのコンピューターシステム67上に常駐しているHCSソフトウエアは高含量器械ハードウエア65、オプション装置(例、プレートローダー、環境チャンバー、液体分注器)を制御し、プレートからのデジタル画像データを解析し、その結果をモニター66上に表示し、統合データベースで測定されたデータを管理する。これら2つのシステムは、単一コンピューターを共有することができ、その場合にはすべてのデータはそのコンピュータ上で収集、処理及び表示され、データを転送するためのローカルエリアネットワークが必要とされない。マイクロタイタープレートは、手動又は技術においてよく知られているロボットプレート移送装置(Beggs,(1997),上記; Mcaffrey,(1996),上記)のいずれかによって高スループットシステムから高含量システム63へ移される。
【0048】
ある好ましい実施態様では、デュアルモード光学系は単一プラットフォームシステムを利用する(図7)。これは個別的又は集合的に移動させることのできるHCSモジュール203及びHTSモジュール209の2つの個別光学モジュールから構成されているので、マイクロタイタープレート201からのデータを収集するためには一度には1つしか使用されない。マイクロタイタープレート201は、画像描出するためにHTS又はHCSのどちらにでも配置できるように電動XYステージに取り付けられている。下記のようにHTS画像データを収集かつ解析した後は、HTS光学モジュール209は光学路から取り除かれ、HCS光学モジュール203が正しい位置に移動させられる。
【0049】
HTS209のための光学モジュールは、従来型顕微鏡灯システム(図示されていない)から特異的波長帯を用いてプレートの全底部を照明するために使用される投影レンズ214、励起波長フィルター213及びダイクロイックミラー210から構成される。蛍光発光は、センサー215を用いてカメラ216上で画像を形成する212によってダイクロイックミラー210及び発光波長フィルター211を通して収集される。
【0050】
HCSのための光学モジュール203は、顕微鏡対物レンズ202の背面アパーチュア、及びそれによって標準顕微鏡照明システム(示されていない)から対物レンズの視野を照明するために使用される投影レンズ208、励起波長フィルター207及びダイクロイックミラー204から構成される。蛍光放射は顕微鏡対物レンズ202によって収集され、ダイクロイックミラー204及び発光波長フィルター205を通過し、センサー215を用いて同一カメラ216上で画像を形成するチューブレンズ206によってフォーカシングされる。
【0051】
本発明の代替実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらに細胞スクリーニングの生きている細胞のための実施態様と一緒に使用するための液体分注装置を含む(下記参照)。図8は、本発明のシステムと一緒に使用するための液体分注装置を図解している。これは単一電動装置によって駆動させられる1列12本のシリンジポンプ701から構成されている。各シリンジ702は各ウエルに分注される用量に従ったサイズであるが、典型的には1〜100μLの間である。各シリンジは柔軟性チューブ703によって標準ピペットチップ705を受け入れる類似の列のコネクターに取り付けられている。ピペットチップの列は、各ウエルに液体を分注するためにマイクロタイタープレート706に相対して下げたり上げたりできるように駆動システムに取り付けられている。プレートは、データ収集目的で光学系707に相対して移動させることができるように、X,Yステージ上に取り付けられている。このセットアップによって、1セットのピペットチップ、又は単一ピペットチップさえプレート上の全ウエルへ試薬を分注することができる。シリンジポンプの列は12ウエルへ、又は一部のチップを取り外すことによって12より少ない数のウエルへ同時に液体を分注するために使用できる。
【0052】
別の局面では、本発明は、細胞が1種以上の蛍光レポーター分子を含む場合に複数の細胞を含有する場所の配列を提供するステップ;細胞内の蛍光レポーター分子から蛍光シグナルを入手するために細胞を含有する各々の場所において複数の細胞をスキャンするステップ;蛍光シグナルをデジタルデータに変換するステップ;及び細胞内の蛍光レポーター分子の分布、環境又は活性を測定するためにデジタルデータを利用するステップを含む、細胞を解析するための方法を提供する。
【0053】
細胞の配列
特定生物学的機能に関して非常に多数の化合物を活性についてスクリーニングするためには、細胞及び試薬を並行してハンドリングするために細胞の配列を調製する必要がある。現在の自動ローディング及びロボットハンドリングシステムとの適合性があるために、9mmピッチで径6mmのウエルを含んでいて寸法が86mm×129mmである標準96ウエル・マイクロタイタープレートが使用される。マイクロプレートは、典型的には20mm×30mmの寸法で、約500ミクロンのピッチで寸法が100〜200ミクロンの細胞の場所を備えている。マイクロプレートを作製する方法は、その全体が参照してここに組み込まれる米国特許出願S/N第08/865,314号に記載されている。マイクロプレートは、細胞が付着しないであろう物質を用いてパターン化された細胞が付着する物質の共平面層から、又は同様にパターン化された物質のエッチングされた3次元表面から構成されてよい。下記で考察を行うために、用語“ウエル”及び“マイクロウエル”とは、それに細胞が付着し、その中で細胞が画像描出されるあらゆる構造の配列内の場所をいう。マイクロプレートは又、ウエル間のスペースに液体分注装置チャンネルを含んでいてよい。マイクロプレートのフォーマットが小さいほど、調製中の試薬、記憶及びハンドリングの量及びスキャニング走査に必要な全体的動きを最小限に抑えることによってシステムの全体的効率が上昇する。さらに、マイクロプレートの全領域をより効率的に画像描出できるので、本文書で後に説明するようにマイクロプレートリーダーのための第二操作モードが可能になる。
【0054】
蛍光レポーター分子
新薬発見範例の主要構成要素は、細胞内イオン、代謝物、高分子及びオルガネラの時間的及び空間的分布、含量及び活性を測定するために使用される、持続的に増え続けている蛍光及び発光試薬ファミリーである。これらのクラスの試薬には、生きている細胞及び固定化細胞中の分子の分布及び量を測定する標識試薬、時間及び空間におけるシグナルトランスダクションイベントを報告するための環境指示薬、及び生きている細胞内のターゲット分子活性を測定する蛍光タンパク質バイオセンサーが含まれる。単一細胞内で数種の試薬を組み合わせる多重パラメーターアプローチは、新薬発見にとって新規の強力なツールである。
【0055】
本発明の方法は、特異的細胞成分に対する蛍光若しくは発光分子の高親和性を基礎としている。特異的成分に対する親和性は、たとえばイオン相互作用、共有結合(タンパク質に基づく発色団、発蛍光団及び発光団とのキメラ融合を含む)、並びに疎水性相互作用、電位、及び一部の場合には細胞成分内での単純な捕捉のような物理的力によって支配される。発光プローブは小分子、標識高分子、又は緑色蛍光タンパク質キメラ類を含むがこれらに限定されない遺伝子工学によって作り出されたタンパク質であってよい。
【0056】
当業者であれば、本試験には、例えばタンパク質、リン脂質及びDNAハイブリダイゼーションプローブのような蛍光標識生体分子を含むがこれらに限定されない幅広く様々な蛍光レポーター分子を使用できることを認識するであろう。同様に、結合又は会合と言う特定の化学的特性を備えて特異的に合成された蛍光試薬が蛍光レポーター分子として使用される(Barak et al.,(1997), J. Biol. Chem. 272:27497−27500; Southwick et al.,(1990), Cytometry 11:418−430; Tsien,(1989), in Methods in Cell Biology, Vol. 29, Taylor and Wang(eds.), pp.127−156)。蛍光標識抗体は、細胞又は組織と同程度に複雑な分子の混合物中の単一分子ターゲットに付着することについて高度の特異性を有しているために、特に有用なレポーター分子である。
【0057】
発光プローブは、生きている細胞内で合成されてもよいし、又は拡散、促進若しくは能動輸送、シグナル−配列順序媒介輸送、及びエンドサイトーシス若しくはピノサイトーシスによる取り込みを含む数種の非機械的モードによって細胞内へ輸送されてもよい。生きている細胞内へ発光プローブをローディングするためには、技術においてよく知られている機械的バルクローディング法も又使用できる(Barber et al.,(1996), Neuroscience Letters 207:17−20; Bright et al.,(1996), Cytometry 24:226−233; McNeil,(1989), in Methods in Cell Biology, Vol. 29, Taylor and Wang(eds.), pp.153−173)。これらの方法には、エレクトロポレーション(電気穿孔法)及び例えばスクレープローディング(acrape−loding)、ビーズローディング、衝撃ローディング(impact−loding)、シリンジローディング、高張性及び低調性ローディングのような他の機械的方法が含まれる。さらに、細胞は、以前に記載したように最重要タンパク質へ結合した例えばGFPのようなレポーター分子を発現するように遺伝子工学により作製することができる(Chalfie and Prasherへ付与された米国特許第5,491,084号; Cubitt et al.,(1995), Trends in Biochemical Schience 20:448−455)。
【0058】
いったん細胞内に取り込まれると、発光プローブはターゲットドメインとの特異的かつ高親和性の相互作用又は例えばシグナル−配列順序媒介輸送のような他の分子ターゲティングモードの結果として、それらのターゲットドメインに蓄積する。蛍光標識レポーター分子は、レポーターの場所、量及び化学的環境を測定するために有用である。例えば、レポーターが親油性膜環境にいるのか、又はより水性の環境にいるのかを測定できる(Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. of Biophysics and Biomolecular Structure 24:405−434; Giuliano and Taylor,(1995), Methods in Neuroscience 27:1−16)。レポーターのpH環境を測定することができる(bright et al.,(1989), J. Cell Biology 104:1019−1033; Giuliano et al.,(1987), Anal. Biochem. 167:362−371; Thomas et al.,(1979), Biochemistry 18:2210−2218)。キレート化基を有しているレポーターが例えばCa++のようなイオンに結合しているか否かについて測定することができる(Bright et al.,(1989), In Methods in Cell Biology, Vol. 30, Taylor and Wang(eds.) pp.157−192; Shimoura et al.,(1988), J. of Biochemistry(Tokyo) 251:405−410; Tsien,(1989), In Methods in Cell Biology, Vol. 30, Taylor and Wang(eds.) pp.127−156)。
【0059】
さらに、ある生体内の一定の細胞タイプは特異的に標識できる成分を含んでいることがあるが、これは他の細胞タイプでは発生しない可能性がある。例えば、上皮細胞はしばしば偏光膜成分を含んでいる。つまり、これらの細胞はそれらの細胞質膜に沿って高分子を非対称的に分布させている。結合組織又は支持組織細胞はしばしば、その中にその細胞タイプに特異的な分子が捕捉されている顆粒を含有している(例、ヘパリン、ヒスタミン、セロトニンその他)。ほとんどの筋肉組織細胞は、その機能が細胞質内のカルシウムイオンの濃度を調節することである特殊オルガネラの筋小胞体を含有している。多くの神経組織細胞は神経ホルモン又は神経伝達物質が捕捉されている分泌顆粒及び分泌小胞を含んでいる。そのため、蛍光分子は特異的細胞内の特異的成分だけではなく、混合細胞タイプの集団内の特異的細胞も標識するようにデザインすることができる。
【0060】
当業者であれば、蛍光を測定するための幅広く様々な方法を認識するであろう。例えば、一部の蛍光レポーター分子は励起又は放射スペクトルにおける変化を示し、一部は1つの蛍光レポーターが蛍光を失って第2の蛍光レポーターが蛍光を獲得した場合に共鳴エネルギー移行を示し、一部は蛍光の消失(クエンチング)若しくは出現を示し、他方一部は回転運動を報告する(Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. of Biophysics and Biomol. Structure 24:405−434; Giuliano et al.,(1995), Methods in Neuroscience 27:1−16)。
【0061】
細胞の配列をスキャン
図9を参照すると、実施されているアッセイに基づいて選択されているオペレーター指向パラメーター、検体内の蛍光シグナルの分布に関して細胞スクリーニングシステムによるデータ収集、及び対話形データレビュー及び解析を含む、細胞を解析するための好ましい実施態様が提供されている。自動スキャンの開始時に、オペレーターは検体を説明する情報100を入力し、使用されている生物学的標識及び探索される情報に適合するフィルター設定及び蛍光チャンネルを特定し、その後検体輝度に適合するようにカメラの設定を調整する。広い範囲の検体を取り扱うための柔軟性を有するために、ソフトウエアは核及び細胞質を識別するために使用される様々なパラメーターの選択、及び種々の蛍光試薬の選択、形態又は輝度に基づく重要な細胞の識別、及び1ウエル当たりの分析される細胞数の計数を許容する。これらのパラメーターは各自動ランのために容易に検索できるようにシステムのデータベースに記憶されている。システムの対話形細胞識別モードは、例えば分析される細胞のサイズ、形状及び強度の範囲のような形態学的パラメーター限界の選択を単純化する。ユーザーはプレートのどのウエルをシステムがスキャンするのか、そして各ウエルにおいて何種類の視野若しくは何種類の細胞を解析すべきなのか特定する。ユーザーによってステップ101で選択されるセットアップモードに依存して、システムはプレート102の“焦点を見つける”ために自動フォーカス手順を使用してスキャンされるプレートの領域を自動的にプレフォーカスするか、又はユーザーが対話式にスキャンされる長方形の領域を定義する3つの“タグ”ポイントを選択することによってスキャニング領域をプレフォーカス103する。最小二乗適合“焦点面モデル”がその後、自動スキャン中にこれらのタグポイントから計算されて各ウエルの焦点が推定される。各ウエルの焦点はスキャン中の焦点面モデルから内挿することによって推定される。
【0062】
自動スキャン中にソフトウエアは、分析された細胞数、分析中の現在ウエル、それらが収集されるに従って各独立波長の画像、及び測定されるに従って各ウエルに対するスクリーニングの結果を含むスキャン状態を動的に表示する。プレート4(図1)はソフトウエアが自動的に電動顕微鏡XYステージ3をウエルからウエルへそして96ウエル・プレートの各ウエル内の視野から視野へ移動させるにつれてサーペンタイン(螺旋状)スタイルでスキャンされる。プログラミングの当業者であれば、例えば24、48、及び384ウエル・プレートのような他のマイクロプレートフォーマットのスキャニングのためにソフトウエアを適合させる方法は認識するであろう。プレート全体のスキャンパターン並びに各ウエル内の視野のスキャンパターンがプログラミングされる。システムはZ軸フォーカス駆動装置5を通して自動フォーカス手順104(図9)を用いて検体フォーカスを調整し、電動フィルターホイール19によってフィルター選択を制御し、さらに4色までの画像を収集して解析する(“チャンネル”又は“波長”)。
【0063】
自動フォーカス手順は、典型的には各ウエルの第1視野及びその後は各ウエル内の1回に4〜5視野に対してユーザーが選択した周波数で呼び出される。自動フォーカス手順は事前に計算された焦点面モデルから内挿することによって開始時のZ軸点を計算する。この設定点の上方又は下方でプログラム可能な距離を開始すると、自動フォーカス手順は多数の様々な位置を通して機械的Z軸を移動させ、各位置で画像を収集し、各画像のコントラストを推定する計算された焦点スコアの最大値を見つける。最大焦点値を持つ画像のZ位置が特定視野にとっての再交渉点を決定する。当業者であれば、これがHarms et al. in Cytometry 5(1984), 236−243, Groen et al. in Cytometry 6(1985), 81−91、及びFirestone et al., in CYtometry 12(1991), 195−206に記載されている自動フォーカスアルゴリズムの変型であることを認識するであろう。
【0064】
画像収集のために、カメラの露出時間は各チャンネルから確実に高品質画像が得られるように各色素に対して個別に調整される。ユーザーの選択で、何らかのその他の測定を行う前に波長間の線形(X及びY)変化を計算に入れることによって波長間の登録変化に対して補正するためにソフトウエア手順を呼び出すことができる。電子シャッター18は、検体の光−脱色が最小限に維持されるように制御される。バックグラウンドのシェーディング及び不均一な照明も又技術において知られている方法を用いてソフトウエアによって補正できる(Bright et al.,(1987), J. Cell Biol. 104:1019−1033)。
【0065】
1チャンネルでは、画像は適応閾値算定手順を用いて分割(“識別”)される一次マーカー105(図9)(典型的にはDAPI又はPI蛍光色素を用いて交差染色された細胞核)について収集される。バックグラウンドから細胞をするためには、適応閾値算定手順106を使用して分離画像の閾値が動的に選択される。蛍光色素を用いた細胞の染色は、分からない程度にマイクロタイタープレート検体内並びにマイクロタイタープレートの各ウエル内の1視野の細胞の画像内で細胞毎に変動することがある。この変動は検体調製の結果及び/又は細胞の動的性質の結果として発生することがある。バックグラウンドから細胞を分離して1視野毎の変動を計算に入れるために、完全な画像について広域閾値が計算される。これらの広域適応法は技術において記載されているものの変形である(Kittler et al.,(1985), in Computer Vision, Graphics, and Image Processing 30,125−147; Ridler et al.,(1978), in IEEE Trans. Systems, Man, and Cybernetics, 630−632)。
【0066】
代替適応閾値算定法は、広域画像閾値算定法とは対照的に局所領域閾値算定法を利用する。局所領域の画像解析は、細胞核(並びに他の標識化合物)の染色が画像毎に変動することがあるので、より良好な総合分割をもたらす。この広域/局所手順を用いて、画像内の重要領域を見つけるために圧縮解像画像(係数2〜4までサイズが圧縮されている)が最初に広域的に分割される(適応閾値算定法を用いて)。これらの領域はその後全解像度で同一領域をより十分に解析するためのガイドとして役立つ。その後、重要な各領域についてより局所的閾値が計算される(再び適応閾値算定法を用いて)。
【0067】
分割手順の出力は、対象物が白色でバックグラウンドが黒色であるバイナリー画像である。技術においてはマスクとも呼ばれるこのバイナリー画像は、その視野が対象物107を含んでいるかどうかを判定するために使用される。マスクは小班点標識アルゴリズムを用いて標識され、それによって各対象物(又は小班点)はそれに指定された独自の番号を有する。例えば面積及び形状のような小班点の形態学的特徴を使用して、アーチファクトと考えられるものからおそらく細胞である小班点が弁別される。ユーザーは、既知の細胞形態学的特徴を入力するか、又は対話形トレーニングユーティリティを使用するかのどちらかによって形態学的選択基準を前設定する。重要な対象物がその視野において発見されると、その他全部の能動チャンネルに対して画像が収集される108か、さもなければステージが現在ウエルにおける次の視野に前進させられる109。重要な各対象物はさらに解析を受けるために画像内に配置される110。ソフトウエアが、その形態学的特徴(サイズ及び形状)を測定することによってその対象物が妥当な細胞核についての基準を満たしているかどうかを決定する111。妥当な各細胞に対して、XYZステージの場所が記録され、細胞の小さな画像が記憶され、特徴が測定される112。
【0068】
本発明の細胞スキャニング法は、同時に多数の波長で特徴を測定するために数多くの分析方法を適用することによって、細胞検体に関する多数の様々なアッセイを実施するために使用できる。そうしたアッセイの1つの例は、下記の測定値を提供する:
1. 色1〜4に対する細胞核内の全蛍光強度
2. 色1(一次マーカー)に対する細胞核の面積
3. 色1に対する細胞核の形状は3種の形状特徴によって記述される: a)周界方形面積
b)ボックス面積比
c)高さ幅比
4. 色1〜4に対する細胞核内の平均蛍光強度(即ち、#1÷#2)
5. 色2〜4に対する細胞の細胞質(細胞質マスク)の蛍光を表す核の外輪の総蛍光強度(図10参照)
6. 細胞質マスクの面積
7. 色2〜4に対する細胞質マスクの平均蛍光強度(即ち、#6÷#5)
8. 細胞質マスクの平均蛍光強度対色2〜4に対する細胞核内の平均蛍光強度の比(即ち、#7÷#4)
9. 細胞質マスクの平均蛍光強度と対色2〜4に対する細胞核内の平均蛍光強度の差(即ち、#7−#4)
10. 対色2〜4に対する細胞核内の蛍光ドメイン(同様にコールスポット、ドット、又はグレイン)の数
特徴1〜4は、本発明の様々な細胞スクリーニングアッセイの一般的特徴である。これらのステップは一般に様々な増解析アプリケーションにおいて使用され、技術においてよく知られている(Russ,(1992), The Image Processing Handbook, CRC Press Inc.; Gonzales et al.,(1987), Digital Image Processing., Addison−Wesley Publishing Co. pp.391−448)。特徴5〜9は、細胞の局所的細胞質領域内の細胞の蛍光分子及び細胞質から核への蛍光分子のトランスロケーション(即ち移動)の測定値を生じさせるために特別に開発されてきた。これらの特徴(ステップ5〜9)は核トランスロケーションの阻害についてマイクロプレート内の細胞を解析するために使用される。例えば、転写因子の核トランスロケーションの阻害は無傷細胞をスクリーニングするための新規のアプローチを提供する(その他のタイプのスクリーニングの詳細な実施例は下記で提供する)。特異的アルゴリズムは核細胞の局所的細胞質領域(特徴7)に対して各領域におけるプローブの量を測定する(特徴4)。これら2つの細胞下区画間の差分の定量は細胞質−核トランスロケーションの尺度を提供する(特徴9)。
【0069】
特徴10は、色2から4で各領域内のDNA又はRNAプローブを計数するために使用されるスクリーニングを記述している。例えば、染色体特異的DNA配列を識別するためのプローブは、市販で入手できる(Life Technologies, Gaithersburg, MD; Genosys, Woodland, TX; Biotechnologies, Inc., Richmond, CA; Bio 101, Inc., Vista, CA)。細胞は性質が三次元であり、高倍率の顕微鏡下で試験したときには1つのプローブはイン・フォーカスとなるが、別のプローブは完全にアウト・オブ・フォーカスとなることがある。本発明の細胞スクリーニング法は多数の焦点面から画像を収集することによって核内で三次元プローブを検出することを提供する。
ソフトウエアはZ軸駆動装置5(図1)を小さな工程で移動させるが、このとき工程距離は広範囲の様々な核の径を説明するためにユーザーによって選択される。各焦点工程で、画像が収集される。各画像における各ピクセルから最大グレーレベル強度が見つけられ、結果として生じる最大投影画像に記憶される。上記のアルゴリズムは、直接的に相互の上方又は下方に積み重ねられていないプローブを計数するさいに良好に機能する。Z方向で相互の上に積み重ねられたプローブについて説明するために、ユーザーは収集した焦点面の各々においてプローブを解析するためのオプションを選択することができる。このモードでは、スキャニングシステムは上記のような最大平面投影アルゴリズムを実行し、この画像内の重要なプローブ領域を検出し、その後さらにすべての焦点面画像においてこれらの領域を解析する。
【0070】
細胞の特徴を測定した112(図9)後、システムは現在視野113に未処理対象物があるかどうかをチェックする。未処理対象物が存在する場合は、次の対象物を配置し110、それが妥当な細胞核についての基準を満たすかどうかを判定し111、そしてその特徴を測定する。現在視野の全対象物が処理されると、システムは現在プレートの解析が完了したかどうかを判定する114;完了していない場合は、現在ウエル内でさらに細胞を発見する必要の有無を判定する115。必要がある場合は、システムはXYZステージを現在ウエル内の次の視野に前進させるか109、又はプレートの次のウエルへステージを前進させる116。
【0071】
プレートのスキャンが完了した後は、システムの画像精査、データ精査及びサマリー精査ファシリティーを使用して画像及びデータを精査できる。スキャンからのすべての画像、データ及び設定は後からの精査のため及びネットワーク情報管理システムとインターフェースするためにシステムのデータベース内に保存される。データは又結果から表作成して報告書を作成するために他の第三者統計パッケージへ搬出することもできる。ユーザーは対話形画像精査手順を用いてシステムによって解析された1つ1つの細胞単独の画像を精査できる117。ユーザーは、対話形グラフ、測定された特徴のデータスプレッドシート、及び重要な細胞のすべての蛍光チャンネルの画像の組合せを対話形1細胞毎のデータ精査手順を用いて1細胞毎ベースでデータを精査できる118。例えばヒストグラム及び散布プロットのような対話形グラフによってデータを解析できるグラフィカルプロッティング能力が備えられている。ユーザーは対話形の1ウエル毎の精査手順を用いて1プレートの各ウエル内のすべての細胞に対して蓄積及び要約されるサマリーデータを精査できる119。グラフ及び画像のハードコピーは広範囲の標準プリンター上で印刷することができる。
【0072】
完全なスキャンの最終期として、測定された特徴の1種以上の統計学で報告書を作成できる。ユーザーは対話形報告書作成手順を使用してスキャンされたプレートの領域に対して1ウエル毎のベースで要約されたデータのグラフ表示報告書を作成できる120。この報告書には、表及びグラフフォーマットで1ウエル毎の統計学のサマリー及び検体に関する識別情報が含まれる。報告書ウインドウによって、オペレーターは後の検索のためにスキャンについてのコメントを入力することができる。複数の報告書を多数の統計学で作成することができ、ボタン1つに触れることで印刷することができる。報告書は、印刷する前に配置及びデータについてプレビューできる。
【0073】
本方法の上記に叙述した実施態様は、高含量スクリーニング(HCS)モードと呼ばれる単一高解像度モードで作動する。HCSモードはウエル内並びにウエル内の個々の細胞内の物質の分布を定義するためにウエル内の十分な空間的解像度(1μmのオーダーで)を提供する。そのモードでアクセスできる高度の情報量は必要とされるシグナル処理の速度及び複雑さを犠牲にして得られる。
【0074】
代替実施態様では、高スループットシステム(HTS)が同一プラットフォーム上又は電子的に接続された(例、ローカルエリアネットワークによって)2つの個別プラットフォーム上でHCSと直接的に結合されている。デュアルモード光学系と呼ばれる本発明のこの実施態様は、HTSと結合し、それによって結合されたHTSにおいて応答を示す小サブセットのウエルについてのみより緩徐な高解像度データ収集及び解析を必要とすることにより、HCSのスループットを増加させるという長所を持っている。
【0075】
高スループットの“ホールプレート”リーダーシステムは技術においてよく知られており、非常に多数の化合物をスクリーニングするために使用されるHTSシステムの構成要素として一般的に使用されている(Beggs,(1977), J. of Biomolec. Screening 2:71−78; Macaffrey et al., (1996),上記)。本発明のHTSは、同時に1ウエル毎ベースで測定を行うために十分な解像度でプレート内の多数又はすべてのウエルを読み取ることによってマイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列上で実行される。つまり、計算は多数若しくはすべての細胞又は各ウエル内の物質のバルクの総シグナル出力を平均化することによって行われる。HTSにおいて何らかの定義された応答を示すウエル(“ヒット”)がシステムによってフラグされる。その後同一マイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列上で、ヒットであると識別された各ウエルが上記のようにHCSによって測定される。
【0076】
従って、デュアルモードプロセスは下記のステップを含む:
1. マイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列の多数のウエルを迅速に測定するステップ、
2. “ヒット”(定義された応答を示すウエル)を識別するための1ウエル毎ベースで細胞内の蛍光標識されたレポーター分子の全活性を測定するためにデータを解釈するステップ、
3. 各“ヒット”ウエルにおける多数の細胞を画像描出するステップ、及び 4. 特異的生物学的機能について試験する目的で個々の細胞内の蛍光標識されたレポーター分子の分布、環境又は活性(即ち、細胞内測定値)及び細胞の分布を測定するためにデジタル画像データを解釈するステップ。
【0077】
デュアルモード処理の好ましい実施態様(図11)では、ランのスタート時に301、オペレーターがプレート及びその容量を説明する情報を入力し302、使用される生物学的標識、探索される情報及び検体輝度に適合するためのカメラ設定に適合するようにフィルター設定及び蛍光チャンネルを特定する。これらのパラメーターは各自動ランのために容易に検索できるようにシステムのデータベースに記憶される。マイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列は手動的又はロボットローディング装置を制御することによって自動的のどちらかで細胞スクリーニングシステム内にロードされる303。オプションの環境チャンバー304は、マイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列内の生きている細胞の周囲の大気中の温度、湿度及びCO2レベルを維持するためにシステムによって制御される。オプションの液体分注装置305(図8参照)は、スキャン中にウエルに液体を分注するためにシステムによって制御される。
【0078】
高スループット処理306は、プレート内のウエル各々からのシグナルを収集及び解析することによってまず最初にマイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列上で実行される。高スループットモードで実施される処理307は図12に図示されており、下記で説明する。この高スループットモードで何らかの選択された強度応答を示すウエル(“ヒット”)がシステムによって識別される。
システムはヒットについて試験する条件付き作動を実行する308。ヒットが発見されると、それらの特異的なヒットウエルはさらに高含量(マイクロレベル)モードで解析される309。高含量モードで実行される処理312は図13に図示されているシステムはその後プレート上での測定結果を用いてインフォーマティクスデータベース311をアップデートする310。解析すべきプレートがもっとある場合313は、システムは次のプレートをロードする303;さもなければプレートの解析が終了する314。
【0079】
下記の考察では、図12に図示されている高スループットモードを説明する。
単一プラットフォーム式デュアルモードスクリーニングシステムであるシステムの好ましい実施態様を説明する。当業者であれば、デュアルプラットフォームシステムは操作的に光学器械を移動させることよりむしろ2つの光学系間でプレートを移動させることを含むことを認識するであろう。システムがセットアップされてプレートがロードされると、システムはHTS収集及び解析を開始する401。HTS光学モジュールは、デュアルモードシステム上で電動光学器械配置装置402を制御することによって選択される。1つの蛍光チャンネルでは、プレート上の一次マーカーからのデータが収集され403、マスキング手順を使用してウエルがプレートバックグラウンドから分離される404。画像はさらに使用されているのとは別の蛍光チャンネルにおいても収集される405。各ウエル406に対応する各画像における領域が測定される407。特定ウエルに対する測定値から計算された特徴が事前定義された閾値又は強度応答と比較され408、そしてその結果に基づいてウエルが“ヒット”であるとフラグされる409か、又はフラグされない。ヒットであるとフラグされたウエルの場所は引き続いての高含量モード処理のために記録される。処理されるべきウエルが残っている場合は410、すべてのウエルが処理される411までプログラムはループバック(折り返し実行する)し、システムは高スループットモードに入る。
【0080】
HTS解析に続いて、システムは図13に定義されている高含量モード処理を開始する501。システムは電動ポジショニングシステムを制御することによりHCS光学モジュールを選択する502。高スループットモードで識別された各“ヒット”ウエルに対して、ウエルのXYステージの位置がメモリ又はディスクから検索され、ステージはその後選択されたステージ位置503へ移動させられる。各ヒットウエルにおける第1視野に対して自動フォーカス手順504が呼び出され、その後は1回に各ウエル内の5〜8視野毎に呼び出される。1チャンネルで、一次マーカー(典型的にはDAPI, Hoechst又はPI蛍光色素を用いて交差染色された細胞核)についての画像が収集される505。画像はその後適応閾値算定手順を用いて分割される(核及び非核の領域に分けられる)506。分割手順の出力は、対象物が白色でバックグラウンドが黒色であるバイナリーマスクである。技術においてマスクとも呼ばれるこのバイナリー画像は、視野が対象物を含んでいるかどうかを判定するために使用される507。マスクは小班点標識アルゴリズムを用いて標識され、それによって各対象物(又は小班点)はそれに指定された独自の番号を有する。対象物が視野にあることが発見されると、その他すべての能動チャンネルに対して画像が収集されるか508、さもなければ現在ウエルにおいてステージが次の視野へ前進させられる514。各対象物はさらに詳細に解析するために画像内に配置される509。例えば対象物の面積及び形状のような形態学的特徴を使用して細胞核であると思われる対象物が選択され510、そしてアーチファクトと考えられるものが廃棄される(それ以上の処理を行わない)。妥当な各細胞核について、XYZステージの位置が記録され、細胞の小さな画像が記憶され、アッセイに特異的な特徴が測定される511。システムはその後数種の波長各々で特徴を測定するために数種の解析方法を適用することによって細胞上で複数の試験を実行する。細胞の特徴を測定した後、システムは現在視野に未処理の対象物があるかどうかをチェックする512。
未処理の対象物がある場合は、システムは次の対象物を配置し509、それが妥当な細胞核の基準を満たすかどうかを判定し510、その特徴を測定する。現在視野におけるすべての対象物を処理した後、システムは現在ウエル内でもっと細胞又は視野を見つける必要があるかどうかを判定する513。現在ウエル内でもっと細胞又は視野を見つける必要がある場合は、システムはXYZステージを現在ウエル内の次の視野へ前進させる515。さもなければ、システムは測定すべきヒットウエルが残っているかどうかをチェックする515。もし残っていれば、次のヒットウエルに前進し503、別の収集及び解析サイクルへ進むが、さもなければHCSモードが終了される516。
【0081】
本発明の代替実施態様では、生きている細胞の動態スクリーニング法が提供される。上記で説明した本発明の実施態様は、化学的固定の時間である特定時点での細胞成分の空間的分布を特徴付るために使用される。そうしたものであるので、これらの実施態様は、画像収集の逐次的性質及びプレート上のすべてのウエルを読み取るために必要な時間量のために、速度論に基づくスクリーニングを実行するための利用性を制限してきた。例えば、1プレートはすべてのウエルを通して読み取るために30〜60分を必要とすることがあるので、1プレートの生きている細胞を単純に調製し、その後に2回以上ですべてのウエルを通して読み取ることによっては極めて緩徐な動態プロセスしか測定できない。次のウエルへ進行する前に各ウエルの多数の読み取りを行うことによってより迅速な動態プロセスを測定できるが、第1ウエルから最終ウエルまでの経過時間は余りに長くなり過ぎ、迅速な動態プロセスはおそらく最終ウエルに到達する前に完了しているであろう。
【0082】
本発明の生きている細胞の動態伸長は、生物学的プロセスがその空間的特徴の代わりに、又はそれに付け加えて速度論によって特徴付けられるスクリーニングのデザイン及び使用を可能にする。多くの場合、生きている細胞における応答は特異的ウエルに試薬を添加し、適切なタイミングでそのウエルについての複数の測定を行うことによって測定できる。それゆえ本発明のこの生きている細胞の動的実施態様はウエルの読み取りに先立って特定時点に各ウエルへ試薬を分注する目的で、システムの個々のウエルへ液体を分注する装置を含んでいる。これによりこの実施態様はプレートの各ウエルについて秒から分の空間的解像度を用いた動態測定を行うことができる。生きている細胞の動態システムの総合効率を向上させるために、収集制御プログラムはプレートのサブ領域からの反復データ収集が可能なように修飾され、これによって本システムは個々のウエルに対して必要な時点間で他のウエルを読み取ることができる。
【0083】
