説明

細胞の細胞壁構成成分のシグナル検出を増強する方法

本発明は細胞壁構成成分のシグナル検出を増強する方法に関し、方法は細胞を溶解して細胞壁断片を形成するステップと、細胞壁断片を分析するステップを伴う。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一般に使用される抗生物質に対する抵抗性を有する細菌の出現は、感染した個人の処置と重篤なかかわりあいがある増加している問題である。したがって早い段階に比較的迅速な様式でこのような細菌の存在を判定し、このような細菌に対してより良い制御をすることにはさらなる重要性がある。これはまた、多様なその他の微生物にも当てはまる。
【0002】
顕著な関心が持たれるこのような1つの微生物が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(「S.aureus」)である。これは、小さな皮膚膿瘍および創傷感染などの表在性病変と、心内膜炎、肺炎、および敗血症などの全身性かつ生命に関わる病状と、ならびに食中毒および毒性ショック症候群などの中毒をはじめとする広範な感染症を引き起こす病原体である。いくつかの株(例えばメチシリン−耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus))は、いくつかの選ばれた抗生物質以外の全てに対して耐性である。
【0003】
微生物、特に抗生物質耐性細菌の検出のための現行技術は、概して時間がかかり、典型的に細菌を純粋形態で培養することを伴う。急性感染に関わる病原性ブドウ球菌、すなわちヒトおよび動物における黄色ブドウ球菌(S.aureus)、および動物におけるS.インターメジウス(S.intermedius)およびS.ヒイカス(S.hyicus)の同定のためのこのような1つの技術は、微生物が血漿を凝固する能力に基づく。少なくとも2つの異なる血漿凝固テストについて述べられている。遊離コアグラーゼのための試験管試験、および結合コアグラーゼまたはクランピング因子のためのスライド試験である。試験管コアグラーゼ試験は、典型的に水で戻した血漿を添加した脳−心臓浸出物ブロス内で一晩培養液を混合し、混合物を4時間インキュベートして、凝塊形成について緩慢に試験管を傾けることで、凝塊形成について試験管を観察することを伴う。黄色ブドウ球菌(S.aureus)については、少数の株が凝塊形成のために4時間超を要するかもしれないので、試験の一晩インキュベーションが推奨されている。スライドコアグラーゼ試験は、典型的により早くより経済的である。しかし10%〜15%の黄色ブドウ球菌(S.aureus)株は、陰性結果を生じるかもしれず、分離株を試験管試験によって再検査することが必要になる。
【0004】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)を検出する方法、ならびにその他の微生物について技術分野で述べられているが、改善された検出方法には利点があるだろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、細胞を溶解して細胞壁断片を形成するステップと、関心のある構成成分について細胞壁断片を分析するステップを伴う、細胞壁の構成成分のシグナル検出を増強する方法を提供する。特に方法は、微生物、特に黄色ブドウ球菌に特徴的な細胞壁の1つ以上の構成成分を検出するために有用である。
【0006】
一実施形態では、本発明は、細胞の細胞壁構成成分のシグナル検出を増強する方法を提供する。方法は、細胞を含む試験サンプルを提供するステップと、細胞を溶解して細胞壁断片を含む溶解産物を形成するステップと、細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップを含み、細胞壁構成成分が非溶解細胞中の同一構成成分と比べて増強されたシグナルを示す。
【0007】
別の実施形態では、黄色ブドウ球菌に特徴的な細胞の細胞壁構成成分のシグナル検出を増強する方法が提供される。方法は、培養されていない細胞を含む試験サンプルを提供するステップと、培養されていない細胞を溶解して細胞壁断片を含む溶解産物を形成するステップと、黄色ブドウ球菌に特徴的な細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップを含み、黄色ブドウ球菌に特徴的な細胞壁構成成分が、非溶解細胞中の同一構成成分と比べて増強されたシグナルを示す。
【0008】
別の実施形態では、黄色ブドウ球菌に特徴的な細胞の細胞壁構成成分のシグナル検出を増強する方法が提供される。方法は、培養されていない細胞を含む試験サンプルを提供するステップと、培養されていない細胞をリソスタフィンと接触させて細胞壁断片を含む溶解産物を形成するステップと、タンパク質Aについて細胞壁断片を分析するステップを含み、細胞壁断片中のタンパク質Aが非溶解細胞の細胞壁中のタンパク質Aと比べて増強されたシグナルを示す。
【0009】
「含んでなる」という用語およびそのバリエーションは、これらの用語が説明および特許請求の範囲に現れる場合、限定的意味を有さない。
【0010】
ここでの用法では、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」は区別なく使用される。
【0011】
上の本発明の要約は、それぞれの開示される実施形態またはあらゆる本発明の実装例について述べることを意図しない。続く説明は例証的な実施形態をより詳しく例証する。本願明細書全体の数カ所において、実施例のリストを通じてガイダンスが提供され、その実施例は様々な組み合わせで使用できる。各例で列挙されるリストは、代表群としてのみの役目を果たし、排他的リストではないものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、例えば原核生物および真核生物の生物体からの細胞の細胞壁構成成分のシグナル検出を増強する方法を提供する。このような方法は、試験サンプル中の(培養されていてもまたは培養されていなくてもよい)細胞を溶解して細胞壁断片を形成するステップと、関心のある構成成分について細胞壁断片を分析するステップを伴う。
【0013】
特に、本発明の方法は、関心のある種(例えば関心のある微生物)に特徴的な細胞壁の1つ以上の構成成分、そして任意に関心のある種にさらに特徴的な1つ以上の内部細胞構成成分(例えば関心のある抗生物質耐性微生物)を検出するのに有用である。ここでは分析される細胞壁断片は、細胞壁の固体断片であると考えられる。すなわち溶解に際して可溶化されないと考えられ、細胞壁は単に細片になるだけである。さらに分析される細胞壁構成成分は、なおも細胞壁断片の一部(すなわち中または上)である。すなわちそれらは、溶解に際して可溶化されない。顕著なことに、これは非溶解細胞内の同一構成成分と比べて細胞壁構成成分のシグナルを増強する。
【0014】
特定の関心がある微生物(microbes)(すなわち微生物(microorganisms))としては、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、真菌、原生動物、マイコプラズマ(Mycoplasma)、酵母、ウィルス、および脂質エンベロープウィルスまでもが挙げられる。特に関連性のある生物体としては、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)のメンバー、またはブドウ球菌(Staphylococcus)spp.、連鎖球菌(Streptococcus)spp.、シュードモナス(Pseudomonas)spp.、腸球菌(Enterococcus)spp.、大腸菌(Esherichia)spp.、バシラス(Bacillus)spp.、リステリア(Listeria)spp.、ビブリオ(Vibrio)spp.、ならびにヘルペスウィルス、アスペルギルス(Aspergillus)spp.、フザリウム(Fusarium)spp.、およびカンジダ(Candida)spp.属が挙げられる。特に毒性の高い生物体としては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)などの耐性株を含む)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae)、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(Enterococcus)(VRE)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(VRSA)、バンコマイシン中間体−耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(VISA)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、A.フミガーツス(A.fumigatus)、A.クラバタス(A.clavatus)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、F.オキシスポルム(F.oxysporum)、F.クラミドスポラム(F.chlamydosporum)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ菌(V.parahemolyticus)、豚コレラ菌(Salmonella choleraesuis)、チフス菌(S.typhi)、ネズミチフス菌(S.typhimurium)、鵞口瘡カンジダ(Candida albicans)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.クルセイ(C.krusei)、および多剤耐性グラム陰性杆菌(MDR)が挙げられる。
【0015】
グラム陽性およびグラム陰性細菌に対して関心がある。特に関心が高いのは、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性細菌である。典型的にこれらは、細胞壁タンパク質などの細菌に特徴的な細胞壁構成成分の存在を検出することによって検出できる。また特に関心が高いのは、MRSA、VRSA、VISA、VRE、およびMDRを含む抗生物質耐性微生物である。典型的にこれらは、膜タンパク質などの内部細胞構成成分の存在をさらに検出することによって検出できる。
【0016】
微生物に特徴的な細胞壁構成成分のシグナルが増強されるので、本発明は、このような微生物のサンプルを分析する上で従来の技術よりも有利である。このような細胞壁構成成分としては、例えばタンパク質Aなどの細胞壁タンパク質と、フィブリノーゲン結合性タンパク質(例えばクランピング因子)、フィブロネクチン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク質、ヘパリン/ヘパリン関連多糖類結合タンパク質などの微生物表面構成成分認識付着マトリックス分子(MSCRAMM)などが挙げられる。タンパク質Aと、フィブリノーゲン結合性要素およびクランピング因子A、B、およびEfbなどのクランピング因子はまた、黄色ブドウ球菌の存在を検出する方法においても特に有用である。その他の関心のある細胞壁構成成分としては、莢膜多糖類および細胞壁炭水化物(例えばタイコ酸およびリポタイコ酸)が挙げられる。
【0017】
このようなまたはその他の種関心のある微生物は、例えば血液、唾液、眼球内流体、関節液、脳脊髄液、膿、汗、浸出液、尿、粘液、催乳ミルクなどの生理学的流体などのあらゆる供給源に由来してもよい試験サンプル中で分析できる。さらに試験サンプルは、例えば創傷、皮膚、鼻孔、頭皮、爪などの身体部位に由来してもよい。
【0018】
技術は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)などの微生物の検出のための様々な患者サンプリング技術について述べる。このようなサンプリング技術はまた、本発明の方法でも適切である。患者の鼻孔を拭ってサンプルを得ることは、一般的である。特に好ましいサンプリング技術としては、被験者の(例えば患者の)前側鼻孔を滅菌ぬぐい棒またはサンプリング装置で拭うことが挙げられる。例えば1本のぬぐい棒が各被験者からのサンプリングに使用され、すなわち1本のぬぐい棒が双方の鼻孔に使用される。例えばサンプリングは、(英国イースト・グリンステッドのピューリタン(Puritan(East Grinstead,UK))から商品名「ピュアラップ(Pure−Wraps)」の下に市販されるものなどの)ぬぐい棒を乾燥したまま、または適切な溶液であらかじめ湿らせて、被験者の鼻孔前側先端内に挿入し、ぬぐい棒を鼻孔粘膜表面に沿って完全に2回回転させて実施できる。次に典型的にぬぐい棒を直接培養し、または典型的に、任意に緩衝液および少なくとも1つの界面活性剤と組み合わせた水を含む適切な溶液で抽出した。
【0019】
生理学的流体に加えて、その他の試験サンプルとしては、その他の液体ならびに液体媒質中に溶解された固体が挙げられる。関心のあるサンプルとしては、プロセス流、水、土壌、植物またはその他の植生、空気、(例えば汚染された)表面などが挙げられる。
【0020】
試験サンプル(例えば液体)は、粘稠な流体の希釈などの事前処理を施してもよい。試験サンプル(例えば液体)をサンプルポートへの注入に先だって、濾過と遠心分離と蒸留と透析などによる濃縮、希釈、濾過、天然構成成分の不活性化、試薬の添加、薬剤処理などのその他の方法で処理してもよい。
【0021】
この細胞壁構成成分のシグナル改良は、試験サンプル中の細胞を溶解した結果として生じる。本発明の方法では、溶解は、細胞を溶解剤に接触させるステップ、または細胞を物理的に溶解するステップを含むことができる。溶解は、例えば約5℃〜約37℃の温度、好ましくは約15℃〜約25℃の温度などの従来の条件下で実施できる。顕著なことに、溶解は、培養されていない細胞、すなわち直接試験サンプルを使用して生じることができるが、培養された細胞もまた使用でできる。
【0022】
細胞を溶解して細胞壁断片を形成し、細胞壁構成成分のシグナル改良を得た結果として、比較的低濃度の関心のある種を有するサンプルが評価できる。したがって有利なことに、本発明の方法は改善された感度を有する。例えば特定の実施形態では、試験サンプルは比較的低濃度の微生物、特に黄色ブドウ球菌を含んでもよい。このような比較的低濃度としては、例えば1mLあたり約5×104コロニー形成単位(「cfu」)(cfu/ml)未満、約5×103cfu/ml未満、約1000cfu/ml未満、そして約500cfu/ml程度にまで低い微生物、が挙げられる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)などの微生物は、例えば5×107cfu/mlに至るような高レベルでも検出できる。
【0023】
適切な溶解剤としては、例えばリソスタフィン、リゾチーム、エンドペプチダーゼ、N−アセチルムラミル−L−アラニンアミダーゼ、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、およびALE−1などの酵素が挙げられる。所望ならば酵素の様々な組み合わせが使用できる。黄色ブドウ球菌の存在を検出する方法においてリソスタフィンが特に有用である。