図8は、本発明の生きている細胞実施態様と一緒に使用するための、上記で説明した液体分注装置の実施例を示している。このセットアップは1セットのピペットチップ705が、又は単一ピペットチップさえもがプレート上のすべてのウエルへ試薬を分注することを可能にする。1列のシリンジポンプ701を使用すると12ウエルに同時に、又は一部のチップ705を取り除くことによってより小数のウエルへ液体を分注することができる。このため、データ収集効率を犠牲にせずに、チップの数及び下記のようにスキャンパターンを変化させることによってシステムの時間的解像度を調整することができる。典型的には、単一ウエルからのデータ収集及び解析は約5秒を要する。ウエルからウエルへ移動すること及び1ウエルにフォーカシングをすることに約5秒を要するので、1ウエルに対する総サイクル時間は約10秒である。このため、単一ウエルに液体を分注するために単一ピペットチップが使用され、そのウエルから反復的にデータが収集されると、約5秒の時間解像度で測定を行うことができる。6ウエルに同時に液体を分注するために6本のピペットチップが使用され、システムが全6ウエルを反復的にスキャンすると、各スキャンは60秒を必要とし、それによって時間的解像度が確立される。8分毎のデータ収集しか必要としないより緩徐なプロセスについては、液体分注期中にプレートを移動させ、その後はプレートのその半分を反復的にスキャンすることによって、液体はプレートの半分へ分注できる。このため、プレート上でスキャンされるサブ領域のサイズを調整することにょって、収集間の待期時間を挿入する必要なく時間的解像度を調整することができる。システムは連続的にスキャンしてデータを収集しているので、プレートから動態データセットを収集するための総所要時間は単純にプレートの単一スキャンを実行するための時間に必要な時点数を掛けた時間である。典型的には、スクリーニング目的には化合物を添加する前の1時点及び添加後の2若しくは3時点で十分なはずである。
【0084】
図14は、動態解析のために使用される収集シーケンスを示している。処理の開始801はシステムの構成であり、その多くは標準HCS構成と同一である。
さらに、オペレーターは、例えばサブ領域サイズ、必要な時点数、及び必要な時間増分のような実施されている動態解析に特異的な情報を入力しなければならない802。サブ領域は、動態データを蓄積するために反復してスキャンされる1群のウエルである。サブ領域のサイズは、システムが単一時間増分中に1回で全サブ領域をスキャンできるように、従って待期時間を最小限に抑えるように調整される。最適サブ領域サイズはセットアップパラメーターから計算され、必要であればオペレーターによって調整される。システムはその後プレートを第1サブ領域へ移動させ803、そして前刺激(時間=0)時点を収集するためにそのサブ領域内の第1ウエルへ移動させる804。各ウエルで実施される収集シーケンスは、動態モードで特異的HCSをランするために必要なシーケント正確に同一である。図15は、その処理についての工程系統図を詳細に示している。スタート901からリターン902の間のすべてのステップは、図13でステップ504〜514で記載されたステップと同一である。
【0085】
サブ領域での各ウエルを処理した後、システムはサブ領域内のすべてのウエルが処理されたかどうかを調べるためにチェックし806(図14)、全領域が処理されるまで全ウエルを通して循環する。システムはその後プレートを液体添加のための位置へ移動させ、全サブ領域807へ液体を分注する液体分注システムを制御する。これは、システムがX,Yステージ上のプレートを添加間で移動させながら、プレート上の数列に及ぶサブ領域に対する複数回の添加を必要とすることがある。液体が添加されると、システムはサブ領域内の第1ウエルに移動して808時点の収集を開始する。データは各ウエルから収集され809、以前と同様にシステムはサブ領域内の全ウエルを通して循環する810。各々がサブ領域を通過した後、システムは全時点が収集されたかどうかをチェックし811、もし収集されていない場合は、必要なら812要求された時間増分と同期化してとどまるために休止する813。さもなければ、システムはプレート上の追加のサブ領域をチェックし814、次のサブ領域へ移動させるか803、又は終了する815。従って、この動態解析モードは、引き続いてのサブ領域でのデータ収集前のサブ領域内でのデータ収集とともに、調査される動態応答に基づいて、スクリーニングされるマイクロタイタープレート又はマイクロウエルのサブ領域のオペレーターによる識別を含んでいる。
【0086】
特異的スクリーニング
本発明のもう1つの局面では、特異的な細胞の成分及びプロセスの分布及び活性を定義するための手順を実行するための細胞スクリーニングシステムを誘発するための1セットの指示を含有するプログラムを含む機械可読記憶媒体が提供される。ある好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムは細胞を保持するために適合したステージ及びそのステージを移動させるための手段、デジタルカメラ、デジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するための光源、及びデジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するためのコンピューター手段を備えた高倍率蛍光光学系を含んでいる。本発明のこの態様は、発光プローブ、光学的イメージングシステム及び本発明のパターン認識ソフトウエアを使用して、特異的細胞成分及びプロセスの分布及び活性を定義するための細胞スクリーニングシステムに命令するプログラムを含んでいる。機械可読記憶媒体の好ましい実施態様は、細胞スクリーニングシステムが図9、11、12、13、14又は15に記載の手順を実行することを惹起するための1セットの指示から構成されるプログラムを含を含んでいる。もう1つの好ましい実施態様は、細胞スクリーニングシステムが特異的細胞成分及びプロセスの分布及び活性を検出するための手順を実行することを惹起するための1セットの指示から構成されるプログラムを含んでいる。最も好ましい実施態様では、細胞プロセスにはタンパク質の核トランスロケーション、細胞肥大、アポトーシス、及びタンパク質のプロテアーゼ誘発性トランスロケーションが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
下記の実施例は例示することだけが意図されており、添付されているクレームで定義されているような本発明の範囲を限定するためと解釈されてはならない。
【0088】
下記の実施例で挙げられる様々な化合物、試薬、色素及び抗体は、例えばSigma Chemical(セントルイス、ミズーリ州)、Molecular Probes(ユージーン、オレゴン州)、Aldrich Chemical Company(ミルウォーキー、ワイオミング州)、Accurate Chemical Company(ウェストバリー、ニューヨーク州)、Jackson Immunoresearch Laboratories(ウェストグローブ、ペンシルバニア州)、及びClontech(パロ・アルト、カリフォルニア州)のような入手源から市販で入手可能である。
【0089】
実施例1. DNA転写因子の核トランスロケーションを誘発又は阻害する化合物についての自動スクリーニング
一部の遺伝子の転写調節は、細胞質内の転写因子の活性化を含み、1又は複数の特定遺伝子の転写を開始できる核内に因子が輸送されることを生じさせる。転写因子分布におけるこの変化が、特定遺伝子又は遺伝子群の転写を阻害若しくは誘発する化合物を検出するための細胞に基づくスクリーニングシステムのためのスクリーニングの基礎である。スクリーニングの一般的説明を下記で特異的実施例により下記で行う。
【0090】
転写因子の分布は、核をHoechst 33423のようなDNA特異的発蛍光団によって標識し、転写因子を特異的蛍光抗体によって標識することで測定される。Hoechst標識核上に自動フォーカスした後、核の画像が細胞に基づくスクリーニングシステムにおいて20倍の倍率で収集され、これを使用して上記で説明したように数種のオプションの閾値算定法の1つによってマスクが作製される。マスクによって定義された領域の形態学的ディスクリプターが、ユーザーによって定義されたパラメーターと比較され、妥当な核マスクが識別され、これを用いて下記のアルゴリズムを使用して転写因子分布が引き出される。妥当な各核マスクは僅かに小さい各領域を定義するために侵食される。オリジナルの各マスクはその後細胞質領域を表す核周囲の環状領域を定義するために2工程で拡張される。これら2つの領域各々における平均抗体蛍光が測定され、これらの平均値間の差がNucCut差分として定義される。核トランスロケーションを測定する2つの実施例は下記で考察されており、図110A−Jに図示されている。図10Aは、青色発蛍光団を用いて標識された核200及び緑色発蛍光団を用いて標識された細胞質201中の転写因子を持つ刺激されていない細胞を図示している。図10Bは、細胞に基づくスクリーニングシステムによって引き出された核マスク202を図示している。図10Cは、緑色波長で描出された刺激されていない細胞の細胞質203を図示している。図10Dは、最小細胞質分布を持つ核サンプリング領域204を定義するために核マスク202が1回侵食(圧縮)されたのを図示している。核境界202は、同一細胞に対して細胞質サンプリング領域205を定義するために使用される2〜3ピクセル広い環を形成するために数回拡張(伸展)させられる。図10Eは、さらに核サンプリング領域204及び細胞質サンプリング領域205を示している側面図を図示している。これら2つのサンプリング領域を使用すると、核トランスロケーションに関するデータを1細胞毎ベースで細胞に基づくスクリーニングシステムによって自動的に解析することができる。図10F〜Jは、刺激された細胞における核トランスロケーションを測定するための戦術を図示している。図10Fは、青色の発蛍光団を用いて標識された核206及び緑色発蛍光団を用いて標識された細胞質207中の転写因子を持つ刺激された細胞を図示している。図10Gにおける核マスク208は、細胞に基づくスクリーニングシステムによって引き出される。図10Hは、緑色波長で描出された刺激された細胞の細胞質209を図示している。図10Iは、刺激された細胞の核サンプリング領域211及び細胞質サンプリング領域212を示している。図10Jはさらに、核サンプリング領域211及び細胞質サンプリング領域212を示している側面図を図示している。
【0091】
この方法の特異的アプリケーションは、スクリーニングとしてのこの方法の妥当性を確認するために使用されている。ヒト細胞系が96ウエル・マイクロタイタープレートでプレーティングされた。数列のウエルは、特異的核転写因子の既知の誘発物質であるアゴニストによって滴定された。細胞はその後、転写因子に対する蛍光標識抗体及びHoechst 33423を用いる標準方法によって固定及び染色された。細胞に基づくスクリーニングシステムは、このプレートから画像を収集及び解析するために使用され、図16に図示されているようにNucCyt差分がウエルに添加されたアゴニストの量と強力に相関することが見出された。第2の実験では、アゴニストに対するレセプターにとってのアンタゴニストが、アゴニストの存在下で、進行性で転写因子のアゴニスト誘発性トランスロケーションを阻害させながら滴定された。図17に示されているように、NucCyt差分は、このトランスロケーションの阻害と強力に相関することが見出された。
【0092】
追加の実験は、NucCyt差分が広範囲の細胞密度及び試薬濃度に渡って一貫した結果を生じさせること、そしてそのために特異的核トランスロケーション活性について化合物ライブラリーをスクリーニングするためにルーチン的に使用できることを証明した。さらに、生きている細胞及び固定化細胞において他の転写因子に対する抗体、又はGFP転写因子キメラを使用してこれやその他の遺伝子の転写の調節に及ぼす影響についてスクリーニングするために同一方法を使用することができる。
【0093】
図18は、実施例1に従って入手されたデータのPCスクリーン上の代表的表示である。グラフ1180は、ウエル数に対する核サンプリング領域及び細胞質サンプリング領域における平均抗体蛍光の差分、NucCyt差分をプロットしている。グラフ2181は、ウエル数に対する核サンプリング領域における抗体の平均蛍光であるNP1平均値をプロットしている。グラフ3182は、ウエル数に対する細胞質サンプリング領域における平均抗体蛍光であるL1P1平均値をプロットしている。ソフトウエアによって、各セルからのデータを表示することができる。例えば、図18は細胞#26についてのスクリーンディスプレイ183、核画像184、及び蛍光抗体画像185を示している。
【0094】
図18のグラフ1180に挙げられているNucCyt差分は、平均細胞質プローブ(蛍光レポーター分子)強度と平均核プローブ(蛍光レポーター分子)強度との差である。図18のグラフ2181に挙げられているNP1平均値は核サンプリング領域内の細胞質プローブ(蛍光レポーター分子)強度の平均値である。図18のグラフ3182に挙げられているL1P1平均値は細胞質サンプリング領域内の平均プローブ(蛍光レポーター分子)強度の平均値である。
【0095】
実施例2. 心筋細胞における肥大を誘発又は阻害する化合物についての自動スクリーニング
心筋細胞における肥大は遺伝子発現における変質のカスケードと関連付けられており、細胞培養においては細胞サイズの変化によって特徴付けることができる、つまりカバーグラス上で増殖している付着細胞中で著明に視認できる。スクリーニングは下記の戦術を用いて実行される。96ウエル・プレートで培養された心筋細胞系QM7(Quail muscle clone 7; ATCC CRL−1962)は様々な化合物によって処理でき、その後細胞表面マーカーに対する蛍光抗体及びHoechstのようなDNA標識を用いて固定及び標識される。Hoechst標識核上でフォーカシングが行われた後、1枚はHoechst標識核及び1枚は蛍光抗体の2枚の画像が収集される。核はマスクを作成するために閾値算定し、その後にマスクの形態学的ディスクリプターを1セットのユーザー定義ディスクリプターと比較することによって識別される。細胞を含有する局所領域が核の周囲で限定される。それらの領域内での細胞の限界が蛍光抗体画像における同一領域上での局所的動態閾値操作によって定義される。侵食及び拡張のシーケンスを使用して僅かに接触している細胞が分離され、第2セットの形態学的ディスクリプターを使用して単一細胞が識別される。正常及び肥大性細胞からのサイズデータと比較する目的で細胞サイズの分布を定義するために個々の細胞の面積が表作成される。さらに、例えば主要筋タンパク質であるアクチン又はミオシンの1つのような特定細胞タンパク質に対する第2蛍光抗体を含めることができる。この第二抗体の画像は、肥大性細胞中のこれらのタンパク質の分布における異常を確認するために後から精査する目的で上記の画像と一緒に収集かつ記憶することができる、又はこれらの画像中の標識タンパク質の分布を自動的に解析するアルゴリズムを開発することもできる。
【0096】
実施例3. デュアルモード式高スループット及び高含量スクリーニング
下記の実施例は、細胞質膜から近傍核位置へのGタンパク質結合レセプター(GPCR)のトランスロケーションによって検出されるGPCRの活性化についてのスクリーニングである。本実施例では、細胞に基づくスクリーニングのためのデュアルモードシステムにおいて高スループットスクリーニングを高含量スクリーニングとどのように結合できるかを例示する。
【0097】
Gタンパク質結合レセプターは大きなクラスの7トランスメンブランドメイン細胞表面レセプターである。これらのレセプターに対するリガンドは、Ca++トランシエント、サイクリックAMP産生、イノシトール三リン酸塩(IP3)産生、及びリン酸化を含む場合があるがこれらに限定されない細胞内における二次シグナルのカスケードを刺激する。これらのシグナルの1つ1つはおよそ数秒から数分で発生して迅速であるが、同様に一般的でもある。例えば多数の様々なGPCRは活性化されると二次Ca++シグナルを産生する。GPCRの刺激は又、細胞表面膜から内部の近傍核区画へのそのGPCRの輸送を生じさせる。このインターナリゼーションは、特定レセプターの活性化についての上記の二次シグナルよりもはるかにレセプター特異的指標である。
【0098】
図19は、GPCRを活性化するためのデュアルモードスクリーニングを図示している。青色蛍光タンパク質(BFP)とともにGPCRの安定性キメラを有している細胞は、エステルの加水分解によって生きている細胞内でトラップされる細胞透過性カルシウム指示薬(緑色蛍光)であるフルオ−3のアセトキシメチルエステル形をローディングされる。それらはその後、マイクロタイタープレート601のウエル内に置かれる。ウエルはその後、液体分注システムを用いて試験化合物の配列によって処理され、全マイクロタイタープレートのフルオ−3画像の短いシーケンスが収集され、カルシウム応答を示すウエルについて解析が行われる(即ち、高スループットモード)。画像は、図19におけるマイクロタイタープレート601の図と同様に見えるであろう。図示されているウエルC4及びE9のような少数のウエルは、レセプターが刺激されるとCa++を放出するためにより明るく蛍光を発するであろう。応答602を誘発した化合物を含有するウエルのロケーションはその後HCSプログラムへ移され、光学器械は核周囲領域へのGPCRトランスロケーションを証明するために青色蛍光の詳細な細胞毎の解析のためにスイッチが切り換えられる。図19の下方には、高解像度細胞データ解析の2つの可能性ある結果が図示されている。カメラはウエルアリア603のサブ領域604を描出しており、蛍光細胞605の画像が作り出されている。ウエルC4では、細胞内の蛍光の一様な分布がレセプターがインターナリゼーションされていないことを示しており、これは所見されたCa++応答が細胞内の何か他のシグナル系の刺激の結果であったことを意味している。他方ウエルE9606内の細胞は、レセプターの完全な活性化を示している明らかに核周囲領域におけるレセプターの集中を示している。高解像度で解析しなければならないのはほんの少数のヒットウエルだけであるので、デュアルモードシステムの全スループットは高スループットシステム単独に比較して極めて高くなる。
【0099】
実施例4. 動態高含量スクリーニング
下記はレセプターのインターナリゼーションの動態パラメーターを測定するためのスクリーニングの例である。上記のように、GPCRの刺激は約15分間の時間経過でレセプターのインターナリゼーションを生じさせる。GPCRアゴニスト又はアンタゴニストとしての化合物の効力を定義するためには、インターナライズしたかどうかというエンドポイントを単純に検出するだけでは不十分な可能性がある。しかし、5分間隔の3つの時点は測定の時間経過中に効力に関する情報を提供するだけではなく、データをはるかに長い時間へ外挿することを許容するであろう。このアッセイを実施するためには、サブ領域は2列、サンプリング間隔は5分、そして時点の総数は3と定義されるであろう。システムはその後2列をスキャンすることによってスタートされ、その後2列に試薬が添加され、時間=0標準が確立される。試薬を添加した後、システムは再び最初の時点データを収集した2列のサブ領域をスキャンする。このプロセスは、サブ領域の最初へ戻ってスキャンすることを含めて約250秒を要するので、第2時点の収集を開始するためには50秒待機するであろう。後2回のサイクルが3つの時点を作り出し、システムは第2の2列のサブ領域へ進む。最後2つの2列のサブ領域はプレート上の全ウエルを終了するためにスキャンされ、全プレートに渡って各ウエルに対して4つの時点が生じる。ウエルに対する時点は時間=0に比して僅かに相殺されるが、時点の間隔は必要な5分に極めて近くなり実際の収集時間及び結果は固定化細胞スクリーニングにおけるよりはるかに高度の正確さで記録されるであろう。
【0100】
実施例5. ヒトグルココルチコイドレセプタートランスロケーションの高含量スクリーニング
あるクラスのHCSは、細胞内成分の薬物誘発性動的再分布を含んでいる。細胞の複雑な環境応答機械における単一“センサー”であるヒトグルココルチコイドレセプター(hGR)は細胞内に拡散しているステロイド分子に結合する。リガンド−レセプター複合体は核へトランスロケートし、そこで転写活性化が発生する(Htun et al.,(1996)、 Proc. Natl. Acad. Sci. 93:4845)。
【0101】
一般に、ホルモンレセプターは、それらの活性が重要な細胞内シグナル経路の先端にあるので、素晴らしい薬物ターゲットである。このため、hGRトランスロケーションの高含量スクリーニングはin vitroリガンド−レセプター結合アッセイに比べて著明な長所を有している。本発明の細胞スクリーニングシステムにおいて2チャンネル以上までの蛍光の利用可能性は、スクリーニングが例えば他のレセプター、他の明確なターゲット又はその他の細胞プロセスのような追加の2つのパラメーターを並行して含むことを許容する。
【0102】
プラスミド構造体。緑色蛍光タンパク質−ヒトグルココルチコイドレセプター(GFP−hGR)キメラに対するコーディング配列を含有する真核発現プラスミドはGFPミュータントを用いて調製された(Palm et al.,(1997), Nat. Struct. Biol. 4:361)。この構造体を使用してヒト子宮頸癌細胞系(HeLa)がトランスフェクトされた。
【0103】
細胞の調製及びトランスフェクション。HeLa細胞(ATCC CCL−2)がトリプシン処理され、5%木炭/デキストラン処理ウシ胎仔血清(FBS)(HyClone)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(C−DMEM)を含有するDMEMを用いてトランスフェクションの12〜24時間前にプレーティングされ、37℃及び5%CO2でインキュベートされた。トランスフェクションはリン酸カルシウム共同沈降によって(Graham and Van der Eb,(1973), Virology 52:456, ; Sambrook et al.,(1989), Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second ed.(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor)、又はリポフェクタミン(Life technologies, Gaithersburg, MD)を用いて実施された。リン酸カルシウムトランスフェクションのために、トランスフェクションの前に培地は5%木炭/デキストラン処理FBSを含有するDMEMと交換された。細胞はリン酸カルシウム−DNA沈降物を用いて37℃及び5%CO2で4〜5時間インキュベートされ、沈降物を除去するためにDMEMで3〜4回洗浄され、その後にC−DMEMが添加された。
【0104】
リポフェクタミントランスフェクションは製造業者の使用説明書に従って抗生物質を含まない無血清DMEM中で実施された(Life Technologies, Gaithersburg, MD)。DNA−リポソーム複合体と一緒の2〜3時間のインキュベーションに続いて、培地が除去され、C−DMEMと交換された。96ウエル・マイクロタイタープレート内のすべてのトランスフェクト細胞は薬物処理の前に24〜48時間、33℃及び5%CO2でインキュベートされた。実験は、HeLa細胞中で一過性に発現したレセプターを用いて実施された。
【0105】
GFP−hGRトランスロケーションのデキサメタゾン誘発。レセプター−リガンドトランスロケーション動態データを入手するために、トランスフェクト細胞の核が最初にC−DMEMに溶解させた5μg/ml Hoechst 33342(Molecular Probes)を用いて33℃及び5%CO2で20分間かけて標識された。細胞はハンクス液(HBSS)中で1回洗浄され、その後に1%木炭/デキストラン処理FBSとともにHBSS中に溶解させた100nMデキサメタゾンが添加された。固定時点のデキサメタゾン滴定データを入手するために、トランスフェクトされたHeLa細胞が最初にDMEMで洗浄され、その後に1%木炭/デキストラン処理FBSを含有するDMEM中に溶解させた0〜1,000nMデキサメタゾンの存在下で1時間、33℃及び5%CO2でインキュベートされた。細胞は生きたまま解析するか、又はHBSSですすぎ洗いするかされ、HBSSに溶解させた3.7%ホルムアルデヒドを用いて15分間かけて固定され、Hoechst 33342を用いて染色され、さらに解析前に洗浄された。細胞内GFP−hGR蛍光シグナルはこの固定法によって減少しなかった。
【0106】
画像の収集及び解析。動態データはデキサメタゾンの添加後30分間に1分間隔で生きている細胞の視野から対の蛍光画像(GFP−hGR及びHoechst 33342標識核)を獲得することによって収集された。同様に、デキサメタゾンの添加1時間後に固定時点スクリーニングプレートの各ウエルからも対の画像が入手された。どちらの場合にも、各時点で入手された対の画像を使用して各細胞内の核及び細胞質領域が定義された。GFP−hGRのトランスロケーションは、核内のGFP−hGRの統合蛍光強度を細胞質内のキメラの統合蛍光強度で割ることによって、又はGFP蛍光の核−細胞質差分として計算された。固定時点スクリーニングでは、このトランスロケーション率を試験された各デキサメタゾン濃度で最低200個の細胞から入手されたデータから計算された。このため細胞質から核へのGFP−hGRの薬物誘発性トランスロケーションはトランスロケーション率の上昇と相関していた。
【0107】
結果。図20はヒトグルココルチコイドレセプターの薬物誘発性の細胞質253から核252へのトランスロケーションを略図的に表示している。略図の上方の対は、デキサメタゾンを用いての刺激前250(A)及び後251(B)の細胞内におけるGFP−hGRの所在位置を描出している。これらの実験条件下では、薬物は細胞質GFP−hGRの大部分が核内へトランスロケートするのを誘発する。この再分布は、処理された細胞255及び未処理の細胞254における細胞質及び核蛍光の統合強度比を測定することによって定量される。蛍光顕微鏡写真の下方の対は、処理の前254及び後255における単一細胞中のGFP−hGRの動的再分布を示している。HCSは数百から数千のトランスフェクト細胞を含有するウエル上で実施され、トランスロケーションはGFP蛍光を示している視野において核細胞について定量される。安定性にトランスフェクトされた細胞系を使用すると最も一貫して標識された細胞が産生するが、一過性トランスフェクションによって誘発された不均質なレベルのGFP−hGR発現は本発明の細胞スクリーニングシステムによる解析を妨害しなかった。
【0108】
スクリーニングを実行するために、細胞スクリーニングシステムはプレートの各ウエルをスキャンし、各々における細胞集団を画像描出し、細胞を個別的に解析する。この場合は、2チャンネルの蛍光を使用して各細胞内のGFP−hGRの細胞質及び核分布が定義される。図21には、GFP−hGRスクリーニングの終わり近くの細胞スクリーニングシステムのグラフィカルユーザーインターフェースが描出されている。ユーザーインターフェースはシステムの並行データ収集及び解析能力を描出している。“Nucleus(核)”261及び“GFP−hGR”262と表示されたウインドウは、単一視野で入手及び解析されている対の蛍光画像を示している。“Color Overlay(カラーオーバレイ)”260と表示されているウインドウは、上記の画像を疑似着色してそれらをマージングすることによって形成されているので、ユーザーは直ちに細胞変化を識別することができる。“Stored Object Regions(記憶された対象物領域)”ウインドウ265内では、解析された各細胞及びその近傍を含有する画像が保存されるに従って提示される。さらに、HCSデータが収集されるにつれて、それらは解析され、このGFP−hGRトランスロケーションの場合には、即時“ヒット”応答に翻訳される。スクリーンの下のウインドウ267に描出された96ウエル・プレートは、どのウエルが1セットのユーザー定義スクリーニング基準に合致したかを示す。例えば、白色のウエル269は、薬物誘発トランスロケーションが50%の前設定閾値を超えたことを示している。他方、黒色ウエル270は、試験されている薬物が誘発したトランスロケーションが10%未満であることを示している。グレーのウエル268は、トランスロケーション値が10%から50%の間にある“ヒット”を示している。解析中の96ウエル・プレート266上の列“E”は、GFP−hGRトランスロケーションを活性化することが既知の薬剤デキサメタゾンを用いた滴定を示している。この実施例スクリーンは2つの蛍光チャンネルしか使用しなかった。他の特異的ターゲット、細胞プロセス、又は細胞毒性の並行解析を行う目的で多重パラメータースクリーニングを作製するためには、さらに2つのチャンネル(チャンネル3263及び4264)を利用することができる。
【0109】
画像データベースと新規スクリーニングの妥当性確認プロセス中の強力なツールである情報データベースは連結されている。スクリーニングの完了時には、ユーザーは画像及び計算データに総合アクセスを行う(図22)。細胞スクリーニングシステムの包括的データ解析パッケージによって、ユーザーは多重レベルでHCSデータを試験することができる。画像276及び個々の細胞についてのスプレッドシート279に詳細に記載されたデータは個別に精査できる、又はサマリーデータをプロッティングすることができる。例えば、96ウエル・プレートにおける各セルについての単一パラメーターの計算結果はグラフ1275と表示されたパネルに示される。グラフにおける単一点を選択することにより、ユーザーは現行データベースから再現される特定細胞についての全データセットを表示することができる。個々には単一細胞からの対の画像276及び詳細な蛍光及び形態計測データが示されている(細胞#118、グレーのライン277)。大きなグラフ挿入画面278は、GFP−hGRのトランスロケーションにデキサメタゾン濃度が及ぼした作用の結果を示している。各点は最低200個の細胞から入手したデータの平均値である。このアッセイでのデキサメタゾンに対して計算で得たEC50値は2nMである。
【0110】
細胞スクリーニングシステムを備えたHCSの強力な態様は、生きている細胞において多色蛍光及び形態計測パラメーターを用いた動態測定を行う能力である。1視野における1細胞集団内の単一細胞について時間的及び空間的測定を行うことができる。図23は、単一視野内の数個の細胞におけるGFP−hGRのデキサメタゾン誘発性トランスロケーションについての動態データを示している。
GFP−hGRを用いてトランスフェクトされたヒトHeLa細胞を100nMデキサメタゾンによって処理し、GFP−hGRのトランスロケーションを単一細胞の集団において経時的に測定した。グラフはトランスフェクト細胞285、286、287、及び288及び非トランスフェクト細胞289の応答を示している。これらのデータは又、種々の発現レベルを持つ細胞を解析する能力を例示している。
【0111】
実施例6. 薬物誘発性アポトーシスの高含量スクリーニング
アポトーシスは、無数の分子イベント及び経路を含む複雑な細胞プログラムである。このプロセスに及ぼす薬物作用のメカニズムを理解するためには、時間的及び空間的分解能を用いて細胞内のこれらのイベントをできる限り多く測定することが不可欠である。このため、僅かな細胞サンプル標本しか必要としないが、それでも数種類のアポトーシス関連パラメーターの自動読み出しを提供するアポトーシススクリーニングが理想的であろう。そこでパクリタクセル誘発性アポトーシスの数種の形態学的、オルガネラ的、及び高分子的特徴を同時に定量するために、細胞スクリーニングシステムのためにデザインされた細胞に基づくアッセイが使用されてきた。
【0112】
細胞の調製。本試験のために選択された細胞はマウス結合組織線維芽細胞(L−929;ATCC CCL−1)及び高度に侵襲性グリア芽細胞腫細胞系であった(SNB−19;ATCC CRL−2219)(Welch et al., In Vitro Cell. Dev. Biol. 31:610,1995)。アポトーシスを誘発する薬物による処理の前日に、96ウエル・プレートの各ウエル内に3,500個の細胞を入れられ、37℃の湿性5%CO2大気中で一晩インキュベートされた。翌日、培地が各ウエルから取り除かれ、DMSO中で調製した20mMストックからの種々の濃度のパクリタクセル(0〜50μM)を含有する新鮮培地と交換された。これらの実験で使用したDMSOの最高濃度は0.25%であった。その後、細胞が上記と同様条件下で26時間インキュベートされた。パクリタクセル処理期間の終了時に、各ウエルには750nM Mito Tracker Red(Molecular Probes;ユージーン、オレゴン州)及び3μg/mlのHoechst 33342 DNA結合性色素(Molecular Probes)を含有する新鮮培地が与えられ、上記と同様条件下で20分間インキュベートされた。プレート上の各ウエルはその後HBSSを用いて洗浄され、室温で15分間かけてHBSSに溶かした3.7%ホルムアルデヒドを用いて固定された。ホルムアルデヒドはHBSSを用いて洗浄され、細胞は0.5%(v/v) Triton X−100を用いて90分間浸透させられ、HBSSを用いて洗浄され、2Uml−1 Bodipy FLファラシジン(Molecular Probes)を用いて30分間インキュベートされ、HBSSを用いて洗浄された。それからプレート上のウエルに200μl HBSSが充填され、密封され、さらにプレートを必要な場合は4℃で貯蔵された。この方法で貯蔵されたプレートからの蛍光シグナルは、調製後最低2週間は安定性であった。核トランスロケーションアッセイにおけると同様に、蛍光試薬はこのアッセイを生きている細胞の高含量スクリーニングに転換するようにデザインすることができる。
【0113】
配列スキャンシステム上での画像収集及び解析。細胞内MitoTracker Red、Hoechst 33342、及びBodipy FLファラシジンの蛍光強度が上記と同様に細胞スクリーニングシステムを用いて測定された。
画像視野において各対象物(例、細胞及び核)が検出され、さらにそのサイズ、形状、及び統合強度を計算するために、各ウエルから入手された対の核画像からの形態計測データも又入手された。
【0114】
計算及び出力。1画像視野当たり計50〜250個の細胞が測定された。細胞の各視野について、下記の計算が実施された:(1)平均核面積(μm2)は1視野内の総核面積を検出した核数で割ることによって計算された。(2)平均核周界(μm)は1視野における全核の周界の合計をその視野で検出した核数で割ることによって計算された。高度に複雑なアポトーシスの進んだ核は最大核周界値を有していた。(3)平均核輝度は、核の視野全体の統合強度をその視野に含まれる核数で割ることによって計算された。核輝度における増加はDNA含量の増加と相関していた。(4)平均細胞輝度は、MitoTracker色素を用いて染色された細胞の視野全体の統合強度をその視野に含まれる核数で割ることによって計算された。ミトコンドリア内に蓄積するMitoTracker色素の量はミトコンドリア電位と比例するので、平均細胞輝度の増加はミトコンドリア電位における増加と一致している。(5)平均細胞輝度は、さらにBodipy FLファラシジン色素を用いて染色された細胞の視野全体の統合強度をその視野に含まれる核数で割ることによって計算された。ファロトキシン類は高度の親和性でアクチンの重合化形へ結合するので、細胞内に蓄積するBodipy FLファラシジン色素の量はアクチン重合化状態と比例している。平均細胞輝度における増加はアクチン重合化における増加と一致している。
【0115】
結果。図24(一番上のパネル)は、L−929細胞の核形態におけるパクリタクセル誘発性変化を示している。パクリタクセルの量の増加は、アポトーシスの特徴である核の拡大及び断片化293を惹起した。細胞スクリーニングシステムにより入手されたこれら及びその他の画像の定量的解析は同一の図に示されている。測定された各パラメーターは、L−929細胞296がSNB−19細胞297に比べて低濃度のパクリタクセルに感受性が低いことを証明した。だがより高濃度では、L−929細胞は測定された各パラメーターについて応答を示した。このアッセイの多重パラメーターアプローチは、薬物作用のメカニズムを分析するときに有用である。例えば、核298の面積、輝度及びフラグメンテーション(断片化)及びアクチン重合化値294は、SNB−19細胞を10nMパクリタクセルによって処理したときに最高値に達した(図24;一番上および下のグラフ)。しかし、ミトコンドリア電位295は同一濃度のパクリタクセルで最小であった(図24;真ん中のグラフ)。測定されたすべてのパラメーターがパクリタクセル濃度を上昇させる(>10nM)とコントロールレベルに近づいたという事実は、SNB−19細胞が、薬物濃度が十分に高いときには代償性である低親和性薬物代謝又はクリアランス経路を有していることを示唆している。
SNB−19細胞の薬物感受性297とは対照的に、L−929はパクリタクセルに対して相違する応答を示した296。これらの線維芽細胞は、5μMパクリタクセルで多数のパラメーターにおいてSNB−19細胞より500倍高い最高応答を示した。さらに、L−929細胞は試験した全パクリタクセル濃度でミトコンドリア電位295における激しい減少を示さなかった。この結果は、正常細胞系と癌細胞系の間の独特のアポトーシス経路の存在と一致している。このため、これらの結果は、比較的に単純な蛍光標識プロトコールを本発明の細胞スクリーニングシステムと結合することによってプログラムされた細胞死に含まれる重要なイベントに関する高含量スクリーニングを作製できることを示している。
【0116】
実施例7. 細胞質から核への疾患関連シーケンスを含有するシグナル酵素のプロテアーゼ誘発性トランスロケーション
プラスミド構造体。緑色蛍光タンパク質−カスパーゼ(Cohen(1997),Biochemical J. 326:1−16; Liang et al.,(1997), J. of Molec. Biol. 274:291−302)キメラに対するコーディング配列を含有する真核発現プラスミドはGFPミュータントを用いて調製された。この構造体を使用して真核細胞がトランスフェクトされた。
【0117】
細胞の調製及びトランスフェクション。細胞はトランスフェクション24時間前にトリプシン処理した後にプレーティングされ、37℃及び5%CO2でインキュベートされた。トランスフェクションは、リン酸カルシウム共同沈降又はリポフェクションを含むがそれらに限定されない方法によって実施する。細胞はリン酸カルシウム−DNA沈降物と一緒に37℃及び5%CO2で4〜5時間インキュベートされ、沈降物を除去するためにDMEMを用いて3〜4回洗浄され、その後にC−DMEMが添加される。リポフェクタミンによるトランスフェクションは、製造業者の使用説明書に従って抗生物質を含まない無血清DMEM中で実施される。DNA−リポソーム複合体と一緒に2〜3時間インキュベーションされた後、培地が除去され、C−DMEMと交換される。
【0118】
カスパーゼ−GFPトランスロケーションのアポトーシス性誘発。カスパーゼ−GFPトランスロケーションの動態データを入手するために、トランスフェクト細胞の核がまず最初にC−DMEMに溶かした5μg/mlのHoechst 33342(Molecular Probes)を用いて37℃及び5%CO2で20分間かけて標識される。細胞はハンクス液(HBSS)中で1回洗浄され、その後にアポトーシスを誘発する化合物が添加される。これらの化合物にはパクリタクセル、スタウロスポリン、セラミド、及び腫瘍壊死因子が含まれるが、これらに限定されない。固定時点の滴定データを入手するために、トランスフェクト細胞が最初にDMEMを用いて洗浄され、その後にDMEMに溶かした0〜1,000nMの化合物の存在下において37℃及び5%CO2で1時間かけてインキュベートされた。細胞は生きたまま解析され、又はHBSSを用いてすすぎ洗いされ、HBSSに溶かした3.7%ホルムアルデヒドを用いて15分間かけて固定され、Hoechst 33342を用いて染色され、解析前に洗浄される。
【0119】
画像の収集及び解析。動態データは化合物の添加後の30分間に1分間隔で生きている細胞の視野から対の蛍光画像(カスパーゼ−GFP及びHoechst 33342標識核)を獲得することによって収集される。同様に、化合物添加後の1時間に固定時点スクリーニングプレートの各ウエルから対の画像が入手される。どちらの場合も、各時点で入手された対の画像を使用して各細胞における核及び細胞質領域が定義される。カスパーゼ−GFPのトランスロケーションは核内のカスパーゼ−GFPの統合蛍光強度を細胞質内のキメラの統合蛍光強度で割ることによって、又はGFP蛍光の核−細胞質差分として計算される。固定時点スクリーニングでは、このトランスロケーション率は試験された化合物の各濃度で最低200個の細胞から入手したデータから計算される。指示細胞系をスクリーニングするため、及びDASに対する特異的リガンド及び化合物活性により活性化される経路を識別するためには、アポトーシス活性化酵素の推定アクチベーター(賦活物質)又はインヒビターを含むライブラリーを含むがこれらに限定されない分子相互作用ライブラリーを使用する。
【0120】
実施例8. DASからの新規ステロイドレセプターの識別
この実施態様を利用するためには、特徴付けられていない遺伝子の機能の評価を許容する物質及び/又は情報の2つの入手源が必要とされる。第1に、哺乳類細胞内へのトランスフェクションに適合するcDNA配列を含有する疾患関連配列順序銀行を使用できる。1つ1つのRADE又は様々な発現実験は数百までの配列順序を生成するので、DASの豊富な供給を生み出すことが可能である。第2に、シグナル配列、7種のトランスメンブランモチーフ、保存されたプロテアーゼ活性部位ドメイン、又は他の識別可能なモチーフを含むがこれらに限定されない幅広いカテゴリーにDASを挿入するためには一次配列順序データベース探索からの情報を使用できる。これらの入手源から収集した情報に基づき、アルゴリズムのタイプ及びトランスフェクトされる指示細胞系を選択する。非常に多数のモチーフは既に明確に特徴付けられ、現在のゲノムデータベースに含まれる非常に多数の遺伝子内に含まれる線形配列にコードされている。
【0121】
ある実施態様では、下記のステップが行われる:
1)DAS識別実験(データベース検索を含む)からの情報が関連生物学的プロセスを選択するための基礎として使用される(例えば、細胞周期変調、アポトーシス、転移性プロテアーゼその他に対する腫瘍細胞系からのDASを参照)。
【0122】
2)識別可能なモチーフによるDNA配列又はDASのソーティング(即ち、シグナル配列、7−トランスメンブランドメイン、保存されたプロテアーゼ活性部位ドメイン、その他)。この初期分類は、上記のように蛍光タグ付け戦術、宿主細胞系、指示細胞系、及びスクリーニングされる何組かの生物活性分子を決定するであろう。
【0123】
3)著明に確立された分子生物学方法を用いて、DASをこのためにデザインされた発現ベクター内に連結させる。普遍形発現ベクターにはそれらに対して一過性発現のために細胞へターゲット配列を送達するプロモーター、エンハンサー、及びターミネーターが含まれる。そうしたベクターはさらに、宿主によって発現したときの検出を容易にするために抗体タグ付け配列、直接関連配列、GFPのような発色団融合配列その他を含んでいてもよい。
【0124】
4)リン酸カルシウム共同沈降、リポソーム媒介性、DEAEデキストラン媒介性、ポリカチオン媒介性、ウイルス媒介性、又はエレクトロポレーションを含む標準トランスフェクションプロトコールを使用して、ベクターを含有するDASを用いて細胞が一過性にトランスフェクトされる、及びマイクロタイタープレート若しくはマイクロウエル配列内にプレーティングされる。或いは又、トランスフェクションはマイクロタイタープレート自体において直接実施されることも可能である。
【0125】
5)上記と同様に細胞スクリーニング手順を実行する。
【0126】
この実施態様では、転写活性化電位(例えば、DNA結合ドメイン、アミノ末端変調ドメイン、ヒンジ領域、若しくはカルボキシ末端リガンド結合ドメイン)を示唆するモチーフを有していることが証明されているDASを利用して新規ステロイドレセプターが識別される。
【0127】
この実験のために蛍光タグを定義することには、染色、及びGFPをコードする遺伝子に近位で融合している発現ベクター内へのDASの挿入によってGFPキメラを作製することによりDASにタグ付けすることを通しての核の識別を含んでいる。或いは又、発現したDASの一部の部分に高親和性を有する一本鎖抗体フラグメントを技術において利用できるテクノロジー(Cambridge Antibody Technologies)を用いて構成し、細胞内の推定転写アクチベーター/レセプターにタグ付けするために発蛍光団(FITC)へ連結する。この代替法は、DNAトランスフェクションを必要としない外部タグを提供するので、DASを生成するために使用されるオリジナルの一次培養から分布データを集めなければならない場合は有用であろう。
【0128】
プラスミド構造体。緑色蛍光タンパク質−DASキメラに対するコーディング配列を含有する真核発現プラスミドはGFPミュータントを用いて調製された。
この構造体を使用してHeLa細胞がトランスフェクトされた。宿主細胞内にトランスフェクトさせると、このプラスミドはGFP−DASppと呼ばれるDASタンパク質生成物に融合したGFPを産生する。
【0129】
細胞の調製及びトランスフェクション。HeLa細胞(ATCC CCL−2)はトリプシン処理され、5%木炭/デキストラン処理ウシ胎仔血清(FBS)(HyClone)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(C−DMEM)を含有するDMEMを用いてトランスフェクションの12〜24時間前にプレーティングされ、37℃及び5%CO2でインキュベートされた。トランスフェクションはリン酸カルシウム共同沈降によって、又はリポフェクタミン(Life technologies)を用いて実施する。リン酸カルシウムトランスフェクションのためには、トランスフェクションの前に培地を5%木炭/デキストラン処理FBSを含有するDMEMと交換する。細胞はリン酸カルシウム−DNA沈降物を用いて37℃及び5%CO2で4〜5時間インキュベートされ、沈降物を除去するためにDMEMで3〜4回洗浄され、その後にC−DMEMが添加される。リポフェクタミントランスフェクションは製造業者の使用説明書に従って抗生物質を含まない無血清DMEM中で実施する。DNA−リポソーム複合体と一緒に2〜3時間インキュベーションされた後、培地が除去され、C−DMEMと交換される。96ウエル・マイクロタイタープレート内のすべてのトランスフェクト細胞が薬物処理の前に24〜48時間に渡り33℃及び5%CO2でインキュベートされる。実験は、HeLa細胞中で一過性に発現したレセプターを用いて実施する。
【0130】
細胞内で発現したGFP−DASppの位置決定。細胞分布データを入手するために、トランスフェクト細胞の核がまず最初にC−DMEMに溶かした5μg/mlのHoechst 33342(Molecular Probes)を用いて33℃及び5%CO2で20分間かけて標識される。細胞はハンクス液(HBSS)中で1回洗浄される。細胞は生きたまま解析される、又はHBSSを用いてすすぎ洗いされ、HBSSに溶かした3.7%ホルムアルデヒドを用いて15分間かけて固定され、Hoechst 33342を用いて染色され、解析前に洗浄される。
【0131】
ある好ましい実施態様では、画像の収集及び解析は本発明の細胞スクリーニングシステムを用いて実施する。細胞内GFP−DASpp蛍光シグナルは細胞の視野から対の蛍光画像(GFP−DASpp及びHoechst 33342−標識核)を獲得することによって収集される。各時点で入手した対の画像を使用して、各細胞内の核及び細胞質領域が定義される。細胞質において散乱したシグナルを示しているデータはDNA転写アクチベーターである既知のステロイドレセプターと一致するであろう。
【0132】
GFP−DASppトランスロケーション誘発についてのスクリーニング。指示細胞系としてのGFP−DASppの適切な発現が確証された上記の構造体を用いて、下記を含むがこれらに限定されない一連のステロイド型リガンドを使用して様々なリガンドのスクリーニングが実施される:エストロゲン、黄体ホルモン、レチノイド、成長因子、男性ホルモン、及びその他多数のステロイド及びステロイドに基づく分子。画像の収集及び解析は、本発明の細胞スクリーニングシステムを用いて実施する。細胞内GFP−DASpp蛍光シグナルは細胞の視野から対の蛍光画像(GFP−DASpp及びHoechst 33342−標識核)を獲得することによって収集する。それぞれの回で得られた対の画像は、各細胞における核と細胞質を定義するのに使われる。GFP−DASppのトランスロケーションは、GFP蛍光の違いとしてまたは核−細胞質においてキメラの一体化されら蛍光により核の中のGFP−DASppの一体化された蛍光強度により二分されることによって計算される。細胞質から核内へのトランスロケーションは、DASppのリガンド結合活性化を示す、従って電位レセプターのクラス及び作用を識別する。このデータと同様の方法でステロイドレセプターの既知のインヒビター及びモディファイアー(修飾物質)を用いて入手した他のデータを結合すると、ターゲットとしてのDASppの妥当性を確認するか、又は様々な入手源からより多くのデータが生成されるであろう。
【0133】
実施例9. 追加のスクリーニング
細胞質膜と細胞質との間のトランスロケーション:
プロフィラクチン複合体解離及び細胞質膜へのプロフィリンの結合。ある実施態様では、プロフィリン膜結合の蛍光タンパク質バイオセンサーが2〜300nsの範囲内の蛍光寿命を持つプローブを用いて精製プロフィリンを標識することによって調製される(Federov et al.,(1994), J. Molec. Biol. 241:480−482; Lanbrechts et al.,(1995), Eur. J. Biochem. 230:281−285)。バルクローディング法を用いて標識プロフィリンが生きている指示細胞内へ導入され、その指示細胞が試験化合物を用いて処理される。蛍光異方性イメージング顕微鏡(Gough and Taylor,(1993), J. Cell Biol. 121:1095−1107)を使用して処理後0.1s〜10hの範囲の時間に渡って細胞質と細胞質膜の間のプロフィリンの蛍光誘導体の試験化合物依存性移動が測定される。
【0134】
細胞質膜へのRho−RhoGDI複合体のトランスロケーション。もう1つの実施態様では、試験化合物を用いて指示細胞が処理され、その後固定され、洗浄され、浸透させられる。指示細胞質膜、細胞質及び核をすべて明確に相違する着色マーカーを用いて標識され、その後に4色で標識した抗体を用いてRhoタンパク質の免疫位置決定法(immunolocalization)(Self et al.,(1995), Methods in Enzymology 256:3−10; Tanaka et al.,(1995), Methods in Enzymology 256:41−49)が実施される。細胞スクリーニングシステムを用いて4つの標識各々が個別に画像描出され、その後それらの画像を使用して試験化合物による影響を受けたトランスロケーションの阻害又は活性化の量が計算される。この計算を行うために、細胞質膜及び細胞質をマークするために使用するプローブの画像を用いて、細胞内Rhoタンパク質の位置をマーキングして免疫学的プローブの画像がマスキングされる。
各マスク下の単位面積当たりの統合輝度を使用して、細胞質膜統合輝度/面積を細胞質統合輝度/面積で割ることによってトランスロケーション指数が形成される。コントロール及び実験ウエルからのトランスロケーション指数値を比較することによって、各潜在的最重要化合物についてトランスロケーション率が計算される。
【0135】
Gタンパク質レセプター活性化に基づくβ−アレスチンの細胞質膜へのトランスロケーション
細胞質から細胞質膜へのトランスロケーションに関する高含量スクリーニングのもう1つの実施態様では、細胞質から細胞質膜へのβ−アレスチンタンパク質のトランスロケーションが細胞処理への応答において測定される。トランスロケーションを測定するために、蛍光ドメインマーカーを含有する生きている指示細胞が試験化合物を用いて処理され、本発明の細胞スクリーニングシステムを使用して時間及び空間におけるβ−アレスチンマーカーの移動が測定される。ある好ましい実施態様では、指示細胞は一過性若しくは安定性細胞トランスフェクション、及び細胞質及び細胞質膜ドメインをマークするために使用する他のレポーターの使用を通して指示細胞によって発現する緑色蛍光タンパク質−β−アレスチン(GFP−β−アレスチン)タンパク質キメラ(Barak et al., (1997), J. Biol. Chem. 272:27497−27500; Daaka et al.,(1998), J. Biol. Chem. 273:685−68)から構成される蛍光マーカーを含んでいる。
指示細胞が静止状態にあるときは、ドメインマーカー分子は主として細胞質膜又は細胞質に分配している。高含量スクリーニングでは、これらのマーカーを使用して別個の蛍光チャンネルにおいて細胞質及び細胞質膜が描出される。指示細胞が試験化合物で処理されている場合は、GFP−β−アレスチンの動的再分布が0.1s〜10hに及ぶタイムスケールに渡って一連の画像として記録される。
好ましい実施態様では、タイムスケールは1hである。各画像は細胞質膜と細胞質の間でGFP−β−アレスチンタンパク質キメラの移動を定量する方法によって解析される。この計算を行うために、細胞質膜及び細胞質をマークするために使用するプローブの画像を用いて、細胞内GFP−β−アレスチンタンパク質の位置をマーキングしてGFP−β−アレスチンプローブの画像がマスキングされる。各マスク下の単位面積当たりの統合輝度を使用して、細胞質膜統合輝度/面積を細胞質統合輝度/面積で割ることによってトランスロケーション指数が形成される。コントロール及び実験ウエルからのトランスロケーション指数値を比較することによって、各潜在的最重要化合物についてトランスロケーション率が計算される。高含量スクリーニングの出力は、重要な試験化合物を用いて処理されている非常に多数の個々の細胞内のトランスロケーションの大きさを記述する定量的データに関連する。
【0136】
小胞体とゴルジ体の間のトランスロケーション:
小胞体からゴルジ体への間のトランスロケーションに関する高含量スクリーニングのある実施態様では、水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus)のts045ミュータント株からのVSVGタンパク質(Ellenberg et al.,(1997), J. Cell. Biol. 138:1193−1206; Presley et al.,(1997), Nature 398:81−85)における小胞体からゴルジ体ドメインへのトランスロケーションが細胞処理への応答において測定される。トランスロケーションを測定するためには、蛍光レポーターを含有する指示細胞が試験化合物を用いて処理され、本発明の細胞スクリーニングシステムを使用して時間及び空間におけるレポーターの移動が測定される。指示細胞は一過性若しくは安定性細胞トランスフェクション、及び小胞体及びゴルジ体ドメインの所在位置を測定するために使用する他のドメインマーカーの使用を通して指示細胞によって発現するGFP−VSVGタンパク質キメラから構成される蛍光レポーターを含んでいる。指示細胞が40℃で静止状態にあるときは、GFP−VSVGタンパク質キメラ分子は主として小胞体に分配している。この高含量スクリーニングでは、別個の蛍光チャンネルにおいて小胞体及びゴルジ体を描出するために別個の色のドメインマーカーが使用される。指示細胞が試験化合物で処理されており、温度が同時に32℃へ下げられた場合は、GFP−VSVGタンパク質キメラの動的再分布が0.1s〜10hに及ぶタイムスケールに渡って一連の画像として記録される。各画像は小胞体及びゴルジ体ドメインの間でGFP−VSVGタンパク質キメラの移動を定量する方法によって解析される。この計算を行うために、小胞体及びゴルジ体ドメインをマークするために使用するプローブの画像を用いて、細胞内GFP−VSVGタンパク質の位置をマーキングしてGFP−VSVGプローブの画像がマスキングされる。各マスク下の単位面積当たりの統合輝度を使用して、細胞質膜統合輝度/面積を細胞質統合輝度/面積で割ることによってトランスロケーション指数を形成する。コントロール及び実験ウエルからのトランスロケーション指数値を比較することによって、各潜在的最重要化合物についてトランスロケーション率が計算される。高含量スクリーニングの出力は、1min〜10hに及ぶ時間に10−12〜10−3の範囲内の最終濃度で重要な試験化合物を用いて処理されている非常に多数の個々の細胞内のトランスロケーションの大きさを記述する定量的データに関連する。
【0137】
オルガネラ機能の誘発及び阻害:
細胞内微小管安定性。オルガネラ機能に関する高含量スクリーニングのある実施態様では、細胞内微小管のアッセンブリー状態が細胞処理に対する応答において測定される。微小管アッセンブリー状態を測定するためには、蛍光レポーターを含有する指示細胞が試験化合物によって処理され、本発明の細胞スクリーニングシステムを用いて空間及び時間においてそのレポーターの分布が測定される。
【0138】
ある好ましい実施態様では、細胞内微小管アッセンブリーのレポーターは、細胞分裂間期中及び有糸分裂細胞中の微小管と相互作用することが知られている遍在性微小管関連タンパク質であるMAP4(Bulinski et al.,(1997), J. Cell Science 110:3055−3064)である。指示細胞は一過性若しくは安定性細胞トランスフェクション、及び細胞質及び細胞質膜成分の所在位置を測定するために使用する他のドメインマーカーの使用を通して指示細胞によって発現するGFP−MAP4キメラから構成される蛍光レポーターを含んでいる。GFP−MAP4構造体は次のように調製される:制限酵素部位を導入するためにプライマーを用いて天然又はミュータントGFP分子のPCR増幅が実行される。PCR生成物は真核生物発現ベクター内のMAP4 cDNA内に連結される。その後発現ベクターを用いて指示細胞をトランスフェクトして一過性又は安定性にトランスフェクトされた指示細胞を産生させる。
【0139】
指示細胞は1min〜10hに及ぶ時間に渡って10−12Mから10−3Mの範囲内の最終濃度の試験化合物を用いて処理される。各及び細胞質をマークするために標識試薬を含有する増殖培地が添加される。インキュベーション後、細胞はハンクス液(HBSS)によって洗浄され、室温で10分間かけて3.7%ホルムアルデヒドを用いて固定され、洗浄してHBSS中に保存される。
【0140】
画像データは固定した、及び生きている指示細胞の両方から入手する。入手した各画像からの形態計測データを引き出すために、下記の解析方法を使用する: 1. 核及び細胞境界の外側で各ピクセルに対して=0の数値を有するマスクを作成するために各核及び細胞質画像の閾値を算定する。
【0141】
2. オリジナル画像上にマスクをオーバレイさせ、視野における各対象物(即ち、核又は細胞)を検出し、さらにそのサイズ、形状、及び統合強度を計算する。
【0142】
3. 上記で入手した全細胞マスクを対応するGFP−MAP4画像上にオーバーレイさせ、エッジ強さルーチンの自動測定法(Kolega et al.,(1993), BioImaging 1:136−150)を用いて各細胞内の総エッジ強さを計算する。細胞サイズについて標準化するために、総エッジ強さを細胞面積で割って“線維性(fibrousness)”値を得る。大きな線維性値は強度のエッジ強さ値と関連しており、このため明確な微小管構造を含有する細胞において最大になる。同様に、小さな線維性値は弱いエッジ強さ値と関連しており、解重合した微小管を含有する細胞において最小となる。線維性値の生理学的範囲は、微小管を安定させる薬物であるパクリタクセル(10μM)又は微小管を解重合させる薬物であるノコダゾール(10μg/ml)のどちらかを用いて細胞を処理することによって設定する。
【0143】
高分子の機能的位置決定を含む高含量スクリーニング
このクラスの高含量スクリーンの範囲内で、外部刺激に応答する高分子の機能的位置が生きている細胞内で測定される。
【0144】
糖分解酵素活性の調節。細胞酵素活性に関する高含量スクリーニングの好ましい実施態様では、処理された細胞において重要な糖分解調節酵素の活性が測定される。酵素活性を測定するためには、蛍光標識試薬を含有する指示細胞が試験化合物を用いて処理され、本発明の細胞スクリーニングシステムを用いてレポーターの活性が空間及び時間的に測定される。
【0145】
ある実施態様では、細胞内酵素活性のレポーターは、そのリン酸化状態が細胞内炭水化物同化作用又は異化作用を示す調節酵素であるフルクトース−6−リン酸、2−キナーゼ/フルクトース−2,6−ビスホスファターゼ(PFK−2)である(Deprez et al.,(1997), J.Biol. Chem. 272:17269−17275; Kealer et al.,(1996), FEBS Letters 395:225−2; Lee et al.,(1996), Biochemistry 35:6010−6019)。指示細胞は、PFK−2リン酸化の蛍光タンパク質バイオセンサーから構成される蛍光レポーターを含有している。蛍光タンパク質バイオセンサーは、この酵素の既知のリン酸化部位の近くへ環境的に高感受性蛍光色素を導入することによって構成される(Deprez et al.,(1997),上記; Giuliano et al.,(1995),上記)。色素はケトシアニンクラス(Kessler and Wolfbeis,(1991),Spectrochimica Acta 47A:187−192)又はタンパク質反応性部分とその励起若しくは放射スペクトルが溶液極性に対して感受性である蛍光色素とを含有するいずれかのクラスの色素であってよい。蛍光タンパク質バイオセンサーは、バルクローディング法を用いて指示細胞内に導入される。
【0146】
生きている指示細胞は1min〜10hに及ぶ時間に渡って10−12Mから10−3Mの範囲内の最終濃度の試験化合物を用いて処理される。ある好ましい実施態様では、各時点での対の蛍光スペクトル画像を収集することによって処理した生きている指示細胞から比率画像データが入手される。各時点から形態計測データを引き出すために、各対の画像間で各時点の2枚のスペクトル画像をピクセル毎に数的に分けることによって比率が計算される。その後、各ピクセル値を使用してPFK−2の部分リン酸化が計算される。リン酸化の部分値が小さい場合は、PFK−2は炭水化物異化作用を刺激する。リン酸化の部分値が高い場合は、PFK−2は炭水化物同化作用を刺激する。
【0147】
プロテインキナーゼA活性及びサブユニットの位置決定。高含量スクリーニングのもう1つの実施態様では、指示細胞内のドメインの位置決定及びプロテインキナーゼA(PKA)の活性の両方が試験化合物による処理に対する応答において測定される。
【0148】
指示細胞は、PKA活性化の蛍光タンパク質バイオセンサーを含有する蛍光レポーターを含んでいる。蛍光タンパク質バイオセンサーは、PKAの調節サブユニットと相互作用することが知られている部位の近くのPKAの触媒性サブユニット内に環境的に高感受性蛍光色素を導入することによって構成される(Harootunian et al.,(1993), Mol. Bil. of the Cell 4:993−1002; Johnson et al.,(1996), Cell 85:149−158; Giuliano et al.,(1995)上記)。色素はケトシアニンクラス(Kessler and Wolfbeis,(1991),Spectrochimica Acta 47A:187−192)又はタンパク質反応性部分とその励起若しくは放射スペクトルが溶液極性に対して感受性である蛍光色素とを含有するいずれかのクラスの色素であってよい。PKA活性化の蛍光タンパク質バイオセンサーは、バルクローディング法を用いて指示細胞内に導入される。
【0149】
ある実施態様では、生きている指示細胞が0.1s〜10hに及ぶ時間に渡って10−12Mから10−3Mの範囲内の最終濃度の試験化合物を用いて処理される。ある好ましい実施態様では、処理した生きている指示細胞から比率画像データが入手される。各時点から形態計測データを引き出すために、各対の画像間で比率が出され、さらに各ピクセル値を使用してPKAの部分活性化が計算される(例、cAMP結合後の触媒及び調節サブユニットの分離)。活性の部分値が高い場合は、PKAは生きている細胞内の生化学的カスケードを刺激する。
【0150】
PKAの触媒サブユニットのトランスロケーションを測定するためには、蛍光レポーターを含有する指示細胞が試験化合物を用いて処理され、細胞スクリーニングシステムを使用して時間及び空間におけるレポーターの移動が測定される。
指示細胞は、細胞質及び核ドメインの所在位置を測定するために使用するドメインマーカーから構成される蛍光レポーターを含んでいる。指示細胞が試験化合物で処理されているときは、PKA蛍光タンパク質バイオセンサーの動的再分布が0.1s〜10hに及ぶタイムスケールに渡って一連の画像として記録される。
各画像は細胞質及び核ドメインの間でPKAの移動を定量する方法によって解析される。この計算を行うために、細胞質及び核ドメインをマークするために使用するプローブの画像を用いて、PKA蛍光タンパク質バイオセンサーの画像をマスキングされる。各マスク下の単位面積当たりの統合輝度を使用して、細胞質膜統合輝度/面積を細胞質統合輝度/面積で割ることによってトランスロケーション指数が形成される。コントロール及び実験ウエルからのトランスロケーション指数値を比較することによって、各潜在的最重要化合物についてトランスロケーション率が計算される。高含量スクリーニングの出力は、1min〜10hに及ぶ時間に10−12〜10−3の範囲内の最終濃度で試験化合物によって処理されている非常に多数の個々の細胞内のトランスロケーションの大きさを記述する定量的データに関連する。
【0151】
遺伝子発現の誘発又は阻害に関する高含量スクリーニング
RNAに基づく蛍光バイオセンサー
細胞骨格タンパク質転写及びメッセージの位置決定。細胞−基質付着、細胞−細胞付着、シグナルトランスダクション、細胞−周期イベント、中間及びシグナル分子代謝、細胞移動、細胞−細胞連絡、及び細胞死を含む細胞の一般的クラスの生理学的応答の調節には遺伝子発現の変化が含まれることがある。高含量スクリーニングは又、このクラスの生理学的応答を測定するようにデザインできる。
【0152】
ある実施態様では、細胞内遺伝子発現のレポーターは、ターゲットmRNAを用いてハイブリダイズでき、その蛍光シグナルを変化させることのできるオリゴヌクレオチドである。ある好ましい実施態様では、オリゴヌクレオチドはその蛍光シグナルが分子間及び分子内相互作用に依存する蛍光に基づく試薬である分子標識である(Tyagi and Kramer,(1996),Nat. Biotech. Biotechnol. 14:303−308)。蛍光バイオセンサーは、試薬の各末端(5 及び3 )に1つが所在するように蛍光色素の蛍光エネルギー移行対を導入することによって構成される。色素は、フルオレセイン及びローダミン(Molecular Probes, Inc.)を含むがそれらに限定されない、その励起及び放射スペクトルが静止状態において色素間で蛍光エネルギー移行を生じさせるために十分な程度重複しているタンパク質反応性部分及び蛍光色素を含有しているあらゆるクラスの色素であってよい。ある好ましい実施態様では、β−アクチンをコードするメッセージの一部分(Kislauskis et al.,(1994), J. Cell Biol. 127:441−451; McCann et al.,(1997), Proc. Natl. Acad. Sci. 94:5679−5684; Sutoh,(1982),Biochemistry 21:3654−3661)を分子内ハイブリダイゼーションのために一緒に拘束された末端を持つヘアピン形オリゴヌクレオチドのループ領域内に挿入する。バイオセンサーの各末端では、蛍光供与体(フルオレセイン)及び蛍光受容体(ローダミン)が共有的に結合している拘束状態では、蛍光エネルギー移行が最大であるので、このためハイブリダイズされていない分子の指標である。β−アクチンをコードするmRNAを用いてハイブリダイズすると、拘束が破かれ、エネルギー移行が消失する。完全な蛍光バイオセンサーは、バルクローディング法を使用して指示細胞内に導入する。
【0153】
ある実施態様では、生きている指示細胞が0.1s〜10hに及ぶ時間に渡って10−12Mから10−3Mの範囲内の最終濃度の試験化合物を用いて処理される。ある好ましい実施態様では、処理した生きている指示細胞から比率画像データが入手される。各時点から形態計測データを引き出すために、各対の画像間で比率が出され、さらに各ピクセル値を使用して標識ヌクレオチドの部分ハイブリダイゼーションが計算される。ハイブリダイゼーションの部分値が低い場合は、β−アクチンの発現がほとんどないことが指示される。ハイブリダイゼーションの部分値が高い場合は、β−アクチンの発現が最大であることが指示される。
さらに、指示細胞の細胞質内のハイブリダイズされた分子の分布も又指示細胞の生理学的応答の尺度である。
【0154】
リガンドの細胞表面結合
生きている細胞における標識インスリンの細胞表面レセプターへの結合。細胞質膜ドメインが特定色の標識試薬で標識されている細胞が相違する色の蛍光プローブを用いて標識されているインスリン分子を含有している溶液(Lee et al.,(1997), Biochemistry 36:2701−2708; Martinez−Zaguilan et al.,(1996), Am. J. Physiol. 270:C1438−C1446)と一緒に適切な条件下で適切な時間をかけてインキュベートされる。インキュベーション後、未結合インスリン分子が洗い流され、細胞が固定され、細胞質膜上のインスリンの分布及び濃度が測定される。これを行うために、細胞膜画像がインスリン画像に対するマスクとして使用される。マスキングされたインスリン画像からの統合強度が既知量の標識インスリンを含有する1セットの画像と比較される。
細胞に結合したインスリンの量が標準から測定され、これを細胞と一緒にインキュベートしたインスリンの総濃度と一緒に使用して解離定数又はその細胞表面レセプターへ結合したインスリンが計算される。
【0155】
細胞区画の標識
細胞全体の標識
全細胞標識は、細胞形状の動態及び細胞の運動性を経時的に細胞の蛍光画像を解析することによって測定できるように細胞成分を標識することによって遂行される。
【0156】
ある実施態様では、反応性蛍光小分子が生きている細胞内に導入される。これらの膜透過性分子は細胞質膜のタンパク質成分を通過して拡散するが、タンパク質成分と反応もする。色素分子は細胞内分子と反応して各分子から放出される蛍光シグナルを増加させ、さらに生きている細胞内に蛍光色素をエントラップする。これらの分子にはアミノクマリン、ヒドロキシクマリン、エオシンジアセテート、フルオレセインジアセテート、一部のBodipy色素誘導体及びテトラメチルローダミンの反応性クロロメチル誘導体が含まれる。高分子に対するこれらの色素の反応性には遊離一次アミノ酸基及び遊離スルフヒドリル基が含まれる。
【0157】
もう1つの実施態様では、細胞表面上の分子と特異的に反応する蛍光標識された抗体類若しくはレクチン類(Sigma Chemical Company、セントルイス、ミズーリ州)と細胞とを相互作用させることによって細胞表面が標識される。緑色蛍光タンパク質、又はそのミュータントの成分を含有する重要な細胞によって発現した細胞表面タンパク質キメラも又全細胞表面を蛍光標識するために使用することができる。全細胞が標識されると、全細胞又は細胞の配列の画像は、細胞形状の測定、運動性、サイズ、及び増殖と分割を含む高含量スクリーニングにおけるパラメーターとなることができる。
【0158】
細胞質膜標識
ある実施態様では、全細胞質膜の標識には全細胞を標識するための上記と同一の方法の一部が使用される。全細胞表面を標識する発光分子は、細胞質膜を描出するように作用する。
【0159】
第二の実施態様では、細胞質膜のサブドメイン、細胞外表面、脂質二重層、及び細胞内表面を個別に標識することができ、これらを高含量スクリーニングの成分として使用できる。第一の実施態様では、細胞外表面は例えばフルオレセイン類、ローダミン類、シアニン類及びBodipy類のような蛍光色素のスクシニミジルエステル又はヨードアセタミド誘導体類のような反応性蛍光分子を用いる簡単な処理を使用して標識される。
【0160】
第三の実施態様では、細胞表面分子に対して高親和性を有する蛍光標識高分子を用いて細胞外表面が標識される。これらには例えばタチナタマメ(Jack bean)(ConA)、アカインゲンマメ(red kidney bean)(PHA−E)、又は小麦胚芽(wheat germ)に由来するレクチン類のフルオレセイン、ローダミン、及びシアニン誘導体類のような蛍光標識レクチン類が含まれる。
【0161】
第四の実施態様では、細胞質膜の細胞外領域を標識するために、細胞表面成分に対して高親和性を有する蛍光標識抗体類が用いられる。細胞表面レセプター及びイオンチャンネルの細胞外領域は、抗体類を用いて標識できるタンパク質の例である。
【0162】
第五の実施態様では、蛍光分子を用いて細胞質膜の脂質二重層が標識される。
これらの分子には細胞質膜脂質二重層の中心で疎水性領域と強力に相互作用する長鎖疎水性分子に付着した蛍光色素が含まれる。これらの色素の例には、PKHシリーズの色素(米国特許第4,783,401号、第4,762,791号、及び第4,859,584号; Sigma Chemical Company、セントルイス、ミズーリ州から市販で入手可能)、例えばニトロベンゾキサジアゾールグリセロホスホエタノールアミン及びフルオレセイン誘導ジヘキサデアノイルグリセロホスホエタノールアミンのような蛍光リン脂質類、例えば5−ブチル−4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ノナン酸及び1−ピレンデカン酸(Molecular Probes, Inc.)のような蛍光脂肪酸、コレステリル4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノエート及びコレステリル1−ピレンヘキサノエートを含む蛍光ステロール類、及び例えばアネキシンVのフルオレセイン誘導体(Caltag Antibody Co,Burlingame,カリフォルニア州)のような脂質二重層成分と特異的に相互作用する蛍光標識タンパク質類が含まれる。
【0163】
もう1つの実施態様では、蛍光分子を用いて細胞質膜の細胞内成分が標識される。これらの分子の例は、三量体Gタンパク質レセプター、アデニルシクラーゼ、及びイオン輸送タンパク質類の細胞内成分である。これらの分子は蛍光標識特異抗体への緊密な結合の結果として、又は膜関連タンパク質及び緑色蛍光タンパク質から構成される蛍光タンパク質キメラ及びそのミュータント類の取り込みによって標識できる。
【0164】
エンドソームの蛍光標識
ある実施態様では、レセプター媒介性エンドサイトーシスによって細胞内に輸送されるリガンドを使用してエンドソームオルガネラの動態が追跡される。標識リガンドの例には、Bodipy FL標識低密度リポタンパク質複合体類、テトラメチルローダミントランスフェリンアナログ類、及び蛍光標識上皮細胞成長因子(Molecular Probes, Inc.)が含まれる。
【0165】
第二の実施態様では、細胞内のエンドソーム区画をマークするためにエンドソームリガンドを特異的に標識する蛍光標識第一又は第二抗体類(Sigma Chemical Co,セントルイス、ミズーリ州; Molecular Probes, Inc.,ユージーン、オレゴン州; Caltag Antibody CO.)が使用される
第三の実施態様では、緑色蛍光タンパク質、又はそのミュータントをそのインターナリゼーションがエンドソームを標識するレセプターと融合させることによって、形成されたタンパク質キメラを発現している細胞内で蛍光標識する。EGF、トランスフェリン、及び低密度リポタンパク質受容体のキメラがこれらの分子の例である。
【0166】
リソソームの標識
ある実施態様では生きている細胞及び固定化細胞のリソソーム区画を標識するために膜透過性リソソーム特異的蛍光試薬が使用される。これらの試薬には、蛍光分子ニュートラルレッド、N−(3−((2,4−ジニトロフェニル)アミノ)プロピル)−N−(3−アミノプロピル)メチルアミン、及びリソソーム内pH並びにリソソームの動的分布を報告するLysoTrackerプローブ(Molecular Probes, Inc.)が含まれる。
【0167】
第二の実施態様では、特異的リソソームドメインに局在するリソソーム成分を標識するためにリソソーム抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)が使用される。これらの成分の例は、コレステロールエステル化水分解に含まれる分解酵素、膜タンパク質プロテアーゼ類、及びヌクレアーゼ類並びにATP駆動リソソームプロトンポンプである。
【0168】
第三の実施態様では、リソソームドメインを標識するためには、例えば緑色蛍光タンパク質又はそのミュータントのような内因的発光タンパク質に遺伝的に融合したリソソームタンパク質から構成されるタンパク質キメラが使用される。これらの成分の例は、コレステロールエステル化水分解に含まれる分解酵素、膜タンパク質プロテアーゼ類、及びヌクレアーゼ類並びにATP駆動リソソームプロトンポンプである。
【0169】
細胞質蛍光標識
ある実施態様では、反応基を備えた細胞透過性蛍光色素(Molecular Probes, Inc.)を生きている細胞と反応させる。モノブロモビマン、5−クロロメチルフルオロセインジアセテート、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシニミジルエステル、及びクロロメチルテトラメチルローダミンを含む反応性色素は、細胞の細胞質を長期標識するために使用される細胞透過性蛍光色素の例である。
【0170】
第二の実施態様では、バルクローディング法を使用して例えばLuciferイエローのような極性トレーサー分子及びカスケードブルーに基づく蛍光色素(Molecular Probes, Inc.)を細胞内に導入され、さらに細胞質標識にも使用される。
【0171】
第三の実施態様では、細胞質成分に対する抗体類(Sigma Chmical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して細胞質が蛍光標識される。細胞質抗原の例は、中間代謝に含まれる多数の酵素である。エノラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、及びアセチル−CoAデヒドロゲナーゼが均一に分布した細胞質抗原の例である。