【0024】
その他の溶解剤としては、塩(例えばカオトロピック塩)、可溶化剤(例えば洗剤)、還元剤(例えばDTT、DTE、システイン、N−アセチルシステイン)、酸(例えばHCl)、塩基(例えばNaOH)が挙げられる。所望ならば、このような溶解剤の様々な組み合わせが使用できる。
【0025】
溶解は、細胞を物理的に溶解させて起こすことができる。物理的溶解は,試験サンプルをガラスビーズとボルテックスして、超音波処理して、沸騰させて、または試験サンプルにフレンチプレスを使用して生じるような高圧をかけて起こすことができる。
【0026】
所望ならば、本発明の方法は、細胞膜に関連したまたは非関連の内部細胞構成成分について、溶解産物を分析するステップをさらに含むことができる。内部細胞構成成分は、MRSA、VRSA、VISA、VRE、およびMDRなどの抗生物質耐性微生物を分析する上で特に有用である。このような微生物に特徴的であることができる内部細胞構成成分としては、膜タンパク質が挙げられる。このような膜タンパク質の例としては、細胞質膜タンパク質、外面膜タンパク質、および細胞膜タンパク質が挙げられる。ペニシリン結合タンパク質(PBP)などの細胞質膜タンパク質(例えばPBP2’またはPBP2a)は、特に抗生物質耐性微生物に特徴的であることができる。例えば細胞質膜タンパク質PBP2’は、MRSAに特徴的である。
【0027】
本発明の方法は、細胞壁構成成分の存在を検出するだけでなく、好ましくはこのような細胞壁構成成分を同定することを伴うことができ、それは細胞壁構成成分がそれに特徴的な微生物の同定をもたらすことができる。特定の実施形態では、細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップは、細胞壁構成成分を定量化するステップとを含む。
【0028】
本発明の方法で使用する分析技術次第で、比較的少量の試験サンプルを使用できる。1〜2ml程度に高い試験サンプル容量を利用してもよいが、有利なことに特定の方法では50μl程度の試験サンプルで十分である。
【0029】
本発明の方法で使用する分析技術次第で、検出時間は比較的短くてよい。例えば検出時間は約300分未満、約250分未満、約200分未満、約150分未満、約100分未満、約60分未満、そして約30分程度にまで短くあることができる。
【0030】
このような分析技術は、当業者に知られている多種多様な従来の技術のいずれかであることができる。例えばこのような方法としては、蛍光定量免疫クロマトグラフィー(例えば米国特許第5,753,517号明細書で述べられるような迅速分析物測定手順)、音波センサー、ELISA(例えば比色分析ELISA)、および米国特許出願公開第2004/0132217号明細書、2002年12月19日に出願された米国特許出願第10/325,276号明細書、および本願と同日付で出願され「ジアセチレン材料の比色分析センサー構築(Colorimetric Sensors Constructed Of Diacetylene Materials)」(代理人整理番号第60422US002号)と題された出願人の譲受人の同時係属出願出願、ならびに表面プラスモン共振(SPR、スウェーデン国ウプサラのビアコア(Biacoa(Upsala,Sweden))から入手できるタイプのバイオセンサーを使用した)で述べられるものなどのその他の比色分析技術(例えばポリジアセチレン(PDA)材料を含む比色分析センサー)の使用が挙げられる。
【0031】
酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)は、以下の2つの重要な生物学的現象に基づく。1)実質的に無数の特異的外来性化合物を区別する抗体の識別力、および2)検出可能な化学反応を特異的に触媒する酵素の能力。外来性化合物に対する結合と可溶性抗体の反応のこの組み合わせは、可溶性抗体に付着した酵素によって触媒される引き続く反応を通じたこれらの反応の検出と共に、非常に感応性で特異的な外来性化合物測定を提供する。このような技術は当業者によく知られている。
【0032】
表面プラスモン共振(SPR)は、センサー表面近くの屈折率変化を測定する表面プラスモン共振に基づく光学的技術である。光が、光学的により高密度の媒体(すなわちより高い屈折率を有するもの)から、より低密度の媒体(すなわちより低い屈折率を有するもの)に伝播する際、境界面に光が当たる角度が臨界角を超えれば、2つの媒体間の境界面で全反射(TIR)が起きる。TIRが起きると、電磁の「消滅波」が境界面を離れてより低屈折率の媒質中へ伝播する。境界面が特定の導電性材料(例えば金または銀)の薄層でコーティングされていると、消滅波は、導体表面で表面プラスモンと称される遊離電子立体配座とカップリングする。このような共鳴性カップリングは特定角度の入射光で生じ、光エネルギーを吸収して、その角度で反射光強度に特徴的な低下を引き起こす。表面電磁波は、より低密度の媒質を貫通する増強された電界がある第2の消滅波を作り出す。共振角度は、入射光の波長、および導電性フィルムの性質と厚さをはじめとするいくつかの要素に対して感応性である。しかし最も重要なことには、角度は、その中に表面プラスモン波の消滅波が伝播する媒体の屈折率に左右される。その他の要素が一定に保たれれば、共振角度は、密度のより低い媒質の屈折率の直接的測値であり、角度は媒質中の屈折率変化に対して非常に感応性である。SPR消滅波は、境界面からの距離と共に指数関数的に減衰し、より低い屈折率媒体をおよそ1波長の深さで効果的に貫通する。したがって境界面に非常に近い屈折率の変化のみが、検出できる。この技術は、スウェーデン国ウプサラのビアコア(Biacoa(Upsala,Sweden))から入手できるタイプのバイオセンサーを使用して実施できる。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、細胞壁構成成分を分析する方法は、少なくとも1つの物理的性質における変化を検出するステップを伴うことができる。これは波動相およびまたは波動速度変化をもたらす、粘度変化および/または質量変化を含むことができる。特定の実施形態では、このような変化はバイオセンサーによって検出できる。
【0034】
ここでの用法では「バイオセンサー」は、少なくとも1つの物理的性質変化を検出し、検出可能な変化に応えてシグナルを生じる装置を指す。バイオセンサーが変化を検出する手段としては、電気化学手段、光学的手段、電気光学的手段、機械的音響手段などが挙げられる。例えば電気化学バイオセンサーが電位差および電流測定を利用するのに対し、光学的バイオセンサーは吸光度、蛍光、可視光検出、またはルミネセンスおよび消滅波を利用する。特定の実施形態では、表面波(SAW)バイオセンサーなど、検出のために機械的音響手段を用いるバイオセンサーが使用できる。機械的音響手段を用いるバイオセンサーおよびこのようなバイオセンサーの構成要素については例えば、米国特許第5,076,094号明細書、米国特許第5,117,146号明細書、米国特許第5,235,235号明細書、米国特許第5,151,110号明細書、米国特許第5,763,283号明細書、米国特許第5,814,525号明細書、米国特許第5,836,203号明細書、および米国特許第6,232,139号明細書で述べられる。
【0035】
圧電ベースのSAWバイオセンサーは、典型的に質量または粘度の微小変化を検出するそれらの能力に基づいて作動する。例えばレンシュラー(Renschler)らに付与された米国特許第5,814,525号明細書で述べられるように、圧電ベースの機械的音響装置のクラスは、それらの検出モード次第で、表面波(SAW)、音響プレートモード(APM)、または水晶マイクロバランス(QCM)装置にさらに細分できる。APM装置は、使用される音波が液体と接する装置と共に作動できること以外は、SAW装置と同様の原理で作動する。同様に、QCM(典型的にATカット水晶)装置上の2つの反対側の電極に印可される交互の電圧は厚み剪断波モードを誘発し、その共振周波数は、コーティング材料の質量変化に比例して変化する。
【0036】
音波伝播の方向は(例えば導波管に平行な面の、または導波管面に垂直な)、バイオセンサーがそれから構築される圧電材料の結晶カットによって定まってもよい。その中で大部分の音波(例えばレイリー波、大部分ラム波)が平面を出入りして伝播するSAWバイオセンサーは、表面と接する液体からの音響減衰のために、典型的に液体検出用途では用いられない。
【0037】
液体サンプル媒質では、横波型弾性表面波バイオセンサー(SH−SAW)を好ましくは使用してもよい。SH−SAWセンサーは、典型的に波伝播を水平剪断モードに回転でき、すなわち導波管によって画定される平面に平行にでき、結晶カットおよび配向がある圧電材料から構築され、検出表面に接する液体に音響減衰損失の低下をもたらす。水平剪断音波としては、厚み剪断モード(TSM)、音響プレートモード(APM)、表面スキミングバルク波(SSBW)、ラブ波、漏洩音波(LSAW)、およびブルースタイン−グリヤエフ(BG)波が挙げられる。
【0038】
特にラブ波センサーは、ST水晶のSSBWまたは36°YXLiTaO3の漏洩波などのSH波モードを担持する基材を含んでもよい。これらのモードは好ましくは薄い音響導波層または導波管の適用によってラブ波モードに転換される。これらの波は周波数依存であり、導波管層の剪断波動速度が圧電基板のそれよりも低ければ、発生させることができる。
【0039】
導波管材料は、好ましくは以下の特性の1つ以上を示す材料であってもよい。低音響損失、低導電率、水および水性溶液中での堅牢性および安定性、比較的低い音響速度、疎水性、より高い分子量、高度の架橋など。一例では、水晶基材上の音響導波層としてSiO2が使用される。その他の熱可塑性および架橋ポリマー導波管材料の例としては、例えばエポキシ、ポリメチルメタクリレート、フェノール樹脂(例えばノヴァラック(NOVALAC))、ポリイミド、ポリスチレンなどが挙げられる。本発明の検出カートリッジで使用される機械的音響センサーで使用するためのその他の潜在的に適切な導波管材料および構造体については、例えば本願と同日付で出願され、「音響センサーおよび方法(Acoustic Sensors and Methods)」と題された出願人の譲受人のPCT出願(代理人整理第60209W0003号)で述べられる。
【0040】
代案としては、液体サンプル媒質と共にQCM装置もまた使用できる。機械的音響装置および構成要素を用いるバイオセンサーについては、例えばフライ(Frye)らに付与された米国特許第5,076,094号明細書、マーティン(Martin)らに付与された米国特許第5,117,146号明細書、マーティン(Martin)らに付与された米国特許第5,235,235号明細書、ベイン(Bein)らに付与された米国特許第5,151,110号明細書、セルノセック(Cernosek)らに付与された米国特許第5,763,283号明細書、レンシュラー(Renschler)らに付与された米国特許第5,814,525号明細書、マーティン(Martin)らに付与された米国特許第5,836,203号明細書、およびカサルヌオーボ(Casalnuovo)らに付与された米国特許第6,232,139号明細書で述べられる。水平剪断SAW装置は、ニューメキシコ州アルバカーキーのサンディア・コーポレーション(Sandia Corporation(Albuquerque,New Mexico))などの様々な製造業者から得ることができる。本発明との関連で使用してもよいいくつかのSH−SAWバイオセンサーについては、ブランチ(Branch)らの「36°YXLiTaO3上のラブ波バイオセンサーを使用した炭疽菌(Bacillus anthracis)模造品の低レベル検出(Low−level detection of a Bacillus anthracis simulant using Love−wave biosensors on 36°YXLiTaO3)」Biosensors and Bioelectronics、19、849〜859(2004)でも述べられる。
【0041】
ここで考察するように、本発明の方法は、様々な検出システムおよび構成要素(バイオセンサーを含む検出カートリッジなど)を使用してもよく、それは例えば2003年12月30日に出願された米国特許出願第60/533,169号明細書、本願と同日付で出願された(代理人整理第59468WO003号)「機械的音響検出システムおよび使用方法(Acousto−Mechanical Detection Systems and Methods of Use)」と題されたPCT出願、および本願と同日付で出願された(代理人整理第60342WO003号)、「検出カートリッジ、モジュール、システム、および方法(Detection Cartridges,Modules,Systems,and Methods)」と題されたPCT出願にある。
【0042】
いくつかの実施形態では、バイオセンサーは、関心のある黄色ブドウ球菌(S.aureus)生体分子を圧電バイオセンサー表面に付着する反応物質(例えば抗体)を含んでなる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)が存在する場合、試験サンプル中の溶解された細胞は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に特徴的であり、バイオセンサー表面に固定化されたタンパク質A特異的抗体によって検出できる、タンパク質Aについて分析される。
【0043】
さらに溶解された黄色ブドウ球菌(S.aureus)細菌などの細胞は、(細胞の細胞壁部分と対立するものとして)細胞内部分からタンパク質マーカーを放出する。このようなタンパク質マーカーは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)反応物質分子によって検出できる。この技術は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus)(MRSA)を検出するために特に適している。いくつかの実施形態では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体が黄色ブドウ球菌(S.aureus)反応物質として用いられる。「黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体」とは、その抗原結合断片を包含する特定の抗原と特異的に結合する能力を有する免疫グロブリンを指す。「抗体」という用語は、あらゆるイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgEなど)のホール(whole)抗体、および脊椎動物、例えば哺乳類種からのその断片を含むことが意図され、それは例えばタンパク質などの外来性化合物と特異的に反応性でもある。
【0044】