【0172】
第四の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合している細胞質タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用して細胞質が標識される。均一に分布したタンパク質の蛍光キメラは、全細胞質ドメインを標識するために使用される。これらのタンパク質の例は、中間代謝に含まれる多数のタンパク質であり、エノラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、及びヘキソキナーゼが含まれる。
【0173】
第五の実施態様では、細胞質抗原に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的細胞質サブドメインに所在する細胞質成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、細胞骨格タンパク質類のアクチン、チューブリン、及びサイトケラチンである。細胞内のこれらのタンパク質の集団は、この場合は線維状である別個の構造に組み立てられる。このため抗体に基づく試薬によるこれらのタンパク質の蛍光標識は細胞質の特異的サブドメインが標識される。
【0174】
第六の実施態様では、細胞質タンパク質と強力に相互作用する抗体をベースとしない蛍光標識分子を使用して特異的細胞質成分が標識される。ある実施例は酵素DNAse I(Molecular Probes, Inc.)の蛍光アナログである。この酵素の蛍光アナログは細胞質アクチンに緊密及び特異的に結合するので、細胞質のサブドメインが標識される。もう1つの実施例では、キノコの毒素でアルファロイジン又は薬物パクリタクセル(Molecular Probes, Inc.)の蛍光アナログを使用して各々アクチン−及び微小管−細胞骨格の成分が標識される。
【0175】
第七の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合している細胞質タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用して細胞質の特異的ドメインが標識される。高度に局在性のタンパク質の蛍光キメラは細胞質サブドメインを標識するために使用される。これらのタンパク質の例は、細胞骨格を調節することに関係する多数のタンパク質である。それらには構造タンパク質であるアクチン、チューブリン、及びサイトケラチン並びに調節タンパク質である微小管関連性タンパク質4及びα−アクチニンが含まれる。
【0176】
核の標識
ある実施態様では、膜透過性核酸特異的蛍光試薬(Molecular Probes, Inc.)を使用して生きている細胞及び固定化細胞の核が標識される。これらの試薬には、シアニンに基づく色素(例、TOTO( )、YOYO( )、及びBOBO( ))、フェナンチジン類及びアクリジン類(例、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、及びアクリジンオレンジ)、インドール類及びイミダゾール類(例、Hoechst 33258、Hoechst 33342、及び4 ,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)及びその他の類似の試薬類(例、7−アミノアクチノマイシンD、ヒドロキシスチルバミジン、及びソラレン類)が含まれる。
【0177】
第二の実施態様では、核抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的核ドメインに所在する核成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、DNAの構造及び機能を維持することに関係する高分子類である。DNA、RNA、ヒストン類、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、ラミン類、及び例えばアクチンのような細胞質タンパク質の核変種が核抗原類の例である。
【0178】
第三の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合している核タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用して核ドメインが標識される。これらのタンパク質の例は、DNAの構造及び機能を維持することに関係する多数のタンパク質である。ヒストン類、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、ラミン類、及び例えばアクチンのような細胞質タンパク質の核変種が核タンパク質の例である。
【0179】
ミトコンドリアの標識
ある実施態様では、膜透過性ミトコンドリア特異的蛍光試薬(Molecular Probes, Inc.)を使用して生きている細胞及び固定化細胞のミトコンドリアが標識される。これらの試薬には、ローダミン123、テトラメチルロザミン、JC−1、及びMitoTracker反応性色素が含まれる。
【0180】
第二の実施態様では、ミトコンドリア抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的ミトコンドリアドメインに所在するミトコンドリア成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、DNAの構造及び機能を維持することに関係する高分子類である。DNA、RNA、ヒストン類、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、及び例えばミトコンドリアtRNA及びrRNAのような細胞質高分子のミトコンドリア変種がミトコンドリア抗原類の例である。ミトコンドリア抗原のその他の例には、ミトコンドリアにおいて所見される酸化的リン酸化系の成分(例、シトクロムc、シトクロムcオキシダーゼ、及びコハク酸デヒドロゲナーゼ)である。
【0181】
第三の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合しているミトコンドリアタンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用してミトコンドリアドメインが標識される。
これらのタンパク質の例は、DNAの構造及び機能を維持することに関係する多数のタンパク質である。その例には、ヒストン類、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、及び例えばミトコンドリアにおいて所見される酸化的リン酸化系の成分(例、シトクロムc、シトクロムcオキシダーゼ、及びコハク酸デヒドロゲナーゼ)が含まれる。
【0182】
小胞体の標識
ある実施態様では、膜透過性小胞体特異的蛍光試薬(Molecular Probes, Inc.)を使用して生きている細胞及び固定化細胞の小胞体が標識される。これらの試薬には、短鎖カルボシアニン色素(例、DiOC6及びDiOCO3)、長鎖カルボシアニン色素(例、DiIC16及びDiIC18)、及び例えばコンカナバリンAのような蛍光標識レクチン類が含まれる。
【0183】
第二の実施態様では、小胞体抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的小胞体ドメインに所在する小胞体成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、脂肪酸伸長系、グルコース−6−ホスファターゼ、及びHMG CoA−レダクターゼに含まれる高分子類である。
【0184】
第三の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合している小胞体タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用して小胞体ドメインが標識される。これらのタンパク質の例は、脂肪酸伸長系、グルコース−6−ホスファターゼ、及びHMG CoA−レダクターゼに含まれる高分子類である。
【0185】
ゴルジ体の標識
ある実施態様では、膜透過性ゴルジ体特異的蛍光試薬(Molecular Probes, Inc.)を使用して生きている細胞及び固定化細胞のゴルジ体が標識される。これらの試薬には、例えば小麦胚芽アグルチニン及びBrefeljin Aのような蛍光標識高分子並びに蛍光標識セラミドが含まれる。
【0186】
第二の実施態様では、ゴルジ体抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的ゴルジ体ドメインに所在するゴルジ体成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、N−アセチルグルコサミンホスホトランスフェラーゼ、ゴルジ体特異的ホスホジエステラーゼ、及びマンノース−6−リン酸レセプタータンパク質である。
【0187】
第三の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合しているゴルジ体タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用してゴルジ体ドメインが標識される。これらの成分の例は、N−アセチルグルコサミンホスホトランスフェラーゼ、ゴルジ体特異的ホスホジエステラーゼ、及びマンノース−6−リン酸レセプタータンパク質である。
【0188】
ここに提示した多数の実施例は単一細胞プロセスの測定を含んでいるが、これも又例示だけが目的であることが意図されている。多重パラメーター高含量スクリーニングは、数種の単一パラメータースクリーニングを多重高含量スクリーニングに結合することによって、又は細胞パラメーターをいずれかの現行高含量スクリーニングへ追加することによって作り出すことができる。さらに、各実施例は生きている細胞又は固定化細胞のどちらかに基づいているように記載されているが、各高含量スクリーニングは生きている細胞及び固定化細胞の両方と一緒に使用するようにデザインすることができる。
【0189】
当業者であれば、ここに提供した開示に基づき広く多様な別個のスクリーニングを開発できることは認識できるであろう。細胞内の特定成分のトランスロケーション又は再組織化を含む細胞内の既知の生化学的及び分子プロセスに関する広大なリストがあり、このリストは増え続けている。細胞表面から細胞内のターゲット部位へのシグナル経路は細胞質膜関連タンパク質から細胞質へのトランスロケーションを含んでいる。例えば、タンパク質チロシンキナーゼのsrcファミリーの1つであるpp60c−src(Walker et al.,(1993), J. Biol. Chem. 268:19552−19558)は血小板由来成長因子(PDGF)により線維芽細胞が刺激を受けると細胞質膜から細胞質へトランスロケートすることが知られている。さらに、スクリーニングのターゲット自体をリガンド結合及びトランスロケーション後修飾を含む分子変化を報告する蛍光に基づく試薬に転換することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】図1は、細胞に基づくスキャニングシステムの構成要素の図である。
【図2】図2は、顕微鏡の小組立体の略図である。
【図3】図3は、カメラの小組立体の略図である。
【図4】図4は、細胞スキャニングシステムのプロセスを図解している。
【図5】図5は、ユーザーを誘導するための主要な機能を示しているユーザーインターフェースを図解している。
【図6】図6は、1つのプラットフォームがマイクロタイタープレートのすべてのウエルを読み取るための望遠鏡レンズを使用し、第2のプラットフォームが1ウエル内の個々の細胞を読み取るためにより高倍率のレンズを使用する、細胞に基づくスクリーニングのためのデュアルモードシステムの2プラットフォーム式アーキテクチャーのブロック図である。
【図7】図7は、マイクロタイタープレートのすべてのウエルを読み取るための可動式望遠鏡レンズ及び1ウエル内の個々の細胞を読み取るための可動式のより高倍率のレンズを使用する、細胞に基づくスクリーニングのためのデュアルモードシステムの単一プラットフォームアーキテクチャーのための光学系の詳細である。
【図8】図8は、細胞に基づくスクリーニングシステム上の動態データを収集するための液体分注システムの図である。
【図9】図9は、細胞に基づくスキャニングシステムにおける処理工程の工程系統図である。
【図10】図10のA〜Jは、核トランスロケーションアッセイの戦術を図解している。
【図11】図11は、マイクロタイタープレートの高スループットスクリーニングと高含量スクリーニングとを組み合わせた細胞に基づくスクリーニングのためのデュアルモードシステムにおける処理工程を定義した工程系統図である。
【図12】図12は、細胞に基づくスクリーニングのためのシステムの高スループットモードにおける処理工程を定義した工程系統図である。
【図13】図13は、細胞に基づくスクリーニングのためのシステムの高含量モードにおける処理工程を定義した工程系統図である。
【図14】図14は、細胞に基づくスクリーニングのためのシステムの高含量モードにおいて動態データを収集するために必要とされる処理工程を定義した工程系統図である。
【図15】図15は、動態データの収集中に1ウエル内で実行される処理工程を定義した工程系統図である。
【図16】図16は、既知のトランスロケーションのインヒビター(阻害物質)からのデータの例である。
【図17】図17は、既知のトランスロケーションのスティミュレーター(促進物質)からのデータの例である。
【図18】図18は、グラフ表示に関するデータ提示を図解している。
【図19】図19は、細胞に基づくスクリーニングのためのシステムの高スループットモードからのデータ、高含量モードへ通過したデータ、高含量モードで収集されたデータ、及びそのデータの解析結果の例の図解である。
【図20】図20は、細胞質からの薬物誘発性の核トランスロケーションの測定を示している。
【図21】図21は、図20に示された測定のグラフィカルユーザーインターフェースを図解している。
【図22】図22は、図20に示された測定のデータ提示とともにグラフィカルグラフィカルユーザーインターフェースを図解している。
【図23】図23は、図20で図示された測定値から入手された動態データ示すグラフである。
【図24】図24は、薬物誘発性アポトーシスの高含量スクリーニングを詳細に示している。
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、1997年2月27日に提出された米国特許出願S/N第08/810,983号、及び1997年5月29日に提出されたS/N第08/865,341号;1997年5月29日に提出されたPCT出願WO97/45,730号の一部継続出願であり、さらに1997年12月11日に提出された出願番号が付与される予定の米国特許仮出願(第97,022−A号及び第97,223−A号)の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、新薬発見を目的とした蛍光に基づく細胞及び分子の生化学的アッセイの分野にある。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
技術において現在実践されている新薬発見は、特異的疾患ターゲットの識別、特異的ターゲットに基づくアッセイの開発、アッセイの妥当性確認、スクリーニングを作り出すためのアッセイの至適化及び自動化、“ヒット(当たり)”を識別するためのアッセイを使用した化合物ライブラリーの高スループットスクリーニング、ヒットの妥当性確認及びヒット化合物の至適化を含む、長い時間を要する多重ステップからなるプロセスである。このプロセスの産物は、前臨床試験に進み、妥当性が確認されれば場合によっては臨床試験に進む最重要化合物である。このプロセスでは、スクリーニング期はアッセイ展開期とは別個であり、生きている生物学的系において化合物の有効性を試験することを含む。
【0004】
歴史的に、新薬発見は時間と費用のかかるプロセスであり、1つの新薬が創製されるまでに非常に長い年数と数億ドルもの金額が費される。ゲノミクス及び高スループットスクリーニングの分野における開発は、ターゲット識別及びスクリーニングできる化合物の量の分野において高度の能力及び効率を生じさせた。自動化されたDNAシークエンシング、PCRアプリケーション、位置クローニング、ハイブリダイゼーション配列、及びバイオインフォーマティクス(生物情報学)における大きな前進は、可能性ある新薬スクリーニングターゲットをコードする遺伝子(及び遺伝子断片)の数を大きく増加させてきた。しかし、新薬スクリーニングのための基本スキームは以前として同じである。
【0005】
現在の方法及びプロトコールを使用して行う治療的インターベンションに対する目的としてのゲノムターゲットの妥当性確認は、例えばin vivo機能モデル、組換えタンパク質の機能解析、及び候補遺伝子の安定細胞系発現のような時間のかかる手動方法を使用するために、新薬発見プロセスにおける障害となってきた。自動シークエンシングを通して収集されたプライマリーDNA配列をしようしても遺伝子機能の識別を行うことはできないが、既知の配列順序データベースと比較することによって共通“モチーフ”及び特異的な遺伝子相同性に関する情報を提供することはできる。例えばサブトラクションハイブリダイゼーション及びRADE(弁別発現の迅速増幅)のようなゲノム方法は、疾患状態モデルにおいてアップ又はダウンレギュレートされた遺伝子を識別するために使用することができる。しかし、識別及び妥当性確認は今もなお同一経路を進行する。一部のプロテオミック法は、重要な候補遺伝子を識別するためにタンパク質識別(包括的な発現配列、2D電気泳動法、組合せライブラリー)に逆転遺伝学を組み合わせて使用する。そうした推定上の“疾患関連配列順序(DAS)”若しくは無傷cDNAとして分離されるDASはこれらの方法にとっての大きな長所であるが、それらは何百ものタンパク質によって識別されるので、コードされるタンパク質の種類、活性、及び分布に関する情報は提供しない。新薬スクリーニングターゲットとしてサブセットのDASを選択することは“ランダム”であり、従って非常に非効率的で、疾患と機械的にリンクした機能的データは得られない。
このため、生物学的機能を確立するためにDASを迅速にスクリーニングし、それによって新薬発見におけるターゲットの妥当性確認及び候補至適化を改善するための新規のテクノロジーを提供することが必要である。
【0006】
初期の新薬発見の生産性を向上させるためには3つの主要なルートがある。第1に、高い情報処理能力を提供するツールが必要である。バイオインフォーマティクスは、DNAシークエンシングシステムの急速な開発及びゲノムデータベースの進化に伴って発達してきた。ゲノミクスは、可能性のある新しいターゲットを識別することにおいて非常に重要な役割を果たし始めている。プロテオミクスは、薬物相互作用を予想するためにタンパク質ターゲットの構造及び機能に関して必要不可欠なものになってきた。しかし、生物学的複雑性の次の段階は細胞である。このため、細胞から多次元情報を収集し、管理し、そして検索することが必要である。第2に、よりスループット(処理能力)の高いツールが必要である。既にDNAシークエンシング及び高スループット一次スクリーニングにおいて証明されているように、生産性を改善するための重要な鍵は自動化である。そこで本発明は、よりスループットの高いツールに対する必要を満たす、細胞から多重パラメーター情報を引き出す自動システムを提供する。本発明はさらに又、方法を超小型化し、それによってスループット増大を許容し、他方では各アッセイで必要とされる試薬や試験化合物の容量を低下させることを提供する。
【0007】
初期の新薬発見アッセイにおいては、優勢な読み出しは放射能であった。しかし、より多くの情報、より高いスループット及び超小型化に対する必要は蛍光検出を使用する方向への変化を引き起こしてきた。蛍光に基づく試薬類は、スループットがより高く、情報量がより多く、必要とされる試薬や試験化合物の量がより少ない、はるかに強力な多重パラメーターアッセイを生み出すことができる。蛍光は又、放射能に基づく方法より安全かつ安価である。
【0008】
色素及び蛍光試薬を用いて処理された細胞のスクリーニングは技術においてよく知られている。レポーター分子として例えば修飾緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光タンパク質を産生するための細胞の遺伝子工学に関しては相当に多数の文献が存在する。野生型GFPの一部の特性は、Morise et al.,(Biochemistry 13(1974), p.2656−2662)、及びWard et al.,(Photochem. Photobiol. 31(1980), p.611−615)によって開示されている。クラゲのエクオレア・ビクトリアのGFPは395nmで励起極大、510nmで放射極大を有しており、蛍光活性のために外因性因子を必要としない。文献に開示されたGFPの使用は広まっており、遺伝子発現及びタンパク質位置決定の試験(Chalfie et al.,(1994), Science 263, p.12501−12504)細胞下オルガネラを可視化するため(Rizzuto et al.,(1995), Curr. Biology 5, p.635−642)、分泌経路に沿ったタンパク質輸送(Kaether and Gerdes,(1995), FEBS Letters 369, p.267−271)、植物細胞中の発現(Hu and Cheng,(1995), FEBS Letters 369, p.331−334)及びショウジョウバエ(Drosophira)の胚(Davis et al.,(1995), Dev. Biology 170, p.726−729)を可視化するためのツールとして、及び他の重要なタンパク質へ融合したレポーター分子(米国特許第5,491,084号)としてを含んでいる。同様に、WO96/23,898は、タンパク質キナーゼ活性化部位を有するGFP構造体を利用することによって細胞内プロセスに影響を及ぼす生物学的に活性な物質を検出する方法に関する。この特許、及び本出願で参照されている他のすべての特許は、その全体が参照して組み込まれる。
【0009】
生物学的系におけるGFPタンパク質に関連する数多くの文献がある。例えば、WO96/09,598はタンパク質のようなGFPの発現を利用して重要な細胞を単離するシステムを記載している。WO96/27,675は、植物におけるGFPの発現を記載している。WO95/21,191は、突然変異を検出するためのトランスフォーム(形質転換)された有機体中で発現した修飾GFPタンパク質を記載している。米国特許第5,401,629号及び第5,436,128号は、細胞表面レセプターを発現し、さらに細胞表面レセプターの活性に反応性である転写調節エレメントを含むレポーター遺伝子構造体を含有している組換え細胞を用いて、細胞外シグナルの細胞内トランスダクションを検出及び評価するためのアッセイ及び組成物を記載している。
【0010】
何万何千という化合物についてスクリーニングを実行するためには、多数の化合物及びアッセイ成分試薬の並行したハンドリング及びプロセッシングが必要である。標準的な高スループットスクリーニング(“HTS”)は96ウエル若しくは384ウエルを備えた標準マイクロタイタープレートのウエルの配列内に装填された指示化合物と一緒に化合物と生物学的試薬との混合物を使用する。蛍光放射、光学密度、又は放射能のいずれかによって各ウエルから測定されるシグナルは、ウエル内の全材料からのシグナルを統合しており、ウエル内の全分子の総集団平均値を生じさせる。
【0011】
Science Applications International Corporation(SAIC)(130 Fifth Avenue, シアトル, ワシントン州 98109)は、イメージングプレートリーダー(読み取り装置)について記載している。このシステムは、CCDカメラを使用して96ウエル・プレートの全領域を画像描出する。この画像を解析して、ウエル内の全材料について1ウエル当たりの総蛍光が計算される。
【0012】
Molecular Devices, Inc.(サニーベール、カリフォルニア州)は、細胞単層を画像描出するときのバックグラウンドを減少させるために標準96ウエル・プレートにおいてウエル底部の約200ミクロン以内の蛍光を選択的に励起するためにローアングルレーザー走査照射法及びマスクを使用するシステム(FLIPR)を記載している。このシステムはCCDカメラを使用してプレート底部の全領域を画像描出する。このシステムはウエル底部の細胞単層を起源とするシグナルを測定するが、測定されたシグナルはウエルの面積に渡って平均化されるので、このためまだ細胞集団の平均反応の測定値と見なされる。この画像を解析することにより、細胞に基づくアッセイのために1ウエル当たりの総蛍光が計算される。例えばFLIPRシステムのような細胞に基づくシステムには、応答を開始させるためにさらに液体送達装置が組み込まれており、応答はその後マクロイメージングシステムを使用して全ウエル集団の平均反応として観察される。
【0013】
高スループットスクリーニングとは対照的に、細胞成分及びプロセスの時間的−空間的動態に関するより詳細な情報に対する必要に対処するために様々な高含量スクリーニング(“HCS”)が開発されてきた。高含量スクリーニングは、細胞内に取り込まれた蛍光に基づく特異的試薬から引き出される多色蛍光情報の抽出を自動化する(Giuliano and Taylor,(1995), Curr. Op. Cell Biol. 7:4; Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 24:405)。細胞は、空間的並びに時間的動態を測定できる光学系を用いて解析される(Farkas et al.,(1993), Ann. Rev. Physiol. 55:785; Giuliano et al.,(1990), In Optical Microscopy for Biogy. B. Herman and K. Jacobson (eds.), pp.543−557. Wiley−Liss, New York; Hahn et al.,(1992), Nature 359:736; Waggoner et al.,(1996), Hum. Pathol. 27:494)。そのコンセプトは、各細胞を標識された成分の活性に関する空間的及び時間的情報を持っている“ウエル”として取り扱うことである。
【0014】
細胞に付加された蛍光に基づく試薬を通して現在入手できる生化学的及び分子的情報のタイプには、イオン濃度、膜電位、特異的トランスロケーション、酵素活性、遺伝子発現、並びに代謝物、タンパク質、脂質、炭水化物及び核酸配列の存在、量及びパターンが含まれる(DeBiasio et al.,(1996), Mol. Biol. Cell. 7:1259; Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 24:405; Heim and Tsien(1996), Curr. Biol. 6:178)。
【0015】
高含量スクリーニングは、蛍光標識抗体、生物学的リガンド、及び/又は核酸ハイブリダイゼーションプローブを用いて固定化細胞上で、又は多色蛍光指示薬及び“バイオセンサー”を用いて生きている細胞上でのどちらでも実施できる。
固定化細胞若しくは生きている細胞スクリーニングの選択は、必要とされる細胞に基づく特異的アッセイに依存する。
【0016】
固定化細胞アッセイは、マイクロタイタープレートフォーマットにおける最初は生きている細胞の配列を試験される様々な化合物および用量によって処理でき、その後で細胞を固定し、特異的試薬を用いて標識し、さらに測定できるので、極めて単純である。固定後における細胞の環境調節は必要とされない。空間的情報が収集されるが、1時点だけの情報しか収集できない。細胞に適用できる何千種もの抗体、リガンド及び核酸ハイブリダイゼーションプローブの利用可能性が、これを細胞に基づく多数のタイプのスクリーニングにとって魅力的なアプローチにしている。固定及び標識のステップは自動化できるので、アッセイの効率的処理が可能になる。
【0017】
生きている細胞のアッセイは、必要な試薬を含有している生きている細胞の配列を経時的並びに空間的にスクリーニングできるので、より洗練されたかつ強力なアッセイである。経時的な多重蛍光測定のためには細胞の生理学的健康状態を維持しなければならないので、測定中には細胞の環境調節(温度、湿度及び二酸化炭素)が必要とされる。細胞内の生化学的及び分子活性における変化を報告できる生理学的蛍光指示薬及び“バイオセンサー”のリストは増加しつつある(Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 24:205; Hahn et al.,(1993), In Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity. W.T. Mason, (ed.), pp.349−359, Academic Press, サンディエゴ)。
【0018】
蛍光に基づく試薬の利用可能性及び使用は、固定化細胞及び生きている細胞両方の高含量スクリーニングの開発を前進させるために役立ってきた。自動的に多色高含量情報を引き出すための器械類における最近の進歩は、HCSを自動ツールに開発することを可能にした。Taylor et al.,(1992), American Scientist 80, p.322−335)による論文は、これらの方法の多数及びそれらの適用について記載している。例えば、Proffitt et al.(Cytometry 24:204−213(1996))は、様々な組織培養プレートフォーマット、特に96ウエル・マイクロタイタープレートにおいてin situで相対細胞数を定量するための半自動化蛍光デジタルイメージングシステムを記載している。このシステムは、電動ステージ、ビデオカメラ、イメージインテンシファイアーを備えたエピフルオレセンス倒立顕微鏡と、PC−ビジョン・デジタイザーを備えたマイクロコンピューターとから構成される。Turbo Pascalソフトウエアが、1ウエル当たり複数の画像を取りながら、ステージを制御し、プレートをスキャンする。このソフトウエアは1ウエル当たりの総蛍光を計算し、日常キャリブレーションを行い、さらに様々な組織培養プレートフォーマットを容易に構成する。
デジタル画像及び生きている細胞によって取り込まれたときにのみ蛍光を発する試薬の閾値を使用して、過剰の蛍光試薬を取り除かずにバックグラウンド蛍光を減少させることができる。
【0019】
走査型同焦点顕微鏡イメージング(Go et al.,(1997), Analytical Biochemistry 247:210−215; Goldman et al.,(1995), Experimental Cell Research 221:311−319)及び多光子顕微鏡イメージング(Denk et al.,(1990), Science 248:73; Gratton et al.,(1994), Proc. of the microscopical Society of America, pp.154−155)も又、顕微鏡標本の高解像度画像を入手するための著明に確立された方法である。これらの光学系の主要な長所は焦点深さが非常に浅いことにあり、これによってバックグラウンドに対して解明される軸方向の広がりが限定されるという特徴が生じる。例えば、細胞表面上の特徴から付着細胞の内部細胞質特徴を解明することが可能である。走査型多光子イメージングは必要な高い光子流速を達成するために非常に持続時間の短いパルスレーザーシステムを必要とするので、蛍光の寿命も又これらのシステムで測定することができ(Lakowicz et al.,(1992), Anal. Biochem. 202:316−330; Gerrittsen et al.,(1997), J. of fluorescence 7:11−15)、様々な検出モードにとって追加の能力を提供する。全くのルーチン方法で適用する多光子同焦点顕微鏡検査を可能にするためには、現在では例えばレーザーダイオード・ポンピングレーザーのような小型で確実な、そして比較的安価なレーザーシステムを利用できる。
【0020】
集団における細胞の生物学的異質性(Bright et al.,(1989), J. Cell. Physiol. 141:410; Giuliano,(1966), Cell MOtil. Cytoskel. 35:237)と細胞内に存在する化学的及び分子的情報の空間的及び時間的頻度が高いことが組み合わさると、現在あるすべてのマイクロタイタープレートリーダーを使用しても細胞の集団から高含量情報を引き出すことは不可能である。現在ある高含量スクリーニングプラットフォームは、個別的に分析される細胞を使用した多色蛍光に基づくスクリーニングに適するようにデザインされていない。同様に現在は、特にマイクロタイタープレート内で増殖した細胞から、HCS解析によって識別される細胞応答を誘導する能力について化合物を系統的にスクリーニングする目的で、細胞の配列に自動分注装置を組み合わせる方法は利用できない。さらに、現在の技術には1つのアッセイにおいて“ヒット”を識別するために高スループットのウエル毎の測定を組合せ、その後に同一プレート上でヒットであると識別されたウエルについてだけ細胞毎の第2の高含量測定を行う方法は存在しない。
【0021】
そこで本発明は、多数の細胞スクリーニングフォーマットと、蛍光に基づく分子試薬及びコンピューターに基づく機能抽出、データ解析、及び自動化とを組み合わせることによって、ターゲットの妥当性確認及び候補の至適化を大きく改善し、データ収集の量及び速度の増加、サイクル時間の短縮、そして最終的には前途有望な新薬候補のより迅速な評価を生じさせる、高スループットスクリーニング(HTS)と高含量スクリーニング(HCS)とを結合したシステム、方法、及びスクリーニングを提供する。本発明はさらに、手方法を超小型化し、それによってスループット増加を許容し、他方では各アッセイで必要とされる試薬および試験化合物の量を減少させることも提供する。
【0022】
発明の概要
ある局面では、本発明は細胞を分析するための下記のステップを含む方法に関する:
・ ある場所の配列に蛍光レポーター分子を含有する細胞を提供するステップ、
・ その場所の配列内の細胞を1種以上の試薬によって処理するステップ、
・ 各場所に含まれる多数の細胞を蛍光光学系によって画像描出するステップ、
・ 光学情報をデジタルデータに変換するステップ、 ・ 細胞内の蛍光標識レポーター分子の分布、環境又は活性及び細胞の分布を測定するためにデジタルデータを利用するステップ、及び
・ 生物学的機能について試験されている化合物の正、負又はゼロ作用に関してその情報を解釈するステップ。
【0023】
この実施態様では、本法は特定生物学的機能に特異的に影響を及ぼす化合物について非常に多数の化合物をスクリーニングする目的で細胞内の蛍光標識レポーター分子の分布、環境又は活性を迅速に測定する。場所の配列は、マイクロタイタープレートであっても、又は1つの場所の配列内に細胞を有しているマイクロプレートであるマイクロチップであってもよい。ある好ましい実施態様では、本方法はデータを収集するため、処理するため、表示するため、さらに収集したデータを記憶するためのコンピューター手段を含んでいる。ある好ましい実施態様では、本方法はさらに細胞の配列への自動化液体送達を含んでいる。もう1つの好ましい実施態様では、同一プレート上で高スループット測定から入手した情報を使用して、プレート上のサブセットの細胞場所についてのみ選択的に高含量スクリーニングが実施される。
【0024】
本発明のもう1つの局面では、下記を含む細胞スクリーニングシステムが提供される:
・ 対物レンズを有する高倍率蛍光光学系;
・ 細胞の配列を含有するプレートを保持するために適しており、細胞の配列を適切にアライメント及びフォーカスする目的でプレートを移動させるための手段を有するXYステージ;
・ デジタルカメラ;
・ 励起光を細胞の配列に方向付けるための光学手段と細胞から放射された蛍光をデジタルカメラへ方向付ける手段とを有する光源;及び
・ デジタルカメラからのデジタルデータを受信して処理するためのコンピューター手段であって、カメラから画像を受信するためのデジタルフレームグラバー、ユーザーインタラクション(交互作用)及びアッセイ結果表示のためのディスプレイ、データの記憶及び保存を行うためのデジタル記憶媒体、及び結果の制御、収集、処理及び表示のための手段を含むコンピューター手段。
【0025】
ある好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらにデータを表示するためにコンピューターと操作可能に接続されているコンピュータースクリーンを含んでいる。もう1つの好ましい実施態様では、デジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するためのコンピューター手段はバイオインフォーマティクス・データベースにデータを記憶する。さらに別の好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらに多数若しくはすべてのウエルからのシグナルを並行して測定するリーダー(読み取り装置)を含んでいる。もう1つの好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらに高スループットスクリーニングと高含量スクリーニングとの間でモードを変更できるように、システムの倍率を変更するための機械的−光学的手段を含んでいる。もう1つの好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらに細胞を生きたまま保持するために必要とされるレベルでプレート周囲の温度、CO2濃度及び湿度を維持するためのチャンバー及び制御システムを含んでいる。さらに別の好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムは同焦点走査型照明及び検出システムを利用する。
【0026】
本発明のもう1つの局面では、細胞スクリーニングシステムが特異的な細胞の成分及びプロセスの分布及び活性を定義するための手順を実行すること引き起こすための1セットの指示を含有するプログラムを含む機械可読記憶媒体が提供される。ある好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムは細胞を保持するために適合したステージ及びそのステージを移動させるための手段、デジタルカメラ、デジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するための光源、及びデジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するためのコンピューター手段を備えた高倍率蛍光光学系を含んでいる。機械可読記憶媒体の好ましい実施態様は、細胞スクリーニングシステムが図9、11、12、13、14又は15に記載の手順を実行することを惹起するための1セットの指示を含有するプログラムを含んでいる。もう1つの好ましい実施態様は、細胞スクリーニングシステムが特異的な細胞の成分及びプロセスの分布及び活性を検出するための手順を実行することを惹起するための1セットの指示を含有するプログラムを含んでいる。最も好ましい実施態様では、細胞プロセスにはタンパク質の核トランスロケーション、細胞肥大、アポトーシス(断片化)、及びタンパク質のプロテアーゼ誘発性トランスロケーションが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
実施の形態
ここに引用された特許、特許出願及びその他の参考文献はその全体が参照してここに組み込まれる。
【0028】
ここで使用される下記の用語は特定の意味を有する:
細胞ドメインのマーカー。特異的オルガネラ若しくは分子を含有する特異的細胞成分に対して高親和性を有する発光プローブ。これらのプローブは、小さい発光分子であっても、又は“標識試薬”、“環境指示薬”、又は“バイオセンサー”として使用される蛍光タグ付き高分子のどちらであってもよい。
【0029】
標識試薬。標識試薬には、蛍光タンパク質アナログ及びバイオセンサーを含む発光標識高分子、緑色蛍光タンパク質及びそのミュータントと一緒に形成されたものを含む発光高分子キメラ、生理学的応答に含まれる細胞抗原と反応する発光標識第一若しくは第二抗体、発光性の染料、色素及びその他の小分子が含まれるが、それらに限定されない。
【0030】
細胞トランスロケーションのマーカー。何らかの細胞プロセス又は生理学的応答中に1つの細胞ドメインから別の細胞ドメインへ移動する発光タグ付き高分子又はオルガネラ。トランスロケーションマーカーは細胞ドメインのマーカーに比較したロケーションを単純に報告できるか、又は同様に何らかの生化学的若しくは分子活性を報告する“バイオセンサー”になることができるかのどちらかである。
【0031】
バイオセンサー。生物学的機能的ドメインと、内部又は表面上のどちらかで発生する環境変化を報告する1種若しくは複数の発光プローブとから構成される高分子。これらの変化を感知して報告するようにデザインされたあるクラスの発光標識高分子は、“蛍光タンパク質バイオセンサー”と呼ばれてきた。バイオセンサーのタンパク質成分は高度に進化した分子認識部分を生じさせる。活性部位の近位でタンパク質成分に付着した蛍光分子は環境変化を、例えば本発明の細胞スキャニングシステムのような適切な時間的及び空間的解明を行うシステムを用いて検出される蛍光シグナルに変換する。生きている細胞内の天然タンパク質活性の変調は可逆性であり、さらに蛍光タンパク質バイオセンサーはタンパク質活性における可逆性変化を感知するようにデザインすることができるので、これらのバイオセンサーは本質的に再使用できる。
【0032】
疾患関連配列(“DAS”)。この用語は、例えばプライマリーDNA配列順序データのような標準方法、例えばサブトラクションハイブリダイゼーション及びRADEのようなゲノム方法、及び新薬候補化合物についてのものであるような逆転遺伝学と組み合わせたプロテオミック法によって識別される核酸塩基配列に関する。この用語は、配列が疾患状態としか関連してないことを意味するものではない。
【0033】
高含量スクリーニング(HCS)は、例えばシグナルトランスダクション経路のような複合分子イベント、並びにアポトーシス、細胞分割、細胞接着、移動、エキソサイトーシス(細胞外排出作用)、及び細胞−細胞連絡を含むがこれらに限定されない細胞機能に薬物が及ぼす作用を測定するために使用できる。多色蛍光は、複数のターゲット及び細胞プロセスを単一スクリーニングにおいてアッセイすることを許容する。細胞応答の交差相関は、ターゲットの妥当性確認に必要とされる豊富な情報を産生し、至適化を導くであろう。
【0034】
本発明のある局面では、顕微鏡対物レンズ、細胞を保持するための場所の配列を備えたプレートを保持するために適合したXYステージ、顕微鏡対物レンズとの位置をアライメントするためにプレートを移動させるための手段及びフォーカシング(焦点合わせ)を実行するための方向にプレートを移動させるための手段を有する高倍率蛍光光学系;デジタルカメラ;場所の配列内の細胞に励起光を方向付けるための光学手段及び細胞から放射される蛍光をデジタルカメラへ方向付けるための手段を有する光源;及びデジタルカメラからのデジタルデータを受信して処理するためのコンピューター手段であって、カメラから画像を受信するためのデジタルフレームグラバー、ユーザーインタラクション(交互作用)及びアッセイ結果表示のためのディスプレイ、データの記憶及び保存を行うためのデジタル記憶媒体、及び結果の制御、収集、処理及び表示のための手段を含むコンピューター手段を含む細胞スクリーニングシステムが提供される。
【0035】
図1は、細胞スキャニングシステムの好ましい実施態様の略図である。例えばZeiss Axiovert倒立蛍光顕微鏡のような、カメラに対して1−100倍の倍率を備えた標準対物レンズ及び電源装置2を備えた白色光源(例、100Wの水銀アークランプ又は75Wキセノンランプ)を使用する倒立蛍光顕微鏡1が使用されている。顕微鏡対物レンズの上方にはXY方向にプレート4を移動させるためのXYステージ3がある。Z軸焦点駆動装置5は、対物レンズをフォーカシングのためにZ方向に移動させる。ジョイスティック6はXYZ方向へのステージの手動による移動を生じさせる。高解像度デジタルカメラ7はプレート上の各ウエル若しくは場所から画像を収集する。カメラ電源装置8、自動制御装置9及び中央処理装置10がある。PC11はディスプレイ12を提供し、関連ソフトウエアを有している。プリンター13はハードコピーの記録を印刷する。
【0036】
図2は、本発明の顕微鏡組立体1のある実施態様の略図であり、XYステージ3、Z軸焦点駆動装置5、ジョイスティック6、光源2、及び自動制御装置9をより詳細に示している。各々コンピューター及び顕微鏡へのケーブル15及び16も又用意されている。さらに、図2はXYステージ上でXY方向へ移動させられる96ウエル・マイクロタイタープレート17を示している。光源2からの光線はPC制御シャッター18を通って励起フィルター20を備えた電動フィルターホイール19まで通過する。光線はダイクロイックミラー26及び発光フィルター27を有するフィルターキューブ25内に通過する。励起光はダイクロイックミラーからマイクロタイタープレート17内のウエルに反射し、蛍光28がダイクロイックミラー26及び発光フィルター27を通ってデジタルカメラ7へ通過する。
【0037】
図3は、好ましいカメラ組立体の略図である。露出調節のための自動シャッター及び電源装置31を含んでいるデジタルカメラ7は、顕微鏡組立体からの蛍光28を受信する。デジタルケーブル30がデジタルシグナルをコンピューターへ転送する。
【0038】
上記で説明した標準光学系構成は、検体の高解像度画像をキャプチャーする目的でカメラセンサー上において検体の拡大画像を直接的に作り出すために顕微鏡光学系を使用する。この光学系は一般には“広視野(wide field)”顕微鏡と呼ばれている。顕微鏡に関する当業者であれば、どちらもCCD検出器上で、又は光増倍管のアナログ出力の同期デジタル化によって画像を形成することのできる、検体上方でスキャンされた照明の焦点合わせされた点又は線の標準走査型同焦点検出(Go et al., 1997,上記)及び多光子走査型同焦点顕微鏡(Denk et al., 1990,上記)を含むがこれらに限定されない様々な他の光学系によって検体の高解像度画像を作り出せることを認識するであろう。
【0039】
スクリーニング用途では、細胞の特定機能を利用するために特定の細胞系、又は初代細胞培養を使用することがしばしば必要である。細胞培養の当業者であれば一部の細胞系は接触阻止されることを認識するであろうが、接触阻止とは一部の細胞系が他の細胞によって取り囲まれたときに増殖を中止するが、他の細胞系はそのような条件下で増殖し続け、それらの細胞が多層を形成しながら文字通り蓄積することを意味する。そうした細胞系の例はHEK293(ATCC CRL−1573)系である。層を形成する傾向のある細胞系と一緒に使用するためには、多層標本中の単一細胞層の画像を収集できる光学系が必要とされる。広視野顕微鏡の視野の大きな深さは、層形成細胞における細胞下空間的分布の解析を極めて困難にする多層の細胞を通しての投影画像を作り出す。或いは又、同焦点顕微鏡上で達成できる極めて浅い視野の深さ(約1ミクロン)は高解像度での単一細胞層の区別を許容し、細胞下空間的分布の測定を単純化する。同様に、蛍光寿命イメージングのような検出モードが必要な場合は同焦点イメージングが好ましい。
【0040】
顕微鏡に標準同焦点イメージング装置を取り付けた場合の産物は、上記の他の細胞スクリーニングシステムの実施態様によって作り出される画像と同一フォーマットに変換できる、そしてそのためにそれらの画像と正確に同じ方法で処理できるデジタル画像である。この実施態様における全部の制御、収集及び解析は本質的に同一である。同焦点顕微鏡システムの光学系構成は、照明装置及び検出装置について以外は上記と本質的に同一である。同焦点顕微鏡のために必要とされる照明及び検出システムは、本発明のもの(Zeiss, ドイツ)と同様に標準顕微鏡光学系に取り付けられる付属機器としてデザインされてきた。このためこれらの代替光学系は上記のようにシステム内に容易に統合することができる。
【0041】
図4は、参照してその全体がここに組み込まれる同時継続米国特許出願S/N第08/865,341号に記載されている細胞配列がマイクロプレート41上のマイクロウエル40内にある、本発明の代替実施態様を図解している。典型的には、標準96ウエル・マイクロタイタープレートの寸法が86mm×129mmであるのに比較して、マイクロプレートの寸法は20mm×30mmである。
マイクロプレート上の細胞の高密度配列は、マイクロプレートが高スループットのために1ピクセル当たり数ミクロンの低解像度で画像描出されること、そしてマイクロプレート上の特定場所が1ピクセル当たり0.5ミクロン未満のより高い解像度で画像描出されることを許容する。これら2種の解像度モードはシステムの全体的スループットを向上させるために役立つ。
【0042】
マイクロプレートチャンバー42は、化合物を細胞に付着させるための微量液体分注システムとして役立つ。マイクロプレートチャンバー42内のマイクロプレート41はDYマイクロプレートリーダー43内に配置されている。デジタルデータは上記の通りに処理される。このマイクロプレートシステムはサイズが小さいので、スループットを上昇させ、試薬量を最小限に抑え、さらに迅速かつ正確な細胞に基づく解析を行うために細胞の分布及び配置の制御を可能にする。処理されたデータはPCスクリーン11上に表示でき、さらにバイオインフォーマティクス・データベース44の一部にすることができる。このデータベースは本発明の方法を通して入手されたデータの記憶及び保存を許容するだけではなく、さらに細胞に関連する外部データの収集及び記憶も許容する。図5は、ソフトウエアの作動を図解している。
【0043】
ある代替実施態様では、高スループットシステム(HTS)が同一プラットフォーム上又は電子的に接続された(例、ローカルエリアネットワークによって)2つの個別プラットフォーム上のどちらかでHCSと直接に結合されている。デュアルモード光学系と呼ばれる本発明のこの実施態様は、HCSをHTSと接続することによってHCSのスループットを上昇させ、さらにそれによって結合されたHTSにおいて応答を示す小さなサブセットのウエルについてのみより緩徐な高解像度データ収集及び解析を要求するという長所を有している。
【0044】
高スループットの“ホールプレート”リーダーシステムは技術においてよく知られており、非常に多数の化合物をスクリーニングするために使用されるHTSシステムの構成要素として一般的に使用されている(Beggs,(1977), J. of Biomolec. Screening 2:71−78; Macaffrey et al., (1996), J. of Biomolec. Screening 1:187−190)。
【0045】
細胞に基づくデュアルモードスクリーニングのある実施態様では、高スループット収集が1つのプラットフォームで行われ、高含量収集が第2プラットフォームで行われる2プラットフォーム式アーキテクチャーが提供される(図6)。処理は各プラットフォームで個別に行われ、その結果がネットワークインターフェースを通して通過させられるか、又は単一制御装置を使用して両方のプラットフォームからのデータが処理される。
【0046】
図6に図解されているように、例示されている2プラットフォーム式デュアルモード光学系は、2つの発光光学器械である高スループットプラットフォーム60及び高含量プラットフォーム65から構成されており、これらはマイクロタイタープレート又はマイクロプレート上のマイクロウエル配列内で培養された細胞から放出された蛍光シグナルを読み取り、さらに電子連絡64を通して相互に連絡する。高スループットプラットフォーム60は、並行又は迅速逐次方法のどちらかで全プレート内の全ウエルを解析する。スクリーニングの当業者であれば、デュアルモードの細胞に基づくスクリーニングシステムに数多くのそうした市販で入手できる高スループットリーダーシステムを統合できることを認識するであろう(Topcount (Packard Instruments, メリデン、コネチカット州); Spectramax, Lumiskan(Molecular Devices, サニーベール、カリフォルニア州); Fluoroschan(Labsystems,ビバリー、マサチューセッツ州))。上記のような高含量プラットフォーム65は、ウエルを1つずつスキャンし、ウエル内の個々の細胞から集められた高解像度画像データを収集して解析する。
【0047】
システムのコンピューター62上に常駐しているHTSソフトウエアは高スループット器械を制御し、その結果はモニター61上に表示される。そのコンピューターシステム67上に常駐しているHCSソフトウエアは高含量器械ハードウエア65、オプション装置(例、プレートローダー、環境チャンバー、液体分注器)を制御し、プレートからのデジタル画像データを解析し、その結果をモニター66上に表示し、統合データベースで測定されたデータを管理する。これら2つのシステムは、単一コンピューターを共有することができ、その場合にはすべてのデータはそのコンピュータ上で収集、処理及び表示され、データを転送するためのローカルエリアネットワークが必要とされない。マイクロタイタープレートは、手動又は技術においてよく知られているロボットプレート移送装置(Beggs,(1997),上記; Mcaffrey,(1996),上記)のいずれかによって高スループットシステムから高含量システム63へ移される。
【0048】
ある好ましい実施態様では、デュアルモード光学系は単一プラットフォームシステムを利用する(図7)。これは個別的又は集合的に移動させることのできるHCSモジュール203及びHTSモジュール209の2つの個別光学モジュールから構成されているので、マイクロタイタープレート201からのデータを収集するためには一度には1つしか使用されない。マイクロタイタープレート201は、画像描出するためにHTS又はHCSのどちらにでも配置できるように電動XYステージに取り付けられている。下記のようにHTS画像データを収集かつ解析した後は、HTS光学モジュール209は光学路から取り除かれ、HCS光学モジュール203が正しい位置に移動させられる。
【0049】
HTS209のための光学モジュールは、従来型顕微鏡灯システム(図示されていない)から特異的波長帯を用いてプレートの全底部を照明するために使用される投影レンズ214、励起波長フィルター213及びダイクロイックミラー210から構成される。蛍光発光は、センサー215を用いてカメラ216上で画像を形成する212によってダイクロイックミラー210及び発光波長フィルター211を通して収集される。
【0050】
HCSのための光学モジュール203は、顕微鏡対物レンズ202の背面アパーチュア、及びそれによって標準顕微鏡照明システム(示されていない)から対物レンズの視野を照明するために使用される投影レンズ208、励起波長フィルター207及びダイクロイックミラー204から構成される。蛍光放射は顕微鏡対物レンズ202によって収集され、ダイクロイックミラー204及び発光波長フィルター205を通過し、センサー215を用いて同一カメラ216上で画像を形成するチューブレンズ206によってフォーカシングされる。
【0051】
本発明の代替実施態様では、細胞スクリーニングシステムはさらに細胞スクリーニングの生きている細胞のための実施態様と一緒に使用するための液体分注装置を含む(下記参照)。図8は、本発明のシステムと一緒に使用するための液体分注装置を図解している。これは単一電動装置によって駆動させられる1列12本のシリンジポンプ701から構成されている。各シリンジ702は各ウエルに分注される用量に従ったサイズであるが、典型的には1〜100μLの間である。各シリンジは柔軟性チューブ703によって標準ピペットチップ705を受け入れる類似の列のコネクターに取り付けられている。ピペットチップの列は、各ウエルに液体を分注するためにマイクロタイタープレート706に相対して下げたり上げたりできるように駆動システムに取り付けられている。プレートは、データ収集目的で光学系707に相対して移動させることができるように、X,Yステージ上に取り付けられている。このセットアップによって、1セットのピペットチップ、又は単一ピペットチップさえプレート上の全ウエルへ試薬を分注することができる。シリンジポンプの列は12ウエルへ、又は一部のチップを取り外すことによって12より少ない数のウエルへ同時に液体を分注するために使用できる。
【0052】
別の局面では、本発明は、細胞が1種以上の蛍光レポーター分子を含む場合に複数の細胞を含有する場所の配列を提供するステップ;細胞内の蛍光レポーター分子から蛍光シグナルを入手するために細胞を含有する各々の場所において複数の細胞をスキャンするステップ;蛍光シグナルをデジタルデータに変換するステップ;及び細胞内の蛍光レポーター分子の分布、環境又は活性を測定するためにデジタルデータを利用するステップを含む、細胞を解析するための方法を提供する。
【0053】
細胞の配列
特定生物学的機能に関して非常に多数の化合物を活性についてスクリーニングするためには、細胞及び試薬を並行してハンドリングするために細胞の配列を調製する必要がある。現在の自動ローディング及びロボットハンドリングシステムとの適合性があるために、9mmピッチで径6mmのウエルを含んでいて寸法が86mm×129mmである標準96ウエル・マイクロタイタープレートが使用される。マイクロプレートは、典型的には20mm×30mmの寸法で、約500ミクロンのピッチで寸法が100〜200ミクロンの細胞の場所を備えている。マイクロプレートを作製する方法は、その全体が参照してここに組み込まれる米国特許出願S/N第08/865,314号に記載されている。マイクロプレートは、細胞が付着しないであろう物質を用いてパターン化された細胞が付着する物質の共平面層から、又は同様にパターン化された物質のエッチングされた3次元表面から構成されてよい。下記で考察を行うために、用語“ウエル”及び“マイクロウエル”とは、それに細胞が付着し、その中で細胞が画像描出されるあらゆる構造の配列内の場所をいう。マイクロプレートは又、ウエル間のスペースに液体分注装置チャンネルを含んでいてよい。マイクロプレートのフォーマットが小さいほど、調製中の試薬、記憶及びハンドリングの量及びスキャニング走査に必要な全体的動きを最小限に抑えることによってシステムの全体的効率が上昇する。さらに、マイクロプレートの全領域をより効率的に画像描出できるので、本文書で後に説明するようにマイクロプレートリーダーのための第二操作モードが可能になる。
【0054】
蛍光レポーター分子
新薬発見範例の主要構成要素は、細胞内イオン、代謝物、高分子及びオルガネラの時間的及び空間的分布、含量及び活性を測定するために使用される、持続的に増え続けている蛍光及び発光試薬ファミリーである。これらのクラスの試薬には、生きている細胞及び固定化細胞中の分子の分布及び量を測定する標識試薬、時間及び空間におけるシグナルトランスダクションイベントを報告するための環境指示薬、及び生きている細胞内のターゲット分子活性を測定する蛍光タンパク質バイオセンサーが含まれる。単一細胞内で数種の試薬を組み合わせる多重パラメーターアプローチは、新薬発見にとって新規の強力なツールである。
【0055】
本発明の方法は、特異的細胞成分に対する蛍光若しくは発光分子の高親和性を基礎としている。特異的成分に対する親和性は、たとえばイオン相互作用、共有結合(タンパク質に基づく発色団、発蛍光団及び発光団とのキメラ融合を含む)、並びに疎水性相互作用、電位、及び一部の場合には細胞成分内での単純な捕捉のような物理的力によって支配される。発光プローブは小分子、標識高分子、又は緑色蛍光タンパク質キメラ類を含むがこれらに限定されない遺伝子工学によって作り出されたタンパク質であってよい。
【0056】
当業者であれば、本試験には、例えばタンパク質、リン脂質及びDNAハイブリダイゼーションプローブのような蛍光標識生体分子を含むがこれらに限定されない幅広く様々な蛍光レポーター分子を使用できることを認識するであろう。同様に、結合又は会合と言う特定の化学的特性を備えて特異的に合成された蛍光試薬が蛍光レポーター分子として使用される(Barak et al.,(1997), J. Biol. Chem. 272:27497−27500; Southwick et al.,(1990), Cytometry 11:418−430; Tsien,(1989), in Methods in Cell Biology, Vol. 29, Taylor and Wang(eds.), pp.127−156)。蛍光標識抗体は、細胞又は組織と同程度に複雑な分子の混合物中の単一分子ターゲットに付着することについて高度の特異性を有しているために、特に有用なレポーター分子である。
【0057】
発光プローブは、生きている細胞内で合成されてもよいし、又は拡散、促進若しくは能動輸送、シグナル−配列順序媒介輸送、及びエンドサイトーシス若しくはピノサイトーシスによる取り込みを含む数種の非機械的モードによって細胞内へ輸送されてもよい。生きている細胞内へ発光プローブをローディングするためには、技術においてよく知られている機械的バルクローディング法も又使用できる(Barber et al.,(1996), Neuroscience Letters 207:17−20; Bright et al.,(1996), Cytometry 24:226−233; McNeil,(1989), in Methods in Cell Biology, Vol. 29, Taylor and Wang(eds.), pp.153−173)。これらの方法には、エレクトロポレーション(電気穿孔法)及び例えばスクレープローディング(acrape−loding)、ビーズローディング、衝撃ローディング(impact−loding)、シリンジローディング、高張性及び低調性ローディングのような他の機械的方法が含まれる。さらに、細胞は、以前に記載したように最重要タンパク質へ結合した例えばGFPのようなレポーター分子を発現するように遺伝子工学により作製することができる(Chalfie and Prasherへ付与された米国特許第5,491,084号; Cubitt et al.,(1995), Trends in Biochemical Schience 20:448−455)。
【0058】
いったん細胞内に取り込まれると、発光プローブはターゲットドメインとの特異的かつ高親和性の相互作用又は例えばシグナル−配列順序媒介輸送のような他の分子ターゲティングモードの結果として、それらのターゲットドメインに蓄積する。蛍光標識レポーター分子は、レポーターの場所、量及び化学的環境を測定するために有用である。例えば、レポーターが親油性膜環境にいるのか、又はより水性の環境にいるのかを測定できる(Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. of Biophysics and Biomolecular Structure 24:405−434; Giuliano and Taylor,(1995), Methods in Neuroscience 27:1−16)。レポーターのpH環境を測定することができる(bright et al.,(1989), J. Cell Biology 104:1019−1033; Giuliano et al.,(1987), Anal. Biochem. 167:362−371; Thomas et al.,(1979), Biochemistry 18:2210−2218)。キレート化基を有しているレポーターが例えばCa++のようなイオンに結合しているか否かについて測定することができる(Bright et al.,(1989), In Methods in Cell Biology, Vol. 30, Taylor and Wang(eds.) pp.157−192; Shimoura et al.,(1988), J. of Biochemistry(Tokyo) 251:405−410; Tsien,(1989), In Methods in Cell Biology, Vol. 30, Taylor and Wang(eds.) pp.127−156)。
【0059】
さらに、ある生体内の一定の細胞タイプは特異的に標識できる成分を含んでいることがあるが、これは他の細胞タイプでは発生しない可能性がある。例えば、上皮細胞はしばしば偏光膜成分を含んでいる。つまり、これらの細胞はそれらの細胞質膜に沿って高分子を非対称的に分布させている。結合組織又は支持組織細胞はしばしば、その中にその細胞タイプに特異的な分子が捕捉されている顆粒を含有している(例、ヘパリン、ヒスタミン、セロトニンその他)。ほとんどの筋肉組織細胞は、その機能が細胞質内のカルシウムイオンの濃度を調節することである特殊オルガネラの筋小胞体を含有している。多くの神経組織細胞は神経ホルモン又は神経伝達物質が捕捉されている分泌顆粒及び分泌小胞を含んでいる。そのため、蛍光分子は特異的細胞内の特異的成分だけではなく、混合細胞タイプの集団内の特異的細胞も標識するようにデザインすることができる。
【0060】
当業者であれば、蛍光を測定するための幅広く様々な方法を認識するであろう。例えば、一部の蛍光レポーター分子は励起又は放射スペクトルにおける変化を示し、一部は1つの蛍光レポーターが蛍光を失って第2の蛍光レポーターが蛍光を獲得した場合に共鳴エネルギー移行を示し、一部は蛍光の消失(クエンチング)若しくは出現を示し、他方一部は回転運動を報告する(Giuliano et al.,(1995), Ann. Rev. of Biophysics and Biomol. Structure 24:405−434; Giuliano et al.,(1995), Methods in Neuroscience 27:1−16)。
【0061】
細胞の配列をスキャン
図9を参照すると、実施されているアッセイに基づいて選択されているオペレーター指向パラメーター、検体内の蛍光シグナルの分布に関して細胞スクリーニングシステムによるデータ収集、及び対話形データレビュー及び解析を含む、細胞を解析するための好ましい実施態様が提供されている。自動スキャンの開始時に、オペレーターは検体を説明する情報100を入力し、使用されている生物学的標識及び探索される情報に適合するフィルター設定及び蛍光チャンネルを特定し、その後検体輝度に適合するようにカメラの設定を調整する。広い範囲の検体を取り扱うための柔軟性を有するために、ソフトウエアは核及び細胞質を識別するために使用される様々なパラメーターの選択、及び種々の蛍光試薬の選択、形態又は輝度に基づく重要な細胞の識別、及び1ウエル当たりの分析される細胞数の計数を許容する。これらのパラメーターは各自動ランのために容易に検索できるようにシステムのデータベースに記憶されている。システムの対話形細胞識別モードは、例えば分析される細胞のサイズ、形状及び強度の範囲のような形態学的パラメーター限界の選択を単純化する。ユーザーはプレートのどのウエルをシステムがスキャンするのか、そして各ウエルにおいて何種類の視野若しくは何種類の細胞を解析すべきなのか特定する。ユーザーによってステップ101で選択されるセットアップモードに依存して、システムはプレート102の“焦点を見つける”ために自動フォーカス手順を使用してスキャンされるプレートの領域を自動的にプレフォーカスするか、又はユーザーが対話式にスキャンされる長方形の領域を定義する3つの“タグ”ポイントを選択することによってスキャニング領域をプレフォーカス103する。最小二乗適合“焦点面モデル”がその後、自動スキャン中にこれらのタグポイントから計算されて各ウエルの焦点が推定される。各ウエルの焦点はスキャン中の焦点面モデルから内挿することによって推定される。
【0062】
自動スキャン中にソフトウエアは、分析された細胞数、分析中の現在ウエル、それらが収集されるに従って各独立波長の画像、及び測定されるに従って各ウエルに対するスクリーニングの結果を含むスキャン状態を動的に表示する。プレート4(図1)はソフトウエアが自動的に電動顕微鏡XYステージ3をウエルからウエルへそして96ウエル・プレートの各ウエル内の視野から視野へ移動させるにつれてサーペンタイン(螺旋状)スタイルでスキャンされる。プログラミングの当業者であれば、例えば24、48、及び384ウエル・プレートのような他のマイクロプレートフォーマットのスキャニングのためにソフトウエアを適合させる方法は認識するであろう。プレート全体のスキャンパターン並びに各ウエル内の視野のスキャンパターンがプログラミングされる。システムはZ軸フォーカス駆動装置5を通して自動フォーカス手順104(図9)を用いて検体フォーカスを調整し、電動フィルターホイール19によってフィルター選択を制御し、さらに4色までの画像を収集して解析する(“チャンネル”又は“波長”)。
【0063】
自動フォーカス手順は、典型的には各ウエルの第1視野及びその後は各ウエル内の1回に4〜5視野に対してユーザーが選択した周波数で呼び出される。自動フォーカス手順は事前に計算された焦点面モデルから内挿することによって開始時のZ軸点を計算する。この設定点の上方又は下方でプログラム可能な距離を開始すると、自動フォーカス手順は多数の様々な位置を通して機械的Z軸を移動させ、各位置で画像を収集し、各画像のコントラストを推定する計算された焦点スコアの最大値を見つける。最大焦点値を持つ画像のZ位置が特定視野にとっての再交渉点を決定する。当業者であれば、これがHarms et al. in Cytometry 5(1984), 236−243, Groen et al. in Cytometry 6(1985), 81−91、及びFirestone et al., in CYtometry 12(1991), 195−206に記載されている自動フォーカスアルゴリズムの変型であることを認識するであろう。
【0064】
画像収集のために、カメラの露出時間は各チャンネルから確実に高品質画像が得られるように各色素に対して個別に調整される。ユーザーの選択で、何らかのその他の測定を行う前に波長間の線形(X及びY)変化を計算に入れることによって波長間の登録変化に対して補正するためにソフトウエア手順を呼び出すことができる。電子シャッター18は、検体の光−脱色が最小限に維持されるように制御される。バックグラウンドのシェーディング及び不均一な照明も又技術において知られている方法を用いてソフトウエアによって補正できる(Bright et al.,(1987), J. Cell Biol. 104:1019−1033)。
【0065】
1チャンネルでは、画像は適応閾値算定手順を用いて分割(“識別”)される一次マーカー105(図9)(典型的にはDAPI又はPI蛍光色素を用いて交差染色された細胞核)について収集される。バックグラウンドから細胞をするためには、適応閾値算定手順106を使用して分離画像の閾値が動的に選択される。蛍光色素を用いた細胞の染色は、分からない程度にマイクロタイタープレート検体内並びにマイクロタイタープレートの各ウエル内の1視野の細胞の画像内で細胞毎に変動することがある。この変動は検体調製の結果及び/又は細胞の動的性質の結果として発生することがある。バックグラウンドから細胞を分離して1視野毎の変動を計算に入れるために、完全な画像について広域閾値が計算される。これらの広域適応法は技術において記載されているものの変形である(Kittler et al.,(1985), in Computer Vision, Graphics, and Image Processing 30,125−147; Ridler et al.,(1978), in IEEE Trans. Systems, Man, and Cybernetics, 630−632)。
【0066】
代替適応閾値算定法は、広域画像閾値算定法とは対照的に局所領域閾値算定法を利用する。局所領域の画像解析は、細胞核(並びに他の標識化合物)の染色が画像毎に変動することがあるので、より良好な総合分割をもたらす。この広域/局所手順を用いて、画像内の重要領域を見つけるために圧縮解像画像(係数2〜4までサイズが圧縮されている)が最初に広域的に分割される(適応閾値算定法を用いて)。これらの領域はその後全解像度で同一領域をより十分に解析するためのガイドとして役立つ。その後、重要な各領域についてより局所的閾値が計算される(再び適応閾値算定法を用いて)。
【0067】
分割手順の出力は、対象物が白色でバックグラウンドが黒色であるバイナリー画像である。技術においてはマスクとも呼ばれるこのバイナリー画像は、その視野が対象物107を含んでいるかどうかを判定するために使用される。マスクは小班点標識アルゴリズムを用いて標識され、それによって各対象物(又は小班点)はそれに指定された独自の番号を有する。例えば面積及び形状のような小班点の形態学的特徴を使用して、アーチファクトと考えられるものからおそらく細胞である小班点が弁別される。ユーザーは、既知の細胞形態学的特徴を入力するか、又は対話形トレーニングユーティリティを使用するかのどちらかによって形態学的選択基準を前設定する。重要な対象物がその視野において発見されると、その他全部の能動チャンネルに対して画像が収集される108か、さもなければステージが現在ウエルにおける次の視野に前進させられる109。重要な各対象物はさらに解析を受けるために画像内に配置される110。ソフトウエアが、その形態学的特徴(サイズ及び形状)を測定することによってその対象物が妥当な細胞核についての基準を満たしているかどうかを決定する111。妥当な各細胞に対して、XYZステージの場所が記録され、細胞の小さな画像が記憶され、特徴が測定される112。
【0068】
本発明の細胞スキャニング法は、同時に多数の波長で特徴を測定するために数多くの分析方法を適用することによって、細胞検体に関する多数の様々なアッセイを実施するために使用できる。そうしたアッセイの1つの例は、下記の測定値を提供する:
1. 色1〜4に対する細胞核内の全蛍光強度
2. 色1(一次マーカー)に対する細胞核の面積
3. 色1に対する細胞核の形状は3種の形状特徴によって記述される: a)周界方形面積
b)ボックス面積比
c)高さ幅比
4. 色1〜4に対する細胞核内の平均蛍光強度(即ち、#1÷#2)
5. 色2〜4に対する細胞の細胞質(細胞質マスク)の蛍光を表す核の外輪の総蛍光強度(図10参照)
6. 細胞質マスクの面積
7. 色2〜4に対する細胞質マスクの平均蛍光強度(即ち、#6÷#5)
8. 細胞質マスクの平均蛍光強度対色2〜4に対する細胞核内の平均蛍光強度の比(即ち、#7÷#4)
9. 細胞質マスクの平均蛍光強度と対色2〜4に対する細胞核内の平均蛍光強度の差(即ち、#7−#4)
10. 対色2〜4に対する細胞核内の蛍光ドメイン(同様にコールスポット、ドット、又はグレイン)の数
特徴1〜4は、本発明の様々な細胞スクリーニングアッセイの一般的特徴である。これらのステップは一般に様々な増解析アプリケーションにおいて使用され、技術においてよく知られている(Russ,(1992), The Image Processing Handbook, CRC Press Inc.; Gonzales et al.,(1987), Digital Image Processing., Addison−Wesley Publishing Co. pp.391−448)。特徴5〜9は、細胞の局所的細胞質領域内の細胞の蛍光分子及び細胞質から核への蛍光分子のトランスロケーション(即ち移動)の測定値を生じさせるために特別に開発されてきた。これらの特徴(ステップ5〜9)は核トランスロケーションの阻害についてマイクロプレート内の細胞を解析するために使用される。例えば、転写因子の核トランスロケーションの阻害は無傷細胞をスクリーニングするための新規のアプローチを提供する(その他のタイプのスクリーニングの詳細な実施例は下記で提供する)。特異的アルゴリズムは核細胞の局所的細胞質領域(特徴7)に対して各領域におけるプローブの量を測定する(特徴4)。これら2つの細胞下区画間の差分の定量は細胞質−核トランスロケーションの尺度を提供する(特徴9)。
【0069】
特徴10は、色2から4で各領域内のDNA又はRNAプローブを計数するために使用されるスクリーニングを記述している。例えば、染色体特異的DNA配列を識別するためのプローブは、市販で入手できる(Life Technologies, Gaithersburg, MD; Genosys, Woodland, TX; Biotechnologies, Inc., Richmond, CA; Bio 101, Inc., Vista, CA)。細胞は性質が三次元であり、高倍率の顕微鏡下で試験したときには1つのプローブはイン・フォーカスとなるが、別のプローブは完全にアウト・オブ・フォーカスとなることがある。本発明の細胞スクリーニング法は多数の焦点面から画像を収集することによって核内で三次元プローブを検出することを提供する。
ソフトウエアはZ軸駆動装置5(図1)を小さな工程で移動させるが、このとき工程距離は広範囲の様々な核の径を説明するためにユーザーによって選択される。各焦点工程で、画像が収集される。各画像における各ピクセルから最大グレーレベル強度が見つけられ、結果として生じる最大投影画像に記憶される。上記のアルゴリズムは、直接的に相互の上方又は下方に積み重ねられていないプローブを計数するさいに良好に機能する。Z方向で相互の上に積み重ねられたプローブについて説明するために、ユーザーは収集した焦点面の各々においてプローブを解析するためのオプションを選択することができる。このモードでは、スキャニングシステムは上記のような最大平面投影アルゴリズムを実行し、この画像内の重要なプローブ領域を検出し、その後さらにすべての焦点面画像においてこれらの領域を解析する。
【0070】
細胞の特徴を測定した112(図9)後、システムは現在視野113に未処理対象物があるかどうかをチェックする。未処理対象物が存在する場合は、次の対象物を配置し110、それが妥当な細胞核についての基準を満たすかどうかを判定し111、そしてその特徴を測定する。現在視野の全対象物が処理されると、システムは現在プレートの解析が完了したかどうかを判定する114;完了していない場合は、現在ウエル内でさらに細胞を発見する必要の有無を判定する115。必要がある場合は、システムはXYZステージを現在ウエル内の次の視野に前進させるか109、又はプレートの次のウエルへステージを前進させる116。