抗体は従来の技術を使用して断片化して、断片はホール抗体と同一様式で有用性についてスクリーニングできる。したがって用語は、特定のタンパク質と選択的に反応できる、タンパク分解的に開裂されまたは組換え的に調製された抗体分子の部分のセグメントを含む。このようなタンパク分解および/または組換え断片の制限を意図しない例としては、Fabと、F(ab’)2と、Fabと、Fvと、ペプチドリンカーによって結合されたVLおよび/またはVH領域を含有する一本鎖抗体(scFv)とが挙げられる。scFv’sは、共有結合的または非共有結合的に結合して、2つ以上の結合部位を有する抗体を形成できる。抗体は、当業者に知られているあらゆる検出可能な部分で標識できる。いくつかの態様では、測定を望む分析物に結合する抗体(一次抗体)は標識されず、代わりに一次抗体に特異的に結合する標識された二次抗体またはその他の試薬の結合によって間接的に検出される。
【0045】
様々な黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体が、技術分野で知られている。例えば黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体は、シグマ・アルドリッチ・アンド・アキュレート(Sigma−Aldrich and Accurate Chemical)から市販される。さらに黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体については、米国特許第4,902,616号明細書で述べられる。典型的に、用いられる抗体濃度は少なくとも2ng/mlである。好ましくは抗体濃度は少なくとも100ng/mlである。例えば50μg/mlの濃度を用いることができる。典型的に約500μg/ml以下が用いられる。既述のように、黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体をバイオセンサー表面に固定することが好ましい。
【0046】
ここで述べる1つ以上の分析技術は、電気的および/または電気化学的方法とカップリングできる。微生物の代謝は、通常電導度と静電容量の双方の増大をもたらし、インピーダンスの減少を引き起こす。したがって文献では、これらの概念にふさわしい測定を使用して細菌が検出されている。例えば微生物検出のために、再使用可能なバルク音波インピーダンスセンサーが開発されている。これらの生物体はそれらの代謝酸化還元反応を定量化可能な電気的シグナルに変換できる。したがって細菌生物体を検出するのに、電気化学方法もまた使用されている。方法としては、直接電位差計による検出、光補助電位差計による検出(LAPS)、および電流検出が挙げられる。ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識抗体による酸化還元反応とカップリングされたELISA技術が電気化学的にモニターされている。その他のバリエーションとしては、電流検出と組み合わせた免疫濾過技術が挙げられる。このような技術については、D.イヴィニツキー(Ivinitski)ら、Biosensors & Bioelectronics、14、599〜624(1999)で述べられる。
【実施例】
【0047】
本発明をここで、それについて実施可能な説明ができる、本発明者によって予見されたいくつかの具体的な実施形態に関して述べる。現在予見されていない修正をはじめとする本発明の重要でない修正は、それでもなおその同等物と見なされてもよい。したがって本発明の範囲は、ここで述べる詳細および構造によって制限されず、続く特許請求の範囲およびその同等物によってのみ制限されるものとする。
【0048】
実施例1.ELISA検出
抗体付きプレートの調製
ニューヨーク州コーニングのコーニング・インコーポレーテッド(Corning Incorporated(Corning,NY))からのポリスチレンマイクロウェルプレート(コスター(Costar)96ウェル細胞培養クラスター、ふた付き平底、組織培養処理済み、非発熱性、ポリスチレンプレート、カタログ番号3596)をペンシルベニア州ウェストグローブのジャクソン・イムノリサーチラ・ボラトリーズ(Jackson ImmunoResearch Laboratories(West Grove,PA)からのクロムピュア(ChromPure)ウサギIgG(ホール分子、カタログ番号011−000−003、抗体10μg/mL)でコーティングした。抗体をミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO))からのpH9.6の0.1M重炭酸ナトリウム中で希釈して、抗体溶液を調製した。コーティングしたプレートを37℃で1時間インキュベートした。
【0049】
プレートの洗浄
次にミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手できる0.05%容量−容量(v/v)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウラート(商品名ツイーン(TWEEN)20)を添加した、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの0.02Mリン酸ナトリウムおよびシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの0.15M塩化ナトリウムから成るpH7.5の0.25mLの「PBS緩衝液」溶液を各ウェルへ吸引、定量供給してプレートを洗浄し、洗浄を5サイクル繰り返した。
【0050】
プレートのブロック
オハイオ州ソロンのネッスルUSA(Nestle USA、Inc.(Solon,OH)からのカーネーション(Carnation)脱脂粉乳を上の洗浄液と2%w/vの添加量で混合して、ブロット溶液を調製した。このブロット溶液(0.2ml)の一部を各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートした。次にプレートを上述のようにして洗浄した。
【0051】
細菌懸濁液調製物
黄色ブドウ球菌(S.aureus)細菌は、商品名「ATCC25923」の下に、メリーランド州ロックビル(Rockville,MD)の米国微生物系統保存機関から得た。細菌をカリフォルニア州サンタマリアのハーディ・ダイアグノスティクス(Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA))からの5〜10mLの調製済み滅菌トリプチックソイブロスに細菌を接種して調製したブロス培養内で一晩生育させた(37℃で17〜22時間)。培養をニューヨーク州ウェストベリーのブリンクマン・インストゥルメンツ(Brinkman Instruments(Westbury,NY))からのエッペンドルフモデル番号5804R遠心分離器内で8,000〜10,000rpm、15分の遠心分離によって洗浄し、ニュージャージー州マウントオリーブのBASFコーポレーション(BASF Corporation(Mount Olive,NJ))からの0.2%(w/v)プルロニック(PLURONIC)L64界面活性剤を含有するPBS緩衝液に再懸濁し、この溶液による3回の追加的サイクルによる遠心分離で洗浄した。
【0052】
細菌希釈液
次に洗浄した細菌懸濁液を以下の溶液に希釈した。
【0053】
溶液1は、BASFコーポレーション(BASF Corporation)からの0.2%(w/v)プルロニック(PLURONIC)L64界面活性剤添加PBS緩衝液であった。
【0054】
溶液2は、0.01Mトリス−HCL、1mMEGTA、1%トリトン(Triton)X−100、2.5mMピロリン酸ナトリウム、1mMリン酸ナトリウム、およびミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO))からの1μg/mlロイペプチンを合わせて製造した緩衝液であった。
【0055】
溶液3は、上の溶液2をシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの3μg/mLのリソスタフィン(カタログ番号L−4402)と合わせて製造した溶解緩衝液であった。
【0056】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)細菌を一連の5倍希釈中で、108、2×107、4×106、8×105、および1.6×104/mLに、それぞれ3連の溶液に希釈した。
【0057】
メリーランド州ロックビル(Rockville,MD)の米国微生物系統保存機関からの表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)ATCC12228の培養を同一様式で調製し、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)細菌を比較として溶液3のみに108/mLで再懸濁した。
【0058】
抗原溶液のELISA試験
各抗原調製物のサンプルおよび希釈物、ならびに細菌を含有しない各溶液のサンプルをあらかじめコーティングしてブロックし、洗浄したプレートに入れた。プレート上の別個のマイクロウェルに0.1mlのサンプル溶液を入れて、各サンプルを二連で平板培養した。プレートを37℃で1時間インキュベートした。次にプレートを上のように洗浄し、0.1mlの一次抗体溶液を適切なウェルに入れた。
【0059】
一次抗体は、ニューヨーク州ウェストベリーのアキュレート・ケミカル・アンド・サイエンティフィック・カンパニー(Accurate Chemical and Scientific Company(Westbury,NY))からのビオチニル化ウサギ抗−黄色ブドウ球菌(S.aureus)IgG(ビオチンウサギ抗−黄色ブドウ球菌(カタログ番号YVS6887)、およびミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO))からのビオチニル化マウス抗−タンパク質AIgG(モノクローナル抗−タンパク質AクローンSPA−27、ビオチンコンジュゲート、カタログ番号B−3150)であった。これらの抗体をブロット中で5μg/mLに希釈し、0.1mLの一次抗体溶液を適切なウェルに入れた。プレートを37℃で1時間インキュベートした。
【0060】
インキュベーション後、プレートを上のように洗浄し、適切なウェルにジャクソン・イムノ・リサーチ・ラボラトリーズ(Jackson ImmunoResearch Laboratories)からの0.1mLのストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート(SA−AP)調製物を入れた。ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート(SA−AP)調製物はブロット中でジャクソン・イムノ・リサーチ・ラボラトリーズ(Jackson ImmunoResearch Laboratories)からのストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート(カタログ番号016−050−084)を0.5μg/mLに希釈して製造した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、次に上のように洗浄した。
【0061】
洗浄後、アルカリホスファターゼ基質調製物の0.1mL部分を適切なウェルに入れた。アルカリホスファターゼ基質調製物は、製造業者の説明書に従って調製された、メリーランド州ゲイサーズバーグのキルケゴール・アンド・ペリー・ラボラトリーズ(Kirkegaard and Perry Laboratories(Gaithersburg,MD))からのパラ−ニトロフェニルホスフェート基質(pNPP、製品コード50−80−00)であった。次にプレートを室温で15分間インキュベートした。15分のインキュベーション期間後、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの0.1mLの5%(w/v)二ナトリウムEDTAを添加して、酵素で触媒される基質発生を停止した。
【0062】
バーモント州ウィヌースキのバイオテック・インターナショナル(Bio−Tek Instruments,Inc.(Winooski,VT))からのバイオテック(Bio−Tek)モデルEL808マイクロウェルプレートリーダーによって、405nmでプレートを読み取り、結果を下の表1に示す(N/A=該当なし(すなわち測定されなかった))。
【0063】
【表1】

【0064】
実施例2.蛍光アッセイ検出
細菌懸濁液調製および希釈
黄色ブドウ球菌(S.aureus)細菌は、メリーランド州ロックビル(Rockville,MD)の米国微生物系統保存機関から商品名「ATCC25923」の下に得た。細菌をカリフォルニア州サンタマリアのハーディ・ダイアグノスティクス(Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA))からの5〜10mLの調製済み滅菌トリプチックソイブロスに細菌を接種して調製したブロス培養内で一晩生育させた(37℃で17〜22時間)。培養をニューヨーク州ウェストベリーのブリンクマン・インストゥルメンツ(Brinkman Instruments(Westbury,NY)からのエッペンドルフモデル番号5804R遠心分離器内で8,000〜10,000毎分回転数(rpm)、15分の遠心分離によって洗浄し、ニュージャージー州マウントオリーブのBASFコーポレーション(BASF Corporation(Mount Olive,NJ))からの0.2%w/vプルロニック(PLURONIC)L64界面活性剤を含有するPBS緩衝液に再懸濁し、この溶液による3回の追加的サイクルによる遠心分離で洗浄した。
【0065】
次に洗浄した黄色ブドウ球菌(S.aureus)25923懸濁液を10倍連続希釈中で、2つの異なる希釈液(E5〜E3)中の105〜103/mLに希釈した。第1の希釈液は、カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビーのレスポンス・バイオメディカル・コーポレーション(Response Biomedical Corporation(Burnaby,BC,Canada))からのRAMPアッセイサンプル緩衝液No.1であり、第2の希釈液はシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からのリソスタフィン(Sigma−Aldrich)が3μg/mL溶液に添加されたこと以外は、第1の緩衝液と同一であった。緩衝液単独サンプルもまた試験した(E0)。
【0066】
アッセイをカナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビーのレスポンス・バイオメディカル・コーポレーション(Response Biomedical Corporation(Burnaby,BC,Canada))からのRAMP蛍光性のアッセイリーダー上で、製造業者の説明書に従って実施した。結果を下の表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
実施例3.比色分析検出
ポリカーボネート膜上のポリジアセチレンリポソームのコーティング
シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手される(60/40)ジアセチレンHO(O)C(CH22C(O)O(CH24−C≡C−C≡C(CH24O(O)C(CH212CH3(米国特許出願公開第2004/0132217号明細書の実施例6に従って調製される)と1,2−ジメリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC、式量(F.W.)678、カタログ番号P2663)との調合物をカナダ国オタワのアヴェスティン(Avestin,Inc.(Ottawa,Canada)からの200nm径孔開き25mm径多孔性ポリカーボネート膜上にコーティングして、比色分析検出器サンプルを製造した。ハンドヘルド押出しプロセスを使用して膜をコーティングした。
【0069】
60/40ジアセチレン/DMPC混合物をガラスバイアル内に計り入れ、HEPES緩衝液(5mM、pH7.2)に懸濁して1mM溶液を作った。次にこの溶液をミソニクス(Misonix)XL202プローブ超音波処理器を2分使用してプローブ超音波処理し、4℃の冷蔵庫に約20時間入れた。このプロセスは、ポリジアセチレン(PDA)リポソーム懸濁液の形成をもたらす。
【0070】
コーティングするポリカーボネート膜をカナダ国オタワのアヴェスティン(Avestin,Inc.(Ottawa,Canada)から商品名リポファスト(LIPOFAST)の下に入手できるハンドヘルド押出しシステムのステンレス鋼チャンバーに入れた。膜は、テフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))ベースの底のOリングを覆った。膜を折り曲げおよび/または畳まないようにに注意した。上部テフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))Oリングブロックを膜上のステンレス鋼ハウジング内に入れた。次にステンレス鋼キャップを手で締めてチャンバーを密封した。気密シリンジ(ハミルトン(Hamilton)500μl))にジアセチレンリポソーム懸濁液を充填し、ベースに付着させ、第2のシリンジを別のキャップに付着させた。第1のシリンジのリポソームを均一な定圧でチャンバー内に緩慢に押し入れた。
【0071】
膜はリポソームを表面に捕らえて、透明な緩衝液が緩慢に第2のシリンジ内に流れた。この措置を1回通過コーティングと見なした。この例で検出器として使用した膜サンプルは、2回通過コーティングを使用した。第2の通過は、リポソームの第2の0.5mL(ml)部分を既にコーティングされた膜に塗布して、第1の通過と同様に塗布した。濾過した緩衝液を含有する第2のシリンジを除去し、内容物を廃棄した。ステンレス鋼エンドキャップを開けて、テフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))Oリングブロックを取り出した。湿潤な膜を取り外し、コーティング面を上にしてガラススライドにのせ、5℃の冷蔵庫に少なくとも3時間入れた。次にサンプルをCaSO4を含有するデシケーター内で30分間乾燥させ、254nmのUV光に30〜90秒間露光した。
【0072】
PDA−コーティングした基材(25ミリメートル(mm)円周)を4つに切った。各4分の1サンプルをサンプルとして実験で使用した。基材を24ウェルのマイクロタイタープレート別のウェルに入れた。カリフォルニア州サンディエゴのEMDバイオサイエンス(EMD Biosciences(San Diego,CA)から市販される10×PBS液体濃縮液を10倍に希釈して、リン酸緩衝生理食塩水溶液を調製した。これによって以下の塩組成を有するPBS緩衝液溶液を得た。10mMリン酸ナトリウム、137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム。PBS緩衝液にまた、ニュージャージー州マウントオリーブのBASFコーポレーション(BASF Corporation(Mount Olive,NJ))から市販される0.2%(w/v)プルロニック(PLURONIC)L64界面活性剤を添加して、PBSL64緩衝液溶液を得た。ホール黄色ブドウ球菌(S.aureus)細菌ATCC25923を含有する250μlのPBSL64緩衝液溶液を250μlの抗体溶液と混合して、ホール細菌サンプル溶液を調製した。抗体溶液は、アキュレート・ケミカル・アンド・サイエンティフィック(Accurate Chemical and Scientific Corp.)からのウサギ抗−黄色ブドウ球菌(カタログ番号YVS6881)をPBSL64緩衝液溶液中に100μg/mlの濃度で含有した。PBSL64緩衝液溶液中3μg/mLのシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からのリソスタフィンリソスタフィンから成る溶解緩衝液(カタログ番号L−4402)を使用して、PBSL64緩衝液溶液中に溶解された黄色ブドウ球菌(S.aureus)細菌ATCC25923を含有するサンプルを調製した。溶解された細菌サンプル溶液は、上述のように調製された250μlの抗体溶液と混合された250μlのPBS−L64内の溶解された黄色ブドウ球菌(S.aureus)細菌ATCC25923から成った。下の表3に報告するように、試験サンプルで使用した細菌濃度は0〜105cfu/mlの間で変動した。細菌と抗体溶液の混合物を5分間放置して、次にPDA−コーティングした基材を含有する24ウェルプレートに入れた。対照サンプルもまた比較のために調製した。対照サンプルは細菌を含有せず、単に上述のように調製された250μlの抗体溶液と混合された250μlのPBS−L64緩衝液から成った。
【0073】
デジタルカメラを使用して、5分毎に写真撮影した。カリフォルニア州サンホセのアドビ・システムズ(Adobe Sysmtems Incorporated(San Jose,CA))からの商品名アドビフォトショップ(ADOBE PHOTOSHOP)バージョン5.0のソフトウェアを使用して写真をスキャニングし、各センサーについてRGB(赤、緑、青)チャンネル値を得た。以下の式によって得られる赤および青チャンネルの値を使用して、比色分析応答(CR)を判定した。CR=((PR初期−PRサンプル)/PR初期)(式中、PR=サンプルの赤%値であり、以下の式によって得られる。PR=R/(R+B)*100(式中、RおよびBはそれぞれポリジアセチレンセンサーの赤および青チャンネルの値に対応する))。下の表3のデータは、15分目に測定した、対照サンプルと細菌含有サンプル(ホールまたは溶解済みのいずれか)の間の比色応答の違いを示す。
【0074】
【表3】

【0075】
本発明の範囲と精神を逸脱することなく本発明の様々な変更と修正が可能であることは、当業者には明らかである。本発明はここに記載される例証的な実施形態および実施例によって不当に制限されないものとし、このような実施例および実施形態は例としてのみ提示され、本発明の範囲は、以下で述べる特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の細胞壁構成成分のシグナル検出を増強する方法であって、
細胞を含んでなる試験サンプルを提供するステップと、
細胞を溶解して細胞壁断片を含んでなる溶解産物を形成するステップと、
細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップと、
を含み、
該細胞壁構成成分が、非溶解細胞中の同一構成成分に比べて増強されたシグナルを示す、方法。