【0071】
プレートのスキャンが完了した後は、システムの画像精査、データ精査及びサマリー精査ファシリティーを使用して画像及びデータを精査できる。スキャンからのすべての画像、データ及び設定は後からの精査のため及びネットワーク情報管理システムとインターフェースするためにシステムのデータベース内に保存される。データは又結果から表作成して報告書を作成するために他の第三者統計パッケージへ搬出することもできる。ユーザーは対話形画像精査手順を用いてシステムによって解析された1つ1つの細胞単独の画像を精査できる117。ユーザーは、対話形グラフ、測定された特徴のデータスプレッドシート、及び重要な細胞のすべての蛍光チャンネルの画像の組合せを対話形1細胞毎のデータ精査手順を用いて1細胞毎ベースでデータを精査できる118。例えばヒストグラム及び散布プロットのような対話形グラフによってデータを解析できるグラフィカルプロッティング能力が備えられている。ユーザーは対話形の1ウエル毎の精査手順を用いて1プレートの各ウエル内のすべての細胞に対して蓄積及び要約されるサマリーデータを精査できる119。グラフ及び画像のハードコピーは広範囲の標準プリンター上で印刷することができる。
【0072】
完全なスキャンの最終期として、測定された特徴の1種以上の統計学で報告書を作成できる。ユーザーは対話形報告書作成手順を使用してスキャンされたプレートの領域に対して1ウエル毎のベースで要約されたデータのグラフ表示報告書を作成できる120。この報告書には、表及びグラフフォーマットで1ウエル毎の統計学のサマリー及び検体に関する識別情報が含まれる。報告書ウインドウによって、オペレーターは後の検索のためにスキャンについてのコメントを入力することができる。複数の報告書を多数の統計学で作成することができ、ボタン1つに触れることで印刷することができる。報告書は、印刷する前に配置及びデータについてプレビューできる。
【0073】
本方法の上記に叙述した実施態様は、高含量スクリーニング(HCS)モードと呼ばれる単一高解像度モードで作動する。HCSモードはウエル内並びにウエル内の個々の細胞内の物質の分布を定義するためにウエル内の十分な空間的解像度(1μmのオーダーで)を提供する。そのモードでアクセスできる高度の情報量は必要とされるシグナル処理の速度及び複雑さを犠牲にして得られる。
【0074】
代替実施態様では、高スループットシステム(HTS)が同一プラットフォーム上又は電子的に接続された(例、ローカルエリアネットワークによって)2つの個別プラットフォーム上でHCSと直接的に結合されている。デュアルモード光学系と呼ばれる本発明のこの実施態様は、HTSと結合し、それによって結合されたHTSにおいて応答を示す小サブセットのウエルについてのみより緩徐な高解像度データ収集及び解析を必要とすることにより、HCSのスループットを増加させるという長所を持っている。
【0075】
高スループットの“ホールプレート”リーダーシステムは技術においてよく知られており、非常に多数の化合物をスクリーニングするために使用されるHTSシステムの構成要素として一般的に使用されている(Beggs,(1977), J. of Biomolec. Screening 2:71−78; Macaffrey et al., (1996),上記)。本発明のHTSは、同時に1ウエル毎ベースで測定を行うために十分な解像度でプレート内の多数又はすべてのウエルを読み取ることによってマイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列上で実行される。つまり、計算は多数若しくはすべての細胞又は各ウエル内の物質のバルクの総シグナル出力を平均化することによって行われる。HTSにおいて何らかの定義された応答を示すウエル(“ヒット”)がシステムによってフラグされる。その後同一マイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列上で、ヒットであると識別された各ウエルが上記のようにHCSによって測定される。
【0076】
従って、デュアルモードプロセスは下記のステップを含む:
1. マイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列の多数のウエルを迅速に測定するステップ、
2. “ヒット”(定義された応答を示すウエル)を識別するための1ウエル毎ベースで細胞内の蛍光標識されたレポーター分子の全活性を測定するためにデータを解釈するステップ、
3. 各“ヒット”ウエルにおける多数の細胞を画像描出するステップ、及び 4. 特異的生物学的機能について試験する目的で個々の細胞内の蛍光標識されたレポーター分子の分布、環境又は活性(即ち、細胞内測定値)及び細胞の分布を測定するためにデジタル画像データを解釈するステップ。
【0077】
デュアルモード処理の好ましい実施態様(図11)では、ランのスタート時に301、オペレーターがプレート及びその容量を説明する情報を入力し302、使用される生物学的標識、探索される情報及び検体輝度に適合するためのカメラ設定に適合するようにフィルター設定及び蛍光チャンネルを特定する。これらのパラメーターは各自動ランのために容易に検索できるようにシステムのデータベースに記憶される。マイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列は手動的又はロボットローディング装置を制御することによって自動的のどちらかで細胞スクリーニングシステム内にロードされる303。オプションの環境チャンバー304は、マイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列内の生きている細胞の周囲の大気中の温度、湿度及びCO2レベルを維持するためにシステムによって制御される。オプションの液体分注装置305(図8参照)は、スキャン中にウエルに液体を分注するためにシステムによって制御される。
【0078】
高スループット処理306は、プレート内のウエル各々からのシグナルを収集及び解析することによってまず最初にマイクロタイタープレート又はマイクロウエル配列上で実行される。高スループットモードで実施される処理307は図12に図示されており、下記で説明する。この高スループットモードで何らかの選択された強度応答を示すウエル(“ヒット”)がシステムによって識別される。
システムはヒットについて試験する条件付き作動を実行する308。ヒットが発見されると、それらの特異的なヒットウエルはさらに高含量(マイクロレベル)モードで解析される309。高含量モードで実行される処理312は図13に図示されているシステムはその後プレート上での測定結果を用いてインフォーマティクスデータベース311をアップデートする310。解析すべきプレートがもっとある場合313は、システムは次のプレートをロードする303;さもなければプレートの解析が終了する314。
【0079】
下記の考察では、図12に図示されている高スループットモードを説明する。
単一プラットフォーム式デュアルモードスクリーニングシステムであるシステムの好ましい実施態様を説明する。当業者であれば、デュアルプラットフォームシステムは操作的に光学器械を移動させることよりむしろ2つの光学系間でプレートを移動させることを含むことを認識するであろう。システムがセットアップされてプレートがロードされると、システムはHTS収集及び解析を開始する401。HTS光学モジュールは、デュアルモードシステム上で電動光学器械配置装置402を制御することによって選択される。1つの蛍光チャンネルでは、プレート上の一次マーカーからのデータが収集され403、マスキング手順を使用してウエルがプレートバックグラウンドから分離される404。画像はさらに使用されているのとは別の蛍光チャンネルにおいても収集される405。各ウエル406に対応する各画像における領域が測定される407。特定ウエルに対する測定値から計算された特徴が事前定義された閾値又は強度応答と比較され408、そしてその結果に基づいてウエルが“ヒット”であるとフラグされる409か、又はフラグされない。ヒットであるとフラグされたウエルの場所は引き続いての高含量モード処理のために記録される。処理されるべきウエルが残っている場合は410、すべてのウエルが処理される411までプログラムはループバック(折り返し実行する)し、システムは高スループットモードに入る。
【0080】
HTS解析に続いて、システムは図13に定義されている高含量モード処理を開始する501。システムは電動ポジショニングシステムを制御することによりHCS光学モジュールを選択する502。高スループットモードで識別された各“ヒット”ウエルに対して、ウエルのXYステージの位置がメモリ又はディスクから検索され、ステージはその後選択されたステージ位置503へ移動させられる。各ヒットウエルにおける第1視野に対して自動フォーカス手順504が呼び出され、その後は1回に各ウエル内の5〜8視野毎に呼び出される。1チャンネルで、一次マーカー(典型的にはDAPI, Hoechst又はPI蛍光色素を用いて交差染色された細胞核)についての画像が収集される505。画像はその後適応閾値算定手順を用いて分割される(核及び非核の領域に分けられる)506。分割手順の出力は、対象物が白色でバックグラウンドが黒色であるバイナリーマスクである。技術においてマスクとも呼ばれるこのバイナリー画像は、視野が対象物を含んでいるかどうかを判定するために使用される507。マスクは小班点標識アルゴリズムを用いて標識され、それによって各対象物(又は小班点)はそれに指定された独自の番号を有する。対象物が視野にあることが発見されると、その他すべての能動チャンネルに対して画像が収集されるか508、さもなければ現在ウエルにおいてステージが次の視野へ前進させられる514。各対象物はさらに詳細に解析するために画像内に配置される509。例えば対象物の面積及び形状のような形態学的特徴を使用して細胞核であると思われる対象物が選択され510、そしてアーチファクトと考えられるものが廃棄される(それ以上の処理を行わない)。妥当な各細胞核について、XYZステージの位置が記録され、細胞の小さな画像が記憶され、アッセイに特異的な特徴が測定される511。システムはその後数種の波長各々で特徴を測定するために数種の解析方法を適用することによって細胞上で複数の試験を実行する。細胞の特徴を測定した後、システムは現在視野に未処理の対象物があるかどうかをチェックする512。
未処理の対象物がある場合は、システムは次の対象物を配置し509、それが妥当な細胞核の基準を満たすかどうかを判定し510、その特徴を測定する。現在視野におけるすべての対象物を処理した後、システムは現在ウエル内でもっと細胞又は視野を見つける必要があるかどうかを判定する513。現在ウエル内でもっと細胞又は視野を見つける必要がある場合は、システムはXYZステージを現在ウエル内の次の視野へ前進させる515。さもなければ、システムは測定すべきヒットウエルが残っているかどうかをチェックする515。もし残っていれば、次のヒットウエルに前進し503、別の収集及び解析サイクルへ進むが、さもなければHCSモードが終了される516。
【0081】
本発明の代替実施態様では、生きている細胞の動態スクリーニング法が提供される。上記で説明した本発明の実施態様は、化学的固定の時間である特定時点での細胞成分の空間的分布を特徴付るために使用される。そうしたものであるので、これらの実施態様は、画像収集の逐次的性質及びプレート上のすべてのウエルを読み取るために必要な時間量のために、速度論に基づくスクリーニングを実行するための利用性を制限してきた。例えば、1プレートはすべてのウエルを通して読み取るために30〜60分を必要とすることがあるので、1プレートの生きている細胞を単純に調製し、その後に2回以上ですべてのウエルを通して読み取ることによっては極めて緩徐な動態プロセスしか測定できない。次のウエルへ進行する前に各ウエルの多数の読み取りを行うことによってより迅速な動態プロセスを測定できるが、第1ウエルから最終ウエルまでの経過時間は余りに長くなり過ぎ、迅速な動態プロセスはおそらく最終ウエルに到達する前に完了しているであろう。
【0082】
本発明の生きている細胞の動態伸長は、生物学的プロセスがその空間的特徴の代わりに、又はそれに付け加えて速度論によって特徴付けられるスクリーニングのデザイン及び使用を可能にする。多くの場合、生きている細胞における応答は特異的ウエルに試薬を添加し、適切なタイミングでそのウエルについての複数の測定を行うことによって測定できる。それゆえ本発明のこの生きている細胞の動的実施態様はウエルの読み取りに先立って特定時点に各ウエルへ試薬を分注する目的で、システムの個々のウエルへ液体を分注する装置を含んでいる。これによりこの実施態様はプレートの各ウエルについて秒から分の空間的解像度を用いた動態測定を行うことができる。生きている細胞の動態システムの総合効率を向上させるために、収集制御プログラムはプレートのサブ領域からの反復データ収集が可能なように修飾され、これによって本システムは個々のウエルに対して必要な時点間で他のウエルを読み取ることができる。
【0083】
図8は、本発明の生きている細胞実施態様と一緒に使用するための、上記で説明した液体分注装置の実施例を示している。このセットアップは1セットのピペットチップ705が、又は単一ピペットチップさえもがプレート上のすべてのウエルへ試薬を分注することを可能にする。1列のシリンジポンプ701を使用すると12ウエルに同時に、又は一部のチップ705を取り除くことによってより小数のウエルへ液体を分注することができる。このため、データ収集効率を犠牲にせずに、チップの数及び下記のようにスキャンパターンを変化させることによってシステムの時間的解像度を調整することができる。典型的には、単一ウエルからのデータ収集及び解析は約5秒を要する。ウエルからウエルへ移動すること及び1ウエルにフォーカシングをすることに約5秒を要するので、1ウエルに対する総サイクル時間は約10秒である。このため、単一ウエルに液体を分注するために単一ピペットチップが使用され、そのウエルから反復的にデータが収集されると、約5秒の時間解像度で測定を行うことができる。6ウエルに同時に液体を分注するために6本のピペットチップが使用され、システムが全6ウエルを反復的にスキャンすると、各スキャンは60秒を必要とし、それによって時間的解像度が確立される。8分毎のデータ収集しか必要としないより緩徐なプロセスについては、液体分注期中にプレートを移動させ、その後はプレートのその半分を反復的にスキャンすることによって、液体はプレートの半分へ分注できる。このため、プレート上でスキャンされるサブ領域のサイズを調整することにょって、収集間の待期時間を挿入する必要なく時間的解像度を調整することができる。システムは連続的にスキャンしてデータを収集しているので、プレートから動態データセットを収集するための総所要時間は単純にプレートの単一スキャンを実行するための時間に必要な時点数を掛けた時間である。典型的には、スクリーニング目的には化合物を添加する前の1時点及び添加後の2若しくは3時点で十分なはずである。
【0084】
図14は、動態解析のために使用される収集シーケンスを示している。処理の開始801はシステムの構成であり、その多くは標準HCS構成と同一である。
さらに、オペレーターは、例えばサブ領域サイズ、必要な時点数、及び必要な時間増分のような実施されている動態解析に特異的な情報を入力しなければならない802。サブ領域は、動態データを蓄積するために反復してスキャンされる1群のウエルである。サブ領域のサイズは、システムが単一時間増分中に1回で全サブ領域をスキャンできるように、従って待期時間を最小限に抑えるように調整される。最適サブ領域サイズはセットアップパラメーターから計算され、必要であればオペレーターによって調整される。システムはその後プレートを第1サブ領域へ移動させ803、そして前刺激(時間=0)時点を収集するためにそのサブ領域内の第1ウエルへ移動させる804。各ウエルで実施される収集シーケンスは、動態モードで特異的HCSをランするために必要なシーケント正確に同一である。図15は、その処理についての工程系統図を詳細に示している。スタート901からリターン902の間のすべてのステップは、図13でステップ504〜514で記載されたステップと同一である。
【0085】
サブ領域での各ウエルを処理した後、システムはサブ領域内のすべてのウエルが処理されたかどうかを調べるためにチェックし806(図14)、全領域が処理されるまで全ウエルを通して循環する。システムはその後プレートを液体添加のための位置へ移動させ、全サブ領域807へ液体を分注する液体分注システムを制御する。これは、システムがX,Yステージ上のプレートを添加間で移動させながら、プレート上の数列に及ぶサブ領域に対する複数回の添加を必要とすることがある。液体が添加されると、システムはサブ領域内の第1ウエルに移動して808時点の収集を開始する。データは各ウエルから収集され809、以前と同様にシステムはサブ領域内の全ウエルを通して循環する810。各々がサブ領域を通過した後、システムは全時点が収集されたかどうかをチェックし811、もし収集されていない場合は、必要なら812要求された時間増分と同期化してとどまるために休止する813。さもなければ、システムはプレート上の追加のサブ領域をチェックし814、次のサブ領域へ移動させるか803、又は終了する815。従って、この動態解析モードは、引き続いてのサブ領域でのデータ収集前のサブ領域内でのデータ収集とともに、調査される動態応答に基づいて、スクリーニングされるマイクロタイタープレート又はマイクロウエルのサブ領域のオペレーターによる識別を含んでいる。
【0086】
特異的スクリーニング
本発明のもう1つの局面では、特異的な細胞の成分及びプロセスの分布及び活性を定義するための手順を実行するための細胞スクリーニングシステムを誘発するための1セットの指示を含有するプログラムを含む機械可読記憶媒体が提供される。ある好ましい実施態様では、細胞スクリーニングシステムは細胞を保持するために適合したステージ及びそのステージを移動させるための手段、デジタルカメラ、デジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するための光源、及びデジタルカメラからのデジタルデータを受信及び処理するためのコンピューター手段を備えた高倍率蛍光光学系を含んでいる。本発明のこの態様は、発光プローブ、光学的イメージングシステム及び本発明のパターン認識ソフトウエアを使用して、特異的細胞成分及びプロセスの分布及び活性を定義するための細胞スクリーニングシステムに命令するプログラムを含んでいる。機械可読記憶媒体の好ましい実施態様は、細胞スクリーニングシステムが図9、11、12、13、14又は15に記載の手順を実行することを惹起するための1セットの指示から構成されるプログラムを含を含んでいる。もう1つの好ましい実施態様は、細胞スクリーニングシステムが特異的細胞成分及びプロセスの分布及び活性を検出するための手順を実行することを惹起するための1セットの指示から構成されるプログラムを含んでいる。最も好ましい実施態様では、細胞プロセスにはタンパク質の核トランスロケーション、細胞肥大、アポトーシス、及びタンパク質のプロテアーゼ誘発性トランスロケーションが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
下記の実施例は例示することだけが意図されており、添付されているクレームで定義されているような本発明の範囲を限定するためと解釈されてはならない。
【0088】
下記の実施例で挙げられる様々な化合物、試薬、色素及び抗体は、例えばSigma Chemical(セントルイス、ミズーリ州)、Molecular Probes(ユージーン、オレゴン州)、Aldrich Chemical Company(ミルウォーキー、ワイオミング州)、Accurate Chemical Company(ウェストバリー、ニューヨーク州)、Jackson Immunoresearch Laboratories(ウェストグローブ、ペンシルバニア州)、及びClontech(パロ・アルト、カリフォルニア州)のような入手源から市販で入手可能である。
【0089】
実施例1. DNA転写因子の核トランスロケーションを誘発又は阻害する化合物についての自動スクリーニング
一部の遺伝子の転写調節は、細胞質内の転写因子の活性化を含み、1又は複数の特定遺伝子の転写を開始できる核内に因子が輸送されることを生じさせる。転写因子分布におけるこの変化が、特定遺伝子又は遺伝子群の転写を阻害若しくは誘発する化合物を検出するための細胞に基づくスクリーニングシステムのためのスクリーニングの基礎である。スクリーニングの一般的説明を下記で特異的実施例により下記で行う。
【0090】
転写因子の分布は、核をHoechst 33423のようなDNA特異的発蛍光団によって標識し、転写因子を特異的蛍光抗体によって標識することで測定される。Hoechst標識核上に自動フォーカスした後、核の画像が細胞に基づくスクリーニングシステムにおいて20倍の倍率で収集され、これを使用して上記で説明したように数種のオプションの閾値算定法の1つによってマスクが作製される。マスクによって定義された領域の形態学的ディスクリプターが、ユーザーによって定義されたパラメーターと比較され、妥当な核マスクが識別され、これを用いて下記のアルゴリズムを使用して転写因子分布が引き出される。妥当な各核マスクは僅かに小さい各領域を定義するために侵食される。オリジナルの各マスクはその後細胞質領域を表す核周囲の環状領域を定義するために2工程で拡張される。これら2つの領域各々における平均抗体蛍光が測定され、これらの平均値間の差がNucCut差分として定義される。核トランスロケーションを測定する2つの実施例は下記で考察されており、図110A−Jに図示されている。図10Aは、青色発蛍光団を用いて標識された核200及び緑色発蛍光団を用いて標識された細胞質201中の転写因子を持つ刺激されていない細胞を図示している。図10Bは、細胞に基づくスクリーニングシステムによって引き出された核マスク202を図示している。図10Cは、緑色波長で描出された刺激されていない細胞の細胞質203を図示している。図10Dは、最小細胞質分布を持つ核サンプリング領域204を定義するために核マスク202が1回侵食(圧縮)されたのを図示している。核境界202は、同一細胞に対して細胞質サンプリング領域205を定義するために使用される2〜3ピクセル広い環を形成するために数回拡張(伸展)させられる。図10Eは、さらに核サンプリング領域204及び細胞質サンプリング領域205を示している側面図を図示している。これら2つのサンプリング領域を使用すると、核トランスロケーションに関するデータを1細胞毎ベースで細胞に基づくスクリーニングシステムによって自動的に解析することができる。図10F〜Jは、刺激された細胞における核トランスロケーションを測定するための戦術を図示している。図10Fは、青色の発蛍光団を用いて標識された核206及び緑色発蛍光団を用いて標識された細胞質207中の転写因子を持つ刺激された細胞を図示している。図10Gにおける核マスク208は、細胞に基づくスクリーニングシステムによって引き出される。図10Hは、緑色波長で描出された刺激された細胞の細胞質209を図示している。図10Iは、刺激された細胞の核サンプリング領域211及び細胞質サンプリング領域212を示している。図10Jはさらに、核サンプリング領域211及び細胞質サンプリング領域212を示している側面図を図示している。
【0091】
この方法の特異的アプリケーションは、スクリーニングとしてのこの方法の妥当性を確認するために使用されている。ヒト細胞系が96ウエル・マイクロタイタープレートでプレーティングされた。数列のウエルは、特異的核転写因子の既知の誘発物質であるアゴニストによって滴定された。細胞はその後、転写因子に対する蛍光標識抗体及びHoechst 33423を用いる標準方法によって固定及び染色された。細胞に基づくスクリーニングシステムは、このプレートから画像を収集及び解析するために使用され、図16に図示されているようにNucCyt差分がウエルに添加されたアゴニストの量と強力に相関することが見出された。第2の実験では、アゴニストに対するレセプターにとってのアンタゴニストが、アゴニストの存在下で、進行性で転写因子のアゴニスト誘発性トランスロケーションを阻害させながら滴定された。図17に示されているように、NucCyt差分は、このトランスロケーションの阻害と強力に相関することが見出された。
【0092】
追加の実験は、NucCyt差分が広範囲の細胞密度及び試薬濃度に渡って一貫した結果を生じさせること、そしてそのために特異的核トランスロケーション活性について化合物ライブラリーをスクリーニングするためにルーチン的に使用できることを証明した。さらに、生きている細胞及び固定化細胞において他の転写因子に対する抗体、又はGFP転写因子キメラを使用してこれやその他の遺伝子の転写の調節に及ぼす影響についてスクリーニングするために同一方法を使用することができる。
【0093】
図18は、実施例1に従って入手されたデータのPCスクリーン上の代表的表示である。グラフ1180は、ウエル数に対する核サンプリング領域及び細胞質サンプリング領域における平均抗体蛍光の差分、NucCyt差分をプロットしている。グラフ2181は、ウエル数に対する核サンプリング領域における抗体の平均蛍光であるNP1平均値をプロットしている。グラフ3182は、ウエル数に対する細胞質サンプリング領域における平均抗体蛍光であるL1P1平均値をプロットしている。ソフトウエアによって、各セルからのデータを表示することができる。例えば、図18は細胞#26についてのスクリーンディスプレイ183、核画像184、及び蛍光抗体画像185を示している。
【0094】
図18のグラフ1180に挙げられているNucCyt差分は、平均細胞質プローブ(蛍光レポーター分子)強度と平均核プローブ(蛍光レポーター分子)強度との差である。図18のグラフ2181に挙げられているNP1平均値は核サンプリング領域内の細胞質プローブ(蛍光レポーター分子)強度の平均値である。図18のグラフ3182に挙げられているL1P1平均値は細胞質サンプリング領域内の平均プローブ(蛍光レポーター分子)強度の平均値である。
【0095】
実施例2. 心筋細胞における肥大を誘発又は阻害する化合物についての自動スクリーニング
心筋細胞における肥大は遺伝子発現における変質のカスケードと関連付けられており、細胞培養においては細胞サイズの変化によって特徴付けることができる、つまりカバーグラス上で増殖している付着細胞中で著明に視認できる。スクリーニングは下記の戦術を用いて実行される。96ウエル・プレートで培養された心筋細胞系QM7(Quail muscle clone 7; ATCC CRL−1962)は様々な化合物によって処理でき、その後細胞表面マーカーに対する蛍光抗体及びHoechstのようなDNA標識を用いて固定及び標識される。Hoechst標識核上でフォーカシングが行われた後、1枚はHoechst標識核及び1枚は蛍光抗体の2枚の画像が収集される。核はマスクを作成するために閾値算定し、その後にマスクの形態学的ディスクリプターを1セットのユーザー定義ディスクリプターと比較することによって識別される。細胞を含有する局所領域が核の周囲で限定される。それらの領域内での細胞の限界が蛍光抗体画像における同一領域上での局所的動態閾値操作によって定義される。侵食及び拡張のシーケンスを使用して僅かに接触している細胞が分離され、第2セットの形態学的ディスクリプターを使用して単一細胞が識別される。正常及び肥大性細胞からのサイズデータと比較する目的で細胞サイズの分布を定義するために個々の細胞の面積が表作成される。さらに、例えば主要筋タンパク質であるアクチン又はミオシンの1つのような特定細胞タンパク質に対する第2蛍光抗体を含めることができる。この第二抗体の画像は、肥大性細胞中のこれらのタンパク質の分布における異常を確認するために後から精査する目的で上記の画像と一緒に収集かつ記憶することができる、又はこれらの画像中の標識タンパク質の分布を自動的に解析するアルゴリズムを開発することもできる。
【0096】
実施例3. デュアルモード式高スループット及び高含量スクリーニング
下記の実施例は、細胞質膜から近傍核位置へのGタンパク質結合レセプター(GPCR)のトランスロケーションによって検出されるGPCRの活性化についてのスクリーニングである。本実施例では、細胞に基づくスクリーニングのためのデュアルモードシステムにおいて高スループットスクリーニングを高含量スクリーニングとどのように結合できるかを例示する。
【0097】
Gタンパク質結合レセプターは大きなクラスの7トランスメンブランドメイン細胞表面レセプターである。これらのレセプターに対するリガンドは、Ca++トランシエント、サイクリックAMP産生、イノシトール三リン酸塩(IP3)産生、及びリン酸化を含む場合があるがこれらに限定されない細胞内における二次シグナルのカスケードを刺激する。これらのシグナルの1つ1つはおよそ数秒から数分で発生して迅速であるが、同様に一般的でもある。例えば多数の様々なGPCRは活性化されると二次Ca++シグナルを産生する。GPCRの刺激は又、細胞表面膜から内部の近傍核区画へのそのGPCRの輸送を生じさせる。このインターナリゼーションは、特定レセプターの活性化についての上記の二次シグナルよりもはるかにレセプター特異的指標である。
【0098】
図19は、GPCRを活性化するためのデュアルモードスクリーニングを図示している。青色蛍光タンパク質(BFP)とともにGPCRの安定性キメラを有している細胞は、エステルの加水分解によって生きている細胞内でトラップされる細胞透過性カルシウム指示薬(緑色蛍光)であるフルオ−3のアセトキシメチルエステル形をローディングされる。それらはその後、マイクロタイタープレート601のウエル内に置かれる。ウエルはその後、液体分注システムを用いて試験化合物の配列によって処理され、全マイクロタイタープレートのフルオ−3画像の短いシーケンスが収集され、カルシウム応答を示すウエルについて解析が行われる(即ち、高スループットモード)。画像は、図19におけるマイクロタイタープレート601の図と同様に見えるであろう。図示されているウエルC4及びE9のような少数のウエルは、レセプターが刺激されるとCa++を放出するためにより明るく蛍光を発するであろう。応答602を誘発した化合物を含有するウエルのロケーションはその後HCSプログラムへ移され、光学器械は核周囲領域へのGPCRトランスロケーションを証明するために青色蛍光の詳細な細胞毎の解析のためにスイッチが切り換えられる。図19の下方には、高解像度細胞データ解析の2つの可能性ある結果が図示されている。カメラはウエルアリア603のサブ領域604を描出しており、蛍光細胞605の画像が作り出されている。ウエルC4では、細胞内の蛍光の一様な分布がレセプターがインターナリゼーションされていないことを示しており、これは所見されたCa++応答が細胞内の何か他のシグナル系の刺激の結果であったことを意味している。他方ウエルE9606内の細胞は、レセプターの完全な活性化を示している明らかに核周囲領域におけるレセプターの集中を示している。高解像度で解析しなければならないのはほんの少数のヒットウエルだけであるので、デュアルモードシステムの全スループットは高スループットシステム単独に比較して極めて高くなる。
【0099】
実施例4. 動態高含量スクリーニング
下記はレセプターのインターナリゼーションの動態パラメーターを測定するためのスクリーニングの例である。上記のように、GPCRの刺激は約15分間の時間経過でレセプターのインターナリゼーションを生じさせる。GPCRアゴニスト又はアンタゴニストとしての化合物の効力を定義するためには、インターナライズしたかどうかというエンドポイントを単純に検出するだけでは不十分な可能性がある。しかし、5分間隔の3つの時点は測定の時間経過中に効力に関する情報を提供するだけではなく、データをはるかに長い時間へ外挿することを許容するであろう。このアッセイを実施するためには、サブ領域は2列、サンプリング間隔は5分、そして時点の総数は3と定義されるであろう。システムはその後2列をスキャンすることによってスタートされ、その後2列に試薬が添加され、時間=0標準が確立される。試薬を添加した後、システムは再び最初の時点データを収集した2列のサブ領域をスキャンする。このプロセスは、サブ領域の最初へ戻ってスキャンすることを含めて約250秒を要するので、第2時点の収集を開始するためには50秒待機するであろう。後2回のサイクルが3つの時点を作り出し、システムは第2の2列のサブ領域へ進む。最後2つの2列のサブ領域はプレート上の全ウエルを終了するためにスキャンされ、全プレートに渡って各ウエルに対して4つの時点が生じる。ウエルに対する時点は時間=0に比して僅かに相殺されるが、時点の間隔は必要な5分に極めて近くなり実際の収集時間及び結果は固定化細胞スクリーニングにおけるよりはるかに高度の正確さで記録されるであろう。
【0100】
実施例5. ヒトグルココルチコイドレセプタートランスロケーションの高含量スクリーニング
あるクラスのHCSは、細胞内成分の薬物誘発性動的再分布を含んでいる。細胞の複雑な環境応答機械における単一“センサー”であるヒトグルココルチコイドレセプター(hGR)は細胞内に拡散しているステロイド分子に結合する。リガンド−レセプター複合体は核へトランスロケートし、そこで転写活性化が発生する(Htun et al.,(1996)、 Proc. Natl. Acad. Sci. 93:4845)。
【0101】
一般に、ホルモンレセプターは、それらの活性が重要な細胞内シグナル経路の先端にあるので、素晴らしい薬物ターゲットである。このため、hGRトランスロケーションの高含量スクリーニングはin vitroリガンド−レセプター結合アッセイに比べて著明な長所を有している。本発明の細胞スクリーニングシステムにおいて2チャンネル以上までの蛍光の利用可能性は、スクリーニングが例えば他のレセプター、他の明確なターゲット又はその他の細胞プロセスのような追加の2つのパラメーターを並行して含むことを許容する。
【0102】
プラスミド構造体。緑色蛍光タンパク質−ヒトグルココルチコイドレセプター(GFP−hGR)キメラに対するコーディング配列を含有する真核発現プラスミドはGFPミュータントを用いて調製された(Palm et al.,(1997), Nat. Struct. Biol. 4:361)。この構造体を使用してヒト子宮頸癌細胞系(HeLa)がトランスフェクトされた。
【0103】
細胞の調製及びトランスフェクション。HeLa細胞(ATCC CCL−2)がトリプシン処理され、5%木炭/デキストラン処理ウシ胎仔血清(FBS)(HyClone)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(C−DMEM)を含有するDMEMを用いてトランスフェクションの12〜24時間前にプレーティングされ、37℃及び5%CO2でインキュベートされた。トランスフェクションはリン酸カルシウム共同沈降によって(Graham and Van der Eb,(1973), Virology 52:456, ; Sambrook et al.,(1989), Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second ed.(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor)、又はリポフェクタミン(Life technologies, Gaithersburg, MD)を用いて実施された。リン酸カルシウムトランスフェクションのために、トランスフェクションの前に培地は5%木炭/デキストラン処理FBSを含有するDMEMと交換された。細胞はリン酸カルシウム−DNA沈降物を用いて37℃及び5%CO2で4〜5時間インキュベートされ、沈降物を除去するためにDMEMで3〜4回洗浄され、その後にC−DMEMが添加された。
【0104】
リポフェクタミントランスフェクションは製造業者の使用説明書に従って抗生物質を含まない無血清DMEM中で実施された(Life Technologies, Gaithersburg, MD)。DNA−リポソーム複合体と一緒の2〜3時間のインキュベーションに続いて、培地が除去され、C−DMEMと交換された。96ウエル・マイクロタイタープレート内のすべてのトランスフェクト細胞は薬物処理の前に24〜48時間、33℃及び5%CO2でインキュベートされた。実験は、HeLa細胞中で一過性に発現したレセプターを用いて実施された。
【0105】
GFP−hGRトランスロケーションのデキサメタゾン誘発。レセプター−リガンドトランスロケーション動態データを入手するために、トランスフェクト細胞の核が最初にC−DMEMに溶解させた5μg/ml Hoechst 33342(Molecular Probes)を用いて33℃及び5%CO2で20分間かけて標識された。細胞はハンクス液(HBSS)中で1回洗浄され、その後に1%木炭/デキストラン処理FBSとともにHBSS中に溶解させた100nMデキサメタゾンが添加された。固定時点のデキサメタゾン滴定データを入手するために、トランスフェクトされたHeLa細胞が最初にDMEMで洗浄され、その後に1%木炭/デキストラン処理FBSを含有するDMEM中に溶解させた0〜1,000nMデキサメタゾンの存在下で1時間、33℃及び5%CO2でインキュベートされた。細胞は生きたまま解析するか、又はHBSSですすぎ洗いするかされ、HBSSに溶解させた3.7%ホルムアルデヒドを用いて15分間かけて固定され、Hoechst 33342を用いて染色され、さらに解析前に洗浄された。細胞内GFP−hGR蛍光シグナルはこの固定法によって減少しなかった。
【0106】
画像の収集及び解析。動態データはデキサメタゾンの添加後30分間に1分間隔で生きている細胞の視野から対の蛍光画像(GFP−hGR及びHoechst 33342標識核)を獲得することによって収集された。同様に、デキサメタゾンの添加1時間後に固定時点スクリーニングプレートの各ウエルからも対の画像が入手された。どちらの場合にも、各時点で入手された対の画像を使用して各細胞内の核及び細胞質領域が定義された。GFP−hGRのトランスロケーションは、核内のGFP−hGRの統合蛍光強度を細胞質内のキメラの統合蛍光強度で割ることによって、又はGFP蛍光の核−細胞質差分として計算された。固定時点スクリーニングでは、このトランスロケーション率を試験された各デキサメタゾン濃度で最低200個の細胞から入手されたデータから計算された。このため細胞質から核へのGFP−hGRの薬物誘発性トランスロケーションはトランスロケーション率の上昇と相関していた。
【0107】
結果。図20はヒトグルココルチコイドレセプターの薬物誘発性の細胞質253から核252へのトランスロケーションを略図的に表示している。略図の上方の対は、デキサメタゾンを用いての刺激前250(A)及び後251(B)の細胞内におけるGFP−hGRの所在位置を描出している。これらの実験条件下では、薬物は細胞質GFP−hGRの大部分が核内へトランスロケートするのを誘発する。この再分布は、処理された細胞255及び未処理の細胞254における細胞質及び核蛍光の統合強度比を測定することによって定量される。蛍光顕微鏡写真の下方の対は、処理の前254及び後255における単一細胞中のGFP−hGRの動的再分布を示している。HCSは数百から数千のトランスフェクト細胞を含有するウエル上で実施され、トランスロケーションはGFP蛍光を示している視野において核細胞について定量される。安定性にトランスフェクトされた細胞系を使用すると最も一貫して標識された細胞が産生するが、一過性トランスフェクションによって誘発された不均質なレベルのGFP−hGR発現は本発明の細胞スクリーニングシステムによる解析を妨害しなかった。