【請求項2】
前記細胞壁構成成分が細胞壁タンパク質を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞壁タンパク質がタンパク質Aである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞壁タンパク質がクランピング因子である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞壁構成成分が莢膜多糖類または細胞壁炭水化物を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
細胞を溶解するステップが、細胞を溶解剤に接触させるステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶解剤が、リソスタフィン、リゾチーム、エンドペプチダーゼ、N−アセチルムラミル−L−アラニンアミダーゼ、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、ALE−1、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される酵素を含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶解剤が、塩、可溶化剤、還元剤、酸、塩基、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
細胞を溶解するステップが、細胞を物理的に溶解するステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が1つ以上の微生物を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物がグラム陽性細菌を含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記微生物がグラム陰性細菌を含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が培養されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
内部細胞構成成分について前記溶解産物を分析するステップをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が抗生物質耐性微生物を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記内部細胞構成成分が細胞膜を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞膜が膜タンパク質を含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記膜タンパク質が細胞質膜タンパク質である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞質膜タンパク質がPBP2’である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップが、前記細胞壁構成成分を同定するステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップが、前記細胞壁構成成分を定量化するステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップが、蛍光定量免疫クロマトグラフィーで分析するステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップが、ELISAで分析するステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップが、音波センサーで分析するステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップが、比色的に分析するステップを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に特徴的な細胞の細胞壁構成成分のシグナル検出を増強する方法であって、
培養されていない細胞を含んでなる試験サンプルを提供するステップと、
該培養されていない細胞を溶解して細胞壁断片を含んでなる溶解産物を形成するステップと、
黄色ブドウ球菌に特徴的な細胞壁構成成分について該細胞壁断片を分析するステップと、
を含み、
該黄色ブドウ球菌に特徴的な細胞壁構成成分が、非溶解細胞中の同一構成成分と比べて増強されたシグナルを示す、方法。
【請求項28】
前記細胞壁構成成分が細胞壁タンパク質を含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞壁タンパク質がタンパク質Aである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記培養されていない細胞を溶解するステップが、前記培養されていない細胞をリソスタフィンに接触させるステップを含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
内部細胞構成成分について前記溶解産物を分析するステップをさらに含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記内部細胞構成成分が細胞膜を含んでなる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞膜が膜タンパク質を含んでなる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記膜タンパク質がMRSAに特徴的な細胞質膜タンパク質である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞質膜タンパク質がPBP2’である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞壁構成成分について細胞壁断片を分析するステップが、前記細胞壁構成成分を定量化するステップを含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記試験サンプルが黄色ブドウ球菌を5×104cfu/ml未満の濃度で含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に特徴的な細胞の細胞壁構成成分のシグナル検出を増強する方法であって、
培養されていない細胞を含んでなる試験サンプルを提供するステップと、
該培養されていない細胞をリソスタフィンに接触させて、細胞壁断片を含んでなる溶解産物を形成するステップと、
タンパク質Aについて該細胞壁断片を分析するステップと、
を含み、
該細胞壁断片中のタンパク質Aが、非溶解細胞の細胞壁中のタンパク質Aと比べて増強されたシグナルを示す、方法。

【公表番号】特表2007−518074(P2007−518074A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547222(P2006−547222)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/042794
【国際公開番号】WO2005/071416
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】