【0108】
スクリーニングを実行するために、細胞スクリーニングシステムはプレートの各ウエルをスキャンし、各々における細胞集団を画像描出し、細胞を個別的に解析する。この場合は、2チャンネルの蛍光を使用して各細胞内のGFP−hGRの細胞質及び核分布が定義される。図21には、GFP−hGRスクリーニングの終わり近くの細胞スクリーニングシステムのグラフィカルユーザーインターフェースが描出されている。ユーザーインターフェースはシステムの並行データ収集及び解析能力を描出している。“Nucleus(核)”261及び“GFP−hGR”262と表示されたウインドウは、単一視野で入手及び解析されている対の蛍光画像を示している。“Color Overlay(カラーオーバレイ)”260と表示されているウインドウは、上記の画像を疑似着色してそれらをマージングすることによって形成されているので、ユーザーは直ちに細胞変化を識別することができる。“Stored Object Regions(記憶された対象物領域)”ウインドウ265内では、解析された各細胞及びその近傍を含有する画像が保存されるに従って提示される。さらに、HCSデータが収集されるにつれて、それらは解析され、このGFP−hGRトランスロケーションの場合には、即時“ヒット”応答に翻訳される。スクリーンの下のウインドウ267に描出された96ウエル・プレートは、どのウエルが1セットのユーザー定義スクリーニング基準に合致したかを示す。例えば、白色のウエル269は、薬物誘発トランスロケーションが50%の前設定閾値を超えたことを示している。他方、黒色ウエル270は、試験されている薬物が誘発したトランスロケーションが10%未満であることを示している。グレーのウエル268は、トランスロケーション値が10%から50%の間にある“ヒット”を示している。解析中の96ウエル・プレート266上の列“E”は、GFP−hGRトランスロケーションを活性化することが既知の薬剤デキサメタゾンを用いた滴定を示している。この実施例スクリーンは2つの蛍光チャンネルしか使用しなかった。他の特異的ターゲット、細胞プロセス、又は細胞毒性の並行解析を行う目的で多重パラメータースクリーニングを作製するためには、さらに2つのチャンネル(チャンネル3263及び4264)を利用することができる。
【0109】
画像データベースと新規スクリーニングの妥当性確認プロセス中の強力なツールである情報データベースは連結されている。スクリーニングの完了時には、ユーザーは画像及び計算データに総合アクセスを行う(図22)。細胞スクリーニングシステムの包括的データ解析パッケージによって、ユーザーは多重レベルでHCSデータを試験することができる。画像276及び個々の細胞についてのスプレッドシート279に詳細に記載されたデータは個別に精査できる、又はサマリーデータをプロッティングすることができる。例えば、96ウエル・プレートにおける各セルについての単一パラメーターの計算結果はグラフ1275と表示されたパネルに示される。グラフにおける単一点を選択することにより、ユーザーは現行データベースから再現される特定細胞についての全データセットを表示することができる。個々には単一細胞からの対の画像276及び詳細な蛍光及び形態計測データが示されている(細胞#118、グレーのライン277)。大きなグラフ挿入画面278は、GFP−hGRのトランスロケーションにデキサメタゾン濃度が及ぼした作用の結果を示している。各点は最低200個の細胞から入手したデータの平均値である。このアッセイでのデキサメタゾンに対して計算で得たEC50値は2nMである。
【0110】
細胞スクリーニングシステムを備えたHCSの強力な態様は、生きている細胞において多色蛍光及び形態計測パラメーターを用いた動態測定を行う能力である。1視野における1細胞集団内の単一細胞について時間的及び空間的測定を行うことができる。図23は、単一視野内の数個の細胞におけるGFP−hGRのデキサメタゾン誘発性トランスロケーションについての動態データを示している。
GFP−hGRを用いてトランスフェクトされたヒトHeLa細胞を100nMデキサメタゾンによって処理し、GFP−hGRのトランスロケーションを単一細胞の集団において経時的に測定した。グラフはトランスフェクト細胞285、286、287、及び288及び非トランスフェクト細胞289の応答を示している。これらのデータは又、種々の発現レベルを持つ細胞を解析する能力を例示している。
【0111】
実施例6. 薬物誘発性アポトーシスの高含量スクリーニング
アポトーシスは、無数の分子イベント及び経路を含む複雑な細胞プログラムである。このプロセスに及ぼす薬物作用のメカニズムを理解するためには、時間的及び空間的分解能を用いて細胞内のこれらのイベントをできる限り多く測定することが不可欠である。このため、僅かな細胞サンプル標本しか必要としないが、それでも数種類のアポトーシス関連パラメーターの自動読み出しを提供するアポトーシススクリーニングが理想的であろう。そこでパクリタクセル誘発性アポトーシスの数種の形態学的、オルガネラ的、及び高分子的特徴を同時に定量するために、細胞スクリーニングシステムのためにデザインされた細胞に基づくアッセイが使用されてきた。
【0112】
細胞の調製。本試験のために選択された細胞はマウス結合組織線維芽細胞(L−929;ATCC CCL−1)及び高度に侵襲性グリア芽細胞腫細胞系であった(SNB−19;ATCC CRL−2219)(Welch et al., In Vitro Cell. Dev. Biol. 31:610,1995)。アポトーシスを誘発する薬物による処理の前日に、96ウエル・プレートの各ウエル内に3,500個の細胞を入れられ、37℃の湿性5%CO2大気中で一晩インキュベートされた。翌日、培地が各ウエルから取り除かれ、DMSO中で調製した20mMストックからの種々の濃度のパクリタクセル(0〜50μM)を含有する新鮮培地と交換された。これらの実験で使用したDMSOの最高濃度は0.25%であった。その後、細胞が上記と同様条件下で26時間インキュベートされた。パクリタクセル処理期間の終了時に、各ウエルには750nM Mito Tracker Red(Molecular Probes;ユージーン、オレゴン州)及び3μg/mlのHoechst 33342 DNA結合性色素(Molecular Probes)を含有する新鮮培地が与えられ、上記と同様条件下で20分間インキュベートされた。プレート上の各ウエルはその後HBSSを用いて洗浄され、室温で15分間かけてHBSSに溶かした3.7%ホルムアルデヒドを用いて固定された。ホルムアルデヒドはHBSSを用いて洗浄され、細胞は0.5%(v/v) Triton X−100を用いて90分間浸透させられ、HBSSを用いて洗浄され、2Uml−1 Bodipy FLファラシジン(Molecular Probes)を用いて30分間インキュベートされ、HBSSを用いて洗浄された。それからプレート上のウエルに200μl HBSSが充填され、密封され、さらにプレートを必要な場合は4℃で貯蔵された。この方法で貯蔵されたプレートからの蛍光シグナルは、調製後最低2週間は安定性であった。核トランスロケーションアッセイにおけると同様に、蛍光試薬はこのアッセイを生きている細胞の高含量スクリーニングに転換するようにデザインすることができる。
【0113】
配列スキャンシステム上での画像収集及び解析。細胞内MitoTracker Red、Hoechst 33342、及びBodipy FLファラシジンの蛍光強度が上記と同様に細胞スクリーニングシステムを用いて測定された。
画像視野において各対象物(例、細胞及び核)が検出され、さらにそのサイズ、形状、及び統合強度を計算するために、各ウエルから入手された対の核画像からの形態計測データも又入手された。
【0114】
計算及び出力。1画像視野当たり計50〜250個の細胞が測定された。細胞の各視野について、下記の計算が実施された:(1)平均核面積(μm2)は1視野内の総核面積を検出した核数で割ることによって計算された。(2)平均核周界(μm)は1視野における全核の周界の合計をその視野で検出した核数で割ることによって計算された。高度に複雑なアポトーシスの進んだ核は最大核周界値を有していた。(3)平均核輝度は、核の視野全体の統合強度をその視野に含まれる核数で割ることによって計算された。核輝度における増加はDNA含量の増加と相関していた。(4)平均細胞輝度は、MitoTracker色素を用いて染色された細胞の視野全体の統合強度をその視野に含まれる核数で割ることによって計算された。ミトコンドリア内に蓄積するMitoTracker色素の量はミトコンドリア電位と比例するので、平均細胞輝度の増加はミトコンドリア電位における増加と一致している。(5)平均細胞輝度は、さらにBodipy FLファラシジン色素を用いて染色された細胞の視野全体の統合強度をその視野に含まれる核数で割ることによって計算された。ファロトキシン類は高度の親和性でアクチンの重合化形へ結合するので、細胞内に蓄積するBodipy FLファラシジン色素の量はアクチン重合化状態と比例している。平均細胞輝度における増加はアクチン重合化における増加と一致している。
【0115】
結果。図24(一番上のパネル)は、L−929細胞の核形態におけるパクリタクセル誘発性変化を示している。パクリタクセルの量の増加は、アポトーシスの特徴である核の拡大及び断片化293を惹起した。細胞スクリーニングシステムにより入手されたこれら及びその他の画像の定量的解析は同一の図に示されている。測定された各パラメーターは、L−929細胞296がSNB−19細胞297に比べて低濃度のパクリタクセルに感受性が低いことを証明した。だがより高濃度では、L−929細胞は測定された各パラメーターについて応答を示した。このアッセイの多重パラメーターアプローチは、薬物作用のメカニズムを分析するときに有用である。例えば、核298の面積、輝度及びフラグメンテーション(断片化)及びアクチン重合化値294は、SNB−19細胞を10nMパクリタクセルによって処理したときに最高値に達した(図24;一番上および下のグラフ)。しかし、ミトコンドリア電位295は同一濃度のパクリタクセルで最小であった(図24;真ん中のグラフ)。測定されたすべてのパラメーターがパクリタクセル濃度を上昇させる(>10nM)とコントロールレベルに近づいたという事実は、SNB−19細胞が、薬物濃度が十分に高いときには代償性である低親和性薬物代謝又はクリアランス経路を有していることを示唆している。
SNB−19細胞の薬物感受性297とは対照的に、L−929はパクリタクセルに対して相違する応答を示した296。これらの線維芽細胞は、5μMパクリタクセルで多数のパラメーターにおいてSNB−19細胞より500倍高い最高応答を示した。さらに、L−929細胞は試験した全パクリタクセル濃度でミトコンドリア電位295における激しい減少を示さなかった。この結果は、正常細胞系と癌細胞系の間の独特のアポトーシス経路の存在と一致している。このため、これらの結果は、比較的に単純な蛍光標識プロトコールを本発明の細胞スクリーニングシステムと結合することによってプログラムされた細胞死に含まれる重要なイベントに関する高含量スクリーニングを作製できることを示している。
【0116】
実施例7. 細胞質から核への疾患関連シーケンスを含有するシグナル酵素のプロテアーゼ誘発性トランスロケーション
プラスミド構造体。緑色蛍光タンパク質−カスパーゼ(Cohen(1997),Biochemical J. 326:1−16; Liang et al.,(1997), J. of Molec. Biol. 274:291−302)キメラに対するコーディング配列を含有する真核発現プラスミドはGFPミュータントを用いて調製された。この構造体を使用して真核細胞がトランスフェクトされた。
【0117】
細胞の調製及びトランスフェクション。細胞はトランスフェクション24時間前にトリプシン処理した後にプレーティングされ、37℃及び5%CO2でインキュベートされた。トランスフェクションは、リン酸カルシウム共同沈降又はリポフェクションを含むがそれらに限定されない方法によって実施する。細胞はリン酸カルシウム−DNA沈降物と一緒に37℃及び5%CO2で4〜5時間インキュベートされ、沈降物を除去するためにDMEMを用いて3〜4回洗浄され、その後にC−DMEMが添加される。リポフェクタミンによるトランスフェクションは、製造業者の使用説明書に従って抗生物質を含まない無血清DMEM中で実施される。DNA−リポソーム複合体と一緒に2〜3時間インキュベーションされた後、培地が除去され、C−DMEMと交換される。
【0118】
カスパーゼ−GFPトランスロケーションのアポトーシス性誘発。カスパーゼ−GFPトランスロケーションの動態データを入手するために、トランスフェクト細胞の核がまず最初にC−DMEMに溶かした5μg/mlのHoechst 33342(Molecular Probes)を用いて37℃及び5%CO2で20分間かけて標識される。細胞はハンクス液(HBSS)中で1回洗浄され、その後にアポトーシスを誘発する化合物が添加される。これらの化合物にはパクリタクセル、スタウロスポリン、セラミド、及び腫瘍壊死因子が含まれるが、これらに限定されない。固定時点の滴定データを入手するために、トランスフェクト細胞が最初にDMEMを用いて洗浄され、その後にDMEMに溶かした0〜1,000nMの化合物の存在下において37℃及び5%CO2で1時間かけてインキュベートされた。細胞は生きたまま解析され、又はHBSSを用いてすすぎ洗いされ、HBSSに溶かした3.7%ホルムアルデヒドを用いて15分間かけて固定され、Hoechst 33342を用いて染色され、解析前に洗浄される。
【0119】
画像の収集及び解析。動態データは化合物の添加後の30分間に1分間隔で生きている細胞の視野から対の蛍光画像(カスパーゼ−GFP及びHoechst 33342標識核)を獲得することによって収集される。同様に、化合物添加後の1時間に固定時点スクリーニングプレートの各ウエルから対の画像が入手される。どちらの場合も、各時点で入手された対の画像を使用して各細胞における核及び細胞質領域が定義される。カスパーゼ−GFPのトランスロケーションは核内のカスパーゼ−GFPの統合蛍光強度を細胞質内のキメラの統合蛍光強度で割ることによって、又はGFP蛍光の核−細胞質差分として計算される。固定時点スクリーニングでは、このトランスロケーション率は試験された化合物の各濃度で最低200個の細胞から入手したデータから計算される。指示細胞系をスクリーニングするため、及びDASに対する特異的リガンド及び化合物活性により活性化される経路を識別するためには、アポトーシス活性化酵素の推定アクチベーター(賦活物質)又はインヒビターを含むライブラリーを含むがこれらに限定されない分子相互作用ライブラリーを使用する。
【0120】
実施例8. DASからの新規ステロイドレセプターの識別
この実施態様を利用するためには、特徴付けられていない遺伝子の機能の評価を許容する物質及び/又は情報の2つの入手源が必要とされる。第1に、哺乳類細胞内へのトランスフェクションに適合するcDNA配列を含有する疾患関連配列順序銀行を使用できる。1つ1つのRADE又は様々な発現実験は数百までの配列順序を生成するので、DASの豊富な供給を生み出すことが可能である。第2に、シグナル配列、7種のトランスメンブランモチーフ、保存されたプロテアーゼ活性部位ドメイン、又は他の識別可能なモチーフを含むがこれらに限定されない幅広いカテゴリーにDASを挿入するためには一次配列順序データベース探索からの情報を使用できる。これらの入手源から収集した情報に基づき、アルゴリズムのタイプ及びトランスフェクトされる指示細胞系を選択する。非常に多数のモチーフは既に明確に特徴付けられ、現在のゲノムデータベースに含まれる非常に多数の遺伝子内に含まれる線形配列にコードされている。
【0121】
ある実施態様では、下記のステップが行われる:
1)DAS識別実験(データベース検索を含む)からの情報が関連生物学的プロセスを選択するための基礎として使用される(例えば、細胞周期変調、アポトーシス、転移性プロテアーゼその他に対する腫瘍細胞系からのDASを参照)。
【0122】
2)識別可能なモチーフによるDNA配列又はDASのソーティング(即ち、シグナル配列、7−トランスメンブランドメイン、保存されたプロテアーゼ活性部位ドメイン、その他)。この初期分類は、上記のように蛍光タグ付け戦術、宿主細胞系、指示細胞系、及びスクリーニングされる何組かの生物活性分子を決定するであろう。
【0123】
3)著明に確立された分子生物学方法を用いて、DASをこのためにデザインされた発現ベクター内に連結させる。普遍形発現ベクターにはそれらに対して一過性発現のために細胞へターゲット配列を送達するプロモーター、エンハンサー、及びターミネーターが含まれる。そうしたベクターはさらに、宿主によって発現したときの検出を容易にするために抗体タグ付け配列、直接関連配列、GFPのような発色団融合配列その他を含んでいてもよい。
【0124】
4)リン酸カルシウム共同沈降、リポソーム媒介性、DEAEデキストラン媒介性、ポリカチオン媒介性、ウイルス媒介性、又はエレクトロポレーションを含む標準トランスフェクションプロトコールを使用して、ベクターを含有するDASを用いて細胞が一過性にトランスフェクトされる、及びマイクロタイタープレート若しくはマイクロウエル配列内にプレーティングされる。或いは又、トランスフェクションはマイクロタイタープレート自体において直接実施されることも可能である。
【0125】
5)上記と同様に細胞スクリーニング手順を実行する。
【0126】
この実施態様では、転写活性化電位(例えば、DNA結合ドメイン、アミノ末端変調ドメイン、ヒンジ領域、若しくはカルボキシ末端リガンド結合ドメイン)を示唆するモチーフを有していることが証明されているDASを利用して新規ステロイドレセプターが識別される。
【0127】
この実験のために蛍光タグを定義することには、染色、及びGFPをコードする遺伝子に近位で融合している発現ベクター内へのDASの挿入によってGFPキメラを作製することによりDASにタグ付けすることを通しての核の識別を含んでいる。或いは又、発現したDASの一部の部分に高親和性を有する一本鎖抗体フラグメントを技術において利用できるテクノロジー(Cambridge Antibody Technologies)を用いて構成し、細胞内の推定転写アクチベーター/レセプターにタグ付けするために発蛍光団(FITC)へ連結する。この代替法は、DNAトランスフェクションを必要としない外部タグを提供するので、DASを生成するために使用されるオリジナルの一次培養から分布データを集めなければならない場合は有用であろう。
【0128】
プラスミド構造体。緑色蛍光タンパク質−DASキメラに対するコーディング配列を含有する真核発現プラスミドはGFPミュータントを用いて調製された。
この構造体を使用してHeLa細胞がトランスフェクトされた。宿主細胞内にトランスフェクトさせると、このプラスミドはGFP−DASppと呼ばれるDASタンパク質生成物に融合したGFPを産生する。
【0129】
細胞の調製及びトランスフェクション。HeLa細胞(ATCC CCL−2)はトリプシン処理され、5%木炭/デキストラン処理ウシ胎仔血清(FBS)(HyClone)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(C−DMEM)を含有するDMEMを用いてトランスフェクションの12〜24時間前にプレーティングされ、37℃及び5%CO2でインキュベートされた。トランスフェクションはリン酸カルシウム共同沈降によって、又はリポフェクタミン(Life technologies)を用いて実施する。リン酸カルシウムトランスフェクションのためには、トランスフェクションの前に培地を5%木炭/デキストラン処理FBSを含有するDMEMと交換する。細胞はリン酸カルシウム−DNA沈降物を用いて37℃及び5%CO2で4〜5時間インキュベートされ、沈降物を除去するためにDMEMで3〜4回洗浄され、その後にC−DMEMが添加される。リポフェクタミントランスフェクションは製造業者の使用説明書に従って抗生物質を含まない無血清DMEM中で実施する。DNA−リポソーム複合体と一緒に2〜3時間インキュベーションされた後、培地が除去され、C−DMEMと交換される。96ウエル・マイクロタイタープレート内のすべてのトランスフェクト細胞が薬物処理の前に24〜48時間に渡り33℃及び5%CO2でインキュベートされる。実験は、HeLa細胞中で一過性に発現したレセプターを用いて実施する。
【0130】
細胞内で発現したGFP−DASppの位置決定。細胞分布データを入手するために、トランスフェクト細胞の核がまず最初にC−DMEMに溶かした5μg/mlのHoechst 33342(Molecular Probes)を用いて33℃及び5%CO2で20分間かけて標識される。細胞はハンクス液(HBSS)中で1回洗浄される。細胞は生きたまま解析される、又はHBSSを用いてすすぎ洗いされ、HBSSに溶かした3.7%ホルムアルデヒドを用いて15分間かけて固定され、Hoechst 33342を用いて染色され、解析前に洗浄される。
【0131】
ある好ましい実施態様では、画像の収集及び解析は本発明の細胞スクリーニングシステムを用いて実施する。細胞内GFP−DASpp蛍光シグナルは細胞の視野から対の蛍光画像(GFP−DASpp及びHoechst 33342−標識核)を獲得することによって収集される。各時点で入手した対の画像を使用して、各細胞内の核及び細胞質領域が定義される。細胞質において散乱したシグナルを示しているデータはDNA転写アクチベーターである既知のステロイドレセプターと一致するであろう。
【0132】
GFP−DASppトランスロケーション誘発についてのスクリーニング。指示細胞系としてのGFP−DASppの適切な発現が確証された上記の構造体を用いて、下記を含むがこれらに限定されない一連のステロイド型リガンドを使用して様々なリガンドのスクリーニングが実施される:エストロゲン、黄体ホルモン、レチノイド、成長因子、男性ホルモン、及びその他多数のステロイド及びステロイドに基づく分子。画像の収集及び解析は、本発明の細胞スクリーニングシステムを用いて実施する。細胞内GFP−DASpp蛍光シグナルは細胞の視野から対の蛍光画像(GFP−DASpp及びHoechst 33342−標識核)を獲得することによって収集する。それぞれの回で得られた対の画像は、各細胞における核と細胞質を定義するのに使われる。GFP−DASppのトランスロケーションは、GFP蛍光の違いとしてまたは核−細胞質においてキメラの一体化されら蛍光により核の中のGFP−DASppの一体化された蛍光強度により二分されることによって計算される。細胞質から核内へのトランスロケーションは、DASppのリガンド結合活性化を示す、従って電位レセプターのクラス及び作用を識別する。このデータと同様の方法でステロイドレセプターの既知のインヒビター及びモディファイアー(修飾物質)を用いて入手した他のデータを結合すると、ターゲットとしてのDASppの妥当性を確認するか、又は様々な入手源からより多くのデータが生成されるであろう。
【0133】
実施例9. 追加のスクリーニング
細胞質膜と細胞質との間のトランスロケーション:
プロフィラクチン複合体解離及び細胞質膜へのプロフィリンの結合。ある実施態様では、プロフィリン膜結合の蛍光タンパク質バイオセンサーが2〜300nsの範囲内の蛍光寿命を持つプローブを用いて精製プロフィリンを標識することによって調製される(Federov et al.,(1994), J. Molec. Biol. 241:480−482; Lanbrechts et al.,(1995), Eur. J. Biochem. 230:281−285)。バルクローディング法を用いて標識プロフィリンが生きている指示細胞内へ導入され、その指示細胞が試験化合物を用いて処理される。蛍光異方性イメージング顕微鏡(Gough and Taylor,(1993), J. Cell Biol. 121:1095−1107)を使用して処理後0.1s〜10hの範囲の時間に渡って細胞質と細胞質膜の間のプロフィリンの蛍光誘導体の試験化合物依存性移動が測定される。
【0134】
細胞質膜へのRho−RhoGDI複合体のトランスロケーション。もう1つの実施態様では、試験化合物を用いて指示細胞が処理され、その後固定され、洗浄され、浸透させられる。指示細胞質膜、細胞質及び核をすべて明確に相違する着色マーカーを用いて標識され、その後に4色で標識した抗体を用いてRhoタンパク質の免疫位置決定法(immunolocalization)(Self et al.,(1995), Methods in Enzymology 256:3−10; Tanaka et al.,(1995), Methods in Enzymology 256:41−49)が実施される。細胞スクリーニングシステムを用いて4つの標識各々が個別に画像描出され、その後それらの画像を使用して試験化合物による影響を受けたトランスロケーションの阻害又は活性化の量が計算される。この計算を行うために、細胞質膜及び細胞質をマークするために使用するプローブの画像を用いて、細胞内Rhoタンパク質の位置をマーキングして免疫学的プローブの画像がマスキングされる。
各マスク下の単位面積当たりの統合輝度を使用して、細胞質膜統合輝度/面積を細胞質統合輝度/面積で割ることによってトランスロケーション指数が形成される。コントロール及び実験ウエルからのトランスロケーション指数値を比較することによって、各潜在的最重要化合物についてトランスロケーション率が計算される。
【0135】
Gタンパク質レセプター活性化に基づくβ−アレスチンの細胞質膜へのトランスロケーション
細胞質から細胞質膜へのトランスロケーションに関する高含量スクリーニングのもう1つの実施態様では、細胞質から細胞質膜へのβ−アレスチンタンパク質のトランスロケーションが細胞処理への応答において測定される。トランスロケーションを測定するために、蛍光ドメインマーカーを含有する生きている指示細胞が試験化合物を用いて処理され、本発明の細胞スクリーニングシステムを使用して時間及び空間におけるβ−アレスチンマーカーの移動が測定される。ある好ましい実施態様では、指示細胞は一過性若しくは安定性細胞トランスフェクション、及び細胞質及び細胞質膜ドメインをマークするために使用する他のレポーターの使用を通して指示細胞によって発現する緑色蛍光タンパク質−β−アレスチン(GFP−β−アレスチン)タンパク質キメラ(Barak et al., (1997), J. Biol. Chem. 272:27497−27500; Daaka et al.,(1998), J. Biol. Chem. 273:685−68)から構成される蛍光マーカーを含んでいる。
指示細胞が静止状態にあるときは、ドメインマーカー分子は主として細胞質膜又は細胞質に分配している。高含量スクリーニングでは、これらのマーカーを使用して別個の蛍光チャンネルにおいて細胞質及び細胞質膜が描出される。指示細胞が試験化合物で処理されている場合は、GFP−β−アレスチンの動的再分布が0.1s〜10hに及ぶタイムスケールに渡って一連の画像として記録される。
好ましい実施態様では、タイムスケールは1hである。各画像は細胞質膜と細胞質の間でGFP−β−アレスチンタンパク質キメラの移動を定量する方法によって解析される。この計算を行うために、細胞質膜及び細胞質をマークするために使用するプローブの画像を用いて、細胞内GFP−β−アレスチンタンパク質の位置をマーキングしてGFP−β−アレスチンプローブの画像がマスキングされる。各マスク下の単位面積当たりの統合輝度を使用して、細胞質膜統合輝度/面積を細胞質統合輝度/面積で割ることによってトランスロケーション指数が形成される。コントロール及び実験ウエルからのトランスロケーション指数値を比較することによって、各潜在的最重要化合物についてトランスロケーション率が計算される。高含量スクリーニングの出力は、重要な試験化合物を用いて処理されている非常に多数の個々の細胞内のトランスロケーションの大きさを記述する定量的データに関連する。
【0136】
小胞体とゴルジ体の間のトランスロケーション:
小胞体からゴルジ体への間のトランスロケーションに関する高含量スクリーニングのある実施態様では、水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus)のts045ミュータント株からのVSVGタンパク質(Ellenberg et al.,(1997), J. Cell. Biol. 138:1193−1206; Presley et al.,(1997), Nature 398:81−85)における小胞体からゴルジ体ドメインへのトランスロケーションが細胞処理への応答において測定される。トランスロケーションを測定するためには、蛍光レポーターを含有する指示細胞が試験化合物を用いて処理され、本発明の細胞スクリーニングシステムを使用して時間及び空間におけるレポーターの移動が測定される。指示細胞は一過性若しくは安定性細胞トランスフェクション、及び小胞体及びゴルジ体ドメインの所在位置を測定するために使用する他のドメインマーカーの使用を通して指示細胞によって発現するGFP−VSVGタンパク質キメラから構成される蛍光レポーターを含んでいる。指示細胞が40℃で静止状態にあるときは、GFP−VSVGタンパク質キメラ分子は主として小胞体に分配している。この高含量スクリーニングでは、別個の蛍光チャンネルにおいて小胞体及びゴルジ体を描出するために別個の色のドメインマーカーが使用される。指示細胞が試験化合物で処理されており、温度が同時に32℃へ下げられた場合は、GFP−VSVGタンパク質キメラの動的再分布が0.1s〜10hに及ぶタイムスケールに渡って一連の画像として記録される。各画像は小胞体及びゴルジ体ドメインの間でGFP−VSVGタンパク質キメラの移動を定量する方法によって解析される。この計算を行うために、小胞体及びゴルジ体ドメインをマークするために使用するプローブの画像を用いて、細胞内GFP−VSVGタンパク質の位置をマーキングしてGFP−VSVGプローブの画像がマスキングされる。各マスク下の単位面積当たりの統合輝度を使用して、細胞質膜統合輝度/面積を細胞質統合輝度/面積で割ることによってトランスロケーション指数を形成する。コントロール及び実験ウエルからのトランスロケーション指数値を比較することによって、各潜在的最重要化合物についてトランスロケーション率が計算される。高含量スクリーニングの出力は、1min〜10hに及ぶ時間に10−12〜10−3の範囲内の最終濃度で重要な試験化合物を用いて処理されている非常に多数の個々の細胞内のトランスロケーションの大きさを記述する定量的データに関連する。
【0137】
オルガネラ機能の誘発及び阻害:
細胞内微小管安定性。オルガネラ機能に関する高含量スクリーニングのある実施態様では、細胞内微小管のアッセンブリー状態が細胞処理に対する応答において測定される。微小管アッセンブリー状態を測定するためには、蛍光レポーターを含有する指示細胞が試験化合物によって処理され、本発明の細胞スクリーニングシステムを用いて空間及び時間においてそのレポーターの分布が測定される。
【0138】
ある好ましい実施態様では、細胞内微小管アッセンブリーのレポーターは、細胞分裂間期中及び有糸分裂細胞中の微小管と相互作用することが知られている遍在性微小管関連タンパク質であるMAP4(Bulinski et al.,(1997), J. Cell Science 110:3055−3064)である。指示細胞は一過性若しくは安定性細胞トランスフェクション、及び細胞質及び細胞質膜成分の所在位置を測定するために使用する他のドメインマーカーの使用を通して指示細胞によって発現するGFP−MAP4キメラから構成される蛍光レポーターを含んでいる。GFP−MAP4構造体は次のように調製される:制限酵素部位を導入するためにプライマーを用いて天然又はミュータントGFP分子のPCR増幅が実行される。PCR生成物は真核生物発現ベクター内のMAP4 cDNA内に連結される。その後発現ベクターを用いて指示細胞をトランスフェクトして一過性又は安定性にトランスフェクトされた指示細胞を産生させる。
【0139】
指示細胞は1min〜10hに及ぶ時間に渡って10−12Mから10−3Mの範囲内の最終濃度の試験化合物を用いて処理される。各及び細胞質をマークするために標識試薬を含有する増殖培地が添加される。インキュベーション後、細胞はハンクス液(HBSS)によって洗浄され、室温で10分間かけて3.7%ホルムアルデヒドを用いて固定され、洗浄してHBSS中に保存される。
【0140】
画像データは固定した、及び生きている指示細胞の両方から入手する。入手した各画像からの形態計測データを引き出すために、下記の解析方法を使用する: 1. 核及び細胞境界の外側で各ピクセルに対して=0の数値を有するマスクを作成するために各核及び細胞質画像の閾値を算定する。
【0141】
2. オリジナル画像上にマスクをオーバレイさせ、視野における各対象物(即ち、核又は細胞)を検出し、さらにそのサイズ、形状、及び統合強度を計算する。
【0142】
3. 上記で入手した全細胞マスクを対応するGFP−MAP4画像上にオーバーレイさせ、エッジ強さルーチンの自動測定法(Kolega et al.,(1993), BioImaging 1:136−150)を用いて各細胞内の総エッジ強さを計算する。細胞サイズについて標準化するために、総エッジ強さを細胞面積で割って“線維性(fibrousness)”値を得る。大きな線維性値は強度のエッジ強さ値と関連しており、このため明確な微小管構造を含有する細胞において最大になる。同様に、小さな線維性値は弱いエッジ強さ値と関連しており、解重合した微小管を含有する細胞において最小となる。線維性値の生理学的範囲は、微小管を安定させる薬物であるパクリタクセル(10μM)又は微小管を解重合させる薬物であるノコダゾール(10μg/ml)のどちらかを用いて細胞を処理することによって設定する。
【0143】
高分子の機能的位置決定を含む高含量スクリーニング
このクラスの高含量スクリーンの範囲内で、外部刺激に応答する高分子の機能的位置が生きている細胞内で測定される。
【0144】
糖分解酵素活性の調節。細胞酵素活性に関する高含量スクリーニングの好ましい実施態様では、処理された細胞において重要な糖分解調節酵素の活性が測定される。酵素活性を測定するためには、蛍光標識試薬を含有する指示細胞が試験化合物を用いて処理され、本発明の細胞スクリーニングシステムを用いてレポーターの活性が空間及び時間的に測定される。
【0145】
ある実施態様では、細胞内酵素活性のレポーターは、そのリン酸化状態が細胞内炭水化物同化作用又は異化作用を示す調節酵素であるフルクトース−6−リン酸、2−キナーゼ/フルクトース−2,6−ビスホスファターゼ(PFK−2)である(Deprez et al.,(1997), J.Biol. Chem. 272:17269−17275; Kealer et al.,(1996), FEBS Letters 395:225−2; Lee et al.,(1996), Biochemistry 35:6010−6019)。指示細胞は、PFK−2リン酸化の蛍光タンパク質バイオセンサーから構成される蛍光レポーターを含有している。蛍光タンパク質バイオセンサーは、この酵素の既知のリン酸化部位の近くへ環境的に高感受性蛍光色素を導入することによって構成される(Deprez et al.,(1997),上記; Giuliano et al.,(1995),上記)。色素はケトシアニンクラス(Kessler and Wolfbeis,(1991),Spectrochimica Acta 47A:187−192)又はタンパク質反応性部分とその励起若しくは放射スペクトルが溶液極性に対して感受性である蛍光色素とを含有するいずれかのクラスの色素であってよい。蛍光タンパク質バイオセンサーは、バルクローディング法を用いて指示細胞内に導入される。
【0146】
生きている指示細胞は1min〜10hに及ぶ時間に渡って10−12Mから10−3Mの範囲内の最終濃度の試験化合物を用いて処理される。ある好ましい実施態様では、各時点での対の蛍光スペクトル画像を収集することによって処理した生きている指示細胞から比率画像データが入手される。各時点から形態計測データを引き出すために、各対の画像間で各時点の2枚のスペクトル画像をピクセル毎に数的に分けることによって比率が計算される。その後、各ピクセル値を使用してPFK−2の部分リン酸化が計算される。リン酸化の部分値が小さい場合は、PFK−2は炭水化物異化作用を刺激する。リン酸化の部分値が高い場合は、PFK−2は炭水化物同化作用を刺激する。
【0147】
プロテインキナーゼA活性及びサブユニットの位置決定。高含量スクリーニングのもう1つの実施態様では、指示細胞内のドメインの位置決定及びプロテインキナーゼA(PKA)の活性の両方が試験化合物による処理に対する応答において測定される。
【0148】
指示細胞は、PKA活性化の蛍光タンパク質バイオセンサーを含有する蛍光レポーターを含んでいる。蛍光タンパク質バイオセンサーは、PKAの調節サブユニットと相互作用することが知られている部位の近くのPKAの触媒性サブユニット内に環境的に高感受性蛍光色素を導入することによって構成される(Harootunian et al.,(1993), Mol. Bil. of the Cell 4:993−1002; Johnson et al.,(1996), Cell 85:149−158; Giuliano et al.,(1995)上記)。色素はケトシアニンクラス(Kessler and Wolfbeis,(1991),Spectrochimica Acta 47A:187−192)又はタンパク質反応性部分とその励起若しくは放射スペクトルが溶液極性に対して感受性である蛍光色素とを含有するいずれかのクラスの色素であってよい。PKA活性化の蛍光タンパク質バイオセンサーは、バルクローディング法を用いて指示細胞内に導入される。
【0149】
ある実施態様では、生きている指示細胞が0.1s〜10hに及ぶ時間に渡って10−12Mから10−3Mの範囲内の最終濃度の試験化合物を用いて処理される。ある好ましい実施態様では、処理した生きている指示細胞から比率画像データが入手される。各時点から形態計測データを引き出すために、各対の画像間で比率が出され、さらに各ピクセル値を使用してPKAの部分活性化が計算される(例、cAMP結合後の触媒及び調節サブユニットの分離)。活性の部分値が高い場合は、PKAは生きている細胞内の生化学的カスケードを刺激する。
【0150】
PKAの触媒サブユニットのトランスロケーションを測定するためには、蛍光レポーターを含有する指示細胞が試験化合物を用いて処理され、細胞スクリーニングシステムを使用して時間及び空間におけるレポーターの移動が測定される。
指示細胞は、細胞質及び核ドメインの所在位置を測定するために使用するドメインマーカーから構成される蛍光レポーターを含んでいる。指示細胞が試験化合物で処理されているときは、PKA蛍光タンパク質バイオセンサーの動的再分布が0.1s〜10hに及ぶタイムスケールに渡って一連の画像として記録される。
各画像は細胞質及び核ドメインの間でPKAの移動を定量する方法によって解析される。この計算を行うために、細胞質及び核ドメインをマークするために使用するプローブの画像を用いて、PKA蛍光タンパク質バイオセンサーの画像をマスキングされる。各マスク下の単位面積当たりの統合輝度を使用して、細胞質膜統合輝度/面積を細胞質統合輝度/面積で割ることによってトランスロケーション指数が形成される。コントロール及び実験ウエルからのトランスロケーション指数値を比較することによって、各潜在的最重要化合物についてトランスロケーション率が計算される。高含量スクリーニングの出力は、1min〜10hに及ぶ時間に10−12〜10−3の範囲内の最終濃度で試験化合物によって処理されている非常に多数の個々の細胞内のトランスロケーションの大きさを記述する定量的データに関連する。
【0151】
遺伝子発現の誘発又は阻害に関する高含量スクリーニング
RNAに基づく蛍光バイオセンサー
細胞骨格タンパク質転写及びメッセージの位置決定。細胞−基質付着、細胞−細胞付着、シグナルトランスダクション、細胞−周期イベント、中間及びシグナル分子代謝、細胞移動、細胞−細胞連絡、及び細胞死を含む細胞の一般的クラスの生理学的応答の調節には遺伝子発現の変化が含まれることがある。高含量スクリーニングは又、このクラスの生理学的応答を測定するようにデザインできる。
【0152】
ある実施態様では、細胞内遺伝子発現のレポーターは、ターゲットmRNAを用いてハイブリダイズでき、その蛍光シグナルを変化させることのできるオリゴヌクレオチドである。ある好ましい実施態様では、オリゴヌクレオチドはその蛍光シグナルが分子間及び分子内相互作用に依存する蛍光に基づく試薬である分子標識である(Tyagi and Kramer,(1996),Nat. Biotech. Biotechnol. 14:303−308)。蛍光バイオセンサーは、試薬の各末端(5 及び3 )に1つが所在するように蛍光色素の蛍光エネルギー移行対を導入することによって構成される。色素は、フルオレセイン及びローダミン(Molecular Probes, Inc.)を含むがそれらに限定されない、その励起及び放射スペクトルが静止状態において色素間で蛍光エネルギー移行を生じさせるために十分な程度重複しているタンパク質反応性部分及び蛍光色素を含有しているあらゆるクラスの色素であってよい。ある好ましい実施態様では、β−アクチンをコードするメッセージの一部分(Kislauskis et al.,(1994), J. Cell Biol. 127:441−451; McCann et al.,(1997), Proc. Natl. Acad. Sci. 94:5679−5684; Sutoh,(1982),Biochemistry 21:3654−3661)を分子内ハイブリダイゼーションのために一緒に拘束された末端を持つヘアピン形オリゴヌクレオチドのループ領域内に挿入する。バイオセンサーの各末端では、蛍光供与体(フルオレセイン)及び蛍光受容体(ローダミン)が共有的に結合している拘束状態では、蛍光エネルギー移行が最大であるので、このためハイブリダイズされていない分子の指標である。β−アクチンをコードするmRNAを用いてハイブリダイズすると、拘束が破かれ、エネルギー移行が消失する。完全な蛍光バイオセンサーは、バルクローディング法を使用して指示細胞内に導入する。
【0153】
ある実施態様では、生きている指示細胞が0.1s〜10hに及ぶ時間に渡って10−12Mから10−3Mの範囲内の最終濃度の試験化合物を用いて処理される。ある好ましい実施態様では、処理した生きている指示細胞から比率画像データが入手される。各時点から形態計測データを引き出すために、各対の画像間で比率が出され、さらに各ピクセル値を使用して標識ヌクレオチドの部分ハイブリダイゼーションが計算される。ハイブリダイゼーションの部分値が低い場合は、β−アクチンの発現がほとんどないことが指示される。ハイブリダイゼーションの部分値が高い場合は、β−アクチンの発現が最大であることが指示される。
さらに、指示細胞の細胞質内のハイブリダイズされた分子の分布も又指示細胞の生理学的応答の尺度である。
【0154】
リガンドの細胞表面結合
生きている細胞における標識インスリンの細胞表面レセプターへの結合。細胞質膜ドメインが特定色の標識試薬で標識されている細胞が相違する色の蛍光プローブを用いて標識されているインスリン分子を含有している溶液(Lee et al.,(1997), Biochemistry 36:2701−2708; Martinez−Zaguilan et al.,(1996), Am. J. Physiol. 270:C1438−C1446)と一緒に適切な条件下で適切な時間をかけてインキュベートされる。インキュベーション後、未結合インスリン分子が洗い流され、細胞が固定され、細胞質膜上のインスリンの分布及び濃度が測定される。これを行うために、細胞膜画像がインスリン画像に対するマスクとして使用される。マスキングされたインスリン画像からの統合強度が既知量の標識インスリンを含有する1セットの画像と比較される。
細胞に結合したインスリンの量が標準から測定され、これを細胞と一緒にインキュベートしたインスリンの総濃度と一緒に使用して解離定数又はその細胞表面レセプターへ結合したインスリンが計算される。
【0155】
細胞区画の標識
細胞全体の標識
全細胞標識は、細胞形状の動態及び細胞の運動性を経時的に細胞の蛍光画像を解析することによって測定できるように細胞成分を標識することによって遂行される。
【0156】
ある実施態様では、反応性蛍光小分子が生きている細胞内に導入される。これらの膜透過性分子は細胞質膜のタンパク質成分を通過して拡散するが、タンパク質成分と反応もする。色素分子は細胞内分子と反応して各分子から放出される蛍光シグナルを増加させ、さらに生きている細胞内に蛍光色素をエントラップする。これらの分子にはアミノクマリン、ヒドロキシクマリン、エオシンジアセテート、フルオレセインジアセテート、一部のBodipy色素誘導体及びテトラメチルローダミンの反応性クロロメチル誘導体が含まれる。高分子に対するこれらの色素の反応性には遊離一次アミノ酸基及び遊離スルフヒドリル基が含まれる。
【0157】
もう1つの実施態様では、細胞表面上の分子と特異的に反応する蛍光標識された抗体類若しくはレクチン類(Sigma Chemical Company、セントルイス、ミズーリ州)と細胞とを相互作用させることによって細胞表面が標識される。緑色蛍光タンパク質、又はそのミュータントの成分を含有する重要な細胞によって発現した細胞表面タンパク質キメラも又全細胞表面を蛍光標識するために使用することができる。全細胞が標識されると、全細胞又は細胞の配列の画像は、細胞形状の測定、運動性、サイズ、及び増殖と分割を含む高含量スクリーニングにおけるパラメーターとなることができる。
【0158】
細胞質膜標識
ある実施態様では、全細胞質膜の標識には全細胞を標識するための上記と同一の方法の一部が使用される。全細胞表面を標識する発光分子は、細胞質膜を描出するように作用する。
【0159】
第二の実施態様では、細胞質膜のサブドメイン、細胞外表面、脂質二重層、及び細胞内表面を個別に標識することができ、これらを高含量スクリーニングの成分として使用できる。第一の実施態様では、細胞外表面は例えばフルオレセイン類、ローダミン類、シアニン類及びBodipy類のような蛍光色素のスクシニミジルエステル又はヨードアセタミド誘導体類のような反応性蛍光分子を用いる簡単な処理を使用して標識される。
【0160】
第三の実施態様では、細胞表面分子に対して高親和性を有する蛍光標識高分子を用いて細胞外表面が標識される。これらには例えばタチナタマメ(Jack bean)(ConA)、アカインゲンマメ(red kidney bean)(PHA−E)、又は小麦胚芽(wheat germ)に由来するレクチン類のフルオレセイン、ローダミン、及びシアニン誘導体類のような蛍光標識レクチン類が含まれる。
【0161】
第四の実施態様では、細胞質膜の細胞外領域を標識するために、細胞表面成分に対して高親和性を有する蛍光標識抗体類が用いられる。細胞表面レセプター及びイオンチャンネルの細胞外領域は、抗体類を用いて標識できるタンパク質の例である。
【0162】
第五の実施態様では、蛍光分子を用いて細胞質膜の脂質二重層が標識される。
これらの分子には細胞質膜脂質二重層の中心で疎水性領域と強力に相互作用する長鎖疎水性分子に付着した蛍光色素が含まれる。これらの色素の例には、PKHシリーズの色素(米国特許第4,783,401号、第4,762,791号、及び第4,859,584号; Sigma Chemical Company、セントルイス、ミズーリ州から市販で入手可能)、例えばニトロベンゾキサジアゾールグリセロホスホエタノールアミン及びフルオレセイン誘導ジヘキサデアノイルグリセロホスホエタノールアミンのような蛍光リン脂質類、例えば5−ブチル−4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ノナン酸及び1−ピレンデカン酸(Molecular Probes, Inc.)のような蛍光脂肪酸、コレステリル4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノエート及びコレステリル1−ピレンヘキサノエートを含む蛍光ステロール類、及び例えばアネキシンVのフルオレセイン誘導体(Caltag Antibody Co,Burlingame,カリフォルニア州)のような脂質二重層成分と特異的に相互作用する蛍光標識タンパク質類が含まれる。
【0163】
もう1つの実施態様では、蛍光分子を用いて細胞質膜の細胞内成分が標識される。これらの分子の例は、三量体Gタンパク質レセプター、アデニルシクラーゼ、及びイオン輸送タンパク質類の細胞内成分である。これらの分子は蛍光標識特異抗体への緊密な結合の結果として、又は膜関連タンパク質及び緑色蛍光タンパク質から構成される蛍光タンパク質キメラ及びそのミュータント類の取り込みによって標識できる。
【0164】
エンドソームの蛍光標識
ある実施態様では、レセプター媒介性エンドサイトーシスによって細胞内に輸送されるリガンドを使用してエンドソームオルガネラの動態が追跡される。標識リガンドの例には、Bodipy FL標識低密度リポタンパク質複合体類、テトラメチルローダミントランスフェリンアナログ類、及び蛍光標識上皮細胞成長因子(Molecular Probes, Inc.)が含まれる。
【0165】
第二の実施態様では、細胞内のエンドソーム区画をマークするためにエンドソームリガンドを特異的に標識する蛍光標識第一又は第二抗体類(Sigma Chemical Co,セントルイス、ミズーリ州; Molecular Probes, Inc.,ユージーン、オレゴン州; Caltag Antibody CO.)が使用される
第三の実施態様では、緑色蛍光タンパク質、又はそのミュータントをそのインターナリゼーションがエンドソームを標識するレセプターと融合させることによって、形成されたタンパク質キメラを発現している細胞内で蛍光標識する。EGF、トランスフェリン、及び低密度リポタンパク質受容体のキメラがこれらの分子の例である。
【0166】
リソソームの標識
ある実施態様では生きている細胞及び固定化細胞のリソソーム区画を標識するために膜透過性リソソーム特異的蛍光試薬が使用される。これらの試薬には、蛍光分子ニュートラルレッド、N−(3−((2,4−ジニトロフェニル)アミノ)プロピル)−N−(3−アミノプロピル)メチルアミン、及びリソソーム内pH並びにリソソームの動的分布を報告するLysoTrackerプローブ(Molecular Probes, Inc.)が含まれる。
【0167】
第二の実施態様では、特異的リソソームドメインに局在するリソソーム成分を標識するためにリソソーム抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)が使用される。これらの成分の例は、コレステロールエステル化水分解に含まれる分解酵素、膜タンパク質プロテアーゼ類、及びヌクレアーゼ類並びにATP駆動リソソームプロトンポンプである。
【0168】
第三の実施態様では、リソソームドメインを標識するためには、例えば緑色蛍光タンパク質又はそのミュータントのような内因的発光タンパク質に遺伝的に融合したリソソームタンパク質から構成されるタンパク質キメラが使用される。これらの成分の例は、コレステロールエステル化水分解に含まれる分解酵素、膜タンパク質プロテアーゼ類、及びヌクレアーゼ類並びにATP駆動リソソームプロトンポンプである。
【0169】
細胞質蛍光標識
ある実施態様では、反応基を備えた細胞透過性蛍光色素(Molecular Probes, Inc.)を生きている細胞と反応させる。モノブロモビマン、5−クロロメチルフルオロセインジアセテート、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシニミジルエステル、及びクロロメチルテトラメチルローダミンを含む反応性色素は、細胞の細胞質を長期標識するために使用される細胞透過性蛍光色素の例である。
【0170】
第二の実施態様では、バルクローディング法を使用して例えばLuciferイエローのような極性トレーサー分子及びカスケードブルーに基づく蛍光色素(Molecular Probes, Inc.)を細胞内に導入され、さらに細胞質標識にも使用される。
【0171】
第三の実施態様では、細胞質成分に対する抗体類(Sigma Chmical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して細胞質が蛍光標識される。細胞質抗原の例は、中間代謝に含まれる多数の酵素である。エノラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、及びアセチル−CoAデヒドロゲナーゼが均一に分布した細胞質抗原の例である。
【0172】
第四の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合している細胞質タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用して細胞質が標識される。均一に分布したタンパク質の蛍光キメラは、全細胞質ドメインを標識するために使用される。これらのタンパク質の例は、中間代謝に含まれる多数のタンパク質であり、エノラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、及びヘキソキナーゼが含まれる。
【0173】
第五の実施態様では、細胞質抗原に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的細胞質サブドメインに所在する細胞質成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、細胞骨格タンパク質類のアクチン、チューブリン、及びサイトケラチンである。細胞内のこれらのタンパク質の集団は、この場合は線維状である別個の構造に組み立てられる。このため抗体に基づく試薬によるこれらのタンパク質の蛍光標識は細胞質の特異的サブドメインが標識される。
【0174】
第六の実施態様では、細胞質タンパク質と強力に相互作用する抗体をベースとしない蛍光標識分子を使用して特異的細胞質成分が標識される。ある実施例は酵素DNAse I(Molecular Probes, Inc.)の蛍光アナログである。この酵素の蛍光アナログは細胞質アクチンに緊密及び特異的に結合するので、細胞質のサブドメインが標識される。もう1つの実施例では、キノコの毒素でアルファロイジン又は薬物パクリタクセル(Molecular Probes, Inc.)の蛍光アナログを使用して各々アクチン−及び微小管−細胞骨格の成分が標識される。
【0175】
第七の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合している細胞質タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用して細胞質の特異的ドメインが標識される。高度に局在性のタンパク質の蛍光キメラは細胞質サブドメインを標識するために使用される。これらのタンパク質の例は、細胞骨格を調節することに関係する多数のタンパク質である。それらには構造タンパク質であるアクチン、チューブリン、及びサイトケラチン並びに調節タンパク質である微小管関連性タンパク質4及びα−アクチニンが含まれる。
【0176】
核の標識
ある実施態様では、膜透過性核酸特異的蛍光試薬(Molecular Probes, Inc.)を使用して生きている細胞及び固定化細胞の核が標識される。これらの試薬には、シアニンに基づく色素(例、TOTO( )、YOYO( )、及びBOBO( ))、フェナンチジン類及びアクリジン類(例、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、及びアクリジンオレンジ)、インドール類及びイミダゾール類(例、Hoechst 33258、Hoechst 33342、及び4 ,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)及びその他の類似の試薬類(例、7−アミノアクチノマイシンD、ヒドロキシスチルバミジン、及びソラレン類)が含まれる。
【0177】
第二の実施態様では、核抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的核ドメインに所在する核成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、DNAの構造及び機能を維持することに関係する高分子類である。DNA、RNA、ヒストン類、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、ラミン類、及び例えばアクチンのような細胞質タンパク質の核変種が核抗原類の例である。
【0178】
第三の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合している核タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用して核ドメインが標識される。これらのタンパク質の例は、DNAの構造及び機能を維持することに関係する多数のタンパク質である。ヒストン類、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、ラミン類、及び例えばアクチンのような細胞質タンパク質の核変種が核タンパク質の例である。
【0179】
ミトコンドリアの標識
ある実施態様では、膜透過性ミトコンドリア特異的蛍光試薬(Molecular Probes, Inc.)を使用して生きている細胞及び固定化細胞のミトコンドリアが標識される。これらの試薬には、ローダミン123、テトラメチルロザミン、JC−1、及びMitoTracker反応性色素が含まれる。
【0180】
第二の実施態様では、ミトコンドリア抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的ミトコンドリアドメインに所在するミトコンドリア成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、DNAの構造及び機能を維持することに関係する高分子類である。DNA、RNA、ヒストン類、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、及び例えばミトコンドリアtRNA及びrRNAのような細胞質高分子のミトコンドリア変種がミトコンドリア抗原類の例である。ミトコンドリア抗原のその他の例には、ミトコンドリアにおいて所見される酸化的リン酸化系の成分(例、シトクロムc、シトクロムcオキシダーゼ、及びコハク酸デヒドロゲナーゼ)である。
【0181】
第三の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合しているミトコンドリアタンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用してミトコンドリアドメインが標識される。
これらのタンパク質の例は、DNAの構造及び機能を維持することに関係する多数のタンパク質である。その例には、ヒストン類、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、及び例えばミトコンドリアにおいて所見される酸化的リン酸化系の成分(例、シトクロムc、シトクロムcオキシダーゼ、及びコハク酸デヒドロゲナーゼ)が含まれる。
【0182】
小胞体の標識
ある実施態様では、膜透過性小胞体特異的蛍光試薬(Molecular Probes, Inc.)を使用して生きている細胞及び固定化細胞の小胞体が標識される。これらの試薬には、短鎖カルボシアニン色素(例、DiOC6及びDiOCO3)、長鎖カルボシアニン色素(例、DiIC16及びDiIC18)、及び例えばコンカナバリンAのような蛍光標識レクチン類が含まれる。
【0183】
第二の実施態様では、小胞体抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的小胞体ドメインに所在する小胞体成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、脂肪酸伸長系、グルコース−6−ホスファターゼ、及びHMG CoA−レダクターゼに含まれる高分子類である。
【0184】
第三の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合している小胞体タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用して小胞体ドメインが標識される。これらのタンパク質の例は、脂肪酸伸長系、グルコース−6−ホスファターゼ、及びHMG CoA−レダクターゼに含まれる高分子類である。
【0185】
ゴルジ体の標識
ある実施態様では、膜透過性ゴルジ体特異的蛍光試薬(Molecular Probes, Inc.)を使用して生きている細胞及び固定化細胞のゴルジ体が標識される。これらの試薬には、例えば小麦胚芽アグルチニン及びBrefeljin Aのような蛍光標識高分子並びに蛍光標識セラミドが含まれる。
【0186】
第二の実施態様では、ゴルジ体抗原類に対する抗体類(Sigma Chemical Co.; Molecular Probes, Inc.; Caltag Antibody Co.)を使用して特異的ゴルジ体ドメインに所在するゴルジ体成分が蛍光標識される。これらの成分の例は、N−アセチルグルコサミンホスホトランスフェラーゼ、ゴルジ体特異的ホスホジエステラーゼ、及びマンノース−6−リン酸レセプタータンパク質である。
【0187】
第三の実施態様では、例えば緑色蛍光タンパク質のような内因性蛍光タンパク質又はそのミュータントに遺伝的に融合しているゴルジ体タンパク質から構成されるタンパク質キメラを使用してゴルジ体ドメインが標識される。これらの成分の例は、N−アセチルグルコサミンホスホトランスフェラーゼ、ゴルジ体特異的ホスホジエステラーゼ、及びマンノース−6−リン酸レセプタータンパク質である。
【0188】
ここに提示した多数の実施例は単一細胞プロセスの測定を含んでいるが、これも又例示だけが目的であることが意図されている。多重パラメーター高含量スクリーニングは、数種の単一パラメータースクリーニングを多重高含量スクリーニングに結合することによって、又は細胞パラメーターをいずれかの現行高含量スクリーニングへ追加することによって作り出すことができる。さらに、各実施例は生きている細胞又は固定化細胞のどちらかに基づいているように記載されているが、各高含量スクリーニングは生きている細胞及び固定化細胞の両方と一緒に使用するようにデザインすることができる。
【0189】
当業者であれば、ここに提供した開示に基づき広く多様な別個のスクリーニングを開発できることは認識できるであろう。細胞内の特定成分のトランスロケーション又は再組織化を含む細胞内の既知の生化学的及び分子プロセスに関する広大なリストがあり、このリストは増え続けている。細胞表面から細胞内のターゲット部位へのシグナル経路は細胞質膜関連タンパク質から細胞質へのトランスロケーションを含んでいる。例えば、タンパク質チロシンキナーゼのsrcファミリーの1つであるpp60c−src(Walker et al.,(1993), J. Biol. Chem. 268:19552−19558)は血小板由来成長因子(PDGF)により線維芽細胞が刺激を受けると細胞質膜から細胞質へトランスロケートすることが知られている。さらに、スクリーニングのターゲット自体をリガンド結合及びトランスロケーション後修飾を含む分子変化を報告する蛍光に基づく試薬に転換することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】図1は、細胞に基づくスキャニングシステムの構成要素の図である。
【図2】図2は、顕微鏡の小組立体の略図である。
【図3】図3は、カメラの小組立体の略図である。
【図4】図4は、細胞スキャニングシステムのプロセスを図解している。
【図5】図5は、ユーザーを誘導するための主要な機能を示しているユーザーインターフェースを図解している。
【図6】図6は、1つのプラットフォームがマイクロタイタープレートのすべてのウエルを読み取るための望遠鏡レンズを使用し、第2のプラットフォームが1ウエル内の個々の細胞を読み取るためにより高倍率のレンズを使用する、細胞に基づくスクリーニングのためのデュアルモードシステムの2プラットフォーム式アーキテクチャーのブロック図である。
【図7】図7は、マイクロタイタープレートのすべてのウエルを読み取るための可動式望遠鏡レンズ及び1ウエル内の個々の細胞を読み取るための可動式のより高倍率のレンズを使用する、細胞に基づくスクリーニングのためのデュアルモードシステムの単一プラットフォームアーキテクチャーのための光学系の詳細である。
【図8】図8は、細胞に基づくスクリーニングシステム上の動態データを収集するための液体分注システムの図である。
【図9】図9は、細胞に基づくスキャニングシステムにおける処理工程の工程系統図である。
【図10】図10のA〜Jは、核トランスロケーションアッセイの戦術を図解している。
【図11】図11は、マイクロタイタープレートの高スループットスクリーニングと高含量スクリーニングとを組み合わせた細胞に基づくスクリーニングのためのデュアルモードシステムにおける処理工程を定義した工程系統図である。
【図12】図12は、細胞に基づくスクリーニングのためのシステムの高スループットモードにおける処理工程を定義した工程系統図である。
【図13】図13は、細胞に基づくスクリーニングのためのシステムの高含量モードにおける処理工程を定義した工程系統図である。
【図14】図14は、細胞に基づくスクリーニングのためのシステムの高含量モードにおいて動態データを収集するために必要とされる処理工程を定義した工程系統図である。
【図15】図15は、動態データの収集中に1ウエル内で実行される処理工程を定義した工程系統図である。
【図16】図16は、既知のトランスロケーションのインヒビター(阻害物質)からのデータの例である。
【図17】図17は、既知のトランスロケーションのスティミュレーター(促進物質)からのデータの例である。
【図18】図18は、グラフ表示に関するデータ提示を図解している。
【図19】図19は、細胞に基づくスクリーニングのためのシステムの高スループットモードからのデータ、高含量モードへ通過したデータ、高含量モードで収集されたデータ、及びそのデータの解析結果の例の図解である。
【図20】図20は、細胞質からの薬物誘発性の核トランスロケーションの測定を示している。
【図21】図21は、図20に示された測定のグラフィカルユーザーインターフェースを図解している。
【図22】図22は、図20に示された測定のデータ提示とともにグラフィカルグラフィカルユーザーインターフェースを図解している。
【図23】図23は、図20で図示された測定値から入手された動態データ示すグラフである。
【図24】図24は、薬物誘発性アポトーシスの高含量スクリーニングを詳細に示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターシステム上の細胞スクリーニングデータの獲得、記憶及び検索するための下記のステップを含む方法:
a) ウェルを含有するプレートを提供するステップ;
b) データベース中の前記プレートのスクリーニングに使用される入力パラメーターを記憶するステップ;
c) 所望のウェルの配列のために下記のステップi)乃至ix)を繰り返すステップ:
i) 前記プレート上の個々のウェルを選択するステップ;
ii) 前記ウェルから画像データを収集するステップ;
iii) 前記データベースに画像データを記憶するステップ;
iv) 画像データから特徴データを収集するステップ;
v) 前記データベースに前記特徴データを記憶するステップ;
vi) 前記ウェルから収集された前記画像データ及び前記特徴データを使用してウェルサマリーデータを計算するステップ;
vii) 前記データベースに前記ウェルサマリーデータを記憶するステップ;
viii) 前記データベースからの前記ウェルサマリーデータを使用してプレートサマリーデータを計算するステップ;及び
ix) 前記データベースに前記プレートサマリーデータを記憶するステップ。
【請求項2】
前記ウェルが試験化合物で処理された細胞を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレートがマイクロプレートからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記データベースがマイクロプレートデータを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記データベースがデジタル画像データを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記データベースが細胞特徴データを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記プレートのスクリーニングに使用される入力パラメーターは、細胞核を識別するためのパラメーター、細胞質を識別するためのパラメーター、蛍光試薬を識別するためのパラメーター、細胞選択の設定のためのパラメーター、ウェル毎の解析中の細胞数のパラメーター、及び解析中の細胞のサイズ、形状、及び強度の範囲のパラメーターの1種以上を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記特徴データは、サイズ、形状、強度、位置、面積、周囲、高さ、幅、全蛍光強度、平均蛍光強度、蛍光強度の比率、蛍光強度の差、及び数の1種以上を収集することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記ウェルサマリーデータを収集するステップは、サイズ、形状、強度、位置、面積、周囲、高さ、幅、全蛍光強度、平均蛍光強度、蛍光強度の比率、蛍光強度の差、及び数の1種以上を計算するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
細胞スクリーニングシステムに請求項1乃至9のいずれか1つの手順を実行させるための1セットの命令を含むコンピューター読取り可能な記憶媒体。
【請求項11】
下記を含む自動細胞スクリーニングシステム:
a)対物レンズを有する蛍光顕微鏡、細胞の保持のために場所の配列を備えたプレートを保持するために適しているXYステージ、及びフォーカシングを実行するために前記プレート又は前記対物レンズを移動させるための手段;
b) デジタルカメラ;
c) 励起光を前記場所の配列内の細胞に向けるための光源;
d) 前記細胞から放射された蛍光をデジタルカメラへ向けるための光学系;及び
e) デジタルデータが細胞又は細胞下の画像を含み、さらに請求項10のコンピューター読取り可能な記憶媒体を含む、前記デジタルカメラからの前記デジタルデータを受信して処理するためのコンピューター。
【請求項12】
更に、前記コンピューターに接続されたスクリーンディスプレイを含むことを特徴とする請求項11に記載の細胞スクリーニングシステム。
【請求項13】
前記コンピューターは、データベースの前記デジタルデータを記憶することを特徴とする請求項11又は12に記載の細胞スクリーニングシステム。
【請求項14】
更に、流体デリバリーシステムを含むことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1つに記載の細胞スクリーニングシステム。
【請求項15】
更に、高スループットのために低解像度でプレートを画像描出するための、及びより高い解像度で特定のウェルを画像描出するためのリーダーを含むことを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1つに記載の細胞スクリーニングシステム。
【請求項1】
コンピューターシステム上の細胞スクリーニングデータの獲得、記憶及び検索するための下記のステップを含む方法:
a) ウェルを含有するプレートを提供するステップ;
b) データベース中の前記プレートのスクリーニングに使用される入力パラメーターを記憶するステップ;
c) 所望のウェルの配列のために下記のステップi)乃至ix)を繰り返すステップ:
i) 前記プレート上の個々のウェルを選択するステップ;
ii) 前記ウェルから画像データを収集するステップ;
iii) 前記データベースに画像データを記憶するステップ;
iv) 画像データから特徴データを収集するステップ;
v) 前記データベースに前記特徴データを記憶するステップ;
vi) 前記ウェルから収集された前記画像データ及び前記特徴データを使用してウェルサマリーデータを計算するステップ;
vii) 前記データベースに前記ウェルサマリーデータを記憶するステップ;
viii) 前記データベースからの前記ウェルサマリーデータを使用してプレートサマリーデータを計算するステップ;及び
ix) 前記データベースに前記プレートサマリーデータを記憶するステップ。
【請求項2】
前記ウェルが試験化合物で処理された細胞を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレートがマイクロプレートからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記データベースがマイクロプレートデータを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記データベースがデジタル画像データを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記データベースが細胞特徴データを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記プレートのスクリーニングに使用される入力パラメーターは、細胞核を識別するためのパラメーター、細胞質を識別するためのパラメーター、蛍光試薬を識別するためのパラメーター、細胞選択の設定のためのパラメーター、ウェル毎の解析中の細胞数のパラメーター、及び解析中の細胞のサイズ、形状、及び強度の範囲のパラメーターの1種以上を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記特徴データは、サイズ、形状、強度、位置、面積、周囲、高さ、幅、全蛍光強度、平均蛍光強度、蛍光強度の比率、蛍光強度の差、及び数の1種以上を収集することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記ウェルサマリーデータを収集するステップは、サイズ、形状、強度、位置、面積、周囲、高さ、幅、全蛍光強度、平均蛍光強度、蛍光強度の比率、蛍光強度の差、及び数の1種以上を計算するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
細胞スクリーニングシステムに請求項1乃至9のいずれか1つの手順を実行させるための1セットの命令を含むコンピューター読取り可能な記憶媒体。
【請求項11】
下記を含む自動細胞スクリーニングシステム:
a)対物レンズを有する蛍光顕微鏡、細胞の保持のために場所の配列を備えたプレートを保持するために適しているXYステージ、及びフォーカシングを実行するために前記プレート又は前記対物レンズを移動させるための手段;
b) デジタルカメラ;
c) 励起光を前記場所の配列内の細胞に向けるための光源;
d) 前記細胞から放射された蛍光をデジタルカメラへ向けるための光学系;及び
e) デジタルデータが細胞又は細胞下の画像を含み、さらに請求項10のコンピューター読取り可能な記憶媒体を含む、前記デジタルカメラからの前記デジタルデータを受信して処理するためのコンピューター。
【請求項12】
更に、前記コンピューターに接続されたスクリーンディスプレイを含むことを特徴とする請求項11に記載の細胞スクリーニングシステム。
【請求項13】
前記コンピューターは、データベースの前記デジタルデータを記憶することを特徴とする請求項11又は12に記載の細胞スクリーニングシステム。
【請求項14】
更に、流体デリバリーシステムを含むことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1つに記載の細胞スクリーニングシステム。
【請求項15】
更に、高スループットのために低解像度でプレートを画像描出するための、及びより高い解像度で特定のウェルを画像描出するためのリーダーを含むことを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1つに記載の細胞スクリーニングシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
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【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−17845(P2008−17845A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184678(P2007−184678)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【分割の表示】特願2002−61217(P2002−61217)の分割
【原出願日】平成10年2月27日(1998.2.27)
【出願人】(500476912)セロミックス インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Cellomics, Inc.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【分割の表示】特願2002−61217(P2002−61217)の分割
【原出願日】平成10年2月27日(1998.2.27)
【出願人】(500476912)セロミックス インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Cellomics, Inc.
【Fターム(参考)】
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